JP2005100721A - 透明導電性基材の製造方法及び該基材並びに表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 着色層形成用塗布液が有色顔料微粒子の分散剤として疎水性分散剤を含む場合でも、その着色層上に塗布した透明導電層形成用塗布液中の金属微粒子の凝集を防止して、優れた特性の透明導電性基材を製造する方法を提供する。
【解決手段】 透明基板上に疎水性分散剤を含む着色層形成用塗布液を塗布し、その着色層を水又は水を含む溶媒で洗浄した後、引き続き透明導電層形成用塗布液と、透明コート層形成用塗布液を塗布・乾燥し、加熱処理する。波長560〜600nmに最大吸収を有する有色顔料微粒子を含む着色層形成用塗布液を使用すれば、CRT等の前面板に適用したとき、輝度の低下を伴うことなくコントラストを向上させた透明導電性基材が得られる。
【選択図】 図1
【解決手段】 透明基板上に疎水性分散剤を含む着色層形成用塗布液を塗布し、その着色層を水又は水を含む溶媒で洗浄した後、引き続き透明導電層形成用塗布液と、透明コート層形成用塗布液を塗布・乾燥し、加熱処理する。波長560〜600nmに最大吸収を有する有色顔料微粒子を含む着色層形成用塗布液を使用すれば、CRT等の前面板に適用したとき、輝度の低下を伴うことなくコントラストを向上させた透明導電性基材が得られる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置の前面板等として利用される透明導電性基材、特に透明基板上に順次形成された着色層と、透明導電層と、透明コート層とで構成された着色透明3層膜を備える透明導電性基材の製造方法、及びこの透明導電性基材、並びにこの透明導電性基材が適用された表示装置に関するものである。
現在、コンピュータディスプレイ等として用いられている陰極線管(ブラウン管とも称する:CRT)をはじめ、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置では、表示画面が見やすく、視覚疲労を感じさせないこと等が要求されている。
更に、最近ではCRT等から発生する低周波電磁波の人体に対する悪影響が懸念され、このような電磁波が外部に漏洩しないことが望まれている。かかる漏洩電磁波に対しては、ディスプレイの前面板表面に透明導電層を形成することにより防止することが可能である。例えば、CRTの漏洩電磁波防止(電界シールド)用としては、表面抵抗が少なくとも106Ω/□以下、好ましくは5×103Ω/□以下、更に好ましくは103Ω/□以下である低抵抗の透明導電層を形成することが要求されている。
上記CRT電界シールド用の低抵抗透明導電膜として、これまでに幾つかの提案がなされており、例えば、溶媒中に金属微粒子を分散した透明導電層形成用塗布液をCRTの前面ガラス(前面板)にスピンコート法等により塗布・乾燥した後、200℃程度の温度で焼成して透明導電層を形成する方法がある(特開平9−115438号公報参照)。この方法は、CVD法やスパッタリング法等で透明導電膜を形成する方法に較べ、はるかに簡便で且つ製造コストも低く、102〜103Ω/□という低抵抗膜が得られるため、極めて有利な方法である。
上記透明導電層形成用塗布液に適用される金属微粒子として、空気中で酸化され難い貴金属、例えば、銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等が提案されている(特開平8−77832号公報、特開平9−55175号公報参照)。尚、同公報には、貴金属以外の金属微粒子、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等も適用可能であると記されているが、実際には、これ等の金属微粒子は大気雰囲気下で表面に酸化物被膜が必ず形成されるため、透明導電層として良好な導電性を得ることが困難である。
また、透明導電層形成用塗布液中の貴金属微粒子の耐侯性等を向上させるために、銀微粒子の表面に銀以外の貴金属をコーティングした平均粒径1〜100nmの貴金属コート銀微粒子、例えば金又は白金単体、あるいは金と白金の複合体をコーティングした貴金属コート銀微粒子を用いることも知られている(特開平11−228872号公報、特開平2000−268639号公報参照)。
ところで、金属は可視光線に対して本来的に透明でないことから、透明導電膜における高透過率と低抵抗を両立させるためには、できるだけ少量の金属微粒子が透明導電膜内において効率よく導電パスを形成していることが望ましい。つまり、溶媒と金属微粒子を主成分とする一般的な透明導電層形成用塗布液を用いて得られる導電膜には、金属微粒子が相互に連接したネットワーク(網目状)構造が形成されていることが必要である(「工業材料」、Vol.44,No.9,1996,p68−71参照)。
このようなネットワーク構造の形成により低抵抗且つ高透過率の透明導電膜が得られるのは、金属微粒子からなる網目状部分が導電パスとして機能する一方、網目状構造の穴の部分が光透過率を向上させる機能を果たすためと考えられている。上記金属微粒子のネットワーク(網目状)構造を形成させる手法としては、例えば、金属微粒子が鎖状に凝集した金属微粒子群を予め分散させた透明導電層形成用塗布液を用いる方法(特開2000−124662号公報参照)等が知られている。
また、CRT等の表示画面を見易くするために、その前面板表面に防眩処理を施して、画面の反射を抑えることも行われている。この防眩処理としては、反射光が入射光に対して破壊的干渉を生ずるように、透明導電層と透明コート層等からなる多層膜の屈折率と膜厚とを制御する干渉法による防眩処理が一般的に行われている。尚、金属においては、光学定数(n−ik、n:屈折率、i2=−1、k:消衰係数)のうち、n(屈折率)の値は小さいがk(消衰係数)の値が大きいため、金属微粒子からなる透明導電層を用いた多層膜の場合でも、各層の光学定数と膜厚を適正に設定すれば、光の干渉による上記反射防止効果を得ることができる。
