JP2005130867A - ミトコンドリア内カルシウムを使用するスクリーニングアッセイ - Google Patents

ミトコンドリア内カルシウムを使用するスクリーニングアッセイ Download PDF

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Abstract

【課題】
細胞内カルシウムのミトコンドリア調節の重要性およびこのミトコンドリア活性のいくつかの疾患状態に対する関連を考慮して、ミトコンドリアカルシウムホメオスタシスを制御するための改善された組成物および方法を提供すること、ならびに、このような疾患の改善された治療を提供するために、ミトコンドリアカルシウム調節を変更する薬剤を特異的に検出するアッセイを提供すること。
【解決手段】
ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法
【選択図】 なし

Description

(技術分野)
本発明は、一般に、ミトコンドリア活性に影響を与える薬剤に関してのスクリーニングのためのアッセイに関する。より特定すると、本発明は、細胞内カルシウムのミトコンドリア調節を変更する薬剤を同定する際に使用するための、スクリーニング方法に関する。ミトコンドリア外カルシウムの存在、ならびにミトコンドリア内および/またはミトコンドリア外のカルシウムのレベルを増加させる因子(例えば、カルシウムユニポータ(CaUP))に関するアッセイが、本明細書中に提供される。
(発明の背景)
ミトコンドリアは、高等生物の細胞内の主要なエネルギー源である、細胞小器官である。これらの細胞小器官は、細胞呼吸、酸化的プロセスおよび代謝的プロセス(代謝的エネルギー生成、好気的呼吸および細胞内カルシウム調節を含む)の、広範にわたる直接的および間接的な生化学的調節を提供する。例えば、ミトコンドリアは、電子伝達連鎖(ETC)活性の部位であり、これは、酸化的リン酸化を駆動して、アデノシン三リン酸(ATP)の形態で代謝エネルギーを生成し、そしてまた、細胞内カルシウムホメオスタシスにおけるミトコンドリアの中心的役割の基礎となる。これらのプロセスは、ミトコンドリア膜の電気化学的電位の維持を必要とし、そしてこのような膜電位の欠損は、種々の障害をもたらし得る。
増殖する細胞内でのエネルギー生成におけるこれらの役割に加えて、ミトコンドリア(または少なくともミトコンドリア成分)は、プログラムされた細胞死(PCD)(アポトーシスとしても公知である(Newmeyerら、Cell 79:353〜364、1994;Liuら、Cell 86:147〜157、1996を参照のこと))に参加する。アポトーシスは、神経系の正常な発達および免疫系の機能のために、明らかに必要とされる。いくつかの疾患状態は、不十分なアポトーシス(例えば、癌および自己免疫疾患)または過剰なレベルのアポトーシス(例えば、発作および神経退化)に関連する。アポトーシス、およびそれにおけるミトコンドリアの役割の一般的な概説については、GreenおよびReed、Science 281:1309〜1312、1998;Green、Cell 94:695〜698、1998;ならびにKromer、Nature Medicine 3:614〜620、1997を参照のこと。
ミトコンドリアは、この細胞小器官と細胞質ゾルとの間の界面として働く、外部のミトコンドリア膜、複数の部位で外側の膜との付着を形成するようである、高度に折り畳まれた内側のミトコンドリア膜、およびこれら2つのミトコンドリア膜の間の膜間腔を含む。内側のミトコンドリア膜のサブコンパートメントは、通常、ミトコンドリアマトリックスと称される(概説については、例えば、Ernsterら、J.Cell Biol.91 227s、1981を参照のこと)。外側の膜は、約10キロダルトン未満の分子量を有するイオン性および非イオン性の溶質を自由に透過させ得るが、内側のミトコンドリア膜は、多くの小分子(特定のカチオンを含む)に対して選択的かつ調節された透過性を示し、大きな(約10kDより大きい)分子を透過させ得ない。
ETC活性を媒介する5つのマルチサブユニットタンパク質複合体のうちの4つ(複合体I、III、IVおよびV)は、内側ミトコンドリア膜に局在化する。残りのETC複合体(複合体II)は、マトリックス中に存在する。ETCの内部で起こることが公知である少なくとも3つの異なる化学反応において、プロトンが、ミトコンドリアマトリックスから内側の膜を横切って膜内空間へと移動する。荷電種のこの不均衡は、「プロトン駆動力」(PMF)と称される約220mVの電気化学的膜電位を生じさせる。PMF(しばしばΔpの表記で表される)は、以下の式
Δp=ΔΨm−ZΔpH
(ここで、Zは−2.303RT/Fを表す)に従って、電気的電位(ΔΨm)の合計および内側の膜を横切るpH差(ΔpH)に相関する。Zの値は、ΔpおよびΔΨmがmVで表され、そしてΔpHがpH単位で表される場合には、25℃において−59である(例えば、Ernsterら、J.Cell Biol.91:227s、1981、およびそこに引用される参考文献を参照のこと)。
ΔΨmは、ECT複合体Vによりアデノシン二リン酸(ADP)をリン酸化してATPを得る(マトリックス内へのプロトンの移送と化学量論的に結びつけられるプロセス)ためのエネルギーを提供する。ΔΨmはまた、ミトコンドリア内への細胞質ゾルのCa2+の流入のための駆動力である。正常な代謝条件下で、内側の膜は、間膜腔からマトリックス内へのプロトン移動に大部分が不透過性であり、ETC複合体Vを、プロトンがマトリックスへと戻るための主要な手段として残す。しかし、内側のミトコンドリア膜の完全性が損なわれる場合(変更されたミトコンドリア機能に関連する特定の疾患を伴うミトコンドリア透過性遷移(MPT)の間に生じるような)には、プロトンは、ATPを産生することなく複合体Vの導管をバイパスし得、これによってATP産生から呼吸(すなわち、ETC活性)を脱共役する。MPTの間、ΔΨmは崩壊し、そしてミトコンドリア膜は小さな溶質(例えば、イオン性Ca2+、Na+、K+およびH+)ならびに大きな溶質(例えば、タンパク質)の両方に対する透過性を選択的に調節するその能力を失う。ミトコンドリア電位の喪失はまた、変更されたミトコンドリア機能に関連する疾患(アルツハイマー病のような変性疾患;真性糖尿病;パーキンソン病;ハンティングトン病;失調;レーバー遺伝性視神経ニューロパシー;精神***病;ミトコンドリア脳障害、乳酸アシドーシス、および発作(MELAS);癌;乾癬;過剰増殖性疾患;ミトコンドリア糖尿病および難聴(MIDD)ならびにミオクローヌス癲癇ラゲットレッドファイバー症候群を含む)の進行において、重要な事象であるようである。
ミトコンドリア内Ca2+の正常な変更は、正常な代謝調節に関連する(Dykens、1998、Mitochondria & Free Radicals in Neurodegenerative Diseases、Beal、HowellおよびBodis−Wollner編、Wiley−Liss、New York、29〜55頁;Radiら、1998、Mitochondria & Free Radicals in Neurodegenerative Diseases、Beal、HowellおよびBodis−Wollner編、Wiley−Liss、New York、57〜89頁;GunterおよびPfeiffer、1991、Am.J.Physiol.27:C755;Gunterら、Am.J.Physiol.267:313、1994)。例えば、ミトコンドリア遊離Ca2+の変動するレベルは、酵素のアロステリック調節を介する増加したATP利用に応答する酸化的代謝の調節(CromptonおよびAndreeva、Basic Res.Cardiiol.88:513〜523、1993により概説される);およびグリセロリン酸シャトル(GunterおよびGunter、J.Bioenerg.Biomembr.26:471、1994)の原因となり得る。
正常なミトコンドリア機能としては、ミトコンドリアマトリックス内の過剰のCa2+のキレート化合物形成による細胞質ゾルの遊離カルシウムレベルの調節が挙げられる。細胞型に依存して、細胞質ゾルCa2+濃度は、代表的に、50〜100nMである。正常に機能する細胞においては、Ca2+レベルが200〜300nMに達する場合には、ミトコンドリアは、内側のミトコンドリア膜のCa2+ユニポータを介する流入と、Na+依存性カルシウムキャリアおよびNa+非依存性カルシウムキャリアの両方を介するCa2+流出との間の平衡の関数として、Ca2+を累積し始める。この迅速なユニポータ機構の低い親和性は、主要なユニポータ機能が、細胞質ゾル遊離カルシウムレベルの病理学的上昇に応答して細胞質ゾルCa2+を低下させ得ることであることを示唆し、これは、ATPの枯渇および/または形質膜を横切る異常なカルシウム流入から生じ得る(GunterおよびGunter、J.Bioenerg.Biomembr.26:471、1994;Gunterら、Am.J.Physiol.267:313、1994)。特定の例においては、このような細胞内カルシウムホメオスタシスの摂動は、そのカルシウム調節機能不全が変更されたミトコンドリア機能(MPTを含む)の原因であるか結果であるかにかかわらず、変更されたミトコンドリア機能に関連する疾患の特徴である。
細胞内カルシウムのミトコンドリア調節の重要性およびこのミトコンドリア活性のいくつかの疾患状態に対する関連を考慮して、ミトコンドリアカルシウムホメオスタシスを制御するための改善された組成物および方法に対する必要性が、明らかに存在する。このような疾患の改善された治療を提供するために、ミトコンドリアカルシウム調節を変更する薬剤が有利であり得、そしてこのような薬剤を特異的に検出するアッセイが必要とされる。本発明はこれらの必要を満たし、そして他の関連する利点をさらに提供する。
(発明の要旨)
本発明は、部分的には、細胞内カルシウムのミトコンドリア調節を変更する薬剤を同定するための方法に関する。従って、1つの局面において、本発明は、ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)ハイスループットスクリーニングアレイ中の複数の反応容器の各々の中で、(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、(ii)カルシウムカチオンの供給源と、ミトコンドリア膜電位の維持が可能である条件下で接触させる工程であって、ここで、このカルシウム指標分子が、細胞質ゾル内のカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;(b)各反応容器内で、カルシウム指標分子により生成されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;ならびに(c)候補薬剤の非存在下で1つ以上の時点でカルシウム指標分子により生成されるシグナルと、候補薬剤の存在下で1つ以上の時点でカルシウム指標分子により生成されるシグナルとを比較し、そしてそれからミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する、工程。1つの実施形態においては、接触させる工程は、少なくとも1回繰り返される。別の実施形態においては、サンプルは、カルシウムカチオンの細胞内分布を変更する少なくとも1つの化合物を含有する。さらなる実施形態においては、細胞内カルシウムカチオン分布を変更する化合物は、タプシガルジンまたはRu360である。別の実施形態においては、細胞内カルシウムカチオン分布を変更する化合物は、カルシウムイオン透過担体、または細胞内カルシウム分布を変更する膜透過性化合物である。別の実施形態においては、サンプルは、酸化的リン酸化をATP産生から脱共役する少なくとも1つの化合物を含有する。別の実施形態においては、候補薬剤は膜透過性であり、そして別の実施形態においては、カルシウム指標分子は膜透過性である。別の実施形態においては、カルシウムカチオンの供給源は細胞に対して外因性である。別の実施形態においては、サンプルは、酸化的リン酸化をATP産生から脱共役する少なくとも1つの化合物を含有する。別の実施形態においては、細胞は、Bcl−2ファミリーのメンバーである少なくとも1つのポリペプチドを含む。別の実施形態においては、細胞は、細胞質ゾルカルシウムを調節するポリペプチドをコードする遺伝子を発現する。別の実施形態においては、遺伝子は、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする。別の実施形態においては、遺伝子は、トランスフェクトされた遺伝子である。別の実施形態においては、遺伝子は、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする。別の実施形態においては、細胞は、透過化処理された細胞(permeabilized cell)である。特定の実施形態においては、細胞は固体基質に接着し、そして特定の他の実施形態においては、細胞は非接着細胞である。
本発明の別の局面は、酸化的リン酸化をATP産生から脱共役する薬剤を同定する方法を提供することであり、この方法は、以下の工程を包含する:(a)ハイスループットスクリーニングアレイ中の複数の反応容器の各々の中で、(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、(ii)カルシウムカチオンの供給源と、ミトコンドリア膜電位の維持が可能である条件下で接触させる工程であって、ここで、このカルシウム指標分子が、細胞質ゾル内のカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;(b)各反応容器内で、カルシウム指標分子により生成されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに(d)(i)候補薬剤の非存在下で、少なくとも1回の接触させる工程の前および後に、1つ以上の時点でカルシウム指標分子により生成されるシグナルと、(ii)候補薬剤の存在下で、少なくとも1回の接触させる工程の前および後に、1つ以上の時点でカルシウム指標分子により生成されるシグナルとを比較する工程であって、ここで、薬剤の非存在下での接触工程の前の細胞質ゾル内のカルシウムレベルと比較して、薬剤の存在下での接触工程の前の時点の細胞質ゾル内のカルシウムの増加したレベルが、酸化的リン酸化をATP産生から脱共役する薬剤を示す。
別の局面において、本発明は、呼吸抑制剤である薬剤を同定する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)ハイスループットスクリーニングアレイ中の複数の反応容器の各々の中で、(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、(ii)カルシウムカチオンの供給源と、ミトコンドリア膜電位の維持が可能である条件下で接触させる工程であって、ここで、このカルシウム指標分子が、細胞質ゾル内のカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;(b)各反応容器内で、カルシウム指標分子により生成されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに(d)(i)候補薬剤の非存在下で、少なくとも1回の接触させる工程の前および後に、1つ以上の時点でカルシウム指標分子により生成されるシグナルと、(ii)候補薬剤の存在下で、少なくとも1回の接触させる工程の前および後に、1つ以上の時点でカルシウム指標分子により生成されるシグナルとを比較する工程であって、ここで、薬剤の非存在下での接触工程の前の細胞質ゾル内のカルシウムレベルと比較して、薬剤の存在下での接触工程の前の時点の細胞質ゾル内のカルシウムの増加したレベルが、呼吸抑制剤である薬剤を示す。
別の実施形態において、本発明は、ミトコンドリアカルシウムユニポータを変更する薬剤を同定する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)ハイスループットスクリーニングアレイ中の複数の反応容器の各々の中で、(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、(ii)カルシウムカチオンの供給源と、ミトコンドリア膜電位の維持が可能である条件下で接触させる工程であって、ここで、このカルシウム指標分子が、細胞質ゾル内のカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;(b)各反応容器内で、カルシウム指標分子により生成されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに(d)(i)候補薬剤の非存在下で、少なくとも1回の接触させる工程の前および後に、1つ以上の時点でカルシウム指標分子により生成されるシグナルと、(ii)候補薬剤の存在下で、少なくとも1回の接触させる工程の前および後に、1つ以上の時点でカルシウム指標分子により生成されるシグナルとを比較する工程であって、ここで、薬剤の非存在下での接触工程の後の細胞質ゾル内のカルシウムレベルと比較して、薬剤の存在下での接触工程の後の時点の細胞質ゾル内のカルシウムの増加したレベルが、その薬剤がミトコンドリアカルシウムユニポータを変更することを示す。
別の実施形態においては、ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法が提供され、この方法は、以下の工程を包含する:(a)(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、(ii)カルシウムカチオンの供給源と、ミトコンドリア膜電位の維持が可能である条件下で接触させる工程であって、ここで、このカルシウム指標分子が、細胞質ゾル内のカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;(b)カルシウム指標分子により生成されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;ならびに(c)候補薬剤の非存在下で1つ以上の時点でカルシウム指標分子により生成されるシグナルと、候補薬剤の存在下で1つ以上の時点でカルシウム指標分子により生成されるシグナルとを比較し、そしてそれからミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する、工程。1つの実施形態においては、接触させる工程は、少なくとも1回繰り返される。別の実施形態においては、サンプルは、カルシウムカチオンの細胞内分布を変更する少なくとも1つの化合物を含有する。別の実施形態においては、細胞内カルシウムカチオン分布を変更する化合物は、タプシガルジンまたはRu360である。別の実施形態においては、細胞内カルシウムカチオン分布を変更する化合物は、カルシウムイオン透過担体、および細胞内カルシウム分布を変更する膜透過性化合物からなる群から選択される。別の実施形態においては、サンプルは、酸化的リン酸化をATP産生から脱共役する少なくとも1つの化合物を含有する。別の実施形態においては、候補薬剤は膜透過性である。別の実施形態においては、カルシウム指標分子は膜透過性である。別の実施形態においては、カルシウムカチオンの供給源は細胞に対して外因性である。別の実施形態においては、サンプルは、酸化的リン酸化をATP産生から脱共役する少なくとも1つの化合物を含有する。別の実施形態においては、細胞は、Bcl−2ファミリーのメンバーである少なくとも1つのポリペプチドを含む。別の実施形態においては、細胞は、細胞質ゾルカルシウムを調節するポリペプチドをコードする遺伝子を発現する。別の実施形態においては、遺伝子は、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする。別の実施形態においては、遺伝子は、トランスフェクトされた遺伝子である。別の実施形態においては、遺伝子は、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする。別の実施形態においては、細胞は、透過化処理された細胞である。別の実施形態においては、細胞は固体基質に接着する。別の実施形態においては、細胞は非接着細胞である。
なお別の実施形態において、本発明は、酸化的リン酸化をATP産生から脱共役する薬剤を同定する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、(ii)カルシウムカチオンの供給源と、ミトコンドリア膜電位の維持が可能である条件下で接触させる工程であって、ここで、このカルシウム指標分子が、細胞質ゾル内のカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;(b)カルシウム指標分子により生成されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに(d)(i)候補薬剤の非存在下で、少なくとも1回の接触させる工程の前および後に、1つ以上の時点でカルシウム指標分子により生成されるシグナルと、(ii)候補薬剤の存在下で、少なくとも1回の接触させる工程の前および後に、1つ以上の時点でカルシウム指標分子により生成されるシグナルとを比較する工程であって、ここで、薬剤の非存在下での接触工程の前の細胞質ゾル内のカルシウムレベルと比較して、薬剤の存在下での接触工程の前の時点の細胞質ゾル内のカルシウムの増加したレベルが、酸化的リン酸化をATP産生から脱共役する薬剤を示す。
別の実施形態において、本発明は、呼吸抑制剤である薬剤を同定する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、(ii)カルシウムカチオンの供給源と、ミトコンドリア膜電位の維持が可能である条件下で接触させる工程であって、ここで、このカルシウム指標分子が、細胞質ゾル内のカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;(b)カルシウム指標分子により生成されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに(d)(i)候補薬剤の非存在下で、少なくとも1回の接触させる工程の前および後に、1つ以上の時点でカルシウム指標分子により生成されるシグナルと、(ii)候補薬剤の存在下で、少なくとも1回の接触させる工程の前および後に、1つ以上の時点でカルシウム指標分子により生成されるシグナルとを比較する工程であって、ここで、薬剤の非存在下での接触工程の前の細胞質ゾル内のカルシウムレベルと比較して、薬剤の存在下での接触工程の前の時点の細胞質ゾル内のカルシウムの増加したレベルが、呼吸抑制剤である薬剤を示す。
別の実施形態において、本発明は、ミトコンドリアカルシウムユニポータを変更する薬剤を同定する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)(i)サイトゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含む細胞を含む生物学的サンプルに、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、(ii)カルシウムカチオンの供給源を接触させる工程であって、ここで、このカルシウム指標分子は、そのサイトゾル中のカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;(b)このカルシウム指標分子によって生成されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに(d)(i)候補薬剤の非存在下での少なくとも1回の接触工程の前後の1以上の時点でのカルシウム指標分子によって生成されたシグナルを、(ii)候補薬剤の存在下での少なくとも1回の接触工程の前後の1以上の時点でのカルシウム指標分子によって生成されたシグナルに対して比較する工程であって、ここで、その薬剤の非存在下での接触工程後のサイトゾル中のカルシウムのレベルと比較した、その薬剤の存在下での接触工程後の時点でのサイトゾル中のカルシウムのレベルの増加は、その薬剤がミトコンドリアカルシウムユニポータを変更することを示す、工程。
別の実施形態において、本発明は、ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)ハイスループットスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々において、(i)ミトコンドリア、サイトゾルおよびカルシウム指標分子を含む細胞を含む生物学的サンプルに、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、かつ細胞内カルシウムレベルを増加させるのに十分な条件および時間で、(ii)カルシウムイオノフォアを接触させる工程であって、ここで、このカルシウム指標分子は、膜透過性であり、かつそのサイトゾル中のカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;(b)各々の反応容器において、このカルシウム指標分子によって生成されたシグナルを複数の時点で検出する工程;ならびに(c)候補薬剤の非存在下での1以上の時点での、カルシウム指標分子によって生成されたシグナルを、候補薬剤の存在下での1以上の時点での、カルシウム指標分子によって生成されたシグナルに対して比較する工程、およびそこからミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する工程。
別の実施形態において、カルシウムイオノフォアは、イオノマイシン、A23187、NMDAまたは細胞脱分極シグナルである。別の実施形態において、接触工程は、少なくとも1回繰り返される。別の実施形態において、サンプルは、カルシウムカチオンの細胞内分布を変更する、少なくとも1つの化合物を含む。別の実施形態において、細胞内カルシウムカチオンの分布を変更する化合物は、タプシガルジンまたはRu360である。別の実施形態において、細胞内カルシウムカチオン分布を変更する化合物は、細胞内カルシウム分布を変更する、カルシウムイオノフォアまたは膜透過性化合物である。別の実施形態において、サンプルは、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する、少なくとも1つの化合物を含む。別の実施形態において、候補薬剤は、膜透過性である。別の実施形態において、カルシウムカチオンの供給源は、その細胞に対して外因性である。別の実施形態において、サンプルは、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する、少なくとも1つの化合物を含む。別の実施形態において、細胞は、Bcl−2ファミリーのメンバーである、少なくとも1つのポリペプチドを含む。別の実施形態において、細胞は、サイトゾルカルシウムを調節するポリペプチドをコードする遺伝子を発現する。特定のさらなる実施形態において、この遺伝子は、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードし、そして特定の他の実施形態において、この遺伝子は、トランスフェクトされた遺伝子である。特定のさらなる実施形態において、この遺伝子は、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする。別の実施形態において、細胞は、固体基質に接着し、そして特定の他の実施形態において、細胞は、非接着性の細胞である。
別の実施形態において、本発明は、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する薬剤を同定する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)(i)サイトゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含む細胞を含む生物学的サンプルに、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、かつ細胞内カルシウムレベルを増加させるのに十分な条件および時間で、(ii)カルシウムイオノフォアを接触させる工程であって、ここで、このカルシウム指標分子は、膜透過性であり、かつそのサイトゾル中のカルシウムレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;(b)このカルシウム指標分子によって生成されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに(d)(i)候補薬剤の非存在下での少なくとも1回の接触工程の前後の1以上の時点でのカルシウム指標分子によって生成されたシグナルを、(ii)候補薬剤の存在下での少なくとも1回の接触工程の前後の1以上の時点でのカルシウム指標分子によって生成されたシグナルに対して比較する工程であって、ここで、その薬剤の非存在下での接触工程前のサイトゾル中のカルシウムのレベルと比較した、その薬剤の存在下での接触工程前の時点でのサイトゾル中のカルシウムレベルの増加は、その薬剤がATP産生から酸化的リン酸化を脱共役することを示す、工程。
別の実施形態において、本発明は、呼吸抑制剤である薬剤を同定する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)(i)サイトゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含む細胞を含む生物学的サンプルに、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、かつ細胞内カルシウムレベルを増加させるのに十分な条件および時間で、(ii)カルシウムイオノフォアを接触させる工程であって、ここで、このカルシウム指標分子は、膜透過性であり、かつそのサイトゾル中のカルシウムレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;(b)このカルシウム指標分子によって生成されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに(d)(i)候補薬剤の非存在下での少なくとも1回の接触工程の前後の1以上の時点でのカルシウム指標分子によって生成されたシグナルを、(ii)候補薬剤の存在下での少なくとも1回の接触工程の前後の1以上の時点でのカルシウム指標分子によって生成されたシグナルに対して比較する工程であって、ここで、その薬剤の非存在下での接触工程前のサイトゾル中のカルシウムのレベルと比較した、その薬剤の存在下での接触工程前の時点でのサイトゾル中のカルシウムのレベルの増加は、その薬剤が呼吸抑制剤であることを示す、工程。
別の実施形態において、本発明は、ミトコンドリアカルシウムユニポータを変更する薬剤を同定する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)(i)サイトゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含む細胞を含む生物学的サンプルに、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、かつ細胞内カルシウムレベルを増加させるのに十分な条件および時間で、(ii)カルシウムイオノフォアを接触させる工程であって、ここで、このカルシウム指標分子は、膜透過性であり、かつそのサイトゾル中のカルシウムレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;(b)このカルシウム指標分子によって生成されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに(d)(i)候補薬剤の非存在下での少なくとも1回の接触工程の前後の1以上の時点でのカルシウム指標分子によって生成されたシグナルを、(ii)候補薬剤の存在下での少なくとも1回の接触工程の前後の1以上の時点でのカルシウム指標分子によって生成されたシグナルに対して比較する工程であって、ここで、その薬剤の非存在下での接触工程後のサイトゾル中のカルシウムのレベルと比較した、その薬剤の存在下での接触工程後の時点でのサイトゾル中のカルシウムのレベルの増加は、その薬剤がミトコンドリアカルシウムユニポータを変更することを示す、工程。
本発明の別の局面は、ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法を提供することであって、この方法は、以下の工程を包含する:(a)(i)サイトゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を枯渇された、透過化処理された細胞を含む生物学的サンプルに、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、(ii)カルシウムカチオンの供給源を接触させる工程であって、ここで、このカルシウム指標分子は、その細胞中のカルシウムレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;(b)このカルシウム指標分子によって生成されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;ならびに(c)候補薬剤の非存在下での1以上の時点でのカルシウム指標分子によって生成されたシグナルを、候補薬剤の存在下での1以上の時点でのカルシウム指標分子によって生成されたシグナルに対して比較する工程、およびそこからミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する工程。別の関連する実施形態において、このような方法が、ハイスループットスクリーニング形式で提供され、ここで、接触工程は、ハイスループットスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々において行われ、そして検出工程は、各反応容器中で行われる。
