JP2005179745A - 二方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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哲雄 峠
Akio Fujita
明男 藤田
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Abstract

【課題】二次再結晶により{100}<001>方位集積度を向上させた二方向性電磁鋼板を提供する。
【解決手段】一次再結晶集合組織について、{110}<001>方位から20〜45°の方位差を有し、かつ{110}<001>方位と対応方位関係ではない方位の存在比率を70%以下に低減すると共に、{100}<001>方位から20〜45°の方位差を有し、かつ{100}<001>方位と対応方位関係ではない方位の存在比率を70%以上に高める。
【選択図】なし

Description

本発明は、{100}<001>方位集積度の高い二方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
電磁鋼板の磁気特性は、結晶方位の影響を受けるものであり、結晶粒の磁化容易軸<001>が鋼板面に平行になっていることが優れた磁気特性を得る上で必要なこととして知られている。
通常、電磁鋼板は、無方向性電磁鋼板と方向性電磁鋼板に大別される。無方向性電磁鋼板は、集合組織の発達が弱く、板面内に<001>軸が平行である結晶粒の比率が方向性電磁鋼板に比べて小さいため、方向性電磁鋼板ほど良好な磁気特性は得られない。
これに対し、方向性電磁鋼板は、二次再結晶により、{110}<001>方位粒を優先的に成長させることにより、圧延方向に<001>が高度に集積している。そのため、圧延方向に磁化する場合には、優れた磁気特性を示すので、変圧器の鉄心材料などに使用する場合には適している。
しかしながら、板面内には磁化が最も困難である<111>軸も含まれているため、この方向に磁化する場合には磁気特性は極めて悪い。そのため、モーターや発電機の鉄心材料のように面内のあらゆる方向で良好な磁気特性を必要とする場合には、一方向性電磁鋼板を使用しても良好な磁気特性は得られない。
これらの電磁鋼板に対して、{100}面が圧延面と平行な結晶組織をもつ電磁鋼板を製造することができれば、圧延面内には<100>軸が多く、また<111>軸が存在しないため、磁気特性的には極めて有利である。特に、圧延面が{100}で<001>軸の方向がランダムである{100}<uvw>組織は、面内における磁気特性の異方性がなくなるので、モーター用の材料としては理想的である。
上記したような{100}<uvw>組織を発達させる試みは古くからなされてきた。例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3には、無方向性電磁鋼板の製造法に改良を加えることにより、{100}組織を発達させる技術が開示されている。しかしながら、これらの技術では、集積度の高い{100}組織は得られておらず、磁気特性の改善は不十分であった。この理由は、一次再結晶により特定方位の集積度を高度に高めることには限界があることによるものと考えられる。
一方、二次再結晶により{100}<001>組織を発達させる、いわゆる二方向性電磁鋼板の製造方法も古くから検討されている。
例えば、特許文献4には、一方向に冷間圧延したのち、さらにこの方向と交差する向きに冷間圧延を加え、短時間焼鈍と 900〜1300℃での高温焼鈍を行う、いわゆるクロス圧延により、{100}<001>方位粒をインヒビターを利用して二次再結晶させる方法が提案されている。また、特許文献5には、熱延方向に対して直角の方向に50〜90%の圧下率で冷延したのち、一次再結晶を目的とする焼鈍を施し、ついで二次再結晶と純化を目的とする最終仕上焼鈍を施して、{100}<001>方位粒をAlNを利用して二次再結晶させる方法が提案されている。
しかしながら、これらの技術では、生産性が極めて低いクロス圧延が不可欠であるため、工業的に大量生産されるまでには至っていない。
その後、特許文献6において、鋼中の不純物を低減し、インヒビターを用いずに二次再結晶させる方法によって、{100}<001>方位を発達させる技術が開示された。
しかしながら、この方法では、{110}<001>方位も成長するため、完全な二方向性電磁鋼板にはならず、{100}<001>方位と{110}<001>方位が混在する組織とならざるを得なかった。
