JP2006119228A - 遮音吸音構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】断熱遮音材は該建築物や該交通輸送機関の外壁、および隣り合う部屋を仕切る内壁の内部に挿入されている。しかしながら、構造物内部の空間を有効に活用するためには外壁や仕切り壁の構え厚さが厚くなりすぎることは好ましくない。遮音性能を保ちつつ重量と施工性の悪化を抑え、且つ、低コストで構え厚さの薄い遮音吸音構造を提供する。
【解決手段】樹脂や金属箔など振動が伝わりにくい柔軟な材質で構成された袋状の容器にヘリウムなど周囲よりも音速の早い気体を封入した構造からなる音響反射装置30と、前記同様に振動が伝わりにくい柔軟な材質で構成された容器の内部に二酸化炭素など周囲よりも音速の遅い気体、もしくは加熱空気など密度の小さい気体を充填させた遮音吸音装置20とを作り、前記音響反射装置30と前記遮音吸音装置20とを組み合わせることによって達成される。
【選択図】図31
【解決手段】樹脂や金属箔など振動が伝わりにくい柔軟な材質で構成された袋状の容器にヘリウムなど周囲よりも音速の早い気体を封入した構造からなる音響反射装置30と、前記同様に振動が伝わりにくい柔軟な材質で構成された容器の内部に二酸化炭素など周囲よりも音速の遅い気体、もしくは加熱空気など密度の小さい気体を充填させた遮音吸音装置20とを作り、前記音響反射装置30と前記遮音吸音装置20とを組み合わせることによって達成される。
【選択図】図31
Description
本発明は、鉄道車両、航空機、建築物、エレベーターなどの遮音に用いられる遮音吸音装置に関するものである。
ビルや住居などの建築物や、電車や航空機、エレベーターなどの交通輸送機関において、主に外部および隣接空間からの騒音や熱の出入りを遮断することを目的として断熱遮音装置が用いられている。
例えば、断熱遮音装置とし建築物や交通輸送車両の外壁、および隣り合う部屋を仕切る内壁内等に挿入されている。
一般的な建築物の断熱遮音構造を図面を用いて説明する。
図1は、建築物に用いられた断熱遮音壁の断面図である。
図1において、一般的な建築物の断熱遮音構造は二枚の表面材料(図ではベニヤ板11で示す)の間に石膏ボード17bや鉄板12、発泡材(ウレタン等)や繊維材料(グラスウール等)に代表されるような多孔質材料17aなどが配置されている。
こうすることで、構造内部の気体の対流を抑制し、あるいは材料および内部空気の摩擦を促進させて断熱や吸音の機能を備えている。
図1は、建築物に用いられた断熱遮音壁の断面図である。
図1において、一般的な建築物の断熱遮音構造は二枚の表面材料(図ではベニヤ板11で示す)の間に石膏ボード17bや鉄板12、発泡材(ウレタン等)や繊維材料(グラスウール等)に代表されるような多孔質材料17aなどが配置されている。
こうすることで、構造内部の気体の対流を抑制し、あるいは材料および内部空気の摩擦を促進させて断熱や吸音の機能を備えている。
さらに材料コストと施工コストを低減するような場合には、図1に示すような構造を簡素化させて図2に示すように、単に二重壁の間に多孔質材料を挟んでも断熱および吸音の効果を持たせることができる。
断熱および吸音性能は、二重壁間の材料やその厚さによって変化し、材料が同じである場合はその厚さが厚いほどよい。しかしながら、構造物内部の空間を有効に活用するためには外壁や仕切り壁の構え厚さが厚くなりすぎることは好ましくない。
断熱遮音構造の別の例として輸送交通機関である高速鉄道車両の断面を図3に示す。
図3において、鉄道車両の断面は強度部材である外構体13、内装材14および主に断熱遮音の目的で上記構体13と内装材14の間に挿入された多孔質材料17で構成されている。
図3において、鉄道車両の断面は強度部材である外構体13、内装材14および主に断熱遮音の目的で上記構体13と内装材14の間に挿入された多孔質材料17で構成されている。
