JP2005210957A - 可塑性油脂組成物 - Google Patents

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哲太郎 友枝
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Abstract

【課題】 本発明の目的は、良好な乳風味を有し、乳化状態が安定で、可塑性範囲が広く、油脂結晶が安定であり、経日的に硬さの変化が少ない可塑性油脂組成物を提供することにある。
【解決手段】 本発明は、直接β型の油脂結晶を含有し、水分5〜25重量%、蛋白質0.3〜2重量%、脂質70〜95重量%、糖質0.1〜0.7重量%、灰分0.1〜2重量%であることを特徴とする可塑性油脂を提供することにより、上記の課題を解決するものである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、良好な乳風味を有し、乳化状態が安定で、可塑性範囲が広く、経日的に硬さの変化が少ない可塑性油脂組成物に関するものである。
乳製品をベースにし、バター様の口腔感覚、口当たり、味を有するスプレッドとして特許文献1がある。しかし、特許文献1に記載のスプレッドは、脂肪が35%未満であり、本発明の可塑性油脂組成物とは異なるものである。
また従来、マーガリン、ショートニング等の可塑性油脂に使用される油脂は“マーガリン ショートニング ラード“ (非特許文献1)に記載の『マーガリン、ショートニングは常温で結晶性脂肪をもつ可塑性物質と定義されるが、そのためその物理性は主に稠度、可塑性及び結晶構造に関連する。物理的にその結晶状態はAlfaは蝋状(アセトグリセリドの如き)、Betaは粗結晶、そしてBeta-primeは微粒状である。融点ではAlfa、Beta-prime、Betaの順に高くなる。マーガリン、ショートニング組成の望ましい結晶状態はBeta-primeといわれている。』の通り、その結晶状態はβプライム型が良好とされ、用いられてきた。
βプライム型の油脂結晶は微細結晶をとり乳化安定性に寄与し、良好な稠度を示す。反面このβプライム型の油脂結晶はエネルギー的には準安定形であるため、保存条件等が適切でない場合等には、さらにエネルギー的に安定なβ型の油脂結晶へと転移現象を引き起こすという欠点があった。このβ型の油脂結晶は最安定形であるため、これ以上の転移現象を起こすことはないが、一般に結晶サイズが大きく、グレイニングやブルームと呼ばれる粗大結晶粒を形成し、ザラつきや触感の悪さを呈し、製品価値の全くないものになってしまう。
βプライム型の油脂結晶を経由するβ型の油脂結晶であっても、結晶サイズの比較的小さなものも知られている。例えば、カカオ脂のV型結晶がこれに相当し、実質はSOS、POS等の対称型トリグリセリドのβ2型結晶である。しかしながら、これらの結晶サイズの比較的小さなβ型の油脂結晶を得るには、テンパリングと呼ばれる特殊な熱処理工程を経る必要があったり、所定温度まで冷却した後、結晶核となる特定成分を加える等、極めて煩雑な工程を要するものであった。結果として通常の可塑性油脂を製造するような急冷可塑化工程では、当該結晶は得られないのが実状である。また、カカオ脂のV型結晶は可塑性に乏しいものである。
一方、βプライム型の油脂結晶で最安定形の油脂でさえ経日的に硬くなる傾向があり、結晶の析出方法や保存方法等を細かく管理しなければならなかった。
上記のような問題点を解決するため、エネルギー的にも安定で且つ微細な結晶を得る目的で、これ迄にも種々の発明がなされてきた。特許文献2には、特定のトリグリセリド比率とすることにより、β型結晶を得る方法が開示されている。また特許文献3では、エステル交換反応により油脂のグレイニングを抑制する方法が、そして特許文献4には、高融点油脂を配合することにより微細な結晶を維持させる方法がそれぞれ開示されている。さらに特許文献5では、構成脂肪酸として炭素数16〜22の飽和脂肪酸をグリセリンの2位に、炭素数16〜18で一つの不飽和結合を有する不飽和脂肪酸をグリセリンの1,3位に結合した混酸型トリグリセリドを含有する方法が開示されている。
しかし、上記特許文献2の方法では、β型結晶を得るのにテンパリング操作が必要とされ、特許文献3及び特許文献4の方法では、得られた組成物は経日的に硬くなる傾向があり、可塑性油脂組成物として安定性の点で十分に満足の得られるものではなかった。また、特許文献5の方法は、カカオ代用脂及びこれを含有する油脂性菓子用途に限定されたものであった。
特許文献6には、油相を70℃で完全融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で7日間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶である油脂組成物が開示されている。本発明は特許文献6の風味をさらに改善し、良好な風味を有する可塑性油脂組成物を提供するものである。
特表平11−500320号公報 マーガリン ショートニング ラード(中澤君敏著 株式会社光琳発行 発行年月日1979年8月3日 324ページ) 特公昭51−9763号公報 特公昭58−13128号公報 特開平10−295271号公報 特開平4−135453号公報 特開2003−213287号公報
従って、本発明の目的は、良好な乳風味を有し、乳化状態が安定で、可塑性範囲が広く、経日的に硬さの変化がない可塑性油脂組成物を提供することにある。
本発明は、直接β型の油脂結晶を含有し、水分5〜25重量%、蛋白質0.3〜2重量%、脂質70〜94.5重量%、糖質0.1〜0.7重量%、灰分0.1〜2重量%である可塑性油脂組成物により、上記目的を達成したものである。
本発明によれば、良好な乳風味を有し、乳化状態が安定で、可塑性範囲が広く、経日的に硬さの変化がない可塑性油脂組成物を提供することができる。
以下、本発明の可塑性油脂組成物について詳細に説明する。
本発明の可塑性油脂組成物は、直接β型の油脂結晶を含有し、水分5〜25重量%、蛋白質0.3〜2重量%、脂質70〜94.5重量%、糖質0.1〜0.7重量%、灰分0.1〜2重量%である。
本発明の可塑性油脂組成物は、直接β型の油脂結晶を含有することが必要である。直接β型の油脂結晶を含有しないと、結晶安定性の面で十分に満足の得られるものとならない。
ただし、本発明の可塑性油脂組成物は直接β型の油脂結晶を含有していればよく、直接β型の油脂結晶でない油脂結晶、例えばβプライム型の油脂結晶を含有していてもよい。
上記の直接β型の油脂結晶とは、油脂結晶を融解し、冷却し、結晶化したときに熱エネルギー的に不安定なα型結晶から、準安定形のβプライム型を経由せず、最安定形のβ型結晶に直接転移する油脂結晶のことである。この際、上記の結晶化条件は如何なる結晶化条件であってもよく、テンパリング等の特殊な熱処理を必要としない。
本発明において、直接β型の油脂結晶であると確認する方法として、油脂結晶を70℃で完全に融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で30分間保持した際に得られる油脂結晶がβ型結晶であるものとする。
上記の油脂結晶がβ型結晶であることを確認する方法としては、X線回析測定において、以下のように短面間隔を測定すると、油脂結晶がβ型結晶であるかどうか判断できる。
具体的には、油脂結晶について、短面間隔を2θ:17〜26度の範囲で測定し、4.5〜4.7オングストロームの面間隔に対応する強い回析ピークを示した場合に、該油脂結晶はβ型結晶であると判断する。さらにより高い精度で測定する場合は、短面間隔を2θ:17〜26度の範囲で測定し、4.5〜4.7オングストロームの面間隔に対応する範囲に最大値を有するピーク強度(ピーク強度1)と4.2〜4.3オングストロームの面間隔に対応する範囲に最大値を有するピーク強度(ピーク強度2)をとり、ピーク強度1/ピーク強度2の比が1.3以上、好ましくは1.7以上、より好ましくは2.2以上、最も好ましくは2.5以上となった場合にβ型結晶であると判断する。
