JP2005163071A - 硬質炭素被膜及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 潤滑油中で0.04以下の低い摩擦係数を示す硬質炭素被膜及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 表面に存在するダングリングボンドの割合を増すために、成膜後や成膜中に希ガスプラズマを照射した後、主に潤滑油下で摺動される硬質炭素被膜である。
基板上に硬質炭素被膜を成膜した後や成膜中に、表面に存在するダングリングボンドの割合を増すために希ガスプラズマを照射する。基板を好ましくは150℃以下に保持する。
【選択図】なし
【解決手段】 表面に存在するダングリングボンドの割合を増すために、成膜後や成膜中に希ガスプラズマを照射した後、主に潤滑油下で摺動される硬質炭素被膜である。
基板上に硬質炭素被膜を成膜した後や成膜中に、表面に存在するダングリングボンドの割合を増すために希ガスプラズマを照射する。基板を好ましくは150℃以下に保持する。
【選択図】なし
Description
本発明は、硬質炭素被膜及びその製造方法に係り、更に詳細には、低摩擦な硬質炭素被膜、特に、エンジンオイル、トラスミッションオイル等の潤滑油中で使用するのに適した低摩擦な硬質炭素被膜及びその製造方法に関する。
硬質炭素被膜は、アモルファス状の炭素や水素化炭素から成る膜であり、a−C:H(アモルファスカーボン又は水素化アモルファスカーボン)、i−C(アイカーボン)及びDLC(ダイヤモンドライクカーボン又はディーエルシー)などとも呼ばれている。
従来から、硬質炭素被膜の形成には、炭化水素ガスをプラズマ分解して成膜するプラズマCVD法、又は炭素や炭化水素イオンを用いるイオンビーム蒸着法等の気相合成法が用いられている。この硬質炭素被膜は高硬度で表面が平滑であり耐摩耗性に優れ、更にはその固体潤滑性から摩擦係数が低く、優れた摺動特性を有する。例えば、通常の平滑な鋼材表面の無潤滑下での摩擦係数が0.5〜1.0であるのに対し、硬質炭素被膜は無潤滑下での摩擦係数が0.1程度である。
また、硬質炭素被膜は上記の優れた特性を活かし、ドリルの刃を始めとする切削工具や研削工具等の加工工具や、塑性加工用金型、バルブコックやキャプスタンローラのような無潤滑下での摺動部品等に応用されている。
従来から、硬質炭素被膜の形成には、炭化水素ガスをプラズマ分解して成膜するプラズマCVD法、又は炭素や炭化水素イオンを用いるイオンビーム蒸着法等の気相合成法が用いられている。この硬質炭素被膜は高硬度で表面が平滑であり耐摩耗性に優れ、更にはその固体潤滑性から摩擦係数が低く、優れた摺動特性を有する。例えば、通常の平滑な鋼材表面の無潤滑下での摩擦係数が0.5〜1.0であるのに対し、硬質炭素被膜は無潤滑下での摩擦係数が0.1程度である。
また、硬質炭素被膜は上記の優れた特性を活かし、ドリルの刃を始めとする切削工具や研削工具等の加工工具や、塑性加工用金型、バルブコックやキャプスタンローラのような無潤滑下での摺動部品等に応用されている。
一方、潤滑油中で摺動する内燃機関などの機械部品においても、エネルギー消費や環境問題の面からできるだけ機械的損失を低減したいという要求があり、摩擦損失の大きい摺動条件の厳しい部位への硬質炭素被膜の適用が検討されている。
しかし、上述のような硬質炭素被膜をコーティングした部材をエンジン油やトラスミッション油等の潤滑油中で摺動させた場合、その平滑性からある程度の低摩擦とはなるが、他の固体潤滑性を有していない硬質の被膜処理をした摺動部材、例えば、窒化チタン(TiN)や窒化クロム(CrN)のイオンプレーティング被膜処理を施した摺動部材と同等の低摩擦性能しか示さないという問題点が明らかになった。
また、エンジン油やトランスミッション油等の潤滑油中で、摩擦係数μ=0.04以下の低摩擦を実現するように固体潤滑性を有する二硫化モリブデン(MoS2)やポリ四フッ化エチレン(PTFE)を表面に処理した摺動部品は、既に多くの適用例があるが、更に面圧の高い厳しい摺動条件で使用すると耐摩耗性が不足し、初期においては低摩擦性能が達成されるが長期間使用すると摩滅によりその性能が維持されないことがあった。
