JP2005178097A - ポリエステル系樹脂複合射出成形品及び成形法 - Google Patents

ポリエステル系樹脂複合射出成形品及び成形法 Download PDF

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Abstract

【課題】1次側樹脂組成物と2次側樹脂が、応用、展開できる範囲を広くし安定した成形性が達成できる点に着目しながら、密着性及び気密性が高い複合射出成形品を安定して提供すること。
【解決手段】1次側ポリエステル系樹脂100重量部に無機充填剤3〜150重量部が配合された軟化開始温度100℃以下の1次側ポリエステル系樹脂組成物を射出成形して得られ、冷却された1次側成形品(1)を2次金型に移動し、1次側成形品(1)上に、2次側ポリエステル系樹脂を射出成形して、1次側成形品(1)の2次側ポリエステル系樹脂との接触表面を融解させ且つ1次側成形品(1)全体を軟化させて、加圧し、一体的な複合射出成形品(3)を得る。
【選択図】 なし

Description

本発明は、1次側ポリエステル系樹脂組成物と2次側ポリエステル系樹脂の密着性および気密性を改善した複合射出成形品に関する。
ポリエステル樹脂は機械的特性、電気特性、耐熱性、耐薬品性などの点から、自動車、電気分野など幅広い分野に使用されている。なかでも、複合射出成形品に関しては、コイルボビンやセンサー部品などの電装関連部品を中心に、近年使用が増えている。
複合射出成形方法は、金型に1次側樹脂を射出して1次側成形品1を成形し、1次側成形品上に2次側樹脂を射出して2次側成形品2を成形し、一体的な複合射出成形品3を得る方法であり、ダイ・ロータリー(DRI)成形法、コアバック成形法、ダイ・スライド(DSI)成形法などがある。
複合射出成形において、1次側樹脂と2次側樹脂の密着性並びに気密性を確保することは、極めて重要な技術ポイントである。複合射出成形品では、外部となる2次側樹脂から1次側樹脂内部への水分などの侵入防止や、内側の1次側成形品側から圧力がかかる場合、2次側樹脂との界面から破損しないための強度保持などが必要である。複合射出成形品において両樹脂の密着が十分でない場合、2次側樹脂が密着面から容易に剥離し、成形品に十分な機能を付与することが困難となる。
また、特開平7−290500号公報や特開平9−11344号公報には、金型機構を利用し密着や溶着を期待する部位全体に圧縮を行うことによって溶着強度を向上する方法も紹介されている。一般的な射出成形法においても、密着性を改善するため、2次側樹脂の成形加工温度を1次側樹脂のそれに比べて高くする方法が多く採用されている。(例えば特許文献1および2参照。)
ただし、ポリエステル樹脂の場合には樹脂分解が発生するために、2次側樹脂の成形加工温度及び熱安定性の制約から、2次側樹脂の成形加工許容温度が制限され、条件によっては高温度に設定しても十分な密着力を得られないことがある。
そのため、材料面において検討が行われており、特開平9−141686号公報では、非晶性熱可塑性ポリエステル樹脂からなる一次成形品と、ポリアルキレンテレフタレート系樹脂とを一体に成形させた気密性、密着性に優れた複合成形品が開示され、低融点樹脂の効果が紹介されている。(例えば特許文献3参照。)
しかし、比較的高価な非晶性熱可塑性ポリエステル樹脂を使用しなければならないという問題がある。
また、特開2000−7902号公報では、ポリアルキレンテレフタレート及び/又はポリアルキレンナフタレートと、スチレン系樹脂と無機充填剤とを組み合わせることにより、密着性及び成形性が改善できる樹脂組成物及び成形品が開示され、特に非晶性スチレン系樹脂とのアロイ樹脂を2次側樹脂に使用することによる効果が紹介されている。(例えば特許文献4参照。)
しかし、非晶性スチレン系アロイ樹脂では複合射出成形でのポリエステル樹脂との組合せなどにおいて必ずしも密着力が向上していない場合がある。
特開平7−290500号公報(請求項1、図1) 特開平9−11344号公報(請求項1、図3) 特開平9−141686号公報(請求項1および7、表1) 特開2000−7902号公報(請求項1〜15、段落0026、表1および2)
従って、本発明の目的は、1次側樹脂組成物と2次側樹脂が、応用、展開できる範囲を広くし安定した成形性が達成できる点に着目しながら、両者の密着性及び気密性が高い複合射出成形品を安定して提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、1次側樹脂組成物の軟化開始温度特性に着目し、かつ1次側樹脂の表面温度や圧力状態からより有利な成形条件を設定することにより、ポリエステル樹脂複合射出成形品の密着性および気密性、並びに安定した成形性を効率的に得られることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の第1は、1次側ポリエステル系樹脂100重量部に無機充填剤3〜150重量部が配合された軟化開始温度100℃以下の1次側ポリエステル系樹脂組成物を射出成形し、冷却された1次側成形品(1)を2次金型に移動し、1次側成形品(1)上に、2次側ポリエステル系樹脂を射出して2次側成形品(2)を成形する際に、2次側ポリエステル系樹脂の射出により1次側成形品(1)の2次側ポリエステル系樹脂との接触表面を融解させ且つ1次側成形品(1)全体を軟化させた状態にして、1次側成形品(1)及び2次側成形品(2)からなる複合射出成形品(3)を加圧し、一体化させることを特徴とする成形方法を提供する。