また上記の直接β型の油脂結晶は、トリグリセリド分子のパッキング状態が2鎖長構造であることが好ましい。この2鎖長構造であることを確認する方法としては、たとえばX線回析測定による方法が挙げられる。
具体的には、油脂結晶について、長面間隔を2θ:0〜8度の範囲で測定し、40〜50オングストロームに相当する回折ピークを示した場合に、該油脂結晶は2鎖長構造をとっていると判断する。
従来のマーガリンやショートニング等の可塑性油脂に用いられている油脂結晶を70℃で完全融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で30分間保持した際に得られる油脂結晶は、2鎖長構造であるが、準安定形のβプライムである。また、主にチョコレート等の油脂性菓子に用いられるカカオ脂も、70℃で完全融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で30分間保持した際に得られる油脂結晶は、2鎖長構造であるが、準安定形のβプライムである。
また上記の直接β型の油脂結晶の結晶サイズは、微細結晶であることが好ましい。上記の微細結晶とは、油脂の結晶が微細であることであり、口にしたり、触った際にもザラつきを感ずることのない結晶であることを意味し、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm、最も好ましくは3μm以下のサイズの油脂結晶を指す。上記サイズとは、結晶の最大部位の長さを示すものである。
上記の直接β型の油脂結晶の結晶サイズが20μmを越えた油脂結晶であると、該油脂結晶を含有する可塑性油脂組成物を口にしたり、触った際にザラつきを感じやすい。
そして上記の直接β型の油脂結晶は実質的に微細結晶であることが好ましい。この「実質的に」とは、全ての直接β型の油脂結晶のうち、微細結晶を90重量%以上含有することを指す。
本発明の可塑性油脂組成物において上記の直接β型の油脂結晶の含有量は、本発明の可塑性油脂組成物の油相中、好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、最も好ましくは30〜95重量%となるように含有させる。
上記の油相とは、油脂に必要により乳化剤、着色料、酸化防止剤、着香料、調味料などを添加したものを指す。また、上記の油脂には乳製品、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材から抽出される脂肪分も含まれる。
本発明の直接β型の油脂結晶の1つめとして、StEE(St:ステアリン酸、E:エライジン酸)で表されるトリグリセリド(以下StEEとする)の油脂結晶があげられる。
本発明の可塑性油脂組成物の油相中、StEEの油脂結晶が好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、最も好ましくは30〜95重量%となるように含有させる。
本発明の可塑性油脂組成物中に上記のような範囲でStEEの油脂結晶を含有させるために、本発明ではStEEを含有する油脂を用いることができる。
上記のStEEを含有する油脂として、例えば大豆油、ひまわり油、シア脂、サル脂の中から選ばれた1種または2種以上を水素添加及び分別から選択される1又は2種類の処理を施した加工油脂を用いることができる。さらに好ましくはハイオレイックひまわり硬化油、シア分別軟部油の硬化油またはこの硬化油の分別硬部油、サル分別軟部油の硬化油またはこの硬化油の分別硬部油を用いることが望ましい。
また本発明の直接β型の油脂結晶の2つめとして、S1MS2(S1及びS2は飽和脂肪酸、Mはモノ不飽和脂肪酸を表す)で表されるトリグリセリド(以下S1MS2とする)とMS3M(S3は飽和脂肪酸、Mはモノ不飽和脂肪酸を表す)で表されるトリグリセリド(以下MS3Mとする)とからなるコンパウンド結晶があげられる。
上記のS1MS2のS1とS2及びMS3MのS3は、好ましくは炭素数16以上の飽和脂肪酸であり、さらに好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸である。また、本発明において、上記のS1、S2及びS3が、同じ飽和脂肪酸であるのが最も好ましい。
上記のS1MS2のMやMS3MのMは、好ましくは炭素数16以上のモノ不飽和脂肪酸、さらに好ましくは炭素数18以上のモノ不飽和脂肪酸、最も好ましくはオレイン酸である。
上記のS1MS2とMS3Mとからなるコンパウンド結晶とは、構造の異なるS1MS21分子とMS3M1分子とが混合された際、あたかも単一のトリグリセリド分子であるかの如き結晶化挙動を示すものである。コンパウンド結晶は分子間化合物とも呼ばれる。
本発明の可塑性油脂組成物において、上記のS1MS2とMS3Mとからなるコンパウンド結晶の含有量は、本発明の可塑性油脂組成物の油相中、好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、最も好ましくは30〜95重量%とする。S1MS2とMS3Mとからなるコンパウンド結晶の含有量が、本発明の可塑性油脂組成物の油相中、5重量%未満であると経日的に20μmを越えたサイズを有するβ型結晶が出現しやすく、経日的に硬くなりやすい。
また本発明の可塑性油脂組成物の油相中、上記のS1MS2の含有量は好ましくは2.5重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上、最も好ましくは15〜50重量%であり、上記のMS3Mの含有量は好ましくは2.5重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上、最も好ましくは15〜50重量%となるように含有させる。
さらに、本発明の可塑性油脂組成物において、MS3Mのモル数/S1MS2のモル数が、好ましくは0.4〜2.5、さらに好ましくは0.6〜1.5、もっとも好ましくは0.8〜1.2となるように含有させる。
本発明の可塑性油脂組成物中に上記のような範囲でS1MS2とMS3Mとからなるコンパウンド結晶を含有させるために、本発明ではS1MS2を含有する油脂とMS3Mを含有する油脂を混合してもよい。
上記のS1MS2を含有する油脂としては、例えばパーム油、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、コクム脂、デュパー脂、モーラー脂、フルクラ脂、チャイニーズタロー等の各種植物油脂、これらの各種植物油脂を分別した加工油脂、並びに下記に記載するエステル交換油、該エステル交換油を分別した加工油脂を用いることができる。本発明では、上記の中から選ばれた1種又は2種以上を用いる。
上記のエステル交換油としては、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油等の各種動植物油脂、これらの各種動植物油脂を必要に応じて水素添加及び/又は分別した後に得られる加工油脂、脂肪酸、脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油が挙げられる。
上記のMS3Mを含有する油脂としては、例えば豚脂、豚脂分別油、下記に記載するエステル交換油を用いることができ、本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いる。
