JP4562571B2 - 乳化油脂組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、食品に風味を付与する乳化油脂組成物およびこの乳化油脂組成物を用いた食品に関する。
アミノ酸と糖類を加熱処理することによるアミノ−カルボニル反応すなわちメイラード反応により得られるフレーバーを、食品の風味強化剤として利用する技術が広く知られている。
油脂組成物において、この技術を利用したものとして、例えば、特許文献1には、油脂を乳製品粉末、糖類およびアミノ酸類の存在下に加熱することを特徴とする焦がしバター風味を有する風味油の製造方法が開示されている。さらにこの風味油をマーガリン、ショートニングなどに使用することも記載されている。
しかし、特許文献1では、油脂に糖類およびアミノ酸類を分散させており、糖類およびアミノ酸類は主に水溶性であるため、油脂中における糖類とアミノ酸類の接触効率が悪く、添加量に対する風味発現性が低いという欠点があった。また、特許文献1の風味油を加熱処理することにより、風味油が褐変してしまうという欠点があった。
また、特許文献2には、6−デオキシ−アルドヘキソースとα−アミノ酸のアマドリ転位化合物を食品または食品のための成分に配合することを特徴とする食品または食品のための成分に調味をつける方法が開示されている。
しかし、特許文献2では、風味物質である6−デオキシ−アルドヘキソースとα−アミノ酸のアマドリ転位化合物をマーガリンに配合するため、保存中に風味がなくなりやすく、そのため長期間風味を維持することが困難である。
特許文献3には、低級脂肪酸モノグリセライド、糖類およびアミノ酸を特定量含有することを特徴とする乳化食品(ホイップクリーム、マーガリン、マヨネーズなど)が記載されている。
この特許文献3は保存性を改良する乳化食品に関するものであり、風味改良効果についての記載はない。また、この特許文献3では、水相に糖類とアミノ酸を一緒に添加しているため、糖類とアミノ酸のメイラード反応により得られるフレーバーが期待される組み合わせを選んで乳化食品を製造したとしても、乳化食品の水相にははじめからメイラード反応物が含まれていることとなる。そのため長期間風味を維持することが困難であった。
特開2002−171903号公報 特開昭51−32767号公報 特開昭59−154945号
したがって、本発明の目的は、保存中に風味を失うことなく、食品に強力な風味を付与することができ、かつ褐変しにくい、乳化油脂組成物を提供することにある。
本発明は、連続した油相中に、糖類を含有する水相または水中油型乳化物と、アミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物とが、実質的にそれぞれ独立して存在する乳化油脂組成物を製造する方法であって、油相と糖類を含有する水相または水中油型乳化物とを乳化し、殺菌処理を施した後、冷却し、これにアミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物を添加し、均一に混合することを特徴とする乳化油脂組成物の製造方法を提供することにより、前記目的を達成したものである。
本発明の乳化油脂組成物は、前記構成により、糖類とアミノ酸が保存中に接触するのが防止されているため、保存中にメイラード反応が起こらず、本発明の乳化油脂組成物を使用した食品が加熱され、乳化油脂組成物の乳化が壊れたときにはじめて糖類とアミノ酸が反応し、メイラード反応が起こるので、従来の油脂組成物よりもメイラード反応が起こる時期を遅くすることができる。そのため、本発明の乳化油脂組成物は、保存中に風味を失うことがなく、また本発明の乳化油脂組成物を食品に使用することにより、該食品に強力な風味を付与することができる。さらに、本発明の乳化油脂組成物は、製造過程で褐変しにくいものである。
以下、本発明の乳化油脂組成物について詳述する。
本発明の乳化油脂組成物は、図1に示すように、連続した油相2中に、糖類を含有する水相または水中油型乳化物3と、アミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物4とが、実質的にそれぞれ独立して存在する乳化油脂組成物1である。
本発明でいう「糖類を含有する水相または水中油型乳化物と、アミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物とが、実質的にそれぞれ独立して存在する」とは、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上の、糖類を含有する水相または水中油型乳化物とアミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物とがそれぞれ独立して存在するということである。
本発明の乳化油脂組成物における連続した油相としては、油脂に必要に応じて、乳化剤、着色料、酸化防止剤、着香料、調味料等を添加したものが用いられる。
上記油脂としては、パーム油、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、サフラワー油、綿実油、カカオ脂、乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の食用天然油脂、該食用天然油脂に水素添加、分別およびエステル交換といった処理を1種または2種以上施した食用加工油脂が挙げられ、これらの中から1種または2種以上を適宜選択して使用することができる。また、上記油脂には、乳製品、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材から抽出される脂肪分も含まれる。
特に結晶安定性を向上させるために、本発明の乳化油脂組成物では、上記油脂が、直接β型の油脂結晶を含有するものであることが好ましい。もちろん、本発明の乳化油脂組成物は、直接β型の油脂結晶でない油脂結晶、例えばβプライム型の油脂結晶を含有していてもよい。
上記の直接β型の油脂結晶とは、油脂結晶を融解し、冷却し、結晶化したときに、熱エネルギー的に不安定なα型結晶から、準安定形のβプライム型を経由せず、最安定形のβ型結晶に直接転移する油脂結晶のことである。この際、上記の結晶化条件は如何なる結晶化条件であってもよく、テンパリング等の特殊な熱処理を必要としない。
本発明の乳化油脂組成物において、油脂結晶が直接β型であることを確認する方法としては、油脂結晶を70℃で完全に融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で30分間保持した際に得られる油脂結晶が、β型結晶であることを確認する方法が挙げられる。
上記の油脂結晶がβ型結晶であることを確認する方法としては、例えば、X線回析測定において、以下のように短面間隔を測定する方法が挙げられる。
具体的には、油脂結晶について、短面間隔を2θ:17〜26度の範囲で測定し、4.5〜4.7オングストロームの面間隔に対応する強い回析ピークを示した場合に、該油脂結晶はβ型結晶であると判断する。さらにより高い精度で測定する場合は、短面間隔を2θ:17〜26度の範囲で測定し、4.5〜4.7オングストロームの面間隔に対応する範囲に最大値を有するピーク強度(ピーク強度1)および4.2〜4.3オングストロームの面間隔に対応する範囲に最大値を有するピーク強度(ピーク強度2)をとり、ピーク強度1/ピーク強度2の比が1.3以上、好ましくは1.7以上、より好ましくは2.2以上、最も好ましくは2.5以上となった場合にβ型結晶であると判断する。