高速鉄道車両など輸送交通機器ではその走行性能、運転性能を向上させる目的や、周辺環境の振動を低減する目的から軽量化が必要とされており、その構成要素である断熱遮音材17についても重量の低減が求められる。また、輸送交通機関における構造の構え厚さについては、輸送能力や快適性などに大きく影響するため、建築物よりも一層な薄肉化が求められる。
基本的な断熱のメカニズムについて説明する。空気中に多孔質材料が存在すると空気の粘性のために空気の運動に対して抵抗となり、この内部の空気の流動は妨げられる。従って流動抵抗が大きくなればなるほど、対流による熱の移動が起こりにくくなり、空気の熱伝導のみによる熱伝達となって熱が伝わりにくくなる。これが多孔質材料の断熱材による断熱メカニズムである。このメカニズムから判るとおり、断熱層が厚くなればなるほど、反対側への熱の伝達は小さくなり断熱性能が向上する。
これに対し図4に示す真空断熱材18は、気体を通しにくい材質でできた袋15を用いて多孔質材料17を封入し、内部の空気を抜いて真空にすることで空気の熱伝達をも低減して断熱性能を持たせることを原理としたもので、これによって薄い構え厚さで、従来と同等の断熱性能を得ることが可能となっている。
真空断熱材18については、例えば下記特許文献2、3、および非特許文献2に記載されている。しかしながら、遮音性に関してはあまりよくないという欠点を持っている。これは大気圧中においても内部の真空を保持するため表裏面を内側から支えている多孔質材料17が硬く収縮していることによって、振動が固体伝播によって反対側へ伝播しやすいためである。
基本的な遮音のメカニズムについて図5により説明する。
遮音とは伝播してきた騒音の一部が遮音壁や遮音材料で反射され、残りのうちの一部がさらに遮音材内部で消散することによって反対側へのエネルギーの透過を少なくするものである。一般に単層壁の遮音性能は質量則と呼ばれる法則に従う。これは単層遮音壁の遮音性はその単層遮音壁の質量に比例するというもので、このことからも遮音性を向上するためには、基本的に遮音壁の重量を増加させるとよいことが判る。しかしながらこの質量則によれば重量を二倍にしても6dBの遮音性改善にしかならない。
遮音とは伝播してきた騒音の一部が遮音壁や遮音材料で反射され、残りのうちの一部がさらに遮音材内部で消散することによって反対側へのエネルギーの透過を少なくするものである。一般に単層壁の遮音性能は質量則と呼ばれる法則に従う。これは単層遮音壁の遮音性はその単層遮音壁の質量に比例するというもので、このことからも遮音性を向上するためには、基本的に遮音壁の重量を増加させるとよいことが判る。しかしながらこの質量則によれば重量を二倍にしても6dBの遮音性改善にしかならない。
これに対して、遮音壁を二重としてその内部に吸音材を入れることで重量を大幅に増やすことなくしてさらなる遮音性を獲得する方法もある。これを二重壁効果と呼んでいる。二重壁効果については下記非特許文献1に詳しく記載されているが、そのメカニズムについて図6により説明する。
まず、音源から入射した騒音が音源側の壁に入射し、音源側の壁に入射した騒音のうちの一部は反射され、残りの一部は音源側の壁内部で消散し、その残りが二重壁間の空間に放射される。二重壁間に放射された騒音は多孔質材料17等で構成された吸音材により吸音され、吸音されずに受音側の壁に到達した騒音のエネルギーもその一部がまたさらに反射される。また、残りの一部は受音側の壁内部で消散し、最後に残ったものが反対側へ透過する。
このようにして二重壁は単層壁に比べて格段に効率良く騒音エネルギーを反射・吸収するため、遮音性能が上がり、前述の通り一般的な建築物の断熱遮音構造などによく用いられる。このメカニズムからも判るとおり、二重壁遮音構造は断熱性能と同様に、遮音層が厚くなればなるほど反対側への騒音の伝達は小さくなって遮音性能は向上する。
