JP2005181578A - エレクトロクロミック装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 エレクトロクロミック装置を設計する際しては、着色状態と消色状態とが化学的に制御可能であり、高い吸光度変化率を有ししかも繰り返し使用可能な信頼性に富んだクロミック材料が求められているところ、このようなクロミック材料を得ることが困難であった。本発明は、このような材料問題を解決し、これによって優れたエレクトロクロミック装置を提供しようというものである。
【解決手段】 第1の電極と、第2の電極と、電解質媒体と、第1の電極と第2の電極の間に電位を印加する回路とを含み、前記第1の電極上に酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜が設置され、電解質媒体が酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜と第2の電極の双方に接触することによって信頼性の高い安定に作動する酸化着色型エレクトロクロミック装置を提供するものである。
【選択図】 図5

Description

本発明は、エレクトロクロミック材料としてマンガン酸化物を用いたエレクトロクロミック装置に関する。
エレクトロクロミック材料では、金属イオンの価数の電気化学的な変化により吸光度が変化するため、着色状態と消色状態を可逆的に選択できる。この効果を利用してディスプレイ、フィルター、スマートウィンドウ、防眩ミラー、記憶装置などのエレクトロクロミック装置が実現される。一般にエレクトリッククロミック材料は、低電圧・低電力で動作することやメモリ性があるなどの魅力的な特徴を持っているが、大きな吸光度変化率と高信頼性を両立させた材料の開発が難しいという問題があるため、還元着色性を示す酸化タングステンを用いたエレクトロクロミック装置を除いて実用化に至っているものは少ない。
とくに、還元着色性を示す酸化タングステンに酸化着色性を示すエレクトロクロミック材料を組み合わせると、より大きな吸光度変化が得られるので、着色効率に優れた相補型エレクトロクロミック装置が可能となる。このため、吸光度変化率が大きく信頼性の高い酸化着色性エレクトロクロミック材料の開発が強く望まれていた。このような材料としてマンガン酸化物が注目されているが、吸光度変化率と信頼性の両立は困難で実現していなかった。
例えば、電解析出法で形成された二酸化マンガンで1万回の着消色が可能な長寿命薄膜が報告されているが(非特許文献1)、その吸光度変化率は小さく、実用的なエレクトロクロミック装置とは言えないものであった。また、スピネル型マンガン酸化物LixMn24(0≦x≦1)は、Liイオン抽出/挿入反応によりマンガンの3価/4価の酸化還
元を伴うため大きな吸光度変化率を示すが、陰極にバイアスされ3価となると、ヤン・テラー歪みに起因する立方晶から正方晶への相転移が起こるため構造的な高信頼性が得られにくい、といった問題があった。
また、層状マンガン酸化物については、層間距離が大きいためアルカリ金属イオンの抽出/挿入反応が容易に行われると期待される材料である。しかし、これも陰極にバイアスされる際にマンガン酸化物の還元が進み過ぎるため、Mn34が形成され、電気化学的に酸化できない状態となる欠点があった。
表面技術 40巻 第7号(1989年発行) 第840−844頁
本発明は、以上述べた従来技術を前提としてなされたものであって、エレクトロクロミック装置を設計するにおいては、着色状態と消色状態とが化学的に制御可能であり、すなわち、高い吸光度変化率を有ししかも繰り返し使用可能な信頼性に富んだクロミック材料が求められているところ、このようなクロミック材料を得ることが困難であった。本発明は、基本的にこの材料問題を解決し、これによって優れたエレクトロクロミック装置を提供しようというものである。
そのため本発者らにおいては鋭意研究した結果、クロミック材料としては、本発明者ら
グループが開発し先に特許出願した、酸化マンガンナノシートとポリマーとが交互に積層されることによって得られてなる酸化マンガンナノシート超薄膜(特許文献1参照)を使用したところ、この酸化マンガンナノシート超薄膜はクロミック材料として極めて優れていること、すなわち、着色状態と消色状態とが化学的に容易に制御可能であり、高い吸光度変化率を示し、反復再現性、信頼性に富んでいることを見いだした。
特願2002−142285
