JP2005336025A - 酸化物焼結体の製造方法、組成物 - Google Patents

酸化物焼結体の製造方法、組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 カーボン添加による効果を享受しつつ、焼結密度を向上させるための技術を提供する。
【解決手段】 原料粉末とカーボン粉末とポリカルボン酸系分散剤とを含む混合物を成形する成形工程と、得られた成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程とを備えるようにした。本発明で用いるポリカルボン酸系分散剤がカーボン粉末の偏析を抑制するため、焼結時にカーボン粉末が消失しても、ピンホールの増加及びそれに起因する焼結密度の低下を抑制できる。本発明によれば、カーボン粉末の偏析を抑制することができ、カーボン添加による効果を享受しつつ高密度の酸化物焼結体を得ることができる。本発明をW型フェライト磁石に適用することで、残留磁束密度(Br)の高いW型フェライト磁石を得ることができる。
【選択図】図3

Description

本発明は酸化物焼結体の製造方法に関し、特にフェライト磁石等の酸化物焼結体に関するものである。
M型フェライト磁石を凌駕する磁気特性を示す可能性をもつフェライト磁石として、W型のフェライト磁石が知られている。酸化物焼結体からなるW型フェライト磁石は、M型フェライト磁石と同程度の異方性磁界を有しつつ飽和磁化が高い。例えば、特許文献1ではSrO・2(FeO)・n(Fe23)であり、nが7.2〜7.7を満足する組成からなるW型フェライト磁石が開示されている。特許文献1では組成を上述した範囲のものとするとともに、仮焼前の原料粉末にカーボンを添加し、仮焼後にさらにCaO、SiO2、カーボンをそれぞれ添加することでW型フェライト磁石の磁気特性の向上を図っている。特許文献1では(1)仮焼前の原料粉末にカーボンを添加することにより、広範囲の温度域でW型フェライトを生成することが可能となること、(2)カーボンは仮焼時における原料粉末の酸化を防止するために還元剤としての役割を有すること、(3)仮焼後かつ微粉砕前にカーボンを添加することにより、乾燥温度の最適範囲が高温側に広がり、優れた最大エネルギ積((BH)max)を安定して得ることができること、がカーボンの添加理由として挙げられている。
特表2000−501893号公報(特許請求の範囲、第4頁〜第8頁)
上述したように、W型フェライト磁石等の酸化物焼結体を製造する際に、カーボンを添加することで還元作用や磁気特性の向上という効果が期待できる。特に、Fe2W型フェライト磁石では、二価鉄の量を所望の値に制御することが困難であるが、特許文献1にて提案されているように仮焼後にカーボンを添加することで二価鉄の量の制御が容易となる。
しかしながら、微細な粉末として添加されるカーボンは凝集しやすく、そのために偏析する。焼結に供される前の成形体に偏析した状態のカーボン粉末が存在すると、焼結後に得られる酸化物焼結体は焼結密度が低いものとなってしまう。偏析したカーボン粉末が焼結時に消失することで焼結体中にピンホールが増加し焼結密度が低下してしまうからである。例えば図6に示すように、カーボン粉末の添加量が増えるにつれて、黒点で示されるピンホールが増加し、焼結密度が低い酸化物焼結体となってしまう。
そこで、本発明はカーボン添加による効果を享受しつつ、焼結密度を向上させるための技術を提供することを課題とする。
本発明者はカーボン粉末の偏析を抑制するために、様々な検討を行った。その結果、ある種の分散剤を添加することでカーボン粉末の偏析を抑制することができ、カーボン粉末の分散性が向上することを知見した。すなわち、本発明は、原料粉末とカーボン粉末とポリカルボン酸系分散剤とを含む混合物を成形する成形工程と、得られた成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程とを備えたことを特徴とする酸化物焼結体の製造方法を提供する。本発明で用いる分散剤は原料粉末を構成する粒子の分散性を低下させることなく、カーボン粉末の偏析を抑制する。このため、焼結時にカーボン粉末が消失しても、ピンホールの増加及びそれに起因する焼結密度の低下を抑制することができる。ここで、酸化物焼結体としては上述したFe2W型フェライトが含まれることはもちろん、他のW型フェライト、さらには他の系のフェライト(例えばM型等の他の六方晶系フェライト、Mn系やNi系等の立方晶系フェライト)も含まれる。そして、フェライト以外の酸化物焼結体、例えば誘電特性を有する焼結体等も本発明の酸化物焼結体に包含される。
本発明において、原料粉末とカーボン粉末と上述した分散剤とを含む混合物は、撹拌されて得られる。つまり、原料粉末に対してカーボン粉末と分散剤を添加するタイミングは同時でもよいし異なっていてもよいが、撹拌されたものを本発明における成形工程で用いるのが望ましい。カーボン粉末の分散性を向上させるためである。
