JP2006042777A - 拡張型心筋症モデル動物およびその用途 - Google Patents

拡張型心筋症モデル動物およびその用途 Download PDF

Info

Publication number
JP2006042777A
JP2006042777A JP2004251147A JP2004251147A JP2006042777A JP 2006042777 A JP2006042777 A JP 2006042777A JP 2004251147 A JP2004251147 A JP 2004251147A JP 2004251147 A JP2004251147 A JP 2004251147A JP 2006042777 A JP2006042777 A JP 2006042777A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ncx1
dilated cardiomyopathy
transgenic mouse
mouse
mouse according
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2004251147A
Other languages
English (en)
Inventor
Takahiro Iwamoto
隆宏 岩本
Satomi Kita
紗斗美 喜多
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Individual
Original Assignee
Individual
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Individual filed Critical Individual
Priority to JP2004251147A priority Critical patent/JP2006042777A/ja
Publication of JP2006042777A publication Critical patent/JP2006042777A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)

Abstract

【課題】
本発明は、1型Na/Ca2+交換輸送体の活性型変異体を心筋特異的に高発現させた新規なトランスジェニックマウス及びそのマウスを利用した拡張型心筋症治療法のスクリーニング系を提供する。
【解決手段】本発明は、Na不活性化機構を欠失させる変異をもつ活性型NCX1蛋白質を心筋特異的なプロモーターを用いてマウスに遺伝子導入することによって、拡張型心筋症の病理学的所見及び超音波心電図所見を再現するトランスジェニックマウスに関する。本発明のトランスジェニックマウスは、拡張型心筋症の薬物治療法及び遺伝子治療法のスクリーニング系に利用できる。
【選択図】なし