特定のさらなる実施形態に従って、カルシウム指標分子は、ミトコンドリア中のカルシウムのレベルまたはミトコンドリア外のカルシウムレベルのいずれか一方に比例する、検出可能なシグナルを生成し得る。特定の他のさらなる実施形態において、接触工程は、少なくとも1回繰り返される。特定の他のさらなる実施形態において、サンプルは、カルシウムカチオンの細胞内分布を変更する、少なくとも1つの化合物を含む。なおさらなる実施形態において、細胞内カルシウムカチオンの分布を変更する化合物は、タプシガルジンまたはRu360である。別の実施形態において、サンプルは、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する、少なくとも1つの化合物を含む。別の実施形態において、カルシウムカチオンの供給源は、その細胞に対して外因性であり、そして別の実施形態において、サンプルは、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する、少なくとも1つの化合物を含む。特定の実施形態において、細胞は、Bcl−2ファミリーのメンバーである、少なくとも1つのポリペプチドを含み、そして特定の他の実施形態において、細胞は、サイトゾルカルシウムを調節するポリペプチドをコードする遺伝子を発現する。さらなる実施形態において、この遺伝子は、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードし、そして別のさらなる実施形態において、この遺伝子は、トランスフェクトされた遺伝子である。なおさらなる実施形態において、この遺伝子は、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする。特定の実施形態に従って、細胞は、固体基質に接着するが、特定の他の実施形態において、細胞は、非接着性の細胞である。
別の実施形態において、本発明は、ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)(i)培地中に1以上の単離されたミトコンドリアおよび1つのカルシウム指標分子を含む生物学的サンプルに、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、(ii)カルシウムカチオンの供給源を接触させる工程であって、ここで、このカルシウム指標分子は、その生物学的サンプル中のカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;(b)このカルシウム指標分子によって生成されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;ならびに(c)候補薬剤の非存在下での1以上の時点でのカルシウム指標分子によって生成されたシグナルを、候補薬剤の存在下での1以上の時点でのカルシウム指標分子によって生成されたシグナルに対して比較する工程、およびそこからミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する工程。別の関連する実施形態において、このような方法が、ハイスループットスクリーニング形式で提供され、ここで、接触工程は、ハイスループットスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々において行われ、そして検出工程は、各反応容器中で行われる。
特定のさらなる実施形態において、カルシウム指標分子は、ミトコンドリア中のカルシウムのレベルに比例する、検出可能なシグナルを生成し得、そして特定の他のさらなる実施形態において、カルシウム指標分子は、ミトコンドリア外カルシウムのレベルに比例する、検出可能なシグナルを生成し得る。特定の他のさらなる実施形態において、接触工程は、少なくとも1回繰り返される。別の実施形態において、サンプルは、サンプル中のカルシウムカチオンの細胞内分布を変更する、少なくとも1つの化合物を含み、特定のさらなる実施形態において、その化合物は、タプシガルジンまたはRu360である。別の実施形態において、サンプルは、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する、少なくとも1つの化合物を含み、そして別の実施形態において、単離されたミトコンドリアは、Bcl−2ファミリーのメンバーである、少なくとも1つのポリペプチドを含む細胞に由来する。特定の他の実施形態において、単離されたミトコンドリアは、サイトゾルカルシウムを調節するポリペプチドをコードする遺伝子を発現する細胞に由来し、そして特定のさらなる実施形態において、この遺伝子は、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする。特定の他の実施形態において、この遺伝子は、トランスフェクトされた遺伝子であり、そして特定のさらなる実施形態において、この遺伝子は、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする。
上記の本発明の方法の特定のさらなる実施形態において、生物学的サンプルにカルシウムカチオンの供給源を接触させる工程の後およびシグナルを比較する工程の前に、生物学的サンプルに、(i)ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する、少なくとも1つの化合物、および(ii)ミトコンドリア機能を変更する、少なくとも1つの薬剤を接触させる。いくつかの実施形態において、ミトコンドリア機能を変更する薬剤は、シクロスポリンAであり、そして特定の他の実施形態において、この薬剤は、シクロスポリンA、ロテノン、オリゴマイシン、コハク酸塩またはBcl−2である。特定の実施形態において、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する化合物は、FCCPまたはCCCPである。
本発明のこれらおよび他の局面は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照して明らかとなる。本明細書中に開示された全ての参考文献は、各々が個々に援用されるように、その全体が参考として本明細書によって援用される。
(項目1) ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法であって、以下:
(a)ハイスループットスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々において、
(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、
(ii)カルシウムカチオンの供給源と、
接触させる工程であって、
ここで該カルシウム指標分子が、該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;
(b)各反応容器において、複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出する工程;ならびに
(c)候補薬剤の非存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、該候補薬剤の存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して比較し、それにより、ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する工程、
を包含する、方法。
(項目2) 前記接触させる工程が、少なくとも1回繰り返される、項目1に記載の方法。
(項目3) 前記サンプルが、カルシウムカチオンの細胞内分布を変更する少なくとも1つの化合物を含む、項目1に記載の方法。
(項目4) 細胞内カルシウムカチオン分布を変更する前記化合物が、タプシガルジンおよびRu360からなる群より選択される、項目3に記載の方法。
(項目5) 細胞内カルシウムカチオン分布を変更する前記化合物が、細胞内カルシウム分布を変更する、カルシウムイオン透過担体および膜透過性化合物からなる群より選択される、項目3に記載の方法。
(項目6) 前記サンプルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する少なくとも1つの化合物を含有する、項目3に記載の方法。
(項目7) 前記候補薬剤が、膜透過性である、項目1に記載の方法。
(項目8) 前記カルシウム指標分子が、膜透過性である、項目1に記載の方法。
(項目9) 前記カルシウムカチオンの供給源が、前記細胞に対して外因性である、項目1に記載の方法。
(項目10) 前記サンプルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する少なくとも1つの化合物を含有する、項目1に記載の方法。
(項目11) 前記細胞が、Bcl−2ファミリーのメンバーである少なくとも1つのポリペプチドを含む、項目1に記載の方法。
(項目12) 前記細胞が、細胞質ゾルカルシウムを調節するポリペプチドをコードする遺伝子を発現する、項目1に記載の方法。
(項目13) 前記遺伝子が、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする、項目12に記載の方法。
(項目14) 前記遺伝子が、トランスフェクトされた遺伝子である、項目12に記載の方法。
(項目15) 前記遺伝子が、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする、項目14に記載の方法。
(項目16) 前記細胞が、透過化処理された細胞である、項目1に記載の方法。
(項目17) 前記細胞が、固体基質に接着する、項目1に記載の方法。
(項目18) 前記細胞が、非接着細胞である、項目1に記載の方法。
(項目19) ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する薬剤を同定する方法であって、以下:
(a)ハイスループットスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々において、
(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、
(ii)カルシウムカチオンの供給源と、
接触させる工程であって、
ここで該カルシウム指標分子が、該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;
(b)各反応容器において、複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出する工程;
(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに
(d)(i)候補薬剤の非存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、(ii)該候補薬剤の存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して、比較する工程であって、ここで、該薬剤の非存在下での接触工程の前の該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比べて、該薬剤の存在下での接触工程の前の時点での該細胞質ゾルにおけるカルシウムの増加したレベルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する薬剤を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目20) 呼吸抑制剤である薬剤を同定する方法であって、以下:
(a)ハイスループットスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々において、
(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、
(ii)カルシウムカチオンの供給源と、
接触させる工程であって、
ここで該カルシウム指標分子が、該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;
(b)各反応容器において、複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出する工程;
(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに
(d)(i)候補薬剤の非存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、(ii)該候補薬剤の存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して、比較する工程であって、ここで、該薬剤の非存在下での接触工程の前の該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比べて、該薬剤の存在下での接触工程の前の時点での該細胞質ゾルにおけるカルシウムの増加したレベルが、呼吸抑制剤である薬剤を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目21) ミトコンドリアカルシウムユニポータを変更する薬剤を同定する方法であって、
(a)ハイスループットスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々において、
(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、
(ii)カルシウムカチオンの供給源と、
接触させる工程であって、
ここで該カルシウム指標分子が、該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;
(b)各反応容器において、複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出する工程;
(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに
(d)(i)候補薬剤の非存在下で少なくとも1つの接触工程の前および後の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、(ii)該候補薬剤の存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して、比較する工程であって、ここで、該薬剤の非存在下での接触工程の前の該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比べて、該薬剤の存在下での接触工程の前の時点での該細胞質ゾルにおけるカルシウムの増加したレベルが、ミトコンドリアカルシウムユニポータを変更する薬剤を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目22) ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法であって、以下:
(a)
(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、
(ii)カルシウムカチオンの供給源と、
接触させる工程であって、
ここで該カルシウム指標分子が、該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;
(b)複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出する工程;ならびに
(c)候補薬剤の非存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、該候補薬剤の存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して比較し、それにより、ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する工程、
を包含する、方法。
(項目23) 前記接触させる工程が、少なくとも1回繰り返される、項目22に記載の方法。
(項目24) 前記サンプルが、カルシウムカチオンの細胞内分布を変更する少なくとも1つの化合物を含有する、項目22に記載の方法。
(項目25) 細胞内カルシウムカチオン分布を変更する前記化合物が、タプシガルジンおよびRu360からなる群より選択される、項目24に記載の方法。
(項目26) 細胞内カルシウムカチオン分布を変更する前記化合物が、細胞内カルシウム分布を変更する、カルシウムイオン透過担体および膜透過性化合物からなる群より選択される、項目24に記載の方法。
(項目27) 前記サンプルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する少なくとも1つの化合物を含有する、項目24に記載の方法。
(項目28) 前記候補薬剤が、膜透過性である、項目22に記載の方法。
(項目29) 前記カルシウム指標分子が、膜透過性である、項目22に記載の方法。
(項目30) 前記カルシウムカチオンの供給源が、前記細胞に対して外因性である、項目22に記載の方法。
(項目31) 前記サンプルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する少なくとも1つの化合物を含有する、項目22に記載の方法。
(項目32) 前記細胞が、Bcl−2ファミリーのメンバーである少なくとも1つのポリペプチドを含む、項目22に記載の方法。
(項目33) 前記細胞が、細胞質ゾルカルシウムを調節するポリペプチドをコードする遺伝子を発現する、項目22に記載の方法。
(項目34) 前記遺伝子が、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする、項目33に記載の方法。
(項目35) 前記遺伝子が、トランスフェクトされた遺伝子である、項目33に記載の方法。
(項目36) 前記遺伝子が、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする、項目35に記載の方法。
(項目37) 前記細胞が、透過化処理された細胞である、項目22に記載の方法。
(項目38) 前記細胞が、固体基質に接着する、項目22に記載の方法。
(項目39) 前記細胞が、非接着細胞である、項目22に記載の方法。
(項目40) ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する薬剤を同定する方法であって、以下:
(a)
(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、
(ii)カルシウムカチオンの供給源と、
接触させる工程であって、
ここで該カルシウム指標分子が、該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;
(b)複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出する工程;
(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに
(d)(i)候補薬剤の非存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、(ii)該候補薬剤の存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して、比較する工程であって、ここで、該薬剤の非存在下での接触工程の前の該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比べて、該薬剤の存在下での接触工程の前の時点での該細胞質ゾルにおけるカルシウムの増加したレベルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する薬剤を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目41) 呼吸抑制剤である薬剤を同定する方法であって、以下:
(a)
(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、
(ii)カルシウムカチオンの供給源と、
接触させる工程であって、
ここで該カルシウム指標分子が、該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;
(b)複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出する工程;
(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに
(d)(i)候補薬剤の非存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、(ii)該候補薬剤の存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して、比較する工程であって、ここで、該薬剤の非存在下での接触工程の前の該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比べて、該薬剤の存在下での接触工程の前の時点での該細胞質ゾルにおけるカルシウムの増加したレベルが、呼吸抑制剤である薬剤を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目42) ミトコンドリアカルシウムユニポータを変更する薬剤を同定する方法であって、
(a)
(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、
(ii)カルシウムカチオンの供給源と、
接触させる工程であって、
ここで該カルシウム指標分子が、該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;
(b)複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出する工程;
(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに
(d)(i)候補薬剤の非存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、(ii)該候補薬剤の存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して、比較する工程であって、ここで、該薬剤の非存在下での接触工程の前の該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比べて、該薬剤の存在下での接触工程の前の時点での該細胞質ゾルにおけるカルシウムの増加したレベルが、ミトコンドリアカルシウムユニポータを変更する薬剤を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目43) ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法であって、以下:
(a)ハイスループットスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々において、
(i)ミトコンドリア、細胞質ゾル、およびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、
(ii)カルシウムイオン透過担体と、該細胞内のカルシウムレベルを増加する条件下で、該細胞内のカルシウムレベルを増加するに十分な時間、
接触させる工程であって、
ここで該カルシウム指標分子が膜透過性であり、そして該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;
(b)各反応容器において、複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出する工程;ならびに
(c)候補薬剤の非存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、該候補薬剤の存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して比較し、それにより、ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する工程、
を包含する、方法。
(項目44) 前記カルシウムイオン透過担体が、イオノマイシン、A23187、NMDA、および細胞脱分極シグナルからなる群より選択される、項目43に記載の方法。
(項目45) 前記接触させる工程が、少なくとも1回繰り返される、項目43に記載の方法。
(項目46) 前記サンプルが、カルシウムカチオンの細胞内分布を変更する少なくとも1つの化合物を含む、項目43に記載の方法。
(項目47) 細胞内カルシウムカチオン分布を変更する前記化合物が、タプシガルジンおよびRu360からなる群より選択される、項目46に記載の方法。
(項目48) 細胞内カルシウムカチオン分布を変更する前記化合物が、細胞内カルシウム分布を変更する、カルシウムイオン透過担体および膜透過性化合物からなる群より選択される、項目46に記載の方法。
(項目49) 前記サンプルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する少なくとも1つの化合物を含有する、項目46に記載の方法。
(項目50) 前記候補薬剤が、膜透過性である、項目43に記載の方法。
(項目51) 前記カルシウムカチオンの供給源が、前記細胞に対して外因性である、項目43に記載の方法。
(項目52) 前記サンプルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する少なくとも1つの化合物を含有する、項目43に記載の方法。
(項目53) 前記細胞が、Bcl−2ファミリーのメンバーである少なくとも1つのポリペプチドを含む、項目43に記載の方法。
(項目54) 前記細胞が、細胞質ゾルカルシウムを調節するポリペプチドをコードする遺伝子を発現する、項目43に記載の方法。
(項目55) 前記遺伝子が、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする、項目54に記載の方法。
(項目56) 前記遺伝子が、トランスフェクトされた遺伝子である、項目54に記載の方法。
(項目57) 前記遺伝子が、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする、項目56に記載の方法。
(項目58) 前記細胞が、固体基質に接着する、項目43に記載の方法。
(項目59) 前記細胞が、非接着細胞である、項目43に記載の方法。
(項目60) ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する薬剤を同定する方法であって、以下:
(a)
(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、
(ii)カルシウムイオン透過担体と、該細胞内のカルシウムレベルを増加する条件下で、該細胞内のカルシウムレベルを増加するに十分な時間、
接触させる工程であって、
ここで該カルシウム指標分子が膜透過性であり、そして該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;
(b)複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出する工程;
(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに
(d)(i)候補薬剤の非存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、(ii)該候補薬剤の存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して、比較する工程であって、ここで、該薬剤の非存在下での接触工程の前の該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比べて、該薬剤の存在下での接触工程の前の時点での該細胞質ゾルにおけるカルシウムの増加したレベルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する薬剤を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目61) 呼吸抑制剤である薬剤を同定する方法であって、以下:
(a)
(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、
(ii)カルシウムイオン透過担体と、該細胞内のカルシウムレベルを増加する条件下で、該細胞内のカルシウムレベルを増加するに十分な時間、
接触させる工程であって、
ここで該カルシウム指標分子が膜透過性であり、そして該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;
(b)複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出する工程;
(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに
(d)(i)候補薬剤の非存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、(ii)該候補薬剤の存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して、比較する工程であって、ここで、該薬剤の非存在下での接触工程の前の該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比べて、該薬剤の存在下での接触工程の前の時点での該細胞質ゾルにおけるカルシウムの増加したレベルが、呼吸抑制剤である薬剤を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目62) ミトコンドリアカルシウムユニポータを変更する薬剤を同定する方法であって、以下:
(a)
(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、
(ii)カルシウムイオン透過担体と、該細胞内のカルシウムレベルを増加する条件下で、該細胞内のカルシウムレベルを増加するに十分な時間、
接触させる工程であって、
ここで該カルシウム指標分子が膜透過性であり、そして該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;
(b)複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出する工程;
(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに
(d)(i)候補薬剤の非存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、(ii)該候補薬剤の存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して、比較する工程であって、ここで、該薬剤の非存在下での接触工程の後の該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベルに比べて、該薬剤の存在下での接触工程の後の時点での該細胞質ゾルにおけるカルシウムの増加したレベルが、ミトコンドリアカルシウムユニポータを変更する薬剤を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目63) ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法であって、以下:
(a)
(i)細胞質ゾルの枯渇した透過化処理された細胞を含む生物学的サンプル、ミトコンドリア、およびカルシウム指標分子を、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、
(ii)カルシウムカチオンの供給源と、
接触させる工程であって、
ここで該カルシウム指標分子が、該細胞におけるカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;
(b)複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出する工程;ならびに
(c)候補薬剤の非存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、該候補薬剤の存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して比較し、それにより、ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する工程、