更に、近年では、CRT等の表示装置において、上述した良好な導電性や低反射率等の諸特性に加えて、表示画面の平面化に伴い、その透過率を100%より低い所定範囲(具体的には40〜95%、一般的に40〜75%)に調整することにより、画像のコントラストを向上させることが要請されている。その手段として、例えば、透明導電層形成用塗布液に有色顔料微粒子等を配合することにより、透明導電層の可視光透過率を制御する方法が実施されている。
尚、平面CRTのフェースパネル(前面板)の場合、その外表面が平面で且つ内表面は曲率を有し、パネル厚みが画面中央部と周辺部とで異なっているため、フェースパネルに従来の着色ガラス(例えばセミティントガラス、透過率:約53%)を用いると、輝度の面内不均一を生じて画面が見難くなる。そこで、画像のコントラスト向上を図り、輝度の面内均一性を高めるために、高透過率のパネルガラスに低透過率の透明導電膜を組合せる方法が用いられているのである。
ところで、コントラスト向上のため透明導電層形成用塗布液に有色顔料微粒子等を配合して透明導電層の透過率を制御する方法では、有色顔料微粒子の添加量の増加に伴って、膜抵抗値の上昇、塗布液の安定性や塗布性の低下等の問題が生じる。そこで、着色層と導電層を積層させる方法、即ち、有色顔料微粒子を含有する着色層の上に、金属微粒子を主成分とする透明導電層を設ける方法が提案されている。この方法によれば、着色層と導電層が分離しているため、有色顔料微粒子による導電性の劣化が起きず、同時に有色顔料微粒子の添加量を増やすことができるから、コントラスト向上効果も高くなり、好ましい方法である。
しかし、この方法に用いる着色層形成用塗布液においては、溶媒に有色顔料微粒子を分散させるための分散剤として疎水性分散剤を用いると、形成した着色層上に透明導電層形成用塗布液を塗布した際に金属微粒子の凝集が引き起こされ、得られる透明導電層の抵抗値、ヘイズ等が劣化してしまう。この金属微粒子の凝集は、着色層形成用塗布液を用いて形成した着色層の疎水性に起因すると考えられる。従って、従来の着色層形成用塗布液では、分散剤として親水性樹脂等の親水性分散剤を用いるしかなかった(特開2002−279829号公報参照)。
上述のように、コントラスト向上のため着色層と導電層を積層させる方法においては、着色層形成用塗布液中の有色顔料微粒子の分散剤として、親水性分散剤を用いる必要があった。しかしながら、親水性分散剤を用いた着色層形成用塗布液では、着色層を含む透明導電膜全体の耐水性が悪化する可能性が高く、更には利用できる分散剤が著しく限定されるという不便さがあった。
本発明は、このような従来の事情に鑑み、着色層形成用塗布液の有色顔料微粒子の分散剤として疎水性分散剤を用いた場合においても、その着色層の上に透明導電層形成用塗布液を続けて塗布したとき金属微粒子の凝集が防止され、着色層を含む透明導電膜全体の耐水性が高く、優れた特性を有する透明導電性基材の製造方法を提供することを目的とする。また、この製造方法により得られ、透明導電層のヘイズ値が低く、導電性・膜強度に優れ、且つ低反射特性を有する透明導電性基材、並びにその透明導電性基材が適用された表示装置を提供することを目的とする。
本発明者は、疎水性分散剤を含有する着色層形成用塗布液を用いて着色層を形成し、その上に透明導電層を形成する方法について検討を重ねた結果、疎水性分散剤を含有する着色層形成用塗布液で形成した着色層を水又は水を含む溶媒で洗浄すると、その着色層上に引き続き貴金属含有微粒子を主成分とする透明導電層形成用塗布液を塗布した際に、貴金属含有微粒子の凝集を効果的に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、本発明の請求項1に係わる透明導電性基材の製造方法は、透明基板上に順次形成した着色層、透明導電層、透明コート層で構成された着色透明3層膜を備える透明導電性基材の製造方法において、溶媒と、該溶媒に分散された有色顔料微粒子と、疎水性分散剤と、バインダーとを主成分とする着色層形成用塗布液を透明基板上に塗布・乾燥した後、水又は水を含む溶媒で洗浄し、引き続き、溶媒と、該溶媒に分散された貴金属含有微粒子とを主成分とする透明導電層形成用塗布液を塗布・乾燥し、次いで、溶媒とバインダーとを主成分とする透明コート層形成用塗布液を塗布・乾燥した後、加熱処理することを特徴とする。
本発明の請求項2に係わる透明導電性基材の製造方法は、上記請求項1に記載の透明導電性基材の製造方法にいて、前記貴金属含有微粒子が、金−銀合金微粒子、白金−銀合金微粒子、金−銀−白金合金微粒子、表面に金単体又は白金単体若しくは金と白金の複合体をコーティングした貴金属コート銀微粒子から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする。
本発明の請求項3に係わる透明導電性基材の製造方法は、上記請求項1又は2に記載の透明導電性基材の製造方法にいて、前記有色顔料微粒子が、カーボン微粒子、チタンブラック微粒子、窒化チタン微粒子、フタロシアニン系顔料微粒子、キナクリドン系顔料微粒子、ジオキサジン系顔料微粒子から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする。
本発明の請求項4に係わる透明導電性基材の製造方法は、上記請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性基材の製造方法にいて、前記有色顔料微粒子の少なくとも1種が、可視光波長域の560〜600nmに最大吸収を有する有色顔料微粒子であることを特徴とするものである。