Description

発明の詳細な説明
本発明は、Na不活性化機構を欠失させる変異を持つ活性型NCX1蛋白質を心筋特異的に高発現するトランスジェニックマウス(TGマウス)に関し、詳しくは、拡張型心筋症を再現するTGマウス及び当該TGマウスを用いた拡張型心筋症の治療法のスクリーニング系に関する。
拡張型心筋症は、原因不明の心腔拡大及び心収縮機能障害(心不全)を特徴とする疾患群である。一般に心重量は増加するが、超音波診断装置による心臓図所見では、壁厚増大はわずかで、心房及び心室の内腔拡張が見られる。また、病理学的所見としては、心筋細胞肥大、心筋細胞壊死、間質繊維化が認められる。疾患頻度に関しては、米国では10万人当たり36.5人とされ、新規発症が10万人当たり5〜8人/年間とされている。拡張型心筋症の多発家系を対象とした連鎖解析による原因遺伝子座のマッピングから、これまでに15以上の遺伝子異常が見つかっている。拡張型心筋症患者では、通常、僧帽弁逆流、致死性不整脈及び血栓症を合併することが多く、診断後5年以内の死亡率が50%にも達し、予後は不良である。
拡張型心筋症の内科的な治療には、ジギタリス剤等の強心剤、利尿剤、血管拡張剤等が使用され、最近では「アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬」、「アンジオテンシン受容体阻害薬」等が拡張型心筋症の進行を遅らせ、予後を改善する薬剤として有益とされ、また、合併症の不整脈や血栓症の治療も必要に応じて行われている。しかしながら、上述したとおり予後が不良であり、拡張型心筋症に対する、より効果的な薬剤及び遺伝子治療法の開発が望まれている。
1型Na/Ca2+交換輸送体(NCX1)は、心筋Ca2+トランジェントに関与する重要なCa2+輸送体であり、心不全時においてNCX1の蛋白発現が上昇することが知られているが、NCX1と心不全の具体的な関係は未だ明らかでない。NCX1の活性は、Na依存性不活性化と呼ばれる活性調節機構により制御されている。電気生理学的な研究から、NCX1の細胞内ドメインの特殊領域(XIP領城)にPIPが結合すると、このNa依存性不活性化が抑制され輸送活性が増大することが知られている。また、XIP領域内に変異を導入すると、Na依存性不活性化の速度が変化することが報告されている。
松岡ら、J.Gen.Physiol.Vol.109,No.2,273−286(1997)
例えば、XIP領域内のアミノ酸番号255のフェニルアラニン残基がグルタミン酸に置換された変異型NCX1では野生型NCX1に較べてNa依存性不活性化の速度が速くなり、一方、XIP領域内のアミノ酸番号256、258、260及び263の4種のチロシン残基に相当するアミノ酸残基が全てトリプトファンに置換された変異型NCX1ではNa依存性不活性化が消失すること(すなわち、活性型変異体になること)が発現細胞を用いた電気生理学的な研究から明らかになっている。岩本ら、J.Biol.Chem.Vol.279,No.9,7544−7553(2004)
しかし、この活性調節機構の生理的意義については未だに解明されていない。
従来、NCX1の遺伝子改変マウスとして、ノックアウトマウス及び野生型、変異型NCX1を過剰発現するTGマウスが報告されたが、拡張型心筋症を再現するTGマウスについては未だ報告されていない。
発明が解決しようとする課題
本発明の目的は、拡張型心筋症の治療に有効な薬剤及び当該疾患に対する遺伝子治療法をスクリーニングする当該スクリーニング系に使用することができる拡張型心筋症の動物モデルを提供することにある。
課題を解決するための手段
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、Na不活性化機構を欠失させる変異をもつ活性型NCX1蛋白質をコードするcDNAがマウス心筋αミオシン重鎖プロモーターの制御下に配置されている組換えDNAを導入された、拡張型心筋症を再現することを特徴とするTGマウス及び同TGマウスを使用する、拡張型心筋症の治療薬及び遺伝子治療法のスクリーニング系が、上記目的に適うことを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、配列表の配列番号1に示す塩基配列及び配列番号2に示すアミノ酸配列において、Na不活性化機構を欠失させる変異をもつ活性型NCX1蛋白質をコードするcDNAがプロモーターの制御下に配置されている組換えDNAを導入されている、拡張型心筋症を再現することを特徴とするTGマウスを得、これを使用して拡張型心筋症の治療薬及び遺伝子治療法のスクリーニングを行うことにより実施することができる。特に、Na不活性化機構を欠失させる変異をもつ活性型NCX1蛋白質をコードするcDNAが、NCX1のアミノ酸番号256、258、260及び263の4種のチロシン残基に相当するアミノ酸残基が、全て他のアミノ酸に置換された、好ましくは全てトリプトファンに置換された活性型変異体をコードするcDNAを用いて作成されたTGマウスが上記目的には適している。
本発明の特徴を以下に列記する。
(1)配列表の配列番号1に示す塩基配列及び配列番号2に示すアミノ酸配列において、Na不活性化機構を欠失させる変異をもつ活性型NCX1蛋白質をコードするcDNAがプロモーターの制御下に配置されている組換えDNAを導入されている、拡張型心筋症を再現することを特徴とするTGマウス。
