しかしながら、上記の従来技術は、音声ガイダンスの音像を画一的に移動させる音像定位制御を行うものに過ぎないため、運転者に対して常に適正な移動感を与えることができるとは限らず、効果的な経路誘導を行うには自ずから限界があるという問題点があった。
例えば、上記の従来技術において、「この先の交差点、右方向です。」という音声ガイダンスを出力する場合の音像の移動速度を基準にして、「この先、右方向です。」という比較的短い音声ガイダンスの音像を移動させる音像定位制御を行ったならば、音像の移動が収束する前に音声ガイダンスの音声出力が終了してしまうため、運転者に対して適正な移動感を与えることができない。また、「この先、一つ目の信号、右方向です。」という比較的長い音声ガイダンスの音像を移動させる音像定位制御を行ったならば、音像の移動が収束しているのに音声ガイダンスが出力され続けるという違和感を生じさせることとなる。
また、一般的に、運転者が着座する座席位置は、車両の中央部ではなく、車両の右側(もしくは左側)であるため、運転者の前方で音像を移動させることができるスペースは、左右非対称となる。このため、運転者の座席方向(例えば、右方向)への経路誘導を行う場合、例によって、音声ガイダンスの音像を運転者の前方から右方向へ移動させようとしても、運転者の右側はドアやウィンドウに近接しているため、音像の移動距離が制限されることとなり、誘導方向(右方向)への移動感を効果的に伝達することは困難であった。
これらのことから、音声が意味する内容によって情報を伝達することに加え、音像移動による情報伝達に優れた「移動感制御」をいかにして実現するか、すなわち運転者に対して誘導方向への移動感をいかにして明確に伝達するかが極めて重要な課題となっている。
そこで、本発明は、上述した従来技術による課題(問題点)を解消するためになされたものであり、運転者に対して誘導方向への移動感を明確に伝達し、もって効果的な経路誘導を行うことができるナビゲーション装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1の発明に係るナビゲーション装置は、予め設定された予定経路情報および自車両の位置情報をもとに、誘導方向から推定される自車両の挙動に合わせて前記誘導方向への車両操作を促す音声ガイダンスの音像を移動させる音像定位制御を行って自車両を経路誘導するナビゲーション装置であって、前記音声ガイダンスの文例構造および/または前記音声ガイダンスが聴取される環境に応じて前記音像の移動速度を変化させる音像制御手段を備えたことを特徴とする。
また、請求項2の発明に係るナビゲーション装置は、請求項1の発明において、前記音像制御手段は、前記音声ガイダンスの文例の長さに応じて前記音像の移動速度を変化させることを特徴とする。
また、請求項3の発明に係るナビゲーション装置は、請求項1または2の発明において、前記音像制御手段は、前記音声ガイダンスの切れ目の区間における音像の移動速度を他の区間における音像の移動速度に比較して高くすることを特徴とする。
また、請求項4の発明に係るナビゲーション装置は、請求項1、2または3の発明のおいて、前記音像制御手段は、前記誘導方向が運転者に相対して後方である場合に、他の方向に音像を移動させる際の速度に比較して低い速度で当該音像を移動させることを特徴とする。
また、請求項5の発明に係るナビゲーション装置は、請求項1〜4のいずれか一つの発明において、前記音像制御手段は、前記誘導方向が運転座席の方向である場合に、助手席の方向に音像を移動させる際の速度に比較して低い速度で当該音像を移動させることを特徴とする。
また、請求項6の発明に係るナビゲーション装置は、請求項1〜5のいずれか一つの発明において、前記自車両の速度情報を取得する速度情報取得手段をさらに備え、前記音像制御手段は、前記速度情報手段によって取得された自車両の速度情報に応じて前記音像の移動速度および/または移動軌跡を変化させることを特徴とする。
また、請求項7の発明に係るナビゲーション装置は、請求項1〜6のいずれか一つの発明において、前記音声ガイダンスが聴取される環境および/または前記自車両の位置から前記誘導方向に対応する誘導位置までの距離に応じて前記音声ガイダンスを含む複数の出力音声の音声出力を制御する音声出力制御手段をさらに備えたことを特徴とする。
また、請求項8の発明に係るナビゲーション装置は、請求項7の発明において、前記音声出力制御手段は、前記音声ガイダンスの音像定位制御を行う際に助手席側の出力音声の位相を反転させて音声出力するように制御することを特徴とする。
また、請求項9の発明に係るナビゲーション装置は、請求項7または8の発明において、前記音声出力制御手段は、前記自車両の位置から前記誘導方向に対応する誘導位置までの距離に応じて当該音声ガイダンスとして音声出力すべき周波数帯域を決定し、該決定された周波数帯域の音声信号を前記音声ガイダンスから抽出するフィルタ処理を行うことを特徴とする。
また、請求項10の発明に係るナビゲーション装置は、請求項7、8または9の発明において、前記音声出力制御手段は、前記自車両の位置から前記誘導方向に対応する誘導位置までの距離に応じて当該音声ガイダンスに対して付加する残響音の音量レベルを決定し、該決定された音量レベルの残響音を前記音声ガイダンスに付加する残響付加処理を行うことを特徴とする。
また、請求項11の発明に係るナビゲーション装置は、請求項7〜10のいずれか一つの発明において、前記音声出力制御手段は、前記音声ガイダンスの音像を出力する場合に、前記自車両の位置から前記誘導方向に対応する誘導位置までの距離に応じて他の音声出力の出力レベルの低下率を変化させることを特徴とする。
また、請求項12の発明に係るナビゲーション装置は、請求項7〜11のいずれか一つの発明において、前記音声出力制御手段は、前記音声ガイダンスの音像を出力する場合に、他の音声出力に係る出力レベル調節情報に応じて他の音声出力の出力レベルを低下させることを特徴とする。
また、請求項13の発明に係るナビゲーション装置は、請求項7〜12のいずれか一つの発明において、他の音声出力の出力レベルを算出する出力レベル算出手段をさらに備え、前記音声出力制御手段は、前記音声ガイダンスの音像を出力する場合に、前記出力レベル算出手段によって算出された出力レベルに応じて他の音声出力の出力レベルを低下させることを特徴とする。
また、請求項14の発明に係るナビゲーション装置は、請求項7〜13のいずれか一つの発明において、前記音声ガイダンスに対する騒音レベルを検出する騒音レベル検出手段をさらに備え、前記音声出力制御手段は、前記騒音レベル検出手段によって検出された騒音レベルに応じて前記音声ガイダンスの出力レベルを変化させることを特徴とする。
また、請求項15の発明に係るナビゲーション装置は、請求項14の発明において、前記騒音レベル検出手段は、自車両の速度情報、自車両に設置されたマイクロホンからの出力、もしくはこれらの組み合わせに基づいて前記騒音レベルを検出することを特徴とする。
また、請求項16の発明に係るナビゲーション装置は、請求項7〜15のいずれか一つの発明において、前記音声出力制御手段は、前記音声ガイダンスの音声出力要求およびハンズフリー音声の音声出力要求が競合した場合に、ハンズフリー音声を優先して音声出力するように制御することを特徴とする。
また、請求項17の発明に係るナビゲーション装置は、請求項7〜16のいずれか一つの発明において、複数の出力音声の音声出力要求が競合した場合に音声出力に係る優先順位の設定を受け付ける優先順位設定受付手段をさらに備え、前記音声出力制御手段は、前記音声ガイダンスの出力要求およびハンズフリー音声の出力要求が競合した場合に、前記優先順位設定受付手段によって受け付けられた優先順位に基づく出力音声を優先して音声出力するように制御することを特徴とする。
また、請求項18の発明に係るナビゲーション装置は、請求項1〜17のいずれか一つの発明において、前記音像制御手段は、前記自車両の位置から前記誘導方向に対応する誘導位置までの距離に応じて、前記音像定位制御を行う際の音像位置を上方向または下方向に変化させることを特徴とする。
また、請求項19の発明に係るナビゲーション装置は、請求項1〜18のいずれか一つの発明において、前記音像制御手段は、経路誘導すべきガイドポイントとしてETCが存在する場合に、運転者に相対してETCゲートが存在する方向に前記音像定位制御を行うことを特徴とする。
また、請求項20の発明に係るナビゲーション装置は、請求項7〜19のいずれか一つの発明において、前記音像制御手段および前記音声出力制御手段は、運転者の年齢、運転者の聴取特性および/または予定経路からの逸脱頻度に応じて、前記音像の移動速度および/または移動軌跡、前記音声ガイダンスとして音声出力する周波数帯域、前記音声ガイダンスに対して付加する残響音の音量レベル、前記音声ガイダンスを含む複数の出力音声の音声出力レベル、前記音声ガイダンスの発話速度、もしくはこれらの組合せを変化させることを特徴とする。
本発明によれば、音声ガイダンスの文例構造および/または音声ガイダンスが聴取される環境に応じて音像の移動速度を変化させることとしたので、運転者に対して誘導方向への移動感を明確に伝達することができ、効果的な経路誘導を行うことが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