本発明の第2は、1次側ポリエステル系樹脂がポリブチレンテレフタレート(p)、ポリブチレン−テレフタレート−イソフタレート共重合体(q)又はポリブチレンテレフタレート(p)と他の樹脂(r)との組成物である本発明の第1に記載の成形方法を提供する。
本発明の第3は、他の樹脂(r)がアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、ポリエステル系エラストマー又はこれらの混合物である本発明の第1又は2に記載の成形方法を提供する。
本発明の第4は、2次側ポリエステル系樹脂の充填圧力が30MPa以上である本発明の第1〜3のいずれか1項に記載の成形方法を提供する。
本発明の第5は、一体的な複合射出成形品(3)を得る保圧力が30MPa以上であり保圧時間がゲートシール時間以上である本発明の第1〜4のいずれか1項に記載の成形方法を提供する。
本発明の第6は、本発明の第1〜5のいずれか1項に記載の成形方法により得られた複合射出成形品を提供する。
本発明によれば、1次側成形品と2次側成形品との密着性及び気密性が高い複合射出成形品が得られ、1次側樹脂組成物と2次側樹脂が、応用、展開できる範囲が広く、また安定して複合射出成形が可能となった。
以下、本発明について詳細に説明する。
従来、複合射出成形の材料選定において1次側成形品1と2次側成形品2の密着性が保たれるためには、1次側樹脂に関しては溶融温度の低い樹脂が効果的であり、2次側樹脂では非晶系アロイ材料による非晶成分の密着を期待した材料が選定されていた。
しかしながら、このような知見のみでは実際の複合成形密着性評価において十分な結果が必ずしも得られていない。表3の比較例2,3に示すように、1次側樹脂に低融点PBTであるA、2次側にスチレン系アロイ樹脂B,Cを使用しても、図1に示すサンプルでは、反ゲート側の密着は良好ではなく、材料選定において別の観点での特性に着目する必要があると考えた。
そこで、1次側樹脂と2次側樹脂の密着を高める効果がある圧力を、より有効にする状態を想定した。2次側樹脂は基本的に溶融状態で金型内に供給されるため、内部は溶融状態で比較的有効に圧力伝達される。一方、1次側樹脂は先に金型に充填されるので基本的に固体状態であり、2次側樹脂充填により、1次側樹脂の接触表面が溶融されるだけであり、接触表面以外は固体状態のままであるため、1次側樹脂組成物と2次側樹脂が溶融、密着後に、圧力によって密着度を高める効果まで期待できない。そこで、1次側成形品を構成する樹脂組成物の成形品表面温度をその軟化開始温度以上に上げることによって圧力による密着度を高め、より高い圧力で1次側樹脂組成物と2次側樹脂を密着させることが重要であることが判った。
即ち、1次側樹脂組成物の表面が溶融するだけでは十分ではなく、1次側樹脂組成物の全体が軟化していることにより、2次側樹脂を高い圧力で充填させると高密度に効果的に充填され、それによって界面の溶融以降に高い圧力を加えることにより良好な密着性が確保される。
そこで、本発明は、1次側樹脂組成物と2次側樹脂を効果的に密着させるために、1次側樹脂組成物の軟化開始温度に着目した。種々検討した結果、1次側樹脂組成物の軟化開始温度が100℃以下で、且つ1次側樹脂組成物と2次側樹脂とが、熱可塑性ポリエステル系樹脂同士を使用することにより両者が効果的に密着できることが分かった。
更に、1次側樹脂組成物の軟化開始温度は低いほど有効である。
一般に熱可塑性ポリエステル樹脂を使用した複合射出成形においては、金型内に1次側樹脂を射出した成形品上に、2次側樹脂を溶融した状態で金型内に射出して、1次側樹脂を加熱溶融させる。従って、2次側樹脂射出のせん断熱と溶融熱によって1次側樹脂表面温度は溶融温度以上とする必要がある。その後1次側樹脂温度は金型冷却により、低下するが、1次側樹脂の2次側樹脂との接触側の表面温度は、1次側樹脂自体が断熱層となり、冷却速度を抑えられ、金型接触側に比べて、軟化開始温度以上に保たれる。例えば1次側PBT樹脂では、樹脂温度と金型温度や成形品形状のバランスから、通常100〜150℃の範囲に保持されたまま、保持圧力を受ける状態となる。
従って、1次側樹脂の軟化開始温度が上記100℃より低いと1次側樹脂と2次側樹脂とは互いに十分に密着するために、良好な密着性と気密性を持った複合成形品が得られる。
また、別の観点では、1次側樹脂組成物の表面温度と1次側樹脂の軟化開始温度のバランスにおいて、1次側樹脂組成物の表面が、2次側樹脂との接触により与えられる熱により軟化開始温度以上に加熱されることにより、高い密着性が得られると言える。
本発明における着目点は、複合射出成形するにあたり、1次側樹脂組成物の軟化開始温度特性によって、複合射出成形時の保持圧力及び保持時間を十分に与えることである。
なお、使用する1次側熱可塑性樹脂組成物に関しては軟化開始温度が重要である。
本発明に係る軟化開始温度が100℃以下の1次側ポリエステル系樹脂組成物は、1次側ポリエステル系樹脂100重量部に無機充填剤3〜150重量部が配合されたものである。