(2)前記活性型NCX1蛋白質をコードするcDNAがイヌ由来である、(1)に記載のTGマウス。
(3)前記プロモーターが心筋αミオシン重鎖プロモーターである、(1)又は(2)に記載のTGマウス。
(4)配列番号2に記載のアミノ酸番号256、258、260及び263の4種のチロシン残基に相当するアミノ酸残基が全て他のアミノ酸に置換する変異である、(1)〜(3)の何れかに記載のTGマウス。
(5)配列番号2に記載のアミノ酸番号256、258、260及び263の4種のチロシン残基に相当するアミノ酸残基が全てトリプトファンに置換する変異である、(1)〜(4)の何れかに記載のTGマウス。
(6)拡張型心筋症モデルとして使用される(1)〜(5)の何れかに記載のTGマウス。
(7)拡張型心筋症の病理学的所見である心肥大、繊維化、心筋壊死及び変性をもつことを特徴とする(1)〜(6)の何れかに記載のTGマウス。
(8)拡張型心筋症の超音波心臓図所見である左心室拡張期径及び左心室収縮期径の増大及び左室内径短縮率の低下を特徴とする(1)〜(7)の何れかに記載のTGマウス。
(9)(1)〜(8)の何れかに記載のTGマウスを用いる、拡張型心筋症治療薬のスクリーニング系。
(10)(1)〜(8)の何れかに記載のTGマウスを用いる、拡張型心筋症の遺伝子治療法のスクリーニング系。
本発明の活性型NCX1蛋白質を過剰に発現するTGマウスは拡張型心筋症における病理学的所見(例えば、心肥大、繊維化、心筋壊死及び変性)及び超音波心臓図所見(例えば、左心室拡張期径及び左心室収縮期径の増大及び左室内径短縮率の低下)を再現する拡張型心筋症の疾患動物モデルであり、NCX1−mXIPと名付けた。このモデル動物(NCX1−mXIP)は今後の拡張型心筋症の原因解明、治療薬及び遺伝子治療法の開発に有用な役割を果たすものである。
本発明の活性型NCX1遺伝子は、Na不活性化機構を欠失させる変異をもつNCX1をコードするDNAである。その一例として、NCX1のアミノ酸番号256、258、260及び263の4種のチロシン残基に相当するアミノ酸残基が全て他のアミノ酸に置換された変異型NCX1をコードするcDNAが挙げられる。このような変異を導入するNCX1遺伝子としては、変異型NCX1遺伝子が導入されているTGマウスが拡張型心筋症における病理学的所見(例えば、心肥大、繊維化、心筋壊死及び変性)及び超音波心臓図所見(例えば、左心室拡張期径及び左心室収縮期径の増大及び左室内径短縮率の低下)を再現するようなものであれば、どのような生物由来のものであってもよいが、その一例として、イヌ由来のものが挙げられる。このようなDNAは、例えば、イヌNCX1遺伝子をコードするcDNAを鋳型とし、NCX1のアミノ酸番号256、258、260及び263の4種のチロシン残基をコードするNCX1遺伝子の塩基を全て他のアミノ酸をコードするように置換したミスセンス変異導入プライマーを用いたPCRによって、得ることができる。以下の実施例に、このミスセンス導入操作に用いられる、ミスセンス変異導入プライマーの一例を示す。
前記活性型NCX1の変異としては、配列番号2に記載のアミノ酸番号256、258、260及び263の4種のチロシン残基に相当するアミノ酸残基が全てトリプトファンに置換する変異が好ましい。
本発明のDNAは過剰発現されることが望ましい。過剰発現は、例えば、本発明のDNAが適当なベクター内のプロモーターの制御下に配置された組換えDNAによって行うことができる。本発明に用いられるプロモーターとしては、作製するトランスジェニックの心筋細胞における発現を特異的に強化するものが好ましい。その一例として、心筋αミオシン重鎖プロモーターが挙げられる。
本発明のTGマウスは、アミノ酸番号256、258、260及び263の4種のチロシン残基に相当するアミノ酸残基が全て他のアミノ酸に置換された活性型NCX1蛋白質をコードするcDNAが、プロモーターの制御下に配置されている組換えDNAを導入されている、拡張型心筋症における病理学的所見(例えば、心肥大、繊維化、心筋壊死及び変性)及び超音波心臓図所見(例えば、左心室拡張期径及び左心室収縮期径の増大及び左室内径短縮率の低下)を再現する拡張心筋症TGマウスである。
本発明のTGマウスは、具体的には、例えば、活性型NCX1変異体遺伝子が強力なプロモーターの制御下に配置されるように組換えDNAを構築し、得られた組換えDNAをマウスの受精卵の前核にマイクロインジェクションし、その受精卵を偽妊娠マウスの卵管に移植し、マウスを飼育し、生まれた仔マウスから前記組換えDNAを有する仔マウスを選択することによって得ることができる。生まれた仔マウスの中から組換えDNAを有する仔マウスの選択は、例えば、マウス尾より抽出したゲノムDNAを鋳型とし、NCX1遺伝子の塩基配列の一部を有するプライマーを用いたPCRによって、前記組換えDNAの導入の判定を確認する方法により、行うことができる。
本発明の組換えDNAを導入する受精卵は、雄マウスと雌マウスを交配することにより得ることができる。本発明の組換えDNAを導入する方法としては、例えば、マイクロインジェクション法を用いることができる。
本発明のTGマウスが再現する拡張型心筋症における病理学的所見及び超音波心臓図所見は次のようにして確認することができる。病理学的所見は、TGマウスから調製された心臓切片をヘマトキシリン・エオジン染色、アザン染色及び抗NCX1抗体染色し、顕微鏡下に観察することができる。また、麻酔したマウスの超音波心臓図所見は、超音波診断装置(左室Mモード)を用いて観察することができる。
