JP2005302589A - 多孔質炭素電極基材前駆体シート状物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 炭素繊維紙に熱硬化性樹脂を含浸した樹脂含浸炭素繊維紙を連続的に一対のエンドレスベルトを用いて加熱プレスする工程を有する多孔質炭素電極基材前駆体シート状物の製造方法において、該加熱プレス直前の樹脂硬化進行度を10%以上70%以下とし、該加熱プレス直後の樹脂硬化進行度を80%以上とし、かつ、該加熱プレス直前、直後のベルト温度差を150℃以下とすることを特徴とする多孔質炭素電極基材前駆体シート状物の製造方法である。
【選択図】 なし
Description
なお、本発明において、「硬化進行度」は、樹脂含浸炭素繊維紙の硬化過程における質量減少から計算で求めた割合をいう。
硬化進行度(%)=[1−(W1−W2)÷(W0−W2)]×100
W0…硬化前の樹脂含浸炭素繊維紙の質量
W1…硬化中の樹脂含浸炭素繊維紙の質量
W2…硬化完了後の樹脂含浸炭素繊維紙、すなわち多孔質炭素電極基材前駆体シートの質量
また、「完全硬化」は、樹脂含浸炭素繊維紙の硬化進行度が100%のことをいう。
本発明における多孔質炭素電極基材前駆体シートの製造方法において、
1)該加熱プレス直前の樹脂硬化進行度を10%以上70%以下とし、
2)該加熱プレス直後の樹脂硬化進行度を80%以上とし、かつ、
3)該加熱プレス直前、直後のベルト温度差を150℃以下とすること
が必要である。
本発明における炭素繊維紙は抄紙法により得られるものが好ましく、その方法としては、液体の媒体中に炭素短繊維を分散させて抄造する湿式法や、空気中に炭素短繊維を分散させて降り積もらせる乾式法が適用できる。また、炭素繊維同士を結着させるバインダーとして有機高分子化合物を混ぜることが好ましい。かくすることにより、炭素繊維紙の強度を保持し、その製造途中で炭素繊維紙から炭素繊維が剥離したり、炭素繊維の配向が変化したりするのを防止することができる。
前記炭素繊維紙中の炭素繊維はポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などいずれであっても良い。しかしながら、機械的強度が比較的高いポリアクリロニトリル系炭素繊維が好ましく、特に、用いる炭素繊維がポリアクリロニトリル系炭素繊維のみからなることが好ましい。ポリアクリロニトリル系炭素繊維は、原料として、アクリロニトリルを主成分とするポリマーを用いて製造されるものである。具体的には、アクリロニトリル系繊維を紡糸する製糸工程、200〜400℃の空気雰囲気中で該繊維を加熱焼成して酸化繊維に転換する耐炎化工程、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気中でさらに300〜2500℃に加熱して炭化する炭化工程を経て得ることのできる炭素繊維で、複合材料強化繊維として好適に使用される。そのため、他の炭素繊維に比べて強度が強く、機械的強度の強い炭素繊維紙を形成することができる。また、用いる炭素短繊維は分散性の観点から、平均直径は3から9μmで、平均繊維長は3から12mmであることが好ましい。
バインダーとして用いる有機高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱可塑性樹脂やフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱硬化樹脂の他、熱可塑性エラストマー、ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体等のエラストマー、ゴム、セルロースなどを用いることができる。その中でもポリビニルアルコール、あるいはアクリロニトリル系ポリマーのパルプ状物もしくは短繊維であることが好ましい。アクリロニトリル系ポリマーのパルプ状物又は短繊維は、それ自身の焼成物が導電体としての役割を果たすため、特に好ましい。また、ポリビニルアルコールは抄紙工程での結着力に優れるため、炭素短繊維の脱落が少なくバインダーとして好ましい。また、ポリビニルアルコールは電極基材を製造する最終段階の炭素化過程で大部分が分解・揮発してしまい、空孔を形成する。この空孔の存在により、水及びガスの透過性が向上するため好ましい。
