JP2005325403A - アルミニウムダイキャスト材の表面処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
アルミニウムダイキャスト材に、優れた耐食性、塗装密着性を付与することができるアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法、及び、それにより得られるアルミニウムダイキャスト材を提供する。
【解決手段】
ジルコニウム含有化合物及びフッ素含有化合物を含む化成処理剤による化成処理反応によってアルミニウムダイキャスト材の表面に化成皮膜を形成させる工程からなるアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法であって、上記化成処理反応は、カソード電解処理によって行うアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法。
【選択図】 なし
アルミニウムダイキャスト材に、優れた耐食性、塗装密着性を付与することができるアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法、及び、それにより得られるアルミニウムダイキャスト材を提供する。
【解決手段】
ジルコニウム含有化合物及びフッ素含有化合物を含む化成処理剤による化成処理反応によってアルミニウムダイキャスト材の表面に化成皮膜を形成させる工程からなるアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法であって、上記化成処理反応は、カソード電解処理によって行うアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、アルミニウムダイキャスト材の表面処理方法、及び、アルミニウムダイキャスト材に関する。
アルミニウムダイキャスト材は、軽量で、優れた鋳造性を有し、寸法精度及び生産性が良いことから、近年、自動車部品、船外機用部品、一般工業用部品の材料として広く適用が進められている。このようなアルミニウムダイキャスト材には、通常、耐食性、塗膜密着性等の性能を付与する目的で、陽極酸化処理、クロメート処理、ノンクロム化成処理等の表面処理が施されている。
しかし、クロメート処理では、使用規制されている猛毒の6価クロムイオンを含有し、また、このようなアルミニウムダイキャスト材は、素材中において、アルミニウム以外の銅、ケイ素等の成分含有率が比較的高いため、偏析が起こり易く、表面に自然酸化皮膜やシリコン等の偏析物が存在するアルミニウムダイキャスト材に表面処理を施した場合、陽極酸化皮膜や化成皮膜が形成されにくく、優れた耐食性、塗膜密着性等の性能を付与することが困難となる場合がある。このため、アルミニウムダイキャスト材に、優れた耐食性、塗膜密着性等の性能を安定して付与することができる表面処理方法の開発が望まれている。
金属表面処理方法として、特許文献1、2には、リン酸塩化合物やチタン系の処理剤を使用した電解反応による表面処理方法が開示されている。しかし、これらの技術は、ジルコニウム処理剤を使用する表面処理方法ではない。
特許文献3には、(A)Ti、Zr、Hf及びSiの少なくとも1種を含む化合物、(B)HFの供給源としてのフッ素含有化合物を含有し、成分(A)の化合物中のTi、Zr、Hf及びSiの金属元素の合計モル重量Aと、成分(B)のフッ素含有化合物中の全フッ素原子をHFに換算したときのモル重量Bとの比K=A/Bが0.06≦K≦0.18の範囲内の表面処理用組成物と金属表面を接触させる金属の表面処理方法が開示されている。
しかし、ここで開示されている表面処理方法によって化成処理を行った場合、溶液中に多量で過剰なフッ素及びアルカリ金属が存在するため、被処理素材に対して電解電圧を印加しても、カソード保護効果が得られにくく、比較的多量のフッ化物が含まれる化成皮膜が形成されるため、充分な耐食性を付与することができない。また、ここでは、アルミニウムダイキャスト材に好適に適用することができる表面処理方法として充分に検討がされているものではない。
従って、アルミニウムダイキャスト材に充分な耐食性及び塗膜密着性等の性能を付与することができる表面処理方法は未だ開発されていないのが現状であり、優れた耐食性及び塗膜密着性等の性能を有する防錆皮膜を形成することができる表面処理方法の開発が望まれていた。
