JP2005135722A - 透明導電層形成用塗布液及び透明導電性基材 - Google Patents

透明導電層形成用塗布液及び透明導電性基材 Download PDF

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Abstract

【課題】 貴金属含有微粒子の高い分散安定性を有し、塗布性と貯蔵安定性に優れた透明導電層形成用塗布液、及びその透明導電層形成用塗布液を用いて形成した良好な導電性を有する透明導電性基材を提供する。
【解決手段】 溶媒と、高分子樹脂と、平均粒径1〜100nmの貴金属含有微粒子とを主成分とする透明導電層形成用塗布液であって、高分子樹脂がシアノエチル基やシアノエチル基のようなシアノアルキル基を有する高分子化合物であり、該高分子樹脂1重量部に対して上記貴金属含有微粒子が5〜500重量部の割合で配合されている。
【選択図】 なし

Description

本発明は、透明基板上に透明導電膜を形成する際に用いられる透明導電膜形成用塗布液、及びその透明導電膜形成用塗布液により形成された透明導電膜を有する透明2層膜を備え、例えばブラウン管(CRT)等の表示装置の前面板等として利用される透明導電性基材に関するものである。
近年においては、オフィスオートメーション(OA)化の進行により、オフィスに多くのOA機器が導入され、OA機器のディスプレイと向き合って終日作業を行わねばならないという環境が珍しくない。OA機器の一例としてコンピュータの陰極線管(ブラウン管とも称する:CRT)等に接して仕事を行う場合、その表示画面が見やすく、視覚疲労を感じさせないことの外に、CRT表面の帯電によるほこりの付着や電撃ショックがないこと等が要求されている。
更に最近では、これ等に加えてテレビジョンやOA機器のCRTから発生する低周波電磁波の人体に対する悪影響が懸念され、このような電磁波が外部に漏洩しないことがCRTに対して望まれている。上記電磁波はCRTの偏向コイルやフライバックトランスから発生し、テレビジョン等の表示画面の大型化に伴って益々大量の電磁波が周囲に漏洩する傾向にある。
ところで、磁界の漏洩は偏向コイルの形状を変えるなどの工夫で大部分を防止することができる。一方、電界の漏洩もCRTの前面ガラス表面に透明導電層を形成することにより防止することが可能である。このような電界の漏洩に対する防止方法は、近年帯電防止のために取られてきた対策と原理的には同一である。しかし、上記透明導電層には、帯電防止用に形成されていた導電層よりもはるかに高い導電性が求められている。即ち、帯電防止用には10Ω/□程度の表面抵抗で十分とされているが、漏洩電界を防ぐ(電界シールド)ためには、少なくとも10Ω/□以下、好ましくは5×10Ω/□以下、更に好ましくは10Ω/□以下の表面抵抗の低い透明導電層を形成する必要がある。
そこで、上記要求に対処するため従来から幾つかの提案がなされているが、その中でも低コストで且つ低い表面抵抗を実現できる方法として、導電性微粒子をアルキルシリケート等の無機バインダーと共に溶媒中に分散した透明導電層形成用塗布液を用い、この塗布液をCRT等の前面ガラスに塗布・乾燥した後、200℃程度の温度で焼成する方法が知られている。この透明導電層形成用塗布液を用いた方法は、真空蒸着やスパッタ法等の物理的な透明導電層の形成方法に比べてはるかに簡便であり、製造コストも低いため、CRT等に処理可能な電界シールドの形成方法として極めて有利な方法である。
この方法に用いられる透明導電層形成用塗布液として、導電性微粒子にインジウム錫酸化物(ITO)を適用したものが知られている。しかし、得られる膜の表面抵抗が10〜10Ω/□と高いため、漏洩電界を十分に遮蔽するには電界キャンセル用の補正回路が必要となり、その分だけ製造コストが割高となる問題があった。
一方、上記導電性微粒子に金属粉を用いた透明導電層形成用塗布液は、ITOを用いた塗布液に比べ、若干膜の透過率が低くなるものの、10〜10Ω/□という低い表面抵抗の膜が得られる。従って、上述した補正回路が必要なくなるため、コスト的に有利となり、今後主流になるものと思われる。そして、この透明導電層形成用塗布液に適用される金属微粒子は、特開平8−77832号公報や特開平9−55175号公報等に示されるように、空気中で酸化され難い銀、金、白金、ロジウム、パラジウム等の貴金属に限られている。貴金属以外の金属微粒子、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等が適用された場合、大気雰囲気下で表面に酸化物皮膜が必ず形成されてしまい、透明導電層として良好な導電性が得られなくなるからである。
また一方では、CRTの表示画面を見易くするために、フェイスパネル表面に防眩処理を施して画面の反射を抑えることも行われている。この防眩処理は、微細な凹凸を設けて表面の拡散反射を増加させる方法によっても可能であるが、この方法を用いた場合、解像度が低下して画質が落ちるため、あまり好ましい方法とはいえない。従って、むしろ反射光が入射光に対して破壊的干渉を生ずるように、透明皮膜の屈折率と膜厚とを制御する干渉法によって防眩処理を行うことが好ましい。
このような干渉法により低反射効果を得るには、一般的には高屈折率膜と低屈折率膜の光学的膜厚をそれぞれ1/4λと1/4λ、あるいは1/2λと1/4λに設定した二層構造膜が採用されており、前述のインジウム錫酸化物(ITO)微粒子からなる膜もこの種の高屈折率膜として用いられている。尚、金属においては、光学定数(n−ik、n:屈折率、i=−1、k:消衰係数)のうち、n(屈折率)の値は小さいがkの値が大きいため、金属微粒子からなる透明導電層を用いた多層膜の場合でも、各層の光学定数と膜厚を適正に設定すれば、光の干渉による上記反射防止効果が得られる。
