JP2004196585A - レーザビームにより材料内部に異質相を形成する方法、構造物および光部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】レーザビームを走査機構を用いることなく、ガラス等の透明材料内部に照射して、複雑な二次元形状をした、または三次元形状をした異質相を形成する方法の提供。
【解決手段】パルスレーザビームの波面の複数の領域を、各々独立して位相および/または振幅を制御することにより、該パルスレーザビームを材料内部の複数の所望の位置に集光させて、該材料内部のパルスレーザビームが集光された部位に光誘起により変化させて、該材料内部の複数の所望の位置に一括して異質相を形成させることを特徴とする材料内部に異質相を形成する方法。
【選択図】なし
【解決手段】パルスレーザビームの波面の複数の領域を、各々独立して位相および/または振幅を制御することにより、該パルスレーザビームを材料内部の複数の所望の位置に集光させて、該材料内部のパルスレーザビームが集光された部位に光誘起により変化させて、該材料内部の複数の所望の位置に一括して異質相を形成させることを特徴とする材料内部に異質相を形成する方法。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザビームを走査機構を用いることなく、材料、特にガラスのような透明材料の内部に照射して異質相、特に二次元形状または三次元形状をした異質相を形成する方法、および該方法で作製される内部に異質相を有する構造物、ならびに該構造物を有する光部品に関する。
本方法で得られる内部に異質相が形成された透明な構造物は、主に光情報処理、光通信システム等に使われる光フィルタ、合分波素子、偏光素子、急角度の曲がり光導波路を持つ超小型の合分岐、光を能動的に制御する全光スイッチ、光演算素子、光双安定素子などの光部品に好適である。
また、本方法は、情報処理や建築、エネルギー分野等で利用される透明材料の内部に補強部を形成するのにも好適である。
【0002】
【従来の技術】
近年、光情報処理の普及により、ガラス等の透明媒質中に高屈折率領域を形成した光導波路が製造されている。一方で、ガラス等の透明媒質中に、光の波長程度の周期を持つ高屈折率領域を形成し、その構造により光の制御を行う、フォトニック結晶の研究開発も盛んに行われている。光導波路において線状の回路となる部分やフォトニック結晶の高屈折率相を形成するためには、透明媒質中に、媒質よりも屈折率の大きい領域を制御して形成しうる材料および該材料中に屈折率の大きい領域を制御して形成する方法が必要である。また、光部品により複雑な機能を持たせることや、集積化もその課題の一つであり、複雑な二次元形状をした、また三次元形状をした光部品の回路部分を作製することが望まれている。
一方で、情報処理や建築、エネルギー分野等では、板状等の厚さが小さい透明材料が多く用いられている。これらの板状の透明材料は、様々な環境で使用されており、用途によっては強度に優れることが求められ、材料内部に補強部を設けることも必要となる。
【0003】
光導波路の典型的な製造方法は、SiO2 を主成分とした基板ガラス上に、該基板よりも屈折率の高いコアと呼ばれる領域を成膜し、コアをエッチングなどのプロセスで加工し、再びコアよりも屈折率の低い材料で包埋することにより作製されている。このような方法は、非常に煩雑なプロセスを経ることが必要であるため製造が困難であり、またその工程上、製造される光導波路は平面的な形状のものに限定される。また、これまでのフォトニック結晶の製造も同様に、屈折率の高い半導体基板上に何層かの半導体を成膜し、エッチングにより微細加工を施して、光の波長レベルの高屈折率部および低屈折率部を、波長レベルの周期で配列させた構造を形成している。そのため、この場合も製造が煩雑で困難であり、作製されるフォトニック結晶も、また平面的な形状のものに限定される。
【0004】
ガラス中に光導波路の線状の回路部分を立体的に構成する方法としては、例えば、レーザ光の照射によりガラス内部に高屈折率領域を形成する方法が知られている(特許文献1参照)。この方法では、ガラス中のレーザ光の集光照射領域において、光の高電磁場によりガラスの分子構造が変化することで、該領域の屈折率が変化すると考えられている。この方法では、集光領域のみ屈折率変化が起こるため、集光点をガラス内部で三次元的に走査することにより、屈折率が変化した領域を立体的に形成し、光導波路の線状の回路部分を三次元的に構成することが可能である。この方法では、レーザ光の照射により、高屈折率領域だけでなく、レーザ光の集光による熱や光化学反応や物質の酸化還元、非線形効果などの種々の光効果により、結晶生成や高密度化、気泡生成など、いわゆる光誘起による変化によって材料中に異質な相(異質相とよぶ)を形成できることが知られている。この方法では、形成される異質相を利用して、フォトニック結晶などの光部品を作製しうることも提案されている。
【0005】
上記したレーザ光の照射により材料内部に異質相を形成する方法では、レーザ光のパワー密度を上げるために、パルスの時間幅がピコ(10-12 )秒からフェムト(10-15 )秒と非常に狭い超短パルスレーザが用いられている。しかしながら、レーザの機構上、レーザパルスの繰り返し周波数は、実用上1kHz〜数100kHzに制限されるため、平滑な界面を有する異質相を形成しようとする場合、レーザ光の集光点を高速で走査することが困難であり、製造スループット(時間当たりの処理量)が低いという問題があった。また、レーザ光の集光点を走査するために、高精度の移動機構を備えた装置が必要となり、このような装置は複雑でしかも高価である。
【0006】
さらに、上記した方法では、レーザ光の集光点に高屈折率領域が形成されるため、1パルスにより生じる楕円形状の高屈折率領域の集合体として光導波路の線状の回路部分などの高屈折率領域が形成されるが、高屈折率領域を形成しうる現行のパワー密度が高い超短パルスレーザ装置ではパルスごとの強度ゆらぎが多く、また、ポインティングスタビリティも低いため、例えば直線形状をした高屈折率領域を形成する場合を例にとると、レーザ光の走査によって形成される高屈折率領域の概念形状は、図1Aに示すような形状になる。図1Bおよび1Cは、その偏心量および外径変動量をグラフで示している。
これらのグラフから明らかなように、形成される高屈折率領域は、偏心量や外形変動量が大きく、高い位置精度および形状精度ならびに平滑な界面をもつ光導波路の線状の回路部分などの高屈折率領域の作製は困難である。そのため、図4に示すような光部品の基本構造、特に図4Aに示す方向性結合器17の光結合部15a、15bや図4Bに示すY分岐導波路18のY分岐部15cなどの形成に用いる場合には、位置精度と形状精度が不充分であり、得られる光部品の光特性にばらつきが生じていた。そのため、充分な光導波構造の低損失化及び安定した製造が困難であった。
【0007】
また、レーザ加工の分野においては、超短パルスレーザ及び回折光学素子などを利用した加工パターンの一括形成が行われてきた(例えば特許文献2ないし特許文献4参照)。しかしながらこれらの方法は、ビームの分割や二次元的な結像によるものであり、しかも昇華加工(アブレーション加工)に限定されている。したがって、材料内部に複雑な二次元形状をした、または三次元形状をした異質相を形成することは対象としていない。
【0008】
また、立体像の結像による三次元構造形成方法については、樹脂材料の光硬化による立体成形やレジストへのパターニングなどに利用されている(例えば特許文献5および特許文献6参照)。これらの方法は、パルスレーザビームの複数の領域で位相および/または振幅を制御する方法を開示しておらず、また、光硬化材料など、一部の限定された材料についての三次元構造形成に関するものであり、光導波路の線状の回路部分やフォトニック結晶の高屈折率相の形成において一般的な材料(ガラス、プラスチック、半導体等)の内部に高エネルギーを用いて異質相を形成することについてはまったく示されておらず、また、局所的な加熱や材料改質などによる材料加工についての応用は示されていない。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−311237号公報
【特許文献2】
特開2000−280085号公報
【特許文献3】
特開2001−138083号公報
【特許文献4】
特開2001−212800号公報
【特許文献5】
特開平4−267132号公報
【特許文献6】
特開平8−286591号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するため、レーザビームを走査機構を用いることなく、材料内部に照射して、異質相、特に複雑な二次元形状または三次元形状をした異質相を形成する方法、および該方法で作製される内部に異質相を有する構造物、ならびに該構造物を有する光部品を提供する。
本発明の方法は、ガラス等の透明材料中に、光導波路の回路部分に代表される複雑な二次元形状をした、または三次元形状をした光機能構造を形成するのに好適であり、また、透明な構造材料(窓材料、ディスプレイ用透明基板など)の内部に補強部を形成するのにも好適であり、従来の方法において問題であった位置精度および形状精度の低さや、製造スループットの低さを解消する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、パルスレーザビームの集光照射による材料内部への異質相の形成において、パルスレーザビームの波面の複数の領域を、各々独立して位相および/または振幅を制御して、パルスレーザビームを材料内部の複数の所望の位置に集光させることで、材料内部に複雑な二次元形状をした、または三次元形状をした異質相を一括して形成できることを見出した。
即ち、パルスレーザビームの複数の集光点の集合体および/または直線形状もしくは曲線形状等のある大きさを有する連続的な集光点として材料内部に集光形状を形成させることで、連続パルスレーザビームを集光させた部位を光誘起による変化をさせて、材料内部の複数の所望の位置に一括して異質相を形成させることにより、材料内部に複雑な二次元形状をした、または三次元形状をした異質相を一括して形成できることを見出した。
さらに、該方法においてパルス幅がフェムト秒レベルの超短パルスレーザを用いることで、該異質相の位置精度、形状精度を向上させるだけでなく、製造スループットを向上させられることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
したがって、本発明は、パルスレーザビームの波面の複数の領域を、各々独立して位相および/または振幅を制御することにより、該パルスレーザビームを材料内部の複数の所望の位置に集光させて、該材料内部のパルスレーザビームが集光された部位に光誘起による変化をさせて、該材料内部の複数の所望の位置に一括して異質相を形成させることを特徴とする材料内部に異質相を形成する方法を提供する。
本発明の方法において、前記材料内部に形成される複数の異質相は、該材料内部において互いに二次元的位置関係にあってもよい。
本発明の方法において、前記材料内部に形成される複数の異質相は、該材料内部において互いに三次元的位置関係にあってもよい。
本発明の方法において、前記複数の異質相は、前記材料内部において連続して存在し、二次元形状または三次元形状をなしてもよい。
【0013】
本発明の方法において、前記材料中の所望の位置に、下記式で表される空間パワー密度が1010W/cm3 〜1024W/cm3 であるパルスレーザビームを集光して、前記材料中の所望の位置に異質相を形成することが好ましい。
空間パワー密度(W/cm3 )=特定の微小体積に投入されるエネルギー(J)÷照射時間(秒)÷前記微小体積(cm3 )
【0014】
本発明の方法において、パルスレーザビームは、パルス幅が10フェムト(10×10-15 )秒以上10ピコ(10×10-12 )秒以下の超短パルスレーザであることが好ましい。
【0015】
本発明の方法において、前記材料は、パルスレーザビームが入射する面から、前記パルスレーザビームを集光させる部位までの該パルスレーザビームの透過率Tが集光倍率Mとの関係において、下記式(1)および(2)を満たす材料であることが好ましい。
T≧100/M2 ・・・(1)
T≧(Ith×2×10-4)/(I0 ×M2 )・・・(2)
M:(π/4)1/2 ×(材料入射時のパルスレーザビームの直径)/(材料の集光体積の三乗根)
Ith:材料中の集光させる部位に異質相を形成するのに必要なパルスレーザビームの空間パワー密度(W/cm3 )
I0 :材料にパルスレーザビームが入射する面におけるパルスレーザビームのパワー密度(W/cm2 )
【0016】
本発明の方法において、前記材料は、波長0.1〜11μmのパルスレーザビームに対して、前記透過率Tが、前記式(1)および(2)を満たす材料であることが好ましい。
本発明の方法において、前記材料はガラスであることが好ましい。
【0017】
本発明の方法において、前記材料中に形成される異質相は、波長0.1〜2μmの光に対する屈折率が、該材料の他の部分での屈折率に対して0.1%以上異なる相であることが好ましい。
本発明の方法において、前記材料中に形成される異質相は、該材料の補強部をなすことが好ましい。
【0018】
本発明の方法において、前記パルスレーザビームの位相および/または振幅の制御は、回折光学素子、マイクロレンズアレイ、高次曲面ミラー、シリンドリカルレンズ、高次曲面レンズからなる群から選択される少なくとも1つにより行ってもよい。
【0019】
本発明の方法において、前記パルスレーザビームの集光において、前記パルスレーザビームの色収差補正を行うことが好ましい。
本発明の方法において、前記パルスレーザビームの集光の際に生じる、該パルスレーザビームのパルス時間幅の変化を、前記材料に入射する前に予め補正することが好ましい。
【0020】
本発明において、前記材料内部の所望の位置に集光させたパルスレーザビームを、さらに前記材料に対して相対移動させてもよい。
【0021】
本発明は、また上記した本発明の方法により材料内部の複数の所望の部位に異質相を形成する工程と、材料内部の所望の1つの位置にパルスレーザビームを集光させて、該パルスレーザビームの集光させた部分を前記材料に対して相対移動させることにより、該材料内部に光誘起変化による異質相を形成する工程と、を含むことを特徴とする材料内部に異質相を形成する方法を提供する。
【0022】
本発明は、また本発明の方法により作製される内部に異質相を有する構造物を提供する。
本発明は、また本発明の構造物を有し、該構造物は、光機能構造をなす光部品を提供する。
前記光部品は、方向性結合器構造、Y分岐導波路構造、マッハツェンダ干渉器構造およびリング共振器構造からなる群から選択される少なくとも1つを光機能構造として有することが好ましい。
【0023】
