JP2005344258A - 刺繍部分への転写後染め法に用いるマスキング用基布 - Google Patents

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俊 水城
Junichi Sugino
順一 杉野
Keisuke Takishima
啓介 滝島
Akira Yamagami
昭 山上
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Abstract

【課題】
刺繍部分を転写紙により後染めにて着色・染色する方法により刺繍布を製造する際に使用する、転写時にミシン目部分からの移染防止性に優れるマスキング用基布を提供すること、及び、転写紙による着色・染色後に該マスキング用基布を除去した時、複雑な色模様の刺繍であっても刺繍部分の色彩・輪郭の鮮明性および風合いに優れた刺繍布を提供すること。
【解決手段】
水溶性繊維で構成される紙または不織布からなり、刺繍用基布の刺繍縫いを施す面の少なくとも一部を被覆するためのマスキング用基布、および該マスキング用基布を引裂き除去および/または水への溶解除去を行うことにより得られる刺繍布。
【選択図】なし

Description

本発明は、刺繍部分に転写紙を用いて着色・染色する際の刺繍部分以外への染料の移染防止性に優れたマスキング用基布およびこれを用いることで得られる刺繍布に関する。
従来、刺繍部分の色付けには、単色あるいは異なる色彩を有する複数の先染め刺繍糸が用いられていた。しかしながら、異なる色彩を有する複数の刺繍糸を用いて刺繍用基布に刺繍を施す場合、刺繍の配色パターンにおいて表現可能な色彩の数は刺繍糸の数により限定されており、特に工業的に刺繍を施す場合は、設備上、製造コスト上の制約や、高価な先染め刺繍糸を多種保有するリスク等から、使用される刺繍糸の数は著しく制限されていた。その結果、布地に施される刺繍は複雑な色模様を表現することができなかった。
また複雑な色模様を表現するために、刺繍部分を転写紙により後染めの方法にて着色・染色する方法がある。特に昇華性染料タイプの転写紙は色合いが良好で、洗濯堅牢度を有するために多用されているが、転写紙は、通常、全面に染料が配色されており、刺繍部分以外の布地にも色模様が転写されてしまい、刺繍の輪郭がぼやけるなど刺繍柄の表現を損ねてしまうという問題があった。さらに転写紙により着色・染色する前に刺繍部分以外をマスキング材によりマスキングする方法もあるが、中抜き部分を有する文字などの柄や刺繍に隙間を有する複雑な柄などの場合はマスキングが困難であり、熱転写後のマスキング材の除去も困難であった。
これらの問題点に対し、中抜き部を有する模様の刺繍部分への転写紙による着色・染色に際して、予め刺繍用基布とマスキング材とを一体化させて刺繍し、転写後に転写紙と共にマスキング材を剥がして除去する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1で用いられるマスキング材は、刺繍用基布に接する側に離型剤層、転写される側に熱溶融性接着剤層を有する上質紙や模造紙などの紙製支持体であるが、マスキング材の除去後でも、刺繍部分の下部に離型剤、紙製支持体、および熱溶融性接着剤が残存するため、刺繍部分の風合い・ソフト感に欠ける問題があった。
更に、マスキング材として、上質紙や模造紙などの紙製支持体の代わりに、水溶性のフィルムや水解性の薄模造紙・トイレットペーパー等を用いて、マスキング材除去後の刺繍部分の風合い改善が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。水溶性フィルムは刺繍用基布を洗濯することで刺繍下部に残存しているマスキング材が容易に除去され、離型剤や熱溶融性接着剤も残存せず、刺繍部分の風合い・ソフト感が損なわれないが、分散染料を用いる転写紙の場合に、刺繍のミシン目の穴を揮発した染料が通過し、刺繍の輪郭部分の周囲へ移染する可能性があり、刺繍が粗の場合はフィルム除去の際に利用する刺繍のミシン目が少ないため、除去しにくくなるなどの問題があった。