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、その構成は、以下(1)〜
(4)に記載のとおりである。
(1) 第1の電極と、第2の電極と、電解質媒体と、第1の電極と第2の電極の間に電位を印加する回路とを含み、前記第1の電極上に酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜が設置され、電解質媒体が酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜と第2の電極の双方に接触することを特徴とする、酸化着色型エレクトロクロミック装置。
(2) 第1の電極と、第2の電極と、電解質媒体と、第1の電極と第2の電極の間に電位を印加する回路とを有し、前記第1の電極上に酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜が設置され、第2の電極上に酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化タングステンと酸化モリブデンの混合酸化物の群から選ばれた還元着色膜が設置され、電解質媒体が酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜と還元着色膜の双方に接触することを特徴とする相補型エレクトロクロミック装置。
(3) 前記酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜の設定手段が、層状マンガン酸化物原料を単層剥離して分散したコロイド溶液と、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)、ポリエチレンイミン(PEI)および塩酸ポリアリルアミン(PAH)からなる群から選ばれる1種または2種以上のポリマーを含む水溶液とに、第1の電極を交互に浸漬することによって、酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜を第1の電極上に形成させることを特徴とする、前記(1)ないし(2)に記載のエレクトロクロミック装置。
(4) 電解質媒体がLi、K、Na、Rb、Csを含むアルカリ金属塩と、Mg、Caを含むアルカリ土類金属塩と、4級アンモニウム塩と、環状4級アンモニウム塩とからなる群から選ばれた1種類以上の塩を含むことを特徴とする前記(1)ないし(2)記載のエレクトロクロミック装置。
本発明において使用する酸化マンガンナノシート超薄膜は、吸光度変化率が大きく、信頼性が高く、着色むらや消色むらのないクロミック材料としての特性を充分に備えており、その作用効果については後述するが、この超薄膜を酸化着色膜として採用することにより、高性能・高信頼性のディスプレイやフィルター、スマートウィンドウ、防眩ミラー、記憶装置などのエレクトロミック装置が実現される。
この超薄膜の膜厚は、酸化マンガンナノシートが懸濁したコロイド溶液とカチオンポリマー溶液に基板を交互に浸漬する操作の反復回数によって決定され、超薄膜は大面積の基板上にも完全に均一な膜厚分布をもって形成されるという特徴も有している。スパッタリング法などの成膜法で形成される従来の薄膜に較べても、均一性に優れた成膜が得られ、さらに、凹凸のある基板表面にも均一な膜厚で成膜できる。このような基板への均一膜厚の成膜は、従来のスパッタリング法による成膜では極めて困難であったことであり大きな利点の一つである。
また、この酸化マンガンナノシート超薄膜は、10nm以下の膜厚でも紫外可視領域で大きな吸光度を示し、大きな吸光度変化率と高い信頼性という優れたエレクトロクロミッ
ク材料として優れた機能を有し、これによって以下に列記する数々の優れた特徴を備えたエレクトロクロミック装置が提供される。
すなわち、1)大面積にわたって均一な膜厚の成膜が可能であるので大面積で色むらのないエレクトロクロミック装置が提供可能となる、2)従来の典型的なエレクトロクロミック材料である酸化タングステン薄膜を用いた場合、実用的な着色を得るには200nmの膜厚が必要であったのに対し、1/20の膜厚で実用的な着色が得られるので、材料使用量の少ない経済的なエレクトロクロミック装置が提供可能となる、3)凸レンズ状の表面形状を有した基板上にも均一な膜厚で成膜可能であるため、視野角の大きなエレクトロクロミック表示装置が提供可能となる。
