JP2005187719A - 熱可塑性エラストマー組成物及び成形品 - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物及び成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】 イソブチレン系重合体の特徴である制振性、ガスバリアー性に優れ、成形加工性、ゴム的特性を有した上で、圧縮永久歪み特性の改良された熱可塑性エラストマー組成物を提供する。
【解決手段】 本発明は、(A)末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体が、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーおよびオレフィン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の存在下で、ヒドロシリル基含有化合物により溶融混練下で架橋された組成物、(B)エチレン−ビニルアルコール系共重合体、からなることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ガスバリアー性、圧縮永久歪み特性に優れる熱可塑性エラストマー組成物及び成形品に関する。
従来、弾性を有する高分子材料としては、天然ゴムまたは合成ゴムなどのゴム類に架橋剤や補強剤などを配合して高温高圧下で架橋したものが汎用されている。しかしながらこの様なゴム類では、高温高圧下で長時間にわたって架橋及び成形を行う工程が必要であり、加工性に劣る。また架橋したゴムは熱可塑性を示さないため、熱可塑性樹脂のようにリサイクル成形が一般的に不可能である。そのため、通常の熱可塑性樹脂と同じように熱プレス成形、射出成形、及び押出し成形などの汎用の溶融成形技術を利用して成形品を簡単に製造することのできる熱可塑性エラストマーが近年種々開発されている。このような熱可塑性エラストマーには、現在、オレフィン系、ウレタン系、エステル系、スチレン系、塩化ビニル系などの種々の形式のポリマーが開発され、市販されている。
これらのうちで、スチレン系熱可塑性エラストマーは、柔軟性に富み、常温で良好なゴム弾性に優れている。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)やスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、またそれらを水素添加したスチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)やスチレン−エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などが開発されている。しかし、これらのブロック共重合体は、圧縮永久歪み特性が不十分であった。
一方、柔軟性に富み、常温で良好なゴム弾性に優れ、さらにイソブチレン系重合体の特徴である制振性、ガスバリアー性、密封性に優れた熱可塑性エラストマーとして、イソブチレンを主体とする重合体ブロックと、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロックとを含有するイソブチレン系ブロック共重合体が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、このイソブチレン系ブロック共重合体も、前述のスチレン系熱可塑性エラストマー同様に、圧縮永久歪み特性が不十分であるという問題があった。
このイソブチレン系ブロック共重合体の圧縮永久歪み特性を改良する手法として、イソブチレンを主体とする重合体ブロックを含有するイソブチレン系ブロック共重合体とゴムの架橋物からなる熱可塑性重合体組成物(特許文献2参照)、イソブチレン系ブロック共重合体、結晶性ポリオレフィンおよび可塑剤(軟化剤)からなる組成物(特許文献3参照)が開示されている。これらの組成物は、イソブチレン系重合体の特徴を保持した上で圧縮永久歪特性が改善されてはいるものの、より良好な圧縮永久歪み特性を有する熱可塑性エラストマー組成物が求められている。
再公表特許WO93/14135号公報 再公表特許WO98/14518号公報 特開平11−293083号公報
本発明の目的は、上述の従来技術の課題に鑑み、イソブチレン系重合体の特徴である制振性、ガスバリアー性に優れ、成形加工性、ゴム的特性を有した上で、圧縮永久歪み特性の改良された熱可塑性エラストマー組成物を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、(A)末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体が、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーおよびオレフィン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の存在下で、ヒドロシリル基含有化合物により溶融混練下で架橋された組成物と、(B)エチレン−ビニルアルコール系共重合体、からなることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の(A)成分に使用される、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体は、イソブチレン単位が好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上を占める重合体である。イソブチレン系重合体中の、イソブチレン以外の単量体としては、カチオン重合可能な単量体成分であれば特に限定されないが、芳香族ビニル類、脂肪族オレフィン類、イソプレン、ブタジエン、ジビニルベンゼン等のジエン類、ビニルエーテル類、β−ピネン等の単量体が例示できる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
イソブチレン系重合体の数平均分子量に特に制限はないが、1,000から500,000が好ましく、より好ましい下限は5,000であり、より好ましい上限は200,000である。数平均分子量が1,000未満の場合、機械的な特性が十分に発現されず、また、500,000を超える場合、成形性の低下が大きい。イソブチレン系重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した。より具体的には、Waters社製510型GPCシステムを用いて、クロロホルムを移動相とし、ポリマー濃度2mg/mlで、カラム温度35℃にて測定した。ポリスチレンを標準試料として用いて、数平均分子量を算出した。