また、水解性の薄模造紙・トイレットペーパー等は、離型剤や熱溶融性接着剤が硬化し風合い斑を生じる可能性があり、洗濯により紙の繊維が離解した場合に刺繍目から外側にはみ出す恐れがあるなどの問題があった。
上記の方法で残存する刺繍下部のマスキング材を刺繍前に予め除去しておく方法も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。この方法は、刺繍用基布とマスキング材とを一体化させて刺繍する際に、まず、輪郭刺繍を施し刺繍する部分のマスキング材を除去し、除去した部分に刺繍をし、転写紙で彩色した後、刺繍部分以外のマスキング材を除去するものである。しかしながら、刺繍する工程とマスキング材を除去する工程が増えて設備上・コスト上の制約を受け、更には、複雑な刺繍柄の場合に予め刺繍部分のマスキング材だけを選択的に除去することは非常に困難であるなどの問題があった。
特開平7−133596号公報 特開平9−123695号公報 特開2000−64183号公報
本発明の目的は、刺繍部分を転写紙により後染めにて着色・染色する方法により刺繍布を製造する際に使用する、染料の移染防止性に優れるマスキング用基布を提供することであり、転写紙による着色・染色後に該マスキング用基布を除去した時、複雑な色模様の刺繍であっても刺繍部分の色彩・輪郭の鮮明性および風合いに優れた刺繍布を提供することである。
本発明者らは、上記したマスキング用基布および刺繍布を得るべく鋭意検討を重ねた結果、刺繍用基布上に作製した刺繍部分に転写紙を用いて着色・染色する方法により刺繍布を製造するにあたり、前記刺繍用基布の刺繍を施す面(以下、刺繍面ということがある。)の少なくとも一部に水溶性繊維で構成される紙または不織布をマスキング用基布として被覆し、前記マスキング用基布を刺繍用基布と一体化させて刺繍縫いを施した後、転写紙を用いて熱転写により刺繍部分に染色を施し、その後、マスキング用基布を除去することにより、優れた風合い・ソフト感を有するとともに刺繍部分の周囲に染料の移染のない刺繍布を安価に製造できることを見出した。
すなわち本発明は、転写紙を用いた刺繍部分への後染め方法において使用され、水溶性繊維で構成される紙または不織布からなり、刺繍用基布の刺繍を施す面の少なくとも一部を被覆して、刺繍部分以外への染料の移染を防止するためのマスキング用基布を提供するものである。
上記マスキング用基布において、水溶性繊維はポリビニルアルコール系繊維であることが好ましく、目付が40g/m2以上の紙または不織布であることが好ましい。
また本発明は、上記マスキング用基布と刺繍用基布とを一体化させて刺繍縫いを施してから、転写紙を用いて熱転写または感圧転写により刺繍部分に彩色を施した後、該マスキング用基布を引裂き除去および/または水への溶解除去を行うことにより得られる刺繍布を提供する。
本発明によれば、水溶性繊維で構成される紙または不織布をマスキング用基布として用いることにより、転写時のミシン目からの刺繍部分周囲への染料の移染が防止され、複雑な色模様であっても刺繍部分の色彩・輪郭が鮮明な刺繍布が得られ、かつ、マスキング材除去後の風合い・ソフト感の良好な刺繍布を得ることが可能である。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のマスキング用基布を使用して得られる刺繍布において、刺繍部分への転写染色の方法は、刺繍用基布に形成した刺繍部分へ転写紙により後染色をする方法である。