ここに、本発明のエレクトロクロミック装置において採用されたマンガン酸化物は、酸化マンガンナノシートとポリマーとが交互に積層された超薄膜体であり、本発明者らによって開発されたものであることは前述したとおりである。その製造プロセスは、酸化マンガンナノシートが懸濁したコロイド溶液とカチオンポリマー溶液に基板を交互に浸漬する操作を反復することにより、基板上にナノシートとポリマーをそれぞれ吸着させ、該両成分がサブnm〜nmレベルの間隔で交互に繰り返してなる膜を積層させることによって形成される(特許文献1参照)。 本発明者らにおいては、このプロセスによって形成された超薄膜体のエレクトロクロミック特性についてさらに精査したところ、この超薄膜が大きな吸光度変化率と高い信頼性を有することを見出した。以下に、本発明で使用する超薄膜体の準備とそのエレクトロクロミック特性について詳述する。
先ず、インジウム−スズ酸化物が被着されたガラス基板(ITOガラス基板と称する)を用意し、このガラス基板を酸化マンガンナノシートが懸濁したコロイド溶液とカチオンポリマー溶液に交互に浸漬する操作を10回反復することにより、基板上にナノシートとポリマーをそれぞれ吸着させ、酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された膜厚9.3nmの超薄膜をITOガラス基板上に形成した。膜厚は、積層構造からのX線回折ピーク角度から決定した。その結果、積層周期が膜厚方向に正確に0.93nmの厚さで堆積されていることが明らかとなった。
この超薄膜が被着されたITOガラス基板を作用電極とし、銀を参照電極としたときのサイクリックボルタンモグラムを図1に示す。溶液は0.1moldm-3 の過塩素酸リチウムを含み、対電極は白金である。参照電極に対する作用電極の電位を−1.5Vから+1.0Vの間で20mVs-1の掃引速度で変化させたときの作用電極における電流密度を縦軸にプロットした。
その結果、順方向で電流値が最大となるピークは、酸化によるマンガンの価数の増大反応に対応し、逆方向で電流が最小となる谷は、還元によるマンガンの価数の減少反応に対応することが明らかとなった。電位掃引前の超薄膜中のマンガンの価数は、滴定法から3.87と決定された。また、このときの参照電極に対する作用電極電位は、0.218 Vであった。ピークおよび谷が各一つということおよびその形状から、価数変化は1であることが明白であるので、マンガンの価数はマイナス電位側で3価とプラス電位側で4価であると予測される。
図2の(a)と(b)は、それぞれ作用電極電位が−1.5Vと+1.0Vのときの作用電極の紫外可視吸収スペクトルである。−1.5Vに対して+1.0Vでは吸光度が大きく、着色していることがわかる。一般に、吸収スペクトルの強度は測定に供せられる薄膜の膜厚によって変化する。したがって、膜厚の不均一性は、吸収強度の不均一性となって現れる。本発明に用いた超薄膜は、膜厚の均一性が完璧であるので、吸収強度の不均一性がない。このため、本発明に用いた超薄膜は、従来のエレクトロクロミック材料の欠点であった着色むらと消色むらがないという優れたエレクトロクロミック特性を示した。
波長404nmでの吸光度の作用電極電位依存性を図3に示す。図3の横軸の電位変化を図1のサイクリックボルタンモグラムの結果を用いて電荷量変化に変換したのが、図4である。吸光度は電荷量に対しほぼ線形に変化していることがわかる。図4の傾きから吸光度変化率は54.8cm2-1と決定された。この値はマンガン酸化物としては最大級
の値である。
マンガンの価数は電荷量に対し線形に変化すると考えられる。このような線形依存性と滴定法から3.87と決定された電位掃引前の作用電極電位0.218Vの値を用いれば、外挿法により図4から−1.5Vと+1.0Vでの価数を正確に決定できる。決定された価数は−1.5Vで3価、+1.0Vで4価であった。したがって、超薄膜中のすべてのマンガンイオンが酸化還元反応に預かっていると考えられる。
サイクリックボルタンモグラムの測定を繰り返し行い、そのときの吸光度変化率を調べた。1万回の繰り返しに対して吸光度変化率は劣化しなかった。また、1万回の繰り返し後の超薄膜の構造をX線回折により解析したが、構造変化は認められなかった。このように、酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜では、大きな吸光度変化率と高信頼性が両立されていることが本発明により明らかになった。
