JP2006001850A - 水性防腐剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 水、または水と有機溶剤とからなる混合溶媒を溶媒とする水性防腐剤において、主殺菌剤としてハロゲン化脂肪族ニトロアルコール、およびイソチアゾリン化合物を、安定化剤として澱粉を含有する。
Description
特に、製紙工業用水を用いて製造される紙用塗工液においては、有害微生物によりこれが固化したり、悪臭や異臭が発生して作業環境を悪化させ、公衆衛生上好ましくない現象を引き起こしたりしている。
これらのスライムはしばしば剥離し、パルプスラリー中に再び混入して抄紙工程に移行し、紙切れ、あるいは製品汚染の原因となり、品質の低下や種々の障害を発生させ、殊に近年の高速抄紙においては、著しい生産性低下や断紙、損紙などの経済的損失を招来している。
このような問題を回避する有効な手段として、例えば2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドなどの使用が知られているが、作用性に偏りがあり微生物に対する効力が不十分であるうえ、シアノ基を有する化合物であるため、作業に際しての安全性や排水を介しての動植物などの環境への影響が危惧されているのが実状である。
本剤は、上記の様な化合物を使用しないという点においては評価されるものの、溶媒として主に有機溶剤のみを用いている。
環境への負荷を極力軽減するためには、溶媒として水を用いて水性とすることが望まれるが、そうした場合、得られる防腐剤の安定性が十分ではないという問題を有していた。
式中、
R1、R2:水素基、ハロゲン基、または置換基を有してもよいアルキル基
X:ハロゲン基
式中、
R3:炭素数1〜8のアルキル基
Y、Z:水素基、またはハロゲン基
上記のハロゲン化脂肪族ニトロアルコールとイソチアゾリン化合物との重量比が、ハロゲン化脂肪族ニトロアルコール1に対して、イソチアゾリン化合物0.07以下であることを特徴とする該水性防腐剤、さらには、澱粉を0.01〜15重量%含有する該水性防腐剤をもその要旨とする。
このうち、ハロゲン化脂肪族ニトロアルコールは、これ自体公知の化合物であって、それ単独では糸状菌類や酵母菌類に対して活性が著しく劣り、細菌類に対しても所望の効果が十分には得られない。
また、イソチアゾリン化合物も、これ自体公知の化合物であって、それ単独では、糸状菌類や酵母類、細菌類に対して低濃度では所望の効果が十分に得られない。
本発明の水性防腐剤は、このように、公知の殺菌剤をそれぞれ単独使用する場合からは到底予測することのできない極めて優れた防腐効果を発揮し、しかも有害微生物である糸状菌類や酵母菌類、細菌類などに対して、その種類に係わりなく広い防腐範囲を有するものである。
R1とR2とは、同じ基としても良いし、それぞれ異なる基としても良い。
これらの中でも、コスト、入手のし易さ、あるいは防腐力などの理由から、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、2−ブロモ−2−ニトロプロパンジオール−(1,3)などを好ましく用いることができる。
これらのハロゲン化脂肪族ニトロアルコールは、どれかを単独で用いても良いし、必要に応じて適宜の組み合わせによる2種以上を併用しても良い。
2種以上を併用する場合には、本発明の水性防腐剤の高い安定性を確保する上で、4,5−ジクロロ−2−オクチルイソチアゾリン−3−オンと2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンとを組み合わせ使用することが、本発明の水性防腐剤に溶媒として使用される水に起因する経時的な影響が少なく好適であり、これらを組み合わせ使用する場合の4,5−ジクロロ−2−オクチルイソチアゾリン−3−オンと2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの使用割合は、重量比で1:10〜10:1が好ましく、より好ましくは1:5〜5:1である。