また、上記の直接β型の油脂結晶は、トリグリセリド分子のパッキング状態が2鎖長構造であることが好ましい。油脂結晶が2鎖長構造であることを確認する方法としては、例えばX線回析測定による方法が挙げられる。
具体的には、油脂結晶について、長面間隔を2θ:0〜8度の範囲で測定し、40〜50オングストロームに相当する回折ピークを示した場合に、該油脂結晶は2鎖長構造をとっていると判断する。
尚、従来のマーガリンやショートニング等の可塑性油脂に用いられている油脂結晶を70℃で完全融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で30分間保持した際に得られる油脂結晶は、2鎖長構造であるが、準安定形のβプライム型である。また、主にチョコレート等の油脂性菓子に用いられるカカオ脂も、70℃で完全融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で30分間保持した際に得られる油脂結晶は、2鎖長構造であるが、準安定形のβプライム型である。
また、上記の直接β型の油脂結晶は、実質的に微細結晶であることが好ましい。上記の微細結晶とは、油脂の結晶が微細であることであり、口にしたり、触った際にもザラつきを感ずることのない結晶であることを意味し、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm、最も好ましくは3μm以下のサイズの油脂結晶を指す。上記サイズとは、結晶の最大部位の長さを示すものである。
上記の直接β型の油脂結晶の結晶サイズが20μmを越えた油脂結晶であると、該油脂結晶を含有する乳化油脂組成物を口にしたり、触った際にザラつきを感じやすい。
なお、「実質的に」とは、全ての直接β型の油脂結晶のうち微細結晶を90質量%以上含有することを指す。
本発明の乳化油脂組成物において、上記の直接β型の油脂結晶の含有量は、本発明の乳化油脂組成物の油相中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは5質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上30質量%以下、最も好ましくは5質量%以上20質量%以下である。直接β型の油脂結晶の含有量が、本発明の乳化油脂組成物の油相中、5質量%未満であると経日的に20μmを越えたサイズを有するβ型結晶が出現しやすく、経日的に硬くなりやすい。
ここで、本発明で言うところの直接β型の油脂結晶の例を挙げる。
上記の直接β型の油脂結晶の1つめの例として、StEE(St:ステアリン酸、E:エライジン酸)で表されるトリグリセリド(以下StEEとする)の油脂結晶が挙げられる。
StEEの油脂結晶は、本発明の乳化油脂組成物の油相中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは5質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上30質量%以下、最も好ましくは5質量%以上20質量%以下となるように含有させる。
本発明の乳化油脂組成物中に、好ましくは上記のような範囲で、StEEの油脂結晶を含有させるために、本発明ではStEEを含有する油脂を用いることができる。
上記のStEEを含有する油脂としては、例えば、大豆油、ひまわり油、シア脂、サル脂の中から選ばれた1種または2種以上に水素添加および分別から選択される1または2種類の処理を施した加工油脂を用いることができる。さらに好ましくは、ハイオレイックひまわり硬化油、シア分別軟部油の硬化油またはこの硬化油の分別硬部油、サル分別軟部油の硬化油またはこの硬化油の分別硬部油を用いることが望ましい。
また、上記の直接β型の油脂結晶の2つめの例として、S1 MS2 (S1 およびS2 は飽和脂肪酸、Mはモノ不飽和脂肪酸を表す)で表されるトリグリセリド(以下S1 MS2 とする)と、MS3 M(S3 は飽和脂肪酸、Mはモノ不飽和脂肪酸を表す)で表されるトリグリセリド(以下MS3 Mとする)とからなるコンパウンド結晶が挙げられる。
上記のS1 MS2 のS1 およびS2 並びにMS3 MのS3 は、好ましくは炭素数16以上の飽和脂肪酸であり、さらに好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸である。また、本発明において、上記のS1 、S2 およびS3 が、同じ飽和脂肪酸であるのが最も好ましい。
また、上記のS1 MS2 のMおよびMS3 MのMは、好ましくは炭素数16以上のモノ不飽和脂肪酸、さらに好ましくは炭素数18以上のモノ不飽和脂肪酸、最も好ましくはオレイン酸である。
上記のS1 MS2 とMS3 Mとからなるコンパウンド結晶とは、構造の異なるS1 MS2 1分子とMS3 M1分子とが混合された際、あたかも単一のトリグリセリド分子であるかの如き結晶化挙動を示すものである。コンパウンド結晶は分子間化合物とも呼ばれる。
本発明の乳化油脂組成物において、上記のS1 MS2 とMS3 Mとからなるコンパウンド結晶は、本発明の乳化油脂組成物の油相中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは5質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上30質量%以下、最も好ましくは5質量%以上20質量%以下となるように含有させる。
また、本発明の乳化油脂組成物の油相中、上記のS1 MS2 の含有量は、好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは2.5質量%以上15質量%以下、最も好ましくは2.5質量%以上10質量%以下であり、上記のMS3 Mの含有量は、好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは2.5質量%以上15質量%以下、最も好ましくは2.5質量%以上10質量%以下である。
さらに、本発明の乳化油脂組成物において、MS3 Mのモル数/S1 MS2 のモル数が、好ましくは0.4〜7.0、さらに好ましくは0.8〜5.0となるように含有させる。
本発明の乳化油脂組成物中に、好ましくは上記のような範囲で、S1 MS2 とMS3 Mとからなるコンパウンド結晶を含有させるために、本発明ではS1 MS2 を含有する油脂およびMS3 Mを含有する油脂を混合して用いてもよい。
上記のS1 MS2 を含有する油脂としては、例えば、パーム油、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、コクム脂、デュパー脂、モーラー脂、フルクラ脂、チャイニーズタロー等の各種植物油脂、これらの各種植物油脂を分別した加工油脂、並びに下記に記載するエステル交換油、該エステル交換油を分別した加工油脂を用いることができる。本発明では、上記の中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
上記のエステル交換油としては、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油等の各種動植物油脂、これらの各種動植物油脂を必要に応じて水素添加および/または分別した後に得られる加工油脂、脂肪酸、脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油が挙げられる。
