JP2005310605A - 水素吸蔵合金電極とその製造方法およびニッケル水素蓄電池 - Google Patents

水素吸蔵合金電極とその製造方法およびニッケル水素蓄電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 長寿命で活性の高い水素吸蔵電極を負極に適用することによって、長寿命で高率充放電性能に優れたニッケル水素蓄電池を提供する
【解決手段】 水素吸蔵合金電極の活物質として、構成元素として希土類元素、ニッケルおよびコバルトを含有し、平均粒径が20〜35μmであり、質量飽和磁化が1〜5emu/gであって、表面に磁性を有するNiとCoを含み、空洞のない連続した表面層を備える水素吸蔵合金粉末を適用する。また、前記水素吸蔵合金粉末の表面に特定の材料構成を有する酸化防止用被膜を形成する。



Description

本発明は、水素吸蔵合金電極とその製造方法およびニッケル水素蓄電池に関し、さらに詳しくはその負極である水素吸蔵合金電極の高率放電性能およびサイクル性能の向上に関するものである。
近年、モバイルコンピューター、デジタルカメラなどの移動体電子機器をはじめとする小型軽量を求められる電動機器が急速に増加する傾向にある。これらの機器の電源として、密閉型ニッケル水素蓄電池が、ニッケルカドミウム蓄電池や鉛蓄電池等よりも単位体積および単位質量当たりのエネルギーが高い上、環境にクリーンな電源として最近特に注目されている。また、ニッケル水素蓄電池は、過充電時に正極で発生する酸素を水素吸蔵合金負極で吸収する事が可能であるため、充電制御方式がリチウムイオン電池に比べて単純でよく、充電回路も簡単になり安価である利点を有している。
しかしながら、水素吸蔵合金は電解液中で腐蝕して容量が低下するなどの理由によって、正極に比べて過剰な容量の水素吸蔵合金を具備しなければならず、エネルギー密度の向上が達成し難いという欠点を有していた。また、耐食性に優れ、長寿命を有する水素吸蔵合金は、活性化が遅く、そのまま電極に用いた場合、充分な放電特性を発揮するまでの初期の活性化に時間を要し、数十回から場合によっては数百回の充放電が必要となっている。
耐食性の高い水素吸蔵合金の活性化が遅いという欠点を解決するため、その表面処理法について多くの提案がなされている。特許文献1には、pH値が0.5〜3.5の酸性水溶液により表面処理を行う方法が開示されている。
特開平7−73878号公報(段落0011) 該特許文献に記載されている方法を用いると、酸処理により、水素吸蔵合金の活性度が向上するが、サイクル性能の維持もしくは向上に対する効果は大きくない。これは、水素吸蔵合金を酸処理したときに溶出する元素とニッケル水素蓄電池に用いる電解液であるアルカリ金属の水溶液とで溶出元素が異なる為、酸処理した水素吸蔵合金粉末を電池に組み込んだ際に合金粉末の腐蝕が進むためであると考えられる。
特許文献2には、90℃以上で、水酸化ナトリウムを30〜80重量%含む水溶液に浸漬する方法が開示されている。
特開2002−256301号公報(段落0009) 該特許文献に記載されているような30〜80%のNaOH水溶液による処理方法を用いると、水素吸蔵合金粉末の活性度の向上効果、サイクル性能の向上効果共に十分ではない。
特許文献3には、80〜90℃以上で、水酸化リチウムを1〜4N含む水溶液に浸漬する方法が開示されている。
特開平11−204104号公報(段落0010〜0011) 該特許文献に記載されているようなアルカリ水溶液による処理方法を用いると、表面の遷移金属リッチ層の形成が不十分なためか、また、合金粉末の表面に希土類元素等の水酸化物が析出するためか、水素吸蔵合金の活性度向上効果が十分でなく、また、サイクル性能も十分ではない。
特許文献4や特許文献5には、表面に厚さが50〜200ナノメートル(nm)であり、Niを主成分とする層を備える水素吸蔵合金粉末あって、水素吸蔵合金粉末をアルカリ溶液に浸漬した後、希薄な酸性水溶液に浸漬する方法が開示されている。
特開平9−7591号公報(段落0018) 特開平9−171821号公報(段落0007) このようなアルカリによる水溶液による処理の後、酸処理を施す方法を用いると、前記アルカリ処理時に合金粉末の表面に析出する希土類元素の水酸化物は除去できるものの、粒径の大きい合金を用いた場合、その効果は大きくない。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、長寿命で活性な水素吸蔵合金電極を負極に適用することによって、長寿命で高率充放電性能に優れたニッケル水素蓄電池を提供することである。
上記の課題を達成するために、本発明者らは鋭意検討の結果、特定の粒径の水素吸蔵合金粉末を特定の処理液を用いて、その質量飽和磁化を特定の値とし、特定の表面層を具備するものとすることにより、驚くべきことに、優れたサイクル特性と高率放電特性とを備える電池が得られることを見出し、本発明に至った。本発明は、以下の構成とすることによって前記課題を解決する。
(1)本発明に係る水素吸蔵合金電極は、希土類元素、ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)を構成元素として含む水素吸蔵合金粉末を活物質とする水素吸蔵電極において、前記水素吸蔵合金粉末が、平均粒径が20〜35μm、質量飽和磁化が1〜5emu/gであって、その表面に、磁性を有するNiおよびCoを含み、空洞がなく連続した表面層を備えたことを特徴とする水素吸蔵合金電極である。
ここに、質量飽和磁化は、試料である水素吸蔵合金粉末0.3グラムを精秤し、サンプルホルダーに充填して(株)理研電子製、振動試料型磁力計(モデルBHV−30)を用いて5キロエルステッドの磁場をかけて測定した値とする。また、ここでいう表面とは、粉末の外面から深さ400〜500nmの領域を指す。なお、表面層は粉末の断面を電子顕微鏡や収束イオンビーム装置を用いて観察することによってその存在を確認することができる。ここでいう空洞のない連続した表面層とは、合金粉末の断面を電子顕微鏡や収束イオンビーム装置を用いて拡大して観察したときに、水素吸蔵合金粉末の表面に切れ切れに点在するのではない連続した層であって、層中に空洞(鬆)がないものを指す。また、前記表面層がNiおよびCoを構成元素として含むことは、粉末の断面を透過形電子顕微鏡を用いた調査によって確認することができる。
(2)本発明に係る水素吸蔵合金電極の製造方法は、前記希土類元素、ニッケルおよびコバルトを構成元素として含み、且つ、LiOHを0.6〜1.0M/dm3、NaOHを6〜8M/dm3含むアルカリ水溶液に浸漬処理した水素吸蔵合金粉末を適用することを特徴とする前記(1)に記載の水素吸蔵合金電極の製造方法である。
(3)本発明に係る水素吸蔵合金電極の製造方法は、前記水素吸蔵合金粉末を浸漬処理する時のアルカリ水溶液の温度が100℃〜該水溶液の沸点であることを特徴とする前記(2)に記載の水素吸蔵合金電極の製造方法である。
(4)本発明に係る水素吸蔵合金電極の製造方法は、前記希土類元素、ニッケルおよびコバルトを構成元素として含み、平均粒径が20〜35μmである水素吸蔵合金粉末を、前記アルカリ水溶液にし、該浸漬中処理浴を撹拌して浸漬処理する第1工程と、該浸漬処理によって発生した希土類元素を主成分とする元素の水酸化物を合金表面から分離する第2工程と、処理された合金を洗浄する第3工程と、水素を脱離する第4工程とを有することを特徴とした、前記(1)に記載の水素吸蔵合金電極の製造方法である。前記第1工程の撹拌の方法、速度は特に限定されるものではなく、処理液中に投入した水素吸蔵合金粉末が沈降せずに処理浴中に均一に分散していればよい。
(5)本発明に係る水素吸蔵合金電極の製造方法は、前記第2工程において、水素吸蔵合金粉末の分散液に超音波を当てた後、水素吸蔵合金粉末を流水にさらすことを特徴とする(4)に記載の水素吸蔵合金電極の製造方法である。
(6)本発明に係る水素吸蔵合金電極の製造方法は、前記第3工程において、洗浄液として、濃度が1/100M/dm3以下の濃度を有する塩酸または有機酸の水溶液を用いることを特徴とする前記(4)に記載の水素吸蔵合金電極の製造方法である。
(7)本発明に係る水素吸蔵合金電極の製造方法は、前記第4工程において、水素吸蔵合金粉末を80℃以上、pH9以下の温水にさらした後、水素吸蔵合金粉末を水中に投入して45℃以下の分散液を用意し、該分散液に過酸化水素を添加することを特徴とする前記(4)に記載の水素吸蔵合金電極の製造方法である。
(8)本発明に係る水素吸蔵合金電極は、前記水素吸蔵合金粉末の表面にカルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、キサンタンガム、ウエランガム、ポリビニルアルコール(PVA)の少なくとも1種とスチレンブタジエンゴム(SBR)からなる被膜を配置したことを特徴とする前記(1)に記載の水素吸蔵電極である。
(9)本発明に係る水素吸蔵合金電極の製造方法は、前記第4工程を終えた水素吸蔵合金粉末に、CMC、HPMC、キサンタンガム、ウエランガム、PVAの少なくとも1種とSBRを含む分散液を添加混練したのち乾燥することによって、該合金粉末の表面にCMC、HPMC、キサンタンガム、ウエランガム、PVAの少なくとも1種とSBRを含む被膜を形成する第5工程を有することを特徴とする前記(8)に記載の水素吸蔵合金電極の製造方法である。
(10)本発明に係るニッケル水素蓄電池は、前記希土類元素、NiおよびCoを構成元素として含み、平均粒径が20μmから35μmであって、質量飽和磁化が1〜5emu/gであり、その表面に、磁性を有するニッケルとコバルトを含み、空洞がなく連続した表面層を備える水素吸蔵合金粉末、または、該水素吸蔵合金粉末の表面にCMC、HPMC、キサンタンガム、ウエランガム、PVAの少なくとも1種とSBRからなる被膜を配置した水素吸蔵合金粉末を有する水素吸蔵合金電極を備えたことを特徴とするニッケル水素蓄電池である。
本発明の請求項1によれば、高率放電性能と充放電サイクル性能に優れたニッケル水素蓄電池用水素吸蔵電極を得ることができる。
本発明の請求項2によれば、短時間の浸漬処理で表面に磁性を有するNiおよびCoを含み、連続した均一な厚さの表面層を有する水素吸蔵合金粉末を得ることができる。
本発明の請求項3によれば表面に磁性を有するNiおよびCoを含み、連続した均一な厚さの表面層を効率よく形成させることができる。
水素吸蔵合金粉末の表面に、希土類元素やマンガンの化合物の偏析が生じると、水素吸蔵合金粉末の電気抵抗が増大し高率放電において良好な性能が得られない。本発明の請求項4〜請求項6によれば、表面に希土類元素等の水酸化物の析出が抑制され、且つ、残存アルカリのない清浄な表面を有する水素吸蔵合金粉末を備え、電気抵抗が小さく高率放電性能の優れた水素吸蔵合金電極を得ることができる。
本発明の請求項7によれば、水素吸蔵合金粉末をアルカリ水溶液中に浸漬処理した際に水素吸蔵合金粉末に取り込まれた水素を除去することによって、水素吸蔵合金粉末が空気に触れても発熱や発火の虞のない水素吸蔵合金粉末となり、変質が抑制された水素吸蔵合金電極を得ることができる。
通常の水素吸蔵合金粉末は、表面に希土類元素などの酸化物や水酸化物などの被膜が形成され、空気などによる酸化からプロテクトされている。しかし、本発明の請求項1に係る水素吸蔵合金粉末は、活性度が高く、表面が清浄であるため酸化を受け易い。従って、水素吸蔵合金粉末を製造後直ちに電池に組み込めば性能が劣ることはないが、水素吸蔵合金粉末を空気中で放置すると酸化されて変質し、性能が劣化してしまう。本発明の請求項8によれば、空気に触れても酸化が抑制され、安定で保管中の変質が抑制された水素吸蔵合金粉末や水素吸蔵合金電極を得ることができ、本発明の請求項9によれば、該水素吸蔵合金電極を容易な方法で作製することができる。
