近年、画像やドキュメント等のデータ出力装置としてインクジェットプリンターが普及している。インクジェットプリンターは記録ヘッドに備えられたノズル等の記録素子をデータに応じて駆動させ、該ノズルから吐出されるインクによって記録紙などの被記録媒体(記録メディア)上にデータを形成することができる。
インクジェットプリンターでは、多数のノズルを有する記録ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させ、該ノズルからインク滴を吐出させることによって被記録媒体上に所望の画像が形成される。
インクジェット記録装置では高速印字及び高画質印字に対する要求が高くなり、インクの打滴周期の短縮化や被記録媒体の高速搬送などによって高速印字を実現している。
一方、高品質の画像を印字するために、画像を形成するドットを微細化すると共に高密度化を図ることで、高い階調表現や高解像度化を実現している。例えば、微小量のインクを打滴することでドットの微細化を実現し、且つ、インクを吐出させるノズルを高密度に形成することでドットの高密度化が実現される。ドットが高密度化されると、隣り合う位置に形成されるドット間ではその形成領域が互いに重なるようになる。
複数のインク液滴がほぼ同時に着弾して互いに重なるように形成されるドット列では、被記録媒体表面上に着弾したインク液滴同士が合体して中央部近傍部分に引き寄せられてしまい、所定の大きさのドットが形成されない現象(着弾干渉)が発生する。
したがって、このような着弾干渉を抑制するために、打滴するドットに時間差を与えて、先に着弾したインク液滴の被記録媒体への浸透を待ってから、次に着弾するインク液滴を打滴するような打滴制御が行われる。
しかし、ライン型ヘッドで主走査方向のラインを同時に打滴して主走査方向に1ラインを形成する場合には、隣接するドットを形成する打滴に時間差を与えることは困難であった。
ここで、図12乃至図14を用いて、従来技術を更に具体的に説明する。
図12(a) 、(b) は、従来技術に係るインクジェット記録装置における打滴制御を説明する図である。
図12(a) には、インクジェット記録装置を用いて、主走査方向や副走査方向など、同一ライン上に形成されるドット列200を示す。ドット列200では、同一直径Dを有するドット202、204、206が同一ドット間ピッチPで並べられている。また、記録紙上では隣り合う打滴点に打滴された液滴が重なるように(即ち、D>Pの関係を満たすように)各液滴が着弾している。
一方、図12(b) には、図12(a) に示したドット列200の各ドットを形成するインク滴が同時に(同一打滴タイミングで)打滴された時の着弾後のインク滴210の形状を示している。ドット列200の各ドットを形成するインク滴は着弾時の相互干渉(着弾干渉)によって中央近傍にインクが引き寄せられて一体化する。これはインクの表面張力の影響でインク滴(液滴)には丸く球状になる性質があることによって起こる現象である。
したがって、中央部近傍ではインク濃度が濃くなるとともに、中央部は両端部に比べて幅が広くなり、この一体化したインク滴210が記録紙に定着すると、中央部では幅hがh=D’(但し、D’>D)となり、両端部ではh=D”(但し、D”<D)となる線幅が不均一な線画(ドット列200)が形成される。ここでいう両端部の幅とは、両端部の打滴点に打滴されたインクにより形成されたドット(形状)の幅に相当する幅を示す。
本明細書上では、記録紙上に打滴されたインク滴が記録紙に定着することで形成される略円形状の点や、インク滴の形状が崩れて略円形状とは異なる形状が形成される場合及び複数のインク滴が一体化する等によって複数の略円形状を重ねた形状と異なる形状が形成される場合などに各インク滴の打滴点に形成される形状をドットという。
また、同一タイミングで打滴を行う態様には、短い時間間隔で打滴が行われる態様を含まれていてもよく、この短い時間間隔には、例えば、インクの浸透時間の1%以内の時間などがある。
更に具体的な例を、図13(a) 〜(d) 及び図14(a) 〜(d) に示す。なお、図13(a) 〜(d) 及び図14(a) 〜(d) 中、図12(a) 、(b) と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図13(a) には、液滴量2plのインクによって形成される直径D=30μm のドット202を示し、図13(b) 〜(d) には、1回の打滴の液滴量2pl、このインク滴によって単独でドットが形成される場合の各ドットの直径D=30μm 、ドット間ピッチP=10μm 、同時打滴(各打滴の遅延時間はインク滴浸透時間の1% 以内)の条件で3滴以上のインク滴を同一ライン上打滴したときに形成される線画(ドット列)212〜216を示す。
図13(b) は、上記条件で5滴のインク滴を同時打滴した場合に形成される線画212を示し、中央部にあるインクに両端部側のインクが引き寄せられて、中央部の幅hc は所定の幅30μm より広い40μm となり、一方、両端部の幅he は所定の幅より狭い20μm となる。また、中央部では所定の濃度より高い濃度となり、両端部では所定の濃度より低い濃度となる。
図13(c) は、10滴のインク滴を上記条件で同時打滴した場合に形成される線画214を示し、図13(d) は、60滴のインク滴を上記条件で同時打滴した場合に形成される線画216を示す。