本発明において、内部に異質相を有する構造物は、特に、光機能構造をなし、該構造物で形成されるものは、光部品である。
該構造物は、例えば、方向性結合器構造、Y分岐導波路構造をなすものや、フォトニック結晶などである。
該部品は、例えば、光導波路である。
なお、フォトニック結晶は、内部に欠陥部分を設けることにより光導波路となす。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は係る実施形態に限定されるものではない。
本発明の方法では、パルスレーザビームを材料内部に照射して、パルスレーザビームが照射された部位を光誘起により変化させる際に、パルスレーザビームの複数の領域をその領域ごとに各々独立して位相および/または振幅を制御することで、レーザビームの各領域の発散角と進行方向を変化させて、パルスレーザビームの各領域を材料内部の複数の異なる部位に一括して照射させる。これにより、各部位の集光点の集合体として、すなわち複数の集光点の集合体として、材料内部に集光形状が形成される。
【0025】
たとえば、図1Dに示すような材料内部に直線形状をした高屈折領域を形成する場合を例にとると、本発明の方法では、パルスレーザビームの波面の複数の領域を、各々独立して位相および/または振幅を制御して、レーザビームの各領域の発散角および進行方向を変化させることで、パルスレーザビームの複数の領域を、図1Dに示す直線形状をなすように複数の異なる部位に一括して照射させる。
レーザビームを照射させた部位は、光照射により変化して異質相、具体的にはたとえば高屈折領域を形成するので、図1Eおよび図1Fに示すように偏心量および外径変動量が少ない直線形状をした高屈折領域を一括して形成することができる。
【0026】
レーザービームの集光点を走査させることで、材料内部に異質相を形成させる従来の方法では、1パルスにより生じる楕円形状をした異質相の集合体として異質相が形成されるため、現行のパワー密度の高い超短パルスレーザ装置を使用した場合に、パルスごとの強度ゆらぎが多く、また、ポインティングスタビリティも低いため、形成される異質相(図1A)は、図1Bおよび1Cに示すように、位置精度が悪く、形状精度も悪いものであった。
【0027】
これに対して本発明の方法では、レーザビームの集光点を走査させることなく、パルスレーザビームを材料内部の複数の所望の部位に一括して集光させるため、パルスレーザビームの複数の集光点の集合体としての集光形状を一括して形成することができる。この結果、材料内部のパルスレーザビームを照射させた部位が光誘起により変化することで所望の形状をした異質相を一括して形成することができる。本発明の方法では、材料内部に異質相を一括して形成するため、レーザビームの集光点を走査させる従来の方法に比べて、位置精度および形状精度が高い異質相を得ることができる。
【0028】
本発明の方法では、好ましくは集光形状をなす各集光点に複数のパルスレーザビームを照射して異質相を形成するため、上記した現行の超短パルスレーザ装置を使用した場合に問題となるパルスごとのレーザ光の強度およびポインティングのゆらぎの影響が平均化される。これにより、パルスごとのレーザ光のゆらぎによる影響が低減されて、高い位置精度および形状精度で異質相を得ることができる。
本発明の方法によれば、異質相が一括して形成されるため、製造スループットが向上する。さらにまた、レーザビームの集光点を走査させるための高精度な移動機構が不要であるため、装置の簡素化が可能である。
【0029】
図1Dでは、形成される異質相の一例として直線形状をした異質相を示したが、本発明の方法で形成される異質相の形状はこれに限定されない。すなわち、曲線または分岐を持ったより複雑な二次元形状であってもよく、さらに三次元形状であってもよい。さらに、異質相の形状は連続した単一の形状に限定されず、点状の複数の異質相が、材料内部に二次元的または三次元的に分散していてもよい。所望の形状を高い位置精度および形状精度で一括して形成することができる本発明の方法は、このような二次元形状または三次元形状をした異質相を形成するのに特に好ましい。
【0030】
また、図1Dでは形成される異質相として、高屈折領域を示したが、本発明の方法により形成される異質相は、レーザビームの照射によって生じる光誘起による変化で形成される異質相を広く含む。光誘起による変化としては、ガラス材料中に高屈折領域を形成すると考えられている光の高電磁場によりガラスの分子構造が変化すること以外に、レーザ光の集光による熱や光化学反応や物質の酸化還元、非線形効果などの種々の光効果により、結晶生成や高密度化、気泡生成など、いわゆる光誘起による変化を広く含む。
【0031】
図2AおよびBは、本発明の方法を用いて材料内部の所望の形状をした異質相を形成するレーザ加工装置の代表的な形態の模式図である。
図2Aに示すレーザ加工装置101は、大まかには、所望の強度のパルスレーザビームをある広さをもった光束1として発射するレーザ光源(図示していない)と、レーザビームの複数の領域について、各々独立して位相および/または振幅を制御する波面制御素子5と、ある広さをもつ光束を、材料11内部の微小領域に集光させる集光機能素子8とで構成される。このような構成により、パルスレーザビーム1を材料11内部の複数の所望の部位に一括して照射することができる。レーザビームが照射された部位は、光誘起により変化するので、材料内部の所望の部位に複数の異質相10を一括して形成することができる。図2Aでは、複数の異質相10は、材料内部において連続して存在し、連続する三次元形状をなしている。
【0032】
レーザ光源は、材料内部、特にはガラス材料等の透明材料の内部に、パルスレーザビームを集光させて光誘起による変化を生じさせるため、パワー密度の高いパルスレーザビームを放出可能であることが好ましく、したがって、パルス幅が短い超短パルスレーザ、より具体的には集光点でのパルス幅が10フェムト(10×10-15 )秒以上10ピコ(10×10-12 )秒以下となる超短パルスレーザであることが好ましい。特に、異質相を形成させる材料がガラス材料である場合、パルス幅が15フェムト秒以上300フェムト秒以下であることがより好ましい。パルス幅が上記範囲であれば、パルスレーザの1パルスあたりのエネルギーを小さくできるため、エネルギー的に有利であり、また材料中の異質相を形成させる部位以外の部位にレーザビームの照射によるダメージが生じるおそれがほとんどない。
【0033】
レーザ発生装置から放出されたレーザビームの波面は、波面制御素子5で、複数の領域が、各々独立して位相および/または振幅が制御される。レーザビーム3は、回折光学素子等、詳しくは後に示す手段により、その複数の領域が各々独立して位相および/または振幅が変化して、発散角と進行方向に変調を与える。ここで位相および/または振幅の変化の自由度を大きくするために、レーザビームは、ビームスプリッタで複数ビームに分離したり、ビームエキスパンダで拡幅してもよい。4は位相および/または振幅を制御する前のレーザビームの波面を、6は波面制御素子5により位相および/または振幅を制御した後のレーザビーム波面を、7は6に対応する光束を模式的に示したものである。
【0034】
波面制御素子5は、レーザビームの波面の複数の領域を、各々独立して位相および/または振幅を制御することができる限り特に限定されない。具体的には、例えば通常のレンズ、プリズム、反射ミラー、集光ミラーといった通常の光学制御系、レンズアレイ、ミラーアレイ、プリズムアレイなどの集積光学素子、またはシリンドリカルレンズ、複雑な集光形状が得られる高次曲面レンズ、高次曲面ミラーといったより複雑な光学制御系等であってもよく、または2値位相格子、多値位相格子、連続位相格子や、グレーティング型、位相マスク型、液晶変調器型などの振幅変調、位相変調機能をもつ回折光学素子、さらにはコンピュータにより、材料内部に形成する異質相の二次元形状または三次元形状の断面像から位相型ホログラムまたはキノフォームを計算して、上記各種光学制御系または光学素子を用いてホログラムまたはキノフォームとして集光形状を形成してもよい。
【0035】
波面制御素子5は、そのミラーの反射面形状またはレンズの表面形状や、回折光学素子の位相および/または振幅変調の機能が可変であれば特に好ましい。このような形状または機能が可変の波面制御素子5としては、例えば駆動装置を備えた位相変調型および/または振幅位相同時変調型の液晶空間変調器や、面形状可変ミラー(デフォーマラブルミラー)、電気光学効果や音響光学効果、磁気光学効果を用いた可変ミラーや可変回折レンズ、可変グレーティング、駆動装置付のマイクロミラーアレイなどがある。これらの機能可変の素子を使うことにより、製造時に異質相の形状の微細な修正を容易に行うことができ、また、形成する異質相のパターンごとに、波面制御素子を用意する必要がなくなるので好ましい。
【0036】
波面制御素子5により、その複数の領域が各々独立して位相および/または振幅が制御されたレーザビームは、集光機能素子8により材料11内部の所望の位置に集光する。レーザビームは、複数の領域がそれぞれ独立して位相および/または振幅が制御されているため、個々の領域に対応するビームは、それぞれ材料11内部の異なる部位に集光点10を形成する。9は集光される各光束を模式的に示したものである。そしてこのような集光点の集合体として全体の集光形状10が形成される。このようにして、集光点を材料内部で走査させることなく、材料内部に任意の形状をした集光形状が一度に形成されるため、材料内部のレーザビームが集光させた部位が光誘起により変化することで所望の形状をした異質相を一括して形成することができる。
【0037】
なお、波面制御素子5と集光機能素子8の順序は、図2Aに示した例のように、波面制御素子5を集光機能素子8に対してレーザビームの上流側に配置することに限定されず、図2Bに示すように、波面制御素子5と集光機能素子8の順序を入れ替えることも可能である。
【0038】
集光機能素子8は、ある広さをもつ光束を、材料内部の所望の微小領域に集光させることができる限り特に限定されず、例えば通常のレンズ、プリズム、反射ミラー、集光ミラー等の集光制御系であってよい。
また、波面制御素子5と集光機能素子8は、別々の素子として存在するのではなく、両方の機能を併せ持つものであってもよい。レーザビームの出射方向を独立して制御可能なレンズ類、例えばレンズアレイ、シリンドリカルレンズ、高次曲面レンズ等であれば、波面制御素子5と集光機能素子8の機能を1つのレンズで実現することができる。
【0039】
波面制御素子5と集光機能素子8の組み合わせは、材料内部に所望の集光形状を形成できる限り特に限定されない。また、集光機能素子8は、所望の集光形状を得るのに充分な有効断面積があればその大きさは特に限定されない。
【0040】
本発明の方法を用いたレーザ加工装置101は、レーザ光源、波面制御素子5および集光機能素子8以外の他の要素を含んでもよい。たとえば、パルスの時間幅が300フェムト秒以下のパルスレーザビームを照射するレーザ光源を使用する場合、スペクトルの広がりが顕著になり、色収差によって焦点形状が歪む恐れがある。また、波面制御素子5および集光機能素子8を構成する材料での材料分散もしくは構造分散またはレーザビームで加工される材料での材料分散により、レーザビームのパルス幅が広がる恐れがある。これらによってレーザビームのパルス幅が広がると、レーザビームのパワー密度が低下して、集光した部分で異質相が形成できなくなるおそれがある。そのため、パルス幅が300フェムト秒以下のパルスレーザを照射するレーザ光源を用いる場合は、1)レーザの波長内において、色収差が生じないようにするための色収差補正機構や、2)光学制御材料内部(波面制御素子5および集光機能素子8を構成するレンズ、ミラー等の内部)および加工材料内部におけるレーザビームのパルス時間幅の変化(材料分散により生じるパルス時間幅の変化)を補正する(逆の波長分散を発生させて相殺補正する)分散補正機構2を必要に応じて設けて、レーザビームの色収差を補正し、および/または材料分散等によるパルス幅の変化を材料に入射する前に予め補正することが必要がある。
【0041】
また、レーザ加工装置101は、アクロマート、アポクロマート等の色収差を補正する色消し構造を有することが好ましい。さらにまた、レーザ加工装置101は、分散補正機構としてプリズムペア、グレーティングペア等の任意の波長分散を発生させるための分散発生装置を具備することが好ましい。
【0042】
本発明では、パルスレーザビームの照射により材料内部に異質相を形成するため、使用するパルスレーザビームのパワー密度が重要になる。
レーザビームのパワー密度は通常、単位面積当り、単位時間にどれだけのエネルギーが投入されたかを示す量で、連続発振レーザビームを一点に集光する場合は下記式で表される。
パワー密度(W/cm2 )=平均パワー(W)/集光面積(cm2 )
これに対して、パルスレーザビームを1点に集光する場合は下記式で表される。
パワー密度(W/cm2 )=1パルスあたりのエネルギー(J)/パルス幅(秒)/集光面積(cm2 )
【0043】
本発明の場合、材料内部における集光点の空間分布、特に三次元形状をした集光形状の空間分布が問題となるため、空間パワー密度という概念を用いる。図3は、空間パワー密度の概念を説明するための図であり、集光機能素子8とレーザビームの集光形状12の関係を示している。なお、図3において、集光機能素子8は、マイクロレンズアレイで構成されており、波面制御素子を兼ねている。図3に示すように、集光機能素子8により材料11内部に集光照射させるときの集光形状12を微小体積13に分割し、そのおのおのの微小体積13に集光されるレーザビーム14を考えると。空間パワー密度は以下の式で定義される。
空間パワー密度(W/cm3 )=特定の微小体積13に投入されるエネルギー(J)/照射時間(秒)/特定の微小体積13(cm3 )
【0044】
本発明の方法において、材料内部の集光される部位におけるレーザビームの空間パワー密度は1010W/cm3 以上1024W/cm3 以下であることが好ましい。異質相を形成させる材料がガラス材料である場合、ガラスの種類、光誘起変化の種類にもよるが、レーザビームの空間パワー密度は1014W/cm3 以上1020W/cm3 以下であることが特に好ましい。空間パワー密度が上記の範囲であると、形成される異質相の位置精度および形状精度が高く、かつ異質相を形成するのにレーザビームのパワー密度が充分である。なお、材料が異質相を形成するのに1024W/cm3 超の空間パワー密度が必要な場合、大きなレーザパルスエネルギーが必要となり異質相の大体積化が困難である。
【0045】
好適な空間パワー密度とパルスレーザのエネルギーとの関係を具体的に示すと、例えば空間パワー密度が1018W/cm3 の場合、1パルスのエネルギー180μJ、パルス幅100フェムト秒のパルスレーザを用いると、断面積9μm2 、長さ200μmの領域に集光させることができる。
