JP4786909B2 - セルロース混酸エステル及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フィルム(例えば、偏光板用の保護フィルムなどの光学フィルム)などを形成するのに有用なセルロース混酸エステルとその製造方法、並びにセルロース混酸エステルで構成されたフィルムに関する。
セルロースエステルは光学的特性に優れるため、種々の光学用フィルムなどとして利用されている。例えば、液晶テレビに代表される薄型フラットパネルディスプレイに用いられる液晶表示装置に使用される偏光板は、一般に、セルロースエステルフィルムで形成された偏光板用保護フィルム(偏光膜用保護フィルム)と偏光膜との貼り合わせにより得られる。
このようなセルロースエステルの光学的特性は、吸湿による変形、剥離、屈折率の変化などを伴って低下する。このため、このような偏光板用保護フィルムを備えた偏光板を高温高湿下で使用した場合、薄膜にクラックが入ったり、偏光板用保護フィルムが偏光膜から剥離したり、偏光板用保護フィルムが着色するなどの問題が発生することがあった。そのため、偏光板では、偏光膜をカバーする偏光板用保護フィルムの特性が、その特性に大きな影響を与え、カーナビゲーションのように車内で高温高湿に曝される場合には無論のこと、一般的な家庭での使用でも、耐湿性(又は耐湿熱性)が要求される。そして、このような吸湿による劣化現象は、一般に使用されているセルロースアセテートを用いた光学フィルム、さらにはこの光学フィルムを備えた表示装置についても経時的に観察される。
このように、光学フィルムとして使用されるセルロースエステルは、従来より知られており、セルロースエステルには、高温高湿下で劣化しないことや、寸法安定性に優れるなどの良好な耐湿性(耐湿熱性)が要求される。このようなセルロースエステルの耐湿性(耐湿熱性)は、セルロースアセテートに比べて、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロース混酸エステルの方が優れていることが知られている。例えば、特開2003−221455号公報(特許文献1)には、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が1.8〜3.5であるセルロースエステルを含有し、特定の輝点異物が10個以下であるセルロースエステルフィルムが開示されている。この文献には、セルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましいこと、アセチル基の置換度とプロピオニル基及び/またはブチリル基の置換度の合計が2.4以上3.0以下であること、アセチル基の置換度とプロピオニル基及び/またはブチリル基の置換度の合計が2.5以上2.85以下であることが好ましいこと、アセチル基の置換度が1.4以上2.0以下であることが好ましいこと、プロピオニル基やブチリル基の置換度の割合を大きくするとフィルムの水分率を小さくすることができ、耐湿熱性を向上できることが記載されている。
また、特開平10−45804号公報(特許文献2)には、硫酸を触媒として、セルロースを酢酸または無水酢酸および炭素原子数が3以上の有機酸またはその無水物とエステル化反応させ、セルロースの水酸基がアセチル基および炭素原子数が3以上のアシル基で置換されており、特定の置換度割合を有するセルロースの混酸エステルを製造する方法であって、上記エステル化反応の最高温度を35乃至50℃に調整するセルロースの混酸エステルの製造方法が開示されている。この文献の方法では、比較的平均重合度が高いセルロース混酸エステルを得ることができる。
一方、近年、ハイビジョン放送などに代表される液晶表示装置などの高画質化、高精細化に関する実用化及び開発が進んでおり、それに伴って、液晶表示装置などに用いられる光学フィルム(偏光板用保護フィルムなど)に対しても、フィルム中に含まれる異物の低減に対する要求が強くなっている。
セルロースエステルフィルム中に含まれる異物としては、用いる添加剤に起因するもの、製造工程において混入するゴミに起因するもの、セルロースエステル中に含まれる未酢化又は低酢化度のセルロースエステル繊維に起因するものなどが挙げられる。これらの内、製造工程において混入するゴミなどに起因するものは、いわゆる黒色異物として光学的欠点となる。また、この黒色異物とは別に、輝点異物というものも存在する。
例えば、前記特許文献1には、前記のように、輝点異物が存在することが開示されている。輝点異物とは、直交状態(クロスニコル)で配置した2枚の偏光子の間にセルロースエステルフィルムを置き、一方の偏光子の外側から光を当て、他方の偏光子の外側から顕微鏡で観察すると、異物部分で光が漏れ、輝点となって見える異物である。さらに、特開2003−213004号公報(特許文献3)には、異物として、照射光の反射により白色の異物として、クロスニコル状態での発光現象として観察されるいわゆる砂目状異物という輝点異物とは区別される光学的な欠点も指摘されている。
上記の異物のうち、黒色異物などは、製造工程のクリーン化などにより、その対策も比較的容易である。これに対して、輝点異物や砂目異物などの小粒径の異物(微小異物)は、光学フィルムなどの用途では、最近の検討において、その除去の重要性が増してきている。
このようにセルロースエステルでは、上記のような微小異物の問題が大きく着目され、その改善が求められているが、特に、セルロースアセテート以外のセルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)のようなセルロース混酸エステルを製造する場合には、未反応のセルロースや低置換度のセルロースエステルなどが生じやすくなり、前記輝点異物や砂目異物などの微小異物の問題がより一層多く生じる。なお、セルロース混酸エステルが未反応のセルロースや低置換度のセルロースエステルなどの異物を生じやすいことは、一般的に知られており、例えば、「繊維素系樹脂(宇多和夫、丸澤廣著 日刊工業新聞社刊)」(非特許文献1)には、プロピオニル基をセルロースに導入しようとした場合において、「また触媒としては通常硫酸が使用されるがアセテートブチレートの製造の場合と同様、触媒効果が弱くまた反応も緩慢であり、また、セルロースの崩壊もいちじるしいので溶解性が均一良好で未反応繊維も少なく、粘度も高いプロピネートを得るためには前処理活性化を十分に行うとともに、エステル化混酸倍量を少なくする必要がある。」と記載されている。そして、「熟成終了後酢酸マグネシウムで残存する硫酸を完全に中和したのち、ろ過を行い未反応繊維や異物を除去したのち沈殿し、洗浄、安定化後脱水、乾燥、粉砕し製品とする。沈殿や洗浄はアセテートブチレート同様、浴が疎水性であるため、アセチルセルロースの場合よりむつかしい。」とも記載されている。
このように、セルロースアセテートブチレートやセルロースアセテートプロピオネートでは、未反応繊維が残存することが技術常識であり、この低減のための試みも行われている。例えば、エステル化における炭素数3以上の脂肪酸と触媒硫酸との反応性を改善するために、例えば、「C.J.Malm:Svendk Kem.Tidskr,73,10(1961)」(非特許文献2)には、前処理においてセルロースを酢酸で活性化後少量の硫酸を含む酪酸で処理してセルロースに硫酸を収着させたのちエステル化するとともに、エステル混酸量とセルロースの比をできるだけ小さくして、酸無水物および触媒硫酸濃度を高める技術が記載されている。また、米国特許第2097954号(特許文献4)には、アセチル化度が高いセルロール混合脂肪酸エステルにおいて、セルロースを酢酸で活性化した後、少量の硫酸を含む酪酸で処理する前処理工程を提案している。しかし、これらの方法では確かに、従来の用途である成形品や塗料のバインダーなどに用いる場合には、ドープの濾過を行うことが前提であれば、異物を充分に少なくすることができたが、光学フィルム中でも液晶表示装置などに用いられる光学フィルムとして用いることができなかった。
また、米国特許第2250201号(特許文献5)には、プロピオニルやブチリル基の置換度が高いセルロース混合脂肪酸エステルにおいては、これらの混合脂肪酸エステルが疎水性のため、結合硫酸が脱離しにくいため、加水時に希酢酸を混合し、加温して結合硫酸を脱離させる技術が開示されている。
しかし、これらの方法でも、依然として、未反応セルロースなどの異物を少なくすることができなかった。
さらに、セルロース混合脂肪酸エステルでは、このような微細な異物は、ろ過のような通常の方法では精密に除去することは困難である。すなわち、一般にセルロースエステルフィルムを溶液流延法で製造する場合、通常、ドープ中には未溶解物が存在するので、ろ過処理を行うことが一般的である。このようなろ過では、セルロースエステル溶液は粘度が高いため、ろ過材として、濾過面積の大きいフィルタープレスやディスク状の金属フィルターが用いられている。このようなろ過材は、未溶解物の捕捉により、圧力を上昇させるので定期的に交換する必要がある。交換時には、一旦、濾過器内にあるセルロースエステル溶液を取り除く必要がある。近年においては、上述のようにセルロースエステルフィルムに対する要求品質がますます厳しくなり、特に、未酢化又は低酢化度のセルロースエステルの除去方法として、従来のようなセルロースエステルを溶媒に溶解した溶解液、すなわちドープ液を単に濾過することだけでは目標とする品質を得ることが難しくなり、より小粒径の異物を除去する必要が生じてきた。
そのため、このような微小異物を除去するため、種々のろ過方法が報告されている。例えば、前記特許文献1には、セルロースエステルを溶媒に溶解したドープ液を、二段階以上の濾過工程(例えば、第一段階が濾紙による濾過工程であり、第二段階が金属フィルタによる濾過工程である濾過工程)を経て製膜する方法が開示されている。また、前記特許文献3には、セルロース製フィルターペーパーを用いたセルロースエステル溶液の濾過方法において、該セルロース製フィルターペーパーが、保留粒子径の最小粒子径が3μm以下0.5μm以上であり、厚みが3.5〜4.5mmであり、かつ濾水時間が150〜350秒である濾過方法が開示されている。
さらに、特開平11−254466号公報(特許文献6)には、0.05mmを越える直径を持つ輝点の数が1cm2当たり0個であって、そして直径が0.01〜0.05mmの範囲の輝点の数が1cm2当たり500個以下であるセルロースエステルフィルムが開示されている。この文献には、不溶物などを除去するためには絶対濾過精度が0.005mm以下(特に0.001〜0.005mm)の範囲の濾材が好ましく、このように濾過精度の高い濾材で濾過することにより、エステル化されていないセルロースなどの微小の不溶物および不純物を効果的に除去することができることが記載されている。
さらにまた、特開2003−326112号公報(特許文献7)には、ポリマーを溶媒に溶解させたポリマー溶液の濾過方法において、前記ポリマー溶液中に含まれる不溶解物のうち、少なくとも一の不溶解物のサイズよりも大きな孔径の孔を有する濾材を使用することを特徴とするポリマー溶液の濾過方法が開示されており、特開2004−113897号公報(特許文献8)には、ポリマーを溶媒に溶解したドープ中の異物を濾過により除去するドープの濾過方法において、前記ドープ中の異物を、孔径の同一な焼結金属フィルタを備えた2基以上の濾過器を直列に配置して濾過するドープの濾過方法が開示されている。
しかし、未反応繊維に起因する、輝点異物や砂目異物の明欠点となる未反応繊維については、これらの文献の方法でも、除去精度が充分でない。なぜならば、微小な異物をろ過するために、ろ過の目開きを小さくすればろ過効率が低下することもあり、重合度の大きなセルロース混酸エステルを得ることはできないし、またろ過効率が低下を許容したとしても、濾材を通過する輝点異物や砂目異物が問題となった。
そのため、原料としてのセルロース混酸エステルの段階から、未反応セルロースや低置換度セルロースエステルなどの異物の生成を抑制することの重要性が高まってきている。
さらに、単に未反応セルロースを低減するのみではなく、セルロースエステルのフィルム製造工程における流延時の剥離性の向上のため、アルカリ土類金属、アルカリ金属の量を低減することも求められており、そのためセルロースエステルに含まれる硫酸量を低減することも求められている。なお、耐湿熱安定性を付与するためには、セルロースエステルに含まれる硫酸量(特に結合硫酸)を低減する必要がある。そして、硫酸量と見合うアルカリ土類金属、アルカリ金属を添加する必要があり、単純にアルカリ土類金属、アルカリ金属の添加量を少なくすることはできない。さらに、フィルムの強度などを考えると最低必要な重合度が存在し、これらの重合度を確保しながら、硫酸量を低減し、かつ未反応セルロースを低減するという技術が求められている。
特開2003−221455号公報(特許請求の範囲、段落番号[0025][0026]) 特開平10−45804号公報(特許請求の範囲) 特開2003−213004号公報(特許請求の範囲、段落番号[0002]) 米国特許第2097954号明細書(特許請求の範囲) 米国特許第2250201号明細書(特許請求の範囲) 特開平11−254466号公報(特許請求の範囲、段落番号[0015]) 特開2003−326112号公報(特許請求の範囲) 特開2004−113897号公報(特許請求の範囲) 「繊維素系樹脂」(宇多和夫、丸澤廣著 日刊工業新聞社刊、p103) 「C.J.Malm:Svendk Kem.Tidskr,73,10(1961)」