従来の断熱遮音材としては、例えば多孔質材料17或いは真空断熱材18を用いたものがある。
しかしながら、多孔質材料17を用いた断熱遮音剤の遮音性や断熱性を向上させるには、その分厚くしなくてはならず、そのために建築物や交通輸送機関などの内部空間を広く取ることができないという問題が発生する。
しかしながら、多孔質材料17を用いた断熱遮音剤の遮音性や断熱性を向上させるには、その分厚くしなくてはならず、そのために建築物や交通輸送機関などの内部空間を広く取ることができないという問題が発生する。
また、真空断熱材18を用いた場合には、薄い壁でありながら高い断熱性能を得ることができるが、遮音性能は劣るという問題点がある(これらの関係をまとめたのが図7である)。
本発明の目的は、遮音性能を保ちつつ重量と施工性の悪化を抑え、且つ、低コストで構え厚さの薄い遮音吸音構造を提供することにある。
上記目的は、内部に多孔質材が封入された柔軟な容器と、この容器の前記内部にこの容器の周囲音速よりも遅い音速の気体を充填した遮音吸音装置であることにより達成される。
また、上記目的は、前記気体は前記容器の周囲密度よりも小さい密度の気体であることにより達成される。
また、上記目的は、前記容器の表面に多孔質材料を接続したことにより達成される。
また、上記目的は、音響減衰材と音響反射材とを備え、この音響減衰材と該音響反射材との間に形成された所定の空間に、内部に多孔質材が封入された柔軟な容器であって、この容器の前記内部にこの容器の周囲音速よりも遅い音速の気体を充填した前記容器を挿入したことにより達成される。
また、上記目的は、前記気体は前記容器の周囲密度よりも小さい密度の気体であることにより達成される。
また、上記目的は、前記音響減衰材と前記音響反射材との間の空間が密閉空間となっていることにより達成される。
また、上記目的は、内部に多孔質材が封入された柔軟な容器と、この容器の前記内部にこの容器の周囲音速よりも早い音速の気体を充填した音響反射装置であることにより達成される。
また、上記目的は、前記遮音吸音装置と前記音響反射装置とを組み合わせる構造であって、外側は前記音響反射装置が来るように前記遮音吸音装置と前記音響反射装置を交互に組み合わせた多層構造であることにより達成される。
また、上記目的は、前記遮音吸音装置と前記音響反射装置の境界面が凹凸に嵌合するように形成したことにより達成される。
また、上記目的は、前記遮音吸音装置と前記音響反射装置との隣り合う境界面は平面状に密着することによって、二つの形状パターンを持った境界面が騒音の透過する方向に沿って交互に存在することにより達成される。
また、上記目的は、前記遮音吸音装置と前記音響反射装置の境界面を凸凹に形成する際の角度が、凸凹がない場合の法線方向に対して2α以上であるように形成したことにより達成される。
また、上記目的は、前記遮音吸音装置若しくは音響反射装置を鉄道車両の構体と内装の間の空間に挿入したことにより達成される。
また、上記目的は、前記遮音吸音装置を車両床下の台車部、床下機器部或いは車室内の棚部に配置したことによって達成される。
本発明によれば、遮音性能を保ちつつ重量と施工性の悪化を抑え、且つ、低コストで構え厚さの薄い遮音構造を提供することができる。
以下、本発明の一実施例を図を用いて説明する。
まず、本発明の原理についていくつかの図を用いて説明する。
図8は、二重壁内部の気体と遮音特性との関係についてまとめたものである。二重壁間に空気と異なるものを封入した場合に、空気を封入した場合に比べて遮音性が向上する効果および作用は二つ存在する。全反射効果と二重壁効果の促進作用である。
まず、本発明の原理についていくつかの図を用いて説明する。