本発明の乳化油脂組成物においては、上記のS1 MS2 を含有する油脂として、純植物性の乳化油脂組成物を得ることが可能な点で、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂等の各種植物油脂、これらの各種植物油脂を必要に応じて水素添加および/または分別した後に得られる加工油脂、脂肪酸、脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油を使用することが好ましく、更には、トランス酸を含まない点において、水素添加した加工油脂を含有しないことが好ましく、中でも、S1 MS2 と共に、後述する3飽和トリグリセリドをも含有する点において、パーム油や、パームステアリン、パームオレイン、パーム中部油等のパーム分別油、これらを用いて製造したエステル交換油のうちの1種または2種以上を使用することが最も好ましい。
上記のMS3 Mを含有する油脂としては、例えば、豚脂、豚脂分別油、下記に記載するエステル交換油を用いることができ、本発明ではこれらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
上記のエステル交換油としては、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油等の各種動植物油脂、これらの各種動植物油脂を必要に応じて水素添加および/または分別した後に得られる加工油脂、脂肪酸、脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油が挙げられる。
本発明の乳化油脂組成物においては、上記のMS3 Mを含有する油脂として、純植物性の乳化油脂組成物を得ることが可能な点で、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂等の各種植物油脂、これらの各種植物油脂を必要に応じて水素添加および/または分別した後に得られる加工油脂、脂肪酸、脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油を使用することが好ましく、更には、トランス酸を含まない点において、水素添加した加工油脂を含有しないことが好ましく、中でも、MS3 Mと共に、後述する3飽和トリグリセリドをも含有する点において、パーム油や、パームステアリン、パームオレイン、パーム中部油等のパーム分別油を用いて製造したエステル交換油のうちの1種または2種以上を使用することが最も好ましい。
本発明の乳化油脂組成物において、上記のS1 MS2 を含有する油脂は、本発明の乳化油脂組成物の油相中、S1 MS2 が好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは2.5質量%以上15質量%以下、最も好ましくは2.5質量%以上10質量%以下となるよう含有させ、上記のMS3 Mを含有する油脂は、本発明の乳化油脂組成物の油相中、MS3 Mを好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは2.5質量%以上15質量%以下、最も好ましくは2.5質量%以上10質量%以下となるよう含有させる。
本発明の乳化油脂組成物においては、直接β型の油脂結晶として、1つめの例として挙げた上記StEEの油脂結晶、および2つめの例として挙げたS1 MS2 とMS3 Mで表されるトリグリセリドとからなるコンパウンド結晶のいずれを用いてもよく、また両者を併用してもよいが、トランス酸を含まなくても製造できる点で、後者のコンパウンド結晶を使用することがより好ましい。
また、本発明の乳化油脂組成物では、構成脂肪酸の全てが炭素数16以上の脂肪酸からなる3飽和トリグリセリドを含有するのが好ましい。
上記の構成脂肪酸の全てが炭素数16以上の脂肪酸からなる3飽和トリグリセリドは、構成脂肪酸の全てがパルミチン酸であるトリグリセリドを好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上含有するものが望ましい。上記の3飽和トリグリセリドを含有することにより、結晶性が良好であり、結晶安定性の面で十分に満足の得られる乳化油脂組成物を得ることが可能となる。
本発明の乳化油脂組成物において、上記の3飽和トリグリセリドの含有量は、本発明の乳化油脂組成物の油相中、好ましくは10質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上25質量%以下、最も好ましくは10質量%以上20質量%以下とする。上記の3飽和トリグリセリドの含有量が、本発明の乳化油脂組成物の油相中、10質量%未満であると、経日的に20μmを越えたサイズを有するβ型結晶が出現しやすく、経日的に硬くなりやすい。また、30質量%超であると、得られる油脂組成物の融点が高くなりすぎ、口溶けが悪くなりやすい。
本発明の乳化油脂組成物においては、上記の3飽和トリグリセリドの起源として、パームステアリン、パームステアリンのランダムエステル交換油、およびパームステアリンを含む油脂配合物のランダムエステル交換油から選択された1種または2種以上を使用することが好ましい。
パームステアリンは、パーム油からパームオレインを分別採取する際の副生物として得られる。
このパームステアリンは、脂肪酸組成として、飽和脂肪酸であるパルミチン酸を多く含み、上昇融点が44〜56℃、ヨウ素価が20〜50であり、食用油脂としては融点が高いため口溶けが大変悪く、また硬くて使用しづらいため、食用油脂や食品への配合量も限られた量に制限せざるを得ず、油脂組成物への使用用途は硬さの調整用の用途に限られていた。
また、このような硬さの調整等にパームステアリンを使用した油脂組成物、特に可塑性油脂組成物や、該可塑性油脂組成物を使用して製造された食品は、保管条件によっては経時的にグレイニングやブルームと呼ばれる粗大結晶粒を形成し、表面が白色化したり、ザラつきや触感の悪さを呈し製品価値の全くないものになってしまう問題があった。
本発明の乳化油脂組成物では、このように可塑性油脂に用いるには不適であるとされていたパームステアリンを使用しながら、良好な可塑性を示し、且つ経日的なブルームを起こさない可塑性油脂組成物を得ることができる。
パームステアリンは、S1 MS2 を20〜40質量%含有する上に、更に、構成脂肪酸の全てが炭素数16以上の脂肪酸からなる3飽和トリグリセリドを30〜60質量%含有し、且つ、該3飽和トリグリセリドにおいて、構成脂肪酸の全てがパルミチン酸であるトリグリセリドの占める割合が60質量%以上であるため、本発明の乳化油脂組成物において、3飽和トリグリセリドの起源として極めて好適に使用することができる。
3飽和トリグリセリドの起源としては、このようなパームステアリンをそのまま使用することができるが、パームステアリンにランダムエステル交換を行なった油脂、更にはパームステアリンにパーム核軟部油やパーム油等の他の油脂を添加してランダムエステル交換した油脂を使用することもでき、また、パームステアリンに、脂肪酸、脂肪酸低級アルコールエステルを添加してランダムエステル交換を行なった油脂を使用することもできる。
これらのランダムエステル交換反応を行なうことにより、さらに結晶性が良好で、経日的なブルームを起こさない乳化油脂組成物を得ることができる。
