JP2005314863A - ポリエステルフィラメントの複合紡出糸及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 繊維伸度向上剤を添加したポリエステルフィラメントの複合紡糸の高速紡出糸において、該紡出糸の残留伸度は従来の水準に維持しつつ、事後の延伸またはDTY加工において油剤を用いることなく安定に捲取できる複合紡出糸およびその製造法を提供する。
【解決手段】 粒子状のポリメチルメタクリレート系重合体、アイソタクチックポリスチレン系重合体、シンジオタクチックポリスチレン系重合体、ポリメチルペンテン系重合体の少なくとも1つをポリエステル重量を基準として0.5〜4.0重量%分散せしめたポリエステルと、これらの重合体を実質的に含まないポリエステルとを、コ・スピニング(Co−spinning)により溶融紡糸し、2500m/min〜8000m/minの引取速度で引取り、ポリエステルフィラメントの複合紡出糸を製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、捲取性が改善され且つ残留伸度の高いポリエステルフィラメント糸に関する。更に詳しくは、本発明は、ポリエステルフィラメント紡出糸において、個々のフィラメント中で、特定の熱変形温度(T)を有する、不飽和モノマーからなる附加重合体をフィラメントの長手繊維軸方向に沿って延在化させつつ、フィラメント断面中心から外表面に向かう半径方向の1/3から2/3に至る距離を肉厚とする円環状部に該粒子の分散濃度を極大化させることにより、良好な捲取性と高度の残留伸度とを併有せしめたポリエステルフィラメントの糸に関する。
ポリエステル繊維の溶融紡糸に際し、その口金からのポリマー吐出量をできるだけ多くすることは、生産性を上げる上で、極めて有効な方法であり、昨今の繊維産業界においてこれまで生産性を上げるために取られてきた典型的な手段として、紡糸引取速度を上げて、口金からの吐出量を増加させる方法が知られている。しかしながら、この方法では、引取速度が速いために、個々のフィラメントの分子配向が大きくなる結果、得られるフィラメント紡出糸の残留伸度は逆に低下してしまう。従って、当然のことながら、後に続く延伸または延伸仮撚時の延伸倍率が低下するので、引取速度上昇による吐出量増加効果が、延伸工程で相殺されてしまう。
このような問題を解消する一つの手段として、不飽和モノマーからなる附加重合体を繊維伸度向上剤としてポリエステルに添加し、紡出糸の残留伸度を高める方法が特許文献1(対応欧州特許第47464(A1)号)で提案されている。本文献によれば、附加重合体の機能は、ポリエステル中に分子オーダーでミクロ分散し、該重合体がポリエステルの分子配向に対して、“コロ”の役割を担うと定義づけられている(例えば、前掲のEP特許第9頁第3行参照)。そして、上記附加重合体の具体例としてはその実施例において「Delpet80N」が挙げられており、その熱変形温度を実測によれば、98℃であった。
この方法によると中間配向糸(POY)をはじめ、残留伸度の高い紡出糸すなわちas−spun糸や超高速直延プロセスによる延伸糸(FOY)が得られるが、本発明者らは、この特公昭63―32885に開示されている残留伸度の高いas−spun糸を商業ベースのワインダーに捲取る際に、新たな問題に遭遇した。
すなわち、現実には捲取パッケージの形成は不可、つまりコマーシャルベースでの巻取は不可能である、との問題点が、本発明者らの検討により明らかにされた。この問題点に係る現象として、フィラメント単独あるいは数本のフィラメントがトラバースプリンティング不良のため、捲端面に正常な円周捲き形態から外れた“綾落ち”や端面が“いびつ”になる捲崩れ、さらに捲取中に糸浮きが発生し、バーストにまで及ぶ等の致命的な捲取不良が発生したのである。
この原因としては、前記の付加重合体が実質的にポリエステルと非相溶状態で“コロ”として作用するために、粒子状態で繊維表面に優勢的にプリードアウトして過度の表面凹凸を形成し、これにより、フィラメント/フィラメント間摩擦(F/F摩擦)、フィラメント/金属(F/M摩擦)の低下もたらす結果、捲き工程調子において不調をきたすものと考察される。
上記のF/F摩擦あるいはF/M摩擦の低下を防ぐために、当業者が採るであろう手段としては、繊維F/F摩擦、F/M摩擦を向上させる油剤を紡出糸に付着させてから巻き取ることが考えられる。この摩擦向上剤としては、芳香環や多価アルコール変性を施したアルキレンオキサイド付加物、具体的には、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルステアレート、ポリオキシエチレンパラミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンベンジルフェニルフェノールエーテルや、グリセリンプロピレンオキサイド(PO)/エチレンオキサイド(EO)付加物、トリメチロールプロパンPO/EO付加物、ペンタエリスリトールPO/EO付加物、ソルビトールPO/EO付加物、ソルビタンPO/EO付加物等がある。また、低分子量(500〜700)ポリプロピレングリコール等の潤滑性能の低い低粘度成分や、ロジンエステル類、シリカ等がある。
事実この考え方で捲取を実施したところ、パッケージ形成においては、良好な結果が得られたものの、この紡出フィラメント糸をパッケージから解舒しつつ延伸・仮撚等の高次加工に付したところ、毛羽、断糸等が頻発して機台の停止、さらに不良糸の出現を招来して、本質的な解決策には至らなかったのである。
以上のことから、本発明でいう“捲取性の改善された”こととは、事後の延伸またはDTY加工において、毛羽、断糸を誘発するような油剤を用いることなく、安定な捲取が実現された状態を指称する。
特公昭63−32885号公報
したがって、本発明の課題は、繊維伸度向上剤を添加したポリエステルフィラメントの複合紡糸の高速紡出糸において、該紡出糸の残留伸度は従来の水準に維持しつつも、これまで何等認識されていなかった“捲取不可”という致命的欠陥を克服することにある。