本発明の請求項5に係わる透明導電性基材の製造方法は、上記請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性基材の製造方法にいて、前記着色層形成用塗布液中のバインダーが、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタンから選ばれた少なくとも1種を主成分とすることを特徴とする。また、本発明の請求項6に係わる透明導電性基材の製造方法は、上記請求項1〜5のいずれかに記載の透明導電性基材の製造方法にいて、前記透明コート層形成用塗布液中のバインダーが、酸化ケイ素を主成分とすることを特徴とするものである。
また、本発明は、上記請求項1〜6のいずれかに記載の方法で製造され、着色層、透明導電層、透明コート層で構成された着色透明3層膜を透明基板上に備えていることを特徴とする透明導電性基材を提供するものである。
更に、本発明は、装置本体の表示部前面側に配置された前面板を備える表示装置であって、該前面板として、上記請求項7に記載の透明導電性基材が着色透明3層膜側を外面にして組込まれていることを特徴とする表示装置を提供する。
本発明によれば、着色層形成用塗布液中の有色顔料微粒子の分散剤として疎水性分散剤を用いているにもかかわらず、その着色層形成用塗布液を用いて形成した着色層の上に透明導電層形成用塗布液を続けて塗布したとき、貴金属含有微粒子の凝集を防止することができ、導電性やヘイズ等の特性に優れるだけでなく、耐水性にも優れた透明導電性基材の製造方法を提供することができる。
また、かかる本発明の製造方法により得られた透明導電性基材は、ヘイズ値が低く、高い導電性を有すると共に、低反射特性を有し、膜強度にも優れている。従って、装置本体の表示部前面側に配置された前面板として本発明の透明導電性基材を組込むことにより、表示画面のコントラストを向上でき、表面反射が抑制され且つ高い電界シールド効果を具備した表示装置を提供することができる。
本発明においては、有色顔料微粒子と疎水性分散剤とバインダーを含有する着色層形成用塗布液を用い、これを透明基板上に塗布・乾燥して着色層を形成した後、貴金属含有微粒子を主成分とする透明導電層形成用塗布液を塗布する前に、その着色層を水又は水を含む溶媒で洗浄する。その後、洗浄した着色層の上に、透明導電層形成用塗布液を塗布・乾燥し、更に透明コート層形成用塗布液を塗布・乾燥して、加熱処理することにより、着色層と透明導電層と透明コート層とからなる着色透明3層膜を備えた透明導電性基材を得ることができる。
上記のごとく着色層を水又は水を含む溶媒で洗浄することによって、この着色層上に透明導電層形成用塗布液を塗布したとき、貴金属含有微粒子の凝集を効果的に抑制することができる。着色層を水又は水を含む溶媒で洗浄することによって、貴金属含有微粒子の凝集が抑制できる理由は明らかではないが、例えば、水又は水を含む溶媒で着色層表面の疎水性分散剤や疎水性分散剤に起因する不純物が洗浄除去されること、着色層表面に水が吸着されて親水化されること等が理由として考えられる。
上記着色層形成用塗布液、透明導電層形成用塗布液、及び透明コート層形成用塗布液の塗布は、スプレーコート、スピンコート、ワイヤーバーコート、ドクターブレードコート、ディップコート等の手法を用いて行うことが可能である。特に、スプレーコート、スピンコート、ディップコート等の塗布方法を用いた場合には、水又は水を含む溶媒での着色層の洗浄も同じ方法で行うことができる。例えば、同じスピンコートにより、着色層形成用塗布液、水又は水を含む溶媒、透明導電層形成用塗布液、透明コート層形成用塗布液を、この順に適用することができ、膜形成と洗浄を連続して行うことが可能である。
また、着色層の洗浄には、水又は水を含む溶媒を用いる。このときの溶媒としては、着色層形成用塗布液、透明導電層形成用塗布液、又は透明コート層形成用塗布液のいずれかの調製に用いた溶媒を用いることが好ましい。ただし、水を含む溶媒を用いる場合、水が5重量%より少ないと、着色層上に透明導電層形成用塗布液を塗布したときの貴金属含有微粒子の凝集を抑制する効果が得られなくなるため、水を5重量%以上含むことが好ましい。
尚、着色層形成用塗布液、透明導電層形成用塗布液、及び透明コート層形成用塗布液を順次塗布する基板としては、透明導電性基材の用途に応じて、ガラス基板、プラスチック基板等の透明基板を使用する。各塗布液の塗布後の乾燥は、通常行われている方法を用いることができる。また、加熱処理は、用いたバインダーの種類等によって異なるが、通常は50〜250℃程度の温度で実施する。
上記着色層形成用塗布液に用いる有色顔料微粒子、及び透明導電層形成用塗布液に用いる貴金属含有微粒子は、それぞれ平均粒径が1〜100nmであることが好ましい。平均粒径が1nm未満の場合は微粒子の製造及びその分散処理が困難であり、100nmを超えると、形成される着色層や透明導電層において可視光線の散乱が大きくなるため、膜のヘイズ値が高くなり過ぎ、実用的でないからである。尚、上記の平均粒径とは、透過電子顕微鏡(TEM)で観察される微粒子の平均粒径を示している。
透明導電層形成用塗布液に適用される貴金属含有微粒子としては、空気中で酸化され難い貴金属、例えば、銀、金、白金、ロジウム、パラジウムなどの微粒子を用いることができる。これらの貴金属微粒子の比抵抗を比較した場合、白金、ロジウム、パラジウムの比抵抗は、それぞれ10.6、5.1、10.8μΩ・cmであり、銀と金の1.62、2.2μΩ・cmに比べて高いため、表面抵抗の低い透明導電層を形成するには銀微粒子や金微粒子を用いる方が有利である。しかし、銀微粒子を適用した場合、硫化、酸化や食塩水、紫外線等による劣化が激しく、耐候性に問題がある。他方、金微粒子を適用した場合、上記耐候性の問題はなくなるが、白金微粒子、ロジウム微粒子、パラジウム微粒子等が適用された場合と同様にコスト上の問題を有している。