末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体のアルケニル基とは、ヒドロシリル基含有化合物による架橋反応に対して、活性のある炭素−炭素二重結合を含む基であれば特に制限されるものではない。具体例としては、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の脂肪族不飽和炭化水素基;シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環式不飽和炭化水素基を挙げることができる。好ましくは、アリル基である。
イソブチレン系重合体の末端へのアルケニル基の導入方法としては特開平3−152164号公報や特開平7−304909号公報に開示されているような、水酸基などの官能基を有する重合体に不飽和基を有する化合物を反応させて重合体に不飽和基を導入する方法が挙げられる。またハロゲン原子を有する重合体に不飽和基を導入するためにはアルケニルフェニルエーテルとのフリーデルクラフツ反応を行う方法、ルイス酸存在下アリルトリメチルシラン等との置換反応を行う方法、種々のフェノール類とのフリーデルクラフツ反応を行い水酸基を導入した上でさらに前記のアルケニル基導入反応を行う方法などが挙げられる。さらに米国特許第4316973号、特開昭63−105005号公報、特開平4−288309号公報に開示されているように単量体の重合時に不飽和基を導入することも可能である。この中でもアリルトリメチルシランと塩素の置換反応により末端にアリル基を導入したものが、反応性の点から好ましい。
イソブチレン系重合体の末端のアルケニル基の量は、必要とする特性によって任意に選ぶことができるが、架橋後の圧縮永久歪み特性の観点から、1分子あたり少なくとも0.2個であることが好ましく、少なくとも0.5個であることがより好ましい。0.2個未満であると、架橋による圧縮永久歪み特性の改善効果が十分に得られない場合がある。
本発明の(A)成分に使用される芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーの構造としては、ランダム共重合体でも、ブロック共重合体でも特に制限はないが、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(a)とイソブチレンを主体とする重合体ブロック(b)からなるブロック共重合体であることが好ましい。また芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(a)と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(c)からなるブロック共重合体、及びこれに水素添加して得られるブロック共重合体(水添ジエン系重合体)であることが好ましい。ガスバリアー性及び引張り強度が高くなるという点から、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(a)−イソブチレンを主体とする重合体ブロック(b)−芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(a)からなるトリブロック共重合体が特に好ましい。
芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(a)とは、芳香族ビニル系化合物単位が50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上を占めるブロックのことをいう。芳香族ビニル系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、インデン、ジビニルベンゼン、 N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等が挙げられる。上記化合物の中でもコストと物性及び生産性のバランスからスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、インデンが好ましく、その中から2種以上選んでもよい。
イソブチレンを主体とする重合体ブロック(b)とは、イソブチレン単位が50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上を占めるブロックのことをいう。イソブチレンを主体とする重合体ブロック中の、イソブチレン以外の単量体は、カチオン重合可能な単量体成分であれば特に限定されないが、芳香族ビニル類、脂肪族オレフィン類、イソプレン、ブタジエン、ジビニルベンゼン等のジエン類、ビニルエーテル類、β−ピネン等の単量体が例示できる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(c)とは、共役ジエン化合物単位が50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上を占めるブロックのことをいう。共役ジエン化合物としては1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレンなどが挙げられる。工業的に利用でき、また、物性の優れた水添ジエン系重合体を得るには、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー中の芳香族ビニル化合物の割合に関しては、特に制限はないが、物性と加工性のバランスから、芳香族ビニル化合物が5〜80重量%であることが好ましく、10〜40重量%であることが特に好ましい。
芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーの数平均分子量にも特に制限はないが、15,000から500,000が好ましく、40,000から200,000が特に好ましい。数平均分子量が15,000未満の場合、引張特性などの機械的な特性が不十分となる傾向があり、また、500,000を超える場合、成形性の低下が著しい傾向がある。芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーの数平均分子量は、GPC法により測定した。より具体的には、Waters社製510型GPCシステムを用いて、クロロホルムを移動相とし、ポリマー濃度2mg/mlで、カラム温度35℃にて測定した。ポリスチレンを標準試料として用いて、数平均分子量を算出した。