一部の小型電気機器においては、完全な二方向性電磁鋼板よりも、{100}<001>方位と{110}<001>方位が混在した電磁鋼板の方が、実機において鉄損特性が優れる場合もあるけれども、かような混在組織を有する電磁鋼板では用途が狭く限定されてしまうという問題があった。
上述したとおり、従来から、珪素鋼の二次再結晶に関する研究は数多く行われてきたが、{110}<001>方位は他の方位よりも圧倒的に成長し易いという特徴があるため、これまでのところ{110}<001>方位以外の方位を優先的に成長させる技術は確立されていない。
{110}<001>方位と{100}<001>方位を比較すると、前者は圧延方向には<001>軸が揃っているものの、圧延直角方向は<011>軸となり、この方位の磁化容易性は<001>軸に比べると劣っている。一方、後者は圧延方向、圧延直角方向ともに、磁化が容易な<001>軸である。変圧器の典型例の一つであるEI型コアの鉄心材料として使用する場合、磁束の流れは圧延方向と圧延直角方向の両方にまたがるので、後者の方が有利であることは言うまでもない。また、{110}<001>方位は板面内に磁化が最も困難な<111>軸を含んでいるが、{100}<001>方位は含んでいないという利点もある。さらに、{100}<001>方位は板面に{100}面が揃っているので、モーターにも有利であることは言うまでもない。
従って、{100}<001>方位を安定して二次再結晶させることは、非常に有益であるが、従来技術では二次再結晶によって成長する粒は、圧倒的に{110}<001>方位付近に限定される性質があり、これまでのところ{100}<001>方位を二次再結晶させるための工業化可能な製造方法は見出されていない。
特公昭51−942 号公報 特公昭57−14411 号公報 特開平5−5126号公報 特公昭35−2657号公報 特開平4−362132号公報 特開2001−158950号公報
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、二次再結晶により{100}<001>方位集積度を効果的に向上させた二方向性電磁鋼板の有利な製造方法を提案することを目的とする。
従来から、二次再結晶にはインヒビターと呼ばれる析出物が重要な役割を果たしていることが報告されてきた。すなわち、最終仕上焼鈍において二次再結晶を生じさせる際、粒界上でこのインヒビターが粒界の移動をピン止めし、一次再結晶粒の正常粒成長を抑制するのであるが、{110}<001>方位を囲む粒界は優先的にピン止めが外れるため、選択約に成長できると報告されてきた。
ところで、発明者らは、この二次再結晶のメカニズムについて鋭意研究した結果、二次再結晶には、インヒビターの存在の他に、一次再結晶組織における方位差角(隣り合う結晶の格子を重ねるのに必要な最小回転角)が重要であり、この方位差角が20〜45°の粒界(高エネルギー粒界)が二次再結晶の発現に重要な役割を果たしていることを究明し、Acta Material 45巻において報告した。
すなわち、発明者らの研究によれば、方位差角が20〜45°の高エネルギー粒界は、他の粒界に比べて移動速度が速く、一般に{110}<001>方位は、他の方位よりも方位差角が20〜45°の高エネルギー粒界で囲まれている確率が高いため、成長が優先的に進むことが突き止められた。
そこで、発明者らは、{100}<001>方位を優先的に二次再結晶させるべく、一次再結晶組織を制御して、{100}<001>方位からの方位差角が20〜45°の結晶粒を増やすことを試みた。
すなわち、鋼成分、圧延条件および焼鈍条件等を種々検討し、一次再結晶集合組織を変化させ、その後の最終仕上焼鈍での二次再結晶挙動について細かく調査した。
その結果、一次再結晶集合組織において、{100}<001>方位からの方位差角が20〜45°の結晶粒をある程度増加させることはできたが、{110}<001>方位からの方位差角が20〜45°の結晶粒もかなりの頻度で発生するため、最終仕上焼鈍後には、{100}<001>方位と{110}<001>方位の両方が二次再結晶し、完全な二方向性電磁鋼板を得ることはできなかった。
そこで、発明者らは、さらに、方位差角以外にも粒界移動に大きく影響する因子がないかについて検討した。
方位差角:20〜45°の粒界が移動し易い性質をもつ理由は次のように考えられる。
方位差角:20〜45°の粒界は、高エネルギー粒界であり、粒界内の自由空間が大きく乱雑な構造をしている。粒界拡散は、粒界を通じて原子が移動する現象であるので、粒界中の自由空間の大きい高エネルギー粒界の方が、他の粒界に比べて粒界拡散が速い。従って、高エネルギー粒界と他の粒界では移動速度差が生じる。