従って、本発明の目的は、未反応セルロースなどの微細な異物の含有量が著しく少ない高純度のセルロース混酸エステル(セルロースアセテートプロピオネートなど)およびその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、セルロース混酸エステルであっても、微細な異物の含有量を著しく高いレベルで低減できるとともに、耐熱性に優れ、高い重合度を有するセルロース混酸エステルおよびその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、湿熱安定性と光学的特性とを高いレベルで両立できるセルロースエステルフィルムを提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、アシル化工程、熟成(脱アシル化)工程、沈澱処理工程(沈澱工程)などの一連の工程を経るセルロース混酸エステルの製法において、アシル化条件(例えば、アシル化時間やアシル化温度)、熟成条件(例えば、多段階の中和など)、沈澱処理条件などを精密に調整することにより、著しく高いレベルでセルロース混酸エステル(セルロースアセテートプロピオネートなど)中の非溶解性成分(微細な異物)の含有量を低減できること、さらには残存硫酸量が少なくでき、湿熱安定性に優れたセルロース混酸エステルが得られることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明のセルロース混酸エステル(以下、単に混酸エステル、セルロースエステルなどということがある)は、メチレンクロライド/メタノール(重量比)=9/1の混合溶媒に対する非溶解性成分の含有量が0.12重量%以下である。このようなセルロース混酸エステルの総平均置換度は、2.6〜2.99程度であってもよく、前記非溶解性成分の含有量は、0.07重量%以下であってもよい。
前記セルロース混酸エステルは、少なくともアセチル基を有するセルロース混酸エステルであってもよく、例えば、アセチル基とアセチル基以外の脂肪族アシル基(プロピオニル基、ブチリル基などのC3-6アルキルカルボニル基など)とを有するセルロース混酸エステルであってもよい。代表的な前記アセチル基を有するセルロール混酸エステルには、(i)総平均置換度が2.6〜2.99、アセチル基の平均置換度が1.5以上、アセチル基と脂肪族C3-6アシル基との割合(モル比)が前者/後者=95/5〜60/40のセルロースアセテート脂肪族C3-6アシレート、(ii)総平均置換度が2.6〜2.99、アセチル基の平均置換度が1.5未満であり、かつアセチル基と脂肪族C3-6アシル基との割合(モル比)が、前者/後者=30/70〜3/97のセルロースアセテート脂肪族C3-6アシレートなどが含まれる。
本発明では、残存硫酸量を小さくしても、比較的高い重合度のセルロース混酸エステルを得ることができ、例えば、前記セルロース混酸エステルにおいて、残存硫酸量(重量基準)は300ppm以下であり、粘度平均重合度は200〜400程度であってもよい。
代表的な本発明のセルロース混酸エステルには、非溶解性成分の含有量が0.07重量%以下であり、かつ以下の(i)又は(ii)を充足するセルロースアセテート脂肪族C3-6アシレートなどが含まれる。
(i)総平均置換度が2.6〜2.97、アセチル基の平均置換度が1.8以上、アセチル基と脂肪族C3-6アシル基との割合(モル比)が前者/後者=90/10〜70/30、粘度平均重合度が250〜350であり、かつ残存硫酸量(重量基準)が50〜200ppm
(ii)総平均置換度が2.6〜2.97、アセチル基の平均置換度が1以下であり、かつアセチル基と脂肪族C3-6アシル基との割合(モル比)が、前者/後者=20/80〜5/95、粘度平均重合度が250〜350であり、かつ残存硫酸量(重量基準)が50〜200ppm
本発明のセルロース混酸エステルは、硫酸触媒の存在下で、セルロースを、セルロース混酸エステルに対応するアシル化剤でアシル化するアシル化工程(i)と、硫酸触媒の存在下で熟成する熟成工程(ii)とを含む一連の工程により製造できる。特に、本発明では、セルロース混酸エステルの反応性(エステル反応性など)を低下させることなく、非溶解性成分となりうる残存硫酸の生成を抑制(又は低減)しつつ、セルロース混酸エステルを調製することにより、非溶解性成分の含有量を前記のような著しく高いレベルで低減する。例えば、前記アシル化工程(i)において、アシル化の開始からアシル化の停止までの時間をXとし、アシル化工程における最高温度に到達した時点からアシル化の停止までの時間をYとするとき、値[Y/X]×100が、40〜85になるようにアシル化してもよい。代表的な方法では、前記アシル化工程(i)において、セルロース100重量部に対して硫酸触媒2〜12重量部の存在下、かつ最高温度30〜50℃で、値[Y/X]×100が45〜65になるようにアシル化してもよい。このようなアシル化時間(および硫酸の使用量)の調整は、残存硫酸の生成を抑制するのに有効であり、特に、アセチル基の平均置換度が1.5以上のセルロース混酸エステルを製造するのに特に有用である。
また、前記熟成工程(ii)において、反応開始から反応の停止までに、連続的に塩基を添加するか又は少なくとも3回に分けて間欠的に塩基を添加してもよい。このような方法は、残存硫酸を低減するのに有効であり、アセチル基の平均置換度が1.5未満のセルロース混酸エステルを製造するのに特に有用である。さらに、前記製造方法は、前記熟成工程(ii)を停止した後、セルロース混酸エステルを含むドープに、有機酸を添加し、沈澱処理してセルロース混酸エステルを分離する工程を含んでいてもよい。このような沈澱処理方法は、残存硫酸を低減するのに有効であり、特に、前記連続的に塩基を添加するか又は少なくとも3回に分けて間欠的に塩基を添加する方法と組みあわせることにより、効率よく残存硫酸を低減できる。
本発明には、前記セルロース混酸エステルで構成されているセルロースエステルフィルムも含まれる。このようなセルロースエステルフィルムは、液晶表示装置用光学補償フィルム又は偏光板の保護フィルムであってもよい。
なお、本明細書において、「結合硫酸」とは、セルロースに結合した硫酸(硫酸エステルなどの硫酸基やスルホン酸基として結合した結合硫酸成分)を意味する。「総硫酸」とは、結合硫酸、遊離の硫酸などを総称し、「残存硫酸」、「残存硫酸成分」又は単に「硫酸」という場合がある。また、「残存硫酸」とは、(i)反応系においては、塩基の添加により中和された硫酸塩(又は析出した硫酸塩)に対応する硫酸は含まず、遊離の硫酸および結合硫酸を意味し、(ii)生成物としてのセルロースエステルに対して用いる場合、結合硫酸、遊離の硫酸、および塩基の添加により中和された硫酸塩などに対応する硫酸(H2SO4)を含む意味に用いる。なお、セルロース混酸エステルを洗浄した場合、残存硫酸には、遊離硫酸及び硫酸塩はほとんど含まれず、結合硫酸がほとんどである場合が多い。また、本明細書において、「アシル化(又はアシル化反応)の開始」とは、セルロース(活性化処理されていてもよいセルロース)とアシル化剤(例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸などのアシル基に対応する無水カルボン酸)とを接触させた時点を意味し、「アシル化(又はアシル化反応)の停止」とは、過剰のアシル化剤を失活させるため、失活剤(水など)を添加した時点を意味する。
また、本明細書において、「熟成」又は「熟成工程」とは、セルロースをアシル化した後、アシル化反応系に水、水溶液(例えば、水および有機カルボン酸類との水溶液など)及び/又は塩基(通常、水溶液の形態の塩基)を添加してアシル化剤を分解しつつ反応系に水を存在させ、硫酸触媒(又は残存硫酸触媒)の存在下で、脱アシル化及び脱硫酸エステル化を行うことを意味する。すなわち、熟成工程における「熟成反応」では、脱アシル化反応と脱硫酸エステル反応とが、互いに競争的に進行しているようである。そのため、本明細書において、「脱アシル化」、「脱硫酸エステル化」とは、「熟成」と同じ意味に用いる場合があり、「脱アシル化および脱硫酸エステル化」を含む意味に用いる場合がある。
さらに、本明細書において、「熟成反応の開始」又は「熟成工程の反応開始」とは、水又は塩基(又は塩基の水溶液)を添加し、水の存在下、熟成(脱アシル化及び脱硫酸エステル化)を開始させることを意味する。「熟成反応」は、アシル化反応の停止とともに、又はアシル化反応を停止し、所定の熟成温度に昇温した後、開始する場合が多く、「アシル化反応の停止」と「熟成反応の開始」とを同意に用いる場合がある。また、「熟成反応の停止」又は「熟成工程の反応停止」とは、反応系に残存する硫酸(残存硫酸)を過剰量の塩基で完全に中和することを意味する。また、「原料セルロース」とはアシル化前の原料セルロースを意味し、アシル化のために添加した硫酸触媒の量は、通常、塩基添加までの間に変動せず失われない。
本発明では、アシル化条件(例えば、アシル化時間やアシル化温度)、熟成条件(例えば、多段階の中和など)、沈澱処理条件などを精密に調整することにより、未反応セルロースなどの微細な異物の含有量が著しく少ない高純度のセルロース混酸エステル(セルロースアセテートプロピオネートなど)を得ることができる。また、本発明の方法では、セルローストリアセテートなどに比べてエステル反応性が低く、残存硫酸量を低減しにくいセルロース混酸エステルであっても、微細異物の含有量を著しく高いレベルで低減できるとともに、耐熱性に優れ、高い重合度を有するセルロース混酸エステルを得ることができる。さらに、本発明のフィルムでは、セルロース混酸エステルであるにもかかわらず、残存硫酸が少なく、微細な異物が著しく高いレベルで低減されているので、耐湿熱性(湿熱安定性)と光学的特性とを高いレベルで両立できる。
(セルロース混酸エステル)
本発明のセルロース混酸エステルでは、通常、ろ過などによって、セルロース混酸エステルから分離および除去することが困難であり、光学的な欠点となりうる微細な異物(微小異物)の含有量が著しく高いレベルで低減されている。本明細書では、このような非溶解性成分(微細な異物)を、メチレンクロライド/メタノール(重量比)=9/1の混合溶媒に対して溶解しない成分(非溶解性成分)であると定義する。前記非溶解性成分としては、前記混合溶媒に溶解しなければ特に限定されないが、通常、主に、セルロース混酸エステルの合成において反応しなかった未反応セルロース、低置換度のセルロースエステル、残存硫酸由来の異物[例えば、セルロース混酸エステル同士が結合硫酸および金属成分(カルシウムなど)を介して結合した結合形成物]などの原料のセルロース又はセルロース由来の副生物が挙げられる。なお、これらのうち、非溶解性成分は、未反応セルロースおよび低置換度のセルロースエステルがほとんどを占める場合が多い。このような非溶解成分のうち、残存硫酸由来の異物は、触媒として用いる硫酸の使用量を減らすことにより低減できるが、未反応セルロース、低置換度のセルロースエステルなどを副生しやすくなる。また、逆に、未反応セルロースなどを低減するため、触媒として用いる硫酸の使用量を増やせば、残存硫酸を低減できず残存硫酸由来の異物を副生しやすくなる。また、エステル化時間を長くすれば未反応セルロースは低減するが、セルロース混酸エステルの重合度が低下する。そこで、本発明では、後述するように、アシル化条件(例えば、アシル化時間やアシル化温度)、熟成条件(例えば、多段階の中和など)、沈澱処理条件などを精密に調整し、非溶解性成分の含有量が著しく少ないセルロース混酸エステルを得る。
本発明のセルロース混酸エステルの前記非溶解性成分の含有量(含有割合)は、0.12重量%以下(例えば、0〜0.11重量%程度)であればよく、例えば、0.10重量%以下(例えば、0〜0.09重量%程度)、好ましくは0.07重量%以下(例えば、0.0001〜0.06重量%程度)、さらに好ましくは0.05重量%以下(例えば、0.0005〜0.04重量%程度)、特に0.03重量%以下(例えば、0.001〜0.025重量%程度)であり、0.02重量%以下[例えば、0〜0.15重量%程度、特に0.01重量%以下(例えば、0〜0.05重量%程度)]とすることも可能である。
なお、前記非溶解性成分の含有量は、例えば、以下のようにして測定できる。前記セルロース混酸エステルを1重量%の割合で、前記混合溶媒(メチレンクロライド/メタノール(重量比)=9/1の混合溶媒)に溶解させた溶液(ただし、非溶解性成分は溶解していない)を、所定の孔径を有するフィルター部を備えたガラスフィルター(例えば、相互理化学硝子製作所製の商品名「G−4」相当品)を使用してろ過し、ろ過残渣に付着している付着物(ドープ)を洗浄するため、フィルター部分を前記混合溶媒で洗浄したのち、ろ過残渣を含むガラスフィルターを、一定の重量(恒量)になるまで乾燥する。そして、ろ過前後のガラスフィルター重量を測定し、ろ過後(ろ過、洗浄および乾燥後)のガラスフィルター重量をX(g)、ろ過前のガラスフィルター重量をY(g)、ろ過に使用した溶液中のセルロース混酸エステルの乾燥重量をZ(g)とするとき、次式により非溶解性成分の含有量を算出する。
非溶解性成分の含有量=[(X−Y)/Z]×100(重量%)。
本発明のセルロース混酸エステルは、異なるアシル基を有するセルロースエステルである。アシル基としては、例えば、脂肪族アシル基[例えば、ホルミル基、アルキルカルボニル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基などのC2-20アルキルカルボニル基、好ましくはC2-6アルキルカルボニル基、さらに好ましくはC2-4アルキルカルボニル基)、シクロアルキルカルボニル基(例えば、シクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基などのC3-8シクロアルキルカルボニルなど)など]、芳香族アシル基[アリールカルボニル基(ベンゾイル基、フタロイル基などのC6-10アリールカルボニル基など)など]などが挙げられる。