本発明の(A)成分で用いるオレフィン系樹脂とは、エチレンおよび炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれる単量体単位を主成分とする単独重合体または共重合体である。エチレンおよび炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれる単量体単位を主成分とする単独重合体または共重合体とは、エチレン単位および炭素数3〜20のα−オレフィン単位が50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上を占める単独重合体及び共重合体のことをいう。このような例としては、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等)、ポリプロピレン(アイソタクチック−ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、シンジオタクチック−ホモポリプロピレン等)、ポリ−1−ブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体などが挙げられる。耐熱性の観点から、結晶性を有する、ポリプロピレンおよびポリエチレンが好ましく例示される。さらに、機械特性の観点からは、ランダムポリプロピレンが最も好ましく、圧縮永久歪み特性の観点からは、高密度ポリエチレンが最も好ましく例示される。
本発明において、(A)成分中の芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーおよびオレフィン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の配合量は、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体100重量部に対し、好ましくは0.5〜900重量部、より好ましくは5〜100重量部である。配合量が900重量部を超えると、圧縮永久歪み特性が悪化する傾向にある。また、100重量部以下の場合は、アルケニル基の濃度が十分に高いため、架橋反応の反応速度が速く好ましい。一方、0.5重量部を下回ると成形性の低下が著しくなる傾向にある。
本発明において、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体は、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーおよびオレフィン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の存在下で、ヒドロシリル基(Si−H基)含有化合物により、溶融混練下で架橋されてなる組成物を形成している。このような手法は、一般に動的架橋と称され、通常の化学架橋(静的架橋)と異なり、溶融混練下で架橋反応が進行することで、生成したポリマーネットワークが剪断力により分断され、架橋後も熱可塑性を示すことが特徴である。本来、イソブチレン系重合体には架橋性の官能基がなく、また、架橋反応として汎用的に用いられるラジカル反応では分解反応が起こりやすいという傾向があった。本発明では、イソブチレン系重合体の末端にアルケニル基を導入することで、ヒドロシリル化反応を可能とし、ヒドロシリル基含有化合物を架橋剤として使用する架橋反応を可能としている。このヒドロシリル化反応には、副生成物の発生がなく、また不要な副反応を起こさない等の利点がある。
本発明において、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体の架橋物を得るために用いるヒドロシリル基含有化合物としては特に制限はなく、各種のものを用いることができる。すなわち、一般式(I)または(II)で表される鎖状ポリシロキサン;
SiO−[Si(RO]−[Si(H)(R)O]−[Si(R)(R)O]−SiR (I)
HR SiO−[Si(RO]−[Si(H)(R)O]−[Si(R)(R)O]−SiR H (II)
(式中、RおよびRは、同一又は異なって炭素数1〜6のアルキル基、若しくは、フェニル基を示し、Rは炭素数1〜10のアルキル基または炭素数7〜12のアラルキル基を示す。aは0≦a≦100、bは2≦b≦100、cは0≦c≦100を満たす整数を示す。複数個ある場合のR、R及びRは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
一般式(III)で表される環状シロキサン;
Figure 2005187719
(式中、RおよびRは、同一又は異なって炭素数1〜6のアルキル基、若しくは、フェニル基を示し、Rは炭素数1〜10のアルキル基または炭素数7〜12のアラルキル基を示す。dは0≦d≦8、eは2≦e≦10、fは0≦f≦8の整数を表し、かつ3≦d+e+f≦10を満たす。複数個ある場合のR、R及びRは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)等の化合物を用いることができる。
さらに上記のヒドロシリル基含有化合物のうち、相溶性が良いという点から、特に下記の一般式(IV)で表されるものが好ましい。
Figure 2005187719
(式中、g、hは整数であり、2≦g+h≦50、2≦g、0≦hである。Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数2〜20の炭化水素基で1つ以上の芳香環を有していても良い。iは0≦i≦5の整数である。複数個ある場合のRは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体とヒドロシリル基含有化合物は任意の割合で混合することができるが、反応性の面から、アルケニル基のヒドロシリル基に対するモル比(アルケニル基/ヒドロシリル基)が0.2〜5の範囲にあることが好ましく、さらに、0.4〜2.5であることが特に好ましい。モル比が5を超えると架橋が不十分でべとつきがあり、圧縮永久歪み特性が悪化する傾向が見られ、また、0.2より小さいと、架橋後も活性なヒドロシリル基が大量に残るので、加水分解により水素ガスが発生し、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いて得られる成形品がクラックやボイドを生じやすい傾向がある。
イソブチレン系重合体とヒドロシリル基含有化合物との架橋反応は、2成分を混合して加熱することにより進行するが、反応をより迅速に進めるために、ヒドロシリル化触媒を添加することができる。このようなヒドロシリル化触媒としては特に限定されず、例えば、有機過酸化物やアゾ化合物等のラジカル開始剤、遷移金属触媒等が挙げられる。