上記で使用される1次側ポリエステル系樹脂は、非晶性樹脂であっても結晶性樹脂であってもかまわず、添加剤として他の樹脂成分や上記充填剤以外の樹脂添加剤を添加してもかまわない。
1次側樹脂として使用されるポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート(p)、ポリブチレン−テレフタレート−イソフタレート共重合体(q)のようなポリアルキレンテレフタレート、又は、ポリアルキレンテレフタレート好ましくはポリブチレンテレフタレート(p)と、他の樹脂(r)との組成物である。
他の樹脂(r)は、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、ポリエステル系エラストマー、又はこれらの混合物である。
ポリアルキレンテレフタレートとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレートなどのアルキレンテレフタレートを主たる単位とし、ジカルボン酸成分(テレフタル酸やイソフタル酸やナフタレンジカルボン酸など)及びアルキレングリコールのうち、少なくとも一方の成分が他のジカルボン酸(コモノマー)や他のジオール(コモノマー)で置換したコポリエステル(変性樹脂とも言う)などが含まれる。これらのポリエステル系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいコポリエステルは、通常、1〜40モル%、好ましくは5〜40モル%、特に10〜30モル%程度のコモノマー単位を有している。
テレフタル酸やイソフタル酸やナフタレンジカルボン酸以外のジカルボン酸成分(コモノマー成分)としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸などの炭素数6〜40程度のジカルボン酸、好ましくは炭素数6〜14程度のジカルボン酸)、脂環族ジカルボン酸(例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸などの炭素数8〜12程度のジカルボン酸)、芳香族ジカルボン酸(例えば、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸などの炭素数8〜14程度のジカルボン酸)、又はそれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
また、ジカルボン酸成分としては、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロテレフタル酸、テトラヒドロイソフタル酸、ハイミック酸などの脂環族ジカルボン酸、テトラブロモフタル酸、テトラブロモテレフタル酸、テトラクロロフタル酸、ヘット酸などのハロゲン含有ジカルボン酸も使用できるとともに、等価な成分としてp−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフェニル酢酸、ヒドロキシナフトエ酸、グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸、プロピオラクトン、ブチロラクトン、カプロラクトン、バレロラクトンなどのラクトンなどを使用してもよい。ジカルボン酸成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
ジオール成分(コモノマー成分)としては、ブタンジオール以外の炭素数2〜12程度のアルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタンジオール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−オクタンジオールなどの炭素数2〜10程度の脂肪族グリコール)、ポリオキシアルキレングリコール[アルキレン基の炭素数が2〜4程度であり、複数のオキシアルキレン単位を有するグリコール、例えば、ジ(オキシエチレン)グリコール、ジ(オキシプロピレン)グリコール、ジ(オキシテトラメチレン)グリコール、トリ(オキシエチレン)グリコール、トリ(オキシプロピレン)グリコール、トリ(オキシテトラメチレン)グリコールなど]、両末端にヒドロキシル基を有するポリエステルオリゴマーで構成されたジオール、脂環族ジオール(例えば、シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、水素化ビスフェノールAなど)、芳香族ジオール[例えば、ビスフェノールA[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン]、ジエトキシビスフェノールA、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシフェニルエーテル、2,2−ビス−(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−β−ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、キシレングリコール、ナフタレンジオールなど]などの他、ハイドロキノンなどが挙げられる。