【0046】
また、本発明の方法では、レーザパルスの繰り返し周波数(1秒間当たりのレーザビームのパルス回数)の制約も大幅に緩和される。従来の方法では平滑な界面をもつ異質相を形成する際に、レーザパルスのゆらぎによる影響を平均化により低減するために、できるだけ多くのレーザパルスを照射しており、具体的には数kHz以上の繰り返し周波数を必要としたが、本発明の方法では、前記したように形成される異質相の位置精度および形状精度が向上されているため、原理上は1パルスのみでも材料内部に異質相を形成可能である。ただし、製造スループット向上のため、繰り返し周波数は、好ましくは5Hz以上である。繰り返し周波数の上限は、集光される部位での1パルスによる空間パワー密度が確保できれば特に制限されない。実用上は数Hzから数10MHzの超短パルスレーザが使用できる。但し、位置精度および形状精度向上のため、数パルス〜数1000パルスで、1つの二次元形状または三次元形状をなす1群の異質相を形成することが好ましい。繰り返し周波数が上記の範囲であれば、各集光される部位に対して、複数パルスのレーザビームが照射されるため、異質相を形成する際のレーザビームの強度およびポインティングのゆらぎが平均化され、その影響が低減される。
【0047】
本発明の方法では、二次元形状または三次元形状をした異質相を材料内部に一括して形成するために、従来のレーザビームの集光点を走査して異質相を形成する方法に比べて位置精度および形状精度が高い異質相を形成することができる。また、各集光される部位に対して、複数パルスのレーザビームが照射されるため、レーザビームの強度およびポインティングのゆらぎの影響が低減されて、位置精度および形状精度が高い異質相を形成することができる。そのため、異質相として高屈折率領域を形成して、図4に示すような高い位置精度と形状精度が要求される光部品の回路部分、例えば図4Aに示す方向性結合器17の光結合部15a、15bや図4Bに示すY分岐導波路18のY分岐部15cなどを作製するのに本発明の方法を用いれば、より安定した光特性を有する光部品を得ることが可能になる。
【0048】
本発明の別の一つの利点は、二次元形状または三次元形状をなす一群の異質相を一括して形成するため、レーザビームの集光点を材料中で走査させて異質相を形成する従来の方法よりも、これらの形状を速やかに形成することができ、製造スループットを向上させることができることである。そのため、透明材料の内部に、以下の効果の少なくとも1つを有する異質相を形成し、それにより材料内部に補強部を形成する方法としても特に有望である。
・内部からのクラック発生を低減する効果
・発生したクラックの進行方向を変える効果
・発生したクラックの伸展を抑制する効果
【0049】
本発明の方法では、材料内部に補強部を形成する場合等で、ゆらぎ等による影響を考慮する必要がない場合や、光導波路でもゆらぎ等の影響を考慮する必要がない場合には、材料内部に一括して形成されるレーザービームの複数の集光点をさらに走査して、材料に対して相対移動させてもよい。一括して形成されるレーザビームの集光点を走査させれば、材料内部により多くの異質相を一度に形成することができ、また、より広い範囲に異質相を形成することができる。これにより製造スループットをさらに向上させることができる。
【0050】
また、本発明の方法と、レーザビームの集光点を走査して、該集光点を材料に対して相対移動させる従来の方法とを併用することも有効である。例えば、高い位置精度および形状精度の要求される図4に示すような光部品の回路部分を形成する場合に、例えば図4Aに示す方向性結合器17の光結合部15a、15bや、図4Bに示すY分岐導波路18のY分岐部15cなどの複雑な形状をした回路部分の形成には本発明による方法を用いて、単純な直線または曲線の形状をした回路部分には、集光点を走査させる従来の方法を用いることで、所望の光特性を維持したまま製造装置を簡素化できるだけでなく、光部品設計・製造の自由度を大幅に増加させることができる。
【0051】
本発明によれば、上記した手順でレーザビームを材料内部の複数の所望の部位に一括して集光させることにより、内部の所望の位置に、所望の形状をした異質相を有する構造物が得られる。このような構造物の材料は、使用するレーザの波長に対する線形吸収係数(レーザビームのパワー密度(レーザパワー/照射面積)が充分小さいときの吸収係数)が小さいことが必要であり、具体的には、材料の、パルスレーザビームが入射する面からパルスレーザビームを集光させる点までのパルスレーザビームの透過率Tが集光倍率Mとの関係において下記式(1)および(2)を満たすことが好ましい。
T≧100/M2 ・・・(1)
T≧(Ith×2×10-4)/(I0 ×M2 )・・・(2)
M:(π/4)1/2 ×(材料入射時のパルスレーザビームの直径(cm))/(材料の集光体積(cm3) の三乗根)
Ith:材料中の集光点に異質相を形成するのに必要なパルスレーザビームの空間パワー密度(W/cm3 )
I0 :材料にパルスレーザビームが入射する面におけるパルスレーザビームのパワー密度(W/cm2 )
【0052】
透過率Tが上記の範囲であれば、構造物内部に形成される異質相の位置精度および形状精度が高く、また集光点におけるレーザビームのパワー密度が材料に光誘起による変化を生じさせるのに充分である。したがって、内部の所望の位置に、所望の形状、例えば二次元形状または三次元形状をした異質相を有する構造物を好適に得ることができる。また、透過率が上記の範囲であれば、レーザビームのエネルギー効率も優れていて、好ましい。
【0053】
また、構造物の材料は、使用するレーザビームに対して透過性を有することが必要である。具体的には、加工用途で通常使用される波長0.1〜11μmのレーザビームに対して、前記透過率Tが、前記式(1)および(2)を満たす材料である。したがって、例えばガラス、ポリマーや透明結晶体だけでなく、波長が0.8〜2.5μm程度の近赤外線領域のレーザビームを用いる場合には、半導体材料も該レーザビームに対して透過性を有するため加工が可能である。その中で、ガラス材料は、現在実用的に最も使いやすい超短パルスレーザである1)チタンサファイアレーザ、2)YAGレーザ、または、3)Ndドープ、Ybドープ若しくはErドープのファイバレーザなどに対して高い透過性を有し、また機械的、熱的安定性を備え、希土類や半導体などの様々な機能性元素を含有させることができるため、特に好ましい。使用されるガラス材料としては例えば酸化物ガラス(石英ガラス、シリケート系ガラス、ボロシリケート系ガラス、リン酸塩系ガラス、アルミニウムシリケート系ガラス等)、ハロゲン化物ガラス、硫化物ガラスまたはカルコゲナイドガラスが挙げられる。
【0054】
このような構造物内部に形成される異質相として、好ましい態様の1つは、材料の他の部分に比べて屈折率が異なる異質相である。
構造物が単相のガラス材料製であれば、レーザビームの集光照射によって生じる高密度化などの光誘起反応により、もとのガラスの屈折率に対して屈折率差が数%程度生じた異質相を形成することが可能である。また、構造物の内部にフォトニック結晶を形成させるには、より屈折率差が大きい領域を形成しうるガラス材料が必要であり、そのようなガラス材料として化合物半導体ガラスが例示される。このガラス材料では、屈折率1.4〜2.2程度のガラス材料中に、パルス幅がフェムト秒レベルの超短パルスレーザを照射することで、屈折率2.5〜3.5程度の化合物半導体を形成可能であり、したがって屈折率差が数10%以上の異質相を形成することが可能である。本発明によれば、このような屈折率差が大きな異質相を、構造物内部の所望の位置に、所望の形状で形成することができるため光機能構造を有する光部品を作製するのに好適である。
【0055】
本発明では、複雑な光機能構造を有する光フィルタや合分岐、合分波素子等の光部品が作製可能である。図4に、光導波路の回路部分による光部品の基本構造の一例を示す。図4Aは方向性結合器構造17を、図4BはY分岐導波路構造18を、図4Cはマッハツェンダ干渉器構造19を、図4Dはリング共振器構造20を各々示している。これらは光導波路の回路部分15で光部品の基本構造を形成している。これらの構造は、安定して機能するために、形状、寸法、相対的位置の高い精度が要求される。例えば、図4Aに示す方向性結合器構造17および図4Dに示すリング共振器構造20では、数μm幅の光導波路の回路部分15と同じく数μm間隔の回路部分のギャップ16を高い精度で形成することが要求される。本発明によれば、これらの構造を一括して作製することで、光特性の安定した光部品を作製することができ、しかもこのような光部品を高い製造スループットで作製することができる。さらに、該光部品に、非線形光学効果(入射する光の強度に応じて、光応答が非線形的に変化する現象)を利用する機構や屈折率変調機構(光部品の一部の屈折率を変えて部品の特性を変化させる機構。局部的に加熱したり通電したり、音波を発生したりすることで行う。)を設けることにより、光を能動的に制御する光部品を作製することが可能で、例えば、全光スイッチ、光演算素子、光双安定素子が実現されるため、図4に示すような光部品の基本構造を光特性的に安定したものとして製造することは光部品の開発において重要である。
【0056】
構造物の内部に形成される異質相の別の1つの好ましい形態は、少なくとも以下の記載の効果の少なくとも1つを有する異質相である。
・内部からのクラック発生を低減する効果
・発生したクラックの進行方向を変える効果
・発生したクラックの伸展を抑制する効果
このような異質相は、材料の強度を向上させる補強部をなす。このような内部に補強部を有する材料、特に透明材料は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ用の薄板ガラス基板に代表される情報処理分野、窓ガラスなどの建築分野、自動車用ガラスに代表される輸送機器分野、太陽電池用のガラス基板に代表されるエネルギー分野等で好ましく使用される。本発明の方法によれば、材料を所望の形状に加工した後で、材料の内部の所望の位置に所望の形状をした補強部をレーザービームの照射により一括して形成することができるため、材料を加工する前に、予め補強部を設けたりする手順を必要とせず、また、従来のレーザービームを照射して補強部を形成する方法のように、集光点を走査させる手順を必要とせず、材料の製造スループットが向上されている。材料の用途によって要求される強度(向き、特性)は、通常異なっているが、本発明によれば、材料内部の所望の位置に所望の形状をした補強部を容易に形成することができるため、このような要求される強度特性に応じて、最も適した位置および形状の補強部を形成することができる。さらに、また本発明によれば、レーザビームの照射による材料の光誘起による変化で補強部を形成するため、材料に外観上変化を生じることがない。これは強度に優れた透明材料として好ましい特性である。
【0057】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。ただし、これらの実施例は、本発明の理解を容易にするため、例示を目的とするものであり、本発明は係る実施例に限定されるものではない。
実施例1
図5Aは、本発明の方法を用いたレーザ加工装置の1つの形態を表した模式図である。図5Aのレーザ加工装置は、レーザ光源(図示していない)から発射されたパルスレーザビーム21(固体レーザ励起のチタン−サファイアレーザから発振される波長800nm、パルス幅100フェムト秒、1パルスのエネルギー180μJ、繰り返し周波数1kHzのパルスレーザビーム)に、分散発生機能を有するグレーティングペアにより構成させる分散補正機構23により、図中の光学系を構成する全ての光学部品、およびガラス材料により発生する分散と反対の符号の分散を付与して、集光点におけるパルス幅が発射時の所望のパルス幅から変化しないように補正する。分散補正機構23により補正されたパルスレーザビーム21は、ビームエキスパンダ30で拡幅したのち、波面制御素子に位相型の回折光学素子33を使用して、レーザビームの波面の複数の領域を独立して個別に位相制御する。その後集光機能素子に、色収差補正用のアポクロマートレンズ25を用いて、レーザビームを集光して、材料11(前記パルスレーザビームの透過率Tが99%以上で、屈折率が1.46の石英ガラス)内部に三次元形状をした集光形状10を形成する。三次元形状をした集光形状10は、複数の集光点の集合体として連続的に形成される。そして光励起による変化により集光形状と同形状をした、材料11の他の部分との屈折率差(該レーザパルスビームに対する屈折率において)が1%程度の異質層を一括して形成する。
【0058】
図5Bは、本発明の方法を用いたレーザ加工装置の別の1つの形態を表した模式図である。図5Bの装置では、波面制御素子としてシリンドリカルレンズ26を用いて位相制御を行う。集光形状27が比較的単純な形状であれば、このような機構で充分である。これにより、光励起による変化で集光形状と同形状の異質層を一括して形成する。
図5Cは、本発明の方法を用いたレーザ加工装置のさらに別の1つの形態を表した模式図である。図5Cの装置では、回折光学素子33およびシリンドリカルレンズ26の代わりにビームの波面の制御を高次曲面ミラー28で位相制御を行う。これにより、光励起による変化で集光形状と同形状の異質層を一括して形成する。
【0059】
実施例2
図6は、本発明の方法を用いたレーザ加工装置の別の1つの形態を表した模式図である。図6の装置では、パルスレーザビーム21をビームスプリッタ22で複数のビームに分離した後、それぞれのビームについて、マイクロレンズアレイ29により、ビームの発散角と出射方向を独立して個別に調整する。図6の装置では、位相制御と集光機能がマイクロレンズアレイ29に集約される。このような機能集約により装置が大幅に簡素化される。三次元形状をした集光形状10は、複数の集光点の集合として材料11の内部に連続的に形成される。図6の装置では、ビームの分割数を増やすことにより、より複雑な形状が得られる。実施例1と同じパルスレーザビームおよび石英ガラスを用いれば、光励起による変化により集光形状と同形状の異質層を一括して形成する。
【0060】
実施例3
図7Aは、本発明の方法を用いたレーザ加工装置の別の1つの形態を表した模式図である。図6に示したレーザ加工装置をさらに機能集約した形で、パルスレーザビーム21をビームエキスパンダー30でビーム径を拡大したのちに、マイクロレンズアレイ31で位相制御を行い、材料11内部に所望の3次元的位置関係に集光形状10に集光させる。ビームエキスパンダー30は省略することも可能であるが、マイクロレンズアレイ31において、各マイクロレンズの寸法が小さくなることを考慮して、製造コストに見合った光学系にすればよい。
【0061】
