JP2003519505A - ミトコンドリア内カルシウムを使用するスクリーニングアッセイ - Google Patents

ミトコンドリア内カルシウムを使用するスクリーニングアッセイ

Info

Publication number
JP2003519505A
JP2003519505A JP2001552085A JP2001552085A JP2003519505A JP 2003519505 A JP2003519505 A JP 2003519505A JP 2001552085 A JP2001552085 A JP 2001552085A JP 2001552085 A JP2001552085 A JP 2001552085A JP 2003519505 A JP2003519505 A JP 2003519505A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
calcium
mitochondrial
indicator molecule
agent
level
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Ceased
Application number
JP2001552085A
Other languages
English (en)
Inventor
アン エヌ. マーフィー,
アミィ ケイ. スタウト,
Original Assignee
マイトコー
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by マイトコー filed Critical マイトコー
Priority claimed from PCT/US2001/001500 external-priority patent/WO2001051923A2/en
Publication of JP2003519505A publication Critical patent/JP2003519505A/ja
Ceased legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 本発明は、ミトコンドリアの機能、および特に、細胞内カルシウムのミトコンドリア調節を調節する薬剤をスクリーニングするための方法を提供する。この方法は、ミトコンドリアのカルシウムユニポータに結合する薬剤を検出するために使用され得、そしてまた、ミトコンドリアの呼吸抑制剤またはアンカップラーを検出し得る。本明細書中に提供されるスクリーニングを使用して同定された薬剤は、異常なミトコンドリア機能に関連する種々の疾患の予防および処置における適用を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (技術分野) 本発明は、一般に、ミトコンドリア活性に影響を与える薬剤に関してのスクリ
ーニングのためのアッセイに関する。より特定すると、本発明は、細胞内カルシ
ウムのミトコンドリア調節を変更する薬剤を同定する際に使用するための、スク
リーニング方法に関する。ミトコンドリア外カルシウムの存在、ならびにミトコ
ンドリア内および/またはミトコンドリア外のカルシウムのレベルを増加させる
因子(例えば、カルシウムユニポータ(CaUP))に関するアッセイが、本明
細書中に提供される。
【0002】 (発明の背景) ミトコンドリアは、高等生物の細胞内の主要なエネルギー源である、細胞小器
官である。これらの細胞小器官は、細胞呼吸、酸化的プロセスおよび代謝的プロ
セス(代謝的エネルギー生成、好気的呼吸および細胞内カルシウム調節を含む)
の、広範にわたる直接的および間接的な生化学的調節を提供する。例えば、ミト
コンドリアは、電子伝達連鎖(ETC)活性の部位であり、これは、酸化的リン
酸化を駆動して、アデノシン三リン酸(ATP)の形態で代謝エネルギーを生成
し、そしてまた、細胞内カルシウムホメオスタシスにおけるミトコンドリアの中
心的役割の基礎となる。これらのプロセスは、ミトコンドリア膜の電気化学的電
位の維持を必要とし、そしてこのような膜電位の欠損は、種々の障害をもたらし
得る。
【0003】 増殖する細胞内でのエネルギー生成におけるこれらの役割に加えて、ミトコン
ドリア(または少なくともミトコンドリア成分)は、プログラムされた細胞死(
PCD)(アポトーシスとしても公知である(Newmeyerら、Cell
79:353〜364、1994;Liuら、Cell 86:147〜157
、1996を参照のこと))に参加する。アポトーシスは、神経系の正常な発達
および免疫系の機能のために、明らかに必要とされる。いくつかの疾患状態は、
不十分なアポトーシス(例えば、癌および自己免疫疾患)または過剰なレベルの
アポトーシス(例えば、発作および神経退化)に関連する。アポトーシス、およ
びそれにおけるミトコンドリアの役割の一般的な概説については、Greenお
よびReed、Science 281:1309〜1312、1998;Gr
een、Cell 94:695〜698、1998;ならびにKromer、
Nature Medicine 3:614〜620、1997を参照のこと
【0004】 ミトコンドリアは、この細胞小器官と細胞質ゾルとの間の界面として働く、外
部のミトコンドリア膜、複数の部位で外側の膜との付着を形成するようである、
高度に折り畳まれた内側のミトコンドリア膜、およびこれら2つのミトコンドリ
ア膜の間の膜間腔を含む。内側のミトコンドリア膜のサブコンパートメントは、
通常、ミトコンドリアマトリックスと称される(概説については、例えば、Er
nsterら、J.Cell Biol.91 227s、1981を参照のこ
と)。外側の膜は、約10キロダルトン未満の分子量を有するイオン性および非
イオン性の溶質を自由に透過させ得るが、内側のミトコンドリア膜は、多くの小
分子(特定のカチオンを含む)に対して選択的かつ調節された透過性を示し、大
きな(約10kDより大きい)分子を透過させ得ない。
【0005】 ETC活性を媒介する5つのマルチサブユニットタンパク質複合体のうちの4
つ(複合体I、III、IVおよびV)は、内側ミトコンドリア膜に局在化する
。残りのETC複合体(複合体II)は、マトリックス中に存在する。ETCの
内部で起こることが公知である少なくとも3つの異なる化学反応において、プロ
トンが、ミトコンドリアマトリックスから内側の膜を横切って膜内空間へと移動
する。荷電種のこの不均衡は、「プロトン駆動力」(PMF)と称される約22
0mVの電気化学的膜電位を生じさせる。PMF(しばしばΔpの表記で表され
る)は、以下の式 Δp=ΔΨm−ZΔpH (ここで、Zは−2.303RT/Fを表す)に従って、電気的電位(ΔΨm)
の合計および内側の膜を横切るpH差(ΔpH)に相関する。Zの値は、Δpお
よびΔΨmがmVで表され、そしてΔpHがpH単位で表される場合には、25
℃において−59である(例えば、Ernsterら、J.Cell Biol
.91:227s、1981、およびそこに引用される参考文献を参照のこと)
【0006】 ΔΨmは、ECT複合体Vによりアデノシン二リン酸(ADP)をリン酸化し
てATPを得る(マトリックス内へのプロトンの移送と化学量論的に結びつけら
れるプロセス)ためのエネルギーを提供する。ΔΨmはまた、ミトコンドリア内
への細胞質ゾルのCa2+の流入のための駆動力である。正常な代謝条件下で、内
側の膜は、間膜腔からマトリックス内へのプロトン移動に大部分が不透過性であ
り、ETC複合体Vを、プロトンがマトリックスへと戻るための主要な手段とし
て残す。しかし、内側のミトコンドリア膜の完全性が損なわれる場合(変更され
たミトコンドリア機能に関連する特定の疾患を伴うミトコンドリア透過性遷移(
MPT)の間に生じるような)には、プロトンは、ATPを産生することなく複
合体Vの導管をバイパスし得、これによってATP産生から呼吸(すなわち、E
TC活性)を脱共役する。MPTの間、ΔΨmは崩壊し、そしてミトコンドリア
膜は小さな溶質(例えば、イオン性Ca2+、Na+、K+およびH+)ならびに大
きな溶質(例えば、タンパク質)の両方に対する透過性を選択的に調節するその
能力を失う。ミトコンドリア電位の喪失はまた、変更されたミトコンドリア機能
に関連する疾患(アルツハイマー病のような変性疾患;真性糖尿病;パーキンソ
ン病;ハンティングトン病;失調;レーバー遺伝性視神経ニューロパシー;精神
***病;ミトコンドリア脳障害、乳酸アシドーシス、および発作(MELAS)
;癌;乾癬;過剰増殖性疾患;ミトコンドリア糖尿病および難聴(MIDD)な
らびにミオクローヌス癲癇ラゲットレッドファイバー症候群を含む)の進行にお
いて、重要な事象であるようである。
【0007】 ミトコンドリア内Ca2+の正常な変更は、正常な代謝調節に関連する(Dyk
ens、1998、Mitochondria & Free Radical
s in Neurodegenerative Diseases、Beal
、HowellおよびBodis−Wollner編、Wiley−Liss、
New York、29〜55頁;Radiら、1998、Mitochond
ria & Free Radicals in Neurodegenera
tive Diseases、Beal、HowellおよびBodis−Wo
llner編、Wiley−Liss、New York、57〜89頁;Gu
nterおよびPfeiffer、1991、Am.J.Physiol.27
:C755;Gunterら、Am.J.Physiol.267:313、1
994)。例えば、ミトコンドリア遊離Ca2+の変動するレベルは、酵素のアロ
ステリック調節を介する増加したATP利用に応答する酸化的代謝の調節(Cr
omptonおよびAndreeva、Basic Res.Cardiiol
.88:513〜523、1993により概説される);およびグリセロリン酸
シャトル(GunterおよびGunter、J.Bioenerg.Biom
embr.26:471、1994)の原因となり得る。
【0008】 正常なミトコンドリア機能としては、ミトコンドリアマトリックス内の過剰の
Ca2+のキレート化合物形成による細胞質ゾルの遊離カルシウムレベルの調節が
挙げられる。細胞型に依存して、細胞質ゾルCa2+濃度は、代表的に、50〜1
00nMである。正常に機能する細胞においては、Ca2+レベルが200〜30
