JP2006117896A - セルロースエステル及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 光学的等方性などの光学的特性を著しく向上するのに有用なセルロールエステルおよびフィルムを提供する。
【解決手段】 セルロースエステルにおいて、総平均置換度が2.90〜2.965であり、グルコース単位の2位および3位の平均置換度の合計が1.97以上であり、かつ組成分布半値幅が、置換度単位で0.09以下となるように調整する。このようなセルロースエステルは、硫酸触媒の存在下で、セルロースをアシル化剤でアシル化するアシル化工程(i)と、硫酸触媒の存在下で熟成する熟成工程(ii)とを含むセルロースエステルの製造方法であって、前記アシル化工程(i)において、セルロース100重量部に対して、硫酸触媒6.5〜9.5重量部の存在下で、セルロースのヒドロキシル基1モルに対して1.40〜2.0モル当量のアシル化剤を用いてアシル化することにより製造できる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、フィルム(特に、偏光板の保護フィルム、カラーフィルタ、写真感光材料のフィルムなどの光学フィルム)を形成するのに有用なセルロースエステルとその製造方法、並びにセルロースエステルで構成されたフィルムに関する。
セルロースエステルは光学的特性に優れるため、写真感光材料の支持体、液晶表示装置の偏光板保護フィルム、位相差フィルムやカラーフィルタなどとして利用されている。このような光学フィルムにおいて、セルロースエステルを構成するグルコース単位の置換位置に対するアシル基の影響についても検討されている。
このようなセルロースエステルのうち、セルロースアセテート、特にセルローストリアセテートが広く用いられている。セルローストリアセテートは特に溶解性に乏しく、セルローストリアセテートを溶解させる溶媒として、実用的に使用できる溶媒は、実質的に塩化メチレンに限定されていた。さらに、セルロースアセテートの置換度により、溶解性が変化するため、塩化メチレンを溶媒に用いた場合であっても、置換度(総置換度)が2.7〜2.9、酢化度では59〜61%のものが用いられてきた。すなわち、完全置換物に近いもの、すなわち、総置換度で2.9を越えるような三置換物に近いセルローストリアセテートは、溶解性の点で実質的に使用できなかった。
例えば、特開平11−5851号公報(特許文献1)には、2位、3位及び6位のアセチル置換度の合計が2.67以上(例えば、2.77以上)であり、かつ2位及び3位のアセチル置換度の合計が1.97以下であるセルロースアセテートを含むフィルムが開示されている。この文献には、上記セルロースアセテートを用いると冷却溶解法により、非ハロゲン系溶媒を使用しても、安定な溶液を調製でき、流延法により厚み方向のレタデーション値が小さく偏光板保護膜として適したフィルムが得られることが記載されている。
特開2002−212338号公報(特許文献2)には、2位、3位のアシル置換度の合計が1.70〜1.90であり、かつ6位のアシル置換度が0.88以上であるセルロースアシレート及びそのフィルムが開示されている。特開2002−265501号公報(特許文献3)には、2位、3位及び6位のアシル置換度の合計が2.67以上であり、2位及び3位のアシル置換度の合計が1.97以下であり、−0.1≦(3位のアシル置換度−2位のアシル置換度)≦0.3であるセルロースアシレートが開示されている。この文献には、2位、3位のアシル置換度の合計が1.70〜1.90であり、かつ6位のアシル置換度が0.88以上であり、−0.1≦(3位のアシル置換度−2位のアシル置換度)≦0.3であるセルロースアシレートも開示されている。これらの文献には、経時安定性に優れ、実用的な濃度領域で粘度の低いセルロースアシレート溶液が得られるとともに、流延法により表面平滑性の高いフィルムが得られることが記載されている。
特開2002−309009号公報(特許文献4)には、2位と3位とのアシル置換度の合計が1.7〜1.95であり、かつ6位のアシル置換度が0.88以上であるセルロースアシレートと、2位と3位とのアシル置換度の合計が1.7〜1.95であり、かつ6位のアシル置換度が0.88未満であるセルロースアシレートとの混合ポリマーで構成されたセルロースアシレートフィルムが開示されている。特開2003−105129号公報(特許文献5)には、全アシル置換度が2.7〜2.9であり、炭素数3〜22のアシル基の置換度が0.4〜2.5であり、6位のアシル置換度が0.9未満のセルロースアシレートと、全アシル置換度が2.75〜2.9であり、炭素数3〜22のアシル基の置換度が0.0〜0.4であり、6位のアシル置換度が0.9以上のセルロースアシレートとを含むセルロースアシレートフィルムが開示されている。これらのセルロースアシレートを用いると、溶解性が高く、溶液粘度の低いドープを得ることができる。
特開2002−338601号公報(特許文献6)には、セルロースを溶媒中で触媒の存在下、酢酸又は無水酢酸と反応させてセルロースアセテートを合成する工程、セルロースアセテートを、アセチル基供与体、アセチル基供与体の0.1〜10モル%の水又はアルコール及び触媒の存在下で熟成させる工程からなるセルロースアセテートの製造方法(請求項1)、2位、3位および6位のアセチル置換度(それぞれ、2DS、3DS、6DS)が、2DS+3DS>1.80、3DS<2DS、6DS>0.80を満たすセルロースエステル(請求項4)が開示されている。例えば、実施例15では、2DS=0.973、3DS=0.967、6DS=0.967であるセルロースアセテートを得ている。この文献には、2−位及び3−位のアセチル置換度の合計と、6−位のアセチル置換度とを調整できると共に、2−位のアセチル置換度と3−位のアセチル置換度も調整でき、有機溶媒に対する溶解性とドープの粘度を調整でき、光学的特性に優れるフィルムが得られることが記載されている。
このように、グルコース単位に置換するアシル基を調整することにより、セルロースエステルフィルム(特にセルロースアセテートフィルム)の光学的特性を向上させる種々の試みがなされており、より一層の光学的特性(特に光学的等方性)の向上が求められている。また、塩化メチレンのような含ハロゲン系溶媒を用いることなく、一般的な非ハロゲン系溶媒を用いた場合の溶解性や溶液の安定性を向上させる試みがなされている。
一方、近年、液晶表示装置の液晶駆動方式において、TN型からVA型やOCB型に代える試みがなされている。VA型は、光漏れが無く、黒表示に優れるので、フラットパネルディスプレイなどの表示装置に好適である。また、OCB型は応答速度が早いため、フラットパネルディスプレイ、特に、薄型テレビに適用すると利点が大きい。しかしながら、液晶駆動方式がTN型からVA型やOCB型に変わることにより新たな問題も生じてきた。すなわち、VA型やOCB型では、偏光の回転に複屈折性を利用しており、偏光を制御する素子を光路上に設置して、偏光制御を完了しているので、現行のセルローストリアセテート(TAC)のようにレタデーション(例えば、面内のレタデーションRe)が大きいと問題を生じる。特に、偏光板の保護フィルムについては、表面側においては、光路上、位相差膜や視野角拡大膜よりも後側に設置されるため、光学的な補償をすることができず、保護膜のReがそのまま表示画質に反映されるという問題がある。このため、現行のTACに比べて、レタデーション(特に、Reおよび厚み方向のレタデーションRth)を小さくできる保護膜が求められている。
また、大型テレビ液晶用途では、「額縁故障」と呼ばれる技術課題がある。すなわち、温度・湿度の変化に伴い、TACフィルムに応力が作用すると、レタデーションが変化して位相差が発生し、光漏れの部分ができる。そのため、家電製品であるテレビでは、耐久性の向上も重要であり、温度・湿度が変化しても、レタデーションの変化を抑制する必要がある。このためには、当然、レタデーション値が小さい保護膜を用いるのが有利である。
特開平11−5851号公報(特許請求の範囲、段落番号[0005]) 特開2002−212338号公報(特許請求の範囲、段落番号[0007]) 特開2002−265501号公報(特許請求の範囲) 特開2002−309009号公報(特許請求の範囲) 特開2003−105129号公報(特許請求の範囲) 特開2002−338601号公報(特許請求の範囲、実施例)
従って、本発明の目的は、光学的等方性などの光学的特性を著しく向上する(例えば、レタデーション値を著しく低減する)のに有用なセルロールエステルを提供することにある。
本発明の他の目的は、光学的等方性を著しく向上できるとともに、溶媒(例えば、塩化メチレンなどの塩素系有機溶媒)に対する溶解性やろ過性などにも優れるセルロースエステル[特に、セルロースアセテート(セルローストリアセテート)]を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、光学的特性(光学的等方性など)に著しく優れたフィルム(光学フィルム)を得るのに有用なセルロースエステルを、簡便にかつ効率よく製造する方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、溶媒(例えば、塩化メチレンなどの塩素系有機溶媒)を用いた成形法(流延法など)に適用(採用)でき、しかも、光学的特性(光学的等方性など)に著しく優れたフィルム(特に、液晶表示装置用光学補償フィルム、偏光板の保護フィルムなどの光学フィルム)を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、アシル化、脱アシル化(又は加水分解又は熟成)などの一連の工程を経て得られるセルロースエステルの調製において、アシル化(特に酢化)の硫酸触媒、熟成(脱アシル化)の硫酸触媒や水性溶媒(特に水)の含有量などの反応条件を調整又は選択することにより、高置換度で、かつ置換度単位での組成分布が著しく狭いセルロースエステルが得られること、このような方法により得られる高置換度のセルロースエステルが、溶解性を損なうことなく溶液製膜方法(流延法)などにより成形(製膜)でき、光学フィルムなどのフィルムに著しく高い光学的特性(特に、光学的等方性)を付与できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明のセルロースエステルは、総平均置換度が2.900〜2.965であり、グルコース単位の2位および3位の平均置換度の合計が1.97以上であり、かつ組成分布半値幅が、置換度単位で0.07以下である。なお、組成分布半値幅は、通常、下記式(1)で表される補正式に基づいて、補正値Zとして求めることができる。
