JP2006141297A - 血管新生を検出するためのマーカー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明は、RasGRP2遺伝子の発現を測定することを含む、血管新生および/または血管新生を伴う疾患を検出する方法および動物細胞をアクチビンおよびアンジオポエチンで処理することにより血管内皮細胞を誘導する方法に関する。
【選択図】 なし
Description
(1)RasGRP2遺伝子の発現を測定することを含む、血管新生および/または血管新生を伴う疾患を検出する方法。
(2)RasGRP2遺伝子が配列番号1または2の塩基配列で特定される遺伝子である、(1)記載の方法。
(3)血管新生を伴う疾患が、癌、血管性疾患、炎症性疾患、眼内血管新生性疾患、生殖器官系疾患および中枢神経系疾患からなる群から選択される、(1)または(2)記載の方法。
(4)RasGRP2ポリヌクレオチドからなる、血管新生および/または血管新生を伴う疾患を検出するためのマーカー。
(5)RasGRP2ポリヌクレオチドが配列番号1または2の塩基配列の全部または一部を含むポリヌクレオチドである、(4)記載のマーカー。
(6)RasGRP2ポリペプチドまたはその断片からなる、血管新生および/または血管新生を伴う疾患を検出するためのマーカー。
(7)RasGRP2ポリペプチドが配列番号3または4のアミノ酸配列の全部または一部を含むポリペプチドである、(6)記載のマーカー。
(8)RasGRP2ポリペプチドまたはその断片に特異的に結合する抗体を含む、血管新生および/または血管新生を伴う疾患を検出するためのキット。
(9)RasGRP2ポリヌクレオチドを特異的に増幅するための、少なくとも15塩基長の連続したプライマーまたはRasGRP2ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする少なくとも15塩基長の連続したプローブを含む、血管新生および/または血管新生を伴う疾患を検出するためのキット。
(10)RasGRP2ポリペプチドまたはその断片に特異的に結合する抗体を含む、血管新生を伴う疾患を治療するための医薬組成物。
(11)RasGRP2ポリヌクレオチドおよび/またはその誘導体、またはRasGRP2ポリペプチドおよび/またはその誘導体を含む、癌または血管性疾患を治療するための医薬組成物。
(12)RasGRP2遺伝子が発現している細胞と被験試料とを接触させ、被験試料の中からRasGRP2遺伝子の発現を阻害する物質を選択することを含む、血管新生を阻害する物質をスクリーニングする方法。
(13)動物細胞をアクチビンおよびアンジオポエチンで処理することにより血管内皮細胞を誘導する方法。
(14)アクチビンおよびアンジオポエチンを含む、血管内皮細胞を誘導するためのキット。
(15)アクチビンおよびアンジオポエチンで処理することにより血管内皮細胞を誘導することを含む、血管新生および/または血管新生を伴う疾患に関連する遺伝子をスクリーニングする方法。
(16)アクチビンおよびアンジオポエチンを含む、血管新生および/または血管新生を伴う疾患に関連する遺伝子をスクリーニングするためのキット。
(17)アクチビンおよびアンジオポエチンを含む、癌または血管性疾患を治療するための医薬組成物。
本発明における血管新生および/または血管新生を伴う疾患を検出する方法は、RasGRP2遺伝子の発現を測定することを特徴とする。被検体由来の試料中におけるRasGRP2遺伝子の発現を検出する方法としては、被検体由来の試料中のRasGRP2遺伝子によってコードされるポリペプチド(本明細書中、RasGRP2ポリペプチドと称する)を検出する方法、被検体由来の試料中のRasGRP2遺伝子の全部または一部であるポリヌクレオチド(本明細書中、RasGRP2ポリヌクレオチドと称する)、特にRasGRP2mRNAを検出する方法が挙げられる。ここで、RasGRP2mRNAの検出には、該RNAから変換されたcDNAやcRNAの検出も包含される。