また、本発明によれば、音声ガイダンスの文例の長さに応じて音像の移動速度を変化させることとしたので、音声ガイダンスの音像を誘導方向に収束させるタイミング、および音声ガイダンスの音声出力を終了させるタイミングを一致させ、運転者に対して誘導方向への移動感をより明確に伝達することが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
また、本発明によれば、音声ガイダンスの切れ目の区間における音像の移動速度を他の区間における音像の移動速度に比較して高くすることとしたので、音声ガイダンスの切れ目の区間を音像移動のアクセントとして活用することができ、運転者に対して誘導方向への移動感を滑らかに伝達しつつ、音声ガイダンスの聞き取り易さを向上させることが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
また、本発明によれば、誘導方向が運転者に相対して後方である場合に、他の方向に音像を移動させる際の速度に比較して低い速度で当該音像を移動させることとしたので、運転者に対して誘導方向への移動感を滑らかに伝達することが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
また、本発明によれば、誘導方向が運転座席の方向である場合に、助手席の方向に音像を移動させる際の速度に比較して低い速度で当該音像を移動させることとしたので、運転者に対して誘導方向への移動感を滑らかに伝達することが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
また、本発明によれば、自車両の速度情報を取得し、取得された自車両の速度情報に応じて音像の移動速度および/または移動軌跡を変化させることとしたので、自車両の挙動に応じた移動感、並びに運転者の視野に応じた移動感を伝達することが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
また、本発明によれば、音声ガイダンスが聴取される環境および/または自車両の位置から誘導方向に対応する誘導位置までの距離に応じて音声ガイダンスを含む複数の出力音声の音声出力を制御することとしたので、効果的な距離感制御を実現しつつ、音声ガイダンスの聞き取り易さを向上させることが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
また、本発明によれば、音声ガイダンスの音像定位制御を行う際に助手席側の出力音声の位相を反転させて音声出力するように制御することとしたので、運転座席の方向への音像の移動距離を仮想的に増加させることができ、運転座席の方向への音像の移動感をより明確に伝達することが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
また、本発明によれば、自車両の位置から誘導方向に対応する誘導位置までの距離に応じて当該音声ガイダンスとして音声出力すべき周波数帯域を決定し、該決定された周波数帯域の音声信号を音声ガイダンスから抽出するフィルタ処理を行うこととしたので、自車両の位置から誘導方向に対応する誘導位置までの距離感を音色で伝達することができ、音量レベルを維持しつつ、効果的な距離感制御を行うことが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
また、本発明によれば、自車両の位置から誘導方向に対応する誘導位置までの距離に応じて当該音声ガイダンスに対して付加する残響音の音量レベルを決定し、該決定された音量レベルの残響音を音声ガイダンスに付加する残響付加処理を行うこととしたので、自車両の位置からガイドポイントまでの距離感を残響時間の長さで伝達することができ、音量レベルを維持しつつ、効果的な距離感制御を行うことが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
また、本発明によれば、音声ガイダンスの音像を出力する場合に、自車両の位置から誘導方向に対応する誘導位置までの距離に応じて他の音声出力の出力レベルの低下率を変化させることとしたので、音声ガイダンスの聞き取り易さを向上させることが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
また、本発明によれば、音声ガイダンスの音像を出力する場合に、他の音声出力に係る出力レベル調節情報に応じて他の音声出力の出力レベルを低下させることとしたので、新たな設備を設けることなく簡易な構成で音声ガイダンスの聞き取り易さを向上させることが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
また、本発明によれば、他の音声出力の出力レベルを算出し、音声ガイダンスの音像を出力する場合に、算出された出力レベルに応じて他の音声出力の出力レベルを低下させることとしたので、他の音声出力の実際の音量レベルに応じたアッテネイト制御を行うことができ、音声ガイダンスの聞き取り易さをより向上させることが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
また、本発明によれば、音声ガイダンスに対する騒音レベルを検出し、検出された騒音レベルに応じて音声ガイダンスの出力レベルを変化させることとしたので、音声ガイダンスの聞き取り易さをより向上させることが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
また、本発明によれば、自車両の速度情報、自車両に設置されたマイクロホンからの出力、もしくはこれらの組み合わせに基づいて騒音レベルを検出することとしたので、自車両の速度および走行環境が刻々と変動する場合でも音声ガイダンスの聞き取り易さを向上させることが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
また、本発明によれば、音声ガイダンスの音声出力要求およびハンズフリー音声の音声出力要求が競合した場合に、ハンズフリー音声を優先して音声出力するように制御することとしたので、音声ガイダンスによってハンズフリー通話が阻害されることを防止することが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
また、本発明によれば、複数の出力音声の音声出力要求が競合した場合に音声出力に係る優先順位の設定を受け付け、音声ガイダンスの出力要求およびハンズフリー音声の出力要求が競合した場合に、受け付けられた優先順位に基づく出力音声を優先して音声出力するように制御することとしたので、ユーザが要求する出力音声を優先して音声出力することが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
また、本発明によれば、自車両の位置から誘導方向に対応する誘導位置までの距離に応じて、音像定位制御を行う際の音像位置を上方向または下方向に変化させることとしたので、音量レベルを維持しつつ、効果的な距離感制御を行うことが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
また、本発明によれば、経路誘導すべきガイドポイントとしてETCが存在する場合に、運転者に相対してETCゲートが存在する方向に音像定位制御を行うこととしたので、ETCゲートの方向を直感的に知覚させることができ、料金所通過時間の短縮に寄与することが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
また、本発明によれば、運転者の年齢、運転者の聴取特性および/または予定経路からの逸脱頻度に応じて、音像の移動速度および/または移動軌跡、音声ガイダンスとして音声出力する周波数帯域、音声ガイダンスに対して付加する残響音の音量レベル、音声ガイダンスを含む複数の出力音声の音声出力レベル、音声ガイダンスの発話速度、もしくはこれらの組合せを変化させることとしたので、運転者の年齢、運転者の聴取特性および予定経路の伝達度に追従した経路誘導を行うことが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
次に、本実施例1に係るナビゲーションシステムについて説明する。本実施例1では、音声ガイダンスの文例構造および/または音声ガイダンスが聴取される環境に応じて音像の移動速度を変化させる移動感制御(方向感制御)を行うナビゲーション装置について説明する。なお、ここでは、本実施例1に係るナビゲーションシステムの構成について説明した後に、このナビゲーションシステムの各種処理の手順を説明することとする。
(ナビゲーションシステムの構成)
図1は、本実施例1に係るナビゲーションシステム1の概要構成を示す概要構成図である。同図に示すように、このナビゲーションシステム1は、ナビゲーションユニット2、オーディオユニット3、スピーカ制御部4およびスピーカSP1〜SP4を有する。