Z=(X2−Y21/2 (1)
(式中、Xは所定の測定装置および測定条件で求めた組成分布半値幅(未補正値)、Yは前記Xと同じ測定装置および測定条件で求めた総置換度3のセルロースエステルの組成分布半値幅を示す。)
前記セルロースエステルは、通常、セルロースアシレート(セルローストリアシレート)であり、特に、セルロースアセテート(すなわち、セルローストリアセテート)であってもよい。代表的な前記セルロースエステルには、以下のセルロースエステルなどが含まれる。
総平均置換度が2.910〜2.963であり、グルコース単位の2位および3位の平均置換度の合計が1.973以上であり、かつ組成分布半値幅が、置換度単位で0.065以下であるセルロースエステル。
総平均置換度が2.915〜2.962であり、グルコース単位の2位および3位の平均置換度の合計が1.975以上であり、かつ組成分布半値幅が、置換度単位で0.060以下のセルロースアセテートであるセルロースエステル。
本発明のセルロースエステルは、アシル化、熟成(又は脱アシル化又は加水分解)などを経る一連のセルロースエステルの調製において、反応系中の硫酸触媒やアシル化剤の含有量などを精密に調整することにより製造できる。具体的には、本発明のセルロースエステルは、硫酸触媒の存在下で、セルロースをアシル化剤でアシル化するアシル化工程(i)と、硫酸触媒の存在下で熟成する熟成工程(ii)とを含むセルロースエステルの製造方法であって、前記アシル化工程(i)において、セルロース100重量部に対して、硫酸触媒6.5〜9.5重量部の存在下で、セルロースのヒドロキシル基1モルに対して1.40〜2.0モル当量のアシル化剤を用いてアシル化することにより製造してもよい。
上記のように、本発明のセルロースエステルは、少なくとも、前記アシル化工程(i)における硫酸触媒およびアシル化剤の使用量を精密に調整することにより得ることができるが、より効率よく前記セルロースエステルを得るため、さらに、前記熟成工程(ii)における硫酸触媒や水性溶媒の使用量を精密に調整してもよい。例えば、前記熟成工程(ii)が、セルロース100重量部に対して3重量部以下の硫酸触媒の存在下で、かつ前記アシル化剤に対応する有機カルボン酸100モルに対して4〜9モルの水性溶媒の存在下で、熟成する初期熟成工程(ii−1)を少なくとも含んでいてもよい。また、この初期熟成工程(ii−1)において、熟成反応開始から20分以上熟成してもよい。
前記セルロースエステルのうち、特に、セルロースアセテートの代表的な製造方法には、以下の製造方法などが含まれる。
酢酸中、硫酸触媒の存在下で、セルロースを無水酢酸でアセチル化するアセチル化工程(i)と、硫酸触媒の存在下で熟成する熟成工程(ii)とを含むセルロースアセテートの製造方法であって、(1)前記アセチル化工程(i)において、セルロース100重量部に対して、硫酸触媒7〜9.2重量部の存在下で、セルロースのヒドロキシル基1モルに対して1.45〜1.9モル当量の無水酢酸を用いてアセチル化し、(2)前記熟成工程(ii)が、セルロース100重量部に対して2.5重量部以下の硫酸触媒の存在下で、かつ酢酸100モルに対して4.5〜8モルの水の存在下で、熟成反応開始から30分以上熟成する初期熟成工程(ii−1)を少なくとも含む前記セルロースエステル(セルロースアセテート)の製造方法。
酢酸中、硫酸触媒の存在下で、セルロースを無水酢酸でアセチル化するアセチル化工程(i)と、塩基の水溶液を添加して前記硫酸触媒を部分中和する工程と、硫酸触媒の存在下で熟成する熟成工程(ii)とを含むセルロースアセテートの製造方法であって、(1)前記アセチル化工程(i)において、セルロース100重量部に対して、硫酸触媒7.5〜9重量部の存在下で、セルロースのヒドロキシル基1モルに対して1.5〜1.8モル当量の無水酢酸を用いてアセチル化し、(2)前記熟成工程(ii)が、セルロース100重量部に対して0.8〜2.4重量部の硫酸触媒の存在下で、かつ酢酸100モルに対して5.5〜7.5モルの水の存在下で、熟成反応開始から30分〜2時間熟成する初期熟成工程(ii−1)を少なくとも含む前記セルロースエステル(セルロースアセテート)の製造方法。
本発明のセルロースエステルは、光学的等方性などの光学的特性に著しく優れており、しかも、溶媒(例えば、塩化メチレンなどのハロゲン系溶媒)に対する溶解性を有しており、ろ過性などにおいても優れているため、光学フィルムなどのフィルムを構成(形成)するのに有用である。そのため、本発明には、前記セルロースエステルで構成されているセルロースエステルフィルムも含まれる。このようなセルロースエステルフィルムは、可塑剤を含まない条件下で測定したときの厚み方向のレタデーション値が、厚み80μmにおいて、−20nm〜+10nm程度であるセルロースエステルフィルムであってもよい。また、このようなセルロースエステルフィルムは、特に光学フィルム、特に、液晶表示装置用光学補償フィルム又は偏光板の保護フィルムであってもよい。
なお、本明細書において、「結合硫酸」とは、セルロースに結合した硫酸(硫酸エステルなどの硫酸基やスルホン酸基として結合した結合硫酸成分)を意味する。「総硫酸」とは、結合硫酸、遊離の硫酸などを総称し、「残存硫酸」、「残存硫酸成分」又は単に「硫酸」という場合がある。また、「残存硫酸」とは、(i)反応系においては、塩基の添加により中和された硫酸塩(又は析出した硫酸塩)に対応する硫酸は含まず、遊離の硫酸および結合硫酸を意味し、(ii)生成物としてのセルロースエステルに対して用いる場合、結合硫酸、遊離の硫酸、および塩基の添加により中和された硫酸塩などに対応する硫酸(H2SO4)を含む意味に用いる。
また、本明細書において、「熟成」又は「熟成工程」とは、セルロースをアシル化した後、アシル化反応系に水、水溶液(例えば、水および有機カルボン酸類との水溶液など)及び/又は塩基(通常、水溶液の形態の塩基)を添加してアシル化剤を分解しつつ反応系に水を存在させ、硫酸触媒(又は残存硫酸触媒)の存在下で、脱アシル化及び脱硫酸エステル化を行うことを意味する。すなわち、熟成工程における「熟成反応」では、脱アシル化反応と脱硫酸エステル反応とが、互いに競争的に進行しているようである。そのため、本明細書において、「脱アシル化」、「脱硫酸エステル化」とは、「熟成」と同じ意味に用いる場合があり、「脱アシル化および脱硫酸エステル化」を含む意味に用いる場合がある。
さらに、本明細書において、「熟成反応の開始」又は「熟成工程の反応開始」とは、水又は塩基(又は塩基の水溶液)を添加し、水の存在下、熟成(脱アシル化及び脱硫酸エステル化)を開始させることを意味する。「熟成反応」は、アシル化反応の停止とともに、又はアシル化反応を停止し、所定の熟成温度(例えば、20〜90℃程度)に昇温した後、開始する場合が多く、「アシル化反応の停止」と「熟成反応の開始」とを同意に用いる場合がある。また、「熟成反応の停止」又は「熟成工程の反応停止」とは、反応系に残存する硫酸(残存硫酸)を過剰量の塩基で完全に中和することを意味する。また、「原料セルロース」とはアシル化前の原料セルロースを意味し、アシル化のために添加した硫酸触媒の量は、通常、塩基添加までの間に変動せず失われない。
本発明のセルロースエステル[特に、セルロースアセテート(セルローストリアセテート)]は、高置換度でかつ置換度単位での組成分布半値幅が著しく狭いため、光学的等方性などの光学的特性を著しく向上する(例えば、レタデーション値を著しく低減する)のに有用である。また、本発明のセルロースエステル(特にセルロースアセテート)は、光学的等方性を著しく向上できるとともに、溶媒(例えば、塩化メチレンなどの塩素系有機溶媒)に対する溶解性やろ過性などにも優れている。特に、本発明では、セルロースエステルが、高置換度であっても、著しく狭い組成分布半値幅を有しているため、通常、溶解性に乏しい高置換度のセルロースアセテートであっても、溶媒(塩化メチレンなど)に溶解して流延法などにより成形可能であり、著しく高い光学的等方性と溶解性(又は成形性)とを両立できる。
さらに、本発明では、セルロースエステルの調製において、アシル化(特に酢化)の硫酸触媒、熟成工程(脱アシル化)の硫酸触媒や水性溶媒(特に水)の含有量などを調整することにより、光学的特性(光学的等方性など)に著しく優れたフィルム(光学フィルム)を得るのに有用なセルロースエステルを簡便にかつ効率よく製造できる。
また、本発明のフィルム(特に、液晶表示装置用光学補償フィルム、偏光板の保護フィルムなどの光学フィルム)は、上記のようなセルロースエステルで形成できるので、溶媒(例えば、塩化メチレンなどの塩素系有機溶媒)を用いた成形法(流延法など)を適用して成形でき、しかも、光学的特性(光学的等方性など)に著しく優れている。
本発明のセルロースエステルは、(i)セルロースの2位,3位および6位に置換するアシル基の総平均置換度(又は総アシル基の平均置換度、以下、単に総置換度ということがある)だけでなく、(ii)2位および3位の平均置換度(以下、単に2,3位置換度などということがある)が高く、しかも、(iii)置換度単位の組成分布半値幅が著しく小さい。