大きな吸光度変化率が得られるのは、酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された構造であるため、エレクトロクロミズムを誘起するのに必要なリチウムイオンの挿入・脱離が容易に起こりやすく、かつポリマー中でのリチウムイオンの拡散係数が大きくポリマー層の厚さがサブnm〜nmレベルと十分薄いため、拡散したリチウムイオンは効率的にマンガンを還元できるからである。
また、高い信頼性が得られるのは、酸化マンガンナノシート間にはポリマーが充填されているため、リチウムイオンが超薄膜中に挿入されマンガンが還元されても、酸化マンガンナノシートを構成するMnO6八面体の構造的な変化が抑制されるためである。この結
果、着消色の繰り返しによっても信頼性が損なわれることはない。
本発明によるエレクトロクロミック装置の第1の形態は、酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜を酸化着色層として有する酸化着色型エレクトロクロミック装置であり、前記(1)に記載の構成を有することを特徴としており、第2の形態は、相補型エレクトロクロミック装置であり、前記(2)に記載の構成を有することを特徴としている。
ここで、酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜は、特許文献1に開示された構造を有する。具体的には2次元結晶子がMnO2で示される酸化マンガン
ナノシートと、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)、ポリエチレンイミン(PEI)および塩酸ポリアリルアミン(PAH)からなる群から選ばれる1種または2種以上のポリマーの両成分がサブnm〜nmレベルの間隔で交互に積層された構造を有している。超薄膜が、前述したように、第1の電極上に酸化マンガンナノシートとポリマーを交互に積層することによって形成された場合には、その膜厚は積層回数によって決定され、超薄膜は第1の電極上に完全に均一な膜厚分布をもって形成される。また、超薄膜は凹凸のある表面上にも均一な膜厚をもって形成される。したがって、着色むらと消色むらのないエレクトロクロミック装置や凸レンズ上の形状を有する表面に形成された視野角の大きなエレクトロクロミック装置が提供される。
着色と消色との間で大きなダイナミックレンジの吸光度変化を得るのに最適な超薄膜の
厚さは、5nm以上30nm以下である。5nm未満では、充分な着色が得られず、30nmを越えると、充分な消色が得られないからである。しかし、大きなダイナミックレンジを必要としないエレクトロクロミック装置では、上記範囲外の膜厚の超薄膜も使用される。
第1の電極は、透明導電体であっても不透明導電体であってもよい。また、第1の電極が第1の基板上に設けられた場合には、第1の基板は、透明であっても不透明であってもよい。すなわち、エレクトロクロミック装置がスマートウィンドウやフィルターである場合には、第1の電極は透明な第1の基板上に設置された透明導電体である。エレクトロクロミック装置が防眩ミラーやディスプレイである場合には、不透明な第1の基板上に設置された透明もしくは不透明導電体であっても、透明な第1の基板上に設置された透明もしくは不透明導電体であってもよい。また、エレクトロクロミック装置が多層光ディスク型の記憶装置である場合には第1の電極は透明導電体である。
したがって、前記の第1の電極は、ガラスやエポキシ樹脂などの公知の透明な第1の基板もしくは半導体や金属などの公知の不透明な第1の基板上に設置された透明導電体もしくは不透明導電体である。該透明導電体としてはインジウム−スズ酸化物およびフッ素をドーピングしたスズ酸化物からなる群から選択される。また、該不透明導電体としては、白金、金、アルミニウム、鉄、ニッケル、タングステン、チタン、モリブデン、高濃度に不純物がドープされたポリシリコンからなる群から選択されるが、その他の公知の不透明導電体であってもよい。
第2の電極上に還元着色膜を設けない場合には、電解質媒体が酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜と第2の電極の双方に接触する構成に配置することにより、エレクトロクロミック装置は本発明によるエレクトロクロミック装置の第1の形態である酸化着色型エレクトロクロミック装置として機能する。
