本発明は、不揮発性磁気メモリ装置を製造する際に使用されるフォトマスクに関する。
情報通信機器、特に携帯端末等の個人用小型機器の飛躍的な普及に伴い、これらを構成するメモリやロジック等の各種半導体装置には、高集積化、高速化、低電力化等、一層の高性能化が要請されている。特に不揮発性メモリは、ユビキタス時代に必要不可欠であると考えられている。電源の消耗やトラブル、サーバーとネットワークとが何らかの障害により切断された場合でも、不揮発性メモリによって重要な情報を保存、保護することができる。また、最近の携帯機器は不要の回路ブロックをスタンバイ状態とし、出来る限り消費電力を抑えるように設計されているが、高速のワークメモリと大容量ストレージメモリを兼ねることができる不揮発性メモリが実現できれば、消費電力とメモリの無駄を無くすことができる。また、電源を投入すると瞬時に起動できる「インスタント・オン」機能も、高速、且つ、大容量の不揮発性メモリが実現できれば可能となる。
不揮発性メモリとして、半導体材料を用いたフラッシュメモリや、強誘電体材料を用いた強誘電体型不揮発性半導体メモリ(FERAM,Ferroelectric Random Access Memory)等を挙げることができる。しかしながら、フラッシュメモリは、書込み速度がマイクロ秒のオーダーであり、書込み速度が遅いという欠点がある。一方、FERAMにおいては、書換え可能回数が1012〜1014であり、SRAMやDRAMをFERAMに置き換えるにはFERAMの書換え可能回数が十分とは云えず、また、強誘電体層の微細加工が難しいという問題が指摘されている。
これらの欠点を有さない不揮発性メモリとして、MRAM(Magnetic Random Access Memory)と呼ばれる不揮発性磁気メモリ素子が注目されている。初期のMRAMは、GMR(Giant magnetoresistance)効果を用いたスピンバルブをベースにしたものであった。しかし、負荷のメモリセル抵抗が10〜100Ωと低いため、読み出し時のビット当たりの消費電力が大きく、大容量化が難しいという欠点があった。
一方、TMR(Tunnel Magnetoresistance)効果を用いたMRAMは、開発初期においては、抵抗変化率が室温で1〜2%程度しかなかったが、近年、20%近くの抵抗変化率が得られるようになり、TMR効果を用いたMRAMに注目が集まっている。TMRタイプのMRAMは、構造が単純で、スケーリングも容易であり、また、磁気モーメントの回転により記録を行うために、書換え可能回数が大である。更には、アクセス時間についても非常に高速であることが予想され、既に100MHzで動作可能であると云われている。
TMRタイプのMRAM(以下、単に、MRAMと呼ぶ)の模式的な一部断面図を、図4に示す。このMRAMは、MOS型FETから成る選択用トランジスタTRに接続されたトンネル磁気抵抗素子TMJから構成されている。
トンネル磁気抵抗素子TMJは、第1の強磁性体層31、トンネル絶縁膜34、第2の強磁性体層35の積層構造を有する。第1の強磁性体層31は、より具体的には、例えば、下から反強磁性体層32と強磁性体層(固着層、磁化固定層33とも呼ばれる)との2層構成を有し、これらの2層の間に働く交換相互作用によって強い一方向の磁気的異方性を有する。磁化方向が比較的容易に回転する第2の強磁性体層35は、自由層あるいは記録層とも呼ばれる。尚、以下の説明において、第2の強磁性体層を記録層35と呼ぶ場合がある。トンネル絶縁膜34は、記録層35と磁化固定層33との間の磁気的結合を切ると共に、トンネル電流を流すための役割を担う。MRAMとMRAMを接続するビット線BLは、上層層間絶縁層26上に形成されている。ビット線BLと記録層35との間に設けられたトップコート膜36は、ビット線BLを構成する原子と記録層35を構成する原子の相互拡散の防止、接触抵抗の低減、及び、記録層35の酸化防止を担っている。図中、参照番号37は、反強磁性体層32の下面に接続された引き出し電極を示す。
更には、トンネル磁気抵抗素子TMJの下方には、下層層間絶縁層24を介して書込みワード線RWLが配置されている。尚、書込みワード線RWLの延びる方向(第1の方向)とビット線BLの延びる方向(第2の方向)とは、通常、直交している。
一方、選択用トランジスタTRは、素子分離領域11によって囲まれたシリコン半導体基板10の部分に形成されており、層間絶縁層21によって覆われている。そして、一方のソース/ドレイン領域14Bは、タングステンプラグから成る接続孔22、ランディングパッド部23、タングステンプラグから成る接続孔25を介して、トンネル磁気抵抗素子TMJの引き出し電極37に接続されている。また、他方のソース/ドレイン領域14Aは、タングステンプラグ15を介してセンス線16に接続されている。図中、参照番号12はゲート電極を示し、参照番号13はゲート絶縁膜を示す。
MRAMアレイにあっては、ビット線BL及び書込みワード線RWLから成る格子の交点(重複領域)にMRAMが配置されている。
このような構成のMRAMへのデータの書込みにおいては、ビット線BLに正方向あるいは負方向の電流を流し、且つ、書込みワード線RWLに一定方向の電流を流し、その結果生成される合成磁界によって第2の強磁性体層(記録層35)の磁化の方向を変えることで、第2の強磁性体層(記録層35)に「1」又は「0」を記録する。
一方、データの読出しは、選択用トランジスタTRをオン状態とし、ビット線BLに電流を流し、磁気抵抗効果によるトンネル電流変化をセンス線16にて検出することにより行う。記録層35と磁化固定層33の磁化方向が等しい場合、低抵抗となり(この状態を例えば「0」とする)、記録層35と磁化固定層33の磁化方向が反平行の場合、高抵抗となる(この状態を例えば「1」とする)。
データの読出しにおいては、各々のトンネル磁気抵抗素子TMJの面積(投影面積)を出来る限り均一にして記録層35の抵抗値のバラツキを抑えることが、データ読出しバラツキ低減に繋がり、製造歩留が向上する。記録層35の抵抗値の分布の一例を図14に示す。このように抵抗変化率を出来る限り一定とし、抵抗値の分散幅(バラツキ)を抑えることによって、MRAMの動作マージンが大きくなるし、高い製造歩留を達成することができる。また、逆に、設計上の動作マージンを同じとした場合、信号電圧が大きく取れ、高速動作が可能となる。
一方、データ書込みにおいては、各々のトンネル磁気抵抗素子TMJのスイッチング磁界(HSwitch)の分散幅(バラツキ)を抑えることが、大容量メモリに必要不可欠である。
図15に、米国特許第6081445号に開示されたMRAMのアステロイド曲線を示す。ビット線BL及び書込みワード線RWLに電流を流し、その結果発生する合成磁界に基づき、MRAMを構成するトンネル磁気抵抗素子TMJにデータを書き込む。ビット線BLを流れる書込み電流によって記録層35の磁化容易軸方向の磁界(HEA)が形成され、書込みワード線RWLを流れる電流によって記録層35の磁化困難軸方向の磁界(HHA)が形成される。尚、MRAMの構成にも依るが、ビット線BLを流れる書込み電流によって記録層35の磁化困難軸方向の磁界(HHA)が形成され、書込みワード線RWLを流れる電流によって記録層35の磁化容易軸方向の磁界(HEA)が形成される場合もある。
アステロイド曲線は、合成磁界(記録層35に加わる磁界HHAと磁界HEAの磁界ベクトルの合成)による記録層35の磁化方向の反転閾値を示しており、アステロイド曲線の外側(OUT1,OUT2)に相当する合成磁界が発生した場合、記録層35の磁化方向の反転が起こり、データの書込みが行われる。一方、アステロイド曲線の内部(IN)に相当する合成磁界が発生した場合、記録層35の磁化方向の反転は生じない。また、電流を流している書込みワード線RWL及びビット線BLの交点以外のMRAMにおいても、書込みワード線RWL若しくはビット線BL単独で発生する磁界が加わるため、この磁界の大きさがスイッチング磁界(HSwitch)以上の場合[図15における点線の外側の領域(OUT2)]、交点以外のMRAMを構成する記録層35の磁化方向も反転してしまう。それ故、合成磁界がアステロイド曲線の外側であって図15の点線の内側の領域(OUT1)内にある場合のみに、選択されたMRAMに対する選択書込みが可能となる。
より具体的には、データ書込みにおいては、上述のように、ビット線BLと書込みワード線RWLとに電流を流して合成磁界を生成させるが、この合成磁界の大きさがアステロイド曲線の少し外側となるように設定し、この合成磁界の半分程度を、それぞれ、ビット線BL及び書込みワード線RWLによって生成させる。尚、このような状態を「半選択」状態と呼ぶ。このような「半選択」状態とすることで、電流が流されているビット線BLと電流が流されている書込みワード線RWLとの交点に位置するトンネル磁気抵抗素子TMJにはデータが書き込まれる。一方、電流が電流が流されているビット線BLと電流が流されていない書込みワード線RWLとの交点に位置するトンネル磁気抵抗素子TMJ、あるいは、電流が流されていないビット線BLと電流が電流が流されている書込みワード線RWLとの交点に位置するトンネル磁気抵抗素子TMJにはデータが書き込まれない。尚、このようなトンネル磁気抵抗素子TMJを、便宜上、非選択トンネル磁気抵抗素子TMJと呼ぶ。