さらに、本発明の他の課題は、上記紡出糸の高次加工において、毛羽、断糸が可及的に押さえられ、連続運転と高品質の高次加工糸を実現し得るポリエステルのフィラメント複合紡出糸及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らの研究によれば、繊維伸度向上剤としてポリエステルと実質的に非相溶な附加重合体を用い特定の紡糸方法を採用するとき、該伸度向上剤は、従来の“コロ”の機能を離れて、紡出中の個々のフィラメントに対して伸長変形低抗体として機能し、その結果該伸度向上剤はフィラメント長手方向に沿って配向・延在化しつつフィラメントの断面中心から外表面に向かう半径方向の1/3から2/3に至る輪環状部にその分散濃度が極大化することにより捲取性と残留伸度とが両立することが究明された。
かくして本発明によれば、粒子状のポリメチルメタクリレート系重合体、アイソタクチックポリスチレン系重合体、シンジオタクチックポリスチレン系重合体、ポリメチルペンテン系重合体の少なくとも1つをポリエステル重量を基準として0.5〜4.0重量%分散せしめたポリエステルと、これらの重合体を実質的に含まないポリエステルとを、コ・スピニング(Co−spinning)により溶融紡糸し、2500m/min〜8000m/minの引取速度で引取ることを特徴とするポリエステルフィラメントの複合紡出糸の製造方法が提供される。
本発明によれば、繊維伸度向上剤を含むポリエステルと含まないポリエステルとを同一口金から吐出することで、後者のポリエステルから所望の低い残留伸度糸条を得るための紡糸速度、つまり高速で捲き取ることができるため、複合化しただけでなく、飛躍的な生産性の向上につながる。また、このような伸度差のあるヤーンからなる紡出糸は芯鞘タイプの複合仮撚捲縮糸用の原糸として好ましく採用される。すなわち、この紡出糸を同時延伸仮撚加工に供する際、より高い延伸倍率を採用できるのでその分だけ捲取速度が増加し生産性の向上につながる。
本発明は、粒子状のポリメチルメタクリレート系重合体、アイソタクチックポリスチレン系重合体、シンジオタクチックポリスチレン系重合体、ポリメチルペンテン系重合体(以下、これらの重合体を伸度向上剤と称することがある)の少なくとも1つをポリエステル重量を基準として0.5〜4.0重量%分散せしめたポリエステルと、これらの重合体を実質的に含まないポリエステルとを、コ・スピニング(Co−spinning)により溶融紡糸し、2500m/min〜8000m/minの引取速度で引取ることを特徴とするポリエステルフィラメントの複合紡出糸の製造方法である。
上記のように、繊維伸度向上剤を混合したポリエステルと該剤を実質的に含まないポリエステルとを同一口金から吐出することによって、あたかも紡糸速度の異なる(互いに伸度の異なる)未延伸糸を複合した特性を示す混繊糸を直接捲き取ること可能となる。
従来は、吐出孔径が極端に異なる吐出孔を設けた口金から同一ポリエステルを吐出させる方法がとられている。しかし、この場合は高い残留伸度の紡出糸を得るための紡速、具体的には、伸度270〜340%の糸条が得られる1500m/min前後の低い紡糸速度とが律速である。これに対して、繊維伸度向上剤を含むポリエステルと含まないポリエステルとを同一口金から吐出した場合には、後者のポリエステルから所望の低い残留伸度糸条を得るための紡糸速度、つまり高速で捲き取ることができるため、複合化しただけでなく、飛躍的な生産性の向上につながる。
そして、このような伸度差のあるヤーンからなる紡出糸はU.S.P2,013,746号(特公昭61−19733号)によって代表される芯鞘タイプの複合仮撚捲縮糸用の原糸として好ましく採用される。すなわち、この紡出糸を上記特許の教えるところに従って同時延伸仮撚加工に供する際、より高い延伸倍率を採用できるのでその分だけ捲取速度が増加し生産性の向上につながる。
さらに、本発明の紡出糸を得る方法について述べる。本発明が意図する捲取性と、繊維伸度向上剤を含有するフィラメント紡出糸において高い残留伸度を実現するためには、紡糸条件として、紡出(吐出)前の溶融ポリマーの濾過および紡糸ドラフトを次のようにするのが好ましい。
ここでは、40μ以下のポアサイズをもつフィルターを紡糸パック内に設置し、繊維伸度向上剤が分散した溶融ポリエステルを該フィルターを通した後、150〜1500の範囲のみかけの紡糸ドラフト(率)のもとに、紡出することが好ましい。40μを超えるポアサイズをもつフィルターでは、吐出ポリマー流中に粗大粒子が混入し、安定な紡糸調子が確保できないし、またフィラメント表面にブリートアウトした粗大粒子が形成する表面凹凸によって、捲取性にも問題が生じる。一方、紡糸ドラフトについては、高ドラフト範囲が重要であることが判明した。すなわち、150未満の低ドラフト即ち、紡糸口金の吐出孔径の小さい場合、そこを通過するポリマー流は高い剪断力を受け、粒子状の繊維伸度向上剤はフィラメントの長手方向に引きちぎられ、平均粒径(D)が後述する下限値よりも小さくなりやすく、紡出糸の伸度向上効果が阻害される。つまり、該粒子は、応力担持体としての機能を十分には果たすことなく、単にフィラメント表面への析出頻度が増え、捲取性にも支障をきたすことになる。これに対して、1500を越える高いドラフトになると、吐出孔内での剪断力による引き千切り効果が小さくなり、紡出糸の残留伸度は著しく向上するが、粗大粒子の発生による捲取時のトラブルは解決されない。このことから、ドラフト率150〜1500の範囲にあるとき、繊維伸度向上剤の分散粒子径の分布は図2に示すように比較的シャープになり、その結果、安定な紡糸調子を確保しつつ、フィラメント断面において、B(図1)の領域でその分散濃度が極大化する。これは、応力担持体として機能する粒子径の範囲では、該担持体は応力を担持して引き伸ばされながら、細化されつつあるポリマー流の内部方向に移動する。従って、吐出直後は該粒子は、フィラメント断面内に均等に分布していたにもかかわらず、上記のドラフト範囲をとることによって分散濃度の極大化が生じ、残留伸度と捲取性の両立を可能にするものである。
さらに、その他の紡糸要件として関係してくるのは紡糸温度(口金温度)および紡糸口金下の冷却である。