を包含する、方法。
(項目64) ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法であって、以下:
(a)ハイスループットスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々において、
(i)細胞質ゾルの枯渇した透過化処理された細胞を含む生物学的サンプル、ミトコンドリア、およびカルシウム指標分子を、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、
(ii)カルシウムカチオンの供給源と、
接触させる工程であって、
ここで該カルシウム指標分子が、該細胞におけるカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;
(b)各反応容器において、複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出する工程;ならびに
(c)候補薬剤の非存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、該候補薬剤の存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して比較し、それにより、ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する工程、
を包含する、方法。
(項目65) 前記カルシウム指標分子が、前記ミトコンドリアにおけるカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、項目63または項目64のいずれかに記載の方法。
(項目66) 前記カルシウム指標分子が、前記ミトコンドリアの外側のカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、項目63または項目64のいずれかに記載の方法。
(項目67) 前記接触させる工程が、少なくとも1回繰り返される、項目63または項目64のいずれかに記載の方法。
(項目68) 前記サンプルが、カルシウムカチオンの細胞内分布を変更する少なくとも1つの化合物を含む、項目63または項目64のいずれかに記載の方法。
(項目69) 細胞内カルシウムカチオン分布を変更する前記化合物が、タプシガルジンおよびRu360からなる群より選択される、項目68に記載の方法。
(項目70) 前記サンプルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する少なくとも1つの化合物を含有する、項目68に記載の方法。
(項目71) 前記カルシウムカチオンの供給源が、前記細胞に対して外因性である、項目63または項目64のいずれかに記載の方法。
(項目72) 前記サンプルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する少なくとも1つの化合物を含有する、項目63または項目64のいずれかに記載の方法。
(項目73) 前記細胞が、Bcl−2ファミリーのメンバーである少なくとも1つのポリペプチドを含む、項目63または項目64のいずれかに記載の方法。
(項目74) 前記細胞が、細胞質ゾルカルシウムを調節するポリペプチドをコードする遺伝子を発現する、項目63または項目64のいずれかに記載の方法。
(項目75) 前記遺伝子が、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする、項目74に記載の方法。
(項目76) 前記遺伝子が、トランスフェクトされた遺伝子である、項目74に記載の方法。
(項目77) 前記遺伝子が、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする、項目76に記載の方法。
(項目78) 前記細胞が、固体基質に接着する、項目63または項目64のいずれかに記載の方法。
(項目79) 前記細胞が、非接着細胞である、項目63または項目64のいずれかに記載の方法。
(項目80) ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法であって、以下:
(a)ハイスループットスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々において、
(i)培地中の、1以上の単離されたミトコンドリアを含む生物学的サンプルおよびカルシウム指標分子を、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、
(ii)カルシウムカチオンの供給源と、
接触させる工程であって、
ここで該カルシウム指標分子が、該生物学的サンプルにおけるカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;
(b)各反応容器において、複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出する工程;ならびに
(c)候補薬剤の非存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、該候補薬剤の存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して比較し、それにより、ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する工程、
を包含する、方法。
(項目81) ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法であって、以下:
(a)
(i)培地中の、1以上の単離されたミトコンドリアを含む生物学的サンプルおよびカルシウム指標分子を、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、
(ii)カルシウムカチオンの供給源と、
接触させる工程であって、
ここで該カルシウム指標分子が、該生物学的サンプルにおけるカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;
(b)複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出する工程;ならびに
(c)候補薬剤の非存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、該候補薬剤の存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して比較し、それにより、ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する工程、
を包含する、方法。
(項目82) 前記カルシウム指標分子が、前記ミトコンドリアにおけるカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、項目80または項目81のいずれかに記載の方法。
(項目83) 前記カルシウム指標分子が、前記ミトコンドリアの外側のカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、項目80または項目81のいずれかに記載の方法。
(項目84) 前記接触させる工程が、少なくとも1回繰り返される、項目80または項目81のいずれかに記載の方法。
(項目85) 前記サンプルが、サンプル内のカルシウムカチオンの分布を変更する少なくとも1つの化合物を含む、項目80または項目81のいずれかに記載の方法。
(項目86) カルシウムカチオン分布を変更する前記化合物が、タプシガルジンおよびRu360からなる群より選択される、項目85に記載の方法。
(項目87) 前記サンプルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する少なくとも1つの化合物を含有する、項目85に記載の方法。
(項目88) 前記単離されたミトコンドリアが、Bcl−2ファミリーのメンバーである少なくとも1つのポリペプチドを含む細胞から誘導される、項目80または項目81のいずれかに記載の方法。
(項目89) 前記単離されたミトコンドリアが、細胞質ゾルカルシウムを調節するポリペプチドをコードする遺伝子を発現する細胞から誘導される、項目80または項目81のいずれかに記載の方法。
(項目90) 前記遺伝子が、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする、項目89に記載の方法。
(項目91) 前記遺伝子が、トランスフェクトされた遺伝子である、項目89に記載の方法。
(項目92) 前記遺伝子が、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする、項目91に記載の方法。
(項目93) 前記生物学的サンプルを前記カルシウムカチオンの供給源と接触させる工程に続いて、かつシグナルを比較する工程の前に、該生物学的サンプルを、(i)ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する少なくとも1つの化合物、および(ii)ミトコンドリア機能を変更する少なくとも1つの薬剤、と接触させる、項目1、21、22、42、63、64、80または89のいずれか1項に記載の方法。
(項目94) ミトコンドリア機能を変更する前記薬剤が、シクロスポリンAである、項目93に記載の方法。
(項目95) ミトコンドリア機能を変更する前記薬剤が、シクロスポリンA、ロテノン、オリゴマイシン、スクシネート、およびBcl−2からなる群より選択される、項目93に記載の方法。
(項目96) ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する前記化合物が、FCCPおよびCCCPからなる群より選択される、項目93に記載の方法。
(発明の詳細な説明)
本発明は、ミトコンドリア機能を変更する、特に、細胞内カルシウムレベルのミトコンドリア調節に影響を与える化合物を同定するための方法を提供し、この方法は、候補薬剤の生理学的効果または薬理学的効果の検出についてのハイスループットスクリーニングアッセイを含む。本発明は、ハイスループット形式への高感度な細胞ベースの計量技術の予測されない適合性、および候補薬剤(例えば、薬物およびファルマコフォア(pharmacophore))のパネルをスクリーニングするためにこれらの技術を改変する能力に、部分的に基づく。さらに、本発明は、細胞内カルシウムカチオン分布を変更する化合物の使用を通して、選択的な条件が、ハイスループット薬物スクリーニングのような細胞ベースのアッセイにおいて、ミトコンドリアによる細胞内カルシウムの調節をモニターするために考え出され得るという、驚くべき観察に部分的に基づく。
本発明に従って、サイトゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含む細胞(あるいは、特定の実施形態において、ミトコンドリアを含む透過化処理された細胞、またはミトコンドリアを含みかつサイトゾルを枯渇された、透過化処理された細胞、または単離されたミトコンドリアの懸濁物(これらの各場合において、カルシウム指標分子を含む))は、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、カルシウムカチオン(Ca2+)の供給源を1回以上接触され、そしてそのカルシウム指標分子によって生成されたシグナル(このシグナルは、サイトゾル中のカルシウムレベルに比例する)が、複数の時点で検出される。膜電位を維持し得るミトコンドリアは、サイトゾルの遊離のカルシウムレベルを調節し得、その結果、本明細書中に記載されるようなサイトゾルカルシウムレベルのモニタリングは、このミトコンドリア機能および関連するミトコンドリア機能(ミトコンドリアカルシウムユニポータ活性を含む)を変更する薬剤についてのスクリーニングおよびそのような薬剤の同定を可能にする。候補化合物の存在下で生成されたシグナルを、その薬剤の非存在下で生成されたシグナルに対して比較することによって、その薬剤の導入に伴うシグナルの変化(例えば、増加または減少)の検出は、その薬剤が通常、ミトコンドリア機能を変更し得るということを示す。
従って、以下にさらにより詳細に記載するように、本発明は、ハイスループットスクリーニングアッセイを含む、ミトコンドリア活性によって調節される細胞内カルシウムレベルの変化を検出することにより、ミトコンドリア機能を変化させ得る化合物をスクリーニングするための組成物および方法に関する。本発明のスクリーニングアッセイは、インタクトな細胞を用いて行われるアッセイを含み、そしてまた、透過化細胞を用いて実施されるアッセイを包含する。本明細書に提供されるように、特定の実施形態において、本発明は、ミトコンドリア機能を変化させる因子を同定するための方法を提供し、そして特定の他の実施形態において、本発明は、呼吸器系のインヒビターである因子を同定するための方法を提供する。特定の他の実施形態において、本発明は、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役させる因子を同定するための方法を提供する。特定の他の実施形態において、本発明は、ミトコンドリアのカルシウムミトコンドリアカルシウムユニポーター(uniporter)を阻害する因子を同定するための方法を提供する。さらに、本明細書において開示されるように、本発明の方法は、ミトコンドリア機能を変化させる因子の特定の型の間を識別することを可能にする。例えば、本明細書における教示の基づいて、産生されるシグナルを、一定期間経時的に、本明細書において提供されるようにカルシウム指標分子によって検出することによって、当業者は、因子が、ミトコンドリアカルシウムユニポーターを阻害するか否か、あるいは、因子が呼吸器インヒビターであり得るか、もしくは、ATP産生から酸化的リン酸化のアンカップラーであり得るかを決定し得る。
本発明に従い、かつ以下にさらにより詳細に記載するように、細胞質ゾル、ミトコンドリア、およびカルシウム指標分子(または特定の実施形態において、ミトコンドリアを含む透過化細胞、またはミトコンドリアを含みかつ細胞質ゾルが涸渇された透過化細胞、または好ましい実施形態において単離されたミトコンドリアの懸濁物、各々の場合、カルシウム指標分子を含む)を含む細胞を含む生物学的サンプルは、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下でカルシウムカチオンの供給源と接触させ、そしてカルシウム指標分子によって生成され、そして細胞質ゾルカルシウムのレベルに比例して産生される検出可能なシグナルが、複数の時点で検出される。カルシウムカチオンの供給源と接触させる工程は、必要に応じて、少なくとも1回または複数回反復され得、そして候補因子の非存在下で1回以上の時点でそのカルシウム指標分子によって生成されるシグナルは、候補因子の非存在下で1回以上の時点でカルシウム指標分子によって生成されるシグナルと比較される。
非限定的な理論に従って、最初のカルシウム接触工程は、コントロール条件下で、ミトコンドリアにカルシウムが移入されるにと消散する、検出可能な細胞質ゾルカルシウムの一過的な上昇を同様に誘発する(図1A)。候補因子がミトコンドリア機能に対する効果を有しない場合、カルシウム供給源との続きの接触工程は、細胞質ゾルカルシウムにおける一過的な上昇を同様に生じ、これは、この細胞質ゾルカルシウムのミトコンドリア取り込みが進行すると消散する(図1C)。特定の生物学的サンプルおよび存在するカルシウム量に依存して、1、2またはそれを超えるカルシウム接触工程の後に、カルシウム取り込みについてのミトコンドリア容量は、過飽和され得、その結果、ミトコンドリア膜電位およびミトコンドリア膜透過性移動(MPT)の崩壊が誘発され、これによって、細胞質ゾルへのミトコンドリアからのカルシウムの検出可能な自発的放出がもたらされる。本発明の好ましい実施形態において、少なくとも2または3回のカルシウム接触工程が、この型の自発的なカルシウム放出を誘発するのに必要とされる。
ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する候補因子(すなわち、「呼吸系アンカップラー」(uncopler))が存在する場合、ミトコンドリアの膜電位は消散し、そしてミトコンドリアはカルシウムを放出して細胞質ゾルへと戻す(例えば、カルシウムユニポーターを介して)。これによって、カルシウム指標分子によって生成されるシグナルの検出可能な増加が生じる(図1B)。しかし、カルシウムユニポーターのインヒビターである候補因子が存在する場合、細胞質ゾルカルシウムのミトコンドリア取り込みは、1または数回のカルシウム接触工程の後に完全にまたは部分的に損なわれ、検出可能な細胞質ゾルカルシウムのより高いレベルを生じる(図1D)。逆に、カルシウムユニポーター活性を刺激、増加または他の方法で増強する候補因子が存在する場合、カルシウム接触工程の後の細胞質ゾルからのカルシウムのミトコンドリア取り込みは、そのカルシウム指標分子によって生成されるシグナルの減少として検出される(図1D)。本発明の特定の実施形態において、カルシウムカチオンの細胞内分布を変化させる化合物が必要に応じて存在し得る(例えば、タプシガルギン(thapsigargin)、ルテニウム赤(例えば、Yingら、Biochem.30:4949、1991;Matlibら、J.Biol.Chem.273:10223、1998)、Ru360(例えば、Emersonら、J.Am.Chem.Soc.115:11799、1993)、Bcl−2(例えば、Murphyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:9893、1996;米国特許第5,459,251号)、または1つ以上の他の適切な化合物)。必要に応じて、ミトコンドリア機能を変化させ得るさらなる化合物もまた存在し得る(例えば、クロロメチルテトラメチルローザミン(chloromethyltetramethylrosamine)(例えば、Scorranoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 274:24567、1999)、シクロスポリンA(例えば、Petronilliら、Biophys、Jl.76:725、1999;Murphyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:9893)、ロテノン、オリゴマイシンまたはコハク酸塩(Murphyら、1996)。
「変化したミトコンドリア機能」とは、変化したミトコンドリア機能に関連する疾患に伴う機能を含む、任意の状態(conditionまたはstate)をいい得る。ここで、ミトコンドリア機能に直接または間接的に関連する任意の構造もしくは活性が、コントロールもしくは標準に対して、統計学的に有意な様式で変化されている。変化したミトコンドリア機能は、ミトコンドリア外構造もしくは事象において、およびミトコンドリア構造もしくは事象において、ミトコンドリア遺伝子および/もしくはその遺伝子産物とミトコンドリア外遺伝子および/もしくはその遺伝子産物との間の直接の相互作用において、またはそのような相互作用の結果として形成され得る中間体(代謝物、異化物、基質、前駆体、補因子などを含む)の間の相互作用の結果として生じる構造上もしくは機能上の変化において、その起源を有し得る。
さらに、変化したミトコンドリア機能は、生物学的サンプルもしくは生物学的供給源の1つ以上の細胞において、変化した、呼吸活性、代謝活性もしくは他の生化学的活性または生物物理学的活性を包含し得る。非限定的な例として、顕著に損なわれたETC活性は、変化したミトコンドリア機能に関連し得、これは、活性酸素種(ROS)の増加もしくは酸化的リン酸化の欠損の発生と同様であり得る。さらなる例として、変化したミトコンドリア膜電位、アポトーシス経路の誘導、および細胞内の異常な化学的および生化学的な架橋種の形成は、それが酵素的機構であれ非酵素的機構であれ、すべてが、変化したミトコンドリア機能の指標であるとみなされ得る。変化したミトコンドリア機能のこれらおよび他の非限定的な例が、本発明によって企図される。
理論に束縛されることは望まないが、変化したミトコンドリア機能は、変化した細胞内カルシウム調節に関連し得る。これは、例えば、細胞内カルシウム流入によるミトコンドリア膜の電気化学的電位の喪失によるか、遊離ラジカル酸化を包含する機構によるか、アデニンヌクレオチドトランスポーターまたはリンゴ酸アスパラギン酸シャトルのようなミトコンドリア膜貫通シャトルおよびトランスポーターの欠損によるか、ATP生合成の欠損によるか、へキソキナーゼおよび/または他の酵素のポリンとの会合の損傷、または他の事象によるものを伴い得る。変化した細胞内カルシウム調節および/またはミトコンドリア内膜電位の崩壊は、ミトコンドリア遺伝子、遺伝子産物または関連する下流のメディエーター分子および/またはミトコンドリア外遺伝子、遺伝子産物、または関連する下流のメディエーターの直接的もしくは間接的な効果から、あるいは他の公知のまたは未知の原因から、生じ得る。従って、「変化したミトコンドリア機能の指標」とは、ミトコンドリアを含む、状態、過程、経路、動力学的構造、状態、または他の活性に直接関連し、そして被験体または生物学的供給源から生物学的サンプルにおける変化したミトコンドリア機能の検出を可能にする、任意の検出可能なパラメータであり得る。従って、非限定的な理論にしたがえば、変化したミトコンドリア機能はまた、カルシウムもしくはアポトーシスに関与するミトコンドリア分子成分(例えば、シトクロムc)に対する、変化したミトコンドリア透過性、またはミトコンドリア呼吸における他の変化を包含し得る。
本発明の特定の局面は、それが、細胞内カルシウムを結合、輸送または他の方法で調節するミトコンドリア分子成分の活性のモニタリングに関連する場合、ミトコンドリアΔΨと細胞内カルシウム恒常性との間の関係を包含する。従って、本発明は、部分的には、細胞質ゾルを含む細胞を含む生物学的サンプルにおいて、ミトコンドリアおよび本明細書において記載されるようなカルシウム指標分子、そのカルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出することに関する。従って、特定の好ましい実施形態において、変化したミトコンドリア機能は、ミトコンドリア内カルシウムレベルおよびミトコンドリア外カルシウムレベルのミトコンドリア調節の変化として、変化したミトコンドリアカルシウムユニポーター活性として、変化したミトコンドリア膜電位として、ミトコンドリアATP産生に対する、ミトコンドリア酸化的リン酸化の共役の変化として、変化したミトコンドリア呼吸として、または本明細書において提供され、および当該分野で公知である他の任意のミトコンドリア機能もしくは活性の変化(例えば、コントロールに対する統計学的に有意な変化)として、現れ得る。
背景として、ミトコンドリアカルシウムの変動は、細胞内カルシウム恒常性の部分である通常の事象であり、これはまた、上記のとおりである。さらに、ミトコンドリアカルシウムレベルは、一過的な低細胞質ゾルカルシウム濃度を反映し得、これは、ミトコンドリア病理に関連するATPの減少または他の状態と組み合わせて、ミトコンドリア透過性の移動(MPT、例えば、Gunterら、Biochim.Biophys.Acta 1366:5、1998;Rottenbergら、Biochim.Biophys.Acta 1016:87、1990を参照のこと)を生じ得る。一般に、静止条件下では、ミトコンドリア外(すなわち、細胞質ゾル)のCa2+レベルは、ミトコンドリア内に存在するものよりも高い。特定の疾患または障害の場合(変化したミトコンドリア機能2関連する疾患を含む)において、ミトコンドリアまたは細胞質ゾルのカルシウムレベルは、上記の範囲から変動し得、そして例えば、約1nMから約500nM、より代表的には約10nMから約100μM、および通常は約20nMから約1μM(ここで、「約」とは、±10%を意味する)の範囲であり得る。
膜電位の損失が、ミトコンドリアに細胞質ゾル中に封鎖(sequester)されたCa2+を放出するようさせることから、ミトコンドリア付近におけるCa2+負荷が増加し、連鎖反応を設定する(Darley−Usmarら、Ann.Med.23:583、1991)。脱共役した電子移動からのラジカル産生の増加を包含する、PT崩壊の病理結果とは独立して、後に起こるATP自体の喪失は、好気的に平衡の取れた(poise)細胞にとって致命的であり得る(Jurkowitz−Alexanderら、J.Neurochem.59:344、1992)。減少した代謝エネルギー供給に加えて、ATPの損失は、ΔΨm崩壊を悪化させる。
MPTはまた、1つ以上のミトコンドリア分子成分を結合する化合物によって誘発され得る。そのような化合物としては、以下が挙げられるがそれらに限定されない:アトラクチロシド(atractyloside)およびボングクレク酸(bongkrekic acid)。そのような化合物がMPTを誘発する適切な量を決定する方法は当該分野において公知である(例えば、Beutnerら、Biochim.BIophys.Acta、1368:7、1998;ObatomiおよびBach、Toxicol.Lett.89:155、1996;GreenおよびReed、Science 281:1309、1998;Kroemerら、Annu.Rev.Physiol 60:619、1998;およびそれらにおいて引用される参考文献を参照のこと)。
特定の条件下で、細胞内カルシウムのミトコンドリア調節の変化を特徴付け得るミトコンドリア状態(例えば、カルシウムに対するミトコンドリア膜透過性の変化)は、「アポトゲン」と呼ばれる、プログラムされた細胞死すなわち「アポトーシス」を誘発する組成物に対して生物学的サンプルを暴露することによって誘発され得る。種々のアポトゲンが当業者に公知であり(例えば、Greenら、Science 281:1309、1998、およびそこに引用されている参考文献を参照のこと)、そして例示であるが限定ではなく、以下を包含し得る:腫瘍壊死因子α(TNF−α);Fasリガンド;グルタミン酸;N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA);インターロイキン−3(IL−3);ハービマイシンA(Manciniら、J.Cell.Biol.138:449−469、1997);パラコート(Costantiniら、Toxicology 99:1−2、1995);エチレングリコール;タンパク質キナーゼインヒビター(例えば、スタウロスポリン、カルホスチンC、カフェー酸(caffeic acid)フェネチルエステル、ケテリトリンクロリド、ゲニステイン;1−(5−イソキノリンスルホニル)−2−メチルピペラジン;N−[2−((p−ブロモシナミル)アミノ)エチル]−5−5−イソキノリンスルホンアミド;KN−93;ケルセチン(quercitin);d−エリスロ−スフィンゴシン誘導体(例えば、セラミド);UV照射;イオノフォア(例えば、イオノマイシンおよびバリノマイシン);MAPキナーゼインデューサー(例えば、アニソマイシン、アナンダミン);細胞周期ブロッカー(例えば、アフィジコリン、コルセミド、5−フルオロウラシル、ホモハリングトニン(homoharringtonine);アセチルコリンエステラーゼインヒビター(例えば、ベルベリン);抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン);プロオキシダント(例えば、tert−ブチルペルオキシド、過酸化水素);遊離ラジカル(例えば、一酸化窒素);無機金属イオン(例えば、カドミウム);DNA合成インヒビター(例えば、アクチノマイシンDを含み、そしてまたDNAトポイソメラーゼインヒビター(例えば、エトポシド)を含む);DNAインタカレータ(例えば、ドキソルビシン、硫酸ブレオマイシン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、マイトマイシンC,カムプトテシン、ダウノルビシン);タンパク質合成インヒビター(例えば、シクロヘキシミド、プロマイシン、ラパマイシン);微小管の形成または安定性に影響を与える因子(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、4−ヒドロキシフェニルレチナミド、パクリタキセル);Badタンパク質、Bidタンパク質およびBaxタンパク質(例えば、Jurgenmeierら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:4997−5002、1998およびそこで引用される文献を参照のこと);カルシウムおよび無機リン酸(Kroemerら、Ann.Rev.Physiol.60:619.1998)。
従って、上記のように、本発明は、部分的に、本明細書に記載されるような生物学的サンプルにおけるカルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出することに関する。カルシウム指標分子は、そのサンプルに対して内因性(例えば天然に存在する)であり得るか、または外因性であり得、外因性であることは、その生物学的サンプル中には天然には存在しないが、細胞質ゾルまたはミトコンドリアにおけるカルシウムレベルに対して比例する検出可能なシグナルをそのカルシウム指標分子が生成し得る限り、充填、投与、混合、発現(遺伝子的に操作された核酸構築物の産物としての発現を含む)、標的化され、接触され、暴露され、または他の方法でそのサンプルに人工的に導入されている、少なくとも1つのカルシウム指標分子を含む。好ましい実施形態において、そのカルシウム指標分子は、外因性であり、そして検出可能なシグナルは蛍光シグナルである。
従って、本発明によって、生物学的サンプルにおいて、関連する部分において、本明細書において提供される、細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含む細胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、カルシウムカチオンの供給源と接触させる工程、および複数の時点でそのカルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出して、例えば、検出されたシグナルレベルの時間経過を生成する工程によって、細胞質ゾルカルシウムレベルをアッセイするための方法を提供することが企図される。そのカルシウム指標分子が蛍光指標である場合、その指標分子によって生成されるシグナルは、そのシグナルが、細胞質ゾルのカルシウムレベルに比例し、適切な波長を有する光に対してそのサンプルを暴露してその指標を励起すること、および適切な波長での蛍光発光を検出するために適切な装置を用いて得られた蛍光を判定することによって検出され得る。当業者は、そのサンプル(選択したカルシウム指標分子を含む)の特性および選択したカルシウムイオンの供給源の特性に鑑みて、そのサンプルが本明細書に提供される教示に基づいて、カルシウムカチオンの供給源と接触される様式で容易に決定することができる。以下により詳細に考察するように、本発明の方法を使用して、ミトコンドリア機能を変化させ、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役させ、呼吸器インヒビターであるか、またはミトコンドリアカルシウムユニポーターを変化させる因子を同定し得る。
従って、好ましい実施形態において、カルシウム指標分子は、光発光分子であり得(例えば、蛍光、りん光、または化学発光の分子など)、これは、適切な波長の励起光によって励起される場合に光の形態での検出可能なシグナルを発光する。「蛍光」とは、ある波長での照射の吸収(「励起」)、ほぼ直後の通常は異なる波長での再照射(「発光」)によって生じる発光(光の放射)であって、入射照射が停止するとほぼ直ぐに停止するものをいう。分子レベルでは、蛍光は、特定の化合物(発蛍光団として知られる)において生じ、基底状態から励起のより高い状態へと光エネルギーによってもたらされ;その分子がその基底状態に戻ると、それらは代表的には異なる波長で発光する。「りん光」とは、対照的に、ある波長での照射の吸収、および続いての異なる波長で生じる遅れた再照射によって生じ、そして入射照射が停止した後も認知可能な時間継続する発光をいう。「化学発光」とは、化学反応によって生じる発光をいい、「生物発光」とは、生命体または細胞、オルガネラ、またはそれらに由来する光の放射をいう。
種々のカルシウム指標が当該分野において公知であり、そして、アッセイ構成に関する種々の因子(例えば、特定の生物学的サンプルおよび選択されるアッセイ試薬)に依存して、検出可能な細胞内シグナル(例えば、細胞質ゾルまたはミトコンドリアにおけるカルシウムレベルに比例するシグナル)を生成するために適切である。適切なカルシウム指標としては、以下が挙げられるが、以下に限定される必要はない:以下のような蛍光指標:fura−2(McCormackら、1989 Biochim.Biophys.Acta 973:420);mag−fura−2;BTC(米国特許第5,501,980号);fluo−3、fluo−4、fluo−5Fおよびfluo−5N(米国特許第5、049,673号);fura−4F、fura−5F;fura−6F,およびfura−FF;rhod−2、rhod−5F;Calcium GreenTM 5N;ベンゾチアザ−1およびベンゾチアザ−2など(これらは、Molecular Probes、Inc.,Eugene ORから入手可能である(例えば、Calcium Signaling Protocols−Meths.In Mol.Biol.第114巻、Lambert、D(編)Humana Press、1999もまた参照のこと)。カルシウムが直接測定され得る特定の実施形態において、遊離カルシウムイオン自体は、カルシウム指標分子として作用し得る。そのような実施形態は、例えば、適切なメーター(例えば、pHメーター)に接続されたカルシウム感受性電極(例えば、World Precision Instrument、Inc.、Sarasota,FLから市販される)を用いて決定する場合、存在するカルシウムレベルに比例する検出可能なシグナルに関連する;ここでは、好ましくは、そのような直接のカルシウム測定は、その生物学的サンプルが、透過化細胞、細胞質ゾルを涸渇させた透過化細胞、または媒体中に1つ以上の単離されたミトコンドリアを含む。