図7Bに、図7Aの装置を用いて、フォトニック結晶を製造する方法の概念図を示す。フォトニック結晶とは、透明材料からなる媒質中に光の波長程度の周期構造をもつ高屈折率領域を形成し、その構造により光制御を行う材料である。フォトニック結晶は、媒質に比べて屈折率が高い異質相を周期的に形成することにより実現される。その周期は求める特性にもよるが、一般に波長の半分程度であることが知られているので、波長1.5μmの光の利用を考えると、1μmレベルの周期性が必要になる。そこで、図7Bに示すように、マイクロレンズアレイ31の各マイクロレンズでレーザビームの集光点32を径1μm以下に絞り、各集光点32を互いの間隔が1μm程度になるように、材料11内部に周期的に配列させればフォトニック結晶の実現が可能である。フォトニックバンドギャップを導波原理とする光導波路の回路部分を形成するため、周期的に形成されたフォトニック結晶中に、該周期を破る欠陥を導入する場合は、欠陥に該当する部分にはレーザビームが集光しないようにすればよい。ここで固体レーザ励起のチタン−サファイアレーザから発振された波長800nm、パルス幅100フェムト秒、繰り返し周波数250kHz、空間パワー密度1016W/cm3 のパルスレーザビームと、該パルスレーザビームの透過率Tが96%の化合物半導体ガラスを用いることで、材料の屈折率1.5に対し、屈折率2.5の異質相が得られ、材料の他の部分との屈折率差が67%の高屈折領域を形成することができる。このようにして、パルスレーザビームの波面の複数の領域を各々独立して位相制御を行うことにより、光励起による変化で一括してフォトニック結晶を形成することが可能である。
【0062】
実施例4
図8は、本発明の方法を用いたレーザ加工装置の別の1つの形態を表した模式図である。図8に示す装置では、図7Aに示した装置よりもさらに機能集積されており、振幅制御および集光機能がすべて振幅型の回折光学素子45に集約されている。三次元形状をした集光形状10は、複数の集光点の集合として材料11の内部に連続的に形成される。実施例1と同じパルスレーザビームおよび石英ガラスを用いれば、光励起による変化により集光形状と同形状の異質層を一括して形成する。
【0063】
実施例5
図9Aおよび図9Bは、本発明の方法を用いたレーザ加工装置の別の1つの形態を表した模式図である。図9Aの装置では、フェムト秒パルスレーザから発射されたレーザビーム21のビーム径をビームエキスパンダー30で広げた後、位相制御を行う集光レンズ25で集光する。集光レンズ25と、集光形状10の間には、ビーム発散角、出射角調整を行うための振幅型回折光学素子46が配置されており、位相および振幅制御により集光形状10を所望の形状に制御する。図9Bに示す装置では、回折光学素子46の代わりに、位相制御を行う高次曲面レンズ35を用いてビーム発散角、出射角の調整を行う。三次元形状をした集光形状10は、複数の集光点の集合として材料11の内部に連続的に形成される。実施例1と同じパルスレーザビームおよび石英ガラスを用いれば、光励起による変化により集光形状と同形状の異質層を一括して形成する。
【0064】
実施例6
図5Aに示す例において、異質相の形状が、図4に示す光部品の基本構造になるように集光する回折光学素子またはマイクロレンズアレイ、マイクロミラーアレイ、高次曲面レンズを用意し、所望の位置に所望のパターンを形成することを繰り返すことで、複雑な立体構成の三次元光導波路も容易に作製できる。図10A〜Cはそのような複雑な立体構成をした三次元光導波路の線状の回路部分を形成する手順の一例を示している。ここで、固体レーザ励起のチタン−サファイアレーザから発振される波長800nm、パルス幅100フェムト秒、1パルスのエネルギー180μJ、繰り返し周波数1kHzのパルスレーザビームを用いて、材料入射時のビームの直径を1mm、材料の集光体積を9000μm3 、集光される部位の空間パワー密度を2×1017W/cm3 、材料にレーザが入射する面におけるレーザパワー密度I0 を2.3×1011W/cm2 として集光倍率43で集光照射する場合、例えばガラス材料として、材料中の集光させる部位に異質相を形成するのに必要なレーザの空間パワー密度Ithが1015W/cm3 、レーザビームの透過率Tが99%以上の石英ガラスを用いれば、照射の結果、材料の屈折率1.46に対し、屈折率差1%程度の異質相(屈折率1.48)が得られる。
【0065】
したがって、パルスレーザビームの波面の複数の領域を各々独立して位相制御を行い、光励起による変化で一括して光導波路の線状の回路部分を形成することが可能である。図10Aに示すように、材料11中の面Aにまず方向性結合器構造36を形成し、次に図10Bに示すように、面BにY分岐導波路構造37を形成し、最後に図10Cに示すように、面Cにリング共振器構造38を形成することで、複雑な立体構成をした三次元光導波路が作製できる。
【0066】
実施例7
図11AおよびBは、三次元光導波路の線状の回路部分を形成する手順の別の1例を示す。図11Aに示すように、図5Bに示す装置を用いて、パルスレーザビームの波面の複数の領域を各々独立して位相制御を行い、光励起による変化で一括して面Aおよび面Bの2箇所に直線状の異質相39を形成したのち、図5Bの装置からシリンドリカルレンズ26を取り外して、レーザビームを点状に集光できるようにし、図11Bに示すようにA点からB点まで集光点を走査させ、異質相40を形成させることで三次元光導波路の線状の回路部分を形成する。本実施例7において、固体レーザ励起のチタン−サファイアレーザから発振される波長800nm、パルス幅100フェムト秒、1パルスのエネルギー90μJ、繰り返し周波数1kHzのパルスレーザビームを用いて、材料入射時のレーザビームの直径を2mm、材料の集光体積を90000μm3 、材料にレーザビームが入射する面におけるレーザビームのパワー密度I0 を3×1010W/cm2 、材料中でレーザビームが集光される部位でのレーザビームの空間パワー密度を1×1016W/cm3 、として集光倍率40で集光照射する場合に、例えばガラス材料として、材料中の集光させる部位に異質相を形成するのに必要なレーザビームの空間パワー密度Ithが1014W/cm3 で、該パルスレーザビームの透過率Tが98%以上のボロシリケート系ガラスBK7を用いれば、照射の結果、材料の屈折率1.52に対し、屈折率差1%程度の異質相が得られ、光導波路の線状の回路部分の形成が可能である。
【0067】
ゆらぎ等の影響を考慮する必要がない光導波路の場合には、本発明の方法と従来のレーザビームの集光点を走査させる方法とを組み合わせることにより、本発明の方法または従来のレーザビームの集光点を走査させる方法をそれぞれ単独で使用する場合に比べて、より少ない部品で、しかも短時間でこのような三次元光導波路を製作できる。
【0068】
参考例
図12Aは、フェムト秒レーザーの集光照射により、レーザビームの透過率Tが96%のソーダライムシリケート系ガラス内部に線状の異質相42を50μmピッチの網目状に形成することで補強部を形成した板ガラス41である。板ガラスの寸法は(50mm×6.5mm、厚み1mm)であり、ガラス材料の入射面から深さ500μmの位置に、レーザビームを集光レンズで集光して約25μmのスポットを集光させた。
レーザビームは、Nd−YAGレーザ励起のTiサファイアレーザから発振されたパルス幅100フェムト秒、繰返し周期1kHz、波長800nmのフェムト秒レーザ光を使用し、光量減少フィルタ(NDフィルタ)を用いて焦点付近での出力を約65mWとした。フェムト秒レーザビームの集光する位置を固定し、ガラス材料を自動ステージを用いて3mm/secの速度で直線状に移動し異質層を繰り返し形成した。
支点間距離30mm、荷重点間距離10mm、荷重速度0.5mm/minの4点曲げ試験において、異質相形成前と比べて4点曲げ強度が約1.5倍に向上した。
【0069】
実施例8
本発明において、図12Aと同様の線状の異質相を形成するには、図12Bに示すような、直径5μmの集光点43を、各集光形状間の間隔50μmで10点配列させた集光形状を実施例1の構成により一度に作成し、ガラス材料を集光点の配列方向に対して直角の方向44に走査させる。具体的には、各集光点43でのレーザビームのパワーが65mWになるように、パルス幅100フェムト秒、繰り返し周波数1kHz、波長800nm、空間パワー密度8×1017W/cm3 のパルスレーザビームを照射し、ガラス材料を集光点に対する相対速度3mm/secで集光点の配列方向に対して直角の方向44に走査させて、異質相を形成することができる。本実施例で異質相を形成した場合、一度に補強部をなす10本の異質相を平行して形成できるため、ゆらぎ等の影響を考慮する必要がない場合には、従来の方法に比べて異質相形成にかかる時間を1/10に短縮でき、製造スループットを大幅に向上させることができる。
【0070】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、材料内部の複数の所望の位置に一括して異質相を形成することができる。これにより二次元形状または三次元形状をした異質相を一括して形成することができ、レーザビームの集光点を走査させる従来の方法に比べて、形成される異質相の位置精度および形状精度が高い。
また、材料内部の集光される部位は、それぞれ複数パルスのレーザビームが照射されるため、レーザビームの強度およびポインティングのゆらぎの影響が低減され、形成される異質相の位置精度および形状精度が高い。
【0071】
本発明の方法によれば、内部に異質相を有する構造物を高製造スループットで提供できる。
本発明により提供される内部に異質相を有する構造物は、異質相の位置精度および形状精度が高く、かつ界面が平滑であるため、光フィルタ、合分波素子、偏光素子、急角度の曲がり導波路部分を持つ超小型の合分岐、全光スイッチ、光演算素子、光双安定素子などの光部品として好適であり、特に光導波路やフォトニック結晶として好適である。
本発明は、また材料内部に補強部を有する材料を高い製造スループットで製造し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1Aは、集光点を走査させる従来の方法で作製した直線形状をした高屈折率領域の概念図であり、図1Bおよび1Cは、その偏心量および外径変動量を示すグラフである。図1Dは、本発明の方法により形成した直線形状をした高屈折率領域の概念図であり、図1Eおよび1Fは、その偏心量および外径変動量を示すグラフである。
【図2】図2AおよびBは、本発明の方法を用いたレーザ加工装置の1つの形態を表した模式図である。
【図3】空間パワー密度を説明するための図であり、集光機能素子とレーザビームの集光形状の関係を示している。
【図4】図4AないしDは、本発明の方法により作製可能な光部品の主要構造を示す図である。
【図5】図5AないしCは、本発明の方法を用いたレーザ加工装置の別の1つの形態を表した模式図である。
【図6】本発明の方法を用いたレーザ加工装置の別の1つの形態を表した模式図である。
【図7】図7Aは、本発明の方法を用いたレーザ加工装置の別の1つの形態を表した模式図である。図7Bは、図7Aに示す装置を用いてフォトニック結晶を作製する方法の概念図である。
【図8】本発明の方法を用いたレーザ加工装置の別の1つの形態の光学系を表した模式図である。
【図9】図9AおよびBは、本発明の方法を用いたレーザ加工装置の別の1つの形態を表した模式図である。
【図10】図10AないしCは、本発明の方法により三次元導波路の回路部分を作製する手順を示す斜視透視図である。
【図11】図11AおよびBは、本発明の方法と従来のレーザービームの集光点を走査させる方法を組み合わせて三次元光導波路の回路部分を作製する手順を示す斜視透視図である。
【図12】図12Aは、内部に異質相による補強部が設けられたガラス材料の一例の斜視透視図である。図12Bは、本発明の方法を用いてガラス材料中に図12Aに示す異質相を形成する際の、レーザビームの集光点の配列およびガラス材料に対する走査方向を示す概念図である。
【符号の説明】
1、3、14:パルスレーザビーム
2:補正機構
4:制御前のレーザビームの波面
5:波面制御素子
6:制御後のレーザビームの波面
7:6に対応する光束
8:集光機能素子
9:集光される各光束
10、12、27:集光形状
11:材料
13:集光形状の微小体積
15:光導波路の回路部分
15a、15b:光結合部
15c:Y分岐部
16:光導波路の回路部分のギャップ
17、36:方向性結合器構造
18、37:Y分岐導波路構造
19:マッハツェンダ干渉器構造
20、38:リング共振器構造
21:パルスレーザビーム
22:ビームスプリッタ
23:分散補正機構
25:レンズ
26:シリンドリカルレンズ
28:高次曲面ミラー
29、31:マイクロレンズアレイ
30:ビームエキスパンダー
32、43:集光点
33、45、46:回折光学素子
35:高次曲面レンズ
39、40:異質相
41:ガラス材料
42:異質相
44:ガラス材料に対する集光点の走査方向
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザビームを走査機構を用いることなく、材料、特にガラスのような透明材料の内部に照射して異質相、特に二次元形状または三次元形状をした異質相を形成する方法、および該方法で作製される内部に異質相を有する構造物、ならびに該構造物を有する光部品に関する。
本方法で得られる内部に異質相が形成された透明な構造物は、主に光情報処理、光通信システム等に使われる光フィルタ、合分波素子、偏光素子、急角度の曲がり光導波路を持つ超小型の合分岐、光を能動的に制御する全光スイッチ、光演算素子、光双安定素子などの光部品に好適である。
また、本方法は、情報処理や建築、エネルギー分野等で利用される透明材料の内部に補強部を形成するのにも好適である。
【0002】
【従来の技術】
近年、光情報処理の普及により、ガラス等の透明媒質中に高屈折率領域を形成した光導波路が製造されている。一方で、ガラス等の透明媒質中に、光の波長程度の周期を持つ高屈折率領域を形成し、その構造により光の制御を行う、フォトニック結晶の研究開発も盛んに行われている。光導波路において線状の回路となる部分やフォトニック結晶の高屈折率相を形成するためには、透明媒質中に、媒質よりも屈折率の大きい領域を制御して形成しうる材料および該材料中に屈折率の大きい領域を制御して形成する方法が必要である。また、光部品により複雑な機能を持たせることや、集積化もその課題の一つであり、複雑な二次元形状をした、また三次元形状をした光部品の回路部分を作製することが望まれている。
一方で、情報処理や建築、エネルギー分野等では、板状等の厚さが小さい透明材料が多く用いられている。これらの板状の透明材料は、様々な環境で使用されており、用途によっては強度に優れることが求められ、材料内部に補強部を設けることも必要となる。
【0003】