更に、近年では、CRT等の表示装置において、良好な導電性、低い反射率等の諸特性に加えて、表示画面の平面化に伴い、その透過率を100%より低い所定範囲(具体的には40〜95%、一般的には40〜75%)に調整することにより、画像のコントラストを向上させることが要請されている。そのため、例えば、透明導電層形成用塗布液に有色顔料微粒子等を配合することにより、透明導電層の透過率を制御する方法が実施されている。
ところで、従来の透明導電層形成用塗布液に適用される金属微粒子は、上述したように銀、金、白金、ロジウム、パラジウムなどの貴金属に限定されているが、これ等の貴金属の比抵抗を比較した場合、白金、ロジウム、パラジウムの比抵抗はそれぞれ10.6、5.1、10.8μΩ・cmであるのに対し、銀と金は1.62及び2.2μΩ・cmであるため、表面抵抗の低い透明導電層を形成するには銀微粒子や金微粒子を適用した方が有利である。しかし、銀微粒子を適用した場合、硫化や酸化、食塩水、紫外線等による劣化が激しく、耐候性に問題があり、他方、金微粒子を適用した場合には、このような耐候性の問題はなくなるが、白金微粒子、ロジウム微粒子、パラジウム微粒子等が適用された場合と同様にコスト上の問題を有していた。
そこで、このような技術的背景の下に、本発明者は、上記銀微粒子や金微粒子に代えて、銀微粒子表面に金若しくは白金単体又は金と白金の複合体をコーティングした、平均粒径1〜100nmの金/白金コート銀微粒子を適用した透明導電層形成用塗布液、並びにこの塗布液を用いて製造した透明導電性基材、この基材が適用された表示装置等を既に提案している(特開平11−203943号公報、特開平11−228872号公報参照)。この金/白金コート銀微粒子では、銀微粒子の表面に金若しくは白金単体又は金と白金の複合体がコーティングされているため、微粒子内部の銀が保護され、耐候性、耐薬品性等の改善を図ることができる。
尚、この銀微粒子の表面に金若しくは白金単体又は金と白金の複合体がコーティングされた、平均粒径1〜100nmの上記金/白金コート銀微粒子を適用した透明導電層形成用塗布液の場合、透明導電性基材の製造過程での加熱処理条件(金/白金コート銀微粒子が含まれる透明導電層形成用塗布液を透明基板上に塗布した後の加熱処理条件)によっては、耐候性、耐薬品性等が若干低下する傾向が認められる。この現象は、金/白金コート銀微粒子内で金、白金、銀が熱拡散により合金化するためと考えられるが、上記金/白金コート銀微粒子内における金及び/又は白金の含有割合を50〜95重量%に設定すれば回避できることが確認されている。
ところで、貴金属微粒子が適用された導電層は、本来、金属が可視光線に対し透明でないことから、上述した透明導電層における高透過率と低抵抗を両立させるためには、できるだけ少量の貴金属微粒子が透明導電層内において効率よく導電パスを形成していることが望ましい。つまり、溶媒と貴金属微粒子を主成分とする透明導電層形成用塗布液を基板上に塗布し、乾燥させて得られる導電層の構造として、貴金属微粒子の層に微小な空孔が導入された構造、即ち網目状(ネットワーク)構造を有することが必要である。このような網目状構造が形成されると、低抵抗で且つ高透過率の透明導電層が得られるが、これは、貴金属微粒子からなる網目状部分が導電パスとして機能する一方、網目状構造中に形成された穴の部分が光線透過率を向上させる機能を果たすためと考えられている。
そして、貴金属微粒子の上記網目状構造を形成させる手法としては、大別すると以下の2つの方法が挙げられる。(1)透明導電層形成用塗布液の塗布及び乾燥の成膜過程において、貴金属微粒子同士を凝集させることで網目状構造を形成させる方法。(2)複数の金属微粒子が凝集した金属微粒子の凝集体を分散させた透明導電層形成用塗布液を用い、塗布及び乾燥させることによって貴金属微粒子の網目状構造を形成させる方法。
上記(1)の方法としては、例えば、貴金属微粒子は酸化物微粒子等に比べて凝集し易いことを利用し、透明導電層形成用塗布液の溶剤組成等を適宜選定することによって、塗布及び乾燥の成膜過程において必然的にある程度の貴金属微粒子同士の凝集が起きて上記網目状構造が得られる方法(特開平9−115438号公報、特開平10−1777号公報、特開平10−142401号公報、特開平10−182191号公報等参照)がある。また、透明導電層形成用塗布液に凝集誘因剤、凝集促進高沸点溶剤等を添加し、塗布及び乾燥過程において積極的に貴金属微粒子同士の凝集を促進する方法(特開平10−110123号公報、特開2002−038053公報参照)も知られている。
一方、上記(2)の方法としては、1次粒子が均一に分散されずに、1次粒子が小さな孔を持つ形で集合した2次粒子の状態で分散されている貴金属微粒子の分散液を用いる方法(「工業材料」、Vol.44,No.9,1996,p68−71参照)がある。また、貴金属微粒子が鎖状に凝集した金属微粒子群を予め分散させた透明導電層形成用塗布液を用いる方法(特開2000−124662号公報参照)も知られている。
上記(1)の方法と(2)の方法を比較すると、上記(2)の方法は、透明導電層形成用塗布液において貴金属微粒子の凝集体が予め完成されていることから、貴金属微粒子の発達した網目状構造の形成が容易となる利点を有している。
実際のCRTの量産工場においては、貴金属微粒子が含まれる透明導電層形成用塗布液を用い、スピンコート法などでCRTなどの表示装置の前面板に透明導電層を形成する場合、製品の歩留まりを向上させることが重要であり、そのためには貴金属微粒子が含まれる透明導電層形成用塗布液の塗布性が良好であることが望まれる。
しかし、上記貴金属微粒子は、1次粒子径が小さく高活性であるため、製造条件が変動した場合、例えば、特に基板温度が高い(45℃程度)場合や基板表面の清浄度が低い場合には、塗布液が基板上に塗り広がる際に局部的な凝集が生じて、流星状あるいは線状の塗膜欠陥を引き起こしやすいため、CRT製造ラインの歩留まりを著しく悪化させることがあった。