また、エンジン油やトランスミッション油等の潤滑油中で、摩擦係数μ=0.04以下の低摩擦を実現するように固体潤滑性を有する二硫化モリブデン(MoS2)やポリ四フッ化エチレン(PTFE)を表面に処理した摺動部品は、既に多くの適用例があるが、更に面圧の高い厳しい摺動条件で使用すると耐摩耗性が不足し、初期においては低摩擦性能が達成されるが長期間使用すると摩滅によりその性能が維持されないことがあった。
この問題を解決する方策の一つとして、例えば下地金属(主に鋼)を露出させ、その部分に優先的に極圧添加剤を付着させる方法がある(例えば特許文献1参照)。この方法により確かに摩擦係数を下げることは可能であるが、材料表面に硬質炭素被膜を形成した後に更に表面にパターンを切る工程が必要であり、コスト的に有利でない面もある。また、極圧添加剤を含まない潤滑油を用いた場合は摩擦係数を下げることはできない。
特開2000−320674号公報
また、硬質炭素被膜中にある種の金属元素を添加する方法がある(例えば特許文献2参照)。この方法により摩擦係数を下げることができるが、摩擦係数の低減は引き続き望まれている。
特開2000−297373号公報
一方、本発明者らは、硬質炭素被膜に含まれる未結合手(ダングリングボンド)が化学的に活性であり、この部分を拠点として潤滑油中の油性剤その他の成分が吸着し易くなるという推察の下、少なくとも硬質炭素被膜表面近傍における未結合手の密度を増すことで、潤滑油中での摩擦係数が低下することを見出した。
解決しようとする問題点は、潤滑油存在下における硬質炭素皮膜の低摩擦性能を向上させるには、潤滑油に特定の添加剤を含めたり、硬質炭素被膜に特定の金属を含めたりする必要があった点にある。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、潤滑油中で0.04以下の低い摩擦係数を示す硬質炭素被膜及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、硬質炭素被膜の少なくとも表面の未結合手(ダングリングボンド)を増すための工程を行うことにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、硬質炭素被膜の表面に存在するダングリングボンドを増大することにより、摺動時は硬質炭素被膜の表面に潤滑油が緻密に吸着して優れた低摩擦性能を発揮できる。
以下、本発明の硬質炭素被膜について詳細に説明する。なお、本明細書において、「%」は特記しない限り質量百分率を示す。
本発明の硬質炭素被膜は、成膜後、成膜中のいずれか一方又は双方で希ガスプラズマを照射することにより、潤滑油中で0.04以下という極めて低い摩擦係数を示す。参考までに、乾燥状態での摩擦係数は、雰囲気にも影響されるが0.01〜0.15程度と幅を有する。
ここで、かかる硬質炭素被膜が低摩擦性能を有する理由としては、現時点では以下のように推測できる。
硬質炭素被膜を乾燥条件(無潤滑条件)で摺動する場合は、一般に低い摩擦係数を示す。その機構は、まだ完全には解明されていないが、硬質炭素被膜自身の持つ固体潤滑性能と、低ヤング率・高硬度などの物性が寄与していると考えられる。
これに対して、硬質炭素被膜を潤滑油中で摺動する場合は、当然に乾燥条件下とは摺動特性が異なる。即ち、通常の硬質炭素被膜は、不可避不純物を除けば、炭素のみ又は炭素+水素から成り、このような表面は一般に反応性が低く、潤滑油中の基油・添加剤との相互作用が弱いために、潤滑油中であっても乾燥条件下に比してあまり低摩擦性・低摩耗性が向上しない。そこで、本発明の硬質炭素被膜では、少なくとも表面をアルゴンなどの希ガスプラズマで処理することで意図的に未結合手を導入し、この未結合手に油性剤成分や添加剤成分を吸着させることで摩擦係数が低減する。特に境界潤滑のような厳しい条件下で優れた低摩擦特性を発揮し得る。
硬質炭素被膜を乾燥条件(無潤滑条件)で摺動する場合は、一般に低い摩擦係数を示す。その機構は、まだ完全には解明されていないが、硬質炭素被膜自身の持つ固体潤滑性能と、低ヤング率・高硬度などの物性が寄与していると考えられる。