しかしながら、方位差角が20〜45°の範囲内であっても、粒界を挟む二つの結晶粒が、対応方位関係にある場合には、整合性が良く、粒界内の自由空間の乱れは少なくなる。
発明者らは、この性格に注目し、「方位差角が20〜45°であって、かつ対応方位関係にない粒界が移動し易い」のではないかとの考えを得るに至った。
なお、対応方位関係とは、隣り合う二つの結晶格子を延長して重ね合わせ、平行移動して格子点の一対を一致させると、格子点のうち1/Σが隣の結晶の格子点と一致する関係をいい、一致の度合いをΣ値で表す。また、一致する格子点を対応格子点といい、Σ値は対応格子点密度の逆数である。Σは、3,5,7,9,11,13,17・・・の整数で、Σ値が小さいほど、格子の一致の度合いが高い。なお、厳密な対応方位関係になくても、Brandon によれば、対応方位関係からのずれが15°/Σ1/2 以内であれば、対応方位としての性格を持つと考えられる。隣り合う二つの結晶粒が対応方位関係にある場合、その境界が対応粒界である。
さて、圧延と焼鈍によって得られる一次再結晶集合組織において、発達し易い方位はおおよそ2つに大別できる。一つのピークは{554}<225>近傍に現れる。もう一つのピークは、条件によってシフトし易いが、おおよそ{410}<001>〜{12 4 1}<014>〜{411}<148>へと向かう回転系列上に現れる。ここでは、前者をM方位、後者をS方位と呼ぶことにする。
M方位のピーク位置は、ほぼ{554}<225>であり、条件によってあまり変化しない。この{554}<225>方位は、{110}<001>方位から29.5°、{100}<001>方位から53.4°の方位差にある。従って、一次再結晶集合組織において、M方位が多くなることは、{110}<001>方位の二次再結晶に有利に作用する。
一方、S方位のピーク位置は、上述したように条件によってシフトし易い。{410}<001>方位は、{110}<001>方位から31.0°、{100}<001>方位から14°の方位差なので、{110}<001>方位の二次再結晶に有利であり、{100}<001>方位の二次再結晶に不利な方位である。{12 4 1}<014>方位は、{110}<001>方位から29.5°、{100}<001>方位から23.6°の方位差にあり、{110}<001>方位の二次再結晶にも{100}<001>方位の二次再結晶にも有利な方位である。{411}<148>方位は、{110}<001>方位から38.9°、{100}<001>方位から32.0°の方位差にあり、方位差角だけから考えると、こちらも{110}<001>方位の二次再結晶にも{100}<001>方位の二次再結晶にも有利な方位といえる。
こうしてみると、{100}<001>方位の二次再結晶には有利であって、かつ{110}<001>方位の二次再結晶には不利な方位を成長させることは、方位差角だけから考えると困難であることがわかる。
実際、従来は、二次再結晶により二方向性電磁鋼板を製造しようとしても、{110}<001>方位と{100}<001>方位が混在したものしか得られなかった。
しかしながら、方位差角に加えて、対応方位関係にも着目すると、{411}<148>方位は{110}<001>方位からちょうどΣ9の関係にある。従って、{411}<148>方位は、{100}<001>方位の二次再結晶には有利であるが、{110}<001>方位の二次再結晶には不利な方位と考えることができる。
なお、上述した方位の中で、{110}<001>方位および{100}<001>方位と対応方位関係にあるのは、Brandon の基準で評価すると{411}<148>方位と{110}<001>方位の組合わせだけである。
そこで、発明者らは、一次再結晶集合組織において、
(a) M方位の強度を弱める、
(b) S方位のピーク位置を{411}<148>方位に制御し、かつその強度を強める
ことに注力し、圧延条件および焼鈍条件等を適正に組み合わせることにより、{100}<001>方位が優先成長する二次再結晶の発現に成功したのである。
なお、二次再結晶時の対応粒界の挙動については、CAMP-ISIJ vol.14 (2001) P.1188〜1191などに「Σ9対応粒界が選択成長を促す」と報告されているように、従来は、対応粒界は他の粒界に比べて移動し易いと報告されてきた。