Calcium GreenTM 5Nは、本発明に従う使用のための特に好ましいカルシウム指標分子である。しかし、使用される特定のアッセイ条件に依存して、当業者は、上記のカルシウム指標から、または他のカルシウム指標から、本明細書における教示に従って、かつそのような指標の、公知の特性(例えば、可溶性、安定性など)に基づいて、適切なカルシウム指標を選択し得る。例えば、例示の目的でかつ限定ではないが、細胞透過性指標または細胞不透性指標が必要であるか否か(例えば、サンプルが透過化細胞を含むか否か)、カルシウムに対する指標の親和性(例えば、本明細書において提供されるサンプル内のカルシウム濃度の動的作業範囲)、および/またはカルシウム依存性蛍光励起シフトのような蛍光スペクトル特性はすべて、適切なカルシウム指標の選択における因子であり得る。
種々の装置が本発明の方法において用いられて、本明細書において提供されるような、蛍光化合物であるカルシウム指標分子を励起し得、そして細胞質ゾルにおけるカルシウムレベルに比例するカルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出し得、例えば、そこから得られる発光を測定し得る。適切な装置、光源、フィルターセットなどの選択は、例えば、以下の当業者に公知の因子に依存し得る:(i)カルシウム指標分子を励起する波長(好ましくは、その指標分子の最適な励起波長(λmax(ex))においてもしくはその付近)でのエネルギー(すなわち、光)の印加;(ii)アクセプター化合物の発光スペクトル内(好ましくは、指標分子の最適発光波長(λmax(em))においてもしくはその付近でのエネルギー(すなわち、光)の検出;(iii)アッセイされるべきサンプルの型;および(iv)所定のプログラムにおいて、例えば、ハイスループットスクリーニング形式においてアッセイされるサンプルの数および形式付け。
因子(i)および因子(ii)に関して、サンプルに適用されるエネルギースペクトルおよびサンプルにより放射されるエネルギーのスペクトルが、一般に、どの型の器具が使用されるかを決定する。例えば、λ(ex)は、λ(em)と同一ではないが、これら2つの値の間の違いの最小の受容可能量は、他の因子の間でも使用される器具使用によって、影響を受ける。つまり、λ(ex)が、λ(em)に近づく場合、密接な間隔(closely spaced)の波長を解像可能な器具が必要とされ、そしてλ(ex)とλ(em)との違いが約3nm〜約5nmより小さい場合のアッセイは、高い解像度の機器を必要とする。逆に、λ(ex)とλ(em)との間の相違が、約50〜約75nmより大きいアッセイでは、比較的中間〜低い解像度を有する機器を必要とする。
従って、因子(ii)に関して特異的な、励起したフルオロフォアによって放射され、そしてサンプルにおいて測定されるエネルギーの型は、一般に、どんな型の器具が使用されるかを決定する。例えば、フルオロメーターは、蛍光エネルギーを測定するデバイスであり、従って、器具使用の一部であるべきである。フルオロメーターは、わずかの反応管(例えば、サンプル管)を一度に適応する(accommodate)比較的単純な、手動で操作される機器から、複数の反応管を有するフォーマット(例えば、96ウェルマイクロプレート)において大量のサンプルを適応する、多少より複雑な、手動で操作される機器または自動機器(robotic instrument)(例えば、fmaxTM fluorimetric plate reader、Molecular Devices Corps.、Sunnyvale,CA;またはCytofluorTM fluorimetric plate reader、model #2350、Millipore Corp.、Bedford、MA)、あるいは種々のフォーマット(例えば、96ウェルマイクロプレート、384ウェルマイクロプレートまたはハイスループットのスクリーニングフォーマット)において多数のサンプルを適応する複雑な自動機器(例えば、FLIPRTM機器;下記を参照のこと)(ここで、例えば、複数の反応管におけるカルシウム指標分子によるシグナルの検出が自動化され得る)からなるものであり得る。
因子(iii)(所定のプログラムにおいてアッセイされるサンプルの型)に関して、異なるフォーマットが異なる型のサンプルについて適切である。例えば、96ウェルマイクロプレートまたは384マイクロプレートは、目的の細胞が、マイクロプレートの基板、すなわちマイクロプレートのウェルに適用されるいくつかの物質(例えば、ウェルが処理されている天然コーティングまたは合成コーティング(例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、RGDペプチド、ポリLリジン、CelTakTMなど))に接着する場合に適切であり得る。しかし、特定の一般的なプラスチックマルチウェルプレート物質由来の蛍光を干渉することは、約400nm未満の励起波長で、大きな人工バックグラウンド成分を生じ得る。従って、懸濁細胞のような非接着細胞、または増殖基質から取り除かれた接着細胞の懸濁物、もしくはミクロキャリアー(microcarrier)などへの接着細胞の懸濁物に関わる測定のために、ガラスまたはポリマー管もしくは管状材料、あるいは別の適切な非干渉管において蛍光シグナルを読み取り得る装置が好まれ得る。どんな型のフォーマットが使用されるかに関わらず、アッセイ反応管は、生物学的サンプル、候補因子、カルシウムカチオンの供給源、コントロール試薬および、必要に応じてサイトゾルのカルシウムレベルに影響し得る付加的な化合物、ならびに複数の適切な時点でカルシウム指標分子により生成されるシグナルを検出する能力、の誘導を考慮に入れるべきである。
因子(iv)では、所定のプログラムにおいてアッセイされるサンプルの数は、選択される機器により、実行され得る自動化の程度に影響し得る。例えば、ハイスループット(HTS)のスクリーニング(すなわち、比較的短い時間で大量のサンプルをアッセイする)が所望される場合、自動化機器または半自動化機器が好ましい。あるいは、大きいサンプル数に適応するフォーマット(例えば、96ウェルマイクロプレート)が使用される場合でさえ、サンプルは手動で処理され得る。
上記のように、本発明は、細胞内カルシウムのミトコンドリア調節を変更する薬剤を同定することの使用のためのアッセイを提供する。このようなアッセイは、ミトコンドリア機能、カルシウムユニポータインヒビター、呼吸抑制剤および/またはATP産生に由来する酸化的リン酸化の脱共役剤を変更する因子を検出するために設計される。従って、本発明は、ミトコンドリアカルシウム調節機能のレベルで活性な薬剤についての薬剤、化合物またはリード化合物を同定する効率的方法を提供する。一般的に、これらのスクリーニング方法は、サイトゾルカルシウムを調節することへのミトコンドリアの関与の決定を容易にする条件下で、細胞内サイトゾル遊離カルシウムレベルを変更する化合物についてのアッセイを包含し、そして好ましい実施形態において、このような方法は、ミトコンドリアカルシウムユニポータの関与の決定に関連し得る。この方法は、リード化合物についての化学ライブラリーの、自動化されて費用効果が高く、ハイスループットのスクリーニングに受け入れられ得る。
用語「スクリーニング」は、例えば、ネガティブな様式またはポジティブな様式において細胞内カルシウムのミトコンドリア調節を変更する、候補薬剤の大きなコレクションの中から因子を同定するための本発明の使用をいう。簡単には、サイトゾル、一つ以上のミトコンドリアおよび本明細書中で提供されるようなカルシウム指標分子を含む細胞またはその部分は、細胞内カルシウムレベルの検出を可能にする条件下(薬理学的インヒビター(または増強剤)あるいは潜在的に関連する生物学的活性を有する他のアッセイ反応化合物の使用を含む)で、候補因子により処理され、ミトコンドリアによる細胞内カルシウムの取り込みもしくは放出を決定する。次いで、検出可能な細胞内カルシウムレベルへの候補因子の効果がモニターされ、そして候補因子の省略(omission)(例えば、因子を送達するために使用されるビークルのみを有する)を除けば、同一に処理されたコントロールサンプルと比較される。検出は、局所的なカルシウム濃度に対応する検出可能なシグナルを生成可能なカルシウム感受性レポーター分子(例えば、本明細書中で提供されるようなカルシウム指標分子)を使用する。
本発明は、例えば、ハイスループットのスクリーニング;(すなわち一つ以上の細胞型に対する活性について、多量の候補化合物の自動化されたスクリーニング)において大きな価値があると考えられる。例えば、活性な化合物についての合成ライブラリーまたは天然産物ライブラリーにおいて特定の価値があると考えられる。従って、本発明の方法は、自動化された、費用効果の高い、ハイスループットの薬物スクリーニングに受け入れられ、そして広範な薬学的薬物開発プログラムにおける迅速な適用を有する。本発明の好ましい実施形態では、スクリーニングされる化合物は、96ウェルプレートフォーマットのようなハイスループットのスクリーニングフォーマット、または他の規則的な二次元アレイ(例えば、384ウェルウェルプレートフォーマット、48ウェルウェルプレートフォーマットまたは24ウェルプレートフォーマットあるいは試験管のアレイ)で組織される。従って、ハイスループットのスクリーニングについて、このフォーマットは、好ましく自動化に受け入れられる。例えば、本発明のハイスループットのスクリーニングの実施形態に従った使用のための自動化された装置は、コンピューターまたは他のプログラム可能なコントローラーの制御下にあることが好まれる。コントローラーは、このプロセスの各々の工程の結果を継続的にモニターし得、そしてそれらの結果に対する応答において、試験パラダイムを自動的に変更し得る。
アッセイに依存して、Fluorometric Imaging Plate Reader(FLIPRTM)機器(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)が、しばしば本発明の蛍光ベースアッセイのための最適な機器である。FLIPRTM系(http://www.moleculardevices.com/pages/flipr.htmlを参照のこと)は、以下の所望される特徴を有する:(i)画像化に曝される期間にわたり検出可能なシグナルを蓄積する積算検出器として、水冷却式(water−cooled)、アルゴンイオンレーザー照射および冷却式CCDカメラの組合せを使用し、そして結果としてそのSN(信号対ノイズ)特性は、一般に、従来の画像光学のSN特性より優れている;(ii)細胞単層上のシグナル識別を可能にする特有の細胞層単離光学もまた利用し、従って所望しない細胞外バックグラウンド蛍光を低減する。;(iii)リアルタイムのデータを提供し、そして運動データもまた提供し得る(すなわち、複数の時点での読み取り);(iv)フルオロフォアを同時に励起させ、そして96ウェルマイクロプレートの96ウェル全てからの放射を読み取る能力を有する;(v)分析の間サンプルの温度および湿度の正確な制御を提供する;(vi)内蔵型の最新技術の96ウェルピペッターを含み、これは、実験間で持ち越される物を排除するために不要なチップを使用し、そしてミクロプレートから正確な量の液体を吸引し、分配し、そして混合するのに使用され得る;そして、(vii)FLIPR384機器の場合、ロボット化または半ロボット化の様式でサンプルアッセイを実行するために適用され、従って、大量のサンプルの迅速なHTS分析を提供する(例えば、1日あたり約100個の96ウェルマイクロプレートまで)。
また上記のように、ミトコンドリアへのCa2+の流入は、電子移動によって確立された負の膜貫通電気化学ポテンシャル(ΔΨ)に大体依存するようであり、そして完全に依存し得、そしてこのような流入は、8倍のCa2+濃度勾配が課される場合でさえ、ΔΨの非存在において生じない(Kapusら、FEBS Lett.282:61、1991)。従って、本発明の好ましい実施形態において、本明細書中で提供されるような生物学的サンプルは、以下により詳細に記載されるように、ミトコンドリアの膜電位の維持を可能にする条件下で、カルシウムカチオンの供給源と接触する。従って、膜電位が、例えば、酸化的リン酸化の脱共役剤(すなわち、ADPリン酸化によるATP産生由来のミトコンドリアETCの脱共役剤)(例えば、2,4−ジニトロフェノール(DNP)およびカルボニルシアニドp−トリフルオロ−メトキシフェニルヒドラゾン(FCCP))により、生じるのと同様に、散逸される(dissipated)場合、ミトコンドリアは、本明細書中で記載されるカルシウムユニポータを介してCa2+を放出し得る。
カルシウムカチオンの供給源であり得る化合物は、本発明の特定の実施形態に従って、細胞外環境に存在しそして/または種々の細胞内区画の1つ以上に存在するカルシウムの再分布をもたらすことにより、増大する細胞内Ca2+濃度、細胞質Ca2+濃度、サイトゾルCa2+濃度および/またはミトコンドリアCa2+濃度を誘導する。このような化合物(カルシウムイオノフォアを含む)は、当業者に周知である。細胞内カルシウムを測定する方法もまた、本明細書中で提供され、そして当該分野で公知である(例えば、Gunterら、J.Bioenerg.Biomembr.26:471、1994;Gunterら、Biochim.Biophys.Acta 1366:5、1998;McCormackら、Biochim.Biophys.Acta 973:420、1989;Orreniusら、J.Neural.Transm.Suppl.43:1、1994;Leistら、Rev.Physiol.Biochem.Pharumacol.132:79、1998;およびHaugland、1996、前出)。有用なカルシウムイオノフォアの例としては、A23187、イオノマイシン、CA1001、Fusarium orthoceras var.enniatum由来のエンニアチン(enniatin)B(例えば、Levyら、Biochem.Pharmacol.50:2105、1995)、Palythoa toxica由来のパリトキシン(例えば、Aizuら、Japan.Jl.Pharmacol.60:9、1992)、および適切な細胞型における当該分野で公知のN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)または他の細胞脱分極シグナル(例えば、Briniら、Nature Medicine 5:951、1999)ならびに本明細書中に記載されるものが挙げられる。
従って、当業者は、本発明の特定の実施形態におけるカルシウムカチオンの供給源の使用のための細胞内カルシウムおよび適切なイオノフォアを検出するための適切な手順を、適切なカルシウム含有緩衝液、培地および類似の試薬の使用を含む、本開示および周知の方法に従って、容易に選択し得る。イオノフォアに加え、増大した細胞内(例えば、サイトゾル)Ca2+濃度を誘導する他の化合物としては、セスキテルペンラクトン、タプシガルジン(これは、おそらく小胞体Ca2+−ATPアーゼを阻害することにより、サイトゾルへのERによるカルシウム放出をブロックすることなく、小胞体(ER)におけるサイトゾル遊離カルシウムの回収(sequestration)を阻害すると考えられる)が挙げられるがこれらに限定されない(例えば、Takemuraら、J.Biol.Chem.264:12266、1989;Thastrupら、Agents Actions 27:17、1989;Wonら、Endocrinol.136:5399、1995;Begumら、J.Biol.Chem.268:3552、1995;Lowら、Eur.J.Pharmacol.250:53,1993を参照のこと)。細胞内カルシウムの再分布を増加するかまたは細胞内カルシウムの再分布をもたらすことが可能なさらなる化合物としては、カルバコール(例えば、Jenceら、J.Neurochem.64:1605、1995;Yanら、Mol.Pharmacol.47:248、1995)、BHQ(2,5−ジ−(t−ブチル)−1,4−ヒドロキノン;例えば、Salvadorら、Arch.Biochem.Biophys.351:272、1998)、CPA(シクロピアゾニック酸(cyclopiazonic acid)、例えば、Badaouiら、J.Mol.Cell.Cardiol.27:2495、1995)および適切なレセプターを有する細胞の場合、グルタメートまたはNMDAのようなアミノ酸神経伝達物質が挙げられる。
従って、当業者によって理解されるように、所定の化合物(例えば、グルタメート)に曝される特定の細胞は、その化合物が細胞内Ca2+レベルに影響する
ために、そのための特定のレセプター(例えば、グルタメートレセプター)を必要とする。例えば、NT−2奇形癌細胞は、グルタメートレセプターを発現するが、SH−SY5Y神経芽腫細胞は、発現しない。従って、細胞内カルシウムレベルを増加させるのに所望され得る細胞株の選択は、どの化合物がもっとも適切であるかを決定する。
例えば、例示であって限定する目的ではないが、細胞内カルシウムのミトコンドリア調節の決定に関する本発明の特定の好ましい実施形態において、イオノマイシン(Toeplitzら、J.Amer.Chem.Soc.101:3344、1979)が、カルシウムカチオンの供給源を提供するカルシウムイオノフォアとして使用され得、そしてFura−2またはRhod−2(Haugland、1996 Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals− Sixth Ed.、Molecular Probes、Eugene、Oregon、266〜274頁)が、それぞれサイトゾルカルシウムまたはミトコンドリア内カルシウムを検出するための蛍光カルシウム指標分子であり得る。一般に、カルシウムカチオンの供給源を提供する(すなわち、増加したCa2+の細胞内濃度を生じる)少なくとも1つの適切な化合物および生物学的サンプルのカルシウムホメオスタシスのミトコンドリア調節を測定することを可能にする少なくとも1つのカルシウム指標分子(すなわち、細胞内カルシウムレベルを検出するため)の任意の組合せが使用され得る。本明細書中で意図される使用のためのこのような化合物の適切な濃度の決定の方法は、当該分野で公知である(例えば、Takeiら、Brain Res.652:65、1994;Hatanakaら、Biochem.Biophys.Res.Commun.227:513、1996を参照のこと)。
さらに、ETC活性のようなミトコンドリア機能を変更する(例えば、ロテノン、オリゴマイシン)か(例えば、増大または低減)またはCa2+の細胞内分布を変更(例えば、タプシガルジン)し、そして当業者が精通する薬学的に活性な化合物は、サイトゾルカルシウムのミトコンドリア調節へのそれらの化合物の効果を評価するために必要に応じて用いられ得る。非限定的理論に従って、このような薬学的因子は、ミトコンドリアによって調節されるカルシウムプールを機能的に単離するために用いられ得、従ってミトコンドリア機能とサイトゾルカルシウムレベルとの間の関係の検出を可能にし得る。例えば、タプシガルジンの適切な濃度が、本明細書中で開示され、そして当業者に公知であるように選択され得、その結果、小胞体によるカルシウムの取り込みは阻害され、それによってミトコンドリア外(例えば、サイトゾル)のプールからのミトコンドリアカルシウムローディング(loading)および/またはサイトゾルへのカルシウムのミトコンドリア放出における、カルシウム指標分子を介した検出を提供する。補足クレームの範囲内で、これらおよび関連する方法および組成物における多くのバリエーションが、本開示の観点から当業者に行われる。
本明細書中で使用される場合、ミトコンドリアは、「ミトコンドリアの分子成分」から構成され、このミトコンドリアの分子成分は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、またはその誘導体;脂質、脂肪酸など、またはその誘導体;炭水化物、サッカライドなどまたはその誘導体、核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、プリン、ピリミジンもしくは関連する分子、あるいはその誘導体など;またはミトコンドリアの構成物質である別の生物学的分子であり得る。「ミトコンドリア分子成分」としては、「ミトコンドリアポア(pore)成分」が挙げられるがこれらに限定されない。「ミトコンドリアポア成分」は、カルシウムと結合し、カルシウムを輸送し、そうでないにしてもミトコンドリア膜のいずれかの側のカルシウムレベルおよび/または他のイオンレベルの維持に関与するミトコンドリア膜成分を含む、上記のようなミトコンドリア膜の選択的透過特性を調節する、任意のミトコンドリア膜成分である。ミトコンドリアポア成分はまた、ΔΨmを確立するのに関係するミトコンドリア分子成分およびMPTの間に機能的に変更されるミトコンドリア成分を含む。
ミトコンドリアポア成分またはミトコンドリアポア活性に影響する薬剤が相互作用する成分の単離および必要に応じて、同定および/または特徴付けもまた所望され得、そして本発明の範囲内にある。一旦、ある因子が、ミトコンドリア透過特性、例えば、ミトコンドリア結合、カルシウムの輸送または調節(本明細書中および米国特許出願番号第09/161,172号および同第09/338,122号および同第09/434,3564号において提供されるような)または、例えば、本明細書中および米国出願番号第09/161,172号において提供される方法に従ったMPT、のようなミトコンドリア活性を変更することが示されると、当業者は、このような因子によって特異的に認識され、そしてMPTの調節に関与する分子種を単離するのに慣例的に用いられ得る種々のアプローチに精通する(ここで、本明細書中で使用される場合「単離」とは、天然の生物学的環境からこのような分子種の分離をいう。)。
ミトコンドリア分子成分を単離するための技術としては、成分の生物学的供給源からその成分を分離するのに有用な任意の生物学的方法および/または生物化学的方法が挙げられ、そして後の特徴化は、標準的な生物化学的手順および分子生物学的手順に従って実施され得る。当業者は、生物学的出発物質および他の因子に依存して、適切な方法を選択し得る。このような方法としては、生物学的サンプルにおける細胞成分およびミトコンドリア成分の蛍光標識化またはその他の検出可能な標識化、細胞分画、密度沈降、微分抽出、塩沈降、限外濾過法、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、電気泳動、親和性技術またはミトコンドリアポア成分と相互作用する薬剤を用いた使用のために適応され得る任意の他の適切な方法が挙げられ得るが、これらに限定する必要はない。成分を部分的に精製する抗体が、当該分野で公知の方法に従って、開発され得、そしてこのような成分を検出し、そして/または単離するために使用され得る。
「サイトゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプル」は、以下を含む細胞が存在する任意の組織試料または細胞試料を含み得る:(i)サイトゾル(すなわち、任意のまたは全ての細胞内物質であるが細胞小器官外(例えば、ミトコンドリア外、核外など)物質であり、これは好ましくは細胞内ゾル、細胞液または他の溶液を含み得、そしてこれはまた細胞内であるが細胞小器官外局在(localization)に導入された外因性由来の物質(例えば、透過化処理された細胞において、細胞が透過化処理された状態であるために、細胞内の部位を占めるようになり得る物質)を含み得る)(ii)本明細書中に記載されるようなカルシウム指標分子、および(iii)1つ以上の酸化される(oxidizable)物質(例えば、グルコース、マレート、グルタメート、ピルべートまたはガラクトース)を供給する場合、膜電位を維持することが可能なインタクトなミトコンドリア。
ミトコンドリア膜電位は、当業者が容易に精通する方法(蛍光指標、光学(optical)プローブおよび/またはセンシティブpHならびにイオン選択電極(ion−selective electrode)のような検出可能な化合物の検出および/または測定を含むがこれらに限定されない)に従って、決定され得る(例えば、Bernardiら、Eur.J.Biochem.264:687、1999;Bernardi,Physiol.Rev.79:1127、1999;Ernsterら、J.Cell Biol.91:227s、1981、およびそこで引用される参考文献を参照のこと;Haugland、1996 Handbook of Fluorescent Probes
and Research Chemicals−第6版、Molecular Probes,Eugene,OR,266〜274頁および584〜594頁を参照のこと)。「電位を維持することが可能」とは、このようなミトコンドリアが、検出可能な化合物、電位感受性化合物または電位差(potentiometric)化合物(例えば、蛍光色素ローダミン123、DASPMI[2−,4−ジメチルアミノスチリル−N−メチルピリジニウム]、TMRM[テトラメチルローダミンメチルエステル]または他の安定した化合物)の蓄積を可能にするのに十分な膜電位を有することを意味する(例えば、Scheffle、Mitochondria、1999 Wiley−Liss、NY、198〜202頁を参照のこと;Haugland、1996もまた参照のこと)。
サイトゾルおよびミトコンドリアを含有する細胞を含む生物学的サンプルは、本明細書中で提供される通りの被験体または生物学的供給源に由来し得、そして後に、本明細書中に記載される通りカルシウム指標分子と接触され、サイトゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを提供する。以下でより詳細に記載される通り、この細胞は、特定の実施形態において透過化処理された細胞であり得、そして特定の他の実施形態では、サイトゾルを除去された透過化処理された細胞であり得る。
特定の他の実施形態に従って、そして以下でより詳細に記載されるように、「培地中に1つ以上の単離されたミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含む生物学的サンプル」(例えば、呼吸培地(respiratory medium))は、本明細書中に提供されるように、被験体または生物学的供給源に由来するミトコンドリアを含む液体懸濁物であり得る。好ましい実施形態において、単離されたミトコンドリアが調製され、そして引き続いてカルシウム指標分子と接触されて、培地中またはミトコンドリア内側(これは、好ましい実施形態において、液体培地をいい、そして例えば、任意の広範な種々の水性生物学的緩衝液または液体培養培地を含み得る)に、少なくとも1つの単離されたミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含む生物学的サンプルを提供し得る。特定の他の実施形態において、カルシウム指標分子(例えば、組換え発現された、ミトコンドリア標的化エクオリン)は、単離時に、単離されたミトコンドリア中に存在し得る。いずれかの例において、1つ以上の単離されたミトコンドリアを含む生物学的サンプルは、好ましくは、これらの実施形態および関連する実施形態に従って、液体懸濁物として提供され、その結果、サンプル中のミトコンドリア内および/またはミトコンドリア外のカルシウムのレベルが、決定され得る。
従って、例えば、生物学的サンプルは、正常の(すなわち、健常な)個体または変更されたミトコンドリア機能に関連する疾患を有する個体に由来し得る。生物学的サンプルは、血液サンプル、生検試料、組織移植片、器官培養物もしくは任意の他の組織または細胞調製物を得ることによって被験体もしくは生物学的供給源から得られ得る。被験体または生物学的供給源は、生物学的生物(例えば、ヒトもしくは非ヒト動物)、原核生物または真核生物、植物、単細胞生物または多細胞生物であり得る。特定の実施形態に従って、本発明は、カルシウム指標分子(これは、ポリペプチド、補因子、代謝産物など、天然にかもしくは遺伝子操作の結果としてかのいずれかである生合成産物としてサンプル中に存在するものである)を適切な部分において含む生物学的サンプルを意図し、その結果、適切な生物学的サンプルは、独立して誘導されたカルシウム指標分子と接触させる引き続く工程の必要なく、生物学的供給源に由来し得る。
被験体または生物学的供給源はまた、初代細胞培養物、あるいは染色体に組み込まれた核酸配列またはエピソーム組換え核酸配列(本明細書中に提供されるようなカルシウム指標分子であり得るポリペプチド(例えば、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、FLASHタンパク質もしくはエクオリン由来ポリペプチドまたは例えばU.S.A.N.09/434,354およびそこに引用される参考文献において提供される融合タンパク質であり得る)をコードする核酸配列を含むがこれらに限定されない)を含み得る遺伝子操作された細胞株、不死化細胞株もしくは不死化可能な細胞株、体細胞ハイブリッド細胞株もしくは細胞質ハイブリッド「サイブリッド(cybrid)」細胞株(例えば、米国特許第5,888,498号)、分化された細胞株もしくは分化可能な細胞株、形質転換された細胞株などを含むがこれらに限定されない細胞株に適合する培養物であり得る。
例えば、特定の実施形態において、生物学的サンプル細胞は、目的の生物学的レセプターをコードしそして発現する遺伝子を用いてトランスフェクトされ得、この目的の生物学的レセプターは、公知のリガンド(例えば、サイトカイン、ホルモンもしくは増殖因子)を有するレセプターであり得るか、またはリガンドが公知でない「オーファン(orphaned)」レセプターであり得る。さらにこのような実施形態に対して、1つ以上の公知のリガンドまたは目的のレセプターと相互作用し得ると疑われる他の化合物(例えば、サイトカイン、ホルモン、増殖因子、抗体、神経伝達物質、レセプターアクチベーター、レセプターインヒビター、イオンチャネル調節因子、イオンポンプ調節因子、刺激原、薬物、毒素または生物学的に関連する活性を有することが公知かもしくは有することが疑われる任意の他の化合物)は、必要に応じて、本発明の方法に含まれ得る。
特定の他の実施形態において、生物学的サンプル細胞は、カルシウム調節タンパク質をコードしそして発現する遺伝子を発現し得るか、このような遺伝子を発現するように誘導され得るか、あるいはこのような遺伝子を用いてトランスフェクトされ得る。カルシウム調節タンパク質は、任意の天然に存在するか、あるいは細胞内または細胞小器官内のカルシウムレベルを直接的または間接的に変更する(例えば、増加または減少させる)人工的に操作された、ポリペプチドまたはタンパク質を含む。カルシウム調節タンパク質の例としては、カルモジュリン、カルセケストリン、カルパインIおよびカルパインII、カルパスタチン、カルビンジン−D9k、オステオカルシン、オスタオネクチン、S−100プロテイン、トロポニンCならびに多くの膜貫通カルシウムチャネルが挙げられる。カルシウム調節タンパク質としてはまた、ミトコンドリアカルシウムユニポータならびにミトコンドリアナトリウム依存性カルシウム輸送体およびミトコンドリアナトリウム非依存性カルシウム輸送体が挙げられ、これらは、ミトコンドリアからのカルシウム流出を媒介する。カルシウムユニポータ機能は、種々の正常な代謝プロセスにおいて、アポトーシスにおいて、および特定の疾患機構において、役割を果たし得る。従って、ミトコンドリアカルシウムユニポータカルシウム輸送体活性(ADPによるその活性、ATP、Mg2+、ルテニウム赤による阻害、およびその誘導性Ru360(Matlibら、J.Biol.Chem.273:10223、1998;Emersonら、J.Amer.Chem.Soc.115:11799、1993)ならびにSr2+、Mn2+およびLa3+による競合性阻害を含む)は特徴付けられていないが、標準のミトコンドリアカルシウムユニポータとして同定および確認された特定ポリペプチドはなく、このようなユニポータをコードする遺伝子もまた決定されていない。特に、ミトコンドリアに局在化し、そしてカルシウム結合、カルシウム輸送、および/またはカルシウムの他の調節もしくはカルシウムによる調節を可能にする、候補ユニポータポリペプチドは、米国出願番号09/427,867号に開示される。