米国特許第6081445号
米国特許公報6545906B1
米国特許公報6633498B1
S. S. Parkin et. al, Physical Review Letters, 7 May, pp 2304-2307 (1990)
ところが、本来、非選択トンネル磁気抵抗素子TMJにはデータが書き込まれないにも拘わらず、スイッチング磁界(HSwitch)のバラツキが大きい場合、非選択トンネル磁気抵抗素子TMJにデータが書き込まれる場合がある。即ち、図16に示すように、スイッチング磁界(HSwitch)のバラツキが大きい場合、トンネル磁気抵抗素子TMJの書込みマージンが小さくなり、大容量メモリを実現できなくなってしまう。それ故、スイッチング磁界(HSwitch)のバラツキを最小に抑えることが重要であり、このバラツキ抑制がデータ書込みマージンの拡大に繋がる。
ところで、このようなスイッチング磁界(HSwitch)の大きさは、主に、トンネル磁気抵抗素子TMJの平面形状(特に記録層35の平面形状)における形状異方性や磁気的異方性によって支配されている。従って、トンネル磁気抵抗素子TMJの平面形状(特に記録層35の平面形状)は、磁気特性、ひいては、「0」,「1」のデータ書込み動作を制御する大きな要因となっている。スイッチング磁界(HSwitch)のバラツキを低減させるために、トンネル磁気抵抗素子TMJの平面形状(特に記録層35の平面形状)を菱形とすることが周知である(例えば、米国特許公報6545906B1参照)。また、トンネル磁気抵抗素子TMJの平面形状(特に記録層35の平面形状)を二等辺三角形にすることでも、スイッチング磁界(HSwitch)のバラツキ低減を図ることができる。
通常、トンネル磁気抵抗素子TMJの平面形状(特に記録層35の平面形状)を菱形あるいは二等辺三角形とするためには、フォトリソグラフィ工程において使用されるフォトマスクに形成すべきパターンを菱形あるいは二等辺三角形にしている。しかしながら、トンネル磁気抵抗素子TMJの平面形状が小さくなるに従い、フォトマスクに形成された菱形あるいは二等辺三角形のパターンに基づき形成されたトンネル磁気抵抗素子TMJの平面形状は、楕円形あるいは半楕円形となる傾向にある。然るに、トンネル磁気抵抗素子TMJの平面形状(特に記録層35の平面形状)が楕円形あるいは半楕円形になると、スイッチング磁界(HSwitch)のバラツキが大きくなるという問題がある。
従って、本発明の目的は、トンネル磁気抵抗素子を構成する記録層を形成する際、記録層の平面形状を確実に菱形、二等辺三角形、菱形に類似した形状、あるいは、二等辺三角形に類似した形状とすることを可能にする、記録層を形成するためにリソグラフィ工程において使用されるフォトマスクを提供することにある。
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係るフォトマスクは、
不揮発性磁気メモリ装置における磁気抵抗素子を構成する記録層であって、
(A)磁化反転状態に依存して抵抗値が変化することで情報を記憶する強磁性体材料から成り、
(B)平面形状は、菱形疑似形状であり、
(C)菱形疑似形状を構成する辺は、その中央部に直線部分を有し、若しくは、菱形疑似形状の外側方向に向かって、その中央部が湾曲した滑らかな曲線から成り、
(D)磁化容易軸は、菱形疑似形状の長軸と略平行であり、
(E)磁化困難軸は、菱形疑似形状の短軸と略平行であり、且つ、
(F)各辺は、相互に滑らかに結ばれている、
ところの記録層を形成するために、リソグラフィ工程において使用されるフォトマスクであって、
第1形状と第2形状とから成り、
第1形状と、第1形状の中心点と中心点が一致した第2形状とが、第1形状から第2形状が2箇所において突出した重ね合わせ形状を有しており、
第1形状の中心点を通る第1形状軸線と第2形状の中心点を通る第2形状軸線とは直交しており、
第1形状は、磁化容易軸と略平行である第1形状軸線に沿った長さが2Lp-1L、第1形状の中心点を通り、第1形状軸線に垂直な方向の長さが2Lp-1S[但し、Lp-1S<Lp-1L]である正多角形、楕円形、長円形及び扁平な円形から成る形状群から選択された1種類の形状から成り、且つ、
第2形状は、磁化困難軸と略平行である第2形状軸線に沿った長さが2Lp-2L[但し、Lp-1S<Lp-2L<Lp-1L]、第2形状の中心点を通り、第2形状軸線に垂直な方向の長さが2Lp-2S[但し、Lp-2S<Lp-1L]である正多角形、円形、楕円形、長円形及び扁平な円形から成る形状群から選択された1種類の形状から成る、
ところのパターンが設けられていることを特徴とする。
尚、第1形状から第2形状が2箇所において突出しているが、第1形状からの第2形状の一方の突出領域の形状と、第1形状からの第2形状の他方の突出領域の形状とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。前者の場合、記録層の平面形状は、例えば、菱形疑似形状の短軸に関して略線対称であり、且つ、菱形疑似形状の長軸に関しても略線対称となる。一方、後者の場合、記録層の平面形状は、例えば、菱形疑似形状の短軸に関してのみ略線対称となる。
本発明の第1の態様に係るフォトマスクをフォトリソグラフィ工程において使用し、記録層をパターニングすることで、上述したとおりの平面形状を有する記録層を得ることができるが、このような平面形状を有する記録層を、便宜上、第1形態の記録層と呼ぶ場合がある。
ここで、「菱形疑似形状」とは、巨視的に記録層を眺めた場合、記録層の平面形状が以下の形状を有することを意味する。即ち、反時計周りに4つの辺を辺A、辺B、辺C、辺Dで表したとき、4つの辺A,B,C,Dを線分で近似し、辺Aに対向する線分の長さをLa、辺Bに対向する線分の長さをLb、辺Cに対向する線分の長さをLc、辺Dに対向する線分の長さをLdとしたとき、La=Lb=Lc=Ldを満足し、あるいは又、La≒Lb≒Lc≒Ldを満足し、あるいは又、La=Lb≠Lc=Ldを満足し、あるいは又、La≒Lb≠Lc≒Ldを満足する形状を意味する。
一般に、実変数関数f(x)が区間a<X<bの各点で連続な微係数を持つ場合に、f(x)はその区間で「滑らか」又は「連続的微分可能」であるという。また、「略平行」であるとは、2本の線分あるいは直線が、交差していない、あるいは、交差角度が±20度の範囲内にあることを意味する。また、「略直交」するとは、2本の線分あるいは直線が、直交している、あるいは、交差角度が90度±20度の範囲内にあることを意味する。更には、「略線対称」であるとは、記録層を対称軸に沿って折り曲げたとき、折り曲げられた2つの記録層の部分が完全に重なり合う場合だけでなく、記録層の製造プロセスにおけるバラツキに起因して折り曲げられた2つの記録層の部分が完全には重なり合わない場合も包含する。また、「中心点」とは、図形の重心点を意味する。以下の説明においても、「滑らか」、「略平行」、「略線対称」、「中心点」を、このような意味で用いる。
第1形態の記録層において、菱形疑似形状の長軸の長さを2LL、短軸の長さを2LSとしたとき、1.0<LL/LS≦10、好ましくは1.2≦LL/LS≦3.0を満足することが望ましい。また、菱形疑似形状の長軸と記録層の平面形状との交点における記録層の平面形状の曲率半径をrL、菱形疑似形状の短軸と記録層の平面形状との交点における記録層の平面形状の曲率半径をrSとしたとき、0.1≦rL/LS<1.0、好ましくは0.2≦rL/LS≦0.8を満足することが望ましく、また、0.1≦rS/LL≦10、好ましくは0.2≦rS/LL≦5を満足することが望ましい。
また、第1形態の記録層において、菱形疑似形状を構成する辺(各辺は、記録層の平面形状と菱形疑似形状の長軸との交点、及び、記録層の平面形状と菱形疑似形状の短軸との交点とによって挟まれた記録層の平面形状の部分)が、その中央部に直線部分を有する場合、菱形疑似形状を構成する辺の長さをL0、直線部分の長さをL1としたとき、0.2≦L1/L0≦0.8、好ましくは0.4≦L1/L0≦0.6を満足することが望ましい。一方、菱形疑似形状を構成する辺が、菱形疑似形状の外側方向に向かって、その中央部が湾曲した滑らかな曲線から成る場合、この辺の二等分点における曲率半径をr1としたとき、0.1≦r1/LL≦10、好ましくは0.5≦r1/LL≦2.0を満足することが望ましい。あるいは又、曲率半径rSの辺の部分と曲率半径rLの辺の部分に対して接線(長さX1)を引いたとき、この接線と中央部が湾曲した滑らかな曲線との間の最大距離DMAXは、0≦DMAX≦X1/2、好ましくはX1/30≦DMAX≦X1/3を満足することが望ましい。菱形疑似形状を構成する4つの辺にあっては、4辺の全てが、その中央部に直線部分を有する辺から構成されていてもよいし、湾曲した滑らかな曲線から成る辺から構成されていてもよいし、その中央部に直線部分を有する辺と湾曲した滑らかな曲線から成る辺とが混在していてもよい。