このような観点から、貴金属含有微粒子としては、金−銀合金微粒子、白金−銀合金微粒子、金−銀−白金合金微粒子、表面に金単体又は白金単体若しくは金と白金の複合体をコーティングした貴金属コート銀微粒子のいずれか1種又は2種以上を用いることが望ましい。この貴金属コート銀微粒子の場合、銀微粒子の表面が金又は白金若しくは金と白金の複合体で保護されているため、耐候性、耐薬品性等の改善を図ることができる。尚、貴金属コート銀微粒子が分散された透明導電層形成用塗布液については、前記した特開平11−228872号公報や特開2000−268639号公報等に記載されている。
着色層形成用塗布液に含まれる有色顔料微粒子としては、カーボン微粒子、チタンブラック微粒子、窒化チタン微粒子、フタロシアニン系顔料微粒子、キナクリドン系顔料微粒子、ジオキサジン系顔料微粒子のいずれか、又はこれらの2種以上を組合わせて用いることができる。これらの有色顔料微粒子を含有する着色層を設けることにより、着色透明3層膜の透過率を低下させることができるため、その着色透明3層膜を備えた透明導電性基材を前面板として組みこめば、CRT等の表示装置のコントラスト向上を達成することができる。
更に、有色顔料微粒子として、可視光波長域(380〜780nm)における波長560〜600nmに最大吸収を有する有色顔料微粒子を使用すれば、緑(G:540nm)と赤(R:630nm)の各発光波長の間にある波長域部分の光を選択的に吸収するため、CRT等に適用された場合に、輝度の低下を伴うことなくコントラストを一層向上させることが可能となる。560〜600nmに最大吸収を有する有色顔料微粒子としては、例えば、キナクリドン系有色顔料微粒子がある。
また、着色層形成用塗布液において、溶媒に有色顔料微粒子を分散させるために用いる疎水性分散剤としては、例えば、親水性官能基である水酸基(OH)やカルボキシル基(COOH)等に比べてアルキル基等の疎水性官能基を多く含む高分子分散剤が挙げられる。これらは各種有機溶媒に良く溶解するが、水への溶解度が全くないか極めて低い特徴を有しており、多品種の製品が分散剤メーカー各社から入手可能である。それらの中でも、塩基性官能基含有共重合物(例えば、味の素ファインテック社製、PB711)等が好ましい。疎水性分散剤を用いることによって、従来の親水性分散剤を用いた場合に比べ、形成される着色層ひいては着色透明3層膜全体の耐水性を向上させることができる。また、疎水性分散剤は親水性分散剤に比べて種類が多いため、利用できる分散剤を広範囲に選択できる利点もある。
着色層形成用塗布液に用いられるバインダーは、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタンから選ばれた少なくとも1種を主成分とするものが好適に使用できる。また、透明コート層形成用塗布液に用いられるバインダーは、酸化ケイ素を主成分とするものが好ましい。これら着色層形成用塗布液及び透明コート層形成用塗布液中のバインダーは、最終的な加熱処理(例えば50〜250℃程度)により脱水縮重合反応がほぼ完結して、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、あるいは酸化チタンを主成分とする硬い膜となる。
具体的には、着色層上に予め透明導電層形成用塗布液を塗布・乾燥して形成した透明導電層の上に、透明コート層形成用塗布液をオーバーコートして塗布すると、透明導電層を構成する貴金属含有微粒子層の間隙に透明コート層形成用塗布液のバインダーが染み込む。そして、最終的に加熱処理することによって、透明コート層及び着色層中のバインダーは共に酸化ケイ素等を主成分とする硬い膜となり、基板及び貴金属含有微粒子と強固に結合することで、導電性、膜強度、耐候性の向上が同時に達成された着色透明3層膜が得られる。
酸化ケイ素を主成分とするバインダーは、次のような方法で得られる。即ち、オルトアルキルシリケートに水や酸触媒を加えて加水分解し、脱水縮重合を進ませた重合物、あるいは、既に4〜5量体まで重合を進ませた市販のアルキルシリケート溶液に、水や酸触媒を加えて更に加水分解と脱水縮重合を進行させた重合物等(これらはシリカゾルとも称する)を用いることができる。ただし、脱水縮重合が進行し過ぎると、溶液粘度が上昇して最終的には固化してしまうので、脱水縮重合の度合いについては、基板上に塗布可能な上限粘度以下に調製する必要がある。
好ましくは、透明コート層形成用塗布液に用いるバインダーとしてシリカゾルを用い、着色層形成用塗布液に用いるバインダーとしては、シリカゾル若しくはシリカゾルにチタニアゾル及び/又はジルコニアゾルを添加したものを用いる。また、透明コート層形成用塗布液のバインダーに、弗化マグネシウム微粒子又は弗化マグネシウムゾル等を加えることにより、透明コート層の屈折率を調節して、着色透明3層膜の反射率を変えることも可能である。
尚、透明導電性基材においては、有色顔料微粒子がバインダー中に分散された着色層と、貴金属含有微粒子がバインダー中に分散された透明導電層と、透明コート層との着色透明3層膜構造により、反射率を大幅に低下することができる。更に、着色透明3層膜の反射率は、着色層のバインダーに酸化ジルコニウムや酸化チタンを含有させて着色層の屈折率を高めるか、透明コート層のバインダーに弗化マグネシウムを加えて透明コート層の屈折率を低下させることによって、一層低下させることが可能である。
次に、本発明において用いられる着色層形成用塗布液、透明導電層形成用塗布液、透明コート層形成用塗布液は、それぞれ以下の方法でこれを製造することができる。
まず、着色層形成用塗布液は、有色顔料微粒子を疎水性分散剤と共に溶媒に混合し、ペイントシェーカー、ビーズミル、サンドミル、超音波分散機などの分散装置を用いて、均一な有色顔料微粒子分散液とする。そして、この有色顔料微粒子分散液に、バインダー及び溶媒等を添加し、成分調整(有色顔料微粒子濃度、バインダー濃度等)を行って、着色層形成用塗布液が調製される。尚、必要に応じて、有色顔料微粒子と疎水性分散剤と溶媒にバインダーを予め混合してから、上記分散処理を行うこともできる。