図13(c) に示すように、10滴のインク滴から形成される線画214では、中央部の幅hc は所定の幅より広い45μm であり、両端部の幅he は所定の幅より狭い20μm になり、また、線画214の幅は中央部から両端部に向かって順次変化し、その勾配(幅が変化する割合)はほぼ一定である。
一方、図13(d) に示すように、60滴のインク滴から形成される線画216では中央部の幅hc は所定の幅Dより広い50μm であり、両端部の幅he は所定の幅より狭い15μm になる。
図14(a) 〜(d) には、図13(a) 〜(d) に示したドット202及び線画212、214、216を形成するインクの立体形状(断面形状)を示す。
図14(b) 〜(d) に示すように、線画212、214、216の断面形状は、何れも、中央部から両端部に向かって高さが低くなるような中央部分を頂点とする半だ円形状である。
このように、着弾時に記録紙上で液滴が重なるように同時に打滴される液滴によって同一ライン上に同一サイズの3個以上のドットを形成させる場合には、中央部の液量が両端部の液量より多くなり、両端部に比べて中央部は幅太くなると共に濃度が高くなり、不均一な線画が形成され、画像品質が低下してしまう。
なお、図13で示した数値はあくまでも一例であり、示した数値はあくまでも一例であり、インクの種類、記録紙 (記録メディア)の種類及びこれらの組み合わせによって異なってくる。
特許文献1に記載された記録方法及びその装置では、隣接するドットの相互干渉を防止するために、本来の記録データと補間データとを別々のヘッドスキャン中にそれぞれ出力して前記記録を行うように構成し、インク滲みやインク同士の混合が防止される。
特開平9−272226号公報
以下、図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、インクの色ごとに設けられた複数の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク打滴制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図1中不図示,図7中符号88として記載)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙送り方向と直交方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。詳細な構造例は後述するが(図3乃至図5)、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yは、図2に示したように、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の送り方向(以下、記録紙搬送方向と記載)に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K,12C,12M,12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色ごとに設けられてなる印字部12によれば、副走査方向について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが主走査方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは不図示の管路を介して各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列と、からなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り替える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成される。
また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
次に、印字ヘッドの構造について説明する。インク色ごとに設けられている各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを示すものとする。
図3(a) は印字ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b) はその一部の拡大図である。また、図3(c) は印字ヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図4はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図3(a) 中の4−4線に沿う断面図)である。記録紙面上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、印字ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例の印字ヘッド50は、図3(a) 〜(c) 及び図4に示したように、インク滴が吐出するノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリックス状に配置させた構造を有し、これにより見かけ上のノズルピッチの高密度化を達成している。