すなわち、本発明のセルロースエステルでは、まず、(i)セルロースの2,3および6位に置換するアシル基の総置換度を高くする(2.900以上とする)ことにより、複屈折性を低減する。詳細には、セルロースエステルを構成するアシル基又はエステルカルボニル結合(特に、アセチル基)の分極率異方性が、セルロース主鎖の分極率異方性を打ち消す方向に作用するため、総置換度を高くすることにより、フィルムの光学的等方性を高めることができる。しかし、総置換度が大きすぎると、セルロースエステルの結晶が安定であるためか、溶解性が低下し、メチレンクロライドなどのハロゲン系溶媒に対しても溶解し難くなるため、成形性(成膜性)が低下し、さらには光学的等方性を向上させることが困難になる。なお、セルロースエステルにおいて、2位又は3位のアシル基(特に、アセチル基)は、6位のエステルカルボニル結合に比べて、分極率異方性が高く、セルロース主鎖の分極率異方性を打ち消す作用が高い。
そのため、本発明では、さらに、(ii)セルロースに置換するアシル基のうち、2位および3位に置換するアシル基の置換度を高めることにより、総置換度を高くすることにより生じる溶解性の問題を解消しつつ(すなわち、セルロースエステルの溶解性を保持又は維持しつつ)、光学的等方性を向上させる。
しかし、上記のように、2位および3位置換度を高くしても、セルロースエステルの溶解性が充分でない場合がある。すなわち、セルロースエステルの置換度は、「平均置換度」であり、セルロースエステルには、通常、総置換度が上記範囲よりも高いセルロースエステル(例えば、総置換度が3に著しく近いセルロースエステルなど)が含まれており、このようなセルロースエステルは、溶解性を低下させる。そのため、本発明では、さらに、(iii)置換度単位での組成分布半値幅を高レベルで小さくする(すなわち、著しく高置換度のセルロースエステルの割合を高レベルで小さくする)ことにより、上記のような著しく高置換度のセルロースエステルの影響を緩和し、高置換度であっても、溶解性を維持又は付与できる。
このように、本発明では、セルロースエステルの置換度および組成分布半値幅を組合せて精密に調整することにより、溶解性を維持しながら、光学的等方性を著しく向上できる。
以下、本発明のセルロースエステルについて詳述する。
本発明のセルロースエステルは、アシル基(例えば、炭素数2以上の脂肪族アシル基)などを有するセルロースエステルである。代表的なセルロースエステルとしては、C1-10アシル基(アルキルカルボニル基)を有するセルロースエステル、例えば、セルロースアシルエステル(セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートなどのセルロースC2-6アシルエステル類(セルロースC2-6アシレート類)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースアセチルC3-6アシルエステル類(脂肪族混酸エステル類)など)が例示できる。好ましいセルロースエステルは、セルロースC2-4アシルエステル類(特に、セルロースアセテート)やセルロースアセチルC3-4アシルエステル類(特に、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート)である。光学フィルム分野においては、諸特性に優れるセルロースアセテート(すなわち、セルローストリアセテート)を用いる場合が多い。これらのセルロースエステルは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
本発明のセルロースエステルにおいて、総平均置換度(セルロースを構成するグルコース単位の2,3および6位に置換するアシル基の総平均置換度)は、例えば、2.900〜2.965、好ましくは2.910〜2.963、さらに好ましくは2.915〜2.962、特に2.920〜2.961(例えば、2.921〜2.960)程度であってもよい。なお、総置換度が高すぎると、後述するように、2,3位置換度を高めたり、組成分布半値幅を狭くしても、セルロースエステルの溶解性を満足できない場合がある。
また、本発明のセルロースエステルにおいて、グルコース単位の2位および3位の平均置換度の合計(2位および3位に置換するアシル基の平均置換度の合計)は、例えば、1.97以上(例えば、1.97〜2程度)、好ましくは1.973以上(例えば、1.973〜1.995程度)、さらに好ましくは1.975以上(例えば、1.975〜1.99程度)、特に1.98以上(例えば、1.98〜1.985程度)であってもよい。
なお、前記セルロースアセテートは、アシル基の全てがアセチル基である場合が多いが、光学的等方性などに影響を与えない範囲であれば、アセチル基以外のアシル基(例えば、プロピオニル基、ブチリル基など)をごく微量含むセルロースアセテートであってもよい。このため、前記セルロースアセテートにおいて、アシル基全体に対するアセチル基の割合は、例えば、98モル%以上(例えば、98.5〜100モル%程度)、好ましくは99モル%以上(例えば、99.3〜99.95モル%程度)、さらに好ましくは99.5モル%以上(例えば、99.8〜99.9モル%程度)であってもよい。
アシル化度は慣用の方法で測定でき、例えば、酢化度(アセチル化度)は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度に準じて単位重量あたりのアシル基のモル数を測定するとともに、さらに、ケン化によって遊離した各アシル基の比率を液体クロマトグラフィーで測定することにより算出できる。また、アシル化度は、IH−NMR、13C−NMRで分析することもできる。
本発明のセルロースエステルにおいて、組成分布半値幅(又は置換度分布半値幅)は、置換度単位で0.07以下(例えば、0.01〜0.07程度)、好ましくは0.065以下(例えば、0.02〜0.063程度)、さらに好ましくは0.06以下(例えば、0.025〜0.058程度)、特に0.055以下(例えば、0.03〜0.05程度)であり、著しく狭い。なお、「半値幅」は、置換度を横軸(x軸)に、この置換度における存在量を縦軸(y軸)としたとき、チャートのピークの高さの半分の高さにおけるチャートの幅であり、分布のバラツキの目安を表す指標である。すなわち、「置換度単位」とは、置換度をx軸の単位とすることを意味する。例えば、x軸を置換度(総置換度)単位とし、ピークの高さの半分に対応する置換度が、それぞれ、2.6および2.8であるとき、置換度単位の半値幅は2.8−2.6=0.2である。
このような組成分布半値幅は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析により求めることができる。すなわち、異なる置換度を有する複数のセルロースエステルを標準試料として用いて所定の測定装置および測定条件でHPLC分析を行い、これらの標準試料の分析値を用いて作成した較正曲線[セルロースエステルの存在量と、置換度との関係を示す曲線、通常、二次曲線(特に放物線)]から、本発明のセルロースエステルの組成分布半値幅を求めることができる。
より具体的には、組成分布半値幅は、所定の処理条件で測定したHPLC(逆相HPLC)におけるセルロースエステルの溶出曲線の横軸(溶出時間)を置換度(0〜3)に換算することにより得ることができる。
溶出時間を置換度に換算する方法としては、例えば、特開2003−201301号公報(段落番号[0037]〜[0040])に記載の方法などを利用できる。例えば、溶出曲線を置換度(分子間置換度)分布曲線に変換する際には、複数(例えば、4種以上)の置換度の異なる試料を用いて、同じ測定条件で溶出時間を測定し、溶出時間(T)から置換度(DS)を求める換算式(変換式)を得てもよい。すなわち、溶出時間(T)と置換度(DS)との関係から、最小二乗法によりキャリブレーションカーブの関数(通常は、下記の2次式)を求める。
DS=aT2+bT+c
(式中、DSはエステル置換度であり、Tは溶出時間であり、a、bおよびcは変換式の係数である)
そして、上記のような換算式により求めた置換度分布曲線(セルロースエステルの存在量を縦軸とし、置換度を横軸とするセルロースエステルの置換度分布曲線)において、認められた平均置換度に対応する最大ピーク(E)に関し、以下のようにして組成分布半値幅を求める。すなわち、ピーク(E)の低置換度側の基部(A)と、高置換度側の基部(B)に接するベースライン(A−B)を引き、このベースラインに対して、最大ピーク(E)から横軸に垂線をおろす。垂線とベースライン(A−B)との交点(C)を決定し、最大ピーク(E)と交点(C)との中間点(D)を求める。中間点(D)を通って、ベースライン(A−B)と平行な直線を引き、分子間置換度分布曲線との二つの交点(A’、B’)を求める。二つの交点(A’、B’)から横軸まで垂線をおろして、横軸上の二つの交点間の幅を、最大ピークの半値幅とする。
このような組成分布半値幅は、試料中のセルロースエステルの分子鎖について、その構成する高分子鎖一本一本のグルコース環の水酸基がどの程度エステル化されているかにより、保持時間(リテンションタイムとも称される)が異なることを反映している。したがって、理想的には、保持時間の幅が、(置換度単位の)組成分布の幅を示すことになる。しかしながら、高速液体クロマトグラフには分配に寄与しない管部(カラムを保護するためのガイドカラムなど)が存在する。それゆえ、測定装置の構成により、組成分布の幅に起因しない保持時間の幅が誤差として内包されることが多い。この誤差は、上記の通り、カラムの長さ、内径、カラムから検出器までの長さや取り回しなどに影響され、装置構成により異なる。
このため、前記セルロースエステルの組成分布半値幅は、通常、下記式(1)で表される補正式に基づいて、補正値Zとして求めることができる。このような補正式を用いると、測定装置(および測定条件)が異なっても、同じ(ほぼ同じ)値として、より正確な組成分布半値幅を求めることができる。
Z=(X2−Y21/2 (1)
(式中、Xは所定の測定装置および測定条件で求めた組成分布半値幅(未補正値)、Yは前記Xと同じ測定装置および測定条件で求めた総置換度3のセルロースエステルの組成分布半値幅を示す。)
上記式(1)において、「総置換度3のセルロースエステル」とは、セルロースのヒドロキシル基の全てがエステル化されたセルロースエステル(例えば、セルローストリアセテートでは酢化度62.5%のセルローストリアセテート)を示し、セルロースのアシル化後であって、熟成前において得られる脱アシル化されていない完全置換物に相当し、実際には(又は理想的には)組成分布半値幅を有しない(すなわち、組成分布半値幅0の)セルロースエステルである。