本発明の乳化油脂組成物は、上記StEEを含有する油脂、上記S1 MS2 を含有する油脂、上記MS3 Mを含有する油脂、及び上記の3飽和トリグリセリドを含有する油脂の1種または2種以上を適宜組み合わせて、直接β型の油脂結晶を含有する乳化油脂組成物を得ることができる。その際、上記パームステアリン、パームステアリンのランダムエステル交換油、およびパームステアリンを含む油脂配合物のランダムエステル交換油から選択される1 種または2種以上に、豚脂、各種エステル交換油等の上記MS3 Mを含有する油脂を組みあわせることが好ましい。S1 MS2 、MS3 M、および上記の3飽和トリグリセリドを少ない油種で簡単に配合することが可能な点で、パームステアリン、パームステアリンのランダムエステル交換油、およびパームステアリンを含む油脂配合物のランダムエステル交換油から選択される1種または2種以上と、パーム油、パームオレイン、パーム中部油等のパーム系油脂のランダムエステル交換油とを組み合わせることがさらに好ましい。さらに結晶性が良好で、経日的なブルームを起こさない乳化油脂組成物を得ることができる点から、パームステアリンのランダムエステル交換油、およびパームステアリンを含む油脂配合物のランダムエステル交換油から選択される1種または2種以上と、パーム油、パームオレイン、パーム中部油等のパーム系油脂のランダムエステル交換油とを組み合わせることが最も好ましい。
また、本発明の乳化油脂組成物において、上記StEEを含有する油脂、上記S1 MS2 を含有する油脂、上記MS3 Mを含有する油脂、および上記の3飽和トリグリセリド以外のその他の油脂を用いても良い。その他の油脂を用いる場合、その他の油脂の含有量は、本発明の乳化油脂組成物の油相中、好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下、最も好ましくは70質量%以下とする。その他の油脂としては、通常の加工食品に用いられる食用油脂であれば、特に限定されず、動物油、植物油等の天然油、およびこれらの油脂の硬化油、分別油、エステル交換油、ランダムエステル交換油等の単独あるいは混合油が使用できる。
ここで、乳化油脂組成物が、直接β型の油脂結晶を含有していることを確認する方法について述べる。
まず、第1の方法として、乳化油脂組成物の油相のトリグリセリド組成を分析し、直接β型の油脂結晶となるトリグリセリド、例えば、StEE、またはS1 MS2 およびMS3 Mの油相中の含有量を測定し、直接β型の油脂結晶となるトリグリセリドが油相中に含有されていること、好ましくはその含有量が前記範囲内にあることを確認することにより、乳化油脂組成物が直接β型の油脂結晶を含有していることを確認する方法が挙げられる。
また、第2の方法として、油相中に上記直接β型の油脂結晶となるトリグリセリド、例えば、StEE、またはS1 MS2 およびMS3 Mを含有している油脂が配合されていること、好ましくは上記StEE、またはS1 MS2 およびMS3 Mが油相中に前記範囲内の含有量となるように配合されていることを確認する方法が挙げられる。
更に、より簡単な方法である第3の方法として、乳化油脂組成物の油相を70℃で完全に融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で30分間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶であることを確認することによって、乳化油脂組成物が直接β型の油脂結晶を含有していることを確認する方法が挙げられる。
なお、第3の方法において、乳化油脂組成物の油相の油脂結晶が下に示すような微細結晶であることが確認された場合は、油相を70℃で完全に融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で7日間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶であることを確認することによって、直接β型の油脂結晶を含有していることを確認することができる。この場合、5℃で7日間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶であることが好ましいが、5℃で4日間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶であることがさらに好ましく、5℃で1日間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶であることが一層好ましく、5℃で1時間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶であることがさらに一層好ましく、5℃で30分間保持した際に得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶であることが最も好ましい。
上記の第3の方法において、乳化油脂組成物中の直接β型の油脂結晶の含有量が多いほど、5℃での保持時間が短くても、得られる油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶となる。
上記の第3の方法において、5℃での保持期間後に得られた油脂結晶がβ型結晶であることを判断する方法としては、X線回析測定において、以下のように短面間隔を測定することにより判断できる。
具体的には、油脂結晶について、短面間隔を2θ:17〜26度の範囲で測定し、4.5〜4.7オングストロームの面間隔に対応する強い回析ピークを示した場合に、該油脂結晶はβ型結晶であると判断する。さらにより高い精度で測定する場合は、短面間隔を2θ:17〜26度の範囲で測定し、4.5〜4.7オングストロームの面間隔に対応する範囲に最大値を有するピーク強度(ピーク強度1)及び4.2〜4.3オングストロームの面間隔に対応する範囲に最大値を有するピーク強度(ピーク強度2)をとり、ピーク強度1/ピーク強度2の比が1.3以上、好ましくは1.7以上、より好ましくは2.2以上、最も好ましくは2.5以上となった場合にβ型結晶であると判断する。
また、本発明の乳化油脂組成物の油相の油脂結晶は、トリグリセリド分子のパッキング状態が2鎖長構造であることが好ましい。この2鎖長構造であることを確認する方法としては、例えばX線回析測定による方法が挙げられる。
具体的には、油脂結晶について、長面間隔を2θ:0〜8度の範囲で測定し、40〜50オングストロームに相当する回折ピークを示した場合に、該油脂結晶は2鎖長構造をとっていると判断する。
また、本発明の乳化油脂組成物の油相の油脂結晶は、微細結晶であることが好ましい。上記の微細結晶とは、油脂の結晶が微細であることであり、口にしたり、触った際にもザラつきを感ずることのない結晶であることを意味し、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm、最も好ましくは3μm以下のサイズの油脂結晶を指す。上記サイズとは、結晶の最大部位の長さを示すものである。
本発明の乳化油脂組成物の油相の油脂結晶のサイズが20μmを越えた油脂結晶であると、乳化油脂組成物を口にしたり触った際にザラつきを感じやすく、また、液状油成分を保持することが困難となり、乳化油脂組成物が油にじみを起こしやすく、水相成分および油脂結晶により形成される3次元構造中に維持できにくくなる。
また、本発明の乳化油脂組成物は、実質的にトランス酸を含まない方が好ましい。水素添加は、油脂の融点を上昇させる典型的な方法であるが、水素添加油脂は、完全水素添加油脂を除いて、通常構成脂肪酸中にトランス酸が10〜50質量%程度含まれている。一方、天然油脂中にはトランス酸が殆ど存在せず、反芻動物由来の油脂に10質量%未満含まれているにすぎない。近年、化学的な処理、特に水素添加に付されていない油脂組成物、即ち実質的にトランス酸を含まない油脂組成物であって、適切なコンシステンシーを有するものも要求されている。ここで、「実質的にトランス酸を含まない」とは、乳化油脂組成物の全構成脂肪酸中、トランス酸が好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは1質量%以下であることをいう。