なお、分散剤を添加するタイミングによっては独立した撹拌工程は必須ではない。例えば粉砕工程で分散剤を添加する場合には、粉砕とともに撹拌という処理が進行するため、独立した撹拌工程は要しない。
上述した原料粉末として磁性フェライト相を発現しうるものを選択することで、本発明における酸化物焼結体を磁性フェライト相を有するものとすることができる。磁性フェライト相を有する酸化物焼結体は、着磁を行うことでフェライト磁石として使用可能である。ここで、磁石特性の1つとして、残留磁束密度(Br)が挙げられる。Br=σs×密度×磁気的配向度(なお、σsは単位重量当たりの飽和磁化)という式から明らかであるように、残留磁束密度(Br)に大きな影響を与える因子として密度がある。したがって、残留磁束密度(Br)の高いW型フェライト磁石を製造するためには、密度を向上させることが1つの鍵となる。上述したように、本発明における酸化物焼結体の製造方法によれば、焼結密度を向上させることができるため、最終的に残留磁束密度(Br)が高いフェライト磁石を得ることができる。
また、本発明における酸化物焼結体としては六方晶W型フェライト、特に組成式:AFe2+ aFe3+ b27(組成式において、AはSr、Ba及びPbから選択される少なくとも1種の元素、1.1≦a≦2.4、12.3≦b≦16.1である)で表される組成を有するFe2W型フェライトが望ましい。Fe2W型フェライトはハードフェライトとして知られており、上記組成を有するFe2W型フェライトに対して着磁を行うことで、M型フェライトを凌駕する優れた磁気特性、特に残留磁束密度(Br)が高いフェライト磁石を得ることができる。
上述したFe2W型フェライトを得たい場合には、二価鉄の量を制御するために非酸化性雰囲気、例えば窒素雰囲気で成形体を焼結する。この場合に、カーボン粉末は還元剤として有効に寄与する。
本発明によれば、W相を主相とするFe2W型フェライト磁石を得ることができる。ここで、本発明では、W相のモル比が50%以上のときに、W相が主相であると称する。磁気特性の観点から、W相のモル比は70%以上がよく、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。本願におけるモル比は、W型フェライト、M型フェライト、ヘマタイト、スピネルそれぞれの粉末試料を所定比率で混合し、それらのX線回折強度から比較算定することにより算出するものとする(後述する実施例でも同様)。
本発明で使用するポリカルボン酸系分散剤は、ポリカルボン酸のアンモニウム塩またはカルシウム塩として添加することが有効である。
またポリカルボン酸系分散剤の添加量は原料粉末に対して0.05〜2.5wt%とすることが望ましい。
以上、酸化物焼結体について詳述したが、上述した分散剤がカーボン粉末の偏析を抑制する上で有効であるという本発明の知見は、以下の組成物として捉えることもできる。すなわち、本発明は、焼結に供される組成物であって、組成物中にカーボン粉末が分散しているとともに、ポリカルボン酸系分散剤が含有されていることを特徴とする組成物を提供する。
後述する実施例で示すように、ポリカルボン酸系分散剤を用いることで、高密度かつ高特性の酸化物焼結体を得ることができる。
上述した組成物の第1の形態として成形用スラリが挙げられる。湿式磁場成形を採用することで磁気的配向度の高い焼結磁石を得ることができることはすでに知られている。湿式磁場成形には原料粉末等を含むスラリが用いられるが、このスラリとしてカーボン粉末が分散された本発明の成形用スラリを用いることで、最終的に焼結密度及び残留磁束密度が高い焼結磁石を得ることができる。
成形用スラリは液状の組成物であるが、本発明の組成物は固体状の成形体としても捉えることができる。
本発明によれば、カーボン粉末の偏析を抑制することができ、カーボン添加による効果を享受しつつ高密度の酸化物焼結体を得ることができる。本発明をW型フェライト磁石に適用することで、残留磁束密度(Br)の高いW型フェライト磁石を得ることができる。
以下、最良の形態を含め本発明の具体的な実施の形態を説明する。
本発明の酸化物焼結体の製造方法は、製造工程においてカーボン粉末を添加する場合にある種の分散剤を使用することでカーボン粉末の偏析を抑制し、酸化物焼結体の焼結密度を向上させることを特徴とする。ここで、本発明で使用する分散剤は、ポリカルボン酸系分散剤である。
以上の本発明は、各種酸化物焼結体の製造に適用可能であるが、特に顕著な効果が得られることから、以下の説明ではFe2W型フェライト磁石の製造に適用した場合を例にして説明を行う。
<組成>
本発明をW型フェライト磁石に適用する場合には、以下の組成式からなる主組成とすることが望ましい。
AFe2+ aFe3+ b27・・・式(1)
式(1)中、
1.1≦a≦2.4、
12.3≦b≦16.1である。また、Aは、Sr、BaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素である。
Aとしては、SrおよびBaの少なくとも1種が好ましい。なお、上記式(1)においてa及びbはそれぞれモル比を表す。
次に、上記組成式におけるaおよびbの限定理由を説明する。