本発明の請求項10によれば、高率放電特性と充放電サイクル性能に優れたニッケル水素蓄電池を得ることができる。
本発明に係る水素吸蔵合金電極は、希土類元素、NiおよびCoを構成元素として含み、平均粒径が20〜35μm、質量飽和磁化が1〜5emu/gであって、その表面に、磁性を有するNiおよびCoを含み、空洞がなく連続した表面層を備えた水素吸蔵合金粉末を活物質とする水素吸蔵合金電極である。本発明に係る水素吸蔵合金の結晶系、構成元素の構成比は特に限定されるものではない。例えば、LaNi5、MmNi5(Mmはミッシュメタルを表す)等のAB5形合金やLaNi3、MmNi3等の、AB3形合金のNiの一部を少なくともCoで置換したものを適用することができる。さらに、前記Niの一部をCo以外にMn、Al、Fe、Cu、Cr等の金属元素で置換したものを適用することができる。中でも、MmNi5系合金のNiの一部をCo以外にMnおよびAlで置換した水素吸蔵合金は、容量が大きく、充放電サイクル特性にも優れるので好適である。
水素吸蔵合金粉末の粒径が小さいと、比表面積が増大して腐蝕し易くなるため寿命性能が低下する虞がある。また、水素吸蔵合金粉末の粒径が小さくなるに従い、充填密度が低下する欠点がある。逆に、平均粒径が大きいと、充填密度が高くなるが、電極の作用面積が小さいためか高率放電性能が低い欠点があり、また、電池に組み込んで充放電を行ったときに、水素吸蔵合金粉末に割れが生じ、その一部が電極から脱離したり、水素吸蔵合金電極の集電機能が低下するためか、充放電サイクルを繰り返し行ったときに容量が大きく低下する虞がある。本発明においては、水素吸蔵合金の平均粒径を20〜35μmとすることによって、充填密度および高率放電特性の低下を防ぎ、且つ、電池に組み込んで充放電を繰り返し行っても水素吸蔵合金粉末の割れ(微細化)が抑制され、サイクル性能の優れた水素吸蔵合金電極を得ることができる。所定の粒径、形状を有する水素吸蔵合金粉末を得るためには粉砕機や分級機が用いられる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルやハンマーミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいは本特許の表面処理水溶液を用いて湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
前記のように、本発明に係る水素吸蔵合金電極の水素吸蔵合金粉末は、表面に磁性を有するNiおよびCoを含み、空洞がなく連続した表面層を備え、その質量飽和磁化が、1〜5emu/gである。通常(表面に磁性を有するコバルトとニッケルを含む表面層を備えず、質量飽和磁化が0.1emu/g未満の水素吸蔵合金粉末)を活物質として適用した水素吸蔵合金電極の場合、水素の吸蔵放出速度が遅く、急速な充電を行おうとすると、水素の吸蔵が追いつかないために電極表面から気体状の水素が発生して蓄電池の内圧を上昇させる虞がある。また、高率放電性能が劣る欠点がある。前記磁性を有するニッケルとコバルトを含み、空洞がなく連続した表面層は、水素吸蔵合金電極が電気化学反応によって水素を吸蔵したり、水素吸蔵合金粉末に吸蔵した水素をOH-イオンとして電解液中に放出したりするときの触媒の作用をすると考えられる。
水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化の値は、表面に生成させた前記表面層の生成量を反映している。質量飽和磁化が1emu/g未満では、前記表面層の生成量が少ないためか、その水素吸蔵電極の電極反応に対する触媒作用が不十分である。また、質量飽和磁化が大きくなるに従い水素吸蔵に寄与しない表面層の比率が増大するために、水素吸蔵合金粉末の水素吸蔵能力(水素吸蔵量)が低下する。特に質量飽和磁化が5emu/gを超えると、水素吸蔵量が顕著に低下するので、本発明においては水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化を5emu/gとするのが良い。本願発明に係る平均粒径が20〜35μm、質量飽和磁化が1〜5emu/gの水素吸蔵合金粉末においては、表面層の厚さが約50〜400nmである。さらに、表面層を生成させた場合においても水素吸蔵合金粉末の平均粒径が35μmを超えると水素吸蔵合金粉末内の水素の固相内拡散が追いつかなくなるためか、高率放電性能の向上効果が得られない虞がある。本発明に係る水素吸蔵合金電極においては、水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化を1〜5emu/gとし、且つ、平均粒径を35μm以下とすることによって高率放電特性に優れ、充放電サイクル性能の優れた水素吸蔵合金電極を得る。
前記水素吸蔵合金電極の表面層の生成量が少ないと、その触媒作用が十分でなく、逆に多いと水素吸蔵合金粉末と電解液の界面において水素の移行が阻害される。1個の水素吸蔵合金粉末に注目したときに、その表面層の形成にむら(表面層が切れ切れに存在したり、表面層に空洞がある状態)があると、表面層の生成量が少ない箇所や多過ぎる箇所、表面層中に空洞がある箇所では電極反応が起き難く、表面層の生成量が適当な箇所のみに電極反応が集中して起きる(該箇所の電流密度が高くなる)こととなり、分極が大きくなる虞がある。本発明に係る水素吸蔵合金粉末における前記表面層は、連続した層をなしており、層中に空洞がない層である。また、表面層の界面が平滑(凹凸がないこと)であって、厚さが均一であることがさらに好ましい。
本発明に係る水素吸蔵合金粉末は、前記希土類元素、ニッケルおよびコバルトを構成元素として含む水素吸蔵合金粉末を、LiOHを0.6〜1.0M/dm3、NaOHを6〜8M/dm3含むアルカリ水溶液に浸漬処理することによって得ることができる。該アルカリ水溶液に水素吸蔵合金粉末を浸漬すると、LiOHを含まないNaOHやKOHの水溶液を用いて浸漬処理する場合に比べて、浸漬処理時にCo、Niの溶出が抑制され、かつ、水素吸蔵合金に含まれる希土類元素の他、マンガンやアルミニウムの溶出がゆっくり進むためか、連続していて空洞がなく、界面の平滑な表面層が生成する。
NaOHとLiOHの両方を含む処理液において、処理液のNaOHの濃度が6M/dm3未満では、生成する水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化の値が低く、本発明に係る1emu/g以上の質量飽和磁化を有する水素吸蔵合金粉末を得ることが困難である。処理液のNaOHの濃度を7M/dm3以上とすると表面層の生成速度が速くなり、処理時間が短くなるので好ましい。また、処理液のLiOHの濃度が0.6M/dm3未満では本発明に係る空洞のない連続した表面層を備える水素吸蔵合金粉末を得ることが困難である。処理液のLiOHの濃度を0.8M/dm3以上とすると空洞がなく連続した表面層であって、且つ、平滑で厚さの均一な表面層が得られるので好ましい。
NaOHの濃度が8M/dm3を超えると、0.6〜0.7M/dm3の濃度のLiOHを含む液の粘度が高く、また、0.8M/dm3以上の濃度のLiOHを溶解させることが困難であるので処理液に適さない。
また、LiOHの濃度が1M/dm3を超えると、NaOHの濃度を所定の質量飽和磁化を得るための最低の濃度である6M/dm3に設定したとしても水溶液の粘度が急激に増大し、かつ、前記のように冷却時にLiOHが水素吸蔵合金粉末表面に析出する虞が生じるので、処理液として適さない。
以上の理由から処理液に含まれるNaOHの濃度を6〜8M/dm3に設定するのが好ましく、7〜8M/dm3に設定するのがさらに好ましい。また、LiOHの濃度を0.6〜1M/dm3に設定するのが好ましく、0.8〜1M/dm3に設定するのがさらに好ましい。
前記、表面に連続した空洞のない表面層を有する水素吸蔵合金粉末は、前記希土類元素、ニッケルおよびコバルトを構成元素として含む水素吸蔵合金粉末をLiOH単独で含む水溶液であって、LiOHの濃度が5M/dm3以上であるアルカリ水溶液中に浸漬処理することによって得ることができる。但し、浸漬処理にLiOHのみを溶解させたアルカリ水溶液を用いた場合には、表面層の生成速度が極めて遅く、そのため、浸漬処理に長時間を要する欠点がある。また、浸漬処理によって表面層を形成するには、水溶液中のLiOH濃度を5M/dm3以上とすることが必要であり、さらには6M/dm3以上とすることが好ましいが、該濃度のLiOH水溶液は粘度が高く、浸漬処理が難しい欠点がある。また、LiOHの水に対する溶解度が低いために、浸漬処理後に水素吸蔵合金粉末の温度が低下したときに水素吸蔵合金に付着した処理液に含まれるLiOHが水素吸蔵合金表面に析出し、該析出物は、浸漬処理に続く洗浄工程においても除去し難い欠点がある。
さらに、表面層を実用上支障のない程度の速さ(浸漬処理時間が約40時間、好ましくは20時間で済む)で生成させるには、LiOH単独よりも、NaOHとLiOH混合水溶液を適用し、且つ、浸漬処理の温度を100℃〜沸点の範囲内に設定するのが好ましい。処理温度は100℃以上で処理速度が劇的に向上するので好ましく、沸点以上では反応速度が速くなりすぎ、制御が困難になるため沸点以下が好ましい。また、浸漬処理を浸漬処理液の沸点以上で行うと反応が促進され、処理時間の短縮を図ることが可能となるが、連続した空洞のない表面層が形成出来ない虞があるので好ましくない。さらに、浸漬浴の温度分布を均一に保つために、浸漬槽の加温に際しては、槽を底面、側面の全体から加温することが好ましい。
また、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に先だって、水素吸蔵合金粉末に予め水素を吸蔵させておくと、水素吸蔵合金の電位が卑な方向にシフトするので、浸漬処理時にNiとCoの溶出を低減させることが出来ることから好ましい。この際の水素の吸蔵量については特に限定されるものではないが、5%以上の水素を含有させた場合、水素吸蔵合金粉末の電位をNiやCoが溶解する電位に比べてはるかに卑な電位とすることができ、NiとCoの溶出を大幅に低減させることが出来ることから好ましい。また、該方法によれば、効率よく表面層を形成する事が出来、最小限の表面層厚みで十分な活性が得られるため、合金の容量の低下を最小限に止めることができる。
浸漬処理による反応が進むと、水素吸蔵合金粉末の表面に希土類元素、マンガンやアルミニウムの水酸化物が水素吸蔵合金の表面に堆積したり、処理浴のアルカリ濃度や温度が不均一になり反応にむらが起きる虞がある。水素吸蔵合金粉末の表面に希土類元素、マンガンやアルミニウムの水酸化物が堆積すると、粉体抵抗(粉末の電気抵抗)が増大し、水素吸蔵合金電極の集電機能が損なわれる虞がある。前記水素吸蔵合金表面への水酸化物の堆積を抑制し、且つ、反応のむらをなくすために、浸漬処理中、水素吸蔵合金粉末を投入した処理浴を撹拌し続けることが好ましい。処理浴の撹拌の方法は特に限定されないが、例えばスクリュー形の撹拌機を用いて撹拌することによって処理液に対流を起こさせ、水素吸蔵合金粉末が沈降するのを防ぎ、液が均一に混ざるようにすればよい。このことによって、前記処理液の浴槽を底面や側面から加熱することとあわせて処理浴の温度分布を一層均一にし、簡便にかつ安価に均質な表面層を形成させることができる。