貴金属微粒子の分散安定性を保ち、塗布時の凝集を防ぐ方法としては、例えば保護剤(分散安定化剤)の添加が有効であり、そのための保護剤として高分子樹脂や界面活性剤などが知られている。また、貴金有微粒子に対しては、界面活性剤よりも高分子樹脂の方が、高い保護安定化能を有している。このような知見から、本発明者らは、下記の化学式1〜3で示される繰り返し単位のうち少なくとも一つを分子内に有する高分子樹脂を、貴金属微粒子の保護剤として配合することを特徴とする透明導電層形成用塗布液を既に提案している(特開2002−69335号公報参照)。
Figure 2005135722
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上述のような高分子樹脂は金や白金に対する親和性が十分でないため、貴金属微粒子に対して高い分散安定性を付与するためには、多量の高分子樹脂を配合する必要がある。しかし、貴金属微粒子に対して高分子樹脂類を過剰に配合した場合、成膜後に多量の高分子樹脂が膜中に残留するため、膜の抵抗値が上昇し、十分な電界シールド効果が得られない。従って、貴金属微粒子の保護剤として上述のような高分子樹脂を適用した場合、高い導電性と良好な塗布性を両立させるには、条件調整に細かい注意を必要としていた。
一方、高分子樹脂の一つとして、シアノアルキル基を有する高分子化合物が知られている。その1種であるシアノエチル化高分子化合物は、その高誘電性を利用して、電子写真用トナーのバインダー樹脂として使用されている(特開平5−224459号公報参照)。また、シアノエチル化高分子化合物は、イオン伝導性が高いことを利用して、リチウム又はリチウムイオン2次電池用の電解液や、有機分散型エレクトロルミネッセンス用のバインダー樹脂としても用いられている(特開平11−80112号公報参照)。
特開平8−77832号公報 特開平9−55175号公報 特開平11−203943号公報 特開平11−228872号公報 特開平9−115438号公報 特開平10−1777号公報 特開平10−142401号公報 特開平10−182191号公報 特開平10−110123号公報 特開2002−38053号公報 特開2000−124662号公報 特開2002−69335号公報 特開平5−224459号公報 特開平11−80112号公報 「工業材料」、Vol.44,No.9,1996,p68−71
本発明は、上記した従来の事情に鑑み、貴金属含有微粒子の分散安定性を向上させて、優れた塗布性と貯蔵安定性を有する透明導電層形成用塗布液を提供すること、及びその透明導電層形成用塗布液を用いることにより、良好な導電性を有する透明導電性基材を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係わる透明導電層形成用塗布液は、溶媒と、高分子樹脂と、平均粒径1〜100nmの貴金属含有微粒子とを主成分とする透明導電層形成用塗布液であって、上記高分子樹脂がシアノアルキル基を有する高分子化合物であり、該高分子樹脂1重量部に対して上記貴金属含有微粒子が5〜500重量部の割合で配合されていることを特徴とする。
本発明の請求項2に係わる透明導電層形成用塗布液は、上記請求項1の透明導電層形成用塗布液において、前記高分子樹脂がシアノエチル基を有するシアノエチル化高分子化合物であることを特徴とする。また、本発明の請求項3に係わる透明導電層形成用塗布液は、上記請求項2の透明導電層形成用塗布液において、前記シアノエチル化高分子化合物が、水酸基を有するサッカロース、デンプン、セルロース、プルラン、ポリビニルアルコールより選ばれた少なくとも1種に、アクリロニトリルを付加反応させることによって合成されたものであることを特徴とする。
本発明の請求項4に係わる透明導電層形成用塗布液は、上記請求項1〜3の透明導電層形成用塗布液において、前記貴金属含有微粒子が、金又は白金の単体微粒子、金及び/又は白金と銀とからなる貴金属合金微粒子、あるいは、銀微粒子の表面が金及び/又は白金でコートされた貴金属コート銀微粒子のいずれかであることを特徴とするものである。
本発明の請求項5に係わる透明導電層形成用塗布液は、上記請求項1〜4の透明導電層形成用塗布液において、有色顔料微粒子が含まれていることを特徴とするものである。また、本発明の請求項6に係わる透明導電層形成用塗布液は、上記請求項5の透明導電層形成用塗布液において、前記有色顔料微粒子が、カーボン、チタンブラック、窒化チタン、複合酸化物顔料、コバルトバイオレット、モリブデンオレンジ、群青、紺青、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料、及びフタロシアニン系顔料から選ばれた少なくとも1種の微粒子であることを特徴とする。
更に、本発明の請求項7に係わる透明導電性基材は、請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電層形成用塗布液を用いて透明基板の上に形成された透明導電層と、該透明導電層の上に形成された透明コート層とからなる透明2層膜を備えることを特徴とするものである。
本発明によれば、保護剤としてシアノアルキル化高分子化合物(分子内にシアノアルキル基を有する高分子樹脂)を添加することにより、貴金属含有微粒子の分散安定性を著しく向上させることができ、優れた塗布性と貯蔵安定性を有する透明導電層形成用塗布液を提供することができる。
しかも、本発明の透明導電層形成用塗布液を用い、塗布法などによりCRT等の表示装置における前面板等のような透明基板上に透明導電層を形成したとき、その優れた塗布性から製品歩留まりを向上させることができると共に、良好な導電性、低反射率、耐候性、耐薬品性等の諸特性を備えた透明導電性基材を提供することができる。