図8は、二重壁内部の気体と遮音特性との関係についてまとめたものである。二重壁間に空気と異なるものを封入した場合に、空気を封入した場合に比べて遮音性が向上する効果および作用は二つ存在する。全反射効果と二重壁効果の促進作用である。
全反射効果について図9により説明する。図は空気から空気よりも音速が軽いヘリウムへ音波が進入したときの音場解析結果を示しており左半分が入射角20゜の場合、右半分が入射角30゜の場合をあらわしている。音速の違う媒質に音波が入射した場合、その一部は反射し、残りの音波は屈折してその進行方向が変化する。入射角と透過角はスネルの法則と呼ばれる関係に従う。スネルの法則に依れば、音速の速い媒質から音速の遅い媒質へ音波が入射する場合には進行方向と境界面の垂直方向が成す角が小さくなるように曲がる(進行方向が突っ立つ)。このため、どんなに浅い角度で入射した音波も、音速の遅い媒質へ透過する際にはある一定の角度の範囲内で透過される。逆に、音速の遅い媒質から音速の速い媒質へ音波が入射する場合には進行方向と境界面垂直方向の成す角が大きくなるように曲がる(進行方向が寝る)。このため、ある浅い角度で入射した音波は境界面上を進むように透過し、それよりもさらに浅い入射角で入射した音波は全反射して音波のエネルギーが反対側へ伝わらなくなる。屈折と全反射の境目となる入射角は臨界角とよばれ、ヘリウムと空気の場合では20.5゜、ヘリウムと二酸化炭素の場合で15.5゜である。このような全反射効果は、図8のように二重壁内部に周囲の媒質よりも音速の速い媒質を封入したときに発生する。
二重壁間に空気と異なるものを封入した場合に遮音性が向上するもう一つの効果である二重壁効果の促進作用について図10および図11により説明する。
図10は板厚3mmのアルミ板二枚の間に圧力の異なる空気を封入した場合の透過損失の理論値を示している。
透過損失とは入射音のエネルギーと透過音のエネルギーとの比で、数字が大きいほど遮音性がよいことを示す指標である。図において、1atmの空気では140Hz近辺に遮音性の悪くなる個所が存在する。これは二重壁間で音波が反射共鳴しているためである。この現象は共鳴透過と呼ばれ、二重壁では必ずこの共鳴透過によって遮音性の落ち込む周波数が存在する。共鳴透過周波数よりも高い周波数帯域では、質量則よりも遮音性がよくなる。これを二重壁効果とよんでおり、この周波数領域において二重壁にすることにより単層壁に比べて同じ重量でも、より大きな遮音性を獲得することができる。図より二重壁間媒質の圧力が低いほど共鳴透過周波数を低周波数側へ移すことができ、低い周波数から二重壁効果を得られることがわかる。
図10は板厚3mmのアルミ板二枚の間に圧力の異なる空気を封入した場合の透過損失の理論値を示している。
透過損失とは入射音のエネルギーと透過音のエネルギーとの比で、数字が大きいほど遮音性がよいことを示す指標である。図において、1atmの空気では140Hz近辺に遮音性の悪くなる個所が存在する。これは二重壁間で音波が反射共鳴しているためである。この現象は共鳴透過と呼ばれ、二重壁では必ずこの共鳴透過によって遮音性の落ち込む周波数が存在する。共鳴透過周波数よりも高い周波数帯域では、質量則よりも遮音性がよくなる。これを二重壁効果とよんでおり、この周波数領域において二重壁にすることにより単層壁に比べて同じ重量でも、より大きな遮音性を獲得することができる。図より二重壁間媒質の圧力が低いほど共鳴透過周波数を低周波数側へ移すことができ、低い周波数から二重壁効果を得られることがわかる。
図11は板厚3mmのアルミ板二枚の間に音速の異なる媒質を封入した場合の透過損失の理論値を示している。二重壁間媒質の音速を早くすることで先ほど説明した全反射効果によって、全帯域において遮音性が上昇する。共鳴透過周波数については壁間媒質の音速を上げることで、高周波側へ移る。逆に、壁間媒質の音速を遅くした場合では、共鳴透過周波数は低周波側へ移り、二重壁効果を低い周波数から得ることができるようになる。さらに、共鳴透過周波数の帯域が狭まることによって、共鳴透過周波数よりも高周波側においては周波数に関して二重壁効果が急速に促進されていることがわかる。ちなみに、一般に音速の遅い媒質は密度が大きく断熱性能もよい。