ジオール成分としては、例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(例えば、エチレンオキサイド2モル付加物、プロピレンオキサイド3モル付加物など)などのアルキレンオキサイド付加ジオール、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなど)付加物などのハロゲン化ジオールも使用できる。さらに、必要に応じて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのポリオール又はそのエステル形成性誘導体などを併用してもよい。
これらのジオール成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。好ましいジオール成分は、炭素数2〜6程度の直鎖状アルキレングリコール(エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなど)、繰り返し数が2〜4程度のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコール[ジエチレングリコールなどのポリ(オキシ−直鎖状C2-4アルキレン)単位を含むグリコール]、1,4−シクロヘキサンジメチロール、特にアルキレングリコールが好ましい。
前記変性樹脂において、導入する変性基(コモノマー残基)は、好ましくはイソフタル酸残基やナフタレンジカルボン酸残基及び/又はアルキレングリコール残基である。特に、イソフタル酸及び/又はアルキレングリコールをコモノマーとする変性ポリブチレンテレフタレート系樹脂が好ましい。
上記変性樹脂は、溶融成形性などを損なわない限り、直鎖状のみならず分岐鎖構造を有していてもよく、また架橋されていてもよい。
上記変性樹脂は、未変性のポリブチレンテレフタレートホモポリマーなどと併用してもよい。また、必要であれば、ポリエステルエラストマーや液晶性ポリエステルなどが併用されてもよい。
前記のようなコモノマー単位を含む変性エステル系樹脂では、未変性ポリエステル系樹脂に比べて溶融加工温度が低下し、一次側樹脂として使用する場合、二次側樹脂との溶融温度差が広がるために密着性が向上する。
なお、上記樹脂は、二次側樹脂として使用することもできる。その場合、密着性が向上するとともに、一次材の熱的分解を抑制し、得られた複合成形品は、ばりの生成を抑制し、良好な外観を有しており、優れた成形性を示す。特に、二次成形用樹脂として用いると、一次側樹脂の溶融加工温度が低くても、密着性及び成形性などの特性を大きく改善できる。
前記変性樹脂は、融点150〜230℃程度、融解熱10〜45J/g、重量平均分子量10,000〜500,000程度の範囲から選択できる。
前記他の樹脂(r)としては、スチレン系樹脂、ゴム変性スチレン系樹脂、ポリエステル系エラストマーなどが挙げられる。
上記スチレン系樹脂は、芳香族ビニル化合物の単独又は共重合体、芳香族ビニル化合物と共重合性ビニル単量体との共重合体、ゴム変性スチレン系樹脂で構成できる。前記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、アルキルスチレン(例えば、o−,m−及びp−メチルスチレンなどのビニルトルエン類、p−エチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなど)、α−アルキルスチレン(例えば、α−メチルスチレンなど)、ハロスチレン(例えば、o−,m−及びp−クロロスチレン、p−ブロモスチレンなど)などが例示できる。これらの芳香族ビニル単量体は単独で又は二種以上組合せて使用できる。好ましいスチレン系単量体には、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどが含まれ、特にスチレンが好ましい。
共重合性ビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ビニルエステル系単量体(酢酸ビニルなど)、ヒドロキシル基含有単量体[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC1-4アルキル(メタ)アクリレートなど]、グリシジル基含有単量体[グリシジル(メタ)アクリレートなど]、カルボキシル基含有単量体[(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸など]、イミド系単量体(マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなど)などが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルには、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルが含まれる。これらのビニル単量体は単独で又は二種以上組合せて使用できる。
好ましいスチレン系樹脂は、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂)等である。