上記のエステル交換油としては、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油等の各種動植物油脂、これらの各種動植物油脂を必要に応じて水素添加、分別した後に得られる加工油脂、脂肪酸、脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油が挙げられる。
本発明の可塑性油脂組成物において、上記のS1MS2を含有する油脂は、本発明の可塑性油脂組成物の油相中、S1MS2を好ましくは2.5重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上、最も好ましくは15重量%以上50重量%以下となるよう含有させ、上記のMS3Mを含有する油脂は、本発明の可塑性油脂組成物の油相中、MS3Mを好ましくは2.5重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上、最も好ましくは15重量%以上50重量%以下となるよう含有させる。
本発明の可塑性油脂組成物は、乳脂肪を含有させてもよい。乳脂肪の含有量は、特に制限はないが、本発明の可塑性油脂組成物の油相中、好ましくは1〜95重量%、さらに好ましくは5〜50重量%、最も好ましくは10〜30重量%である。乳脂肪の含有量が1重量%未満であると良好な風味が得られにくい。また、乳脂肪の含有量が95重量%を超えると、得られる可塑性油脂組成物が低温で硬くなりやすく、可塑性を有する温度範囲が狭くなりやすい。
上記の乳脂肪として、牛乳、クリーム、バター、チーズ等の乳脂を含有する乳製品をそのまま使用しても、これらから脂質分だけを抽出した乳脂肪そのものを使用してもよい。
また上記の乳脂肪を乾式分別、溶剤分別した分別乳脂硬部油、分別乳脂中部油、分別乳脂軟部油等を使用しても構わない。
本発明の可塑性油脂組成物は、高融点油脂を含有させてもよい。高融点油脂を含有させることにより、本発明の可塑性油脂組成物の耐熱保型性を向上させ、ロールイン用途(ペストリー用途)に使用した際、製造工程におけるホイロ時の生地の伸びを向上させることが出来る。
上記の高融点油脂の融点は、好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上、最も好ましくは55℃以上80℃以下である。融点が40℃未満の油脂では、ホイロ時の生地の伸びが充分に得られにくい。
また、上記の高融点油脂の含有量は、本発明の可塑性油脂組成物の油相中、好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下である。上記の高融点油脂は、油脂組成物の油相中の含有量が、30重量%を超えると口どけが悪化しやすい。
上記の高融点油脂の具体例としては、例えば、パーム油、カカオバター、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油等の各種動植物油脂に、水素添加、分別、エステル交換から選ばれる1又は2以上の処理を施した加工油脂、脂肪酸、脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油が挙げられる。
本発明の可塑性油脂組成物において、その他の油脂を用いても良い。その他の油脂を用いる場合、その他の油脂の含有量は、本発明の可塑性油脂組成物の油相中、好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下、最も好ましくは70重量%以下とする。その他の油脂としては、通常の加工食品に用いられる食用油脂であれば、特に限定されず、動物油、植物油等の天然油、及びこれらの油脂の硬化油、分別油、エステル交換油、ランダムエステル交換油等の単独あるいは混合油が使用出来る。
ある可塑性油脂組成物が、直接β型の油脂結晶を含有していることを確認する方法としては次のような方法があげられる。上記の「直接β型の油脂結晶を含有していること」とは、直接β型の油脂結晶を含有していればよく、直接β型の油脂結晶でない油脂結晶、例えばβプライム型の油脂結晶やβプライム型の油脂結晶を経由するβ型の油脂結晶を含有していてもよい。
上記の確認方法は、ある可塑性油脂組成物の油相を70℃で完全に融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で7日間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶であることが好ましい。5℃で7日間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶であることが好ましいが、5℃で4日間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶であることがさらに好ましく、5℃で1日間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶であることが一層好ましく、5℃で1時間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶であることがさらに一層好ましく、5℃で30分間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶であることが最も好ましい。
上記の確認方法において、ある可塑性油脂組成物中の直接β型の油脂結晶の含有量が多いほど、5℃での保持時間が短くても得られる油脂結晶は2鎖長構造のβ型結晶となる。
上記の確認方法において、5℃での保持期間後に得られた油脂結晶がβ型結晶であることを判断する方法としては、X線回析測定において、以下のように短面間隔を測定することにより判断できる。
具体的には、油脂結晶について、短面間隔を2θ:17〜26度の範囲で測定し、4.5〜4.7オングストロームの面間隔に対応する強い回析ピークを示した場合に、該油脂結晶はβ型結晶であると判断する。さらにより高い精度で測定する場合は、短面間隔を2θ:17〜26度の範囲で測定し、4.5〜4.7オングストロームの面間隔に対応する範囲に最大値を有するピーク強度(ピーク強度1)と4.2〜4.3オングストロームの面間隔に対応する範囲に最大値を有するピーク強度(ピーク強度2)をとり、ピーク強度1/ピーク強度2の比が1.3以上、好ましくは1.7以上、より好ましくは2.2以上、最も好ましくは2.5以上となった場合にβ型結晶であると判断する。
また本発明の可塑性油脂組成物の油相の油脂結晶は、トリグリセリド分子のパッキング状態が2鎖長構造であることが好ましい。この2鎖長構造であることを確認する方法としては、たとえばX線回析測定による方法が挙げられる。
具体的には、油脂結晶について、長面間隔を2θ:0〜8度の範囲で測定し、40〜50オングストロームに相当する回折ピークを示した場合に、該油脂結晶は2鎖長構造をとっていると判断する。
また本発明の可塑性油脂組成物の油相の油脂結晶は、微細結晶であることが好ましい。上記の微細結晶とは、油脂の結晶が微細であることであり、口にしたり、触った際にもザラつきを感ずることのない結晶であることを意味し、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm、最も好ましくは3μm以下のサイズの油脂結晶を指す。上記サイズとは、結晶の最大部位の長さを示すものである。
本発明の可塑性油脂組成物の油相の油脂結晶のサイズが20μmを越えた油脂結晶であると、可塑性油脂組成物を口にしたり、触った際にザラつきを感じやすく、液状油成分を保持することが困難となり、また可塑性油脂組成物が油にじみを起こしやすく、水相成分と油脂結晶により形成される3次元構造中に維持できにくくなる。
本発明の可塑性油脂組成物の油相と水相の割合は特に限定はないが、好ましくは重量比率で、油相:水相=95:5〜74;26、さらに好ましくは油相:水相=95:5〜79:21、最も好ましくは油相:水相=94:6〜84:16である。