菱形疑似形状を構成する辺には、変曲点が存在しない態様とすることが好ましい。尚、微視的に記録層を眺めた場合、記録層の平面形状を構成する辺には、例えば、パターニングの際に形成された微細な凹凸が存在することも有り得る。
このような第1形態の記録層においては、記録層の平面形状は、菱形疑似形状の短軸に関して略線対称である構成とすることが望ましい。更には、記録層の平面形状は、菱形疑似形状の長軸に関しても略線対称である構成とすることが望ましい。
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係るフォトマスクは、
不揮発性磁気メモリ装置における磁気抵抗素子を構成する記録層であって、
(A)磁化反転状態に依存して抵抗値が変化することで情報を記憶する強磁性体材料から成り、
(B)平面形状は、二等辺三角形疑似形状であり、
(C)二等辺三角形疑似形状の斜辺は、その中央部に直線部分を有し、若しくは、二等辺三角形疑似形状の外側方向に向かって、その中央部が湾曲した滑らかな曲線から成り、
(D)磁化容易軸は、二等辺三角形疑似形状の底辺と略平行であり、
(E)磁化困難軸は、二等辺三角形疑似形状の底辺と略直交しており、且つ、
(F)各辺は、相互に滑らかに結ばれている、
ところの記録層を形成するために、リソグラフィ工程において使用されるフォトマスクであって、
第1形状と第2形状とから成り、
第1形状と第2形状とが、第1形状から第2形状が1箇所において突出した重ね合わせ形状を有しており、
第2形状は、第2形状軸線上に位置しており、
第2形状軸線は第1形状の中心点を通り、且つ、第2形状軸線は、第1形状の中心点を通る第1形状軸線と直交しており、
第1形状は、磁化容易軸と略平行である第1形状軸線に沿った長さが2Lp-1L、第1形状の中心点を通り、第1形状軸線に垂直な方向の長さが2Lp-1S[但し、Lp-1S<Lp-1L]である正多角形、楕円形、長円形及び扁平な円形から成る形状群から選択された1種類の形状から成り、且つ、
第2形状は、磁化困難軸と略平行である第2形状軸線に沿った第2形状の先端部から第1形状の中心点までの距離がLp-2L[但し、Lp-1S<Lp-2L<Lp-1L]、第1形状の中心点を通り、第2形状軸線に垂直な方向の長さが2Lp-2S[但し、Lp-2S<Lp-1L]である正多角形、円形、楕円形、長円形及び扁平な円形から成る形状群から選択された1種類の形状から成る、
ところのパターンが設けられていることを特徴とする。
本発明の第2の態様に係るフォトマスクをフォトリソグラフィ工程において使用し、記録層をパターニングすることで、上述したとおりの平面形状を有する記録層を得ることができるが、このような平面形状を有する記録層を、便宜上、第2形態の記録層と呼ぶ場合がある。
ここで、「二等辺三角形疑似形状」とは、巨視的に記録層を眺めた場合、記録層の平面形状が以下の形状を有することを意味する。即ち、2つの斜辺A,Bを線分で近似し、斜辺Aに対向する線分の長さをLa、斜辺Bに対向する線分の長さをLbとしたとき、La=Lbを満足し、あるいは又、La≒Lbを満足する形状を意味する。
第2形態の記録層において、二等辺三角形疑似形状の仮想底辺の長さを2Li-B、仮想高さをHi、二等辺三角形疑似形状の斜辺と底辺とが滑らかに結ばれている部分における記録層の平面形状の平均曲率半径をrL、二等辺三角形疑似形状の2つの斜辺の交点における記録層の平面形状の曲率半径をrSとする。ここで、二等辺三角形疑似形状の2つの斜辺の交点とは、仮想底辺の垂直二等分線と、二等辺三角形疑似形状の2つの斜辺が1本に結ばれた曲線とが交わる点を指す。また、二等辺三角形疑似形状の仮想底辺とは、二等辺三角形疑似形状の底辺を直線で近似したとき(この直線を底辺近似直線と呼ぶ)、二等辺三角形疑似形状の2つの斜辺の交点側であって、この底辺近似直線から距離rLだけ離れた点を通る底辺近似直線と平行な仮想線を指す。更には、仮想底辺の長さ2Li-Bとは、二等辺三角形疑似形状の斜辺と底辺とが滑らかに結ばれている部分における記録層の平面形状とこの仮想底辺との交点の間の距離と定義する。また、仮想高さHiとは、二等辺三角形疑似形状の2つの斜辺の交点から仮想底辺までの距離と定義する。そして、この場合、1.0<Li-B/Hi≦10、好ましくは1.2≦Li-B/Hi≦3.0を満足することが望ましい。また、0.1≦rL/Hi≦1.0、好ましくは0.2≦rL/Hi≦0.8を満足することが望ましく、0.1≦rS/Li-B≦10、好ましくは0.2≦rS/Li-B≦5を満足することが望ましい。
また、第2形態の記録層において、二等辺三角形疑似形状を構成する斜辺が、その中央部に直線部分を有する場合、二等辺三角形疑似形状を構成する斜辺の長さ(二等辺三角形疑似形状の2本の斜辺の交点から、二等辺三角形疑似形状の斜辺と底辺とが滑らかに結ばれている部分における記録層の平面形状とこの仮想底辺との交点までの斜辺に沿った長さ)をL0、直線部分の長さをL2としたとき、0.2≦L2/L0≦0.8、好ましくは0.4≦L2/L0≦0.6を満足することが望ましい。一方、二等辺三角形疑似形状を構成する斜辺が、二等辺三角形疑似形状の外側方向に向かって、その中央部が湾曲した滑らかな曲線から成る場合、斜辺の長さに該当する斜辺の部分の二等分点における曲率半径をr2としたとき、0.1≦r2/Li-B≦10、好ましくは0.5≦r2/Li-B≦2.0を満足することが望ましい。あるいは又、曲率半径rSの斜辺の部分と曲率半径rLの斜辺の部分に対して接線(長さX1)を引いたとき、この接線と中央部が湾曲した滑らかな曲線との間の最大距離DMAXは、0≦DMAX≦X1/2、好ましくはX1/30≦DMAX≦X1/3を満足することが望ましい。二等辺三角形疑似形状を構成する2つの斜辺の両方が、その中央部に直線部分を有する辺から構成されていてもよいし、湾曲した滑らかな曲線から成る辺から構成されていてもよいし、その中央部に直線部分を有する斜辺と湾曲した滑らかな曲線から成る斜辺との組合せから構成されていてもよい。
二等辺三角形疑似形状を構成する各辺には、変曲点が存在しない態様とすることが好ましい。更には、微視的に記録層を眺めた場合、記録層の平面形状を構成する辺には、例えば、パターニングの際に形成された微細な凹凸が存在することも有り得る。
第2形態の記録層にあっては、記録層の平面形状は、二等辺三角形疑似形状の仮想底辺の垂直二等分線に関して略線対称である構成とすることが望ましい。
本発明の第1の態様若しくは第2の態様に係るフォトマスク(以下、これらを総称して、単に、本発明と呼ぶ場合がある)において、(第1形状,第2形状)の組合せとして、(正多角形,正多角形)、(正多角形,円形)、(正多角形,楕円形)、(正多角形,長円形)、(正多角形,扁平な円形)、(楕円形,正多角形)、(楕円形,円形)、(楕円形,楕円形)、(楕円形,長円形)、(楕円形,扁平な円形)、(長円形,正多角形)、(長円形,円形)、(長円形,楕円形)、(長円形,長円形)、(長円形,扁平な円形)、(扁平な円形,正多角形)、(扁平な円形,円形)、(扁平な円形,楕円形)、(扁平な円形,長円形)、(扁平な円形,扁平な円形)を挙げることができる。
ウエハ上に形成されたレジスト材料に対して露光光によりパターンを形成するとき、縮小投影に使用されるものをレチクル、一対一投影に使用されるものをマスクと称したり、あるいは原盤に相当するものをレチクル、それを複製したものをマスクと称したりすることがあるが、本明細書においては、このような種々の意味におけるレチクルやマスクを総称してフォトマスクと呼ぶ。
本発明にあっては、第2形状は1つに限定されず、2つ以上の第2形状と第1形状とを組み合わせてもよい。
本発明における第1形状、第2形状において、長円形とは、2つの半円と、2本の線分とが組み合わされた図形である。また、扁平な円形とは、円形を一方向から押し潰したような図形である。更には、第1形状を構成する正多角形には、長方形、正5角形以上の正多角形、頂点が丸みを帯びた長方形、頂点が丸みを帯びた正5角形以上の正多角形が含まれ、第2形状を構成する正多角形には、正方形、長方形、正5角形以上の正多角形、頂点が丸みを帯びた正方形、頂点が丸みを帯びた長方形、正5角形以上の頂点が丸みを帯びた正多角形が含まれる。尚、円形、楕円形だけでなく、放物線、双曲線も含むことができ、これらを広くは2次関数あるいは3次以上の関数で表現し得る図形と言い換えることもできるし、更には、楕円形と線分との組合せ、放物線と線分との組合せ、双曲線と線分との組合せ、広くは、2次関数と1次関数との組合せ、あるいは3次以上の関数と1次関数との組合せを含むことができる。