上記式(1)において、Fe2+の割合を示すaは、1.1≦a≦2.4とする。aが1.1未満になると、W相よりも飽和磁化(4πIs)が低いM相、Fe23(ヘマタイト)相が生成して、飽和磁化(4πIs)が低下してしまう。一方、aが2.4を超えると、スピネル相が生成して、保磁力(HcJ)が低下してしまう。よって、aを1.1≦a≦2.4の範囲とする。aの好ましい範囲は1.6≦a≦2.1、より好ましい範囲は1.6≦a≦2.0である。
また、Fe3+の割合を示すbは、12.3≦b≦16.1の範囲とする。1.1≦a≦2.4の範囲のとき、bが12.3未満になると、スピネル相が生成して保磁力(HcJ)が低下する。一方、bが16.1を超えると、M相、Fe23(ヘマタイト)相が生成して、飽和磁化(4πIs)が低下してしまう。よって、bを12.3≦b≦16.1の範囲とする。bの好ましい範囲は13.0≦b≦15.8である。
W型フェライト磁石の組成は、蛍光X線定量分析などにより測定することができる。また、本発明は、A元素(Sr,BaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素)、Fe以外の元素の含有を排除するものではない。例えば、Fe2W型フェライトにおいてFe2+サイト又はFe3+サイトの一部を他の元素で置換することもできる。またA元素、Fe以外の元素の他、例えばCaCO3、SiO2に起因するCa成分および/又はSi成分を含有してもよい。これら成分を含むことにより、保磁力(HcJ)、結晶粒径の調整等を行うことができ、高いレベルで保磁力(HcJ)及び残留磁束密度(Br)を兼備するフェライト焼結磁石を得ることができる。
Ca成分、Si成分をCaCO3、SiO2換算で、CaCO3:0〜3.0wt%、SiO2:0.2〜1.4wt%の範囲で含むことが望ましい。
SiO2が0.2wt%未満では、SiO2の添加効果が不十分である。また、CaCO3が3.0wt%を超えると磁気特性低下の要因となるCaフェライトを生成するおそれがある。さらに、SiO2が1.4wt%を超えると、残留磁束密度(Br)が低下する傾向にある。以上より、本発明におけるCa成分、Si成分の量はCaCO3、SiO2換算で、CaCO3:0〜3.0wt%、SiO2:0.2〜1.4wt%とする。CaCO3及びSiO2は、各々、CaCO3:0.2〜1.5wt%、SiO2:0.2〜1.0wt%の範囲で含むことが望ましく、さらにはCaCO3:0.3〜1.2wt%、SiO2:0.3〜0.8wt%の範囲で含むことが望ましい。
本発明による酸化物焼結体としてのW型フェライト磁石は所定の形状に加工され、以下に示すような幅広い用途に使用される。例えば、フュエールポンプ用、パワーウインド用、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)用、ファン用、ワイパ用、パワーステアリング用、アクティブサスペンション用、スタータ用、ドアロック用、電動ミラー用等の自動車用モータとして用いることができる。また、FDDスピンドル用、VTRキャプスタン用、VTR回転ヘッド用、VTRリール用、VTRローディング用、VTRカメラキャプスタン用、VTRカメラ回転ヘッド用、VTRカメラズーム用、VTRカメラフォーカス用、ラジカセ等キャプスタン用、CD,LD,MDスピンドル用、CD,LD,MDローディング用、CD,LD光ピックアップ用等のOA、AV機器用モータとして用いることができる。また、エアコンコンプレッサー用、冷蔵庫コンプレッサー用、電動工具駆動用、扇風機用、電子レンジファン用、電子レンジプレート回転用、ミキサ駆動用、ドライヤーファン用、シェーバー駆動用、電動歯ブラシ用等の家電機器用モータとしても用いることができる。さらにまた、ロボット軸、関節駆動用、ロボット主駆動用、工作機器テーブル駆動用、工作機器ベルト駆動用等のFA機器用モータとして用いることも可能である。その他の用途としては、オートバイ用発電器、スピーカ・ヘッドホン用マグネット、マグネトロン管、MRI用磁場発生装置、CD−ROM用クランパ、ディストリビュータ用センサ、ABS用センサ、燃料・オイルレベルセンサ、マグネットラッチ、アイソレータ等に好適に使用される。
次に、酸化物焼結体としてFe2W型フェライト磁石を得る場合の望ましい製造方法を示す。
本発明のFe2W型フェライト磁石の製造方法は、図1に示すように配合工程(ステップS100)、仮焼工程(ステップS110)、粗粉砕工程(ステップS120)、第1の微粉砕工程(ステップS130)、粉末熱処理工程(ステップS140)、第2の微粉砕工程(ステップS150)、磁場成形工程(ステップS160)、成形体熱処理工程(ステップS170)、焼成工程(ステップS180)を含む。Fe2+は大気中ではFe3+になりやすいため、本発明のFe2W型フェライト磁石の製造方法では、還元剤として働くカーボン粉末を少なくとも磁場成形工程(ステップS160)の前に添加するとともに、カーボン粉末の偏析を抑制するのに有効なポリカルボン酸系分散剤を少なくとも磁場成形工程前に添加する。また、Fe2+を安定制御するために熱処理温度、焼成雰囲気等を制御しており、焼成工程(ステップS180)は非酸化性雰囲気で行われるとともに、この工程においてカーボン粉末は還元剤として働く。