0nMに達する場合には、ミトコンドリアは、内側のミトコンドリア膜のCa2+ ユニポータを介する流入と、Na+依存性カルシウムキャリアおよびNa+非依存
性カルシウムキャリアの両方を介するCa2+流出との間の平衡の関数として、C
2+を累積し始める。この迅速なユニポータ機構の低い親和性は、主要なユニポ
ータ機能が、細胞質ゾル遊離カルシウムレベルの病理学的上昇に応答して細胞質
ゾルCa2+を低下させ得ることであることを示唆し、これは、ATPの枯渇およ
び/または形質膜を横切る異常なカルシウム流入から生じ得る(Gunterお
よびGunter、J.Bioenerg.Biomembr.26:471、
1994;Gunterら、Am.J.Physiol.267:313、19
94)。特定の例においては、このような細胞内カルシウムホメオスタシスの摂
動は、そのカルシウム調節機能不全が変更されたミトコンドリア機能(MPTを
含む)の原因であるか結果であるかにかかわらず、変更されたミトコンドリア機
能に関連する疾患の特徴である。
【0009】 細胞内カルシウムのミトコンドリア調節の重要性およびこのミトコンドリア活
性のいくつかの疾患状態に対する関連を考慮して、ミトコンドリアカルシウムホ
メオスタシスを制御するための改善された組成物および方法に対する必要性が、
明らかに存在する。このような疾患の改善された治療を提供するために、ミトコ
ンドリアカルシウム調節を変更する薬剤が有利であり得、そしてこのような薬剤
を特異的に検出するアッセイが必要とされる。本発明はこれらの必要を満たし、
そして他の関連する利点をさらに提供する。
【0010】 (発明の要旨) 本発明は、部分的には、細胞内カルシウムのミトコンドリア調節を変更する薬
剤を同定するための方法に関する。従って、1つの局面において、本発明は、ミ
トコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法を提供し、この方法は、以下の
工程を包含する:(a)ハイスループットスクリーニングアレイ中の複数の反応
容器の各々の中で、(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分
子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、(ii)カルシウムカチオンの供
給源と、ミトコンドリア膜電位の維持が可能である条件下で接触させる工程であ
って、ここで、このカルシウム指標分子が、細胞質ゾル内のカルシウムのレベル
に比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;(b)各反応容器内で、カ
ルシウム指標分子により生成されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;な
らびに(c)候補薬剤の非存在下で1つ以上の時点でカルシウム指標分子により
生成されるシグナルと、候補薬剤の存在下で1つ以上の時点でカルシウム指標分
子により生成されるシグナルとを比較し、そしてそれからミトコンドリア機能を
変更する薬剤を同定する、工程。1つの実施形態においては、接触させる工程は
、少なくとも1回繰り返される。別の実施形態においては、サンプルは、カルシ
ウムカチオンの細胞内分布を変更する少なくとも1つの化合物を含有する。さら
なる実施形態においては、細胞内カルシウムカチオン分布を変更する化合物は、
タプシガルジンまたはRu360である。別の実施形態においては、細胞内カル
シウムカチオン分布を変更する化合物は、カルシウムイオン透過担体、または細
胞内カルシウム分布を変更する膜透過性化合物である。別の実施形態においては
、サンプルは、酸化的リン酸化をATP産生から脱共役する少なくとも1つの化
合物を含有する。別の実施形態においては、候補薬剤は膜透過性であり、そして
別の実施形態においては、カルシウム指標分子は膜透過性である。別の実施形態
においては、カルシウムカチオンの供給源は細胞に対して外因性である。別の実
施形態においては、サンプルは、酸化的リン酸化をATP産生から脱共役する少
なくとも1つの化合物を含有する。別の実施形態においては、細胞は、Bcl−
2ファミリーのメンバーである少なくとも1つのポリペプチドを含む。別の実施
形態においては、細胞は、細胞質ゾルカルシウムを調節するポリペプチドをコー
ドする遺伝子を発現する。別の実施形態においては、遺伝子は、ミトコンドリア
カルシウムユニポータをコードする。別の実施形態においては、遺伝子は、トラ
ンスフェクトされた遺伝子である。別の実施形態においては、遺伝子は、ミトコ
ンドリアカルシウムユニポータをコードする。別の実施形態においては、細胞は
、透過化処理された細胞(permeabilized cell)である。特
定の実施形態においては、細胞は固体基質に接着し、そして特定の他の実施形態
においては、細胞は非接着細胞である。
【0011】 本発明の別の局面は、酸化的リン酸化をATP産生から脱共役する薬剤を同定
する方法を提供することであり、この方法は、以下の工程を包含する:(a)ハ
イスループットスクリーニングアレイ中の複数の反応容器の各々の中で、(i)
細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生
物学的サンプルを、(ii)カルシウムカチオンの供給源と、ミトコンドリア膜
電位の維持が可能である条件下で接触させる工程であって、ここで、このカルシ
ウム指標分子が、細胞質ゾル内のカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグ
ナルを生成し得る、工程;(b)各反応容器内で、カルシウム指標分子により生
成されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;(c)工程(a)および(b
)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに(d)(i)候補薬剤の非存在下で
、少なくとも1回の接触させる工程の前および後に、1つ以上の時点でカルシウ
ム指標分子により生成されるシグナルと、(ii)候補薬剤の存在下で、少なく
とも1回の接触させる工程の前および後に、1つ以上の時点でカルシウム指標分
子により生成されるシグナルとを比較する工程であって、ここで、薬剤の非存在
下での接触工程の前の細胞質ゾル内のカルシウムレベルと比較して、薬剤の存在
下での接触工程の前の時点の細胞質ゾル内のカルシウムの増加したレベルが、酸
化的リン酸化をATP産生から脱共役する薬剤を示す。
【0012】 別の局面において、本発明は、呼吸抑制剤である薬剤を同定する方法を提供し
、この方法は、以下の工程を包含する:(a)ハイスループットスクリーニング
アレイ中の複数の反応容器の各々の中で、(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアお
よびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、(ii)カ
ルシウムカチオンの供給源と、ミトコンドリア膜電位の維持が可能である条件下
で接触させる工程であって、ここで、このカルシウム指標分子が、細胞質ゾル内
のカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程;(b
)各反応容器内で、カルシウム指標分子により生成されたシグナルを、複数の時
点で検出する工程;(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工
程;ならびに(d)(i)候補薬剤の非存在下で、少なくとも1回の接触させる
工程の前および後に、1つ以上の時点でカルシウム指標分子により生成されるシ
グナルと、(ii)候補薬剤の存在下で、少なくとも1回の接触させる工程の前
および後に、1つ以上の時点でカルシウム指標分子により生成されるシグナルと
を比較する工程であって、ここで、薬剤の非存在下での接触工程の前の細胞質ゾ
ル内のカルシウムレベルと比較して、薬剤の存在下での接触工程の前の時点の細
胞質ゾル内のカルシウムの増加したレベルが、呼吸抑制剤である薬剤を示す。
【0013】 別の実施形態において、本発明は、ミトコンドリアカルシウムユニポータを変
更する薬剤を同定する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a
)ハイスループットスクリーニングアレイ中の複数の反応容器の各々の中で、(
i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含
む生物学的サンプルを、(ii)カルシウムカチオンの供給源と、ミトコンドリ
ア膜電位の維持が可能である条件下で接触させる工程であって、ここで、このカ
ルシウム指標分子が、細胞質ゾル内のカルシウムのレベルに比例する検出可能な
シグナルを生成し得る、工程;(b)各反応容器内で、カルシウム指標分子によ
り生成されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;(c)工程(a)および
(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに(d)(i)候補薬剤の非存在
下で、少なくとも1回の接触させる工程の前および後に、1つ以上の時点でカル
シウム指標分子により生成されるシグナルと、(ii)候補薬剤の存在下で、少
なくとも1回の接触させる工程の前および後に、1つ以上の時点でカルシウム指
標分子により生成されるシグナルとを比較する工程であって、ここで、薬剤の非
存在下での接触工程の後の細胞質ゾル内のカルシウムレベルと比較して、薬剤の
存在下での接触工程の後の時点の細胞質ゾル内のカルシウムの増加したレベルが
、その薬剤がミトコンドリアカルシウムユニポータを変更することを示す。
【0014】 別の実施形態においては、ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法
が提供され、この方法は、以下の工程を包含する:(a)(i)細胞質ゾル、ミ
トコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプル
を、(ii)カルシウムカチオンの供給源と、ミトコンドリア膜電位の維持が可
能である条件下で接触させる工程であって、ここで、このカルシウム指標分子が
