JP2005205464A - レーザ加工法、構造物および光学素子 - Google Patents

レーザ加工法、構造物および光学素子 Download PDF

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裕 黒岩
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善廣 成田
Kazuyuki Hirao
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Abstract

【課題】レーザ光の走査機構を用いず、従来の集光レンズを備える光学系により被加工物体に照射したレーザ光によって、二次元形状または三次元形状の異質相を容易にかつ効率よく形成するレーザ加工法を提供する。
【解決手段】レーザ装置から発振されたレーザ光を回折光学素子、集光レンズを経て、被加工物体に集光させて、物体中に異質相を形成する加工法であって、発振されたレーザ光が半値全幅130nm以内スペクトル幅をもつパルスレーザ光であり、さらに回折光学素子は、集光レンズ透過後のその回折光の集光点が被加工物体において少ない色収差で連続的に繋がっているような格子構造を有する回折光学素子であるレーザ加工法とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、レーザ光を走査する機構を用いることなく、材料、特にガラスのような透明材料の表面や内部に照射して透明材料の材質を変化させ、異質相の形成、特に三次元形状をした異質相の形成方法であって、簡便な設計手法による回折光学素子を用いた高精度なレーザ加工法に関する。
主に光情報処理、光通信システムなどに使用される光フィルタ、合分波素子、偏光素子、急角度の曲がり導波路部を持つ超小型の合分岐用素子、光を能動的に制御する全光スイッチ、光演算素子、光双安定素子などの光デバイス、およびそれらの構成要素となる光導波路、さらにフォトニック結晶を実現するための透明材料内部への三次元的な像の形成および/または材料表面への二次元的な像のレーザ加工法に関する。
また、二次元的または三次元的な異質相を透明材料に有する構造物、およびこのような構造物を備えた光学素子にも関する。
また、情報処理や建築、エネルギー分野などで利用される透明材料の機械強度の強化に関する。
さらに、上記分野に限らず、材料内部への三次元的な異質相の構造物を形成するレーザ加工法に関する。
近年、光情報処理技術の普及により、ガラスなどの透明媒質中に高屈折率領域を形成した光導波路が製造されている。一方、ガラスなどの透明媒質中に、光の波長程度の周期を持つ高屈折率領域を形成し、その構造を用いて光の制御を行う、フォトニック結晶の研究開発も盛んに行われている。光導波路において、線状の光を透過する回路となる部分やフォトニック結晶の高屈折率相を形成するためには、透明媒質中に、媒質よりも屈折率の大きい領域を制御して形成できる材料とその実現方法が必要である。また、光学素子により複雑な機能を持たせることや、集積化もその課題の一つであり、また三次元形状をした光学素子の回路部分を作製することが望まれている。
他方で、情報処理、建築、エネルギーなどの分野では、板状などで厚さが薄い透明材料が多く用いられている。これらの板状の透明材料は、様々な環境で使用されており、用途によっては強度に優れることが求められ、材料内部に補強部を設けることも必要となる。
光導波路の典型的な製造方法は、SiOを主成分としたガラス基板上に、ガラス基板よりも屈折率の高いコアと呼ばれる領域層を成膜し、コアをエッチングなどの手法で加工し、再びコアよりも屈折率の低い材料で包埋するものである。このような方法は、非常に煩雑なプロセスを経る必要であるため製造が困難であり、またその工程上、製造される光導波路は二次元すなわち平面的な形状のものに限定される。また、これまでのフォトニック結晶の製造も同様に、屈折率の高い半導体基板上に何層かの半導体膜を成膜し、エッチングによる微細加工を施して、高屈折率部と低屈折率部とを波長レベルの周期で配列させている。そのため、この場合も製造が煩雑で困難であり、作製されるフォトニック結晶もまた平面的な形状のものに限定される。
ガラス内部に光導波路の線状の回路部分を三次元的にすなわち立体的に形成する方法としては、例えば、レーザ光の集光照射により高屈折率領域を形成する方法が知られている(特許文献1)。この方法では、ガラス内部のレーザ光の集光照射領域において、光の高電磁場によりガラスの分子構造が変化して、該領域の屈折率が変化すると考えられている。この方法では、集光照射領域のみ屈折率変化が起こるため、集光点をガラス内部で三次元的に走査することにより、屈折率変化領域を立体的に形成し、光導波路の線状の回路部分を三次元的に構成することができる。
この方法では、レーザ光の照射によって高屈折率領域が形成できるだけでなく、レーザ光の集光による熱、光化学、物質の酸化還元などの反応や、非線形光学効果などの種々の光効果による、結晶生成やガラスの高密度化、気泡生成など、いわゆる光誘起変化によって材料中に異質な相(異質相とよぶ)を形成できることが知られている。この方法では、形成される異質相を利用して、フォトニック結晶などの光学素子を作製することも提案されている。
上記したレーザ光の照射によりガラスなどの材料内部に異質相を形成する方法では、レーザ光としてパルスレーザ光が用いられ、レーザ光のパワー密度をあげるために、パルスの時間幅がピコ(10−12)秒からフェムト(10−15)秒と非常に狭い超短パルスレーザ光が用いられている。しかしながら、レーザ装置の構造上、レーザパルスの繰り返し周波数は、実用上1kHz〜数100kHzに制限されるため、平滑な界面を有する異質相を形成しようとする場合、レーザ光の集光点を高速で走査することが困難であり、製造のスループット(時間あたりの処理量)が低い問題があった。また、レーザ光の集光点を走査するために、高精度の移動機構を備えた装置が必要となり、このような装置は複雑でしかも高価である。
さらに、上記方法では、レーザ光の集光点に高屈折率領域が形成されるため、1パルスにより生じる楕円形状の高屈折率領域の集合体として光導波路の線状の回路部分などが形成されるが、高屈折率領域を形成しうる現行の高強度フェムト秒レーザー装置ではパルスごとの強度ゆらぎが多く、また、レーザ光出射方向の安定性であるポインティングスタビリティが低いため、例えば直線状の高屈折率領域を形成する場合の問題について説明する。
図10は、従来のレーザ光走査による高屈折率領域の形成における特性を示す図であり、(A)は高屈折率領域の形状を示す概念図、(B)は高屈折率領域の偏心量を示すグラフ、(C)は高屈折率領域の外径変動量を示すグラフである。
これらの図およびグラフから明らかなように、形成される従来の高屈折率領域は、偏心量や外径変動量が大きく、高い位置精度および形状制御ならびに平滑な界面をもつ光導波路の線状の回路部分などの作製は困難である。そのため、図8に示す光学素子の基本構造の概念図の、(A)方向性結合器、(B)Y分岐導波路など、では充分な光導波構造の低損失化および安定した製造が困難であった。特に図8(A)に示す方向性結合器17の光結合部15a、15bや図8(B)に示すY分岐導波路18のY分岐部15cなどの形成に用いる場合には、位置精度と形状精度が不十分であり、得られる光学素子の光特性にばらつきが生じていた。これも、詳しくは後述する。
また、レーザ加工の分野においては、超短パルスレーザ装置、回折光学素子などを用いた加工パターンの一括形成(同時形成)が行われてきた(例えば、特許文献2、3および4)。しかしながらこれらの方法は、レーザ光の複数本への分割や二次元的な描像によるものであり、しかも昇華加工(アブレーション加工)に限定されている。したがって、材料内部に複雑な二次元形状、または三次元形状の異質相を形成することは考慮されていない。また、回折光学素子の具体的なレーザ光の位相面の変形に関する特性、素子に必要とされる光学特性や具体的な光学配置は開示されていない。
また、発振波長がスペクトル幅をもつ超短パルスレーザ加工においては、レーザ光のスペクトル幅の影響が懸念されている。すなわち、光学系の色収差による像の形状の乱れや焦点深度の増加である。像の形状の乱れは形状制御に影響し、焦点深度の増加は深さ方向の制御性の悪化を意味し、深さ方向に形成する物体の大きさの下限にも影響する。特許文献3では、焦点深度の増加を低減するための指針が提案されている。しかしながら、その実現のためには光線追跡法や波動光学を利用したレンズ系の最適化ソフトウェアなど高度な設計法しか示唆されておらず、その回折光学素子をどのように設計するかについての具体的な方法は提案されていない。また、三次元的な内部加工に関しては全く提案がない。
また、特許文献2では、回折光学素子により形成された集光パターンを集光レンズで集光して二次元的に異質相を形成させた例が提示されているが、回折光学素子の設計法に関する具体例がなく、回折光学素子と集光レンズに関する相対的な位置関係の具体例も提示されていない。さらに三次元的な異質相の形成に関しての記載もない。
また、立体像の結像を用いた三次元的な物体の形成方法については、樹脂材料の光硬化による立体像成形やレジストへのパターニングなどに利用されている(例えば、特許文献5、6)。これらの方法は、被加工物体の加工領域に集光させるための回折光学素子の設計方法を開示しておらず、また、光硬化材料など、一部の限定された材料についての三次元の構造形成に関するものである。
しかも、光導波路の線状部分やフォトニック結晶の高屈折率領域の形成において、一般的な材料(ガラス、プラスチック、半導体など)の内部に高エネルギーのパルスレーザ光を用いて異質相を形成することはまったく示されていない。また、局所的な加熱や材料改質などの光誘起変化による異質相形成についての応用は示されていない。さらに、この場合においても、加工領域に集光させるための回折光学素子の設計方法については開示されていない。
一般に、回折光学素子を用いるとき、入射光が加工領域においてどのような集光形状(状態)を示すかを知るには、回折光学素子に起因する振幅や位相の情報をフーリエ変換して、光強度の空間情報に変換しなければならない。回折光学素子と加工領域との間にレンズ、ミラーなどの多くの光学素子が挿入されると、フーリエ変換の回数が増加し算出に手間がかかる。
また、加工領域での所望の集光形状から逆変換することにより位相や振幅を求める場合には、集光形状の定義の仕方により位相形状も大きく変わり、回折光学素子設計の場合には実に多くの場合について検討しなければならず、設計には高い技術力を要する。