本発明者が作製し、継代可能なNCX1−mXIPTGマウスは、活性型NCX1変異体を心臓特異的に高発現する新しいTGマウスである。NCX1−mXIP TGマウスは、病理学的には拡張型心筋症に見られる心肥大、繊維化、心筋壊死及び変性を再現する拡張型心筋症の疾患モデル動物である。さらに、このマウスは、超音波心臓図検査から左心室拡張期径及び左心室収縮期径の増大及び左室内径短縮率の低下が認められる。これらの所見は、すなわち、ことを示している。
具体的に、本発明のTGマウスを拡張型心筋症治療薬のスクリーニング系として、例えば、次のように用いることができる。本発明のTGマウスを被験群及び対照群に分け、被験群に試験する治療薬を投与し又は遺伝子治療を施し、その後、被験群及び対照群のそれぞれから心臓組織を調製し、心肥大、繊維化、心筋壊死及び変性などの病理変化の改善を観察することにより、並びに、超音波心臓図検査(左心室拡張期径、左心室収縮期径及び左室内径短縮率の評価)により、各群を比較し、その心不全改善効果を検討し、拡張型心筋症の治療法をスクリーニングすることができる。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例により本願発明は限定されるものではない。
(1)活性型NCX1変異体をコードする発現ベクターの構築
イヌ心臓から調製したRNAからの逆転写反応より得られたcDNAから、PCRによりNCX1cDNAの完全長(配列番号1)を取得した。そのPCRプライマーセットとしては、フォワードプライマーとしてF−NCX1(配列番号3)をリバースプライマーとしてR−NCX1(配列番号4)を用いた。これらプライマーは、遺伝子データベースGenbankのアクセッション番号M57523に記載されたイヌNCX1の遺伝子配列を元に作製し、プライマーの末端には、ベクターに挿入するための制限酵素認識部位(開始コドンの前にSalI配列と停止コドンの後にHindIII配列)を付加した。
配列番号2に示されるイヌ正常型NCX1蛋白質のアミノ酸番号256、258、260及び263の4種のチロシン残基をトリプトファン残基に置換する変異(Y256W/Y258W/Y260W/Y263W)を導入するため、イヌ正常型NCX1 cDNA(配列番号1)に変異を導入するためのミスセンス変異導入用プライマーを作製した。そのプライマーセットとしては、フォワードプライマーとしてF−Y256W/Y258W/Y260W/Y263W(配列番号5)をリバースプライマーとしてR−Y256W/Y258W/Y260W/Y263W(配列番号6)を用いた。
プラスミドpGEM−T Easy(プロメガ)にクローニングしたイヌ正常型NCX1 cDNAを鋳型DNAとして、F−Y256W/Y258W/Y260W/Y263WとR−NCX1のプライマーセット、並びにR−Y256W/Y258W/Y260W/Y263WとF−NCX1のプライマーセットを用いてそれぞれ別々にPCRを行った。PCRは、94℃、30秒;55℃、30秒;72℃、3分を1サイクル、94℃、10秒;55℃、30秒;72℃、2分を26サイクル、72℃、10分を1サイクルの反応条件で行った。得られたPCR産物(約0.9kb及び約2.1kb)を混合し、鋳型DNAとして、F−NCX1とR−NCX1のプライマーセットを用いて、PCRを行い、Y256W/Y258W/Y260W/Y263W変異型NCX1 cDNAクローンを得た。PCRは、94℃、30秒;55℃、30秒;72℃、3分を1サイクル、94℃、10秒;55℃、30秒;72℃、3分を26サイクル、72℃、10分を1サイクルの反応条件で行った。
プラスミドpGEM−T Easy(プロメガ)にクローニングしたY256W/Y258W/Y260W/Y263W変異型NCX1 cDNA(約3.0kb)の全配列はABIPRISM3100ジェネティックアナライザーにより確認された。このcDNAは、マウス心筋αミオシン重鎖発現ベクター(Subramaniamら、J.Biol.Chem.Vol.266、No.36、24613−24620(1991))のSalI及びHindIII部位に挿入された。マウスαミオシン重鎖プロモーター(約5.5kb)、Y256W/Y258W/Y260W/Y263W変異型NCX1 cDNA及びSV40ポリA付加部位を含む約9.0kbのNotI制限消化断片は、活性型NCX1変異体TGマウスを作製するためのトランスジーンとして使用された。
(2)活性型NCX1変異体TGマウスの作製
Y256W/Y258W/Y260W/Y263W変異型NCX1 cDNAを挿入したマウス心筋αミオシン重鎖発現ベクターをNotI制限消化することにより、約9.0kbの遺伝子導入断片(図1)を切り出し、電気泳動により精製した。Y256W/Y258W/Y260W/Y263W変異型NCX1遺伝子は、マウス心筋αミオシン重鎖プロモーターの支配下にあり、SV40ポリA付加部位を含む。