透明導電層形成用塗布液の製造方法は、貴金属含有微粒子が貴金属コート銀微粒子である場合を例にとって説明すると、まず、既知の方法[例えば、Carey−Lea法:Am. J. Sci.,37,38,47(1889)参照]により、銀微粒子のコロイド分散液を調製する。具体的には、硝酸銀水溶液に硫酸鉄(II)水溶液とクエン酸ナトリウム水溶液の混合液を加えて反応させ、沈降物を濾過・洗浄した後、純水を加えることにより銀微粒子コロイド分散液が得られる。
この銀微粒子コロイド分散液に、ヒドラジン等の還元剤溶液と、金酸塩溶液及び/又は白金酸塩溶液等を加えることにより、銀微粒子表面に金や白金の単体又は金と白金の複合体等がコーティングされた貴金属コート銀微粒子の分散液が得られる。必要に応じて、上記コーティング工程で、銀微粒子のコロイド分散液か金酸塩溶液及び白金酸塩溶液の片方又は両方に、少量の分散剤を加えてもよい。また、上記銀微粒子コロイド分散液及び貴金属コート銀微粒子分散液の調製方法は、最終的に平均粒径1〜100nmの貴金属コート銀微粒子の分散液が得られれば任意の方法でよく、上記方法に限定されるものではない。
その後、透析、電気透析、イオン交換、限外濾過等の方法で、分散液内の電解質濃度を下げることが好ましい。電解質濃度を下げないと、一般にコロイドは電解質で凝集してしまうからであり、この現象はSchulze−Hardy則として知られている。このように電解質濃度を下げた貴金属コート銀微粒子分散液は、減圧エバポレーター、限外濾過等の常用の方法で濃縮処理して、貴金属コート銀微粒子の分散濃縮液とする。
そして、この貴金属コート銀微粒子の分散濃縮液に有機溶媒等を添加し、成分調整(微粒子濃度、水分濃度等)を行って、最終的に貴金属コート銀微粒子を含む透明導電層形成用塗布液が調製される。尚、上記貴金属コート銀微粒子を含む透明導電層形成用塗布液の調製工程において、バインダーを構成する成分としてシリカゾル液を少量配合してもよい。
また、上記透明導電層形成用塗布液の調製工程において、貴金属コート銀微粒子分散液を濃縮脱水して得られた貴金属コート銀微粒子分散濃縮液に対して凝集処理を行い、貴金属コート銀微粒子が連鎖状に凝集した凝集貴金属コート銀微粒子とすることもできる。この凝集処理は、貴金属コート銀微粒子分散濃縮液を撹拌しながらヒドラジン溶液を少量ずつ添加し、例えば室温で数分から数時間程度保持して凝集させた後、過酸化水素溶液を添加してヒドラジンを分解する。貴金属コート銀微粒子が予め連鎖状に凝集した透明導電層形成用塗布液を使用すれば、貴金属コート銀微粒子の網目状構造(ネットワーク構造)が形成されやすくなるため、高透過率で且つ低抵抗の透明導電層を容易に形成することができる。
透明コート層形成用塗布液については、酸化ケイ素を主成分とするバインダー(シリカゾル液)に、溶媒等を添加して成分調整(微粒子濃度、水分濃度等)をすることにより、調製することができる。
ここで、上記着色層形成用塗布液、透明導電層形成用塗布液、透明コート層形成用塗布液に用いる溶媒、及び上記着色層形成用塗布液を塗布・乾燥して得られた着色層を洗浄する際に水と混合して用いる溶剤としては、特に制限はなく、塗布方法や成膜条件により適宜に選定することができる。
上記溶媒として、例えば、メタノール(MA)、エタノール(EA)、1−プロパノール(NPA)、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール(DAA)等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル(MCS)、エチレングリコールモノエチルエーテル(ECS)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(IPC)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGM−AC)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(PE−AC)等のグリコール誘導体、ホルムアミド(FA)、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
以上説明したように、本発明に係る製造方法によって製造された透明導電性基材、即ち、透明基板上に着色層、透明導電層、透明コート層で構成された着色透明3層膜を備えた透明導電性基材は、ヘイズ値が低く、導電性に優れ、低反射特性を有し、耐水性にも優れている。また、着色層を備えることによりコントラストが向上し、更に着色層中にキナクリドン系有色顔料微粒子のような560〜600nmに最大吸収を有する有色顔料微粒子を含むことにより、更に優れたコントラスト向上効果が得られる。
従って、本発明の透明導電性基材は、例えば、CRT、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置の前面板として極めて好適に用いることができる。尚、これらの表示装置において、その表示部前面側に配置された透明導電性基材からなる前面板は、通常は透明導電性基材の着色透明3層膜側を外面にして組込まれている。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、本文中の「%」は、透過率、反射率、ヘイズ値の(%)を除いて「重量%」を示し、また「部」は「重量部」を示している。
[実施例1]
比表面積137m2/gのカーボンブラック微粒子(MA7、三菱化学(株)製)5gと疎水性分散剤(味の素ファインテック社製、PB711)0.5gを、ジアセトンアルコール(DAA)94.5gと混合した後、ジルコニアビーズと共にペイントシェーカー分散を行い、分散粒径96nmのカーボンブラック微粒子分散液(A液)を得た。
比表面積137m2/gのカーボンブラック微粒子(MA7、三菱化学(株)製)5gと疎水性分散剤(味の素ファインテック社製、PB711)0.5gを、ジアセトンアルコール(DAA)94.5gと混合した後、ジルコニアビーズと共にペイントシェーカー分散を行い、分散粒径96nmのカーボンブラック微粒子分散液(A液)を得た。