第2の電極上には、還元着色膜を設ける場合には、電解質媒体が酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜と還元着色膜の双方に接触する構成に配置することにより、エレクトロクロミック装置は本発明によるエレクトロクロミック装置の第2の形態である相補型エレクトロクロミック装置として機能する。すなわち、第1の電極を第2の電極に対し正の電位にバイアスすると酸化着色膜と還元着色膜はともに着色し、負の電位にバイアスすると両膜とも消色する。
還元性着色膜は、酸化タングステン、酸化モリブデン、および酸化タングステンと酸化モリブデンの混合酸化物からなる群から選択された無機薄膜からなる。また、還元性着色膜は、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリベンジジン、ポリイソアナフテンからなる導電性高分子化合物群から選択された有機薄膜であってもよい。
相補型および酸化着色型のエレクトロクロミックセルの応用形態、すなわち、スマートウィンドウ、フィルター、防眩ミラー、ディスプレイ、記憶装置などの動作に応じて第2の電極および第2の電極が設置される第2の基板の材質が選択される。したがって、前記の第2の電極は、ガラスやエポキシ樹脂などの公知の透明な第2の基板もしくは半導体や金属などの公知の不透明な第2の基板上に設置された透明導電体もしくは不透明導電体である。透明導電体としてはインジウム−スズ酸化物およびフッ素をドーピングしたスズ酸化物からなる群から選択される。不透明導電体としては、白金、金、アルミニウム、ニッケル、タングステン、チタン、モリブデン、高濃度に不純物がドープされたポリシリコンからなる群から選択されるが、その他の公知の不透明導電体であってもよい。
第1の電極が形成される第1の基板と第2の電極が形成される第2の基板は、第1の電
極と第2の電極が電気的に絶縁されていれば、同一であってもよい。相補型エレクトロクロミック装置を構成する場合には、通常、第1の基板と第2の基板は別物であり、かつ空間的に対向して配置される。この場合、電解質媒質は2つの基板に挟まれた空間に配置される。しかし、同一の透明基板の表面と裏面に分けて第1の電極と第2の電極を配置することも可能である。この配置を選択した場合、電解質媒体での電位降下を避ける目的で、透明基板に電解質媒体が通過可能な開口部を設けることが可能である。
電解質媒体は、液系であってもゲル化液系であってもよい。液系としては、溶媒に塩類、酸類、アルカリ類などの支持電解質を溶解したものなどを用いることができる。上記液系溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、極性を有するものが好ましい。具体的には、水やメタノール、エタノール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトアニリル、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトン、テトラグライム、スルホラン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、プロピオンニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジン、ジオキソラン、トリメチルホスフェイト、ポリエチレングリコールなどから選択される。これらは使用に当たって単独もしくは混合物として使用できる。
支持電解質としての塩類は、特に限定されず、Li、K、Na、Rb、Csを含む各種のアルカリ金属塩と、Mg、Caを含むアルカリ土類金属塩や、4級アンモニウム塩および環状4級アンモニウム塩などがあげられ、具体的にはLiClO4、LiSCN、Li
BF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiPF4、LiI、NaI、NaSCN、Na
ClO4、NaBF4、NaAsF6、KSCN、KClなどのLi、K、Naのアルカリ
金属塩や、(CH34NBF4、(C254BNF4、(n−C494NBF4、C25
4NBr、C254NClO4、(n−C494NClO4などの4級アンモニウム塩
および環状4級アンモニウム塩など、もしくはこれらの混合物が好適なものとして挙げられる。
支持電解質としての酸類は、特に限定されず、無機酸、有機酸などが挙げられ、具体的には硫酸、塩酸、燐酸類、スルホン酸類、カルボン酸類などが挙げられる。支持電解質としてのアルカリ類は、特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどが挙げられる。