即ち、本実施形態における印字ヘッド50は、図3(a) ,(b) に示すように、インクを吐出する複数のノズル51が印字媒体送り方向と略直交する方向に印字媒体の全幅に対応する長さにわたって配列された1列以上のノズル列を有するフルラインヘッドである。
また、図3(c) に示すように、短尺の2次元に配列されたヘッド50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、印字媒体の全幅に対応する長さとしてもよい。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。
圧力室52の天面を構成している加圧板56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
かかる構造を有する多数のインク室ユニット53を図5に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなる。
すなわち、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。以下、説明の便宜上、ヘッドの長手方向(主走査方向)に沿って各ノズル51が一定の間隔(ピッチP)で直線状に配列されているものとして説明する。
なお、用紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るラインを印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図5に示すようなマトリクスに配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36 を1つのブロック、…として)記録紙16の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-16 を順次駆動することで記録紙16の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るラインの印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
なお、本実施形態では、フルライン型印字ヘッドを例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、主走査方向に印字ヘッドを走査させながら主走査方向の1ラインを形成するシャトル型印字ヘッドを適用してもよい。
更に、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。主走査方向にノズル列を1列備えた印字ヘッドを適用してもよい。
また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ58の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
図6はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。
インク供給タンク60はインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた打滴制御を行うことが好ましい。なお、図6のインク供給タンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図6に示したように、インク供給タンク60と印字ヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図6には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面の清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、アクチュエータ58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
このような状態になる前に(アクチュエータ58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)アクチュエータ58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、アクチュエータ58が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合には印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構(ワイパー)により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル板表面)に摺動可能である。ノズル板にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル板に摺動させることでノズル板表面を拭き取り、ノズル板表面を清浄する。なお、該ブレード機構によりインク吐出面の汚れを清掃した際に、該ブレードによってノズル51内に異物が混入することを防止するために予備吐出が行われる。