試料中のRasGRP2ポリペプチドを検出する方法としては、当業者に周知の方法、例えば、酵素結合免疫測定法(ELISA)、二重モノクローナル抗体サンドイッチイムノアッセイ法(米国特許第4,376,110号)、モノクローナルポリクローナル抗体サンドイッチアッセイ法(Wideら、KirkhamおよびHunter編集、「ラジオイムノアッセイ法(Radioimmunoassay)」、E.and S.Livingstone、エジンバラ、(1970))、免疫蛍光法、ウェスタンブロッティング法、ドットブロッティング法、免疫沈降法、プロテインチップによる解析法(蛋白質 核酸 酵素 Vol.47 No.5(2002)、蛋白質 核酸 酵素 Vol.47 No.8(2002))、2次元電気泳動法、SDSポリアクリルアミド電気泳動法が挙げられるが、これらに限定されない。
上記のようにして得られた免疫原を、哺乳動物、例えばラット、マウス(例えば近交系マウスのBALB/c)、ウサギなどに投与する。免疫原の1回の投与量は、免疫動物の種類、投与経路などにより適宜決定されるものであるが、動物1匹当たり約50〜200μgである。免疫は、主として静脈内、皮下、腹腔内に免疫原を注入することにより行われる。また、免疫の間隔は特に限定されず、初回免疫後、数日から数週間間隔で、好ましくは1〜4週間間隔で、2〜6回、好ましくは3〜4回追加免疫を行う。初回免疫の後、免疫動物の血清中の抗体価の測定をELISA(Enzyme−Linked Immuno Sorbent Assay)法等により繰り返し行い、抗体価がプラトーに達したときは、免疫原を静脈内または腹腔内に注射し、最終免疫とする。そして、最終免疫の日から2〜5日後、好ましくは3日後に、抗体産生細胞を採取する。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞等が挙げられるが、脾臓細胞または局所リンパ節細胞が好ましい。
ハイブリドーマを得るため、上述のように免疫動物から得た抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合を行う。
抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞としては、マウスなどの動物の一般に入手可能な株化細胞を使用することができる。使用する細胞株としては、薬剤選択性を有し、未融合の状態ではHAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミンを含む)で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。また株化細胞は、免疫動物と同種系の動物に由来するものが好ましい。ミエローマ細胞の具体例としては、BALB/cマウス由来のヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシル・トランスフェラーゼ(HGPRT)欠損細胞株である、P3X63−Ag.8株、P3X63−Ag.8.U1株、P3/NSI/1−Ag4−1株、P3x63Ag8.653株またはSp2/0−Ag14株などが挙げられる。
細胞融合処理後の細胞から目的とするハイブリドーマを選別する。その方法として、細胞懸濁液を、例えばウシ胎児血清含有RPMI−1640培地などで適当に希釈後、マイクロタイタープレート上に2×105個/ウエル程度まき、各ウエルに選択培地を加え、以後適当に選択培地を交換して培養を行う。培養温度は、20〜40℃、好ましくは約37℃である。ミエローマ細胞がHGPRT欠損株またはチミジンキナーゼ(TK)欠損株のものである場合には、ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジンを含む選択培地(HAT培地)を用いることにより、抗体産生能を有する細胞とミエローマ細胞のハイブリドーマのみを選択的に培養し、増殖させることができる。その結果、選択培地で培養開始後、約10日前後から生育してくる細胞をハイブリドーマとして得ることができる。
樹立したハイブリドーマからモノクローナル抗体を採取する方法として、通常の細胞培養法または腹水形成法等を採用することができる。
細胞培養法においては、ハイブリドーマを10%ウシ胎児血清含有RPMI−1640培地、DMEM培地または無血清培地等の動物細胞培養培地中で、通常の培養条件(例えば37℃,5%CO2濃度)で2〜10日以上培養し、その培養上清から抗体を取得する。
ポリクローナル抗体を作製する場合は、前記と同様に動物を免疫し、最終の免疫日から6〜60日後に、酵素免疫測定法(EIAおよびELISA)、放射免疫測定法(RIA)等で抗体価を測定し、最大の抗体価を示した日に採血し、抗血清を得る。その後は、抗血清中のポリクローナル抗体の反応性をELISA法などで測定する。