光導波路の典型的な製造方法は、SiO2 を主成分とした基板ガラス上に、該基板よりも屈折率の高いコアと呼ばれる領域を成膜し、コアをエッチングなどのプロセスで加工し、再びコアよりも屈折率の低い材料で包埋することにより作製されている。このような方法は、非常に煩雑なプロセスを経ることが必要であるため製造が困難であり、またその工程上、製造される光導波路は平面的な形状のものに限定される。また、これまでのフォトニック結晶の製造も同様に、屈折率の高い半導体基板上に何層かの半導体を成膜し、エッチングにより微細加工を施して、光の波長レベルの高屈折率部および低屈折率部を、波長レベルの周期で配列させた構造を形成している。そのため、この場合も製造が煩雑で困難であり、作製されるフォトニック結晶も、また平面的な形状のものに限定される。
【0004】
ガラス中に光導波路の線状の回路部分を立体的に構成する方法としては、例えば、レーザ光の照射によりガラス内部に高屈折率領域を形成する方法が知られている(特許文献1参照)。この方法では、ガラス中のレーザ光の集光照射領域において、光の高電磁場によりガラスの分子構造が変化することで、該領域の屈折率が変化すると考えられている。この方法では、集光領域のみ屈折率変化が起こるため、集光点をガラス内部で三次元的に走査することにより、屈折率が変化した領域を立体的に形成し、光導波路の線状の回路部分を三次元的に構成することが可能である。この方法では、レーザ光の照射により、高屈折率領域だけでなく、レーザ光の集光による熱や光化学反応や物質の酸化還元、非線形効果などの種々の光効果により、結晶生成や高密度化、気泡生成など、いわゆる光誘起による変化によって材料中に異質な相(異質相とよぶ)を形成できることが知られている。この方法では、形成される異質相を利用して、フォトニック結晶などの光部品を作製しうることも提案されている。
【0005】
上記したレーザ光の照射により材料内部に異質相を形成する方法では、レーザ光のパワー密度を上げるために、パルスの時間幅がピコ(10-12 )秒からフェムト(10-15 )秒と非常に狭い超短パルスレーザが用いられている。しかしながら、レーザの機構上、レーザパルスの繰り返し周波数は、実用上1kHz〜数100kHzに制限されるため、平滑な界面を有する異質相を形成しようとする場合、レーザ光の集光点を高速で走査することが困難であり、製造スループット(時間当たりの処理量)が低いという問題があった。また、レーザ光の集光点を走査するために、高精度の移動機構を備えた装置が必要となり、このような装置は複雑でしかも高価である。
【0006】
さらに、上記した方法では、レーザ光の集光点に高屈折率領域が形成されるため、1パルスにより生じる楕円形状の高屈折率領域の集合体として光導波路の線状の回路部分などの高屈折率領域が形成されるが、高屈折率領域を形成しうる現行のパワー密度が高い超短パルスレーザ装置ではパルスごとの強度ゆらぎが多く、また、ポインティングスタビリティも低いため、例えば直線形状をした高屈折率領域を形成する場合を例にとると、レーザ光の走査によって形成される高屈折率領域の概念形状は、図1Aに示すような形状になる。図1Bおよび1Cは、その偏心量および外径変動量をグラフで示している。
これらのグラフから明らかなように、形成される高屈折率領域は、偏心量や外形変動量が大きく、高い位置精度および形状精度ならびに平滑な界面をもつ光導波路の線状の回路部分などの高屈折率領域の作製は困難である。そのため、図4に示すような光部品の基本構造、特に図4Aに示す方向性結合器17の光結合部15a、15bや図4Bに示すY分岐導波路18のY分岐部15cなどの形成に用いる場合には、位置精度と形状精度が不充分であり、得られる光部品の光特性にばらつきが生じていた。そのため、充分な光導波構造の低損失化及び安定した製造が困難であった。
【0007】
また、レーザ加工の分野においては、超短パルスレーザ及び回折光学素子などを利用した加工パターンの一括形成が行われてきた(例えば特許文献2ないし特許文献4参照)。しかしながらこれらの方法は、ビームの分割や二次元的な結像によるものであり、しかも昇華加工(アブレーション加工)に限定されている。したがって、材料内部に複雑な二次元形状をした、または三次元形状をした異質相を形成することは対象としていない。
【0008】
また、立体像の結像による三次元構造形成方法については、樹脂材料の光硬化による立体成形やレジストへのパターニングなどに利用されている(例えば特許文献5および特許文献6参照)。これらの方法は、パルスレーザビームの複数の領域で位相および/または振幅を制御する方法を開示しておらず、また、光硬化材料など、一部の限定された材料についての三次元構造形成に関するものであり、光導波路の線状の回路部分やフォトニック結晶の高屈折率相の形成において一般的な材料(ガラス、プラスチック、半導体等)の内部に高エネルギーを用いて異質相を形成することについてはまったく示されておらず、また、局所的な加熱や材料改質などによる材料加工についての応用は示されていない。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−311237号公報
【特許文献2】
特開2000−280085号公報
【特許文献3】
特開2001−138083号公報
【特許文献4】
特開2001−212800号公報
【特許文献5】
特開平4−267132号公報
【特許文献6】
特開平8−286591号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するため、レーザビームを走査機構を用いることなく、材料内部に照射して、異質相、特に複雑な二次元形状または三次元形状をした異質相を形成する方法、および該方法で作製される内部に異質相を有する構造物、ならびに該構造物を有する光部品を提供する。
本発明の方法は、ガラス等の透明材料中に、光導波路の回路部分に代表される複雑な二次元形状をした、または三次元形状をした光機能構造を形成するのに好適であり、また、透明な構造材料(窓材料、ディスプレイ用透明基板など)の内部に補強部を形成するのにも好適であり、従来の方法において問題であった位置精度および形状精度の低さや、製造スループットの低さを解消する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、パルスレーザビームの集光照射による材料内部への異質相の形成において、パルスレーザビームの波面の複数の領域を、各々独立して位相および/または振幅を制御して、パルスレーザビームを材料内部の複数の所望の位置に集光させることで、材料内部に複雑な二次元形状をした、または三次元形状をした異質相を一括して形成できることを見出した。
即ち、パルスレーザビームの複数の集光点の集合体および/または直線形状もしくは曲線形状等のある大きさを有する連続的な集光点として材料内部に集光形状を形成させることで、連続パルスレーザビームを集光させた部位を光誘起による変化をさせて、材料内部の複数の所望の位置に一括して異質相を形成させることにより、材料内部に複雑な二次元形状をした、または三次元形状をした異質相を一括して形成できることを見出した。
さらに、該方法においてパルス幅がフェムト秒レベルの超短パルスレーザを用いることで、該異質相の位置精度、形状精度を向上させるだけでなく、製造スループットを向上させられることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
したがって、本発明は、パルスレーザビームの波面の複数の領域を、各々独立して位相および/または振幅を制御することにより、該パルスレーザビームを材料内部の複数の所望の位置に集光させて、該材料内部のパルスレーザビームが集光された部位に光誘起による変化をさせて、該材料内部の複数の所望の位置に一括して異質相を形成させることを特徴とする材料内部に異質相を形成する方法を提供する。
本発明の方法において、前記材料内部に形成される複数の異質相は、該材料内部において互いに二次元的位置関係にあってもよい。
本発明の方法において、前記材料内部に形成される複数の異質相は、該材料内部において互いに三次元的位置関係にあってもよい。
本発明の方法において、前記複数の異質相は、前記材料内部において連続して存在し、二次元形状または三次元形状をなしてもよい。
【0013】
本発明の方法において、前記材料中の所望の位置に、下記式で表される空間パワー密度が1010W/cm3 〜1024W/cm3 であるパルスレーザビームを集光して、前記材料中の所望の位置に異質相を形成することが好ましい。
空間パワー密度(W/cm3 )=特定の微小体積に投入されるエネルギー(J)÷照射時間(秒)÷前記微小体積(cm3 )
【0014】
本発明の方法において、パルスレーザビームは、パルス幅が10フェムト(10×10-15 )秒以上10ピコ(10×10-12 )秒以下の超短パルスレーザであることが好ましい。
【0015】
本発明の方法において、前記材料は、パルスレーザビームが入射する面から、前記パルスレーザビームを集光させる部位までの該パルスレーザビームの透過率Tが集光倍率Mとの関係において、下記式(1)および(2)を満たす材料であることが好ましい。
T≧100/M2 ・・・(1)
T≧(Ith×2×10-4)/(I0 ×M2 )・・・(2)
M:(π/4)1/2 ×(材料入射時のパルスレーザビームの直径)/(材料の集光体積の三乗根)
Ith:材料中の集光させる部位に異質相を形成するのに必要なパルスレーザビームの空間パワー密度(W/cm3 )
I0 :材料にパルスレーザビームが入射する面におけるパルスレーザビームのパワー密度(W/cm2 )
【0016】
本発明の方法において、前記材料は、波長0.1〜11μmのパルスレーザビームに対して、前記透過率Tが、前記式(1)および(2)を満たす材料であることが好ましい。
本発明の方法において、前記材料はガラスであることが好ましい。
【0017】
本発明の方法において、前記材料中に形成される異質相は、波長0.1〜2μmの光に対する屈折率が、該材料の他の部分での屈折率に対して0.1%以上異なる相であることが好ましい。
本発明の方法において、前記材料中に形成される異質相は、該材料の補強部をなすことが好ましい。
【0018】
本発明の方法において、前記パルスレーザビームの位相および/または振幅の制御は、回折光学素子、マイクロレンズアレイ、高次曲面ミラー、シリンドリカルレンズ、高次曲面レンズからなる群から選択される少なくとも1つにより行ってもよい。
【0019】
本発明の方法において、前記パルスレーザビームの集光において、前記パルスレーザビームの色収差補正を行うことが好ましい。
本発明の方法において、前記パルスレーザビームの集光の際に生じる、該パルスレーザビームのパルス時間幅の変化を、前記材料に入射する前に予め補正することが好ましい。
【0020】
本発明において、前記材料内部の所望の位置に集光させたパルスレーザビームを、さらに前記材料に対して相対移動させてもよい。
【0021】
本発明は、また上記した本発明の方法により材料内部の複数の所望の部位に異質相を形成する工程と、材料内部の所望の1つの位置にパルスレーザビームを集光させて、該パルスレーザビームの集光させた部分を前記材料に対して相対移動させることにより、該材料内部に光誘起変化による異質相を形成する工程と、を含むことを特徴とする材料内部に異質相を形成する方法を提供する。
【0022】
本発明は、また本発明の方法により作製される内部に異質相を有する構造物を提供する。
本発明は、また本発明の構造物を有し、該構造物は、光機能構造をなす光部品を提供する。
前記光部品は、方向性結合器構造、Y分岐導波路構造、マッハツェンダ干渉器構造およびリング共振器構造からなる群から選択される少なくとも1つを光機能構造として有することが好ましい。
【0023】
本発明において、内部に異質相を有する構造物は、特に、光機能構造をなし、該構造物で形成されるものは、光部品である。
該構造物は、例えば、方向性結合器構造、Y分岐導波路構造をなすものや、フォトニック結晶などである。
該部品は、例えば、光導波路である。
なお、フォトニック結晶は、内部に欠陥部分を設けることにより光導波路となす。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は係る実施形態に限定されるものではない。
本発明の方法では、パルスレーザビームを材料内部に照射して、パルスレーザビームが照射された部位を光誘起により変化させる際に、パルスレーザビームの複数の領域をその領域ごとに各々独立して位相および/または振幅を制御することで、レーザビームの各領域の発散角と進行方向を変化させて、パルスレーザビームの各領域を材料内部の複数の異なる部位に一括して照射させる。これにより、各部位の集光点の集合体として、すなわち複数の集光点の集合体として、材料内部に集光形状が形成される。
【0025】
たとえば、図1Dに示すような材料内部に直線形状をした高屈折領域を形成する場合を例にとると、本発明の方法では、パルスレーザビームの波面の複数の領域を、各々独立して位相および/または振幅を制御して、レーザビームの各領域の発散角および進行方向を変化させることで、パルスレーザビームの複数の領域を、図1Dに示す直線形状をなすように複数の異なる部位に一括して照射させる。
レーザビームを照射させた部位は、光照射により変化して異質相、具体的にはたとえば高屈折領域を形成するので、図1Eおよび図1Fに示すように偏心量および外径変動量が少ない直線形状をした高屈折領域を一括して形成することができる。
【0026】
レーザービームの集光点を走査させることで、材料内部に異質相を形成させる従来の方法では、1パルスにより生じる楕円形状をした異質相の集合体として異質相が形成されるため、現行のパワー密度の高い超短パルスレーザ装置を使用した場合に、パルスごとの強度ゆらぎが多く、また、ポインティングスタビリティも低いため、形成される異質相(図1A)は、図1Bおよび1Cに示すように、位置精度が悪く、形状精度も悪いものであった。
【0027】
これに対して本発明の方法では、レーザビームの集光点を走査させることなく、パルスレーザビームを材料内部の複数の所望の部位に一括して集光させるため、パルスレーザビームの複数の集光点の集合体としての集光形状を一括して形成することができる。この結果、材料内部のパルスレーザビームを照射させた部位が光誘起により変化することで所望の形状をした異質相を一括して形成することができる。本発明の方法では、材料内部に異質相を一括して形成するため、レーザビームの集光点を走査させる従来の方法に比べて、位置精度および形状精度が高い異質相を得ることができる。
【0028】
本発明の方法では、好ましくは集光形状をなす各集光点に複数のパルスレーザビームを照射して異質相を形成するため、上記した現行の超短パルスレーザ装置を使用した場合に問題となるパルスごとのレーザ光の強度およびポインティングのゆらぎの影響が平均化される。これにより、パルスごとのレーザ光のゆらぎによる影響が低減されて、高い位置精度および形状精度で異質相を得ることができる。