、細胞質ゾル内のカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得
る、工程;(b)カルシウム指標分子により生成されたシグナルを、複数の時点
で検出する工程;ならびに(c)候補薬剤の非存在下で1つ以上の時点でカルシ
ウム指標分子により生成されるシグナルと、候補薬剤の存在下で1つ以上の時点
でカルシウム指標分子により生成されるシグナルとを比較し、そしてそれからミ
トコンドリア機能を変更する薬剤を同定する、工程。1つの実施形態においては
、接触させる工程は、少なくとも1回繰り返される。別の実施形態においては、
サンプルは、カルシウムカチオンの細胞内分布を変更する少なくとも1つの化合
物を含有する。別の実施形態においては、細胞内カルシウムカチオン分布を変更
する化合物は、タプシガルジンまたはRu360である。別の実施形態において
は、細胞内カルシウムカチオン分布を変更する化合物は、カルシウムイオン透過
担体、および細胞内カルシウム分布を変更する膜透過性化合物からなる群から選
択される。別の実施形態においては、サンプルは、酸化的リン酸化をATP産生
から脱共役する少なくとも1つの化合物を含有する。別の実施形態においては、
候補薬剤は膜透過性である。別の実施形態においては、カルシウム指標分子は膜
透過性である。別の実施形態においては、カルシウムカチオンの供給源は細胞に
対して外因性である。別の実施形態においては、サンプルは、酸化的リン酸化を
ATP産生から脱共役する少なくとも1つの化合物を含有する。別の実施形態に
おいては、細胞は、Bcl−2ファミリーのメンバーである少なくとも1つのポ
リペプチドを含む。別の実施形態においては、細胞は、細胞質ゾルカルシウムを
調節するポリペプチドをコードする遺伝子を発現する。別の実施形態においては
、遺伝子は、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする。別の実施形態
においては、遺伝子は、トランスフェクトされた遺伝子である。別の実施形態に
おいては、遺伝子は、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする。別の
実施形態においては、細胞は、透過化処理された細胞である。別の実施形態にお
いては、細胞は固体基質に接着する。別の実施形態においては、細胞は非接着細
胞である。
【0015】 なお別の実施形態において、本発明は、酸化的リン酸化をATP産生から脱共
役する薬剤を同定する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a
)(i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞
を含む生物学的サンプルを、(ii)カルシウムカチオンの供給源と、ミトコン
ドリア膜電位の維持が可能である条件下で接触させる工程であって、ここで、こ
のカルシウム指標分子が、細胞質ゾル内のカルシウムのレベルに比例する検出可
能なシグナルを生成し得る、工程;(b)カルシウム指標分子により生成された
シグナルを、複数の時点で検出する工程;(c)工程(a)および(b)を少な
くとも1回繰り返す工程;ならびに(d)(i)候補薬剤の非存在下で、少なく
とも1回の接触させる工程の前および後に、1つ以上の時点でカルシウム指標分
子により生成されるシグナルと、(ii)候補薬剤の存在下で、少なくとも1回
の接触させる工程の前および後に、1つ以上の時点でカルシウム指標分子により
生成されるシグナルとを比較する工程であって、ここで、薬剤の非存在下での接
触工程の前の細胞質ゾル内のカルシウムレベルと比較して、薬剤の存在下での接
触工程の前の時点の細胞質ゾル内のカルシウムの増加したレベルが、酸化的リン
酸化をATP産生から脱共役する薬剤を示す。
【0016】 別の実施形態において、本発明は、呼吸抑制剤である薬剤を同定する方法を提
供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)(i)細胞質ゾル、ミトコン
ドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サンプルを、(
ii)カルシウムカチオンの供給源と、ミトコンドリア膜電位の維持が可能であ
る条件下で接触させる工程であって、ここで、このカルシウム指標分子が、細胞
質ゾル内のカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工
程;(b)カルシウム指標分子により生成されたシグナルを、複数の時点で検出
する工程;(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;なら
びに(d)(i)候補薬剤の非存在下で、少なくとも1回の接触させる工程の前
および後に、1つ以上の時点でカルシウム指標分子により生成されるシグナルと
、(ii)候補薬剤の存在下で、少なくとも1回の接触させる工程の前および後
に、1つ以上の時点でカルシウム指標分子により生成されるシグナルとを比較す
る工程であって、ここで、薬剤の非存在下での接触工程の前の細胞質ゾル内のカ
ルシウムレベルと比較して、薬剤の存在下での接触工程の前の時点の細胞質ゾル
内のカルシウムの増加したレベルが、呼吸抑制剤である薬剤を示す。
【0017】 別の実施形態において、本発明は、ミトコンドリアカルシウムユニポータを変
更する薬剤を同定する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a
)(i)サイトゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含む細胞を含
む生物学的サンプルに、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、(
ii)カルシウムカチオンの供給源を接触させる工程であって、ここで、このカ
ルシウム指標分子は、そのサイトゾル中のカルシウムのレベルに比例する検出可
能なシグナルを生成し得る、工程;(b)このカルシウム指標分子によって生成
されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;(c)工程(a)および(b)
を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに(d)(i)候補薬剤の非存在下での
少なくとも1回の接触工程の前後の1以上の時点でのカルシウム指標分子によっ
て生成されたシグナルを、(ii)候補薬剤の存在下での少なくとも1回の接触
工程の前後の1以上の時点でのカルシウム指標分子によって生成されたシグナル
に対して比較する工程であって、ここで、その薬剤の非存在下での接触工程後の
サイトゾル中のカルシウムのレベルと比較した、その薬剤の存在下での接触工程
後の時点でのサイトゾル中のカルシウムのレベルの増加は、その薬剤がミトコン
ドリアカルシウムユニポータを変更することを示す、工程。
【0018】 別の実施形態において、本発明は、ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定
する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)ハイスループッ
トスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々において、(i)ミトコ
ンドリア、サイトゾルおよびカルシウム指標分子を含む細胞を含む生物学的サン
プルに、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、かつ細胞内カルシ
ウムレベルを増加させるのに十分な条件および時間で、(ii)カルシウムイオ
ノフォアを接触させる工程であって、ここで、このカルシウム指標分子は、膜透
過性であり、かつそのサイトゾル中のカルシウムのレベルに比例する検出可能な
シグナルを生成し得る、工程;(b)各々の反応容器において、このカルシウム
指標分子によって生成されたシグナルを複数の時点で検出する工程;ならびに(
c)候補薬剤の非存在下での1以上の時点での、カルシウム指標分子によって生
成されたシグナルを、候補薬剤の存在下での1以上の時点での、カルシウム指標
分子によって生成されたシグナルに対して比較する工程、およびそこからミトコ
ンドリア機能を変更する薬剤を同定する工程。
【0019】 別の実施形態において、カルシウムイオノフォアは、イオノマイシン、A23
187、NMDAまたは細胞脱分極シグナルである。別の実施形態において、接
触工程は、少なくとも1回繰り返される。別の実施形態において、サンプルは、
カルシウムカチオンの細胞内分布を変更する、少なくとも1つの化合物を含む。
別の実施形態において、細胞内カルシウムカチオンの分布を変更する化合物は、
タプシガルジンまたはRu360である。別の実施形態において、細胞内カルシ
ウムカチオン分布を変更する化合物は、細胞内カルシウム分布を変更する、カル
シウムイオノフォアまたは膜透過性化合物である。別の実施形態において、サン
プルは、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する、少なくとも1つの化合物
を含む。別の実施形態において、候補薬剤は、膜透過性である。別の実施形態に
おいて、カルシウムカチオンの供給源は、その細胞に対して外因性である。別の
実施形態において、サンプルは、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する、
少なくとも1つの化合物を含む。別の実施形態において、細胞は、Bcl−2フ
ァミリーのメンバーである、少なくとも1つのポリペプチドを含む。別の実施形
態において、細胞は、サイトゾルカルシウムを調節するポリペプチドをコードす
る遺伝子を発現する。特定のさらなる実施形態において、この遺伝子は、ミトコ
ンドリアカルシウムユニポータをコードし、そして特定の他の実施形態において
、この遺伝子は、トランスフェクトされた遺伝子である。特定のさらなる実施形
態において、この遺伝子は、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする
。別の実施形態において、細胞は、固体基質に接着し、そして特定の他の実施形
態において、細胞は、非接着性の細胞である。