本発明にあっては、不揮発性磁気メモリ装置は、強磁性体材料から成り、磁化反転状態に依存して抵抗値が変化することで情報を記憶する記録層を有する磁気抵抗素子を備えた不揮発性磁気メモリ装置であり、より具体的には、不揮発性磁気メモリ装置として、TMR効果を用いたトンネル磁気抵抗素子を備えた不揮発性磁気メモリ装置、あるいは、スピン注入による磁化反転を応用したスピン注入型磁気抵抗素子を備えた不揮発性磁気メモリ装置を挙げることができる。
トンネル磁気抵抗素子を備えた不揮発性磁気メモリ装置においては、具体的には、磁気抵抗素子は、下から、第1の強磁性体層、トンネル絶縁膜、第2の強磁性体層の積層構造を有するトンネル磁気抵抗素子から成り;記録層(自由層とも呼ばれる)は第2の強磁性体層を構成する構造を有する。
そして、更には、第1の強磁性体層の下方には、下層層間絶縁層を介して形成され、第1の方向に延び、導電体層から成り、第1の強磁性体層とは電気的に絶縁された第1の配線が設けられており;第2の強磁性体層の上方には、上層層間絶縁層を介して形成され、第1の方向とは異なる第2の方向に延び、導電体層から成り、第2の強磁性体層と電気的に接続され、若しくは、第2の強磁性体層とは電気的に絶縁された第2の配線が設けられている構造とすることができる。
そして、更には、第1の配線の下方に、層間絶縁層を介して設けられた電界効果型トランジスタから成る選択用トランジスタを更に有し;第1の強磁性体層は、選択用トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に電気的に接続されている構造とすることができる。
即ち、トンネル磁気抵抗素子を備えた不揮発性磁気メモリ装置は、例えば、具体的には、限定するものではないが、
半導体基板に形成された選択用トランジスタ、
選択用トランジスタを覆う層間絶縁層、
下層層間絶縁層、並びに、
上層層間絶縁層、
を備え、
書込みワード線は、下層層間絶縁層上に形成されており、
下層層間絶縁層は、書込みワード線及び層間絶縁層上を覆い、
第1の強磁性体層は、下層層間絶縁層上に形成されており、
上層層間絶縁層は、トンネル磁気抵抗素子及び下層層間絶縁層を覆い、
第1の強磁性体層の延在部、あるいは、第1の強磁性体層から下層層間絶縁層上を延びる引き出し電極が、下層層間絶縁層及び層間絶縁層に設けられた接続孔(あるいは接続孔とランディングパッド部)を介して選択用トランジスタに電気的に接続されており、
ビット線が上層層間絶縁層上に形成されている構成とすることができる。
不揮発性磁気メモリ装置を、上述した構造を有するTMR効果を用いたトンネル磁気抵抗素子を備えた不揮発性磁気メモリ装置とする場合、第1の強磁性体層は、より具体的には、例えば、反強磁性体層と強磁性体層(固着層あるいは磁化固定層とも呼ばれる)との2層構成を有していることが好ましく、これによって、これらの2層の間に働く交換相互作用によって強い一方向の磁気的異方性を有することができる。尚、磁化固定層がトンネル絶縁膜と接する。あるいは又、磁化固定層は、より具体的には、例えば、合成反強磁性結合(SAF:Synthetic Antiferromagnet)を有する多層構造(例えば、強磁性体材料層/金属層/強磁性体材料層)とすることもできる。合成反強磁性結合に関しては、例えば、 S. S. Parkin et. al, Physical Review Letters, 7 May, pp 2304-2307 (1990) に報告されている。記録層(第2の強磁性体層あるいは自由層)においては、磁化方向が比較的容易に回転する。トンネル絶縁膜は、記録層(第2の強磁性体層あるいは自由層)と磁化固定層との間の磁気的結合を切ると共に、トンネル電流を流すための役割を担う。
強磁性体層(固着層、磁化固定層)及び第2の強磁性体層(記録層、自由層)は、例えば、遷移金属磁性元素、具体的には、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)又はコバルト(Co)から構成された強磁性体、あるいはこれらの合金(例えば、Co−Fe、Co−Fe−Ni、Ni−Fe等)を主成分とする強磁性体から構成することができる。また、所謂ハーフメタリック強磁性体材料や、CoFe−Bといったアモルファス強磁性体材料を用いることもできる。反強磁性体層を構成する材料として、例えば、鉄−マンガン合金、ニッケル−マンガン合金、白金−マンガン合金、イリジウム−マンガン合金、ロジウム−マンガン合金、コバルト酸化物、ニッケル酸化物を挙げることができる。これらの層は、例えば、スパッタリング法、イオンビーム堆積法、真空蒸着法に例示される物理的気相成長法(PVD法)にて形成することができる。
トンネル絶縁膜を構成する絶縁材料として、アルミニウム酸化物(AlOX)、アルミニウム窒化物(AlN)、マグネシウム酸化物(MgO)、マグネシウム窒化物、シリコン酸化物、シリコン窒化物を挙げることができ、更には、Ge、NiO、CdOX、HfO2、Ta2O5、BN、ZnSを挙げることができる。トンネル絶縁膜は、例えば、スパッタリング法にて形成された金属膜を酸化若しくは窒化することにより得ることができる。より具体的には、トンネル絶縁膜を構成する絶縁材料としてアルミニウム酸化物(AlOX)を用いる場合、例えば、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムを大気中で酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムをプラズマ酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムをIPCプラズマで酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムを酸素中で自然酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムを酸素ラジカルで酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムを酸素中で自然酸化させるときに紫外線を照射する方法、アルミニウムを反応性スパッタリング法にて成膜する方法、酸化アルミニウムをスパッタリング法にて成膜する方法を例示することができる。あるいは又、トンネル絶縁膜をALD(Atomic Layer Deposition)法によって形成することができる。
積層構造のパターニングは、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)法やイオンミリング法(イオンビームエッチング法)にて行うことができる。また、場合によっては、所謂リフトオフ法にてパターニングを行うこともできる。
書込みワード線やビット線は、例えば、アルミニウム、Al−Cu等のアルミニウム系合金、銅(Cu)から成り、例えば、スパッタリング法に例示されるPVD法にて形成することができる。
接続孔は、不純物がドーピングされたポリシリコンや、タングステン、Ti、Pt、Pd、Cu、TiW、TiNW、WSi2、MoSi2等の高融点金属や金属シリサイドから構成することができ、化学的気相成長法(CVD法)や、スパッタリング法に例示されるPVD法に基づき形成することができる。
選択用トランジスタは、例えば、周知のMIS型FETやMOS型FETから構成することができる。
層間絶縁層や下層層間絶縁層、上層層間絶縁層を構成する材料として、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、SiON、SOG、NSG、BPSG、PSG、BSGあるいはLTOを例示することができる。
本発明においては、菱形疑似形状あるいは二等辺三角形疑似形状を有する記録層を形成するためのフォトマスクに形成されたパターンが第1形状と第2形状の組合せから構成されているので、所望の平面形状を有する記録層を得るために、高い自由度にて、フォトマスクに形成すべきパターンの設計を行うことができる。尚、第1形状の大きさ、形状と第2形状の大きさ、形状との組合せによって、どのような菱形疑似形状あるいは二等辺三角形疑似形状が得られるかは、各種のシミュレーションを行ったり、実際にフォトマスクにパターンを形成し、係るフォトマスクに基づき記録層をパターニングすることで、決定あるいは評価することができる。