ゲル化液系電解質媒体としては、上記液系電解質媒体に、さらにポリマーや無機粒子からなる充填剤を含有させたり、ゲル化剤を含有させたりしてゲル状としたものなどを用いることができる。用いるポリマーとしては、特に限定されず、ポリアクリルニトリル、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキサイド、ポリシラン、ポリカーボネート、ポリビニルアセテート、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリアクリルアミド、セルロース、ポリエステル、ポリプロピレンオキサイド、ナフィオンなどが挙げられる。無機粒子からなる充填剤としてはポリシラン、シリカ、アルミナ、酸化セリウム、酸化亜鉛などが挙げられる。また、ゲル化剤としては、特に限定されず、オキシエチレンメタクリレート、オキシエチレンアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリルアミド、寒天などが挙げられる。
以下、超薄膜の合成例と実施例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
実施例1;
酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜3を以下のように第1の
電極2上に形成した。すなわち、まず、層状マンガン酸カリウムK0.45MnO2を酸処理
して得られる層状マンガン酸H0.13MnO2・0.7H2O 0.4gをテトラブチルアンモニウム水酸化溶液100cm3に加えて室温で1週間振とうし、酸化マンガンナノシー
トが分散したコロイド溶液を得た。これを希釈し濃度を0.08g dm-3とし、さらに塩酸を添加してpHを9に調整した。一方2重量%のポリジアリルジメチルアンモニウム(PDDA)塩化物水溶液を調整し、そのpHを9に調整した。次にガラス板である第1の基板1の一方の表面に厚さ0.4μmのインジウム−スズ酸化物透明導電層からなる第1の電極2を形成し、他の表面をフォトレジスト膜で覆った後、メルク製ExtranMA02の2%液およびMilli−Q純水で洗浄した。
次にこの第1の基板を濃度0.25重量%のポリエチレンイミン水溶液中に20分間浸漬し、Milli−Q純水で充分に洗浄した。このようにして洗浄・前処理を行った第1の基板を1)上記の酸化マンガンナノシートコロイド溶液に浸漬した。2)20分経過後、Milli−Q純水で充分に洗浄し、アルゴン気流を吹き付けて乾燥させた。3)次にこの基板をPDDA溶液に20分間浸漬し、4)続いてMilli−Q純水で充分に洗浄した。以上の1)〜4)の操作を10回反復することにより、厚さ9.3nmからなる酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜3を第1の基板1上に設けられた第1の電極2上に合成した。さらに、裏面のフォトレジスト膜を除去することにより、第1の基板の裏面にガラス部を露出させた。このようにして、酸化着色膜が形成された第1の基板を作成した。
ガラス板からなる第2の基板4の一方の表面に上に第2の電極5となる厚さ0.4μmのインジウム−スズ酸化物透明導電層を設け、さらにその上に厚さ0.2μmの酸化タングステンからなる還元着色膜6をスパッタ法により形成した。このようにして、還元着色膜が形成された第2の基板を作成した。
さらに、図5に示すように、酸化タングステン層6と酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜3が対向するように第1の基板と第2の基板を配置して、厚さ0.1mmのスペーサ7で挟み、エポキシ樹脂で接着後、この間隙に電解質媒体8として0.1 mol dm-3の過塩素酸リチウムLiClO4を含むプロピレンカーボネー
ト溶液を注入した。
第1の基板のガラスが露出した表面に波長404nmの光を入射させたときの第2の基板の裏面からの透過光強度は、第1の電極の第2の電極に対する電位によって制御することができる。上記電位を−3Vに設定した時に較べ、+3Vに設定した時の透過光強度は1/10に減衰した。−3Vと+3Vの電位印加を1万回繰り返したが、透過光強度の制御特性の劣化は認められず、高性能・高信頼なエレクトロクロミックフィルターが実現した。