例えば、いくつかの膜貫通カルシウムチャネルは、細胞内結合、遊離カルシウムの輸送または調節(例えば、カルシウム結合、EFHAND、イオン輸送、リガンドチャネルおよび/またはカルモジュリン結合IQ−ドメイン)に関連する機能的ポリペプチドドメインを含む。EFHAND、イオンチャネル、リガンドチャネルおよびIQ。イオン輸送に対する情報については、例えば:Williamsら、Science 257:3898〜395、1992;Janら、Cell 69:715〜718、1992を参照のこと。カルシウム結合/輸送に対する情報については、例えば:RyRs(リアノジンレセプター)Chenら、J.Biol.Chem.273:14675〜14678、1998を参照のこと。L型Ca2+チャネルに対する情報については、例えば:Hockermanら、Annu.Rev.Pharmcol.Toxicol.37:361〜396、1997を参照のこと。リガンドチャネルに対する情報については、例えば:Tong、Sciecne 267:1510〜1512、1995を参照のこと;IQに関しては、例えば、Xieら、Nature 368:306〜312、1994を参照のこと。EFHANDに対する情報については、例えば、Persechiniら、Trends Neurosci.12:462、1989;Ikura、Trends Biochem.Sci.21:14、1996;Guerini、Biochem.Biophys.Res.Commun.235:271;Kakalisら、FEBS Lett.362:55、1995を参照のこと。従って、これらまたは他のカルシウム調節タンパク質は、本明細書中に提供されるような生物学的サンプル中に存在する細胞において発現され得る。
従って、本発明に従う使用のための細胞は、被験体もしくは生物学的供給源由来の新鮮に調製された細胞としてかまたは培養された細胞として提供され得、そして特定の好ましい実施形態において、この細胞は、培養された細胞である。本明細書中に提供され、そして当該分野において公知であるように、培養された細胞は、固体基質に天然に接着する接着細胞であり得るか、または適切な細胞培養系における培養によって自由に増殖する細胞の懸濁物中の細胞としてさらに維持され得る非接着細胞であり得る。本発明の特定の好ましい実施形態において、生物学的サンプルは、懸濁細胞である細胞を含む。他の好ましい実施形態において、天然の接着細胞の集団(これは、増殖のために固体基質に付着する必要があり得る)は、適切な培養フラスコ中で接着細胞として増殖され、そして続いて、本明細書中に記載されるアッセイにおける使用のために、適切な脱着試薬を用いてフラスコ壁から脱着される。本発明の別の実施形態において、天然の接着細胞は、懸濁マイクロキャリア(例えば、増殖の間に細胞が接着するミクロスフェアビーズ(microspherical bead)または懸濁物中で接着細胞の維持および/もしくはアッセイを可能にする別の適切な細胞培養系)上で増殖される。細胞懸濁物として接着細胞を扱うためのマイクロキャリアおよび他の製品は、当業者に公知であり、そして種々の供給業者から市販されている。
本発明によって意図される特定の実施形態に従って、細胞は、透過化処理された細胞であり得、これは、原形質膜選択的透過性の損失を生じる様式において処理された細胞を含む。例えば、カルシウムイオノフォアの使用に対する代替として、細胞外環境のカルシウムカチオンが細胞内へ拡散することを可能にする様式において細胞の透過性を上げることが、望ましくあり得る。別の例として、本明細書中に提供されるような特定のカルシウム指標分子は、原形質膜を容易に透過し得なくともよく、その結果、このカルシウム指標分子は、細胞の透過化処理の後においてのみ、細胞質ゾルへの効率的な進入を獲得し得る。さらに別の例として、本発明の方法に従って試験される特定の候補薬剤は、原形質膜を通過し得ないかも知れず、その結果、透過化処理された細胞は、このような薬剤の潜在的な効果について適切な試験細胞を提供する。当業者は、細胞の透過性を上げるための方法(例えば、例示の目的であって限定の目的ではなく、界面活性剤、洗剤、リン脂質、リン脂質結合タンパク質、酵素、ウイルス膜融合タンパ質などの使用によるか;浸透圧的に活性な薬剤の使用によるか;化学的架橋剤の使用によるか;エレクトロポレーションなどを含む物理化学的方法によるか;または他の透過化処理方法論による)に精通している。
従って、例えば、細胞は、細胞を溶解し、そして膜を可溶化するために使用される濃度より低い濃度(すなわち、臨界ミセル濃度より低い)にて、任意の種々の公知の技術(例えば、1つ以上の洗剤(例えば、ジギトニン、Triton X−100TM、NP−40TM、オクチルグルコシドなど)に対する曝露)を使用して透過性を上げられ得る。特定の通常のトランスフェクション試薬(例えば、DOTAP)もまた、使用され得る。ATPはまた、インタクトな細胞の透過性を上げるために使用され得、同様に固定剤として通常使用される低濃度の化学製品(例えば、ホルムアルデヒド)もまた使用され得る。従って、本発明の特定の実施形態において、インタクトな細胞を使用することが好ましくあり得、そして特定の他の実施形態において、透過化処理された細胞の使用が好ましくあり得る。
本発明の特定の実施形態に従って、ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定するため、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する薬剤を同定するため、呼吸抑制剤を同定するため、およびミトコンドリアカルシウムユニポータを変更する化合物を同定するための方法が、提供され、上記の方法の各々は、透過化処理される細胞および細胞質ゾルを枯渇される細胞の中に含まれるミトコンドリアを含むサンプルの使用を適切な部分において、包含する。細胞が細胞質ゾルを枯渇される場合の決定は、当該分野で周知の任意の種々の方法(例えば、Fiskumら(1980 Proc.Nat.Acad.Sci.USA 77:3430〜3434)に記載される方法)によって達成され得る。この方法は、任意の多くの公知の細胞質ゾルマーカー(例えば、酵素乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH))を決定することによるか、または細胞性アーキテクチャ(architecture)に対する枯渇方法の効果をモニタリングすることによる、細胞質ゾルの枯渇の程度をモニタリングするための定量的方法を包含する。好ましくは、細胞質ゾルを枯渇される細胞は、本質的に、細胞質ゾルを完全に枯渇し、これは、Fiskumら(1980)に記載されるような基準に従って、細胞に関連する検出可能な細胞質ゾルマーカーが残存していないことをもたらす細胞質ゾルの枯渇を言及する。他の実施形態において、細胞質ゾルを枯渇する細胞は、実質的に細胞質ゾルを枯渇し得、この細胞は、40%より多く、好ましくは、60%より多く、そしてより好ましくは、75%より多くの、少なくとも1つの検出可能な細胞質ゾルマーカー(例えば、LDH)が、細胞質ゾルが枯渇されていないコントロール細胞に対して、当該分野で公知の基準を使用してもはや細胞に関連していない、細胞を含み得る。
従って、本発明はまた、ミトコンドリア機能を変更する(例えば、統計学的に有意な様式において増加または減少させる)か、ミトコンドリアカルシウムユニポータを変更するか、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役するか、または呼吸を阻害する、薬剤を検出するため、ならびにこのような薬剤の活性を変更する化合物を検出するための、組成物および方法を意図することが、理解される。この方法は、ミトコンドリアを含むサンプル(例えば、本明細書中に提供されるような細胞質ゾルを枯渇された細胞、または単離されたミトコンドリア)に、1つ以上の細胞質ゾル分子成分を再導入することに関し得る。理論に束縛されることを望むことなく、細胞質ゾルが存在する場合および細胞質ゾルが本明細書中に記載されるようなミトコンドリア機能についてのアッセイにおいて観察されるように枯渇される場合に得られる結果の差異は、1つ以上の細胞質ゾル分子成分の存在または活性に起因し得る。このような細胞質ゾル成分としては、例えば、ATPまたは他の生化学的分子(例えば、代謝産物、異化代謝産物、中間体、補因子、基質、触媒など)が挙げられ得る。このような細胞質ゾル成分としてはまた、例えば、1つ以上のタンパク質、ペプチド、糖ペプチドもしくは糖タンパク質、核酸もしくはポリヌクレオチド(例えば、DNAもしくはRNAを含む)、脂質(糖脂質、タンパク脂質もしくはリン脂質を含む)、または糖質、あるいはこのような種の任意の組合せが挙げられ得、これは、細胞質ゾル中に存在し得る。細胞質ゾル分子成分の単離は、当該分野に対して公知の、任意の多くの周知の生化学的および化学的分離ストラテジー(生物学的サンプル中の細胞質ゾル成分を放射性標識化する工程もしくはそうでなければ検出可能にタグ化する工程、または細胞分別、密度沈降、分画抽出(differential extraction)、塩沈殿、限外濾過、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、電気泳動、アフィニティー技術または任意の他の適切な分離方法を含むが、これらに限定されない)に従って達成され得る。部分的に精製された成分に対する抗体は、当該分野で公知の方法に従って開発され得、そしてこのような成分を検出および/または単離するために使用され得る。
アフィニティー技術は、本発明の状況において部分的に有用であり得、そして細胞質ゾル成分と、この細胞質ゾル成分と相互作用する本発明に従って同定される薬剤との間の特異的結合相互作用を開発する任意の方法を含み得る。例えば、ミトコンドリア機能に影響を及ぼす(あるいはATP産生から酸化的リン酸化を脱共役するか、もしくはミトコンドリアカルシウムユニポータを変更するか、または呼吸を阻害する)薬剤が、固相マトリクス上に固定化され得るので、細胞質ゾル成分の単離のためのアフィニティー結合技術は、部分的に有用であり得る。あるいは、このようなミトコンドリアの機能的に活性な薬剤が反応部分で改変され得る生物学的分子についてのアフィニティー標識方法は、周知であり、そして検出可能な部分および/または回収可能な標識部分を細胞質ゾル成分へ導入する目的のために、この薬剤と細胞質ゾル成分との間の相互作用を容易に適合し得る(例えば、生物学的分子を単離および特徴付けるための技術(アフィニティー技術を含む)に関する詳細については、Pierce Catalog and Handbook、1994 Pierce Chemical Company、Rockford、IL;Scopes,R.K.、Protein Purification:Principles and Practice、1987、Springer−Verlag、New York;およびHermanson,G.T.ら、Immobilized Affinity Ligand Techniques、1992、Academic Press,Inc.、Carforniaを参照のこと)。
上記のアフィニティー技術または他の生化学的方法によって単離される細胞質ゾル成分分子種の特徴付けは、細胞質ゾル成分の物理化学的特性(例えば、分光測定の吸光度、分子サイズおよび/または電荷、溶解度、ペプチドマッピング、配列分析など)を使用して達成され得る(例えば、Scopes、前出、を参照のこと)。生体分子についてのさらなる分離工程は、必要に応じて、ミトコンドリアまたは関連する機能(例えば、本明細書中に記載される機能)に影響を及ぼすような細胞質ゾル成分とともに同時精製する分子種をさらに分離および同定するために使用され得る。これらは、当該分野で周知であり、そして代表的には複合体の新たに同定された成分の物理化学的特性に基づく、タンパク質、脂質、核酸、糖質、または目的の他の生物学的分子の単離のための任意の分離方法論を含み得る。このような方法の例としては、RP−HPLC、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ネイティブおよび/もしくは変性の一次元電気泳動および二次元電気泳動、限外濾過、キャピラリー電気泳動、基質アフィニティークロマトグラフィー、イムノアフィニティークロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、または任意の他の有用な分離方法が挙げられる。
例えば、十分な量の細胞質ゾルタンパク質は、微小配列決定(microsequencing)による部分的な構造特徴付けのために得られ得る。このように生成される配列データを使用して、細胞質ゾル成分をさらに特徴付けるための任意の種々の周知の適切なストラテジーが、使用され得る。例えば、核酸プローブは、1つ以上の適切に選択されたcDNAライブラリーをスクリーニングするために合成されて、このような成分をコードするcDNAを検出、単離および特徴付け得る。他の例としては、さらなるアミノ酸配列情報および/またはヌクレオチドは配列情報を得るために、当該分野で周知のさらなるスクリーニングの状況における部分的な配列データの使用が挙げられ得る。例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Sambrook、Fritsch & Maniatis編、Cold Spriing Harbor Laboratory、1989を参照のこと。このようなアプローチとしては、さらに、ポリペプチドとしてのライブラリー配列の発現に基づく核酸ライブラリースクリーニングを含み得る。例えば、本発明に従って同定されるミトコンドリア活性薬剤に対するこのようなポリペプチドの結合;または公知のミトコンドリアタンパク質とのタンパク質−タンパク質相互作用に基づくファージディスプレイスクリーニングアプローチもしくはジハイブリッドスクリーニング系などが挙げられ得、これらのいずれかは、当業者が精通している慣用的な方法論を使用して、本発明によって提供されるミトコンドリアの活性な細胞質ゾル成分についてのスクリーニングに適合され得る(例えば、Bartelら、Cellular Interactions in Development:A Practical Approach、D.A.Harley編、1993 Oxford University Press、Oxford、United Kingdom、153〜179頁、およびそこに引用される参考文献を参照のこと)。好ましくは、培養された細胞の抽出物、および特に好ましい実施形態においては生物学的組織または器官の抽出物は、新規なミトコンドリアの活性な細胞質ゾルタンパク質または他の細胞質ゾル因子の供給源であり得る。好ましい供給源としては、血液、脳、線維芽細胞、筋芽細胞、肝細胞または他の細胞型が挙げられ得る。
簡潔には、例えば、そしてFiskumら(1980 Proc.Nat.Acad.Sci.USA 77:3430〜3434)に本質的に基づいて、細胞質ゾルが保持されるべき透過化処理されたアッセイ細胞について、およそ30×106個の細胞を含む細胞懸濁物のアリコートは、室温にて16,000×gで2分間遠心分離することによってペレット化され得、基本インキュベーション培地(125mM KCl、20mM HEPES−KOH(pH7.0)、2mM K2HPO4)中に再懸濁され得、そして再度ペレット化され得る。インタクト細胞ペレットは、適切な反応容器中に移され、そして呼吸培地(例えば、呼吸基質として、(i)5mMグルタメートおよび5mMマレート、または(ii)5mMスクシネートおよび2μM ロテノンのいずれかを含有する、基本インキュベーション培地)中で20℃にてアッセイされる。
細胞質ゾルが枯渇されるべき細胞をアッセイするために、細胞は、ペレット化され、再懸濁され、そして上記のよう再度ペレット化され、次いで、呼吸基質およびジギトニン(例えば、5mMグルタメート、5mMマレート、0.03%ジギトニン、4mM MgCl2、1mM EGTA、3.0mM ATPを含む、150mMスクロース、50mM KCl、20mM Hepes、2mM K2HPO4(pH7.0))を含有する基本インキュベーション培地中に再懸濁される。細胞懸濁物は、この細胞を懸濁物に保つようにディスポーザブル分光光度計キュベット中で攪拌されながら、室温にて20分間インキュベートされる。インキュベーション期間の後、10分間4℃にて冷蔵微小遠心管中で20,800×gにて遠心分離した後、細胞質ゾルは、ペレット(これは、細胞質ゾルを枯渇した細胞を含み、そしてミトコンドリア、他の小器官および原形質膜を含む)から上清として分離される。細胞質ゾルを枯渇化され、ジギトニンで透過化処理された細胞は、基本培地中に再度再懸濁され、遠心分離によってペレット化され、そしてこの上清液体が、除去される。全ての細胞小器官を含むペレット(Fiskumら、1980)は、適切な反応容器に移され、そして呼吸基質(例えば、グルタメート/マレート)を有するジギトニンを含まないインキュベーション培地中でアッセイされる。
本発明に従う使用のための候補薬剤は、本明細書中に記載されるような細胞に基づくアッセイにおいてカルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出可能に変更する様式で、本明細書中に提供されるようなミトコンドリア機能を変更することが疑われる任意の組成物であり得る。カルシウム指標分子によって生成されるシグナルの検出可能な変化とは、代表的に、複数の時点の少なくとも1点で検出されるシグナルの統計学的に有意な変化(例えば、増加または減少)をいう。本発明に従って、本明細書中に提供されるようなミトコンドリア機能を変更する薬剤として同定される候補薬剤は、以下の化合物のいずれでなくてもよいが、このような化合物は、任意の本発明のスクリーニングアッセイにおいて存在してもよい:ロテノン、オリゴマイシン、スクシネート、Bcl−2またはシクロスポリンA。
好ましくは、候補薬剤は、可溶性形態で提供される。理論に結び付けられることを望まないが、候補薬剤は、(例えば、カルシウムチャネルとの物理的な接触によって)、細胞質ゾルの遊離のカルシウムレベルを調節するミトコンドリア分子成分(例えば、カルシウムチャネルまたはユニポータ)の活性を直接変更し得るか、または間接的に変更し得る(例えば、サンプル中に存在するミトコンドリア分子成分のような、1つ以上のさらなる分子成分との相互作用によって変更し得、ここで、このようなさらなる成分は、ミトコンドリアカルシウム調節活性を、この薬剤との接触に応答して変更する)。代表的に、ならびに好ましい実施形態において、例えばハイスループットのスクリーニングのために、候補薬剤は、化合物、組成物または分子の「ライブラリー」またはコレクションとして提供される。このような分子は、代表的に、当該分野で「低分子」として公知であり、そして105ダルトンより小さい、好ましくは104ダルトンより小さい、そしてさらに好ましくは103ダルトンより小さい分子量を有する化合物を含む。
例えば、試験化合物のライブラリーのメンバーは、本明細書中で提供されるようなハイスループットのスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々における複数のサンプルに投与され得る。反応容器の各々は、本明細書中で提供される条件下で、細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含む少なくとも1つの細胞を含む。サンプルを、カルシウムカチオンの供給源と接触させ、次いで、カルシウム指標分子によって産生された検出可能なシグナルについて複数の時点でアッセイし、そして候補薬剤の存在する各々のサンプルから産生されたシグナルは、その薬剤の非存在下で産生されたシグナルと比較される。ミトコンドリア機能に影響可能である(例えば、カルシウムユニポータ活性の変更)と同定された化合物は、治療目的および/または診断目的のために価値がある。なぜなら、それらは、変更されたミトコンドリア機能に関連する疾患の処置および/または検出を可能にするからである。このような化合物はまた、ミトコンドリアカルシウムユニポータに関する分子シグナル伝達機構に、ならびにより高い特異性を示す将来のユニポータ特異的化合物の発見および開発における改良に関する研究において価値がある。
候補薬剤はさらに、コンビナトリアルライブラリーのメンバーとして提供され得、好ましくは、複数の反応容器中で行われた複数の所定の化学反応に従って調製された合成薬剤を含む。例えば、種々の出発化合物は、所定の構成要素が、反応条件の複数の置換および/または組み合わせを追跡可能に受けることを可能にする1つ以上の固相合成、記録されるランダム混合方法論および記録される反応分割技術を使用して調製され得る。得られる産物は、スクリーニング、続いて反復した選択および合成手順がなされ得るライブラリー(例えば、ペプチドの合成コンビナトリアルライブラリー(例えば、PCT/US91/08694およびPCT/US91/04666を参照のこと)、または本明細書中で提供されるような低分子を含み得る他の組成物(例えば、PCT/US94/08542、EP0774464、U.S.5,798,035、U.S.5,789,172、U.S.5,751,629を参照のこと))を含む。当業者は、このようなライブラリーの多様な組み合わせが、確立された手順に従って調製され得、そして本開示に従って生物学的サンプルを使用して試験され得ることを理解する。
ミトコンドリア機能を変更する(例えば、増加または減少する)薬剤であると同定された薬剤は、本発明の方法で使用される場合、好ましくは、薬学的組成物の一部である。薬学的組成物は、少なくとも1つの薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤、加えてミトコンドリア機能を変更する1つ以上の選択された薬剤、ならびに必要に応じて他の成分を含む。
(治療的適用)
上記のアッセイを使用して同定された薬剤は、ミトコンドリア機能における変更に関連した疾患および障害に苦しむか、または潜在的にこのような疾患および障害を発症する素因のある患者への治療(remedial)効果、治療(therapeutic)効果、緩和効果、リハビリテーション効果、予防(preventative)効果、および/または予防(prophylactic)効果を有し得る。このような疾患は、異常な(abnormal)カルシウム調節活性、異常な(supernomal)カルシウム調節活性、非効率的なカルシウム調節活性、効果のないカルシウム調節活性または有害なカルシウム調節活性(例えば、カルシウムならびに/または直接的もしくは間接的なカルシウム依存性の生物学的分子および高分子(例えば、タンパク質およびペプチドならびにそれらの誘導体)、炭水化物およびオリゴ糖ならびにそれらの誘導体(糖タンパク質および糖脂質のような複合糖質を含む)、脂質、核酸および補因子(イオン)、メディエイタ、前駆体、異化代謝産物などを含む)の、取り込みにおける欠陥、放出における欠陥、活性における欠陥、隔離における欠陥、輸送における欠陥、代謝における欠陥、異化における欠陥、合成における欠陥、貯蔵における欠陥もしくはプロセシングにおける欠陥によって特徴付けられる。
このような疾患および障害としては、例として(限定ではない)、慢性神経変性障害(例えば、アルツハイマー病(AD)およびパーキンソン病(PD));自己免疫疾患;I型およびII型を含む糖尿病;ミトコンドリア構造異常を伴う先天性筋ジストロフィー、重度のmtDNA枯渇を伴う致死性乳児ミオパシーおよびmtDNAの中程度の減少を伴う良性「後期発病」ミオパシー、MELAS(ミトコンドリア脳障害、乳酸アシドーシスおよび発作)およびMIDD(ミトコンドリア糖尿病および難聴)を含むが、これらに限定されないミトコンドリア関連疾患;MERFF(ミオクローヌスてんかん不規則赤筋線維症候群(myoclonic epilepsy ragged red fiber syndrome);関節炎;NARP(ニューロパシー;運動失調;色素性網膜炎);MNGIE(ミオパシーおよび外眼筋麻痺症;ニューロパシー;胃腸;脳障害)、LHON(レーバー遺伝性視神経障害)、キーンズ−セイアー疾患;ピアーソン症候群;PEO(進行性外眼筋麻痺症);ウォルフラム症候群;DIDMOAD(尿崩症、糖尿病、視神経萎縮、難聴);リー症候群;失調症;精神***病;ならびに癌、腫瘍および乾癬のような過剰増殖障害)が挙げられる。
慢性神経変性疾患とは対照的に、発作に続いたニューロン死は、急性の様式で生じる。現在、多量の文献が、発作、心拍停止および脳への外傷傷害を付随する虚血/再灌流傷害に続いたニューロン死におけるミトコンドリア機能の重要性を実証する。急性神経変性の病因における、不完全なエネルギー代謝、増加した酸素ラジカル産生および損なわれた細胞内カルシウム恒常性の原因となるミトコンドリア機能における変更、ならびにアポトーシスのカスケードにおける活性なミトコンドリアの関与の中心的な役割についての実験的な裏付けが、蓄積し続けている。
脳のある領域が灌流を失い、この突然の虚血事象の結果として、ニューロンは、急性的にか、または遅延性の様式で死ぬ場合、発作は起こる。脳への血液の供給が止まると、組織のATPの濃度は、数分以内でごくわずかなレベルにまで低下する。梗塞のコアでの、ミトコンドリアのATP産生の欠如が、イオンの恒常性の喪失を引き起こし、浸透圧性細胞溶解および壊死性の死を引き起こす。多数の二次変化がまた、ミトコンドリアのATPの減少に続いた細胞死に寄与し得る。急性のニューロン傷害における細胞死は、ニューロンが、主に壊死によって死ぬ梗塞の中心から、ニューロンがアポトーシスを受ける周縁部へ、組織がなおいたんでいない末梢部へと広がる(Martinら、Brain Res.Bull.46:281〜309、1998)。
周縁部におけるニューロンに対する傷害の多くは、特に酸素の欠乏によるミトコンドリアの生体エネルギー不全によって悪化する場合、梗塞病巣での細胞溶解の間に放出されたグルタメートよって誘導された興奮毒性によって引き起こされる(MacManusおよびLinnik、J.Cerebral Blood
Flow Metab.17:815〜832、1997)。興奮毒性における最初のトリガーは、主にNMDAレセプターを介したCa2+の多量の流入であり、ミトコンドリアへのCa2+の取り込みの増加を生じる(Dykens、「Free radicals and mitochondrial dysfunction in excitotoxicity and neurodegenerative diseases」Cell Death and Diseases of the Nervous System,V.E.KoliatosおよびR.R.Ratan編、Humana Press、New
Jersey、45〜68頁、1999によって概説される)。Ca2+過負荷は、ミトコンドリア膜電位(ΔΨm)を崩壊させ、そして反応性の酸素種の産生の増加を誘導する(Dykens、J.Neurochem.63:584〜591、1994;Dykens、「Mitochondrial radical production and mechanisms of oxidative excitotoxicity」The Oxygen Paradox、K.J.A.DaviesおよびF.Ursini編、Cleup Press、U.of Padova、453〜467頁、1995)。十分に厳しい場合、ΔΨmは崩壊し、そしてミトコンドリアCa2+封鎖はMPTを誘導し得、シトクロムcおよびアポトーシスを開始する他のタンパク質を間接的に放出する(Bernardiら、J.Biol Chem 267:2934〜2939、1994;Zorattiら、Biochim Biophys Acta
1241:139〜176、1995;Ellerbyら、J.Neurosci 17:6165〜6178、1997)。これらの知見と一致して、グルタメート誘導性興奮毒性は、ミトコンドリアのCa2+の取り込みを妨げることによってか、またはMPTをブロックすることによって抑制され得る(Buddら、J.Neurochem 66:403〜411、1996;Whiteら、J.Neurosci 16:5688〜5697、1996;Liら、Brain Res 753:133〜140、1997;Stoutら、Nat.Neurosci. 1:366〜373、1998)。
虚血/再灌流傷害、外傷性組織傷害および/または発作の間、ミトコンドリアの統合性を維持する薬剤および方法は、体組織に対する何らかの虚血/再灌流傷害を制限する際に有用性を有する新規の保護性薬剤であると期待される。梗塞のコアで壊死性死の遮断についての制限された治療ウインドウを考慮すると、梗塞の非壊死領域におけるミトコンドリア機能障害を防ぐことによってニューロンの死を制限するために治療のストラテジーを開発することが、特に望まれ得る。本明細書中で提供されるように、このような薬剤は、化合物のコレクションを、一過性虚血を模倣する興奮毒性条件下でそれらの細胞質ゾルのカルシウムのミトコンドリアの調節を変更する(例えば、増加または減少させる)能力についてスクリーニングすることによって同定され得る。理論に結び付けられることを望まないが、発作について好ましい薬剤は、ミトコンドリアのカルシウムの取り込みを低下させるか、または減少させる薬剤であり得る。このような薬剤は、発作をすでに起こしたか、または発作を起こす素因があると考えられる患者に対して、治療(remedial)効果、治療(therapeutic)効果、緩和効果、リハビリテーション効果、予防(preventative)効果、予防(prophylactic)効果または疾患の妨げとなる効果を有すると期待される。本発明の細胞質ゾルカルシウムに基づくアッセイはまた、どの薬剤が所定の個体に効果的である可能性が最も高いかを評価するために使用され得る。なぜなら、変更されたカルシウムの調節を示すミトコンドリアを有する患者は、カルシウムのミトコンドリア調節を調節する薬剤に対して、正常なカルシウム調節プロフィールを伴うミトコンドリアを有する患者よりも応答する可能性が高いと期待されるからである。
逆に、特定の他の疾患の適応領域において、カルシウム調節活性に関するミトコンドリア機能を変更する薬剤の所望の特性は、ミトコンドリアによってカルシウムの取り込みまたは保持の促進であり得る。例えば、特定の型の癌においてか、または癌細胞において過剰発現することが公知の遺伝子で形質転換された特定の細胞において、上昇した細胞質ゾルのカルシウムのレベルは、潜在的に、ミトコンドリアにおける過剰のカルシウムの封鎖によって支配される有害な影響を有し得る。従って、ミトコンドリア取り込みをアップレギュレートする本発明に従う薬剤の同定は、有益な治療剤を提供し得る。同様に、いくつもの他の疾患モデル、細胞系または他の生物学的状況において、例えば、不適切なカルシウム管理からのストレスに特に感受性である(または例えば、Bcl−2のようなアポトーシス経路成分の発現を変更することによってか、アポトーゲン(apoptogen)に曝露することによってか、または細胞内カルシウム分布を変更する薬剤に曝露することによってそのようになされ得る)細胞を同定する系において、本発明は、ミトコンドリア機能を変更することによって異常なカルシウム調節を変更する薬剤を同定する機会を提供する。
治療用途のために「薬学的に受容可能なキャリア」は、薬学の分野において周知であり、そして、例えばRemingtons Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro編(1985))に記載される。例えば、生理的pHの滅菌の生理食塩水およびリン酸緩衝化生理食塩水が、使用され得る。保存剤、安定剤、色素およびさらに矯味矯臭剤が、薬学的組成物に供給され得る。例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステルが、保存剤として添加され得る。同書の1449.さらに、抗酸化剤および懸濁化剤が使用され得る。同書。
「薬学的に受容可能な塩」とは、このような化合物と有機酸もしくは無機酸(酸添加塩)または有機塩基もしくは無機塩基(塩基付加塩)との組み合わせから得られる本発明の化合物の塩のことをいう。本発明の化合物は、遊離塩基形態または遊離塩形態のいずれかで使用され得、両方の形態は、本発明の範囲内であると考えられる。
本明細書中で提供されたようなミトコンドリア機能を変更する1つ以上の薬剤を含む、薬学的組成物は、組成物を患者に投与することを可能にする任意の形態であり得る。例えば、この組成物は、固体、液体または気体(エアゾール)の形態であり得る。投与の代表的な経路としては、経口、局所、非経口(例えば、舌下に、または頬に)、舌下、直腸、膣内および鼻腔内が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で使用される場合、用語非経口としては、皮下注射、静脈内、筋肉下、胸骨内、海綿内、道内(intrameatal)、尿道内注射または注入技術が挙げられる。この薬学的組成物は、この組成物を患者に投与した際にそこに含まれる活性成分が生物学的に利用可能であることを許容するように処方される。患者に投与される組成物は、1つ以上の投薬単位の形態を採る。例えば、錠剤は、単一の投薬単位であり得、そしてエアゾール形態における1つ以上の本発明の化合物の容器は、複数の投薬単位を収容し得る。
経口投与に関して、賦形剤および/または結合剤が存在し得る。例は、スクロース、カオリン、グリセリン、デンプンデキストリン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースおよびエチルセルロースである。着色剤および/または矯味矯臭剤が存在し得る。被覆外皮が使用され得る。
この組成物は、液体(例えば、エリキシル、シロップ、溶液、エマルジョンまたは懸濁液)の形態であり得る。この液体は、2つの例として、経口投与のためか、または注射による送達のためであり得る。経口投与を目的とした場合、好ましい組成物は、ミトコンドリア機能を変更する1つ以上の薬剤に加えて、1つ以上の甘味剤、保存剤、色素/着色料および風味相乗剤を含む。注射によって投与することが目的の組成物において、1つ以上の界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定剤および等張剤が含まれ得る。