前記のように浸漬処理中、水素吸蔵合金粉末を投入したアルカリ水溶液を撹拌し続けても、水酸化物が水素吸蔵合金の表面に堆積するのを完全になくすことは難しい。従って、洗浄に先だって、これらの水酸化物を除去することが好ましい。水酸化物を除去するのに先だってあらかじめ濾過をして、希土類元素、マンガン、アルミニウム等のイオン含有の処理液を除去しておくと、前記元素が化合物の形で再析出するのを防止できるので好ましい。水素吸蔵合金の表面から水酸化物を除去する方法としては、塩酸の水溶液であって、0.1〜数十分の1M/dm3程度の希薄溶液によって希土類酸化物を溶解しつつ濾過する方法が安価であるが、表面層が酸により溶解して組成が変動し電解液に対する耐食性が低下する虞があるので、長寿命を要求される電池に対しては好ましくない。水素吸蔵合金粉末の表面から前記水酸化物を剥落させるには、水素吸蔵合金粉末に水中で超音波を照射するのが好ましい。超音波照射によって希土類不純物の水酸化物を合金から剥離させた後、水溶液中の沈降速度の差を利用する方法(即ち、合金粉末を投入した攪拌タンク下部から流水をフローさせ、沈降しにくい希土類不純物をフロー水と共に除去する方法)は、表面組成が変動せず耐食性が低下しないため好ましい。
処理によって得られた合金粉末は、アルカリ性の処理液が付着しており、そのまま放置すると酸化され易い。水素吸蔵合金粉末表面に付着したアルカリは除去し難い。従って、浸漬処理によって表面にアルカリが付着した水素吸蔵合金粉末を、除去が容易な酸性溶液を用いて洗浄することによって、前記アルカリを中和除去することが好ましい。具体的には洗浄液に1/100M/dm3以下の濃度の塩酸および蟻酸や酢酸などの有機酸の水溶液を用いることが好ましい。濃度が1/100M/dm3以下の塩酸、蟻酸や酢酸などの有機酸の水溶液は、同濃度の硝酸水溶液や硫酸水溶液などの他の無機酸の水溶液に比べて水素吸蔵合金に対する腐蝕性が低く、且つ、水洗によって除去し易い利点がある。但し、洗浄液の塩酸濃度が1/100M/dm3を超えると折角生成させた遷移金属リッチ層の主構成成分であるニッケルやコバルトを腐蝕する虞があるので、洗浄液の塩酸水溶液の濃度を1/100M/dm3以下とすることが好ましい。洗浄液に前記塩酸や有機酸の水溶液を適用することによって、洗浄水を少量にし、排水量を低減する事ができる。
前記浸漬処理を行った水素吸蔵合金粉末は、浸漬処理時に発生した水素を内部に取り込んでいる。そのまま大気中に放置すると、大気中の酸素と反応して発熱し、水素吸蔵合金粉末の変質を招いたり、さらには発火の虞がある。従って、浸漬処理後の水素吸蔵合金粉末から水素を除去しておく必要がある。水素吸蔵合金粉末中の水素を脱離させるには、水素吸蔵合金粉末を過酸化水素水等の酸化剤に接触させる方法がある。しかし、浸漬処理後の水素吸蔵合金粉末をいきなり酸化剤に接触させる方法では大量の酸化剤を必要とする欠点がある。該欠点を解消するには、水素吸蔵合金粉末を酸化剤と接触させるのに先だって、温度80℃以上、pHが9以下、好ましくはpHが5〜8の温水にさらすことが好ましい。該温水処理によって、水素吸蔵合金中に取り込まれた水素のうちのかなりの水素を除去することができ、該温水処理に続いて実施する酸化剤との接触に使用する酸化剤の消費量を大幅に削減することができる。前記温水処理に適用する温水の温度が80℃未満では水素除去効果が得られず、pHが5未満または9を超えると水素吸蔵合金粉末を腐蝕する虞があり好ましくない。
酸化剤の種類は特に限定されるものではないが、不純物元素の混入を避け得る点から、水素と酸素のみからなる過酸化水素が好ましい。酸化剤として過酸化水素を用いる場合、
45℃以上の温度において過酸化水素が水素吸蔵合金粉末の表面に接触すると酸素ガスを放出し自己分解をするので効率が悪く、45℃以下に冷却して用いると効率よく合金中の水素と反応するのでより好ましい。
処理後の水素吸蔵合金粉末は活性であり、酸化され易く、酸化されると合金の活性が低下する。該酸化を防ぐため、処理された水素吸蔵合金粉末の表面を酸化防止機能を持つ被膜でコートすることが好ましい。コート剤として、特定のコート剤を用いることで、水素吸蔵合金粉末を電池に組み込む時に除去の必要が無く、優れた酸化防止作用が得られる。具体的には水素吸蔵合金粉末の表面にCMC、HPMC、キサンタンガム、ウエランガム、PVAの少なくとも1種とスチレンブタジエンゴム(SBR)とで構成される被膜を形成する。水素吸蔵合金粉末に前記CMC、HPMC、キサンタンガム、ウエランガム、PVAの少なくとも1種を溶解し、かつ、粉末状のSBRを分散させた水溶液を添加して混練した後、乾燥することによって前記被膜を形成させる。
水素吸蔵合金粉末に対する被膜の比率は特に限定されるものではないが、被膜の水素吸蔵合金粉末に対する比率を0.5〜3重量%とすることが好ましく、1〜2重量%とすることがさらに好ましい。該比率が0.5重量%未満では酸化防止機能が得られず、3重量%を超えると水素吸蔵合金電極の電気抵抗を増大させる虞があるので好ましくない。CMCとHPMC、キサンタンガム、ウエランガム、PVAは、水素吸蔵合金粉末の表面に膜を形成し、SBR粉末は該膜中に分散して存在する。CMC、HPMC、キサンタンガム、ウエランガム、PVAおよびSBRは何れもアルカリ電解液との親和性が良いが、CMC、HPMC、キサンタンガム、ウエランガム、PVAのみで構成される膜は、電解液浸透の妨げになる。該膜中にSBR粉末を分散させることによって、水素吸蔵合金粉末の表面に向かって電解液が浸透し易くなる。CMC、HPMC、キサンタンガム、ウエランガム、PVAの少なくとも1種とSBRの混合比率は特に限定されるものではないが、重量比で1:2〜1:4が好ましい。該比率が小さいと酸化防止効果を得にくく、該比率が大きいと電解液の浸透が遅くなる虞がある。水素吸蔵合金粉末の表面に、前記被膜を形成させることで長期間の保管が可能となった。但し、前記被膜を形成させた水素吸蔵合金粉末においても、大気中に放置すると非常にゆっくりではあるが徐々に酸化され表面が変質する。長期に亘り保管する場合には、酸素分圧を0.1torr以下とした不活性雰囲気または減圧下で保管することが好ましい。また、前記被膜は、水素吸蔵合金粉末を電池に組み込んだ後も、水素吸蔵合金粉末表面に被膜として存在し、結着剤としての作用をする。
本発明に係るニッケル水素蓄電池に適用する正極活物質としては、水酸化ニッケルに水酸化亜鉛、水酸化コバルトを混合したものが用いられるが、共沈法によって均一組成の水酸化ニッケル複合水酸化物が好ましい。水酸化ニッケル複合酸化物以外の添加物には、導電改質剤剤として水酸化コバルト、酸化コバルト、等を用いるが、前期水酸化ニッケル複合酸化物に水酸化コバルトをコートしたものや、これらの水酸化ニッケル複合酸化物の一部を酸素又は酸素含気体、又は、K228、次亜塩素酸などの薬剤を用いて酸化したものを用いることができる。添加剤としては酸素過電圧を向上させる物質としてY、Yb等の希土類元素の酸化物や水酸化物を用いることが出きる。
本発明に係るニッケル水素蓄電池の水素吸蔵合金電極には、AB5型の結晶構造を有し、例えばMmNi5(Mmは希土類元素の混合物)で表される合金のNiの一部を主としてCo、Mn、Alで置換した水素吸蔵合金粉末が好適である。Niに置き換わる置換元素として、前記3種の元素以外に、さらに、Cu、Feを加えてもよい。
本発明に係るニッケル水素蓄電池に適用する水素吸蔵合金電極は、前記水素吸蔵合金粉末の他に、該合金粉末のアルカリ電解液に対する耐食性を高めるための添加剤として、イットリウム、イッテルビウム、エルビウム、ガドリウム、セリウムの1種又は2種以上の元素を酸化物や水酸化物あるいは単体の粉末として混合添加したり、予め水素吸蔵合金粉末中に合金の形で含有させておいてもよい。
以上、正極(ニッケル電極)及び負極(水素吸蔵合金電極)の主要構成成分である正極活物質および負極活物質について詳述したが、前記正極及び負極には、前記主要構成成分の他に、導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等が、他の構成成分として含有されてもよい。
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗片状黒鉛,土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、気相成長炭素、金属(銅,ニッケル,金等)粉、金属繊維等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。
これらの中で、導電剤としては、電子伝導性及び塗工性の観点よりケチェンブラックが望ましい。導電剤の添加量を、正極または負極の総重量に対して0.1重量%〜2重量%とすると導電性を有しつつ、電極の容量を大きく低下させないので好ましい。特にケッチェンブラックを0.1〜0.5μmの超微粒子に粉砕して用いると必要炭素量を削減できつつ、保液性が向上し、電池の内部抵抗の低減を図ることができるため望ましい。これらの混合方法は、物理的な混合であり、その理想とするところは均一混合である。そのため、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミル、ホモジナイザといったような粉体混合機を乾式、あるいは湿式で混合することが可能である。
前記結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマーを、本発明特許の表面コート剤と組み合わせて合わせて用いることができる。結着剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して0.4〜1.5重量%が好ましい。
前記増粘剤としては、通常、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の多糖類等を1種または2種以上の混合物として用いることができる。増粘剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して0.1〜0.4重量%が好ましい。
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料であれば何でも良い。通常、ポリプロピレン,ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は、正極または負極の総重量に対して添加量は3重量%以下が好ましい。
正極および負極は、前記活物質、導電剤および結着剤を水やアルコール、トルエン等の有機溶媒に混合させた後、得られた混合液を下記に詳述する集電体の上に塗布し、乾燥することによって、好適に作製される。前記塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコータ等の手段を用いて任意の厚みおよび任意の形状に塗布することが望ましいが、これらに限定されるものではない。
集電体は、構成された電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体であればよく特に限定されるものではない。例えば、ニッケルやニッケルメッキを行った鋼板を好適に用いることが出来、発泡体、金属繊維からなるスポンジ状成形体、平板に凸凹加工を施した3次元基材の他に、パンチング鋼板等の2次元基材が用いられる。さらに、軽量な焼成炭素、導電性高分子を適用することもできる。厚みの限定は特にないが、10〜700μmのものが用いられる。
これらの中で、正極の集電体としては、アルカリに対する耐食性と耐酸化性に優れているNiを、集電機能に優れた構造である発泡体等の多孔体構造としたものを使用することが好ましい。
負極の集電体としては、安価で、且つ電導性に優れる鉄箔に、耐酸化性向上のためにNiメッキを施した、パンチング体を使用することが好ましい。さらに、鋼板のパンチング径は1.7mm以下、開口率40%以上であることが好ましく、これにより少量の結着剤でも負極活物質と集電体との密着性は優れたものとなる。