以下、各工程について説明する。
<配合工程(ステップS100)>
各原料を秤量後、湿式アトライタ等で1〜3時間程度混合、粉砕処理する。原料粉末としては酸化物、または焼結により酸化物となる化合物を用いることができる。なお、ここではSrCO3粉末及びFe23粉末を用いる例を説明するが、A元素は炭酸塩として添加する形態のほかに酸化物として添加することもできる。Feについても同様でFe23(ヘマタイト)以外の化合物として添加することもできる。さらに、A元素とFeを含む化合物を用いることも可能である。
<仮焼工程(ステップS110)>
配合工程(ステップS100)で得られた混合粉末材料を1100〜1350℃で仮焼する。この仮焼を窒素ガスやアルゴンガスなどの非酸化性雰囲気中で行うことにより、Fe23(ヘマタイト)粉末中のFe3+が還元されてW型フェライトを構成するFe2+が発生し、W型フェライトが構成される。但し、この段階でFe2+の量を十分に確保できなければ、W相の他にM相またはヘマタイト相が存在することになる。なお、W主相またはW単相のフェライトを得るためには、酸素分圧を調整することが有効である。酸素分圧を下げると、Fe3+が還元されてFe2+が生成するためである。
<粗粉砕工程(ステップS120)>
仮焼体は一般に顆粒状なので、これを解砕するために粗粉砕することが好ましい。粗粉砕工程(ステップS120)では、振動ミル等を用い、平均粒径が0.5〜10μmになるまで粉砕する。
<第1の微粉砕工程(ステップS130)>
第1の微粉砕工程(ステップS130)では粗粉をアトライタやボールミル、或いはジェットミルなどによって、湿式或いは乾式粉砕して平均粒径で0.08〜0.8μm、望ましくは0.1〜0.4μm、より望ましくは0.1〜0.2μmに粉砕する。この第1の微粉砕工程は、粗粉をなくすこと、さらには磁気特性向上のために焼結後の組織を微細にすることを目的として行うものである。
粉砕方法にもよるが、粗粉砕粉末をボールミルで湿式粉砕する場合には、粗粉砕粉末200gあたり60〜100時間処理すればよい。
なお、保磁力の向上や結晶粒径の調整のために、第1の微粉砕工程に先立ってCaCO3、SiO2、SrCO3、BaCO3、Ga23、Al23、Cr23等の粉末を添加してもよい。
<粉末熱処理工程(ステップS140)>
粉末熱処理工程(ステップS140)では、第1の微粉砕で得られた微粉を600〜1200℃、より望ましくは700〜1000℃で、1秒〜10時間保持する熱処理を行う。
第1の微粉砕を経ることにより0.1μm未満の粉末である超微粉が不可避的に生じてしまう。超微粉が存在すると後続の磁場中成形工程で不具合が生じることがある。例えば、湿式成形時に超微粉が多いと水抜けが悪く成形できない等の不具合が生じる。そこで、本実施の形態では磁場中成形工程に先立ち熱処理を行う。つまり、この熱処理は、第1の微粉砕で生じた0.1μm未満の超微粉をそれ以上の粒径の微粉(例えば0.1〜0.2μmの微粉)と反応させることにより、超微粉の量を減少させることを目的として行うものである。この熱処理により超微粉が減少し、成形性を向上させることができる。
このときの熱処理雰囲気は、仮焼きで生成したFe2+が酸化によりFe3+となることを避けるために、非酸化性雰囲気とする。本発明における非酸化性雰囲気とは、窒素ガス、Arガス等の不活性ガス雰囲気を含む。また本発明の非酸化性雰囲気は、10vol%以下の酸素の含有を許容する。この程度の酸素の含有であれば、上記温度での保持においてFe2+の酸化は無視できる程度である。
熱処理雰囲気の酸素含有量は、1vol%以下、さらには0.1vol%以下であることが望ましい。
<第2の微粉砕工程(ステップS150)>
続く第2の微粉砕工程(ステップS150)では熱処理された微粉砕粉末をアトライタやボールミル、或いはジェットミルなどによって、湿式或いは乾式粉砕して0.8μm以下、望ましくは0.1〜0.4μm、より望ましくは0.1〜0.2μmに粉砕する。この第2の微粉砕工程は、粒度調整やネッキングの除去、添加物の分散性向上を目的として行うものである。
粉砕方法にもよるが、ボールミルで湿式粉砕する場合には、微粉砕粉末200gあたり10〜40時間処理すればよい。第2の微粉砕工程を第1の微粉砕工程と同程度の条件で行うと超微粉が再度生成されることになることと、第1の微粉砕工程ですでに所望する粒径がほとんど得られていることから、第2の微粉砕工程は、通常、第1の微粉砕工程よりも粉砕条件が軽減されたものとする。ここで、粉砕条件が軽減されているか否かは、粉砕時間に限らず、粉砕時に投入される機械的なエネルギを基準にして判断すればよい。
なお、保磁力の向上や結晶粒径の調整のために、第2の微粉砕工程に先立ってCaCO3、SiO2、SrCO3、BaCO3、Ga23、Al23、Cr23等の粉末を添加してもよい。