これらをまとめると、先ほどの図8のようになり、全反射を促進する場合は音速の速い媒質を、二重壁効果を促進する場合は音速が遅く、密度の小さな媒質を封入すればよいことになる。
これらの効果・原理を応用した例として、以下実施例を説明する。
図12、図13に本発明の実施例を示す。図12は本発明の実施例の遮音吸音装置20を表しており、図13は図12の断面を示したものである。図のように、樹脂や金属箔など気体を通しにくい材質で構成された袋21に、ウレタン等の発泡材やグラスウールなどの繊維材料に代表されるような多孔質材料17を封入し、該袋内部の空気を取り除いた後、前述のように二重壁効果を促進しやすい気体22、たとえば二酸化炭素などのような空気よりも音速の遅い気体や、減圧した空気などを充填させて遮音吸音装置20を形成する。これにより、二重壁効果を促進し、遮音性が向上する。また、音速の遅い気体は一般に密度が大きく熱伝導率が小さいため、音速の遅い気体を封入することで断熱性能も増加する。
図14〜図17により本発明の別の実施例を説明する。図14および図15は多孔質材料を用いた一般的な吸音装置の構造を示している。吸音装置とは音波が入射した際に、そのエネルギーをなるべく多く吸収して、反射するエネルギーを低減することを目的とした装置のことである。一般的な方法としては、音波がよく反射するような音響反射材26を設け、ここからある距離だけ離れたところに吸音材料17を置くようにして構成される。この音響反射材26と吸音材料17間のスペース24を背後空気層と呼んでいるが、この背後空気層24の厚さは吸音したい周波数に対応する音波の波長の1/4程度にするのがもっともよい。従って、吸音したい周波数が低周波であるほど空気層は厚くとらねばならない。これに対して、この背後空気層24の媒質である空気を、より音速の小さな媒質に変更することができれば、その媒質内での波長を短くすることができるため、同じ厚さでもより低い周波数で吸音性能を持たせることができる。
そこで図16、図17のように、先ほど実施例1で説明したような遮音吸音装置20をこのような一般的な吸音装置の背後空気層24内に挿入して遮音吸音装置20を構成する。
これにより同じ厚さでも、低い周波数から吸音性能を引き出すことができる。また、図18のように気体の透過しにくい材料でできた音響エネルギー減衰材27と振動が伝わりにくい柔軟な材質で構成された容器21で構成したものを、この間の空間が密閉構造となるように形成し、この密閉空間内部に周囲よりも音速の遅い気体22もしくは密度の小さい気体22で充填させてもよい。
これにより同じ厚さでも、低い周波数から吸音性能を引き出すことができる。また、図18のように気体の透過しにくい材料でできた音響エネルギー減衰材27と振動が伝わりにくい柔軟な材質で構成された容器21で構成したものを、この間の空間が密閉構造となるように形成し、この密閉空間内部に周囲よりも音速の遅い気体22もしくは密度の小さい気体22で充填させてもよい。
図19、図20に本発明の別の実施例を示す。図19は本発明の実施例の遮音装置40を表しており、図20は図19の断面を示したものである。図のように、樹脂や金属箔など気体を通しにくい材質で構成された袋21に、ウレタン等の発泡材やグラスウールなどの繊維材料に代表されるような多孔質材料17を封入し、該袋内部の空気を取り除いた後、前述のように音波の全反射を促進しやすい気体32、すなわちヘリウムなどのような空気よりも音速の速い気体を充填させて音響反射装置30を形成、実施例1で説明したような遮音吸音装置20を該音響反射装置30と重ねて構成する。このとき、音響反射装置30が騒音の入射してくる方向を向いていると、入射した騒音は、まずこの音響反射装置30でその一部が反射される。また、音響反射装置30を透過した騒音も吸音装置20により二重壁効果が促進された壁間で吸音され、ごく一部が反対側へ透過する。これにより、薄い厚さで高い遮音性能を得ることができる。また、実施例1で説明した遮音吸音装置20は断熱性能もよいため、このようにして構成される遮音装置40もまた高い断熱性能が期待される。