図7はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒータ89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の打滴量(打滴液量、打滴回数)や打滴タイミング、インク液滴の飛翔速度の制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。なお、打滴量、打滴タイミングなどの印字パラメータを予めデータテーブル化して記録しておいてもよい。該データテーブルを記録する記録手段はメモリ74を用いてもよいし、他の記録手段を用いてもよい。該データテーブルを記録する記録手段には、記録されるデータを容易に書き換えることができるEEPROM等を用いるとよい。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図7において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yのアクチュエータを駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
不図示のプログラム格納部には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。前記プログラム格納部はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。
なお、前記プログラム格納部は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行う。
なお、図1に示した例では、印字検出部24が印字面側に設けられており、ラインセンサの近傍に配置された冷陰極管などの光源(不図示)によって印字面を照明し、その反射光をラインセンサで読み取る構成になっているが、本発明の実施に際しては他の構成でもよい。
〔打滴制御〕
次に、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置10の打滴制御について詳説する。従来技術に示すように、同一液量のインク(例えば直径Dのドットを形成させるインク量)を同一ライン上にある打滴点へ略同時に記録紙16上で重なるように打滴すると、図12及び図13に示すような幅が不均一な線画(符号210等)が形成される。本インクジェット記録装置10では、これを解決するために以下に示す打滴制御が行われる。
図8(a) は、幅hの線画(図8(b) に符号140で図示)を形成するドット100、102、104をドット間ピッチPで等間隔に並べたドット列120を示し、図8(b) は、図8(a) に示したドット100、102、104を同時打滴して形成される線画140を示す。
ドット100及びドット104を形成させるインク滴の液量は同一であり、このインク滴によって直径Da (D>Da )のドットが形成される。一方、ドット102を形成させるインク滴の液量はドット100及びドット104を形成させるインク滴に比べて液量が少なく、このインク滴によって直径Db (但し、D<Db )のドットが形成される。
ここで、ドット100、102、104の直径D、Da 、Db はそれぞれ単独の液滴として打滴 (着弾)した場合に、最終的に記録紙16上で形成されるドット径を意味している。このときはドットの直径Dと線画の線幅hとの関係はD=hである。
即ち、線画140の中央部から両端部に向かって打滴量(打滴液量)が順次多くなるように打滴量の制御が行われる。また、両端部の打滴量V' (図8(a) のドット100及びドット104の打滴量)は所定の量V(ここでは、直径Dのドットを形成可能な打滴量)より大きくなり、中央部の打滴量V" (図8(a) のドット102の打滴量)は所定の量Vより小さくなるように打滴量が制御される。
打滴量を変化させる割合は、ドット間ピッチ及び打滴量(特に、記録紙上に浸透せずに残っている非浸透液量)によって変えるとよい。
なお、線画140の形成方向(同時に打滴されるインク滴の打滴点の配列方向)は主走査方向でもよいし、副走査方向でもよい。また、主走査方向及び副走査方向の成分を有する斜め方向でもよい。更に、各打滴点は曲線上や直線と曲線とを組み合わせた線上にあってもよい。
図9(a) 、(b) 及び図10(a) 〜(c) を用いて更に具体的な態様を例示する。
図9(a) は、5滴のインク滴を同時打滴して形成される幅30μm 、長さ70μm の線画142を示し、図9(b) は、10滴のインク滴を同時打滴して形成される幅30μm 、長さ120μm の線画144を示している。なお、各線画の長さは上述した長さより短くなることがある。また、ここに示した数値はあくまでも一例であり、本発明の適用範囲を示すものではない。
また、図10(a) は直径30μm のドットを形成することができる打滴量V(図8に説明した所定の量と同一量)を示し、図10(b) には5滴の場合の各打滴の打滴量を示し、図10(c) には10滴の場合の各打滴の打滴量を示す。また、図10(d) には各インク滴間の表面張力或いは各インク滴間の重なり量と打滴量との関係を示す。なお、図10(a) 〜(d) 中、縦軸は各打滴における打滴量を示し、横軸は各打滴の打滴番号(打滴点)を示す。
図9(a) に示す5滴の液滴から線画142を形成する場合、図10(b) に示すように、第1打滴及び第5打滴の打滴量Va 、第2打滴及び第4打滴の打滴量Vb 、第3打滴の打滴量Vc の関係は、次式〔数1〕の関係を満たす。
〔数1〕
Va >Vb >Vc
また、全液滴量は2pl×(滴数)=10plであり、これは、次式〔数2〕の関係を満たす。