C57BL/6Jマウス(C57BL/6J雄×C57BL/6J雌)の受精卵の前核に、精製した遺伝子導入断片をマイクロインジェクションした。その後、生き残った受精卵を精管結さつマウスと交配させて偽妊娠状態にしておいた受容雌マウスの卵管に移植した。移植後、19日目に帝王切開し、生まれてきたマウスを里親マウスに育てさせた。この操作により、TGマウスの3系統(NCX1−mXIP−1、NCX1−mXIP−2及びNCX1−mXIP−3)を作製した。生後4週齢で尾から染色体DNAを単離し、EcoRI制限消化した後、ランダムプライム法により32P標識したNCX1cDNAのSalI−XhoI断片をプローブとしてサザンブロッティングを行うことにより、遺伝子型の判定を行なった。その結果、NCX1−mXIP−1、NCX1−mXIP−2及びNCX1−mXIP−3のTGマウスは、それぞれ2コピー、1コピー及び10コピーのトランスジーンが挿入されていることが判明した。
(3)活性型NCX1変異体TGマウスの性質
全てのマウスは室温22±1℃、照明12時間(8:00−20:00)の飼育条件下で個別飼育し、餌と水は自由に摂取させた。活性型NCX1変異体TGマウスのヘテロ接合体は正常な妊娠、誕生及びリターサイズを有し、発育的に正常で、生育可能である。これらのTGマウスの外観及び挙動も正常である。しかし、20週齢以上になると、まれに突然死を起こすことがある。
(4)活性型NCX1変異体の発現
TGマウス(15週齢)の心臓におけるY256W/Y258W/Y260W/Y263W変異型NCX1の発現は、ウエスタンブロット法により確認した。すなわち、マウス心臓から調製した膜分画の蛋白質(30μg)を7.5%アクリルアミドゲルに供し、SDS電気泳動により分離した後、メンブレンフィルターに転写した。そして、このメンブレンフィルターを特異的な抗NCX1抗体をプローブとして解析したところ、120kDと150kDの位置に内因性NCX1及びY256W/Y258W/Y260W/Y263W変異型NCX1が検出された。図2に示すように、NCX1−mXIP−1、NCX1−mXIP−2及びNCX1−mXIP−3のTGマウスの心臓にはY256W/Y258W/Y260W/Y263W変異型NCX1が内因性NCX1に較べて高発現していることが確認された(図2)。
免疫組織化学
TGマウス(15週齢)の心臓から凍結切片を取得した後、一晩冷凍庫内で乾燥して−20℃のアセトンで15分間固定した。この切片を一次抗体として抗NCX1ウサギポリクローナル抗体、二次抗体として抗ウサギ・ビオチン化ヤギIgG抗体、次いでペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンと反応させ、最後に3.3’−ジアミノベンチジン(DAB)にて発色させた。その結果、NCX1−mXIP−1マウスの心臓切片の心筋細胞膜及び横細管膜には、Y256W/Y258W/Y260W/Y263W変異型NCX1が内因性NCX1に較べて高発現していることが示された(図3)。同様の抗体染色は、NCX1−mXIP−2マウス及びNCX1−mXIP−3マウスにおいても観察された。
組織形態学的検討
NCX1−mXIP−1マウス(8週齢、14週齢及び30週齢)の心臓切片をヘマトキシリン・エオジン染色し、心臓の水平断面像及び垂直断面像を観察した。その結果、NCX1−mXIP−1マウスは14週齢から右心室壁が減厚しはじめ、30週齢では右心室及び左心室ともに顕著な拡張が認められた(図4)。さらに、30週齢のNCX1−mXIP−1マウスの心臓切片をアザン染色し、心臓組織の光学顕微鏡像を得たところ、心筋の繊維化および壊死が認められた(図5)。このように、NCX1−mXIP−1マウスは30週齢で典型的な拡張型心筋症の所見を示した。NCX1−mXIP−2マウス及びNCX1−mXIP−3マウスにおいても同様の所見が観察された。
超音波心臓図検査
生存状態で心機能を評価するために、ケタミン(10mg/kg)及びキシラジン(15mg/kg)の腹腔内投与で麻酔したNCX1−mXIP−1マウス(25週齢)及び野生型マウス(同週齢)について経胸壁超音波心臓図検査を行った。Mモードにおいて、左心室拡張期径(LVEDD)、左心室収縮期径(LVESD)及び左室内径短縮率%(FS%)を計測した。NCX1−mXIP−1マウスでは、同週齢の野生型マウスに較べて左心室拡張期径及び左心室収縮期径が増大し、また左室内径短縮率%が顕著に低下しており、典型的な心不全状態に陥っていることが確認された(図6)。NCX1−mXIP−2マウス及びNCX1−mXIP−3マウスにおいても同様の所見が観察された。
発明の効果
本発明の活性型NCX1変異体を心筋特異的に高発現するTGマウスは、拡張型心筋症の動物モデルとして当該疾患の発生機序を解明し、治療薬及び遺伝子治療法を開発するためのスクリーニング系として有用である
図1は、遺伝子導入断片を示す図である。 図2は、活性型NCX1変異体TGマウス3系統の心臓から調製した膜分画の抗NCX1抗体によるウエスタンブロットを示す図(写真)である。 図3は、野生型マウス及びNCX1−mXIP−1マウス心臓の抗NCX1抗体による免疫染色を示す図(写真)である。 図4は、野生型マウス及びNCX1−mXIP−1マウス心臓の水平断面像及び垂直断面像(ヘマトキシリン・エオジン染色)の経時的な変化を示す図(写真)である。 図5は、野生型マウス及びNCX1−mXIP−1マウス心臓(30週齢)のアザン染色による光学顕微鏡像を示す図(写真)である。 図6は、野生型マウス及びNCX1−mXIP−1マウス心臓(25週齢)の超音波心臓図(Mモード)及び心機能パラメーターの計測値(平均値±標準誤差、n=5)を示す。LVEDD:左心室拡張期径、LVESD:左心室収縮期径、FS%:左室内径短縮率%。