第1の電極上に設置された超薄膜の膜厚は均一であるので、着色むらと消色むらのないエレクトロクロミックフィルターが実現した。また、超薄膜の膜厚は、酸化マンガンナノシートコロイド溶液とPDDA溶液への交互の浸漬回数によって決定されるため、特性がそろったエレクトロクロミックフィルターを再現性よく作成できるという特徴がある。
本実施例に示したエレクトロクロミック装置は、電位印加により紫外線を減衰できるので、フィルターとしての応用のほかにスマートウィンドウとしての応用にも供せられることは言うまでもない。
本発明は、本発明者グループが先に特許出願した酸化マンガンナノシート超薄膜をクロ
ミック材料として選定使用したことにより、大きな吸光度変化率と高い信頼性という基本的な性能を備えていることは勿論、大型化や、経済性、複雑な表面形状設計にも対応しうるといった数々の特徴を備えたエレクトロクロミック装置の設計可能となったもので、その意義は極めて大きい。今後、エレクトロクロミック装置は、ディスプレイ、スマートウィンドウ、防眩ミラー、記憶装置等の諸分野において使用され、発展していくことが予想されることを考えると、これら機器を利用した技術分野を始め、広く産業の発展に大きく寄与し、貢献するものと期待される。
本発明に用いた超薄膜のサイクリックボルタンモグラムを示すグラフである。 本発明に用いた超薄膜の紫外可視吸収スペクトルを示すグラフであり、(a)と(b)は、それぞれ作用電極電位が−1.5Vと+1.0Vのときのスペクトルである。 本発明に用いた超薄膜の波長404nmにおける吸光度の作用電極電位依存性を示すグラフである。 本発明に用いた超薄膜の波長404nmにおける吸光度の電荷量依存性を示すグラフである。 実施例1により作成されたエレクトロクロミックフィルターの構造を示す断面図である。
符号の説明
1;第1の基板
2;2は第1の電極
3;酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜
4;第2の基板
5;第2の電極
6;還元着色膜
7;スぺーサー
8;電解質媒体

Claims (4)

  1. 第1の電極と、第2の電極と、電解質媒体と、第1の電極と第2の電極の間に電位を印加する回路とを含み、前記第1の電極上に酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜が設置され、電解質媒体が酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜と第2の電極の双方に接触することを特徴とする、酸化着色型エレクトロクロミック装置。
  2. 第1の電極と、第2の電極と、電解質媒体と、第1の電極と第2の電極の間に電位を印加する回路とを有し、前記第1の電極上に酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜が設置され、第2の電極上に酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化タングステンと酸化モリブデンの混合酸化物の群から選ばれた還元着色膜が設置され、電解質媒体が酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜と還元着色膜の双方に接触することを特徴とする相補型エレクトロクロミック装置。
  3. 前記酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜の設定手段が、層状マンガン酸化物原料を単層剥離して分散したコロイド溶液と、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)、ポリエチレンイミン(PEI)および塩酸ポリアリルアミン(PAH)からなる群から選ばれる1種または2種以上のポリマーを含む水溶液とに、第1の電極を交互に浸漬することによって、酸化マンガンナノシートとポリマーが交互に積層された超薄膜を第1の電極上に形成させることを特徴とする、請求項1または2記載のエレクトロクロミック装置。
  4. 電解質媒体がLi、K、Na、Rb、Csを含むアルカリ金属塩と、Mg、Caを含むアルカリ土類金属塩と、4級アンモニウム塩と、環状4級アンモニウム塩とからなる群から選ばれた1種類以上の塩を含むことを特徴とする請求項1または2記載のエレクトロクロミック装置。

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