焼成工程において還元効果を発揮するカーボン粉末を、この第2の微粉砕工程に先立って添加することができる。カーボン粉末の添加は、W型フェライトを単相に近い状態(又は単相)で生成させる上で有効である。ここで、カーボン粉末の添加量(以下、「カーボン量」という)は原料粉末に対して0.15〜0.45wt%とする。カーボン量をこの範囲とすることで、後述する焼成工程(ステップS180)におけるカーボン粉末の還元剤としての効果を十分に期待することができるとともに、カーボン粉末添加なしの場合よりも高い飽和磁化(σs)を得ることができる。本発明をFe2W型フェライト磁石に適用する場合のさらに望ましいカーボン量は0.2〜0.45wt%、より望ましいカーボン量は0.3〜0.4wt%である。なお、本発明を磁石以外の酸化物焼結体に適用する場合には、飽和磁化(σs)を考慮する必要がないため、カーボン量は0.05〜1.0wt%程度とすればよい。添加するカーボン粉末のサイズは0.01〜1.0μm程度とすればよい。
本発明では、カーボン粉末の偏析を抑制するために、ポリカルボン酸系分散剤を添加することを特徴とする。後述する実施例で示すように、ポリカルボン酸系分散剤を用いることで、焼結密度が高く、かつ優れた磁気特性を示す焼結磁石を得ることができる。
ここで、ポリカルボン酸はカルボキシル基−COOHをもつ化合物の重合体であるが、重量平均分子量が5000〜100000の範囲にあるもの、特に重量平均分子量が10000〜80000の範囲にあるものが本発明におけるポリカルボン酸として好適である。
分散剤の添加量は、原料粉末に対して0.05〜2.5wt%とすることが望ましい。分散剤の添加量が0.05wt%未満ではカーボン粉末の偏析抑制効果が不十分となる。また本発明で使用する分散剤は、原料粉末を構成する粒子の配向度を向上させるという機能も有するが、その添加量が0.05wt%未満では原料粉末を構成する粒子の配向度の向上も不十分となる。
一方、分散剤の添加量が2.5wt%を超えると、成形体や焼結体にクラックが発生しやすくなる。よって、分散剤の添加量は、原料粉末に対して0.05〜2.5wt%とすることが望ましい。さらに望ましい分散剤の添加量は0.1〜2.0wt%、より望ましくは0.4〜1.5wt%である。
また本発明におけるポリカルボン酸系分散剤には、ポリカルボン酸の中和塩を主体とする分散剤も含む。中和塩の種類は特に限定されず、アンモニウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩等を用いることができる。なかでも、アンモニウム塩またはカルシウム塩が好ましい。
分散剤としてカルボキシル基を含む有機化合物を用いた場合には、成形用スラリを調製する際もしくは湿式磁場成形時にSiO2及びCaCO3の一部が流出してしまうことがある。ところが、分散剤としてポリカルボン酸カルシウム塩を用いることで、SiO2及びCaCO3の流出を抑制し、SiO2及びCaCO3が流出した際に起こる保磁力(HcJ)低下等の特性劣化を防止することができる。
なお、ポリカルボン酸系分散剤を構成する有機化合物の基本骨格は鎖式であっても環式であってもよく、また飽和結合であっても不飽和結合であってもよい。
本発明で用いる分散剤は粉砕、成形用スラリ調製などの際に構造が変化する可能性がある。また粉砕によるメカノケミカル反応で、分散剤の構造が変化する可能性もある。さらに例えば加水分解反応などにより、本発明で用いる分散剤と同一の有機化合物を生成するような化合物を添加することによっても本発明の目的を達成できる可能性もある。
分散剤としてポリカルボン酸系のものを選択し、その添加量を本発明が推奨する範囲内とすることで、カーボン粉末の偏析が抑制され、カーボンの凝集に起因する焼結密度の低下を抑制することができる。このため、本発明によれば、5.05g/cm3以上の焼結密度、4490G以上の残留磁束密度(Br)及び95%以上の磁気的配向度を示す焼結磁石を得ることも可能となる。
また後述する実施例で示すように、ポリカルボン酸系分散剤の添加は、保磁力(HcJ)、角型比(Hk/HcJ)等の磁気特性にも悪影響を及ぼすことがない。ポリカルボン酸系分散剤を添加することを特徴とする本発明によれば、3280Oe以上の保磁力(HcJ)、80%以上の角型比(Hk/HcJ)を備えた焼結磁石を得ることもできる。
後述する磁場成形工程(ステップS160)前であれば、分散剤を添加するタイミングは特に限定されるものではなく、例えば、以下のタイミングで添加することができる。
(1)仮焼工程(ステップS110)後かつ粗粉砕工程(ステップS120)前
(2)粗粉砕工程(ステップS120)時
(3)粗粉砕工程(ステップS120)後かつ第1の微粉砕工程(ステップS130)前
(4)第1の微粉砕工程(ステップS130)時
(5)第1の微粉砕工程(ステップS130)後かつ粉末熱処理工程(ステップS140)前
(6)粉末熱処理工程(ステップS140)後かつ第2の微粉砕工程(ステップS150)前
(7)第2の微粉砕工程(ステップS150)時
(8)第2の微粉砕工程(ステップS150)後かつ磁場成形工程(ステップS160)前