そして、楕円形や半楕円形とは全く異なる菱形疑似形状あるいは二等辺三角形疑似形状を有する記録層を形成することによって、理由は明確でないものの、スイッチング磁界HSwitchのバラツキを低減させることができる。特に、リソグラフィ工程におけるバラツキ、RIE法やイオンミリング法といったエッチング法を採用したときの加工バラツキ、エッチングや後処理(エッチング時、例えば塩素系ガスを用いた場合の洗浄処理等)に起因して磁気抵抗素子にダメージが発生した場合にあっても、スイッチング磁界HSwitchのバラツキを低減させることができる。その結果、例えば、大きな書き込み動作ウインドを有するアステロイド特性を得ることができるので、不揮発性磁気メモリ装置間におけるバラツキを抑制することができ、高性能、高集積の不揮発性磁気メモリ装置を実現することができる。
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。
実施例1は、本発明の第1の態様に係るフォトマスクに関する。ここで、強磁性体材料から成り、磁化反転状態に依存して抵抗値が変化することで情報を記憶する強磁性体材料から成る第1形態の記録層を有する磁気抵抗素子を備えた実施例1における不揮発性磁気メモリ装置は、具体的には、TMR効果を用いたトンネル磁気抵抗素子を備えた不揮発性磁気メモリ装置である。
図2に記録層35の模式的な平面図を示すように、記録層35の平面形状(実線で示す)は、4辺SRm(但し、「m」は、1,2,3,4のいずれか)を有する菱形疑似形状から成る。尚、各辺SRmは、記録層35の平面形状と菱形疑似形状の長軸LX(一点鎖線で表す)との交点BC,AD、及び、記録層35の平面形状と菱形疑似形状の短軸SX(一点鎖線で表す)との交点AB,CDとによって挟まれた記録層35の平面形状の部分を指す。そして、菱形疑似形状を構成する4つの辺SRmの全ては、その中央部CTに直線部分を有する。また、記録層35の磁化容易軸(EA)は、菱形疑似形状の長軸LXと略平行であり、記録層35の磁化困難軸(HA)は、菱形疑似形状の短軸SXと略平行である。更には、記録層35の平面形状を構成する各辺SRmは、相互に滑らかに結ばれている。
ここで、図2に示すように、記録層35の平面形状は、菱形疑似形状の短軸SXに関して略線対称であり、更には、菱形疑似形状の長軸LXに関しても略線対称である。
そして、この記録層35を得るためにフォトマスクに設けられたパターンは、図1の(A)に示すように、第1形状51と第2形状52とから成り、第1形状51と、第1形状51の中心点Oと中心点Oが一致した第2形状52とが、第1形状51から第2形状52が2箇所において突出した重ね合わせ形状を有している。そして、第1形状51の中心点Oを通る第1形状軸線(点線で示す)と第2形状52の中心点Oを通る第2形状軸線(二点鎖線で示す)とは直交している。
実施例1において、第1形状51は、磁化容易軸(EA)と略平行である第1形状軸線に沿った長さが2Lp-1L、第1形状51の中心点Oを通り、第1形状軸線に垂直な方向の長さが2Lp-1S[但し、Lp-1S<Lp-1L]である正多角形(より具体的には、長方形)から成る。一方、第2形状52は、磁化困難軸(HA)と略平行である第2形状軸線に沿った長さが2Lp-2L[但し、Lp-1S<Lp-2L<Lp-1L]、第2形状52の中心点Oを通り、第2形状軸線に垂直な方向の長さが2Lp-2S[但し、Lp-2S<Lp-1L]である正多角形(より具体的には、正方形)から成る。
ここで、2Lp-1L、2Lp-1S、2Lp-2L、2Lp-2Sの値は、以下の表1のとおりである。このようなパターンを用いることで、図1の(A)及び図2に示すような菱形疑似形状の記録層35を得ることができる。
[表1]
2Lp-1L=1050nm
2Lp-1S= 200nm
2Lp-2L= 400nm
2Lp-2S= 400nm
得られた記録層35の寸法の諸元は、以下のとおりである。即ち、図2に示した菱形疑似形状の長軸LXの長さを2LL、短軸SXの長さを2LSとしたとき、2LL/2LS=900nm/450nm=2.0となった。また、菱形疑似形状の長軸LXと記録層35の平面形状との交点BC,ADにおける記録層35の平面形状の曲率半径をrL、菱形疑似形状の短軸SXと記録層35の平面形状との交点AB,CDにおける記録層35の平面形状の曲率半径をrSとしたとき、rL/LS=85nm/(450/2)nm=0.38、rS/LL=280nm/(900/2)nm=0.62となった。また、菱形疑似形状を構成する辺の長さをL0、直線部分の長さをL1としたとき、L1/L0=290nm/550nm=0.53となった。これらの値を纏めると、以下の表2のとおりである。
[表2]
2LL=900nm
2LS=450nm
L0=550nm
L1=290nm
rL= 85nm
rS=280nm
菱形疑似形状の長軸LXをx軸、短軸SXをy軸とするガウス座標を想定したとき、例えば、辺SR1と辺SR2とを纏めて実変数関数f(x)で表したとすれば、実変数関数f(x)は区間a<x<b(但し、aは実変数関数f(x)におけるxの値が取り得る最小値であり、bは実変数関数f(x)におけるxの値が取り得る最大値)の各点で連続な微係数を持つ。そして、x=0における実変数関数f(x)の一次の微係数は0であり、y=0における実変数関数f(x)の一次の微係数は∞である。より具体的には、区間a<x<bにおいて、実変数関数f(x)は、xの値が増加するに従い、半径rLの円、直線、半径rSの円、直線、半径rLの円といった関数で表現することができる。また、区間a<x<bにおいては、実変数関数f(x)の一次の微係数は、xの値が増加するに従い、正の値、「0」、正の値から、「0」となり、更に、負の値となり、「0」、負の値となる。更には、区間a<x<bにおいては、実変数関数f(x)の二次の微係数は、xの値が増加するに従い、負の値、「0」、負の値となる。
このような諸元を有するトンネル磁気抵抗素子を備えた不揮発性磁気メモリ装置において、記録層35の磁化方向が反転するときの磁界HCの値を、マイナーループ波形として、1回、測定し、磁界HCの平均値HAVE、標準偏差σを求め、更には、σ/HAVE(SOA)を求めるといった試験を、50〜100個の試料において行った。記録層35の平面形状の電子顕微鏡写真の一例及びマイナーループ波形及びを図3の(A)及び(B)に示す。
一方、比較のために、記録層35の平面形状が、磁化容易軸方向の長軸長さ=920nm、磁化困難軸方向の短軸長さ=375nmの楕円形を有するトンネル磁気抵抗素子を備えた不揮発性磁気メモリ装置を、実施例1の不揮発性磁気メモリ装置と同じ半導体基板内(同一ウエハ内)において製造し、同様に磁界HCの平均値HAVE、標準偏差σを求め、更には、σ/HAVE(SOA)を求めた。尚、この試験を、比較例−1と呼ぶ。
実施例1、比較例−1の結果を以下の表3に示すが、実施例1においては、σ/HAVE(SOA)の値が低い値となっている。即ち、スイッチング磁界のバラツキを大きく低減させることができることが判る。
[表3]
HAVE(Oe) σ(Oe) σ/HAVE
実施例1 69.1 6.9 10.0%
比較例−1 62.3 9.2 14.7%
尚、第2形状の数は1つに限定されない。図1の(B)に、第2形状の数を2つとした例を示す。
この例においては、第1の第2形状52は、磁化困難軸(HA)と略平行である第2形状軸線に沿った長さが2Lp-2L[但し、Lp-1S<Lp-2L<Lp-1L]、第1の第2形状52の中心点を通り、第2形状軸線に垂直な方向の長さが2Lp-2S[但し、Lp-2S<Lp-1L]である正多角形(より具体的には、長方形)から成る。また、第2の第2形状53は、磁化困難軸(HA)と略平行である第2形状軸線に沿った長さが2Lp-3L[但し、Lp-2L<Lp-3L<Lp-1L]、第2の第2形状53の中心点を通り、第2形状軸線に垂直な方向の長さが2Lp-3S[但し、Lp-3S<Lp-2S]である正多角形(より具体的には、長方形)から成る。