実施例3と同様に音響反射装置30と遮音吸音装置20を組み合わせる方法として、図21、図22のように遮音吸音装置20を音響反射装置30で挟み込むように構成してもよい。
実施例3と同様に音響反射装置30と遮音吸音装置20を組み合わせる方法として、図23、図24のように多層化してもよい。このときも、音響反射装置30が外側に来るようにして互い違いに配置されていることが望ましい。
理論的には多層化すればするほど遮音性は増してくるが、その分、遮音吸音装置20や音響反射装置30同士の隙間からの騒音の漏れが卓越してくる。このためこの隙間を塞ぐ方法として、図23に示すように音響反射装置30と遮音吸音装置20を少しずつずらしながら接着し、これを一つのモジュールとしてこれらを組み合わせる方法がある。こうすることにより、音響反射装置30および遮音吸音装置20それぞれの部分がオーバーラップされて重なることで、これらの隙間を狭くして、隙間からの騒音の漏れを低減することができる。
気体を封じ込める袋を製作する方法としては、図23のように、それぞれ別々の袋を作りこれに気体を封入してこれらを接着する方法もあるが、多層化すると工程が増える懸念がある。この問題を回避する方法として図24のように、まずは間に多孔質材料17を挟みながらシートを二枚重ねることで最下段の袋を形成し、これに多孔質材料17を置いてさらにシートを重ねることで二段目の袋を形成する。これらの作業を繰り返し、最終的に数枚のシートを一緒にヒートシールなどの方法で接着し袋をとじる方法も有効である。
多層化する場合の更なる遮音性向上の方法として、遮音吸音装置20と音響反射装置30の境界面をのこぎりの歯のようにギザギザにする方法がある。このようにして得られる遮音性向上は音波のプリズム効果によるものである。音波のプリズム効果について具体的なメカニズムと実施例を図25〜図31により説明する。図25は音速の小さな媒質から音速の大きな媒質へ音波が入射したときに、音波が屈折、反射することを説明する図である。前述のように、音速が遅い媒質から音速が速い媒質へ音波が入射するときには、進行方向と境界面垂直方向の成す角が大きくなるように屈折する(進行方向が寝る)。このため、臨界角よりも大きな角度で入射した音波は全反射して音波のエネルギーが反対側へ伝わらなくなる。図26は音速の小さな媒質から音速の大きな媒質へ音波が入射したときに、音波が屈折、反射することを説明する図である。音速の速い媒質から音速の遅い媒質へ音波が入射する場合には、進行方向と境界面の垂直方向が成す角が小さくなるように曲がる(進行方向が突っ立つ)。このため、どんなに浅い角度で入射した音波も、音速の遅い媒質へ透過する際には臨界角以内の角度で透過する。このため、図27のように音速の大きな媒質がプリズム型の形状をした領域に存在する場合、プリズムを透過する音波は、プリズム後面に垂直な方向から臨界角分の範囲で示される角度の中でしか透過しない。従って、この背後にさらに音速の速い層がプリズム前面と平行な面状にあった場合、この背後平行層で全反射せずに入射できる音波の入射角は図28の右側の図で示される角度に限定される。図28はプリズム後面で透過してくる音波の可能な角度と、背後平行層に入射可能な角度の両方を満たす角度を示したものである。図29は音速の速い媒質としてヘリウムを考え、ヘリウムプリズム領域と背後ヘリウム平行層が存在したときの騒音伝播の解析結果である。このようにして、図に示すような構造に左から入射した音波は、まずプリズム前面でその一部が反射し、残りもほとんどが背後平行層で反射されて、平行層に入射することができる音波はごくわずかとなる。