本発明のセルロースエステル(特に、セルロースアセテート)の粘度平均重合度は、100〜1000(例えば、150〜800)程度の範囲から選択でき、例えば、200〜500(例えば、230〜450)、好ましくは250〜400、さらに好ましくは270〜380(例えば、280〜350)程度であってもよい。
粘度平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。なお、溶媒はセルロースエステルのアシル化度などに応じて選択できる。例えば、セルロースアセテート(セルローストリアセテート)の場合には、メチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)の混合溶液にセルローストリアセテートを溶解し、所定の濃度c(2.00g/L)の溶液を調製し、この溶液をオストワルド粘度計に注入し、25℃で粘度計の刻線間を溶液が通過する時間t(秒)を測定する。一方、前記混合溶媒単独についても上記と同様にして通過時間t0(秒)を測定し、下記式に従って、粘度平均重合度を算出できる。
ηr e l=t/t0
[η]=(lnηr e l)/c
DP=[η]/(6×10- 4
(式中、tは溶液の通過時間(秒)、t0は溶媒の通過時間(秒)、cは溶液のセルローストリアセテート濃度(g/L)、ηr e lは相対粘度、[η]は極限粘度、DPは平均重合度を示す)。
なお、メチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)の混合溶媒を用いたとき、セルローストリアセテートの6重量%溶液粘度は、例えば、200〜700mPa・s、好ましくは250〜600mPa・s、特に250〜500mPa・s程度であってもよい。
本発明では、後述するように、セルロースエステルに残存する残存硫酸量を比較的小さくできる。そのため、アルカリ土類金属化合物(カルシウム成分など)などの使用量も低減でき、フィルムの光学的特性(ヘーズやイエローネスインデックスなど)を改善できる。例えば、本発明のセルロースエステルにおいてカルシウム成分の含有量(重量基準)は、比較的小さく、10〜130ppm程度の範囲から選択でき、例えば、10〜110ppm(例えば、15〜100ppm)、好ましくは20〜90ppm(例えば、25〜80ppm)、さらに好ましくは30〜70ppm(例えば、35〜70ppm、特に40〜65ppm)程度であってもよい。
なお、耐熱安定性を高めるため、セルロースエステルは、通常、アルカリ金属(カリウム、ナトリウムなど)やアルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムなど)などの金属成分を含んでいる。これらの金属成分は、金属支持体に対する親和性が高く、金属支持体からの流延乾燥膜の剥離性を大きく損なうとともに、フィルムの光学的特性をも損なう。この詳細な機構は明確ではないが、セルロースのアシル化において触媒硫酸により残存硫酸又は結合硫酸成分(硫酸エステル基やスルホン酸基)が生成するとともに、セルロースエステルはセルロースに由来してカルボキシル基を有している。硫酸エステル基やスルホン酸基は酸性基であるため、残留するとセルロールエステル自体の加水分解を促進する。そこで、安定性(特に耐熱安定性)を付与するため、後述するように、アルカリ金属類やアルカリ土類金属類の耐熱安定剤、特にカルシウム成分(カルシウム塩など)を添加すると、上記スルホン酸基とともにカルボキシル基は金属塩(カルシウム塩など)を形成する。しかし、これらの金属塩(カルシウム塩など)は、金属支持体に対する密着性を高め、剥離性を低減させる。そのため、安定性を損なわない範囲で、金属成分(カルシウム成分など)の含有量を低減することが有用である。
さらに、セルロースエステルの安定性を高めるとともに、金属支持体に対する密着性を低減するため、残存硫酸(又は総硫酸、特に結合硫酸成分)の化学当量(硫酸換算での化学当量)に対するカルシウムの化学当量比(Ca/SO4比)は、例えば、0.5〜3.0、好ましくは1.0〜2.8、さらに好ましくは1.2〜2.6(例えば、1.3〜2.5)程度であってもよい。特に、Ca/SO4比は、剥離性が許容できる範囲であれば1.5〜2.5程度であってもよく、剥離性に問題が生じる場合(例えば、総硫酸量が比較的多い場合)には1.0〜1.5程度であってもよい。
なお、流延速度の調整などにより剥離性に問題が生じない場合には、耐熱安定性の観点から、Ca/SO4比は、比較的大きいのが好ましく、例えば、1.5〜3.0、好ましくは1.5〜2.5程度であってもよい。また、剥離性に問題を生じる場合はカルシウムの含有割合を低減する必要があるが、耐熱安定性の観点から、Ca/SO4比は、少なくとも0.5(例えば、0.5〜1.5程度)、好ましくは少なくとも0.6(例えば、0.6〜1.2程度)、さらに好ましくは少なくとも0.7(例えば、0.7〜1.0程度)の範囲から選択してもよい。
カルシウムなどの金属含量は、乾燥したセルロースエステルを完全に燃焼させた後、灰分を塩酸に溶解させる前処理を施し、得られた試料について原子吸光法により測定できる。測定値は絶乾状態のセルロースエステル1g中の金属含有量としてppm単位で表される。なお、絶乾したセルロースエステルをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理した後、ICP−AES(誘電結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析することによっても測定できる。
総硫酸に対するカルシウムの化学当量比[Ca/SO4比]は、カルシウムの含有量と硫酸量からCa/SO4比率をモル比として算出する。すなわち、上記硫酸量を96で除することにより、セルロースエステル1g中の硫酸含有量をmol単位で表すことができ、カルシウム含有量を40.1で除することにより、セルロースエステル1g中のカルシウム含有量をmol単位で表すことができる。
なお、後述するように、本発明では、セルロースエステルに残存する硫酸量(特に、結合硫酸量)を高いレベルで低減できる。例えば、本発明のセルロースエステルにおいて、残存硫酸量(重量基準)は、150ppm以下(例えば、10〜150ppm)の範囲から選択でき、例えば、140ppm以下(例えば、30〜120ppm)、好ましくは110ppm以下(例えば、35〜100ppm)、さらに好ましくは80ppm以下(例えば、40〜70ppm程度)であってもよい。
残存硫酸量(又は総硫酸量)は、乾燥したセルロースエステルを1300℃の電気炉で焼き、昇華してきた亜硫酸ガスを所定の濃度の過酸化水素水にトラップして、これを所定の濃度の塩基(例えば、水酸化ナトリウム水溶液)にて滴定することにより測定できる。得られる測定値はSO4 2-換算の量であり、絶乾状態のセルロースエステル1g中の硫酸含有量としてppmを単位として得られる。
本発明のセルロースエステルは、複屈折性が著しく低減されているため、フィルムに成形することにより、極めて小さいレタデーション値を有するフィルム製品を調製するのに有用である。本発明のセルロースエステルの固有複屈折率Δn0は、例えば、−0.05〜0.05(例えば、0〜0.08)、好ましくは0.0〜0.03、さらに好ましくは0.001〜0.01程度である。このような固有複屈折率Δn0とするためには、前記のように、総平均置換度、グルコース単位の2位および3位の平均置換度、および置換度単位での組成分布半値幅を制御すればよい。
なお、屈折率nと複屈折Δnと位相差(面内のレタデーションRe、厚み方向のレタデーションRth)との間には次のような関係が認められる。なお、xは機械方向(x軸)、yは幅方向(y軸)、zは厚み方向(z軸)を示し、Sは配向度(0〜1)、Δn0は固有複屈折、dは厚みを示す。
Re=[nx−((ny+nz)/2)]・d≒Δn0・S・d
Rth=[nz−((nx+ny)/2)]・d≒−1/2・Δn0・S・d
上記関係式から明らかなように、本発明のセルロースエステルを用いると、固有複屈折率が小さいため、配向度Sの調整により、レタデーション(Re、Rth)値を高いレベルで小さくできる。特に、本発明では、他のアシル基に比べて著しく剛直であり、レタデーション値を低減しやすいアセチル基を有するセルロースアセテート(セルローストリアセテート)において、高いレベルでレタデーション値を低減できる。
また、本発明のセルロースエステル(セルロースアセテートなど)において、セルロースエステルの黄色度の指標となるイエローネスインデックス(Yellowness Index,YI)は、例えば、1〜7(例えば、1〜6)、好ましくは1〜5(例えば、2〜4)程度であってもよい。なお、イエローネスインデックス(YI)は次のような方法で測定できる。
乾燥したセルロースエステル12.0gを正確に秤量し、溶媒(メチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)の混合溶媒やアセトンなど)88.0gを加えて完全に溶解させる(12重量%試料溶液)。色差計(日本電色工業製,色差計Σ90)と、ガラスセル(横幅45mm,高さ45mm,光路長10mm)を用い、下記式によりYIを算出する。
YI=YI2−YI1
(式中、YI1は溶媒のYI値,YI2は12重量%試料溶液のYI値を示す)。
さらに、本発明のセルロースエステル(セルロースアセテートなど)のヘーズ値は、例えば、1〜5(例えば、1〜4)、好ましくは1〜3.5(例えば、2〜3.5)程度であってもよい。なお、へーズは次のような方法で測定できる。
濁度計(日本電色工業製)を用い、ガラスセル(横幅45mm,高さ45mm,光路長10mm)を使用し、次のようにして測定する。上記と同様の溶媒をガラスセルに入れて濁度計にセットし、0点合わせと標準合わせとを行う。次いで、ガラスセルに上記と同様にして調製した12重量%試料溶液を入れて濁度計にセットし、数値を読み取る。