しかしながら、本発明は、これらの報告とは全く逆に、対応粒界が移動し難いという性格を明らかにし、この新規知見を基に、二方向性電磁鋼板の新規な製造方法を完成するに至ったのである。
すわなち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.珪素鋼スラブを、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚とし、ついで一次再結晶焼鈍後、二次再結晶のための最終仕上焼鈍を施す工程によって二方向性電磁鋼板を製造するに当たり、
一次再結晶集合組織において、{110}<001>方位から20〜45°の方位差を有し、かつ{110}<001>方位とは対応方位関係にない方位の存在比率を70%以下に低減すると共に、{100}<001>方位から20〜45°の方位差を有し、かつ{100}<001>方位とは対応方位関係にない方位の存在比率を70%以上に高めることを特徴とする二方向性電磁鋼板の製造方法。
2.珪素鋼スラブを、熱間圧延し、必要に応じて圧延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚とし、ついで一次再結晶焼鈍後、二次再結晶のための最終仕上焼鈍を施す工程によって二方向性電磁鋼板を製造するに当たり、
一次再結晶集合組織において、{554}<225>方位の集積度をランダム強度比で6以下に低減すると共に、{411}<148>方位の集積度をランダム強度比で7以上に高めることを特徴とする二方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、結晶方位が{100}<001>方位に高度に集積した二方向性電磁鋼板を安定して得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明における好適素材成分について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.003 〜0.1 %
Cは、組織改善のために 0.003%以上、0.1 %以下の範囲で添加することが好ましい。但し、製品にCが含有されていると、鉄損が時効劣化するので、製品にするまでの過程で0.0050%以下まで脱炭することが必要である。
Si:2.0 〜4.5 %
Siは、電気抵抗を増加させて鉄損を改善する働きがあり、そのためには 2.0%以上の含有が必要であるが、4.5 %を超えると冷間圧延が著しく困難となるため、Siは 2.0〜4.5%程度とするのが好ましい。
Mn:0.03〜2.5 %
Mnは、Siと同様、電気抵抗を増加させて鉄損を改善する効果があり、また製造時の熱間加工性を向上させる点でも有用な成分である。かかる目的のためには、0.03%の含有が必要であるが、2.5 %を超えて含有させた場合、γ変態を誘起して磁気特性が劣化するので、Mnは0.03〜2.5 %程度とするのが好ましい。
上記以外の元素は、特に限定しないが、基本的には高純度化するほど粒界性格(方位差角と対応粒界であるか否か)による移動度の差が顕在化するので、本発明に適している。本発明は、粒界性格による移動度の差を利用して、{100}<001>方位を二次再結晶させる技術であるので、基本的にインヒビター元素の添加は必要ない。
なお、インヒビターの添加は、必ずしも有害ではない。しかしながら、インヒビターの添加は、機構は明確ではないが、{110}<001>方位の二次再結晶に有利に働き易い。特にSe,S,OおよびNはいずれも、{100}<001>方位の二次再結晶の発現を阻害し、しかも地鉄中に残存して鉄損を劣化させるので、0.005 %以下に低減することが好ましい。
但し、Sb,SnおよびBiは、粒界偏析し易く、粒界性格による移動度の差をより顕在化させる効果があるので、適宜添加してもいい。その場合、過剰に添加すると製品のベンド特性などの機械的特性が劣化するので、Sbは 0.001%以上、0.1 %未満、Snは 0.001%以上、0.1 %未満、Biは0.0005%以上、0.05%未満程度とするのが好適である。
また、機構は明確ではないが、Alを微量添加することは、{100}<001>方位の安定した二次再結晶に有利に働く。従って、Alは0.0010%以上、0.020 %以下の範囲で添加することが好ましい。
なお、本発明では、Nは極力低減しているので、AlNをインヒビターとして機能させて二次再結晶させる従来の製造方法とは、二次再結晶のメカニズムが根本的に異なる。