このうち、ナビゲーションユニット2は、その内部にGPS(Global Positioning System)受信部21、経路設定部22、車速取得部23、ガイド内容作成部24、ガイド音声出力制御部25、アッテネイト制御テーブル25a、音像制御部26、音声制御テーブル26aおよびガイド表示制御部27を有する。ここで、GPS受信部21、経路設定部22、車速取得部23、ガイド内容作成部24、ガイド音声出力制御部25、音像制御部26およびガイド表示制御部27は、マイコンなどによって構成しても良いし、電子回路によって構成しても良い。また、本構成は各機能によって区分したものであり、物理的な構成については、全体若しくは一部を統合或いは分散したものとしても良い。
GPS受信部21は、GPS人工衛星からの情報を受信して時刻情報の取得、自車両の位置情報の特定を行う。また、GPS受信部21は、特定した自車両の位置をガイド内容作成部24に出力する。
経路設定部22は、ユーザ(例えば、運転者)からのユーザ入力を受け付けて自車両の予定経路を設定・記憶する処理部である。また、経路設定部22は、設定した経路や地図情報をガイド内容作成部24に出力する。
車速取得部23は、自車両の車速情報を取得してガイド内容作成部24に出力する。なお、この車速情報は、自車両のスピードメータなどから取得しても良いし、GPS受信部21が特定した位置情報の推移から算出しても良い。例えば、自車両が一般道路を走行中であるか、或いは自車両が高速道路を走行中であるかである程度の車速を推定しても良いし、経路設定部22と連動して法定速度情報を取得し、この法定速度を自車両の車速情報と倣なすようにしても良い。
ガイド内容作成部24は、GPS受信部21および経路設定部22の出力をもとに、自車両の運転者に通知する内容を作成する処理部である。具体的には、運転者に音声案内を行うべき場所に関する情報(すなわち、ガイドポイント情報)として、自車両の現在位置からその場所(ガイドポイント)までの距離情報、並びにその場所で自車両が取るべき方向を示す方向情報を記憶する。
ここで、ガイドポイントとは、自車両の予定経路、現在位置および地図情報をもとに、運転者に対して音声案内すべきと判断される場所を指し、例えば、自車両が現在位置から300m先の交差点で右折する場合、ガイドポイントは、300m先の交差点となる。なお、かかる判断手法、すなわち「どの場所で音声ガイダンスを出力すべきか」の判断手法については、従来技術と同様であるのでここでは説明を省略する。
そして、ガイド内容作成部24は、作成したガイドポイント情報に基づいて経路誘導の内容を決定する。さらに、経路誘導のうち、音声によって出力する内容(音声ガイダンス)については、ガイド音声出力制御部24に出力し、ディスプレイ33に表示する内容については、ガイド表示制御部27に出力する。
ガイド音声出力制御部25は、ガイド内容作成部24の出力をもとに、音声ガイダンスを運転者に対してどの方向から出力するかを決定してスピーカ制御部4に送信する。また、ガイド表示制御部27は、ガイド内容作成部24の出力をもとに、ディスプレイに表示する内容をオーディオユニット3に送信する。
なお、ガイド音声出力制御部25および音像制御部26における「移動感・距離感制御」(すなわち、音像定位制御)、並びにかかる「移動感・距離感制御」をより効果的に行うための複数の出力音声(例えば、音声ガイダンスやオーディオ出力など)に係る「音声出力制御」の説明、また、これに関連するアッテネイト制御テーブル25aおよび音像制御テーブル26aの説明については、各ユニットの構成を説明した後に詳細に説明することとする。
オーディオユニット3は、その内部に主制御部31、オーディオ出力制御部32およびディスプレイ33を有する。ここで、主制御部31およびオーディオ出力制御部32は、マイコンなどによって構成しても良いし、電子回路によって構成しても良い。また、本構成は各機能によって区分したものであり、物理的な構成については双方を統合したものとしても良い。
主制御部31は、オーディオユニット3を全体制御する制御部であり、例えば、オーディオユニット3がDVDプレイヤーであるならば、DVDディスクに記憶された音楽情報などを読み出してオーディオ出力制御部32に出力するとともに、映像情報などを読み出してディスプレイ33に表示する。さらに、オーディオ出力制御部32は、主制御部31が出力した音楽情報を、スピーカ制御部4に送信する。なお、このオーディオユニット3は、DVDプレイヤーに限らず、コンパクトディスク、ハードディスク、ラジオ、テレビなどの機能を有するものであっても良い。
また、ディスプレイ33は、ナビゲーションユニット2による経路誘導の画像表示と共用される。そこで、主制御部31は、ナビゲーションユニット2内部にガイド表示制御部27から受信した内容をディスプレイ33に表示させる機能を有する。すなわち、主制御部31は、各種媒体から情報の読出し、出力とともに、ディスプレイ33の統合管理を行うこととなる。
さらに、オーディオ出力制御部32は、主制御部31から入力されたオーディオ信号の実際の出力レベルを計算する出力レベル計算部(図示せず)を有する。なお、かかる出力レベル計算機能は、積分回路などを導入することで容易に実現することができる。
そして、出力レベル計算部におけるオーディオ信号の出力レベル計算結果は、ガイド音声出力制御25に送信されることとなる。すなわち、この出力レベル計算部は、再生音楽の実際の音量レベルをガイド音声出力制御部25に送信することで、ガイド音声出力制御部25において、再生される音楽の実音量レベルに応じて再生音楽のATT量(アッテネイト量)を決定できるようにしている。
スピーカ制御部4は、その内部にマイコン41、コーディック42、DSP(Digital Signal Processor)43およびアンプ44を有する。マイコン41、コーディック42およびDSP43は、マイコンなどによって構成しても良いし、電子回路によって構成しても良い。また、本構成は各機能によって区分したものであり、物理的な構成については双方を統合したものとしても良い。
このうち、コーディック42は、その内部に有するA/D部42aによってナビゲーションユニット2内のガイド音声出力制御部25から受信した「経路誘導音声信号」およびオーディオユニット3内部のオーディオ出力制御部32から受信した「オーディオ出力信号」をデジタル信号に変換し、音データとしてDSP43に出力する。
また、マイコン41は、スピーカ制御部4を全体制御する制御部であり、具体的には、ナビゲーションユニット2からの「経路誘導音声信号」と、オーディオユニット3からの「オーディオ出力信号」とを統合制御し、どのスピーカからどれだけの出力で音声再生および音楽再生を行うかを制御する。例えば、ナビゲーションユニット2から「オーディオ出力アッテネイト信号」を伴う「音像制御信号」を受信した場合には、「オーディオ出力信号」に対するアッテネイト処理をDSP43に指示するとともに、「移動感制御」および「距離感制御」に係るデジタル信号処理を「経路誘導音声信号」に対して行うようにDSP43に指示する。
DSP43は、マイコン41の出力(すなわち、「音像制御信号」)をもとに、A/D部42aの出力(すなわち、「経路誘導音声信号」)について「移動感制御」または「距離感制御」に係るデジタル信号処理を施し、コーディック42内部のDAコンバータ部(D/A部42b)に出力する。D/A部42bの出力は、アンプ44によって出力強度を調整され、スピーカSP1〜SP4から音声ガイダンスや音楽として再生される。
スピーカSP1〜SP4は、車室内において、例えば、右フロントスピーカ、左フロントスピーカ、右リアスピーカ、左リアスピーカのように配置される。これらのスピーカは、それぞれの出力強度を制御することで、運転者に対して所望の方向、所望の距離から音声が聞こえるように音声の出力を行うことができる。このように、運転者に対して仮想的な位置から聞こえるように出力する音声を、以下、「音像」と表記し、その仮想的な位置を「音像位置」と表記する。
ここで、ガイド音声出力制御部25および音像制御部26における基本制御、すなわち音声ガイダンスが出力されるまでの概要について説明する。まず、ガイド内容作成部24は、自車両の位置および予定経路からガイドポイント情報を作成する。そして、ガイド音声出力制御部25は、ガイド内容作成部24によって作成されたガイドポイント情報をもとに、音声ガイダンスの波形を示す「経路誘導音声信号」を生成する。
これを具体的に説明すると、ガイド音声出力制御部25は、自車両の現在位置からその場所(ガイドポイント)までの距離情報、並びにその場所で自車両が取るべき方向を示す誘導方向情報を含む「ガイドポイント情報」をもとに、音声ガイダンスを作成する。例えば、音声ガイダンス410「この先、右方向です。」や、音声ガイダンス420「この先の交差点、右方向です。」や、音声ガイダンス430「この先、一つ目の信号、右方向です。」を作成する。
また、音像制御部26は、ガイド内容作成部24によって作成されたガイドポイント情報をもとに、音声ガイダンスの音像の作成位置や移動内容を示す「音像制御信号」を生成する。なお、この「音像制御信号」の生成の具体的な説明については、後述する。
さらに、ガイド音声出力制御部25は、オーディオ出力制御部32から受信したオーディオ信号の出力レベル計算結果をもとに、「オーディオ出力アッテネイト信号」を生成する。なお、この「オーディオ出力アッテネイト信号」の生成の具体的な説明についても後述する。