ラジカル開始剤としては特に限定されず、有機過酸化物としては、例えば、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)イソプロピルベンゼン等のジアルキルペルオキシド;ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、m−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等のアシルペルオキシド;過安息香酸−t−ブチル等の過酸エステル;過ジ炭酸ジイソプロピル、過ジ炭酸ジ−2−エチルヘキシル等のペルオキシジカーボネート;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のペルオキシケタールが挙げられ、アゾ化合物としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾイソブチロバレロニトリル等を挙げることができる。
また、遷移金属触媒としても特に限定されず、例えば、白金単体;アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に白金固体を分散させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体;白金−オレフィン錯体;白金(0)−ジアルケニルテトラメチルジシロキサン錯体等が挙げられる。白金化合物以外の遷移金属触媒の例としては、RhCl(PPh、RhCl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・HO、NiCl、TiCl等が挙げられる。
これらの触媒は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもかまわない。これらのうち、相溶性、架橋効率、スコーチ安定性の点で、白金ビニルシロキサンが最も好ましい。
触媒量としては特に制限はないが、イソブチレン系重合体のアルケニル基1molに対し、好ましくは10−8〜10−1molの範囲で用いるのが良く、より好ましくは10−6〜10−3molの範囲で用いるのがよい。10−8molより少ないと架橋が十分に進行しない傾向がある。また、10−1molを超える量を用いても明確な効果は見られないため、経済性の面から、10−1molよりも少ないことが好ましい。
本発明の(A)成分である、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体が、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーおよびオレフィン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の存在下で、ヒドロシリル基含有化合物により溶融混練下で架橋された組成物は、以下に例示する方法によって製造することができる。
例えば、ラボプラストミル、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等のような密閉型または開放型のバッチ式混練装置を用いて製造する場合は、予め混合した架橋剤以外の全ての成分を混練装置に投入し、均一になるまで溶融混練し、次いでそれに架橋剤を添加して架橋反応が十分に進行したのち、溶融混練を停止する方法が挙げられる。
また、単軸押出機、二軸押出機等のように連続式の溶融混練装置を用いて製造する場合は、架橋剤以外の全ての成分を予め押出機などの溶融混練装置によって均一になるまで溶融混練した後ペレット化し、そのペレットに架橋剤をドライブレンドした後、更に押出機やバンバリーミキサーなどの溶融混練装置で溶融混練して、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体を動的に架橋する方法や、架橋剤以外のすべての成分を押出機などの溶融混練装置によって溶融混練し、そこに押出機のシリンダーの途中から架橋剤を添加して更に溶融混練し、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体を動的に架橋する方法などが挙げられる。
溶融混練を行うに当たっては、140〜210℃の温度範囲が好ましく、150〜200℃の温度範囲がさらに好ましい。溶融混練温度が140℃よりも低いと、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーおよびオレフィン系樹脂が溶融せず、十分な混合ができない傾向があり、210℃よりも高いと、イソブチレン系重合体の熱分解が起こりやすくなる傾向がある。
本発明では、(A)成分である動的架橋組成物に、さらに(B)成分であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体を配合する点が特徴である。このように二段階の工程とすることで、(A)成分を製造する段階では、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体の割合を多くし、架橋反応の反応速度を高めることができるというメリットがある。特に、(C)成分として軟化剤を添加する場合には、そのメリットが顕著である。また、(A)成分中の芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーおよびオレフィン系樹脂の種類や分子量によって、反応条件の最適点が異なるが、二段階の工程とすることで、(A)成分を製造する段階で使用する芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーおよびオレフィン系樹脂の種類や分子量を一定に保ち、(B)成分の種類や分子量を選択することで、最終的に得られる熱可塑性エラストマー組成物の特性を広い範囲でコントロールすることが可能となる。さらには、架橋反応を阻害するような官能基を持つ成分を配合することも可能である。
本発明の(B)成分であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(以下、「EVOH」とも称する)は、主としてエチレン単位(−CH2CH2−)とビニルアルコール単位(−CH2−CH(OH)−)とからなる共重合体である。本発明において使用されるEVOHとしては、特に限定されることなく、例えば、成形用途で使用されるような公知のものを挙げることができる。ただし、EVOHのエチレン単位の含量は、ガスバリアー性、耐湿性の高さと成形加工性の良好さの点から、10〜99モル%であることが好ましく、20〜65モル%であることがより好ましく、25〜60モル%であることが更に好ましく、25〜50モル%であることが特に好ましい。