前記ゴム変性スチレン系樹脂は、前記スチレン系樹脂とゴム質重合体との共重合体、例えば、ランダム共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体で構成されている。ゴム変性スチレン系樹脂において、ミクロドメイン構造は特に制限されない。ゴム変性スチレン系樹脂において、前記ゴム質重合体としては、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、塩素化ポリエチレンなどが利用できる。これらのゴム成分は単独又は二種以上組合せて使用できる。好ましいゴム変性スチレン系樹脂としては、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS樹脂)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体(ACS樹脂)、アクリロニトリル−エチレン-プロピレンゴム−スチレン共重合体、アクリロニトリル−EPDM−スチレン共重合体(AES樹脂)、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)などが例示できる。特に、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂(特にABS樹脂)などが好ましい。これらの樹脂は、単独又は二種以上組合せて使用できる。
本発明で1次側樹脂として使用される樹脂組成物において、スチレン系樹脂の割合は、前記ポリエステル系樹脂100重量部に対して、10〜100重量部(例えば、10〜80重量部)、好ましくは10〜60重量部(例えば、15〜50重量部)程度であり、通常20〜50重量部程度である。スチレン系樹脂が10重量部未満では、樹脂組成物の固化速度が速く、スチレン系樹脂が樹脂組成物表面への侵出度が低下するためか、複合成形において、密着性が低下する。また、100重量部を超えると、成形サイクル時間の増加、溶融時の熱安定性の低下が生じたり、離型性が低下するおそれがある。
充填剤は、成形品に高い機械強度、衝撃強度及び耐熱性を付与する。充填剤は、繊維状充填剤、非繊維状充填剤のいずれであってもよく、両者の混合物として用いてもよい。繊維状充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、セラミックス繊維(シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、ホウ素繊維、チタン酸カリウムなど)、ウィスカ類、金属繊維(ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮など)などの無機質繊維状物質などが例示できる。特にガラス繊維、カーボン繊維などが好ましい。なお、本発明の無機充填剤には、高融点の有機質繊維状物質(例えば、ポリアミド樹脂(芳香族ポリアミドなど)、フッ素樹脂、アクリル樹脂など)なども含まれる。
非繊維状充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ミルドファイバー、ケイ酸塩(ケイ酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、ケイソウ土、ウオラストナイトなど)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなど)、金属炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、セラミックス(炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ホウ素など)及び各種金属粉末などが挙げられる。非繊維状充填剤のうち、板状充填剤としてはマイカ、ガラスフレーク、各種金属箔などが例示できる。
また非繊維状充填剤としては、平均一次粒子径が20μm以下(例えば、0.5〜20μm程度)、好ましくは0.5〜15μm(例えば、1.0〜10μm)程度の粒状又は板状充填剤(例えば、ガラスビーズ、ミルドファイバー、タルク、カオリン、マイカなど)などが好ましい。
これらの充填剤は、単独または二種以上組合せて使用でき、前記繊維状充填剤(特に、ガラス繊維又はカーボン繊維など)と非繊維状充填剤(特に平均一次粒子径20μm以下の粉粒状又は板状充填剤)との組合せは、特に高い機械的強度と寸法安定精度を有し、かつ良好な外観特性を有する二色成形品を得る上で好ましい。
本発明では上記の中でも無機充填剤が好ましい。
無機充填剤の使用量は、成形品の機械的強度及び密着性などを損なわない範囲で選択でき、1次側ポリエステル系樹脂100重量部あたり3〜150重量部、好ましくは20〜130重量部、さらに好ましくは40〜120重量部程度である。充填剤の使用量が多すぎると、成形品表面に充填剤が露出し、密着性を低下させる虞があり、また、少なすぎると実用上十分な機械的強度を得るのが困難となる。
また、2次側ポリエステル系樹脂には無機充填剤を配合しても配合しなくてもよいが、配合する場合は1次側ポリエステル系樹脂と同じ比率であることが好ましい。このようにすると同レベルの線膨張率となり、ヒートサイクルショックによる寸法差が生じにくくなる。
これらの充填剤の使用に際して、必要ならば集束剤又は表面処理剤(官能性表面処理剤)を使用してもよい。集束剤又は表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物などの官能性化合物などが含まれる。前記充填剤は、予め表面処理又は集束処理を施されていてもよく、材料調製の際に集束剤又は表面処理剤を充填剤とともに添加してもよい。