本発明の乳化油脂組成物は、直接β型結晶を得る際に、StEEではなく、S1 MS2 とMS3 Mとからなるコンパウンド結晶を使用し、S1 MS2 やMS3 Mを含有する油脂として、上述したように、植物油脂や、植物油脂のエステル交換油脂を使用することにより、簡単に、実質的にトランス酸を含まない乳化油脂組成物を得ることができる。
本発明の乳化油脂組成物において上記の油脂の総配合量は、乳化油脂組成物中好ましくは40〜99.8質量%、さらに好ましくは70〜90質量%、最も好ましくは75〜85質量%である。油脂の総配合量が40質量%より少ないと、安定な乳化油脂組成物が得られ難く、99.8質量%より多いと、糖類またはアミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物を、油脂組成物中に均質に分散させるのが難しくなるので好ましくない。
また、糖類を含有する水相または水中油型乳化物の含有量は、乳化油脂組成物中好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは1〜40質量%、最も好ましくは10〜30質量%である。

糖類を含有する水相または水中油型乳化物は、糖類を水相または水中油型乳化物中、好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは10〜50質量%、最も好ましくは20〜40質量%含有する。
糖類を含有する水相または水中油型乳化物は、水を水相または水中油型乳化物中、好ましくは50〜99.8質量%、さらに好ましくは60〜99質量%、最も好ましくは70〜90質量%含有する。
糖類を含有する水中油型乳化物とする場合は、油脂を水中油型乳化物中、好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは1〜30質量%、最も好ましくは10〜20質量%含有する。
上記糖類としては、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、蔗糖、麦芽糖、酵素糖化水あめ、還元麦芽糖水あめ、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化糖、蔗糖結合水あめ、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、キシロース、アラビノース、リボース、マンノース等を挙げることができ、本発明ではこれらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
上記水としては、天然水、水道水等の水や、牛乳、卵類、クリーム類等の水分を含む食品に由来する水分を含むものとする。
上記油脂としては、パーム油、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、サフラワー油、綿実油、カカオ脂、乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の食用天然油脂、該食用天然油脂に水素添加、分別およびエステル交換といった処理を1種または2種以上施した食用加工油脂が挙げられ、これらの中から1種または2種以上を適宜選択して使用することができる。また、上記の油脂には、乳製品、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材から抽出される脂肪分も含まれる。
本発明の乳化油脂組成物中の上記糖類の含有量は好ましくは0.1〜20質量%、さらに好ましくは1〜10質量%、最も好ましくは3〜7質量%である。
また、アミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物の含有量は、乳化油脂組成物中、好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは1〜30質量%、最も好ましくは5〜20質量%である。
アミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物は、アミノ酸を水相または水中油型乳化物中、好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは1〜40質量%、最も好ましくは20〜30質量%含有する。
アミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物は、水を水相または水中油型乳化物中、好ましくは50〜99.8質量%、さらに好ましくは60〜99質量%、最も好ましくは70〜80質量%含有する。
アミノ酸を含有する水中油型乳化物とする場合は、油脂を水中油型乳化物中、好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは1〜30質量%、最も好ましくは10〜20質量%含有する。
上記アミノ酸としては、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、グルタミン酸、スレオニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アルギニン、リジン、フェニルアラニン等を挙げることができ、本発明ではこれらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
上記水としては、天然水、水道水等の水や、牛乳、卵類、クリーム類等の水分を含む食品に由来する水分を含むものとする。
上記油脂としては、パーム油、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、サフラワー油、綿実油、カカオ脂、乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の食用天然油脂、該食用天然油脂に水素添加、分別およびエステル交換といった処理を1種または2種以上施した食用加工油脂が挙げられ、これらの中から1種または2種以上を適宜選択して使用することができる。また、上記の油脂には、乳製品、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材から抽出される脂肪分も含まれる。
本発明の乳化油脂組成物中の上記アミノ酸の含有量は、好ましくは0.05〜5質量%、さらに好ましくは0.1〜3質量%、最も好ましくは0.5〜2質量%である。
本発明の乳化油脂組成物における糖類を含有する水相または水中油型乳化物と、アミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物とを合計したものの総配合量は、乳化油脂組成物中、好ましくは1〜50質量%、さらに好ましくは10〜40質量%、最も好ましくは20〜30質量%である。上記総配合量が1質量%より少ないと、アミノ酸、糖類を含む水相または水中油型乳化物を、連続する油相中に分散させるのが難しくなりやすく、50質量%より多いと、連続した油相の乳化油脂組成物とするのが困難になりやすい。