本発明のセルロースエステルは、光学的等方性などの光学的特性に著しく優れている。そのため、本発明のセルロースエステルは、種々の成形体(繊維などの一次元的成形体、フィルムなどの二次元的成形体、三次元的成形体)、例えば、セルロースエステルフィルムに利用するのに適している。また、本発明のセルロースエステル(特にセルロースアセテート)は、高置換度であるにもかかわらず、溶解性も有しているので、例えば、溶液製膜方法(又はソルベントキャスト法)などによりフィルムを製造でき、光学的等方性が著しく高い(例えば、レタデーション値が著しく低減された)セルロースエステルフィルム(特に薄膜化されたセルロースエステルフィルム)を高い生産性で製造するのに有用である。特に、前記セルロースアセテート(すなわち、セルローストリアセテート)は、組成分布半値幅が著しく狭いので、高置換度であるにもかかわらず、溶媒(例えば、塩化メチレンなどのハロゲン系溶媒など)に対する溶解性を有しており、ろ過性などにおいても優れている。
[セルロースエステルの製造方法]
セルロースエステルは、通常、硫酸触媒の存在下で、セルロースをアシル化剤でアシル化するアシル化工程(i)と、必要に応じて前記硫酸触媒を部分中和する工程と、硫酸触媒(又は残存硫酸)の存在下で熟成(又は加水分解、脱アシル化)する熟成工程(ii)[又は脱アシル化工程(ii)]とを含む一連の工程を経ることにより製造できる。すなわち、セルロースエステルは、必要によりセルロースを活性化処理した後、硫酸触媒の存在下、セルロースをアシル化剤でアシル化した後、必要により部分中和し、熟成(又は加水分解、脱アシル化)することにより製造できる。より詳細には、セルロースエステルは、通常、セルロースをアシル基に対応する有機カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など、特に酢酸)により活性化処理(活性化工程)した後、硫酸触媒を用いてアシル化剤(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸など、特に無水酢酸)によりトリアシルエステル(特に、セルローストリアセテート)を調製し(アシル化工程)、過剰量のアシル化剤(特に、無水酢酸などの酸無水物)を分解し(又は失活させ)、熟成(又は加水分解、脱アシル化)によりアシル化度を調整する熟成工程(脱アシル化工程、又はケン化・熟成工程)を経ることにより製造できる。なお、一般的なセルロースエステルの製造方法については、「木材化学」(上)(右田ら、共立出版(株)1968年発行、第180頁〜第190頁)を参照できる。
本発明では、上記のようなアシル化工程、熟成(脱アシル化)工程を経る一連の製造工程において、アシル化工程におけるアシル化剤や硫酸触媒の使用量、さらには、硫酸触媒の使用量や熟成条件などを組み合わせ、精密に制御又は調整することにより、前記セルロースエステルを得ることができる。
前記セルロース(パルプ)としては、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)や綿花リンターなどが使用できる。これらのセルロースは単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
前記活性化工程は、例えば、有機カルボン酸や含水有機カルボン酸(酢酸や含水酢酸)の噴霧や、有機カルボン酸や含水有機カルボン酸への浸漬などによリ、セルロースを処理することにより行うことができる。有機カルボン酸(酢酸など)の使用量は、セルロース100重量部に対して10〜100重量部、好ましくは20〜80重量部、さらに好ましくは30〜60重量部程度であってもよい。
(アシル化工程(i))
アシル化工程(i)において、アシル化触媒としての硫酸触媒(以下、単に硫酸ということがある)の使用量は、通常、セルロース(原料セルロース)100重量部に対して、1〜15重量部程度の範囲から選択でき、通常、5〜15重量部(例えば、5〜12重量部)、好ましくは5〜13重量部、さらに好ましくは7〜10重量部程度であってもよい。
本発明のセルロースエステルは、前記のように高置換度であり、少量の硫酸(低硫酸)でのアシル化(特にアセチル化)が必要である。詳細には、硫酸触媒の使用量が多いと、アシル化工程で、グルコース環の水酸基が置換された硫酸エステル基が生じやすくなり、この硫酸エステル基は、熟成工程において容易に加水分解して水酸基となるため、置換度を高くできない場合がある。一方、前記組成分布半値幅を狭くするためには、多量の硫酸(高硫酸)でのアシル化(特にアセチル化)が効果的である。このような観点から、特に、高置換度でかつ狭い組成分布半値幅の前記セルロースエステルを効率よく得るため、セルロース100重量部に対して、硫酸触媒6.5〜9.5重量部、好ましくは7〜9.2重量部、さらに好ましくは7.5〜9重量部程度の存在下でアシル化する場合が多い。
アシル化剤としては、酢酸クロライドなどの有機酸ハライドであってもよいが、通常、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などのC2-6アルカンカルボン酸無水物などが使用できる。これらのアシル化剤(酸無水物など)は単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。好ましいアシル化剤は、C2-4アルカンカルボン酸無水物、特に少なくとも無水酢酸を含む。好ましい態様において、アシル化工程では、無水酢酸と反応させてセルロースをアセチル化する。
アシル化工程(アセチル化工程などのエステル化工程)でのアシル化剤(無水酢酸など)の使用量は、例えば、セルロースのヒドロキシル基1モルに対して、1.40〜2.0モル当量、好ましくは1.45〜1.9モル当量、さらに好ましくは1.5〜1.8モル当量(例えば、1.5〜1.7モル当量)程度であってもよい。
なお、特に、アシル化剤として無水酢酸を使用する場合、アセチル化工程での無水酢酸の使用量は、セルロース100重量部に対して264〜377重量部、好ましくは274〜358重量部、さらに好ましくは283〜340重量部(例えば、283〜320重量部)程度であってもよい。
本発明では、通常、アシル化工程(i)において、上記のように硫酸触媒の使用量と、アシル化剤の使用量とを組みあわせて調整することにより(さらに必要に応じて、後述する熟成工程(ii)における硫酸触媒や水性溶媒の使用量を調整することにより)、前記のような高置換度で、かつ組成分布半値幅の著しく狭いセルロースエステルを得ることができる。
すなわち、前記アシル化工程(i)において、特定量の硫酸触媒(例えば、セルロース100重量部に対して、硫酸触媒6.5〜9.5重量部、好ましくは7〜9.2重量部、さらに好ましくは7.5〜9重量部程度)の存在下で、特定量[例えば、セルロースのヒドロキシル基1モルに対して、1.40〜2.0モル当量、好ましくは1.45〜1.9モル当量、さらに好ましくは1.5〜1.8モル当量(例えば、1.5〜1.7モル当量)程度]のアシル化剤を用いてアシル化(特にアセチル化)する場合が多い。
アシル化工程は、通常、溶媒(又は希釈剤)中で行われる場合が多い。このような溶媒(又は稀釈剤)としては、有機カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸などのC2-6アルカンカルボン酸など、特に、酢酸などのアシル基に対応する有機カルボン酸)が使用される。有機カルボン酸(酢酸など)の使用量は、例えば、セルロース100重量部に対して200〜700重量部、好ましくは300〜600重量部、さらに好ましくは350〜500重量部程度である。なお、アシル化反応は、慣用の条件、例えば、0℃〜60℃、好ましくは5〜55℃、さらに好ましくは15〜50℃(例えば、20〜45℃)程度の温度で行うことができる。なお、低温で反応させると、前記組成分布半値幅を低減しやすい。
上記のようなアシル化反応によりセルロースエステル(セルローストリアセテートなどのセルローストリアシレート)を生成させることができる。そして、所定のアシル化度(特に、アセチル化度)に到達した後、アシル化反応を停止し、硫酸成分(又は残存硫酸成分)を熟成触媒(又は脱アシル化触媒)として利用して熟成(脱アシル化又は加水分解)する。
なお、アシル化反応の停止は、前記のように、水又は水と有機カルボン酸類(特にアシル化剤に対応する有機カルボン酸など)との混合溶媒を反応系に添加したり、塩基の水性溶液(特に水溶液)を添加することにより、アシル化剤(特に、無水酢酸などの過剰のアシル化剤)を失活させて行う場合が多い。本発明では、特に、アシル化反応の停止(アシル化剤の失活)において、塩基の水性溶液(特に塩基の水溶液)を用いると、アシル化剤を分解(失活)しながら反応系中に水性溶媒(水及び/又はアルコールなど、特に水)を存在させて熟成工程における水性溶媒(特に水)の含有量を調整できるとともに、硫酸触媒を部分中和できる。そのため、本発明では、アシル化反応の停止のため(又はアシル化工程の後)、塩基の水性溶液(特に塩基の水溶液)を添加して硫酸成分を部分中和し(およびアシル化反応を停止し)、後述する熟成工程(ii)に供する場合が多い。
塩基としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、周期表第13族金属化合物、遷移金属化合物、アンモニアなどが例示できる。アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど)、有機酸塩(酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの酢酸塩など)などが例示できる。アルカリ土類金属化合物としては、例えば、水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなど)、炭酸塩(炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウムなど)、有機酸塩(酢酸マグネシウム、酢酸カルシウムなどの酢酸塩など)などが例示できる。周期表第13族金属化合物としては、アルミニウムなどの水酸化物、有機酸塩(酢酸塩など)などが例示できる。遷移金属化合物としては、鉄、銅、亜鉛などの遷移金属の水酸化物、有機酸塩(酢酸塩など)などが例示できる。これらの塩基は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの塩基のうち、通常、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物から選択された少なくとも一種の塩基を使用する場合が多い。特に、ナトリウム化合物、カリウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物から選択された塩基(好ましくは少なくともマグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物)を用いる場合が多い。