本発明の可塑性油脂組成物をロールイン用油脂組成物として用いる場合、油相中のSFCが好ましくは10℃で20〜60%、20℃で10〜40%、さらに好ましくは10℃で20〜50%、20℃で10〜20%とするのが好ましい。SFCが10℃で20%未満、または20℃で10%未満のときはロールイン用油脂組成物として軟らかすぎてパフ性の良好なペストリーが得られにくい。一方、SFCが10℃で60%を超える、または20℃で40%を超えると、伸展性が悪く広い温度範囲で可塑性を得られにくい。
上記のSFCは、次のようにして測定する。即ち、ロールイン用油脂組成物の油相を60℃に30分保持し、油脂を完全に融解し、そして0℃に30分保持して固化させる。さらに25℃に30分保持し、テンパリングを行い、その後、0℃に30分保持する。これをSFCの各測定温度に30分保持後、SFCを測定する。
そして本発明の可塑性油脂組成物は、水分5〜25重量%、蛋白質0.3〜2重量%、脂質70〜94.5重量%、糖質0.1〜0.7重量%、灰分0.1〜2重量%となるように調製する。上記の範囲に調製することにより、良好な乳風味を有する可塑性油脂組成物とすることができる。
本発明の可塑性油脂組成物は、水分が5〜25重量%の範囲となるように調製するが、好ましくは5〜20重量%、さらに好ましくは5〜15重量%に調製するのがよい。
本発明の可塑性油脂組成物は、蛋白質が0.3〜2重量%の範囲となるように調製するが、好ましくは0.3〜1.5重量%、さらに好ましくは0.5〜1重量%に調製するのがよい。
本発明の可塑性油脂組成物は、脂質が70〜94.5重量%の範囲となるように調製するが、好ましくは75〜90重量%、さらに好ましくは80〜85重量%に調製するのがよい。
本発明の可塑性油脂組成物は、糖質が0.1〜0.7重量%の範囲となるように調製するが、好ましくは0.2〜0.6重量%、さらに好ましくは0.2〜0.4重量%に調製するのがよい。
本発明の可塑性油脂組成物は、灰分が0.1〜2重量%の範囲となるように調製するが、好ましくは0.1〜1.5重量%、さらに好ましくは0.1〜1.2重量%に調製するのがよい。
また本発明の可塑性油脂組成物は蛋白質の含有量より糖質の含有量が少ないのが好ましく、さらに蛋白質と糖質の重量比率(蛋白質/糖質)が0.5〜0.7であるのが好ましく、1.2〜5であるのが最も好ましい。
上記の各栄養成分の測定方法は五訂日本食品標準成分表の一般成分の測定法に準ずる。
本発明の可塑性油脂組成物はクリームチーズを含有することが好ましい。
上記のクリームチーズとは、クリームまたはクリームと牛乳から作った、熟成させない軟質チーズのことである。
本発明の可塑性油脂組成物中のクリームチーズの含有量は、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは3〜20重量%、最も好ましくは5〜15重量%である。可塑性油脂組成物中のクリームチーズの含有量が1重量%よりも少ないと良好な乳風味が得られにくく、可塑性油脂組成物中のクリームチーズの含有量が30重量%よりも多いと良好な可塑性が得られにくくなる。
また本発明の可塑性油脂組成物は、合成乳化剤を含有しないのが好ましい。上記の合成乳化剤としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等が挙げられる。
本発明の可塑性油脂組成物は、合成乳化剤でない乳化剤を用いることができ、例えば大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄があげられ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。特に本発明の可塑性油脂組成物は酵素処理卵黄を用いるのが好ましい。
上記の酵素処理卵黄について説明する。
上記の酵素処理卵黄は、基質として生卵黄、殺菌卵黄、加塩卵黄、加糖卵黄のいずれを使用してもよいが、酵素反応時の微生物の増殖を抑えることを考慮すると加塩卵黄が適しており、例えば食塩が3〜20重量%添加された加塩卵黄を用いるのがよく、さらに好ましくは食塩が5〜10重量%添加された加塩卵黄を用いるのがよい。
上記酵素処理卵黄を酵素処理の際に用いる酵素としては、好ましくはホスホリパーゼA及び/又はプロテアーゼを使用することができる。
ホスホリパーゼAは、リン脂質加水分解酵素とも呼ばれ、リン脂質をリゾリン脂質に分解する反応を触媒する酵素であり、作用するエステル結合の位置の違いにより、ホスホリパーゼA1 (EC3.1.1.32)とホスホリパーゼA2 (EC3.1.1.4)の2種類を使用することができ、豚等の哺乳類の膵液や、微生物を起源とした市販のホスホリパーゼAを使用することができる。特にホスホリパーゼA2 を使用するのが好ましい。また本発明において2種以上のホスホリパーゼAを併用してもよい。
プロテアーゼとは、蛋白質を加水分解する反応を触媒する酵素であり、微生物類由来、動物由来、植物由来及び生態由来のいずれでもよく、あるいはこれらから遺伝子組み換え等の技術によって得られたものでもよく、2種類以上を併用してもよい。
上記プロテアーゼは、活性のpH域で性質の分類される中性プロテアーゼ、アルカリ性プロテアーゼ、酸性プロテアーゼ、また活性部位の特徴で分類されるセリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、金属プロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ等のいずれでもよく、特に限定されるものではないが、好ましいプロテアーゼとしては、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、ペプシン、ブロメライン、パンクレアチン、サブチリシン、サーモライシン、コラゲナーゼ、アルカラーゼ等があげられる。
上記のアルカリ性プロテアーゼを用いる場合、アミラーゼ活性を有さないアルカリプロテアーゼ(特願2003−285509号参照)を用いるのが好ましい。特にバチルス(Bacillus)属細菌由来のものであり、好ましくはバチルス リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)細菌由来のものを用いるのがよい。具体的には、アルカラーゼAF(ノボザイム(株)製)が特に適している。
本発明の可塑性油脂組成物で用いる酵素処理卵黄では、卵黄の酵素処理の際、ホスホリパーゼAのみを用いても良いし、プロテアーゼのみを用いてもよいし、ホスホリパーゼAとプロテアーゼを併用しても良い。
本発明の可塑性油脂組成物で用いる酵素処理卵黄として、ホスホリパーゼAと、プロテアーゼとして、トリプシン、パパイン、ペプシン、ブロメラインの中から選ばれた1種または2種以上を用いる場合は、卵黄をホスホリパーゼAで処理し、次いでプロテアーゼで処理することが好ましい。
本発明の可塑性油脂組成物で用いる酵素処理卵黄において、ホスホリパーゼAと、プロテアーゼとして、アミラーゼ活性を有さないアルカリプロテアーゼを用いる場合は、卵黄にホスホリパーゼAとアミラーゼ活性を有さないアルカリプロテアーゼを同時に添加し処理をすることが好ましい。
また卵黄を酵素処理する際のホスホリパーゼAの添加量は、卵黄1gに対し、好ましくは0.2〜100ホスホリパーゼユニット、さらに好ましくは0.5〜20ホスホリパーゼユニットの活性量に相当する量を作用させるのがよい。ホスホリパーゼユニットとは、ホスホリパーゼの活性量を表す単位であり、1ホスホリパーゼユニットとは、pH8.0、40℃で卵黄にホスホリパーゼAを作用させたときに、卵黄中のリン脂質から、1分間に1マイクロモルの脂肪酸を遊離する活性量である。