セルロース混酸エステルは、このようなアシル基のうち、少なくとも2種(例えば、2〜10、好ましくは2〜5、さらに好ましくは2〜3、特に2)の異なるアシル基を組み合わせて有するセルロースエステルであればよい。代表的な異なるアシル基の組合せとしては、例えば、脂肪族アシル基同士の組合せ[例えば、アセチル基と、他の脂肪族アシル基(例えば、プロピオニル基、ブチリル基、ヘキサノイル基、シクロヘキシルカルボニル基などの脂肪族C3-7アシル基の少なくとも1種)との組合せ]、脂肪族アシル基と芳香族アシル基との組合せ[例えば、C2-6アルキルカルボニル基(アセチル基など)と芳香族アシル基(ベンゾイル基など)との組合せなど]などが挙げられる。
好ましいセルロース混酸エステルには、少なくともアセチル基を有するセルロース混酸エステル[すなわち、少なくともアセチル基と他のアシル基(アセチル基以外のアシル基)とを有するセルロースアセテートアシレート]、例えば、アセチル基と他の脂肪族アシル基とを有するセルロースアセテート脂肪族アシレート(例えば、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート、セルロースアセテートヘキサノエートなどのセルロースアセテート脂肪族C3-10アシレート、好ましくはセルロースアセテート脂肪族C3-6アシレート)などが挙げられ、特に、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好ましい。
本発明のセルロース混酸エステルにおいて、総平均置換度(セルロースを構成するグルコース単位の2,3および6位に置換するアシル基の総平均置換度)は、充分な耐湿性を付与できる範囲で選択でき、3以下(例えば、2.5〜3程度)の範囲から選択でき、例えば、2.55〜2.99(例えば、2.6〜2.99)、好ましくは2.60〜2.98(例えば、2.6〜2.97)、さらに好ましくは2.65〜2.97、特に2.7〜2.96(例えば、2.80〜2.95)程度であってもよい。
本発明のセルロース混酸エステルにおいて、異なるアシル基の割合は、用途などに応じて適宜選択できる。例えば、少なくともアセチル基を有するセルロース混酸エステル(セルロースアセテートアシレート)において、アセチル基の平均置換度は、例えば、0.01〜2.9(例えば、0.05〜2.8)、好ましくは0.1〜2.7、さらに好ましくは0.2〜2.5、特に0.3〜2.4程度であってもよい。特に、セルロースアセテートアシレートにおいて、(i)アセチル基の置換度を比較的大きくする場合、アセチル基の平均置換度は、1.5以上(例えば、1.6〜2.95程度)の範囲から選択でき、例えば、1.7以上(例えば、1.75〜2.9程度)、好ましくは1.8以上(例えば、1.9〜2.7程度)、さらに好ましくは2.0以上(例えば、2.1〜2.6程度)、特に2.2以上(例えば、2.3〜2.5程度)であってもよく、(ii)アセチル基の置換度を比較的小さくする場合、アセチル基の平均置換度は、1.5未満(例えば、0.01〜1.45程度)の範囲から選択でき、例えば、1.4以下(例えば、0.02〜1.3程度)、好ましくは1以下(例えば、0.05〜0.8程度)、さらに好ましくは0.6以下(例えば、0.1〜0.4程度)、特に0.3以下(例えば、0.15〜0.25程度)であってもよい。
なお、アセチル基の置換度が小さい、すなわち、プロピオニル基、ブチリル基などの他のアシル基の置換度が高いセルロース混酸エステルであるほど、非溶解性成分および残存硫酸量を低減しづらくなる傾向がある。本発明では、このようなアセチル基の置換度が比較的小さいセルロース混酸エステルであっても、後述するように、アシル化条件、熟成条件や沈澱処理条件などを調整することにより、高いレベルで非溶解性成分の含有量を低減できる。
また、セルロースアセテートアシレートにおいて、アセチル基と他のアシル基(例えば、脂肪族C3-6アシル基など)との割合(モル比)は、例えば、前者/後者=99/1〜1/99、好ましくは95/5〜5/95、さらに好ましくは90/10〜7/93程度であってもよい。特に、セルロースアセテートアシレートにおいて、(i)アセチル基の置換度を比較的大きくする場合、アセチル基と他のアシル基との割合(モル比)は、前者/後者=99/1〜50/50、好ましくは95/5〜60/40、さらに好ましくは90/10〜70/30程度であってもよく、(ii)アセチル基の置換度を比較的小さくする場合、アセチル基と他のアシル基との割合(モル比)は、前者/後者=50/50〜1/99(例えば、55/45〜2/98)、好ましくは40/60〜3/97(例えば、30/70〜3/97)、さらに好ましくは20/80〜5/95(例えば、25/75〜10/90)程度であってもよい。
なお、セルロースアセテートアシレートにおいて、他のアシル基の平均置換度(又は他のアシル基の平均置換度の合計)は、例えば、0.05〜2.95(例えば、0.1〜2.9)、好ましくは0.2〜2.8、さらに好ましくは0.3〜2.7、特に0.4〜2.6程度であってもよい。特に、セルロースアセテートアシレートにおいて、(i)アセチル基の置換度を比較的小さくする(すなわち、他のアシル基の置換度を比較的大きくする)場合、他のアシル基の平均置換度は、1.2以上(例えば、1.25〜2.95程度)の範囲から選択でき、1.5以上(例えば、1.6〜2.93程度)、好ましくは1.8以上(例えば、2.0〜2.9程度)、さらに好ましくは2.3以上(例えば、2.4〜2.85程度)、特に2.6以上(例えば、2.65〜2.8程度)であってもよく、(ii)アセチル基の置換度を比較的大きくする場合、他のアシル基の平均置換度は、1.5未満(例えば、0.05〜1.45程度)の範囲から選択でき、1.4以下(例えば、0.2〜1.3程度)、好ましくは1.2以下(例えば、0.4〜1.1程度)、さらに好ましくは1.0以下(例えば、0.45〜0.9程度)、特に0.8以下(例えば、0.5〜0.75程度)であってもよい。
置換度(アシル化度)は慣用の方法で測定でき、例えば、酢化度(アセチル化度)は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度に準じて単位重量あたりのアシル基のモル数を測定するとともに、さらに、ケン化によって遊離した各アシル基の比率を液体クロマトグラフィーで測定することにより算出できる。また、アシル化度は、1H−NMR、13C−NMRで分析することもできる。
本発明のセルロース混酸エステル(セルロースアセテートアシレートなど)の粘度平均重合度は、100以上(例えば、120〜800)の範囲から選択でき、例えば、150〜500、好ましくは200〜400、さらに好ましくは250〜350(例えば、270〜330)、特に290〜320程度であってもよい。特に、比較的アセチル置換度を大きくする場合には、セルロース混酸エステルの粘度平均重合度は、例えば、粘度平均重合度180〜500、好ましくは200〜400、さらに好ましくは250〜350程度であってもよい。本発明では、後述するように、セルロースアセテートに比べてエステル化しにくいセルロース混酸エステルであっても、比較的重合度が高くかつ非溶解性成分の含有量が少ないセルロース混酸エステルを得ることができる。
粘度平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。なお、溶媒はセルロース混酸エステルの置換度などに応じて選択できる。例えば、メチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)の混合溶液にセルロース混酸エステルを溶解し、所定の濃度c(2.00g/L)の溶液を調製し、この溶液をオストワルド粘度計に注入し、25℃で粘度計の刻線間を溶液が通過する時間t(秒)を測定する。一方、前記混合溶媒単独についても上記と同様にして通過時間t0(秒)を測定し、下記式に従って、粘度平均重合度を算出できる。
ηr e l=t/t0
[η]=(lnηr e l)/c
DS=[η]/(6×10- 4
(式中、tは溶液の通過時間(秒)、t0は溶媒の通過時間(秒)、cは溶液のセルロース混酸エステル濃度(g/L)、ηr e lは相対粘度、[η]は極限粘度、DSは平均重合度を示す)。
セルロース混酸エステルは、硫酸を触媒として用いて合成した場合、「酢酸繊維」(和田野基著 丸善株式会社発行)などにも記載されているように、通常、残存する硫酸成分を含有する。このような残存硫酸成分には、遊離状のもの、吸着されているもの、エステルの形で結合しているもの(結合硫酸)、固体状の無機硫酸塩などが挙げられる。これらの硫酸成分のうち、慣用の方法(工業的な洗浄など)で洗浄したセルロース混合脂肪酸エステルの場合には、通常、吸着されているもの、遊離しているものは極微量である。固体状の無機硫酸塩は、沈澱条件などの影響を大きくうけるために残存する場合がある。洗浄処理されたセルロース混酸エステルにおいて、その他の残存硫酸の大部分は、結合硫酸である。このような結合硫酸は、通常のろ過や洗浄などにより除去することは困難であり、前記のように、金属成分とのイオン的な結合によりセルロース混酸エステルの結合物を副生して、非溶解性成分(微小異物)となり得るとともに、湿熱安定性を低下させるので、できる限り少ないのが好ましい。しかし、触媒として用いる硫酸の使用量を単に低減しても、前記のように、未反応セルロースや低置換度のセルロースエステルなどが生成しやすくなるため、非溶解性成分の量を低減できない。
本発明のセルロース混酸エステルの残存硫酸量(重量基準)は、湿熱安定性を維持するとともに非溶解性成分の含有量を効率よく抑えるため、1000ppm以下(例えば、0〜700ppm程度)の範囲から選択でき、例えば、500ppm以下(例えば、10〜400ppm程度)、好ましくは300ppm以下(例えば、20〜350ppm程度)、さらに好ましくは250ppm以下(例えば、50〜200ppm程度)であってもよい。
特に、本発明では、アセチル基の置換度を比較的大きくする場合、セルロース混酸エステルの残存硫酸量(特に、結合硫酸量)を、例えば、200ppm以下(例えば、0〜180ppm程度)、好ましくは150ppm以下(例えば、10〜130ppm程度)、さらに好ましくは120ppm以下(例えば、20〜110ppm程度)、特に50〜100ppm程度に低減することもできる。また、本発明では、アセチル基の置換度を小さくする場合(プロピオニル基などの他のアシル基の置換度を大きくする場合)であっても、セルロース混酸エステルの残存硫酸量を、例えば、300ppm以下(例えば、0〜280ppm程度)、好ましくは250ppm以下(例えば、20〜220ppm程度)、さらに好ましくは200ppm以下(例えば、30〜200ppm程度)、特に50〜200ppm(例えば、80〜180ppm程度)に低減することもできる。
なお、前記のように、残存硫酸量は、洗浄の有無により変化する場合が多く、通常、洗浄(および乾燥)により精製されたセルロース混酸エステルの残存硫酸量であってもよい。洗浄(洗浄処理)は、例えば、工業的な条件での洗浄[例えば、加熱下(例えば、70〜90℃程度の加熱)で、充分な時間(15分〜36時間(例えば、2〜4時間))の洗浄]などであってもよく、洗浄した溶液に硫酸成分が含まれなくなる(実質的に含まれなくなる)程度まで行ってもよい。
残存硫酸量の測定は、固体状の無機硫酸塩の影響を受けにくいいわゆる燃焼トラップ法で行うことが好ましい。すなわち、この燃焼トラップ法において、残存硫酸量(又は総硫酸量)は、乾燥したセルロース混酸エステルを1300℃程度の電気炉で焼き、昇華してきた亜硫酸ガスを所定の濃度の過酸化水素水にトラップして、これを所定の濃度の塩基(例えば、水酸化ナトリウム水溶液)にて滴定することにより測定できる。得られる測定値はSO4 2-換算の量であり、絶乾状態のセルロース混酸エステル1g中の硫酸含有量としてppmを単位として得られる。なお、残存硫酸量は、ASTM D871に記載されている方法を用いて測定できない。
なお、耐熱安定性を高めるため、セルロース混酸エステルは、通常、アルカリ金属(カリウム、ナトリウムなど)やアルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムなど)などの金属成分を含んでいる場合が多い。これらの金属成分は、金属支持体に対する親和性が高く、金属支持体からの流延乾燥膜の剥離性を大きく損なうとともに、フィルムの光学的特性をも損なう。この詳細な機構は明確ではないが、セルロースのアシル化において触媒硫酸により残存硫酸又は結合硫酸成分(硫酸エステル基やスルホン酸基)が生成するとともに、セルロース混酸エステルはセルロースに由来してカルボキシル基を有している。硫酸エステル基やスルホン酸基は酸性基であるため、残留するとセルロールエステル自体の加水分解を促進する。そこで、安定性(特に耐熱安定性)を付与するため、アルカリ金属類やアルカリ土類金属類の耐熱安定剤、特にカルシウム成分(カルシウム塩など)を添加すると、上記スルホン酸基とともにカルボキシル基は金属塩(カルシウム塩など)を形成する。しかし、これらの金属塩(カルシウム塩など)は、金属支持体に対する密着性を高め、剥離性を低減させる。また、金属成分は、前記のように結合硫酸に作用して非溶解性成分を副生する場合もある。そのため、安定性を損なわない範囲で、金属成分(カルシウム成分など)の含有量を低減することが有用である。