本発明においては、高分子樹脂からなる保護剤として、分子内にシアノアルキル基を有するシアノアルキル化高分子化合物を添加することによって、透明導電層形成用塗布液中の貴金属含有微粒子の分散安定性を向上させることを大きな特徴とする。このシアノアルキル化高分子化合物の作用は、従来用いられていた高誘電性やイオン導電性が優れているという特性を利用するものではなく、高分子の側鎖に金や銀等と親和性の高い官能基であるシアノ基(−CN)を有することによって、貴金属含有微粒子に対する吸着力が高められる結果、貴金属含有微粒子の分散安定性が向上するものと考えられる。
上記シアノアルキル化高分子化合物としては、分子内にシアノエチル基を有するシアノエチル化高分子化合物、シアノプロピル基を有するシアノプロピル化高分子化合物等が挙げられる。これらのシアノアルキル化高分子化合物は、水酸基を有する糖類、多糖類、ポリビニルアルコール又はこれらの誘導体に、ニトリルを付加反応させることによって合成される。例えば、シアノエチル化高分子化合物は、水酸基を有する糖類、多糖類、ポリビニルアルコール又はこれらの誘導体に、アクリロニトリルを付加反応させることにより合成することができる。
シアノアルキル化高分子化合物の合成原料である糖類、多糖類、これらの誘導体としては、サッカロース、ソルビトール等の糖類、セルロース、デンプン、プルラン等の多糖類、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン等のヒドロキシアルキルデンプン、セルロース、プルラン又はデンプンとグリシドールとの反応によって得られるジヒドロキシプロピルセルロース、ジヒドロキシプロピルプルラン、ジヒドロキシプロピルデンプン等のジヒドロキシアルキル多糖類を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
これらのシアノアルキル化高分子化合物の中でも、シアノエチル化高分子化合物が貴金属含有微粒子の保護剤として好適である。特に好ましいシアノエチル化高分子化合物としては、水酸基を有するサッカロース、デンプン、セルロース、プルラン、ポリビニルアルコールより選ばれた少なくとも1種に、アクリロニトリルを付加反応させることによって合成されたものがある。その中でも特に、ポリビニルアルコールを合成原料に用いたシアノエチルポリビニルアルコールの使用が好ましい。
また、上記シアノアルキル化高分子化合物と共に、上述した化学式1〜3で示される繰り返し単位のうち少なくとも一つを分子内に有する高分子樹脂、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール(ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマールなど)、ポリビニルエステル(ポリ酢酸ビニル、ポリプロピオン酸ビニルなど)を混合して使用することも可能である。更に、上記シアノエチル化高分子化合物を、既知の合成方法により、例えばシリコンやアクリル等の他の樹脂に共重合させたブロック共重合体あるいはグラフト共重合体も、シアノアルキル化高分子化合物の1種として使用することができる。
ただし、貴金属含有微粒子が含まれる透明導電層形成用塗布液を用い、塗布法によりブラウン管(CRT)等の表示装置の前面板等に透明導電層を形成する過程において、良好な導電性の透明導電層を得るためには、均一に分散している貴金属含有微粒子が網目状に凝集し、導電パスが形成されることが必要である。例えば、保護剤である高分子樹脂の貴金属含有微粒子への吸着が強い場合、その配合量によっては、貴金属含有微粒子の分散安定性は向上するが、導電パスの形成が不十分となり、形成される透明導電層の導電性が著しく悪化する場合がある。従って、高分子樹脂としてのシアノアルキル化高分子化合物と貴金属含有微粒子との配合割合は、最適化される必要がある。
即ち、上記シアノアルキル化高分子化合物と貴金属含有微粒子とは、シアノアルキル化高分子化合物(高分子樹脂)1重量部に対して貴金属含有微粒子が5〜500重量部の割合で配合されていることが必要である。シアノアルキル化高分子化合物1重量部に対し貴金属含有微粒子が500重量部を超える場合、貴金属含有微粒子の分散性を向上させる効果が少なく、優れた塗布性と貯蔵安定性を有する透明導電層形成用塗布液が得られない。また、シアノアルキル化高分子化合物1重量部に対し貴金属含有微粒子が5重量部より少ない場合には、成膜後に膜中に残留する樹脂量が過剰となるため、形成された透明導電層の導電性が低下し、十分な電界シールド効果が得られない。
本発明の透明導電層形成用塗布液に適用する貴金属含有微粒子としては、金又は白金の単体微粒子、金及び/又は白金と銀とからなる貴金属合金微粒子、銀微粒子の表面が金及び/又は白金でコートされた貴金属コート銀微粒子のいずれかが好ましい。尚、銀微粒子の表面が金及び/又は白金でコートされた貴金属コート銀微粒子については、透明導電層形成過程の加熱処理によって合金化層が形成される可能性があり、その場合には銀微粒子表面をコーティングしているコート層が金及び/又は白金のみによって構成されているとは限らない。このように透明導電層内において合金化層が形成された貴金属コート銀微粒子も、本発明における貴金属含有微粒子に含まれるものである。
また、上記貴金属含有微粒子は、その平均粒径が1〜100nmであることを要する。平均粒径が1nm未満の場合、その微粒子の製造が困難であるうえ、塗布液中で極めて凝集しやすくなるため実用的でない。逆に、平均粒径が100nmを超えると、形成された透明導電層の可視光線透過率が低くなり過ぎ、仮に膜厚を薄く設定して可視光線透過率を高くした場合には表面抵抗が高くなり過ぎるため、実用的な透明導電層が得られない。尚、ここでいう平均粒径とは、透過電子顕微鏡(TEM)で観察される微粒子の平均粒径を示している。