前者については、繊維伸度向上剤が分散した溶融ポリエステルを吐出する際の口金温度を通常よりも低くすることも、該残留伸度の増加と安定な捲取性の確保に寄与する。これは、口金吐出後の伸度向上剤の伸長粘度がより紡糸ライン上流で大きくなり応力担持体としての機能が発現する結果、紡糸張力を大幅に低下させながらフィラメント断面内に粒子濃度の極大点を固定する傾向を示すからである。最適な口金温度は270〜290℃である。270未満では、ポリエステルの種類にもよるが、曵糸性の問題が生じ、他方290℃を越えると、伸度向上剤である附加重合体の耐熱安定性が低下する。
後者の口金下の冷却は、横吹き冷却の場合、その風速を0.15〜0.6m/secの範囲に維持することにより、残留伸度の向上と捲取性の向上との両立に寄与する。風速が0.15m/sec未満では、フィラメントの長手方向の斑が大きく、事後に高品位の延伸糸および加工糸を得ることができない。また、0.60m/secを超えると、ポリエステル側の伸長粘度が上昇するので、残留伸度の増加幅が小さくなる。
ポリエステルへの繊維伸度向上剤の添加に当たっては、任意の方法を採用することができる。例えばポリエステルの重合末期段階で該剤混合してもよく、また、ポリエステルと前記剤とを溶融混合して、押出し冷却後、切断してチップ化してもよい。更には、サイドストリームから該剤を溶融状態でポリエステルの溶融紡糸装置に、動的および/または静的ミクスチャーを介して導入してもよい。また、両者をチップ状で混合した後、そのまま溶融紡糸してもよい。その中でも、連重直紡ラインのポリエステル配管から一部のポリマーを引き出し、それをマトリックスとして該剤を混練り分散させたものを元のニートポリマーラインへ、任意の動的および/または静的ミクスチャーを介して戻し、各配管に分配するという手法が最も好ましい。
また、本発明にしたがった、ブレンドポリマーの低張力紡糸により、従来は困難であった単糸de(denier per filament )が1de以下の極細フィラメント糸についても高速紡糸することができるようになる。
一般に極細フィラメント糸は、吐出ポリマーの冷却が速いことと、紡糸ライン上、特に、第1ゴデットローラーより上流で発生する単位断面積あたりの空気抵抗が大きいために、極細フィラメント糸の高速製糸性は乏しく、もっとも生産効率の悪い銘柄である。しかし、本発明のブレンドポリマーを用いれば、単糸deの低下による冷却強化は、配向結晶化抑制効果を促すので、極細糸にとっては有利であり、安定な高速極細紡糸を可能にする。
本発明の紡糸態様は直接紡糸未延伸プロセスにも好ましく組込むこともできる。特に8000/min以上の高速高性能ワインダーが実現したならば、引取ローラーG1(兼予熱ローラー:斯界では第1ゴデットローラーと呼ばれている)速度が5000〜6000m/minにて引き取った後、延伸熱セットローラーG2(斯界では第2ゴデットローラーと呼ばれている)速度が7000〜9000m/minの下に直接紡糸延伸プロセスを採用することができる。また、G1速度を7000〜8000m/minとし、G2/G1速度比を高々1.10〜1.25とした冷延伸を施した後、該糸条のもつ歪の解消と熱セットを目的としたスチームチャンバー内を通過させた後、捲き取るという省エネルギープロセスへの展開も可能である。
次に、本発明の製造法で得られる複合紡出糸の、繊維伸度向上剤を含むフィラメント紡出糸について説明する。
紡出されつつある個々のフィラメント中でポリマーの分子配合に対して“コロ”として機能する粒子状の繊維伸度向上剤をポリエステル重量を基準として0.5〜4.0重量%分散せしめたポリエステルを溶融紡糸し、2500m/min〜8000m/minの引取速度で得た、残留伸度増加率(I)が50%以上であるフィラメント紡出糸(以下、単に紡出糸と称する)を得る。という概念自体、前掲のEP47464A、明細書に開示されている。そして、該伸度向上剤の具体例としては、実測してみると熱変形温度(T)が98℃と比較的低い、旭化成工業(株)製造のDelpet 80Nが示されているに過ぎない。
これに対して、本発明では上記EP明細書では言及されていないところの、該EP明細書では、未解決のまま放置されていた“捲取不可”の問題を克服したものである。
本発明において、繊維伸度向上剤は、ポリエステルと実質的に非相溶な海/島状態、つまり、ポリエステルを海、粒子状の繊維伸度向上剤を海成分として口金孔から吐出され、紡糸ライン上で、冷却細化過程を経る際に、ポリエステルよりも先に溶融状態からガラス状態へと転移し、紡糸応力(張力)に対して伸長変形低抗体の役割を果たす。そのため、口金近傍のポリマー温度が高い状態でのブレンド系の伸長粘度に関して、従来の伸長粘度式に従わない、非線形性増加をもたらし、その結果細化を促進し、紡出糸の糸速度を最終捲取速度に到達せしめる働きをもつものと考えられる。このように、細化完了位置は、該重合体を含まないポリエステルを同じ速度で紡糸した場合に比べ、紡糸ラインのより上流で完了し、しかも4000〜5000m/min以上の引取速度下で顕著に見られる配向結晶化を伴うネック状細化を示さない。このことから、該伸度向上剤の作用は、高速紡糸において低張力紡糸を可能にし、捲取性を改善しながら、残留伸度の高いポリエステル繊維を与えるものと言える。
以上のことを念頭において、本発明の(a)〜(c)の要件の意義について述べる。
なお、以降の説明において、粒子状の繊維伸度向上剤を“伸長変形抵抗体”あるいは“応力担持体”と呼ぶことがある。
要件(a)
本発明において、捲取性と高伸度を両立させる最も重要なものが本要件である。前述した通り、細化ポリマー流中の応力担持体はポリマー流の内部に集中しやすい傾向にある。他方、該応力担持体がポリマー流表面に存在する方が、ポリマー流はより速く冷却されて伸長粘度を増加し、応力担持体として効果的に作用することが予想される。