さらに、回折光学素子が設計どおりに作成されていることを確認するためには、一般によく用いられるレーザ光プロファイラでは不十分であり、レーザ光の波面を測定する特殊な装置が必要である。
特開平9−311237号公報 特開2000−280085号公報 特開2001−138083号公報 特開2001−212800号公報 特開平4−267132号公報 特開平8−286591号公報
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するため、レーザ光を走査機構を用いることなく、材料表面または内部にレーザ光を照射して、異質相、特に複雑な二次元形状または三次元形状をした異質相を形成する方法において、レーザ光の集光点における形状を複雑な三次元形状とする回折光学素子の具体的な設計が容易に行え、しかも従来使われている集光レンズを用いてフェムト秒パルスの色収差を低減させて焦点深度の増加を低減させたレーザ加工法を提供する。また、本発明は、レーザ装置が単色光発振のCWレーザ装置または単色光発振のパルスレーザ装置の場合で、少なくとも2つのレーザ装置が用いられる場合でも、波長の違いによる集光位置のずれを低減させたレーザ加工法を提供する。
本発明は、レーザ装置から発振されたレーザ光を回折光学素子に入射し、回折光学素子により回折されたレーザ光を集光レンズにより集光し、集光されたレーザ光を被加工物体の表面または内部に集光点を有するように照射して、被加工物体の集光点の部位における材質を変化させてことにより、被加工物体に二次元的または三次元的形状の異質相を形成するレーザ加工法において、
レーザ装置が、発振波長がスペクトル幅をもつパルスレーザ装置の場合には、パルスレーザ装置から発振されたレーザ光スペクトルの半値全幅が130nm以内であり、レーザ装置が単色光発振のCWレーザ装置またはパルスレーザ装置の場合には、少なくとも2つのレーザ装置が用いられ、レーザ装置から発振されたそれぞれのレーザ光のうち最長波長と最短波長との差が130nm以内であり、また回折光学素子は、回折光学素子に入射したのち集光レンズにより集光されたレーザ光の集光点が、被加工物体において連続的、または離散的な異質相を形成する、格子構造を有する回折光学素子である、ことを特徴とするレーザ加工法を提供する。
また、前記レーザ装置が、発振波長がスペクトル幅をもつパルスレーザ装置であって、前記パルスレーザ装置が発振するパルスレーザ光のパルス時間幅がチャーピングのない状態で10fs〜10psであるに記載のレーザ加工法を提供する。
また、回折光学素子の任意の1つの焦点をPとし、Pと光軸との距離をM、Pから光軸へ下ろした垂線と光軸との交点から回折光学素子の後側主点までの距離、すなわち回折光学素子の焦点距離の光軸方向成分をf、回折光学素子のPに対応する後側主点と集光レンズの前側主点との距離をx、レーザ光の半径をd、レーザ光が回折光学素子を通過後集光レンズにより集光されるPに対応する焦点をP´、P´と光軸との距離をy、P´から光軸へ下ろした垂線と光軸との交点からレンズの後側主点までの距離をZ、集光レンズの焦点距離をfとし、また、レーザ光が、発振波長がスペクトル幅をもつパルスレーザ光の場合、レーザ光スペクトルにおける任意の波長の中心波長λからのずれ量を△λ、レーザ光が単色光発振のCW光またはパルスレーザ光の場合、複数のレーザ光のうち最長波長λと最短波長λとの差を△λ、とし、△λの変化に対する集光レンズの焦点距離のずれ量を△fとするとき、Zの変化量△Z=−A×△λ+B×△fの大きさが集光レンズの焦点深度Dの1.5倍以下であり、かつyの変化量△y=C×△λ+D×△fの大きさが、入射瞳によるエアリーディスク半径Rの2倍以下となり、さらに、入射瞳位置でのレーザ光の最大半径RA=x×M/f+d×(1−x/f)が入射瞳半径Eよりも小さくなるように、f、f、△f、xの条件を変化させて加工する上記のレーザ加工法を提供する。
ただし、A=f×f/(f−x+f)/λ、B=(f−x)/(f−x+f)、C=M×{(f−x)×(Z/λ−A)+f×x/λ}/(f×f)、D=M×{x×Z+(f−x×f)×B}/(f×f)である。
また、前記M、d、f、yおよびRaを用いて、Elt=M×d/(2×0.61×λ×f)と定義される要素数Eltが3以上、かつRes=y/(Elt×2R)と定義される分解能指数Resが2以下である上記のレーザ加工法を提供する。
また、前記fが50mm以上、3000mm以下の範囲にある集光点の集合により構成される上記のレーザ加工法を提供する。
また、前記集光レンズの前側主点と前記回折光学素子の後側主点との距離xが上記fの0.05倍以上、0.7倍以下である上記のレーザ加工法を提供する。
また、前記集光レンズの前側主点と前記回折光学素子の後側主点との距離xを変える機構を具備し、xを変えることにより被加工物体に形成される異質相の大きさを制御する上記のレーザ加工法を提供する。
また、回折光学素子の任意の1つの焦点をPとし、Pと光軸との距離M、Pから光軸へ下ろした垂線と光軸との交点から回折光学素子の後側主点までの距離、すなわち回折光学素子の焦点距離の光軸方向成分をf、回折光学素子のPに対応する後側主点と集光レンズの前側主点との距離をL、レーザ光の半径をd、レーザ光が回折光学素子を通過後集光レンズにより集光されるPに対応する焦点をP´とし、P´と光軸との距離をy´、P´から光軸へ下ろした垂線と光軸との交点から集光レンズの後側主点までの距離をZ、集光レンズの焦点距離をfとし、また、
レーザ光が、発振波長がスペクトル幅をもつパルスレーザ光の場合、レーザ光スペクトルにおける任意の波長の中心波長λからのずれ量を△λ、レーザ光が単色発振のCW光またはパルスレーザ光の場合、複数のレーザ光のうち最長波長λと最短波長λとの差を△λ、とし、△λの変化に対する集光レンズの焦点距離のずれ量を△fとするとき、Zの変化量△Z=(L−f×△f/(L−f−f)−f×f×△λ/{(L−f−f)×λ}の大きさが、集光レンズの焦点深度Dの1.5倍以下であり、かつy´の変化量△y´=M×{(L−f)△Z−f×Z×△λ/λ}/(L−fの大きさが、入射瞳によるエアリーディスク半径Rの2倍以下となり、さらに、入射瞳位置でのレーザ光の最大半径RA´=(L−f)×d/f+L×M/fが入射瞳半径Eよりも小さくなるように、f、f、△f、xの条件で加工する上記のレーザ加工法を提供する。
また、上記のM、d、f、y´およびRを用いて、Elt=M×d/(2×0.61×λ×f)と定義される要素数Eltが3以上、かつRes´=y´/(Elt×2R)と定義される分解能指数Resが2以下である上記のレーザ加工法を提供する。
また、前記回折光学素子の焦点距離の光軸方向成分fが50mm以上、2500mm以下の範囲にある集光点の集合により構成される上記のレーザ加工法を提供する。
また、前記集光レンズの前側主点と前記回折光学素子の後側主点との距離Lが上記fの1.1倍以上、8倍以下である上記のレーザ加工法を提供する。
また、前記集光レンズの前側主点と前記回折光学素子の後側主点との距離Lを変える機構を具備し、前記Lを変えることにより被加工物体に形成される異質相の大きさを制御する上記のレーザ加工法を提供する。
また、上記のレーザ加工法を、集光されたレーザ光に対して被加工物体を相対的に移動させて用いるレーザ加工法を提供する。
また、上記のレーザ加工法が用いられて、被加工物体に形成された異質相を有することを特徴とする構造物を提供する。
さらに、上記の構造物を備え、前記構造物は光機能を有していることを特徴とする光学素子を提供する。
本発明によれば、例えば、超短パルスレーザ光を回折光学素子により回折させた後に集光レンズにより集光し、被加工物体の表面または内部に形成される複数の集光点が形成する集光パターンに応じて、物体の表面または内部に二次元的または三次元的形状の異質相の形成を行うレーザ加工の方法であって、回折光学素子として素子に入射するレーザ光を有限の距離の複数の集光点を発生するような素子を用いることで、回折光学素子や集光レンズを備えた光学系に入射するレーザ光のパルス時間幅がチャーピングのない状態で10fs〜10psであり、スペクトル幅(半値全幅)が130nm以内のレーザ光であれば、色収差を低く抑えたまま、しかも簡便な設計手法で光学系を構築できる。
すなわち、汎用品である集光レンズを用いても色収差を低く抑えたまま、しかも簡便な設計手法で回折光学素子を含めた光学系を構築できるため、設計の負担を低減ししかも被加工物体の深さ方向、すなわちレーザ光侵入方向にも高度に制御された異質相を形成できる。
さらに、本発明の方法において回折光学素子と集光レンズとの相対的な位置を変えることで形成される異質相の大きさを制御でき、製造の許容誤差を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は係る実施形態に限定されるものではない。
本発明はレーザ光の集光照射を利用した異質相の二次元的または三次元的構造の形成に用いられるレーザ加工法であって、本方法が用いられる装置は、レーザ装置、レーザ光の波面を制御する機能を有する光学系と集光光学系により構成される。これらの照射・光学系により、レーザ光の焦点形状を目標の異質相の三次元形状を一括して形成しうる形状に変形し、一挙に異質相の二次元的または三次元的構造を形成し、位置および空間精度だけでなく、スループットの向上を図るものである。ここで、光学系とは回折光学素子を含む系を意味し、集光光学系とは集光レンズを含む系を意味する。
使用されるレーザ装置としては、発振波長がスペクトル幅をもつパルスレーザ装置、単色光発振のCW(連続発振)レーザ装置または単色光発振のパルスレーザ装置を用いることができる。そして、本発明で用いられるレーザ光は、レーザ装置が、発振波長がスペクトル幅をもつパルスレーザ装置の場合には、パルスレーザ装置から発振されたレーザ光スペクトルの半値全幅が130nm以内のものであり、レーザ装置が単色光発振のCWレーザ装置またはパルスレーザ装置の場合には、少なくとも2つのレーザ装置が用いられ、レーザ装置から発振されたそれぞれのレーザ光のうち最長波長と最短波長との差が130nm以内のものである。
また用いられる回折光学素子は、回折光学素子に入射したのち集光レンズにより集光されたレーザ光の集光点が、被加工物体において連続的、または離散的な異質相を形成する、格子構造を有する回折光学素子である。上記集光点は、被加工物体において連続的に繋がっていてもよいし、離散的で規則的または不規則に分布して異質相を形成していてもよい。回折光学素子は透過型のものでも、反射型のものでもよく、使用状況に合わせて選択すればよい。