集電体と活物質の接着性、導電性を高め、さらに集電体自身の耐酸化性を向上させる目的で、集電体であるニッケルの表面をNi粉末やカーボンや白金等を付着させて処理した集電体を用いることができる。これらの材料については表面を酸化処理することも可能である。
密閉型ニッケル水素電池用セパレータとしては、優れたレート特性を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。密閉型ニッケル水素電池用セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン,ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂や、ナイロンを挙げることができる。
密閉型ニッケル水素電池用セパレータの空孔率は強度、ガス透過性の観点から80体積%以下が好ましい。また、充放電特性の観点から空孔率は20体積%以上が好ましい。
また、密閉型ニッケル水素電池用セパレータは、親水化処理を施す事が好ましい。
例えば、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂繊維からなる不織布または織布に、スルフォン化処理、コロナ放電処理、PVA処理を施したり、アクリル酸やメタアクリル酸などの親水基を重合させることによって親水性を付与することができる。
電解液としては、一般にアルカリ電池等への使用が提案されているものが使用可能である。水を溶媒とし、溶質としてはカリウム、ナトリウム、リチウムを単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。合金への防食剤や、正極での過電圧向上のためや、負極の耐食性の向上や、自己放電向上の為の電解液への添加剤として、イットリウム、イッテルビウム、エルビウム、カルシウム、硫黄、亜鉛等を単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
電解液中の電解質塩の濃度としては、高い電池特性を有する電池を確実に得るために、水酸化カリウムの濃度を5〜7M/dm3、水酸化リチウムの濃度を0.5〜0.8M/dm3とするのが好ましい。
本発明に係るニッケル水素蓄電池は、電解質を、例えば、ニッケル水素蓄電池用セパレータと正極と負極とを積層する前または積層した後に注液し、最終的に、外装材で封止することによって好適に作製される。また、正極と負極とがニッケル水素蓄電池用セパレータを介して積層された発電要素を巻回してなるニッケル水素蓄電池においては、電解質は、前記巻回の前後に発電要素に注液されるのが好ましい。注液法としては、常圧で注液することも可能であるが、真空含浸方法や加圧含浸方法や遠心含浸法も使用可能である。
密閉型ニッケル水素蓄電池の外装体の材料としては、ニッケルメッキした鉄やステンレススチール、ポリオレフィン系樹脂等が一例として挙げられる。
密閉型ニッケル水素蓄電池の構成、構造は、特に限定されるものではなく、正極、負極および単層又は複数の層からなるセパレータを有するコイン電池やボタン電池、角型電池、扁平型電池、さらに、ロール状の正極、負極およびセパレータを有する円筒型電池等が一例として挙げられる。
以下に、好ましい組成であるMmNiCoAlMn系の水素吸蔵合金粉末を適用した実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、水素吸蔵合金の組成を初めとして本発明は以下の記載により限定されるものではなく、試験方法や構成する電池の正極活物質、水素吸蔵合金以外の負極材料、正極、負極、電解質、セパレータ並びに電池形状等は任意である。
(実施例1)
(水酸化ニッケル粒子の合成)
硫酸ニッケルと硫酸亜鉛および硫酸コバルトを所定比で溶解した水溶液に硫酸アンモニウムと水酸化ナトリウム水溶液を添加してアンミン錯体を生成させた。反応系を激しく撹拌しながら更に苛性ソーダを滴下し、反応中の反応系の温度を45±2℃、pHを12.0±0.2に制御して芯層母材となる球状高密度水酸化ニッケル粒子を水酸化ニッケル:水酸化亜鉛:水酸化コバルト=84.66:5.46:1.72の比となるように合成した。
(水酸化ニッケル粒子表面への表面層の形成)
前記高密度水酸化ニッケル粒子を、水酸化ナトリウムでpH12.0±0.2に制御したアルカリ水溶液に投入した。該溶液を撹拌しながら、所定濃度の硫酸コバルト、アンモニアを含む水溶液を滴下した。この間、水酸化ナトリウム水溶液を適宜滴下して反応浴のpHを10〜13の範囲に維持した。約1時間pHを12.0±0.2の範囲に保持し、水酸化ニッケル粒子表面にCoを含む混合水酸化物から成る表面層を形成させた。該混合水酸化物の表面層の比率は芯層母粒子(以下単に芯層と記述する)に対して、6.5wt%であった。
(表面層の酸化処理)
前記混合水酸化物から成る表面層を有する水酸化ニッケル粒子50gを、温度110℃の30wt%(10M/dm3)の水酸化ナトリウム水溶液に投入し、充分に攪拌した。続いて表面層に含まれるコバルトの水酸化物の当量に対して過剰のK228を添加し、粒子表面から酸素ガスが発生するのを確認した。活物質粒子をろ過し、水洗、乾燥した。
(ニッケル電極の作製)
前記活物質粒子にカルボキシメチルセルローズ(CMC)水溶液を添加して前記活物質粒子:CMC(固形分)=99.5:0.5のペースト状とし、該ペーストを380g/m2のニッケル多孔体(住友電工株式会社社製ニッケルセルメット#8)に充填した。その後80℃で乾燥した後、所定の厚みにプレスし、表面にポリテトラフロロエチレンコーティングを行い、集電リードを溶接し、幅34mm長さ260mm(無塗工部2.5×380mm)の容量3000mAhのニッケル電極(正極)とした。
(水素吸蔵合金電極の作製)
(第1工程)
平均粒径30μm、AB5形希土類系のMmNi3.6Co0.6Al0.3Mn0.35(Mmはミッシュメタルを表す)で表される組成を有する水素吸蔵合金粉末1Kgを、NaOHの濃度が7M/dm3、LiOHの濃度が1M/dm3である110℃の浸漬処理水溶液1dm3中に投入し、角度付ファンタービン形状の攪拌翼を用いて、200rpmで攪拌しつつ、混合して処理を行った。浸漬処理時間を10時間とした。得られた水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化は1emu/gであった。処理中に水素吸蔵合金粉末の抜き取りを行い、水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化が1emu/gになるまで浸漬処理を行った。該浸漬処理の所要時間は10時間であった。
(第2工程)
その後、加圧濾過して処理液と合金を分離した後、純水を合金重量と同重量添加して28KHzの超音波を10分間かけた。その後、緩やかに攪拌しつつ純水を攪拌層下部より注入し、排水をフローさせて合金より遊離する希土類水酸化物を除去した。
(第3工程)
その後、PH10以下になるまで0.01M/dm3の塩酸水溶液を用いて洗浄、加圧濾過を繰り返した後、純水にて水洗した後、加圧濾過した。
(第4工程)
第3工程の後、PH約7、80℃の温水に暴露して水素脱離を行った。その後、温水を加圧濾過して、再度の水洗を行い合金を25℃に冷却し、攪拌下4%過酸化水素を合金重量と同量加え、水素脱離を行った後、再度水洗を行い、加圧濾過して、含水率2%のウェット状態の水素吸蔵合金粉末を得た。この水素吸蔵合金粉末を減圧下、80℃で乾燥して乾燥状態の水素吸蔵合金粉末を得た。
(水素吸蔵合金粉末の表面及び断面の観察)
SEMにより前記乾燥状態の水素吸蔵合金粉末の表面を、透過形電子顕微鏡と収束イオンビーム装置を用いて水素吸蔵合金粉末の断面を観察した。
(第5工程)
第4工程で得られたウエット状態の水素吸蔵合金粉末とSBRの水性分散液とHPMC水溶液をそれぞれの固形量で98.93:0.8:0.27重量%の割合で混合し、適量の水を添加してペースト状にし、ブレードコーターを用いて、45μmの鉄に厚み3μmのニッケルメッキを施した、直径1.0mm、開口率43%のパンチング鋼板に塗布した後、80℃で乾燥して、パンチング鋼板に保持された水素吸蔵合金粉末を得た。本水素吸蔵合金粉末を本発明水素吸蔵合金粉末1とする。
前記パンチング鋼板に保持された本発明水素吸蔵合金粉末1を、所定の厚みにプレスして、所定形状に切り出し、幅34mm長さ410mm(無塗工部2.5×410mm)の容量4800mAhの水素吸蔵合金電極(負極)とした。得られた水素吸蔵合電極を本発明水素吸蔵合金電極1とする。
(評価電池の作製)
前記本発明水素吸蔵合金電極1とスルフォン化処理を施した厚み110μmのポリプロピレンの不織布状セパレータと前記ニッケル極板とを組み合わせてロール状に巻回し、6.8M/dm3の水酸化カリウムと0.8M/dm3の水酸化リチウムを溶解したアルカリ電解液を注液し、開弁圧2.4Mpaの弁を具備するsubC形の密閉型ニッケル水素蓄電池を作製した。得られたsubC形の密閉型ニッケル水素蓄電池を本発明電池1とする。
(放電容量の評価)
この電池を25℃で12時間の放置した後、0.02ItAにて600mAh充電し、さらに0.1ItAで10時間充電した後、0.2ItAで1Vまで放電した。その後、0.1ItAで12時間充電、0.2ItAで1Vまで放電する操作を行った。さらに、0.1ItAで16時間充電、0.2ItAで1Vまで放電する操作を2回繰り返し、該操作の2回目の放電における放電容量を0.2ItA放電における放電容量とした。
(高率放電試験)
続いて、0.1ItAで16時間充電し、5℃に5時間放置して十分冷却したのち、0.8Vまで2ItA放電を行った操作を行い、該放電における放電容量の前記0.2ItA放電における放電容量に対する比率(%)を5℃、2ItA放電における放電性能を表す指標とした。
(充放電サイクル試験)
この後、20℃において10時間の放置を行い、1ItAの充電にて電池電圧に5mVの−ΔVが観測されるまで充電し、1.0Vまで1ItA放電を行った。該充放電操作を繰り返し行い、放電容量が初期容量(該充放電サイクル試験の1サイクル目の放電容量)の60%に低下した時点を寿命として、寿命に至る充放電の回数をサイクル寿命とした。
(単板試験用水素吸蔵電極および開放形セルの作製)
前記水素吸蔵合金極を水素吸蔵合金粉末の重量が1.58gとなるように裁断し、単板試験用水素吸蔵電極とした。活性化処理を施した放電済みのニッケル電極2枚用意し、該2枚のニッケル電極を用い、前記セパレータを介して前記水素吸蔵合金電極を挟み込んだ。なお、前記水素吸蔵電極に対してニッケル電極の容量が大過剰(2枚合わせて2000mAh)になるように設定した。6.8M/dm3のKOH水溶液を電解液として用い、水素吸蔵合金電極の単板試験用開放形セルを作製した。
(水素吸蔵合金電極の単板試験)
前記単板試験用開放形セルを雰囲気温度25℃において12時間の保管後、500mAにて10時間充電した後、0.2ItAで0.6Vまで放電する操作を5回繰り返した。この5回目の放電容量を水素吸蔵合金の重量で割った値を水素吸蔵合金の単位重量当たりの容量(mAh/g)とした。
(実施例2)
質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を本発明水素吸蔵合金粉末2、水素吸蔵合金電極を本発明水素吸蔵合金電極2、ニッケル水素蓄電池を本発明電池2とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は20時間であった。
(高率放電試験)