【0020】 別の実施形態において、本発明は、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役す
る薬剤を同定する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)(
i)サイトゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含む細胞を含む生
物学的サンプルに、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、かつ細
胞内カルシウムレベルを増加させるのに十分な条件および時間で、(ii)カル
シウムイオノフォアを接触させる工程であって、ここで、このカルシウム指標分
子は、膜透過性であり、かつそのサイトゾル中のカルシウムレベルに比例する検
出可能なシグナルを生成し得る、工程;(b)このカルシウム指標分子によって
生成されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;(c)工程(a)および(
b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに(d)(i)候補薬剤の非存在下
での少なくとも1回の接触工程の前後の1以上の時点でのカルシウム指標分子に
よって生成されたシグナルを、(ii)候補薬剤の存在下での少なくとも1回の
接触工程の前後の1以上の時点でのカルシウム指標分子によって生成されたシグ
ナルに対して比較する工程であって、ここで、その薬剤の非存在下での接触工程
前のサイトゾル中のカルシウムのレベルと比較した、その薬剤の存在下での接触
工程前の時点でのサイトゾル中のカルシウムレベルの増加は、その薬剤がATP
産生から酸化的リン酸化を脱共役することを示す、工程。
【0021】 別の実施形態において、本発明は、呼吸抑制剤である薬剤を同定する方法を提
供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)(i)サイトゾル、ミトコン
ドリアおよびカルシウム指標分子を含む細胞を含む生物学的サンプルに、ミトコ
ンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、かつ細胞内カルシウムレベルを増
加させるのに十分な条件および時間で、(ii)カルシウムイオノフォアを接触
させる工程であって、ここで、このカルシウム指標分子は、膜透過性であり、か
つそのサイトゾル中のカルシウムレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し
得る、工程;(b)このカルシウム指標分子によって生成されたシグナルを、複
数の時点で検出する工程;(c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り
返す工程;ならびに(d)(i)候補薬剤の非存在下での少なくとも1回の接触
工程の前後の1以上の時点でのカルシウム指標分子によって生成されたシグナル
を、(ii)候補薬剤の存在下での少なくとも1回の接触工程の前後の1以上の
時点でのカルシウム指標分子によって生成されたシグナルに対して比較する工程
であって、ここで、その薬剤の非存在下での接触工程前のサイトゾル中のカルシ
ウムのレベルと比較した、その薬剤の存在下での接触工程前の時点でのサイトゾ
ル中のカルシウムのレベルの増加は、その薬剤が呼吸抑制剤であることを示す、
工程。
【0022】 別の実施形態において、本発明は、ミトコンドリアカルシウムユニポータを変
更する薬剤を同定する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a
)(i)サイトゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含む細胞を含
む生物学的サンプルに、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、か
つ細胞内カルシウムレベルを増加させるのに十分な条件および時間で、(ii)
カルシウムイオノフォアを接触させる工程であって、ここで、このカルシウム指
標分子は、膜透過性であり、かつそのサイトゾル中のカルシウムレベルに比例す
る検出可能なシグナルを生成し得る、工程;(b)このカルシウム指標分子によ
って生成されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;(c)工程(a)およ
び(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに(d)(i)候補薬剤の非存
在下での少なくとも1回の接触工程の前後の1以上の時点でのカルシウム指標分
子によって生成されたシグナルを、(ii)候補薬剤の存在下での少なくとも1
回の接触工程の前後の1以上の時点でのカルシウム指標分子によって生成された
シグナルに対して比較する工程であって、ここで、その薬剤の非存在下での接触
工程後のサイトゾル中のカルシウムのレベルと比較した、その薬剤の存在下での
接触工程後の時点でのサイトゾル中のカルシウムのレベルの増加は、その薬剤が
ミトコンドリアカルシウムユニポータを変更することを示す、工程。
【0023】 本発明の別の局面は、ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法を提
供することであって、この方法は、以下の工程を包含する:(a)(i)サイト
ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を枯渇された、透過化処理され
た細胞を含む生物学的サンプルに、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条
件下で、(ii)カルシウムカチオンの供給源を接触させる工程であって、ここ
で、このカルシウム指標分子は、その細胞中のカルシウムレベルに比例する検出
可能なシグナルを生成し得る、工程;(b)このカルシウム指標分子によって生
成されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;ならびに(c)候補薬剤の非
存在下での1以上の時点でのカルシウム指標分子によって生成されたシグナルを
、候補薬剤の存在下での1以上の時点でのカルシウム指標分子によって生成され
たシグナルに対して比較する工程、およびそこからミトコンドリア機能を変更す
る薬剤を同定する工程。別の関連する実施形態において、このような方法が、ハ
イスループットスクリーニング形式で提供され、ここで、接触工程は、ハイスル
ープットスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々において行われ、
そして検出工程は、各反応容器中で行われる。
【0024】 特定のさらなる実施形態に従って、カルシウム指標分子は、ミトコンドリア中
のカルシウムのレベルまたはミトコンドリア外のカルシウムレベルのいずれか一
方に比例する、検出可能なシグナルを生成し得る。特定の他のさらなる実施形態
において、接触工程は、少なくとも1回繰り返される。特定の他のさらなる実施
形態において、サンプルは、カルシウムカチオンの細胞内分布を変更する、少な
くとも1つの化合物を含む。なおさらなる実施形態において、細胞内カルシウム
カチオンの分布を変更する化合物は、タプシガルジンまたはRu360である。
別の実施形態において、サンプルは、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役す
る、少なくとも1つの化合物を含む。別の実施形態において、カルシウムカチオ
ンの供給源は、その細胞に対して外因性であり、そして別の実施形態において、
サンプルは、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する、少なくとも1つの化
合物を含む。特定の実施形態において、細胞は、Bcl−2ファミリーのメンバ
ーである、少なくとも1つのポリペプチドを含み、そして特定の他の実施形態に
おいて、細胞は、サイトゾルカルシウムを調節するポリペプチドをコードする遺
伝子を発現する。さらなる実施形態において、この遺伝子は、ミトコンドリアカ
ルシウムユニポータをコードし、そして別のさらなる実施形態において、この遺
伝子は、トランスフェクトされた遺伝子である。なおさらなる実施形態において
、この遺伝子は、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする。特定の実
施形態に従って、細胞は、固体基質に接着するが、特定の他の実施形態において
、細胞は、非接着性の細胞である。
【0025】 別の実施形態において、本発明は、ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定
する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)(i)培地中に
1以上の単離されたミトコンドリアおよび1つのカルシウム指標分子を含む生物
学的サンプルに、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下で、(ii)
カルシウムカチオンの供給源を接触させる工程であって、ここで、このカルシウ
ム指標分子は、その生物学的サンプル中のカルシウムのレベルに比例する検出可
能なシグナルを生成し得る、工程;(b)このカルシウム指標分子によって生成
されたシグナルを、複数の時点で検出する工程;ならびに(c)候補薬剤の非存
在下での1以上の時点でのカルシウム指標分子によって生成されたシグナルを、
候補薬剤の存在下での1以上の時点でのカルシウム指標分子によって生成された
シグナルに対して比較する工程、およびそこからミトコンドリア機能を変更する
薬剤を同定する工程。別の関連する実施形態において、このような方法が、ハイ
スループットスクリーニング形式で提供され、ここで、接触工程は、ハイスルー
プットスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々において行われ、そ
して検出工程は、各反応容器中で行われる。
【0026】 特定のさらなる実施形態において、カルシウム指標分子は、ミトコンドリア中
のカルシウムのレベルに比例する、検出可能なシグナルを生成し得、そして特定