次に、本発明の透明導電層形成用塗布液の製造方法について説明する。貴金属含有微粒子が貴金属コート銀微粒子である場合を例にとって説明すると、まず、既知の方法[例えば、Carey−Lea法:Am. J. Sci.,37,38,47(1889)参照]により、銀微粒子のコロイド分散液を調製する。具体的には、硝酸銀水溶液に硫酸鉄(II)水溶液とクエン酸ナトリウム水溶液の混合液を加えて反応させ、沈降物を濾過・洗浄した後、純水を加えることにより銀微粒子のコロイド分散液が得られる。
この銀微粒子コロイド分散液に、ヒドラジン等の還元剤溶液と、金酸塩溶液及び/又は白金酸塩溶液等を加えることにより、銀微粒子表面に金や白金の単体又は金と白金の複合体等がコーティングされた貴金属コート銀微粒子の分散液を得ることができる。必要に応じて、上記コーティング工程で、銀微粒子のコロイド分散液か又は金酸塩溶液や白金酸塩溶液の片方又は両方に、少量の分散剤を加えてもよい。尚、上記銀微粒子コロイド分散液及び貴金属コート銀微粒子分散液等の調製方法は、最終的に平均粒径1〜100nmの貴金属含有微粒子の分散液が得られれば任意の方法でよく、上記方法に限定されるものではない。
その後、透析、電気透析、イオン交換、限外濾過等の方法で、分散液内の電解質濃度を下げることが好ましい。電解質濃度を下げないと、一般にコロイドは電解質で凝集してしまうからであり、この現象はSchulze−Hardy則として知られている。このように電解質濃度を下げた貴金属コート銀微粒子分散液は、減圧エバポレーター、限外濾過等の方法で濃縮処理し、有機溶媒等の添加による成分調整(微粒子濃度、水分濃度等)等を行って、貴金属コート銀微粒子の分散濃縮液とする。尚、この濃縮処理は、減圧エバポレーター、限外濾過等の常用の方法で行うことができる。
貴金属コート銀微粒子の分散濃縮液は、次に凝集処理を行って、貴金属コート銀微粒子を連鎖状に凝集した凝集貴金属コート銀微粒子とすることが好ましい。即ち、貴金属コート銀微粒子分散濃縮液を撹拌しながらヒドラジン溶液を少量ずつ添加し、例えば室温で数分から数時間程度保持して凝集させた後、過酸化水素溶液を添加してヒドラジンを分解することで、鎖状凝集貴金属コート銀微粒子が得られる。
得られた鎖状凝集貴金属コート銀微粒子分散(濃縮)液に、保護剤のシアノアルキル化高分子化合物、及び有機溶媒等を添加して、微粒子濃度、水分濃度、高沸点有機溶媒濃度等の成分調整を行った後、鎖状凝集貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電膜形成用塗布液が得られる。
透明導電膜形成用塗布液に用いる有機溶剤は、特に制限はなく、塗布方法や製膜条件により適宜に選定することができる。例えば、メタノール(MA)、エタノール(EA)、1−プロパノール(NPA)、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル(MCS)、エチレングリコールモノエチルエーテル(ECS)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(IPC)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGM−AC)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(PE−AC)等のグリコール誘導体、ホルムアミド(FA)、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の透明導電膜形成用塗布液には、有色顔料微粒子を添加してもよい。有色顔料微粒子を添加した透明導電膜形成用塗布液を用いることにより、透明導電層が形成された透明導電性基材の透過率を100%より低い所定範囲(40〜95%、一般的には40〜75%)に調整できるため、良好な導電性、低い反射率等の諸特性に加え、その画像のコントラストを向上させて表示画面を更に見易くさせることができ、上述したCRT画面の平面化に伴う要求に対応することが可能となる。
上記有色顔料微粒子には、カーボン、チタンブラック、窒化チタン、複合酸化物顔料、コバルトバイオレット、モリブデンオレンジ、群青、紺青、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料、及びフタロシアニン系顔料から選ばれた1種以上の微粒子、あるいは更にその表面が酸化ケイ素でコーティング処理された上記微粒子を用いることができる。
次に、上記した本発明に係る透明導電層形成用塗液を用いることにより、透明基板上に形成された透明導電層と、更にその上に形成された透明コート層とからなる透明2層膜を備えた透明導電性基材を得ることができる。透明基板は、例えばCRTやPDPの前面板を構成するものであり、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
透明基板上に上記透明導電層と透明コート層とで構成される透明2層膜を形成するには、以下の方法を用いることができる。例えば、ガラス基板、プラスチック基板等の透明基板上に、本発明の透明導電層形成用塗液をスプレーコート、スピンコート、ワイヤーバーコート、ドクターブレードコート等の手法にて塗布し、必要に応じて乾燥した後、次に同様の手法により、例えばシリカゾル等を主成分とする透明コート層形成用塗布液をオーバーコートする。その後、例えば50〜350℃程度の温度で加熱処理を施し、透明コート層形成用塗布液を硬化させることによって透明2層膜を形成する。
上記シリカゾル等を主成分とする透明コート層形成用塗布液をオーバーコートした際、予め形成された透明導電層の網目状構造の穴の部分に、オーバーコートしたシリカゾル液が染み込み、このシリカゾル液が加熱処理により酸化ケイ素を主成分とするバインダーマトリックスとなることで、透過率の向上と導電性の向上とが達成される。同時に、網目状構造の穴の部分を介して、透明基板と酸化ケイ素等のバインダーマトリックスとの接触面積が増大するため、透明基板とバインダーマトリックスの結合が強くなり、強度の向上も図られる。