卵黄を酵素処理する際のプロテアーゼの添加量は、卵黄1gに対し、好ましくは0.01〜10プロテアーゼユニット、さらに好ましくは0.1〜5プロテアーゼユニットの活性量に相当する量を作用させるのがよい。プロテアーゼユニットとは、プロテアーゼの活性量を表す単位であり、1プロテアーゼユニットとは、pH7.0、37℃でミルクカゼインにプロテアーゼを作用させたときに、1分間に1マイクロモルのチロシンに相当する呈色度を示す活性量である。
尚、ホスホリパーゼA及びプロテアーゼの併用からなる上記酵素は、次の様な基準で添加しても良い。
即ち、上記酵素の添加量(合計量)は、卵黄100重量部に対し、好ましくは0.001〜0.8重量部であり、更に好ましくは0.01〜0.3重量部である。この際、ホスホリパーゼとプロテアーゼを併用する場合の、ホスホリパーゼAとプロテアーゼとの重量比は、好ましくは20/80〜90/10である。
卵黄の酵素処理は、卵黄の蛋白質やホスホリパーゼA及びプロテアーゼが熱により変性せず、ホスホリパーゼA及びプロテアーゼの最適温度で行うのが良く、通常20〜60℃、更に好ましくは40〜60℃の温度範囲で行うのが良い。また、酵素処理中に攪拌機等で攪拌を行うのが有利である。
また、卵黄の酵素処理の際の反応時間に特に制約はないが、0.5〜30時間の範囲内で行うのが好ましい。
尚、卵黄を酵素処理する方法としては、回分式で上述の条件により加水分解する方法が採用されるが、連続式で加水分解する方法でもよい。
上記の酵素処理卵黄は、卵黄の酵素処理の際に、至適pHに調整するのが良く、この目的のpH調整剤は食品用であれば特に限定されず、例えば乳酸、クエン酸、グルコン酸、アジピン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、アスコルビン酸、酢酸等の酸味料やリン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、食酢、果汁、発酵乳等の酸性物質や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム等を用いることができ、例えばpH5から9の範囲で行えば良い。また卵黄の酵素処理の際に、酵素の安定剤として食品用の塩化カルシウム、リン酸二水素カルシウム等のカルシウム化合物を添加しても良い。
ホスホスホリパーゼAによる卵黄のリン脂質のリゾリン脂質への分解の程度と、プロテアーゼによる卵黄の蛋白質の加水分解の程度は、酵素の添加量、反応温度、反応開始時のpH、酵素の安定剤の有無、反応時間の影響を受けるが、特に限定されない。たとえばホスホリパーゼAによる卵黄のリン脂質のリゾリン脂質への分解の程度は卵黄に含まれる全リン脂質の30〜100重量%がリゾリン脂質に分解される程度までに分解するのが良く、またプロテアーゼによる卵黄の蛋白質の加水分解分解の程度は卵黄に含まれる蛋白質の加熱凝固性が失われる程度までに分解するのが良い。
このようにして得られた酵素処理卵黄に食塩や糖類を添加して、酵素処理加塩卵黄や酵素処理加糖卵黄としても良い。
本発明の可塑性油脂組成物において、上記酵素処理卵黄の含有量は、特に制限はないが、好ましくは0.2〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%、最も好ましくは0.7〜5重量%である。酵素処理卵黄の含有量が0.2重量%よりも少ないと乳化が不安定になり易く、15重量%よりも多いと酵素処理卵黄の生臭みが出て風味が悪くなり易い。
その他、本発明の可塑性油脂組成物に含有させることができる成分としては、例えば、水、増粘安定剤、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、糖類や糖アルコール類、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β―カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白卵及び各種卵加工品、着香料、乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等があげられ、この中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。上記増粘安定剤の含有量は、特に制限はないが、本発明の可塑性油脂組成物中、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。また本発明の可塑性油脂組成物において、上記増粘安定剤が必要でなければ、増粘安定剤を用いなくてもよい。
次に本発明の可塑性油脂組成物の製造方法を説明する。
本発明の可塑性油脂組成物は、直接β型結晶となるトリグリセリド、必要によりその他の成分を混合し、融解し、油相とする。一方、水相を用意し、上記の油相と水相を乳化する。そして次に殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法はタンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。次に、冷却可塑化する。本発明において冷却条件は好ましくは−0.5℃/分以上、さらに好ましくは−5℃/分以上とする。この際、徐冷却より急速冷却の方が好ましいが、本発明では徐冷却であってもよい。冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えばボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせ等が挙げられる。
また、本発明の可塑性油脂組成物を製造する際のいずれかの製造工程で、窒素、空気等を含気させても、させなくても構わない。
さらに、本発明の可塑性油脂組成物をロールイン用油脂組成物とする場合は、その形状を、シート状、立方体状、直方体状、角柱状、円柱状、半円柱状等の形状としてもよい。各々の形状についての好ましいサイズは、シート状:縦50〜1000mm、横:50〜1000mm、厚さ:1〜50mm、ブロック状:縦50〜1000mm、横50〜1000mm、厚さ50〜500mm、円柱状:直径1〜25mm、長さ5〜100mmである。
本発明の可塑性油脂組成の乳化形態は、油中水型、水中油型、及び二重乳化型のいずれでも構わない。
このようにして得られた本発明の可塑性油脂組成物は食パン、菓子パン、ペストリー、バラエティーブレッド、バターロール、ソフトロール、ハードロール、スイートロール、蒸しパン、蒸しケーキ、シュー、ドーナツ、ケーキ、クッキー、ハードビスケット、ワッフル、スコーン等のベーカリー製品に練り込み用、フィリング用、サンド様、トッピング用、スプレッド用として使用することができる。また本発明の可塑性油脂組成物はデニッシュ、クロワッサン、パイ、フライドパイ等のペストリー製品にロールイン用として使用することができる。
また本発明の可塑性油脂組成物の上記用途における使用量は、使用用途により異なるものであり、特に限定されるものではない。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により何等制限されるものではない。また、St:ステアリン酸、O:オレイン酸、P:パルミチン酸、S:飽和脂肪酸、M:モノ不飽和脂肪酸を示す。
また実施例と比較例におけるSFC測定方法は以下の通りである。配合油を60℃に30分保持し、油脂を完全に融解し、そして0℃に30分保持して固化させる。さらに25℃に30分保持し、テンパリングを行い、その後、0℃に30分保持する。これをSFCの各測定温度に30分保持後、SFCを測定した。
(酵素処理卵黄A)
10重量%加塩卵黄(pH6.0)を水酸化ナトリウムでpH8.0に調整し、このもの100kgに対してトリプシンを30000ユニット加え、50℃で20時間反応させ、10℃まで冷却し。酵素処理卵黄Aを得た。
(酵素処理卵黄B)