そして、ガイド音声出力制御部25は、「オーディオ出力アッテネイト信号」をスピーカ制御部4に送信し、この「オーディオ出力アッテネイト信号」を受信したスピーカ制御部4におけるマイコン41は、受信信号によって指示されたATT量をもとに、オーディオ出力をアッテネイトする。
続いて、ガイド音声出力制御部25および音像制御部26は、「経路誘導音声信号」および「音像制御信号」をスピーカ制御部4に送信し、スピーカ制御部4におけるマイコン41は、この「経路誘導音声信号」および「音像制御信号」をもとに、スピーカSP1〜SP4で出力強度を調節して音声ガイダンスを出力する。
このように、「経路誘導音声信号」および「音像制御信号」をもとに、音声ガイダンスの移動感制御(音像定位制御)を含む音声出力制御が行われ、「オーディオ出力アッテネイト信号」をもとに、オーディオ出力のアッテネイト制御が行われることとなる。
つぎに、音像制御部26における「移動感・距離感制御」について説明する。図2は、音像定位制御の具体例を説明する説明図である。同図では、運転者50に対して3つの音像作成範囲51、52、53を設定している。音像作成範囲51は、自車両の現在位置の近傍での車両操作を案内する場合に使用する。また、音像作成範囲52は、自車両の現在位置から中距離、例えば、300m先での車両操作を案内する場合に使用する。さらに、音像作成範囲53は、自車両の現在位置から遠距離、例えば、700m先での車両操作を案内する場合に使用する。
音像作成範囲51は、その内部に移動開始位置51aおよび方向変化位置51bを有する。音像作成範囲51に音像を定位する場合、まず、移動開始位置51aに音像を定位し、音声出力とともに音像位置を移動させる。その後、音像の移動方向を方向変化位置51bから変化させることで、自車両がどちらの方向に進むべきかを音像の移動方向によって示す。
音像作成範囲51では、音像の移動方向として、「前方」、「右前方」、「左前方」、「右方向」、「左方向」、「右後方」、「左後方」、「後方」の8方向に対応している。例えば、運転者に次の交差点で「右方向」に針路変更するように通知する場合、「次の交差点を右前方です。」という音声情報を作成し、音像GV1に示すように、音像位置を移動開始位置51aに定位して音声出力を開始し、音声情報の出力中に音像位置を移動させて方向変化位置51bから右前方に移動方向を変化させる。
同様に、音像作成範囲52は、その内部に移動開始位置52aおよび方向変化位置52bを有し、音像を定位する場合には、まず移動開始位置52aに音像を定位して音声出力とともに音像位置を移動させ、音像の移動方向を方向変化位置52bから変化させる。また、音像作成範囲52においても、音像の移動方向として、「前方」、「右前方」、「左前方」、「右方向」、「左方向」、「右後方」、「左後方」、「後方」の8方向に対応している。
さらに、音像作成範囲53は、その内部に移動開始位置53aおよび方向変化位置53bを有し、音像を定位する場合には、まず移動開始位置53aに音像を定位して音声出力とともに音像位置を移動させ、音像の移動方向を方向変化位置53bから変化させる。また、音像作成範囲53においても、音像の移動方向として、「前方」、「右前方」、「左前方」、「右方向」、「左方向」、「右後方」、「左後方」、「後方」の8方向に対応している。なお、音像作成範囲53は、運転者50に対して固定した点であってもかまわない。その場合、この音像作成範囲53からの音声出力は、音像の移動を伴わないこととなる。
また、音像作成範囲51の大きさは、音像作成範囲52に比して大きくしている。さらに、運転者50から音像作成範囲52の移動開始位置52aまでの距離d20、方向変化位置52bまでの距離d21は、運転者50から音像作成範囲51の移動開始位置51aまでの距離d10、方向変化位置51bまでの距離d11に比してそれぞれ大きい。同様に、音像作成範囲52の大きさは、音像作成範囲53に比して大きく、運転者50から音像作成範囲53の移動開始位置53aまでの距離d30、方向変化位置53bまでの距離d31は、運転者50から音像作成範囲52の移動開始位置52aまでの距離d20、方向変化位置52bまでの距離d21に比してそれぞれ大きい。
したがって、自車両の近傍での車両操作を案内する場合には、その音声は運転者50の近くで聞こえ、また音像の移動量が大きくなり、中距離での車両操作を案内する場合には、その音声は運転者50から中程度の距離で聞こえ、音像の移動量は小さくなる。さらに、遠距離での車両操作を案内する場合には、その音声は遠くから聞こえ、音像の移動量はさらに小さくなる、或いは移動しないこととなる。
そのため、運転者50は、案内された経路についての情報を、音声の内容のみではなく、音像の移動によって認識することができる。さらに、「右後方」や「左後方」、「後方」への案内音声であっても、音像位置が移動開始位置51a、52aから前方に移動した後、方向変化位置51b、52bまで直進した後に方向が変化するので、自車両の実際の挙動に即して方向の案内をすることができ、かつ運転者50の前方から音声の出力を行うことができる。そのため、運転者50に負担をかけることなく音声出力における情報量を増加させ、効果的な経路誘導を行うことができる。
ここで、本実施例1に係るナビゲーションシステム1は、上記した「移動感制御」に加えて、音声ガイダンスの文例構造および音声ガイダンスが聴取される環境に応じて音像の移動速度を変化させる「移動感制御」(音像定位制御)を行うことに特徴がある。以下では、かかる特徴を詳細に説明する。
音像制御テーブル26aは、音声ガイダンスの文例構造および音声ガイダンスが聴取される環境に応じた「移動感制御」を行うための音像作成条件を記憶するテーブルであり、例えば、音声ガイダンスの文例の「長さ」と、該「長さ」に応じた音像の移動速度を対応付けて記憶している。
これを具体的に説明すると、図3−1に示すように、音声ガイダンスの文例の長さ「長い」(20文字以上)に音像の移動速度「A(m/s)」を、音声ガイダンスの文例の長さ「中程度」(15文字以上〜20文字未満)に音像の移動速度「B(m/s)」を、音声ガイダンスの文例の長さ「短い」(15文字未満)に音像の移動速度「C(m/s)」を対応付けて記憶している。なお、本実施例1では、音像の移動が収束する時間と、音声出力が終了する時間とを一致させるために、音声ガイダンスの文例の長さが「長く」なるほど音像の移動速度が高くなるように、かかるパラメータA、BおよびCの大小関係を「A>B>C」としている。
また、音像制御テーブル26aは、「誘導方向」と、該「誘導方向」に応じた音像の移動速度へのゲインを対応付けて記憶している。具体的には、図3−2に示すように、誘導方向「後方向」に音像の移動速度へのゲイン「−D(m/s)」を、誘導方向「ドライバ方向」(例えば、右方向)に音像の移動速度へのゲイン「−E(m/s)」を対応付けて記憶している。
さらに、音像制御テーブル26aは、自車両の「速度」と、該「速度」に応じた音像の移動量(移動角)を対応付けて記憶している。具体的には、図3−3に示すように、自車両の速度「高速」(80km/h以上)に音像の移動量「小」(すなわち、移動角を狭める設定)を、自車両の速度「中速」(40km/h以上〜80km/h未満)に音像の移動量「中」(すなわち、移動角を通常にする設定)を、自車両の速度「低速」(40km/h未満)に音像の移動量「大」(すなわち、移動角を広げる設定)を対応付けて記憶している。
ここで、音像制御部26は、車速取得部23によって取得された自車両の「速度情報」、ガイド内容作成部24によって作成された「ガイドポイント情報」、および音像制御テーブル26aに記憶された「音像作成条件」をもとに、音声ガイダンスの音像の作成位置や移動内容を示す「音像制御信号」を生成する。
かかる「音像制御信号」の生成について具体的に説明する。まず、音像制御部26は、自車両が音声ガイダンス出力ポイントに接近した場合に、音声ガイダンス出力ポイントに応じた音像作成範囲を設定する。例えば、自車両が近距離の音声ガイダンス出力ポイントに接近した場合には、音像作成範囲を近距離に設定、すなわち音像作成範囲51を設定し、自車両が中距離の音声ガイダンス出力ポイントに接近した場合には、音像作成範囲を中距離に設定、すなわち音像作成範囲52を設定し、また、自車両が遠距離の音声ガイダンス出力ポイントに接近した場合には、音像作成範囲を遠距離に設定、すなわち音像作成範囲53を設定する。
そして、音像制御部26は、音像制御テーブル26aを参照して、音声ガイダンスの文例の長さに応じた音像の移動速度を設定する。具体的には、音声ガイダンスの文例の長さが「長い」場合(例えば、音声出力しようとする音声ガイダンスが音声ガイダンス430「この先、一つ目の信号、右方向です。」(21文字)である場合)に、音像の移動速度を「高速」に設定する。このように、音声ガイダンスの文例が長い場合に、音像の移動速度を高くすることで、音像の移動が収束しているのに音声ガイダンスが出力され続けるという違和感が生じる事態を防止することができる。
一方、音声ガイダンスの文例の長さが「中程度」である場合(例えば、音声出力しようとする音声ガイダンスが音声ガイダンス420「この先の交差点、右方向です。」(18文字)である場合)には、音像の移動速度を「中速」に設定する。