更に、貴金属含有微粒子が酸化ケイ素を主成分とする上記バインダーマトリックス中に分散された透明導電層の光学定数(n−ik)においては、屈折率nはさほど大きくないが、消衰係数kが大きいため、上記透明導電層と透明コート層との透明2層膜構造によって、透明2層膜の反射率を大幅に低下させることが可能である。
ここで、上記シリカゾル液としては、オルトアルキルシリケートに水や酸触媒を加えて加水分解し、脱水縮重合を進ませた重合物、あるいは既に4〜5量体まで重合を進ませた市販のアルキルシリケート溶液を更に加水分解と脱水縮重合を進行させた重合物等を利用することができる。尚、脱水縮重合が進行し過ぎると、溶液粘度が上昇して最終的には固化してしまうので、脱水縮重合の度合いについては、透明基板上に塗布可能な上限粘度以下に調整する。この脱水縮重合の度合いは、上記上限粘度以下のレベルであれば特に制限されないが、膜強度、耐候性等を考慮すると、重量平均分子量で500〜3000程度が好ましい。
かかるアルキルシリケート加水分解重合物(シリカゾル)は、透明2層膜の加熱焼成時に脱水縮重合反応がほぼ完結して、硬いシリケート膜(酸化ケイ素を主成分とする膜)になる。尚、上記シリカゾル液に、弗化マグネシウム微粒子、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル等を加え、透明コート層の屈折率を調節して、透明2層膜の反射率を変えることも可能である。
本発明に係る透明導電層形成用塗布液を用いて形成された透明導電層を具備する透明導電性基材は、透明導電層形成用塗布液の優れた塗布性から製品歩留まりが向上すると共に、形成された透明導電層は欠陥の少ない良質な被膜となり、且つ従来の透明導電層より発達した網目状構造を有するため、高透過率、低抵抗、低反射率、高強度等の優れた諸特性を有している。
そのため、本発明に係わる透明導電性基材は、例えば、上述したブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置における前面板等として、好適に用いることができる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、本文中の「%」は、透過率、反射率、ヘイズ値の%を除いて「重量%」を示し、また「部」は「重量部」を示している。
[実施例1]
前述のCarey−Lea法により銀微粒子のコロイド分散液を調製した。具体的には、9%硝酸銀水溶液330gに、23%硫酸鉄(II)水溶液390gと37.5%クエン酸ナトリウム水溶液480gの混合液を加え、沈降物を濾過・洗浄した後、純水を加えて、銀微粒子のコロイド分散液(Ag:0.15%)(A液)を調製した。尚、上記銀微粒子のコロイド分散液(A液)を透過電子顕微鏡で観察した結果、銀微粒子の平均粒径は4.8nmであった。
この銀微粒子のコロイド分散液(A液)600gにヒドラジン1水和物(N・HO)の1%水溶液80.0gを加えて撹拌しながら、金酸カリウム[KAu(OH)]水溶液(Au:0.075%)4800gと1%高分子分散剤水溶液2.0gの混合液を加え、表面に金単体がコーティングされた貴金属コート銀微粒子のコロイド分散液を得た。
この貴金属コート銀微粒子のコロイド分散液をイオン交換樹脂(三菱化学(株)製、商品名ダイヤイオンSK1B,SA20AP)で脱塩した後、限外濾過を行い、貴金属コート銀微粒子の濃縮を行った。得られた液にエタノール(EA)を加え、貴金属コート銀微粒子の分散(濃縮)液(Ag−Au:1.6%、水:20.0%、EA:78.4%)(B液)を得た。この貴金属コート銀微粒子の分散(濃縮)液(B液)を透過電子顕微鏡で観察したところ、貴金属コート銀微粒子の平均粒径は6.2nmであった。
この貴金属コート銀微粒子の分散(濃縮)液(B液)60gを撹拌しながら、ヒドラジン水溶液(N・HO:0.75%)0.8g(Ag−Au濃度1.6%のB液に対して100ppm)を1分間かけて添加し、室温で15分間保持した。その後、更に過酸化水素水溶液(H:1.5%)0.6gを1分間かけて添加することで、凝集貴金属コート銀微粒子分散(濃縮)液(C液)を得た。この凝集貴金属コート銀微粒子分散(濃縮)液(C液)を透過電子顕微鏡で観察した結果、凝集貴金属コート銀微粒子は、数珠状に連なり且つ一部分岐した形状(個々の凝集貴金属コート銀微粒子における最大の長さ:100〜300nm)を有していた。
尚、上記貴金属コート銀微粒子の分散(濃縮)液(B液)にヒドラジン溶液を添加した際の貴金属コート銀微粒子の安定性低下、及び、ヒドラジン溶液添加により凝集した貴金属コート銀微粒子の分散(濃縮)液に過酸化水素溶液を添加した際の安定性向上は、それら分散(濃縮)液のゼータ電位の測定値から科学的に確認することができた。
上記凝集貴金属コート銀微粒子分散(濃縮)液(C液)に、保護剤として信越化学工業(株)製のシアノエチル化高分子化合物(商品名:シアノレジンCR−V)と、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、透明導電層形成用塗布液(Ag−Au:0.30%、CR−V:0.015%、水:6.47%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.05%、EA:63.165%)を得た。