〔数2〕
2×Va +2×Vb +Vc =10pl
もちろん、第1打滴の打滴量と第5打滴の打滴量及び、第2打滴の打滴量と第4打滴の打滴量を変えてもよい。第4打滴の打滴量をVd 、第5打滴の打滴量をVe とすると、次式〔数3〕に示す関係を満たす。
〔数3〕
Ve >Vd >Vc
また、全液滴量は、次式〔数4〕の関係を満たす。
〔数4〕
Va +Vb +Vc +Vd +Ve =10pl
但し、Va とVe の大小関係及び、Vb とVd の大小関係は問わない。なお、V=Vb =Vd としてもよい。言い換えると、各打適量を所定の打滴量を基準する割合で決めてもよい。
また、図9(b) に示す10滴の液滴から線画142を形成する場合、図10(c) に示すように、第1打滴及び第10打滴の打滴量Vf 、第2打滴及び第9打滴の打滴量Vg 、第3打滴及び第8打滴の打滴量Vh 、第4打滴及び第7打滴の打滴量Vi 、第5打滴及び第6打滴の打滴量Vj の関係は、次式〔数5〕の関係を満たす。
〔数5〕
Vf >Vg >Vh >Vi >Vj
また、全液滴量は2pl×(滴数)=10plであり、これは、次式〔数6〕の関係を満たす。なお、V=Vh としてもよい。
〔数6〕
Vf +Vg +Vh +Vi +Vj =10pl
もちろん、第1打滴の打滴量と第10打滴の打滴量、第2打滴の打滴量と第9打滴の打滴量の打滴量、第3打滴の打滴量と第8打滴の打滴量、第4打滴の打滴量と第7打滴の打滴量の打滴量、第5打滴の打滴量と第6打滴の打滴量を変えてもよい。
ここで、本打滴制御では, 図10(d) に示すように、接触する2つインク液滴が互いに引っ張り合う表面張力が大きくなると、打滴液量を増やす割合を大きくするように制御される。本例では、中央部(図10(d) では打滴番号3の打滴に相当)の打滴量よりも打滴番号2,4のインク滴の打滴量を大きくし、更に、打滴番号2,4よりも打滴番号1,5のインク滴の打滴量を大きくする態様を示す。なお、打滴番号2,4及び打滴番号1,5のインク滴の打滴量はそれぞれ略同一でもよいし、異なっていてもよい。
即ち、本打滴制御では略中央部(中央部近傍)から両端部に向かって打滴液滴量を増やす割合を大きくするように制御される。接触する2つのインク液滴間の表面張力が大きいほど中央部に集まる液滴が増えるので定着後に形成されるドットのドット径の均一化をより確実に実現可能である。図10(d) には略中央部の打滴量を表面張力によらず略同一とする態様を示したが、この略中央部の打滴量を表面張力に応じて変えてもよい。
また、接触する2つのインク滴間の表面張力に代わり、接触する2つのインク滴間の重なり量(接触面積)に応じて打滴液量を増やす割合を変えてもよい。即ち、接触する2つのインク滴間の重なり量(接触面積)が大きくなると、これらのインク液滴間に働く表面張力は大きくなるので、打滴液量を増やす割合を大きくするように制御してもよい。
図10(b) 〜(d) には打滴量を連続的に変化させる態様を例示したが、図11(a) 、(b) に示すように、打滴量を段階的に変化させてもよい。なお、図10(a) 〜(b) 中、たて軸は各打滴における打滴量を示し、横軸は各打滴の打滴番号(打滴点)を示す。
また、図10(d) において、曲線160は表面張力(または、重なり量)が大きい場合を表し、曲線162及び曲線164はそれぞれ、表面張力(または、重なり量)が小さい場合及び表面張力(または、重なり量)が大きい場合と小さい場合との中間の場合を表している。
図11(a) に示す態様では、第1打滴から第4打滴までは打滴量をVk 〜Vn (Vk >Vl >Vm >Vn )のように連続的に減らし、第4打滴から第7打滴までの打滴では打滴量Vn を変えず同一量とし、第7打滴から第10打滴までは打滴量をVn 〜Vk のように連続的に増やすように打滴制御が行われる。
即ち、打滴量は連続した複数滴の単位で変えてもよく、図10(b) 、(c) に示した態様では全液数の3割(全液数が10滴であれば3滴に相当)に相当する両端部の打滴量を中央部の液量より変化させてもよい。なお、少なくとも一部の領域では打滴量を変えない制御を行ってもよい。
また、図11(b) には、打滴量を変えない領域を複数設けた態様を示す。第1打滴から第3打滴までの打滴量及び第8打滴から第10打滴までの打滴量をVp 、第4打滴から第7打滴までの打滴量Vr とし(但し、Vp >Vr )、第4打滴及び第8打滴時に打滴量の切り換えが行われる。
即ち、本打滴制御では少なくとも2種類の打滴量を持ち、この2種類の打滴量を切り換えればよい。
なお、本実施形態における略同時打滴には、非常に短い打滴間隔で打滴を行う態様を含んでいてもよい。
図15乃至図17に、本実施形態における略同時打滴に含まれる、非常に短い打滴間隔で行われる打滴例を示す。
図15(a) には、図3(a) 及び図5に示した印字ヘッド50内の任意のノズル列51Aを示し、図15(b) には、非常に短い時間間隔Δtで同一ノズルを用いて副走査方向に3個以上のドット300、302、304、…、を形成させる打滴例を示している。なお、各ドットの直径は30μm 、副走査方向にドット間ピッチPdsを10μm とする。(直径30μm のドットを形成するインク滴の空中での径は略15μm になる)。