本発明は、上記現状に鑑み、アルミニウムダイキャスト材に、優れた耐食性、塗装密着性を付与することができるアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法、及び、それにより得られるアルミニウムダイキャスト材を提供することを目的とするものである。
本発明は、ジルコニウム含有化合物及びフッ素含有化合物を含む化成処理剤による化成処理反応によってアルミニウムダイキャスト材の表面に化成皮膜を形成させる工程からなるアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法であって、上記化成処理反応は、カソード電解処理によって行うことを特徴とするアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法である。
上記カソード電解処理は、上記化成処理剤中のジルコニウム含有化合物の濃度がジルコニウム金属換算で100〜10000ppm、全ジルコニウム金属としての質量と全フッ素の質量との比(ジルコニウム量/フッ素量)が0.2〜1.0、pHが1〜6に調整されて行われるものであることが好ましい。
上記化成処理剤は、更に、リン酸イオンを含有するものであり、上記カソード電解処理は、上記リン酸イオンの濃度が五酸化二リン換算で10〜1000ppmに調整されて行われるものであることが好ましい。
上記化成皮膜を形成させる工程を行った後、有機皮膜を形成させる工程を行うものであることが好ましい。
本発明はまた、上記アルミニウムダイキャスト材の表面処理方法によって得られた化成処理皮膜を有することを特徴とするアルミニウムダイキャスト材でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法は、ジルコニウム含有化合物及びフッ素含有化合物を含む化成処理剤によってアルミニウムダイキャスト材の表面をカソード電解処理することによって化成皮膜を形成するものである。電解処理によって反応させると、無電解処理による化成処理皮膜に比べて緻密で均一性に優れた皮膜となるものである。このため、上記アルミニウムダイキャスト材の表面処理方法により得られたアルミニウムダイキャスト材は、優れた耐食性、塗装密着性等の性能を有するものである。
ジルコニウム含有化合物及びフッ素含有化合物を含む化成処理剤によって電解反応を行うと、極めて優れた耐食性を有する防食性の化成皮膜が得られ、チタン系やリン酸塩系の化成処理剤の電解反応によって得られる化成皮膜よりも優れた耐食性が得られる。このため、広範な範囲での使用が期待され、好ましいものである。
ジルコニウム含有化合物及びフッ素含有化合物を含む化成処理剤を使用し、無電解処理によってアルミニウムダイキャスト材に化成皮膜を形成しようとする場合には、先ず下記反応式(1)、(2)に示すような素材のエッチングが起こり、続いて、主に下記反応式(3)〜(5)に示すようなフルオロジルコニウムの加水分解が起こることによってジルコニウム系化成皮膜が形成される。
つまり、無電解処理によって皮膜を形成する場合には、上記反応式(1)〜(5)が起こることによって化成皮膜が形成されるため、フッ素を比較的多く含むジルコニウム系化成皮膜が形成されることになり、耐食性に劣る皮膜が形成されてしまう。これに対し、ジルコニウム含有化合物及びフッ素含有化合物を含む化成処理剤をカソード電解処理する場合には、アルミニウムダイキャスト材の表面では主に水素発生反応が起こり、素材金属はカソード防食されるため、エッチングされず、被処理金属のフッ化物の発生はない。従って、アルミニウムダイキャスト材の表面近傍ではジルコニウム錯イオンの加水分解により、比較的安定な酸化ジルコニウムを含む皮膜の析出が起き、フッ素含有率の少ない緻密で安定な保護皮膜が形成される。
また、アルミニウムダイキャスト材を表面処理する場合、通常、平衡浴組成ではアルミニウムイオンが蓄積される。この場合、無電解処理では、500ppm以上アルミニウムが蓄積すると、化成反応性を阻害するため、給水・廃棄等の処置が必要とされる。一方、カソード電解処理ではアルミニウムイオンエッチング量が比較的少ない状態で、皮膜化し(皮膜変換効率が良い)、また、蓄積したアルミニウムイオンに対して影響が少ないため、無駄な給水・廃棄が不要となる。