また、本発明の乳化油脂組成物において、上記糖類と上記アミノ酸の質量比率は、好ましくは400:1〜1:50、さらに好ましくは100:1〜1:3、最も好ましくは12:1〜3:2である。
本発明の乳化油脂組成物には、必要により以下の副原料を配合することができる。これらの副原料は、本発明の乳化油脂組成物の連続した油相中、糖類を含有する水相または水中油型乳化物、アミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物のいずれに配合しても構わない。
上記の副原料として、例えば、増粘安定剤、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、牛乳・練乳・脱脂粉乳・カゼイン・ホエーパウダー・乳脂肪球皮膜蛋白質・バター・クリーム・ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・発酵乳等の乳や乳製品、糖アルコール類、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β―カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白卵および各種卵加工品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
本発明の乳化油脂組成物において、これらの副原料は使用目的等に応じて適宜選択することができ、特に制限されるものではない。また、これらの副原料の配合量は、乳化油脂組成物中、好ましくは0.01〜20質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%である。
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。上記増粘安定剤の配合量は、特に制限はないが、本発明の乳化油脂組成物中、好ましくは0〜10質量%、さらに好ましくは0〜5質量%である。また、本発明の乳化油脂組成物において、上記増粘安定剤が必要でなければ、増粘安定剤を用いなくてもよい。
また、本発明の乳化油脂組成物は、合成乳化剤を含有しないのが好ましい。
上記の合成乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等が挙げられる。
本発明の乳化油脂組成物には、合成乳化剤でない乳化剤を用いることができ、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄が挙げられ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
次に、本発明の乳化油脂組成物の製造方法について説明する。本発明の乳化油脂組成物は、例えば次の様にして得られる。即ち、溶融した油脂に必要に応じてその他の原料を添加した油相に、糖類を含有する水相または水中油型乳化物を加え、乳化する。この時、ホモミキサー、ホゲナイザー、コロイドミル等を使用したり、ポンプで循環させながら乳化および均質化することもできる。次いで、殺菌処理を施した後または殺菌処理をせずに、冷却する。冷却は、ダイヤクーラーとコンプレクターとの組み合わせ、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター、コンサーム等のマーガリン製造機やプレート式熱交換機で急冷したり、他の手段で、使用する配合油脂の融点より10〜30℃低い温度まで冷却する。このときの乳化油脂の状態は、糖類を含有する水相または水中油型乳化物の回りに存在する油脂中の高融点成分が固形化していて、油脂中の低融点成分が半固形化または液状の過冷却状態である。この状態となっているときに、アミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物を添加し、均質になる程度で出来るだけ弱く混合した後、静置することによって、本発明の乳化油脂組成物を得る。
本発明の乳化油脂組成物は、可塑性を有しても可塑性を有さなくてもよく、また必要に応じて、製造後または製造中、窒素、空気、ヘリウム等の不活性ガスで脱気させてもよい。
本発明の乳化油脂組成物を流通させる場合は、常温、冷蔵、冷凍いずれでも構わないが、長期間保持するために、冷蔵で、直射日光等の当たらない暗所で流通させることが好ましい。
本発明の乳化油脂組成物は、練り込み用、折り込み用、フライ用、調理用として、いろいろな食品に用いることができる。該食品としては、例えば食パン、菓子パン、デニッシュ・ペストリー、パイ、シュー、ドーナツ、ケーキ、クッキー、ハードビスケット、ワッフル、スコーン等のベーカリー製品、シチュー、グラタン等を挙げることができる。
特に風味が失われやすい冷蔵、冷凍生地に本発明の乳化油脂組成物を用いることにより、食品の風味を強化することが可能である。
また、上記用途における本発明の乳化油脂組成物の使用量は、使用用途により異なるものであり、特に限定されるものではない。
以下に、実施例および比較例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例および比較例によって何ら制限されるものではない。
〔実施例1〕
パームステアリンのランダムエステル交換油と、パームオレインのランダムエステル交換油とを、20/80の質量比で配合した混合油を油相として溶解し、この油相75質量部に、水15質量部とグルコース5質量部を混合した水相20質量部を加えて乳化し、約90℃で殺菌した。そして、急冷可塑化工程(−20℃/分以上)にかけ、15℃まで冷却した。これに水4.5質量部とリジン0.5質量部を混合した水相5質量部を加え、縦形ミキサーで均一に混合し、純植物性マーガリンタイプの可塑性乳化油脂組成物1を得た。
得られた可塑性乳化油脂組成物1の乳化状態は、糖類を含む水相とアミノ酸を含む水相とが実質的に独立した水相として連続した油相中に存在する状態であった。詳しくは90質量%以上の、糖類を含有する水相または水中油型乳化物とアミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物が、独立して存在していた。
得られた可塑性乳化油脂組成物1の油相の油脂結晶は、光学顕微鏡下で、3μm以下の微細油脂結晶であった。可塑性乳化油脂組成物1の油相を70℃で完全に融解した後、0℃で30分間保持し、5℃で30分間保持した際に得られた油脂結晶について、2θ:17〜26度の範囲でX線回折測定を実施したところ、4.6オングストロームの面間隔に対応する強い回折ピークを示し、また、4.6オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度1)および4.2オングストロームの面間隔に対応する最大ピーク強度(ピーク強度2)をとり、ピーク強度1/ピーク強度2の比をとったところ3となり、この油脂結晶はβ型をとることが確認され、可塑性乳化油脂組成物1は直接β型の油脂結晶を含有していることがわかった。さらに、この油脂結晶について、2θ:0〜8度の範囲でX線回折測定を実施したところ、46オングストロームに相当する回折ピークが得られ、トリグリセリドのパッキング状態が2鎖長構造であることも確認された。また、光学顕微鏡で、この油脂結晶のサイズを観察したところ、3μm以下の微細な結晶であった。
また、得られた可塑性乳化油脂組成物1の油相中において、SMSで表されるトリグリセリド(以下SMSという)の含有量は10.3質量%で、MSMで表されるトリグリセリド(以下MSMという)の含有量は7.7質量%であり、MSM/SMSのモル比は1.33であった(Sは炭素数16以上の飽和脂肪酸、Mは炭素数18以上のモノ不飽和脂肪酸を示す。)。