塩基は粉粒体の形態で用いてもよいが、通常、液体(例えば、水性溶媒の溶液、特に、水溶液)の形態で用いる場合が多い。塩基の水性溶液(特に水溶液)において、水性溶媒(塩基の水性溶液を構成する水性溶媒)としては、前記のように、水、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのC1-4アルカノールなど)などが例示できる。これらの水性溶媒は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。好ましい水性溶媒は、水(水単独)である。塩基の水性溶液において、塩基の濃度は、後述する熟成工程における硫酸や水性溶媒の含有量に応じて適宜調整できる。
部分中和のための塩基の使用量は、後述する熟成反応における硫酸量(残存硫酸量)に応じて調整でき、反応系中の硫酸触媒(仕込みの硫酸触媒)1当量に対して、例えば、0.1〜0.9当量、好ましくは0.2〜0.8当量、さらに好ましくは0.3〜0.7当量(例えば、0.3〜0.6当量)程度であってもよい。
(熟成工程(ii))
アシル化反応が停止(および部分中和)された反応系は、熟成工程(ii)に供される。熟成工程では、セルローストリアシレートの脱アシル化反応及び脱硫酸エステル反応を行う。本発明では、熟成工程において、触媒として用いる硫酸の含有量および水性溶媒の含有量を組み合わせて調整する(後述する初期熟成工程)ことにより、前記のような高置換度でかつ組成分布半値幅の狭いセルロースエステルを得ることができる。
熟成工程は、他の酸触媒を新たに添加して行ってもよいが、通常、前記アシル化工程で使用した硫酸触媒の存在下で行うことができる。熟成工程は、セルロース(原料セルロース)100重量部に対して、硫酸触媒15重量部以下(例えば、0.5〜12重量部程度)、好ましくは10重量部以下(例えば、0.8〜8重量部程度)、さらに好ましくは5重量部以下(例えば、1〜5重量部程度)、特に3重量部以下(例えば、1.2〜2重量部程度)の存在下で行ってもよい。
特に、前記セルロースエステルを効率よく得るため、比較的少ない使用量において精密に硫酸量を調整して熟成(又は脱アシル化)してもよい。例えば、熟成工程は、セルロース(原料セルロース)100重量部に対して、硫酸触媒3重量部以下(例えば、0.5〜2.8重量部程度)、好ましくは2.5重量部以下(例えば、0.8〜2.4重量部程度)、さらに好ましくは2.3重量部以下(例えば、1〜2.2重量部程度)、特に2重量部以下(例えば、1.2〜1.8重量部程度)の存在下で好適に行うことができる。なお、アシル化反応では、グルコース単位の6位のヒドロキシル基は硫酸エステルを形成しやすい。硫酸エステル基の脱離は、硫酸触媒の存在下で進行するが、この脱離反応は、可逆的であり、硫酸量が少ない場合において、平衡は脱硫酸エステルに傾くため、上記のような少ない硫酸量で反応させても、脱硫酸エステルの反応速度はさほど損なわれない。より詳細には、このような低硫酸条件であっても、脱硫酸エステル化が充分な反応速度で進行するとともに、脱アシル化反応が選択的に抑制されるため、セルロースエステルに残存(および結合)する硫酸量を高いレベルで低減しつつ、前記のような高置換度(特に、2位及び3位置換度)のセルロースエステル(特に、セルロースアセテート、すなわち、セルローストリアセテート)を効率よく生成できる。
また、熟成は、通常、硫酸触媒に加えて、水性溶媒の存在下で行われる。このような水性溶媒は、前記のように、過剰のアシル化剤の失活において用いる水及び/又は部分中和において使用する塩基の水性溶液由来の水性溶媒であってもよく、熟成において新たに添加してもよい。水性溶媒としては、前記と同様の水性溶媒が例示でき、通常、水である場合が多い。
熟成工程は、前記アシル化剤に対応する有機カルボン酸(特に酢酸)100モルに対して、例えば、2〜15モル、好ましくは3〜12モル、さらに好ましくは4〜10モル程度の水性溶媒(特に水)の存在下で行ってもよい。なお、「アシル化剤に対応する有機カルボン酸」には、前記アシル化において使用した溶媒(又は稀釈剤)、アシル化剤(無水酢酸など)の分解物などが含まれる。
特に、前記セルロースエステルを効率よく得るため、水性溶媒の使用量を調整して熟成してもよい。例えば、熟成工程は、前記アシル化剤に対応する有機カルボン酸(特に酢酸)100モルに対して、4〜9モル(例えば、4.2〜8.5モル)、好ましくは4.5〜8モル(例えば、5〜7.8モル)、さらに好ましくは5.5〜7.5モル(例えば、5.8〜7モル)、特に6〜6.8モル程度の水性溶媒(特に水)の存在下で好適に行ってもよい。上記のような範囲の水性溶媒の存在下で熟成(脱アシル化、特に脱アセチル化)すると、硫酸エステル基を効率よく脱離させつつ、組成分布半値幅を狭くすることができる。このように水性溶媒の使用量を精密に調整すると、前記セルロースエステルのうち、特に、前記セルロースアセテートを効率よく高置換度(および狭い組成分布半値幅)にできる。なお、熟成工程において、水性溶媒の含有量が少なすぎると、硫酸エステル基の脱離に著しく長時間を要したり、硫酸エステル基の脱離が不十分になり、セルロースエステルの溶解性や熱安定性を低下させる虞がある。また、水性溶媒の含有量が大きすぎると、同様に、硫酸エステル基の脱離が不十分になるだけでなく、前記組成分布半値幅が広くなる。このような組成分布が広くなる理由は定かではないが、水性溶媒の含有量が多いと、微視的にセルロースエステルが相分離して反応が不均一になったり、反応系に遊離して存在する硫酸の活動度が低くなるものと考えられる。
以上のように、前記熟成工程(ii)の好ましい態様では、より一層効率よく高置換度および著しく狭い組成分布半値幅を有する前記セルロースエステルを得るため、硫酸触媒および水性溶媒の使用量を精密に調整する。すなわち、前記熟成工程(ii)では、特定割合の硫酸触媒(例えば、セルロース100重量部に対して3重量部以下)の存在下で、かつ特定割合の水性溶媒(例えば、前記アシル化剤に対応する有機カルボン酸100モルに対して4〜9モル)の存在下で、熟成(又は脱アシル化)する初期熟成工程(ii−1)を少なくとも含む。このような初期熟成工程(ii−1)は、熟成反応開始から、20分以上(例えば、25分〜3時間程度)、好ましくは30分以上(例えば、30分〜2時間程度)、さらに好ましくは35分〜1.5時間(例えば、40〜60分)程度行う場合が多い。
熟成工程(ii)は、初期熟成工程(ii−1)のみで構成してもよく、初期熟成工程(ii−1)と、後期熟成工程(ii−2)とで構成してもよい。このような後期熟成工程(ii−2)では、水性溶媒(特に水)を新たに添加することにより、水性溶媒の含有量が異なる条件下で熟成してもよい。このような後期熟成工程(ii−2)において、熟成反応系中の水性溶媒の含有量は、必ずしも前記範囲(有機カルボン酸100モルに対して、4〜9モル程度)でなくてもよいが、通常、前記範囲内であるのが好ましい。例えば、後期熟成工程(ii−2)は、前記アシル化剤に対応する有機カルボン酸100モルに対して、4〜9モル、好ましくは5〜8.8モル、さらに好ましくは6〜8.5モル程度の水性溶媒(特に水)の存在下で行ってもよい。
なお、前記のように、アシル化反応において、グルコース単位の6位のヒドロキシル基は硫酸エステルを形成しやすい。一方、硫酸エステル基の含有量が多くなると、生成したセルロースエステルの耐熱安定性や耐加水分解性なども低下しやすい。このため、熟成工程において、熟成工程(ii−1)を行うことができる限り、必要であれば、硫酸エステル基濃度をより一層低減するため、反応系に所定量の塩基を連続的又は複数回に分けて間欠的(又は段階的)に添加して部分中和し(アシル化反応の停止のための塩基の添加を含まない)、熟成(脱アシル化反応及び脱硫酸エステル反応)を行ってもよい。なお、所定の形態(水溶液などの液体、粉体など)で、塩基を反応系に短いインターバルをおいて滴下又は添加することにより、塩基を実質的に連続して添加できる。塩基を分割して添加する場合、塩基の添加回数は、複数回であればよく、例えば、3回以上(例えば、3〜100回)、好ましくは4回以上(4〜100回)、さらに好ましくは5回以上(5〜100回)であってもよい。工業的に有利に熟成を行うためには、3〜50回(例えば、3〜20回)、好ましくは4〜25回(4〜20回)程度であってもよい。
前記塩基の添加様式は特に制限されず、塩基を反応系に連続的又は間欠的に添加してもよく、熟成工程の初期に塩基の添加量を多くし、後期に至るにつれて塩基の添加量を連続的又は段階的に低減してもよく、熟成工程の初期に塩基の添加量を少なくし、後期に至るにつれて塩基の添加量を連続的又は段階的に増加させてもよい。塩基の添加は、通常、熟成工程の後期よりも初期での塩基の添加量を多くする場合が多い。
なお、初期熟成工程(ii−1)において、塩基(通常、塩基の水性溶液)を添加する場合、熟成条件は、前記所定時間(例えば、脱アシル化反応開始から25分〜3時間)、前記範囲(例えば、セルロース100重量部に対して硫酸触媒3重量部以下、前記アシル化剤に対応する有機カルボン酸100モルに対して水性溶媒4〜9モル)に保持されている。