本発明のアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法は、ジルコニウム含有化合物及びフッ素含有化合物を含む化成処理剤による化成処理反応によってアルミニウムダイキャスト材の表面に化成皮膜を形成させる工程からなり、上記化成処理反応は、カソード電解処理によって行うものである。これにより、優れた耐食性、塗装密着性等の性能を付与することができる。
上記ジルコニウム含有化合物としては、ジルコニウムを含有する化合物であれば特に限定されず、例えば、フルオロジルコニウム酸又はそのリチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム塩、フッ化ジルコニウム、酸化ジルコニウム等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記フッ素含有化合物としては、フッ素を含有する化合物であれば特に限定されず、上記フッ化ジルコニウム等の他に、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化水素酸アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素酸ナトリウム等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法において、上記カソード電解処理は、化成処理剤中のジルコニウム含有化合物の濃度がジルコニウム金属換算で下限100ppm、上限10000ppm、全ジルコニウム金属としての質量と全フッ素の質量との比(ジルコニウム量/フッ素量)が下限0.2、上限1.0、pHが下限1、上限6となるように調整されて行われるものであることが好ましい。このように調整してカソード電解処理を行うことによって、フッ素含有量の比較的少ない化成皮膜を形成することができるため、耐食性をより向上させることができる。
上記カソード電解処理において、上記ジルコニウム含有化合物の濃度及び上記ジルコニウム量/フッ素量を上記規定範囲に調整する方法としては、例えば、化成処理剤中の全ジルコニウム濃度は原子吸光分析装置を、全フッ素濃度はイオンクロマトグラフを使用して測定しながら、上記ジルコニウム含有化合物、上記フッ素含有化合物を処理浴中に補給することによって調整することができる。また、上記pHを上記規定範囲に調整する方法としては、例えば、pHメーターを使用して測定しながら、硝酸又は水酸化アンモニウムを処理浴中に補給することによって調整することができる。
本発明におけるカソード電解処理において、処理浴中の化成処理剤は、上記ジルコニウム含有化合物の濃度が、ジルコニウム金属換算で、下限100ppm、上限10000ppmの範囲内に調整されることが好ましい。100ppm未満であると、耐食性、塗膜密着性等の性能が低下するおそれがある。また、10000ppmを超えて配合すると、それ以上の効果は望めず不経済である。上記下限は、500ppmであることがより好ましく、上記上限は、5000ppmであることがより好ましい。
本発明におけるカソード電解処理において、処理浴中の上記化成処理剤は、全ジルコニウム金属としての質量(化成処理剤中に含まれるジルコニウム金属としての全ジルコニウムの合計質量)と全フッ素の質量(化成処理剤中に含まれる全フッ素の合計質量)との比(ジルコニウム量/フッ素量)が、下限0.2、上限1.0に調整されることが好ましい。0.2未満であると、フッ素量が過剰になり、カソード電解処理による化成皮膜の形成が妨げられるおそれがある。また、比較的フッ素量が多い化成皮膜が形成されるため、耐食性、塗膜密着性が低下するおそれがある。1.0を超えると、全フッ素量が不充分になり、金属塩の沈殿が発生するおそれがある。上記下限は、0.25であることがより好ましく、上記上限は、0.8であることがより好ましい。
本発明におけるカソード電解処理において、処理浴中の上記化成処理剤は、pHが下限1、上限6の範囲内に調整されることが好ましい。pHが1未満であると、耐食性、塗膜密着性等の性能の向上が見られないおそれがある。pHが6を超えると、充分な皮膜量が得られないため好ましくない。上記下限は、2であることが好ましく、上記上限は、5であることがより好ましい。
上記アルミニウムダイキャスト材の表面処理方法で使用される化成処理剤は、上記ジルコニウム含有化合物及び上記フッ素含有化合物以外に、更に、リン酸イオンを含有するものであることが好ましい。これにより、耐食性、塗膜密着性等の性能をより向上させることができる。