これに対して、硬質炭素被膜を潤滑油中で摺動する場合は、当然に乾燥条件下とは摺動特性が異なる。即ち、通常の硬質炭素被膜は、不可避不純物を除けば、炭素のみ又は炭素+水素から成り、このような表面は一般に反応性が低く、潤滑油中の基油・添加剤との相互作用が弱いために、潤滑油中であっても乾燥条件下に比してあまり低摩擦性・低摩耗性が向上しない。そこで、本発明の硬質炭素被膜では、少なくとも表面をアルゴンなどの希ガスプラズマで処理することで意図的に未結合手を導入し、この未結合手に油性剤成分や添加剤成分を吸着させることで摩擦係数が低減する。特に境界潤滑のような厳しい条件下で優れた低摩擦特性を発揮し得る。
なお、従来から、硬質炭素被膜に限らず真空プロセス一般においては、材料の表面をアルゴンプラズマで清浄化処理(クリーニング)することがある。この処理は表面の自然酸化層や付着不純物などの除去が目的であり、未結合手を積極的に導入する目的のものではない。典型的な清浄化処理は5分程度で、基材にダメージを残さないように行われる。
これに対し、本発明では未結合手の導入、即ち炭素−炭素間や炭素−水素間の結合を切り、且つそれら未結合手をより多く形成し残存させることを目的にしている。この点で従来の単なる清浄化処理と異なる。
これに対し、本発明では未結合手の導入、即ち炭素−炭素間や炭素−水素間の結合を切り、且つそれら未結合手をより多く形成し残存させることを目的にしている。この点で従来の単なる清浄化処理と異なる。
次に、本発明の硬質炭素被膜の製造方法について詳細に説明する。
基板上に硬質炭素被膜を成膜後、成膜中のいずれか一方又は双方の場合に希ガスプラズマを照射する。具体的には、プラズマ処理される硬質炭素被膜の物性によっても異なるが、およそ30分〜3時間程度の範囲で調整できる。また、基板に印加する加速電圧も清浄化処理よりは低めに設定するのが良い。この場合も硬質炭素被膜の物性によるが、100ボルト〜1.5キロボルト程度の範囲で加減できる。
処理時の基板温度であるがなるべく低く抑えることが好ましく、具体的には150℃以下、更に望ましくは120℃以下とすることがよい。こうするとダングリングボンドの再結合を抑える効果があると考えられる。また、処理時の基板温度を抑えるためにはプラズマ照射−冷却を間歇的に繰り返す方法も好ましい。
基板上に硬質炭素被膜を成膜後、成膜中のいずれか一方又は双方の場合に希ガスプラズマを照射する。具体的には、プラズマ処理される硬質炭素被膜の物性によっても異なるが、およそ30分〜3時間程度の範囲で調整できる。また、基板に印加する加速電圧も清浄化処理よりは低めに設定するのが良い。この場合も硬質炭素被膜の物性によるが、100ボルト〜1.5キロボルト程度の範囲で加減できる。
処理時の基板温度であるがなるべく低く抑えることが好ましく、具体的には150℃以下、更に望ましくは120℃以下とすることがよい。こうするとダングリングボンドの再結合を抑える効果があると考えられる。また、処理時の基板温度を抑えるためにはプラズマ照射−冷却を間歇的に繰り返す方法も好ましい。
ここで、プラズマ照射処理に用いるプラズマとしては、炭素と結合しない希ガスのプラズマを用いる。また、あまり原子量の小さいガスでは結合を切る効果が弱いので、用いるガスとしてはコストも勘案してアルゴン(Ar)が適当であるが、これに限定はされない。
また、プラズマ照射処理は、その機構的に少なくともその表面層に設ければよいが、摩耗が懸念される場合には内部の層にも設けることができる。例えば、成膜とプラズマ照射処理を交互に繰り返しながら積層を行えばよい。
更に、プラズマ照射処理に供する硬質炭素被膜は、各種のものを用いることができるが、もともと有する未結合手の量や化学的な活性を考慮すると、水素を極力含まない硬質炭素被膜が望ましい。具体的には、水素量が0.3原子%以下であるのが望ましく、この範囲内で極力少ない量であるのがよい。
また、プラズマ照射処理は、その機構的に少なくともその表面層に設ければよいが、摩耗が懸念される場合には内部の層にも設けることができる。例えば、成膜とプラズマ照射処理を交互に繰り返しながら積層を行えばよい。