まず、刺繍用基布の刺繍面の、刺繍する部分を含む少なくとも一部に、水溶性繊維で構成される紙または不織布からなるマスキング用基布を被覆する(重ね合わせる)。刺繍用基布とマスキング用基布を刺繍縫いにより一体化させた後、転写紙を用いてその色模様を刺繍部分に熱転写する。その後、転写紙を剥がし、更にマスキング用基布を除去することで、刺繍部分のみが綺麗に転写により彩色された刺繍布が得られる。
刺繍用基布および刺繍部分の刺繍糸に使用する繊維は、特に限定されず、木綿、絹、羊毛等の天然繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の合成繊維などが挙げられる。
マスキング用基布は、転写紙を刺繍部分に対応する形状にカットすれば、刺繍部分およびその周辺を被覆する大きさでもよいが、作業性等から、一般的には、刺繍用基布の全面を被覆する。
転写紙としては、一般的に移染性の高い分散染料を使用した昇華性のものが使用され、熱転写によって色模様を刺繍布上に形成するものが挙げられるが、特に限定はなく、目的に応じて、顔料染料などを感圧転写によって着色する転写紙などを適宜選択することができる。
本発明のマスキング用基布は、水溶性繊維で構成される紙または不織布であることを特徴とする。かかるマスキング用基布を用いることにより、転写時のミシン目からの刺繍部分周囲への染料の移染が防止される。マスキング用基布の除去は、非刺繍部分はその区画線が刺繍縫いミシン目状となっているため、引裂き除去することも可能であり、水溶性繊維で構成されているため、非刺繍部分のみならず刺繍部分の下部に残ったマスキング用基布も、水によって実質上完全に溶解除去することも可能である。その結果、複雑で多彩な転写画像であってもその色模様が刺繍部分に綺麗に転写され、かつ刺繍部分の風合いも良好な刺繍布を得ることができる。
本発明において、マスキング用基布を構成する水溶性繊維としては、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する。)系繊維、アルギン酸ナトリウム系繊維などが例示されるが、繊維の強度が高いことや溶解する水温を調節できる等の理由から、PVA系繊維が特に好ましい。本発明で用いる水溶性のPVA系繊維は、繊維の水中溶解温度が0〜100℃であるが、昇華性転写紙に用いられる分散染料が80℃以上で一部水へ溶出し移染しやすいことから、特に70℃以下であることが好ましい。
繊維の水中溶解温度が0〜70℃の場合は、PVAユニット以外のユニットが酢酸ビニルユニットのみからなる部分ケン化PVAであり、ケン化度は98モル%以下であることが好ましい。しかし、ケン化度が80モル%以下になると、得られる繊維の結晶性が低く、また、繊維を製造する際に繊維間の膠着が生じ易く好ましくない。
繊維の水中溶解温度が70℃〜100℃の場合は、ケン化度が98〜99.5モル%のものを用いることが好ましいが、99.5モル%以上の完全ケン化PVAでも乾熱延伸温度を200℃以下にすれば、沸騰水に溶解する繊維を得ることもできる。
水溶性繊維を構成できる限り、変性ユニットを含有する変性PVAも使用することができる。繊維の水中溶解温度が0〜70℃の場合は、変性ユニットが一般的には1.0モル%以上、特に2.0モル%以上の変性PVAを用いるのが好ましい。繊維の水中溶解温度が70℃〜100℃の場合は、変性ユニットが0.1モル%以上かつ1.0モル%以下の変性PVAを用いるのが好ましい。変性ユニットとしては、エチレン、アリルアルコール、イタコン酸、アクリル酸、ビニルアミン、無水マレイン酸とその開環物、スルホン酸含有ビニル化合物、ピバリン酸ビニルの如く炭素数が4以上の脂肪酸ビニルエステル、ビニルピロリドン、および上記イオン性基の一部または全量を中和した化合物などが例示できる。変性ユニットの導入法は共重合による方法でも、後反応による導入方法でもよい。また変性ユニットのポリマー鎖内での分布はランダムでもブロックでもグラフトでも特に限定はない。また該ポリマーの重合度は特に限定されないが、繊維の機械的物性、吸水性などの点からは重合度1000以上、特に1500以上とするのが好ましく、繊維の紡糸性などの点からは4000以下であるのが好ましい。