本発明のセルロース混酸エステルにおいて、カルシウム成分の含有量(重量基準)は、比較的小さく、5〜130ppm程度の範囲から選択でき、例えば、10〜110ppm(例えば、15〜100ppm)、好ましくは20〜90ppm(例えば、25〜80ppm)、さらに好ましくは25〜70ppm(例えば、30〜60ppm)、特に30〜55ppm(例えば、35〜50ppm)程度であってもよい。また、本発明のセルロース混酸エステルにおいて、マグネシウム成分の含有量(重量基準)は、例えば、5〜1000ppm(例えば、10〜900ppm)、好ましくは10〜800ppm(例えば、20〜500ppm)、さらに好ましくは20〜300ppm(例えば、25〜250ppm)、特に20〜200ppm(例えば、25〜150ppm)程度であってもよく、通常、25〜80ppm程度であってもよい。
さらに、残存硫酸(又は総硫酸、特に結合硫酸成分)の化学当量(硫酸換算での化学当量)に対するカルシウムの化学当量比(Ca/SO4比)は、例えば、0.05〜5.0、好ましくは0.1〜3、さらに好ましくは0.15〜2(例えば、0.18〜1.5)、特に0.2〜1(例えば、0.2〜0.8)程度であってもよい。
なお、カルシウムなどの金属含量は、前記のように洗浄(および乾燥)したセルロース混酸エステルを完全に燃焼させた後、灰分を塩酸に溶解させる前処理を施し、得られた試料について原子吸光法により測定できる。測定値は絶乾状態のセルロースエステル1g中の金属含有量としてppm単位で表される。なお、絶乾したセルロース混酸エステルをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理した後、ICP−AES(誘電結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析することによっても測定できる。
総硫酸に対するカルシウムの化学当量比[Ca/SO4比]は、カルシウムの含有量と硫酸量からCa/SO4比率をモル比として算出する。すなわち、上記硫酸量を96で除することにより、セルロースエステル1g中の硫酸含有量をmol単位で表すことができ、カルシウム含有量を40.1で除することにより、セルロースエステル1g中のカルシウム含有量をmol単位で表すことができる。
(セルロース混酸エステルの製造方法)
セルロース混酸エステルは、通常、硫酸触媒の存在下で、セルロースをセルロース混酸エステルに対応するアシル化剤でアシル化するアシル化工程(i)と、必要に応じて前記硫酸触媒を部分中和する工程と、硫酸触媒(又は残存硫酸)の存在下で熟成(又は加水分解、脱アシル化)する熟成工程(ii)[又は脱アシル化工程(ii)]とを含む一連の工程を経ることにより製造できる。すなわち、セルロース混酸エステルは、必要によりセルロースを活性化処理(又は前処理)した後、硫酸触媒の存在下、セルロースをアシル化剤でアシル化した後、アシル化剤を分解してエステル化を停止し、また必要により部分中和し、熟成(又は加水分解、脱アシル化)することにより製造できる。より詳細には、セルロース混酸エステルは、通常、セルロースをアシル基に対応する有機カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)により活性化処理(活性化工程)する活性化処理工程、硫酸触媒を用いてアシル化剤(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸など、特に無水酢酸)によりトリアシルエステル(セルローストリアシレート)を調製し(アシル化工程)、過剰量のアシル化剤(特に、無水酢酸などの酸無水物)を分解し(又は失活させ)、熟成(又は加水分解、脱アシル化)によりアシル化度を調整する熟成工程(脱アシル化工程、又はケン化・熟成工程)を経ることにより製造できる。そして、通常、このような熟成工程を経て得られたセルロース混酸エステルを含むドープを沈澱処理する沈澱処理工程(および洗浄処理工程)を経て、セルロース混酸エステル(又は精製セルロース混酸エステル)が得られる。なお、一般的なセルロースエステルの製造方法については、「木材化学」(上)(右田ら、共立出版(株)1968年発行、第180頁〜第190頁)を参照できる。
本発明のセルロース混酸エステルもまた、上記のように、硫酸触媒の存在下で、セルロースを、セルロース混酸エステルに対応するアシル化剤でアシル化するアシル化工程と、硫酸触媒の存在下で熟成する熟成工程とを含む一連の工程を経て製造できる。特に、本発明では、非溶解性成分の含有量を著しく少なくし、また湿熱安定性を向上させるため、上記のような活性化処理工程、アシル化工程、熟成(脱アシル化)工程、沈澱処理工程(沈澱工程)などを経る一連の工程において、アシル化工程におけるアシル化条件、熟成工程における熟成条件、沈澱方法などを精密に制御又は調整したり、さらにはこれらの条件を組みあわせることにより、前記セルロース混酸エステルを調製できる。詳細には、本発明の方法では、前記条件を精密に調整して、残存硫酸の生成を抑制(又は低減)しつつ、セルロース混酸エステルを合成(調製)することにより、著しく非溶解性成分の含有量が少なく、また湿熱安定性が高く、さらには比較的重合度の高いセルロース混酸エステルを効率よく製造する。
前記セルロース(パルプ)としては、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)や綿花リンターなどが使用できる。これらのセルロースは単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
(活性化工程)
活性化工程は、必ずしも必要ではないが、アシル化(アセチル化、プロピオニル化、ブチル化など、特にプロピオニル化などのC3-6アシル化など)を効率よく行うため、通常、行われる場合が多い。
活性化工程は、例えば、酸成分によりセルロースを処理することにより行うことができる。酸成分としては、目的とするセルロース混酸エステルの異なるアシル基の種類やその割合などに応じて、例えば、有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸などの混酸エステルのアシル基に対応する有機カルボン酸など)、無機酸(特に、硫酸)などが挙げられる。酸成分は、水を含む含水成分であってもよい。酸成分は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
前記セルロースアセテートアシレートを製造する場合、少なくとも酢酸を含む酸成分[酢酸単独、酢酸および他のアシル基に対応する酸(プロピオン酸など)]で活性化処理してもよい。
なお、硫酸は、アシル化反応を効率よく活性化できるものの、結合硫酸などとして最終生成物に残存する虞があるため、本発明では、硫酸を使用することなく、有機酸により活性化処理してもよい。
酸成分の使用量(含水成分では、水を含まない酸成分の使用量)は、セルロース100重量部に対して5〜500重量部、好ましくは10〜450重量部、さらに好ましくは20〜400重量部程度であってもよい。なお、少なくとも酢酸を酸成分として使用する場合、酢酸の使用量は、セルロース100重量部に対して5〜400重量部、好ましくは10〜350重量部、さらに好ましくは20〜330重量部程度であってもよい。
また、酢酸と他の有機酸とを用いる場合、酢酸と他の有機酸(プロピオン酸、酪酸などの他のアシル基に対応するカルボン酸)との割合(重量比)は、前者/後者=99/1〜10/90、好ましくは80/20〜20/80程度であってもよい。特に、アセチル置換度が高いセルロース混酸エステルを得る場合、酢酸と他の有機酸(プロピオン酸、酪酸などの他のアシル基に対応するカルボン酸)との割合(重量比)は、前者/後者=99/1〜50/50、好ましくは95/5〜60/40(例えば、90/10〜65/35)、さらに好ましくは85/15〜70/30程度であってもよい。
活性化処理は、セルロースと酸成分とを接触(又は混合)させることができればよく、例えば、セルロースを酸成分に噴霧する方法、セルロースを酸成分に浸漬する方法、混合機を用いてセルロースと酸成分とを混合する方法、これらを組みあわせた方法などが挙げられる。代表的な活性化処理では、ニーダーなどの混合機を用いてセルロースと酸成分とを混合してもよい。活性化処理は、常温下、冷却下又は加熱下で行ってもよく、加熱温度は、35〜80℃、好ましくは40〜70℃、さらに好ましくは50〜60℃程度であってもよい。活性化処理時間(特に、加熱下での活性化処理時間)は、5分〜3時間、好ましくは10分〜2時間、さらに好ましくは30分〜1時間程度であってもよい。
(アシル化工程(i))
アシル化工程では、セルロース(又は前記活性化処理されたセルロース)とアシル化剤とを接触(又は混合)させてアシル化する。
アシル化工程(i)では、通常、触媒として硫酸を用いる場合が多い。アシル化工程(i)において、アシル化触媒としての硫酸触媒(以下、単に硫酸ということがある)の使用量は、通常、セルロース(原料セルロース)100重量部に対して、硫酸触媒20重量部以下(例えば、0.5〜15重量部程度)、好ましくは15重量部以下(例えば、0.8〜12重量部程度)、さらに好ましくは12重量部以下(例えば、2〜12重量部)、特に10重量部以下(例えば、2〜8重量部程度)の存在下で行ってもよい。なお、前処理(活性化処理)において、硫酸を使用する場合、この前処理で使用した硫酸もアシル化触媒として使用できる。すなわち、前処理で硫酸を使用した場合、前処理工程およびアシル化工程で添加した硫酸の総量が、アシル化触媒としての硫酸の総量となる。
特に、比較的高いアセチル平均置換度(例えば、アセチル基の平均置換度が1.5以上)のセルロース混酸エステルを得る場合、アシル化工程(i)において、アシル化触媒としての硫酸触媒の使用量は、通常、セルロース(原料セルロース)100重量部に対して、0.5〜15重量部程度の範囲から選択でき、通常、1〜10重量部(例えば、5〜12重量部)、好ましくは1.5〜8重量部、さらに好ましくは2〜5重量部、特に2.5〜4.5程度であってもよい。
アシル化剤としては、酢酸などの有機酸(アシル基に対応する有機酸)、酢酸クロライドなどの有機酸ハライド(アシル基に対応する有機酸ハライド)であってもよいが、通常、アシル基に対応する無水カルボン酸(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などのC2-6アルカンカルボン酸無水物)を少なくとも使用する場合が多い。これらのアシル化剤(酸無水物など)は単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。なお、目的とするセルロース混酸エステルの置換度などにもよるが、活性化処理において、アシル基に対応する酸成分(例えば、酢酸など)を用いた場合には、この酸成分をアシル化剤としてそのまま用いてもよい。例えば、セルロースアセテートアシレートを得る場合、活性化処理工程で酢酸を使用し、アシル化工程では、酢酸を使用することなく、他のアシル基に対応するアシル化剤(例えば、無水プロピオン酸など)を使用してもよい。通常、炭素数3以上のアシル基は、アセチル基に比べて、セルロースに対して結合させにくい。そのため、アシル化工程では、炭素数3以上のアシル基に対応するアシル化剤(無水プロピオン酸、無水酪酸など)を少なくとも用いる場合が多い。
アシル化工程(アセチル化工程などのエステル化工程)でのアシル化剤(無水酢酸、無水プロピオン酸など)の使用量(総使用量)は、例えば、セルロース(原料セルロース)100重量部に対して、例えば、150〜700重量部、好ましくは250〜600重量部、さらに好ましくは300〜500重量部(例えば、350〜450重量部)程度であってもよい。また、前記セルロースアセテートアシレートを製造する場合、アセチル基に対応するアシル化剤(特に、無水酢酸)と他のアシル基に対応するアシル化剤(無水プロピオン酸、無水酪酸など)との割合は、前者/後者(重量比)=90/10〜0/100、好ましくは80/20〜0/100、さらに好ましくは70/30〜0/100程度であってもよい。特に、アセチル化度が高いセルロースアセテートアシレートを得る場合、アセチル基に対応するアシル化剤と他のアシル基に対応するアシル化剤との割合は、前者/後者(重量比)=90/10〜30/70、好ましくは85/15〜40/60、さらに好ましくは70/30〜50/50(例えば、65/35〜55/45)程度であってもよい。
アシル化工程は、通常、溶媒(又は希釈剤)中で行われる場合が多い。このような溶媒(又は稀釈剤)は、前記アシル化剤のうち液状のアシル化剤を溶媒として使用してもよく、有機カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸などのC2-6アルカンカルボン酸など、特に、アシル基に対応する有機カルボン酸)などを溶媒として使用してもよい。
なお、アシル化反応は発熱反応であるため、セルロースと接触させる成分(アシル化剤、硫酸および必要に応じて希釈剤)は、予め冷却していてもよい。冷却温度(予冷温度)は、例えば、−50℃〜10℃、好ましくは−40℃〜0℃、さらに好ましくは−30℃〜−10℃程度であってもよい。