更に、プラズマ照射処理に供する硬質炭素被膜は、各種のものを用いることができるが、もともと有する未結合手の量や化学的な活性を考慮すると、水素を極力含まない硬質炭素被膜が望ましい。具体的には、水素量が0.3原子%以下であるのが望ましく、この範囲内で極力少ない量であるのがよい。
また、上記硬質炭素被膜の成膜には、化学気相合成(CVD)、物理気相合成(PVD)などの方法を適宜採用できる。一般に、化学気相合成で成膜された硬質炭素被膜中には、原料有機化合物に由来する水素が含まれ、その含有量は典型的には15〜40原子%となる。一方、物理気相合成では水素を含むようにも含まないようにも製膜できる。従って、本発明で使用する硬質炭素被膜は、物理気相合成で成膜されるのが望ましい。物理気相合成の方法には、マグネトロンスパッタリング、アークイオンプレーティングなどの公知の方法を採用できる。
本発明の硬質炭素被膜は、特に潤滑油中で優れた特性を示すが、乾燥状態でも使用できる。潤滑油としては、鉱油又は合成油を基油とする適宜のものを使うことができる。例えば、自動車用エンジン油、タービン油、スピンドル油及びギア油などがある。
本発明の硬質炭素被膜は、特に潤滑油中で優れた特性を示すが、乾燥状態でも使用できる。潤滑油としては、鉱油又は合成油を基油とする適宜のものを使うことができる。例えば、自動車用エンジン油、タービン油、スピンドル油及びギア油などがある。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
浸炭鋼(日本工業規格 SCM415)よりなる直径30mmの円板状基材の表面をRa0.02μmに超仕上げ加工した後、炭素をターゲットとしたマグネトロンスパッタリングにより、この基材表面に硬質炭素被膜をコーティングした。膜厚は1.2μmであった。続いて試料の表面をラッピングにより軽く研磨した。その後に被膜表面の粗さを測定したところRa0.03μmであった。
硬質炭素被膜が形成されたこの基材を改めて真空容器に収め、5×10−4Pa程度まで排気した後にアルゴンガスを導入し、内部の圧力を0.2Pa程度に調整した。この容器内で当該の試料に向けて熱電子を放射し、熱電子によりアルゴンガスをプラズマとした。
さらに容器内壁に対し試料に0.8kVのバイアス電圧をかけ、容器中のアルゴンプラズマが効率よく試料に到達するようにした。この処理を1時間行った。
浸炭鋼(日本工業規格 SCM415)よりなる直径30mmの円板状基材の表面をRa0.02μmに超仕上げ加工した後、炭素をターゲットとしたマグネトロンスパッタリングにより、この基材表面に硬質炭素被膜をコーティングした。膜厚は1.2μmであった。続いて試料の表面をラッピングにより軽く研磨した。その後に被膜表面の粗さを測定したところRa0.03μmであった。
硬質炭素被膜が形成されたこの基材を改めて真空容器に収め、5×10−4Pa程度まで排気した後にアルゴンガスを導入し、内部の圧力を0.2Pa程度に調整した。この容器内で当該の試料に向けて熱電子を放射し、熱電子によりアルゴンガスをプラズマとした。
さらに容器内壁に対し試料に0.8kVのバイアス電圧をかけ、容器中のアルゴンプラズマが効率よく試料に到達するようにした。この処理を1時間行った。
処理後の試料の摩擦特性の評価を行った。試験にはボールオンディスク法を用いた。この試験は、円板上試料の上で、転がらないように固定されたボールを摺動させて行った。荷重は10N、ピンの周速は0.01m/sとした。ボールの材質は浸炭鋼(SUJ2)で直径は6mmであった。潤滑油には、市販の自動車用エンジンオイル5W−30SLを用い、ボールとピンの全体が潤滑油中に浸るようにした。油温は温度調節計により80℃に設定し、試料を油に浸した後試料の温度が油の温度に一致するまで十分時間をおいてから測定を開始した。初期のなじみ効果を考慮して、試験開始から5分経過した時点の測定値を以ってその材料の摩擦係数とみなした。実施例1の摩擦係数は0.036であった。
(実施例2)
実施例1と同様の操作を繰り返して、硬質炭素被膜を形成した基材を得た。この基材を真空容器に収め、5×10−4Pa程度まで排気した後にネオンを導入し、内部の圧力を0.4Pa程度に調整した。この容器内で当該の試料に向けて熱電子を放射し、熱電子によりネオンをプラズマとした。