この音波のプリズム効果を応用し、構造として適用したものを図30、図31に示す。実施例3〜7で説明したような音響反射装置と遮音吸音装置を組み合わせた構造において、音響反射装置30と遮音吸音装置20をそれぞれ図30のような形状で形成して組み合わせる。図30は三層の場合であるが、より多層構造にする場合は図31のようにして構成する。これにより先ほど述べた音波のプリズム効果で音波の反射を促進しながら、その間の遮音吸音層で効率よく吸音され、遮音性能の高い構造が薄い構え厚さで実現される。実施例7で説明した多重ヒートシール制作方法でも、本実施例のように、その境界面をのこぎりの歯のようにギザギザにして、音響反射装置30と遮音吸音装置20が互いに凸凹に嵌合することにより同様の効果がある。境界面の形状を二次元的な凸凹ではなく、図32のように三次元的なものにすれば、どの角度からの音波についてもプリズム効果が得られるため、さらなる遮音性能が見込まれる。厚さが足りない場合は図33のように格子状にくりぬかれた多孔質材料で構成される遮音吸音装置20に音響反射装置30を嵌め込んでも良い。
実施例8で示したプリズム効果を最大限に発揮するにはプリズム後面の角度を前面の角度から臨界角の二倍の角度分だけずらせばよい。臨界角は音響反射装置内部の媒質32の音速をC1、遮音吸音装置内部の媒質22の音速をC2としたとき、(C2/C1)のアークサインで表される角度で、前述のようにヘリウムと空気の場合で約21゜、ヘリウムと二酸化炭素の場合で約16゜である。これにより、図28で示されるプリズム後面で透過してくる音波の可能な角度と、背後平行層に入射可能な角度の両方を満たす角度は存在しなくなる。
図34は鉄道車両の断面を示したもので、ここまでの実施例のようにして形成された遮音装置40および遮音吸音装置20を鉄道車両に適用した実施例を示す。鉄道車両に適用する場合は屋根構体と天井部内装の間、腰部構体と腰部内装、床構体と車内床の間には、たとえば実施例8で示されるような遮音装置40を配置する。また、車内荷棚部や車外床下台車部には、たとえば実施例2のような遮音吸音装置20を配置する。これにより床下から発生する転動音をその場で低減し、また車室内への騒音の進入を押さえ、さらに車室内に進入した騒音を効率的に吸音して低減することができる。
図35、図36は屋外において騒音を発生させる場所を遮音する場合の実施例である。たとえば図35は工事現場71を表しており、ここから発生する騒音を実施例8で説明した遮音装置40で遮音した例である。
この場合、遮音装置40は音響反射装置30部分、音吸音装置20部分共に内部に気体のみを封入することとし、さらに、その気体も現場で注入することとする。このようにすることによって、非常にコンパクトにした状態で本遮音装置40を現場へ持ち込むことができ、また、音響反射装置30に空気よりも軽い気体を封入すれば、浮力が発生するため、床設置部のみ固定すれば支持装置がなくとも自立することができる。さらに、工事作業終了後は内部の気体を抜いて再びコンパクトに撤去することができる。このような使用方法により、工事現場付近の住民の騒音公害を低減することができる。同様な使用方法としては図35に示すように、臨時仮設のイベント会場72から出る騒音が付近の民家に届かないように遮音することも可能である。