また、音声ガイダンスの文例の長さが「短い」場合(例えば、音声出力しようとする音声ガイダンスが音声ガイダンス410「この先、右方向です。」(12文字)である場合)には、音像の移動速度を「低速」に設定する。このように、音声ガイダンスの文例が長い場合に音像の移動速度を遅くすることで、音像の移動が収束する前に音声ガイダンスの音声出力が終了してしまうという事態を防止することができる。
つまり、音声ガイダンスの文例の長さに応じて音像の移動速度を変化させることで、音声ガイダンスの音像を誘導方向に収束させるタイミング、および音声ガイダンスの音声出力を終了させるタイミングを一致させ、運転者に対して誘導方向への移動感をより明確に伝達することができるようにしている。
さらに、音像制御部26は、音像制御テーブル26aを参照して、誘導すべき方向に応じた音像の移動速度に再設定する。具体的には、誘導方向が運転者に相対して後方である場合に、現設定における音像の移動速度(例えば、「A(m/s)」とする)を音像制御テーブル26aにおける該当ゲイン「D(m/s)」について低下させる再設定(すなわち、音像の移動速度が「A−D(m/s)」となる再設定)を行う。なお、この場合の「後方」とは、真後方向のみであっても良いし、他の方向成分を含む後方向(すなわち、左後方もしくは右後方)であっても良い。
また、同様に、音像制御部26は、誘導方向が運転座席の方向である場合に、現設定における音像の移動速度(例えば、「A(m/s)」とする)を音像制御テーブル26aにおける該当ゲイン「E(m/s)」について低下させる再設定(すなわち、音像の移動速度が「A−E(m/s)」となる再設定)を行う。なお、誘導方向が後方向もしくは運転座席の方向でない場合には、現設定における音像の移動速度を維持する。なお、この場合の「運転座席の方向」とは、運転座席の方向のみであっても良いし、他の方向成分を含む運転座席の方向(すなわち、運転座席が「右方向」に存在する場合であれば、右前方もしくは右後方)であっても良い。
このように、誘導方向が運転者に相対して後方である場合に、他の方向に音像を移動させる際の速度に比較して低い速度で当該音像を移動させることで、運転者に対して誘導方向への移動感を滑らかに伝達することが可能になる。
また、誘導方向が運転座席の方向である場合に、助手席の方向に音像を移動させる際の速度に比較して低い速度で当該音像を移動させることで、運転者に対して誘導方向への移動感を滑らかに伝達することが可能になる。
さらに、音像制御部26は、音像制御テーブル26aを参照して、自車両の速度に応じた音像の移動量(移動角)を設定する。具体的には、自車両の速度が「高速」(80km/h以上)である場合に、音像の移動量を「小」に設定し、自車両の速度が「中速」(40km/h以上〜80km/h未満)である場合に、音像の移動量を「中」に設定し、また、自車両の速度が「低速」(40km/h未満)である場合に、音像の移動量を「大」に設定する。
図4は、移動量(移動角)の変化を説明するための説明図である。この例では、誘導方向が「右前方」であり、音像作成範囲が音像作成範囲51に設定されている場合における移動量の変化を説明している。
同図に示すように、音像の移動量(移動角)が「小」に設定されている場合には、移動角を狭めた音像GV1.2を選択し、音像の移動量(移動角)が「中」に設定されている場合には、上記で説明した通常の音像GV1.1を選択し、また、音像の移動量(移動角)が「大」に設定されている場合には、移動角を広げた音像GV1.3を選択する。このように、自車両の速度情報を取得し、取得された自車両の速度情報に応じて音像の移動軌跡を変化させることで、運転者の視野に応じた移動感を伝達することができるようにしている。
そして、音像制御部26は、音像作成範囲の設定、音像の移動速度の設定、音像の移動量の設定が反映された「音像制御信号」を生成する。このように、音声ガイダンスの文例構造および/または音声ガイダンスが聴取される環境に応じて音像の移動速度を変化させることで、運転者に対して誘導方向への移動感を明確に伝達することができ、効果的な経路誘導を行うことが可能になる。
つぎに、他の音声出力に対するアッテネイト制御について説明する。本実施例1に係るナビゲーションシステム1では、運転者に対して誘導方向への移動感を付加する「移動感制御」を行うに際して、音像の移動を聞き取りやすくするために、オーディオ出力などの他の音声出力のアッテネイト制御を行っている。
アッテネイト制御テーブル25aは、オーディオ出力の出力レベルに応じたアッテネイト制御を行うためのATT量決定条件を記憶するテーブルであり、例えば、オーディオ出力として実際に出力される音量レベルと、該音量レベルに応じたATT量(アッテネイト量)を対応付けて記憶している。
これを具体的に説明すると、図5に示すように、音量レベル「大」(F(dB)以上)にATT量「H(dB)」を、音量レベル「中」(例えば、G(dB)以上〜F(dB)未満)にATT量「J(dB)」を、音量レベル「小」(G(dB)未満)にATT量「K(dB)」を対応付けて記憶している。なお、本実施例1では、音像の移動を聞き取りやすくするために、オーディオ出力の音量レベルが「大きく」なるほどATT量が大きくなるように、かかるパラメータH、JおよびKの大小関係を「H>J>K」としている。
ここで、ガイド音声出力制御部25は、オーディオ出力制御部32から受信したオーディオ信号の「出力レベル計算結果」、およびアッテネイト制御テーブル25aに記憶された「ATT量決定条件」をもとに、「オーディオ出力アッテネイト信号」を生成する。
これを具体的に説明すると、再生される音楽の音量レベルが「大きい」場合(すなわち、オーディオ出力として実際に出力される音量レベルがF(dB)以上である場合)に、ATT量を「大」(すなわち、H(dB))に設定し、再生される音楽の音量レベルが「中程度」である場合(すなわち、オーディオ出力として実際に出力される音量レベルがG(dB)以上〜F(dB)未満である場合)に、ATT量を「中」(すなわち、J(dB))に設定し、また、再生される音楽の音量レベルが「小さい」場合(すなわち、オーディオ出力として実際に出力される音量レベルがG(dB)未満である場合)に、ATT量を「小」(すなわち、J(dB))に設定する。
そして、ガイド音声出力制御部25は、このATT量の設定が反映された「オーディオ出力アッテネイト信号」を生成する。このように、他の音声出力の出力レベルを算出し、音声ガイダンスの音像を出力する場合に、算出された出力レベルに応じて他の音声出力の出力レベルを低下させることで、他の音声出力の実際の音量レベルに応じたアッテネイト制御を行うことができ、音声ガイダンスの聞き取り易さをより向上させることが可能になる。
つぎに、ナビゲーションユニット2とスピーカ制御部4との通信について説明する。ナビゲーションユニット2とスピーカ制御部4との通信は、車載LAN機能を用いて通信しても良いし、直接配線を行っても良い。なお、直接配線を行う場合には、ナビゲーションユニット2から「経路誘導音声信号」、「音像制御信号」、「オーディオ出力アッテネイト信号」のそれぞれに対応する配線を行う。
このうち、「経路誘導音声信号」は、出力する音声の波形を示す信号であり、この信号は、アナログ信号を用いても良いし、デジタル信号を用いても良い。また、「音像制御信号」は、音像の作成位置や移動内容を示す信号であり、テキストデータやバイナリデータを利用することができる。さらに、「オーディオ出力アッテネイト信号」は、経路誘導の音声信号の出力要求、すなわち、オーディオユニット3などが出力する音楽情報の再生出力の低下、若しくは再生の停止を要求する信号であり、二値信号などを用いることができる。
(各種処理の手順)
次に、本実施例1に係るナビゲーションシステムの各種処理の手順について説明する。なお、ここでは、ガイド音声出力制御部25および音像制御部26の基本制御処理(1)を説明した後に、音声ガイダンスの音像の作成位置や移動内容を示す音像制御信号を生成する「音像制御信号生成処理」(2)を説明し、最後に、他の音声出力をアッテネイト制御するオーディオ出力アッテネイト信号を生成する「オーディオ出力アッテネイト信号生成処理」(3)を説明することとする。
(1)基本制御処理
まず最初に、ガイド音声出力制御部25および音像制御部26における基本制御処理を説明する。図6は、ガイド音声出力制御部25および音像制御部26における基本制御処理の手順を示すフローチャートである。図6に示した処理フローは、ナビゲーションユニット2の動作時に回帰的に実行される。
まず、ガイド内容作成部24は、自車両の位置および予定経路からガイドポイント情報を作成する(ステップS601)。そして、ガイド音声出力制御部25は、ガイド内容作成部24によって作成されたガイドポイント情報をもとに、音声ガイダンスの波形を示す「経路誘導音声信号」を生成する(ステップS602)。
続いて、音像制御部26は、ガイド内容作成部24によって作成されたガイドポイント情報をもとに、音声ガイダンスの音像の作成位置や移動内容を示す「音像制御信号」を生成する(ステップS603)。さらに、ガイド音声出力制御部25は、オーディオ出力制御部32から受信したオーディオ信号の出力レベル計算結果をもとに、「オーディオ出力アッテネイト信号」を生成する(ステップS604)。