また、容器内壁に対し試料に1.0kVのバイアス電圧をかけ、容器中のネオンプラズマが効率良く試料に到達するようにした。この処理を1時間行った。
処理後の試料の摩擦特性評価は実施例1と同様に行った。摩擦係数は0.038であった。
実施例1と同様の操作を繰り返して、硬質炭素被膜を形成した基材を得た。この基材を真空容器に収め、5×10−4Pa程度まで排気した後にネオンを導入し、内部の圧力を0.4Pa程度に調整した。この容器内で当該の試料に向けて熱電子を放射し、熱電子によりネオンをプラズマとした。
また、容器内壁に対し試料に1.0kVのバイアス電圧をかけ、容器中のネオンプラズマが効率良く試料に到達するようにした。この処理を1時間行った。
処理後の試料の摩擦特性評価は実施例1と同様に行った。摩擦係数は0.038であった。
(比較例1)
実施例1と同様の操作を繰り返して、硬質炭素被膜を形成した基材を得た。この基材に対し、プラズマ処理を行わずに摩擦係数の測定を行った。その結果摩擦係数は0.087であった。
実施例1と同様の操作を繰り返して、硬質炭素被膜を形成した基材を得た。この基材に対し、プラズマ処理を行わずに摩擦係数の測定を行った。その結果摩擦係数は0.087であった。
(比較例2)
実施例1と同様の操作を繰り返して、硬質炭素被膜を形成した基材を得た。この基材を真空容器に収め、5×10−4Pa程度まで排気した後に窒素ガスを導入し、内部の圧力を0.4Pa程度に調整した。この容器内で当該の試料に向けて熱電子を放射し、熱電子により窒素をプラズマとした。
また、容器内壁に対し試料に1.0kVのバイアス電圧をかけ、容器中の窒素プラズマが効率良く試料に到達するようにした。この処理を1.5時間行った。
処理後の試料の摩擦特性評価は実施例1と同様に行った。摩擦係数は0.090であった。
実施例1と同様の操作を繰り返して、硬質炭素被膜を形成した基材を得た。この基材を真空容器に収め、5×10−4Pa程度まで排気した後に窒素ガスを導入し、内部の圧力を0.4Pa程度に調整した。この容器内で当該の試料に向けて熱電子を放射し、熱電子により窒素をプラズマとした。
また、容器内壁に対し試料に1.0kVのバイアス電圧をかけ、容器中の窒素プラズマが効率良く試料に到達するようにした。この処理を1.5時間行った。
処理後の試料の摩擦特性評価は実施例1と同様に行った。摩擦係数は0.090であった。
以上のように、実施例1及び実施例2で得られた硬質炭素被膜は、表面を希ガスのプラズマで処理する工程を経ているので、潤滑油中で0.040以下という良好な低摩擦特性を示すことがわかる。
Claims (3)
- 少なくともその表面層に、希ガスプラズマを照射したことを特徴とする硬質炭素被膜。
- 潤滑油中で用いられることを特徴とする請求項1に記載の硬質炭素被膜。
- 成膜後及び/又は成膜中に、希ガスプラズマを照射することを特徴とする硬質炭素被膜の製造方法。
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JP2003400982A JP2005163071A (ja) | 2003-12-01 | 2003-12-01 | 硬質炭素被膜及びその製造方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009046757A (ja) * | 2007-08-23 | 2009-03-05 | Nagasaki Univ | ダイヤモンド様薄膜、その製造方法及び製造装置 |
JP2012107344A (ja) * | 2012-03-07 | 2012-06-07 | Nagasaki Univ | ダイヤモンド様薄膜、その製造方法及び製造装置 |
-
2003
- 2003-12-01 JP JP2003400982A patent/JP2005163071A/ja active Pending
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