しかしながら、その結果生ずるフィラメント表面の過度の凹凸化に因るフィラメント間摩擦係数の低下から捲取性が著しく損なわれ、結局捲取性と高伸度とが両立しなくなる。従って、繊維伸度向上剤の粒子は可及的にフィラメント表面層に近いがその表面には極力析出しないように該粒子の分散状態を抑制したのが、この(a)の要件である。ここで、粒子の局在化の最適状態は、図1〜2に示すように紡出糸を構成する個々のフィラメントの断面中心Oから外表面に向かう半径方向の1/3から2/3に至る領域を占める円環状部Bに、その点が存在することである。換言すれば全粒子の50重量%以上が、内厚Wの円環状部Bに局在化している状態が最も好ましい。
この繊維伸度向上剤の粒子が中心から半径方向1/3の円形部分に局在化した場合、紡出糸の残留伸度が低下する。一方、中心から半径方向2/3の点を起点として外径に至る距離を肉厚とする円環状部(C)に該粒子の局在化が生じた場合、フィラメント表面層のみかけの伸長粘度が上がりすぎて、フィラメント断面内でスキンコア構造を形成する。その結果、紡出糸の残留伸度は大きくなるが、当然ながらフィラメント表面への応力担持体の析出により捲取性が悪化する他に、紡出糸の強度が弱く、後の高次、加工において工程安定性を欠く。また、染色工程において初期降伏点が低下しやすく、織物等にした際のふくらみが不十分で、高品位な風合いを実現できない。
以上はフィラメントの断面が中実断面の場合であるが、もし、フィラメントの断面が異形、あるいは中空断面の場合は、上記のBの領域は図3〜4に記したようになる。
図3−aは、一般的な中実のトライローバル断面であるが、この場合、各ローブの長手方向に沿って、中心点Oとローブ先端Tを結ぶ2等分線(一点鎖線で示した)の中間点Mを通る直交線(細線で示した)を引く。そして両線の交差点をO′点、細線がローブの外周点に出会う点をそれぞれM1 、M2 、M1 〜M2間の直線距離を2Lとする。そして、該細線Lを3等分するような直交点線を引いてO′点からM1 (またはM2 )に向って3つの領域を仮想したとき、ローブの中心側から順次、領域A′、B′、C′とする。
したがって、マルチローブのフィラメントにあっては、図3〜bに示すように、繊維伸度向上剤の分散濃度の極大点は2山存在することになる。
このことは、中空断面の場合についても言え、図4において、中空断面の内厚を2L、内厚の中間点をO′とするとき、図3a−bと全く同様になる。
要件(b)
この要件は、上記要件(a)に関連してフィラメント表面に析出する粒子の数が押さえられていることを示す。
すなわち、フィラメント表面の粒子数が、15個を超えると、繊維表面の摩擦係数が著しく低下し捲取不能となる。またこれら粒子はポリエステルとは染着性が異なるために、15個を超えてフィラメント表面に存在することは染色でのイラツキの原因担って、織編み物の品位を損ねる。更には、このような熱変形温度の高い粒子がフィラメント表面を覆うことにより、延伸加工等の予熱効率が悪く、均一延伸性を欠き、さらには、毛羽等の原因となる。
このNの数は特に10個/100μm2 に下であることが好ましい。
要件(c)
紡糸応力に対する“伸長変形抵抗体”という概念からして、紡出(吐出)されつつあるポリマー流の中で繊維伸度向上剤は、マトリックスポリマーよりも早く溶融状態からガラス状態へ転移することが望まれる。この意味から、該伸度向上剤の熱変形温度(T)は、105〜130℃、好ましくは110〜130℃の範囲であることが望ましい。ポリエステルの熱変形温度は、一般に70℃程度であり、これより熱変形温度が少なくとも35℃以上高い、粒子状の繊維伸度向上剤は優勢的に紡糸応力を担持しつつ、細化されつつあるポリマー流の比較的内部へ該粒子が集中するため、フィラメント表面への粒子の析出が低減でき、捲取性を著しく改善することができる。この熱変形温度(T)が105℃未満では、伸長変形抵抗体としての機能が十分に発現しにくい。
すなわち、熱変形温度の差が不十分なため、有効な応力担持体となることができず、代りにフィラメント表面への該粒子の析出が多くなり、その結果フィラメント表面摩擦を低下させ、捲取操作性に著しい支障をきたす。一方、この温度が130℃を超える場合は、伸長変形低抗体としての作用が過剰に発現し、紡出糸は高い残留伸度を示すものの、強度が実用レベルを下回りまた、細化過程に追従できず曵糸性が損なわれ、安定な製糸操作が達成しにくくなる。
以上の(a)及び(b)、好ましくはさらに(c)の要件を充足する紡出糸は、事後の高次加工での毛羽、断糸の懸念なく、高伸度を維持しながらパッケージに安定に捲取ることができる。
さらに、上記の(a)、(b)、好ましくはさらに(c)の要件に関連して該粒子の、フィラメント断面方向および長手方向のサイズもある程度絞られてくるので、この点について若干触れておくことにする。
(d)フィラメントの断面方向における平均粒径(D)
紡出糸中での繊維伸度向上剤の平均粒子径(D)は、該剤が紡糸応力の担持体として機能した結果を示す。すなわち、Dが、0.05μmより小さいとき、応力担持体として機能するための十分な大きさに達していないために、残留伸度の向上効果も不十分なばかりか繊維伸度向上剤の粒子が繊維表面に優勢的に繊維表面に析出して、粗い凹凸状態を形成するので、繊維表面摩擦を低下し、捲取性が悪化する。一方、Dが0.15μmを超えると、繊維断面内にマクロに不均一に応力集中し、一旦偏った紡糸張力は、紡出糸を旋回させたり、ポリマーと該剤との混合状態の不均一な各吐出孔内で、溶融粘度、剪断応力による流動乱れを生じて、安定な紡糸を望めない。このDの好ましい範囲は0.07〜0.13μmである。
要件(e)
本発明にしたがって、繊維伸度向上剤が応力担持体として機能したことは、結果的には該剤がフィラメント中で繊維軸方向に配向・延在化状態にあることを意味する。
このことから、L/Dの概念が導き出されたわけであり、この値は20以下となることが肝要である。このL/Dが20を超えると、繊維伸度向上剤は紡糸応力の下でポリエステルに追従して、変形し、その結果、細化完了位置が上流側へシフトせず、有効な伸度向上剤に成り得なかったことになる。このL/Dの好ましい範囲は5〜12である。