アシル化(アシル化反応)は、前記のように、セルロース(又は前記活性化処理されたセルロース)とアシル化剤(および硫酸)とを接触(又は混合)させることにより行うことができる。アシル化反応は、通常発熱反応であり、反応系内の温度は上昇して最高温度に到達したのち、温度降下する。詳細には、アシル化反応の開始(又はセルロースとアシル化剤(および硫酸)との接触の開始)とともに反応系内の温度が上昇し、最高温度に到達する。通常、この最高温度付近では、セルロースの大部分(例えば、60〜90%程度)がアシル化されている場合が多い。そして、この最高温度に到達したのちは、アシル化がさらに進行するものの、溶媒による放熱などにより系内の温度が徐々に下がり、最終的にセルローストリアシレートが生成する。なお、反応系内の温度が上昇しすぎると均一にアシル化できなくなり、また、最高温度到達後、系内の温度が下がりすぎるとアシル化が進行しにくくなる。
そのため、アシル化反応は、通常反応温度を調整しつつ行うことができ、例えば、−15℃〜60℃、好ましくは−10℃〜45℃、さらに好ましくは−5℃〜35℃(例えば、−5℃〜30℃)、特に−5℃〜25℃(例えば、−5℃〜20℃)程度の温度範囲で行うことができる。特に、最高温度に到達した後からアシル化の停止までの反応温度は、必要に応じて加温しつつ調整してもよく、例えば、15〜60℃、好ましくは15〜50℃、さらに好ましくは20〜45℃程度で保持してもよい。
また、前記最高温度(アシル化工程における最高温度)は、例えば、15〜60℃、好ましくは15〜55℃(例えば、20〜45℃)、さらに好ましくは50℃以下(25〜50℃)程度であってもよい。特に、比較的高いアセチル平均置換度(例えば、アセチル基の平均置換度が1.5以上)のセルロース混酸エステルを得る場合、最高温度は、25〜50℃、好ましくは30〜50℃、さらに好ましくは35〜45℃程度であってもよい。また、特に、比較的小さいアセチル平均置換度(例えば、アセチル基の平均置換度が1.5未満)のセルロース混酸エステルを得る場合、最高温度は、15〜45℃、好ましくは15〜35℃、さらに好ましくは30℃以下(例えば、20〜30℃程度)であってもよい。
アシル化の開始からアシル化の停止までの時間(総アシル化時間)は、例えば、1〜12時間、好ましくは1.5〜10時間、さらに好ましくは2〜8時間程度であってもよい。特に、アセチル置換度が高いセルロース混酸エステルを得る場合、総エステル時間は、1〜4時間、好ましくは1.5〜3時間(例えば、2〜3時間)程度であってもよい。
なお、最高温度に到達した後の反応系は、セルロース内部にまで均一にアシル化させるため、また結合硫酸の低減のため、最高温度に到達後、アシル化停止までの時間を長くするのが好ましいことが知られている。しかし、アシル化停止までの時間を長くしすぎると重合度が低下し、沈澱洗浄における回収率の低下、フィルム強度の低下、フィルム生産性の低下につながることがある。
そのため、本発明では、前記アシル化温度や、最高温度に到達した時点からアシル化の停止までの時間(および最高温度)を精密に調整することにより、均一なアシル化と、硫酸が結合したセルロース混酸エステルの生成の抑制とを両立させつつアシル化してもよい。例えば、前記総エステル時間をX(時間)とし、最高温度に到達した時点からアシル化の停止までの時間(後期アシル化時間ということがある)をY(時間)とするとき、値[Y/X]×100(%)[すなわち、総アシル化時間に対する後期アシル化時間の割合(%)]を、30〜95(例えば、35〜90)の範囲から選択できるが、通常、40〜85(例えば、40〜80)、好ましくは45〜70(例えば、45〜65)、さらに好ましくは50〜60程度となるようにアシル化を行ってもよい。このような後期アシル化時間の調整は、未反応セルロースを低減するとともに残存硫酸(特に、結合硫酸)の生成を抑制し、重合度を適度なものに調整するのに効果的であり、特に、高いアセチル化度を有するセルロース混酸エステル(例えば、アセチル基の平均置換度が1.5以上のセルロース混酸エステルなど)の残存硫酸を低減するのに有用である。なお、小さいアセチル化度を有するセルロース混酸エステル(例えば、アセチル基の平均置換度が1.5未満のセルロース混酸エステルなど)を得る場合、前記値[Y/X]×100(%)は、例えば、40〜95、好ましくは50〜90、さらに好ましくは60〜90程度であってもよい。
上記のようなアシル化反応によりセルロースエステル(セルローストリアセテートなどのセルローストリアシレート)を生成させることができる。そして、所定のアシル化度(通常、総置換度3)に到達した後、アシル化反応を停止し、硫酸成分(又は残存硫酸成分)を熟成触媒(又は脱アシル化触媒)として利用して熟成(脱アシル化又は加水分解)する。
なお、アシル化反応の停止は、前記のように、水又は水と有機カルボン酸類(特にアシル化剤に対応する有機カルボン酸など)との混合溶媒を反応系に添加したり、前記塩基の水性溶液(特に水溶液)を添加することにより、アシル化剤(特に、無水酢酸などの過剰のアシル化剤)を失活させて行う場合が多い。すなわち、アシル化反応の停止は、過剰のアシル剤を失活させることができる失活剤(水、水と有機カルボン酸との混合溶媒、塩基の水溶液など)を反応系(アシル化反応系)に添加することにより行うことができる。なお、アシル化反応の停止(アシル化剤の失活)において、塩基の水性溶液(特に塩基の水溶液)を用いると、アシル化剤を分解(失活)しながら反応系中に水性溶媒(水及び/又はアルコールなど、特に水)を存在させて熟成工程における水性溶媒(特に水)の含有量を調整できるとともに、硫酸触媒を部分中和(さらには多段中和)できる。このような部分中和(さらには多段中和)を行うと、硫酸触媒を減らしつつ熟成できるので、結合硫酸(特に、熟成工程において生成する結合硫酸)を低減するのに有効である。特に、プロピオニル基、ブチリル基などの炭素数3以上のアシル基は、残存硫酸を低減することが困難であるため、このような部分中和(特に多段中和)により、比較的アセチル置換度が小さいセルロース混酸エステル(例えば、アセチル基の平均置換度が1.5未満のセルロース混酸エステル)において、結合硫酸の生成を抑制するのに有効である。そのため、アシル化反応の停止のため(又はアシル化工程の後)、塩基の水性溶液(特に塩基の水溶液)を添加して硫酸成分を部分中和し(およびアシル化反応を停止し)、後述する熟成工程(ii)に供してもよい。
塩基としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、周期表第13族金属化合物、遷移金属化合物、アンモニアなどが例示できる。アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど)、有機酸塩(酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの酢酸塩など)などが例示できる。アルカリ土類金属化合物としては、例えば、水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなど)、炭酸塩(炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウムなど)、有機酸塩(酢酸マグネシウム、酢酸カルシウムなどの酢酸塩など)などが例示できる。周期表第13族金属化合物としては、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、有機酸塩(酢酸塩など)などが例示できる。遷移金属化合物としては、鉄、銅、亜鉛などの遷移金属の水酸化物、有機酸塩(酢酸塩など)などが例示できる。これらの塩基は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの塩基のうち、部分中和では、通常、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物から選択された少なくとも一種の塩基を使用する場合が多い。特に、ナトリウム化合物、カリウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物から選択された塩基(好ましくは少なくともマグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物)を用いる場合が多い。
塩基は粉粒体の形態で用いてもよいが、通常、液体(例えば、水性溶媒の溶液、特に、水溶液)の形態で用いる場合が多い。塩基の水性溶液(特に水溶液)において、水性溶媒(塩基の水性溶液を構成する水性溶媒)としては、前記のように、水、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのC1-4アルカノールなど)などが例示できる。これらの水性溶媒は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。好ましい水性溶媒は、水(水単独)である。塩基の水性溶液において、塩基の濃度は、後述する熟成工程における硫酸や水性溶媒の含有量に応じて適宜調整できる。
部分中和のための塩基の使用量は、後述する熟成反応における硫酸量(残存硫酸量)に応じて調整でき、反応系中の硫酸触媒(仕込みの硫酸触媒)1当量に対して、例えば、0.1〜0.9当量、好ましくは0.2〜0.8当量、さらに好ましくは0.3〜0.7当量(例えば、0.3〜0.6当量)程度であってもよい。
なお、前記失活剤の添加は、一括に行ってもよく、連続的に行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。連続的又は複数回に分けて添加する場合、失活剤の添加時間(添加に要する時間)は、例えば、1分〜2時間、好ましくは5〜60分、さらに好ましくは10〜30分程度であってもよい。
(熟成工程(ii))
アシル化反応が停止(および部分中和)された反応系は、熟成工程(ii)に供される。熟成工程では、セルローストリアシレートの脱アシル化反応及び脱硫酸エステル反応を行う。
熟成工程は、他の酸触媒を新たに添加して行ってもよいが、通常、前記アシル化工程で使用した硫酸触媒の存在下で行うことができる。熟成工程は、セルロース(原料セルロース)100重量部に対して、硫酸触媒20重量部以下(例えば、0.5〜15重量部程度)、好ましくは15重量部以下(例えば、0.8〜12重量部程度)、さらに好ましくは10重量部以下(例えば、2〜8重量部程度)の存在下で行ってもよい。
特に、部分中和した場合、熟成工程は、セルロース(原料セルロース)100重量部に対して、硫酸触媒5重量部以下(例えば、0.5〜5重量部程度)、好ましくは4重量部以下(例えば、0.8〜3.5重量部程度)、さらに好ましくは3重量部以下(例えば、1〜2.2重量部程度)、特に2重量部以下(例えば、1.2〜1.8重量部程度)の存在下で行うことができる。
熟成工程(ii)では、さらに、水、有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸などのアシル基に対応する有機酸、特に酢酸)、これらの混合溶媒などの水性溶媒を新たに添加して熟成を行ってもよい。水性溶媒の添加量(使用量)は、セルロース(原料セルロース)100重量部に対して、例えば、50〜800重量部、好ましくは100〜600重量部、さらに好ましくは300〜500重量部程度であってもよい。
なお、アシル化反応の停止(又は熟成工程の開始)において、前記のように、前記塩基(塩基の水溶液)を添加して部分中和しても、残存硫酸成分(特に結合硫酸基濃度)を充分に低減ない場合がある。特に、アセチル置換度が比較的小さいセルロースアセテートアシレートでは、単に塩基を添加して部分中和し、そのまま、熟成しても、残存硫酸量を効率よく低減できない場合が多い。
そこで、本発明では、熟成工程において、多段階の中和(多段中和)、すなわち、反応系に所定量の塩基を連続的に添加するか又は複数回に分けて間欠的(又は段階的)に添加することにより、連続的に又は複数回に亘り中和(部分中和)しつつ熟成反応(脱アシル化および脱硫酸エステル反応)を行ってもよい。本発明では、連続的又は間欠的な添加(又は添加方法)により反応系の硫酸量を低減し、セルロースエステル結合の形態で導入された硫酸(硫酸エステル基)を効率よく脱離させ、結合硫酸を低減することができる。すなわち、脱アシル化反応と脱硫酸反応とは、前記のように、競争反応であるようである。このような反応系において、連続的又は間欠的な塩基の添加により、残存硫酸成分(結合硫酸など)の脱離効率を選択的に高めることができ、生成した硫酸金属塩を硫酸成分として除去できる。特に、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を添加すると、反応系で不溶性硫酸金属塩(特に、硫酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属硫酸塩)が生成し、析出とともに硫酸成分を反応系から除去できる。
なお、所定の形態(水溶液などの液体、粉体などの形態)で、塩基を反応系に短いインターバルをおいて滴下又は添加することにより、塩基を実質的に連続して添加できる。複数回に分けて塩基を添加する場合、塩基の添加回数は、少なくとも3回(例えば、3〜100回)、好ましくは4回以上(4〜100回)、さらに好ましくは5回以上(5〜100回)であってもよい。工業的に有利に熟成を行うためには、少なくとも3回、例えば、3〜50回(例えば、3〜20回)、好ましくは4〜25回(4〜20回)程度である場合が多く、3〜10回程度であってもよい。当初の硫酸触媒(アシル化反応停止後又は熟成開始時における硫酸触媒)を塩基で部分中和して熟成(脱アシル化)する操作が2回以下であると、残存硫酸量(特に結合硫酸量)を大きく低減できず、そのため、非溶解性成分の含有量を低減することが困難である。なお、塩基の添加は、熟成工程において、反応開始から反応停止までの間に行うことができる。すなわち、アシル化反応停止(又は熟成反応開始)および熟成工程の停止のための塩基の添加は、熟成工程での塩基の添加に含まない。