以下の説明において、発振波長がスペクトル幅をもつパルスレーザ装置を使用するものとして説明する。
回折光学素子を用いた異質相の形成法(パターニング法)の基本的な光学配置の概念図を図1(A)に示す。図1(A)においては、回折光学素子2は透過型の素子であり、回折光学素子2によって透過回折された入射レーザ光1は集光レンズ3により、被加工材料4の集光部(点)5に集光され結像する。このような照射・光学系をそのまま、超短パルスレーザ装置、および波長の異なる複数のレーザ装置による透明体内部の異質相の形成に利用する場合における問題点を説明する。
まず、レーザ光のスペクトル幅または発振波長の違いのために像が歪むこと、つぎに焦点深度が増加することが挙げられる。通常、回折光学素子は正の分散を持ち、屈折レンズ系は負の分散をもつので、両者をバランスさせて色収差補正を行わないと設計どおりに結像できない。これは、波長が異なると結像状態も異なるためで、図1(B)の色収差による結像位置のズレの概念図に示すように、集光レンズを透過したレーザ光6のうち、中心波長のものは、中心波長の集光部7へ、中心波長からズレたものは中心波長ズレの集光部8へ結像され、点位置ずれ、像の伸び縮み、像歪みなどが生じ結果として形成物の寸法が狂う。
また、回折光学素子に関しても、ある領域に立体的な結像をさせようとしても、必ずしも解は存在しない。その理由を図2の、入射瞳を通過するレーザ光と結像位置の関係を示す概念図、により説明する。入射レーザ光1が回折光学素子2および集光レンズ3を透過するとき、平行光の集光レンズによる集光位置(レンズ焦点)10よりも手前の点(レンズ焦点よりも手前の集光点)12に結像させる場合は回折光学素子の有効範囲13を全て利用できるが、結像位置が奥の点(レンズ焦点よりも奥の集光点)11になる場合は集光レンズの入射瞳9を通過できるレーザ光が回折光学素子の中央付近のごく一部しか利用できない。そのために回折光学素子の設計の自由度が減少し制限を受けることになる。その結果、立体結像可能な位置も制限される。
一般に、回折光学素子を用いてどのようなレーザ光集光形状が実現するかは、素子を透過回折して振幅と位相に変調を受けたレーザ光が、どのように変化するかをマクスウェル方程式により計算する必要がある。マクスウェル方程式を直接解く方法は煩雑で労力を要するため、回折光学に特化したフレネル積分による解析が利用できるが、それでもフーリエ変換などの複雑な積分計算が必要で高度な光解析技術がないと回折光学素子の解析、設計は困難である。さらに、回折光学素子と被加工物体である加工空間との間に多くのレンズ、ミラーなどの光学素子が挿入されると、積分計算の回数が増加し手間がかかるだけでなく計算精度が低下する。したがって、より高性能の計算機を必要とする。
一方で、加工空間での所望の集光形状から上記積分計算の逆変換により回折光学素子に要求される回折光に対する位相・振幅面を求めることも理論的にはできるが、加工空間での集光形状の定義の仕方により位相面の形状も大きく変わるため、それを設計するためには多くの場合について検討しなければならず、設計により高度の技術力を要する。そのため、回折光学素子から集光光学系までの全系で光学設計することは技術的な閾が高く、汎用的な利用がほとんどできなかった。
そこで本発明では、色収差の補正のためと、設計の簡便さとを両立させるために、正の有限焦点を要素とする集合からなる回折光学素子、すなわち本素子を透過した回折光が透過した側の有限距離の位置に多数の焦点を有する回折光学素子、を使いそれを透過したレーザ光を集光することで結像させ、その焦点距離を変えることでレーザ光の入射深さ制御を行うことにした。本方法によると、上記のフーリエ変換などの高度で煩雑な計算を経なくとも、幾何光学的な代数計算のみで集光形状を計算でき、また、回折光学素子に必要な集光形状を与える格子構造を設計できる。回折光学素子に必要な格子構造がわかれば、回折光学素子の設計・製造をこの格子構造に基づいて行なえばよい。
回折光学素子に正の有限焦点を使う利点はさらに、素子自身の評価をすることが容易なことである。焦点距離が無限または無限とみなせるほど十分に長い場合は、素子が正しく製造されているかを判断するためには、レーザ透過後の波面の位相・振幅変化を正しく測定しなければならない。そのためには波面センサが必要である。波面センサは普及が進んでおらず、また、その測定方法は例えばシャックハルトマン型ではマイクロレンズアレイを通過した光の波面とその強度を測定するため、マイクロレンズアレイの個数で分解能が決まる。通常は32×32個程度であり十分な解像度が得られない。一方で、レーザ光プロファイラを用いて実際のレーザ照射光学系で集光後の強度プロファイルを測定してもよいが、照射系の収差に関する情報が畳み込まれるので素子単体での値を正確に求めるのは困難である。また、照射光学系のサンプル位置でレーザ光プロファイラの測定をできるようにすることも困難である。
負の焦点をもつ場合、すなわち回折光学素子の入射光側に焦点をもつ場合、逆方向から収束レーザ光を素子に入射することで素子の性能を評価することもできるが、収束レーザ光を正しく作ることが困難なこと、回折光学素子の場合、向きによって特性が異なる恐れがあること、この逆向きの光学配置でどのように結像するかをさらに計算する必要があり、手順が煩雑になり負担が増加して好ましくない。
本方法について以下で詳しく説明する。以下の説明には幾何光学的な計算を用いるが、実際、ガウシアンビームであるレーザ光をレンズで集光した場合の焦点位置の変化は幾何光学的な焦点位置とほぼ同じであり本方法の有効性を示すには十分である。より精密な計算が必要な場合は正確なレンズやミラーの光学データを用いて波動光学的な取り扱いをすればよい。また、計算に用いているのは近軸近似であるが、対物レンズの焦点距離と形成される形成物の寸法を考慮すると、近軸近似で十分成り立つ範囲である。
また、本発明において回折光学素子や集光レンズの主点を用いているが、これらは幾何光学における一般的な定義のとおり、物体と等倍の結像が行われる光軸上の共役点の対として決められる。集光レンズにおいてはこの定義に基づき実測することもできが、しかしながら、回折光学素子の場合、主点近傍では結像は行われないため上記方法で主点を決めることができない。よって、回折光学素子においては、光の位相および/または振幅が変調される場所で最も集光レンズに近い場所、すなわち回折光学素子の集光レンズ側表面を便宜的な回折光学素子の後側主点とする。これにより、以下に記載する光学系の寸法に関する種々の量を実測できる。
図3に、有限焦点をもつ回折光学素子と集光レンズによる結像の第1の好ましい配置の概念図を示し、この3図に基づいて説明する。
加工空間でどのようなレーザ光の集光形状になるかは、回折光学素子3を正の分散をもつレンズとして設計すればよく、分散をもつ集光レンズ3によってどのように結像できるかは幾何光学において近軸近似を仮定して簡単に計算できる。たとえば、使用するレーザ光の中心波長をλ、平行な入射レーザ光1の半径をdとする。ここで、レーザ光の半径とは、レーザ光強度が1/eとなるレーザ光の光束の半径をいう。レーザ光の外径の場合も同様にレーザ光強度が1/eとなるレーザ光の光束の外径の値をいう。
光軸OO´をZ軸とし、入射レーザ光による回折光学素子単体での任意の1つの焦点をPとし、Pと光軸14との距離M、Pから光軸へ垂線を下ろした光軸との交点から回折光学素子の後側主点Hb´までの距離f(回折光学素子の焦点の光軸成分に相当)、回折光学素子の後側主点Hb´と集光レンズの前側主点Hとの距離がxの場合は、集光レンズ通過後のPに対応する焦点をP´は、P´と光軸との距離y、P´から光軸へ垂線を下ろした光軸との交点から集光レンズの後側主点H´までの距離Zの場所に結像される。Z、yはこれらの各数値を用いて式(1)、(2)のように表される。ここで、回折光学素子の後側主点Hb´と集光レンズの前側主点Hとの距離x、集光レンズの焦点距離fを用いた。
Figure 2005205464
この系において、回折光学素子により変調された光を有効に活用するためには、素子を透過した結像に寄与する全光束が、集光レンズの入射瞳径内に納まることが必要である。
本発明の有効な効果である回折光学素子の後側主点と集光レンズの前側主点との距離xを変えることで結像位置yとZを微調整できることは(1)、(2)より明らかである。この結像の横位置yは、素子の距離を長くすると大きくなる。
レーザ光がスペクトル幅を有するとき、中心波長λに対し該スペクトル幅内の波長λ+△λの光について考える。発振波長が異なるレーザ装置を複数台使用する場合はΔλは最長波長λと最短波長λとの差とする。そのときの波長の変化量△λに対する集光レンズの焦点距離fの波長変化を△fとする。このとき、回折光学素子の焦点の光軸成分fの波長変化は式(3)で与えられる。式(3)を式(1)、(2)に代入すると、中心波長からの変化量△λとそのときの集光レンズの焦点距離の変化量△fに対するZ、yの変化量は以下の式(4)、(5)のように表すことができる。
Figure 2005205464
、である。
中心波長からの変化量Δλを有するレーザ光学系で結像が行われるためには、Δλの範囲において、理想的な場合で△Zが集光レンズの焦点深度の中に、および△yが波動光学的なレーザ光径の広がりを表す尺度であるエアリーディスクの中に収まればよい。現実には、光学系の精度やレーザ光品質が完全ではないため、理想的な結像は難しい。そのため、好ましくは△Zの大きさが焦点深度Dの1.5倍、および△yの大きさがエアリーディスクの半径Rの2倍までに収めることが好ましい。ここで、焦点深度Dは集光レンズの開口数NAを用いて式(10)で定義する。また、エアリーディスクの半径Rは式(11)で定義する。
Figure 2005205464
△Zの大きさが焦点深度Dの1.5倍よりも大きいと深さ方向の最小分解能が低下して深さ方向に伸びてしまい細かい形状が反映できなくなる。△yの大きさがエアリーディスクの2倍よりも大きいと、同様に径方向の最小分解能が低下して最小加工形状が大きくなり横方向の形状が正しく反映されなくなり好ましくない。ここで、上記条件では、
Figure 2005205464
であるから、△fは△λに合わせて変化することが好ましい。△yよりも△Zを所望の範囲内に収めるほうが困難であるため、より好ましくは式(4)で△Z=0として、式(14)が成り立つ。