いずれの場合であっても、磁場成形工程(ステップS160)で用いられる成形用スラリ中に本発明における分散剤が存在することになるが、カーボン粉末の偏析抑制という効果を存分に発揮させるために、分散剤を添加した後には撹拌を行う。この撹拌は、必ずしも分散剤を添加した直後に行う必要はなく、遅くとも磁場成形工程(ステップS160)前に行えばよい。
また複数回に分けて分散剤を添加してもよい。例えば、一部は上記(4)のタイミングで添加するとともに、残部を上記(7)のタイミングで添加してもよい。分散剤を複数回に分けて添加する場合には、合計添加量が上述した望ましい範囲、つまり原料粉末に対して0.05〜2.5wt%となるように各回の添加量を設定すればよい。
添加した分散剤のほとんどは磁場成形工程(ステップS160)後に行われる成形体熱処理工程(ステップS170)で分解除去される。成形体熱処理工程(ステップS170)において分解除去されずに残存した分散剤についても、続く焼成工程(ステップS180)で分解除去される。
なお、第1の微粉砕工程(ステップS130)時にカーボン粉末を添加する場合について上述したが、カーボン粉末についても分散剤と同様に上記(1)〜(8)のいずれかの段階で添加すればよい。また、複数回に分けてカーボン粉末を添加してもよい。
本発明は後述する磁場成形工程(ステップS160)を乾式で行うことを排除するものではないが、磁気的配向度を高くするためには、湿式成形を行うことが好ましい。よって、以下では湿式成形用スラリの調製について説明した上で、続く磁場成形工程(ステップS160)の説明を行う。
<成形用スラリの調製>
続く磁場成形工程(ステップS160)に先立ち、成形用スラリを調製する。湿式粉砕後のスラリを遠心分離やフィルタープレス等によって濃縮することで成形用スラリ(組成物)を得ることができる。上記の工程で分散剤が添加されていない場合には、濃縮前又は濃縮後に成形用スラリに分散剤を添加し、撹拌することで成形用スラリを得てもよい。濃縮後の成形用スラリ中の30〜80wt%をフェライト磁石粉末が占めることが望ましい。
なお、濃縮前の成形用スラリ及び濃縮後の成形用スラリのいずれもであっても、本発明における組成物(成形用スラリ)に含まれる。また、分散媒として水を用いることができるが、トルエンやキシレン等の非水系の分散媒を用いてもよい。
なお、本発明において水溶液中で酸としての性質を示す分散剤を用いる場合、塩基性化合物を添加して成形用スラリ上澄みのpHを上昇させることが望ましい。これにより、磁気的配向度をより一層向上させることができる。塩基性化合物としては、アンモニアや水酸化ナトリウムが好ましい。アンモニアは、アンモニア水として添加すればよい。
<磁場成形工程(ステップS160)>
次いで、成形用スラリを用いて磁場成形を行う。成形圧力は0.1〜0.5ton/cm2 程度、印加磁場は5〜15kOe程度とすればよい。
<成形体熱処理工程(ステップS170)>
本工程では、成形体を100〜450℃、より好ましくは200〜350℃の低温で、1〜4時間保持する熱処理を行う。この熱処理を大気中で行うことにより、Fe2+の一部が酸化されてFe3+になる。つまり、本工程では、Fe2+からFe3+への反応をある程度進行させることにより、Fe2+量を所定量に制御するのである。また、本工程において分散媒が除去されるとともに、分散剤のほとんどが分解除去される。
<焼成工程(ステップS180)>
続く焼成工程(ステップS180)では、成形体を1100〜1270℃、より好ましくは1160〜1240℃の温度で0.5〜3時間、焼成する。焼成雰囲気は、仮焼工程(ステップS110)と同様の理由により、非酸化性雰囲気中とする。また、本工程において、カーボン粉末が消失する。
以上の工程を経ることで、本発明の酸化物焼結体としてのFe2W型フェライト磁石を得ることができる。本発明によれば、5.05g/cm3以上という高い焼結密度を有するとともに、95%以上の磁気的配向度、4470G以上、さらには4490G以上の残留磁束密度(Br)を示すFe2W型フェライト磁石を得ることができる。また、上述した組成及び図1に示した工程を経ることで、W相を主相とする焼結磁石、さらにはW相を単相とするFe2W型フェライト磁石を得ることができる。
本発明の焼結磁石によれば、W相を主相としつつ、3240Oe以上、さらには3280Oe以上の保磁力(HcJ)を得ることができる。それに加え、80%以上、さらには84%以上の角型比(Hk/HcJ)を得ることができる。
以下、本発明を具体的実施例に基づいて説明する。
実施例1では図1に示したフローチャートに基づき、Fe2W型フェライト磁石を作製した。
まず、原料粉末として、Fe23粉末(1次粒子径:0.3μm)、SrCO3粉末(1次粒子径:2μm)及びBaCO3粉末(1次粒子径:0.05μm)を準備した。この原料粉末を秤量した後、湿式アトライタで2時間混合、粉砕した。