青系有色顔料微粒子(フタロシアニンブルー#5203、大日精化(株)製)5gと疎水性分散剤(PB711)0.5gを、ジアセトンアルコール(DAA)94.5gと混合した後、ジルコニアビーズと共にペイントシェーカー分散を行い、分散粒径105nmのフタロシアニンブルー微粒子分散液(B液)を得た。
また、570〜580nmに最大吸収を有する赤系有色顔料微粒子(キナクリドン#44、大日精化(株)製)5gと疎水性分散剤(PB711)0.5gを、ジアセトンアルコール(DAA)94.5gと混合した後、ジルコニアビーズと共にペイントシェーカー分散を行い、分散粒径113nmのキナクリドン微粒子分散液(C液)を得た。
このカーボンブラック微粒子分散液(A液)、フタロシアニンブルー微粒子分散液(B液)、キナクリドン微粒子分散液(C液)を透過電子顕微鏡で観察したところ、カーボンブラック微粒子の平均粒径は24nm、フタロシアニンブルー微粒子の平均粒径は10〜60nm、キナクリドン微粒子の粒子径は10〜90nmであった。
更に、メチルシリケート51(コルコート社製:商品名)19.6部、エタノール(EA)57.8部、1%硝酸水溶液7.9部、及び純水14.7部を用いて、SiO2(酸化ケイ素)固形分濃度が10%で、重量平均分子量が1200のシリカゾル液(D液)を得た。
次に、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)に、上記A液、B液、C液、D液を加えた後、両性イオン交換樹脂(SMNUPB、三菱化学(株)製)で脱イオン処理して、3種の有色顔料微粒子と疎水性分散剤を含有する着色層形成用塗布液(カーボンブラック:0.025%、フタロシアニンブルー:0.05%、キナクリドン:0.1%、SiO2:1.3%、水:2.9%、EA:80.6%、PGM:10%、DAA:5%)を得た。
前述のCarey−Lea法により、銀微粒子のコロイド分散液を調製した。具体的には、9%硝酸銀水溶液330gに、23%硫酸鉄(II)水溶液390gと37.5%クエン酸ナトリウム水溶液480gの混合液を加え、沈降物を濾過・洗浄した後、純水を加えて、銀微粒子のコロイド分散液(Ag:0.15%)を調製した。
この銀微粒子コロイド分散液600gに、ヒドラジン1水和物(N2H4・H2O)の1%水溶液80.0gを加えて撹拌しながら、金酸カリウム[KAu(OH)4]水溶液(Au:0.075%)4800gと1%高分子分散剤水溶液2.0gの混合液を加え、表面に金単体がコーティングされた貴金属コート銀微粒子のコロイド分散液を得た。
この貴金属コート銀微粒子コロイド分散液をイオン交換樹脂(ダイヤイオンSK1B,SA20AP、三菱化学(株)製)で脱塩した後、限外濾過により貴金属コート銀微粒子分散液の濃縮を行った。得られた液にエタノール(EA)を加えて、貴金属コート銀微粒子の分散濃縮液(Ag−Au:1.6%、水:20.0%、EA:78.4%、)(E液)を得た。
次に、この貴金属コート銀微粒子の分散濃縮液(E液)60gを撹拌しながら、ヒドラジン水溶液(N2H4・H2O:0.75%)0.8g(1.6%のAg−Au分散液に対して100ppm)を1分間かけて添加した後、室温で15分間保持し、更に過酸化水素水溶液(H2O2:1.5%)0.6gを1分間かけて添加することにより、貴金属コート銀微粒子が連鎖状に凝集した凝集貴金属コート銀微粒子分散濃縮液(F液)を得た。
尚、上記貴金属コート銀微粒子の分散濃縮液(E液)にヒドラジン溶液を添加した際の貴金属コート銀微粒子における分散安定性の低下、及びヒドラジン溶液の添加により凝集させた連鎖状貴金属コート銀微粒子の分散濃縮液に過酸化水素溶液を添加した際の凝集貴金属コート銀微粒子分散濃縮液における分散安定性の向上は、各分散液のゼータ電位の測定値から科学的に確認された。
上記で得られた凝集貴金属コート銀微粒子分散濃縮液(F液)に、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、凝集貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層形成用塗布液(Ag:0.06%、Au:0.24%、水:6.5%、EA:63.1%、PGM:20%、DAA:10%、FA:0.03%)を得た。
尚、この透明導電層形成用塗布液を透過電子顕微鏡で観察したところ、凝集貴金属コート銀微粒子は、一次粒径6nm程度の貴金属コート銀微粒子が数珠状に連なり且つ一部分岐した形状(最大凝集長さ100〜300μm)を有していた。
上記シリカゾル液(D液)を、最終的にSiO2固形分濃度が0.95%となるように、エタノール(EA)と、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)と、ジアセトンアルコール(DAA)の混合物(EA/PGM/DAA=7/2/1)により希釈し、得られた液100gにγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.005gを加えて、透明コート層形成用塗布液を得た。
次に、上記着色層形成用塗布液を濾過精度(ポアサイズ)5μmフィルターで濾過した後、43℃に加熱されたガラス基板(厚さ3mmのソーダライムガラス)上にスピンコート(110rpm、12秒間−130rpm、80秒間)し、続けて純水をスピンコート(130rpm、5秒)して洗浄した。更に続けて、上記凝集貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層形成用塗布液を濾過精度(ポアサイズ)5μmフィルターで濾過した後、スピンコート(130rpm、80秒間)し、最後に透明コート層形成用塗布液をスピンコート(150rpm、80秒間)した。