また、集光レンズの入射瞳をすべての光束が通過する条件は、集光レンズの前側主点Hの位置での光束の最大半径RAを考えると、レーザ光の半径をdとすれば、式(15)が成立するから、これが式(16)に示す入射瞳半径Eよりも小さければよい。
Figure 2005205464
RAがEよりも大きいと回折光学素子により変調されたレーザ光が有効に使われず、また結像を乱すので好ましくない。
ここで、回折光学素子のMについて考えてみる。回折光学素子の実効の開口数NADOEとして式(17)を用いると、エアリーディスクの半径RaDOEは式(18)のように表される。
焦点Pと光軸との距離Mがエアリーディスクの直径2RaDOEと同程度になると、径方向に細かなレーザ光の強度分布をつけることが難しくなり被加工物体の形状の自由度が下がるため好ましくない。式(19)のとおりMを2RaDOEの要素数Elt倍であるとする。ここで、要素数とはMがエアリーディスクの直径の何倍かを意味する。要素数Eltが大きいと回折光学素子単体で形成される集光形状をより細かく制御でき、その結果、被加工物体に形成される集光形状も細かく制御できて好ましい。
Figure 2005205464
要素数の範囲は、好ましくは被加工物体に形成される集光形状の形状を細かく制御する理由により3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上である。
また、M=2RaDOEとしたときのyの値は、どれくらい細かな集光形状を形成できるか、という分解能の尺度になる。ここで、そのときのyの値をRes分解能指数として分解能の尺度とすると、式(20)となる。
esは小さいほうが好ましく、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1以下である。Resが2よりも大きいと、被加工物体に形成される集光形状を微細にすることができず、その結果形成される異質相も微細化できないため好ましくない。
本配置においては、回折光学素子の焦点の光軸成分fは50mm以上、3000mm以下が好ましい。50mmより小さいと色収差を適切に補正することが困難であり△Zおよび△yを小さくできないため好ましくない。また、3000mmより大きいと実験系が大きくなりすぎ、また、回折光学素子を作製しにくくなるため好ましくない。
より好ましくは、150mm以上、1500mm以下である。この範囲で、容易に入手できる焦点距離4mm〜10mm、NA0.4〜0.6の対物レンズを使用した場合、広く△Zおよび△yが要求される条件を満たすため、光学系も容易に構築できて特に好ましい。さらに好ましくは350mm以上、750mm以下である。この条件では、焦点距離4mm、NA0.55の焦点距離の対物レンズを使用した場合、△ZをDよりも小さく保ったまま照射条件を大きく変えることができ、自由度の高い加工ができ特に好ましい。
集光レンズの焦点距離が1.5mm以上、100mm以下であり、開口数NAが0.2以上、1.5以下、かつ焦点距離のレーザ光のスペクトル幅による変動が中心波長に対して−1.5D〜+1.5Dμmが好ましい。焦点距離が1.5mmより小さいと、作動距離(レンズ底面から集光点までの距離)が小さくなり集光レンズの設計が難しくなる。また、瞳径が小さくなり幅広のレーザ光やMの大きな回折光学素子が使えなくなるため好ましくない。100mmより大きいとNAを大きな値で保ちつつ諸収差を補正することが難しくなり、また、△Z、△yが大きくなりすぎて好ましくない。NAの値が0.2以下であると焦点深度が深くなりすぎて、透明体内部(被加工物体内部)の深さ方向に制御された構造を得ることが難しくなり好ましくない。NAが1.5以上であると集光点での光線の稜の角度が大きくなり、レンズ最後面と集光点との距離(作動距離)が短くなりすぎてレンズの設計が難しくなり、入手するのも困難になるため好ましくない。NAが0.2〜1.5の範囲ではレンズの設計が容易であり多くのレンズが市販されており好ましい。
より好ましくは、焦点距離が1.8mm以上、20mm以下、NAが0.25以上、1.4以下である。この範囲のレンズは市販品を容易に入手できるため、光学系も容易に構築できる。
さらに好ましくは焦点距離が4mm以上10mm以下、NAが0.4以上0.8以下である。△ZをDよりも小さくしたまま照射条件を大きく変えることができ、自由度の高い加工が可能であり特に好ましい。加工領域も広く取れて、しかも高NAのため分解能も高く特に好ましい。また、この範囲では、△Zは10μm以下となり、光導波路や回折格子など、最小構造が10μm程度の異質相の構造体を形成するのに特に好ましい。また、この範囲では集光レンズ設計に無理がなく、高度に収差補正されたレンズを安価に入手することができ特に好ましい。
集光レンズは結像において色収差の少ないことが好ましい。収差の定義として、コリメートされた平行レーザ光の中心波長での焦点位置を基準とし、波長がずれた場合の焦点位置のずれを用いると、パルスレーザ光のスペクトル幅の範囲内で+1.5Dから−1.5Dであることが好ましい。1.5Dより大きい、または−1.5Dより小さいと△Zおよび△yの条件を同時に満たすための高度な光学設計が必要になり、市販の集光レンズを使うこともできなくなり汎用性がなく好ましくない。
より好ましくは、+0.5Dから−0.5Dの範囲である。この範囲では、△Zを上記場合のおよそ1/3に抑えることが可能である。さらに好ましくは+0.25Dから−0.25Dの範囲である。この範囲では、△Zを上記場合のおよそ1/6に抑えることが可能である。作業マージンが広がり加工領域も広く取れてしかも分解能も高く特に好ましい。
また、回折光学素子による結像を正確に行なうためには、集光レンズの幾何的収差も正しく補正されていることが好ましい。市販の顕微鏡の無限遠補正光学系用対物レンズまたはレーザ加工用の無限遠補正光学系用の対物レンズは色収差、幾何的収差が良好に補正されており特に好ましい。また、ステッパー装置など、縮小投影に用いられる対物レンズや有限遠補正光学系用の顕微鏡対物レンズでも色収差、幾何的収差が比較的良好に補正されており好ましい。
レーザ光断面は必ずしも円形である必要はなく、回折光学素子により所望の焦点位置で集光させるようにできればどのような形であってもよいが、レーザ光断面の外径の最大値は2mmφ以上50mmφ以下が好ましい。2mmより小さいとレーザ装置から回折光学素子までの導光にレーザ光幅調整用の光学系を入れなければならず装置が煩雑になるため好ましくない。また、回折光学素子の有効寸法が小さくなるため構造体の形状自由度が低下して好ましくない。また、50mmφより大きいと△Zを結像領域全域で低く抑えることが難しく、また、光束が入射瞳より広がって回折光学素子により変調された光束が有効に使われないため好ましくない。
より好ましくは、3mm以上、10mm以下である。この範囲では、容易に入手可能な焦点距離4mm〜10mm、NA0.4〜0.6までの焦点距離の対物レンズを使用した場合、広く△Zおよび△yを小さくする条件を満たすために、光学系も容易に構築することができて特に好ましい。また、通常のレーザ光径はこの範囲にあるため、レーザ光幅の拡大、縮小という手間が不要であり好ましい。
さらに好ましくは4mm以上5mm以下である。この条件では、焦点距離4mm、NA0.55の対物レンズを使用した場合、△ZをDよりも小さくしたまま照射条件を大きく変えることができ、自由度の高い加工が可能であり特に好ましい。
回折光学素子2は透過型、反射型の位相格子、振幅格子、位相振幅格子が使用でき、位相や振幅の変調のしかたはバイナリ型やブレーズ型、連続型など特に制限はなく、決まった入射レーザ光形状に対して所望の集光形状になればよい。反射型の場合は図3に示すものと等価な光学配置にすればよい。格子変調の手法についてもフレネルレンズ型やコンピュータ生成ホログラム(CGH)型などの素子が使用できる。液晶空間変調器やデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)などの出射光の集光形状が可変の素子を用いてもよい。CGH素子は出射光の集光形状が入射レーザ光の形状に対する依存性が低いので、レーザ光の強度ゆらぎに対する影響が低く、レーザ光径の制限も緩くなるため光学系の設計および構成が簡素化されて特に好ましい。ガラス基板やポリマー基板に数段の段差をつけて位相変調するバイナリ型の回折光学素子は入手しやすく特に好ましい。
集光レンズの前側主点と回折光学素子の後側主点との距離xはfの0.05倍以上、0.7倍以下が好ましい。0.7倍より大きいと、△Zが急激に悪化するため好ましくない。0.05倍より小さいと、集光レンズとの距離が近くなりすぎて、回折光学素子を配置できなくなることがある。より好ましくは、0.2倍以上、0.5倍以下である。この範囲では、容易に入手できるな焦点距離4mm〜10mm、NA0.4〜0.6までの対物レンズを使用した場合、広く△Zおよび△yを小さくする条件を満たすために、光学系も容易に構築できて特に好ましい。0.2倍より小さいと、被加工物体の最大寸法yが小さくなりすぎることがある。
さらに好ましくはfの0.3倍以上、0.45倍以下である。この条件では、容易に入手できる焦点距離4mm〜10mm、NA0.4〜0.6までの対物レンズを使用した場合、広く△Zおよび△yを小さくする条件を満たすために、光学系も容易に構築できて特に好ましい。また、xを変化させる機構を具備することが好ましい。xを変化させることで形成物となる異質相の大きさを制御できる。これにより微妙な加工寸法の調整ができるため好ましい。
回折光学素子設計の観点から、結像領域はレーザ光径よりも小さいことが好ましく、Mは好ましくはレーザ光外径の最大値の1倍以下、より好ましくは0.8倍以下、さらに好ましくは0.6倍以下である。
次に、第2の好ましい配置について説明する。図4は、有限焦点をもつ回折光学素子と集光レンズによる結像の第2の好ましい配置の概念図を示す。基本的な考え方は第1の好ましい配置の場合と同様で、回折光学素子2は入射レーザ光1に対して正の分散をもつレンズとして設計すればよく、有限の分散をもつ集光レンズ3によってどのように結像できるかは幾何光学において近軸近似を仮定して簡単に計算できる。