EVOHは、後述するように、代表的にはエチレン−脂肪酸ビニルエステル系共重合体ケン化物であるが、エチレン−脂肪酸ビニルエステル系共重合体ケン化物の場合、脂肪酸ビニルエステル単位のケン化度は、得られるEVOHのガスバリアー性、耐湿性と熱安定性の高さの点から、50モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることが更に好ましく、98モル%以上であることが特に好ましい。
EVOHのメルトフローレート(温度210℃、荷重2.16kgの条件下に、ASTM D1238に記載の方法で測定)は、成形加工性の良好さの点から、0.1〜100g/10分であることが好ましく、0.5〜50g/10分であることがより好ましく、1〜20g/10分であることが特に好ましい。また、EVOHの極限粘度は、フェノール85重量%および水15重量%の混合溶媒中、30℃の温度において、0.1〜5dl/gであることが好ましく、0.2〜2dl/gであることがより好ましい。
EVOHには、エチレン単位およびビニルアルコール単位に加えて、少量(好ましくは、全構成単位に対して10モル%以下)であれば、他の構成単位を有していてもよい。他の構成単位としては、プロピレン、イソブチレン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン;酢酸ビニルエステル、プロピオン酸ビニルエステル、バーサチック酸ビニルエステル、ピバリン酸ビニルエステル、バレリン酸ビニルエステル、カプリン酸ビニルエステル、安息香酸ビニルエステル等のカルボン酸ビニルエステル;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸またはその誘導体(例:塩、エステル、ニトリル、アミド、無水物など);ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;N−メチルピロリドン等から誘導される単位などを挙げることができる。またEVOHは、アルキルチオ基などの官能基を末端に有していてもよい。
EVOHの製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、公知の方法に従って、エチレン−脂肪酸ビニルエステル系共重合体を製造し、次いで、これをケン化することによってEVOHを製造することができる。エチレン−脂肪酸ビニルエステル系共重合体は、例えば、主としてエチレンと脂肪酸ビニルエステルとからなるモノマーを、メタノール、t−ブチルアルコール、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒中、加圧下に、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を用いて重合させることによって得られる。該脂肪酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニルエステル、プロピオン酸ビニルエステル、バーサチック酸ビニルエステル、ピバリン酸ビニルエステル、バレリン酸ビニルエステル、カプリン酸ビニルエステルなどを使用することができるが、これらの中でも酢酸ビニルエステルが好ましい。エチレン−脂肪酸ビニルエステル系共重合体のケン化では、酸触媒またはアルカリ触媒を使用することができる。
本発明において、(B)成分であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体の配合量は、(A)成分の合計量100重量部に対し、5〜200重量部であることが好ましく、5〜100重量部であるのがさらに好ましい。(B)成分の配合量が200重量部を超えると、圧縮永久歪み特性の悪化が著しくなる傾向にあり、5重量部より少なくなると成形性、ガスバリアー性が著しく低くなる傾向にある。
本発明の(A)成分に、(B)成分を溶融混練するには、公知の方法を採用すればよく、前述のバッチ式混練装置や連続式溶融混練装置等を使用することができる。例えば、(A)成分と、(B)成分を計量した後、タンブラーや、ヘンシェルミキサー、リボブレンダー等で混合した後、押出機や、バンバリーミキサー、ロール等で溶融混練する方法が挙げられる。このときの混練温度は、特に限定はないが、100〜250℃の範囲が好ましく、150〜220℃の範囲がより好ましい。混練温度が100℃よりも低くなると、溶融が不十分となる傾向があり、250℃よりも高くなると、加熱による劣化が起こり始める傾向がある。
本発明の組成物には、上述の(A)成分と(B)成分に加えて、成形性や柔軟性を向上させるため、さらに軟化剤(C)を添加することができる。軟化剤としては、ゴムの加工の際に用いられる鉱物油、液状又は低分子量の合成油等を用いることができる。軟化剤と可塑剤は、同様の意味で用いられることが多く、本発明においても、特に区別されるものではない。
鉱物油としては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系の高沸点石油成分等が挙げられる。このなかでも架橋反応を阻害しないパラフィン系オイルが好ましい。液状もしくは低分子量の合成油としては、ポリブテン、水添ポリブテン、液状ポリブタジエン、水添液状ポリブタジエン、液状ポリα−オレフィン類等が挙げられる。これらの軟化剤は単独で用いても、複数を混合して用いてもよい。
軟化剤(C)の配合量は、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体100重量部に対し、1〜300重量部であることが好ましい。配合量が300重量部を超えると、べとつきが生じたり、機械的強度の低下が起こる傾向があり、1重量部より少なくなると、成形性、柔軟性が低くなる傾向がある。
また本発明の組成物には、さらには、各用途に合わせた要求特性に応じて、物性を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー、ゴム、安定剤や充填剤などの添加剤などを適宜配合することができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、マレイン酸や無水マレイン酸、グリシジルメタクリレートなどで変性されたポリオレフィン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン(共)重合体、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系、エステル系、アミド系などのエラストマーが挙げられる。
ゴムとしては、例えば、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。