模式的な一部断面図を図4に示すように、実施例1における1つのトンネル磁気抵抗素子TMJは、下から、第1の強磁性体層31、AlOXから成るトンネル絶縁膜34、Ni−Fe合金から成る第2の強磁性体層35(自由層あるいは記録層とも呼ばれる)の積層構造を有する。第1の強磁性体層31は、反強磁性体層32と磁化固定層33の積層構造を有する。磁化固定層33は、合成反強磁性結合(SAF)を有する多層構造(例えば、強磁性体材料層/金属層/強磁性体材料層)とすることができ、より具体的には、下から、Co−Fe層、Ru層、Co−Fe層の3層構造を有する。この磁化固定層33は、反強磁性体層32との交換結合によって、磁化の方向がピニング(pinning)される。外部印加磁場によって、第2の強磁性体層(記録層)35の磁化の方向は、磁化固定層33に対して平行又は反平行に変えられる。第1の強磁性体層31は、下層層間絶縁層24を介して、書込みワード線RWLと電気的に絶縁されている。ここで、書込みワード線RWLは、第1の方向(図面の紙面垂直方向)に延びている。一方、第2の強磁性体層35は、銅(Cu)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、TiN、TaN、WN等から成るトップコート膜36を介して、ビット線BLに電気的に接続されている。トップコート膜36は、ビット線BLを構成する原子と強磁性体層(記録層)35を構成する原子の相互拡散の防止、接触抵抗の低減、及び、強磁性体層(記録層)35の酸化防止を担っている。上層層間絶縁層26は、トンネル磁気抵抗素子TMJ及び下層層間絶縁層24を覆っている。また、ビット線BLは、上層層間絶縁層26上に形成され、第1の方向と異なる(具体的には直交する)第2の方向(図面の左右方向)に延びている。図4中、参照番号37は反強磁性体層32の下面に接続された引き出し電極を示す。
MOS型FETから構成された選択用トランジスタTRが、半導体基板10に形成されている。より具体的には、選択用トランジスタTRは、素子分離領域11に囲まれた活性領域内に形成され、ゲート電極12、ゲート絶縁膜13、ソース/ドレイン領域14A,14Bから構成されている。例えばSiO2から成る層間絶縁層21は、選択用トランジスタTRを覆っている。タングステンプラグから成る接続孔22は、層間絶縁層21に設けられた開口部内に形成されており、選択用トランジスタTRの一方のソース/ドレイン領域14Bと接続されている。接続孔22は、更に、層間絶縁層21上に形成されたランディングパッド部23と接続されている。Al−Cu合金から成る書込みワード線RWLも層間絶縁層21上に形成されている。書込みワード線RWL及び層間絶縁層21上には、下層層間絶縁層24が形成されている。下層層間絶縁層24上に引き出し電極37が形成されており、引き出し電極37は、下層層間絶縁層24に設けられたタングステンプラグから成る接続孔25を介して、ランディングパッド部23に接続されている。尚、選択用トランジスタTRの他方のソース/ドレイン領域14Aは、コンタクトホール15を介してセンス線16に接続されている。
場合によっては、選択用トランジスタTRは不要である。
以下、下層層間絶縁層24等の模式的な一部断面図である図5の(A)〜(C)、及び、図6の(A)、(B)を参照して、実施の形態1のMRAMの製造方法を説明する。尚、図5の(A)〜(C)、及び、図6の(A)、(B)においては、選択用トランジスタTR等の図示は省略した。
[工程−100]
先ず、選択用トランジスタTRとして機能するMOS型FETをシリコン半導体基板から成る半導体基板10に形成する。そのために、例えばトレンチ構造を有する素子分離領域11を公知の方法に基づき形成する。尚、素子分離領域は、LOCOS構造を有していてもよいし、LOCOS構造とトレンチ構造の組合せとしてもよい。その後、半導体基板10の表面を例えばパイロジェニック法により酸化し、ゲート絶縁膜13を形成する。次いで、不純物がドーピングされたポリシリコン層をCVD法にて全面に形成した後、ポリシリコン層をパターニングし、ゲート電極12を形成する。尚、ゲート電極12をポリシリコン層から構成する代わりに、ポリサイドや金属シリサイドから構成することもできる。次に、半導体基板10にイオン注入を行い、LDD構造(図示せず)を形成する。その後、全面にCVD法にてSiO2層を形成した後、このSiO2層をエッチバックすることによって、ゲート電極12の側面にゲートサイドウオール(図示せず)を形成する。次いで、半導体基板10にイオン注入を施した後、イオン注入された不純物の活性化アニール処理を行うことによって、ソース/ドレイン領域14A,14Bを形成する。
[工程−110]
次いで、全面にSiO2から成る層間絶縁層の下層をCVD法にて形成した後、化学的/機械的研磨法(CMP法)にて層間絶縁層の下層を研磨する。その後、ソース/ドレイン領域14Aの上方の層間絶縁層の下層にリソグラフィ技術及びRIE法に基づき開口部を形成し、次いで、開口部内を含む層間絶縁層の下層上に、不純物がドーピングされたポリシリコン層をCVD法にて形成する。次いで、層間絶縁層の下層上のポリシリコン層をパターニングすることで、層間絶縁層の下層上にセンス線16を形成することができる。センス線16とソース/ドレイン領域14Aとは、層間絶縁層の下層に形成されたコンタクトホール15を介して接続されている。その後、BPSGから成る層間絶縁層の上層をCVD法にて全面に形成する。尚、BPSGから成る層間絶縁層の上層の形成後、窒素ガス雰囲気中で例えば900゜C×20分間、層間絶縁層の上層をリフローさせることが好ましい。更には、必要に応じて、例えばCMP法にて層間絶縁層の上層の頂面を化学的及び機械的に研磨し、層間絶縁層の上層を平坦化したり、レジストエッチバック法によって層間絶縁層の上層を平坦化することが望ましい。尚、層間絶縁層の下層と層間絶縁層の上層を纏めて、以下、単に、層間絶縁層21と呼ぶ。
[工程−120]
その後、ソース/ドレイン領域14Bの上方の層間絶縁層21に開口部をRIE法にて形成した後、選択用トランジスタTRのソース/ドレイン領域14Bに接続された接続孔22を開口部内に形成する。接続孔22の頂面は層間絶縁層21の表面と略同じ平面に存在している。ブランケットタングステンCVD法にて開口部をタングステンで埋め込み、接続孔22を形成することができる。尚、タングステンにて開口部を埋め込む前に、Ti層及びTiN層を順に例えばマグネトロンスパッタリング法にて開口部内を含む層間絶縁層21の上に形成することが好ましい。ここで、Ti層及びTiN層を形成する理由は、オーミックな低コンタクト抵抗を得ること、ブランケットタングステンCVD法における半導体基板10の損傷発生の防止、タングステンの密着性向上のためである。図面においては、Ti層及びTiN層の図示は省略している。層間絶縁層21上のタングステン層、TiN層、Ti層は、化学的/機械的研磨法(CMP法)にて除去してもよい。また、タングステンの代わりに、不純物がドーピングされたポリシリコンを用いることもできる。その後、層間絶縁層21上に、書込みワード線RWL及びランディングパッド部23を周知の方法で形成する。
[工程−130]
その後、全面に下層層間絶縁層24を形成する。具体的には、書込みワード線RWL及びランディングパッド部23を含む層間絶縁層21上に、HDP(High Density Plasma)CVD法に基づき、SiO2から成る下層層間絶縁層24を成膜し、次いで、下層層間絶縁層24の平坦化処理を行う。その後、ランディングパッド部23の上方の下層層間絶縁層24の部分に開口部を設け、係る開口部に、ブランケットタングステンCVD法にて開口部をタングステンで埋め込み、接続孔25を形成することができる。
[工程−140]
次に、下層層間絶縁層24上に、引き出し電極37を形成するために、厚さ10nmのTa層37Aをスパッタリング法にて形成する。Ta層37Aの成膜条件を、以下の表4に例示する。
[工程−150]
その後、全面に、第1の強磁性体層31(厚さ20nmのPt−Mn合金から成る反強磁性体層32、及び、SAFを有し、下から、Co−Fe層、Ru層、Co−Fe層の3層構造を有する磁化固定層33)、AlOXから成るトンネル絶縁膜34、記録層(第2の強磁性体層)35、トップコート膜36を順次、成膜する。これらの各層の成膜条件を、以下の表5〜表9に例示する。こうして、図5の(A)に示す構造を得ることができる。
[表4]厚さ10nmのTa層の成膜条件
プロセスガス :アルゴン=100sccm
成膜雰囲気圧力:0.6Pa
DCパワー :200W
[表5]厚さ20nmのPt−Mn合金から成る反強磁性体層32の成膜条件
プロセスガス :アルゴン=100sccm
成膜雰囲気圧力:0.6Pa
DCパワー :200W
[表6]磁化固定層33の成膜条件
最下層:厚さ2nmのCo−Fe合金層
プロセスガス :アルゴン=50sccm
成膜雰囲気圧力:0.3Pa
DCパワー :100W
中間層:厚さ1nmのRu層
プロセスガス :アルゴン=50sccm
成膜雰囲気圧力:0.3Pa
DCパワー :50W
最上層:厚さ2nmのCo−Fe合金層
プロセスガス :アルゴン=50sccm
成膜雰囲気圧力:0.3Pa
DCパワー :100W
[表7]AlOXから成るトンネル絶縁膜の形成条件
厚さ1nm〜2nmのAl膜の成膜
プロセスガス :アルゴン=50sccm
成膜雰囲気圧力:0.3Pa
DCパワー :50W
Al膜の酸化
使用ガス :酸素=10sccm
酸化雰囲気の圧力:0.3Pa
[表8]厚さ5nmのCo−Fe合金から成る記録層35の成膜条件
プロセスガス :アルゴン=50sccm
成膜雰囲気圧力:0.3Pa
DCパワー :200W