前記集束剤や表面処理剤の使用量は、充填剤に対して10重量%(例えば、0.01〜10重量%)以下、好ましくは0.05〜5重量%である。
本発明では、樹脂又は樹脂組成物には、一般的な添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤など)、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、離型剤、染料や顔料などの着色剤、可塑剤などが例示できる。なかでも、特にリン系化合物の添加は成形時の滞留熱安定性を向上させる。
前記リン系化合物としては、主に有機ホスファイト及びリン酸金属塩が好適である。
有機ホスファイトのうちスピロ環などを有する化合物としては、例えば、次のような化合物が例示できる。ジアルキルペンタエリストリールジフォスファイト[例えば、ジステアリルペンタエリストリールジフォスファイトなどのジC2-18アルキルペンタエリストリールジフォスファイトなど]、ジフェニルペンタエリストリールジフォスファイト、ビス(アルキル置換フェニル)ペンタエリストリールジフォスファイト[例えば、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリストリールジフォスファイト,ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリストリールジフォスファイトなどのビス(ジC1-6アルキルフェニル)ペンタエリストリールジフォスファイト;ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストリールジフォスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリストリールジフォスファイトなどのビス(2,6−ジC1-6アルキル−4−C1-4アルキルフェニル)ペンタエリストリールジフォスファイトなど]、テトラキス(フェニル)−4,4′−ビフェニレンホスファイト、テトラキス(アルキル置換フェニル)−4,4′−ビフェニレンホスファイト[例えば、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンホスファイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンホスファイトなどのテトラキス(ジC1-6アルキルフェニル)−4,4′−ビフェニレンホスファイト;テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンホスファイトなどのテトラキス(2,6−ジC1-6アルキル−4−C1-4アルキルフェニル)−4,4′−ビフェニレンホスファイト]などが例示できる。
リン酸金属塩としては、例えば、第一リン酸カルシウム、第一リン酸マグネシウムなどのリン酸アルカリ土類金属塩、第一リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウムなどのリン酸アルカリ金属塩、又はそれらの水和物(1水和物など)などが挙げられる。
これらのリン系化合物は単独で又は二種以上組合わせて使用できる。リン系化合物の添加量は、例えば、ポリエステル系樹脂100重量部に対して、0.001〜2.0重量部、好ましくは0.01〜0.8重量部程度である。リン系化合物を添加しなかったり添加量が少ない場合には、上記の通りエステル交換反応により熱安定性が低下し、添加量が2.0重量部を超えると着色および添加剤由来のガスの影響が大きくなり、密着性の低下につながり好ましくない。
前記リン系化合物は、より熱安定性を高めるため、ヒンダードフェノール類に代表される酸化防止剤と併用するのが効果的である。酸化防止剤は、ヒンダードフェノール類に限らず、リン系、アミン系、イオウ系、ヒドロキノン系、キノリン系酸化防止剤であってもよい。酸化防止剤としては、通常、ヒンダードフェノール類およびリン系酸化防止剤が使用される。
ヒンダードフェノール類には、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール;1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチル)フェノール、4,4′−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)などのアルキレンビス(t−ブチルフェノール)類;1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC2-10アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、グリセリントリス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC3-8アルキレントリオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC4-8アルキレンテトラオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのジ又はトリオキシC2-4アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];n−オクタデシル−3−(4′,5′−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、n−オクタデシル−3−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、ステアリル−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネートなどの長鎖アルキル基を有する(t−ブチルフェノール)プロピオネート類;ジステアリル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートなどのリン酸エステル類が含まれる。
リン系酸化防止剤には、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどが含まれる。これらの酸化防止剤は一種又は二種以上併用することができる。
前記酸化防止剤の含有量は、例えば、ポリエステル系樹脂100重量部に対して、0.01〜1重量部、好ましくは0.05〜0.7重量部(特に0.05〜0.5重量部)程度の範囲から選択できる。
本発明に係る樹脂組成物の調製法として、一般に用いられる設備と方法により容易に行なうことができる。例えば、本発明の組成物を構成する成分を所定量一括混合して、一軸または二軸の押出機で溶融混練し、ペレットを得る方法、原材料投入口を二個以上有する一軸又は二軸の押出機で、第一番目の投入口から樹脂、安定剤、顔料成分などを投入し溶融混練した後、第二番目の原料投入口より無機充填剤を投入し、溶融混練してペレットを得る方法などにより調製できる。
複合成形品は、例えば、コア回転式、コアバック式、コアスライド式などの方法により製造でき、また金型をスライドまたは回転させるDSI(ダイスライド成形法)またはDRI(ダイロータリー成形法)によっても同様に行うことが可能である。
本発明では、軟化開始温度100℃以下の1次側ポリエステル系樹脂組成物を射出成形して得られ、冷却された1次側成形品1を2次金型に移動し、1次側成形品1上に、2次側ポリエステル系樹脂を射出成形して、1次側成形品1の2次側ポリエステル系樹脂との接触表面を融解させ且つ1次側成形品1全体を軟化させて加圧し、一体的な複合射出成形品3を得る。
本発明では、2次金型へ移動された1次側成形品1の表面温度が20〜軟化開始温度未満、好ましくは70〜軟化開始温度未満で、2次側ポリエステル系樹脂を例えば240〜280℃、好ましくは260〜270℃で射出充填し、1次側ポリエステル系樹脂の2次側ポリエステル系樹脂との接触表面を融解させると共に、1次側成形品1全体を軟化させる。
2次側ポリエステル系樹脂射出直後の1次側成形品の表面温度が融点未満では密着が不十分となり、融点以上で密着が可能となる。
なお、2次金型へ移動された1次側成形品1は、2次側ポリエステル系樹脂射出前に、アニーリングにより暖めると温度上昇が容易になる。
本発明では、2次側ポリエステル系樹脂の充填圧力は30MPa以上、好ましくは60〜100MPaである。
2次側ポリエステル系樹脂の充填圧力が上記未満では密着が不十分となりやすい。
本発明では、複合射出成形品の保圧力が30MPa以上、好ましくは60〜100MPaであり、保圧時間がゲートシール時間以上である。
保圧力および保圧時間が上記未満では密着不十分となりやすい。
本発明に係る複合射出成形品は1次側ポリエステル系樹脂成形品1と2次側ポリエステル系樹脂成形品2の間の密着強度が、実施例に示すような試験状態で評価して、反ゲート側強度1000N以上である。
本発明の複合成形品は、機械的強度が高く、耐熱性、耐候性及び外観特性(高光沢性など)に優れるため、自動車内外装部品、OA機器及び家電機器などの外部機構部品、外部カバーなどの分野に適している。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
軟化開始温度は、ISO 75−1,2の荷重1.82MPaにおける撓み温度測定法により、初期荷重直線と荷重により変形が開始する直線との交点の温度とした。図2に試料Bによる測定例を示す。aは初期荷重直線であり、bが荷重により変形が開始する直線であり、交点は97℃である。
複合成形による密着性向上を確認するために、平板形状同士を1次側、2次側で密着させ1次側と2次側に密着強度確認用のリブを設け、複合成形後に1次側並びに2次側のリブを引張り、ゲート側及び反ゲート側両側の引張り密着強度を確認した。
試験片の成形方法:1次側樹脂組成物で平板(縦130mm×横40mm×厚み3mm)を成形し、この1次側平板を2次金型(縦100mm×横30mm×厚み2mm)に配設し、2次金型キャビテイ内に2次側樹脂を射出して、二種類の樹脂が密着した複合成形品を得た。
1次側樹脂成形品1は、常温まで冷却され、80℃の2次金型に移動されて、2次側樹脂が射出される。
図1には使用した試験片形状、表1には成形条件を示す。
試験評価において、1次側樹脂組成物と2次側樹脂に表2に示す樹脂組成物と樹脂を使用した。