添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系やリン系、イオウ系の酸化防止剤や、ヒンダードアミン系の紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、界面活性剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、滑剤、シリコーンオイル、充填剤、補強剤等を適宜配合することができる。
充填剤の中でも無機充填剤としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、その他のカルシウム系充填剤、ハードクレー、ソフトクレー、カオリンクレー、タルク、湿式シリカ、乾式シリカ、無定形シリカ、ウォラスナイト、合成ゼオライト、天然ゼオライト、ケイソウ土、ケイ砂、軽石粉、スレート粉、アルミナ、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムや、これらをシラン処理したもの等が挙げられる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、たとえば、無機充填剤を含有させることにより、硬度や引張強度を向上することが可能である。また、無機充填剤として水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物を使用した場合には、優れた難燃性を付与できる場合がある。
また前記ブロッキング防止剤としては、例えばシリカ、ゼオライト等が好適であり、これらは天然、合成の何れでもよくまた架橋アクリル真球粒子などの真球架橋粒子も好適である。
また前記帯電防止剤としては、炭素数12〜18のアルキル基を有するN,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−アルキルアミン類やグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
さらに、前記滑剤としては、脂肪酸金属塩系滑剤、脂肪酸アミド系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤、脂肪酸系滑剤、脂肪族アルコール系滑剤、脂肪酸と多価アルコールの部分エステル、パラフィン系滑剤などが好ましく用いられ、これらの中から2種以上を選択して用いてもよい。
これらの添加剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用することも可能である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ガスバリアー性、圧縮永久歪み特性に優れ、さらに柔軟性、耐湿性等も有することから、これらの性質が要求される製品に加工して用いることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂に対して一般に採用される成形方法及び成形装置を用いて成形することができ、例えば、押出成形、射出成形、プレス成形、ブロー成形などによって溶融成形できる。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いて、任意の成形方法にて、シート、フィルムを製造することもでき、更に、熱可塑性エラストマー組成物からなる層および他の材料からなる層を有する積層構造体を製造することもできる。
このような、熱可塑性エラストマー組成物からなる成形品、シート、フィルム及び積層構造体も本発明の一つである。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ガスバリアー性、圧縮永久歪み特性に優れ、さらに柔軟性、耐湿性等も有するため、パッキング材、シール材、ガスケット、栓体などの密封用材や、光学ドライブ用ダンパー、ハードディスクドライブの駆動装置用インシュレーター、土木・建築用ダンパー、自動車用制振材、鉄道車両用制振材、家電製品用制振材、防振材、自動車内装材、クッション材、日用品、電気部品、電子部品、スポーツ部材、グリップ、緩衝材、電線被覆材、包装材、各種容器、文具部品等として有効に使用することができる。
以下に、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限を受けるものではない。
尚、実施例に先立ち各種測定法及び評価法について説明する。
<硬度>
JIS K 6352に準拠し、試験片は12.0mm厚プレスシートを用いた。
<引張破断強度>
JIS K 6251に準拠し、試験片は2mm厚プレスシートを、ダンベルで3号型に打ち抜いて使用した。引張速度は500mm/分とした。
<引張破断伸び>
JIS K 6251に準拠し、試験片は2mm厚プレスシートを、ダンベルで3号型に打ち抜いて使用した。引張速度は500mm/分とした。
<圧縮永久歪み特性>
JIS K 6262に準拠し、試験片は12.0mm厚プレスシートを使用した。100℃×22時間、25%変形の条件にて測定した。
<100%モジュラス>
JIS K 6251に準拠し、試験片は2mm厚プレスシートを、ダンベルで3号型に打ち抜いたものを使用した。引張速度は500mm/分とした。
<ガスバリアー性(酸素透過係数)>
JIS K 7126に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを用い、使用気体は空気、測定方法はA法、室温(23℃)で行った。
また、実施例及び比較例で用いた材料の略号とその具体的な内容は、次のとおりである。
APIB:末端にアリル基を有するイソブチレン系重合体
PP:ポリプロピレン(商品名:グランドポリプロJ215W、グランドポリマー社製)
OIL:パラフィン系プロセスオイル(商品名:P−500、JOMO社製)
架橋剤1:ヒドロシリル基含有ポリシロキサン(下記の化学式で表されるポリシロキサン:(CHSiO−[Si(H)(CH)O]48−Si(CH
架橋触媒:0価白金の1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジアルケニルジシロキサン錯体、3重量%キシレン溶液。
EVOH−1:エチレン−ビニルアルコール共重合体(ビニルアルコール含量=62mol%)クラレ社製(商品名「エバールEP−H101」)
EVOH−2:エチレン−ビニルアルコール共重合体(ビニルアルコール含量=56mol%)クラレ社製(商品名「エバールEP−E105」
SIBS:スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体
(製造例1)末端にアルケニル基を有するイソブチレン系共重合体(APIB)の製造