部分中和(熟成工程での塩基の添加)のための塩基の量は、反応系中の硫酸触媒1当量に対して、部分中和(又は中和操作)1回あたり0.1〜0.9当量、好ましくは0.2〜0.8当量、さらに好ましくは0.3〜0.7当量(例えば、0.3〜0.6当量)程度の範囲から選択できる。さらに、熟成工程では、このような部分中和をくり返すことができる。
前記塩基の添加様式は特に制限されず、等量の塩基を反応系に連続的又は間欠的に添加してもよく、熟成工程(又は熟成反応)の初期に塩基の添加量を多くし、後期に至るにつれて塩基の添加量を連続的又は間欠的(段階的)に低減してもよく、熟成工程の初期に塩基の添加量を少なくし、後期に至るにつれて塩基の添加量を連続的又は段階的に増加させてもよい。塩基の添加は、通常、熟成工程の後期よりも初期での塩基の添加量を多くする場合が多い。複数回に分けて塩基を添加する場合、好ましい態様では、初回(熟成工程における第1回目の塩基の添加)において、当初の硫酸触媒量(残存硫酸量)に対して10〜90当量%(好ましくは25〜90当量%、さらに好ましくは30〜70当量%、特に40〜60当量%)程度の塩基を添加して部分中和し、熟成反応(第1熟成反応)を行う場合が多く、20〜80当量%(例えば、45〜55当量%)程度の塩基を添加して部分中和し、熟成反応(第1熟成反応)を行ってもよい。このような塩基の添加(又は中和処理)により、当初の硫酸量を10〜75重量%(好ましくは30〜70重量%、さらに好ましくは40〜60重量%)程度に低減でき、結合硫酸を脱離しつつ、熟成反応を行うことができる。
熟成工程では、連続的又は間欠的に塩基を添加して熟成反応を行えばよいが、残存硫酸量を所定の範囲に制御しつつ行うのが好ましい。例えば、反応系中の残存硫酸量[S]を下記式(1)で表される量に制御しつつ、熟成反応を行うことができる。
[S]=2/[a(k×t+4/[S]0)] (1)
(式中、[S]は原料セルロース100重量部に対する硫酸量(重量部)、[S]0は中和前(塩基添加前)の原料セルロース100重量部に対する硫酸量(重量部)、係数aは0.5〜2、係数kは0.01〜0.1、tは、連続的添加では塩基添加開始からの経過時間(分)、段階的添加では塩基の添加からの経過時間(分)を示す。)
より具体的には、塩基を連続的又は間欠的(段階的)に添加して反応系中の硫酸量[S]を下記式(2)で表される範囲に制御し、熟成反応を行うことができる。
2/[a(0.1×t+4/[S]0)]≦[S]≦2/[a(0.01×t+4/[S]0)] (2)
(式中、[S]、[S]0、a、tは前記に同じ)
なお、前記式(1)及び(2)において、中和前(塩基添加前)の原料セルロース100重量部に対する硫酸量[S]0は塩基の添加条件(添加量、添加方法)と残存硫酸成分量との関係に基づいて外挿により求めることができるが、中和前の反応系中の硫酸量を実際に測定することは困難である。そのため、実用的な観点からすると、塩基を連続的又は段階的に添加する方法において、各塩基の添加(又は添加完了)から3分経過以内の反応系中の硫酸量(原料セルロース100重量部に対する硫酸量)[S]を下記式(3)で表される範囲に制御し、熟成反応を行ってもよい。すなわち、上記式(2)を下記式(3)に置き換えて反応系中の硫酸量を制御しつつ、熟成反応を行ってもよい。
2/(0.1×t+4/[S]0)≦[S]≦2/[0.6(0.01×t+4/[S]0)] (3)
(式中、[S]は原料セルロース100重量部に対する硫酸量(重量部)、[S]0は塩基の添加前(塩基添加前)の原料セルロース100重量部に対する反応系の硫酸量(重量部)、tは、連続的添加では塩基添加開始からの経過時間(分)、段階的添加では塩基の添加からの経過時間(分)を示す)
式(3)において、[S]0は、各塩基の添加(又は添加完了)から3〜5分経過後(特に3分経過後)の硫酸量(重量部)として測定する場合が多い。前記反応系中の硫酸量(重量部)は、反応系中の残存硫酸量(特に結合硫酸を含む残存硫酸成分量)を意味する。
前記式(1)〜(3)は、硫酸基の置換度と脱硫酸の速度との関係を示す反応速度論を基にして速度定数を求めることにより実験的に得られた関係式であり、塩基の添加からの経過時間t(連続的添加では塩基の添加開始からの経過時間(分)、段階的又は間欠的添加では各添加操作での塩基の添加終了からの経過時間(分)、例えば、式(3)では塩基の塩基添加終了から3〜5分後)において、塩基の添加前の反応系中の硫酸量(残存硫酸量)[S]0に対して、反応系中の硫酸量(残存硫酸量)[S]を所定の割合で低減させることを意味する。すなわち、式(1)〜(3)は、塩基の添加前の硫酸量(仕込み硫酸量又は残存硫酸量)[S]0に対して、塩基添加による中和初期(例えば、時間t=0)における硫酸量(残存硫酸量)[S]を所定割合(例えば、40〜60重量%、特に45〜55重量%)に低減させて(又は所定量の硫酸を残存させて)アシル化することを意味する。なお、第1回の塩基の添加前では、塩基の添加前の反応系中の硫酸量(残存硫酸量)[S]は反応に使用した硫酸の使用量(又は仕込量)に相当する。
熟成反応は、必要であれば、他の酸触媒(プロトン酸、ルイス酸)を使用してもよいが、通常、残存硫酸を熟成反応の触媒として使用する場合が多い。熟成反応は、不活性ガス雰囲気中で行ってもよく、空気雰囲気中で行ってもよい。
このような連続的又は多段熟成反応(脱アシル化反応、脱硫酸エステル反応)によりアシル化度(アセチル化度、プロピオニル化度など)を調整し、結合硫酸量が少なく、所定のアシル化度のセルロース混酸エステル(セルロースアセテートプロピオネートなど)を効率よく生成できる。特に、このような連続的又は多段熟成反応により熟成すると、比較的アセチル基の置換度が小さい混酸エステル(例えば、アセチル基の平均置換度が1.5未満の混酸エステル)であっても、効率よく残存硫酸を低減しつつ調製でき、非溶解性成分の生成を高いレベルで抑制できる。さらに、アシル化工程での触媒硫酸量を低減することなく、生成したセルロースエステル中の残存硫酸量(特に結合硫酸量)を大きく低減できるとともに残存硫酸量をコントロールできる。
熟成工程(ii)での反応(熟成反応)は、例えば、20〜120℃、好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは40〜90℃程度で行ってもよい。なお、反応温度は、また、熟成工程(ii)全体の反応時間は、例えば、5分以上(例えば、10分〜5時間)の範囲から選択でき、好ましくは15分〜3時間(例えば、20分〜3時間)、さらに好ましくは25分〜2時間(例えば、25〜60分)程度であってもよい。熟成反応は、不活性ガス雰囲気中で行ってもよく、空気雰囲気中で行ってもよい。
なお、熟成は、硫酸触媒(又は残存硫酸)を完全に中和する(又は触媒として実質的に作用しない程度まで硫酸触媒を中和する)ことにより、停止(又は終了)することができる。一連の反応において、塩基の総使用量(部分中和に用いる塩基の使用量を含む)は、硫酸量(仕込み硫酸量)1当量に対して、0.9〜2当量程度の範囲から選択でき、通常、0.9〜1.5当量(例えば、1〜1.5当量)、好ましくは1〜1.3当量(例えば、1〜1.2当量)程度であってもよい。
熟成停止後、セルロース混酸エステルを含むドープが得られ、このドープを通常、沈澱又は沈澱処理することにより、生成物としてのセルロース混酸エステルを分離する。特に、沈澱に先だって、前記ドープに、有機酸(例えば、酢酸などのアシル基に対応する有機酸など、特に酢酸)を添加又は混合したドープ(いわゆる有機酸を練り込んだドープ)を、沈澱処理することにより、残存硫酸量を効率よく低減できる。有機酸は、有機酸溶液(例えば、有機酸水溶液)の形態で添加してもよい。この方法では、練り混む有機酸溶液(有機酸水溶液)の濃度を徐々に低下させる方法、セルロース混酸エステルに対する貧溶媒(水など)を徐々に練り混む(添加する)方法などにより、有機酸濃度を低下させつつ沈澱させてもよい。なお、この有機酸を添加したドープを沈澱処理する方法は、特に、前記連続的又は多段熟成反応と組みあわせることにより、より一層残存硫酸量を低減するのに効果的である。例えば、比較的アセチル基の置換度が小さい混酸エステル(例えば、アセチル基の平均置換度が1.5未満の混酸エステル)は、前記連続的又は多段熟成反応と、前記有機酸を添加したドープを沈澱処理する方法とを組みあわせて製造してもよい。
前記練り込み(有機酸又は有機酸溶液の添加)において、有機酸の使用量(又は添加量)は、有機酸換算で、前記ドープ100重量部に対して、例えば、50〜400重量部、好ましくは80〜300重量部、さらに好ましくは100〜200重量部程度であってもよい。有機酸の混合は、攪拌下で行ってもよく、攪拌速度は、50〜3000rpm(好ましくは100〜1000rpm)程度であってもよい。混合時間(又は攪拌時間)は、1〜30分、好ましくは2〜20分程度であってもよい。
沈澱処理は、通常、水、有機酸溶液(例えば、酢酸水溶液など)などのセルロース混酸エステルに対する貧溶媒を前記ドープ(有機酸が混合されていてもよいドープ)に添加することにより行うことができる。沈澱処理において、貧溶媒の添加量(使用量)は、適宜選択でき、例えば、ドープ100重量部に対して、100〜1000重量部、好ましくは200〜800重量部、さらに好ましくは300〜600重量部程度であってもよい。沈澱処理は、攪拌下で行ってもよく、攪拌速度は前記と同様であってもよい。
上記のような一連の工程を経て得られたセルロース混酸エステルは、不純物などを除去するため、通常、洗浄(洗浄処理)される。洗浄処理は、通常、水などを用いて行えばよく、洗浄条件は、同様の条件であってもよい。代表的な方法では、セルロース混酸エステルを水で洗浄したのち、さらに、加温した水(例えば、70〜99℃の熱水)で洗浄してもよい。
なお、前記熟成工程(ii)の後、セルロースエステルの耐熱安定性を高めるため、必要により前記塩基で構成された中和剤[好ましくはアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物、特に少なくともカルシウム化合物(水酸化カルシウムなど)]を添加してもよい。中和剤の添加は、熟成工程後であればよく、例えば、沈澱処理後(特に、沈澱および洗浄後)において行ってもよい。中和剤は、水溶液(例えば、水酸化カルシウム水溶液)の形態で添加してもよい。
[セルロース混酸エステルフィルムとその製造方法]
本発明のセルロース混酸エステルは、種々の成形体(繊維などの一次元的成形体、フィルム、シート、塗膜(又は薄膜)などの二次元的成形体、三次元的成形体)を形成するのに有用である。なお、シート(又はフィルム)は、単一のシートであってもよく、複数のシートを積層した積層シートであってもよい。
特に、本発明のセルロース混酸エステルは、微小異物の含有量が著しく少なく、光学特性に優れるとともに、耐湿性(特に耐湿熱性)などにも優れているため、フィルム(特に光学フィルム)を形成するのに有用である。
このような本発明のセルロース混酸エステルで構成されたフィルム(セルロース混酸エステルフィルム、単にフィルムということがある)は、置換度やアシル基の種類などに応じて、溶融製膜方法(押出成形法など)、溶液製膜方法(流延法)のいずれで製造してもよい。本発明では、通常、溶液製膜方法により平面性に優れたフィルムを製造してもよい。
溶液製膜方法において、セルロース混酸エステルフィルムは、セルロース混酸エステルと有機溶媒とを含むドープ(又は有機溶媒溶液)を剥離性支持体に流延し、生成した膜を剥離性支持体から剥離して乾燥することにより製造できる。
剥離性支持体は、通常、金属支持体(ステンレススチールなど)であってもよく、ドラム状やエンドレスベルト状であってもよい。支持体の表面は、通常、鏡面仕上げされ、平滑である場合が多い。
ドープを調製するための有機溶媒は、ハロゲン系有機溶媒(特に塩素系有機溶媒)であってもよく、非ハロゲン系有機溶媒(特に非塩素系有機溶媒)であってもよい。本発明のセルロース混酸エステルは、少なくともハロゲン系有機溶媒(特に塩素系有機溶媒)に対して可溶性である場合が多い。有機溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよく、例えば、塩素系有機溶媒と非塩素系有機溶媒とを組み合わせてもよい。ハロゲン系有機溶媒(特に塩素系有機溶媒)としては、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類(特に塩素化炭化水素類)などが挙げられる。非ハロゲン系有機溶媒(特に非塩素系有機溶媒)としては、例えば、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類など)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのジアルキルケトン類、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのC1-4アルカノール類)などが例示できる。
ドープには、種々の添加剤、例えば、可塑剤[リン酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤(フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、クエン酸エステルなど)、トリアセチンなど]、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤など)、滑剤(微粒子状滑剤)、難燃剤、離型剤などを添加してもよい。また、ドープには、レタデーション上昇剤(特開2001−139621号公報に記載のレタデーション上昇剤など)、剥離剤(特開2002−309009号公報に記載の剥離剤など)などを添加してもよい。
なお、ドープは、慣用の方法、例えば、高温溶解法、冷却溶解法などを利用して調製できる。ドープ中のセルロースエステル濃度は、10〜35重量%、好ましくは20〜30重量%(例えば、15〜25重量%)程度であってもよい。また、高品質フィルム(液晶表示装置用フィルムなど)を得るため、ドープはさらに濾過処理してもよい。
流延ダイなどを利用してドープを支持体上に流延し、乾燥することによりフィルムを製造できる。通常、ドープを支持体上に流延し、予備乾燥した後、有機溶媒を含む予備乾燥膜を乾燥することによりフィルムが製造される。
フィルムの厚みは用途に応じて選択でき、例えば、5〜200μm、好ましくは10〜150μm、さらに好ましくは20〜100μm程度であってもよい。
溶融製膜方法では、例えば、前記セルロース混酸エステル(および必要に応じて可塑剤などの他の成分)を押出機などで溶融混合し、ダイ(Tダイ、リングダイなど)から押出成形し、冷却することによりフィルムを製造してもよい。溶融混合温度は、例えば、120〜250℃程度の範囲から選択できる。
なお、フィルムには、延伸処理を施してもよい。延伸処理により、フィルムを効率よく配向させることができる。フィルムは、慣用の方法(ドロー、延伸など)、例えば、一軸又は二軸により配向させることができ、引き取りロールのドロー比を利用して配向させてもよく、チャックでフィルムの端部を掴んで延伸して配向させてもよい。延伸方法としては、熱延伸が好ましく用いることができ、例えば、溶融製膜方法では、押出機のダイから押し出されるフィルム状溶融物を引き取り、一軸方向に引き延ばしつつ冷却ロールなどの冷却手段により冷却する方法、ダイから押し出されたフィルム状溶融物を冷却し、所定の温度(ガラス転移温度以上の温度であって、融点未満の温度)で延伸する方法などが例示できる。また、溶液製膜方法では、溶媒を含む予備乾燥フィルムを延伸することにより配向させてもよい。フィルムの生産性の観点からは、溶融成膜方法、特に溶融押出成形法が好ましい。また、フィルムは、少なくとも一方の方向(縦又は引き取り方向MD、又は幅方向TD)に配向していればよく、公差又は直交する方向に配向していてもよいが、二軸に延伸するのが最も好ましい。
フィルムの配向度(延伸倍率)は、少なくとも一方の方向に1.2〜8倍、好ましくは1.2〜4倍、さらに好ましくは1.2〜3倍、特に1.4〜2倍程度であってもよい。また、二軸延伸フィルムでは、MD方向に1.1〜8倍(例えば、1.1〜5倍、好ましくは1.1〜2倍、さらに好ましくは1.2〜1.5倍)程度、TD方向に1.0〜4倍(例えば、1.0〜3倍、好ましくは1.0〜2倍、さらに好ましくは1.1〜1.5倍)程度であってもよい。
本発明のセルロース混酸エステルは、混酸エステルであるにもかかわらず、未反応セルロース、低置換度のセルロースエステル、結合硫酸由来の異物などの異物(微細な異物)の含有量が著しく少なく、高純度であるので、耐湿熱性と光学的特性とを高いレベルで両立できる。また、本発明のセルロース混酸エステルは、比較的重合度を高くすることができ、フィルム強度、生産性などの観点からも有利である。そのため、本発明のセルロース混酸エステルは、種々の光学フィルム、例えば、カラーフィルタ、写真感光材料の基材フィルム、表示装置用フィルム(例えば、液晶表示装置用光学補償フィルムなどの光学補償フィルム)、偏光板用保護フィルム、反射防止フィルムの基材フィルムなどとして利用できる。特に、本発明のセルロース混酸エステルは、偏光板、光学補償シート(特に液晶表示装置用光学補償シート)などに好適に利用できる。前記偏光板は、例えば、偏光膜と、この偏光膜の少なくとも一方の面(特に両面)に形成された本発明のフィルムとで構成できる。また、前記光学補償シートは、例えば、本発明のフィルムと、このフィルムの少なくとも一方の面に形成された配向膜と、この配向膜の上に形成された光学異方性層とで構成できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において各特性は次のようにして測定した。また、以下の実施例および比較例において、「部」とは特に断りのない限り、「重量部」を意味する。
<非溶解性成分>
セルロース混酸エステル(セルロースアセテートプロピオネート)を1重量%の割合で、メチレンクロライド/メタノール(重量比)=9/1の混合溶媒に溶解させた溶液(ただし、非溶解性成分は溶解していない)を、孔径5〜10μmを有するフィルター部を備えたガラスフィルター(相互理化学硝子製作所製、商品名「G―4」)を使用してろ過し、ろ過残渣に付着している付着物(ドープ)を洗浄するため、フィルター部分を前記混合溶媒で洗浄したのち、ろ過残渣を含むガラスフィルターを、一定の重量(恒量)になるまで乾燥する。そして、ろ過前後のガラスフィルター重量を測定し、ろ過後(ろ過、洗浄および乾燥後)のガラスフィルター重量をX(g)、ろ過前のガラスフィルター重量をY(g)、ろ過に使用した溶液中のセルロース混酸エステルの乾燥重量をZ(g)とするとき、次式により非溶解性成分の含有量を算出する。
非溶解性成分の含有量=[(X−Y)/Z]×100(重量%)。
<置換度の測定>
試料を、ピリジン溶媒中、酪酸でブチル化した後、クロロホルム溶媒で13C−NMRスペクトルを測定し、169.1〜170.2ppm付近に現れるアセチルカルボニル炭素の3シグナルの強度を積分してアセチルカルボニル炭素シグナル積分強度ΣAcを算出するとともに、172.7〜173.6ppm付近に現れるプロピオニルカルボニル炭素の3シグナルの強度を積分してプロピオニルカルボニル炭素シグナル積分強度(Prを算出した。なお、NMR測定条件は次の通りであった。
測定溶媒:CDCl3(約3ml使用)
測定温度: 40℃
サンプル量:160〜180mg(φ10mm)
観測核:13C(1H完全デカップリング)
データポイント数:32768
パルス角と時間:45°,9μsec
データ取り込み時間:0.9667sec
待ち時間:2.0333sec
積算回数:18,000回
置換度(DS)は次式で求めた。なお、下記式において、ΣAcはアセチルカルボニル炭素シグナル積分強度を示し、ΣPrはプロピオニルカルボニル炭素シグナル積分強度を示す。
置換度(DS)=3xΣAc/(ΣAc+ΣPr)
<重合度の測定>
メチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)の混合溶液にセルロース混酸エステルを溶解し、所定の濃度c(2.00g/L)の溶液を調製し、この溶液をオストワルド粘度計に注入し、25℃で粘度計の刻線間を溶液が通過する時間t(秒)を測定する。一方、前記混合溶媒単独についても上記と同様にして通過時間(秒)t0を測定し、下記式に従って、粘度平均重合度を算出した。
ηr e l=t/t0[η]=(lnηr e l)/cDP=[η]/(6×10-4
(式中、tは溶液の通過時間(秒)、t0は溶媒の通過時間(秒)、cは溶液のセルロース混酸エステル濃度(g/L)、ηr e lは相対粘度、[η]は極限粘度、DPは平均重合度を示す)。
<カルシウム(Ca)成分含有量>
乾燥したセルロース混酸エステルを完全に燃焼させた後、灰分を塩酸に溶解した前処理を行った上で原子吸光法により測定した。測定値は絶乾状態のセルロース混酸エステル1g中のカルシウム含有量としてppmを単位として得られる。
<マグネシウム(Mg)成分含有量>
乾燥したセルロース混酸エステルを完全に燃焼させた後、灰分を塩酸に溶解した前処理を行った上で原子吸光法により測定した。測定値は絶乾状態のセルロース混酸エステル1g中のマグネシウム含有量としてppmを単位として得られる。
<残存硫酸量>
1重量%過酸化水素にメチルレッド・メチレンブルー混合指示薬を加え、0.01モル/リットルのNaOH溶液で赤紫色から若干赤味が残る程度まで中和した溶液を吸収液とする。一方、酸素導入口と吸収瓶とをセットした管状炉を1250〜1350℃に加熱する。加熱された吸収瓶に前記吸収液80mlを入れ、乾燥したセルロース混酸エステル1.0gを燃焼ボートに採取し、管状炉の入口付近にセットする。酸素を2〜2.5リットル/分の流量で供給しながら、燃焼ボートを石英棒で徐々に管状炉に押し込み、炭化させる。試料が炭化した後、管状炉中心部まで押し込み、完全に灰化させる。酸素の供給を停止し、吸収液をビーカーに移した後、吸収瓶を蒸留水で洗浄し、洗液を吸収液に合わせる。洗液を加えた吸収液を70〜80ml程度になるまで電熱器上で濃縮する。濃縮した吸収液にメチルレッド・メチレンブルー混合指示薬を加え、0.01モル/リットルのNaOH溶液で滴定し、わずかに橙色を有する薄黄色となった時点を終点とする(Aml)。この滴定量(Aml)と、同様に行ったブランク試験の滴定量(Bml)とに基づいて、以下の式によって残存硫酸を算出する。
残存硫酸量={[(A−B)×F×0.048]/W} × [100/(100−M)]
[式中、Wは試料重量(g)を、Mは試料水分(%)を、Fは0.01モル/リットル(mol/l)のNaOH滴定液のファクターを示す]。
(実施例1)
約7重量%の水分を含むセルロースの絶乾重量100部当たりに、前処理(活性化処理)酸として、酢酸309.6部及びプロピオン酸72.4部を均一に撒布し、54℃で30分間混合した。そして、前処理したセルロース(混合物)を10℃まで冷却した。この前処理においては触媒硫酸を用いなかった。
次いで、エステル化反応機にこの混合物を仕込み、−20℃に予冷しておいた無水酢酸158.6部、無水プロピオン酸222.0部、硫酸3.8部及びプロピオン酸2.2部を混合したものを加え、エステル化を行った。エステル化における最高温度は40℃に調節した。昇温速度は0.5℃/分とした。最高温度に到達するまでの時間(到達時間)は65分とし、最高温度に到達した時点からエステル化終了までの時間(後期アシル化時間)を75分とした。総アシル化時間は、140分であり、総アシル化時間に対する後期アシル化時間の割合は、53%であった。なお、アシル化反応の停止は、反応系に反応停止剤として酢酸105.5部と水35.2部との混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を失活(加水分解)させることにより行った。
次いで、前記混合溶液の添加後、反応液の温度を80℃に保ち、酢酸316.5部および水105.5部を加えて50分間熟成した。そして、酢酸マグネシウム15重量%水溶液を40.6部加えて系内の硫酸を中和し、熟成を終了(停止)した。熟成停止後のドープに、脱イオン水を添加し、混合脂肪酸エステルを沈殿させた。
次いで、沈殿後スラリーの状態で30分放置後、固液を分離した。そして、沈殿したセルロースエステルを脱イオン水で2時間洗浄(流水前洗浄)したのち、96〜97度の熱水で60分間洗浄し、その後さらに脱イオン水で120分間洗浄した後、安定化処理(耐熱処理)として水酸化カルシウムの希薄溶液を添加した。その後30分放置した後、遠心脱液を行い、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)を得た。表1に得られたセルロースアセテートプロピオネートの特性を示す。
(実施例2)
約7重量%の水分を含むセルロースの絶乾重量100部当たりに、前処理(活性化処理)酸として、酢酸316.5部及びプロピオン酸72.4部を均一に撒布し、54℃で30分間混合した。そして、前処理したセルロース(混合物)を10℃まで冷却した。この前処理においては触媒硫酸を用いなかった。
次いで、エステル化反応機にこの混合物を仕込み、−20℃に予冷しておいた無水酢酸152.7部、無水プロピオン酸222.0部、硫酸3.8部及びプロピオン酸2.2部を混合したものを加え、エステル化を行った。エステル化における最高温度は40℃に調節した。昇温速度は0.5℃/分とした。最高温度に到達するまでの時間は65分とし、最高温度に到達した時点からエステル化終了までの時間(後期アシル化時間)を75分とした。総アシル化時間は、140分であり、総アシル化時間に対する後期アシル化時間の割合は、53%であった。なお、アシル化反応の停止は、反応系に反応停止剤として酢酸105.5部と水35.2部との混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を失活(加水分解)させることにより行った。
次いで、前記混合溶液の添加後、反応液の温度を80℃に保ち、酢酸316.5部および水105.5部を加えて30分間熟成した。そして、酢酸マグネシウム15重量%水溶液を40.6部加えて系内の硫酸を中和し、熟成を終了(停止)した。熟成停止後のドープに、脱イオン水を添加し、混合脂肪酸エステルを沈殿させた。
次いで、沈殿後スラリーの状態で30分放置後、固液を分離した。そして、沈殿したセルロースエステルを脱イオン水で2時間洗浄(流水前洗浄)したのち、96〜97度の熱水で60分間洗浄し、その後さらに脱イオン水で120分間洗浄した後、安定化処理(耐熱処理)として水酸化カルシウムの希薄溶液を添加した。その後30分放置した後、遠心脱液を行い、セルロースアセテートプロピオネートを得た。表1に得られたセルロースアセテートプロピオネートの特性を示す。
(実施例3)
約7重量%の水分を含むセルロースの絶乾重量100部当たりに、前処理(活性化処理)酸として、酢酸54部を均一に撒布し、20℃で60分間混合した。そして、前処理したセルロース(混合物)を10℃まで冷却した。この前処理においては触媒硫酸を用いなかった。