ところで、本発明の紡出糸の残留伸度増加率(I)が50%以上であることは、該紡出糸の複屈折率とも相関がある。この点から、本発明の紡出糸の複屈折(Δn)は0.015〜0.105の範囲にあることが好ましい。本発明の効果が発現される2500〜8000m/minの紡速において、Δnが0.015よりも小さい場合には、このような紡出糸は、経時による物性の変化がおこりやすいために、延伸性が損なわれやすく、すなわち単糸切れ等が頻発して安定な延伸加工が難しくなる。また、このΔnが0.105を超える場合、紡出糸の延伸倍率は、1に近づき(残留伸度が小さく)多様な糸加工に適さない。ただし、高速紡出糸として延伸糸あるいは高速直延糸等の代替品として、織編物に供することができるという利点はある。そして、Δnが0.03〜0.070であるとき、紡出糸はその残留伸度が高く、後加工性に優れた性能を示す。
本発明においてポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とする繊維形成能を有するポリエステルを指称し、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン―2,6―ナフタレンジカルボキシレート等を挙げることができる。また、これらポリエステルは第3成分として、ブタジオールのようなアルコール成分又はイソフタル酸等のジカルボン酸を共重合させた共重合体でも良く、更にこれら各種ポリエステルの混合体でも良い。これらのうちポリエチレンテレフタレート系重合体が最適である。
これらポリエステルには、必要に応じて艶消し剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、末端停止剤、蛍光増白剤等が含まれていても良い。
また、これらのポリエステルは紡糸性および糸物性の観点から固有粘度が0.4〜1.1であることが望ましい。
本発明において繊維伸度向上剤の具体的な組成としては、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、およびこれら重合体を主成分とする誘導体が挙げられる。これら重合体の分子量は、応力担持体としてポリエステルとは独立に、高分子量体として構造粘弾性の発現を必要とすることから少なくとも2000以上の分子量(重量平均)を有していくことが必要である。
詳しくは、その分子量が2000以上20万以下であることが適当である。分子量が2000よりも小さいと、高分子量体としての構造粘弾性を発現しないために、応力担持体として作用しない。一方、20万を超えると、重合体の凝集エネルギーが極めて高く、したがって、その溶融粘度がポリエステルに対して高すぎるために、ポリエステルへの分散が極めて困難になり、その結果紡糸時の曵糸性が著しく悪化するとともに、捲取も困難になり、さらには、ポリエステルに対する負の異物効果が大きく、実用可能な物性を得ることができない。好ましい分子量の範囲は8000以上15万以下であり、このような高分子量重合体の場合、耐熱性も向上するので、一層好ましい。
更に、本発明においてポリエステルに添加する附加重合体として、より好ましいものは、分子量が8000以上20万以下であって、ASTM−D1238で規定される条件(230℃、荷重3.8kgf)において、メルトインデックス(M.I.)が0.5〜15.0g/minであるポリメチルメタクリレート系共重合体やスチレンを主成分とするアイソタクチック系重合体、また、同様の分子量範囲で、M.I.(ASTM−D1238に準拠;260℃、5.0kgf)が5.0〜40.0g/10分の範囲にあるポリメチレルペンテンないしその誘導体、さらに、同様の分子量範囲で、M.I.(ASTM−D1238に準拠;300℃、2.16kgf)が6.0〜25.0g/10分のシンジオタクチック(結晶性)ポリスチレンないしその誘導体である。これらの特定の物性を有する重合体は、ポリエステルの紡糸温度において、熱安定性と分散状態の安定性に優れている。
本発明で採用する物性値の測定方法について説明する。
(1)熱変形温度(T):ASTM D−648に従う。
(2)平均粒径(D)の測定
紡出糸をパラフィンに包埋し、厚さ7μmにフィラメントの長手方向に沿って直角に切断し、電子顕微鏡(日本電子製 JSM−840)撮影用セクションを作成し、スライドガラスの上に複数個のセクション群をのせ、トルエン中に室温下で2日間放置する。この処置により、繊維伸度向上剤として機能した粒子状の附加重合体は溶け出す。溶出後の白金を10mA×2分間スパッタ蒸着し、電子顕微鏡写真を15000倍で撮影する。撮影した溶出痕を、計測器:エリアカーブメーター(牛方商会製)を用いて200個の重合体粒溶出痕の断面積を測定し、平均粒子径Dを算出する。
(3)平均長さ(L)および上記Dとの比(L/D)
紡出糸をパラフィンに包埋し、フィラメントの長手方向に沿って切断し、電子顕微鏡撮影用セクションを作成し、スライドガラス上に複数個のフィラメント割り断面をのせて、トルエン中に室温下で2日間放置する。上記(2)と同様の処理を行い、粒子の溶出痕を15000倍で撮影し、フィラメントの長手方向の長さ(L)を200個測定し、平均長さ(L)から、上記Dとの比L/Dを算出する。
(4)フィラメント断面内の分散粒子分布
上記(2)と同様の処置をしてフィラメント糸全体を数箇所に分けて撮影し、20個のフィラメント断面についてフィラメントの中心からフィラメント表面に向かって半径を3等分し、同心円状に3つの領域(図1のA、BおよびCの領域)、それぞれの領域に含まれる粒子の数をその溶出痕から算出し、平均濃度との比を百分率で表す。
(5)フィラメント表面の粒子数
紡出糸全体をその長手方向に直角に長さmmに切断し、スライドガラス上にマルチフィラメント群を複数個のせ、トルエン中に室温下2日間放置する。上記(2)と同様の処置を行い、溶出痕を15000倍で撮影し、2000μm2 当たりの溶出痕数をカウントし、100μm2 当たりの数を算出する。
(6)紡出糸の複屈折率(Δn)
1―ブロモナフタレンを浸透液として用いて、偏光顕微鏡にて波長530nmの単色光を用いて、緩衝縞を測定し、下記式Δnを算出する。
Δn=530(n+θ/180)/X
n:縞数、θ:コンペンセーター回転角度、X:繊維直径
(7)残留伸度