2Lセパラブルフラスコに三方コック、および熱電対、攪拌シールをつけ、窒素置換を行った。窒素置換後、三方コックを用いて窒素をフローした。これにシリンジを用いてトルエン785ml、エチルシクロヘキサン265mlを加えた。溶剤添加後、カールフィッシャー水分計にて水分量を測定した。測定後、−70℃程度まで冷却し、イソブチレンモノマー277ml(2933mmol)を加えた。再度−70℃程度まで冷却後、p− ジクミルクロライド0.85g(3.7mmol)およびピコリン0.68g(7.4mmol)をトルエン10mlに溶解して加えた。反応系の内温が−74℃となり安定した時点で四塩化チタン19.3ml(175.6mmol)を加え重合を開始した。重合反応が終了した時点(90分)で、75%アリルトリメチルシラン/トルエン溶液1.68g(11.0mmol)を添加し、さらに2時間反応させた。その後、50℃程度に加熱した純水で失活し、さらに有機層を純水(70℃〜80℃)で3回洗浄し、有機溶剤を減圧下80℃にて除去しAPIBを得た。得られた重合体について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(Waters社製510型GPCシステム、移動相:クロロホルム、ポリマー濃度:2mg/ml、カラム温度:35℃、標準試料:ポリスチレン)により、数平均分子量、重量平均分子量を測定した。数平均分子量(Mn)が45500、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が1.10、含有アリル基が2.0個/molである重合体が得られた。
(比較製造例1)スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)の製造
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、注射器を用いて、n−ヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)456.1mL及び塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)656.5mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー232mL(2871mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p− ジクミルクロライド0.647g(2.8mmol)及びN,N−ジメチルアセトアミド1.22g(14mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン8.67mL(79.1mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から1.5時間同じ温度で撹拌を行った後、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、あらかじめ−70℃に冷却しておいたスチレンモノマー77.9g(748mmol)、n−ヘキサン23.9mLおよび塩化ブチル34.3mLの混合溶液を重合容器内に添加した。該混合溶液を添加してから45分後に、約40mLのメタノールを加えて反応を終了させた。
反応溶液から溶剤等を留去した後、トルエンに溶解し2回水洗を行った。さらにトルエン溶液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。得られた重合体について、GPC法(Waters社製510型GPCシステム、移動相:クロロホルム、ポリマー濃度:2mg/ml、カラム温度:35℃、標準試料:ポリスチレン)により、数平均分子量、重量平均分子量を測定した。スチレン添加前のイソブチレン重合体のMnが50,000、Mw/Mnは1.40であり、スチレン重合後のブロック共重合体のMnが67,000、Mw/Mnが1.50であるブロック共重合体が得られた。
(実施例1)
[工程1](A)成分APIB、PP、OILを表1に示した割合で合計40gになるように配合し、170℃に設定したラボプラストミル(東洋精機社製)を用いて3分間溶融混練し、次いで架橋剤を表1に示した割合で添加し、架橋触媒を16μl添加後、トルクの値が最高値を示すまで170℃でさらに溶融混練し動的架橋を行った。トルクの最高値を示してから5分間混練後、組成物を取り出した。
[工程2]工程1で得られた組成物と(B)成分EVOH−1を表1に示した割合で合計40gになるように配合し、170℃に設定したラボプラストミルを用いて10分間溶融混練し取り出した。得られた熱可塑性エラストマー組成物は190℃で加圧プレス(神藤金属工業社製)にて容易にシート状に成形することができた。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み特性、100%モジュラス、引っ張り特性、ガスバリアー性を上記方法に従って測定した。それぞれのシートの物性を表1に示す。
(実施例2)
(B)成分をEVOH−2に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を成形し、物性を評価した。それぞれの物性を表1に示す。
(比較例1)
(B)成分を配合せず、PPを11重量部から25重量部に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を成形し、物性を評価した。それぞれの物性を表1に示す。
(比較例2)
(B)成分EVOH−1と、SIBS、OILを表1に示した割合で合計40gになるように配合し、170℃に設定したラボプラストミル(東洋精機社製)を用いてトルクの値が最高値を示すまで溶融混練を行い、最高値を示してから5分間混練後取り出した。得られた熱可塑性エラストマー組成物は、190℃で加圧プレス(神藤金属工業社製)にてシート状に成形することができた。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み特性、100%モジュラス、引っ張り特性、ガスバリアー性を上記方法に従って測定した。それぞれのシートの物性を表1に示す。
(比較例3)
(B)成分をEVOH−2に変更した以外は比較例2と同様にして樹脂組成物を成形し、物性を評価した。それぞれの物性を表1に示す。
(比較例4)
(B)成分をPPに変更した以外は比較例2と同様にして樹脂組成物を成形し、物性を評価した。それぞれの物性を表1に示す。
Figure 2005187719