また、可塑性乳化油脂組成物1の油相中において、SMSとMSMとからなるコンパウンド結晶の含有量は15.4質量%であり、構成脂肪酸の全てが炭素数16以上の脂肪酸からなる3飽和トリアシルグリセリドの含有量は14. 7質量%であった。また、トリパルミチンの含有量は、全組成中11. 2質量%であり、構成脂肪酸の全てが炭素数16以上の脂肪酸からなる3飽和トリアシルグリセリドの内で76質量%を占めていた。
また、ガスクロマトグラフで測定したところ、可塑性乳化油脂組成物1の全構成脂肪酸中、トランス酸含量は1質量%未満であった。
なお、得られた可塑性乳化油脂組成物1は、5℃のレオメーター値が6000g/cm2 、30℃のレオメーター値が150g/cm2 と可塑性範囲が広く、且つ製造から1ヶ月経過後での20℃のレオメーター値も1500g/cm2 で経日的にも硬さが変化せず安定した乳化油脂組成物であり、油脂表面状態も良好であった。そして可塑性乳化油脂組成物1に褐変した部分は見られなかった。
〔実施例2〕
パームステアリンのランダムエステル交換油と、パームオレインのランダムエステル交換油とを、20/80の質量比で配合した混合油を油相として溶解し、この油相75質量部に、水15質量部とグルコース5質量部を混合した水相20質量部を加えて乳化し、約90℃で殺菌した。そして、急冷可塑化工程(−20℃/分以上)にかけ、15℃まで冷却した。これに水4.5質量部とプロリン0.5質量部を混合した水相5質量部を加え、縦形ミキサーで均一に混合し、純植物性マーガリンタイプの可塑性乳化油脂組成物2を得た。
得られた可塑性乳化油脂組成物2の乳化状態は、糖類を含む水相とアミノ酸を含む水相とが実質的に独立した水相として連続した油相中に存在する状態であった。詳しくは90質量%以上の、糖類を含有する水相または水中油型乳化物とアミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物が、独立して存在していた。
また、得られた可塑性乳化油脂組成物2は、実施例1同様、油相の油脂結晶が2鎖長構造のβ型構造をとり、経日的にも硬さが変化せず安定した乳化油脂組成物であり、油脂表面状態も良好なものであった。そして可塑性乳化油脂組成物2に褐変した部分は見られなかった。
〔実施例3〕
パームステアリンのランダムエステル交換油と、パームオレインのランダムエステル交換油とを、20/80の質量比で配合した混合油を油相として溶解し、この油相75質量部に、水15質量部とグルコース5質量部を混合した水相20質量部を加えて乳化し、約90℃で殺菌した。そして、急冷可塑化工程(−20℃/分以上)にかけ、15℃まで冷却した。これに水4質量部とプロリン0.5質量部とリジン0.5質量部を混合した水相5質量部を加え、縦形ミキサーで均一に混合し、純植物性マーガリンタイプの可塑性乳化油脂組成物3を得た。
得られた可塑性乳化油脂組成物3の乳化状態は、糖類を含む水相とアミノ酸を含む水相とが実質的に独立した水相として連続した油相中に存在する状態であった。詳しくは90質量%以上の、糖類を含有する水相または水中油型乳化物とアミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物が、独立して存在していた。
また、得られた可塑性乳化油脂組成物3は、実施例1同様、油相の油脂結晶が2鎖長構造のβ型構造をとり、経日的にも硬さが変化せず安定した乳化油脂組成物であり、油脂表面状態も良好なものであった。そして可塑性乳化油脂組成物3に褐変した部分は見られなかった。
〔実施例4〕
パームステアリンのランダムエステル交換油と、パームオレインのランダムエステル交換油とを、20/80の質量比で配合した混合油を油相として溶解し、この油相75質量部に、水15質量部とグルコース5質量部を混合した水相20質量部を加えて乳化し、約90℃で殺菌した。そして、急冷可塑化工程(−20℃/分以上)にかけ、15℃まで冷却した。これに水4.25質量部とプロリン0.25質量部とリジン0.5質量部を混合した水相5質量部を加え、縦形ミキサーで均一に混合し、純植物性マーガリンタイプの可塑性乳化油脂組成物4を得た。
得られた可塑性乳化油脂組成物4の乳化状態は、糖類を含む水相とアミノ酸を含む水相とが実質的に独立した水相として連続した油相中に存在する状態であった。詳しくは90質量%以上の、糖類を含有する水相または水中油型乳化物とアミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物が、独立して存在していた。
また、得られた可塑性乳化油脂組成物4は、実施例1同様、油相の油脂結晶が2鎖長構造のβ型構造をとり、経日的にも硬さが変化せず安定した乳化油脂組成物であり、油脂表面状態も良好なものであった。そして可塑性乳化油脂組成物4に褐変した部分は見られなかった。
〔実施例5〕
パームステアリンのランダムエステル交換油と、パームオレインのランダムエステル交換油とを、20/80の質量比で配合した混合油を油相として溶解し、この油相75質量部に、水15質量部とグルコース5質量部を混合した水相20質量部を加えて乳化し、約90℃で殺菌した。そして、急冷可塑化工程(−20℃/分以上)にかけ、15℃まで冷却した。これに水4.5質量部とプロリン0.25質量部とリジン0.25質量部を混合した水相5質量部を加え、縦形ミキサーで均一に混合し、純植物性マーガリンタイプの可塑性乳化油脂組成物5を得た。
得られた可塑性乳化油脂組成物5の乳化状態は、糖類を含む水相とアミノ酸を含む水相とが実質的に独立した水相として連続した油相中に存在する状態であった。詳しくは90質量%以上の、糖類を含有する水相または水中油型乳化物とアミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物が、独立して存在していた。
また、得られた可塑性乳化油脂組成物5は、実施例1同様、油相の油脂結晶が2鎖長構造のβ型構造をとり、経日的にも硬さが変化せず安定した乳化油脂組成物であり、油脂表面状態も良好なものであった。そして可塑性乳化油脂組成物5に褐変した部分は見られなかった。
〔実施例6〕
パームステアリンのランダムエステル交換油と、パームオレインのランダムエステル交換油とを、20/80の質量比で配合した混合油を油相として溶解し、この油相75質量部に、水15質量部とグルコース5質量部を混合した水相20質量部を加えて乳化し、約90℃で殺菌した。そして、急冷可塑化工程(−20℃/分以上)にかけ、15℃まで冷却した。これに水4.375質量部とプロリン0.125質量部とリジン0.5質量部を混合した水相5質量部を加え、縦形ミキサーで均一に混合し、純植物性マーガリンタイプの可塑性乳化油脂組成物6を得た。
得られた可塑性乳化油脂組成物6の乳化状態は、糖類を含む水相とアミノ酸を含む水相とが実質的に独立した水相として連続した油相中に存在する状態であった。詳しくは90質量%以上の、糖類を含有する水相または水中油型乳化物とアミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物が、独立して存在していた。
また、得られた可塑性乳化油脂組成物6は、実施例1同様、油相の油脂結晶が2鎖長構造のβ型構造をとり、経日的にも硬さが変化せず安定した乳化油脂組成物であり、油脂表面状態も良好なものであった。そして可塑性乳化油脂組成物6に褐変した部分は見られなかった。
〔実施例7〕