10重量%加塩卵黄(pH6.0)100重量部に、プロテアーゼとしてアルカラーゼ2.4AF(ノボザイム(株)、Bacillus licheniformis起源)0.07重量部、及びホスホリパーゼA2としてレシターゼ10L(ノボザイム(株)、豚膵臓起源)0.02重量部を添加し、50℃にて15時間反応させて酵素処理卵黄Bを得た。
(実施例1)
SMSで表されるトリグリセリドを57重量%含有するサル脂分別中部油23重量%と、MSMで表されるトリグリセリドを17重量%含有するラード分別軟部油77重量%とを60℃で融解混合し、混合油(a)を得た。この混合油(a)はSMSで表されるトリグリセリドを13重量%、MSMで表されるトリグリセリドを13重量%含有していた。
そして、上記混合油(a)を70℃で完全に融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で30分間保持した際に得られた油脂結晶を2θ:17〜26度の範囲でX線回折測定を実施したところ、4.6オングストロームの面間隔に対応する強い回折ピークを示し、また4.6オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度1)と4.2オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度2)をとり、ピーク強度1/ピーク強度2の比をとったところ4.0となり、この油脂結晶はβ型をとることが確認され、直接β型の油脂結晶を含有していることがわかった。さらに2θ:0〜8度の範囲でX線回折測定を実施したところ、46オングストロームに相当する回折ピークが得られ、トリグリセリドのパッキング状態が2鎖長構造であることも確認された。また光学顕微鏡で、この油脂結晶のサイズを観察したところ、3μm以下の微細な結晶であった。
上記混合油(a)50重量%、ナタネ硬化油25重量%及び大豆油25重量%を60℃で融解させ配合油を得た。この配合油72重量%にクリームチーズ11重量%、酵素処理卵黄A2重量%を混合融解した油相85重量%と水14重量%、食塩1重量%を常法により、油中水型の乳化物とし、急冷可塑化工程(−20℃/分以上)にかけ、マーガリンタイプのロールイン用油脂1を得た。ロールイン用油脂1は縦285mm、横420mm、厚さ9mmのシート状に成形した。
得られたロールイン用油脂1の油相の油脂結晶は、光学顕微鏡下で、3μm以下の微細油脂結晶であり、油脂組成物の油相を70℃で完全に融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で30分間保持した際に得られた油脂結晶を上記と同条件でX線回折測定を行ったところ、4.6オングストロームの面間隔に対応する強い回折ピークを示し、4.6オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度1)と4.2オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度2)の比(ピーク強度1/ピーク強度2)は3.9となり、この油脂結晶はβ型をとることが確認され、直接β型の油脂結晶を含有していることがわかった。さらに47オングストロームに相当する回折ピークも得られ、トリグリセリドのパッキング状態が2鎖長構造であることも確認された。
なお得られたロールイン用油脂1の油相中のSMSで表されるトリグリセリドは6重量%、MSMで表されるトリグリセリドは6重量%であり、MSMで表されるトリグリセリド/SMSで表されるトリグリセリドのモル比は1.0であった。またロールイン用油脂1の油相中のSMSで表されるトリグリセリドとMSMで表されるトリグリセリドからなるコンパウンド結晶を12重量%であり、よってロールイン用油脂1の油相中の直接β型油脂結晶の含有量は12重量%であった。
このロールイン用油脂1の水分は19.4重量%、蛋白質0.5重量%、脂質78.6重量%、糖質0.2重量%、灰分1.3重量%であった。
そしてこのロールイン用油脂1の油相のSFCは10℃で30%、20℃で15%であった。
また得られたロールイン用油脂1は5℃のレオメーター値が1970g/cm2と低温でも軟らかくて可塑性範囲が広く、且つ製造から1ヶ月経過後での5℃のレオメーター値も1970g/cm2と経日的にも硬さが変化せず安定したロールイン用油脂であり、乳化状態も良好であった。
このロールイン油脂1を用いて以下の配合と製法により、デニッシュを焼成した。得られたデニッシュは、良好な乳風味を有し、浮きも良好であった。
(デニッシュの配合)
強力粉 100 重量部
冷凍用イースト 6
食塩 1.8
上白糖 6
脱脂粉乳 3
練り込み用油脂 7
全卵 10
水 48
ロールイン用油脂1 50
(デニッシュの製法)
ミキシング :練り込み用油脂とロールイン用油脂1以外の材料を混合し、L3M3にてミキシングをし、練り込み用油脂を添加し、さらにL3M5にてミキシングをする。
捏上温度 :20℃
フロアタイム:20分
リタード :−20℃、30分後 2℃、4時間
ロールイン :ロールイン用油脂1をのせ、3つ折り2回
リタード :2℃、30分
ロールイン :3つ折り1回
リタード :2℃、30分
最終圧延 :生地厚4mm
成形 :クロワッサン(60g)
冷凍 :−40℃、30分
保管 :クロワッサン生地をビニール袋に入れ密封し、−20℃にて30日保管する。
解凍 :25℃、60分
ホイロ条件 :32℃、50分
焼成条件 :200℃、15分
(実施例2)
SMSで表されるトリグリセリドを60重量%含有するパーム分別中部油22重量%と、MSMで表されるトリグリセリドを17重量%含有するラード78重量%とを60℃で融解混合し、混合油(b)を得た。この混合油(b)はSMSで表されるトリグリセリドを13重量%、MSMで表されるトリグリセリドを13重量%含有していた。
そして、上記混合油(b)を70℃で完全に融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で30分間保持した際に得られた油脂結晶を2θ:17〜26度の範囲でX線回折測定を実施したところ、4.6オングストロームの面間隔に対応する強い回折ピークを示し、また4.6オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度1)と4.2オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度2)をとり、ピーク強度1/ピーク強度2の比をとったところ4.9となり、この油脂結晶はβ型をとることが確認され、直接β型の油脂結晶を含有していることがわかった。さらに2θ:0〜8度の範囲でX線回折測定を実施したところ、44オングストロームに相当する回折ピークが得られ、トリグリセリドのパッキング状態が2鎖長構造であることも確認された。また光学顕微鏡で、この油脂結晶のサイズを観察したところ、3μm以下の微細な結晶であった。
上記混合油(b)50重量%、乳脂肪25重量%及び大豆油25重量%を60℃で融解させ配合油を得た。この配合油55重量%に無塩バター20重量%、クリームチーズ10重量%、酵素処理卵黄B2重量%を混合融解した油相87重量%と水12重量%、食塩1重量%を常法により、油中水型の乳化物とし、急冷可塑化工程(−20℃/分以上)にかけ、マーガリンタイプのロールイン用油脂2を得た。ロールイン用油脂2は縦285mm、横420mm、厚さ9mmのシート状に成形した。