パルプ状物は繊維状の幹から直径が数μm以下のフィブリルを多数分岐した構造で、このパルプ状物より作ったシート状物は繊維同士の絡み合いが効率よく形成されており、薄いシート状物であってもその取り扱い性に優れているという長所を有している。また、アクリロニトリル系ポリマーの短繊維は、アクリロニトリル系ポリマーからなる繊維糸、または、繊維のトウを、所定の長さにカットして得ることができる。
炭素繊維紙における有機高分子化合物の含有率は、5〜40質量%の範囲にあるのが好ましい。より好ましくは15〜30質量%の範囲である。炭素繊維紙に樹脂を含浸し、焼成して得られる電極基材の電気抵抗を低くするためには、高分子化合物の含有量は少ないほうがよく、含有率は40質量%以下が好ましい。炭素繊維紙の強度および形状を保つという観点から含有率は、5質量%以上が好ましい。
これらの有機高分子化合物のパルプ状物あるいは短繊維を炭素繊維に混入する方法としては、炭素繊維とともに水中で攪拌分散させる方法と、直接混ぜ込む方法があるが、均一に分散させるためには水中で攪拌分散させる方法が好ましい。
さらに本発明にて用いられる熱硬化性樹脂は常温において粘着性、或いは流動性を示す物でかつ炭素化工程で導電性物質となるものが好ましく、フェノール樹脂、フラン樹脂等を用いることができる。前記フェノール樹脂としては、アルカリ触媒存在下においてフェノール類とアルデヒド類の反応によって得られるレゾールタイプフェノール樹脂を用いることができる。また、レゾールタイプの流動性フェノール樹脂に公知の方法によって酸性触媒下においてフェノール類とアルデヒド類の反応によって生成する、固体の熱融着性を示すノボラックタイプのフェノール樹脂を溶解混入させることもできるが、この場合は硬化剤、例えばヘキサメチレンジアミンを含有した、自己架橋タイプのものが好ましい。
フェノール類としては、例えば、フェノール、レゾルシン、クレゾール、キシロール等が用いられる。アルデヒド類としては、例えばホルマリン、パラホルムアルデヒド、フルフラール等が用いられる。また、これらを混合物として用いることができる。これらはフェノール樹脂として市販品を利用することも可能である。
本発明に用いる樹脂含浸炭素繊維紙中の樹脂の好ましい割合は30質量%〜70質量%である。多孔質炭素電極基材の構造が密になり、得られる電極基材の強度が高いという点で、30質量%以上が好ましい。また、得られる電極基材の空孔率、ガス透過性を良好に保つという点で、70質量%以下とすることが好ましい。ここで、樹脂含浸炭素繊維紙とは、加熱加圧前の、炭素繊維紙に樹脂を含浸したものをいうが、樹脂含浸の際に溶媒を用いた場合には溶媒を除去したものをいう。
熱硬化性樹脂の含浸工程において熱硬化性樹脂に導電性物質を混合することもできる。導電性物質としては、炭素質ミルド繊維、カーボンブラック、アセチレンブラック、等方性黒鉛粉などが挙げられる。樹脂中に導電性物質を混合する際の混合量は、樹脂に対して、1質量%〜10質量%が好ましい。
樹脂または樹脂と導電体の混合物を炭素繊維紙に含浸する方法としては、絞り装置やコーターを用いる方法もしくは熱硬化性樹脂フィルムを炭素繊維紙に重ねる方法が好ましい。絞り装置を用いる方法は樹脂溶液もしくは混合液中に炭素繊維紙を含浸し、絞り装置で取り込み液が炭素繊維紙全体に均一に塗布されるようにし、液量は絞り装置のロール間隔を変えることで調節する方法である。比較的粘度が低い場合はスプレー法等も用いることができる。また、コーターにより熱硬化性樹脂溶液を塗工する方法も用いることができる。