この範囲外であると、その理由は明らかではないが、長期に保存する際に、ハロゲン化脂肪族ニトロアルコールと、4,5−ジクロロ−2−オクチルイソチアゾリン−3−オンと2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンのいずれか一方あるいは双方とが互いに分離したり、これらの化合物が本発明の水性防腐剤から分離したり、あるいは上記した水に起因する経時的な影響を減少させることが困難になる場合があり、これらの化合物の相乗作用が得られ難くなり、高い防腐効果が期待できなくなる場合がある。
ハロゲン化脂肪族ニトロアルコールに対するイソチアゾリン化合物の比がこれより大きすぎると、イソチアゾリン化合物により得られる効果が飽和しているにもかかわらず、過剰に配合することとなるため経済的に不利となる場合があり、これより小さすぎると、イソチアゾリン化合物による効果が十分に得られない場合がある。
用いる溶媒としては、水、または水と有機溶剤との混合溶媒が挙げられ、溶液とならない場合でも、エマルジョンやサスペンジョンなどとして用いることができる。
中でも、経時での外観の変化や、各種工業用水・工業製品との相溶性などの理由から、特にジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどを好ましく用いることができる。
これらの有機溶剤は、単独でも、適宜の組み合わせによる2種以上を併用しても良い。
水に対する有機溶剤の比がこれより大きすぎると、溶媒として水を配合することによる環境への負荷の低減という効果が希薄になり、これより小さすぎると、本発明の水性防腐剤を構成する主殺菌剤の均一化に支障を来す場合がある。
そのようなことを防ぐため、本発明の水性防腐剤では、イソチアゾリン化合物として特に上記のものを選択して使用したり、これらを上記の割合で組み合わせて使用するほか、澱粉を配合するといった手法を採用する。
安定化剤となる澱粉は、本発明の水性防腐剤に0.01〜15重量%、好ましくは0.05〜10重量%となるように配合する。水性防腐剤中の含有量がこれよりも多すぎると、本発明の水性防腐剤を構成する主殺菌剤の均一化に支障を来たす場合があり、主殺菌剤を安定的に保持するための効果が十分に得られない場合がある。また、これよりも少なすぎると、安定化剤としての機能を十分に発揮できない場合がある。
添加剤として界面活性剤を用いる場合は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル系、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキル硫酸エステル塩、第四級アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン等を単独で、または複数を混合して用いることができる。
また、従来、種々ある防腐剤は、アルカリ雰囲気下において使用すると、その有効成分は速やかに、そして著しく分解し、防腐剤としての効力を持たなくなる。それに対し、本発明の水性防腐剤はアルカリ雰囲気下の使用においても、有効成分の分解が少なく、防腐効果を維持することができるため、本発明の水性防腐剤は、pH7〜10程度のアルカリ雰囲気下において使用することにより、その防腐効果をより顕著に発揮させることができる。
DBNE:2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール
BNPD:2−ブロモ−2−ニトロプロパンジオール−(1,3)
DCOT:4,5−ジクロロ−2−オクチルイソチアゾリン−3−オン
OIT :2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン
DEG :ジエチレングリコール
BDG :ジエチレングリコールモノブチルエーテル
MDG :ジエチレングリコールモノメチルエーテル
DBNE 25部
DCOT 1部
DEG 40部
水 33.9部
澱粉(MS#5300)※1 0.1部
※1:日本食品加工株式会社製(エステル化タピオカ澱粉)
〔実施例2〕
BNPD 28部
DCOT 1部
DEG 35部
BDG 5部
水 30.9部
澱粉(MS#3800)※2 0.1部
※2:日本食品加工株式会社製(酸化澱粉)
〔実施例3〕
BNPD 24部
OIT 1.5部
MDG 45部
水 29.4部
澱粉(MS#4600)※3 0.1部