パーム油と、菜種油とを、70/30の質量比で配合した混合油を油相として溶解し、この油相75質量部に、水15質量部とグルコース5質量部を混合した水相20質量部を加えて乳化し、約90℃で殺菌した。そして、急冷可塑化工程(−20℃/分以上)にかけ、15℃まで冷却した。これに水4質量部とプロリン0.5質量部とリジン0.5質量部を混合した水相5質量部を加え、縦形ミキサーで均一に混合し、純植物性マーガリンタイプの可塑性乳化油脂組成物7を得た。
得られた可塑性乳化油脂組成物7の乳化状態は、糖類を含む水相とアミノ酸を含む水相とが実質的に独立した水相として連続した油相中に存在する状態であった。詳しくは90質量%以上の、糖類を含有する水相または水中油型乳化物とアミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物が、独立して存在していた。
また、得られた可塑性乳化油脂組成物7は、5℃のレオメーター値が5500g/cm2 であったが30℃では可塑性乳化油脂組成物の軟化によりレオメーター値が測定できず、可塑性範囲が狭いことを確認した。また製造から1ヶ月経過後での20℃のレオメーター値は1000g/cm2 であり製造直後より経日的に硬くなっていることも確認した。そして可塑性乳化油脂組成物7に褐変した部分は見られなかった。
〔比較例1〕糖類とアミノ酸が同一水相にある例
パームステアリンのランダムエステル交換油と、パームオレインのランダムエステル交換油とを、20/80の質量比で配合した混合油を油相として溶解し、この油相75質量部に、水19質量部とグルコース5質量部とプロリン0.5質量部とリジン0.5質量部を混合した水相25質量部を加えて乳化し、約90℃で殺菌した。そして、急冷可塑化工程(−20℃/分以上)にかけ、15℃まで冷却し、純植物性マーガリンタイプの可塑性乳化油脂組成物8を得た。
得られた可塑性乳化油脂組成物8の乳化状態は、糖類とアミノ酸を含む水相が連続した油相中に存在する状態であった。
また、得られた可塑性乳化油脂組成物8は、実施例1同様、油相の油脂結晶が2鎖長構造のβ型構造をとり、経日的にも硬さが変化せず安定した乳化油脂組成物であり、油脂表面状態も良好なものであった。しかし可塑性乳化油脂組成物8には褐変した部分があった。
〔比較例2〕アミノ酸を含有しない例
パームステアリンのランダムエステル交換油と、パームオレインのランダムエステル交換油とを、20/80の質量比で配合した混合油を油相として溶解し、この油相75質量部に、水20質量部とグルコース5質量部を混合した水相25質量部を加えて乳化し、約90℃で殺菌した。そして、急冷可塑化工程(−20℃/分以上)にかけ、15℃まで冷却し、純植物性マーガリンタイプの可塑性乳化油脂組成物9を得た。
得られた可塑性乳化油脂組成物9の乳化状態は、糖類を含む水相が連続した油相中に存在する状態であった。
また、得られた可塑性乳化油脂組成物9は、実施例1同様、油相の油脂結晶が2鎖長構造のβ型構造をとり、経日的にも硬さが変化せず安定した乳化油脂組成物であり、油脂表面状態も良好なものであった。そして可塑性乳化油脂組成物9に褐変した部分は見られなかった。
試験例1 [ロールパンの製造]
実施例1〜7および比較例1〜2で得られた可塑性乳化油脂組成物1〜9を用いて、以下の配合と製法によりロールパンを製造した。得られたロールパンの風味の評価を表1に示した。
(配合)
強力粉 80質量部
薄力粉 20
イースト 3
上白糖 15
食塩 1.2
脱脂粉乳 2
可塑性乳化油脂組成物 10
水 65
(製法)
ミキシング :L3M2H1のあと可塑性乳化油脂組成物を加え、L3M3H2
捏上温度 :26℃
発酵 :28℃ 90分(パンチ60分)
分割 :90g
成形 :モルダー成形
ホイロ条件 :38℃ 85 50分
焼成条件 :180℃ 20分
試験例2 [ロールパンの製造]
実施例1〜7および比較例1〜2で得られた可塑性乳化油脂組成物1〜9を用いて、以下の配合と製法によりロールパンを製造した。得られたロールパンの風味の評価を表2に示した。
(配合)
強力粉 80質量部
薄力粉 20
イースト 3
上白糖 12
食塩 1.6
脱脂粉乳 2
可塑性乳化油脂組成物 10
水 65
(製法)
ミキシング :L3M2H1のあと可塑性油脂組成物を加え、L3M2
捏上温度 :20℃
分割 :60g
成形 :モルダー成形
フリーザー :−40℃で60分のあと−20℃で保管
解凍 :20℃ 120分
ホイロ条件 :38℃ 85 50分
焼成条件 :180℃ 16分
〔実施例8〕
パームステアリンのランダムエステル交換油と、パームオレインのランダムエステル交換油とを、20/80の質量比で配合した混合油を油相として溶解し、この油相75質量部に、水18.75質量部とグルコース1.25質量部を混合した水相20質量部を加えて乳化し、約90℃で殺菌した。そして、急冷可塑化工程(−20℃/分以上)にかけ、15℃まで冷却した。これに水4.375質量部とプロリン0.125質量部とリジン0.5質量部を混合した水相5質量部を加え、縦形ミキサーで均一に混合し、純植物性マーガリンタイプの可塑性乳化油脂組成物10を得た。
得られた可塑性乳化油脂組成物10の乳化状態は、糖類を含む水相とアミノ酸を含む水相とが実質的に独立した水相として連続した油相中に存在する状態であった。詳しくは90質量%以上の、糖類を含有する水相または水中油型乳化物とアミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物が、独立して存在していた。
また、得られた可塑性乳化油脂組成物10は、実施例1同様、油相の油脂結晶が2鎖長構造のβ型構造をとり、経日的にも硬さが変化せず安定した乳化油脂組成物であり、油脂表面状態も良好なものであった。そして可塑性乳化油脂組成物10に褐変した部分は見られなかった。
また、可塑性乳化油脂組成物10を用いて以下の配合と製法により上掛け生地を製造した。得られた上掛け生地(クッキー生地)20gをホイロ後の菓子パン生地60gに絞り、180℃で5分焼成した。得られたパンは香ばしい風味がするものであった。
[上掛け生地の配合と製法]
(配合)
薄力粉 100質量部
全卵(正味) 60
グラニュー糖 50
可塑性乳化油脂組成物 100
ベーキングパウダー 0.5
(製法)
1 可塑性乳化油脂組成物とグラニュー糖を均一になるまで混合する。
2 全卵を1に加えて、混合する。
3 薄力粉とベーキングパウダーを混合し、篩っておいたものを2に加え、混合する。
本発明の乳化油脂組成物の乳化状態の概略を説明する図である。

Claims (4)

  1. 連続した油相中に、糖類を含有する水相または水中油型乳化物と、アミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物とが、実質的にそれぞれ独立して存在する乳化油脂組成物を製造する方法であって、油相と糖類を含有する水相または水中油型乳化物とを乳化し、殺菌処理を施した後、冷却し、これにアミノ酸を含有する水相または水中油型乳化物を添加し、均一に混合することを特徴とする乳化油脂組成物の製造方法。
  2. 上記冷却を、油相中の配合油脂の融点より10〜30℃低い温度まで行う請求項1記載の乳化油脂組成物の製造方法。
  3. 上記乳化油脂組成物が直接β型の油脂結晶を含有する請求項1または2記載の乳化油脂組成物の製造方法。
  4. 上記乳化油脂組成物が可塑性を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の乳化油脂組成物の製造方法。
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