実施例1と同様、5℃、2ItA放電における放電試験以外に、更に、0.1ItAで16時間充電し、5℃に5時間放置して十分冷却したのち、0.8Vまで4ItA放電を行った。該放電で得られれた放電容量の前記0.2ItA放電における放電容量に対する比率(%)を5℃、4ItA放電における放電性能を表す指標とした。
(実施例3)
質量飽和磁化が3emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた合金を本発明合金粉末3、水素吸蔵合金電極を本発明水素吸蔵合金電極3、ニッケル水素蓄電池を本発明電池3とした。尚、処理に必要な時間は27時間であった。
(実施例4)
質量飽和磁化が4emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた合金を本発明合金粉末4、水素吸蔵合金電極を本発明水素吸蔵合金電極4、ニッケル水素蓄電池を本発明電池4とした。尚、処理に必要な時間は35時間であった。
(実施例5)
質量飽和磁化が5emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた合金を本発明水素吸蔵合金粉末5、水素吸蔵合金電極を本発明水素吸蔵合金電極5、ニッケル水素蓄電池を本発明電池5とした。尚、処理に必要な時間は37時間であった。
(比較例1)
前記で工程1から工程4までの処理しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、得られた合金を比較例水素吸蔵合金粉末1、水素吸蔵合金電極を比較例水素吸蔵合金電極1、ニッケル水素蓄電池を比較例電池1とした。尚、比較例水素吸蔵合金粉末1の質量飽和磁化は0.05emu/gであった。
(比較例2)
質量飽和磁化が0.1emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた合金を比較例水素吸蔵合金粉末2、水素吸蔵合金電極を比較例水素吸蔵合金電極2、ニッケル水素蓄電池を比較例電池2とした。尚、処理に必要な時間は1時間であった。
(比較例3)
質量飽和磁化が6emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様
にして得られた合金を比較例水素吸蔵合金粉末3、水素吸蔵合金電極を比較例水素吸蔵合金電極3、ニッケル水素蓄電池を比較例電池3とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は40時間であった。
(比較例4)
平均粒径が10μmであり、質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を比較例水素吸蔵合金粉末4、水素吸蔵合金電極を比較例水素吸蔵合金電極4、ニッケル水素蓄電池を比較例電池4とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は5時間であった。
(実施例6)
水素吸蔵合金粉末の平均粒径が20μmであり、質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を本発明水素吸蔵合金粉末6、水素吸蔵合金電極を本発明水素吸蔵合金電極6、ニケル水素蓄電池を本発明電池6とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は10時間であった。
(実施例7)
水素吸蔵合金粉末の平均粒径が35μmであり、質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を本発明水素吸蔵合金粉末7、水素吸蔵合金電極を本発明水素吸蔵合金電極7、ニケル水素蓄電池を本発明電池7とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は30時間であった。
(比較例5)
水素吸蔵合金粉末の平均粒径が45μmであり、浸漬処理時間を40時間としたこと以外は実施例1の工程1迄の操作を実施した。得られた水素吸蔵合金粉末を比較例水素吸蔵合金粉末5、水素吸蔵合金電極を比較例水素吸蔵合金電極5、ニケル水素蓄電池を比較例電池5とした。尚、40時間に及ぶ浸漬処理によって得られた水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化は0.8emu/gであった。
(表面層の形成について)
詳細は省くが、収束イオンビーム装置による水素吸蔵合金断面の観察によれば、比較例1、比較例2を除いて、水素吸蔵合金の表面に、空洞がなく連続しており、厚さがほぼ均一な表面層が形成されているのが認められた。透過形電子顕微鏡による観察の結果、形成された表面層が主としてニッケルとコバルトからなることが確認された。該表面層を形成させたものは質量飽和磁化が高いことからも表面層を形成しているNiとCoが磁性を有するものであることが裏付けられた。1例として本発明合金2の表面のSEM写真を図1に、収束イオンビーム装置を用いて観察した断面の写真を図2に示す。なお、図2において1が磁性を有するNiとCoを含む表面層、2が水素吸蔵合金粉末の内部であり、3は、観察用に粉末の表面に析出させたPt層である。
図1に示したように、本発明合金2の表面は、平滑であることが判る。また、図2に示したように、本発明合金2の表面には、均一な厚さ(厚さ:約300nm)を持ち、空洞の無い連続した表面層1が形成されていることが判る。
表1に実施例1〜実施例7、比較例1〜比較例5に係るニッケル水素蓄電池および水素吸蔵電極単極の試験結果を示す。
Figure 2005310605
(質量飽和磁化と高率放電性能の関係についいて)
平均粒径が30μmの実施例1〜5、比較例1〜3の結果を比較すると、質量飽和磁化が1〜5の範囲にある実施例1〜5が、5℃、2ItA放電の放電容量が優れることがわかる。これは、水素吸蔵合金粉末のアルカリ水溶液中への浸漬処理によって、合金に含まれる希土類やアルミニウム、マンガンが溶出し、水素吸蔵合金粉末の表面に触媒活性を有する磁性を有するニッケルとコバルトを含む表面層が生成すること、また、合金表面積が増大したことによるものと考えられる。質量飽和磁化が0.05から3までの水素吸蔵合金粉末は、60℃水素気層中で圧力を加えて水素吸蔵させたときの水素吸蔵量(気相法による水素吸蔵量)を測定した結果から算出した合金の水素吸蔵能力に差が無いため、比較例1、比較例2の水素吸蔵合金電極の5℃、2ItA放電の放電性能が劣っているのは、水素吸蔵合金粉末の水素吸蔵能力が劣っているのではなく、質量飽和磁化0.05、0.1emu/gと低い値であるところから分かるように、水素吸蔵合金粉末の活物質としての活性が不足しているためと考えられる。
(質量飽和磁化とサイクル性能の関係について)
実施例1〜5、比較例3に係る水素吸蔵合金電極単極の放電容量を比較すると、質量飽和磁化が3を超えると合金のグラム当たりの容量が低下していることが分かる。しかしながら、質量飽和磁化が3emu/gを超えても質量飽和磁化5emu/g以下であれば、サイクル寿命は大きく低下せず1000サイクル以上のサイクル寿命を維持している。この理由は、必ずしも明らかではないが、質量飽和磁化が高く、活性化が進んだ水素吸蔵合金粉末を有する水素吸蔵電極を適用した場合、電池に組み込む以前に活性化が進んでいるために、電池内において水素の発生を伴う活性化反応が抑制された結果充電リザーブの減少が抑制され、グラムあたりの容量が小さいにも拘わらず優れたサイクル性能を示したものと考えられる。表1に示したとおり、水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化が1〜5の範囲にある水素吸蔵合金粉末を有する水素吸蔵合金電極を適用した場合に高率放電性能以外に、サイクル性能に於いても優れていることが分かる。
(水素吸蔵合金粉末の平均粒径と質量飽和磁化およびサイクル性能の関係)
水素吸蔵合金粉末の平均粒径が10μmと小さい比較例4の場合は、水素吸蔵合金粉末の耐食性が劣るためか、サイクル性能が劣っている。また、水素吸蔵合金粉末の平均粒径が45μmと大きい比較例5の場合は、浸漬処理による表面層の形成が進み難く、40時間で質量飽和磁化が0.8emu/gまでしか到達せず、活性が不足しているためか、5℃、2ItA放電での放電性能が劣っている。表面処理は短いほど、設備占有時間や加熱エネルギーが少なくて済み、経済的である。40時間を超えると、現実的な量産に適用するのが難しい。表1に示した結果から、水素吸蔵合金粉末の平均粒径が20〜35μmの水素吸蔵合金粉末を適用することによって良好な結果が得られることが分かった。
(実施例8)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、6M/dm3のNaOH水溶液と1M/dm3のLiOHを含む水溶液を用い、質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を本発明合金8、水素吸蔵合金電極を本発明極板8、ニッケル水素蓄電池を本発明電池8とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は40時間であった。
(実施例9)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、8M/dm3のNaOH水溶液と1M/dm3のLiOHを含む水溶液を用い、質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を本発明合金9、水素吸蔵合金電極を本発明極板9、ニッケル水素蓄電池を本発明電池9とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は18時間であった。
(比較例6)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、5M/dm3のNaOH水溶液と1M/dm3のLiOHを含む水溶液を用い、浸漬処理時間を40時間としたこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を比較例水素吸蔵合金粉末6とした。
(実施例10)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、6M/dm3のNaOH水溶液と0.8M/dm3のLiOHを含む水溶液を用い、質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を本発明水素吸蔵合金粉末10、水素吸蔵合金電極を本発明水素吸蔵合金電極10、ニッケル水素蓄電池を本発明電池10とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は40時間であった。
(実施例11)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、7M/dm3のNaOH水溶液と0.8M/dm3のLiOHを含む水溶液を用い、質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を本発明水素吸蔵合金粉末11、水素吸蔵合金電極を本発明水素吸蔵合金電極11、ニッケル水素蓄電池を本発明電池11とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は20時間であった。