上記の水溶性のPVA系繊維は、転写紙の色模様を形成する染料として、特に、分散染料などの昇華性染料を使用する際に適している。
昇華性染料は、グラデーション等のより複雑で多彩な色模様に適しているが、転写紙を用いて染色する際に刺繍のミシン目から透過して刺繍部分以外に移染したり、80℃以上の熱水でマスキング用基布を溶解除去する際に該染料が水へ溶出し、刺繍布の刺繍部分以外に色移りしたりする。しかしながら、本発明で使用する水溶性のPVA系繊維は、前述のように水への溶解温度に応じて任意の繊維を選択でき、かつ、該PVA系繊維で構成される紙または不織布が昇華性染料を保持できるため、上記の染色時あるいは溶解除去時の移染を防止することができる。従って、グラデーション等の複雑で多彩な色模様の刺繍で、刺繍部分の風合いも良好な刺繍布を得ることができる。
次に本発明のPVA系繊維の製造方法について説明する。
本発明においては、水溶性のPVA系ポリマーを水あるいは有機溶剤に溶解した紡糸原液を用いて後述する方法で繊維を製造することにより、機械的物性に優れた繊維を効率的に得ることができる。もちろん、本発明の効果を損なわない範囲であれば、紡糸原液中に添加剤やポリマーが含まれていてもかまわない。紡糸原液を構成する溶媒としては例えば水、DMSO、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどの極性溶媒、グリセリン、エチレングリコールなどの多価アルコール類、およびこれら溶媒とロダン塩、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛などの膨潤性金属塩の混合物、さらにはこれら溶媒どうしの混合物、あるいはこれら溶媒と水との混合物などが挙げられるが、この中では水やDMSOが低温溶解性、低毒性、低腐食性などの点で最も好適である。
紡糸原液中のポリマー濃度は組成、重合度、溶媒によって異なるが、8〜40質量%の範囲であることが好ましい。紡糸原液の吐出時の液温は、紡糸原液がゲル化したり分解・着色したりしない範囲であり、具体的には50〜150℃の範囲とすることが好ましい。
かかる紡糸原液をノズルから吐出して湿式紡糸あるいは乾式紡糸を行えばよく、PVAポリマーに対して固化能を有する固化液に吐出すればよい。特に多ホールから紡糸原液を吐出する場合には、吐出時の繊維同士の膠着を防止する点から乾湿式紡糸法よりも湿式紡糸法の方が好ましい。なお、湿式紡糸法とは、紡糸口金から直接固化浴に紡糸原液を吐出する方法のことであり、一方乾湿式紡糸法とは、紡糸口金から一旦、空気や不活性ガス中に紡糸原液を吐出し、それから固化浴に導入する方法のことである。
本発明において用いる固化浴は、原液溶媒が有機溶媒の場合と原液が水溶液の場合では異なる。有機溶媒を用いた原液の場合は、得られる繊維強度等の点から固化溶媒と原液溶媒からなる混合液が好ましく、固化溶媒としてはメタノール、エタノールなどのアルコール類や、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などのPVAポリマーに対して固化能を有する有機溶媒、特にメタノールとDMSOからなる有機溶媒が好ましく、かつ固化浴中での固化溶媒/原液溶媒の質量比は25/75〜95/5が好ましく、工程性および溶剤回収の点で55/45〜80/20がより好ましい。また固化浴の温度は30℃以下が好ましく、特に均一な冷却ゲル化のためには20℃以下、より好ましくは15℃以下である。
一方、紡糸原液が水溶液の場合には、固化液を構成する固化溶媒としては、芒硝、塩化ナトリウム、炭酸ソーダなどの、PVA系ポリマーに対して固化能を有する無機塩類の水溶液が好適に挙げられる。本固化浴は当然酸性、アルカリ性であってもかまわない。