本発明の方法によれば、異質相が一括して形成されるため、製造スループットが向上する。さらにまた、レーザビームの集光点を走査させるための高精度な移動機構が不要であるため、装置の簡素化が可能である。
【0029】
図1Dでは、形成される異質相の一例として直線形状をした異質相を示したが、本発明の方法で形成される異質相の形状はこれに限定されない。すなわち、曲線または分岐を持ったより複雑な二次元形状であってもよく、さらに三次元形状であってもよい。さらに、異質相の形状は連続した単一の形状に限定されず、点状の複数の異質相が、材料内部に二次元的または三次元的に分散していてもよい。所望の形状を高い位置精度および形状精度で一括して形成することができる本発明の方法は、このような二次元形状または三次元形状をした異質相を形成するのに特に好ましい。
【0030】
また、図1Dでは形成される異質相として、高屈折領域を示したが、本発明の方法により形成される異質相は、レーザビームの照射によって生じる光誘起による変化で形成される異質相を広く含む。光誘起による変化としては、ガラス材料中に高屈折領域を形成すると考えられている光の高電磁場によりガラスの分子構造が変化すること以外に、レーザ光の集光による熱や光化学反応や物質の酸化還元、非線形効果などの種々の光効果により、結晶生成や高密度化、気泡生成など、いわゆる光誘起による変化を広く含む。
【0031】
図2AおよびBは、本発明の方法を用いて材料内部の所望の形状をした異質相を形成するレーザ加工装置の代表的な形態の模式図である。
図2Aに示すレーザ加工装置101は、大まかには、所望の強度のパルスレーザビームをある広さをもった光束1として発射するレーザ光源(図示していない)と、レーザビームの複数の領域について、各々独立して位相および/または振幅を制御する波面制御素子5と、ある広さをもつ光束を、材料11内部の微小領域に集光させる集光機能素子8とで構成される。このような構成により、パルスレーザビーム1を材料11内部の複数の所望の部位に一括して照射することができる。レーザビームが照射された部位は、光誘起により変化するので、材料内部の所望の部位に複数の異質相10を一括して形成することができる。図2Aでは、複数の異質相10は、材料内部において連続して存在し、連続する三次元形状をなしている。
【0032】
レーザ光源は、材料内部、特にはガラス材料等の透明材料の内部に、パルスレーザビームを集光させて光誘起による変化を生じさせるため、パワー密度の高いパルスレーザビームを放出可能であることが好ましく、したがって、パルス幅が短い超短パルスレーザ、より具体的には集光点でのパルス幅が10フェムト(10×10-15 )秒以上10ピコ(10×10-12 )秒以下となる超短パルスレーザであることが好ましい。特に、異質相を形成させる材料がガラス材料である場合、パルス幅が15フェムト秒以上300フェムト秒以下であることがより好ましい。パルス幅が上記範囲であれば、パルスレーザの1パルスあたりのエネルギーを小さくできるため、エネルギー的に有利であり、また材料中の異質相を形成させる部位以外の部位にレーザビームの照射によるダメージが生じるおそれがほとんどない。
【0033】
レーザ発生装置から放出されたレーザビームの波面は、波面制御素子5で、複数の領域が、各々独立して位相および/または振幅が制御される。レーザビーム3は、回折光学素子等、詳しくは後に示す手段により、その複数の領域が各々独立して位相および/または振幅が変化して、発散角と進行方向に変調を与える。ここで位相および/または振幅の変化の自由度を大きくするために、レーザビームは、ビームスプリッタで複数ビームに分離したり、ビームエキスパンダで拡幅してもよい。4は位相および/または振幅を制御する前のレーザビームの波面を、6は波面制御素子5により位相および/または振幅を制御した後のレーザビーム波面を、7は6に対応する光束を模式的に示したものである。
【0034】
波面制御素子5は、レーザビームの波面の複数の領域を、各々独立して位相および/または振幅を制御することができる限り特に限定されない。具体的には、例えば通常のレンズ、プリズム、反射ミラー、集光ミラーといった通常の光学制御系、レンズアレイ、ミラーアレイ、プリズムアレイなどの集積光学素子、またはシリンドリカルレンズ、複雑な集光形状が得られる高次曲面レンズ、高次曲面ミラーといったより複雑な光学制御系等であってもよく、または2値位相格子、多値位相格子、連続位相格子や、グレーティング型、位相マスク型、液晶変調器型などの振幅変調、位相変調機能をもつ回折光学素子、さらにはコンピュータにより、材料内部に形成する異質相の二次元形状または三次元形状の断面像から位相型ホログラムまたはキノフォームを計算して、上記各種光学制御系または光学素子を用いてホログラムまたはキノフォームとして集光形状を形成してもよい。
【0035】
波面制御素子5は、そのミラーの反射面形状またはレンズの表面形状や、回折光学素子の位相および/または振幅変調の機能が可変であれば特に好ましい。このような形状または機能が可変の波面制御素子5としては、例えば駆動装置を備えた位相変調型および/または振幅位相同時変調型の液晶空間変調器や、面形状可変ミラー(デフォーマラブルミラー)、電気光学効果や音響光学効果、磁気光学効果を用いた可変ミラーや可変回折レンズ、可変グレーティング、駆動装置付のマイクロミラーアレイなどがある。これらの機能可変の素子を使うことにより、製造時に異質相の形状の微細な修正を容易に行うことができ、また、形成する異質相のパターンごとに、波面制御素子を用意する必要がなくなるので好ましい。
【0036】
波面制御素子5により、その複数の領域が各々独立して位相および/または振幅が制御されたレーザビームは、集光機能素子8により材料11内部の所望の位置に集光する。レーザビームは、複数の領域がそれぞれ独立して位相および/または振幅が制御されているため、個々の領域に対応するビームは、それぞれ材料11内部の異なる部位に集光点10を形成する。9は集光される各光束を模式的に示したものである。そしてこのような集光点の集合体として全体の集光形状10が形成される。このようにして、集光点を材料内部で走査させることなく、材料内部に任意の形状をした集光形状が一度に形成されるため、材料内部のレーザビームが集光させた部位が光誘起により変化することで所望の形状をした異質相を一括して形成することができる。
【0037】
なお、波面制御素子5と集光機能素子8の順序は、図2Aに示した例のように、波面制御素子5を集光機能素子8に対してレーザビームの上流側に配置することに限定されず、図2Bに示すように、波面制御素子5と集光機能素子8の順序を入れ替えることも可能である。
【0038】
集光機能素子8は、ある広さをもつ光束を、材料内部の所望の微小領域に集光させることができる限り特に限定されず、例えば通常のレンズ、プリズム、反射ミラー、集光ミラー等の集光制御系であってよい。
また、波面制御素子5と集光機能素子8は、別々の素子として存在するのではなく、両方の機能を併せ持つものであってもよい。レーザビームの出射方向を独立して制御可能なレンズ類、例えばレンズアレイ、シリンドリカルレンズ、高次曲面レンズ等であれば、波面制御素子5と集光機能素子8の機能を1つのレンズで実現することができる。
【0039】
波面制御素子5と集光機能素子8の組み合わせは、材料内部に所望の集光形状を形成できる限り特に限定されない。また、集光機能素子8は、所望の集光形状を得るのに充分な有効断面積があればその大きさは特に限定されない。
【0040】
本発明の方法を用いたレーザ加工装置101は、レーザ光源、波面制御素子5および集光機能素子8以外の他の要素を含んでもよい。たとえば、パルスの時間幅が300フェムト秒以下のパルスレーザビームを照射するレーザ光源を使用する場合、スペクトルの広がりが顕著になり、色収差によって焦点形状が歪む恐れがある。また、波面制御素子5および集光機能素子8を構成する材料での材料分散もしくは構造分散またはレーザビームで加工される材料での材料分散により、レーザビームのパルス幅が広がる恐れがある。これらによってレーザビームのパルス幅が広がると、レーザビームのパワー密度が低下して、集光した部分で異質相が形成できなくなるおそれがある。そのため、パルス幅が300フェムト秒以下のパルスレーザを照射するレーザ光源を用いる場合は、1)レーザの波長内において、色収差が生じないようにするための色収差補正機構や、2)光学制御材料内部(波面制御素子5および集光機能素子8を構成するレンズ、ミラー等の内部)および加工材料内部におけるレーザビームのパルス時間幅の変化(材料分散により生じるパルス時間幅の変化)を補正する(逆の波長分散を発生させて相殺補正する)分散補正機構2を必要に応じて設けて、レーザビームの色収差を補正し、および/または材料分散等によるパルス幅の変化を材料に入射する前に予め補正することが必要がある。
【0041】
また、レーザ加工装置101は、アクロマート、アポクロマート等の色収差を補正する色消し構造を有することが好ましい。さらにまた、レーザ加工装置101は、分散補正機構としてプリズムペア、グレーティングペア等の任意の波長分散を発生させるための分散発生装置を具備することが好ましい。
【0042】
本発明では、パルスレーザビームの照射により材料内部に異質相を形成するため、使用するパルスレーザビームのパワー密度が重要になる。
レーザビームのパワー密度は通常、単位面積当り、単位時間にどれだけのエネルギーが投入されたかを示す量で、連続発振レーザビームを一点に集光する場合は下記式で表される。
パワー密度(W/cm2 )=平均パワー(W)/集光面積(cm2 )
これに対して、パルスレーザビームを1点に集光する場合は下記式で表される。
パワー密度(W/cm2 )=1パルスあたりのエネルギー(J)/パルス幅(秒)/集光面積(cm2 )
【0043】
本発明の場合、材料内部における集光点の空間分布、特に三次元形状をした集光形状の空間分布が問題となるため、空間パワー密度という概念を用いる。図3は、空間パワー密度の概念を説明するための図であり、集光機能素子8とレーザビームの集光形状12の関係を示している。なお、図3において、集光機能素子8は、マイクロレンズアレイで構成されており、波面制御素子を兼ねている。図3に示すように、集光機能素子8により材料11内部に集光照射させるときの集光形状12を微小体積13に分割し、そのおのおのの微小体積13に集光されるレーザビーム14を考えると。空間パワー密度は以下の式で定義される。
空間パワー密度(W/cm3 )=特定の微小体積13に投入されるエネルギー(J)/照射時間(秒)/特定の微小体積13(cm3 )
【0044】
本発明の方法において、材料内部の集光される部位におけるレーザビームの空間パワー密度は1010W/cm3 以上1024W/cm3 以下であることが好ましい。異質相を形成させる材料がガラス材料である場合、ガラスの種類、光誘起変化の種類にもよるが、レーザビームの空間パワー密度は1014W/cm3 以上1020W/cm3 以下であることが特に好ましい。空間パワー密度が上記の範囲であると、形成される異質相の位置精度および形状精度が高く、かつ異質相を形成するのにレーザビームのパワー密度が充分である。なお、材料が異質相を形成するのに1024W/cm3 超の空間パワー密度が必要な場合、大きなレーザパルスエネルギーが必要となり異質相の大体積化が困難である。
【0045】
好適な空間パワー密度とパルスレーザのエネルギーとの関係を具体的に示すと、例えば空間パワー密度が1018W/cm3 の場合、1パルスのエネルギー180μJ、パルス幅100フェムト秒のパルスレーザを用いると、断面積9μm2 、長さ200μmの領域に集光させることができる。
【0046】
また、本発明の方法では、レーザパルスの繰り返し周波数(1秒間当たりのレーザビームのパルス回数)の制約も大幅に緩和される。従来の方法では平滑な界面をもつ異質相を形成する際に、レーザパルスのゆらぎによる影響を平均化により低減するために、できるだけ多くのレーザパルスを照射しており、具体的には数kHz以上の繰り返し周波数を必要としたが、本発明の方法では、前記したように形成される異質相の位置精度および形状精度が向上されているため、原理上は1パルスのみでも材料内部に異質相を形成可能である。ただし、製造スループット向上のため、繰り返し周波数は、好ましくは5Hz以上である。繰り返し周波数の上限は、集光される部位での1パルスによる空間パワー密度が確保できれば特に制限されない。実用上は数Hzから数10MHzの超短パルスレーザが使用できる。但し、位置精度および形状精度向上のため、数パルス〜数1000パルスで、1つの二次元形状または三次元形状をなす1群の異質相を形成することが好ましい。繰り返し周波数が上記の範囲であれば、各集光される部位に対して、複数パルスのレーザビームが照射されるため、異質相を形成する際のレーザビームの強度およびポインティングのゆらぎが平均化され、その影響が低減される。
【0047】
本発明の方法では、二次元形状または三次元形状をした異質相を材料内部に一括して形成するために、従来のレーザビームの集光点を走査して異質相を形成する方法に比べて位置精度および形状精度が高い異質相を形成することができる。また、各集光される部位に対して、複数パルスのレーザビームが照射されるため、レーザビームの強度およびポインティングのゆらぎの影響が低減されて、位置精度および形状精度が高い異質相を形成することができる。そのため、異質相として高屈折率領域を形成して、図4に示すような高い位置精度と形状精度が要求される光部品の回路部分、例えば図4Aに示す方向性結合器17の光結合部15a、15bや図4Bに示すY分岐導波路18のY分岐部15cなどを作製するのに本発明の方法を用いれば、より安定した光特性を有する光部品を得ることが可能になる。
【0048】
本発明の別の一つの利点は、二次元形状または三次元形状をなす一群の異質相を一括して形成するため、レーザビームの集光点を材料中で走査させて異質相を形成する従来の方法よりも、これらの形状を速やかに形成することができ、製造スループットを向上させることができることである。そのため、透明材料の内部に、以下の効果の少なくとも1つを有する異質相を形成し、それにより材料内部に補強部を形成する方法としても特に有望である。
・内部からのクラック発生を低減する効果
・発生したクラックの進行方向を変える効果
・発生したクラックの伸展を抑制する効果
【0049】
本発明の方法では、材料内部に補強部を形成する場合等で、ゆらぎ等による影響を考慮する必要がない場合や、光導波路でもゆらぎ等の影響を考慮する必要がない場合には、材料内部に一括して形成されるレーザービームの複数の集光点をさらに走査して、材料に対して相対移動させてもよい。一括して形成されるレーザビームの集光点を走査させれば、材料内部により多くの異質相を一度に形成することができ、また、より広い範囲に異質相を形成することができる。これにより製造スループットをさらに向上させることができる。