(実施例12)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、8M/dm3のNaOH水溶液と0.8M/dm3のLiOHを含む水溶液を用い、質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を本発明水素吸蔵合金粉末12、水素吸蔵合金電極を本発明水素吸蔵合金電極12、ニッケル水素蓄電池を本発明電池12とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は18時間であった。
(実施例13)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、6M/dm3のNaOH水溶液と0.6M/dm3のLiOHを含む水溶液を用い、質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を本発明水素吸蔵合金粉末13、水素吸蔵合金電極を本発明水素吸蔵合金電極13、ニッケル水素蓄電池を本発明電池13とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は40時間であった。
(実施例14)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、7M/dm3のNaOH水溶液と0.6M/dm3のLiOHを含む水溶液を用い、質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を本発明水素吸蔵合金粉末14、水素吸蔵合金電極を本発明水素吸蔵合金電極14、ニッケル水素蓄電池を本発明電池14とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は20時間であった。
(実施例15)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、8M/dm3のNaOH水溶液と0.6M/dm3のLiOHを含む水溶液を用い、質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を本発明水素吸蔵合金粉末15、水素吸蔵合金電極を本発明水素吸蔵合金電極15、ニッケル水素蓄電池を本発明電池15とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は18時間であった。
(比較例7)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、9M/dm3のNaOH水溶液と0.6M/dm3のLiOHを含む水溶液を用い、質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を比較例水素吸蔵合金粉末7、水素吸蔵合金電極を比較例水素吸蔵合金電極7、ニッケル水素蓄電池を比較例電池7とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は16時間であった。
(比較例8)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、6M/dm3のNaOH水溶液と0.5M/dm3のLiOHを含む水溶液を用い、質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を比較例水素吸蔵合金粉末8、水素吸蔵合金電極を比較例水素吸蔵合金電極8、ニッケル水素蓄電池を比較例電池8とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は36時間であった。
(比較例9)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、8M/dm3のNaOH水溶液と0.5M/dm3のLiOHを含む水溶液を用い、質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を比較例水素吸蔵合金粉末9、水素吸蔵合金電極を比較例水素吸蔵合金電極9、ニッケル水素蓄電池を比較例電池9とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は18時間であった。
(比較例10)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、5M/dm3のNaOH水溶液と1.5M/dm3のLiOHを含む水溶液を用い、浸漬処理時間を40時間としたこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を比較例水素吸蔵合金粉末10とした。
(比較例11)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理用水溶液として、6M/dm3のNaOH水溶液と1.5M/dm3のLiOHを含む水溶液を調整したが、水溶液の粘度が非常に高く、処理に適さないものであった。
(比較例12)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、7M/dm3のNaOHを単独で含む水溶液を用い、質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を比較例水素吸蔵合金粉末12、水素吸蔵合金電極を比較例水素吸蔵合金電極12、ニッケル水素蓄電池を比較例電池12とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は18時間であった。
(比較例13)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、7M/dm3のKOHを単独で含む水溶液を用い、質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を比較例水素吸蔵合金粉末13、水素吸蔵合金電極を比較例水素吸蔵合金電極13、ニッケル水素蓄電池を比較例電池13とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は3時間であった。
(比較例14)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、7M/dm3のKOHと1M/dm3のLiOHを含む水溶液を用い、質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を比較例水素吸蔵合金粉末14、水素吸蔵合金電極を比較例水素吸蔵合金電極14、ニッケル水素蓄電池を比較例電池14とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は3.5時間であった。
(比較例15)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、7M/dm3のNaOH水溶液と1.0M/dm3のLiOHを含む水溶液を処理液温度90℃で用い、処理時間を40時間としたこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を比較例水素吸蔵合金粉末15、水素吸蔵合金電極を比較例水素吸蔵合金電極15、ニッケル水素蓄電池を比較例電池15とした。
(実施例16)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、7M/dm3のNaOH水溶液と1.0M/dm3のLiOHを含む水溶液を処理液温度100℃で用い、質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を参考例水素吸蔵合金粉末1、水素吸蔵合金電極を参考例水素吸蔵合金電極1、ニッケル水素蓄電池を参考例電池1とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は42時間であった。
(参考例1)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、7M/dm3のNaOH水溶液と1.0M/dm3のLiOHを含む水溶液を沸点で用い、質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整したこと以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を参考例水素吸蔵合金粉末1、水素吸蔵合金電極を参考例水素吸蔵合金電極1、ニッケル水素蓄電池を参考例電池1とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は10時間であった。
(参考例2)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、5M/dm3のLiOHの水溶液を用い、質量飽和磁化が2emu/gとなるよう処理時間を調整した。また、浸漬処理後処理液の温度が低下してLiOHが析出しないうちに処理液を濾別し、熱水で洗浄して付着した処理液を除去した。それ以外は実施例1と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を参考例水素吸蔵合金粉末2、水素吸蔵合金電極を参考例水素吸蔵合金電極2、ニッケル水素蓄電池を参考例電池2とした。尚、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に必要な時間は70時間であった。
(比較例16)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、3M/dm3のLiOH水溶液を単独で用い、浸漬処理時間を70時間としたこと以外は実施例1の工程1迄の操作を実施した。得られた水素吸蔵合金粉末を比較例水素吸蔵合金粉末16とした。尚、70時間におよぶ浸漬処理によって得られた水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化は0.4emu/gであった。
(比較例17)
水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、9M/dm3のNaOHと0.8M/dm3のLiOHの水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を実施した。水素吸蔵合金粉末の浸漬処理水溶液として、9M/dm3のNaOHと0.6M/dm3以上の濃度のLiOHを溶解させた水溶液を適用しようとしたが、常温においてはLiOHが完全に溶解しなかった。液の温度を110℃とすればLiOHを溶解できるものの洗浄時にLiOHと思われる結晶が析出し、洗浄が困難となった。
(表面層の形成について)
詳細は省くが、比較例6、比較例7〜9、比較例10、比較例12、比較例13、比較例14、比較例16を除き水素吸蔵合金粉末の表面に、磁性を有するニッケルおよびコバルトを含み、空洞が無く連続した表面層が形成されているのが認められた。
比較例6、比較例10、比較例16の場合は、表面層の形成速度が遅いためか、表面層の形成が確認されなかった。(表面層の厚さがおよそ50nm以下の場合は確実に表面層が形成されているかどうかの確認が困難)。
比較例7〜9、比較例12の場合は表面層中に空洞は認められないものの、表面層の厚さが極めて不均一であり、ところどころに表面層のと切れが認められた。処理液にLiOHが存在するとNiやCoの溶出が抑制され、連続した均一な厚さの表面層形成に有効に作用すると考えられる。比較例12の場合は処理液中にLiOHが存在しないためにNiやCoが溶出し、表面層の厚さが不均一になったものと考えられる。また、比較例7の場合は処理液中のNaOHの濃度が高く、且つ、LiOHの濃度が低いために、比較例8、9の場合にはLiOHの濃度が低いために、LiOHのNiやCoの溶出抑制効果が十分に発揮されずに厚さが不均一であり、と切れがある表面層となったものと考えられる。