[表9]厚さ100nmのTiNから成るトップコート膜36の成膜条件
プロセスガス :アルゴン=65sccm
成膜雰囲気圧力:0.3Pa
DCパワー :10kW
[工程−160]
その後、トップコート膜36上にエッチング用のハードマスク層を形成する。このハードマスク層は、下からSiN層40、SiO2層41の2層構造を有する。尚、ハードマスク層を構成するその他の材料として、SiC、SiONを挙げることができる。ハードマスク層は単層構成であってもよい。ハードマスク層は、リソグラフィ工程における反射防止効果や、エッチングストップ、メタル拡散防止等の機能を兼ねて形成される場合もある。ここでは例として、厚さ50nmのSiN層40を平行平板電力プラズマCVD装置を用いて成膜し、SiO2層41をバイアス高密度プラズマCVD(HDP−CVD)装置を用いて成膜する。これらの成膜条件を、以下の表10及び表11に例示する。
[表10]SiNの成膜条件
プロセスガス:モノシラン/アンモニア/N2=260sccm/100sccm/4000sccm
圧力 :565Pa
[表11]SiO2の成膜条件
プロセスガス:モノシラン/O2/アルゴン=60sccm/120sccm/130sccm
RFパワー
トップ :1.5kW
サイド :3kW
[工程−170]
次いで、全面にレジスト材料を塗布した後、リソグラフィ技術によって、ハードマスク層上に、トンネル磁気抵抗素子を形成するためのマスクとなるレジスト膜42を形成する。こうして、図5の(B)に示す構造を得ることができる。
[工程−180]
そして、このレジスト膜42をマスクとして用いた反応性イオンエッチング法によって、ハードマスク層を構成するSiO2層41をパターニングする。このときのエッチング条件を、以下の表12に例示する。その後、レジスト膜42を、酸素プラズマアッシング処理及び有機洗浄後処理によって除去する。次に、SiO2層41をマスクとして用いて、反応性イオンエッチング法によって、ハードマスク層を構成するSiN層40をエッチングする。このときのエッチング条件を、以下の表13に例示する。こうして、図5の(C)に示す構造を得ることができる。
[表12]SiO2層のエッチング条件
使用ガス :C4F8/CO/Ar/O2=10sccm/50sccm/200sccm/4sccm
RFパワー:1kW
圧力 :5Pa
温度 :20゜C
[表13]SiN層のエッチング条件
使用ガス :CHF3/Ar/O2=20sccm/200sccm/20sccm
RFパワー:1kW
圧力 :6Pa
温度 :20゜C
[工程−190]
次に、ハードマスク層41,40をマスクとして用いて、トップコート膜36及び記録層35を反応性イオンエッチング法によってパターニングする(図6の(A)及び(B)参照)。これらのエッチング条件を、以下の表14及び表15に例示する。
[表14]トップコート膜36のエッチング条件
使用ガス :Cl2/BCl3/N2=60sccm/80sccm/10sccm
ソースパワー :1kW
バイアスパワー:150W
圧力 :1Pa
[表15]記録層35のエッチング条件
使用ガス :Cl2/O2/Ar=50sccm/20sccm/20sccm
ソースパワー :1kW
バイアスパワー:150W
圧力 :1Pa
ここで、記録層35のエッチング工程においては、トンネル絶縁膜34のエッチング中にエッチングが停止するように時間設定されている。尚、記録層35のエッチング工程において、トンネル絶縁膜34がエッチングされ、更に、磁化固定層33の一部分までエッチングが進む場合であっても、エッチング生成物が記録層35及びトンネル絶縁膜34の側壁に堆積し、その結果、記録層35と磁化固定層33との間で電気的な短絡が発生するといった現象が生じることの無いようなエッチング条件設定を行う。その後、アッシング処理、水洗若しくは有機洗浄処理を行う。
トップコート膜36及び記録層35を反応性イオンエッチング法によってパターニングする代わりに、イオンミリング法(イオンビームエッチング法)に基づきパターニングすることもできる。尚、エッチング後、水洗若しくは有機系の洗浄液、エアロゾル等によって、側壁に堆積した堆積物、エッチングガス残り、パーティクル、エッチング残渣等を除去する。
その後、磁化固定層33及び反強磁性体層32のパターニングを行い、更に、周知の方法にてTa層37Aをパターニングすることで、引き出し電極37を得ることができる。こうして、強磁性体材料から成り、磁化反転状態に依存して抵抗値が変化することで情報を記憶する記録層35を有するトンネル磁気抵抗素子TMJを備えた不揮発性磁気メモリ装置を得ることができる。
実施例2は、本発明の第2の態様に係るフォトマスクに関する。強磁性体材料から成り、磁化反転状態に依存して抵抗値が変化することで情報を記憶する第2形態の記録層を有する磁気抵抗素子を備えた実施例2における不揮発性磁気メモリ装置も、実施例1と同様に、具体的には、TMR効果を用いたトンネル磁気抵抗素子を備えた不揮発性磁気メモリ装置である。尚、実施例2におけるトンネル磁気抵抗素子TMJ及び不揮発性磁気メモリ装置は、記録層の平面形状が異なる点を除き、実施例1におけるトンネル磁気抵抗素子TMJ及び不揮発性磁気メモリ装置と同様の構成、構造を有しているので、以下、記録層の平面形状についての説明を行う。
図8に模式的な平面図を示すように、記録層135の平面形状(実線で示す)は、3辺SRn(但し、「n」は、1,2,3のいずれか)を有する二等辺三角形疑似形状から成る。そして、二等辺三角形疑似形状の斜辺SR1,SR2は、その中央部CTに直線部分を有する。記録層135の磁化容易軸(EA)は、二等辺三角形疑似形状の底辺SR3と略平行であり、記録層135の磁化困難軸(HA)は、二等辺三角形疑似形状の底辺SR3と略直交している。更には、記録層135の平面形状を構成する各辺SRnは、相互に滑らかに結ばれている。
ここで、図8に示すように、記録層135の平面形状は、二等辺三角形疑似形状の仮想底辺IB(一点鎖線で示す)の垂直二等分線IH(一点鎖線で示す)に関して略線対称である。
そして、この記録層135を得るためにフォトマスクに設けられたパターンは、図7の(A)に示すように、第1形状151と第2形状152とから成り、第1形状151と第2形状152とが、第1形状151から第2形状152が1箇所において突出した重ね合わせ形状を有している。また、第2形状152は、第2形状軸線(二点鎖線で示す)上に位置している。更には、この第2形状軸線は第1形状151の中心点Oを通り、且つ、第2形状軸線は、第1形状151の中心点Oを通る第1形状軸線(点線で示す)と直交している。
実施例2において、第1形状151は、磁化容易軸(EA)と略平行である第1形状軸線に沿った長さが2Lp-1L、第1形状151の中心点Oを通り、第1形状軸線に垂直な方向の長さが2Lp-1S[但し、Lp-1S<Lp-1L]である正多角形(より具体的には、長方形)から成る。一方、第2形状152は、磁化困難軸(HA)と略平行である第2形状軸線に沿った第2形状152の先端部から第1形状151の中心点Oまでの距離がLp-2L[但し、Lp-1S<Lp-2L<Lp-1L]、第1形状151の中心点Oを通り、第2形状軸線に垂直な方向の長さが2Lp-2S[但し、Lp-2S<Lp-1L]である正多角形(より具体的には、長方形)から成る。
図8に示した二等辺三角形疑似形状の仮想底辺IBの長さを2Li-B、仮想高さをHi、二等辺三角形疑似形状の斜辺SR1,SR2と底辺SR3とが滑らかに結ばれている部分における記録層135の平面形状の平均曲率半径をrL、二等辺三角形疑似形状の2つの斜辺SR1,SR2の交点ABにおける記録層135の平面形状の曲率半径をrSとする。ここで、二等辺三角形疑似形状の2つの斜辺SR1,SR2の交点とは、仮想底辺IBの垂直二等分線IHと、二等辺三角形疑似形状の2つの斜辺SR1,SR2が1本に結ばれた曲線とが交わる点ABを指す。また、二等辺三角形疑似形状の仮想底辺IBとは、二等辺三角形疑似形状の底辺SR3を直線(底辺近似直線)で近似し、二等辺三角形疑似形状の2つの斜辺SR1,SR2の交点側であって、底辺近似直線から距離rLだけ離れた点を通る底辺近似直線と平行な仮想線を指す。更には、仮想底辺の長さ2Li-Bとは、二等辺三角形疑似形状の斜辺SR1,SR2と底辺SR3とが滑らかに結ばれている部分における記録層135の平面形状とこの仮想底辺IBとの交点の間の距離(点BCと点ACとの間の距離)と定義する。また、仮想高さHiとは、二等辺三角形疑似形状の2つの斜辺SR1,SR2の交点ABから仮想底辺IBまでの距離と定義する。