熱硬化樹脂フィルムを用いる方法は、まず熱硬化性樹脂を剥離紙に一旦コーティングし、熱硬化性樹脂フィルムとする。その後、炭素繊維紙に前記フィルムを積層して加熱加圧処理を行い、熱硬化性樹脂を転写する方法である。
本発明における加熱プレス工程は、生産性の観点から樹脂含浸炭素繊維紙の全長にわたって連続して行うことが好ましい。連続式の場合、加熱プレスゾーンに制約があり、特にロールプレスの場合は加熱プレスゾーンが非常に短くなることから、加熱プレスに先立って予熱を行うことが好ましい。また、ベルトはロールプレスで拘束された状態で高温の熱を受けるため、プレス開放後にベルトの熱膨張歪がベルトに発生し、その歪がシート厚み精度及び、表面平滑性に影響を与えるという点で不利であることから、プレス前後のベルト温度差を150℃以下にすることが必要である。
シート厚みを良好にコントロールするためには、加熱プレスゾーン内で完全硬化させることが最も好ましい。しかし、加熱プレスゾーンが非常に短く加熱プレスゾーン内での完全硬化が困難な場合、加熱プレスゾーンで樹脂含浸炭素繊維紙を厚み方向に目標厚み以下に圧縮し、圧力が開放された後、樹脂含浸炭素繊維紙を目標厚みまで回復させ、さらに加熱または断熱保持することで完全硬化させることが好ましい。また、硬化進行度については、プレス圧力にもよるが加熱プレス直前で硬化進行度を70%以下として加熱プレスゾーン内で硬化することが好ましい。加熱プレス直前の硬化進行度が70%を超えると樹脂粘度が上がりプレス圧が不足し、目標の厚み以上となる傾向があるという点で不利である。また、加熱プレス直前の硬化進行度が10%以下となると加熱プレスゾーン内で樹脂が形状保持可能な粘度まで上げることが難しくなり、プレス圧力が解放されると樹脂が膨張し目標の厚み以上となり、良好な厚みコントロールが困難となる傾向があるという点で不利であることから、加熱プレス直前の硬化進行度は10%〜70%が好ましく、より好ましくは、30〜70%である。また、加熱プレス直後の硬化進行度は、樹脂が形状保持可能な粘度まで上げることが必要であり、80%以上とすることが好ましい。予熱温度としては100℃〜350℃、加熱プレス温度は100〜400℃であり、プレス圧力は、0.1MPa〜50MPaに設定することが好ましいが、これらの条件に限定されるものではない。
図1は、本発明の加熱プレス工程の構成を示す図である。予熱ゾーン4と、一対のクリアランス調整可能な加熱プレスロールを1組以上備える硬化ゾーン5とを有するエンドレスダブルベルト装置3に樹脂含浸炭素繊維紙1を1層以上挿入搬送し連続的に加熱プレスし、多孔質炭素電極基材前駆体シート状物2を製造する。予熱ゾーンの加熱手段としては、熱風加熱、遠赤ヒーター、ロール加熱等を適用することができる。また、加熱プレス方式としては、ロール式の他、高温高圧の流体によりエンドレスダブルベルトをニップするとともに加熱加圧が可能な連続加圧装置を適用することができる。
さらに前記樹脂含浸炭素繊維紙を剥離紙で挟んで加熱プレスすること、あるいは前記一対エンドレスベルトもしくは一対以上の加熱プレスロールに予め剥離剤を塗布しておいて、樹脂含浸炭素繊維紙を加熱プレスすることが好ましい。樹脂含浸シート状物をそのまま加熱プレスすることも可能ではあるが、エンドレスベルトあるいは加熱プレスロールに貼り付いてしまう場合があるという点で不利である。
又前記剥離紙にコーティングされている剥離剤としてはシリコーン系化合物が好ましい。