被検体由来の試料中のRasGRP2mRNAを検出する方法としては、RasGRP2ポリヌクレオチドを特異的に増幅するための、少なくとも15塩基長の連続したプライマーまたはRasGRP2ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする少なくとも15塩基長の連続したプローブを用いて被検体由来の試料中のRasGRP2遺伝子の発現を検出する方法が挙げられる。
被検体由来の試料としては、血液、臓器・組織などの生体由来試料を対象とすることができる。
本発明はまた、血管新生および/または血管新生を伴う疾患を検出するためのキットに関する。該キットは、RasGRP2遺伝子の発現を検出する手段として、RasGRP2ポリペプチドもしくはその断片と特異的に結合する抗体、RasGRP2ポリヌクレオチドを特異的に増幅するための少なくとも15塩基長の連続したプライマー、またはRasGRP2をコードするポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする少なくとも15塩基長の連続したプローブから選択される少なくとも1種を含む。このようなキットとしては、被検成分の種類に応じて各種のものが市販されており、本発明のキットも、RasGRP2遺伝子の発現を検出する上記手段を用いることを除き、公知公用のキットに用いられている各要素によって構成することができる。RasGRP2遺伝子の発現を検出するためのプライマー、プローブまたは抗体に加え、例えば、標識二次抗体、担体、洗浄バッファー、試料希釈液、酵素基質、反応停止液、標準物質等を含みうる。
RasGRP2遺伝子の発現が、血管新生および血管新生を伴う疾患に関連することから、RasGRP2ポリペプチドまたはその断片に特異的に結合する抗体を投与することにより、血管新生を伴う疾患を治療することが可能であると考えられる。従って、本発明の一実施形態では、RasGRP2ポリペプチドまたはその断片に特異的に結合する抗体を含む、血管新生を伴う疾患を治療するための医薬組成物に関する。
本発明はまた、血管新生を阻害する物質をスクリーニングする方法に関する。本発明のスクリーニング方法は、RasGRP2遺伝子が発現している細胞と、被験試料とを接触させ、被験試料の中からRasGRP2遺伝子の発現を阻害する物質を選択することを特徴とするものである。RasGRP2遺伝子の発現を測定する方法については、上記のとおりである。
本発明はまた、動物細胞をアクチビンおよびアンジオポエチンで処理することにより、血管内皮細胞を誘導する方法、ならびにアクチビンおよびアンジオポエチンを含む血管内皮細胞を誘導するためのキットに関する。アクチビンおよびアンジオポエチンによる処理は、同時に行ってもよいし、逐次的に行ってもよい。アクチビンとしては好ましくはアクチビンAを用い、アンジオポエチンとしては、好ましくはアンジオポエチン2を用いる。
1)受精卵の準備
受精卵の採取16時間前、アフリカツメガエルの雄および雌の皮下に、各々600IUのゴナトトロピンを注射し自然交配によって受精卵を得た。該受精卵を4.5%L−システイン塩酸塩(pH7.8)を含有したSteinberg氏液(58mM NaCl、0.67mM KCl、0.34mM Ca(NO3)2・4H2O、0.83mM MgSO4・7H2O、3.0mM HEPES)を用いて脱ゼリーした後に20℃条件下に置いて胞胚期(Nieuwkoop and Faberのステージ表によるステージ9)になるまで発生を継続した。
胞胚期(ステージ9)の胚より、卵膜をピンセットを用いて剥離した後に0.6mm×0.6mmの大きさの未分化予定外胚葉領域(アニマルキャップ)の断片を5枚切り出し、3%寒天上にSteinberg氏液を満たしたシャーレ内で、CaおよびMgを含まないSteinberg氏液(CMF−Steinberg氏液)を用いたピペッティングにより細胞を解離させた。
Steinberg氏液中で発生させた未処理の正常胚(ステージ23)の腹部を切開し、該切開部位に、再集合培養を行った集合体の4分の1ずつを移植し、その後、Steinberg氏液中で発生を継続した。
cDNA断片をクローニングして作製したプラスミドを制限酵素SpeIまたはSacIIで消化し、それをT7RNAポリメラーゼもしくはSp6RNAポリメラーゼを用いてRNAの合成を行い、プローブとした。このとき、基質には10×DIG RNA labeling mix(Roche社製)を使用した。