図15(a) に示すように、ノズル列51Aは主走査方向と角度θ(但し、0°<θ<90°)をなす斜め方向に6個のノズルが並べられている。また、主走査方向に並ぶように投影された投影ノズル列のノズル間ピッチ (以下、主走査方向の投影ノズル間ピッチ)をPm 、副走査方向のノズルピッチをPs とする。
例えば、非常に短い時間間隔Δtを記録紙16上に打滴されたインク滴のうち1%のインクが記録紙16内に浸透するまでの時間とすると、打滴されたインク滴が記録紙16に完全浸透するまでの浸透時間を10msecのときにはΔt=0.1msecとなる。
また、打滴周波数F(=1/Δt)=10kHz とすると、記録紙16の搬送速度Vは、V=Pds×F=Pds/Δt=0.1m/sec となる。
一方、図16には、図15(a) に示したノズル列51Aを有する印字ヘッド50を示し、図16(b) には、非常に短い時間間隔Δtで打滴されたインク滴310、312、314、…、を示す。また、図16(c) には、記録紙16上に着弾したインク滴310、312、314、…、(図16(c) には不図示)によって形成されるドット320、322、324、…、を示している。
なお、図15(a) 、(b) と同様に、主走査方向の投影ノズル間ピッチをPm 、副走査方向のノズルピッチをPs 、各ドットの直径は30μm 、主走査方向にドット間ピッチPdmは主走査方向の投影ノズル間ピッチPm と略同一(即ち、Pdm≒Pm =10μm )とする。また、飛翔中のインク滴310、312、314、…、のインク滴径Rは略15μm である。
Δt=0.1msecの時間間隔で打滴を行う場合、記録紙16の搬送速度Vは、V=Δt/Ps であり、副走査方向のノズル間ピッチPs =500μm の場合、V=500μm /0.1msec=5m/sec となる。
なお、主走査方向のドット間ピッチPdmは主走査方向の投影ノズル間ピッチPm と略同一(即ち、Pdm≒Pm )になる。一般に、必要搬送距離をLとすると、V=L/Δtとなる。
上記条件により、記録紙16を搬送速度V=5m/sec で搬送しながらΔtの時間間隔でノズル列51A内のノズルを順に駆動すると、印字ヘッド50からインク滴310、312、314、…、が順に打滴され、記録紙16上にドット320、ドット322、ドット324、…、の順にドットが形成される。
また、図17(a) には、主走査方向に1列のノズル列51A”を有する印字ヘッド50”を示し、図17(b) は、印字ヘッド50”によって同時に打滴されるインク滴330、332、334、…、を示している。また、図17(c) は、インク滴330、332、334、…、によって主走査方向に形成されるドット340、342、344、…、示している。
図17(a) に示すように、印字ヘッド50”主走査方向のノズルピッチPm ’は40μm である。この印字ヘッド50”を用いて行われる主走査方向に同時打滴では、図17(b) に示すように、打滴されるインク滴の空中液滴径(飛翔中のインク滴径)Rが形成するドット間ピッチPdm’よりも小さい場合 (即ち、R<Pdm’場合)、空中でインク滴同士が干渉 (接触、衝突等)し合うことなく同一時刻に、該インク滴を記録紙16上に着弾させることができる。
図17(c) に示すように、記録紙16に着弾後、隣り合う打滴点に打滴されたインク滴が干渉し合う (少なくとも一部が重なり合う)条件は、ドット径をDとすると、D>Pdm’(>R)となる。
主走査方向のドット間ピッチPdm’は主走査方向のノズルピッチPm ’と略同一であり、Pdm’=Pm ’=40μm 、空中液滴径R=14μm 、ドット径D=60μm とすれば、図17(a) に示した印字ヘッド50”を用いて、主走査方向に3個以上のインク滴を同一時刻に着弾させることができるなお、前記条件におけるインク滴量は略14plである。
上記の如く構成されたインクジェット記録装置では、同一ライン上に3滴以上のインク滴を同時打滴して記録紙16上に同一サイズのドットから成るドット列(同一線幅を有する線画)を形成させる際に、打滴されるインク量を中央部から両端部に向かって順次増やすように打滴量が変更されるので、従来技術に記載した着弾干渉が発生しても該線画の全長にわたって線幅が略均一になる。元画像が同一濃度の場合にも中央部と両端部とに打滴される液滴量を異ならせることで、1滴1滴の印画濃度を一定濃度にでき、一定形状に形成することができ、より高精細な印画が可能となる。
また、本打滴制御において打滴量を連続的に変えてもよいし、段階的に変えてもよい。本打滴制御では少なくとも2種類の打滴量を持てばよい。
上述した実施形態では、ある方向(例えば、主走査方向)に略直線形状の線画140等を形成する態様を例示したが、本発明は曲線形状の線画や直線と曲線を組み合わせた線画を形成する際にも適用可能である。
また、線画の形成方向は副走査方向に限らず、主走査方向でもよいし、主走査方向の成分と副走査方向の成分を持つ斜め方向でもよい。
上述した実施形態では液滴の吐出ヘッドとしてインクジェット記録装置に用いられる印字ヘッドを例示したが、本発明は、ウエハやガラス基板、エポキシなどの基板類等の被吐出媒体上に液類(水、薬液、レジスト、処理液)を吐出させて画像、回路配線、加工パターンなどの立体形状を形成させる液吐出装置に用いられる吐出ヘッドにも適用可能である。
10…インクジェット記録装置、50…印字ヘッド、72…システムコントローラ、74…メモリ、80…プリント制御部、100,102,104…ドット、140,142,144…線画