次に固化された糸篠から紡糸原液の溶媒を抽出除去する。抽出の際に糸篠を湿延伸することが、乾燥時の繊維間膠着を抑制するうえでも、さらに得られる繊維の強度を高めるうえでも好ましい。湿延伸倍率としては2〜6倍であることが好ましい。抽出は、通常は複数の抽出浴を通すことにより行われる。抽出浴としては、固化溶媒単独あるいは固化溶媒と原液溶媒の混合液が用いられ、また抽出浴の温度は0〜50℃の範囲が採用される。
次いで糸篠を乾燥してPVA系繊維を製造する。このとき、必要に応じて油剤などを付与して乾燥すればよい。乾燥温度は、210℃以下とするのが好ましく、特に乾燥初期は160℃以下の低温で乾燥し、乾燥後半は高温で乾燥する多段乾燥が好ましい。さらに乾熱延伸および必要に応じて乾熱収縮を施し、PVA分子鎖を配向・結晶化させ、繊維の強度を高めるのが好ましい。というのも、繊維の強度が低すぎると、例えば不織布等の構造体に加工する場合、その工程通過性が悪くなることが容易に予想されるためである。繊維の機械的性能を高めるためには、120〜250℃の温度条件下で乾熱延伸を行うのが好ましい。
本発明により得られる繊維の繊度は特に限定されず、例えば0.1〜1000dtex、好ましくは1〜400dtexの繊維が広く使用できる。繊維の繊度はノズル径や延伸倍率により適宜調整すればよい。
本発明の水溶性繊維で構成される紙または不織布からなるマスキング用基布の製造方法は特に限定されず、従来公知の乾式・湿式の不織布または紙の製造方法が適用できる。
例えば、乾式不織布では、カード法やエアーレイド法などで水溶性繊維のウェブを作成し、加熱ロールによりエンボス接着あるいはカレンダー接着することで効率的に所望の不織布を製造できる。数種の水溶性繊維を混綿してウェブを作成しても良いし、エンボス接着やカレンダー接着の際に、予め異なる数種の水溶性繊維から成るウェブを積層しても良い。地合斑の少ない均質な不織布を得ることから、クロスラップ法やクリスクロス法などで繊維配向をランダムにする方法を適用してもよい。
紙からなるマスキング用基布は、該水溶性繊維の水中溶解温度よりも低温の水を使用して、一般の湿式抄紙機を用いることにより、効率的に所望の紙を製造することができる。用いる抄き網としては、円網、短網及び長網等が挙げられ、これらの抄き網を単独で用いて単層としても、また抄き網の組み合わせによる複数層の抄き合せシートとしてもよい。主体繊維やバインダー繊維などの紙料を含むスラリーを抄き上げた後に、ヤンキー型乾燥機等で乾燥することにより所望の紙が得られる。勿論、必要に応じて熱プレス加工等を追加で行うこともできる。
本発明の水溶性繊維で構成される紙または不織布の目付は、昇華性染料を用いる場合に染料が基布の繊維の隙間を透過しやすいので、地合斑が少なく且つ目付が高いほうが好ましく、具体的には30g/m2以上、さらには40g/m2以上の紙または不織布であることが好ましい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は本実施例により何等限定されるものではない。なお以下の実施例において、各物性値の測定及び転写染色は下記の方法により実施した。
[目付(g/m2)](不織布の場合)
5cm×17cmの面積で不織布の基布を12枚切り出して各重量を測定し、それらの平均値を面積で除して算出した。
[坪量(g/m2)](紙の場合)
JIS P8124「紙のメートル坪量測定方法」に準じて測定した。
[水中溶解温度(℃)]
400ccの水に2cm平方の切り分けた不織布片又は紙3枚を投入し、昇温速度3℃/分、攪拌速度280rpmの条件で攪拌しながら昇温して、繊維が完全に溶解したときの温度を水中溶解温度として測定した。
[転写染色方法]