の他のさらなる実施形態において、カルシウム指標分子は、ミトコンドリア外カ
ルシウムのレベルに比例する、検出可能なシグナルを生成し得る。特定の他のさ
らなる実施形態において、接触工程は、少なくとも1回繰り返される。別の実施
形態において、サンプルは、サンプル中のカルシウムカチオンの細胞内分布を変
更する、少なくとも1つの化合物を含み、特定のさらなる実施形態において、そ
の化合物は、タプシガルジンまたはRu360である。別の実施形態において、
サンプルは、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する、少なくとも1つの化
合物を含み、そして別の実施形態において、単離されたミトコンドリアは、Bc
l−2ファミリーのメンバーである、少なくとも1つのポリペプチドを含む細胞
に由来する。特定の他の実施形態において、単離されたミトコンドリアは、サイ
トゾルカルシウムを調節するポリペプチドをコードする遺伝子を発現する細胞に
由来し、そして特定のさらなる実施形態において、この遺伝子は、ミトコンドリ
アカルシウムユニポータをコードする。特定の他の実施形態において、この遺伝
子は、トランスフェクトされた遺伝子であり、そして特定のさらなる実施形態に
おいて、この遺伝子は、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコードする。
【0027】 上記の本発明の方法の特定のさらなる実施形態において、生物学的サンプルに
カルシウムカチオンの供給源を接触させる工程の後およびシグナルを比較する工
程の前に、生物学的サンプルに、(i)ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役
する、少なくとも1つの化合物、および(ii)ミトコンドリア機能を変更する
、少なくとも1つの薬剤を接触させる。いくつかの実施形態において、ミトコン
ドリア機能を変更する薬剤は、シクロスポリンAであり、そして特定の他の実施
形態において、この薬剤は、シクロスポリンA、ロテノン、オリゴマイシン、コ
ハク酸塩またはBcl−2である。特定の実施形態において、ATP産生から酸
化的リン酸化を脱共役する化合物は、FCCPまたはCCCPである。
【0028】 本発明のこれらおよび他の局面は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照
して明らかとなる。本明細書中に開示された全ての参考文献は、各々が個々に援
用されるように、その全体が参考として本明細書によって援用される。
【0029】 (発明の詳細な説明) 本発明は、ミトコンドリア機能を変更する、特に、細胞内カルシウムレベルの
ミトコンドリア調節に影響を与える化合物を同定するための方法を提供し、この
方法は、候補薬剤の生理学的効果または薬理学的効果の検出についてのハイスル
ープットスクリーニングアッセイを含む。本発明は、ハイスループット形式への
高感度な細胞ベースの計量技術の予測されない適合性、および候補薬剤(例えば
、薬物およびファルマコフォア(pharmacophore))のパネルをス
クリーニングするためにこれらの技術を改変する能力に、部分的に基づく。さら
に、本発明は、細胞内カルシウムカチオン分布を変更する化合物の使用を通して
、選択的な条件が、ハイスループット薬物スクリーニングのような細胞ベースの
アッセイにおいて、ミトコンドリアによる細胞内カルシウムの調節をモニターす
るために考え出され得るという、驚くべき観察に部分的に基づく。
【0030】 本発明に従って、サイトゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含
む細胞(あるいは、特定の実施形態において、ミトコンドリアを含む透過化処理
された細胞、またはミトコンドリアを含みかつサイトゾルを枯渇された、透過化
処理された細胞、または単離されたミトコンドリアの懸濁物(これらの各場合に
おいて、カルシウム指標分子を含む))は、ミトコンドリア膜電位の維持を可能
にする条件下で、カルシウムカチオン(Ca2+)の供給源を1回以上接触され、
そしてそのカルシウム指標分子によって生成されたシグナル(このシグナルは、
サイトゾル中のカルシウムレベルに比例する)が、複数の時点で検出される。膜
電位を維持し得るミトコンドリアは、サイトゾルの遊離のカルシウムレベルを調
節し得、その結果、本明細書中に記載されるようなサイトゾルカルシウムレベル
のモニタリングは、このミトコンドリア機能および関連するミトコンドリア機能
(ミトコンドリアカルシウムユニポータ活性を含む)を変更する薬剤についての
スクリーニングおよびそのような薬剤の同定を可能にする。候補化合物の存在下
で生成されたシグナルを、その薬剤の非存在下で生成されたシグナルに対して比
較することによって、その薬剤の導入に伴うシグナルの変化(例えば、増加また
は減少)の検出は、その薬剤が通常、ミトコンドリア機能を変更し得るというこ
とを示す。
【0031】 従って、以下にさらにより詳細に記載するように、本発明は、ハイスループッ
トスクリーニングアッセイを含む、ミトコンドリア活性によって調節される細胞
内カルシウムレベルの変化を検出することにより、ミトコンドリア機能を変化さ
せ得る化合物をスクリーニングするための組成物および方法に関する。本発明の
スクリーニングアッセイは、インタクトな細胞を用いて行われるアッセイを含み
、そしてまた、透過化細胞を用いて実施されるアッセイを包含する。本明細書に
提供されるように、特定の実施形態において、本発明は、ミトコンドリア機能を
変化させる因子を同定するための方法を提供し、そして特定の他の実施形態にお
いて、本発明は、呼吸器系のインヒビターである因子を同定するための方法を提
供する。特定の他の実施形態において、本発明は、ATP産生から酸化的リン酸
化を脱共役させる因子を同定するための方法を提供する。特定の他の実施形態に
おいて、本発明は、ミトコンドリアのカルシウムミトコンドリアカルシウムユニ
ポーター(uniporter)を阻害する因子を同定するための方法を提供す
る。さらに、本明細書において開示されるように、本発明の方法は、ミトコンド
リア機能を変化させる因子の特定の型の間を識別することを可能にする。例えば
、本明細書における教示の基づいて、産生されるシグナルを、一定期間経時的に
、本明細書において提供されるようにカルシウム指標分子によって検出すること
によって、当業者は、因子が、ミトコンドリアカルシウムユニポーターを阻害す
るか否か、あるいは、因子が呼吸器インヒビターであり得るか、もしくは、AT
P産生から酸化的リン酸化のアンカップラーであり得るかを決定し得る。
【0032】 本発明に従い、かつ以下にさらにより詳細に記載するように、細胞質ゾル、ミ
トコンドリア、およびカルシウム指標分子(または特定の実施形態において、ミ
トコンドリアを含む透過化細胞、またはミトコンドリアを含みかつ細胞質ゾルが
涸渇された透過化細胞、または好ましい実施形態において単離されたミトコンド
リアの懸濁物、各々の場合、カルシウム指標分子を含む)を含む細胞を含む生物
学的サンプルは、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下でカルシウム
カチオンの供給源と接触させ、そしてカルシウム指標分子によって生成され、そ
して細胞質ゾルカルシウムのレベルに比例して産生される検出可能なシグナルが
、複数の時点で検出される。カルシウムカチオンの供給源と接触させる工程は、
必要に応じて、少なくとも1回または複数回反復され得、そして候補因子の非存
在下で1回以上の時点でそのカルシウム指標分子によって生成されるシグナルは
、候補因子の非存在下で1回以上の時点でカルシウム指標分子によって生成され
るシグナルと比較される。
【0033】 非限定的な理論に従って、最初のカルシウム接触工程は、コントロール条件下
で、ミトコンドリアにカルシウムが移入されるにと消散する、検出可能な細胞質
ゾルカルシウムの一過的な上昇を同様に誘発する(図1A)。候補因子がミトコ
ンドリア機能に対する効果を有しない場合、カルシウム供給源との続きの接触工
程は、細胞質ゾルカルシウムにおける一過的な上昇を同様に生じ、これは、この
細胞質ゾルカルシウムのミトコンドリア取り込みが進行すると消散する(図1C
)。特定の生物学的サンプルおよび存在するカルシウム量に依存して、1、2ま
たはそれを超えるカルシウム接触工程の後に、カルシウム取り込みについてのミ
トコンドリア容量は、過飽和され得、その結果、ミトコンドリア膜電位およびミ
トコンドリア膜透過性移動(MPT)の崩壊が誘発され、これによって、細胞質
ゾルへのミトコンドリアからのカルシウムの検出可能な自発的放出がもたらされ
る。本発明の好ましい実施形態において、少なくとも2または3回のカルシウム
接触工程が、この型の自発的なカルシウム放出を誘発するのに必要とされる。
【0034】 ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する候補因子(すなわち、「呼吸系ア
ンカップラー」(uncopler))が存在する場合、ミトコンドリアの膜電
位は消散し、そしてミトコンドリアはカルシウムを放出して細胞質ゾルへと戻す
(例えば、カルシウムユニポーターを介して)。これによって、カルシウム指標
分子によって生成されるシグナルの検出可能な増加が生じる(図1B)。しかし
、カルシウムユニポーターのインヒビターである候補因子が存在する場合、細胞
質ゾルカルシウムのミトコンドリア取り込みは、1または数回のカルシウム接触
工程の後に完全にまたは部分的に損なわれ、検出可能な細胞質ゾルカルシウムの
より高いレベルを生じる(図1D)。逆に、カルシウムユニポーター活性を刺激
、増加または他の方法で増強する候補因子が存在する場合、カルシウム接触工程
の後の細胞質ゾルからのカルシウムのミトコンドリア取り込みは、そのカルシウ
ム指標分子によって生成されるシグナルの減少として検出される(図1D)。本
発明の特定の実施形態において、カルシウムカチオンの細胞内分布を変化させる
化合物が必要に応じて存在し得る(例えば、タプシガルギン(thapsiga
rgin)、ルテニウム赤(例えば、Yingら、Biochem.30:49
49、1991;Matlibら、J.Biol.Chem.273:10223
、1998)、Ru360(例えば、Emersonら、J.Am.Chem.