次に、この凝集貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層形成用塗布液を、濾過精度(ポアサイズ):5μmフィルターで濾過した後、45℃に加熱されたガラス基板(17インチサイズのCRT用フェイスパネル)上に、スピンコート(90rpm、10秒間−130rpm、80秒間)により塗布した。続けて、その上にシリカゾル液(D液)をスピンコート(150rpm、60秒間)した後、180℃で20分間硬化させた。尚、上記ガラス基板は、使用前に酸化セリウム系研磨剤で研磨処理し、純水で洗浄し乾燥したものを用いた。
このようにして、貴金属含有微粒子からなる透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜からなる透明コート層とで構成された、透明2層膜付きのガラス基板、即ち実施例1に係る透明導電性基材を得た。
ここで、上記シリカゾル液(D液)は、メチルシリケート51(コルコート社製商品名)19.6部、エタノール57.8部、1%硝酸水溶液7.9部、純水14.7部を用いて、SiO(酸化ケイ素)固形分濃度が10%で、重量平均分子量が1050のものを調製し、最終的にSiO固形分濃度が0.8%となるように、イソプロピルアルコール(IPA)とn−ブタノール(NBA)の混合物(IPA/NBA=3/1)により希釈して得ている。
上記した実施例1に係る透明導電性基材の製造過程において、透明導電層形成用塗布液の塗布性を評価した。尚、塗布の際の基板温度(45℃)は、一般のCRT製造ラインでの基板温度(30〜45℃)において最も高い値に設定した。これは、基板温度が高いほど塗膜欠陥の発生が顕著であることから、より厳しい条件下で比較評価するためである。以下に塗布性の評価基準を示す。
○:基板上に流星状や線状の塗膜欠陥が目視でほとんど確認できない。
×:目視で確認できる流星状や線状の塗膜欠陥が2〜10個所程度ある。
××:目視で確認できる流星状や線状の塗膜欠陥が10個所以上ある。
また、実施例1に係る透明導電性基材について、ガラス基板上に形成された透明2層膜の膜特性(表面抵抗、可視光線透過率)を評価した。透明2層膜の表面抵抗は、三菱化学(株)製の表面抵抗計ロレスタAP(MCP−T400)を用いて測定した。可視光透過率は、村上色彩技術研究所製のヘイズメーター(HR−200)を用いて測定した。尚、凝集貴金属コート銀微粒子等の微粒子の形状、粒子サイズ(長さ)は、日本電子製の透過電子顕微鏡で評価した。
ガラス基板(透明基板)を含まない透明2層膜だけの可視光透過率は、下記の計算式1により求めることができる。尚、本明細書においては、特に言及しない限り、透過率としては、透明基板を含まない透明2層膜だけの可視光透過率の値を用いている。
[計算式1]
透明基板を含まない透明2層膜だけの透過率(%)=[(透明基板ごと測定した透過率)/(透明基板の透過率)]×100
上記実施例1に係る透明導電性基材について、透明2層膜の膜特性(表面抵抗、可視光線透過率)を、上記塗布性の評価と共に、下記表1に示した。
[実施例2]
保護剤である上記シアノエチル化高分子化合物(商品名:シアノレジンCR−V)の配合量を変えた以外は実施例1と同様にして、透明導電層形成用塗布液(Ag−Au:0.30%、CR−V:0.03%(実施例1の2倍)、水:6.47%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.05%、EA:63.15%)を得た。
この透明導電層形成用塗布液を用い、実施例1と同様に実施して、貴金属含有微粒子からなる透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜とからなる透明コート層で構成された、透明2層膜付きのガラス基板、即ち、実施例2に係る透明導電性基材を得た。
実施例2に係る透明導電性基材について、実施例1と同様にして、透明導電層形成用塗布液の塗布性を評価すると共に、透明2層膜の膜特性(表面抵抗、可視光線透過率)を評価し、その結果を下記表1に示した。
[実施例3]
着色顔料の窒化チタン(TiN)微粒子(ネツレン(株)製)4gと分散剤0.2gを、水25g及びエタノール10.8gに混合して、ジルコニアビーズと共にペイントシェーカー分散を行った後、イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、商品名ダイヤイオンSK1B,SA20AP)で脱塩し、分散粒径80nmの窒化チタン微粒子分散液を得た。
次に、実施例1で得られた凝集貴金属コート銀微粒子の濃縮液(C液)に、上記窒化チタン微粒子分散液、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、透明導電層形成用塗布液(Ag−Au:0.30%、CR−V:0.015%、TiN:0.15、水:6.47%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.05%、EA:63.015%)を得た。この透明導電層形成用塗布液を透過電子顕微鏡で観察した結果、窒化チタン微粒子の平均粒径は20nmであった。
この透明導電層形成用塗布液を用い、実施例1と同様に実施して、貴金属含有微粒子及び窒化チタン微粒子からなる透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜からなる透明コート層とで構成された、透明2層膜付きのガラス基板、即ち実施例3に係る透明導電性基材を得た。
実施例3に係る透明導電性基材について、実施例1と同様にして、透明導電層形成用塗布液の塗布性を評価すると共に、透明2層膜の膜特性(表面抵抗、可視光線透過率)を評価し、その結果を下記表1に示した。
[比較例1]
保護剤として上記CR−Vの代わりにポリビニルブチラール(PVB)を用いた以外は実施例1と同様にして、透明導電層形成用塗布液(Ag−Au:0.30%、PVB:0.015%、水:6.47%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.05%、EA:63.165%)を得た。