その後、全体を200℃で30分間加熱処理して硬化させ、有色顔料微粒子を含有する着色層と、凝集貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜の透明コート層とで構成された着色透明3層膜付きのガラス基板、即ち、実施例1に係る試料1の透明導電性基材を得た。尚、上記ガラス基板は、使用前に酸化セリウム系研磨剤で研磨処理し、純水で洗浄・乾燥した後、35℃に加熱して用いた。
上記実施例1に係る試料1の透明導電性基材について、着色層のバインダーと分散剤及び洗浄方法を下記表1に示すと共に、ガラス基板上に形成された着色透明3層膜の膜特性(表面抵抗、可視光透過率、ヘイズ値、ボトム反射率/ボトム波長、膜強度)を下記表2に示した。また、実施例1に係る試料1の透明導電性基材について、その透過プロファイルを図1に示す。
着色透明3層膜の表面抵抗は、三菱化学(株)製の表面抵抗計ロレスタAP(MCP−T400)を用い測定した。ヘイズ値と可視光透過率は、村上色彩技術研究所製のヘイズメーター(HR−200)を用いて測定した。反射率は、日立製作所(株)製の分光光度計(U−4000)を用いて測定した。また、鎖状貴金属コート銀微粒子の形状、粒子サイズ(長さ)は日本電子(株)製の透過電子顕微鏡で評価した。更に、膜強度は、消しゴムを膜表面上に荷重1kgで押し当てながら100往復させ、膜表面の擦傷を観察・評価して行った。
尚、上記ボトム反射率とは、透明導電性基材の反射プロファイルにおいて極小の反射率をいい、ボトム波長とは反射率が極小における波長を意味している。また、下記表1において、透明基板(ガラス基板)を含まない着色透明3層膜だけの可視光透過率は、下記の計算式1により求められる。本明細書においては、特に言及しない限り、透過率としては、透明基板を含まない着色透明3層膜だけの可視光透過率の値を用いている。
[計算式1]
透明基板を含まない着色透明3層膜だけの透過率(%)=[(透明基板ごと測定した透過率)/(透明基板の透過率)]×100
透明基板を含まない着色透明3層膜だけの透過率(%)=[(透明基板ごと測定した透過率)/(透明基板の透過率)]×100
[実施例2]
エチルシリケート28(コルコート社製:商品名)10部、ジルコニアイソプロポキシド[Zr(OC3H7)4]4部、イソプロピルアルコール(IPA)84部を均一に混合した後、34.5%硝酸水溶液2部を徐々に滴下して、SiO2−ZrO2(酸化ケイ素−酸化ジルコニア)固形分濃度が4.4%のシリカ−ジルコニア複合ゾル液(G液)を得た。
エチルシリケート28(コルコート社製:商品名)10部、ジルコニアイソプロポキシド[Zr(OC3H7)4]4部、イソプロピルアルコール(IPA)84部を均一に混合した後、34.5%硝酸水溶液2部を徐々に滴下して、SiO2−ZrO2(酸化ケイ素−酸化ジルコニア)固形分濃度が4.4%のシリカ−ジルコニア複合ゾル液(G液)を得た。
次に、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)に、実施例1のA液、B液、C液、及び上記G液を加えた後、両性イオン交換樹脂(SMNUPB、三菱化学(株)製)で脱イオン処理して、3種の有色顔料微粒子と疎水性分散剤を含有する着色層形成用塗布液(カーボンブラック:0.025%、フタロシアニンブルー:0.05%、キナクリドン:0.1%、SiO2−ZrO2:1.3%、水:0.6%、EA:83.5%、PGM:10%、DAA:5%)を得た。
また、透明コート層形成用塗布液は、実施例1のシリカゾル液(D液)を、最終的にSiO2固形分濃度が0.9%となるように、エタノール(EA)と、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)と、ジアセトンアルコール(DAA)の混合物(EA/PGM/DAA=7/2/1)により希釈し、得られた液100gにγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.004gを加えて調整した。
この着色層形成用塗布液と透明コート層形成用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様に実施して、有色顔料微粒子を含有する着色層と、凝集貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜の透明コート層とで構成された着色透明3層膜付きのガラス基板、即ち、実施例2に係る試料2の透明導電性基材を得た。
上記実施例2に係る試料2の透明導電性基材について、着色層のバインダーと分散剤及び洗浄方法を下記表1に示すと共に、ガラス基板上に形成された着色透明3層膜の膜特性(表面抵抗、可視光透過率、ヘイズ値、ボトム反射率/ボトム波長、膜強度)を下記表2に示した。
[実施例3]
着色層形成用塗布液をガラス基板上にスピンコートした後、引き続いての着色層の洗浄を純水とエタノール(EA)の混合溶液(純水/EA(重量比)=2/8)をスピンコートして行った以外は、上記実施例1と同様に実施して、有色顔料微粒子を含有する着色層と、凝集貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜の透明コート層とで構成された着色透明3層膜付きのガラス基板、即ち、実施例3に係る試料3の透明導電性基材を得た。
着色層形成用塗布液をガラス基板上にスピンコートした後、引き続いての着色層の洗浄を純水とエタノール(EA)の混合溶液(純水/EA(重量比)=2/8)をスピンコートして行った以外は、上記実施例1と同様に実施して、有色顔料微粒子を含有する着色層と、凝集貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜の透明コート層とで構成された着色透明3層膜付きのガラス基板、即ち、実施例3に係る試料3の透明導電性基材を得た。