たとえば、光軸OO´をZ軸とし、使用するレーザ光の中心波長をλ、レーザ光径をdとし、回折光学素子2の任意の1つの焦点をPとし、Pと光軸14との距離M、Pから光軸へ垂線を下ろした光軸との交点から回折光学素子の後側主点Hb´までの距離fの場合は、集光レンズ通過後の焦点P´として、P´と光軸との距離y´、P´から光軸へ垂線を下ろした点から集光レンズの後側主点H´までの距離Zの場所に結像される。Z、y´はこれらの各数値を用いて式(21)、(22)のように表される。ここで、回折光学素子の後側主点Hb´と集光レンズの前側主点Hとの距離L、集光レンズの焦点距離fを用いた。
Figure 2005205464
ここで、第1の好ましい配置と同様、中心波長λに対し、スペクトル幅Δλをもつ光について考える。発振波長が異なる複数のレーザ装置を使用する場合は、最長波長λと最短波長λの差をΔλとする。レーザ光(波長λ+△λ)に対し、集光レンズの焦点距離が(f+△f)になるとすると、そのときのZ、y´の中心波長に対する変化量△Z、△y´は第1の好ましい配置の場合と同様に計算でき、以下のとおり記述される。
Figure 2005205464
本配置においてもΔλを有するレーザ加工装置で結像が正確に行われるためには、Δλの範囲内で△Zと△y´が、理想的には集光レンズの焦点深度および波動光学的なレーザ光径の広がりの中に収まればよい。しかしながら現実には、光学系の精度やレーザ光品質が完全ではないため、理想的な結像は難しい。そのため△Zの大きさは、好ましくは焦点深度Dの1.5倍、および△y´の大きさはエアリーディスクと呼ばれる波動光学的なレーザ光の広がりを表す尺度の半径Rの2倍までに収めることが好ましい。DおよびRは式(11)、(12)で同様に定義される。焦点深度の1.5倍よりも大きいと最小分解能が低下して深さ方向に伸びてしまい細かい形状が反映できなくなる。エアリーディスクの2倍よりも大きいと同様に最小分解能が低下して最小加工形状が大きくなり横方向の形状が正しく反映されなくなる。
ここで、好ましい第一の配置の場合と同様、前記条件が成り立つためには、△fは△λに合わせて変化することが好ましい。△yよりも△Zを範囲内に収めるほうが困難であるため、より好ましくは(24)式で△Z=0として、式(26)が成り立つ。
また、レンズの入射瞳をすべての光束が通過する条件は、集光レンズの前側主点Hの位置での光束の光軸からの最大半径RA’を考えると、レーザ光半径をdとすれば、式(27)が成立するから、これが式(28)に示す入射瞳半径Eよりも小さければよい。
Figure 2005205464
RA´がEよりも大きいと回折光学素子により変調されたレーザ光が有効に使われないため、光量不足となり、材料内部に加工する場合にはパワーが小さすぎて加工ができない恐れがあるため好ましくない。また、結像パターンに強度ムラの生じる恐れがあり好ましくない。
ここで、回折光学素子のMについて考えてみる。回折光学素子の実効の開口数NADOEとして式(29)を用いると、エアリーディスクの半径RaDOEは式(30)のように表される。
焦点Pと光軸との距離Mがエアリーディスクの直径2RaDOEと同程度になると、径方向に細かな強度分布をつけることが難しくなり加工物体の形状の自由度が下がるため好ましくない。式(31)のとおりMを2RaDOEの要素数Elt倍であるとする。
Figure 2005205464
要素数の範囲は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上である。
M=2RaDOEとしたときのyの値は、どれくらい細かな集光形状を形成できるか、という分解能の尺度になる。ここで、そのときのyの値をRes´分解能指数として分解能の尺度とすると、
es´は小さいほうが好ましく、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1以下である。Res´が2よりも大きいと、被加工物体に形成される集光形状を微細にすることができず、その結果形成される異質相も微細化できないため好ましくない。
回折光学素子の焦点距離の光軸成分fは50mm以上、2500mm以下が好ましい。50mmより小さいと結像される光量が低下してガラス内部への加工が困難になり、また、レーザ光のスペクトル幅の影響を大きく受けて△Z、△y´が上記条件に収まりにくくなるだけでなく、回折光学素子の製造が困難であり好ましくない。2500mmより大きいと光学系全体が大きくなりすぎ、また、与える位相差、振幅変調が小さくなりすぎて回折光学素子を作製しにくくなるため好ましくない。
より好ましくは、200mm以上1500mm以下である。この範囲では、容易に入手できる焦点距離4mm〜20mm、NA×fが2.4〜5.0までの対物レンズを使用した場合、広く△Zおよび△y´を小さくする条件が存在するので、光学系も容易に構築できて特に好ましい。さらに好ましくは400mm以上700mm以下である。この条件では、焦点距離4mm〜10mm、NA×fが3.2〜4.0までの対物レンズを使用した場合、△Zを10μm以下に抑えたまま照射条件を大きく変えることができ、自由度の高い加工が可能であり特に好ましい。
集光レンズの焦点距離は1.0mm以上150mm以下であり、開口数NAが0.05以上1.5以下、かつ焦点距離のΔλによる変動が中心波長に対して−1.5D〜+1.5Dμmが好ましい。焦点距離が1.0mmより小さいと結像範囲が狭くなり、また集光レンズとガラス試料などとの間隔が十分にとれないため加工が困難になる。また、150mmより大きいと、集光レンズは諸収差補正するの高度な技術を要し高額になるため好ましくない。
NAの値が0.05以下であると焦点深度が深くなりすぎて、透明体内部に深さ方向に制御された構造を得ることが難しくなり好ましくない。NAが1.4より大きいと集光点での光線の稜の角度が大きくなり、レンズ最後面と集光点との距離(作動距離)が短くなりすぎてレンズの設計が難しくなり入手するのも困難になるため好ましくない。NAが0.05〜1.4の範囲ではレンズの設計が容易であり多くのレンズが市販されており好ましい。
より好ましくは、焦点距離が4.0mm以上20mm以下、かつNA×fが2.4以上5.0以下である。この範囲のレンズは市販品を容易に入手することができるため、光学系も容易に構築することができる。
さらに好ましくは焦点距離が4.0mm以上10mm以下、かつNA×fが3.2以上4.0以下である。この範囲では、△Zを10μm以下とすることもでき、光導波路や回折格子など、最小構造が10μm程度の異質相の構造体を形成するのに特に好ましい。また、この範囲では集光レンズ設計に無理がなく、高度に収差補正されたレンズを安価に入手することができ特に好ましい。
焦点変動が−1.5Dより小さい、または1.5Dより大きいとレーザ光のスペクトル幅の影響を大きく受けて△Z、△y´が上記条件に収まりにくくなり、また、市販の集光レンズを使用しにくくなり汎用性に欠けるため好ましくない。
より好ましくは、+0.5Dから−0.5Dである。この範囲では、△Zを上記場合のおよそ1/3に抑えることができる。さらに好ましくは+0.25Dから−0.25Dである。この範囲では、△Zを上記の場合のおよそ1/6に抑えることができる。作業マージンが広がり加工領域も広く取れてしかも分解能も高く特に好ましい。
また、回折光学素子による結像を正確に行なうためには、集光レンズの幾何的収差も正しく補正されていることが好ましい。本態様の配置は縮小投影系の光学配置であることから、投影レンズが特に好ましい。市販の、例えばステッパー装置などに縮小投影に用いられる対物レンズであれば色収差、幾何的収差が良好に補正されており、また、開口数が大きいため微細な構造物の結像が可能であり、さらに入射瞳径も大きくより大きな領域で結像させることができて特に好ましい。その他、顕微鏡の対物レンズまたはレーザ加工用の対物レンズなども色収差、幾何的収差が比較的良好に補正されており好ましい。
レーザ光断面の外径の最大値は2mmφ以上25mmφ以下が好ましい。2mmより小さいとレーザ装置から回折光学素子までの導光にレーザ光幅調整用の光学系を入れなければならず装置が煩雑になるため好ましくない。また、回折光学素子の有効寸法が小さくなるため構造体の形状自由度が低下して好ましくない。また、25mmφより大きいと集光レンズの入射瞳で光束がけられてしまうため好ましくない。
より好ましくは、3mm以上、6mm以下である。この範囲では、容易に入手できる焦点距離4.0mm以上20mm以下、かつNA×fが2.4以上5.0以下の対物レンズを使用した場合、広く△Zおよび△y´を小さくする条件を満たすために、光学系も容易に構築することができて特に好ましい。また、通常のレーザ光径はこの範囲内であり、レーザ光径の拡大、縮小が不要で好ましい。
さらに好ましくは4mm以上、5mm以下である。この条件では、焦点距離4.0mm以上10mm以下、かつNA×fが3.2以上4.0以下の対物レンズを使用した場合、△Zを10μm以下とすることもでき、光導波路や回折格子など、最小構造が10μm程度の構造体を形成するのに特に好ましい。また、△Zを低く抑えたまま照射条件を大きく変えることができ、自由度の高い加工が可能であり特に好ましい。
投影レンズ前側主点と回折光学素子の後側主点間の距離Lはfの1.1倍以上8倍以下が好ましい。8倍より大きいと、△Zが急激に悪化するため好ましくない。1.1倍より小さいと、集光レンズとの距離が近くなりすぎて、回折光学素子を配置できなくなることもある。
より好ましくは、1.4倍以上2.3倍以下である。この範囲では、容易に入手できる焦点距離4.0mm以上20mm以下、かつNA×fが2.4以上5.0以下の対物レンズを使用した場合、広く△Zおよび△y´を小さくする条件を満たすために、光学系も容易に構築できて特に好ましい。
さらに好ましくはfの1.55倍以上1.75倍以下である。この条件では、焦点距離4.0mm以上、10mm以下、かつNA×fが3.2以上4.0以下の対物レンズを使用した場合、△Zを10μm以下とすることもでき、光導波路や回折格子など、最小構造が10μm程度の異質相の構造体を形成するのに特に好ましい。また、△Z低く抑えたまま照射条件を大きく変えることができ、自由度の高い加工が可能であり特に好ましい。
また、Lを変化させる機構を具備することが好ましい。Lを変化させることで形成物となる異質相の大きさを制御できる。これにより微妙な加工寸法の調整ができるため好ましい。
回折光学素子の拡大率Mは、回折光学素子設計の観点から、結像領域はレーザ光の外径よりも小さいことが好ましく、好ましくは外径の最大値の1倍以下、より好ましくは0.8倍以下、さらに好ましくは0.5倍以下である。また、外径の1倍より大きいと、集光レンズの入射瞳で光束がけられてしまうため好ましくない。さらに集光レンズの諸収差の補正が困難になり、レンズ自身が高額になるため好ましくない。