ここで、ガイド音声出力制御部25は、「オーディオ出力アッテネイト信号」をスピーカ制御部4に送信し(ステップS605)、この「オーディオ出力アッテネイト信号」を受信したスピーカ制御部4におけるマイコン41は、受信信号によって指示されたATT量をもとに、オーディオ出力をアッテネイトする(ステップS606)。
続いて、ガイド音声出力制御部25および音像制御部26は、「経路誘導音声信号」および「音像制御信号」をスピーカ制御部4に送信し(ステップS607)、スピーカ制御部4におけるマイコン41は、この「経路誘導音声信号」および「音像制御信号」をもとに、スピーカSP1〜SP4で出力強度を調節して音声ガイダンスを出力する(ステップS608)。
このように、「経路誘導音声信号」および「音像制御信号」をもとに、音声ガイダンスの移動感制御(音像定位制御)を含む音声出力制御が行われ、「オーディオ出力アッテネイト信号」をもとに、オーディオ出力のアッテネイト制御が行われることとなる。
(2)音像制御信号生成処理
次に、本実施例1に係る音像制御信号生成処理について説明する。図7は、本実施例1に係る音像制御信号生成処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、(1)基本制御処理におけるステップS603に対応した処理であり、「経路誘導音声信号」が生成された後に、開始されることとなる。
同図に示すように、音像制御部26は、自車両が音声ガイダンス出力ポイントに接近した場合(ステップS701肯定)に、音声ガイダンス出力ポイントに応じた音像作成範囲を設定する(ステップS702)。
例えば、自車両が近距離の音声ガイダンス出力ポイントに接近した場合には、音像作成範囲を近距離に設定、すなわち音像作成範囲51を設定し、自車両が中距離の音声ガイダンス出力ポイントに接近した場合には、音像作成範囲を中距離に設定、すなわち音像作成範囲52を設定し、また、自車両が遠距離の音声ガイダンス出力ポイントに接近した場合には、音像作成範囲を遠距離に設定、すなわち音像作成範囲53を設定する。
音像作成範囲の設定(ステップS702)終了後、音像制御部26は、音声ガイダンスの文例の長さが「長い」場合(ステップS703肯定)に、音像の移動速度を「高速」に設定する(ステップS704)。
一方、音声ガイダンスの文例の長さが「中程度」である場合(ステップS703否定かつステップステップS705肯定)には、音像の移動速度を「中速」に設定する(ステップS706)。また、音声ガイダンスの文例の長さが「短い」場合(ステップS703否定かつステップS705否定)には、音像の移動速度を「低速」に設定する(ステップS707)。
音像の移動速度の設定(ステップS704、ステップS706或いはステップS707)終了後、音像制御部26は、誘導方向が運転者に相対して後方である場合(ステップS708肯定)に、現設定における音像の移動速度を音像制御テーブル26aにおける該当ゲインについて低下させる再設定を行う(ステップS709)。
また、誘導方向が運転座席の方向である場合(ステップS708否定かつステップS710肯定)についても、現設定における音像の移動速度を音像制御テーブル26aにおける該当ゲインについて低下させる再設定を行う(ステップS711)。
一方、誘導方向が後方向もしくは運転座席の方向でない場合(ステップS708否定かつステップS710否定)には、現設定における音像の移動速度を維持する再設定を行う(ステップS712)。
音像の移動速度の再設定(ステップS709、ステップS711或いはステップS712)終了後、音像制御部26は、自車両の速度が「高速」である場合(ステップS713肯定)に、音像の移動量を「小」に設定する(ステップS714)。
一方、自車両の速度が「中速」である場合(ステップS713否定かつステップS715肯定)には、音像の移動量を「中」に設定し(ステップS716)、また、自車両の速度が「低速」である場合(ステップS713否定かつステップS715否定)には、音像の移動量を「大」に設定する(ステップS717)。
音像の移動量の設定(ステップS714、ステップS716或いはステップS717)終了後、音像制御部26は、音像作成範囲の設定、音像の移動速度の設定、音像の移動量の設定が反映された「音像制御信号」を生成し(ステップS718)、処理を終了する。
(3)オーディオ出力アッテネイト信号生成処理
次に、本実施例1に係るオーディオ出力アッテネイト信号生成処理について説明する。図8は、本実施例1に係るオーディオ出力アッテネイト信号生成処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、(1)基本制御処理におけるステップS604に対応した処理であり、「音像制御信号」が生成された後に、開始されることとなる。なお、オーディオ出力が行われていない場合(ステップS801)、この処理は実行されない。
同図に示すように、ガイド音声出力制御部25は、オーディオ出力が検出された場合(ステップS801)に、オーディオ出力制御部32からオーディオ信号の「出力レベル計算結果」を取得する(ステップS802)。
そして、ガイド音声出力制御部25は、再生される音楽の音量レベルが「大きい」場合(ステップS803肯定)に、ATT量を「大」に設定し、一方、再生される音楽の音量レベルが「中程度」である場合(ステップS803否定かつステップS805肯定)に、ATT量を「中」に設定する。また、再生される音楽の音量レベルが「小さい」場合(ステップS803否定かつステップS805否定)には、ATT量を「小」に設定する(ステップS807)。
ATT量の設定(ステップS804、ステップS806或いはステップS807)終了後、ガイド音声出力制御部25は、このATT量の設定が反映された「オーディオ出力アッテネイト信号」を生成し(ステップS808)、処理を終了する。
上述してきたように、本実施例1に係るナビゲーションシステム1によれば、音声ガイダンスの文例構造および音声ガイダンスが聴取される環境に応じて音像の移動速度を変化させることとしたので、運転者に対して誘導方向への移動感を明確に伝達することができ、効果的な経路誘導を行うことが可能になる。
また、本実施例1に係るナビゲーションシステム1によれば、他の音声出力の出力レベルを算出し、音声ガイダンスの音像を出力する場合に、算出された出力レベルに応じて他の音声出力の出力レベルを低下させることとしたので、他の音声出力の実際の音量レベルに応じたアッテネイト制御を行うことができ、音声ガイダンスの聞き取り易さをより向上させることが可能になる。
次に、本実施例2に係るナビゲーションシステムについて説明する。実施例1では、自車両の位置から誘導方向に対応する誘導位置(ガイドポイント)までの距離に応じて運転者に対する音像の相対距離を変化させる「距離感制御」を行う実施例について説明したが、本実施例2では、自車両の位置からガイドポイントまでの距離に応じて音声ガイダンスの音色を変化させる「距離感制御」を行う実施例について説明する。なお、ここでは、本実施例2に係るナビゲーションシステムの構成を説明した後に、各種処理の手順を説明することとする。
(ナビゲーションシステムの構成)
図9は、本実施例2に係るナビゲーションシステム1の概要構成を示す概要構成図である。同図に示すように、本実施例2に係るナビゲーションシステム1は、実施例1に比較して、音声ガイダンス出力制御テーブル25bを備える点について相違する。
この音声ガイダンス出力制御テーブル25bは、音声ガイダンスが聴取される環境および自車両の位置からガイドポイントまでの距離に応じた音声ガイダンスの出力制御を行うための音声ガイダンス作成条件を記憶するテーブルであり、例えば、自車両の位置からガイドポイントまでの距離と、該距離に応じた距離感を付与するために音声ガイダンスとして出力すべき周波数帯域とを対応付けて記憶している。
より詳細には、図10−1に示すように、自車両からガイドポイントまでの距離「近傍」に周波数帯域「高域」(例えば、L(Hz)〜M(Hz))を、自車両からガイドポイントまでの距離「近傍以遠〜300m以内」に周波数帯域「中域」(例えば、N(Hz)〜P(Hz))を、自車両からガイドポイントまでの距離「300m以遠〜700m以内」に周波数帯域「低域」(例えば、Q(Hz)〜R(Hz))を対応付けて記憶している。なお、本実施例2では、自車両からガイドポイントまでの距離が近いほど音声ガイダンスとして出力する周波数帯域を高くして、距離感を演出する。このとき、パラメータL、M、N、P、QおよびRは、「L<M」、「N<P」、「Q<R」であり、かつ、「L>N>Q」であることとする。
さらに、音声ガイダンス出力制御テーブル25bは、自車両の「速度」と、該「速度」から推定される騒音レベルに応じた音声ガイダンスの出力レベルを対応付けて記憶している。具体的には、図10−2に示すように、自車両の速度「高速」(80km/h以上)に音声ガイダンスの出力レベル「大」(例えば、S(dB))を、自車両の速度「中速」(40km/h以上〜80km/h未満)に音声ガイダンスの出力レベル「中」(例えば、T(dB))を、自車両の速度「低速」(40km/h未満)に音声ガイダンスの出力レベル「小」(例えば、U(dB))を対応付けて記憶している。なお、本実施例2では、車両の速度が高くなればなるほどロードノイズなどの騒音レベルが大きくなると推定し、自車両の速度が高くなるほど音声ガイダンスの出力レベルを大きくなるように、パラメータS、TおよびUの大小関係を「S>T>U」としている。