本明細書中で使用される場合、液体薬学的組成物は、溶液、懸濁物またはその他の類似形態の形態であるかに関わらず、以下のアジュバントのうちの1つ以上を含有し得る:注射用水、生理食塩水溶液、好ましくは、生理食塩水、リンガー溶液、等張塩化ナトリウム、溶媒または懸濁媒質として役立ち得る不揮発性油(例えば、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリド)、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒のような滅菌希釈液;抗菌剤(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸);緩衝剤(例えば、アセテート、シトレートまたはホスフェート)および張度の調整のための薬剤(例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース)。非経口調製物は、アンプル、使い捨て注射器またはガラスまたはプラスチック製の多用量バイアル中に封入され得る。生理食塩水は、好ましいアジュバントである。注射可能薬学的組成物は、好ましくは無菌である。
非経口投与または経口投与のいずれかが目的の液体組成物は、適切な投薬が達成されるように、本明細書中で提供されるようなミトコンドリア機能を変更する量の薬剤を含有すべきである。代表的には、この量は、組成物において少なくとも0.01重量%の薬剤である。経口投与が目的の場合、この量は、組成物の重量の0.1%と約70%との間で変化し得る。好ましい経口組成物は、ミトコンドリア機能を変更するこの薬剤を約4%と約50%との間で含有する。好ましい組成物および調製物は、非経口投薬単位が0.01重量%〜1重量%の活性化合物を含むように調製される。
薬学的組成物は局所的投与が目的であり得、この場合、キャリアは、溶液、エマルジョン、軟膏またはゲル基剤を適切に含有し得る。例えば、この基剤は、以下のうちの1つ以上を含有し得る:ペトロラタム、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱油、希釈剤(例えば、水およびアルコール)、および乳化剤ならびに安定剤。濃化剤は、局所的投与のための薬学的組成物中に存在し得る。経皮的投与が目的の場合、この組成物は、経皮パッチまたはイオン導入デバイスを含み得る。局所的処方物は、約0.1〜約10%w/v(単位容量あたりの重量)のミトコンドリア機能を変更する濃度の薬剤を含有し得る。
この組成物は、直腸投与(例えば、直腸において融解し、そして薬物を放出する坐薬の形態において)が目的であり得る。直腸投与のための組成物は、適切な非刺激賦形剤として油性基剤を含有し得る。このような基剤としては、ラノリン、ココアバターおよびポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法において、本明細書中に記載されるような同定されたミトコンドリア機能を変更するこの薬剤は、挿入物、ビーズ、徐放性(timed−release)処方物、パッチまたは速放性(fast−release)処方物の使用を通して投与され得る。
ミトコンドリア機能を変更するこの薬剤の最適な投薬量は、患者の体重および体調;処置するべき体調の重篤度および寿命;活性成分の特定の形態;投与の様式および使用される組成物に依存し得ることは、当業者にとって明らかである。化学治療的組成物において本明細書中に開示されるミトコンドリア機能を変更する薬剤の使用は、この薬剤の送達を援助する別の化合物(例えば、モノクロナール抗体もしくはポリクロナール抗体、タンパク質またはリポソーム)に結合するような薬剤を含み得ることは理解されるべきである。
(種特異的薬剤)
特定の実施形態において、本発明は、種特異的薬剤を同定するためのスクリーニングアッセイを提供する。「種特異的薬剤」とは、ある供給源(例えば、種)におけるミトコンドリアのカルシウム調節に影響するが、第2の供給源においてミトコンドリアのカルシウム調節に実質的に影響しない薬剤をいう。つまり、この薬剤は、他の種への影響の少なくとも2倍である、ある種への影響を有するべきである。本明細書中に提供されるスクリーニングアッセイは、異なる生物学的供給源から得られた細胞および/またはミトコンドリアを使用して、このような薬剤を同定するために使用され得る。
本発明のこの実施形態を使用して、例えば、異なる種(例えば、トリパノソーマ(Ashkenaziら、Science 281:1305−1308,1998)、ならびに他の真核生物の病原体および寄生生物(昆虫を含むがこれらに限定されない))においてミトコンドリアカルシウム媒介アポトーシスを選択的に誘導するが、それらの哺乳動物宿主の細胞においてアポトーシスを誘導しない薬剤を同定し得る。このような薬剤は、このような病原体および寄生生物の予防的管理または治療的管理のために有用であることが推測される。例えば、Ridgleyら(Biochem.J.340:33−40,1999)は、単細胞生物Trypanosoma brucei brucei(ヒトにおいて「睡眠病」の原因物質に関するアフリカにおける野生狩猟動物の寄生生物)においてCa2+依存性細胞死プロセスを記載する。ROS(反応性酸素種)の産生の後、ミトコンドリアのCa2+輸送が、損なわれ、そして核エンベロープと細胞質ゾルとの間のCa2+バリアは、崩壊した。結果として、ミトコンドリアは、「Ca2+貯蔵所」として作用し得ないで、そしてCa2+は、多くのDNA断片化が起る核において蓄積された。マウスBcl−2を発現するトリパノソーマは、(ROSおよびミトコンドリア機能不全からのBcl−2媒介保護は、哺乳動物細胞について報告されているにも関わらず)ROSから保護されなかった。従って、寄生住血鞭毛虫類T.brucei bruceiは、後生動物のように、Ca2+依存性細胞死経路を有しているようであるが、それでもなお後生動物Ca2+依存性細胞死経路と違い(例えば、その生化学に関して)を有する。本発明の1つの目的は、このような違いを利用して、開示のこのスクリーニングアッセイを使用して、抗生物質効果を有する化合物を見出すことである。なぜなら、この化合物は、トリパノソーマCa2+依存性細胞死経路を誘導するが、哺乳動物Ca2+依存性細胞死経路は誘導しないからである。
別の例として、Apicomplexa門(以前は、Sporozoaと称された)のメンバーは、細胞内寄生生物である病原性原生動物の大きくかつ多様な群を含む。いくつかのメンバー(Babesia、TheileriaおよびEimeriaの種を含む)は、経済的に重要な動物の疾患を引き起こし、そして他のメンバー(例えば、Toxoplasma gondii種およびCryptosporidium種)もまた、ヒト(特に、免疫無防備状態の個体において)の疾患を引き起こす。アコンプレキシカン(acomplexican)は、ミトコンドリアゲノムおよび推定プラスチドゲノムの両方を含むので、それらの染色体外DNAエレメントに関しては異常である(総説については、Feagin,Annu.Rev.Microbiol.48:81−104,1994を参照のこと)。おそらく、最もよく研究されたアコンプレキシカン(acomplexican)は、マラリアを引き起こすPlasmodiumの種である。抗マラリア剤は、Plasmodiumミトコンドリアの機能に特異的に影響する薬剤を含み(Peterら、Ann.Trop.Med.Parsitol.78:567−579,1984;Bascoら、J.Eukaryot.Microbiol.41:179−183,1994)、そしてこのような薬剤の1つであるアトバクオン(atovaquone)は、Plasmodium
yoelii由来のミトコンドリアにおけるΔΨを崩壊するが、哺乳動物ミトコンドリアのΔΨには影響を与えない(Srivastavaら、J.Biol.Chem.272:3961−3966,1997)。従って、本明細書中で提供されるアッセイを使用して、新規な抗マラリア剤のための化合物(例えば、PlasmodiumミトコンドリアにおいてΔΨ崩壊を引き起こすが、哺乳動物ミトコンドリアにおいては引き起こさない化合物)のライブラリーをスクリーニングし得る。
別の例としては、本明細書中で提供されるスクリーニング方法を使用して、望ましくない植物(例えば、雑草)由来のミトコンドリアにおいてΔΨ崩壊を選択的に誘導するが、所望の植物(例えば、作物)においては誘導しないか、または望ましくない昆虫(特に、Lepidopteraファミリーのメンバーおよび作物に損害を与える他の昆虫)においてΔΨ崩壊を誘導するが、所望の昆虫(例えば、ミツバチ)もしくは所望の植物においては誘導しない薬剤を同定し得る。このような薬剤は、このような望ましくない植物および昆虫の管理および制御のために有用であると予想されている。培養昆虫細胞(例えば、Spodoptera frugiperda由来のSf9およびSf21細胞株およびTrichopolusia ni由来のHIGH FIVETM細胞株(これら3つの細胞株は、Invitrogen,Carlsbad,CAから入手可能である)を含む)は、本発明の特定のこのような実施形態におけるミトコンドリアの供給源であり得る。
本明細書中に引用されるすべての刊行物および特許出願は、各々個々の刊行物または特許出願が、参考として援用されるために具体的かつ個別に示されるように、本明細書中に参考として援用される。前述の発明は、理解の明確さの目的で、例証および実例として幾分詳細に記載されているが、本発明の教示を鑑みると、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく、特定の変更および改変がそこになされ得ることは、当業者に容易に明らかである。
以下の実施例は、本発明を例示し、本発明を限定することを意図されない。当業者は、慣用的な実験を通して、本明細書中に記載される特定の物質および手順の多数の等価物を認識するか、または確認し得る。このような等価物は、本発明の範囲内にあるとみなされる。
上記のように、ミトコンドリアまたはその誘導体(例えば、亜ミトコンドリア粒子(SMP))を含む、種々の異なる型のサンプルは、このアッセイの方法において使用され得る。完全な(透過化処理されていない(nonpermeabealized))細胞が使用され得るが、以下に説明されるような透過化処理された細胞に関する潜在的な欠点を有する。
透過化処理された細胞は、原形質膜選択的透過性の部分的または完全な喪失を生じる様式で処理されている細胞である。第一の例として、細胞外環境中のカルシウムカチオンを、透過化処理された細胞中に拡散させ、そしてミトコンドリアと接触させることを可能にする様式で、細胞を透過化処理することが所望であり得る。従って、この場合においては、透過化処理はカルシウムイオノフォアの使用の代替として作用する。第2の例として、特定の検出可能な分子(例えば、本明細書中で提供されるような検出可能なシグナルを発生し得るカルシウム指標分子)は、それらのサイトゾルへの侵入がある様式で容易にされない限り、中程度の速度(すなわち、制限された程度)で原形質膜を透過し得る。細胞の透過化処理は、それによってこのような検出可能な分子のサイトゾルへの侵入が促進され得る1つの様式である。第3の例として、この方法に従って試験されるいくつかの候補薬剤は、それらのサイトゾルへの侵入がある様式で容易にされない限り、中程度の速度(すなわち、制限された程度)で原形質膜を透過し得る。細胞の透過化処理は、これによってこのような候補薬剤のサイトゾル空間への侵入が容易にされ得る1つの様式である。これらの条件下で同定される活性薬剤は、続いて完全な細胞によるこれらの取込みを増強するために化学的に改変され得;このように改変された活性薬剤は、薬物の開発のためのリード化合物として役立つことが期待され、そして、いくつかの場合においては、それ自身が薬物または薬物候補として使用され得る。
上記のようにまた、当業者は細胞を透過化処理するための方法(例えば、限定ではなく例示としては、界面活性物質、界面活性剤、リン脂質、リン脂質結合タンパク質、酵素、ウイルス膜融合タンパク質などの使用を通じた方法;特定の細菌毒素(例えば、α−溶血素)への曝露による方法;サポニン(ジギトニンの場合、これもまた、非イオン性界面活性剤である)のような溶血素との接触による方法;浸透圧的に活性な薬剤の使用を通じた方法;化学架橋剤を使用することにより方法;エレクトロポレーションなどを含む物理化学的な方法による方法、または例えば、エレクトロポレーションのような物理的操作を含む他の透過化処理手順による方法)に精通している。特定の状況において最も適切な透過化処理薬剤の決定は、その薬剤の特定の選択された細胞株に対する毒性、細胞に侵入することが所望される薬剤の分子の大きさなど含む因子に基づき得る(例えば、Schulz,Methods Enzymol.192:280−300,1990を参照のこと)。
従って、細胞は、任意の種々の公知の技術(例えば、細菌毒素であるストレプトリジンOまたはStaphylococcus aureus α−毒素(α−溶血素としても知られている)のような透過化処理薬剤;サポニンのような他の溶血性薬剤の添加による技術;または、細胞を溶解し、そして膜を可溶化するために使用される濃度より低い濃度(すなわち、臨界ミセル濃度より低い濃度)での、1以上の界面活性剤(例えば、ジギトニン、Triton X−100、NP−40、n−オクチル β−D−グルコシドなど)への曝露)を用いて透過化処理され得る。特定の通常のトランスフェクト試薬(例えば、DOTAP)もまた使用され得る。ATPもまた、固定液として通常使用される低い濃度の化学薬品(例えば、ホルムアルデヒド)が使用され得るように、インタクトな細胞を透過化処理するために使用され得る。この段落に記載されるすべての透過化処理薬剤は、例えば、Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO(「Biochemicals and Reagents for Life Science Research」と題されたSigmaカタログ、Anon.,1999、およびこれらの透過化処理薬剤および他の透過化処理薬剤のためにこのカタログ中に引用される参考文献を参照のこと)から入手可能である。
透過化処理された細胞は、目的の化合物(例えば、ミトコンドリア機能を変更する候補薬剤(ATP産生からの酸化的リン酸化の脱共役剤、呼吸抑制剤、またはミトコンドリアのカルシウムユニポータ活性を変更する薬剤を含む)の存在下および/または非存在下で、ユニポータ活性についてアッセイされ得る。カルシウム感受性の検出可能な試薬(これは蛍光体であり得る)は、培地中に存在し、そしてこの試薬が透過化処理された細胞のサイトゾル空間中に自由に拡散するが、1以上の細胞下カルシウムリザーバ(例えば、小胞体(RE)またはミトコンドリアのような細胞小器官など)には侵入しない条件を確立する。Ca2+イオンはまた、透過化処理された細胞に自由に侵入するが;本発明の1つの実施形態においては、1以上の細胞内Ca2+調節物質(ICMA)の存在のために、Ca2+イオンは、例えば、ERまたはミトコンドリアのような特定の細胞内カルシウムリザーバへ侵入せず、そして/またはそこから放出される。
単離された(すなわち、それらが天然に存在するかまたは生合成された細胞の環境から物理的に分離された)かもしくは半精製されたミトコンドリア、または亜ミトコンドリア粒子もまた、本発明のアッセイにおいて使用され得る。種々の種、細胞、組織および器官からミトコンドリアを精製する方法は、当該分野において公知である(例えば、Glickら、Methods in Enzymology 260:213−223,1995;Scholteら、Mol.Cell.Biochem.174:61−66,1997;Almeidaら、Brain Res.764:167−172,1997;Schildら、Acta Opthalmol.Scand.74:354−357,1996を参照のこと)。従って、本発明の特定の実施形態に従って、本明細書中で提供されるような生物学的サンプルは、1以上の単離されたミトコンドリア(好ましくは、適切な水性緩衝液のような液体培地中の懸濁液として提供される)を含み得る。より好ましくは、このような緩衝液は、ミトコンドリアの呼吸活動(例えば、酸化的リン酸化)を補助し得る「呼吸性培地」であり、そしてさらにより好ましくは、このような呼吸性培地は、本明細書中に記載されるようなミトコンドリアの膜電位の維持を可能にする。
上記で引用される方法に加え、特定の好ましい実施形態におけるミトコンドリアの調製は、Greenawaltら(1970 J.Cell Biol.46:173)、Greenawalt(1979 Meths.Enzymol.55:88)またはPedersonら(1978 Meth.Cell Biol.20:411)に記載される方法および組成物(呼吸性培地を含む)を使用し得る。生物学的サンプルが培地(例えば、呼吸性培地)中に1つ以上の単離されたミトコンドリアおよび1つのカルシウム指標分子を含む、本発明の特定の実施形態にさらに従い、サンプル中のカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得るカルシウム指標分子は、好ましくはRhod−2またはその誘導体(例えば、Rohd−2−AM)のようなミトコンドリア内カルシウムの指標、Fura−2もしくはその誘導体(例えば、Fura−2−AM)の膜透過性の形態、またはエクオリンである。これらおよび他の適切な指標は、Molecular Probes,Inc.(Eugene,OR)から入手可能であり、そしてHaugland、1996 Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals−第6版、(Molecular Probes、Eugene,OR)(そこに引用される参考文献を含む)において記載される。生物学的サンプルが培地(例えば、呼吸性培地)中に1つ以上の単離されたミトコンドリアおよび1つのカルシウム指標分子を含む、本発明の特定の他の実施形態に従い、サンプル中のカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得るカルシウム指標分子は、好ましくはCalcium GreenTM 5Nのようなミトコンドリア外カルシウムの指標、またはFura−2塩のような非膜透過性形態のFura−2であり、これらの指標はまた、Molecular Probes,Inc.(Eugene、OR)から入手可能であり、そしてこれらはまた、Haugland(1996)に記載される他の適切な指標と共に存在する。本明細書中の他の箇所に記されるように、特定の条件下で、ミトコンドリアの内膜を横切るカルシウムカチオン輸送は、ミトコンドリアのカルシウムユニポータよりも顕著に低い運動速度であるにも関わらず、公知のNa+/Ca+アンチポータ(および/またはCa+/H+交換体)により媒介され得る。従って、本明細書に開示される特定の実施形態に従い、外因的に導入されるいかなるナトリウムカチオンの非存在下で、本発明の方法を実施することが望ましく、これは非限定的な理論に従って、カルシウムシグナルのレベルに対するNa+/Ca+アンチポータによる任意の検出可能な寄与を排除または減少するべきである。
単離されたミトコンドリアまたは半精製されたミトコンドリアからの亜ミトコンドリア粒子(SMP)の調製に関する方法もまた、当該分野で公知である(例えば、Walkerら、Methods in Enzymology 260:163−190,1995;およびGarlidら、Methods in Enzymology 260:331−348、1995を参照のこと)。ミトコンドリア(そこからSMPが単離される)とは構造的に異なるが、SMPは、インタクトなミトコンドリアの多くの機能を保持する(例えば、Muscariら、Biochim.Biophys.Acta 1015:200−204、1990;およびSastrasinhら、Am.J.Physiol.257:F1050−F1058、1989を参照のこと)。
本発明の特定の実施形態では、カルシウム感受性の検出可能な試薬およびICMAの適切な組み合わせを使用することにより、特定の細胞内Ca2+リザーバ(例えば、ミトコンドリア)からのCa2+の取り込みまたは放出に対応するシグナルが、生成される。例えば、ERおよび他のミトコンドリア外のCa2+リザーバからの取り込みをブロックする、そして/または放出を促進するために使用されるICMA、およびミトコンドリアに侵入しないカルシウム感受性の検出可能な試薬が使用される場合、検出可能なCa2+シグナルの濃度における任意の変化は、ミトコンドリアからのCa2+の取り込みまたは放出に起因する(図1〜図3を参照のこと)。
ミトコンドリアに加えて、公知の細胞内カルシウムリザーバとしては、小胞体(ER)のような他のオルガネラが挙げられる。ERは、ほとんどの細胞型において見出され、そして大きな細胞内の空間を含む一連の平坦なシート、管および嚢からなる。ERの膜は、核膜と構造的に連続し、そして細胞質にわたって広がっている。ERのいくつかの機能としては、膜タンパク質および脂質の合成および輸送が挙げられる。概して、2つの型のERが細胞内に存在し得る。滑面ERは、形状がほぼ管状であり、そして代表的に結合リボソームを欠き;滑面ERの1つの主要な機能は、脂質代謝である。粗面ERは、代表的に平坦なシートとして生じ、そのサイトゾル側は、通常多くの活性(タンパク質合成する)リボソームが会合する。
従って、1つの実施形態では、本発明は、ミトコンドリアのカルシウムレベルに影響するミトコンドリア外のカルシウムおよび因子(例えば、カルシウムユニポータ(CaUP))についてのアッセイ、およびそのような因子に影響を及ぼすか、さもなければミトコンドリアカルシウムのレベルに影響を及ぼす薬剤(例えば、化学化合物)についてのスクリーニングの方法を提供する。本実施形態において、ERおよび他のミトコンドリア外カルシウムリザーバによる取り込みを阻止、および/またはERおよび他のミトコンドリア外カルシウムリザーバからのカルシウムの放出を促進するICMA(他に示されない限り、全てCalbiochem、San Diego、CA製)が使用される。このような薬剤としては、限定ではなく例として、ERに対しては、タプシガルジンおよびタプシガリシン(thapsigaricin)が挙げられる。
別の実施形態では、本発明は、ERから放出されるカルシウムおよびERにおけるCa2+のレベルに影響する因子についてのアッセイ、およびERにおけるCa2+のレベルに影響を及ぼす薬剤(例えば、化学化合物)についてのスクリーニングの方法を提供する。本実施形態において、ミトコンドリアおよびER以外の他のカルシウムリザーバによる取り込みを阻止、および/またはミトコンドリアおよびER以外の他のカルシウムリザーバからのカルシウムの放出を促進するICMA(他に示されない限り、全てCalbiochem、San Diego、CA製)が使用され;このような薬剤としては、限定ではなく例として、ミトコンドリアに対しては、ルテニウムレッドおよびRu−360、ならびに脱共役剤(例えば、CCCPおよびFCCP)が挙げられる。
本発明は、以下の問題を解決するか、または以下の制限を克服する。(1)総ミトコンドリア外のCa2+が測定され得、(2)その測定が、それらのリアルタイムの反応速度論的アッセイにおいて行われ得、(3)その反応速度論的アッセイが、内在性分子または細胞中へ人為的に導入される分子の作用に影響を与える化合物についてのハイスループットスクリーニング(HTS)を提供し、ここで、このような分子は、直接的または間接的のどちらかでミトコンドリア外カルシウムレベルを調節する。本発明は、以下の利点を提供する:(A)アッセイが、ミトコンドリアの膜電位をカルシウムユニポータのための駆動力にすることを可能にする条件下で行われ得る;(B)ミトコンドリア外のカルシウムリザーバからの競合シグナルが、減少または排除され得る;(C)(A)および(B)を理由として、本発明のアッセイは、ミトコンドリアのカルシウムユニポータに特異的なアッセイを提供する。
Ca2+ユニポータ(Ca UP)は、ミトコンドリアの膜電位(低親和性、高Vmax)により駆動され、そしてSr2+、Mn2+、La3+により競合的に阻害され;Mg2+、ルテニウムレッド、Ru360により阻害され;ADPにより活性化され、そしてATPにより阻害され;そしてミトコンドリア透過性移行(MTP)孔を刺激するCa2+隔離を担う。また、Ca2+ユニポータは、種々の組織における虚血/再灌流障害、ならびにニューロンの興奮毒性死に明らかに関連し、そして大量のCa2+負荷に対応する細胞の能力が損なわれた慢性神経変性疾患において役割を果たし得る。CaUPはクローニングされていない。
本発明の特定の実施形態に従うアッセイの実施に関連する技術的な詳細は、本明細書中に記載され、そして適切な条件の例は、例えば、Murphyら(Proc.Natl.Acad.Sci USA.93:9893−9898、1996)において見出され得る。手短に言えば、本発明のいくつかの実施形態において、細胞は、カルシウム感受性の検出可能な試薬を有する、呼吸性培地(塩化カリウムベースであり、ミトコンドリア呼吸性基質(例えば、グルタミン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、ピルビン酸塩およびリンゴ酸塩、ならびにその他多数)を含む塩)の存在下で透過化処理される。この試薬は、例えば、0.1〜1.0マイクロモルで使用されるCalcium−Green−5N(Molecular Probes、C−3737、ヘキサカリウム塩)であり得る。表1に提示される試薬を含むが限定されない他のカルシウム感受性の検出可能な試薬が使用され得る。細胞は、現在、培地中で懸濁されるが、これらは潜在的に96ウェルプレートの表面に付着され得る。懸濁された細胞のアッセイのために、細胞は、約1×107細胞/mlの濃度、1ウェルあたり0.1mlである。当業者は、異なるアッセイ試薬、細胞株、器具使用などに対する適切な細胞濃度を決定し得る。
Figure 2005130867
この培地は、以下を含むが、これらに限定されないキレート化剤を含み得る:BAL(British Anti−Lewisite)、DMPS(2,3−ジメルカプト−1−プロパンスルホン酸)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DMSA(メソ−2,3−ジメルカプトコハク酸)、ペニシラミン、DTPA(ジエチレン五酢酸)、デスフェリオキサミン、DTC(ジチオカルバメート)など。キレート化剤を添加する目的は、潜在的に混入するCa2+(これは、本発明のアッセイで使用される細胞培地または他の薬剤中に存在し得る)を除去するためである。あるレベルにおいて、混入したカルシウムイオンは、アッセイの開始前に、ミトコンドリアによって所望でないCa2+の隔離を導き得る;次いで、これは、ミトコンドリアが隔離し得るさらなるカルシウムの量を制限する。キレート化剤の適切な濃度は、経験的に決定されるか、または培地中に存在するカルシウムの量を試験するために、培地で原子吸収が行われるか、あるいはカルシウム感受性検出試薬の存在下で異なる濃度のキレート化剤が、培地または試薬に添加され得、そしてカルシウムのレベルに対応した蛍光シグナルが測定される。これらの決定の結果から、蛍光におけるさらなる変化が認識され得ない、キレート化剤の最少濃度を決定することが可能であり;この濃度のキレート化剤は、必要な場合、培地および試薬からの内因性カルシウムの除去を最小限必要とされる。
さらにまたはあるいは、この培地は、Ca2+の取り込みおよび小胞体(ER)による保持を防ぐために、ICMAタプシガルジンを含み得る。
Calcium−GreenTM−5Nが使用される場合、蛍光読み取りは、Molecular devices’ FLIPRのようなレーザー蛍光計で、488μmでの励起、530±12.5μmでの発光ピークで行われ得る。一旦、ベースライン蛍光が確立すると、既知量のCa2+が添加され得(呼吸性培地中の濃縮ストックから、FLIPRによって機械的に)、その結果、すぐにシグナル(蛍光)が増加する。
添加されるCa2+の量は、アッセイにおけるミトコンドリア数に依存する。一般的に、Ca2+の用量は、MPT孔の開口を誘導しないように十分低くあるべきである(Bernardiら、J.Biol.Chem.267:2934−2939,1992;Bernardiら、J.Biol.Chem.268:1005−1010,1993;Szaboら、J.Biol.Chem.267:2940−2946,1992;Zorattiら、Biochem.Biophys.Acta−Rev.Biomemembranes 1247:139−176,1995)。
代表的には、Ca2+の用量応答曲線は、例えば、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、7.5、10、12.5、15、20.0、25、30、50、75および100μMのCa2+濃度で、細胞株について行われ、ここで、結果は、Ca2+をロードしたミトコンドリアからのCa2+の自発的放出または転移様挙動である。特定の細胞株についての最適なCa2+の濃度は、既知量のCa2+の反復パルスによって決定されたCa2+取り込みの最大容量よりも十分低い濃度として決定される(Murphyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:9893−9898,1996)。Hep2(ヒト肝癌)細胞については、適切なCa2+濃度は、0.1ミリリットル当たり1×107細胞/mlに関して、6〜20マイクロモル濃度のCaCl2である。
カルシウムのユニポータ機能として、ミトコンドリアは、培地からカルシウムを取り込むが、カルシウム感受性検出試薬はミトコンドリアに取り込まれず;従って、シグナルは基底レベルまたはほぼ基底レベルまで減少する。従って、ユニポータ活性は、カルシウムが培地に添加されたすぐ後の初期「スパイク」に続くシグナルの減少と一致する(ミトコンドリアがCa2+を隔離することに起因する)。
Ca2+のこの初期隔離パルスに続くアッセイの1つの形態において、第2Ca2+パルスが適用される前に、試験化合物が、この細胞に添加される。試験化合物は、多くの方法においてミトコンドリアのCa2+のレベルに影響するその能力についてスクリーニングされる薬剤である(図4を参照のこと)。
第1に、いくつかの薬剤が、第2Ca2+パルスが細胞に適用される前でも、カルシウム感受性検出試薬からのシグナルにおける増加を生じる。例えば、MPT脱共役呼吸を誘導する、および/またはミトコンドリアの膜電位の損失またはさもなければミトコンドリアへのひどい構造損傷を引き起こす薬剤は、ミトコンドリアから迅速に放出される第1Ca2+パルスから隔離されたCa2+を生じ、検出試薬からのシグナルの即時性の増加を引き起こす。同様に、例えば、ミトコンドリアの二価カチオンチャネルまたは輸送体(カルシウムユニポータを含む)の活性を変更することによって、ミトコンドリアからのCa2+の流出を刺激する薬剤は、細胞が薬剤に接触した直後またはしばらくして、シグナルの増加を生じる。例えば、呼吸を脱共役する薬剤は、ミトコンドリアの膜電位を散逸し、これはCa2+の取り込みおよび保持の駆動力として作用する。さらに、ΔΨの散逸は、ユニポータの機能を逆転させ、ミトコンドリアから戻されるCa2+が、その濃度および電気的勾配を低下させる。呼吸抑制剤は同様に挙動するが、シグナルの増加は迅速であり得ない。
第2に、ユニポータ活性に特異的に影響する薬剤は、薬剤が添加された直後のシグナルに、ほとんどまたは全く効果を有し得ないが、初期Ca2+パルスとは異なる隔離曲線を有する第2Ca2+パルスを生じる(図4に、いくつかの例を示す)。例えば、第2Ca2+パルスの適用後のシグナルのより迅速ではない損失は、ミトコンドリアのより迅速ではないCa2+隔離を示し、この試験化合物が、カルシウムユニポータの活性を阻害する薬剤であることを示す。極端な場合、不可逆的にカルシウムユニポータを阻害する薬剤の十分な量の適用は、第2Ca2+パルスの後の「プラトー(plateaus)」である増加したシグナル(すなわち、減少しない)を生じる。別の例として、第2Ca2+パルスの適用後のシグナルのより迅速な損失は、より迅速なミトコンドリアのCa2+隔離を示し、この試験化合物がカルシウムユニポータの活性を刺激するか、またはCa2+の流出を阻害する薬剤であることを示す。
(実施例1)
(一般的アッセイ試薬、他の成分および条件)
(カルシウム)
カルシウムクロリド(CaCl2)は、市販されている(Sigma、St.Louis,MO;C3881)。最初の実験において、その濃度を正確に決定するために、カルシウムクロリドのストック溶液について原子吸収を行う。0.025mol/Lのオートクレーブされたストック溶液が利用可能である(Sigma、St.Louis,MO)。CaCl2の濃度は重要である。なぜなら、4マイクロモル濃度と8マイクロモル濃度との間の差は、ミトコンドリアからの自発性Ca2+放出の誘導に関して重要であり得るからである。
(カルシウム感受性検出試薬)
Calcium−Green−5N(カリウム塩)は、市販されている(Molecular Probes,Eugene,OR;C−3737)。Calcium−Green−5Nは、低親和性Ca2+指示薬である(例えば、Oregon Green 488 BAPTA−5Nのような)。このアッセイに使用されるCa2+の濃度のために、濃度低親和性指示薬が好ましい。高親和性色素は、より低いCa2+濃度を必要とし、そのため、このアッセイにおいて使用する数よりも、より少ない数の細胞、従ってより少ない数のミトコンドリアが必要である。Calcium−Green−5Nを、効力を失う(開始蛍光の減少およびピーク値の減少によって示される)前に制限された回数、凍結および融解し得る。従って、このストックを、処分する前に、代表的に、10回以下の凍結/融解サイクルを経たアリコートに分割する。