Claims (12)

  1. 配列表の配列番号1に示す塩基配列及び配列番号2に示すアミノ酸配列において、Na不活性化機構を欠失させる変異をもつ活性型NCX1蛋白質をコードするcDNAがプロモーターの制御下に配置されている組換えDNAを導入されている、拡張型心筋症を再現することを特徴とするトランスジェニックマウス。
  2. 前記活性型NCX1蛋白質をコードするcDNAがイヌ由来である、請求項1に記載のトランスジェニックマウス。
  3. 前記プロモーターがマウス心筋αミオシン重鎖プロモーターである、請求項1又は2に記載のトランスジェニックマウス。
  4. 配列番号2に記載のアミノ酸番号256、258、260及び263の4種のチロシン残基に相当するアミノ酸残基が全て他のアミノ酸に置換された変異体である、請求項1〜3の何れか一項に記載のトランスジェニックマウス。
  5. 配列番号2に記載のアミノ酸番号256、258、260及び263の4種のチロシン残基に相当するアミノ酸残基が全てトリプトファンに置換された変異体である、請求項1〜4の何れか一項に記載のトランスジェニックマウス。
  6. 拡張型心筋症モデルとして使用される請求項1〜5の何れか一項に記載のトランスジェニックマウス。
  7. 拡張型心筋症の病理学的所見である心肥大、繊維化、心筋壊死及び変性をもつことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のトランスジェニックマウス。
  8. 拡張型心筋症の超音波心臓図所見である左心室拡張期径及び左心室収縮期径の増大及び左室内径短縮率の低下を特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のトランスジェニックマウス。
  9. 請求項1〜8の何れか一項に記載のトランスジェニックマウスを用いることを特徴とする、拡張型心筋症治療薬のスクリーニング系。
  10. 請求項1〜8の何れか一項に記載のトランスジェニックマウスを用いることを特徴とする、拡張型心筋症に対する遺伝子治療法のスクリーニング系。
  11. 請求項1〜8の何れか一項に記載のトランスジェニックマウスの、拡張型心筋症治療薬スクリーニング系への使用。
  12. 請求項1〜8の何れか一項に記載のトランスジェニックマウスの、拡張型心筋症に対する遺伝子治療法スクリーニング系への使用。
JP2004251147A 2004-08-03 2004-08-03 拡張型心筋症モデル動物およびその用途 Pending JP2006042777A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004251147A JP2006042777A (ja) 2004-08-03 2004-08-03 拡張型心筋症モデル動物およびその用途