上記アルミニウムダイキャスト材の表面処理方法で使用される化成処理剤において、リン酸イオンの供給源としては特に限定されず、例えば、リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸ナトリウムやリン酸カリウム等のリン酸アルカリ金属塩、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等のリン酸アルカリ土類金属塩、縮合リン酸等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記アルミニウムダイキャスト材の表面処理方法で使用される化成処理剤がリン酸イオンを含有するものである場合、上記カソード電解処理は、上記リン酸イオンの濃度が五酸化二リン換算で下限10ppm、上限1000ppmに調整されて行われるものであることが好ましい。10ppm未満であると、耐食性、塗膜密着性等の性能の向上がみられないおそれがある。1000ppmを超えても、これらの性能の向上はみられないおそれがある。上記下限は、50ppmであることがより好ましく、上記上限は、700ppmであることがより好ましい。
上記アルミニウムダイキャスト材の表面処理方法において、上記化成処理剤を使用して電解処理によって化成皮膜を形成するに際し、特に、上記化成処理剤がジルコニウム含有化合物とフッ素含有化合物とリン酸イオンとを含むものである場合には、これらを含むことの相乗効果として、耐食性、塗膜密着性等の性能を著しく向上させることができる。
上記アルミニウムダイキャスト材の表面処理方法で使用される化成処理剤は、上記成分の他に、チタン、マンガン、ケイ素、亜鉛、鉄、モリブデン、3価クロム等の金属イオン;タンニン酸、イミダゾール類、トリアジン類、グアニン類、ヒドラジン類、ビグアニド、フェノール樹脂、シランカップリング剤、コロイダルシリカ、アミン類、リン酸等の他の防錆剤;界面活性剤;キレート剤;樹脂等を含有するものであってもよい。
本発明のアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法において、上記カソード電解処理は、陰極として被処理物を使用することによって電解処理するものである。
上記アルミニウムダイキャスト材の表面処理方法において、上記カソード電解処理は、電圧が、下限0.1V、上限40Vであることが好ましい。0.1V未満であると、充分な保護化成皮膜が得られず、耐食性、塗膜密着性等の性能の向上が見られないおそれがある。40Vを超えると、皮膜量の増加が飽和し、エネルギー的に不利となり、また、やけが起こる等の不具合が発生するおそれがある。上記下限は、1Vであることがより好ましく、上記上限は、30Vであることがより好ましい。
上記アルミニウムダイキャスト材の表面処理方法において、上記カソード電解処理は、電流が、下限0.01A/dm2、上限100A/dm2であることが好ましい。0.01A/dm2未満であると、充分な保護化成皮膜が得られず、耐食性、塗膜密着性等の性能の向上が見られないおそれがある。100A/dm2を超えると、皮膜量の増大効果が飽和し、エネルギー的に不利となり、また、やけが起こる等の不具合が発生するおそれがある。上記下限は、0.1A/dm2であることがより好ましく、上記上限は、80A/dm2であることがより好ましい。
上記アルミニウムダイキャスト材の表面処理方法において、上記カソード電解処理の処理時間は、下限0.5秒間、上限60秒間であることが好ましい。0.5秒間未満であると、充分な保護化成皮膜が得られず、耐食性、塗膜密着性等の性能の向上が見られないおそれがある。60秒間を超えると、皮膜量の増大効果が飽和し、エネルギー的に不利となるおそれがある。
上記アルミニウムダイキャスト材の表面処理方法において、上記カソード電解処理の処理温度は、下限20℃、上限80℃であることが好ましい。20℃未満であると、充分な保護化成皮膜が得られず、耐食性、塗膜密着性等の性能の向上が見られないおそれがある。80℃を超えると、皮膜量の増大効果が飽和し、エネルギー的に不利となるおそれがある。なお、処理温度の下限は、特に制御せず、常温で処理することができる。
上記アルミニウムダイキャスト材の表面処理方法におけるカソード電解処理において、対極として使用する電極は、上記化成処理剤に溶解しない電極であれば特に限定されず、例えば、ステンレス、ニッケル、白金めっきチタン、白金めっきニオブ、酸化物電極、カーボン等を挙げることができる。