超短パルスレーザ光源がフェムト秒レーザ装置である場合、光学系に入射するレーザ光のスペクトル幅が半値全幅(FWHM)で2nmを超えると光学系および被加工物体である透明材料の波長分散により、パルス時間幅が大きく変化することがある。このパルス時間幅の変化は光学系全体での分散に依存し、入射パルス光のチャーピング(進行方向に対し、各波長成分がどのように進行してくるか)により、パルス幅が短くなる場合もあれば長くなる場合もある。チャーピングの影響はパルス時間幅の短いレーザ光ほど顕著で、光学系の材料によく用いられる石英ガラスの場合、チャーピングのないパルス光で石英ガラスを20mm透過後に、12fsパルス光の場合約200fsに広がってしまう。
パルス幅が広くなる場合、レーザ光のパワー密度が低下して、異質相が形成できなくなることがある。そのために入射レーザ光のパルス時間幅がチャーピングのない状態で10fs(フェムト秒)以上10ps(ピコ秒)以下であると、チャーピングの有無にかかわらず被加工物体の集光点付近では10ps以下の状態で集光しやすいため好ましい。
10fsより短いパルスは発生が困難であり、またチャーピングの影響を強く受けるため現実的でなく好ましくない。より好ましくは30fs〜5ps、かつスペクトル幅が50nm以内、さらに好ましくは100fs〜1ps、かつスペクトル幅が15nm以内である。30fs以上では、市販の高強度マルチパス増幅器や高強度発振器のレーザ出力が使用でき、さらに100fs以上では、最も入手しやすい再生増幅器やファイバ型増幅器のレーザ出力が使用でき特に好ましい。
10psより長いと、レーザ光のパワー密度不足で、異質相を形成できないこともある。さらに、被加工物体の材料に応じて適切なパルス幅を得るためには、チャーピング量を変化させることのできる分散補正機構を必要に応じて設置する必要があり、分散発生装置(プリズムペアやグレーティングペアなど)を具備することがより好ましい。
本発明のレーザ加工法では、被加工物体に一括して同時に形成されるレーザ光の複数の集光点をさらに走査して、すなわち被加工物体に対して集光点を相対的に移動させてもよい。図5に、被加工物体に対しレーザ光により形成される異質相を広範囲に形成する概念図を示す。図5に示すように一括して形成されるレーザ光の集光部(点)5を走査させれば、被加工材料(物体)4内部により多くの異質相21を形成でき、また、より広範囲に異質相を形成できる。これにより製造スループットをさらに向上させることができる。さらに、図7に示す、レーザ光により形成される被加工物体の導波路断面を制御し広範囲に形成する概念図のように、本方法は光導波路の断面形状の制御にも有効である。
従来の超短パルスレーザの集光点走査による光導波路形成法を図6に示す。従来の方法では、レーザ光の光軸と平行に走査する方法と垂直に走査する方法があるが、導波路の断面形状は集光点に依存し円形または楕円形しか得ることができない問題があった。図7に示す本方法によるとあらかじめ所望の断面形状になるように回折光学素子に格子構造を形成し、この素子を透過した回折光の断面形状を被加工材料に形成しそれを走査することで矩形状やドーナツ状など自由度の高い所望の断面をもつ導波路を形成することが容易にできるため好ましい。
また、本発明の方法と、レーザ光の集光点を走査して、該集光点を被加工材料に対して相対移動させる従来の方法とを併用することも有効である。例えば、高い位置精度および寸法精度の要求される図8に示すような光学素子の導波路の回路部分15を形成する場合に用いられる。例えば図8(A)に示す方向性結合器17の光結合部15a、15bや、図8(B)に示すY分岐導波路18のY分岐部15cなどの複雑形状をした回路部分の形成には本発明による方法を用いて、また単純な直線または曲線の形状をした回路部分には、集光点を走査させる従来の方法を用いることで、光導波路を形成できる。したがって、所望の光特性を維持したまま製造装置を簡素化できるだけでなく、光学素子設計・製造の自由度を大幅に増加させることができる。
レーザ光がスペクトル幅をもつパルスレーザであり、かつそのパルス時間幅がチャーピングのない状態で10ps以下の場合には、1パルスあたりのエネルギーは0.01μJ以上、100mJ以下であることが好ましい。0.01μJ以下であるとレーザ光パワーが弱すぎて加工ができないことがある。100mJ以上であると、強いエネルギーのために光学系が損傷することがある。また、そのような強いエネルギーの光パルスを発生させるのは高度な技術および高価なレーザ装置が必要で汎用性に欠けるため好ましくない。さらに、被加工物体である透明体内部に比べ、透明体表面のほうがレーザ光に対して損傷しやすいため、材料表面が損傷することがある。
本発明の加工法によれば、レーザ光がスペクトル幅をもつパルスレーザであり、かつそのパルス時間幅がチャーピングのない状態で10ps以下の場合には、上記した手順でレーザ光を被加工材料内部の複数の所望の部位に一括して集光させることにより、内部の所望の位置に、所望の形状をした異質相が有する構造物が得られる。このような構造物の材料は、使用するレーザ光の波長に対する線形吸収係数(レーザパワー/照射面積)が十分小さいときの吸収係数)が小さいことが必要であり、具体的には、被加工材料の、パルスレーザ光が入射する面から、パルスレーザ光を集光させる部位までの該パルスレーザ光の透過率Tが50%以上であることが好ましい。
透過率Tが上記の範囲であれば、構造物内部に形成される異質相の位置精度および形状精度が高く、また集光点におけるレーザ光のパワー密度が材料に光誘起による変化を生じさせるのに充分である。材料の透過率が50%より小さいと加工したい集光点の部位以外でも光誘起反応が起こり加工精度が低下するため好ましくない。また、透過率が上記の範囲であれば、レーザ光のエネルギー効率も優れていて、好ましい。
また、構造物の材料は、使用するレーザ光に対して透過性を有することが必要である。具体的には、加工用途で通常使用される波長0.1μm〜11μmのレーザ光に対して、前記透過率Tの範囲を満たす材料である。したがって、例えば、ガラス、ポリマーや透明結晶体だけでなく、波長が0.8μm〜2.5μm程度の近赤外領域のレーザ光を用いる場合には、半導体材料も該レーザ光に対して透過性を有するため加工ができる。その中で、ガラス材料は、現在実用的に最も使いやすい超短パルスレーザである1)チタンサファイアレーザ、2)Cr:LiSAFレーザ、3)Ndドープ、Ybドープ、またはErドープのファイバレーザ、4)YAGレーザ、5)YLFレーザ、6)Yb:KGWレーザなどのレーザ装置やそれらのレーザ光の高調波などに対して高い透過性を有し、また機械的、熱的安定性を備え、希土類や半導体などの様々な機能性元素を含有させることができるため、特に好ましい。使用されるガラス材料としては例えば酸化物ガラス、ハロゲン化物ガラス、硫化物ガラスまたはカルコゲナイドガラスが挙げられる。
また、透明材料は固体でなくともよく液体であってもよい。感光性を有する液体で、硬化する光強度に閾値を有するものであれば集光点近傍のみ硬化する光強度で照射することにより、三次元パターンを反映した構造物を形成することができる。
このような構造物内部に形成される異質相として、好ましい態様の1つは、材料の他の部分に比べて屈折率が異なる異質相である。
構造物が単相のガラス材料であれば、レーザ光の集光照射によって生じる高密度化などの光誘起反応により、もとのガラスの屈折率に対して屈折率差が数%程度生じた異質相を形成することができる。例えば石英ガラス中に超短パルスレーザ光を集光照射することにより1%程度の屈折率差を得ることができ、この異質相を三次元的に線状に構造化することで立体的な光導波路を形成できる。また、構造物の内部にフォトニック結晶構造を実現させるには、屈折差がより大きい領域を形成しうるガラス材料が必要であり、そのようなガラス材料として化合物半導体ガラスが例示される。
このガラス材料では、屈折率1.4〜2.2程度のガラス材料中に、屈折率2.5〜3.5程度の化合物半導体を形成でき、したがって屈折率差が数10%以上の異質相を形成することができる。また、異質相のもつ屈折率や吸収特性を利用して、回折光学素子の形成ができる。微小領域に屈折率変調部や透過率変調部の構造部パターンをつくることで光の回折現象を利用した光制御ができる。本発明によれば、このような屈折率差が大きな異質相を、構造物内部の所望の位置に、所望の形状で形成することができるため光機能を有する光学素子を作製するのに好適である。
本発明では、複雑な光機能構造を有する光フィルタや合分岐、合分波素子などの光学素子が作製できる。既に一部、上で述べたように図8に光導波路回路による光学素子の基本構造の一例を示す。図8(A)は方向性結合器構造17を、図8(B)はY分岐導波路構造18を、図8(C)はマッハツェンダ干渉器構造19を、図8(D)はリング共振器構造20を各々示している。これらは光導波路の回路部分15で光学素子の基本構造を形成している。これらの構造は、安定して機能するために、形状、寸法、相対的位置の高い精度が要求される。例えば、図8(A)に示す方向性結合器構造17および図(8D)に示すリング共振器構造20では、数μm幅の光導波路の回路部分15と同じく数μm間隔の回路部分のギャップ16を高い精度で形成することが要求される。本発明によれば、これらの構造を一括して作製し、さらに高い形状精度で加工することで、光特性の安定した光学素子を作製ができ、しかもこのような光学素子を高い製造スループットで作製ができる。
さらに、該光学素子に、非線形光学効果(入射する光の強度に応じて、光応答が非線形的に変化する現象)を利用する機構や屈折率変調機構(光学素子の一部の屈折率を変えて光学素子の特性を変化させる機構。局部的に加熱したり通電したり、音波を発生したりすることで行う。)を設けることにより、光を能動的に制御する光学素子を作製することができ、例えば、全光スイッチ、光演算素子、光双安定素子が実現されるため、図8に示すような光学素子の基本構造を光特性的に安定したものとして製造することは光学素子の開発において重要である。