本発明のアッセイにおいて使用され得る他のカルシウム感受性検出試薬には、以下が挙げられる:Calcein、Calcein Blue、Calcium−Green−1、Calcium−Green−2、Calcium−Green−C18、Calcium Orange、Calcium−Orange−5N、Calcium Crimson、Fluo−3、Fluo−3 AMエステル、Fluo−4、Fura−2、Fura−2FF、Fura RedTM、Fura−C18、Indo−1、Bis−Fura−2、Mag−Fura−2、Mag−Fura−5、Mag−Indo−1、Magnesium GreenTM、Quin−2、Quin−2 AM(アセトキシメチル)エステル、Methoxyquin MF、Methoxyquin MF AMエステル、Rhod−2、Rhod−2 AMエステル、Texas RED(登録商標)−Calcium GreenTM、Oregon GreenTM 488、BAPTA−1、Oregon GreenTM 488 BAPTA−2、BTC、BTC AMエステル(全てMolecular Probes,Inc.,Eugene,ORより)、およびエクオリン(Molecular Probes)。
(透過性を上げる(permeabilizing)薬剤および方法)
当業者は、例えば、例示のためであり限定ではないが、界面活性剤(surfactant)、界面活性剤(detergent)、リン脂質、リン脂質結合タンパク質、酵素、ウイルス膜融合タンパク質などの使用を介して;特定の細菌毒素(例えば、(α−溶血素))への曝露によって;サポニン(これはまた、ジギトニンのような非イオン性界面活性剤である)のような溶血素との接触によって;浸透圧的に活性な薬剤の使用を介して;化学架橋剤の使用によって;エレクトロポレーションなどを含む物理化学的方法によってか、または例えば、物理的操作(例えば、エレクトロポレーションなど)を含む他の透過性を上げる方法論による、細胞の透過性を上げる方法に精通している。細胞の透過性を上げる方法に精通する当業者は、特定の選択した細胞株に対する薬剤の毒性、細胞に侵入することが所望される薬剤の分子サイズなど(しかし、これらに限定されない)を含む因子に基づいて、最も適切な透過性を上げる薬剤を決定し得る(例えば、Schulz,Methods Enzymol.192:280−300、1990を参照のこと)。
従って、例えば、細胞は、細菌毒素(例えば、ストレプトリジンO、Staphylococcus aureus α毒素(α−溶血素としても公知)のような透過性を上げる薬剤の添加;サポニンのような他の溶血性薬剤の添加;または、細胞を溶解しかつ膜を可溶化するために使用される濃度より下の濃度(すなわち、臨界ミセル濃度より下)における1つ以上の界面活性剤(例えば、ジギトニン、Triton X−100、NP−40、n−オクチル β−D−グルコシドなど)への曝露などの、任意の種々の公知の技術を用いて透過化処理され得る。特定の通常のトランスフェクト試薬(例えば、DOTAP)もまた、使用され得る。ATPはまた、インタクトな細胞を浸透化させるために、固定剤として通常使用される化学物質(例えば、ホルムアルデヒド)の低い濃度であり得るのと同様に、使用され得る。この段落に記載される透過性を上げる薬剤の全ては、例えば、Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO(「Biochemicals and Reagents for Life Science Research」,Anon.,1999と題されるSigmaのカタログ、ならびに、これらおよび他の透過性を上げる薬剤に関してそのカタログ中に引用される参考文献を参照のこと)から入手可能である。本明細書中に記載される多くの実験において、ジギトニン(ジギチン)を、細胞の透過性を上げる薬剤として使用した。代表的に、DMSOの10%保存溶液を作製し、そして凍結して貯蔵した。表2は、いくつかの細胞株の透過性を上げるための、ジギトニンの最適な濃度を記載する。
Figure 2005130867
(キレート剤)
本発明のアッセイは、特に、(Ca2+が混入しているかまたは混入し得る)供給物または試薬(例えば、H2Oなど)が、アッセイについての成分の調製を必要とする場合に、キレート剤を必要に応じて含み得る。EGTA(エチレングリコールビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸)は、市販されている(Sigma,St Louis,MO)。EDTAは、Ca2+をキレート化するために使用され得る別の薬剤だが、これはまた、Mg2+をキレート化する。別のカルシウムキレーターが、使用され得る(1−10フェナントロレンを含む)。EGTAの250mM保存溶液(KOHでpHを7.0に調節)を、代表的に、本明細書中に記載の実験に使用した。EGTAの最適な濃度は、所定の場合において必要であることが見出される場合、所定の実験室供給物中のCa2+混入の量によって影響され得る。従って、EGTAおよびCa2+パルスサイズ(pulse size)の両方で用量応答をすることが、必要であり得る。本発明の方法において使用され、特に図4に記載されるようなCa2+のパルスサイズは、ミトコンドリアの数および質量のような因子に依存するが、パルスサイズの範囲は、1〜数百μMであり得、これはこのアッセイにおいて使用される特定の細胞株に依存する。異なる組織から調製されたミトコンドリアは、異なる濃度のCa2+を許容する。
(ミトコンドリア外カルシウム放出剤)
タプシガルジンは、小胞体(ER)のCa2+取り込みインヒビターであり、そして市販されている(Calbiochem,San Diego,CA)。ミトコンドリア外レザーバーからCa2+を放出し、そして/またはそのようなミトコンドリア外レザーバーへのCa2+の取り込みを阻害する他の薬剤としては、イノシトール−1,4,5−トリホスフェート(Strebら、Nature 306:67−69,1983;Berridgeら、FASEB J.2:3074−3082,1988)、オカダ酸(Hepworthら、Cell Calcium 21:461−467,1997)、およびカフェインが挙げられるが、これらに限定されない。
(ミトコンドリア機能に影響を及ぼす薬剤)
Ruthenium Redは、Ca2+ユニポータを阻害し、それゆえCa2+のミトコンドリアへの取り込みを阻害する、細胞学的染色である(ReedおよびBygrave,Bioch.J.140:143−155,1974)。これはまた、筋小胞体からのCa2+の放出をブロックし(Antoniusら、Biochem.Biophys.Acta 816:9−17、1985;Chiesiら、Biiochem.Biophys.Res.Commun.154:1−8、1988)、かつ小胞体の分離する能力を阻害する(Hurley,Am.J.Physiol.23:621−627、1988)。Ru360(Calbiochem,San Diego,CA;557440)は、Ruthenium Redの二核(dinuclear)ルテニウム中心部分であり、Ruthenium Redの阻害効果を担うことが提唱されている(Yingら、Biochemistry 30:4949−4952,1991;Emersonら、J.Am.Chem.Soc.115:11799−11805、1993)。
FCCP(カルボニルシアニドp−(トリフルオロメトキシ)フェニル−ヒドラゾン;Sigma)は、ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化の強力な脱共役剤である(Heytlerら、Biophys.Res.Commun.7:272、1962;Biochem.J.195:583、1981)。呼吸性脱共役剤の他の非限定的な例として、カルボニルシアニドm−クロロフェニル−ヒドラゾン(Sigma)(Heytlerら、Biophys.Res.Commun.7:272など、1962)、およびHeytlerによって記載された(例えば、Methods of Enzymology 55:462、1979およびPharmacol.Ther.10:461−472、1980(これらの両方は本明細書によって参考として援用される))脱共役剤が挙げられる。
ロテノン(Sigma)は、ミトコンドリア電子伝達のインヒビターである(Fukamiら、Science 155:713−716、1967)。ミトコンドリアETCのインヒビター他の非限定的な例としては、シアニド、アミタールおよびアンチマイシンが挙げられる。
オリゴマイシン(Sigma)は、ミトコンドリアATPaseのインヒビターである(Nagamuneら、Biochim.Biophys.Acta 1141:231−237、1993)。オリゴマイシンおよびロテノンの組み合わせ、またはロテノン単独は、膜電位の大きな減少または本質的な排除の効果を評価するためのポジティブコントロールとして使用され得る。
エタクリン酸(2,3−ジクロロ−4−(2メチレン−ブトリル)フェノキシル酢酸(2,3−dichloro−4−(2methylene−butryl)phenoxylacetic acid);Sigma)は、細胞が酸化的ストレスを許容する能力を除去する。エタクリン酸は、グルタチオンS−トランスフェラーゼを阻害し、それによって細胞のグルタチオンを枯渇させる(Shenら、Biochem.Pharmacol.50:1233−1238、1995)。実験により、ミトコンドリアに局在したグルタチオンは、ミトコンドリア機能の維持に重要な役割を有することが示唆される(Seyfriedら、Neurosci.Lett.264:1−4、1999)。
(アポトゲン(apoptogen))
本発明の特定の局面において、変更されたミトコンドリア状態は、生物学的サンプルを、プログラムされた細胞死(PCDまたは「アポトーシス」)を誘導する「アポトゲン」薬剤として公知の組成物に曝露することによって誘導される。アポトーシスの総説については、Greenら(Science 281:1309−1312、1998)、Raff(Nature 396:119−122、1998)、およびSusinら(Biochim.et.Biophys.Acta 1366:151−165、1998)を参照のこと。
種々のアポトゲンは、当業者に公知であり、そして、例示として以下を含み得る;ハービマイシンA(herbimycin A)(Manciniら、J.Cell.Biol.138:449−469、1997);パラクアット(Costantiniら、Toxicology 99:1−2、1995);エチレングリコール(http://www.ulaval.ca/vrr/rech/Proj/532866.html);プロテインキナーゼインヒビター(例えば、スタウロスポリン、カルホスチンC(calphostin C)、コーヒー酸フェネチルエステル、塩化ケレリトリン、1−(5−イソキノリンスルホニル)−2−メチルピペラジン、N−[2−((p−ブロモシンナミル)アミノ)エチル]−5−5−イソキノリンスルホンアミド、KN−93、ゲニステイン、ケルセチンおよびd−エリスロ−スフィンゴシン誘導体など);紫外線照射;イオノホア(例えば、イオノマイシン、バリノマイシンおよび当業者に公知の他のイオノホアなど);MAPキナーゼインデューサー(例えば、アニソマイシン(anisomysin)およびアナンダミン(anandamine)など);細胞周期ブロッカー(例えば、アフィジコリン、コルセミド、5−フルオロウラシルおよびホモハリングトニン(homoharringtonine)など);アセチルコリンエステラーゼ(acetylcholineesterase)インヒビター(例えば、ベルベリンなど);抗エストロゲン(例えば、タモキシフェンなど);酸化促進剤(例えば、tert−ブチルペルオキシドおよび過酸化水素など);フリーラジカル(例えば、一酸化二窒素など);無機金属イオン(例えば、カドミウムなど);DNA合成インヒビター(例えば、アクチノマイシンD、硫酸ブレオマイシン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、マイトマイシンC、カンプトテシン、ダウノルビシンおよびDNAインターカレーター(intercalator)(例えば、ドキソノルビシンなど)など);タンパク質合成インヒビター(例えば、シクロヘキシミド、ピューロマイシンおよびラパマイシンなど);微小管形成または安定性に影響を及ぼす薬剤(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、4−ヒドロキシフェニルレチンアミド(4−hydroxyphenylretinamide)およびパクリタキセルなど);ガングリオシド(例えば、GD3(Scorranoら、J.Biol.Chem.274:22581−22585、1999)など);適切なレセプターを有する細胞と接触され得る薬剤(例示のためであり限定ではないが、以下が挙げられる:腫瘍壊死因子(TNF)、FasL、グルタメート、NMDA(前述は、示された薬剤の取り込みを媒介するレセプターを有する細胞と接触される)、コルチコステロン[ミネラルコルチコイドまたはグルココルチコイドレセプターを有する細胞に関する]);ある期間の後にこの細胞の培養培地から回収される薬剤(例えば、非限定的な例として、リンパ球からのIL−2の回収);ならびに、カルシウムおよび無機ホスフェート(Kroemerら、Ann.Rev.Physiol.60:619−642、1998)およびBax/Bcl−2タンパク質ファミリーのメンバー(Jurgenmeierら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:4997−5002、1998)(これらは、例示のためであり、そして限定ではない)を含む、単離されたミトコンドリアまたは透過化処理された細胞と接触され得る薬剤。このような薬剤は、当該分野で公知の方法に従って調製されるか、または、例えば、Calbiochem(San Diego,CA)およびSigma Chemical Company(St.Louis,MO)のような会社から市販されている。
(細胞株)
種々の細胞もしくは細胞株、またはこれらから単離もしくは調製されたミトコンドリアが、本発明において使用され得る。好ましくは、非酵母真核生物細胞、特に、内胚葉由来、外胚葉由来または中胚葉由来の分化または未分化の細胞または幹細胞。好ましい例には以下が挙げられるが、これらに限定されない。
「SH−SY5Y」は、神経芽腫細胞の株である(Biedlerら、Cancer Res.,38:3751〜3757,1978;米国特許第5,888,498号、Davisら、1999年3月30日発行(本明細書中で参考として援用される)もまた参考のこと)。
サイブリッドは、細胞の核ゲノムおよび血小板由来のミトコンドリアを含む、ハイブリッド細胞である(米国特許第5,888,498号)。
「MixCon」とは、複数の患者由来のサイブリッドの混合物をいう(米国特許第5,888,498号)。
「1685サイブリッド」とは、SH−SY5Y細胞株の核骨格と、試験的に診断されたアルツハイマー病の患者から調製した血小板から調製したミトコンドリアとを結合するサイブリッド細胞株をいう。同時係属中の米国特許出願60/124,673(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
「L6」は、ラット由来の骨格筋筋芽細胞由来の細胞株である(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 61:477〜483,1968;Dev.Biol.23:1〜22,1970;ATCC CRL−1458)。
「293」は、アデノウイルス5(ATCC CRL−1573、45504および45505)の形質転換遺伝子で形質転換されたヒト腎臓細胞株である。
「HEPG2」は、ヒト肝細胞癌である(米国特許第4,393,133号;Adenら、Nature(Lond.)282:615〜616,1979;ATCC HB−8065)。
「Jurkat」とは、ヒト由来の、Jurkat、Clone E6−1、急性T細胞白血病をいう(ATCC TIB−152)。
(培地)
標準細胞培地は、代表的に、実施例で示すような市販の供給源由来であった。基本呼吸培地(Basic Respiratory Media)(別名「BReM」)の処方を表3に記載する。
Figure 2005130867
呼吸培地が、グルタミン酸、リンゴ酸、コハク酸、MgCl2、Calcium−Green−5Nを含む実験において、これらの追加成分を、アッセイの日に添加する。Calcium−Green−5Nを除いて、これらの添加剤のストック溶液は凍結および解凍に対して安定である。反対に、Calcium−Green−5Nは、たとえ−80℃で貯蔵しても、時間が経つと(約1ヶ月)分解する塩であり、複数回の凍結および乾燥は、この分解を促進する。
(測定装置)
アッセイに依存して、Fluorometric Imaging Plate Reader(FLIPRTM)装置(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)は、しばしば、本発明のアッセイについての選り抜きの装置である。FLIPRTMは、以下の望ましい特徴を有する(http://www.moleculardevices.com/pages/flipr.htmlを参照のこと):このFLIPRTMは、冷却水、アルゴンイオンレーザー照射、および積算検出器としての冷却CCDカメラ(これは、画像に曝された時間にわたってシグナルを集積し、結果として、そのシグナル対ノイズ特性は、一般に、従来の画像化オプティクスのシグナル対ノイズ特性より優れている)の組合せを使用する;このFLIPRTMはまた、細胞単層におけるシグナルの識別を可能にする独自の細胞−層単離オプティクスを使用し、従って、所望でない細胞外のバックグラウンド蛍光を減少させる;このFLIPRTMは、リアルタイムでデータを提供し、そして動力学的データもまた提供し得る(すなわち、複数の時点における読みとり);このFLIPRTMは、96ウェル、マイクロプレートの96ウェルすべてを、同時に刺激し、読みとる能力を有する;このFLIPRTMは、分析中、サンプルの温度および湿度の正確な制御を提供する;このFLIPRTMは、最新型の集積96ウェルピペッターを備え、このピペッターは分配チップを使用して、実験の間のキャリーオーバーを排除し、そしてマイクロプレートから正確な用量の流体を吸い取り、分配しそして混合し得る;そして、FLIPR384装置の場合、このFLIPRTMは、ロボット様式または半ロボット様式でサンプルのアッセイを実施するように適合され得、従って、短時間での多数のサンプルの分析を提供する(例えば、1日につき約100個までの96ウェルマイクロプレート)。
(実施例2)
(一般的なアッセイプロトコル)
表3に記載される基本KClベース呼吸培地(basic KCl−based respiratory media)(「BReM」)に、グルタミン酸およびマレイン酸を、それぞれ最終濃度が5mMになるまで添加し、MgCl2を最終濃度が1mMになるまで添加し、EGTAを最終濃度が0〜8mMになるまで添加し、そしてCalcium−Green−5Nを最終濃度が0.1〜1.0mMになるまで添加することによって、基本混合溶液(master mix solution)(MM溶液)を調製した。代替の呼吸培地は、リン酸緩衝液を含むかまたは含まずにスクロースおよび/またはマンニトールを使用して調製し得る。MM溶液中の6カリウム塩のCalcium−Green−5N(Molecular Probes,Eugene,OR)は、Ca2+に対して小さい結合親和性を有する蛍光色素である。
小胞体(ER)のCa2+取込みインヒビターである、タプシガルジン(Calbiochem,San Diego,CA)を、最終濃度が1mMになるまでMM溶液に添加して、「MM−T」(すなわち、タプシガルジンを含有する基本混合(Master Mix))と命名される溶液を得た。
細胞膜透過剤のジギトニン(Sigma,St.Louis,MO)を、最終濃度が約0.007%〜約0.03%になるまでMM−Tに添加して、「MM−TD」(すなわち、タプシガルジンおよびジギトニンを含有する基本混合)と称される溶液を得た。CaCl2をMM−Tに添加して、細胞内Ca2+流出の決定のために、Ca2+の決定した最終濃度を有する溶液を提供した。
異なる細胞株に適切なジギトニン濃度の範囲は変動し、そして、細胞型と共に変わる形質膜のコレステロール含量として、各細胞株について滴定される。従って、異なる量のジギトニンが、異なる細胞株の形質膜を選択的に透過化処理するために必要とされる。使用されるジギトニンが少なすぎる場合、細胞は、色素および試薬がミトコンドリア外の空間へアクセスし得るために十分透過化処理されない。使用されるジギトニンが多すぎる場合、外側のミトコンドリア膜は透過性になり、そして結果的に、因子(例えば、シトクロムc)を放出し、それにより呼吸を制限する。
所定の細胞株に最適なジギトニン濃度の滴定は、種々の方法によって達成され得る。例えば、細胞を、酸素電極チャンバ中、コハク酸および複合体Iインヒビターのロテノンの存在下で、BReMに懸濁し得る。ジギトニンを、酸素消費の最大速度に達するまで滴定し、それによりジギトニンの最適濃度を決定する。このアプローチにおいて、コハク酸は、形質膜を容易に通過しない。従って、形質膜の最適な透過化は、ミトコンドリアに最適レベルの酸化可能物質を提供する。
あるいは、TPP+(テトラフェニルホスホニウムイオン)のミトコンドリアマトリクスへの取込みをモニターし得る。TTP+は、ミトコンドリアの内側膜を透過し、その膜を通って、Nernstian様式で分布するカチオンであり、その分布は膜電位を示す。培地中のTTP+濃度は、TTP+選択性電極を使用してモニターされる。TTP+は、形質膜を容易に通過せず、従って、この形質膜はジギトニンを用いて滴定されるため、TPP+は、ミトコンドリアへのアクセスを得、そして膜電位の関数として利用される。培地からのTTP+の最大消失は、最適なジギトニン濃度の指標である。他のものは、接着細胞株について、ジギトニンの滴定に対して高感度のアプローチではないが、約0.04%〜約0.4%のトリパンブルーを含む基本呼吸培地(BReM)を細胞に添加する工程、またはジギトニンの濃度を増加して、例えばヨウ化プロピジウムのような蛍光形質膜不透過色素(5μg/ml)を添加する工程を包含する。ヨウ化プロピジウムを使用する場合、光学顕微鏡または蛍光顕微鏡によって、100%の細胞を透過化処理するジギトニンの最小濃度が決定され得る。トリパンブルーの場合、本質的にすべての細胞が青色になり、そしてヨウ化プロピジウムの場合、本質的にすべての細胞核が蛍光を発するようになる。表2は、いくつかの異なる細胞株のジギトニンの最適化についての結果を記載する。
(実施例3)
(Ca2+ユニポータ活性の検出)
アッセイを行って、Ca2+ユニポータがミトコンドリアに輸送されるが、透過性転移を誘導するには十分高くないCa2+濃度を最適化した。0、40、80、120、160および200mMのCa2+の最終濃度で、MM−TにCaCl2を添加することによって、Ca2+のストック溶液(10倍)を調製した。この実験で使用される細胞は、複数の正常な個体由来のコントロールサイブリッドの混合物(MixCon)であった(米国特許第5,888,498号を参照のこと)。細胞を、ダルベッコの改変イーグル培地中、10%の熱不活性化したウシ胎児血清(FBS)を用いてトリプシン処理し、そして96ウェルCostar 3603マイクロプレートのウェルに、1ウェルにつき100μl中約6×104細胞の濃度で、アッセイの実施前48時間で添加した。これらの細胞を使用する前に、増殖培地をウェルから吸引した。100μlのMM−TDを、各ウェルに添加して、これらの細胞を透過化処理した。このプレートを、Fluorometric Imaging Plate Reader(FLIPRTM;Molecular Devices Corporation,Sunnyvale,CA)に入れ、37℃まで加熱し、そして488nmの励起波長で照射した。10倍のCaストック溶液の各々(すなわち、0、40、80、120および160μMのCa2+)を、これらの透過化処理された細胞を含むウェルに、11.1μlの容量ずつ分配して、それぞれ0、4、8、12、および16μMのCa2+濃度を有する試験サンプルを得た。
細胞内Ca2+が、Calcium−Green−5Nに結合する場合、531nmの放射が増大する。細胞内Ca2+イオンが、細胞のオルガネラへのその輸送に起因してカルシウム感受性検出試薬に結合することをやめる場合、得られた放射シグナルは減少し、FLIPRTMにおいてモニターされるようなCa2+「スパイク」を生じる(図4、パネルA)。タプシガルジンは、ERへのCa2+の取り込みを阻害することが示されており、従ってミトコンドリア内のCa2+の没収(sequestration)を反映する細胞質ゾル中のCa2+の細胞質ゾルの濃度を低下させる。12.3μLおよび13.7μLの容積での3分間隔での10倍CaMM溶液を用いる2つのさらなる注射を、FLIPRシステムによって実行した。これらのアッセイの結果を、図5に示す。これから、MixCon細胞についての適切なCa2+パルスサイズが約4〜約8μMの範囲にわたることが判明した。
(実施例4)
(Ca2+ユニポータ活性の調節の検出)
(A.一般的方法)
浸透性HepG2細胞へのいくつかの細胞内Ca2+調節因子(ICMA)の効果を、以下のように試験した。ミトコンドリア呼吸抑制剤オリゴマイシン(Calbiochem,San Diego,CA)およびロテノン(Calbiochem)をMM−Tに添加して、それぞれ、最終濃度を50μg/mlおよび20μMとした。脱共役FCCPを、同様にMM−Tに、10倍濃度(10μM)に添加し、FCCPのストック溶液(MM−TF)(すなわち、タプシガルジンおよびFCCPのマスター混合物)を生成した。カルシウムユニポータによるミトコンドリアへのCa2+の取り込みをブロックするICMA Ru360を、100μMの濃度にMM−Tに添加し、MM−T360(すなわち、タプシガルジンおよびRu360のマスター混合物)を生成した。CaCl2をMM−Tに添加し、MM−T中のCaCl2の10倍溶液(120μM)を生成した。
HepG2細胞を、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびイーグル平衡塩溶液(BSS)(90%);ウシ胎仔血清(FBS)(10%)とともにイーグル最小必須培地(MEM)中で培養した。細胞を遠心分離し(500×g)、そして増殖培地をペレットから吸引した。HepG2細胞を1×107細胞/mlの濃度にMM−TD中で再懸濁し、そして100μlの再懸濁した透過性細胞を、96ウェルCostar3603マイクロプレートのウェル中に分注した。このプレートをFLIPRTM中に入れ、37℃まで予熱した。MM−T(120μM Ca2+)を11.1μLの容積で細胞含有ウェルに分注し、12μM
Ca2+の最終アッセイ濃度を得た。このアッセイ段階でのCa2+の添加を、第1のカルシウムパルスと呼び、そしてCa2+が添加される時点を、t=0と示す。
約3分後(すなわち、ほぼ、t=3分で)ICMA溶液の12.3μLの1つを透過性細胞を含むウェル中に分注し、オリゴマイシン5μg/ml、ロテノン2μM、FCCP 1μM、RU360 1μM、およびMM−T(ICMAなし)の最終アッセイ濃度を得た。
さらに3分後(すなわち、ほぼt=6分)、細胞への13.7μlのMM−T(120μM Ca2+)の添加により、細胞を、第2のカルシウムパルスに曝露した。酸化的なリン酸化反応抑制剤オリゴマイシンおよびロテノンならびに非共役FCCPは、ミトコンドリアから細胞質ゾルへのCa2+の放出を生じた。ここでCa2+指標に会合するCa2+および蛍光の増大を、FLIPRによって検出した。第2のCa2+パルスの添加の際、ミトコンドリアは、これらの細胞において添加されたCa2+を没収し得なかった。Ru360の存在下で細胞は、CaユニポータによるCa2+の取り込みを妨げた。これは、細胞質ゾル中のカルシウム指標と会合したCa2+の増大したレベルを反映する。ICMAの非存在下でアッセイされた細胞は、各Ca2+パルス後に、Ca2+指標と会合したCa2+の低下を示し、そしてミトコンドリアへのCa2+の取り込みを反映する。
(B.固着細胞を用いる方法)
Calcium−Green−5Nを用いるFLIPRTMによる、Ca2+反応曲線およびCa2+パルスの時間経過の最適化を、固着細胞株において実行した。用いられる細胞株は、MixConであった(実施例1を参照のこと)。MM−TにCaCl2を添加し、10倍最終濃度の0、40、80、100および200μMとした。アッセイの直前に、ダルベッコ改変イーグル培地および10%FBS増殖培地中のトリプシン処理したMixCon細胞の100μl(2×106細胞/ml)を、96ウェルCostar3603プレートのウェル中に移した。本質的に製造業者(Becton Dickinson)の指示に従ってウェルをCell−TAKで被覆した。細胞をプレート上に遠心分離し、各ウェル中に細胞の層を残したまま、ウェルから増殖培地を吸引した。各ウェルへの80μlのMM−TDの添加により細胞を透過化した。MM−TDにおいてジギトニンが細胞を透過化し、そしてMM−TDにおいてタプシガルジンがERによるCa2+の取り込みを阻害する。
プレートをFLIPRTM中に入れ、そして、漸増容積の20、25、および30μlの0、40、80、100および200μMのカルシウムのMM−T溶液中のCa2+の3用量の異なる5×ストック溶液を、約2分間隔でこのウェルに分注し、それによりCa2+の濃度を0、4、8、10または20μMの一定レベルのままとした。適切な波長でモニターした蛍光放射を、モニターし、そして細胞質ゾルのCa2+を、Ca2+指標とのCa2+の会合によるアッセイを通じて決定した。固着細胞株を用いた結果を図6に示す。
酸化的リン酸化反応のミトコンドリア抑制剤であるオリゴマイシンおよびロテノンを用いて、固着細胞株MixConにおける細胞質ゾルのCa2+レベルによる低下したミトコンドリア膜電位の効果を観察した。ダルベッコ改変イーグル培地および10%FBS増殖培地中の固着MixCon細胞を、アッセイの48時間前に、1ウェルあたり100μl中に約6×104細胞の濃度で96ウェルマイクロタイタープレートのウェル中に分注した。使用の直前に増殖培地をウェルから吸引した。90μlのMM−TDをオリゴマイシン(5μg/ml)もしくはロテノン(2μM)とともに、またはMM−TDをいずれの抑制剤もともなわずに細胞に添加した。このプレートをFLIPRTMシステム中に入れ、そして、カルシウムの3用量の10×(100μM)ストック溶液を、約2分間隔で漸増容積(それぞれ10μl、11.1μl、および12.3μl)で異なるウェルに分注し、アッセイの経過を通じて一定濃度の10μMのCa2+を得た。531nm波長での放射を、ミトコンドリア外Ca2+−Green−5N蛍光の測定としてFLIPRTMによりモニタリングした。ミトコンドリア外カルシウムに対応するシグナルは、各パルスの後で、そして2つの抑制剤の存在下で高いままであるサンプル中で増大した。あるいは、Ca2+は、抑制剤に曝露されなかった細胞のミトコンドリア中で没収される(図7)。
別のアッセイを実行して、MixCon細胞において、スクシナートの存在下または非存在下で、呼吸抑制剤であるオリゴマイシンおよびロテノンによる影響、ならびにミトコンドリアからのCa2+の引き続く放出を試験した。2つの異なるマスター混合物(MMおよびMM−GMS)を、以前に記載のように調製したMMを用いて調製した。塩基性KClベースの呼吸培地(BReM、表3)に対して、各5mMの最終濃度に、グルタメート、マレートおよびスクシナートを添加、MgCl2を最終濃度1mMに添加、EGTAを最終濃度10μMに添加、そしてCalcium−Green−5Nを最終濃度0.1μMに添加することにより、MM−GMSを調製した。タプシガルジンを、MMおよびMM−GMSに添加して、最終濃度1μMとし、MM−TおよびMM−GMS−Tを生成した(ここで、「T」は、タプシガルジンを示し、そして「GMS」は、グルタメート、マレートおよびスクシナートを示す)。細胞透過性剤であるヂギトニンをMM−TおよびMM−GMS−Tに添加して、最終濃度0.03%とし、MM−TDおよびMM−GMS−TDと名付けられる溶液を生成した。ある場合には示されるように、ミトコンドリア抑制剤であるオリゴマイシンおよびロテノン(Calbiochem)を、それぞれ、MM−TDおよびMM−GMS−TDの溶液に添加し、それぞれ、最終濃度5μg/mlおよび2μMとした。
CaCl2をMM−TおよびMM−GMS−Tに添加し、50μMのCa2+の濃度にし、それぞれ、MM−TおよびMM−GMS−T中の5倍Ca2+溶液を生成した。呼吸抑制剤を含む5倍Ca2+ストック溶液のバージョン(オリゴマイシン、最終濃度50μg/ml;ロテノン、20μM)をまた調製した。
ダルベッコ改変イーグル培地および10%FBS増殖培地中のMixCon細胞を、アッセイの48時間前に、1ウェルあたり100μl中に約6×104細胞の濃度で96ウェルCostar3603マイクロタイタープレートのウェル中に分注した。使用の直前に、増殖培地をウェルから吸引した。80μlのMM−TD、MM−GMS−TD、MM−TD−O、MM−TD−RおよびMM−GMS−TD−OR(ここで、「O」はオリゴマイシンを、「R」はロテノンを意味する)を、細胞を含有するウェル中に分注した。マイクロタイタープレートをFLIPRTM中に入れ、37℃に予熱し、そしてCa2+の5倍ストック溶液(50μM)の20μlの最初の注射(オリゴマイシン、ロテノンとともに、または添加なしに)を適切なウェル中に分注し、それにより、アッセイ中のCa2+の濃度は10μMであり、そして抑制剤を有するウェルは一定アッセイ濃度のままである。