本発明のアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法は、上述した化成皮膜を形成させる工程を行った後、有機皮膜を形成させる工程を行うものであってもよい。上記有機皮膜を形成させる工程を行う場合には、耐食性、塗膜密着性等の性能をより向上させることができる。
上記アルミニウムダイキャスト材の表面処理方法において、上記有機皮膜を形成させる工程で使用される処理剤としては特に限定されず、例えば、水性樹脂等を挙げることができる。上記水性樹脂は、水溶性樹脂又は水分散性樹脂を意味する。上記水性樹脂としては特に限定されず、例えば、水性アクリル樹脂、水性ウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性エポキシ樹脂、水性フェノール樹脂、水性オレフィン樹脂、水性アイオノマー樹脂等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法を適用する金属被処理物は、アルミニウムダイキャスト材である。アルミニウムダイキャスト材に対して適用することにより、優れた耐食性、塗膜密着性等の性能を付与することができる。上記アルミニウムダイキャスト材としては特に限定されず、従来公知のものを適用することができるが、例えば、表1に示した組成のアルミニウムダイキャスト材を挙げることができる。
上記アルミニウムダイキャスト材の表面は、上記化成処理剤によってカソード電解処理する前に脱脂処理、脱脂後水洗処理、酸洗処理、酸洗後水洗処理等を行うことができる。
上記脱脂処理は、基材表面に付着している油分や汚れを除去するために行われるものであり、無リン・無窒素脱脂洗浄液等の脱脂剤により、通常30〜55℃において数分間程度の浸漬処理がなされる。所望により、脱脂処理の前に、予備脱脂処理を行うことも可能である。
上記脱脂後水洗処理は、脱脂処理後の脱脂剤を水洗するために、充分な水洗水によって1回又はそれ以上スプレー処理を行うことにより行われるものである。
上記酸洗処理として、例えば酸化剤を含んだフッ酸、塩酸、硫酸、硝酸又はこれらの混合酸溶液等の酸洗剤により、通常30〜60℃において数分間程度の浸漬処理がされる。上記酸化剤としては、例えば、硝酸、亜硝酸、塩素酸、過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、硫酸鉄等を挙げることができる。上記酸洗後水洗処理は、従来公知の方法により行うことができる。また、カソード電解処理後に、水洗処理を行ってもよい。
本発明は、上記アルミニウムダイキャスト材の表面処理方法によって得られた化成処理皮膜を有するアルミニウムダイキャスト材でもある。本発明のアルミニウムダイキャスト材は、更にカチオン電着塗装、粉体塗装、熱硬化性樹脂等の耐食プライマー塗装を上記化成皮膜上に形成した際に、耐食性、塗装密着性に優れるものである。本発明のアルミニウムダイキャスト材に対して行うことができる塗装としては特に限定されず、カチオン電着塗装、粉体塗装、ロールコーティング等を挙げることができる。上記カチオン電着塗装としては特に限定されず、アミノ化エポキシ樹脂、アミノ化アクリル樹脂、スルホニウム化エポキシ樹脂等からなる従来公知のカチオン電着塗料を塗布することができる。
本発明のアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法は、ジルコニウム含有化合物及びフッ素含有化合物を含む化成処理剤をカソード電解処理することによって化成皮膜を形成する工程からなる方法であるため、アルミニウムダイキャスト材に、優れた耐食性、塗膜密着性等の性能を付与することができる。特に、化成浴中の化成処理剤を、ジルコニウム含有化合物の濃度がジルコニウム金属換算で100〜10000ppm、全ジルコニウム金属としての質量と全フッ素の質量との比(ジルコニウム量/フッ素量)が0.2〜1.0、pHが1〜6となるように調整されてカソード電解処理を行う場合には、より耐食性、塗膜密着性等の性能を向上させることができる。また、化成処理剤として、ジルコニウム含有化合物とフッ素含有化合物とリン酸イオンを含有するものを使用する場合にも、これらによって発揮される相乗効果によって、耐食性、塗膜密着性等の性能をより向上させることができる。更に、6価クロム等の金属を使用するものでないため、環境面で好ましい方法でもある。