培養3日目の集合体または移植後3日目の移植胚を10%中性緩衝ホルマリン液中で固定した後に、70〜100%のエタノールを用いて脱水し、引き続きレモゾールを用いて脱脂して、パラフィンによる包埋を行い、厚さ6μmのパラフィン包埋切片を作製した。該パラフィン包埋切片をAPSコートを施したスライドガラスに貼付し、in situハイブリダイゼーションの試料とした。In situハイブリダイゼーションは、自動in situハイブリダイゼーション検出システム・ベンタナHAシステムディスカバリー(Ventana Medical System社製)を使用した。該in situハイブリダイゼーションの実施に際して、リボマップキットおよびブルーマップキットを使用した。このとき、アルカリホスファターゼ標識抗DIG抗体およびNBT/BCIPを用いて検出を行った。
2〜3日間発生させた後、正常胚を10%中性緩衝ホルマリン液中で固定した後に、100%メタノールを用いて脱水した。脱水した後に、Tween20を含むPBS溶液と置き換え、95℃で変性させて、4%パラホルムアルデヒドで再度固定した。再固定後、再度Tween20を含むPBS溶液と置き換えて試料とし、自動whole−mount in situハイブリダイゼーション装置in situ pro(ABIMED社製)に適用した。発色にはBMパープル(Roche社製)を使用した。
全RNAの抽出は、ISOGEN(ニッポンジーン社製)を使用して実施した。
逆転写反応は、スーパースクリプトファーストストランドシステム(Invitrogen社製)を使用し、ランダムプライマー(Takara社製)を用いた反応を行った。
PCR反応は、Expand long template PCR amplification system(Roche社製)を使用した。使用したプライマーの配列およびアニール温度は以下の通りである。
ヒトRasGRP2(H.RasGRP2):
5’−GAACCAGGATGGCTGCATCA−3’(配列番号5)
5’−CTATTACAAGTGGATGTCAAAC−3’(配列番号6)
アニール温度50℃、35サイクル
G3PDH:
5’−TGAAGGTCGGAGTCAACGGATTTGGT−3’(配列番号7)
5’−CATGTGGGCCATGAGGTCCACCAC−3’(配列番号8)
アニール温度68℃、27サイクル
アフリカツメガエルRasGRP2(X.RasGRP2):
5’−TGTCCGTAGCAATTTTCCCT−3’(配列番号9)
5’−TTACAAACGGTCATCAAATAC−3’(配列番号10)
アニール温度50℃、34サイクル
ODC:
5’−CAGCTAGCTGTGGTGTGG−3’(配列番号11)
5’−CAACATGGAAACTCACACC−3’(配列番号12)
アニール温度55℃、24サイクル
なお、ヒト組織での発現には、ヒトmultiple tissue cDNA panel(BD Biosciences 社製)を鋳型として使用した。また、ヒト癌組織での発現には、ヒト癌組織cDNAパネル(BioChain社製)を鋳型として使用した。
8,091クローンのアフリカツメガエルcDNAから60merのオリゴDNAを貼付したDNAマイクロアレイを作製し、検出に使用した。一方、0.4ng/mLアクチビンA単独処理もしくは0.4ng/mLアクチビンAおよび100ng/mLアンジオポエチン2の共処理を施した集合体を2日間、20℃で培養した後に、全てのRNAを抽出した。該抽出RNAから、Low RNA Inputリニア増幅アンドラベル化キット(アジレント社製)を用い、cy3標識(cyanine 3−CTP(Perkin Elmer社製))およびcy5標識(cyanine 5−CTP(Perkin Elmer社製))で標識したRNAを調製した。ハイブリダイゼーションチャンバに該DNAマイクロアレイおよび該標識RNAを適用し、ハイブリダイゼーションを60℃で17時間実施した。ハイブリダイゼーションの終了後、アジレントマイクロアレイスキャナを使用して解析を行った。
1)アフリカツメガエル胚未分化細胞からの血管内皮細胞の誘導