約5分後、5倍溶液の25μlの第2のパルスを供給した。放射波長をモニターし、そしてFLIPRシステムにおけるアッセイを通じて細胞内Ca2+を決定した。スクシナートの非存在下でオリゴマイシンおよびロテノンに供された固着細胞は、呼吸の抑制(従ってユニポータ活性の抑制)を示す、第2のCa2+パルス後、Ca2+−5N蛍光の上昇したレベルを示した。あるいは、スクシナートの存在下でオリゴマイシンおよびロテノンに供された固着細胞は、第2のCa2+パルス後、Ca2+−5N蛍光の減少を示し、これは、スクシナートがミトコンドリアにエネルギー与えること、およびユニポータ活性のための駆動力を提供することにより呼吸抑制剤を妨害することを示す。
(C.懸濁した細胞を使用する方法)
一連の機能的アッセイを、非接着細胞株で行い、Calcium−Green−5Nおよびジギトニン透過化処理細胞を使用するFLIPRにおけるミトコンドリアCa−UPアッセイを至適化した。ミトコンドリアの酸化的呼吸アンカップラーの添加を伴っておよび伴わずに、Ca2+パルスの用量応答を、HepG2由来の細胞(ヒト肝細胞癌腫由来の細胞株)を利用して行った。タプシカルジン(thapsigarin)を有するMM(MM−T)およびジギトニンを有するMM(MM−TD)を、以前に記載のように調製する。10倍(10×)のCa2+培地を、CaCl2(160マイクロモーラー)をMM−Tに添加することによって調製する。L6細胞を、細胞透過化処理呼吸培地MM−TDに、1×107細胞/1mlの濃度で懸濁した。100マイクロリットルの懸濁物を、96ウェルCoStar3603マイクロタイタープレートの各ウェルに添加した。MM−TD中のジギトニン(「D」)は、細胞の透過性を上げ、そしてMM−TD中のタプシガルジンは(「T」)は、小包体(ER)によるCa2+の取り込みを阻害する。プレートをFLIPRTMに置き、37℃に加熱し;次いで11.1マイクロリットルのストックカルシウム溶液(MM−TD中160マイクロモーラーCaCl2)を、L6細胞を含む96の異なるウェルに分配し、16マイクロモーラーのCa2+のアッセイ濃度を得た。約3分後、第2用量(12.5マイクロリットル)のMM−TD、160マイクロモーラーのCaCl2溶液をウェルに分配し、それにより、このアッセイを通して、16マイクロモーラーのCa2+濃度に維持した。[Ca2+:Calcium−Green−5N]複合体から生じる発光を、適切な波長でモニターし、このアッセイを通して、細胞内Ca2+レベルにおける変化を追跡した。結果を、図9に示す。
カルシウムユニポータ(CaUP)の機能的アッセイを、上記と同様に、非接着L6細胞において、呼吸抑制剤であるオリゴマイシンおよびロテノンを用いて行い、このハイスループットFLIPRを用いて膜電位の除去の効果を観察した。オリゴマイシンおよびロテノンを、MM、160μM CaCl2(以前の実施例を参照のこと)に添加し、それぞれ50マイクログラム/ミリリットルおよび20マイクロモーラーの濃度にした。細胞を、上記のように、96ウェルCoStar 3603マイクロタイタープレートのウェルにおいて調製し、そして透過性を上げた。コントロールを、100マイクロリットルの透過化処理液の細胞を含まないウェルへの添加によって調製した。プレートをFLIPRに置き、そして11.1マイクロリットルのMM、抑制因子を有する160μM CaCl2を、L6細胞とともにウェルに分配し、16マイクロモーラーのCa2+、5マイクログラム/ミリリットルのオリゴマイシン、および2マイクロモーラーのロテノンのアッセイ濃度を得た。MM(抑制因子を含まない160μM CaCl2)を、細胞を含まず、かつ16マイクロモーラーのCa2+アッセイ濃度を有するウェルに分配した。約3分後、第2用量を、ウェルに分配した。発光波長をモニターし、そして細胞内Ca2+レベルを、アッセイを通して観察した。呼吸抑制剤の存在下でCa2+の添加に供された細胞のプロフィールは、Ca2+を有し、かつ細胞を有さないウェルのプロフィールを反映し、Ca2+がミトコンドリアにおいて没収されないことを例示する。Ca2+を含まない培地を添加した場合、蛍光は、わずかに最小に変化する(列3および4)(図9)。
(D.Ca2+ユニポータ活性のモジュレーターについてのスクリーニング)
ユニポータアッセイを行い、FCCP(カルボニルシアニドp−(トリフルオロメトキシ)フェニル−ヒドラゾン;Sigma)(ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化の高度に効果的なアンカップラー)によって生成される抑制効果を観察した。図11および12は、用量応答実験を示し、ここで、FCCPをアンカップラーとして使用する。このような実験は、本発明のアッセイが、ミトコンドリアCa2+放出剤としてのアンカップラーおよびユニポータ活性の抑制因子を検出する能力を実証する。薬物スクリーニングの目的で、このアッセイを、ユニポータ活性を抑制する薬剤を同定するが呼吸アンカップラーもまた同定するように設計する。しかし、いくつかの実施形態において、ユニポータ活性を特異的に抑制するが、ミトコンドリアの効果に対してはほとんどまたは全く影響しない分子をスクリーニングし得る系を確立することが好ましくあり得る。
基本的な呼吸培地を、表3に記載の通りに調製し、そして0.5モーラーのグルタメートおよびマレート(Sigma,St.Louis,MO;各々をKOHで7.0のpHにした)および1モーラーのMgCl2(Sigma)のストック溶液として4℃にて保存した。アッセイの日に、マスターミックス溶液(MM)を、ストック溶液からのグルタメートおよびマレートを、5ミリモーラーの各々、1ミリモーラーのMgCl2、および0.5マイクロモーラーのCalcium−Green−5N(Molecular Probes,Eugene,OR)の最終濃度まで添加することにより、調製した。MM中の六カリウム塩Calcium−Green−5N(Molecular Probes,Eugene,OR)は、Ca2+に対する低い結合親和性を有する蛍光色素である。細胞膜透過化処理剤ジギトニン(Sigma,St.Louis,MO)を、MMに添加し、0.007%の最終濃度にし、MM−Dと称される溶液を得た。この混合物に、CaCl2を添加して、6マイクロモーラーのCa2+の最終濃度にし、MM−Dと称される溶液(6μM Ca)を得た。10×Ca2+ストック溶液を、CaCl2を添加してMM(ジギトニンなし)中200マイクロモーラーの最終濃度にすることにより調製し、そしてFCCPの10×溶液もまた、MM中で調製して、0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、2.0、5.0および10.0マイクロモーラーの濃度を得た。
HepG2細胞(ヒト肝細胞癌腫、ATCC HB−8065)を、増殖培地(非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよびEarle平衡化塩溶液(BSS)90%;FBS 10%を含むEagle最小必須培地(MEM))中ほぼコンフルエントなフラスコからトリプシン処理した。細胞を遠心分離し、増殖培地を吸引し、そして透過化溶液MM−D(6μM CaCl2)に再懸濁した。細胞の濃度を、溶液中1×107細胞/ミリリットルに調整した。百(100)マイクロリットルの細胞懸濁物(1×106細胞)を、96ウェルマイクロタイタープレートに移した。このプレートを、製造業者の説明書に本質的に従って37℃に加温したFLIPRTMユニットに置いた。MM−FCCPの10×ストック溶液(異なる濃度のFCCPを有する)の11.1マイクロリットルのアリコートを、細胞を含む8つウェルの各々に分配し、0、0.02、0.04、0.06、0.08、0.1、0.2、0.5および1.0マイクロモーラーのFCCPアッセイ濃度を得た。同様の様式において、10×ストック溶液の11.1マイクロリットルを、細胞を含まない8つのウェルに添加した。FCCPストック溶液を、実験の開始の1分後に自動装置的に(robotically)添加した。
10×ストックCaCl2溶液の12.3マイクロリットルのパルスを、約4分後にマイクロタイタープレートのウェルの各々に導入した。ミトコンドリア外Ca2+のカルシウム指標色素(calcium indicator dye)への結合から生じる発光を、このアッセイを通してモニターした。12の異なるアッセイの各ウェル(各アッセイあたり8ウェル)からの発光を、時間の関数としてグラフ化した(図10)。図10における列4は、細胞およびカルシウムが存在した場合の8つのウェル(A〜H)からの結果を示す。10の列5〜12において、アンカップラーFCCPが、細胞およびカルシウムに加えて存在した。FCCPの濃度は、列5(1.0μM)から列12(0.02μM)へと進行するにつれて減少し、そしてCaUP活性に対するアンカップラーの効果は、対応する様式において減少する。0.02または0.04μMのFCCPが存在する場合に得られた結果(それぞれ、列12および11)は、FCCPが存在しない場合に得られた結果(列4)から区別することが困難であった。
経時変化(ここでは、FCCPを1分で添加し、そしてカルシウムを約4分でアッセイ培地にパルスした)に対するアッセイ(1〜12)に関する蛍光の変化の平均を決定し、そして時間の関数としてグラフ化した(図11)。蛍光は、t=1分でのFCCPの添加の際に、わずかに上昇した;理論によって束縛されることを望まないが、このことはおそらく、6マイクロモーラーのCa2+を含有するMM−Dに最初に再懸濁した場合にミトコンドリアにロードされたCa2+の結果として生じる。
ハイスループットユニポータアッセイプロトコル(懸濁細胞について上記のとおりに行った)を使用して、小包体のCa2+取り込みの抑制因子タプシガルジン(Calbiochem)の存在下または非存在下でのミトコンドリアおよびミトコンドリア外のCa2+濃度に対する異なる化合物の効果を決定した。このアッセイで実験した薬剤は、カルシウムチャンネル抑制因子、酸化促進剤および抗酸化剤、ミトコンドリア抑制因子およびアンカップラー、ならびにCa−UP抑制因子Ru360を含む。アッセイの日に、タプシガルジンとともにジギトニンを含有する呼吸/細胞透過化処理培地(MM−TD)およびタプシガルジンを伴わずにジギトニンを含有する呼吸/細胞透過化処理培地(MM−D)の溶液を、以前に記載のように調製した。塩化カルシウムを各々に添加して、6マイクロモーラーのCa2+の最終濃度にし、MM−TD(6μM Ca)およびMM−D(6μM Ca)を得た。MM溶液を、第2のCa2+パルスのために、200マイクロモーラーの10×Ca2+濃度で調製した。Ca2+−ユニポータ抑制因子Ru360を、MM中100マイクロリットルの10×濃度で調製した。他の薬剤の10倍の(10×)ストック溶液を、化合物をMMに添加して10マイクロモーラーの最終濃度にすることにより、アッセイのために調製した。アッセイした薬剤は、以下を含んだ:Ca2+チャネル抑制因子(ユニポータを含まない)、アミロライド(Reserch Biochemicals International,RBI)、ニカルジピン(RBI)、ニフェジピン(RBI)、ニモジピン(RBI)、トリフルオロペラジン(RBI)、およびベラパミル(RBI);カルシニュリン抑制因子/免疫抑制剤薬物、FK506(タクロリムス)(Calbiochem);ジルチアゼム(RBI)、いくつかのCa2+チャネルのエフェクター;酸化促進剤ジアミド(アゾジカルボン酸ビス[ジメチルアミド])(Sigma,St.Louis,MO)、および抗酸化剤N−アセチルシステイン(Sigma);CCCP(カルボニルシアニドm−クロロフェニル−ヒドラゾン)(Sigma)のような酸化的リン酸化のミトコンドリアアンカップラーおよびロテノン(Sigma)のような呼吸抑制剤;Ca2+イオン透過担体、イオノマイシン(Carbiochem);デントロレン(dentrolene)(RBI)、小包体Ca2+チャネルの抑制因子;K+−チャネル抑制因子、グリブリド(グリベンクラミド)(Calbiochem);ミトコンドリア電子伝達の抑制因子、PK−11195(RBI);末梢ベンゾジアゼピン(benzodiaepine)レセプターアンタゴニスト;ならびに代謝産物、クレアチン(Aldrich,Milwaukee,WI)。コントロールは、MM中に水および10%DMSO(Sigma)を含む。
HepG2細胞株(肝細胞癌腫、ATCC HB−8065)の細胞を、増殖培地(非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよびEarle’s BSS、90%;FBS 10%を含むEagle’s MEM)中ほぼコンフルエントなフラスコからトリプシン処理した。細胞を遠心分離し、増殖培地を吸引し、そしてMM−TD(6μM Ca)またはMM−D(6μM Ca)中1×107細胞/ミリリットルの濃度に細胞を再懸濁した。百(100)マイクロリットルの細胞懸濁物(1×106細胞)を、マイクロタイタープレートのウェルに移した。このプレートを、37℃に加温したFLIPRTMII(96ウェルフォーマットで使用した)に置いた。水またはDMSOを含む10×ストック溶液の11.1マイクロリットルのアリコート(コントロール)、Ru360(Ca−UP抑制因子)、または試験化合物を、DMSOのアッセイ濃度が0.1%であり、Ru360が10マイクロモーラーであり、そして試験化合物の各々が1マイクロモーラーの濃度であるように指定したウェルに分配した。さらなる3分間の後、10×CaCl2の12.3マイクロリットル(200マイクロモーラーのCa2+)の第2の添加を、マイクロタイタープレートのウェルに分配し、20マイクロモーラーのCa2+のアッセイ濃度を得た。カルシウム指標色素に結合したミトコンドリア外Ca2+を、各アッセイを通しておよび各アッセイのプロフィールをモニターした;結果を12に示す。ウェルにおける全てのタプシガルジンマイナス(thaps−)アッセイは欄1〜6に対応し、そしてウェルにおけるタプシガルジンプラス(thaps+)アッセイは、欄7〜12に対応する。
全てのアッセイのプロフィールは、図13のマイクロタイタープレート中のそれらの位置(欄 対 列)によって参照される。試験化合物の添加の際に、ウェルのほとんどは、その後の3分間にわたって蛍光シグナルにおいてはわずかまたはほとんど変化を示さなかった。このことは、ミトコンドリアの6マイクロモーラーのCa2+(これは、透過化の際に蓄積された)を保持する能力に対してほとんどまたは全く効果を示さなかった。このことの例外は、アンカップラーCCCP(A4、F2、A10、F8)およびイオノマイシン(Ca2+イオン透過担体D6、G4、D12およびG10)の効果である。アトラクチロシド(B6、C4、B12、C10)(内部ミトコンドリア膜における大きな伝導性細孔の開口部を通じてCa2+の放出を誘導する透過性遷移の誘導因子)に応答するCa2+放出のわずかな指標もまた存在する。ユニポータ活性に対して影響を及ぼさないコントロールアッセイは、水(A1、G6、A7、G12)およびDMSO(H1、H4、H7、H10)である。Ca2+「スパイク(spike)」は、Ca2+のミトコンドリアへの取り込みを反映し、そしてCa2+−UP活性を示す。類似のプロフィールを、以下の非ユニポータ抑制因子について観察する:アミロリド(A2、D1、A7、D7);ニカルジピン(C2、G5、C8、G11);ニフェジピン(nifidipine)(C3、E4、C9、E10);ニモジピン(C5、F1、C11、F7);トリフルオロぺラジン(D2、H6、D8、H12);ベラパミル(D4、G1、D10、G7);およびジルチアゼム(B3、H5、B9、H11)。これらは、1マイクロモーラーではユニポータ抑制活性を保有しないことを反映する。ユニポータ非抑制性プロフィールもまた、以下について観察する:FK506(B4、E6、B10、E12);ジアミド(B1、D5、B7、D11);N−アセチルシステイン(C1、E2、C7、E8);ダントロレン(A6、B2、A12、B8);グリブリド(グリベンクラミド)(B5、F3、B11、F9);PK−11195(E1、H2、E7、H8);およびクレアチン(F4、H3、F10、H9)。あるいは、Ca−UPインヒビターRu360は、Ca2+の添加の際のユニポータによりCa2+の取り込みを示さず、そしてミトコンドリア外培地中のCa2+−カルシウム指標のプラトーにおいて反映される(E5、F6、E11、F12)。類似のプロフィールを、呼吸抑制剤ロテノン(C6、E3、C12、E9)について観察し、これはおそらく、Ca2+の添加の際に、ETC複合体Iが無能になり、膜電位が浪費され、そしてCa2+がもはやタンパク質ミトコンドリアによって没収され得ないことを示す。アンカップラーCCCP(A4、F2、A10、F8;ミトコンドリアからCa2+を放出する)およびCa2+イオン透過担体(D6、G4、D12、G10;細胞貯蔵からCa2+を放出する)は、ミトコンドリアによるCa2+の取り込みおよび保持を防止する薬剤のプロフィールを反映する。
(実施例5)
(ミトコンドリア透過性移行(MPT)の調節の検出)
(A.一般方法)
アッセイを、MPTエフェクターであるジアミド(チオール酸化剤および酸化促進剤)による、MPTにおける移行誘導効果を観察するために行った。このアッセイを、Ca2+およびCa−Green−5Nの存在下において、混合されたサイブリドであるMixConのジギトニン透過化処理された細胞株において行い、そしてLS50B Perkin Elmer Spectrofluorimeterにおいてモニターしたが、FLIPR系に適合し得る。最初に、エタクリン酸を、Dulbecco’s改変Eagle’s培地および10% FBS中のMixCon細胞に、終濃度100マイクロモーラーまで添加し、そして5分間あらかじめインキュベートし、細胞が、細胞を酸化促進剤に感受性にする酸化ストレスを扱う能力を取り除いた。次いで、この細胞を遠心分離し、増殖培地を吸引し、そして細胞を、1ミリリットル当たり1.1×107個の細胞で、ジギトニン(MM−D)を含む2ミリリットルの呼吸培地(respiratory media)において再懸濁し、ここで、ジギトニン(dig)は、細胞を透過化処理する。次いで、この懸濁液を、蛍光分光分析キュベットに移した。このキュベットを、蛍光計に置き、そして0.3マイクロリットルの254ミリモーラー CaCl2ストックを、このキュベットに添加した(最終CaCl2濃度は、40マイクロモーラー)。約3分後、ジアミドを、終濃度500マイクロモーラーまでこのキュベットに添加した。約6分以内に、ミトコンドリアが、おそらくMPTに対する酸化促進剤の効果を介して、封鎖されたCa2+を放出した。0.1マイクロモーラーのアッセイ濃度での脱共役剤であるFCCPの添加は、ミトコンドリアからのCa2+のさらなる放出を特徴付けない。アッセイにおける40マイクロモーラーまでのCaCl2の添加は、蛍光の増加を生じ、従って、Ca2+感受性色素は、アッセイ条件下において、Ca2+で飽和されなかったことを示した(図13)。
MPTの調節をさらに細かく調べるために、細胞を透過化処理した後、10マイクロモーラーの透過性移行ブロッカーであるシクロスポリンA(CsA)を添加した他は、同じ実験を上記の通りにMixCon細胞において行った。ジアミドの添加に際して、蛍光のわずかな増加のみが観察された。おそらく、CsAが、ミトコンドリア外培地(extramitochondria medium)におけるCa2+レベルの減少の維持によって反映されるように、酸化促進剤がMPTを誘導することを防止した。脱共役剤であるFCCPの添加に際してのみ、Ca2+指示薬に関連するCa2+レベルの上昇によって反映されるように、ミトコンドリアからCa2+が放出された(図13)。
MPTエフェクターであるジアミド(チオール酸化剤および酸化促進剤)によるMPTの移行誘導効果は、第2の細胞株である293Tを用いて行った。293T細胞を、2ミリリットルの増殖培地(DMEN)および10% FBS中で、100マイクロモーラーのエタクリン酸(1ml当たり1×107個の細胞)を用いて懸濁し、そして14分間あらかじめインキュベートし、細胞が酸化ストレスを扱う能力を取り除き、この細胞を酸化促進剤に感受性にした。この細胞を遠心分離し、培地を吸引し、ジギトニン(MM−D)を含む2ミリリットルの呼吸培地において再懸濁し、そしてキュベットに移した。MM−TD中のジギトニン(dig)は、細胞を透過させる。このキュベットを、LS50B Perkin Elmer Spectrofluorimeterに置き、そしてH2O中の40マイクロモーラーのCaCl2を、この懸濁液に添加した。約3分後、500マイクロモーラーのジアミドを、このキュベットに分配した。ミトコンドリアは、ただちに培地にゆっくりとCa2+を放出し始め、そしてこの速度は、実質的に、約7.5分後に増加した。これは、MPTに対する酸化促進剤の効果を反映した。0.1マイクロモーラーのアッセイ濃度での脱共役剤であるFCCPの添加は、蛍光レベルの増加を生じず、そしてミトコンドリアからさらなるCa2+が放出されないという証拠を与えた。従って、すべてのCa2+が、ジアミドの効果によって細胞質ゾルに遊離した。
(B.接着性細胞または非接着性細胞を用いたMPT活性の調節のためのスクリーニング(キュベットまたはFLIPR))
FLIPRTM384を用いたハイスループットアッセイを使用して、透過化処理された細胞を、ミトコンドリア透過性移行誘導物質であるアトラクチロシド(atractyloside)(Sigma)、透過性移行ブロッカーであるボンクレキン酸(Calbiochem)およびシクロスポリンA(CsA)、ならびに酸化促進剤であるジアミドに供した場合の、MPTの調節を観察した。懸濁液中のHepG2細胞(肝細胞癌、ATCC HB−8065)を使用して、小胞体のCa2+取り込みインヒビターであるタプシガルジン(thapsigargin)(Calbiochem,San Diego,CA)の存在下または非存在下におけるミトコンドリア外Ca2+濃度をモニターすることによって、ミトコンドリアCa2+封鎖に対するこれらの化合物の効果を決定した。アッセイの日に、ジギトニンを含む呼吸培地の溶液(タプシガリン(thapsigarin)(MM−TD)を含む、およびタプシガリン(thapsigarin)(MM−D)を含まない)を、以前に記載される通りに調製した。塩化カルシウムを、Ca2+終濃度6マイクロモーラーまで、各々に添加し、MM−TD、6μM CaおよびMM−D、6μM Caを得た。10倍(10×)のストック溶液を、MM中で終濃度10マイクロモーラーまでの各々の化合物の添加によるアッセイのために調製した。10倍(10×)のCaCl2溶液を、第2の添加のために、MMまたはMM−T中で200マイクロモーラーの濃度に調製した。
HepG2細胞を、増殖培地(非必須アミノ酸を含むEagle’s MEM、ピルビン酸ナトリウムおよびEarle’s BSS、90%;FBS 10%)における、ほぼコンフルエントのフラスコからトリプシン処理した。細胞を遠心分離し、培地を吸引し、そしてこの細胞を、MM−TD、6μM CaおよびMM−D、6μM Caの1ミリリットル当たり1×107個の細胞に再懸濁した。ここで、Ca2+および指示色素が細胞に入り、そしてCa2+が、ミトコンドリアにおいて封鎖されるようになる。100マイクロリットルの細胞懸濁液を、マイクロタイタープレートの各々のウエルに送達した。このプレートを、37℃に暖められたFLIPR384中に置いた。試験化合物を含む11.1マイクロリットル容量の10× ストック溶液を、指定されたウエルに分配し、その結果、このアッセイ濃度は1マイクロモーラーである。3分間隔後、20マイクロモーラーのCa2+パルスを、12.3マイクロリットルの10× CaCl2溶液(200マイクロモーラーのCa2+を含む)を添加することによって送達した。カルシウム指示色素に結合した細胞小器官外のCa2+を完全にモニターし、そして各々のアッセイ(列1〜6に対応するウエルでのすべてのタプシガルジンマイナス(thaps−)アッセイおよび列7〜12に対応するウエルでのタプシガルジンプラス(thaps+)アッセイ)のプロファイルを図13に示す。
すべてのアッセイのプロファイルは、マイクロタイタープレートにおけるその位置によって、図13の列対行といわれる。透過性移行のインヒビターであるボンクレキン酸およびCsAを含む化合物の大半のアッセイの活性プロファイルは、Ca2+パルスの添加に際して、細胞質ゾルのCa2+における突然の増加が観察され、Ca2+の正常なミトコンドリア封鎖を示す「スパイク」の帰着を減少することを示す。透過性誘導物質であるアトラクチロシド(B6、C4、B12およびC10)のアッセイプロファイルは、細胞質ゾルへのCa2+の緩徐な放出(おそらくMPT孔を通して)で、ミトコンドリアへのCa2+の最初の取り込みを示す。酸化促進剤であるジアミド、B1、D5、B7および11は、Ca2+パルス後のミトコンドリアによるCa2+の封鎖を反映する。この最後の結果は、ジアミドが、ミトコンドリアからのCa2+の放出を引き起こす場合の、キュベット中の類似のアッセイの結果(上記参照のこと)と異なる。この相違は、キュベット中のジアミドのアッセイ濃度が0.5ミリモーラーであり、そしてFLIPRアッセイにおいて、1マイクロモーラーのジアミドの使用が、ミトコンドリアにおけるCa2+封鎖に影響を及ぼすには低すぎる場合の、各々の実験のジアミドの濃度に起因する。
仮定的に、ミトコンドリアの膜の透過性移行のインヒビターについてスクリーニングするために、試験化合物の添加後に細胞へ添加されたCa2+の量を、自発的なCa2+放出を誘導するレベルまで増加し得る。任意の試験化合物の非存在下において、移行を示す追跡は、増加として現れ、これに続いて、ミトコンドリアがミトコンドリア外Ca2+濃度を下げてベースラインまで戻すことが不可能となる。例えば、Ca2+の添加は、約400マイクロモーラーまで増大され得、この増大は、ミトコンドリアのCa2+取り込みを生じ、その後、この非特異的孔の開口を刺激し、Ca2+をミトコンドリアから流出させた。透過性移行インヒビター(例えば、ボンクレキン酸(1マイクロモーラーで)またはシクロスポリンA(1マイクロモーラーで)の添加は、移行を阻害し、そしてミトコンドリアのCa2+蓄積を継続させ、蛍光レベルをベースラインまで戻した。
(実施例6)
(ミトコンドリア外のCa2+の調節の検出)
(一般方法(キュベットまたはFLIPR))
この蛍光に基づくアッセイは、ミトコンドリアの緩衝液を変更させるか、または点(ユニポータの活性化およびCa2+流出活性後のミトコンドリア外のCa2+濃度)を設定する化合物のスクリーニングを可能にするように改変され得た。ミトコンドリアの流出は、通常、ミトコンドリアの型に依存して、Na+/Ca2+交換体またはCa2+/H+アンチポータ(antiporter)のいずれかによって媒介される。このアッセイを実行するために、すべての同じ培地および細胞ならびに/またはミトコンドリア調製物が、Ca2+が、透過化処理培地に添加されず、そして透過化処理培地が、添加されたCa2+を有さない以外は、以前に記載された通りに維持され得た。次いで、この細胞を、マイクロタイターウエルに分配し得、そして最初の添加は、Ca2+の添加(約4〜15マイクロモーラーであるが、実験的に、透過性移行を誘導する濃度より十分低いことが決定された)であり得、その後、30マイクロモーラーのNaClとともに、0.1〜5μMのルテニウムRedを、培地に添加した(必要に応じて、Na+/Ca2+交換体の速度を増強するために)。ミトコンドリアが、Na+/Ca2+交換活性を示す細胞へのNa+の添加は、上記の最初のベースラインのレベルへの蛍光の回復を生じる。試験化合物を約3分後に添加し、そして追跡を、試験化合物の添加の前に確立された平衡と比較して、蛍光における増加または減少のいずれかについて評価した。安定状態のレベルにおける減少は、流出インヒビターを示した。安定状態のレベルにおける増加は、流出アクセレレーターを示した。最初の添加と同じ量のCa2+の第2のパルスを添加し得た。流入を促進するか、または流出を阻害する化合物が、よりはっきりとしたCa2+ピーク、およびCa2+の以前のレベルへのより迅速な回復を生じた。Ca2+流出のアクセレレーターは、スパイクを広げ、そしてベースラインまでの回復を遅らせた。
前記より、本発明の特定の実施形態が、本明細書中で例示の目的のために記載されるが、種々の改変が、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなくなされ得ることが理解される。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲を除いて、限定されない。
図1は、透過化処理された細胞へのカルシウムイオン(Ca2+、図中「黒丸」で表される)の進入および分布を示す。他の記号および略語;点線、透過化処理された細胞膜;卵形状、ミトコンドリア;実線の境界を有する長方形、ミトコンドリア外(EM)カルシウムリザーバ;CaUP、ミトコンドリアカルシウムユニポータ。 図2は、透過化処理された細胞への、カルシウム感受性様式の検出可能なシグナルを提供し得る試薬(図中「白丸」で表される)の進入を示す。このカルシウム感受性試薬の分子がカルシウムイオンと結合する場合、検出可能なシグナル「アスタリスク」が放出される。他の記号および略語は、図1と同じである。培地中およびサイトゾル空間中のカルシウムイオンは、この実施形態のアッセイで検出されるが、カルシウム感受性の検出可能な試薬は、ミトコンドリアおよび他の(ミトコンドリア外)カルシウムリザーバに進入し得ず、そして従って、ミトコンドリアまたはミトコンドリア外カルシウムリザーバに隔離されたカルシウムイオンは、検出されない。 図3は、ミトコンドリア外(EM)カルシウムリザーバ放出試薬が存在する、本発明のアッセイの実施形態を示す。記号は、図1および図2と同じである。この実施形態のアッセイにおいて、EMカルシウムリザーバ中に隔離されたカルシウムイオンは、そこから放出され、そして/またはこのようなリザーバへの進入を妨げられる。結果として、ミトコンドリアは、カルシウムイオンの隔離の唯一のまたは主要な部位であり、検出可能なカルシウムイオンレベルの変化は、Ca2+のミトコンドリアへの流入(またはミトコンドリアからの流出)に単独または少なくとも主に対応する。この図において、カルシウムイオンは、カルシウムユニポータ(CaUP)の作用に起因してミトコンドリアに進入することが示される。 図4は、本発明のアッセイの理論化された結果を反映する模式図である。最初のCa2+パルスを、パネルAに示す。ここで、ミトコンドリア外Ca2+に対応するシグナルは、カルシウムが添加された後に、カルシウムユニポータ(CaUP)がミトコンドリア中にCa2+イオンを隔離するよう作用するので、減少する。パネルBにおいて、透過化処理された細胞に添加された試験化合物は、呼吸脱共役剤または呼吸阻害剤であり、これは、CaUPが反対に作用するのを生じる;すなわち、これらの条件下で、CaUPは、ミトコンドリアへのCa2+の取り込みに代わり、Ca2+のミトコンドリアからの放出を刺激する。このミトコンドリアCa2+の放出は、ミトコンドリア外Ca2+に対応するシグナルが、試験化合物が添加された直後または後で増加するのを生じる(破線は、試験化合物の非存在下での結果を示す)。パネルCにおいて、試験化合物は、呼吸またはカルシウムユニポータに対して効果を有さず、これは、第2パルスのCa2+が、最初のCa2+パルスにおける速度論プロフィールと同じプロフィールでミトコンドリアによって取り込まれるという事実によって示され;同じ結果が、Ca2+の第2パルス前に化合物が添加されない場合に生じる。パネルDにおいて、示されるように、試験化合物は、カルシウムユニポータの抑制因子または刺激因子のいずれか一方であり、そして破線は、試験化合物の非存在下で予測される結果を示す。 図5は、本発明のアッセイの1つで得られた結果を示す。ここで、MixCon細胞は、漸増濃度(0〜16μM)のカルシウムイオンでチャレンジした。 図6は、本発明のアッセイの1つで得られた結果を示す。ここで、MixCon細胞は、漸増濃度(0〜20μM)のカルシウムイオンでチャレンジした。 図7は、本発明のアッセイに対する、2つの化合物、ロテノンおよびオリゴマイシン(これらは、ミトコンドリア機能に影響を及ぼすことが公知である)の効果を示す。 図8は、ロテノンおよびオリゴマイシンとの種々の組合せでの、異なる任意の培地成分(リンゴ酸塩、コハク酸塩およびグルタミン酸塩)の効果を示す。 図9は、このアッセイに対する、カルシウムイオン、ロテノンおよびオリゴマイシンの濃度の最適化するための試行の結果を示す。 図10は、本発明のアッセイに対する漸増濃度のFCCPの効果を示す。 図11は、時間の関数としてプロットした図10に示されるデータを示す。 図12は、タプシガルジンを含む(カラム7〜12)およびタプシガルジンを含まない(1〜6)、カルシウムレベルに対する種々の薬剤の影響を示す。 図13は、本発明のアッセイを使用して得られた結果に対する、MPTエフェクター、ジアミドの影響を示す。

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  1. ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法。
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