Soc.115:11799、1993)、Bcl−2(例えば、Murphy
ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:9893、199
6;米国特許第5,459,251号)、または1つ以上の他の適切な化合物)
。必要に応じて、ミトコンドリア機能を変化させ得るさらなる化合物もまた存在
し得る(例えば、クロロメチルテトラメチルローザミン(chlorometh
yltetramethylrosamine)(例えば、Scorranoら
、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 274:24567、19
99)、シクロスポリンA(例えば、Petronilliら、Biophys
、Jl.76:725、1999;Murphyら、Proc.Natl.Ac
ad.Sci.USA 93:9893)、ロテノン、オリゴマイシンまたはコ
ハク酸塩(Murphyら、1996)。
【0035】 「変化したミトコンドリア機能」とは、変化したミトコンドリア機能に関連す
る疾患に伴う機能を含む、任意の状態(conditionまたはstate)
をいい得る。ここで、ミトコンドリア機能に直接または間接的に関連する任意の
構造もしくは活性が、コントロールもしくは標準に対して、統計学的に有意な様
式で変化されている。変化したミトコンドリア機能は、ミトコンドリア外構造も
しくは事象において、およびミトコンドリア構造もしくは事象において、ミトコ
ンドリア遺伝子および/もしくはその遺伝子産物とミトコンドリア外遺伝子およ
び/もしくはその遺伝子産物との間の直接の相互作用において、またはそのよう
な相互作用の結果として形成され得る中間体(代謝物、異化物、基質、前駆体、
補因子などを含む)の間の相互作用の結果として生じる構造上もしくは機能上の
変化において、その起源を有し得る。
【0036】 さらに、変化したミトコンドリア機能は、生物学的サンプルもしくは生物学的
供給源の1つ以上の細胞において、変化した、呼吸活性、代謝活性もしくは他の
生化学的活性または生物物理学的活性を包含し得る。非限定的な例として、顕著
に損なわれたETC活性は、変化したミトコンドリア機能に関連し得、これは、
活性酸素種(ROS)の増加もしくは酸化的リン酸化の欠損の発生と同様であり
得る。さらなる例として、変化したミトコンドリア膜電位、アポトーシス経路の
誘導、および細胞内の異常な化学的および生化学的な架橋種の形成は、それが酵
素的機構であれ非酵素的機構であれ、すべてが、変化したミトコンドリア機能の
指標であるとみなされ得る。変化したミトコンドリア機能のこれらおよび他の非
限定的な例が、本発明によって企図される。
【0037】 理論に束縛されることは望まないが、変化したミトコンドリア機能は、変化し
た細胞内カルシウム調節に関連し得る。これは、例えば、細胞内カルシウム流入
によるミトコンドリア膜の電気化学的電位の喪失によるか、遊離ラジカル酸化を
包含する機構によるか、アデニンヌクレオチドトランスポーターまたはリンゴ酸
アスパラギン酸シャトルのようなミトコンドリア膜貫通シャトルおよびトランス
ポーターの欠損によるか、ATP生合成の欠損によるか、へキソキナーゼおよび
/または他の酵素のポリンとの会合の損傷、または他の事象によるものを伴い得
る。変化した細胞内カルシウム調節および/またはミトコンドリア内膜電位の崩
壊は、ミトコンドリア遺伝子、遺伝子産物または関連する下流のメディエーター
分子および/またはミトコンドリア外遺伝子、遺伝子産物、または関連する下流
のメディエーターの直接的もしくは間接的な効果から、あるいは他の公知のまた
は未知の原因から、生じ得る。従って、「変化したミトコンドリア機能の指標」
とは、ミトコンドリアを含む、状態、過程、経路、動力学的構造、状態、または
他の活性に直接関連し、そして被験体または生物学的供給源から生物学的サンプ
ルにおける変化したミトコンドリア機能の検出を可能にする、任意の検出可能な
パラメータであり得る。従って、非限定的な理論にしたがえば、変化したミトコ
ンドリア機能はまた、カルシウムもしくはアポトーシスに関与するミトコンドリ
ア分子成分(例えば、シトクロムc)に対する、変化したミトコンドリア透過性
、またはミトコンドリア呼吸における他の変化を包含し得る。
【0038】 本発明の特定の局面は、それが、細胞内カルシウムを結合、輸送または他の方
法で調節するミトコンドリア分子成分の活性のモニタリングに関連する場合、ミ
トコンドリアΔΨと細胞内カルシウム恒常性との間の関係を包含する。従って、
本発明は、部分的には、細胞質ゾルを含む細胞を含む生物学的サンプルにおいて
、ミトコンドリアおよび本明細書において記載されるようなカルシウム指標分子
、そのカルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出することに関する
。従って、特定の好ましい実施形態において、変化したミトコンドリア機能は、
ミトコンドリア内カルシウムレベルおよびミトコンドリア外カルシウムレベルの
ミトコンドリア調節の変化として、変化したミトコンドリアカルシウムユニポー
ター活性として、変化したミトコンドリア膜電位として、ミトコンドリアATP
産生に対する、ミトコンドリア酸化的リン酸化の共役の変化として、変化したミ
トコンドリア呼吸として、または本明細書において提供され、および当該分野で
公知である他の任意のミトコンドリア機能もしくは活性の変化(例えば、コント
ロールに対する統計学的に有意な変化)として、現れ得る。
【0039】 背景として、ミトコンドリアカルシウムの変動は、細胞内カルシウム恒常性の
部分である通常の事象であり、これはまた、上記のとおりである。さらに、ミト
コンドリアカルシウムレベルは、一過的な低細胞質ゾルカルシウム濃度を反映し
得、これは、ミトコンドリア病理に関連するATPの減少または他の状態と組み
合わせて、ミトコンドリア透過性の移動(MPT、例えば、Gunterら、B
iochim.Biophys.Acta 1366:5、1998;Rott
enbergら、Biochim.Biophys.Acta 1016:87
、1990を参照のこと)を生じ得る。一般に、静止条件下では、ミトコンドリ
ア外(すなわち、細胞質ゾル)のCa2+レベルは、ミトコンドリア内に存在する
ものよりも高い。特定の疾患または障害の場合(変化したミトコンドリア機能2
関連する疾患を含む)において、ミトコンドリアまたは細胞質ゾルのカルシウム
レベルは、上記の範囲から変動し得、そして例えば、約1nMから約500nM
、より代表的には約10nMから約100μM、および通常は約20nMから約
1μM(ここで、「約」とは、±10%を意味する)の範囲であり得る。
【0040】 膜電位の損失が、ミトコンドリアに細胞質ゾル中に封鎖(sequester
)されたCa2+を放出するようさせることから、ミトコンドリア付近におけるC
2+負荷が増加し、連鎖反応を設定する(Darley−Usmarら、Ann
.Med.23:583、1991)。脱共役した電子移動からのラジカル産生
の増加を包含する、PT崩壊の病理結果とは独立して、後に起こるATP自体の
喪失は、好気的に平衡の取れた(poise)細胞にとって致命的であり得る(
Jurkowitz−Alexanderら、J.Neurochem.59:
344、1992)。減少した代謝エネルギー供給に加えて、ATPの損失は、
ΔΨm崩壊を悪化させる。
【0041】 MPTはまた、1つ以上のミトコンドリア分子成分を結合する化合物によって
誘発され得る。そのような化合物としては、以下が挙げられるがそれらに限定さ
れない:アトラクチロシド(atractyloside)およびボングクレク
酸(bongkrekic acid)。そのような化合物がMPTを誘発する
適切な量を決定する方法は当該分野において公知である(例えば、Beutne
rら、Biochim.BIophys.Acta、1368:7、1998;
ObatomiおよびBach、Toxicol.Lett.89:155、1
996;GreenおよびReed、Science 281:1309、19
98;Kroemerら、Annu.Rev.Physiol 60:619、
1998;およびそれらにおいて引用される参考文献を参照のこと)。