比較例13と14の場合は表面層の厚さが不均一であって、且つ、表面層中に空洞が生じていた。1例として比較例水素吸蔵合金粉末14の表面のSEM写真を図3に、合金粉末の断面を集束イオンビーム装置を用いて観測した写真を図4に示す。図4に示すように、比較例水素吸蔵合金粉末14の表面には、平均厚さ約350μmの表面層1が形成されている。該表面層にはところどころに空洞4の存在が認められ、また、かさぶた状に表面層が盛り上がっている部分6に隣り合って表面層の厚さが小さい部分5(厚さ150nm)が存在する。KOHはNiやCoの溶出を促進すると考えられ、そのために、比較例水素吸蔵合金粉末14の表面層の厚さが不均一であり、且つ、表面層中に空洞が生成したものと考えられる
また、図3に示すように、比較例合金粉末14の表面に小さな粒状の物質が存在する。粉末X線回折による測定によれば、該粒状物質は、Mnの水酸化物であることが確認された。合金粉末を、KOHを主たるアルカリ成分として含むアルカリ水溶液に浸漬したことによって、合金に含まれているMnが溶出した後、水酸化物となって粉末の表面に析出したものと考えられる。
参考例1においては水素吸蔵合金粉末の表面に、空洞がなく、連続した表面層が形成されているが、実施例のように表面層の厚さが均一でなく表面層に凹凸が認められた。
表2に実施例2、実施例8〜実施例15、参考例1、2及び比較例6〜比較例16に係る水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化およびニッケル水素蓄電池の試験結果を示す。
Figure 2005310605
(処理液の組成および処理温度と質量飽和磁化との関係)
NaOHとLiOHの両方を含む処理液であっても、処理液中のNaOHの濃度が5M/dm3の比較例6、比較例10においては、40時間におよぶ浸漬処理を行っても得られた水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化が1emu/g未満であった。また、前記表1に示したように、質量飽和磁化が1emu/g未満の場合は良好な高率放電特性(2ItA放電時の放電容量)が得られない。このことから、処理液中のNaOHの濃度を6M/dm3以上にすることが好ましい。
本発明においては処理液としてLiOH単独の水溶液を適用することも可能であるが、比較例16に示すように処理液のLiOHの濃度が3M/dm3の場合、70時間に及ぶ処理を行っても得られる水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化が1emu/g未満である。参考例2に示すように、濃度が5M/dm3のLiOH単独の水溶液を処理液に適用すると、所定の質量飽和磁化が得られるものの、処理速度が遅く本発明の狙いとする1以上の質量飽和磁化を持った水素吸蔵合金を得ようとすると、処理時間が極めて長時間となり不利である。また、浸漬処理後の処理液の濾別に際してはLiOHが析出しないように配慮する必要がある。
また、比較例13、比較例14に示すようにでは処理液にKOHを含む水溶液を適用すると極めて短時間で本発明の狙いとする1以上の質量飽和磁化を有する水素吸蔵合金が得られるものの、前記のように本発明の狙いとする水素吸蔵合金に空洞がなく連続した表面層が形成されない欠点がある。
以上記述したことから、本発明の狙いとする質量飽和磁化を有し、且つ、空洞が無く連続した表面層を有する水素吸蔵合金を得るための処理液にはNaOHとLiOHを含む水溶液が好ましい。NaOHとLiOHを含む水溶液であっても、LiOHの濃度が0.6M/dm3未満の場合は連続した表面層が得られない虞があるので、LiOHの濃度を0.6M/dm3以上とすることが好ましい。また、NaOHの濃度が6M/dm3未満の場合は、浸漬処理によって質量飽和磁化の値を高め、表面層を形成する速度が極めて遅くなるのでNaOHの濃度が6M/dm3以上とすることが好ましい。また、NaOHの濃度を6M/dm3とした実施例8、10、13に比べて、NaOHの濃度を7M/dm3とした実施例2、11、14およびNaOHの濃度を8M/dm3とした実施例9、12、15においては処理時間が短くて済むので、処理液のNaOHの濃度を7〜8M/dm3とすることがさらに好ましい。NaOHの濃度を6M/dm3以上とした場合、LiOHの濃度を1M/dm3を超える濃度に設定すると処理液の粘度が極めて高くなる欠点が生じるのでLiOHの濃度を1M/dm3以下とすることが好ましい。さらに、NaOHの濃度を、8M/dm3を超える値に設定すると、LiOHの濃度として本発明のより好ましい濃度である0.8M/dm3以上含む溶液を得ることが難しくなり、さらに、連続した表面層を形成することが出来なくなる虞があるので、NaOHの濃度を8M/dm3以下とすることが好ましい。
処理液の温度が90℃である比較例15の場合の場合、40時間処理を行っても、得られた水素吸蔵合金の質量飽和磁化は1未満であった。このことから、処理温度は100℃以上とするのが良い。但し、実施例16のように処理液の温度が100℃の場合は処理時間が42時間と長時間を要するので、処理温度を、100℃を超える温度に設定することが好ましい。
また、参考例1のように処理温度を沸点に設定すると処理時間を短縮することはできるが、生成した表面層の厚さが不均一となる虞があるので、浸漬処理を、100℃を超える温度であって、沸点未満の温度で実施することが好ましい。さらに、浸漬処理を処理液の沸点以上で行おうとすると、オートクレーブのような高価な処理装置が必要となる。このことからも、沸点未満の温度で処理を行うことが好ましい。
(処理液の組成、温度と放電特性、サイクル性能の関係)
実施例2、実施例8〜12、実施例16、参考例2は2ItA放電のみでなく4ItA放電においても極めて優れた放電性能を示した。これらの電池においては、水素吸蔵合金の表面に、空洞がなく連続した層であって、しかも凹凸が殆どなく厚さの均一な表面層が形成されており、このことによって、水素吸蔵合金電極が優れた高率放電性能を有する電極となり、該優れた性能が電池の性能に反映したものと考えられる。
実施例13〜15、参考例1の4ItA放電の放電性能は、比較例を遥かに上回っているが、実施例2、実施例8〜12、実施例16、参考例2に比べて劣っている。実施例13〜15、参考例1においては、水素吸蔵合金の表面に空洞がなく連続した表面層が形成されてはいるが、表面層に凹凸があり、表面層の厚さが均一ではない。実施例13〜15、参考例1の場合には、前記表面層の厚さが不均一であるために放電時の水素吸蔵合金電極の電流分布が不均一になり分極が大きくなり、実施例2、実施例8〜12、実施例16、参考例2との間に4ItA放電での放電性能に差が生じたものと考えられる。
以上のことから、処理液中のLiOHの濃度が0.6M/dm3以上であることが好ましく、0.8M/dm3以上であることがさらに好ましい。
前記のように、水素吸蔵合金の表面層の厚さが不均一であって、表面層にと切れが認められた比較例7〜9、比較例12の、2ItA放電、4ItA放電における放電性能が実施例に比べて劣るのは、前記同様、放電時の電流分布が不均一であるためのに、分極が大きくなったことによると考えられる。
処理液の温度を沸点とした参考例1の場合は、水素吸蔵合金に形成された表面層の形態が実施例14、15のそれに類似しており(表面層に凹凸がある)、放電性能においても実施例14、15に近い性能を示した。処理液の温度を90℃とした比較例15においては質量飽和磁化が1未満であり、水素吸蔵合金の活性化が不十分なために2ItA放電、4ItA放電ともに放電性能が劣る結果になったと考えられる。実施例2、比較例15、実施例16,参考例1を比較すると、実施例2、実施例16の放電性能が優れ、次いで参考例1であるところから、電池の特性面からも、処理液の温度は100℃〜沸点とすることが好ましく、100〜沸点未満とすることがさらに好ましい。
比較例13、比較例14のように処理液に、KOH単独あるいは主たるアルカリ成分がKOHである水溶液を適用した場合、短時間の浸漬処理で実施例同様質量飽和磁化が2emu/gの水素吸蔵合金が得られたが、実施例に比べて5℃、4ItA放電での放電容量が極端に低く、サイクル性能も劣っていた。この理由は、必ずしも明らかではないが、比較例11に係る7M/dm3のKOHと1M/dm3のLiOHを含む水溶液による処理では、図3に示すように、合金表面にマンガンの水酸化物が析出(図3の粒状の物質)したために合金粉末の粉体抵抗(電気抵抗)が増大したことと、図4に示すように、表面層1中に空洞4が存在したり、表面層の5、6の部分に示したように、表面層の厚さが不均一なために放電に際して電流が局部に集中して分極が大きくなったためと考えられる。
また、比較例13、比較例14のように、水素吸蔵合金の表面に、層中に空洞があり、厚さが不均一な表面層が形成したり、比較例7〜9、比較例12のように、と切れのある表面層が形成すると、放電に際して水素吸蔵合金電極の分極が大きくなったり、充電に際して酸素の吸収機能が劣るために合金の腐蝕が速く、そのために、表2に示すように、これらの電池のサイクル性能が劣る結果になったものと考えられる。これに対して表2に示した実施例や参考例においては、放電時の分極が小さく、かつ、酸素吸収能力にも優れているので、優れたサイクル性能を示したものと考えられる。このように、1ItAによる充電や2〜4ItAで放電するような高率での充電や放電を必要とする使用に於いて、本発明電池に係る水素吸蔵合金合金電極を適用すると顕著なサイクル性能の向上を示す。
なお、参考例2の場合は、実施例と同様、水素吸蔵合金粉末の表面に空洞がなく、連続した表面層が形成され、該水素吸蔵合金粉末を用いた水素吸蔵合金電極ニッケル水素蓄電池の特性も表2に示すように良好であったが、水素吸蔵合金粉末の浸漬処理に長時間を要すること、LiOHが析出しないように浸漬液の濾別を昇温した状態で行う必要があるなど実用状の欠点がある。
本発明に係る水素吸蔵合金電極の製造方法において、前記LiOH単独たはLiOHとNaOHの両方を含むアルカリ水溶液からなる処理液は、KOHの混入を完全に排除するものではなない。アルカリ水溶液に含まれるKOHが約0.1M/cm3未満であれば水素吸蔵合金の表面に空洞がなく連続したNiとCo主成分とする表面層が形成される。また、詳細な説明を省くが、合金粉末を、KOHを主たるアルカリ成分として含むアルカリ水溶液に浸漬するに際して水溶液の温度を比較例13、14に比べてもっと高温(例えば沸点近傍)にした場合、表面層の形成スピードは増大するものの、生成した表面層は繋がっておらず、海島状またはまだら状であって、このような水素吸蔵合金粉末を適用した水素吸蔵合金電極は、高率放電性能が極めて悪いことが判った。
(酸化防止被膜の有無および製造方法の影響)
(実施例17)
前記実施例2において、第5工程において水素吸蔵合金に被膜コート処理を施した後、得られた水素吸蔵合金粉末を大気中で14日間放置した。それ以外は実施例2と同じとした。放置後の水素吸蔵合金粉末を実施例水素吸蔵合金粉末17、水素吸蔵合金電極を実施例水素吸蔵合金電極17、ニッケル水素蓄電池を実施例電池17とした。
(比較例18)
第1工程でのアルカリ溶液浸漬処理において反応浴を撹拌しなかったこと以外は実施例2と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を比較例水素吸蔵合金粉末18、水素吸蔵合金電極を比較例水素吸蔵合金電極18、ニッケル水素蓄電池を比較例電池18とした。