得られたロールイン用油脂2の油相の油脂結晶は、光学顕微鏡下で、3μm以下の微細油脂結晶であり、油脂組成物の油相を70℃で完全に融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で30分間保持した際に得られた油脂結晶を上記と同条件でX線回折測定を行ったところ、4.6オングストロームの面間隔に対応する強い回折ピークを示し、4.6オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度1)と4.2オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度2)の比(ピーク強度1/ピーク強度2)は4.2となり、この油脂結晶はβ型をとることが確認され、直接β型の油脂結晶を含有していることがわかった。さらに47オングストロームに相当する回折ピークも得られ、トリグリセリドのパッキング状態が2鎖長構造であることも確認された。
なお得られたロールイン用油脂2の油相中のSMSで表されるトリグリセリドは4重量%、MSMで表されるトリグリセリドは4重量%であり、MSMで表されるトリグリセリド/SMSで表されるトリグリセリドのモル比は1.0であった。またロールイン用油脂2の油相中のSMSで表されるトリグリセリドとMSMで表されるトリグリセリドからなるコンパウンド結晶を8重量%であり、よってロールイン用油脂2の油相中の直接β型油脂結晶の含有量は8重量%であった。
このロールイン用油脂2の水分は20.2重量%、蛋白質0.6重量%、脂質77.6重量%、糖質0.3重量%、灰分1.3重量%であった。
そしてこのロールイン用油脂2の油相のSFCは10℃で29%、20℃で12%であった。
また得られたロールイン用油脂2は5℃のレオメーター値が1840g/cm2と低温でも軟らかくて可塑性範囲が広く、且つ製造から1ヶ月経過後での5℃のレオメーター値も1840g/cm2と経日的にも硬さが変化せず安定したロールイン用油脂であり、乳化状態も良好であった。
上記ロールイン用油脂2を用い、実施例1と同様の配合と製法によりデニッシュを焼成した。得られたデニッシュは、良好な乳風味を有し、浮きも良好であった。
(実施例3)
SMSで表されるトリグリセリドを22重量%含有するパーム油44重量%と、MSMで表されるトリグリセリドを17重量%含有するラード56重量%とを60℃で融解混合し、混合油(c)を得た。この混合油(c)はSMSで表されるトリグリセリドを10重量%、MSMで表されるトリグリセリドを10重量%含有していた。
そして、上記混合油(a)を70℃で完全に融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で30分間保持した際に得られた油脂結晶を2θ:17〜26度の範囲でX線回折測定を実施したところ、4.6オングストロームの面間隔に対応する強い回折ピークを示し、また4.6オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度1)と4.2オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度2)をとり、ピーク強度1/ピーク強度2の比をとったところ1.5となり、この油脂結晶はβ型をとることが確認され、直接β型の油脂結晶を含有していることがわかった。さらに2θ:0〜8度の範囲でX線回折測定を実施したところ、48オングストロームに相当する回折ピークが得られ、トリグリセリドのパッキング状態が2鎖長構造であることも確認された。また光学顕微鏡で、この油脂結晶のサイズを観察したところ、3μm以下の微細な結晶であった。
上記混合油(c)50重量%、ナタネ硬化油25重量%及び大豆油25重量%を60℃で融解させ配合油を得た。この配合油72重量%にクリームチーズ11重量%、酵素処理卵黄A2重量%を混合融解した油相85重量%と水14重量%、食塩1重量%を常法により、油中水型の乳化物とし、急冷可塑化工程(−20℃/分以上)にかけ、マーガリンタイプのロールイン用油脂3を得た。ロールイン用油脂3は縦285mm、横420mm、厚さ9mmのシート状に成形した。
得られたロールイン用油脂3の油相の油脂結晶は、光学顕微鏡下で、3μm以下の微細油脂結晶であり、油脂組成物の油相を70℃で完全に融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で30分間保持した際に得られた油脂結晶を上記と同条件でX線回折測定を行ったところ、4.6オングストロームの面間隔に対応する強い回折ピークを示し、4.6オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度1)と4.2オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度2)の比(ピーク強度1/ピーク強度2)は1.4となり、この油脂結晶はβ型をとることが確認され、直接β型の油脂結晶を含有していることがわかった。さらに47オングストロームに相当する回折ピークも得られ、トリグリセリドのパッキング状態が2鎖長構造であることも確認された。
なお得られたロールイン用油脂3の油相中のSMSで表されるトリグリセリドは4重量%、MSMで表されるトリグリセリドは4重量%であり、MSMで表されるトリグリセリド/SMSで表されるトリグリセリドのモル比は1.0であった。またロールイン用油脂3の油相中のSMSで表されるトリグリセリドとMSMで表されるトリグリセリドからなるコンパウンド結晶を8重量%であり、よってロールイン用油脂3の油相中の直接β型油脂結晶の含有量は8重量%であった。
このロールイン用油脂3の水分は19.4重量%、蛋白質0.5重量%、脂質78.6重量%、糖質0.2重量%、灰分1.3重量%であった。
そしてこのロールイン用油脂3の油相のSFCは10℃で34%、20℃で16%であった。
また得られたロールイン用油脂3は5℃のレオメーター値が2880g/cm2と低温でも軟らかくて可塑性範囲が広く、且つ製造から1ヶ月経過後での5℃のレオメーター値も2880g/cm2と経日的にも硬さが変化せず安定した油脂組成物であり、乳化状態も良好であった。
上記ロールイン用油脂3を用い、実施例1と同様の配合と製法によりデニッシュを焼成した。得られたデニッシュは、良好な乳風味を有し、浮きも良好であった。
(実施例4)
サル分別軟部油を原料とし、DL−メチオニンの存在下の異性化水素添加を行い沃素価54の硬化油とし、次いでこの硬化油をドライ分別により分画し、分別硬部油(d)を得た。上記分別硬部油(d)はStEEで表されるトリグリセリドを36重量%含有していた。
この分別硬部油(d)を70℃で完全に融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で30分間保持した際に得られた油脂結晶を2θ:17〜26度の範囲でX線回折測定を実施したところ、4.6オングストロームの面間隔に対応する強い回折ピークを示し、また4.6オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度1)と4.2オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度2)をとり、ピーク強度1/ピーク強度2の比をとったところ2.7となり、この油脂結晶はβ型をとることが確認され、直接β型の油脂結晶を含有していることがわかった。さらに2θ:0〜8度の範囲でX線回折測定を実施したところ、46オングストロームに相当する回折ピークが得られ、トリグリセリドのパッキング状態が2鎖長構造であることも確認された。また光学顕微鏡で、この油脂結晶のサイズを観察したところ、3μm以下の微細な結晶であった。
上記分別硬部油(d)50重量%、ナタネ硬化油25重量%及び大豆油25重量%を60℃で融解させ配合油を得た。この配合油72重量%にクリームチーズ11重量%、酵素処理卵黄B2重量%を混合融解した油相85重量%と水14重量%、食塩1重量%を常法により、油中水型の乳化物とし、急冷可塑化工程(−20℃/分以上)にかけ、マーガリンタイプのロールイン用油脂4を得た。ロールイン用油脂4は直径5mm、長さ40mmの円柱状に成形した。