熟成反応(脱アシル化反応又は加水分解、前記初期熟成工程(ii−1)を含む)は、例えば、温度20〜90℃(例えば、50〜90℃)、好ましくは25〜80℃(例えば、50〜80℃)、さらに好ましくは30〜70℃(例えば、50〜70℃)程度で行うことができる。熟成反応では、必要であれば、他の酸触媒(プロトン酸、ルイス酸)を使用してもよいが、通常、初期熟成工程(ii−1)を含む一連の熟成において、残存硫酸を触媒として使用する場合が多い。熟成反応は、不活性ガス雰囲気中で行ってもよく、空気雰囲気中で行ってもよい。なお、熟成工程において、脱アシル化と脱硫酸エステル反応は競争的に進行するようである。
熟成工程(ii)全体の反応時間は、例えば、20分以上(例えば、25分〜10時間)の範囲から選択でき、好ましくは30分〜5時間(例えば、40分〜3時間)、さらに好ましくは50分〜2.5時間(例えば、1〜2時間)程度であってもよい。
なお、熟成は、硫酸触媒(又は残存硫酸)を完全に中和する(又は触媒として実質的に作用しない程度まで硫酸触媒を中和する)ことにより、停止することができる。一連の反応において、塩基の総使用量(部分中和に用いる塩基の使用量を含む)は、硫酸量(仕込み硫酸量)1当量に対して、0.9〜2当量程度の範囲から選択でき、通常、0.9〜1.5当量(例えば、1〜1.5当量)、好ましくは1〜1.3当量(例えば、1〜1.2当量)程度であってもよい。
前記熟成工程(ii)の後、セルロースエステルの耐熱安定性を高めるため、必要により前記塩基で構成された中和剤[好ましくはアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物、特に少なくともカルシウム化合物(水酸化カルシウムなど)]を添加してもよい。また、反応生成物を水又は酢酸水溶液などに投入して生成したセルロースエステルを分離し、水洗などにより遊離の金属成分や硫酸成分などを除去してもよい。なお、水洗の際に中和剤を使ってもよい。
このように、本発明では、アシル化工程において特定量の硫酸触媒およびアシル化剤を使用し、さらには、必要に応じて、特定割合の硫酸触媒および水性溶媒を組合せて熟成することにより、アシル化および熟成で構成された一連の反応条件を精密に調整し、前記のような高置換度でかつ組成分布半値幅の著しく狭いセルロースエステルを得ることができる。
[セルロースエステルフィルムとその製造方法]
本発明のセルロースエステルは、光学的等方性などの光学特性に著しく優れるとともに、機械的特性、成形性などにも優れている。そのため、種々の成形体(繊維などの一次元的成形体、フィルムなどの二次元的成形体、三次元的成形体)を成形するのに有用である。特に、光学特性に優れるため、光学材料、特に光学フィルムを形成するのに有用である。そのため、本発明のセルロースエステルフィルムは、前記セルロースエステルで構成されている。
セルロースエステルフィルムの製造方法は、溶融製膜方法(押出成形法など)および溶液製膜方法(流延法)のいずれであってもよいが、通常、溶液製膜方法により平面性に優れたフィルムを製造してもよい。
溶液製膜方法において、セルロースエステルフィルムは、セルロースエステルと有機溶媒とを含むドープ(又は有機溶媒溶液)を剥離性支持体に流延し、生成した膜を剥離性支持体から剥離して乾燥することにより製造できる。
剥離性支持体は、通常、金属支持体(ステンレススチールなど)であってもよく、ドラム状やエンドレスベルト状であってもよい。支持体の表面は、通常、鏡面仕上げされ、平滑である場合が多い。
ドープを調製するための有機溶媒は、ハロゲン系有機溶媒(特に塩素系有機溶媒)であってもよく、非ハロゲン系有機溶媒(特に非塩素系有機溶媒)であってもよいが、本発明のセルロースエステル(特に、前記セルロースアセテート、すなわち、セルローストリアセテート)は高置換度であるため、少なくともハロゲン系有機溶媒(特に塩素系有機溶媒)に対して可溶性である場合が多い。有機溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよく、例えば、塩素系有機溶媒と非塩素系有機溶媒とを組み合わせてもよい。ハロゲン系有機溶媒(特に塩素系有機溶媒)としては、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類(特に塩素化炭化水素類)などが挙げられる。非ハロゲン系有機溶媒(特に非塩素系有機溶媒)としては、例えば、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類など)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのジアルキルケトン類、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのC1-4アルカノール類)などが例示できる。
ドープには、種々の添加剤、例えば、可塑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤など)、滑剤(微粒子状滑剤)、難燃剤、離型剤などを添加してもよい。また、ドープには、レタデーション上昇剤(特開2001−139621号公報に記載のレタデーション上昇剤など)、剥離剤(特開2002−309009号公報に記載の剥離剤など)などを添加してもよい。
なお、ドープは、慣用の方法、例えば、高温溶解法、冷却溶解法などを利用して調製できる。ドープ中のセルロースエステル濃度は、10〜35重量%、好ましくは15〜30重量%(例えば、15〜25重量%)程度であってもよい。また、高品質フィルム(液晶表示装置用フィルムなど)を得るため、ドープは濾過処理してもよい。
流延ダイなどを利用してドープを支持体上に流延し、乾燥することによりフィルムを製造できる。通常、ドープを支持体上に流延し、予備乾燥した後、有機溶媒を含む予備乾燥膜を乾燥することによりフィルムが製造される。
フィルムの厚みは用途に応じて選択でき、例えば、5〜200μm、好ましくは10〜150μm、さらに好ましくは20〜100μm程度であってもよい。
本発明では、前記のように、セルロースエステルフィルム(特にセルロースアセテートフィルム)のレタデーション値を高いレベルで低減できる。例えば、セルロースエステルフィルムにおいて、可塑剤を含まない条件下で測定したときの厚み方向のレタデーション値は、厚み80μm(80000nm)において、−50nm〜+20nm程度の範囲から選択でき、例えば、−20nm〜+10nm、好ましくは−15nm〜+10nm、さらに好ましくは−10nm〜+5nm程度であってもよい。なお、フィルムのレタデーション値(Rth)は、可塑剤の有無により変化するため、可塑剤を含まないセルロースエステルフィルム(すなわち、可塑剤を含まず、前記セルロースエステルで構成されたセルロースエステルフィルム)のRthとして規定している。また、上記レタデーション値Rthは、面方向屈折率(平均値)および厚み方向屈折率の差(面方向屈折率−厚み方向屈折率)に、フィルムの厚みを乗じることにより求めることができる。
本発明のセルロースエステルおよびそのフィルムは、著しく光学的等方性が高く、光学的特性に極めて優れるため、種々の光学フィルム、例えば、カラーフィルタ、写真感光材料の基材フィルム、液晶表示装置用フィルムなどとして利用できる。特に、本発明のセルロースエステルフィルム(特に、セルロースアセテートフィルム、すなわち、セルローストリアセテートフィルム)は、偏光板の保護フィルム(例えば、偏光膜の少なくとも一方の面、特に両面の保護フィルム)、液晶表示装置用光学補償フィルムとして有用である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において各特性は次のようにして測定した。
<重合度の測定>
メチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)の混合溶液にセルローストリアセテートを溶解し、所定の濃度c(2.00g/L)の溶液を調製し、この溶液をオストワルド粘度計に注入し、25℃で粘度計の刻線間を溶液が通過する時間t(秒)を測定する。一方、前記混合溶媒単独についても上記と同様にして通過時間t0(秒)を測定し、下記式に従って、粘度平均重合度を算出した。
ηr e l=t/t0[η]=(lnηr e l)/cDP=[η]/(6×10-4
(式中、tは溶液の通過時間(秒)、t0は溶媒の通過時間(秒)、cは溶液のセルローストリアセテート濃度(g/L)、ηr e lは相対粘度、[η]は極限粘度、DPは平均重合度を示す)。
<DS、DS2、DS3及びDS6の測定>
試料をピリジン溶媒中、無水プロピオン酸でプロピオニル化した後、クロロホルム溶媒で13C−NMRスペクトルを測定し、169.1〜170.2ppm付近に現れるアセチルカルボニル炭素の3シグナルの強度を積算し、また、172.7〜173.6ppm付近に現れるプロピオニルカルボニル炭素の3シグナルの強度を積分した。なお、NMR測定条件は次の通り
測定溶媒:CDCl3(約3ml使用)
測定温度:40℃
サンプル量:160〜180mg(φ10mm)
観測核:13C(1H完全デカップリング)
データポイント数:32768
パルス角と時間:45°,9μsec
データ取り込み時間:0.9667sec
待ち時間:2.0333sec
積算回数:18,000回
置換度(DS)は、アセチルカルボニル炭素シグナル積分強度をXとし、プロピオニルカルボニル炭素シグナル積分強度をYとして、次式で求めた。
置換度(DS)=3×[X/(X+Y)]
なお、13C−NMRスペクトルにおいて、169.1〜170.2ppm付近に現れるアセチルカルボニル炭素の3シグナルは、高磁場側からそれぞれ2、3、6位に帰属される。各シグナルの極大に対して±0.2ppmの範囲の強度を積分し、これを各アセチルカルボニル炭素シグナルの積分強度と定義し、次式からDSi(iは2、3または6)を求めた。
DSi=DS×(i位アセチルカルボニル炭素シグナル積分強度)/(2、3及び6位アセチルカルボニル炭素シグナル積分強度の和)
<組成分布半値幅>