※3:日本食品加工株式会社製(尿素リン酸エステル化澱粉)
〔実施例4〕
DBNE 20部
OIT 1部
MDG 29部
DEG 20部
水 29.9部
澱粉(CORN STARCH)※4 0.1部
※4:日本食品加工株式会社製(トウモロコシ澱粉)
〔実施例5〕
DBNE 25部
DCOT 0.1部
OIT 1部
DEG 40部
水 33.8部
澱粉(MS#5300)※1 0.1部
〔実施例6〕
DBNE 25部
DCOT 1部
OIT 0.1部
DEG 40部
水 33.8部
澱粉(MS#5300)※1 0.1部
DBNE 25部
DCOT 1部
DEG 40部
水 34部
〔比較例2〕
BNPD 28部
DCOT 1部
DEG 35部
BDG 5部
水 31部
〔比較例3〕
BNPD 24部
OIT 2部
MDG 45部
水 29部
〔比較例4〕
DBNE 20部
OIT 1部
MDG 29部
DEG 20部
水 30部
〔比較例5〕
DBNE 20部
DCOT 2部
DEG 78部
〔比較例6〕
BNPD 14.5部
DCOT 14.5部
DEG 50.5部
BDG 20.5部
〔比較例7〕
BNPD 2部
OIT 20部
MDG 78部
〔比較例8〕
DBNE 8部
OIT 12部
MDG 45部
DEG 35部
〔比較例9〕
DBNE 21部
DEG 79部
〔比較例10〕
DCOT 26部
MDG 74部
〔比較例11〕
BNPD 26部
MDG 74部
〔比較例12〕
OIT 21部
MDG 79部
試験例1
培地中において所定濃度となるように各防腐剤を加えたブイヨン液体培地10mlに前培養した供試菌(前培養後の菌数については下記に示す)50μlを加え、32℃にて振盪培養を行った。24時間後、培地の濁度を測定することにより微生物生育阻止濃度(ppm)を求めた。濃度は5、10、20、40、80ppmとした。結果を表1に示す。
〔1〕:Bacillus subtillis (菌数:106〜107CFU/ml)
〔2〕:Pseudomonas aeruginosa (菌数:107〜108CFU/ml)
〔3〕:Staphylococcus aureus (菌数:106〜107CFU/ml)
〔4〕:Aerobactor aerogenea (菌数:107〜108CFU/ml)
〔5〕:A製紙会社B工場よりの分離菌1(細菌) (菌数:106〜107CFU/ml)
〔6〕:A製紙会社B工場の分離菌2(糸状菌) (菌数:105〜106CFU/ml)
試験例2
pH9.8の澱粉系塗工液50mlにブイヨン液体培地1ml、および予め腐敗させた該塗工液0.5mlを加え撹拌し、上記にて製造した各防腐剤の濃度が300ppmとなるようにこれを添加した。これを32℃の恒温器に5日間保存した後、各塗工液中の生菌数を測定した。結果を表2に示す。
試験例3
pH8.5のポリエステル系油剤エマルジョン液50mlにブイヨン液体培地1ml、および予め腐敗させた該油剤エマルジョン液0.5mlを加えて撹拌し、上記にて製造した各防腐剤の濃度が300ppmとなるようにこれを添加した。これを32℃の恒温器に15日間保存し、5、10、15日目の各油剤エマルジョン液中の生菌数を測定した。結果を表3に示す。
試験例4
上記にて製造した各防腐剤を50℃の恒温器に30日間保存した後、液体クロマトグラフィーにより各防腐剤中に残存する有効成分の濃度を測定し、製造時との比較によりその残存率を求めた。結果を表4に示す。
試験例5
実施例1〜6について、恒温器の温度を80℃に上げる以外は試験例4の条件で3ヶ月間保存した後、液体クロマトグラフィーにより各防腐剤中に残存する有効成分の濃度を測定し、製造時との比較によりその残存率を求めた。結果を表5に示す。
Claims (3)
- 一般式Iで表されるハロゲン化脂肪族ニトロアルコールと一般式IIで表されるイソチアゾリン化合物との重量比が、該ハロゲン化脂肪族ニトロアルコール1に対して、該イソチアゾリン化合物0.07以下であることを特徴とする請求項1記載の水性防腐剤。
- 澱粉を0.01〜15重量%含有することを特徴とする請求項1、または2記載の水性防腐剤。
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