本発明では、また光学素子を回折光学素子により形成することもできる。図9に光学素子を回折光学素子により形成する概念図示す。例えば図9(A)の回折格子23は波長の異なる光を合分波するのに役立つし反射鏡としても使用できる。図9(B)に示すようなフレネルレンズ素子24はレーザ光の分割や異なる場所への集光が可能であり、さらにレンズ機能をガラス内部に自由に配置できる。図9(C)に示すホログラム素子25ではフレネルレンズ素子で可能な機能に加え、レーザ光形状の整形などより自由度の高い光の変調ができる。図9(D)に示すようにこれらを三次元的に配置することで、光ファイバ26から出射する光束6をフレネルレンズ素子24で平行にしたのち、回折格子23で分岐し、ホログラム素子25で光束の波面を整形して、最後にフレネルレンズ24で集光して受光用の光ファイバ26に入光するような、自由度の高い光学素子の製造ができる。
構造物の内部に形成される異質相の別の好ましい形態は、少なくとも以下に記載の効果の少なくとも1つを有する異質相である。
・内部からのクラック発生を低減する効果
・発生したクラックの進行方向を変える効果
・発生したクラックの伸展を抑制する効果
このような異質相は、材料の強度を向上させる補強部をなす。このような内部に補強部を有する材料、特に透明材料は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ用の薄板ガラス基板に代表される情報処理分野、窓ガラスなどの建築分野、自動車用ガラスに代表される輸送機器分野、太陽電池用のガラス基板に代表されるエネルギー分野などで好ましく使用される。本発明の方法によれば、材料を所望の形状に加工した後で、材料の内部の所望の位置に所望の形状をした補強部をレーザ光の照射により一括して形成できるため、材料を加工する前に、予め補強部を設けたりする手順を必要とせず、また、従来のレーザ光を照射して補強部を形成する方法のように、集光点を走査させる手順を必要とせず、材料の製造スループットが向上されている。
材料の用途によって要求される強度(向き、特性)は、通常異なっているが、本発明によれば、材料内部の所望の位置に所望の形状をした補強部を容易に形成できるため、このような要求される強度特性に応じて、最も適した位置および形状の補強部を形成できる。さらに、また、本発明によれば、レーザ光の照射による材料の光誘起による変化で補強部を形成するため、材料に外観上変化が生じることがない。これは強度に優れた透明材料として好ましい特性である。
以下、実施例により本発明をさらに説明する。ただし、これらの実施例は、本発明の理解を容易にするため、例示を目的とするものであり、本発明は係る実施例に限定されるものではない。
「実施例1」
図11に,本実施例で用いたレーザ加工装置の形態を示す。これは、請求項3に記載される第1の好ましい配置に従うものである。レーザ装置27として、チタンサファイア・レーザ装置を用いた。パルス時間幅40fs、スペクトル幅(半値全幅)が40nm、レーザ光直径8mmの装置を用いた。レーザ装置27は分散制御装置28を具備しており、アップチャーピングおよびダウンチャーピングをもつパルス時間幅40fsから2000fsまでのレーザパルス光を発生させることができる。1パルスあたりのエネルギーは5.7μJである。
回折光学素子2の焦点の光軸成分fが1600mm、Mは最大で2.16mm(A面という。)および1900mm、Mは1.77mm(B面という。)であり、図12に示す回折光学素子単体で形成される集光部を有する素子を用いた。
集光レンズ3は顕微鏡の無限遠補正光学系用の20×対物レンズ(ミツトヨ社製M Plan NIR 20×)、開口数がNA0.4、焦点距離が10mmであり、かつ焦点距離のスペクトル幅による変動は、中心波長λに対して−1.7μmから+1.7μmの範囲内である。
回折光学素子の後側主点と集光レンズの前側主点との距離xを600mmおよび300mmに配置した場合について結像の様子を式(1)〜(20)によって計算した結果を表1に示す。結像に寄与する光束の最大半径RAは、A面、B面いずれの場合も集光レンズの瞳半径4mmより小さい。fを長くすると、集光位置Zが深くなる。これは、深さ方向に構造体を制御できることを示している。
Figure 2005205464
上記計算の結果、△Zの大きさの最大値および△yの大きさの最大値は、焦点深度Dの1.5倍の7.5μm、エアリーディスクRの2倍の2.4μmより小さくなった。いずれの場合でも、Eltは3倍以上、Resは2倍以下である。よって、本条件によりレーザ加工が十分可能である。回折光学素子の後側主点と集光レンズの前側主点との距離を、600mmから300mmへ変えた場合、A面とB面との距離およびf=1600mmでのyの変化、f=1900mmでのyの変化はそれぞれ0.61倍、0.77倍、0.81倍となり、相似形ではないものの、寸法を小さくすることができた。
本光学系により被加工物体に形成される集光形状をレーザ光プロファイラで観測したところ、回折光学素子の格子構造に基ずく集光形状が縮小して結像されていた。図13は、被加工物体に形成される集光部の形状を実測した図で、回折光学素子の後側主点と集光レンズの前側主点との距離600mmに配置した場合であり、図12のA面、B面の各点に対応する各yの値は、表1の例1および2に示される計算値とほぼ一致した。A面からレーザ光の進行方向に20μm進んだ場所にB面は集光していた。個々のレーザ光直径は2μm以下、焦点深度は4μmであり、その大きさは1.5Dおよび2Rの範囲内であった。
本集光形状を透過率96%の石英ガラス中に集光させた。ガラス内部ではその屈折率をnとすると、集光位置の深さがn倍に深くなるが、横方向の寸法は変わらないため、それに応じた構造が形成される。石英ガラスの場合、屈折率が約1.4であるため、レーザ光の進行方向に対して1.4倍に伸びた異質相による構造が形成される。入射レーザ光の1パルスエネルギーは5.7μJ、パルス数50で照射したところ、ガラス内部にA面、B面、ともに異質相ができた。被加工物体の石英ガラス内部に形成された異質相の写真を図14に示す。A面からレーザ光の進行方向に30μm進んだ場所にB面の異質相があった。異質相について実測したところ横方向の寸法も図13に示す集光形状とほぼ同じであった。
また、本集光形状を石英ガラス中に集光したまま、石英ガラスを、レーザ光の入射方向に平行で集光点がガラス表面に近づく方向に走査しながらレーザ光を照射したところ、断面形状が図12と同形状の異質相の柱状体群ができた。これはレーザ光の走査方向に垂直な面内にレーザ光の集光形状の分布を保持したままレーザ光を走査することで、異質相の断面形状を詳細に形成できることを示している。
「実施例2」
図11に示す配置と同じ配置のレーザ加工系を表2に示すパラメタで構築した。入射レーザ光のパルス時間幅150fs、スペクトル幅10nm(FWHM)を用いたところ、式(1)〜(20)によって表2の結果を得た。いずれの場合も△Zの大きさおよび△yの大きさの最大値や、RA、Elt、Resの条件を満たすため十分な加工ができる。
Figure 2005205464
「実施例3」
図11に示す配置と同じ配置のレーザ加工系を構築し、図15に示す回折光学素子単体で形成される集光形状を有する素子を用いる。この回折光学素子の焦点の光軸成分fは2000mm、Mは最大で2.5mmである。
集光レンズは顕微鏡の無限遠補正光学系用の20×対物レンズで、開口数がNA0.4、焦点距離が10mmであり、かつ焦点距離のスペクトル幅による変動は、中心波長に対して−1.7μmから+1.7μmの範囲内である。入射レーザ光のパルス時間幅150fs、スペクトル幅10nm(FWHM)とする。
回折光学素子の後側主点と集光レンズの前側主点との距離を1000mmに配置した場合について結像の様子を式(1)〜(20)によって計算すると、△Zの大きさの最大値および△yの大きさの最大値は、焦点深度Dの1.5倍の7.5μm、エアリーディスクRの2倍の2.4μmより小さくなった。よって、本条件によりレーザ加工が十分可能である。被加工物体に形成される集光部の形状を示した図16のように、集光部をガラス内部に集光させることにより、ピッチ5μm、長さ35μmの異質相で構成される回折格子をガラス内部に作製できる。
「実施例4」
図11に示す配置と同じ配置で、図17に示す回折光学素子単体で形成される集光部を有する素子を用いた。この回折光学素子の焦点の光軸成分fが900〜1200mm、Mが最大で1.58mmである。焦点の光軸成分1000mmのXY平面に2本の直線構造があり、片方の直線からは光軸方向の前後に直線が伸びている。
集光レンズは顕微鏡の無限遠補正光学系用の20×対物レンズ、開口数がNA0.4、焦点距離が10mmであり、かつ焦点距離のスペクトル幅による変動は、中心波長に対して−1.7μmから+1.7μmの範囲内であった。
回折光学素子の後側主点と集光レンズの前側主点との距離を600mmに配置した場合について結像の様子を式(1)〜(20)によって計算すると△Zの大きさの最大値および△yの大きさの最大値や、RA、Elt、Resの条件を満たすため、本条件によりレーザ加工が十分可能である。被加工物体に形成される集光部の形状を示した図18のように、集光形状は三次元方向性結合器構造となる。本集光形状を透過率96%の石英ガラス中に集光させれば、集光部の屈折率差が約1%の曲線状の異質相ができるため、ガラス内部に方向性結合器構造を作製できる。
「実施例5」
図19に、本実施例で用いたレーザ加工装置の形態を示す。これは請求項11に記載される第2の好ましい配置に従うものである。この配置でレーザ加工系を表3に示すパラメタで構築した場合を考える。入射レーザ光のパルス時間幅150fs、スペクトル幅10nm(FWHM)を用いて、式(21)〜(32)によって計算すると、表3の結果を得た。いずれの場合も△Zの大きさおよび△y´の大きさの最大値や、RA、Elt、Res´の条件を満たすため十分加工が可能である。
Figure 2005205464
「比較例1」(第1の好ましい配置)
図11に示す配置と同じ配置でレーザ加工系を表4に示すパラメタで構築し、入射レーザ光のパルス時間幅150fs、スペクトル幅10nm(FWHM)を用いると、式(1)〜(16)によって表4の例9、10に示す計算結果を得た。例9の場合は△Zの大きさの最大値が、1.5×Dよりも大きくなった。この集光形状で加工すると、異質相が目標値よりも大きくなることもあり好ましくない。例10の場合はRAがEよりも大きくなったため、レーザ光の光束が集光レンズの入射瞳で遮られて結像が乱れて好ましくない。
Figure 2005205464
「比較例2」(第2の好ましい配置)