ここで、ガイド音声出力制御部25は、車速取得部23によって取得された自車両の「速度情報」、ガイド内容作成部24によって作成された「ガイドポイント情報」、および音声ガイダンス出力制御テーブル25bに記憶された「音声ガイダンス作成条件」をもとに、音声ガイダンスの波形を示す「経路誘導音声信号」を生成する。
かかる「経路誘導音声信号」の生成について説明する。ガイド音声出力制御部25は、音声ガイダンス出力制御テーブル25bを参照して、自車両の位置からガイドポイントまでの距離に応じて音声ガイダンスとして出力すべき周波数帯域を設定する。具体的には、自車両からガイドポイントまでの距離が「近傍」である場合に、音声ガイダンスとして出力する周波数帯域を「高域」(すなわち、L(Hz)〜M(Hz))に設定し、自車両からガイドポイントまでの距離が「近傍以遠〜300m以内」である場合に、音声ガイダンスとして出力する周波数帯域「中域」(すなわち、N(Hz)〜P(Hz))に設定し、また、自車両からガイドポイントまでの距離が「300m以遠〜700m以内」である場合に、音声ガイダンスとして出力する周波数帯域を「低域」(すなわち、Q(Hz)〜R(Hz))に設定する。
また、かかる周波数帯域の設定に対応したフィルタ処理を実行する構成として、スピーカ制御部4のDSP43では、音声ガイダンスとして出力すべき周波数帯域の音声信号を「経路誘導音声信号」から抽出するBPF「バンドパス・フィルタ(Band-Pass Filter)」を具備することとする。
このように、自車両の位置から誘導方向に対応する誘導位置までの距離に応じて当該音声ガイダンスとして音声出力すべき周波数帯域を決定し、該決定された周波数帯域の音声信号を音声ガイダンスから抽出するフィルタ処理を行うことで、自車両の位置から誘導方向に対応する誘導位置までの距離感を音色で伝達することができ、音量レベルを維持しつつ、効果的な距離感制御を行うことが可能になる。
さらに、ガイド音声出力制御部25は、音声ガイダンス出力制御テーブル25bを参照して、自車両の速度から推定される騒音レベルに応じた音声ガイダンスの出力レベルを設定する。具体的には、自車両の速度が「高速」(80km/h以上)である場合に、音声ガイダンスの出力レベルを「大」(すなわち、S(dB))に設定し、自車両の速度が「中速」(40km/h以上〜80km/h未満)である場合に、音声ガイダンスの出力レベルを「中」(例えば、T(dB))に設定し、また、自車両の速度が「低速」(40km/h未満)である場合に、音声ガイダンスの出力レベルを「小」(例えば、U(dB))に設定する。
このように、音声ガイダンスに対する騒音レベルを検出し、検出された騒音レベルに応じて音声ガイダンスの出力レベルを変化させることで、音声ガイダンスの聞き取り易さをより向上させることが可能になる。
(各種処理の手順)
次に、本実施例2に係るナビゲーションシステムの各種処理の手順について説明する。なお、ここでは、音声ガイダンスの波形を示す経路誘導音声信号を生成する「経路音声信号生成処理」について説明する。
図11は、本実施例2に係る経路誘導音声信号生成処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、実施例1における(1)基本制御処理におけるステップS603に対応した処理であり、ガイド内容作成部24によってガイドポイント情報が作成された場合に、開始されることとなる。
同図に示すように、ガイド音声出力制御部25は、自車両からガイドポイントまでの距離が「近傍」である場合(ステップS1101肯定)に、音声ガイダンスとして出力する周波数帯域を「高域」に設定する(ステップS1102)。
一方、自車両からガイドポイントまでの距離が「近傍以遠〜300m以内」である場合(ステップS1101否定かつステップS1103肯定)には、音声ガイダンスとして出力する周波数帯域「中域」に設定する(ステップS1104)。
また、自車両からガイドポイントまでの距離が「300m以遠〜700m以内」である場合(ステップS1101否定かつステップS1103否定)には、音声ガイダンスとして出力する周波数帯域を「低域」に設定する(ステップS1105)。
音声ガイダンスとして出力する周波数帯域の設定(ステップS1102、ステップS1104、ステップS1105)終了後、ガイド音声出力制御部25は、自車両の速度が「高速」である場合(ステップS1106肯定)に、音声ガイダンスの出力レベルを「大」に設定する(ステップS1107)。
一方、自車両の速度が「中速」である場合(ステップS1106否定かつステップS1108肯定)には、音声ガイダンスの出力レベルを「中」に設定する(ステップS1109)。
また、自車両の速度が「低速」である場合(ステップS1106否定かつステップS1108否定)には、音声ガイダンスの出力レベルを「小」に設定する(ステップS1110)。
音声ガイダンスの出力レベルの設定(ステップS1107、ステップS1109、ステップS1110)終了後、ガイド音声出力制御部25は、音声ガイダンスとして出力する周波数帯域の設定、並びに音声ガイダンスの出力レベルの設定が反映された「経路誘導音声信号」を生成し(ステップS1111)、処理を終了する。
上述してきたように、本実施例2に係るナビゲーションシステム1によれば、自車両の位置から誘導方向に対応する誘導位置までの距離に応じて当該音声ガイダンスとして音声出力すべき周波数帯域を決定し、該決定された周波数帯域の音声信号を音声ガイダンスから抽出するフィルタ処理を行うこととしたので、自車両の位置から誘導方向に対応する誘導位置までの距離感を音色で伝達することができ、音量レベルを維持しつつ、効果的な距離感制御を行うことが可能になる。
また、本実施例2に係るナビゲーションシステム1によれば、音声ガイダンスに対する騒音レベルを検出し、検出された騒音レベルに応じて音声ガイダンスの出力レベルを変化させることとしたので、音声ガイダンスの聞き取り易さをより向上させることが可能になる。
さて、これまで本発明の実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで、以下に示すように、(1)構成、(2)移動感制御、(3)距離感制御、(4)音声ガイダンスを含む複数の出力音声の音声出力制御、(5)他の機器との連携、(6)その他等にそれぞれ区分けして異なる実施例を説明する。
(1)構成
例えば、実施例1および実施例2に示した構成は、本発明の利用の一例であり、各種変形を行って実施してもよいものである。例えば、実施例1および実施例2では、ナビゲーションユニット、オーディオユニット、スピーカ制御をそれぞれ独立した構成としたが、これらを一体に構成しても良い。
(2)移動感制御
例えば、実施例1では、音声ガイダンスの文例の長さに応じて音像の移動速度を変化させることとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、音声ガイダンスの単語数、音声ガイダンスの講読文字数、或いは音声ガイダンスのデータサイズの大きさなどに応じて音像の移動速度を変化させるようにしても良い。
また、本発明では、音声ガイダンスの文例の長さではなく、自車両の速度情報に応じて音像の移動速度を変化させるようにしても良い。例えば、自車両の速度が「高速」である場合に、音像の移動速度を「高速」に設定し、自車両の速度が「低速」である場合に、音像の移動速度を「低速」に設定することで、自車両の挙動に応じた移動感を伝達することが可能になる。
さらに、これに関連して、実施例1では、自車両の速度情報に応じて移動軌跡を変化させる際に、自車両の速度が「高速」である場合に、音像の移動角を狭め、自車両の速度が「低速」である場合に、音像の移動角を広げることで、運転者の視野に応じた移動感を伝達することができるようにしているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
すなわち、運転者は、自車両の速度が高い場合、車両操作に集中するため、音声ガイダンスの音像の移動を知覚し難くなる。このため、自車両の速度が「高速」である場合に、音像の移動角を広げることで、音声ガイダンスの音像の移動を知覚し易くすることが可能になる。
また、同様に、自車両の速度情報に応じて移動速度を変化させる際に、自車両の速度が「高速」である場合に、音像の移動速度を「高速」に設定し、自車両の速度が「低速」である場合に、音像の移動速度を「低速」に設定することで、自車両の挙動に応じた移動感を伝達することができるようしているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、自車両の速度が「高速」である場合に、音像の移動速度を「低速」に設定し、自車両の速度が「低速」である場合に、音像の移動速度を「高速」に設定することで、音声ガイダンスの音像の移動を知覚し易くするようにしても良い。
このように、自車両の速度情報に応じて「音像の移動速度」および「音像の移動量」を変化させる場合には、それぞれのケースで一長一短が生じるため、図12に示す移動感制御設定画面100において、ユーザから任意の設定入力を受け付けて動作するようにしても良い。