その他、CuやMo,Cr等は、磁気特性の改善に有利に働くので、適宜含有させることができる。その場合、磁気特性改善効果を得るためには、Cu:0.01〜1.50%、Mo:0.005 〜0.50%、Cr:0.01〜1.50%程度添加することが好ましい。上記の範囲より添加量が少ない場合には磁気特性改善効果がなく、一方添加量が多い場合には、二次再結晶が発達しなくなり、磁気特性の劣化を招く。
次に、本発明の製造工程について説明する。
上記の好適成分組成に調整した溶鋼を、通常の造塊−分塊法や連続鋳造法によりスラブとする。また、直接鋳造法を用いて 100mm以下の厚さの薄鋳片を直接製造してもよい。
ついで、スラブを加熱し、熱間圧延を施す。本発明は、固溶−析出型のインヒビターを必要としない技術なので、スラブ加熱温度は普通鋼程度でよく、省エネルギーのためにも、スラブ加熱温度は1250℃以下程度とするのが好ましい。なお、鋳造後、加熱せずに直ちに熱間圧延に供する直接圧延法も好適に適用することができる。
上記の熱間圧延板に、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、一回または中間焼鈍を挟む二回以上の冷間圧延を施して、最終板厚とする。この冷間圧延は常温で行っても良いが、100 ℃以上の温度に昇温して圧延する温間圧延が集合組織制御の観点でより好ましい。また、冷間圧延のパス間において 150℃以上の温度域に1分以上保持する、いわゆるパス間時効処理も、本発明において好適に使用することができる。
ついで、最終冷間圧延板に、一次再結晶と脱炭のための焼鈍を施す。また、この焼鈍により、C含有量を、磁気時効の起こらない 0.005%以下、好ましくは 0.003%以下まで低減する。なお、最終冷間圧延後、または一次再結晶と脱炭のための焼鈍後に、浸珪法によってSiを増加させる技術は、鉄損を低減する方法として本発明にも好適に適用できる。
その後、必要に応じて焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上焼鈍を施す。焼鈍分離剤としては、シリカ、アルミナ、マグネシアなどの耐火物粉末のスラリー、あるいはコロイド溶液が好適である。また、これらの耐火物粉末を、静電塗布などのドライコーティングにより鋼板に付着させる方法は、最終仕上焼鈍雰囲気に水分を含ませないことから、より好適である。さらに、これらの耐火物を溶射などで表面にコーティングした鋼板を挟み込む方法も適用できる。最終仕上焼鈍は、{100}<001>方位の二次再結晶のために、800 ℃以上の温度域まで加熱して行う。さらに、フォルステライト被膜のような下地被膜を必要とする場合には、1200℃程度まで昇熱することは問題ない。
なお、鋼板を積層して使用する場合には、上記の最終仕上焼鈍後、鋼板表面に絶縁コーティングを施すことが有効である。絶縁被膜の種類は、特に限定されないが、公知の絶縁被膜いずれもが適合する。例えば、特開昭50−79442 号公報や特開昭48−39338 号公報に記載されている、リン酸塩−クロム酸−コロイダルシリカを含有するコーティング液を鋼板に塗布し、800 ℃程度で焼き付ける方法が好適である。この絶縁被膜は、二種類以上の被膜からなる多層膜であってもよいし、また用途に応じて樹脂などを混合させた被膜としてもよい。さらに、張力を付与するリン酸塩を主体とする絶縁被膜も、鉄損や騒音を低下させる上で有効である。
なお、最終仕上焼鈍後、平坦化焼鈍を施して、鋼板の形状を整えることも可能であり、この際、絶縁被膜の焼き付けを兼ねた平坦化焼鈍とすることもできる。
さて、本発明では、最終仕上焼鈍において、{100}<001>方位が優先的に二次再結晶するように、一次再結晶集合組織を制御することが最も重要である。
ここに、{100}<001>方位を優先的に二次再結晶させるための一次再結晶集合組織とは、
(A) {110}<001>方位から20〜45°の方位差を有し、かつ{110}<001>方位と対応方位関係ではない方位の存在比率を70%以下に低減すると共に、{100}<001>方位から20〜45°の方位差を有し、かつ{100}<001>方位と対応方位関係ではない方位の存在比率を70%以上に増加させた組織であり、好ましくは、
(B) {411}<148>方位への集積度をランダム強度比で7以上に高め、かつ{554}<225>方位の集積度をランダム強度比で6以下に低減した組織である。
上記したような結晶方位になる一次再結晶集合組織に制御するためには、鋼成分、熱延条件、冷間圧延条件および焼鈍条件等を適正化することが肝心である。集合組織は、使用する圧延機および焼鈍炉などによっても変化するため、一次再結晶集合組織が上述の条件を満足するように操業パラメータを調整することが重要である。