刺繍用基布として、フェルトの布地(サンフェルトGR、サンフェルト株式会社製)、または市販の綿ブロード生地を用い、10cm×10cmの刺繍用基布とマスキング用基布を重ねて刺繍をし、転写紙(分散染料使用の転写紙、山上縫糸株式会社仕様)を用いて200℃×20秒の熱転写で刺繍部分への彩色転写を施した。
[実施例1]
水溶性繊維として、ポリマー重合度1750、ケン化度88モル%、単糸繊度2.2dtex、強度5cN/dtexの捲縮したPVA繊維を用い、該PVA繊維が100質量部からなるランダムウェブを作成し、加熱したエンボスロールとスチールロールとの間を通過させることで目付60.8g/m2、水中溶解温度30℃の不織布を得た。エンボス条件は、接着面積率12%、温度160℃、線圧40kgf/cm、処理速度5m/分であった。該不織布をマスキング用基布として刺繍用基布に被覆して刺繍を施した後、転写紙を用いて刺繍部分への染色を施した。このとき、刺繍部分以外の刺繍用基布への染料の滲み出しや移染はみられなかった。その後、40℃の温水でマスキング用基布を完全に溶解除去したが、溶解除去の際に該マスキング材からの染料の溶出による刺繍布への移染もみられず、従ってマスキング用基布として優れるものであった。そして、このように得られた刺繍布は、風合いもソフトで良好であり、刺繍部分の色彩・輪郭も鮮明なものであった。
[実施例2]
水溶性繊維として、ポリマー重合度1750、ケン化度96モル%、単糸繊度1.7dtex、強度5.5cN/dtexの捲縮したPVA繊維を用い、該PVA繊維が100質量部からなるランダムウェブを作成し、加熱したエンボスロールとスチールロールとの間を通過させることで目付49.6g/m2、水中溶解温度70℃の不織布を得た。エンボス条件は、接着面積率12%、温度180℃、線圧40kgf/cm、処理速度5m/分であった。該不織布をマスキング用基布として刺繍用基布に被覆して刺繍を施した後、転写紙を用いて刺繍部分への染色を施したところ、刺繍部分以外の刺繍用基布への染料の滲み出しや移染はみられなかった。その後、75℃の温水でマスキング用基布を完全に溶解除去したところ、該マスキング材からの染料の溶出による刺繍布への移染もみられず、従ってマスキング用基布として優れるものであった。そして、このように得られた刺繍布は風合いもソフトで良好であり、刺繍部分の色彩・輪郭も鮮明なものであった。
[実施例3]
実施例1と同一の水溶性繊維10質量部と実施例2と同一の水溶性繊維90質量部からなるランダムウェブを作成し、重合度1750、ケン化度96モル%のPVA樹脂が1質量%含有する水溶液を噴霧しウェブに含浸させ、70℃の加熱したスチールロールで乾燥し、目付41.4g/m2、水中溶解温度65℃の不織布を得た。該不織布をマスキング用基布として刺繍用基布に被覆して刺繍を施した後、転写紙を用いて刺繍部分への染色を施したところ刺繍部分以外の刺繍用基布への染料の滲み出しや移染はみられなかった。その後、75℃の温水でマスキング用基布を完全に溶解除去したところ、該マスキング材からの染料の溶出による刺繍布への移染もみられず、従ってマスキング用基布として優れるものであった。そして、このように得られた刺繍布は風合いもソフトで良好であり、刺繍部分の色彩・輪郭も鮮明なものであった。
[実施例4]
原料が重合度1750、ケン化度96モル%のPVA系主体繊維1.7dtex×3mmで、単糸繊度1.7dtex、90重量%と、PVA系バインダー繊維(ビニロンバインダー)1.1dtex×3mm、10重量%を水に分散してスラリーを製造し、これを短網―円網抄紙機にて2層抄きあわせ抄紙を行い、ヤンキー型乾燥機にて乾燥し、坪量41.6g/m2、水中溶解温度70℃の紙を得た。該水溶性の紙をマスキング用基布として刺繍用基布に被覆して、さらに前記転写紙を用いて刺繍部分への彩色を施した。このとき刺繍部分以外の刺繍用基布への染料の移染はみられなかった。その後、75℃の温水でマスキング用基布を完全に溶解除去したが、溶解除去の際に染料の溶出による移染もみられず、従ってマスキング用基布として優れるものであった。そして、このように得られた刺繍布は風合いもソフトで良好であり、刺繍部分の色彩・輪郭も鮮明なものであった。