【0050】
また、本発明の方法と、レーザビームの集光点を走査して、該集光点を材料に対して相対移動させる従来の方法とを併用することも有効である。例えば、高い位置精度および形状精度の要求される図4に示すような光部品の回路部分を形成する場合に、例えば図4Aに示す方向性結合器17の光結合部15a、15bや、図4Bに示すY分岐導波路18のY分岐部15cなどの複雑な形状をした回路部分の形成には本発明による方法を用いて、単純な直線または曲線の形状をした回路部分には、集光点を走査させる従来の方法を用いることで、所望の光特性を維持したまま製造装置を簡素化できるだけでなく、光部品設計・製造の自由度を大幅に増加させることができる。
【0051】
本発明によれば、上記した手順でレーザビームを材料内部の複数の所望の部位に一括して集光させることにより、内部の所望の位置に、所望の形状をした異質相を有する構造物が得られる。このような構造物の材料は、使用するレーザの波長に対する線形吸収係数(レーザビームのパワー密度(レーザパワー/照射面積)が充分小さいときの吸収係数)が小さいことが必要であり、具体的には、材料の、パルスレーザビームが入射する面からパルスレーザビームを集光させる点までのパルスレーザビームの透過率Tが集光倍率Mとの関係において下記式(1)および(2)を満たすことが好ましい。
T≧100/M2 ・・・(1)
T≧(Ith×2×10-4)/(I0 ×M2 )・・・(2)
M:(π/4)1/2 ×(材料入射時のパルスレーザビームの直径(cm))/(材料の集光体積(cm3) の三乗根)
Ith:材料中の集光点に異質相を形成するのに必要なパルスレーザビームの空間パワー密度(W/cm3 )
I0 :材料にパルスレーザビームが入射する面におけるパルスレーザビームのパワー密度(W/cm2 )
【0052】
透過率Tが上記の範囲であれば、構造物内部に形成される異質相の位置精度および形状精度が高く、また集光点におけるレーザビームのパワー密度が材料に光誘起による変化を生じさせるのに充分である。したがって、内部の所望の位置に、所望の形状、例えば二次元形状または三次元形状をした異質相を有する構造物を好適に得ることができる。また、透過率が上記の範囲であれば、レーザビームのエネルギー効率も優れていて、好ましい。
【0053】
また、構造物の材料は、使用するレーザビームに対して透過性を有することが必要である。具体的には、加工用途で通常使用される波長0.1〜11μmのレーザビームに対して、前記透過率Tが、前記式(1)および(2)を満たす材料である。したがって、例えばガラス、ポリマーや透明結晶体だけでなく、波長が0.8〜2.5μm程度の近赤外線領域のレーザビームを用いる場合には、半導体材料も該レーザビームに対して透過性を有するため加工が可能である。その中で、ガラス材料は、現在実用的に最も使いやすい超短パルスレーザである1)チタンサファイアレーザ、2)YAGレーザ、または、3)Ndドープ、Ybドープ若しくはErドープのファイバレーザなどに対して高い透過性を有し、また機械的、熱的安定性を備え、希土類や半導体などの様々な機能性元素を含有させることができるため、特に好ましい。使用されるガラス材料としては例えば酸化物ガラス(石英ガラス、シリケート系ガラス、ボロシリケート系ガラス、リン酸塩系ガラス、アルミニウムシリケート系ガラス等)、ハロゲン化物ガラス、硫化物ガラスまたはカルコゲナイドガラスが挙げられる。
【0054】
このような構造物内部に形成される異質相として、好ましい態様の1つは、材料の他の部分に比べて屈折率が異なる異質相である。
構造物が単相のガラス材料製であれば、レーザビームの集光照射によって生じる高密度化などの光誘起反応により、もとのガラスの屈折率に対して屈折率差が数%程度生じた異質相を形成することが可能である。また、構造物の内部にフォトニック結晶を形成させるには、より屈折率差が大きい領域を形成しうるガラス材料が必要であり、そのようなガラス材料として化合物半導体ガラスが例示される。このガラス材料では、屈折率1.4〜2.2程度のガラス材料中に、パルス幅がフェムト秒レベルの超短パルスレーザを照射することで、屈折率2.5〜3.5程度の化合物半導体を形成可能であり、したがって屈折率差が数10%以上の異質相を形成することが可能である。本発明によれば、このような屈折率差が大きな異質相を、構造物内部の所望の位置に、所望の形状で形成することができるため光機能構造を有する光部品を作製するのに好適である。
【0055】
本発明では、複雑な光機能構造を有する光フィルタや合分岐、合分波素子等の光部品が作製可能である。図4に、光導波路の回路部分による光部品の基本構造の一例を示す。図4Aは方向性結合器構造17を、図4BはY分岐導波路構造18を、図4Cはマッハツェンダ干渉器構造19を、図4Dはリング共振器構造20を各々示している。これらは光導波路の回路部分15で光部品の基本構造を形成している。これらの構造は、安定して機能するために、形状、寸法、相対的位置の高い精度が要求される。例えば、図4Aに示す方向性結合器構造17および図4Dに示すリング共振器構造20では、数μm幅の光導波路の回路部分15と同じく数μm間隔の回路部分のギャップ16を高い精度で形成することが要求される。本発明によれば、これらの構造を一括して作製することで、光特性の安定した光部品を作製することができ、しかもこのような光部品を高い製造スループットで作製することができる。さらに、該光部品に、非線形光学効果(入射する光の強度に応じて、光応答が非線形的に変化する現象)を利用する機構や屈折率変調機構(光部品の一部の屈折率を変えて部品の特性を変化させる機構。局部的に加熱したり通電したり、音波を発生したりすることで行う。)を設けることにより、光を能動的に制御する光部品を作製することが可能で、例えば、全光スイッチ、光演算素子、光双安定素子が実現されるため、図4に示すような光部品の基本構造を光特性的に安定したものとして製造することは光部品の開発において重要である。
【0056】
構造物の内部に形成される異質相の別の1つの好ましい形態は、少なくとも以下の記載の効果の少なくとも1つを有する異質相である。
・内部からのクラック発生を低減する効果
・発生したクラックの進行方向を変える効果
・発生したクラックの伸展を抑制する効果
このような異質相は、材料の強度を向上させる補強部をなす。このような内部に補強部を有する材料、特に透明材料は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ用の薄板ガラス基板に代表される情報処理分野、窓ガラスなどの建築分野、自動車用ガラスに代表される輸送機器分野、太陽電池用のガラス基板に代表されるエネルギー分野等で好ましく使用される。本発明の方法によれば、材料を所望の形状に加工した後で、材料の内部の所望の位置に所望の形状をした補強部をレーザービームの照射により一括して形成することができるため、材料を加工する前に、予め補強部を設けたりする手順を必要とせず、また、従来のレーザービームを照射して補強部を形成する方法のように、集光点を走査させる手順を必要とせず、材料の製造スループットが向上されている。材料の用途によって要求される強度(向き、特性)は、通常異なっているが、本発明によれば、材料内部の所望の位置に所望の形状をした補強部を容易に形成することができるため、このような要求される強度特性に応じて、最も適した位置および形状の補強部を形成することができる。さらに、また本発明によれば、レーザビームの照射による材料の光誘起による変化で補強部を形成するため、材料に外観上変化を生じることがない。これは強度に優れた透明材料として好ましい特性である。
【0057】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。ただし、これらの実施例は、本発明の理解を容易にするため、例示を目的とするものであり、本発明は係る実施例に限定されるものではない。
実施例1
図5Aは、本発明の方法を用いたレーザ加工装置の1つの形態を表した模式図である。図5Aのレーザ加工装置は、レーザ光源(図示していない)から発射されたパルスレーザビーム21(固体レーザ励起のチタン−サファイアレーザから発振される波長800nm、パルス幅100フェムト秒、1パルスのエネルギー180μJ、繰り返し周波数1kHzのパルスレーザビーム)に、分散発生機能を有するグレーティングペアにより構成させる分散補正機構23により、図中の光学系を構成する全ての光学部品、およびガラス材料により発生する分散と反対の符号の分散を付与して、集光点におけるパルス幅が発射時の所望のパルス幅から変化しないように補正する。分散補正機構23により補正されたパルスレーザビーム21は、ビームエキスパンダ30で拡幅したのち、波面制御素子に位相型の回折光学素子33を使用して、レーザビームの波面の複数の領域を独立して個別に位相制御する。その後集光機能素子に、色収差補正用のアポクロマートレンズ25を用いて、レーザビームを集光して、材料11(前記パルスレーザビームの透過率Tが99%以上で、屈折率が1.46の石英ガラス)内部に三次元形状をした集光形状10を形成する。三次元形状をした集光形状10は、複数の集光点の集合体として連続的に形成される。そして光励起による変化により集光形状と同形状をした、材料11の他の部分との屈折率差(該レーザパルスビームに対する屈折率において)が1%程度の異質層を一括して形成する。
【0058】
図5Bは、本発明の方法を用いたレーザ加工装置の別の1つの形態を表した模式図である。図5Bの装置では、波面制御素子としてシリンドリカルレンズ26を用いて位相制御を行う。集光形状27が比較的単純な形状であれば、このような機構で充分である。これにより、光励起による変化で集光形状と同形状の異質層を一括して形成する。
図5Cは、本発明の方法を用いたレーザ加工装置のさらに別の1つの形態を表した模式図である。図5Cの装置では、回折光学素子33およびシリンドリカルレンズ26の代わりにビームの波面の制御を高次曲面ミラー28で位相制御を行う。これにより、光励起による変化で集光形状と同形状の異質層を一括して形成する。
【0059】
実施例2
図6は、本発明の方法を用いたレーザ加工装置の別の1つの形態を表した模式図である。図6の装置では、パルスレーザビーム21をビームスプリッタ22で複数のビームに分離した後、それぞれのビームについて、マイクロレンズアレイ29により、ビームの発散角と出射方向を独立して個別に調整する。図6の装置では、位相制御と集光機能がマイクロレンズアレイ29に集約される。このような機能集約により装置が大幅に簡素化される。三次元形状をした集光形状10は、複数の集光点の集合として材料11の内部に連続的に形成される。図6の装置では、ビームの分割数を増やすことにより、より複雑な形状が得られる。実施例1と同じパルスレーザビームおよび石英ガラスを用いれば、光励起による変化により集光形状と同形状の異質層を一括して形成する。
【0060】
実施例3
図7Aは、本発明の方法を用いたレーザ加工装置の別の1つの形態を表した模式図である。図6に示したレーザ加工装置をさらに機能集約した形で、パルスレーザビーム21をビームエキスパンダー30でビーム径を拡大したのちに、マイクロレンズアレイ31で位相制御を行い、材料11内部に所望の3次元的位置関係に集光形状10に集光させる。ビームエキスパンダー30は省略することも可能であるが、マイクロレンズアレイ31において、各マイクロレンズの寸法が小さくなることを考慮して、製造コストに見合った光学系にすればよい。
【0061】
図7Bに、図7Aの装置を用いて、フォトニック結晶を製造する方法の概念図を示す。フォトニック結晶とは、透明材料からなる媒質中に光の波長程度の周期構造をもつ高屈折率領域を形成し、その構造により光制御を行う材料である。フォトニック結晶は、媒質に比べて屈折率が高い異質相を周期的に形成することにより実現される。その周期は求める特性にもよるが、一般に波長の半分程度であることが知られているので、波長1.5μmの光の利用を考えると、1μmレベルの周期性が必要になる。そこで、図7Bに示すように、マイクロレンズアレイ31の各マイクロレンズでレーザビームの集光点32を径1μm以下に絞り、各集光点32を互いの間隔が1μm程度になるように、材料11内部に周期的に配列させればフォトニック結晶の実現が可能である。フォトニックバンドギャップを導波原理とする光導波路の回路部分を形成するため、周期的に形成されたフォトニック結晶中に、該周期を破る欠陥を導入する場合は、欠陥に該当する部分にはレーザビームが集光しないようにすればよい。ここで固体レーザ励起のチタン−サファイアレーザから発振された波長800nm、パルス幅100フェムト秒、繰り返し周波数250kHz、空間パワー密度1016W/cm3 のパルスレーザビームと、該パルスレーザビームの透過率Tが96%の化合物半導体ガラスを用いることで、材料の屈折率1.5に対し、屈折率2.5の異質相が得られ、材料の他の部分との屈折率差が67%の高屈折領域を形成することができる。このようにして、パルスレーザビームの波面の複数の領域を各々独立して位相制御を行うことにより、光励起による変化で一括してフォトニック結晶を形成することが可能である。
【0062】
実施例4
図8は、本発明の方法を用いたレーザ加工装置の別の1つの形態を表した模式図である。図8に示す装置では、図7Aに示した装置よりもさらに機能集積されており、振幅制御および集光機能がすべて振幅型の回折光学素子45に集約されている。三次元形状をした集光形状10は、複数の集光点の集合として材料11の内部に連続的に形成される。実施例1と同じパルスレーザビームおよび石英ガラスを用いれば、光励起による変化により集光形状と同形状の異質層を一括して形成する。
【0063】
実施例5
図9Aおよび図9Bは、本発明の方法を用いたレーザ加工装置の別の1つの形態を表した模式図である。図9Aの装置では、フェムト秒パルスレーザから発射されたレーザビーム21のビーム径をビームエキスパンダー30で広げた後、位相制御を行う集光レンズ25で集光する。集光レンズ25と、集光形状10の間には、ビーム発散角、出射角調整を行うための振幅型回折光学素子46が配置されており、位相および振幅制御により集光形状10を所望の形状に制御する。図9Bに示す装置では、回折光学素子46の代わりに、位相制御を行う高次曲面レンズ35を用いてビーム発散角、出射角の調整を行う。三次元形状をした集光形状10は、複数の集光点の集合として材料11の内部に連続的に形成される。実施例1と同じパルスレーザビームおよび石英ガラスを用いれば、光励起による変化により集光形状と同形状の異質層を一括して形成する。
【0064】
実施例6