次いで、エステル化反応機にこの混合物を仕込み、−20℃に予冷しておいた無水酢酸152.7部、無水プロピオン酸222.0部、及び硫酸4.0部を混合したものを加え、エステル化を行った。エステル化における最高温度は40℃に調節した。昇温速度は0.5℃/分とした。最高温度に到達するまでの時間は65分とし、最高温度に到達した時点からエステル化終了までの時間(後期アシル化時間)を100分とした。総アシル化時間は、165分であり、総アシル化時間に対する後期アシル化時間の割合は、61%であった。なお、アシル化反応の停止は、反応系に反応停止剤として酢酸105.5部と水35.3部との混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を失活(加水分解)させることにより行った。
次いで、前記混合溶液の添加後、反応液の温度を80℃に保ち、酢酸316.5部および水105.5部を加えて30分間熟成した。そして、酢酸マグネシウム15重量%水溶液を45.7部加えて系内の硫酸を中和し、熟成を終了(停止)した。熟成停止後のドープに、脱イオン水を添加し、混合脂肪酸エステルを沈殿させた。
次いで、沈殿後スラリーの状態で30分放置後、固液を分離した。そして、沈殿したセルロースエステルを脱イオン水で2時間洗浄(流水前洗浄)したのち、96〜97度の熱水で60分間洗浄し、その後さらに脱イオン水で120分間洗浄した後、安定化処理(耐熱処理)として水酸化カルシウムの希薄溶液を添加した。その後30分放置した後、遠心脱液を行い、セルロースアセテートプロピオネートを得た。表1に得られたセルロースアセテートプロピオネートの特性を示す。
(比較例1)
約7重量%の水分を含むセルロースの絶乾重量100部当たりに、前処理(活性化処理)酸として、酢酸303.3部及びプロピオン酸67.9部を均一に撒布し、54℃で30分間混合した。そして、前処理したセルロース(混合物)を10℃まで冷却した。この前処理においては触媒硫酸を用いなかった。
次いで、エステル化反応機にこの混合物を仕込み、−20℃に予冷しておいた無水酢酸106.4部、無水プロピオン酸247.2部、硫酸3.5部及びプロピオン酸2.1部を混合したものを加え、エステル化を行った。エステル化における最高温度は40℃に調節した。昇温速度は1.5℃/分とした。最高温度に到達するまでの時間は20分とし、最高温度に到達した時点からエステル化終了までの時間(後期アシル化時間)を130分とした。総アシル化時間は、150分であり、総アシル化時間に対する後期アシル化時間の割合は、87%であった。なお、アシル化反応の停止は、反応系に反応停止剤として酢酸98.7部と水32.9部との混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を失活(加水分解)させることにより行った。
次いで、前記混合溶液の添加後、反応液の温度を60℃に保ち、酢酸296.3部および水98.66部を加えて60分間熟成した。そして、酢酸マグネシウム15重量%水溶液を37.9部加えて系内の硫酸を中和し、熟成を終了(停止)した。熟成停止後のドープに、脱イオン水を添加し、混合脂肪酸エステルを沈殿させた。
次いで、沈殿後スラリーの状態で30分放置後、固液を分離した。そして、沈殿したセルロースエステルを脱イオン水で2時間洗浄(流水前洗浄)したのち、96〜97度の熱水で60分間洗浄し、その後さらに脱イオン水で120分間洗浄した後、安定化処理(耐熱処理)として水酸化カルシウムの希薄溶液を添加した。その後30分放置した後、遠心脱液を行い、セルロースアセテートプロピオネートを得た。表1に得られたセルロースアセテートプロピオネートの特性を示す。
(比較例2)
約7重量%の水分を含むセルロースの絶乾重量100部当たりに、前処理(活性化処理)酸として、酢酸303.3部及びプロピオン酸67.9部を均一に撒布し、54℃で30分間混合した。そして、前処理したセルロース(混合物)を10℃まで冷却した。この前処理においては触媒硫酸を用いなかった。
次いで、エステル化反応機にこの混合物を仕込み、−20℃に予冷しておいた無水酢酸106.4部、無水プロピオン酸247.2部、硫酸3.5部及びプロピオン酸2.1部を混合したものを加え、エステル化を行った。エステル化における最高温度は40℃に調節した。昇温速度は0.3℃/分とした。最高温度に到達するまでの時間は100分とし、最高温度に到達した時点からエステル化終了までの時間(後期アシル化時間)を50分とした。総アシル化時間は、150分であり、総アシル化時間に対する後期アシル化時間の割合は、33%であった。なお、アシル化反応の停止は、反応系に反応停止剤として酢酸98.7部と水32.9部との混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を失活(加水分解)させることにより行った。
次いで、前記混合溶液の添加後、反応液の温度を60℃に保ち、酢酸296.3部および水98.66部を加えて60分間熟成した。そして、酢酸マグネシウム15重量%水溶液を37.9部加えて系内の硫酸を中和し、熟成を終了(停止)した。熟成停止後のドープに、脱イオン水を添加し、混合脂肪酸エステルを沈殿させた。
次いで、沈殿後スラリーの状態で30分放置後、固液を分離した。そして、沈殿したセルロースエステルを脱イオン水で2時間洗浄(流水前洗浄)したのち、96〜97度の熱水で60分間洗浄し、その後さらに脱イオン水で120分間洗浄した後、安定化処理(耐熱処理)として水酸化カルシウムの希薄溶液を添加した。その後30分放置した後、遠心脱液を行い、セルロースアセテートプロピオネートを得た。表1に得られたセルロースアセテートプロピオネートの特性を示す。
Figure 0004786909
(実施例4)
約7重量%の水分を含むセルロースの絶乾重量100部当たりに前処理酸として、酢酸28.5部を均一に撒布し20℃で60分間混合した。そして、前処理したセルロース(混合物)を10℃まで冷却した。この前処理においては触媒硫酸を用いなかった。
次いでエステル化反応機にこの混合物を仕込み、−20℃に予冷しておいた無水プロピオン酸444.1部、希釈酸としてのプロピオン酸93.6部、および硫酸4.3部を混合したものを加え、エステル化を行なった。エステル化における最高温度は25℃に調節した。昇温速度は0.3℃/分とした。最高温度に達するまでの時間は50分とし、最高温度に到達した時点からエステル化終了までの時間(後期アシル化時間)を280分とした。総アシル化時間は、330分であり、総アシル化時間に対する後期アシル化時間の割合は、85%であった。なお、アシル化反応の停止は、反応系に反応停止剤として酢酸75.5部と水38.9部との混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を失活(加水分解)させることにより行った。
次いで、前記混合溶液の添加後、反応液の温度を60℃に保ち、酢酸226.4部および水116.6部を加えて60分間熟成した。そして、酢酸マグネシウム15重量%水溶液を53.9部を、一定速度で30分間かけて加え、系内の硫酸を連続的に中和し、熟成を終了(停止)した。
熟成反応の停止後、酢酸300部を添加し、均一になるまで5分間攪拌した。そして、この酢酸を添加したドープ(酢酸練り込みドープ)を、沈澱剤としての10重量%の酢酸水溶液に入れて激しく攪拌して沈殿させた。
次いで、沈殿後スラリーの状態で30分放置後、固液を分離した。そして、沈殿したセルロースエステルを脱イオン水で2時間洗浄(流水前洗浄)したのち、96〜97度の熱水で60分間洗浄し、その後さらに脱イオン水で120分間洗浄した後、安定化処理(耐熱処理)として水酸化カルシウムの希薄溶液を添加した。その後30分放置した後、遠心脱液を行い、セルロースアセテートプロピオネートを得た。表2に得られたセルロースアセテートプロピオネートの特性を示す。
(実施例5)
約7重量%の水分を含むセルロースの絶乾重量100部当たりに前処理酸として、酢酸107.6部、および硫酸1.0重量部を均一に撒布し20℃で45分間混合した。そして、前処理したセルロース(混合物)を10℃まで冷却した。
次いでエステル化反応機にこの混合物を仕込み、−20℃に予冷しておいた無水酪酸954.6部、希釈酸としての酢酸267.4部、酪酸449.8部および硫酸10.9部を混合したものを加え、エステル化を行なった。エステル化における最高温度は20℃に調節した。昇温速度は0.3℃/分とした。最高温度に達するまでの時間は60分とし、最高温度に到達した時点からエステル化終了までの時間(後期アシル化時間)を340分とした。総アシル化時間は、400分であり、総アシル化時間に対する後期アシル化時間の割合は、85%であった。なお、アシル化反応の停止は、反応系に反応停止剤として酢酸115.1部と水119.3部との混合溶液を15分間かけて添加して、過剰の無水物を失活(加水分解)させることにより行った。
次いで、前記混合溶液の添加後、酢酸394.1部、水48.8部および酢酸マグネシウム9.8部を含む混合液を添加して反応液の温度を60℃に保って10分間攪拌し、さらに酢酸70.1部、水8.7部および酢酸マグネシウム1.8部を含む混合液を添加して反応液の温度を60℃に保って20分間攪拌し、さらに酢酸70.1部、水8.7部および酢酸マグネシウム1.8部を含む混合液を添加して反応液の温度を60℃に保って20分間攪拌したのち、さらに酢酸26.8部、水20.4部および酢酸マグネシウム6.4部を含む混合液を添加して過剰中和し、熟成を終了(停止)した。
熟成反応の停止後、ドープ1000部に対して、合計で酢酸290部および水360部を添加し、徐々にドープ中の水分濃度を上昇させて沈澱させた。
次いで、沈殿後スラリーの状態で30分放置後、固液を分離した。そして、沈殿したセルロースエステルを脱イオン水で2時間洗浄(流水前洗浄)したのち、96〜97度の熱水で60分間洗浄し、その後さらに脱イオン水で120分間洗浄した後、安定化処理(耐熱処理)として水酸化カルシウムの希薄溶液を添加した。その後30分放置した後、遠心脱液を行い、セルロースアセテートブチレートを得た。表2に得られたセルロースアセテートブチレートの特性を示す。
(比較例3)
約7重量%の水分を含むセルロースの絶乾重量100部当たりに前処理酸として、酢酸28.5部を均一に撒布し54℃で30分間混合した。そして、前処理したセルロース(混合物)を10℃まで冷却した。この前処理においては触媒硫酸を用いなかった。
次いでエステル化反応機にこの混合物を仕込み、−20℃に予冷しておいた無水プロピオン酸444.1部、希釈酸としてのプロピオン酸93.6部、および硫酸4.3部を混合したものを加え、エステル化を行なった。エステル化における最高温度は25℃に調節した。昇温速度は0.3℃/分とした。最高温度に達するまでの時間は50分とし、最高温度に到達した時点からエステル化終了までの時間(後期アシル化時間)を280分とした。総アシル化時間は、330分であり、総アシル化時間に対する後期アシル化時間の割合は、85%であった。なお、アシル化反応の停止は、反応系に反応停止剤として酢酸75.5部と水38.9部との混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を失活(加水分解)させることにより行った。
次いで、前記混合溶液の添加後、反応液の温度を60℃に保ち、酢酸226.4部および水116.6部を加えて60分間熟成した。そして、酢酸マグネシウム15重量%水溶液を53.9部を6分間かけて加えてに中和し、熟成を終了(停止)した。熟成停止後のドープに、脱イオン水を添加し、混合脂肪酸エステルを沈殿させた。
次いで、沈殿後スラリーの状態で30分放置後、固液を分離した。そして、沈殿したセルロースエステルを脱イオン水で2時間洗浄(流水前洗浄)したのち、96〜97度の熱水で60分間洗浄し、その後さらに脱イオン水で120分間洗浄した後、安定化処理(耐熱処理)として水酸化カルシウムの希薄溶液を添加した。その後30分放置した後、遠心脱液を行い、セルロースアセテートプロピオネートを得た。表2に得られたセルロースアセテートプロピオネートの特性を示す。
Figure 0004786909

Claims (4)

  1. 硫酸触媒の存在下で、セルロースを、セルロース混酸エステルに対応するアシル化剤で、アシル化の開始からアシル化の停止までの時間をXとし、アシル化工程における最高温度に到達した時点からアシル化の停止までの時間をYとするとき、値[Y/X]×100が、40〜85となる条件でアシル化するアシル化工程(i)と、硫酸触媒の存在下で熟成する熟成工程(ii)とを含むセルロース混酸エステルの製造方法。
  2. アシル化工程(i)において、セルロース100重量部に対して硫酸触媒2〜12重量部の存在下、かつ最高温度30〜50℃で、値[Y/X]×100が45〜65となる条件でアシル化する請求項1記載の製造方法。
  3. 熟成工程(ii)において、熟成反応の開始から熟成反応の停止までに、連続的に塩基を添加するか又は少なくとも3回に分けて間欠的に塩基を添加する請求項1記載の製造方法。
  4. セルロース混酸エステルが、以下の特性(1)〜(3)を充足する請求項1記載の製造方法。
    (1)メチレンクロライド/メタノール(重量比)=9/1の混合溶媒に対する非溶解性成分の含有量が、0.12重量%以下である
    (2)総平均置換度が2.6〜2.99であり、非溶解性成分の含有量が、0.07重量%以下である
    (3)少なくともアセチル基とアセチル基以外の脂肪族アシル基とを有する
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