[比較例1]
市販の薄手のPVA系水溶性フィルムをマスキング材として刺繍用基布に被覆して刺繍を施し、転写紙を用いて刺繍部分への染色を施したところ、刺繍のミシン目から刺繍用基布への移染がみられ、輪郭がぼやけたものになった。その後、80℃の温水でマスキング材のフィルムを完全に溶解除去し、その際、染料の溶出による刺繍用基布への移染はなかったが、得られた刺繍布の刺繍柄は不明瞭なものとなり、商品価値として著しく劣るものであった。
[比較例2]
市販の厚手のPVA系水溶性フィルムをマスキング材として刺繍用基布に被覆して刺繍を施し、転写紙を用いて刺繍部分への染色を施したところ、刺繍のミシン目から刺繍用基布への移染はみられなかった。その後、80℃の温水でマスキング材のフィルムを溶解除去したが、部分的に未溶解を生じて刺繍部分の風合いが固くなり、また、95℃の熱水では完全に溶解したが、該マスキング材からの染料の溶出が多く、転写染色した刺繍部分の色落ち・色褪せの他、刺繍部分以外の刺繍布への移染も生じてしまい、商品価値として著しく劣るものであった。
[比較例3]
市販の厚手の模造紙をマスキング材として刺繍用基布に被覆して刺繍を施した後、転写紙を用いて刺繍部分への染色を施したところ、刺繍のミシン目から刺繍用基布への移染はみられなかった。その後、温水でマスキング材を部分的に水解除去したが、大部分は刺繍部分の下部に残存して部分的に風合いが硬くなり、一部は刺繍目から外側にはみ出し実用上耐え得るものではなかった。
本発明によれば、転写時のミシン目からの刺繍部分周囲への染料の移染が防止され、複雑な色模様であっても刺繍部分の色彩が鮮明な刺繍布が得られ、かつ、マスキング材除去後の風合い・ソフト感の良好な刺繍布を得ることが可能である。
本発明のマスキング用基布を用いて得られた刺繍布は、帽子・鞄等の装身具や靴下・Tシャツ・肌着等の衣料のワンポイントから広範な用途に適用できる。


Claims (4)

  1. 転写紙を用いた刺繍部分への後染め方法において使用され、水溶性繊維で構成される紙または不織布からなり、刺繍用基布の刺繍を施す面の少なくとも一部を被覆して、刺繍部分以外への染料の移染を防止するためのマスキング用基布。
  2. 水溶性繊維がポリビニルアルコール系繊維である請求項1記載のマスキング用基布。
  3. 目付が40g/m2以上の紙または不織布であることを特徴とする請求項1または2記載のマスキング用基布。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項記載のマスキング用基布を刺繍用基布と一体化させて刺繍縫いを施してから、転写紙を用いて熱転写または感圧転写により刺繍部分に染色を施した後、該マスキング用基布を引裂き除去および/または水への溶解除去を行うことにより得られる刺繍布。

































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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006129744A1 (ja) * 2005-06-03 2006-12-07 Kuraray Co., Ltd. 刺繍部分の転写後染め法に用いるマスキング用基布
JP2019173210A (ja) * 2018-03-28 2019-10-10 日本電波株式会社 刺繍用昇華転写方法及びその装置

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