得られたロールイン用油脂4の油相の油脂結晶は、光学顕微鏡下で、3μm以下の微細油脂結晶であり、油脂組成物の油相を70℃で完全に融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で30分間保持した際に得られた油脂結晶を上記と同条件でX線回折測定を行ったところ、4.6オングストロームの面間隔に対応する強い回折ピークを示し、4.6オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度1)と4.2オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度2)の比(ピーク強度1/ピーク強度2)は2.5となり、この油脂結晶はβ型をとることが確認され、直接β型の油脂結晶を含有していることがわかった。さらに45オングストロームに相当する回折ピークも得られ、トリグリセリドのパッキング状態が2鎖長構造であることも確認された。
なお得られたロールイン用油脂4の油相中のStEEで表されるトリグリセリドは15重量%であり、よってロールイン用油脂4の油相中の直接β型油脂結晶の含有量は15重量%であった。
このロールイン用油脂4の水分は19.4重量%、蛋白質0.5重量%、脂質78.6重量%、糖質0.2重量%、灰分1.3重量%であった。
そしてこのロールイン用油脂4の油相のSFCは10℃で26%、20℃で10%であった。
また得られたロールイン用油脂4は5℃のレオメーター値が1300g/cm2と低温でも軟らかくて可塑性範囲が広く、且つ製造から1ヶ月経過後での5℃のレオメーター値も1300g/cm2と経日的にも硬さが変化せず安定した油脂組成物であり、乳化状態も良好であった。
このロールイン油脂4を用いて以下の配合と製法により、デニッシュを焼成した。得られたデニッシュは、良好な乳風味を有し、浮きも良好であった。
(デニッシュの配合)
強力粉 60 重量部
薄力粉 40
イースト 6
イーストフード 0.1
食塩 1.2
上白糖 15
脱脂粉乳 3
練り込み用油脂 8
全卵 15
水 47
ロールイン用油脂4 40
(デニッシュの製法)
ミキシング :練り込み用油脂とロールイン用油脂4以外の材料を混合し、L3M4にてミキシングをし、練り込み用油脂を添加し、L3M3にてミキシングをする。そしてロールイン用油脂4を投入しL1〜2にてミキシングをする。
捏上温度 :24℃(ロールイン用油脂4投入前)
空折り :4つ折り
リタード :2℃、240分
空折り :4つ折り2回
リタード :2℃、30分
最終圧延 :生地厚4mm
成形 :クロワッサン(60g)
ホイロ条件 :32℃、50分
焼成条件 :200℃、15分
(比較例1)
SMSで表されるトリグリセリドを57重量%含有するサル脂分別中部油23重量%と、MSMで表されるトリグリセリドを17重量%含有するラード分別軟部油77重量%とを60℃で融解混合し、混合油(a)を得た。この混合油(a)はSMSで表されるトリグリセリドを13重量%、MSMで表されるトリグリセリドを13重量%含有していた。
そして、上記混合油(a)を70℃で完全に融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で30分間保持した際に得られた油脂結晶を2θ:17〜26度の範囲でX線回折測定を実施したところ、4.6オングストロームの面間隔に対応する強い回折ピークを示し、また4.6オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度1)と4.2オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度2)をとり、ピーク強度1/ピーク強度2の比をとったところ4.0となり、この油脂結晶はβ型をとることが確認され、直接β型の油脂結晶を含有していることがわかった。さらに2θ:0〜8度の範囲でX線回折測定を実施したところ、46オングストロームに相当する回折ピークが得られ、トリグリセリドのパッキング状態が2鎖長構造であることも確認された。また光学顕微鏡で、この油脂結晶のサイズを観察したところ、3μm以下の微細な結晶であった。
上記混合油(a)50重量%、ナタネ硬化油25重量%及び大豆油25重量%を60℃で融解させ配合油を得た。この配合油78重量%に、酵素処理卵黄A2重量%を混合融解した油相80.0重量%と水17.0重量%、食塩1重量%、脱脂粉乳2.0重量%を常法により、油中水型の乳化物とし、急冷可塑化工程(−20℃/分以上)にかけ、マーガリンタイプのロールイン用油脂5を得た。ロールイン用油脂5は縦285mm、横420mm、厚さ9mmのシート状に成形した。
得られたロールイン用油脂5油相の油脂結晶は、光学顕微鏡下で、3μm以下の微細油脂結晶であり、油脂組成物の油相を70℃で完全に融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で30分間保持した際に得られた油脂結晶を上記と同条件でX線回折測定を行ったところ、4.6オングストロームの面間隔に対応する強い回折ピークを示し、4.6オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度1)と4.2オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度2)の比(ピーク強度1/ピーク強度2)は3.9となり、この油脂結晶はβ型をとることが確認され、直接β型の油脂結晶を含有していることがわかった。さらに47オングストロームに相当する回折ピークも得られ、トリグリセリドのパッキング状態が2鎖長構造であることも確認された。
なお得られたロールイン用油脂5の油相中のSMSで表されるトリグリセリドは6重量%、MSMで表されるトリグリセリドは6重量%であり、MSMで表されるトリグリセリド/SMSで表されるトリグリセリドのモル比は1.0であった。またロールイン用油脂5の油相中のSMSで表されるトリグリセリドとMSMで表されるトリグリセリドからなるコンパウンド結晶を12重量%であり、よってロールイン用油脂5の油相中の直接β型油脂結晶の含有量は12重量%であった。
このロールイン用油脂5の水分は18.1重量%、蛋白質0.9重量%、脂質78.5重量%、糖質1.1重量%、灰分1.4量%であった。
そしてこのロールイン用油脂5の油相のSFCは10℃で30%、20℃で15%であった。
また得られたロールイン用油脂5は5℃のレオメーター値が1970g/cm2と低温でも軟らかくて可塑性範囲が広く、且つ製造から1ヶ月経過後での5℃のレオメーター値も1970g/cm2と経日的にも硬さが変化せず安定したロールイン用油脂であり、乳化状態も良好であった。
上記ロールイン用油脂5を用い、実施例1と同様の配合と製法によりデニッシュを焼成した。得られたデニッシュは、浮きが良好であったが、実施例1に比べ、乳風味が得られなかった。

Claims (5)

  1. 直接β型の油脂結晶を含有し、水分5〜25重量%、蛋白質0.3〜2重量%、脂質70〜94.5重量%、糖質0.1〜0.7重量%、灰分0.1〜2重量%であることを特徴とする可塑性油脂組成物。
  2. クリームチーズを含有する請求項1記載の可塑性油脂組成物。
  3. 合成乳化剤を含有しない請求項1または2記載の可塑性油脂組成物。
  4. ロールイン用油脂組成物である請求項1〜3のいずれかに記載の可塑性油脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の可塑性油脂組成物を用いた食品。
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