酢化度62.5%、61.5%、60.8%、59.8%のセルローストリアセテート(TAC)試料(標準試料)について、以下の条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を行い、溶出時間対置換度の関係(較正曲線)を2次関数で定めた。HPLC分析で求められる検体の半値幅を与える溶出時間を用いて、これに対応する置換度を較正曲線から求め、置換度単位での組成分布半値幅(未補正値)を求めた。HPLC分析における装置および測定条件は以下のようである。
装置:Agilent Technology製、「Agilent LC110」
カラム:Waters製、「Novapak Phenyl (Waters)」 3.9mmφ×150mm
溶離液:クロロホルム/メタノール(9/1(体積比))(A液)、メタノール/水(8/1(体積比))(B液)
A液/B液(体積比)=20/80から、28分間を要してA液/B液=100/0へグラジェント
流速:0.7ml/分
カラムオーブン:30℃
検出器:Polymer Laboratories製、「ELS・1000」(エバポレイティブ光散乱検出器)、エバポレーション温度75℃、ネプレイザ温度60℃、窒素流量0.7l/分
試料溶媒:クロロホルム/メタノール(9/1(体積比))
試料濃度:0.1重量%
注入量:20μl。
そして、上記と同装置および同条件で、酢化度62.5%(完全置換物)のセルローストリアセテートの組成分布半値幅(分散値)を前記と同じ方法で求め、この分散値と前記未補正値を用い、前記式(1)から、実施例および比較例で得られたセルローストリアセテートの組成分布半値幅(補正値)を求めた。なお、酢化度62.5%(完全置換物)のセルローストリアセテートとしては、後述のセルローストリアセテートの調製において、実施例1の酢化停止後の生成物(沈綿)を、熟成させることなく即座に抽出したものを用いた。
<カルシウム(Ca)成分含有量>
乾燥したセルローストリアセテートを完全に燃焼させた後、灰分を塩酸に溶解する前処理を行った上で原子吸光法により測定した。測定値は絶乾状態のセルロースエステル(セルローストリアセテート)1g中のカルシウム含有量としてppmを単位として得られる。
<残存硫酸量>
乾燥したセルロースエステルを1300℃の電気炉で焼き、昇華してきた亜硫酸ガスを10%過酸化水素水にトラップして、これを0.1N(規定)の水酸化ナトリウム水溶液にて滴定した。得られた値はSO4 2-換算の量である。測定値は絶乾状態のセルロースエステル(セルローストリアセテート)1g中の硫酸含有量としてppmを単位として得られる。
<レタデーション値>
自動複屈折計(王子計測機器製 「KOBRA−21ADH」)を用いて、セルローストリアセテートフィルムの面方向屈折率(平均値)および厚み方向屈折率を測定した。これらの屈折率の差(面方向屈折率−厚み方向屈折率)にフィルムの厚み(80000nm)を乗じて、Rth(nm)を求めた。
[実施例1〜3および比較例1〜2]
(セルローストリアセテートの調製)
シート状セルロース(コットンリンターパルプ)をディスクリファイナーで処理し、綿状とした。100重量部の綿状セルロース(含水率10%)に表1に示す割合で酢酸を噴霧し、よく攪拌し、室温で一夜静置することで前処理した。表1に示す所定量の酢酸および無水酢酸を混合し、マイナス5℃に冷却した。この冷却した酢酸および無水酢酸の混合物を、二軸ニーダー型反応器に入れ、さらに表1に示す所定量の硫酸および前処理済み綿状セルロースを加え、混合した。90分を要して内容物を所定酢化温度に調節し、その後、表1に示す所定時間酢化反応を行った。酢化反応を行った後、表1に示す所定の熟成硫酸量及び熟成水分量となるように、24重量%の酢酸マグネシウム水溶液(及び水)を添加し、未反応の無水酢酸を分解し、酢化を停止させた。その後、反応浴を所定の熟成温度(脱アセチル化温度)に整温して、熟成を行った(熟成を開始した)。なお、比較例1、2、実施例1および3では、熟成開始から40分間熟成したのち(すなわち、40分間初期熟成工程(ii−1)を行った後)、水を添加し、表1に示す所定の熟成水分量とした。表1に示す所定の時間、熟成を行った後、酢酸マグネシウム水溶液を添加し、硫酸を完全に中和して反応を停止させた。反応浴を10重量%希酢酸中に攪拌下投入し、セルローストリアセテートを沈殿させ、希水酸化カルシウム水溶液に15分浸漬した後、濾別し乾燥することにより、セルローストリアセテートを得た。
(フィルムの調製)
得られたセルローストリアセテート12.93g、塩化メチレン78.2g、メタノール6.8gを混合し、セルローストリアセテート溶液を得た。この溶液を、ろ紙および加圧ろ過器を用いてろ過したのち、ガラス板上に流延し、厚み80μm(80000nm)の可塑剤を含まないセルローストリアセテートフィルムを得た。
また、得られたセルローストリアセテート12.93g、塩化メチレン78.2g、メタノール6.8g、可塑剤としてトリフェニルホスフェート2.07gを混合し、セルローストリアセテート溶液を得た。この溶液を、ろ紙および加圧ろ過器を用いてろ過したのち、ガラス板上に流延し、厚み80μm(80000nm)のセルローストリアセテートフィルム(可塑剤を含むセルローストリアセテートフィルム)を得た。
実施例1〜3および比較例1〜2のセルローストリアセテートの調製に使用した各成分の使用量(含有量)とともに、得られたセルローストリアセテートにおける重合度、総平均置換度、2位および3位の平均置換度、6位平均置換度、置換度単位の組成分布半値幅(アセチル置換度分布半値幅)、カルシウム成分の含有量、残存硫酸量、およびカルシウム成分の含有量と残存硫酸量との化学当量比(モル比)を表1に示す。また、実施例1〜3および比較例1〜2で得られたセルローストリアセテートフィルム(可塑剤を含まないセルローストリアセテートフィルムおよび可塑剤を含むセルローストリアセテートフィルム)のRth(nm)を表1に示す。
なお、表1において、「全DS」とは、セルロースの2,3および6位の平均置換度の合計(すなわち、総平均置換度)を示し、「DS2+DS3」とは、2位および3位の平均置換度の合計、「DS6」は6位の平均置換度を示す。また、表1において、熟成水分(モル)とは、酢酸100モルに対する水分量(モル)を示す。
Figure 2006117896

Claims (12)

  1. 総平均置換度が2.900〜2.965であり、グルコース単位の2位および3位の平均置換度の合計が1.97以上であり、かつ組成分布半値幅が、置換度単位で0.07以下であるセルロースエステル。
  2. セルロースアセテートである請求項1記載のセルロースエステル。
  3. 総平均置換度が2.910〜2.963であり、グルコース単位の2位および3位の平均置換度の合計が1.973以上であり、かつ組成分布半値幅が、置換度単位で0.065以下である請求項1記載のセルロースエステル。
  4. 総平均置換度が2.915〜2.962であり、グルコース単位の2位および3位の平均置換度の合計が1.975以上であり、かつ組成分布半値幅が、置換度単位で0.060以下のセルロースアセテートである請求項1記載のセルロースエステル。
  5. 硫酸触媒の存在下で、セルロースをアシル化剤でアシル化するアシル化工程(i)と、硫酸触媒の存在下で熟成する熟成工程(ii)とを含むセルロースエステルの製造方法であって、前記アシル化工程(i)において、セルロース100重量部に対して、硫酸触媒6.5〜9.5重量部の存在下で、セルロースのヒドロキシル基1モルに対して1.40〜2.0モル当量のアシル化剤を用いてアシル化する請求項1記載のセルロースエステルの製造方法。
  6. 前記熟成工程(ii)が、セルロース100重量部に対して3重量部以下の硫酸触媒の存在下で、かつ前記アシル化剤に対応する有機カルボン酸100モルに対して4〜9モルの水性溶媒の存在下で、熟成する初期熟成工程(ii−1)を少なくとも含む請求項5記載のセルロースエステルの製造方法。
  7. 初期熟成工程(ii−1)において、熟成反応開始から20分以上熟成する請求項6記載の製造方法。
  8. 酢酸中、硫酸触媒の存在下で、セルロースを無水酢酸でアセチル化するアセチル化工程(i)と、硫酸触媒の存在下で熟成する熟成工程(ii)とを含むセルロースアセテートの製造方法であって、(1)前記アセチル化工程(i)において、セルロース100重量部に対して、硫酸触媒7〜9.2重量部の存在下で、セルロースのヒドロキシル基1モルに対して1.45〜1.9モル当量の無水酢酸を用いてアセチル化し、(2)前記熟成工程(ii)が、セルロース100重量部に対して2.5重量部以下の硫酸触媒の存在下で、かつ酢酸100モルに対して4.5〜8モルの水の存在下で、熟成反応開始から30分以上熟成する初期熟成工程(ii−1)を少なくとも含む請求項2記載のセルロースエステルの製造方法。
  9. 酢酸中、硫酸触媒の存在下で、セルロースを無水酢酸でアセチル化するアセチル化工程(i)と、塩基の水溶液を添加して前記硫酸触媒を部分中和する工程と、硫酸触媒の存在下で熟成する熟成工程(ii)とを含むセルロースアセテートの製造方法であって、(1)前記アセチル化工程(i)において、セルロース100重量部に対して、硫酸触媒7.5〜9重量部の存在下で、セルロースのヒドロキシル基1モルに対して1.5〜1.8モル当量の無水酢酸を用いてアセチル化し、(2)前記熟成工程(ii)が、セルロース100重量部に対して0.8〜2.4重量部の硫酸触媒の存在下で、かつ酢酸100モルに対して5.5〜7.5モルの水の存在下で、熟成反応開始から30分〜2時間熟成する初期熟成工程(ii−1)を少なくとも含む請求項2記載のセルロースエステルの製造方法。
  10. 請求項1記載のセルロースエステルで構成されているセルロースエステルフィルム。
  11. 可塑剤を含まない条件下で測定したときの厚み方向のレタデーション値が、厚み80μmにおいて、−20nm〜+10nmである請求項10記載のセルロースエステルフィルム。
  12. 液晶表示装置用光学補償フィルム又は偏光板の保護フィルムである請求項10記載のセルロースエステルフィルム。
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