また、本発明では、音声ガイダンスの切れ目の区間における音像の移動速度を他の区間における音像の移動速度に比較して高くするようにしても良い。例えば、「この先、右方向です。」という音声ガイダンスを音声出力する場合に、「この先」の音声出力と「右方向です」の音声出力との間の切れ目の区間における音像の移動速度を「この先」および「右方向です」の音声出力区間における音像の移動速度に比較して高くすることで、音声ガイダンスの切れ目の区間を音像移動のアクセントとして活用することができ、運転者に対して誘導方向への移動感を滑らかに伝達しつつ、音声ガイダンスの聞き取り易さを向上させることが可能になる。なお、音声ガイダンスの切れ目の区間のみ音像を移動させるようにするようにしてもよく、この場合でも同様の効果が得られる。
また、本発明では、音声ガイダンスの音像定位制御を行う際に助手席側の出力音声の位相を反転させて音声出力するように制御するようにしても良い。すなわち、誘導方向が運転座席の方向(例えば、右方向)である場合、単純に左側(助手席側)のスピーカの音量レベルを低下させてゆくだけでは、運転者側のスピーカの場所に近づき、より右方向に、かつスピーカ位置より遠くに音像を移動させることは難しい。
そこで、左側(助手席側)の出力音声の位相を反転させて音声出力することで、運転座席の方向への音像の移動距離を仮想的に増加させることができ、運転座席の方向への音像の移動感をより明確に伝達することができるようにしている。また、この時、音声ガイダンスを音声出力する周波数帯域を制限することで、音像定位制御の自由度をより効果的に向上させることができる。
(3)距離感制御
例えば、実施例2では、自車両の位置からガイドポイントまでの距離に応じた周波数帯域の音声ガイダンスを音声出力して、自車両の位置からガイドポイントまでの距離感を音色で伝達する実施例ついて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、自車両の位置からガイドポイントまでの距離に応じて当該音声ガイダンスに対して付加する残響音の音量レベルを決定し、該決定された音量レベルの残響音を音声ガイダンスに付加するようにしても良い。
すなわち、自車両からガイドポイントまでの距離が遠くなるほど残響時間が長くなるように残響音を付加することで、自車両の位置からガイドポイントまでの距離感を残響時間の長さで伝達することができ、音量レベルを維持しつつ、効果的な距離感制御を行うことが可能になる。
また、同様に、本発明では、自車両の位置からガイドポイントまでの距離に応じて、音像定位制御を行う際の音像位置を上方向または下方向に変化させるようにしても良い。例えば、自車両の位置がガイドポイントと近いほど上方向に音像を定位させ、自車両の位置がガイドポイントと遠いほど下方向に音像を定位させることで、音量レベルを維持しつつ、効果的な距離感制御を行うことが可能になる。
(4)音声ガイダンスを含む複数の出力音声の音声出力制御
一般的に、自車両の位置からガイドポイントまでの距離が「遠い」場合に行う「距離感制御」は、ガイドポイントまでの距離が「近い」場合に行う「距離感制御」に比較して、音声ガイダンスの音量レベルを小さくする必要がある。このため、他の音声出力をアッテネイト制御する際に、自車両からガイドポイントまでの距離が近い場合に行う「距離感制御」と同一のATT量(アッテネイト量)を採用していたのでは、自車両の位置からガイドポイントまでの距離が「遠い」場合に、運転者に対して距離感を明確に伝達することが難しい。
そこで、本発明では、音声ガイダンスの音像を出力する場合に、自車両の位置からガイドポイントまでの距離に応じて他の音声出力の出力レベルの低下率を変化させることで、音声ガイダンスの聞き取り易さを向上させることができるようにしている。
また、実施例1では、他の出力音声(例えば、オーディオ出力など)の実際の出力レベルを積分回路などを用いて計算し、該計算された他の音声出力の実際の出力レベルに応じて他の音声出力の出力レベルを低下させる実施例について説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、音声ガイダンスの音像を出力する場合に、他の音声出力に係る出力レベル調節情報(例えば、ボリュームつまみ或いはボタンなどの入力デバイスを介して受け付けたボリューム位置情報)に応じて他の音声出力の出力レベルを低下させることで、新たな設備を設けることなく簡易な構成で同様の効果が得られる。
また、実施例2では、自車両の速度情報から騒音レベルを推定し、該推定された騒音レベルに応じて音声ガイダンスの出力レベルを変化させる実施例について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、自車両にマイクを設置し、該設置されたマイクの出力(すなわち、騒音レベル)に応じて音声ガイダンスの出力レベルを変化させるようにしても良い。すなわち、これによって、路面状況など自車両の走行環境の如何に関わらず正確な騒音レベルを検出することができ、音声ガイダンスの聞き取り易さをより効果的に向上させることが可能になる。
さらに、これに関連して、図13に示すように、音声ガイダンス音量制御画面200において、ユーザから任意の設定を受け付けることで、自車両の速度情報による騒音レベルの推定、マイクによる騒音レベルの検出、もしくはこれらを組合せて精度良く騒音レベルを検出することができる。
そして、双方の検出手法を組合せる際に、自車両の速度情報による騒音レベルの推定をマイクによる騒音レベルの検出に比して優先したならば、高速道路の料金所などでの速度変動がなされた場合でも音声ガイダンスの聞き取り易さを向上させることができ、また、マイクによる騒音レベルの検出を自車両の速度情報による騒音レベルの推定に比して優先したならば、ロードノイズの多い路面を走行した場合でも音声ガイダンスの聞き取り易さを向上させることができる。
(5)他の機器との連携
例えば、本発明では、音声ガイダンスの音声出力要求およびハンズフリー音声の音声出力要求が競合した場合に、ハンズフリー音声を優先して音声出力するように制御する。すなわち、ナビゲーションシステム1が携帯電話などの通信装置と接続されている場合に通信装置から音声出力要求があったならば、音声ガイダンスの出力中であっても、通信装置からの出力音声(ハンズフリー音声)の音声出力を優先する。このため、音声ガイダンスによってハンズフリー通話が阻害されることを防止することが可能になる。
また、本発明では、複数の出力音声の音声出力要求が競合した場合に音声出力に係る優先順位の設定を受け付け、音声ガイダンスの出力要求およびハンズフリー音声の出力要求が競合した場合に、受け付けられた優先順位に基づく出力音声を優先して音声出力するように制御するようにしても良い。
例えば、図14に示すように、音声出力優先順位設定受付画面300において、「ハンズフリー音声」の音声出力を優先する設定を採用するか、もしくは「音声ガイダンス」の音声出力を優先する設定を採用するかを受け付け、該受け付けた設定に基づく出力音声を優先して音声出力する。このため、ユーザが要求する出力音声を優先して音声出力することが可能になる。
なお、「音声ガイダンス」の音声出力を優先する設定を採用している場合でも、「音声ガイダンス」を音声出力しつつも、通信相手先に対して「保留メッセージ」を流すなどの対応措置を行うようにしても良い。
また、本発明では、VICS受信機においてVICS情報を受信した場合に、他の音声出力の音像位置と区別された位置(例えば、天井)にVICS情報の音像を定位させる。このため、VICS情報を他の出力音声(すなわち、音声ガイダンスやオーディオ出力など)と区別して聴取させることができる。
また、本発明では、経路誘導すべきガイドポイントとしてETCが存在する場合に、運転者に相対してETCゲートが存在する方向に音像定位制御を行う。すなわち、ETCレーンの方向およびETCゲートまでの距離を示唆するように音声ガイダンスの音像を移動させる音像定位制御を行うことで、ETCゲートの方向を直感的に知覚させることができ、料金所通過時間の短縮に寄与することが可能になる。
(6)その他
例えば、本発明では、運転者の年齢、運転者の聴取特性および/または予定経路からの逸脱頻度に応じて、音像の移動速度および/または移動軌跡、音声ガイダンスとして音声出力する周波数帯域、音声ガイダンスに対して付加する残響音の音量レベル、音声ガイダンスを含む複数の出力音声の音声出力レベル、音声ガイダンスの発話速度、もしくはこれらの組合せを変化させる。すなわち、これによって、運転者の年齢、運転者の聴取特性および予定経路の伝達度に追従した経路誘導を行うことが可能になる。
また、本実施例において説明した各処理のうち、自動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を手動的におこなうこともでき、あるいは、手動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的におこなうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。