次いで、仮焼を行った。仮焼は管状炉を用い、N2ガス雰囲気中で1時間保持する条件で行った。なお、加熱保持温度は、1300℃とし、加熱保持温度までの昇温及び加熱保持温度からの降温の速度は5℃/分とした。粉砕は、振動ミルにより粗粉砕及びボールミルによる微粉砕の2段階で行った。振動ミルにより粗粉砕は、仮焼体220gについて10分間処理し、ボールミルによる微粉砕は粗粉砕粉末210gに対して水400mlを添加して88時間処理するというものである。第1の微粉砕後に、微粉砕粉末をN2ガス雰囲気中、800℃で1時間保持する条件で粉末熱処理を行った。なお、加熱保持温度までの昇温及び加熱保持温度からの降温の速度は5℃/分とした。続いて、ボールミルを用いて25時間湿式粉砕するという第2の微粉砕を行い、湿式成形用スラリを得た。
なお、第2の微粉砕の段階で、粗粉砕粉末に対してSiO2粉末(1次粒子径:0.01μm)を0.6wt%、CaCO3粉末(1次粒子径:1μm)を0.7wt%それぞれ添加するとともに、SrCO3粉末を0.35wt%、BaCO3粉末(1次粒子径:0.05μm)を1.4wt%、カーボン粉末(1次粒子径:0.05μm)を0.4wt%添加した。そして、上述したポリカルボン酸系分散剤としてSNディスパーザント5468(サンノプコ社製 ポリカルボン酸アンモニウム塩)を添加した。なお、表1中のポリカルボン酸系分散剤添加量とはSNディスパーザント5468の量ではなく、SNディスパーザント5468中に含まれるポリカルボン酸系分散剤の量である。
次に、この湿式成形用スラリを遠心分離器で濃縮し、濃縮された湿式成形用スラリを用いて磁場中成形を行った。なお、印加した磁界(縦磁場)は12kOe(1000kA/m)であり、成形体は直径30mm、高さ15mmの円柱状である。この成形体を300℃で3時間大気中で熱処理した後、窒素中で昇温速度5℃/分、最高温度1190℃で1時間焼成し、5種類の焼結体(試料No.1〜5)を得た。得られた焼結体の組成は、上記組成式においてa=2.0及びb=16.0であった。なお、組成分析は理学電機(株)の蛍光X線定量分析装置SIMULTIX3550を用いて行った。
(比較例1)
カーボン粉末及びポリカルボン酸系分散剤のいずれも添加しなかった以外は、上記の試料No.1〜5と同様の条件で焼結体を作製した。
(比較例2)
ポリカルボン酸系分散剤を添加しなかった以外は、上記の試料No.1〜5と同様の条件で焼結体を作製した。
試料No.1〜5、比較例1、2の焼結体についてそれぞれ焼結密度を測定した。その結果を表1及び図2に示す。
比較例1(カーボン粉末添加なし)と比較例2(カーボン粉末0.4wt%添加)との比較により、カーボン粉末を添加することにより焼結密度が低下することがわかる。
ここで、比較例2とカーボン粉末の添加量が等しい試料No.1〜5の焼結密度に着目すると、試料No.1〜5については5.05g/cm3以上、さらには5.07g/cm3以上という良好な値を得ている。この結果から、ポリカルボン酸系分散剤は、カーボン粉末を添加した場合の焼結密度の低下を抑制する上で有効な分散剤であることがわかる。
Figure 2005336025
続いて、試料No.1〜5、比較例1、2の焼結体について保磁力(HcJ)、残留磁束密度(Br)、角型比(Hk/HcJ)及び磁気的配向度を測定した。その結果を表1に示す。また試料No.1〜5、比較例2における焼結密度と残留磁束密度(Br)との関係を図3に、残留磁束密度(Br)と保磁力(HcJ)との関係を図4にそれぞれ示す。
なお、保磁力(HcJ)及び残留磁束密度(Br)は、得られた焼結体の上下面を加工した後、最大印加磁場25kOeのBHトレーサを用いて評価した。また、Hkは、磁気ヒステリシスループの第2象限において磁束密度が残留磁束密度(Br)の90%になるときの外部磁界強度である。Hkが低いと、高い最大エネルギ積が得られない。Hk/HcJは、磁石性能の指標となるものであり、磁気ヒステリシスループの第2象限における角張りの度合い表す。
磁気的配向度はBHトレーサにより測定した。
図3及び表1から、ポリカルボン酸系分散剤を添加することにより、ポリカルボン酸系分散剤無添加の場合よりも焼結密度が増加し、残留磁束密度(Br)が向上することがわかる。
また表1に示すように、ポリカルボン酸系分散剤を添加した場合には、保磁力(HcJ)、角型比(Hk/HcJ)、磁気的配向度についても、ポリカルボン酸系分散剤無添加の場合よりも高い値を示した。
次に図4を見ると、ポリカルボン酸系分散剤を添加した本発明の試料No.1〜5は、そのプロットの位置が比較例2のものよりも右上に位置している。そして、所定量のポリカルボン酸系分散剤を添加した本発明の試料によれば、3240Oe以上の保磁力(HcJ)及び4470G以上の残留磁束密度(Br)を兼備することができる。特に、ポリカルボン酸系分散剤の添加量が1.0wt%である試料No.3によれば、比較例2よりも約100Oe高い保磁力及び約30G高い残留磁束密度(Br)を得ることができた。
以上の結果から、ポリカルボン酸系分散剤は各磁気特性を劣化させることなく、カーボン添加に起因する焼結密度の低下を抑制することができる有効な添加物であることが確認できた。