【0042】 特定の条件下で、細胞内カルシウムのミトコンドリア調節の変化を特徴付け得
るミトコンドリア状態(例えば、カルシウムに対するミトコンドリア膜透過性の
変化)は、「アポトゲン」と呼ばれる、プログラムされた細胞死すなわち「アポ
トーシス」を誘発する組成物に対して生物学的サンプルを暴露することによって
誘発され得る。種々のアポトゲンが当業者に公知であり(例えば、Greenら
、Science 281:1309、1998、およびそこに引用されている
参考文献を参照のこと)、そして例示であるが限定ではなく、以下を包含し得る
:腫瘍壊死因子α(TNF−α);Fasリガンド;グルタミン酸;N−メチル
−D−アスパラギン酸(NMDA);インターロイキン−3(IL−3);ハー
ビマイシンA(Manciniら、J.Cell.Biol.138:449−
469、1997);パラコート(Costantiniら、Toxicolo
gy 99:1−2、1995);エチレングリコール;タンパク質キナーゼイ
ンヒビター(例えば、スタウロスポリン、カルホスチンC、カフェー酸(caf
feic acid)フェネチルエステル、ケテリトリンクロリド、ゲニステイ
ン;1−(5−イソキノリンスルホニル)−2−メチルピペラジン;N−[2−
((p−ブロモシナミル)アミノ)エチル]−5−5−イソキノリンスルホンア
ミド;KN−93;ケルセチン(quercitin);d−エリスロ−スフィ
ンゴシン誘導体(例えば、セラミド);UV照射;イオノフォア(例えば、イオ
ノマイシンおよびバリノマイシン);MAPキナーゼインデューサー(例えば、
アニソマイシン、アナンダミン);細胞周期ブロッカー(例えば、アフィジコリ
ン、コルセミド、5−フルオロウラシル、ホモハリングトニン(homohar
ringtonine);アセチルコリンエステラーゼインヒビター(例えば、
ベルベリン);抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン);プロオキシダン
ト(例えば、tert−ブチルペルオキシド、過酸化水素);遊離ラジカル(例
えば、一酸化窒素);無機金属イオン(例えば、カドミウム);DNA合成イン
ヒビター(例えば、アクチノマイシンDを含み、そしてまたDNAトポイソメラ
ーゼインヒビター(例えば、エトポシド)を含む);DNAインタカレータ(例
えば、ドキソルビシン、硫酸ブレオマイシン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサー
ト、マイトマイシンC,カムプトテシン、ダウノルビシン);タンパク質合成イ
ンヒビター(例えば、シクロヘキシミド、プロマイシン、ラパマイシン);微小
管の形成または安定性に影響を与える因子(例えば、ビンブラスチン、ビンクリ
スチン、コルヒチン、4−ヒドロキシフェニルレチナミド、パクリタキセル);
Badタンパク質、Bidタンパク質およびBaxタンパク質(例えば、Jur
genmeierら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:
4997−5002、1998およびそこで引用される文献を参照のこと);カ
ルシウムおよび無機リン酸(Kroemerら、Ann.Rev.Physio
l.60:619.1998)。
【0043】 従って、上記のように、本発明は、部分的に、本明細書に記載されるような生
物学的サンプルにおけるカルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出
することに関する。カルシウム指標分子は、そのサンプルに対して内因性(例え
ば天然に存在する)であり得るか、または外因性であり得、外因性であることは
、その生物学的サンプル中には天然には存在しないが、細胞質ゾルまたはミトコ
ンドリアにおけるカルシウムレベルに対して比例する検出可能なシグナルをその
カルシウム指標分子が生成し得る限り、充填、投与、混合、発現(遺伝子的に操
作された核酸構築物の産物としての発現を含む)、標的化され、接触され、暴露
され、または他の方法でそのサンプルに人工的に導入されている、少なくとも1
つのカルシウム指標分子を含む。好ましい実施形態において、そのカルシウム指
標分子は、外因性であり、そして検出可能なシグナルは蛍光シグナルである。
【0044】 従って、本発明によって、生物学的サンプルにおいて、関連する部分において
、本明細書において提供される、細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム
指標分子を含む細胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を
可能にする条件下で、カルシウムカチオンの供給源と接触させる工程、および複
数の時点でそのカルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出して、例
えば、検出されたシグナルレベルの時間経過を生成する工程によって、細胞質ゾ
ルカルシウムレベルをアッセイするための方法を提供することが企図される。そ
のカルシウム指標分子が蛍光指標である場合、その指標分子によって生成される
シグナルは、そのシグナルが、細胞質ゾルのカルシウムレベルに比例し、適切な
波長を有する光に対してそのサンプルを暴露してその指標を励起すること、およ
び適切な波長での蛍光発光を検出するために適切な装置を用いて得られた蛍光を
判定することによって検出され得る。当業者は、そのサンプル(選択したカルシ
ウム指標分子を含む)の特性および選択したカルシウムイオンの供給源の特性に
鑑みて、そのサンプルが本明細書に提供される教示に基づいて、カルシウムカチ
オンの供給源と接触される様式で容易に決定することができる。以下により詳細
に考察するように、本発明の方法を使用して、ミトコンドリア機能を変化させ、
ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役させ、呼吸器インヒビターであるか、ま
たはミトコンドリアカルシウムユニポーターを変化させる因子を同定し得る。
【0045】 従って、好ましい実施形態において、カルシウム指標分子は、光発光分子であ
り得(例えば、蛍光、りん光、または化学発光の分子など)、これは、適切な波
長の励起光によって励起される場合に光の形態での検出可能なシグナルを発光す
る。「蛍光」とは、ある波長での照射の吸収(「励起」)、ほぼ直後の通常は異
なる波長での再照射(「発光」)によって生じる発光(光の放射)であって、入
射照射が停止するとほぼ直ぐに停止するものをいう。分子レベルでは、蛍光は、
特定の化合物(発蛍光団として知られる)において生じ、基底状態から励起のよ
り高い状態へと光エネルギーによってもたらされ;その分子がその基底状態に戻
ると、それらは代表的には異なる波長で発光する。「りん光」とは、対照的に、
ある波長での照射の吸収、および続いての異なる波長で生じる遅れた再照射によ
って生じ、そして入射照射が停止した後も認知可能な時間継続する発光をいう。
「化学発光」とは、化学反応によって生じる発光をいい、「生物発光」とは、生
命体または細胞、オルガネラ、またはそれらに由来する光の放射をいう。
【0046】 種々のカルシウム指標が当該分野において公知であり、そして、アッセイ構成
に関する種々の因子(例えば、特定の生物学的サンプルおよび選択されるアッセ
イ試薬)に依存して、検出可能な細胞内シグナル(例えば、細胞質ゾルまたはミ
トコンドリアにおけるカルシウムレベルに比例するシグナル)を生成するために
適切である。適切なカルシウム指標としては、以下が挙げられるが、以下に限定
される必要はない:以下のような蛍光指標:fura−2(McCormack
ら、1989 Biochim.Biophys.Acta 973:420)
;mag−fura−2;BTC(米国特許第5,501,980号);flu
o−3、fluo−4、fluo−5Fおよびfluo−5N(米国特許第5、
049,673号);fura−4F、fura−5F;fura−6F,およ
びfura−FF;rhod−2、rhod−5F;Calcium Gree
TM 5N;ベンゾチアザ−1およびベンゾチアザ−2など(これらは、Mol
ecular Probes、Inc.,Eugene ORから入手可能であ