本発明のアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法は、上述した構成よりなるものであるため、アルミニウムダイキャスト材に、優れた耐食性、塗膜密着性等の性能を付与することができる。従って、上記アルミニウムダイキャスト材の表面処理方法により得られるアルミニウムダイキャスト材は、自動車用部品、船外機用部品等の材料として好適に使用することができる。
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」、「%」は特に断りのない限り「質量部」、「質量%」を意味する。
実施例1〜8、比較例1〜2
〔化成処理剤の調製〕
ジルコニウム含有化合物、フッ素含有化合物として、ジルコンフッ酸、ジルコンフッ化アンモニウム、リン酸、水溶性フェノールを配合し、イオン交換水を加えて、表2に示すような化成処理剤を調製した。
〔化成処理剤の調製〕
ジルコニウム含有化合物、フッ素含有化合物として、ジルコンフッ酸、ジルコンフッ化アンモニウム、リン酸、水溶性フェノールを配合し、イオン交換水を加えて、表2に示すような化成処理剤を調製した。
〔試験板の作成〕
70mm×150mm×2mmのADC−12(日本テストパネル製)をアルカリ脱脂剤(サーフクリーナー322N8、日本ペイント製)3%水溶液を用いて、70℃で30秒間浸漬処理して脱脂した。水道水で30秒間スプレー処理を行って水洗した後、酸洗処理剤(NPコンディションナー2000、日本ペイント製)25%水溶液を用いて、70℃で30秒間浸漬処理して酸洗した。水道水で30秒スプレー処理を行って水洗した後、調製した化成処理剤を表1に示した条件で、対極にSUS304を使用し、カソード電解処理し、試験板を作成した。
70mm×150mm×2mmのADC−12(日本テストパネル製)をアルカリ脱脂剤(サーフクリーナー322N8、日本ペイント製)3%水溶液を用いて、70℃で30秒間浸漬処理して脱脂した。水道水で30秒間スプレー処理を行って水洗した後、酸洗処理剤(NPコンディションナー2000、日本ペイント製)25%水溶液を用いて、70℃で30秒間浸漬処理して酸洗した。水道水で30秒スプレー処理を行って水洗した後、調製した化成処理剤を表1に示した条件で、対極にSUS304を使用し、カソード電解処理し、試験板を作成した。
なお、比較例1は、「アルサーフ501」(日本ペイント社製リン酸ジルコニウム処理剤)の2%水溶液を用いて、表2に示した条件で浸漬処理し、試験板を作成した。比較例2は、「アルサーフC5N−2」(日本ペイント社製リン酸クロメート処理剤)の2%水溶液を用いて、表2に示した条件で浸漬処理し、試験板を作成した。
皮膜中のジルコニウム量(mg/m2)及び皮膜中のF/Zr質量比は、「XRF1700」(島津製作所製蛍光X線分析装置)を用いて分析した。
なお、カソード電解処理において、以下のようにして、処理浴中の化成処理剤のジルコニウム金属としての濃度、ジルコニウム/フッ素の質量比、pHが表2に示したような値となるように調整した。
処理浴中の化成処理剤における全ジルコニウム濃度は理学製原子吸光分析装置NOVAA330を、全フッ素濃度は日本ダイオネクス株式会社製イオンクロマトグラフDX−120を使用して測定しながら、フッ化ジルコニウムアンモニウム、フッ酸を処理浴中に補給することによって調整した。また、処理浴中の化成処理剤のpHは堀場製作所製pHメーターD−24を使用して測定しながら、硝酸又は水酸化アンモニウムを処理浴中に補給することによって調整した。
処理浴中の化成処理剤における全ジルコニウム濃度は理学製原子吸光分析装置NOVAA330を、全フッ素濃度は日本ダイオネクス株式会社製イオンクロマトグラフDX−120を使用して測定しながら、フッ化ジルコニウムアンモニウム、フッ酸を処理浴中に補給することによって調整した。また、処理浴中の化成処理剤のpHは堀場製作所製pHメーターD−24を使用して測定しながら、硝酸又は水酸化アンモニウムを処理浴中に補給することによって調整した。
実施例9
実施例8で得られた電解化成処理済みの金属板に、有機系皮膜処理剤(アミン変性エポキシ樹脂エマルジョン、固形分2%水溶液)を用いて、室温で30秒間浸漬処理し、160℃で5分間乾燥して有機皮膜を形成し、試験板を作成した。
実施例8で得られた電解化成処理済みの金属板に、有機系皮膜処理剤(アミン変性エポキシ樹脂エマルジョン、固形分2%水溶液)を用いて、室温で30秒間浸漬処理し、160℃で5分間乾燥して有機皮膜を形成し、試験板を作成した。
実施例10