続いて、上記した比較例2及び試料No.3の焼結体を光学顕微鏡で観察した。ポリカルボン酸系分散剤無添加の比較例2の顕微鏡写真を図5(a)に、ポリカルボン酸系分散剤を添加した試料No.3の顕微鏡写真を図5(b)にそれぞれ示す。
図5(a)に示すように、ポリカルボン酸系分散剤無添加の場合には、顕微鏡写真中に多くの黒点が観察される。この黒点は焼結時にカーボン粉末が消失した後にできたピンホールである。カーボン粉末が偏析したまま消失するとピンホールができ、顕微鏡写真において黒点が顕著に観察される。
一方、図5(b)に示すように、ポリカルボン酸系分散剤を添加した場合には、比較例2と同様にカーボン量が0.4wt%であっても、ほとんど黒点が観察されない。ポリカルボン酸系分散剤を添加した場合にはカーボン粉末の偏析が抑制されているためにカーボン粉末が消失する際にもピンホールができにくく、そのためにカーボン量が0.4wt%と比較的多くてもほとんど黒点が存在しないものと考えられる。
以上の顕微鏡写真の観察結果は、先に示した表1中「焼結密度」の結果と対応している。
続いて、試料No.1〜5について、X線回折装置を用いて相状態を同定した。X線回折の結果、いずれもW相のモル比が70%以上であることが確認された。なお、X線回折の条件は以下の通りである。
X線発生装置:3kW、管電圧:30kV、管電流:35mA
サンプリング幅:0.02deg、走査速度:4.00deg/min
発散スリット:1.00deg、散乱スリット:1.00deg
受光スリット:0.30mm
酸化物焼結体としてFe2W型フェライト磁石を得る場合の他の製造工程を示すフローチャートである。 試料No.1〜5および比較例2の焼結密度を示すグラフである。 試料No.1〜5および比較例2における焼結密度と残留磁束密度(Br)との関係を示すグラフである。 試料No.1〜5および比較例2における残留磁束密度(Br)と保磁力(HcJ)との関係を示すグラフである。 (a)はポリカルボン酸系分散剤無添加の比較例2の光学顕微鏡写真、(b)はポリカルボン酸系分散剤を添加した試料No.3の光学顕微鏡写真である。 カーボン粉末の添加量増加に伴う焼結密度の変化を説明するための図である。

Claims (12)

  1. 原料粉末と、カーボン粉末と、ポリカルボン酸系分散剤とを含む混合物を成形する成形工程と、
    得られた成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程と、
    を備えたことを特徴とする酸化物焼結体の製造方法。
  2. 前記混合物は撹拌されて得られることを特徴とする請求項1に記載の酸化物焼結体の製造方法。
  3. 前記酸化物焼結体は磁性フェライト相を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化物焼結体の製造方法。
  4. 前記酸化物焼結体は組成式:AFe2+ aFe3+ b27(前記組成式において、AはSr、Ba及びPbから選択される少なくとも1種の元素、1.1≦a≦2.4、12.3≦b≦16.1である)で表される組成を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物焼結体の製造方法。
  5. 前記焼結工程において前記成形体は非酸化性雰囲気で焼結されることを特徴とする請求項4に記載の酸化物焼結体の製造方法。
  6. 前記酸化物焼結体は六方晶W型フェライトが主相をなすことを特徴とする請求項4又は5に記載の酸化物焼結体の製造方法。
  7. 前記ポリカルボン酸系分散剤はポリカルボン酸アンモニウム塩であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の酸化物焼結体の製造方法。
  8. 前記ポリカルボン酸系分散剤はポリカルボン酸カルシウム塩であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の酸化物焼結体の製造方法。
  9. 前記ポリカルボン酸系分散剤の添加量は前記原料粉末に対して0.05〜2.5wt%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の酸化物焼結体の製造方法。
  10. 焼結に供される組成物であって、
    前記組成物中にカーボン粉末が分散しているとともに、
    ポリカルボン酸系分散剤が含有されていることを特徴とする組成物。
  11. 前記組成物は成形用スラリであることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
  12. 前記組成物は成形体であることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
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CN105601288A (zh) * 2015-12-08 2016-05-25 山东恒瑞磁电科技有限公司 一种铁氧体粉料烧结工艺

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