紡出糸を気温25℃×湿度60%の高温恒湿に保たれた部屋に1昼夜放置した後、サンプル長さ100mmを島津製作所製張試験機テンシロンにセットし、200mm/minの速度、即ちひづみ速度2min−1にて引張り破断伸度を測定する。
(8)メルトインデックス
ASTM D−1238に従う。
(9)みかけの紡糸ドラフト(Df)
単糸(フィラメント)吐出量g/minをポリエステルの溶融状態の密度1.2g/cm3 で除して吐出体積cc/minを算出し、これを吐出孔断面積で除して吐出線速度V0を算出する。これを捲き取り速度Vwとの比(下記式)からDfを算出する。
Df=Vw/V0
(10)口金温度
紡糸捲取運転状態の口金に予め口金表面に加工した深さ2mmの温度検出端差込孔に検出端を差込み、口金温度を測定する。
(11)口金下冷却風速度
風速計をハニカム構造の冷却風吹き出し口の上端面から30cmの箇所においてハニカム面に密着させた状態で風速をn=5(5回測定)で測定し平均値を算出する。
(12)フィラメント間の摩擦係数
詳しくは、特開昭48―35112号公報に記されているが、フィラメント同士の滑りやすさの尺度である。長さ690m、太さがdeのマルチフィラメント(Y)を円筒の周りに、ラセン角±15°で約10gの巻き張力で前後に巻き付ける。この円筒は直径が2インチ(5.1cm)で、長さが3インチ(7.6cm)である。上述のマルチフィラメントを12インチとって、この円筒の上に掛ける。この時、(Y1 )が(Y)の上層部にのっており、且つその巻き付け方向と平行になるようにする。(Y1)のデニールの0.04倍の荷重をその一端にかけ、もう一方の端は、ストレインゲージに連結させる。円筒を0.0016cm/秒の周速で180度回転させて、その時の張力を連続記録する。
フィラメント間摩擦係数(f)は、円筒上を走行するベルトの摩擦に関する良く知られた下記式より算出される。
f=(1/π)ln(T2/T1)
ここで、T2はピーク張力の平均値(n=25、T1はマルチフィラメントのde×0.04の荷重により与えられる張力、lnは自然対数記号である。測定中に非可逆的な伸長、つまり延伸が起ったサンプルのデータは使用しなかった。測定雰囲気温度は25℃とする。
(13)OPU測定方法
紡出糸3gを105℃×2時間乾燥後直ちに、その重量(W)を測定し、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダを主成分とする洗浄用水溶液300cc中に浸析し、40℃にて超音波を少なくとも10分かける。洗浄液を廃棄し、40℃の温水により30分流水洗浄後、室温にて風乾する。その後、105℃×2時間乾燥後直ちに重量(W1 )を測定する。
OPU%=(W−W1 )/W1 ×100
上式よりOPU算出する。
(14)羽毛数ケ/m
少なくとも25mの仮撚り加工糸について目視にて毛羽の個数を数え、1メートルあたりの毛羽に換算する。
以下、実施例により本発明を説明する。
[実施例1]
固有粘度0.64、艶消剤として酸化チタンをポリエステル重量を基準として0.3wt%を含むポリエチレンテレフタレートチップを160℃で5時間乾燥した後、直径25mの1軸フルフライト型溶融押出し機にて300℃で溶融し、熱変形温度(T)が121℃、M.Iが1.0g/10min(230℃×3.8kgf)で分子量150,000のポリメチルメタクリレート(PMMA)、および熱変形温度(T)が98℃、M.I.が2.5g/10min(230℃×3.8kgf)で分子量60,000のPMMA、さらに熱変形温度(T)が140℃、M.I.が0.6g/10min(230℃×3.8kgf)で分子量70,000のPMMA系共重合体をサイドストリームから溶融状態で、押出し機中の溶融ポリエステルへ導入し、次いで20段のスタティックミキサーを通して混合分散させた後、口金直上に設けた25μmのポアサイズをもつ金属繊維フィルターおよび直径0.4mmφ―ランド長0.8mm(L)の吐出孔を36個有する紡糸口金から、口金温度285℃にて溶融ポリマーを表1のNo.1〜14に示すような各紡速にあわせてその吐出量を変化させつつ吐出した。さらに口金下下方9cm〜100cmに設けた横吹き紡糸冷却筒から25℃の空気を0.23m/secの速度で吹きつけて吐出ポリマー流を冷却固化せしめ、OPU0.25〜0.30wt%範囲内で油剤付着処理を施した後、120de/36fの紡出糸として巻取った。なお、各実験におけるドラフトは407である。
尚、本実施例で用いた油剤組成(Fa)を下記に記す。また、エマルジョン濃度10wt%として、ミータリングオイルノズルを用いて付着させた。
この紡出糸の特性ならびに、繊維伸度向上剤分散状態、および捲取張力をde×0.15〜0.25の範囲内で調節し、巻き取った7kg巻きパツケージの巻き姿を表1に記す。
尚、巻き姿については、○:良好、△:綾はずれあり、×:巻き崩れ、バーストとして各記号を記した。
油剤組成(Fa)
・ブタノールPO/EO(50/50)ランダム付加物(分子量2000)
50wt%
・グリセリンPO/EO(50/50)ランダム付加物(分子量6000)
47wt%
・アルキルスルホネートナトリウム塩(アルキル基C12〜C16)
1.5wt%
・EO2molラウリルホスフェートカリウム塩 1.5wt%
Figure 2005314863
以下、表1の結果について考察する。
実験No.1のような低速紡出糸においては、紡糸時のひずみ速度が遅いために、繊維伸度向上剤の伸長変形はポリエステルに追従し、伸長変形抵抗体として実質的に作用しないために、伸度向上効果がわずかである。また、フィラメント表面への粒子の析出個数が多いために、巻き姿に関して単糸、マルチフィラメントの綾落ちが見られた。一方、No.2、3、6、7、12、13については、2500〜8000m/minの引取速度において、PMMAの平均粒子系、断面内局在化および繊維表面粒子数が本発明の要件を満足するため、紡出糸の残留伸度、捲取性ともに十分な効果が認められ、特に3500〜5500m/minの範囲内においてその効果は極大を示す。No.14については、紡糸ひずみ速度が著しく速いために、推定ではあるが、ポリマーとPMMAとの界面剥離により、曵糸性が損なわれる。