図5Aに示す例において、異質相の形状が、図4に示す光部品の基本構造になるように集光する回折光学素子またはマイクロレンズアレイ、マイクロミラーアレイ、高次曲面レンズを用意し、所望の位置に所望のパターンを形成することを繰り返すことで、複雑な立体構成の三次元光導波路も容易に作製できる。図10A〜Cはそのような複雑な立体構成をした三次元光導波路の線状の回路部分を形成する手順の一例を示している。ここで、固体レーザ励起のチタン−サファイアレーザから発振される波長800nm、パルス幅100フェムト秒、1パルスのエネルギー180μJ、繰り返し周波数1kHzのパルスレーザビームを用いて、材料入射時のビームの直径を1mm、材料の集光体積を9000μm3 、集光される部位の空間パワー密度を2×1017W/cm3 、材料にレーザが入射する面におけるレーザパワー密度I0 を2.3×1011W/cm2 として集光倍率43で集光照射する場合、例えばガラス材料として、材料中の集光させる部位に異質相を形成するのに必要なレーザの空間パワー密度Ithが1015W/cm3 、レーザビームの透過率Tが99%以上の石英ガラスを用いれば、照射の結果、材料の屈折率1.46に対し、屈折率差1%程度の異質相(屈折率1.48)が得られる。
【0065】
したがって、パルスレーザビームの波面の複数の領域を各々独立して位相制御を行い、光励起による変化で一括して光導波路の線状の回路部分を形成することが可能である。図10Aに示すように、材料11中の面Aにまず方向性結合器構造36を形成し、次に図10Bに示すように、面BにY分岐導波路構造37を形成し、最後に図10Cに示すように、面Cにリング共振器構造38を形成することで、複雑な立体構成をした三次元光導波路が作製できる。
【0066】
実施例7
図11AおよびBは、三次元光導波路の線状の回路部分を形成する手順の別の1例を示す。図11Aに示すように、図5Bに示す装置を用いて、パルスレーザビームの波面の複数の領域を各々独立して位相制御を行い、光励起による変化で一括して面Aおよび面Bの2箇所に直線状の異質相39を形成したのち、図5Bの装置からシリンドリカルレンズ26を取り外して、レーザビームを点状に集光できるようにし、図11Bに示すようにA点からB点まで集光点を走査させ、異質相40を形成させることで三次元光導波路の線状の回路部分を形成する。本実施例7において、固体レーザ励起のチタン−サファイアレーザから発振される波長800nm、パルス幅100フェムト秒、1パルスのエネルギー90μJ、繰り返し周波数1kHzのパルスレーザビームを用いて、材料入射時のレーザビームの直径を2mm、材料の集光体積を90000μm3 、材料にレーザビームが入射する面におけるレーザビームのパワー密度I0 を3×1010W/cm2 、材料中でレーザビームが集光される部位でのレーザビームの空間パワー密度を1×1016W/cm3 、として集光倍率40で集光照射する場合に、例えばガラス材料として、材料中の集光させる部位に異質相を形成するのに必要なレーザビームの空間パワー密度Ithが1014W/cm3 で、該パルスレーザビームの透過率Tが98%以上のボロシリケート系ガラスBK7を用いれば、照射の結果、材料の屈折率1.52に対し、屈折率差1%程度の異質相が得られ、光導波路の線状の回路部分の形成が可能である。
【0067】
ゆらぎ等の影響を考慮する必要がない光導波路の場合には、本発明の方法と従来のレーザビームの集光点を走査させる方法とを組み合わせることにより、本発明の方法または従来のレーザビームの集光点を走査させる方法をそれぞれ単独で使用する場合に比べて、より少ない部品で、しかも短時間でこのような三次元光導波路を製作できる。
【0068】
参考例
図12Aは、フェムト秒レーザーの集光照射により、レーザビームの透過率Tが96%のソーダライムシリケート系ガラス内部に線状の異質相42を50μmピッチの網目状に形成することで補強部を形成した板ガラス41である。板ガラスの寸法は(50mm×6.5mm、厚み1mm)であり、ガラス材料の入射面から深さ500μmの位置に、レーザビームを集光レンズで集光して約25μmのスポットを集光させた。
レーザビームは、Nd−YAGレーザ励起のTiサファイアレーザから発振されたパルス幅100フェムト秒、繰返し周期1kHz、波長800nmのフェムト秒レーザ光を使用し、光量減少フィルタ(NDフィルタ)を用いて焦点付近での出力を約65mWとした。フェムト秒レーザビームの集光する位置を固定し、ガラス材料を自動ステージを用いて3mm/secの速度で直線状に移動し異質層を繰り返し形成した。
支点間距離30mm、荷重点間距離10mm、荷重速度0.5mm/minの4点曲げ試験において、異質相形成前と比べて4点曲げ強度が約1.5倍に向上した。
【0069】
実施例8
本発明において、図12Aと同様の線状の異質相を形成するには、図12Bに示すような、直径5μmの集光点43を、各集光形状間の間隔50μmで10点配列させた集光形状を実施例1の構成により一度に作成し、ガラス材料を集光点の配列方向に対して直角の方向44に走査させる。具体的には、各集光点43でのレーザビームのパワーが65mWになるように、パルス幅100フェムト秒、繰り返し周波数1kHz、波長800nm、空間パワー密度8×1017W/cm3 のパルスレーザビームを照射し、ガラス材料を集光点に対する相対速度3mm/secで集光点の配列方向に対して直角の方向44に走査させて、異質相を形成することができる。本実施例で異質相を形成した場合、一度に補強部をなす10本の異質相を平行して形成できるため、ゆらぎ等の影響を考慮する必要がない場合には、従来の方法に比べて異質相形成にかかる時間を1/10に短縮でき、製造スループットを大幅に向上させることができる。
【0070】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、材料内部の複数の所望の位置に一括して異質相を形成することができる。これにより二次元形状または三次元形状をした異質相を一括して形成することができ、レーザビームの集光点を走査させる従来の方法に比べて、形成される異質相の位置精度および形状精度が高い。
また、材料内部の集光される部位は、それぞれ複数パルスのレーザビームが照射されるため、レーザビームの強度およびポインティングのゆらぎの影響が低減され、形成される異質相の位置精度および形状精度が高い。
【0071】
本発明の方法によれば、内部に異質相を有する構造物を高製造スループットで提供できる。
本発明により提供される内部に異質相を有する構造物は、異質相の位置精度および形状精度が高く、かつ界面が平滑であるため、光フィルタ、合分波素子、偏光素子、急角度の曲がり導波路部分を持つ超小型の合分岐、全光スイッチ、光演算素子、光双安定素子などの光部品として好適であり、特に光導波路やフォトニック結晶として好適である。
本発明は、また材料内部に補強部を有する材料を高い製造スループットで製造し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1Aは、集光点を走査させる従来の方法で作製した直線形状をした高屈折率領域の概念図であり、図1Bおよび1Cは、その偏心量および外径変動量を示すグラフである。図1Dは、本発明の方法により形成した直線形状をした高屈折率領域の概念図であり、図1Eおよび1Fは、その偏心量および外径変動量を示すグラフである。
【図2】図2AおよびBは、本発明の方法を用いたレーザ加工装置の1つの形態を表した模式図である。
【図3】空間パワー密度を説明するための図であり、集光機能素子とレーザビームの集光形状の関係を示している。
【図4】図4AないしDは、本発明の方法により作製可能な光部品の主要構造を示す図である。
【図5】図5AないしCは、本発明の方法を用いたレーザ加工装置の別の1つの形態を表した模式図である。
【図6】本発明の方法を用いたレーザ加工装置の別の1つの形態を表した模式図である。
【図7】図7Aは、本発明の方法を用いたレーザ加工装置の別の1つの形態を表した模式図である。図7Bは、図7Aに示す装置を用いてフォトニック結晶を作製する方法の概念図である。
【図8】本発明の方法を用いたレーザ加工装置の別の1つの形態の光学系を表した模式図である。
【図9】図9AおよびBは、本発明の方法を用いたレーザ加工装置の別の1つの形態を表した模式図である。
【図10】図10AないしCは、本発明の方法により三次元導波路の回路部分を作製する手順を示す斜視透視図である。
【図11】図11AおよびBは、本発明の方法と従来のレーザービームの集光点を走査させる方法を組み合わせて三次元光導波路の回路部分を作製する手順を示す斜視透視図である。
【図12】図12Aは、内部に異質相による補強部が設けられたガラス材料の一例の斜視透視図である。図12Bは、本発明の方法を用いてガラス材料中に図12Aに示す異質相を形成する際の、レーザビームの集光点の配列およびガラス材料に対する走査方向を示す概念図である。
【符号の説明】
1、3、14:パルスレーザビーム
2:補正機構
4:制御前のレーザビームの波面
5:波面制御素子
6:制御後のレーザビームの波面
7:6に対応する光束
8:集光機能素子
9:集光される各光束
10、12、27:集光形状
11:材料
13:集光形状の微小体積
15:光導波路の回路部分
15a、15b:光結合部
15c:Y分岐部
16:光導波路の回路部分のギャップ
17、36:方向性結合器構造
18、37:Y分岐導波路構造
19:マッハツェンダ干渉器構造
20、38:リング共振器構造
21:パルスレーザビーム
22:ビームスプリッタ
23:分散補正機構
25:レンズ
26:シリンドリカルレンズ
28:高次曲面ミラー
29、31:マイクロレンズアレイ
30:ビームエキスパンダー
32、43:集光点
33、45、46:回折光学素子
35:高次曲面レンズ
39、40:異質相
41:ガラス材料
42:異質相
44:ガラス材料に対する集光点の走査方向
Claims (19)
- パルスレーザビームの波面の複数の領域を、各々独立して位相および/または振幅を制御することにより、該パルスレーザビームを材料内部の複数の所望の位置に集光させて、該材料内部のパルスレーザビームが集光された部位に光誘起による変化をさせて、該材料内部の複数の所望の位置に一括して異質相を形成することを特徴とする材料内部に異質相を形成する方法。
- 前記材料内部に形成される複数の異質相は、該材料内部において互いに二次元的位置関係にある請求項1に記載の材料内部に異質相を形成する方法。
- 前記材料内部に形成される複数の異質相は、該材料内部において互いに三次元的位置関係にある請求項1に記載の材料内部に異質相を形成する方法。
- 前記複数の異質相は、前記材料内部において連続して存在し、二次元形状または三次元形状をなす請求項2または3に記載の材料内部に異質相を形成する方法。
- 前記材料中の所望の位置に、下記式で表される空間パワー密度が1010W/cm3 〜1024W/cm3 であるパルスレーザビームを集光して、前記材料中の所望の位置に異質相を形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の材料内部に異質相を形成する方法。
空間パワー密度(W/cm3 )=特定の微小体積に投入されるエネルギー(J)÷照射時間(秒)÷前記微小体積(cm3 ) - 前記パルスレーザビームは、パルス幅が10フェムト(10×10-15 )秒以上10ピコ(10×10-12 )秒以下の超短パルスレーザであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の材料内部に異質相を形成する方法。
- 前記材料は、前記パルスレーザビームが入射する面から、前記パルスレーザビームを集光させる部位までの該パルスレーザビームの透過率Tが、集光倍率Mとの関係において、下記式(1)および(2)を満たす材料である請求項1ないし6のいずれかに記載の材料内部に異質相を形成する方法。
T≧100/M2 ・・・(1)
T≧(Ith×2×10-4)/(I0 ×M2 )・・・(2)
M:(π/4)1/2 ×(材料入射時のパルスレーザビームの直径)/(材料の集光体積の三乗根)
Ith:材料中のパルスレーザビームを集光させる部位で異質相を形成するのに必要なパルスレーザビームの空間パワー密度(W/cm3 )
I0 :材料にパルスレーザビームが入射する面におけるパルスレーザビームのパワー密度(W/cm2 ) - 前記材料は、波長0.1〜11μmのパルスレーザビームに対して、前記透過率Tが前記式(1)および(2)を満たす材料である請求項7に記載の材料内部に異質相を形成する方法。
- 前記材料は、ガラスである請求項1ないし8のいずれかに記載の材料内部に異質相を形成する方法。
- 前記材料中に形成される異質相は、波長0.1〜2μmの波長の光に対する屈折率が、該材料の他の部分での屈折率に対して0.1%以上異なる相である請求項1ないし9のいずれかに記載の材料内部に異質相を形成する方法。
- 前記材料中に形成される異質相は、該材料の補強部をなす請求項1ないし9のいずれかに記載の材料内部に異質相を形成する方法。
- 前記パルスレーザビームの位相および/または振幅の制御は、回折光学素子、マイクロレンズアレイ、高次曲面ミラー、シリンドリカルレンズおよび高次曲面レンズからなる群から選択される少なくとも1つにより行うことを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の材料内部に異質相を形成する方法。
- 前記パルスレーザビームの集光において、前記パルスレーザビームの色収差補正を行うことを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の材料内部に異質相を形成する方法。
- 前記パルスレーザビームの集光の際に生じる該パルスレーザビームのパルス時間幅の変化を前記材料に入射する前に予め補正することを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の材料内部に異質相を形成する方法。
- 前記材料内部の所望の位置に集光させたパルスレーザビームの集光点を、さらに前記材料に対して相対移動させる請求項1ないし14のいずれかに記載の材料内部に異質相を形成する方法。
- 請求項1ないし15のいずれかに記載の方法により材料内部の複数の所望の位置に異質相を形成する工程と、材料内部の所望の1つの位置にパルスレーザビームを集光させて、前記パルスレーザビームの集光点を前記材料に対して相対移動させることにより、前記材料内部に光誘起変化による異質相を形成する工程と、を含むことを特徴とする材料内部に異質相を形成する方法。
- 請求項1ないし16に記載のいずれかの方法で作製される内部に異質相を有する構造物。
- 請求項17に記載の構造物を有し、該構造物は、光機能構造をなす光部品。
- 方向性結合器構造、Y分岐導波路構造、マッハツェンダ干渉器構造およびリング共振器構造からなる群から選択される少なくとも1つを、前記光機能構造として有する請求項18に記載の光部品。
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