解離集合体に0.4ng/mLアクチビンA単独処理、または0.4ng/mLアクチビンAおよび100ng/mLアンジオポエチン2の共処理を施すことにより血管内皮様細胞が誘導できるか検討した。その結果、アクチビンA単独処理に比較して、アクチビンAおよびアンジオポエチン2の共処理において、血管内皮細胞のマーカーであるmsrおよびtie2遺伝子の発現が著しく増加していることが判明した。このことより、アクチビンAおよびアンジオポエチン2の共処理によって解離集合体から血管内皮細胞が誘導されたと考えられた(図1)。さらに、赤血球のマーカーであるglobin遺伝子の発現について検討した結果、globin遺伝子の発現はいずれの場合も認められなかった。すなわち、アクチビンAおよびアンジオポエチン2の共処理を行うことにより、血管内皮細胞が誘導される反面、赤血球は誘導されないことが判明し、血管内皮細胞のみを誘導する系を作り出すことができた。この結果、血管の細胞分化や遺伝子解析において有用な実験系が確立された。
0.4ng/mLアクチビンA単独処理、ならびに0.4ng/mLアクチビンAおよび100ng/mLアンジオポエチン2の共処理による遺伝子発現をDNAマイクロアレイを用いて比較して、血管形成に関与する遺伝子の探索を試みた。解離集合体に0.4ng/mLアクチビンA単独処理、または0.4ng/mLアクチビンAおよび100ng/mLアンジオポエチン2の共処理を施した後、48時間経過した時の遺伝子発現量の比較を行った結果、遺伝子発現量において2倍以上の差が認められた遺伝子として57遺伝子が得られた。このうち共処理することにより34遺伝子は発現量が増加し、23遺伝子は発現量が減少した(表1)。
DNAマイクロアレイによる解析の結果で、遺伝子発現量に2倍以上の差が認められた57遺伝子のうち、2倍以上増加したもののなかから筋肉で発現しているものを除いた12遺伝子についてアフリカツメガエル胚における発現部位を特定した。この結果、2遺伝子(xl.9480およびxl.23270)が血管で発現していた(図2)。このうち、xl.23270に関しては、血管新生に関与する遺伝子であると報告されている(Leon H. Parkerら、Nature,428,754−758(2004))。一方、xl.9480に関しては、血管での発現について未だ報告がなされておらず、新たな血管新生のマーカーと考えられた。
該遺伝子xl.9480の血管内での発現部位を詳細に検討するため、人工的に血管および血球を作り出す系を確立すべく、以下の移植実験を試みた。アクチビンA処理をした解離集合体を培養24時間後にアフリカツメガエルの未処理の正常胚(ステージ23)の腹部に移植し、発生を継続した(図3A)。その結果、移植3日後より、移植部位が赤色を呈した(図3B)。この赤色部位が赤血球に起因すること、さらに、この赤血球を囲んでいる細胞が血管内皮細胞であることを確認するため、in situハイブリダイゼーションによりグロビンおよびmsrの発現の有無を検討した(図3C−F)。その結果、赤血球と考えられる細胞にはグロビンによるシグナルが得られ、それを取り囲む細胞にはmsrのシグナルが得られた。すなわち、移植部分には血管内皮細胞に囲まれた赤血球が形成されていたことが明らかとなった。さらに、遺伝子xl.9480がどの部分で発現しているかをin situハイブリダイゼーションにより調べた(図3G−H)。その結果、アフリカツメガエルRasGRP2(X.RasGRP2)の発色は、msr陽性細胞と同じ細胞に見られた。すなわち、X.RasGRP2は血管内皮細胞において発現していることが判明した。
アフリカツメガエル血管内皮細胞において発現が認められたX.RasGRP2が血管新生に関与しているか確かめるため、RasGRP2のmRNAに結合してその翻訳を阻害することが知られているモルフォリノオリゴ(MO)およびそのコントロールとして配列中の5塩基を置換してmRNAへの結合性を失ったモルフォリノオリゴ(5mis−MO)を用いて比較した。受精卵2細胞期の動物極側2ヵ所にMOおよび5mis−MOを各々16ng注入した後、発生を継続し、ステージ9の胚より方法2)と同様の操作で解離集合体を作製した。アクチビンA処理を施している解離集合体を培養24時間後にアフリカツメガエルの未処理の正常胚(ステージ23)の腹部に移植し、発生を継続した(図4)。その結果、移植3日後より、5mis−MO注入胚由来の細胞の移植部位では赤色を呈したのに対し、MO注入胚由来の細胞の移植部位では赤色を呈さなかった。このことより、X.RasGRP2の機能を阻害することによって血管新生が阻害されること、すなわち、アフリカツメガエル血管内皮細胞において発現が認められたX.RasGRP2が血管新生に関与していることが判明した。