この透明導電層形成用塗布液を用い、実施例1と同様に実施して、貴金属含有微粒子からなる透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜とからなる透明コート層で構成された、透明2層膜付きのガラス基板、即ち、比較例1に係る透明導電性基材を得た。
比較例1に係る透明導電性基材について、実施例1と同様にして、透明導電層形成用塗布液の塗布性を評価すると共に、透明2層膜の膜特性(表面抵抗、可視光線透過率)を評価し、その結果を下記表1に示した。
[比較例2]
上記CR−Vの配合量を変えた以外は実施例1と同様にして、透明導電層形成用塗布液(Ag−Au:0.30%、CR−V:0.15%、水:6.47%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.05%、EA:63.03%)を得た。
この透明導電層形成用塗布液を用い、実施例1と同様に実施して、貴金属含有微粒子からなる透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜とからなる透明コート層で構成された、透明2層膜付きのガラス基板、即ち、比較例2に係る透明導電性基材を得た。
比較例2に係る透明導電性基材について、実施例1と同様にして、透明導電層形成用塗布液の塗布性を評価すると共に、透明2層膜の膜特性(表面抵抗、可視光線透過率)を評価し、その結果を下記表1に示した。
[比較例3]
上記CR−Vの配合量を変えた以外は実施例1と同様にして、透明導電層形成用塗布液(Ag−Au:0.30%、CR−V:0.00038%、水:6.47%、PGM:20.00%、DAA:10.00%、FA:0.05%、EA:63.17962%)を得た。
この透明導電層形成用塗布液を用い、実施例1と同様に実施して、貴金属含有微粒子からなる透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜とからなる透明コート層で構成された、透明2層膜付きのガラス基板、即ち、比較例3に係る透明導電性基材を得た。
比較例3に係る透明導電性基材について、実施例1と同様にして、透明導電層形成用塗布液の塗布性を評価すると共に、透明2層膜の膜特性(表面抵抗、可視光線透過率)を評価し、その結果を下記表1に示した。
Figure 2005135722
上記表1に示された「塗布性評価」の結果から明らかなように、保護剤としてシアノアルキル化高分子化合物を配合することにより、各実施例に係る透明導電層形成用塗布液においては、良好な塗布性が得られ、塗膜欠陥の発生が抑制されていることが確認された。
また、表1に示された「表面抵抗」の結果から明らかなように、実施例1〜3の透明導電性基材においては、透明導電層内に高分子樹脂が残留しているにもかかわらず、その透明2層膜の表面抵抗は電界シールド用として好ましい範囲とされる10Ω/□以下にある。また、可視光透過率も優れていることから、実施例1〜3の透明導電性基材はCRT等の表示装置の全面板として実用上問題無いことが確認された。
尚、実施例1〜3に係る透明導電性基材に対しては、以下に述べるような「耐候性試験」も合わせて行った。即ち、各透明導電性基材を10%食塩水溶液に24時間浸漬し、ガラス基板上に設けた透明2層膜の透過率及び外観を調べたが、変化は観察されなかった。従って、実施例1〜3に係る透明導電性基材は、従来と同様に、耐候性、耐薬品性の特性も具備していることが確認された。

Claims (7)

  1. 溶媒と、高分子樹脂と、平均粒径1〜100nmの貴金属含有微粒子とを主成分とする透明導電層形成用塗布液であって、上記高分子樹脂がシアノアルキル基を有する高分子化合物であり、該高分子樹脂1重量部に対して上記貴金属含有微粒子が5〜500重量部の割合で配合されていることを特徴とする透明導電層形成用塗布液。
  2. 前記高分子樹脂がシアノエチル基を有するシアノエチル化高分子化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の透明導電層形成用塗布液。
  3. 前記シアノエチル化高分子化合物は、水酸基を有するサッカロース、デンプン、セルロース、プルラン、ポリビニルアルコールより選ばれた少なくとも1種に、アクリロニトリルを付加反応させることによって合成されたものであることを特徴とする、請求項2に記載の透明導電層形成用塗布液。
  4. 前記貴金属含有微粒子が、金又は白金の単体微粒子、金及び/又は白金と銀とからなる貴金属合金微粒子、あるいは、銀微粒子の表面が金及び/又は白金でコートされた貴金属コート銀微粒子のいずれかであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電層形成用塗布液。
  5. 有色顔料微粒子が含まれていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電層形成用塗布液。
  6. 前記有色顔料微粒子が、カーボン、チタンブラック、窒化チタン、複合酸化物顔料、コバルトバイオレット、モリブデンオレンジ、群青、紺青、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料、及びフタロシアニン系顔料から選ばれた少なくとも1種の微粒子であることを特徴とする、請求項5に記載の透明導電層形成用塗布液。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電層形成用塗布液を用いて透明基板の上に形成された透明導電層と、該透明導電層の上に形成された透明コート層とからなる透明2層膜を備えることを特徴とする透明導電性基材。
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