例えば、圧延条件については、
(1) 最終冷間圧延における圧下率を上げる(好ましくは80%以上)ことにより、S方位のピーク位置を{411}<148>に近づけることができる。なお、この場合には、{554}<225>方位の強度も増加する。
(2) また、圧延温度を上げて動的歪み時効を生じさせる方法、いわゆる温間圧延は、{554}<225>方位の集積度を低減する効果がある。しかしながら、この場合には、S方位のピーク位置が{411}<148>からややずれてくる。
従って、圧下率と圧延温度を組合せ制御することが必要である。例えば、最終冷延の1パス以上において150 〜300 ℃の温間圧延を施し、かつ最終冷延圧下率を85〜90%の範囲内で適宜条件を制御することによって、好適な一次再結晶集合組織とすることができる。
また、圧延のパス間に 150℃以上の温度域に1分以上保持し、静的歪み時効を生じさせる方法も、温間圧延と類似の集合組織変化をもたらすので、適宜組合わせて用いることが好ましい。
焼鈍条件については、
(3) 最終冷間圧延前の粒径への影響を通して、一次再結晶集合組織に大きく影響する。最終冷延前の焼鈍を高温・長時間にして、最終冷間圧延前の結晶粒径を大きくすることは、{554}<225>方位の集積度を低減する効果があるが、結晶粒径が大きくなりすぎると、S方位のピーク位置が{411}<148>方位からずれてくるので、最適な焼鈍条件に適正化することが必要である。
たとえば、最終冷延前焼鈍を1050〜1150℃に制御することと、最終冷延での圧延温度を250 ℃以下に制御することを組み合わせる、あるいは最終冷延前焼鈍を 950〜1050℃に制御することと、最終冷延での圧延温度を 200℃以上に制御することを組み合わせることによって、好適な一次再結晶集合組織とすることができる。
本発明では、上記した(1), (2)および(3) のいずれか少なくとも一つの処理を行うことにより、上掲 (A)または(B) に示す集合組織に制御することが重要である。
表1にA〜Cで示す成分組成になるスラブを、A:2本、B:3本、C:3本それぞれ準備し、Aは 2.8mmおよび 2.1mm厚、Bは 2.8mm、 2.4mmおよび 2.1mm厚、Cは 3.4mm、2.8 mmおよび 2.1mm厚まで、それぞれ熱間圧延した。熱間圧延の際には、Aスラブは1400℃に加熱後、熱間圧延し、B, Cのスラブは1100℃に加熱後、熱間圧延した。
ついで、1100℃で60秒の熱延板焼鈍を施し、酸洗後、板厚:0.34mmまで1回で冷間圧延した。冷間圧延の圧下率は、2.1 mm厚のスラブを用いた場合は84%、2.4 mm厚のスラブを用いた場合は86%、2.8 mm厚のスラブを用いた場合は88%、3.4 mm厚のスラブを用いた場合は90%となる。冷間圧延は、2.4 mm, 2.8 mm厚のスラブに対しては 200℃で、2.1 mm,3.4 mm厚のスラブに対しては 300℃で行った。
上記の冷間圧延後、脱脂処理を施してから、 850℃で120 秒間、一次再結晶と脱炭を兼ねる焼鈍を施した。焼鈍後、試験片を切り出し、X線極点図法により、表層付近の集合組織を測定した。また、得られたX線極点図のデータから、三次元方位分布を計算により求めた。
一次再結晶と脱炭のための焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上焼鈍を施した。焼鈍分離剤としてはMgOを用いた。
最終仕上焼鈍後、未反応の分離剤を除去したのち、コロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分とする絶縁コーティング液を塗布し、800 ℃で焼き付けて製品板とした。
かくして得られた各製品板の圧延方向(L方向)および圧延直角方向(C方向)の鉄損W15/50 について調査した結果を、表2に示す。
Figure 2005179745
Figure 2005179745
表2に示したとおり、一次再結晶集合組織を、本発明で規定した組織に制御することにより、{100}<001>方位が優先的に二次再結晶して、L方向およびC方向の鉄損がともに良好な二方向性電磁鋼板を得ることができた。
なお、一次再結晶集合組織の解析に際しては、三次元方位分布を Bungeのオイラー角表示にて、Φ1 、Φ、Φ2 をそれぞれ5°刻みで求めた。
{411}<148>方位の強度は、(Φ1 、Φ、Φ2 )=(20°、20°、45°)のランダム強度比として、一方{554}<225>方位の強度は、(Φ1 、Φ、Φ2 )=(90°、60°、45°)のランダム強度比として求めた。