No.4、5、8、9については、先ずNo.4は添加量が少ないために、残留伸度向上効果が十分でなく、またNo.9については、添加量が多いために、残留伸度向上率は293%と著しく大きいが、フィラメント表面への析出粒子も当然多くなり、正常な巻き姿を形成することができない。一方、No.5、8については、添加量が本発明の範囲内にあり、粒子の分散状態も適正である。
No.10(従来例については、PMMAの熱変形温度が98℃と低いために、No.8と対比したとき残留伸度向上を効果的に発現する粒子径を形成できず、そのため繊維表面に析出する粒子数が増加し、捲取不可となる。一方、No.11はMMA、アクリル酸イミド付加物およびスチレンをモル比で25:45:30の割合で共重合し、高熱変形温度となしたPMMA共重合体を含有している。この場合、ポリマーとの熱変形温度差が非常に大きくて伸長変形抵抗体としての作用が大きすぎるために、該PMMA共重合の粒子はポリエチレンテレフタレートの変形に追従できず、粒子径が大きく曵糸性、捲取性ともに、不可である。
[実施例2]
固有粘度0.62、艶消し剤として酸化チタンを0.08wt%含むポリエチレンテレフタレートの直重ポリマーを160℃×5時間乾燥し、チップ配管より計量フィードするとともに、20%PMMAの同ポリエステルマスターを同様に乾燥し、こちらも計量フィード混合することによって、ポリエステル中のPMMA添加濃度を1.0wt%とし、紡糸パック内にブレンドポリマーを導入し、表2に示す口金径(ドラフト)、フィルターを用いて5000m/minの引取速度にて120de/36dの紡出糸として巻き取った。
尚、口金温度、口金下冷却風、オイリングおよび巻き取りに関しては、実施例1と同様に行った。PMMA銘柄は実施例1で用いた熱変形温度121℃のPMMAを使用した。紡出糸におけるPMMA分散状態と物性、捲取性について表2に示す。
Figure 2005314863
以下、同様に考察する。
実施例No.15は、口金孔径が小さいために、吐出孔内剪断によりPMMA粒子が引き千切られ、微細粒子化し、伸度向上効果が十分でない。また、No.16においては、フィルターポアサイズが50μと粗であるため、紡出フィラメント中でのPMMA粒子径が大きく、若干の綾はずれが認められる。さらに、No.17のように口金径が0.8mmと大きい場合には、粗大粒子が繊維表面に析出し、繊維間摩擦係数が著しく低下するために、巻初めからわずか数分でバースト現象が多発し始めた。
[実施例3]
油剤組成を次のように変更する以外は実施例2のNo.16と同様に紡出し、F/F摩擦を上げる成分として、エチレンオキサイド10mol付加ノニルフェノールエーテルを油剤組成(Fa)に対し、混合率25wt%となるよう混合して作成した油剤組成(Fb)を紡糸ライン上でミータリングオイルノズルを用いて付着させた。油剤Faの付着した実施例2のNo.16の紡出糸、油剤Fbを付着させた紡出糸(実施例3−aおよび実施例1−No.8に各々仮撚り加工を施した。ヒーター長1.6m、ヒーター温度180℃、加工糸伸度が25%となるように延伸倍率を設定し、仮撚りディスク前(T1g)後(T2g)の張力比(T2/T1)が0.93となるようにディスク走行速度を調整した。表3に紡出糸物性と巻き姿、F/F摩擦係数および仮撚り加工糸の物性および毛羽個数を示す。
Figure 2005314863
No.18については、F/F摩擦係数が低いために、巻き姿としては綾はずれが生じたが、仮撚り加工性については問題なく、物性、毛羽評価の結果は良好であった。No.19については、紡糸、仮撚り加工ともに、本発明を十分満足するものである。No.20については、高いF/F摩擦を付与する油剤組成に変更したために、良好な巻き姿を得ることには成功したが、仮撚り加工においては、ディスクやガイドとの摩擦も高くなるために、毛羽が発生し、本発明の目的を達成することが出来なかった。
本発明によれば、繊維伸度向上剤を含むポリエステルと含まないポリエステルとを同一口金から吐出することで、後者のポリエステルから所望の低い残留伸度糸条を得るための紡糸速度、つまり高速で捲き取ることができるため、複合化しただけでなく、飛躍的な生産性の向上につながる。また、このような伸度差のあるヤーンからなる紡出糸は芯鞘タイプの複合仮撚捲縮糸用の原糸として好ましく採用される。すなわち、この紡出糸を同時延伸仮撚加工に供する際、より高い延伸倍率を採用できるのでその分だけ捲取速度が増加し生産性の向上につながる。
本発明の紡出糸を構成するフィラメント(ここでは丸断面の例)の断面方向における、繊維伸度向上剤の分散状態を示す断面図。 図1のA、BおよびCの各領域での繊維伸度向上剤の分散濃度のレベルを示すグラフ。 本発明の紡出糸を構成するフィラメントの断面が異型中実の場合に、図1の領域に担当する領域(A′、B′、C)を説明する断面図(図3−a)、および各領域(A′、B′、C′)での、繊維伸度向上剤の分散濃度(分布状態)のレベルを説明するグラフ(図3−b)。 本発明の紡出糸を構成するフィラメントの断面が中空の場合に、図1の領域Bに相当する領域(B′)を示す断面図。
符号の説明
r フィラメント断面における半径
A フィラメントの断面中心0から半径方向1/3に至る領域の円状部分
B フィラメントの断面中心0から外表面に向う、半径方向1/3から2/3の領域を占める円環状部
C フィラメントの断面中心0から外表面に向う、2/3から外周に至る領域を
占める円環状部

Claims (16)

  1. 粒子状のポリメチルメタクリレート系重合体、アイソタクチックポリスチレン系重合体、シンジオタクチックポリスチレン系重合体、ポリメチルペンテン系重合体の少なくとも1つをポリエステル重量を基準として0.5〜4.0重量%分散せしめたポリエステルと、これらの重合体を実質的に含まないポリエステルとを、コ・スピニング(Co−spinning)により溶融紡糸し、2500m/min〜8000m/minの引取速度で引取ることを特徴とするポリエステルフィラメントの複合紡出糸の製造方法。