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004251147A JP2006042777A (ja) 2004-08-03 2004-08-03 拡張型心筋症モデル動物およびその用途

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2006042777A true JP2006042777A (ja) 2006-02-16

Family

ID=36022019

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004251147A Pending JP2006042777A (ja) 2004-08-03 2004-08-03 拡張型心筋症モデル動物およびその用途

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2006042777A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20220022300A (ko) * 2020-08-18 2022-02-25 가톨릭대학교 산학협력단 확장성 심근병 모델 및 이의 제조방법

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20220022300A (ko) * 2020-08-18 2022-02-25 가톨릭대학교 산학협력단 확장성 심근병 모델 및 이의 제조방법
KR102541297B1 (ko) 2020-08-18 2023-06-09 가톨릭대학교 산학협력단 확장성 심근병 모델 및 이의 제조방법

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Kuang et al. Merosin-deficient congenital muscular dystrophy. Partial genetic correction in two mouse models.
Yan et al. Ablation of the CDK inhibitor p57Kip2 results in increased apoptosis and delayed differentiation during mouse development.
US20100223686A1 (en) Mouse in which genome is modified
US6333447B1 (en) Transgenic model of heart failure
US6353151B1 (en) Transgenic model for heart failure
US6194632B1 (en) Mouse model for congestive heart failure
JP2006042777A (ja) 拡張型心筋症モデル動物およびその用途
EP1208200B1 (en) Transgenic animal model for neurodegenerative diseases
AU780532B2 (en) Animal model for mesangial proliferative nephritis
JP4174212B2 (ja) パーキンソン病モデルトランスジェニックマウス
CN112826823B (zh) 多西环素在制备治疗和/或预防和/或缓解和/或改善心肌病药物中的应用
CN112841128B (zh) 基因敲除小鼠在制备限制型心肌病动物模型中的应用
JP4683821B2 (ja) ヒト組織因子を産生するノックイン非ヒト動物
EP1699289B1 (en) Non-human mammal comprising a modified serca2 gene and methods, cells, genes, and vectors thereof
JP3949520B2 (ja) レギュカルチン過剰発現モデル動物
JP3817638B2 (ja) トランスジェニック非ヒト哺乳動物
WO2002034041A1 (fr) Animal non humain a proteine-marqueur de la senescence 30 defectueuse, anticorps et son procede de production
WO2002005633A1 (en) P300 transgenic animal
JP4696316B2 (ja) Cd9/cd81二重欠損非ヒト動物
KR100494833B1 (ko) 간암 발현 형질전환 생쥐
EP1814387B1 (en) Animal model for studying substances with cardiotherapeutic and anti-hypertensive activity
JP2007312641A (ja) 非ヒト哺乳動物、その作製方法及びそれを用いた筋疾患用治療薬のスクリーニング方法
JP2004166596A (ja) Zaq遺伝子改変動物
JP2010220615A (ja) ゲノムが改変されたマウス
JP2006141283A (ja) 3−ホスホグリセレートデヒドロゲナーゼの発現が低下したノックアウト非ヒト哺乳動物