アフリカツメガエル血管で新たに発現が認められた遺伝子X.RasGRP2について、発生のどの段階から発現が見られるかをRT−PCR法を用いて検討した(図5)。その結果、発生のステージ24から遺伝子X.RasGRP2が発現していることが判明した。この時期はアフリカツメガエルにおいて血管が形成されてくる時期で、すなわち、血管形成の時期と遺伝子X.RasGRP2の発現が見られる時期が一致していることが判明した。
H.RasGRP2mRNAがヒト組織のどの部位で発現しているかをヒトmultiple tissue cDNA panel(BD Biosciences社製)を用いてPCR法にて検討した(図6)。その結果、ヒトの組織では末梢血、胸腺、脾臓で比較的多く発現が認められた。ヒトの組織においては、特に末梢血に多く発現が認められる。血液中には血管内皮細胞の前駆細胞や幹細胞が存在することが知られており、そのために末梢血で発現が認められたのであろう。また、該H.RasGRP2mRNAについて、ヒト癌組織cDNAパネル(BioChain社製)を用いて正常組織と癌組織で比較検討した結果、上皮性悪性腫瘍や腺癌では発現が著しく低下していることが分った(図7)。一方、良性の腫瘍である髄膜腫ではその発現量の低下は認められなかった。以上のことから、該H.RasGRP2遺伝子の発現を測定することにより、血管新生だけでなく、癌の診断も可能であると推測される。さらに、癌細胞においてこの遺伝子を発現させることにより、癌細胞の異常増殖を抑制することも期待できる。
Claims (17)
- RasGRP2遺伝子の発現を測定することを含む、血管新生および/または血管新生を伴う疾患を検出する方法。
- RasGRP2遺伝子が配列番号1または2の塩基配列で特定される遺伝子である、請求項1記載の方法。
- 血管新生を伴う疾患が、癌、血管性疾患、炎症性疾患、眼内血管新生性疾患、生殖器官系疾患および中枢神経系疾患からなる群から選択される、請求項1または2記載の方法。
- RasGRP2ポリヌクレオチドからなる、血管新生および/または血管新生を伴う疾患を検出するためのマーカー。
- RasGRP2ポリヌクレオチドが配列番号1または2の塩基配列の全部または一部を含むポリヌクレオチドである、請求項4記載のマーカー。
- RasGRP2ポリペプチドまたはその断片からなる、血管新生および/または血管新生を伴う疾患を検出するためのマーカー。
- RasGRP2ポリペプチドが配列番号3または4のアミノ酸配列の全部または一部を含むポリペプチドである、請求項6記載のマーカー。
- RasGRP2ポリペプチドまたはその断片に特異的に結合する抗体を含む、血管新生および/または血管新生を伴う疾患を検出するためのキット。
- RasGRP2ポリヌクレオチドを特異的に増幅するための、少なくとも15塩基長の連続したプライマーまたはRasGRP2ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする少なくとも15塩基長の連続したプローブを含む、血管新生および/または血管新生を伴う疾患を検出するためのキット。
- RasGRP2ポリペプチドまたはその断片に特異的に結合する抗体を含む、血管新生を伴う疾患を治療するための医薬組成物。
- RasGRP2ポリヌクレオチドおよび/またはその誘導体、またはRasGRP2ポリペプチドおよび/またはその誘導体を含む、癌または血管性疾患を治療するための医薬組成物。
- RasGRP2遺伝子が発現している細胞と被験試料とを接触させ、被験試料の中からRasGRP2遺伝子の発現を阻害する物質を選択することを含む、血管新生を阻害する物質をスクリーニングする方法。
- 動物細胞をアクチビンおよびアンジオポエチンで処理することにより血管内皮細胞を誘導する方法。
- アクチビンおよびアンジオポエチンを含む、血管内皮細胞を誘導するためのキット。
- アクチビンおよびアンジオポエチンで処理することにより血管内皮細胞を誘導することを含む、血管新生および/または血管新生を伴う疾患に関連する遺伝子をスクリーニングする方法。
- アクチビンおよびアンジオポエチンを含む、血管新生および/または血管新生を伴う疾患に関連する遺伝子をスクリーニングするためのキット。
- アクチビンおよびアンジオポエチンを含む、癌または血管性疾患を治療するための医薬組成物。
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