上記実施例3に係る試料3の透明導電性基材について、着色層のバインダー及び洗浄方法と共に、ガラス基板上に形成された着色透明3層膜の膜特性(表面抵抗、可視光透過率、ヘイズ値、ボトム反射率/ボトム波長、膜強度)を下記表1に示した。
[比較例1]
着色層形成用塗布液をガラス基板上にスピンコートした後、引き続いての着色層の洗浄を行わなかった以外は、上記実施例1と同様に実施して、有色顔料微粒子を含有する着色層と、凝集貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜の透明コート層とで構成された着色透明3層膜付きのガラス基板、即ち、比較例1に係る試料4の透明導電性基材を得た。
着色層形成用塗布液をガラス基板上にスピンコートした後、引き続いての着色層の洗浄を行わなかった以外は、上記実施例1と同様に実施して、有色顔料微粒子を含有する着色層と、凝集貴金属コート銀微粒子を含有する透明導電層と、酸化ケイ素を主成分とするシリケート膜の透明コート層とで構成された着色透明3層膜付きのガラス基板、即ち、比較例1に係る試料4の透明導電性基材を得た。
この比較例1に係る試料4の透明導電性基材では、着色層のバインダーと分散剤及び洗浄方法を下記表1に示すと共に、ガラス基板上に形成された着色透明3層膜の表面抵抗を下記表2に示した。ただし、着色層上に透明導電層形成用塗布液を塗布・乾燥する際に、塗布液中の貴金属コート銀微粒子が著しく凝集してしまい良好な透明導電層が得られなかったため、着色透明3層膜の光学特性の測定は行わなかった。
表1及び表2に示された結果から明らかなように、各実施例に係る試料1〜3の透明導電性基材では、着色層を水又は水を含む溶媒で洗浄してから透明導電層形成用塗布液をコートしているため、着色層が疎水性分散剤を含むにもかかわらず、着色透明3層膜が表面抵抗、可視光透過率、ヘイズ値、反射率、膜強度の全てにおいて優れた特性を示している。一方、比較例1に係る試料4の透明導電性基材は、着色層を洗浄していないため、疎水性分散剤を含む着色層上で透明導電層形成用塗布液の貴金属コート銀微粒子が凝集してしまい、着色透明3層膜の表面抵抗が極めて高く、透明導電膜としての機能を全く示していない。
また、実施例1に係る試料1の透明導電性基材は、図1に示された透過プロファイルから明らかなように、可視光領域の575nmあたりに鋭い吸収があるため、この透明導電性基材をCRT等の表示装置の前面板に適用した場合、極めて優れたコントラスト向上効果を有することが確認された。
Claims (8)
- 透明基板上に順次形成した着色層、透明導電層、透明コート層で構成された着色透明3層膜を備える透明導電性基材の製造方法において、
溶媒と、該溶媒に分散された有色顔料微粒子と、疎水性分散剤と、バインダーとを主成分とする着色層形成用塗布液を透明基板上に塗布・乾燥した後、水又は水を含む溶媒で洗浄し、引き続き、溶媒と、該溶媒に分散された貴金属含有微粒子とを主成分とする透明導電層形成用塗布液を塗布・乾燥し、次いで、溶媒と、バインダーとを主成分とする透明コート層形成用塗布液を塗布・乾燥した後、加熱処理することを特徴とする透明導電性基材の製造方法。 - 前記貴金属含有微粒子が、金−銀合金微粒子、白金−銀合金微粒子、金−銀−白金合金微粒子、表面に金単体又は白金単体若しくは金と白金の複合体をコーティングした貴金属コート銀微粒子から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の透明導電性基材の製造方法。
- 前記有色顔料微粒子が、カーボン微粒子、チタンブラック微粒子、窒化チタン微粒子、フタロシアニン系顔料微粒子、キナクリドン系顔料微粒子、ジオキサジン系顔料微粒子から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の透明導電性基材の製造方法。
- 前記有色顔料微粒子の少なくとも1種が、可視光波長域の560〜600nmに最大吸収を有する有色顔料微粒子であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性基材の製造方法。
- 前記着色層形成用塗布液中のバインダーが、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタンから選ばれた少なくとも1種を主成分とすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性基材の製造方法。
- 前記透明コート層形成用塗布液中のバインダーが、酸化ケイ素を主成分とすることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の透明導電性基材の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の方法で製造され、着色層、透明導電層、透明コート層で構成された着色透明3層膜を透明基板上に備えていることを特徴とする透明導電性基材。
- 装置本体の表示部前面側に配置された前面板を備える表示装置であって、該前面板として、請求項7に記載の透明導電性基材が着色透明3層膜側を外面にして組込まれていることを特徴とする表示装置。
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WO2007126012A1 (ja) * | 2006-04-28 | 2007-11-08 | Toyo Ink Mfg. Co., Ltd. | 導電性被膜の製造方法 |
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2003
- 2003-09-24 JP JP2003330879A patent/JP2005100721A/ja active Pending
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