本発明の熱可塑性エラストマー組成物、すなわち実施例1〜2は、比較例1〜4と比べて、同等の硬度、100%モジュラス、引張破断強度、引張破断伸び、及び、ガスバリアー性(酸素透過係数)を示し、かつ、圧縮永久歪み特性が22〜27%と良好な値を示すことがわかった。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ガスバリアー性、圧縮永久歪み特性に優れ、さらに柔軟性、耐湿性等も有するため、パッキング材、シール材、ガスケット、栓体などの密封用材や、光学ドライブ用ダンパー、ハードディスクドライブの駆動装置用インシュレーター、土木・建築用ダンパー、自動車用制振材、鉄道車両用制振材、家電製品用制振材、防振材、自動車内装材、クッション材、日用品、電気部品、電子部品、スポーツ部材、グリップ、緩衝材、電線被覆材、包装材、各種容器、文具部品等として有効に使用することができる。

Claims (17)

  1. (A)末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体が、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーおよびオレフィン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の存在下で、ヒドロシリル基含有化合物により溶融混練下で架橋された組成物、
    (B)エチレン−ビニルアルコール系共重合体、
    からなることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
  2. (A)成分において、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体100重量部に対し、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーおよびオレフィン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の含有量が5〜100重量部であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. (A)成分の合計量100重量部に対し、(B)成分の含有量が5〜100重量部であることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. (A)成分中の、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体100重量部に対し、さらに軟化剤(C)を1〜300重量部含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. (A)成分中の、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体が、アリルトリメチルシランと塩素の置換反応により末端にアリル基が導入されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  6. (A)成分中の、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体の数平均分子量が、1,000〜500,000であり、1分子あたり少なくとも0.2個のアルケニル基を末端に有する重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  7. (A)成分中の、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体が、イソブチレン単位を50重量%以上含む重合体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  8. (A)成分中の芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーが、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(a)とイソブチレンを主体とする重合体ブロック(b)からなるブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  9. (A)成分中の芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーが、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(a)−イソブチレンを主体とする重合体ブロック(b)−芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(a)の構造を示す数平均分子量が40,000〜200,000のトリブロック共重合体であることを特徴とする請求項8に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  10. (A)成分中のオレフィン系樹脂がポリプロピレンであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  11. (A)成分中のオレフィン系樹脂がポリエチレンであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  12. (A)成分中のオレフィン系樹脂がランダムポリプロピレンであることを特徴とする、請求項10に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  13. (A)成分中のオレフィン系樹脂が高密度ポリエチレンであることを特徴とする、請求項11に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  14. 軟化剤(C)がパラフィン系オイルであることを特徴とする請求項4〜13のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  15. 請求項1〜14のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる成形品。
  16. 請求項1〜14のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物からなるシートまたはフィルム。
  17. 請求項1〜14のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる層および他の材料からなる層を有する積層構造体。
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