尚、二等辺三角形疑似形状の仮想底辺IBをx軸、仮想底辺IBの垂直二等分線IHをy軸とするガウス座標を想定したとき、斜辺SR1と斜辺SR2とを纏めて実変数関数f(x)で表したとすれば、実変数関数f(x)は区間a<x<b(但し、aは実変数関数f(x)におけるxの値が取り得る最小値であり、bは実変数関数f(x)におけるxの値が取り得る最大値)の各点で連続な微係数を持つ。そして、x=0における実変数関数f(x)の一次の微係数は0であり、y=0における実変数関数f(x)の一次の微係数は∞である。より具体的には、区間a<x<bにおいて、実変数関数f(x)は、xの値が増加するに従い、半径rLの円、直線、半径rSの円、直線、半径rLの円といった関数で表現することができる。また、区間a<x<bにおいては、実変数関数f(x)の一次の微係数は、xの値が増加するに従い、正の値、「0」、正の値から、「0」となり、更に、負の値となり、「0」、負の値となる。更には、区間a<x<bにおいては、実変数関数f(x)の二次の微係数は、xの値が増加するに従い、負の値、「0」、負の値となる。
尚、第2形状の数は1つに限定されない。図7の(B)に、第2形状の数を2つとした例を示す。
この例においては、第1の第2形状152は、磁化困難軸(HA)と略平行である第2形状軸線に沿った長さがLp-2L[但し、Lp-1S<Lp-2L<Lp-1L]、第1形状151の中心点を通り、第2形状軸線に垂直な方向の長さが2Lp-2S[但し、Lp-2S<Lp-1L]である正多角形(より具体的には、長方形)から成る。また、第2の第2形状153は、磁化困難軸(HA)と略平行である第2形状軸線に沿った長さがLp-3L[但し、Lp-2L<Lp-3L<Lp-1L]、第1形状151の中心点を通り、第2形状軸線に垂直な方向の長さが2Lp-3S[但し、Lp-3S<Lp-2S]である正多角形(より具体的には、長方形)から成る。
以上、本発明を、好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例にて説明した記録層の平面形状、磁気抵抗素子の各層を構成する材料、各層を形成する方法、MRAMの構造等は例示であり、適宜変更することができる。
実施例1においては、菱形疑似形状を構成する4つの辺SRmの全てを、その中央部CTに直線部分を有する構成としたが、このような構成に限定するものではなく、図9に模式的に示すように、菱形疑似形状を構成する辺は、菱形疑似形状の外側方向に向かって、その中央部が湾曲した滑らかな曲線から成る構成とすることもできる。尚、このような記録層35の平面形状も、パターンを構成する第1形状及び第2形状のそれぞれの大きさ、形状とを適宜、組み合わせることによって得ることができる。
また、実施例1においては、記録層35の平面形状は、菱形疑似形状の短軸SXに関して略線対称であり、且つ、菱形疑似形状の長軸LXに関しても略線対称である構成としたが、その代わりに、菱形疑似形状の短軸SXに関してのみ略線対称である構成とすることもできる。このような記録層の平面形状を図10に示す。尚、このような記録層35の平面形状も、パターンを構成する第1形状及び第2形状のそれぞれの大きさ、形状とを適宜、組み合わせることによって得ることができる。
また、実施例2においては、二等辺三角形疑似形状を構成する2つの斜辺SR1,SR2を、その中央部CTに直線部分を有する構成としたが、このような構成に限定するものではなく、図11に模式的に示すように、二等辺三角形疑似形状を構成する斜辺は、二等辺三角形疑似形状の外側方向に向かって、その中央部が湾曲した滑らかな曲線から成る構成とすることもできる。尚、このような記録層135の平面形状も、パターンを構成する第1形状及び第2形状のそれぞれの大きさ、形状とを適宜、組み合わせることによって得ることができる。
磁気抵抗素子として、実施例にて説明したTMR効果を用いたトンネル磁気抵抗素子以外にも、図12に模式的な一部断面図を示すスピン注入による磁化反転を応用した磁気抵抗素子を備えた不揮発性磁気メモリ装置を挙げることができる。この磁気抵抗素子は、絶縁層60上に形成された下部電極61の上に、スピンフィルター兼参照層62、トンネル絶縁膜63、記録層64、金属スペーサ層65、及び、スピンフィルター層66が積層された構造を有する。半導体基板10には、図4に示したと同様の選択用トランジスタTRが設けられており、その一方のソース/ドレイン領域14Bは、タングステンプラグから成る接続孔22を介して、下部電極61に接続されている。
実施例1及び実施例2において説明したフォトマスクを構成するパターンに対して、光近接効果補正を行ってもよい。実施例1に示したパターン(図13の(A)参照)に対して、ハンマーヘッド補正、配線端ちびり補正、インナーシェリフ補正、アウターシェリフ補正を加えた例を、それぞれ、図13の(B)、(C)、(D)及び(E)に例示する。尚、図13の(B)、(C)、及び(E)において、補正箇所に斜線を付した。
データ書込み方式として、書込みワード線RWLに一方向の電流を流し、書き込むべきデータに依存してビット線に正方向あるいは負方向の電流を流すといったダイレクト・モードだけでなく、米国特許公報6545906B1や米国特許公報6633498B1に記載されたトグル・モードを採用することができる。ここで、トグル・モードとは、書込みワード線RWLに一方向の電流を流し、書き込むべきデータに依存することなく、ビット線にも一方向の電流を流し、磁気抵抗素子に記録されたデータと書き込むべきデータとが異なる場合のみ、磁気抵抗素子にデータを書き込む方式である。
データ読出しを、ビット線を用いずに、データ読出し線を用いることもできる。この場合には、ビット線を、記録層(第2の強磁性体層)の上方に、上層層間絶縁層を介して、記録層(第2の強磁性体層)とは電気的に絶縁された状態で形成する。そして、記録層(第2の強磁性体層)と電気的に接続されたデータ読出し線を別途設ければよい。
図1の(A)及び(B)は、実施例1におけるフォトマスクに設けられたパターン、及び、このパターンに基づき得られる記録層の平面形状を示す図である。
図2は、実施例1において得られる不揮発性磁気メモリ装置における記録層の模式的な平面図であり、図1の(B)を拡大したものである。
図3は、実施例1における不揮発性磁気メモリ装置に備えられた記録層の平面形状の電子顕微鏡写真、及び、マイナーループ波形の一例を示す図である。
図4は、実施例1のTMRタイプの不揮発性磁気メモリ装置の模式的な一部断面図である。
図5の(A)〜(C)は、実施例1の不揮発性磁気メモリ装置の製造方法を説明するための層間絶縁層等の模式的な一部断面図である。
図6の(A)及び(B)は、図5の(C)に引き続き、実施例1の不揮発性磁気メモリ装置の製造方法を説明するための層間絶縁層等の模式的な一部断面図である。
図7の(A)及び(B)は、実施例2におけるフォトマスクに設けられたパターン、及び、このパターンに基づき得られる記録層の平面形状を示す図である。
図8は、実施例2において得られる不揮発性磁気メモリ装置における記録層の模式的な平面図であり、図7の(B)を拡大したものである。
図9は、実施例1において得られる不揮発性磁気メモリ装置における記録層の変形例の模式的な平面図である。
図10は、実施例1において得られる不揮発性磁気メモリ装置における記録層の別の変形例の模式的な平面図である。
図11は、実施例2において得られる不揮発性磁気メモリ装置における記録層の変形例の模式的な平面図である。
図12は、スピン注入による磁化反転を応用した磁気抵抗素子の模式的な一部断面図である。
図13の(A)〜(E)は、光近接効果補正を行ったパターンを示す図である。
図14は、TMRタイプの不揮発性磁気メモリ装置を構成する記録層の抵抗値の分布の一例を示す図である。
図15は、TMRタイプの不揮発性磁気メモリ装置におけるアステロイド曲線を模式的に示す図である。
図16は、TMRタイプの不揮発性磁気メモリ装置におけるアステロイド曲線のスイッチング磁界(HSwitch)のバラツキを模式的に示す図である。
符号の説明
TMJ・・・トンネル磁気抵抗素子、TR・・・選択用トランジスタ、BL・・・ビット線、RWL・・・書込みワード線、10・・・半導体基板、11・・・素子分離領域、12・・・ゲート電極、13・・・ゲート絶縁膜、14A,14B・・・ソース/ドレイン領域、15・・・コンタクトホール、16・・・センス線、21・・・層間絶縁層、22,25・・・接続孔、23・・・ランディングパッド部、24・・・下層層間絶縁層、26・・・上層層間絶縁層、31・・・第1の強磁性体層、32・・・反強磁性体層、33・・・磁化固定層、34・・・トンネル絶縁膜、35・・・第2の強磁性体層、36・・・トップコート膜、37・・・引き出し電極、40・・・SiN層、41・・・SiO2層、42・・・レジスト膜、51,151・・・第1形状、52,53,152,153・・・第2形状、60・・・絶縁層、61・・・下部電極、62・・・スピンフィルター兼参照層、63・・・トンネル絶縁膜、64・・・記録層、65・・・金属スペーサ層、66・・・スピンフィルター層