図19に示す配置と同じ配置でレーザ加工系を表5に示すパラメタで構築し、入射レーザ光のパルス時間幅150fs、スペクトル幅10nm(FWHM)を用い、式(21)〜(28)によって計算すると、表5の例11、12に示す結果を得た。例11の場合は△Zの大きさの最大値が、1.5×Dよりも大きくなった。この集光形状で加工すると、異質相が目標値よりも大きくなることもあり好ましくない。例12の場合はRA´がEよりも大きくなったため、レーザ光の光束が集光レンズの入射瞳で遮られて結像が乱れて好ましくない。
Figure 2005205464
本発明の方法は、従来の方法において問題であった位置精度および形状精度の低さや、製造スループットの低さを解消するものである。
したがって、本発明の方法は、ガラスなどの透明材料中に、光導波路の回路部分に代表される複雑な二次元形状、または三次元形状をした光機能構造を形成するのに好適であり、また、透明な構造材料(窓材料、ディスプレイ用透明基板など)の内部に補強部を形成するのにも好適である。
回折光学素子とレンズで集光する光学系の概念図で、A)は光学系の構成図、B)は色収差による結像の狂いの概念図。 入射瞳を通過するレーザ光とその集光位置の関係を示した側面図。 本発明の方法による第1の好ましい配置を示した模式図。 本発明の方法による第2の好ましい配置を示した模式図。 本発明においてレーザ光により形成される異質相を広範囲に形成する概念図。 従来の超短パルスレーザの集光点走査による光導波路形成法を示す概念図。 本発明においてレーザ光により形成される導波路断面を制御し広範囲に形成する概念図。 本発明により作製可能な光部品の主要構造を示す図であり、A)は方向性結合器構造の模式図、B)はY分岐導波路の模式図、C)はマッハツェンダ干渉器構造の模式図、D)はリング共振器構造の模式図。 本発明により作製可能な光部品の主要構造を示す図であり、A)は回折格子の模式図、B)はフレネルレンズ素子の模式図、C)はホログラム素子の模式図、D)はこれらの素子を組み合わせることで構成される光学装置の概念図。 従来のレーザ光走査による高屈折率領域の形成における特性を示す図であり、A)は形成された走査方法による直線形状の高屈折率領域の概念図、B)はA)の偏心量を示すグラフ、C)はA)の外径変動量を示すグラフ。 本発明の方法で用いるレーザ加工装置の1つの形態を示した模式図。 回折光学素子単体で形成される集光部の1例を示した概念図。 被加工物体に形成される集光部の形状を実測した図。 被加工物体の石英ガラス内部に形成された異質相の1例の写真。 回折光学素子単体で形成される集光部の別の1例を示した概念図。 被加工物体に形成される集光部の形状の別の1例を示した概念図。 回折光学素子単体で形成される集光部の別の1例を示した概念図。 被加工物体に形成される集光部の形状の別の1例を示した概念図。 本発明の方法で用いるレーザ加工装置の1つの形態を示した模式図。
符号の説明
1:入射レーザ光
2:回折光学素子
3:集光レンズ
4:被加工物体
5:集光部(点)
6:光束
7:中心波長の集光部
8:中心波長からずれた波長の集光部
9:集光レンズの入射瞳
10:平行光に対するレンズの集光位置(レンズ焦点)
11:レンズ焦点よりも奥の集光点
12:レンズ焦点よりも手前の集光点
13:回折光学素子の有効範囲
15:光導波路の回路部分
15a、15b:光結合部
15c:Y分岐部
16:光導波路の回路部分のギャップ
17:方向性結合器構造
18:Y分岐導波路構造
19:マッハツェンダ干渉器構造
20:リング共振器構造
21:形成された異質相
22:材料の走査方向
23:回折格子
24:フレネルレンズ素子
25:ホログラム素子
26:光ファイバ
27:レーザ装置
28:分散制御機構
29:回折素子単体での集光部

Claims (15)

  1. レーザ装置から発振されたレーザ光を回折光学素子に入射し、回折光学素子により回折されたレーザ光を集光レンズにより集光し、集光されたレーザ光を被加工物体の表面または内部に集光点を有するように照射して、被加工物体の集光点の部位における材質を変化させてことにより、被加工物体に二次元的または三次元的形状の異質相を形成するレーザ加工法において、
    レーザ装置が、発振波長がスペクトル幅をもつパルスレーザ装置の場合には、パルスレーザ装置から発振されたレーザ光スペクトルの半値全幅が130nm以内であり、
    レーザ装置が単色光発振のCWレーザ装置またはパルスレーザ装置の場合には、少なくとも2つのレーザ装置が用いられ、レーザ装置から発振されたそれぞれのレーザ光のうち最長波長と最短波長との差が130nm以内であり、
    また回折光学素子は、回折光学素子に入射したのち集光レンズにより集光されたレーザ光の集光点が、被加工物体において連続的、または離散的な異質相を形成する、格子構造を有する回折光学素子である、
    ことを特徴とするレーザ加工法。
  2. 前記レーザ装置が、発振波長がスペクトル幅をもつパルスレーザ装置であって、前記パルスレーザ装置が発振するパルスレーザ光のパルス時間幅がチャーピングのない状態で10fs〜10psである請求項1に記載のレーザ加工法。
  3. 回折光学素子の任意の1つの焦点をPとし、Pと光軸との距離をM、Pから光軸へ下ろした垂線と光軸との交点から回折光学素子の後側主点までの距離、すなわち回折光学素子の焦点距離の光軸方向成分をf、回折光学素子のPに対応する後側主点と集光レンズの前側主点との距離をx、レーザ光の半径をd、レーザ光が回折光学素子を通過後集光レンズにより集光されるPに対応する焦点をP´、P´と光軸との距離をy、P´から光軸へ下ろした垂線と光軸との交点からレンズの後側主点までの距離をZ、集光レンズの焦点距離をfとし、また、
    レーザ光が、発振波長がスペクトル幅をもつパルスレーザ光の場合、レーザ光スペクトルにおける任意の波長の中心波長λからのずれ量を△λ、
    レーザ光が単色光発振のCW光またはパルスレーザ光の場合、複数のレーザ光のうち最長波長λと最短波長λとの差を△λ、
    とし、△λの変化に対する集光レンズの焦点距離のずれ量を△fとするとき、
    の変化量△Z=−A×△λ+B×△fの大きさが集光レンズの焦点深度Dの1.5倍以下であり、かつyの変化量△y=C×△λ+D×△fの大きさが、入射瞳によるエアリーディスク半径Rの2倍以下となり、
    さらに、入射瞳位置でのレーザ光の最大半径RA=x×M/f+d×(1−x/f)が入射瞳半径Eよりも小さくなるように、
    、f、△f、xの条件を変化させて加工する請求項1または2に記載のレーザ加工法。
    ただし、A=f×f/(f−x+f)/λ
    B=(f−x)/(f−x+f)
    C=M×{(f−x)×(Z/λ−A)+f×x/λ}/(f×f
    D=M×{x×Z+(f−x×f)×B}/(f×f)、である。
  4. 前記M、d、f、yおよびRを用いて、Elt=M×d/(2×0.61×λ×f)と定義される要素数Eltが3以上、かつRes=y/(Elt×2R)と定義される分解能指数Resが2以下である請求項3に記載のレーザ加工法。
  5. 前記fが50mm以上、3000mm以下の範囲にある集光点の集合により構成される請求項3または4に記載のレーザ加工法。
  6. 前記集光レンズの前側主点と前記回折光学素子の後側主点との距離xが上記fの0.05倍以上、0.7倍以下である請求項3、4または5に記載のレーザ加工法。
  7. 前記集光レンズの前側主点と前記回折光学素子の後側主点との距離xを変える機構を具備し、xを変えることにより被加工物体に形成される異質相の大きさを制御する請求項3から6までのいずれか1項に記載のレーザ加工法。
  8. 回折光学素子の任意の1つの焦点をPとし、Pと光軸との距離M、Pから光軸へ下ろした垂線と光軸との交点から回折光学素子の後側主点までの距離、すなわち回折光学素子の焦点距離の光軸方向成分をf、回折光学素子のPに対応する後側主点と集光レンズの前側主点との距離をL、レーザ光の半径をd、レーザ光が回折光学素子を通過後集光レンズにより集光されるPに対応する焦点をP´とし、P´と光軸との距離をy´、P´から光軸へ下ろした垂線と光軸との交点から集光レンズの後側主点までの距離をZ、集光レンズの焦点距離をfとし、また、
    レーザ光が、発振波長がスペクトル幅をもつパルスレーザ光の場合、レーザ光スペクトルにおける任意の波長の中心波長λからのずれ量を△λ、
    レーザ光が単色発振のCW光またはパルスレーザ光の場合、複数のレーザ光のうち最長波長λと最短波長λとの差を△λ、
    とし、△λの変化に対する集光レンズの焦点距離のずれ量を△fとするとき、
    の変化量△Z=(L−f×△f/(L−f−f)−f×f×△λ/{(L−f−f)×λ}の大きさが、集光レンズの焦点深度Dの1.5倍以下であり、かつy´の変化量△y´=M×{(L−f)△Z−f×Z×△λ/λ}/(L−fの大きさが、入射瞳によるエアリーディスク半径Rの2倍以下となり、
    さらに、入射瞳位置でのレーザ光の最大半径RA´=(L−f)×d/f+L×M/fが入射瞳半径Eよりも小さくなるように、
    、f、△f、xの条件で加工する請求項1または2に記載のレーザ加工法。
  9. 上記のM、d、f、y´およびRを用いて、Elt=M×d/(2×0.61×λ×f)と定義される要素数Eltが3以上、かつRes´=y´/(Elt×2R)と定義される分解能指数Resが2以下である請求項8に記載のレーザ加工法。
  10. 前記回折光学素子の焦点距離の光軸方向成分fが50mm以上、2500mm以下の範囲にある集光点の集合により構成される請求項8または9に記載のレーザ加工法。
  11. 前記集光レンズの前側主点と前記回折光学素子の後側主点との距離Lが上記fの1.1倍以上、8倍以下である請求項8、9または10のいずれか1項に記載のレーザ加工法。
  12. 前記集光レンズの前側主点と前記回折光学素子の後側主点との距離Lを変える機構を具備し、前記Lを変えることにより被加工物体に形成される異質相の大きさを制御する請求項8から11までのいずれか1項に記載のレーザ加工法。
  13. 請求項1から12までのいずれか1項に記載のレーザ加工法を、集光されたレーザ光に対して被加工物体を相対的に移動させて用いるレーザ加工法。
  14. 請求項1から13までのいずれか1項に記載のレーザ加工法が用いられて、被加工物体に形成された異質相を有することを特徴とする構造物。
  15. 請求項14に記載の構造物を備え、前記構造物は光機能を有していることを特徴とする光学素子。
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