この場合、遮音装置40は音響反射装置30部分、音吸音装置20部分共に内部に気体のみを封入することとし、さらに、その気体も現場で注入することとする。このようにすることによって、非常にコンパクトにした状態で本遮音装置40を現場へ持ち込むことができ、また、音響反射装置30に空気よりも軽い気体を封入すれば、浮力が発生するため、床設置部のみ固定すれば支持装置がなくとも自立することができる。さらに、工事作業終了後は内部の気体を抜いて再びコンパクトに撤去することができる。このような使用方法により、工事現場付近の住民の騒音公害を低減することができる。同様な使用方法としては図35に示すように、臨時仮設のイベント会場72から出る騒音が付近の民家に届かないように遮音することも可能である。
10…遮音構造、11…ベニヤ板、12…鉄板、13…外構体、14…内装材、15…金属蒸着樹脂フィルム、17…多孔質材料、17a…グラスウール、17b…石膏ボード、18…真空断熱材、20…遮音吸音装置、21…ガス封止装置、22…二重壁効果促進気体、24…空気層、25…穴あき板、26…音響反射材、27…音響エネルギー減衰材、30…音響反射装置、32…音響全反射促進気体、40…遮音装置、70…騒音源、71…工事現場、72…スタジアム、80…民家。
Claims (13)
- 内部に多孔質材が封入された柔軟な容器と、この容器の前記内部にこの容器の周囲音速よりも遅い音速の気体を充填したことを特徴とする遮音吸音装置。
- 請求項1に記載の遮音吸音装置において、
前記気体は前記容器の周囲密度よりも小さい密度の気体であることを特徴とする遮音吸音装置。 - 請求項1および2に記載の遮音吸音装置において、
前記容器の表面に多孔質材料を接続したことを特徴とする遮音吸音装置。 - 音響減衰材と音響反射材とを備え、この音響減衰材と該音響反射材との間に形成された所定の空間に、内部に多孔質材が封入された柔軟な容器であって、この容器の前記内部にこの容器の周囲音速よりも遅い音速の気体を充填した前記容器を挿入したことを特徴とした遮音吸音装置。
- 請求項4に記載の遮音吸音装置において、
前記気体は前記容器の周囲密度よりも小さい密度の気体であることを特徴とする遮音吸音装置。 - 請求項4及び5に記載の遮音吸音装置において、
前記音響減衰材と前記音響反射材との間の空間が密閉空間となっていることを特徴とする遮音吸音装置。 - 内部に多孔質材が封入された柔軟な容器と、この容器の前記内部にこの容器の周囲音速よりも早い音速の気体を充填したことを特徴とする音響反射装置。
- 請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記遮音吸音装置と前記音響反射装置とを組み合わせる構造であって、外側は前記音響反射装置が来るように前記遮音吸音装置と前記音響反射装置を交互に組み合わせた構造であることを特徴とする遮音装置。 - 請求項8の遮音装置において、
前記遮音吸音装置と前記音響反射装置の境界面が凹凸に嵌合するように形成したことを特徴とする遮音装置。 - 請求項9の遮音装置において、
前記遮音吸音装置と前記音響反射装置のある境界面は凹凸に嵌合するように形成し、それと隣り合う境界面は平面状に密着することによって、二つの形状パターンを持った境界面が騒音の透過する方向に沿って交互に存在することを特徴とした遮音装置。 - 請求項9および請求項10の遮音装置において、
音響反射装置内部の媒質32の音速をC1、遮音吸音装置内部の媒質の音速22をC2としたとき、(C2/C1)のアークサインで表される角度であって、前記遮音吸音装置と前記音響反射装置の境界面を凸凹に形成する際の角度が、凸凹がない場合の法線方向に対して2α以上であるように形成したことを特徴とする遮音装置。 - 請求項1乃至11のいずれかにおいて、
前記遮音吸音装置若しくは音響反射装置を構体の内装として取り付けたことを特徴とする鉄道車両。 - 請求項12の鉄道車両において、
前記遮音吸音装置や音響反射装置を車両床下の台車部、床下機器部或いは車室内の棚部に配置したことを特徴とする鉄道車両。
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