また、{100}<001>方位の二次再結晶に適した方位の存在比率、すなわち{100}<001>方位から20〜45°の方位差角を有し、かつ{100}<001>方位と対応方位関係ではない方位の存在比率を求めた。同様に、{110}<001>方位の二次再結晶に適した方位の存在比率、すなわち{110}<001>方位から20〜45°の方位差角を有し、かつ{110}<001>方位と対応方位関係ではない方位の存在比率も求めた。対応方位関係としては、Σ値が19以下の対応方位を対象とし、Brandon の条件の範囲内を対応方位関係とみなした。
表1にDで示す成分組成になるスラブを、10本準備し、1150℃に加熱後、熱間圧延し、(1) 〜(3) のスラブは2.2 mm厚の熱延コイルに、(4) 〜(6) のスラブは3.1 mm厚の熱延コイルに、(7) 〜(10)のスラブは3.4 mm厚の熱延コイルに、それぞれ圧延した。ついで、(1) 〜(3) は1100℃で60秒の熱延板焼鈍を施し、 (4)〜(10)は1000℃で60秒の熱延板焼鈍を施した。熱延板焼鈍後、酸洗し、板厚:0.34mmまで1回で冷間圧延した。冷間圧延の圧下率は、 (1)〜(3) の場合は85%、 (4)〜(6) の場合は89%、 (7)〜(10)の場合は90%となる。冷間圧延は、 (1)と(7) に対しては 300℃で、 (4)と(8) に対しては 250℃で、 (2), (5), (9)に対しては 200℃で、(6) と(10)に対しては 150℃で、(3) に対しては80℃で行った。また、 (7)〜(10)に対しては、冷間圧延のパス間で、 250℃に2時間保持する時効処理を行った。
冷問圧延後、脱脂処理を施してから、 870℃で 120秒間、一次再結晶と脱炭を兼ねる焼鈍を施した。焼鈍後、試験片を切り出し、X線極点図法により、表層付近の集合組織を測定した。また、得られたX線極点図のデータから、三次元方位分布を計算により求めた。
一次再結晶と脱炭のための焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布して最終仕上焼鈍を施した。焼鈍分離剤としてはMgOを用いた。
最終仕上焼鈍後、未反応の分離剤を除去したのち、コロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分とする絶縁コーティング液を塗布し、800 ℃で焼き付けて製品板とした。
かくして得られた各製品板の圧延方向(L方向)および圧延直角方向(C方向)の鉄損W15/50 について調査した結果を、表3に示す。
なお、一次再結晶集合組織の解析については、実施例1の場合と同様である。
Figure 2005179745
同表から明らかなように、一次再結晶集合組織を、本発明で規定した組織に制御することにより、{100}<001>方位が優先的に二次再結晶して、L方向およびC方向の鉄損がともに良好な二方向性電磁鋼板を得ることができた。

Claims (2)

  1. 珪素鋼スラブを、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚とし、ついで一次再結晶焼鈍後、二次再結晶のための最終仕上焼鈍を施す工程によって二方向性電磁鋼板を製造するに当たり、
    一次再結晶集合組織において、{110}<001>方位から20〜45°の方位差を有し、かつ{110}<001>方位とは対応方位関係にない方位の存在比率を70%以下に低減すると共に、{100}<001>方位から20〜45°の方位差を有し、かつ{100}<001>方位とは対応方位関係にない方位の存在比率を70%以上に高めることを特徴とする二方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 珪素鋼スラブを、熱間圧延し、必要に応じて圧延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚とし、ついで一次再結晶焼鈍後、二次再結晶のための最終仕上焼鈍を施す工程によって二方向性電磁鋼板を製造するに当たり、
    一次再結晶集合組織において、{554}<225>方位の集積度をランダム強度比で6以下に低減すると共に、{411}<148>方位の集積度をランダム強度比で7以上に高めることを特徴とする二方向性電磁鋼板の製造方法。
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