本発明の多孔質炭素電極基材前駆体シート状物は炭素化処理することで、電極基材として好ましく用いることができる。その炭素化処理としては、前記多孔質炭素電極基材前駆体シート状物を不活性雰囲気下で予備炭素化処理を行った後、不活性雰囲気下で1500℃から3000℃の温度をもって炭素化を行うことが好ましい。特に予備炭素化処理では不活性雰囲気下で200℃から900℃で行うことが好ましい。以上の処理を行うことで電極基材としての抵抗が低くなる。
(実施例)
なお、以下の実施例及び比較例において、多孔質炭素電極基材前駆体シート状物の原料としては以下の同一ものを採用した。
炭素繊維:平均直径4μm、平均繊維長3mm
有機高分子化合物:ポリビニルアルコール繊維、炭素繊維比20質量%含有
熱硬化性樹脂:フェノール樹脂
熱硬化性樹脂の15質量%メタノール溶液に、上記炭素短繊維と上記有機高分子化合物からなる炭素繊維紙を浸漬し、炭素繊維100質量部に対しこのフェノール樹脂のメタノール溶液を75質量部付着させ、60℃で乾燥した。
以上により、幅300mm、平均厚み0.4mmの樹脂含浸炭素繊維紙を得た。
また、厚みは以下の方法で測定した。
1)厚み
厚み測定装置ダイヤルシックネスゲージ7321(株式会社ミツトヨ製)を使用し測定した。なお、このときの測定子の大きさは、直径10mmで測定圧は1.5kPaで一定とした。表の成形シート厚みは、シートの巾方向に10mmピッチの位置で測定した平均の値をいう。表の成形シート厚み偏差は、シートの巾方向に10mmピッチの位置で測定した値の最大値と最小値の差をいう。
多孔質炭素電極基材前駆体シート状物の目標厚みは0.18±0.01mmである。上記樹脂含浸炭素繊維紙を図1に示すように2枚積層して予熱ゾーンに連続的に供給し、予熱によってプレス直前のベルト温度を145℃、プレス直前の樹脂硬化進行度を36%とした。これを加熱プレス(プレス圧11MPa、プレス温度310℃)し、プレス直後のベルト温度を255℃、プレス直後の硬化進行度を84%とした。加熱プレス後に余熱によって樹脂を完全硬化させた。得られた成形シートの厚みは0.183mm、シート厚み偏差は0.038mmであり、目標とする厚みが得られた。
(実施例2)
表2に示す条件とした以外は実施例5と同様にして多孔質炭素電極基材前駆体シート状物を製造した。
表2に示す条件とした以外は実施例6と同様にして多孔質炭素電極基材前駆体シート状物を製造した。
2…多孔質炭素電極基材前駆体シート
3…ダブルベルト装置
4…予熱ゾーン
5…加熱プレスゾーン
6…巻出装置
7…巻取装置
8…剥離紙
Claims (5)
- 炭素繊維紙に熱硬化性樹脂を含浸した樹脂含浸炭素繊維紙を連続的に一対のエンドレスベルトを用いて加熱プレスする工程を有する多孔質炭素電極基材前駆体シート状物の製造方法において、該加熱プレス直前の樹脂硬化進行度を10%以上70%以下とし、該加熱プレス直後の樹脂硬化進行度を80%以上とし、かつ、該加熱プレス直前、直後のベルト温度差を150℃以下とすることを特徴とする多孔質炭素電極基材前駆体シート状物の製造方法。
- 前記エンドレスベルトを用いた加熱プレスにより樹脂含浸炭素繊維紙を目標厚み未満に圧縮した後、圧力を開放し、樹脂含浸炭素繊維紙の厚みを目標厚みまで回復させ、完全硬化させる請求項1記載の多孔質炭素電極基材前駆体シート状物の製造方法。
- 前記樹脂含浸炭素繊維紙を、剥離剤が塗布された剥離紙で挟んで加熱プレスする請求項1または2記載の多孔質炭素電極基材前駆体シート状物の製造方法。
- 前記一対のエンドレスベルトに予め剥離剤を塗布した上で加熱プレスを行う請求項1〜3のいずれか1項記載の多孔質電極基材前駆体シート状物の製造方法。
- 前記剥離剤がシリコーン系化合物である請求項4記載の多孔質炭素電極基材前駆体シート状物の製造方法。
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