  2. 粒子状のポリメチルメタクリレート系重合体、アイソタクチックポリスチレン系重合体、シンジオタクチックポリスチレン系重合体、ポリメチルペンテン系重合体の少なくとも1つを分散せしめたポリエステルを溶融紡糸する紡糸口金の直上にポアサイズが40μm以下のフィルターを設置する請求項1記載のポリエステルフィラメントの複合紡出糸の製造方法。
  3. 溶融紡糸の際、見かけ上の紡糸ドラフトを見掛の紡糸ドラフト率を150〜1500の範囲とする請求項1記載のポリエステルフィラメントの複合紡出糸の製造方法。
  4. 口金下の冷却風の速度を0.15〜0.6m/sec.の範囲に調整する請求項1記載のポリエステルフィラメントの複合紡出糸の製造方法。
  5. 粒子状のポリメチルメタクリレート系重合体、アイソタクチックポリスチレン系重合体、シンジオタクチックポリスチレン系重合体、ポリメチルペンテン系重合体の少なくとも1つをポリエステル重量を基準として0.5〜4.0重量%分散せしめたポリエステルと、これらの重合体を実質的に含まないポリエステルとを、コ・スピニング(Co−spinning)により溶融紡糸し、2500m/min〜8000m/minの引取速度で得た、以下に定義する残留伸度増加率(I)が50%以上である複合紡出糸条において、該ポリメチルメタクリレート系重合体、アイソタクチックポリスチレン系重合体、シンジオタクチックポリスチレン系重合体、ポリメチルペンテン系重合体の少なくとも1つを分散させたポリエステルフィラメント紡出糸が以下の(a)及び(b)の要件を満足することを特徴とするポリエステルフィラメントの複合紡出糸。
    (a)フィラメント断面を円形断面にみたてたときの断面中心から外表面に向かう半径方向の1/3から2/3の領域を占める円環状部に、その分散濃度が極大化していること;
    (b)フィラメントの外表面に存在する粒子の個数(N)が高々15個/100μmであること。
    ただし、上記(I)は以下の式に従う
    I(%)=(EIb (%)/ELO (%)−1)×100
    ここでEIb (%)は、上記のポリメチルメタクリレート系重合体、アイソタクチックポリスチレン系重合体、シンジオタクチックポリスチレン系重合体、ポリメチルペンテン系重合体の少なくとも1つを分散させたポリエステルフィラメント紡出糸の残留伸度、ELO(%)は該ポリメチルメタクリレート系重合体、アイソタクチックポリスチレン系重合体、シンジオタクチックポリスチレン系重合体、ポリメチルペンテン系重合体を含まないポリエステルフィラメント紡出糸の残留伸度である。
  6. ポリメチルメタクリレート系重合体、アイソタクチックポリスチレン系重合体、シンジオタクチックポリスチレン系重合体、ポリメチルペンテン系重合体の熱変形温度(T)が105〜130℃の範囲にある請求項5記載のポリエステルフィラメントの複合紡出糸。
  7. ポリメチルメタクリレート系重合体、アイソタクチックポリスチレン系重合体、シンジオタクチックポリスチレン系重合体、ポリメチルペンテン系重合体の少なくとも1つを分散させたポリエステルフィラメント紡出糸において、該フィラメントの断面中心から外表面に向かう半径方向の1/3〜2/3の距離を肉厚とする円環状部分に、ポリメチルメタクリレート系重合体、アイソタクチックポリスチレン系重合体、シンジオタクチックポリスチレン系重合体、ポリメチルペンテン系重合体の全粒子の50重量%以下が存在する請求項5記載のポリエステルフィラメントの複合紡出糸。
  8. Nが高々10以下である請求項5記載のポリエステルフィラメントの複合紡出糸。
  9. フィラメントの断面方向における、ポリメチルメタクリレート系重合体、アイソタクチックポリスチレン系重合体、シンジオタクチックポリスチレン系重合体、ポリメチルペンテン系重合体の平均粒子径(D)が0.05〜0.15μmの範囲にある請求項5記載のポリエステルフィラメントの複合紡出糸。
  10. フィラメント長手方向に沿って、ポリメチルメタクリレート系重合体、アイソタクチックポリスチレン系重合体、シンジオタクチックポリスチレン系重合体、ポリメチルペンテン系重合体の粒子は延在化し、その平均長さLと該Dとの比が20以下である請求項5記載のポリエステルフィラメントの複合紡出糸。
  11. フィラメント糸の複屈折率(Δn)が0.015〜0.105の範囲にある請求項5記載のポリエステルフィラメントの複合紡出糸。
  12. ポリメチルメタクリレート系重合体、アイソタクチックポリスチレン系重合体、シンジオタクチックポリスチレン系重合体、ポリメチルペンテン系重合体が、ポリエステルと実質的に非相溶性で且つ分子量が少なくとも2000以上である請求項5記載のポリエステルフィラメントの複合紡出糸。
  13. ポリメチルメタクリレート系重合体が、分子量8000以上20万以下であって、メルトインデックス(230℃、荷重3.8kg)が0.5〜8.0g/10分のメチルメタクリレートを主成分とするポリメチルメタクリレート系重合体である請求項5記載のポリエステルフィラメントの複合紡出糸。
  14. アイソタクチックポリスチレン系重合体が、分子量8000以上20万以下であって、メルトインデックス(230℃、荷重3.8kg)が0.5〜8.0g/10分のスチレンを主成分とするアイソタクチックポリスチレン系重合体である請求項5記載のポリエステルフィラメントの複合紡出糸。
  15. シンジオタクチックポリスチレン系重合体が、分子量8000以上20万以下であって、メルトインデックス(300℃、荷重2.16kg)が6〜25g/10分のシンジオタクチック(結晶性)ポリスチレン系重合体である請求項5記載のポリエステルフィラメントの複合紡出糸。
  16. ポリメチルペンテン系重合体が、分子量8000以上20万以下であって、メルトインデックス(260℃、荷重5.0kg)が5.0〜40.0g/10分の4−メチルペンテン−1を主成分とするポリメチルペンテン系重合体である請求項5記載のポリエステルフィラメントの複合紡出糸。
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