有機系皮膜処理剤(アミン変性エポキシ樹脂エマルジョン)の代わりに、「ラグリード」(固形分2%水溶液、日本ペイント社製)を用いた以外は、実施例9と同様にして試験板を作成した。
有機系皮膜処理剤(アミン変性エポキシ樹脂エマルジョン)の代わりに、「ラグリード」(固形分2%水溶液、日本ペイント社製)を用いた以外は、実施例9と同様にして試験板を作成した。
実施例9、10で得られた試験板において、有機皮膜の皮膜量(mg/m2)は、「RC142型」(LECO社製全炭素分析装置)を用いて分析した。
〔試験板の物性評価〕
上述のようにして得られた試験板について、以下に示した評価方法によって耐食性を評価し、結果を表2に示した。
<耐食性>
JIS Z 2371に基づき、5%塩水噴霧試験(24、48、72、120、168、240、360、480、528時間)を行い、試験後に処理板の錆発生率を調べた。処理板表面の錆発生面積を下記の評価基準により目視で評価した。
10:白錆発生なし
9:白錆発生面積が10%未満
8:同20%未満
7:同30%未満
6:同40%未満
5:同50%未満
4:同60%未満
3:同70%未満
2:同80%未満
1:同90%未満
上述のようにして得られた試験板について、以下に示した評価方法によって耐食性を評価し、結果を表2に示した。
<耐食性>
JIS Z 2371に基づき、5%塩水噴霧試験(24、48、72、120、168、240、360、480、528時間)を行い、試験後に処理板の錆発生率を調べた。処理板表面の錆発生面積を下記の評価基準により目視で評価した。
10:白錆発生なし
9:白錆発生面積が10%未満
8:同20%未満
7:同30%未満
6:同40%未満
5:同50%未満
4:同60%未満
3:同70%未満
2:同80%未満
1:同90%未満
表2から、実施例で得られた試験板は比較例で得られた試験板に比べて、耐食性に優れるものであった。また、有機皮膜を形成した実施例9及び10の試験板は、より耐食性に優れたものであった。
本発明のアルミニウムダイキャスト材の表面処理法は、アルミニウムダイキャスト材に適用することにより、優れた耐食性、塗膜密着性等の性能を付与することができるものであり、得られたアルミニウムダイキャスト材は、自動車用部品、船外機用部品等の材料として好適に使用することができる。
Claims (5)
- ジルコニウム含有化合物及びフッ素含有化合物を含む化成処理剤による化成処理反応によってアルミニウムダイキャスト材の表面に化成皮膜を形成させる工程からなるアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法であって、
前記化成処理反応は、カソード電解処理によって行うことを特徴とするアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法。 - カソード電解処理は、化成処理剤中のジルコニウム含有化合物の濃度がジルコニウム金属換算で100〜10000ppm、全ジルコニウム金属としての質量と全フッ素の質量との比(ジルコニウム量/フッ素量)が0.2〜1.0、pHが1〜6に調整されて行われるものである請求項1記載のアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法。
- 化成処理剤は、更に、リン酸イオンを含有するものであり、
カソード電解処理は、前記リン酸イオンの濃度が五酸化二リン換算で10〜1000ppmに調整されて行われるものである請求項1又は2記載のアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法。 - 化成皮膜を形成させる工程を行った後、有機皮膜を形成させる工程を行うものである請求項1、2又は3記載のアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法。
- 請求項1、2、3又は4記載のアルミニウムダイキャスト材の表面処理方法によって得られた化成処理皮膜を有することを特徴とするアルミニウムダイキャスト材。
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- 2004-05-13 JP JP2004144038A patent/JP2005325403A/ja active Pending
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