使用した樹脂及び樹脂組成物を下記に示す。
A:ポリブチレン−テレフタレート(88モル%)/イソフタレート(12モル%)共重合体(融点205℃)70重量%とガラス繊維30重量%の組成物
B:ポリブチレンテレフタレート/アクリロニトリル−スチレン共重合体(ダイセル化学工業製、セビアンV680SF)組成物(重量比45/25)70重量%とガラス繊維30重量%の組成物
C:ポリブチレンテレフタレート/アクリロニトリル−スチレン共重合体(同上)/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ダイセル化学工 業セビアンN050SF)組成物(重量比45/12.5/12.5)70重量%とガラス繊維30重量%の組成物
D:ポリブチレンテレフタレート/ポリカーボネート組成物(重量比50/10)60重量%とガラス繊維40重量%の組成物
E:ポリブチレンテレフタレート(融点225℃)70重量%とガラス繊維30重量%の組成物
F:ポリブチレンテレフタレート
使用した樹脂、軟化開始温度、融点、及び充填剤の組成比を表2に示す(表でGはガラス繊維を示す)。
(実施例1〜4及び比較例1〜8)
1次側樹脂および2次側樹脂に表3に示す樹脂を使用して複合射出成形品を得た。結果を表3に示す。
実施例1〜4では、1次側樹脂に、軟化開始温度が100℃以下であるBとCを使用し、2次側樹脂にC、B、Eを使用して、成形品を得た。成形品のゲート側密着強度および反ゲート側密着強度を測定した。
この結果、1次側樹脂として軟化開始温度が100℃以下であるB,Cを使用した場合には、反ゲート側の密着強度は1000Nを超えており、良好な密着状態であることを示す。
これは、従来技術として特開平9−141686号公報に紹介されている非晶性熱可塑性ポリエステル樹脂からなる一次成形品(A)と、ポリアルキレンテレフタレート系樹脂(E)とを一体に成形させ気密性、密着性を向上した比較例1とほぼ同等の効果であり、本発明では比較的高価な非晶性熱可塑性ポリエステル樹脂を使用しないでも良好な密着性が得られる。
実施例4と比較例7では、1次側樹脂と2次側樹脂を逆にしているが、結果には大きな差があり、1次側樹脂に軟化開始温度が低い熱可塑性樹脂に用いることが有利であることが確認できる。
比較例1〜4では、1次側樹脂にA(低融点PBT)を使用し、2次側樹脂にB,C,D,Eを使用した。この結果、2次側樹脂に、軟化開始温度が100℃以下であるB,Cを使用した場合、密着強度は1000Nより大幅に低下し、高い密着性は得られなかった。
比較例5と6では、1次側樹脂に通常のPBT樹脂Eを使用した。この結果、密着強度は大幅に低下した。
比較例7と8では、1次側樹脂にF又は軟化開始温度が高いDを用い、2次側樹脂に軟化開始温度が100℃を超えるE又はDを使用した。この結果、Dについても、軟化開始温度が163℃と高いことから、十分な密着性は得られなかった。
複合射出成形に関して、より高い密着強度を得る手段としては、1次側樹脂の軟化開始温度が重要であるが、製品形状や成形条件などで1次側表面温度をできるだけ高くすることによっても機構的には有効であり、例えば、CAE解析などで表面温度を事前推定することによってより確実に密着性を把握できる。
(a)1次側成形品の試験片の上面図である。(b)複合射出成形品の試験片の上面図である。(c)複合射出成形品の試験片の側面図である。 軟化開始温度の測定例を示すグラフである。
符号の説明
1 1次側ポリエステル系樹脂成形品
2 2次側ポリエステル系樹脂成形品
3 複合射出成形品

Claims (6)

  1. 1次側ポリエステル系樹脂100重量部に無機充填剤3〜150重量部が配合された軟化開始温度100℃以下の1次側ポリエステル系樹脂組成物を射出成形し、冷却された1次側成形品(1)を2次金型に移動し、1次側成形品(1)上に、2次側ポリエステル系樹脂を射出して2次側成形品(2)を成形する際に、2次側ポリエステル系樹脂の射出により1次側成形品(1)の2次側ポリエステル系樹脂との接触表面を融解させ且つ1次側成形品(1)全体を軟化させた状態にして、1次側成形品(1)及び2次側成形品(2)からなる複合射出成形品(3)を加圧し、一体化させることを特徴とする成形方法。
  2. 1次側ポリエステル系樹脂がポリブチレンテレフタレート(p)、ポリブチレン−テレフタレート−イソフタレート共重合体(q)又はポリブチレンテレフタレート(p)と他の樹脂(r)との組成物である請求項1記載の成形方法。
  3. 他の樹脂(r)がアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、ポリエステル系エラストマー又はこれらの混合物である請求項1又は2に記載の成形方法。
  4. 2次側ポリエステル系樹脂の充填圧力が30MPa以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形方法。
  5. 複合射出成形品(3)を得る保圧力が30MPa以上であり保圧時間がゲートシール時間以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形方法により得られた複合射出成形品。
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