(比較例19)
第2工程での希土類を主な成分とする水酸化物の分離する工程を実施しなかったこと以外は実施例2と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を比較例水素吸蔵合金粉末19、水素吸蔵合金電極を比較例水素吸蔵合金電極19、ニッケル水素蓄電池を比較例電池19とした。
(比較例20)
第3工程で、処理後の合金を洗浄する工程を実施しなかったこと以外は実施例2と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を比較例水素吸蔵合金粉末20、水素吸蔵合金電極を比較例水素吸蔵合金電極20、ニッケル水素蓄電池を比較例電池20とした。
(比較例21)
第4工程での水素を脱離する工程を実施しなかったこと以外は実施例2と同様にして得られた水素吸蔵合金粉末を比較例水素吸蔵合金粉末21、水素吸蔵合金電極を比較例水素吸蔵合金電極21、ニッケル水素蓄電池を比較例電池21とした。
(比較例22)
前記実施例2において第4工程の後乾燥状態にある水素吸蔵合金粉末を大気中で14日間放置した。該水素吸蔵合金粉末を比較例水素吸蔵合金粉末22とする。該比較例水素吸蔵合金粉末22を用いて実施例2の第5工程同様にしてペーストを作製し、該ペーストをを集電体常に塗布乾燥後プレス、裁断して所定の厚さ、大きさを持つ水素吸蔵合金電極をを作製し、該水素吸蔵合金電極を用いてニッケル水素蓄電池を作製した。該水素吸蔵合金電極を比較例水素吸蔵合金電極22、ニッケル水素蓄電池を比較例電池22とした。
実施例2、実施例17、比較例18〜22の試験結果を表3に示す。
Figure 2005310605
(浸漬処理中の反応浴撹拌の有無)
表3に示すとおり、比較例18と実施例2を比較すると、攪拌が無い比較例18は、5℃、4ItA放電による高率放電特性に優れない。比較例18の高率放電特性が優れないのは、表面処理によって形成された希土類やマンガン、アルミニウムなどの水酸化物が合金表面を覆い、粉体抵抗を増大させた為であると考えられる。また、合金がこれら水酸化物により結着し、大きな2次粒子を形成するため、塗工がし難くなる不具合が生じた。さらに、処理液の温度分布が不均一となり、表面層の形成が均質でないことも影響していると考えられる。このため、合金粉末の浸漬処理時には処理液を攪拌することが好ましい。また、これら水酸化物により、過充電時の負極での酸素ガス吸収が低下し、電池外に酸素ガスや電解液が漏れることが寿命の低下の原因であると考えられる。
(浸漬処理後の水酸化物の除去および洗浄の効果)
比較例19、20は、実施例2を比較して、5℃、4ItA放電による高率放電性能に優れない。水酸化物を分離する工程を省いた比較例19場合は、水素吸蔵合金粉末の表面に希土類やマンガン、アルミニウムなどの水酸化物が残存したことによって、合金粉末の粉体抵抗(電気抵抗)が増大したことによると考えられる。洗浄工程を省いた比較例20の場合は、残存するアルカリによって水素吸蔵合金粉末が腐蝕したために性能が低下したものと考えられる。
(浸漬処理後の水素吸蔵合金粉末からの水素脱離効果)
過酸化水素による水素脱離をしない場合、加圧濾過後のウェット状態にある水素吸蔵合金粉末を空気に触れさせると水素吸蔵合金粉末の温度が80℃を超えるまで発熱した。これは、水素吸蔵合金粉末が酸化されたためであると考えられる。このためか、比較例21の5℃、2ItA放電による放電性能にも優れない。また、サイクル寿命性能にも優れない。この理由は明らかではないが、水素吸蔵合金粉末が酸化によって変質したこと、一旦酸化された水素吸蔵合金粉末が電池内において再度活性化されたために、充電リザーブが減少したためであると考えられる。
(水素吸蔵合金表面の被膜形成効果その1、高率放電性能)
実施例2と実施例17を比較すると、5℃、2ItA放電、5℃、4ItA放電共に放電容量の差は極小さい。他方、詳細な記述は省いたが、酸化防止被膜を形成していない水素吸蔵合金粉末を適用し、水素吸蔵合金粉末を大気中で放置しないで電池に組み込んだ場合には実施例2に劣らない放電性能を示したが、比較例22の場合は、殆ど放電できなかった。比較例22の場合は、水素吸蔵合金粉末の表面に酸化防止機能を持つ被膜を形成していないために、水素吸蔵合金粉末を大気中に放置した間に水素吸蔵合金が酸化されて合金粉末の内部まで変質したことと、表面に酸化物や水酸化物の被膜が生成して電極反応が阻害されるために放電特性が大きく低下したものと考えられる。このように、水素吸蔵合金粉末表面を、酸化防止被膜でコートすることによって大気に接触した場合の化学的安定性が向上して取り扱いが容易となるので好ましい。また、酸化防止用被膜として、前記CMCやHPMCなどのセルロースに替えてキサンタンガム、ウエランガムなどの多糖類やPVAを適用した場合、あるいは前記セルロース、多糖類、PVAの何れかを混合使用した場合にもセルロースと同様の効果が認められた。
(水素吸蔵合金表面の被膜形成効果その2、長期放置後の低率放電性能)
前記実施例2と同一の組成を持ち実施例2と同様に酸化防止被膜を形成させた本発明水素吸蔵合金粉末と、前記実施例2と同一の組成であって、酸化防止被膜を形成させてない参考例水素吸蔵合金粉末を常温常湿の大気中で15日間、30日間、90日間放置した。無放置および放置後の水素吸蔵合金粉末を適用して実施例2と同様にして幅30mm、長さ32.5mm、厚さ0.33mm、水素吸蔵合金の充填量から算定される容量が500mAhの水素吸蔵合金電極を作製した。該水素吸蔵合金電極を真ん中に、両側に化成後放電させたニッケル電極を配置して、前記同様単板試験用開放形セルを作製した。雰囲気温度25℃において0.02ItAで12.5時間充電した後0.1ItAで12時間充電した。1時間休止後0.2ItAで水素吸蔵合金電極の参照電極(Hg/HgO)に対する電位が−600mVに至るまで放電した。2回目以降は0.1ItAで12時間充電した後、1時間休止しその後0.2ItAで水素吸蔵合金電極の参照電極(Hg/HgO)に対する電位が−600mVに至るまで放電した。該充放電操作を1サイクルとして充放電操作を繰り返し行い5サイクル目の放電容量(mAh/g)をもって当該水素吸蔵電極の放電容量とした。
試験結果を図5に示す。図5に示したように、酸化防止被膜を設けていない参考例水素吸蔵合金粉末を適用した水素吸蔵合金電極の放電容量は、無放置もしくは放置期間が30日いないであれば本発明水素吸蔵合金粉末に比べて劣らない放電容量を有している。しかし、水素吸蔵合金粉末を大気中で90日間放置すると、本発明水素吸蔵合金粉末の放電容量が殆ど低下していないのに対して、参考例水素吸蔵合金粉末においては放電容量が大幅に低下している。本試験のように0.2ItA放電のような低率放電で容量が低下するのは、水素吸蔵合金の変質が粉末の表面に止まらずに内部にまで及んでいることを示唆している。本発明に係る水素吸蔵合金粉末においては、水素吸蔵合金の表面に酸化防止用被膜を形成させることによって、水素吸蔵合金粉末の内部にまで変質が生じるのを防いでいるために、放置後の放電容量の低下が抑制されたものと考えられる。
なお、本発明は上記実施例に記載された活物質の出発原料、製造方法、正極、負極、電解質、セパレータ及び電池形状などに限定されるものではない。
本発明水素吸蔵合金粉末のSEMによる拡大写真である。 本発明水素吸蔵合金粉末の収束イオンビーム装置による拡大写真である。 比較例水素吸蔵合金粉末のSEMによる拡大写真である。 比較例水素吸蔵合金粉末の収束イオンビーム装置による拡大写真である。 水素吸蔵合金粉末を大気中で放置したときの放電容量の推移を示すグラフである。
符号の説明
1 表面層
4 空洞



Claims (10)

  1. 希土類元素、ニッケルおよびコバルトを構成元素として含む水素吸蔵合金粉末を活物質とする水素吸蔵電極において、前記水素吸蔵合金粉末が、平均粒径が20〜35マイクロメートル(μm)、質量飽和磁化が1〜5emu/gであって、その表面に、磁性を有するニッケルとコバルトを含み、空洞がなく連続した表面層を備えたことを特徴とする水素吸蔵合金電極。
  2. 前記希土類元素、ニッケルおよびコバルトを構成元素として含み、且つ、LiOHを0.6〜1.0モル/立方デシメートル(M/dm3)、NaOHを6〜8M/dm3含むアルカリ水溶液に浸漬処理した水素吸蔵合金粉末を適用することを特徴とする請求項1に記載の水素吸蔵合金電極の製造方法。
  3. 前記水素吸蔵合金粉末を浸漬処理する時のアルカリ水溶液の温度が100℃〜該水溶液の沸点であることを特徴とする請求項2に記載の水素吸蔵合金電極の製造方法。
  4. 前記希土類元素、ニッケルおよびコバルトを構成元素として含む水素吸蔵合金粉末を、前記アルカリ水溶液に浸漬し、該浸漬中処理浴を撹拌して浸漬処理する第1工程と、該浸漬処理によって発生した希土類元素を主成分とする元素の水酸化物を合金表面から分離する第2工程と、処理された合金を洗浄する第3工程と、水素を脱離する第4工程とを有することを特徴とする請求項2〜3に記載の水素吸蔵合金電極の製造方法。
  5. 前記第2工程において、水素吸蔵合金粉末の分散液に超音波を当てた後、水素吸蔵合金粉末を流水にさらすことを特徴とする請求項4に記載の水素吸蔵合金電極の製造方法。
  6. 前記第3工程において、洗浄液として、濃度が1/100M/dm3以下の濃度の塩酸または有機酸の水溶液を用いることを特徴とする請求項4に記載の水素吸蔵合金電極の製造方法。
  7. 前記第4工程において、水素吸蔵合金粉末を80℃以上、PH9以下の温水にさらした後、水素吸蔵合金粉末を水中に投入して45℃以下の分散液を用意し、該分散液に過酸化水素を添加することを特徴とする請求項4に記載の水素吸蔵合金電極の製造方法。
  8. 前記水素吸蔵合金粉末の表面にカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム、ウエランガム、ポリビニルアルコールの少なくとも1種とスチレンブタジエンゴムからなる被膜を配置したことを特徴とする請求項1に記載の水素吸蔵合金電極。
  9. 前記水素吸蔵合金粉末の表面にカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム、ウエランガム、ポリビニルアルコールの少なくとも1種とスチレンブタジエンゴムからなる被膜を配置した水素吸蔵合金電極の製造方法であって、前記第1工程〜第4工程を経た水素吸蔵合金粉末に、第5工程として、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム、ウエランガム、ポリビニルアルコールの少なくとも1種とスチレンブタジエンゴムを含む分散液を添加混練した後乾燥したことを特徴とする請求項8に記載の水素吸蔵合金電極の製造方法。
  10. 前記希土類元素、ニッケルおよびコバルトを構成元素として含む水素吸蔵合金粉末を活物質とする水素吸蔵電極において、前記水素吸蔵合金粉末は、平均粒径が20〜35μm、質量飽和磁化が1〜5emu/gであって、表面に磁性を有するニッケルとコバルトを含み、空洞がなく連続した表面層を有する水素吸蔵合金粉末、または、該水素吸蔵合金粉末の表面にカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム、ウエランガム、ポリビニルアルコールの少なくとも1種とスチレンブタジエンゴムからなる被膜を配置した水素吸蔵合金粉末である水素吸蔵合金電極を備えたことを特徴とするニッケル水素蓄電池。
















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