る(例えば、Calcium Signaling Protocols−Me
ths.In Mol.Biol.第114巻、Lambert、D(編)Hu
mana Press、1999もまた参照のこと)。カルシウムが直接測定さ
れ得る特定の実施形態において、遊離カルシウムイオン自体は、カルシウム指標
分子として作用し得る。そのような実施形態は、例えば、適切なメーター(例え
ば、pHメーター)に接続されたカルシウム感受性電極(例えば、World
Precision Instrument、Inc.、Sarasota,F
Lから市販される)を用いて決定する場合、存在するカルシウムレベルに比例す
る検出可能なシグナルに関連する;ここでは、好ましくは、そのような直接のカ
ルシウム測定は、その生物学的サンプルが、透過化細胞、細胞質ゾルを涸渇させ
た透過化細胞、または媒体中に1つ以上の単離されたミトコンドリアを含む。
【0047】 Calcium GreenTM 5Nは、本発明に従う使用のための特に好ま
しいカルシウム指標分子である。しかし、使用される特定のアッセイ条件に依存
して、当業者は、上記のカルシウム指標から、または他のカルシウム指標から、
本明細書における教示に従って、かつそのような指標の、公知の特性(例えば、
可溶性、安定性など)に基づいて、適切なカルシウム指標を選択し得る。例えば
、例示の目的でかつ限定ではないが、細胞透過性指標または細胞不透性指標が必
要であるか否か(例えば、サンプルが透過化細胞を含むか否か)、カルシウムに
対する指標の親和性(例えば、本明細書において提供されるサンプル内のカルシ
ウム濃度の動的作業範囲)、および/またはカルシウム依存性蛍光励起シフトの
ような蛍光スペクトル特性はすべて、適切なカルシウム指標の選択における因子
であり得る。
【0048】 種々の装置が本発明の方法において用いられて、本明細書において提供される
ような、蛍光化合物であるカルシウム指標分子を励起し得、そして細胞質ゾルに
おけるカルシウムレベルに比例するカルシウム指標分子によって生成されるシグ
ナルを検出し得、例えば、そこから得られる発光を測定し得る。適切な装置、光
源、フィルターセットなどの選択は、例えば、以下の当業者に公知の因子に依存
し得る:(i)カルシウム指標分子を励起する波長(好ましくは、その指標分子
の最適な励起波長(λmax(ex))においてもしくはその付近)でのエネルギー
(すなわち、光)の印加;(ii)アクセプター化合物の発光スペクトル内(好
ましくは、指標分子の最適発光波長(λmax(em))においてもしくはその付近
でのエネルギー(すなわち、光)の検出;(iii)アッセイされるべきサンプ
ルの型;および(iv)所定のプログラムにおいて、例えば、ハイスループット
スクリーニング形式においてアッセイされるサンプルの数および形式付け。
【0049】 因子(i)および因子(ii)に関して、サンプルに適用されるエネルギース
ペクトルおよびサンプルにより放射されるエネルギーのスペクトルが、一般に、
どの型の器具が使用されるかを決定する。例えば、λ(ex)は、λ(em)と
同一ではないが、これら2つの値の間の違いの最小の受容可能量は、他の因子の
間でも使用される器具使用によって、影響を受ける。つまり、λ(ex)が、λ
(em)に近づく場合、密接な間隔(closely spaced)の波長を
解像可能な器具が必要とされ、そしてλ(ex)とλ(em)との違いが約3n
m〜約5nmより小さい場合のアッセイは、高い解像度の機器を必要とする。逆
に、λ(ex)とλ(em)との間の相違が、約50〜約75nmより大きいア
ッセイでは、比較的中間〜低い解像度を有する機器を必要とする。
【0050】 従って、因子(ii)に関して特異的な、励起したフルオロフォアによって放
射され、そしてサンプルにおいて測定されるエネルギーの型は、一般に、どんな
型の器具が使用されるかを決定する。例えば、フルオロメーターは、蛍光エネル
ギーを測定するデバイスであり、従って、器具使用の一部であるべきである。フ
ルオロメーターは、わずかの反応管(例えば、サンプル管)を一度に適応する(
accommodate)比較的単純な、手動で操作される機器から、複数の反
応管を有するフォーマット(例えば、96ウェルマイクロプレート)において大
量のサンプルを適応する、多少より複雑な、手動で操作される機器または自動機
器(robotic instrument)(例えば、fmaxTM fluo
rimetric plate reader、Molecular Devi
ces Corps.、Sunnyvale,CA;またはCytofluor TM fluorimetric plate reader、model #2
350、Millipore Corp.、Bedford、MA)、あるいは
種々のフォーマット(例えば、96ウェルマイクロプレート、384ウェルマイ
クロプレートまたはハイスループットのスクリーニングフォーマット)において
多数のサンプルを適応する複雑な自動機器(例えば、FLIPRTM機器;下記を
参照のこと)(ここで、例えば、複数の反応管におけるカルシウム指標分子によ
るシグナルの検出が自動化され得る)からなるものであり得る。
【0051】 因子(iii)(所定のプログラムにおいてアッセイされるサンプルの型)に
関して、異なるフォーマットが異なる型のサンプルについて適切である。例えば
、96ウェルマイクロプレートまたは384マイクロプレートは、目的の細胞が
、マイクロプレートの基板、すなわちマイクロプレートのウェルに適用されるい
くつかの物質(例えば、ウェルが処理されている天然コーティングまたは合成コ
ーティング(例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、RGD
ペプチド、ポリLリジン、CelTakTMなど))に接着する場合に適切であり
得る。しかし、特定の一般的なプラスチックマルチウェルプレート物質由来の蛍
光を干渉することは、約400nm未満の励起波長で、大きな人工バックグラウ
ンド成分を生じ得る。従って、懸濁細胞のような非接着細胞、または増殖基質か
ら取り除かれた接着細胞の懸濁物、もしくはミクロキャリアー(microca
rrier)などへの接着細胞の懸濁物に関わる測定のために、ガラスまたはポ
リマー管もしくは管状材料、あるいは別の適切な非干渉管において蛍光シグナル
を読み取り得る装置が好まれ得る。どんな型のフォーマットが使用されるかに関
わらず、アッセイ反応管は、生物学的サンプル、候補因子、カルシウムカチオン
の供給源、コントロール試薬および、必要に応じてサイトゾルのカルシウムレベ
ルに影響し得る付加的な化合物、ならびに複数の適切な時点でカルシウム指標分
子により生成されるシグナルを検出する能力、の誘導を考慮に入れるべきである
【0052】 因子(iv)では、所定のプログラムにおいてアッセイされるサンプルの数は
、選択される機器により、実行され得る自動化の程度に影響し得る。例えば、ハ
イスループット(HTS)のスクリーニング(すなわち、比較的短い時間で大量
のサンプルをアッセイする)が所望される場合、自動化機器または半自動化機器
が好ましい。あるいは、大きいサンプル数に適応するフォーマット(例えば、9
6ウェルマイクロプレート)が使用される場合でさえ、サンプルは手動で処理さ
れ得る。
【0053】 上記のように、本発明は、細胞内カルシウムのミトコンドリア調節を変更する
薬剤を同定することの使用のためのアッセイを提供する。このようなアッセイは
、ミトコンドリア機能、カルシウムユニポータインヒビター、呼吸抑制剤および
/またはATP産生に由来する酸化的リン酸化の脱共役剤を変更する因子を検出
するために設計される。従って、本発明は、ミトコンドリアカルシウム調節機能
のレベルで活性な薬剤についての薬剤、化合物またはリード化合物を同定する効
率的方法を提供する。一般的に、これらのスクリーニング方法は、サイトゾルカ
ルシウムを調節することへのミトコンドリアの関与の決定を容易にする条件下で
、細胞内サイトゾル遊離カルシウムレベルを変更する化合物についてのアッセイ
を包含し、そして好ましい実施形態において、このような方法は、ミトコンドリ
アカルシウムユニポータの関与の決定に関連し得る。この方法は、リード化合物
についての化学ライブラリーの、自動化されて費用効果が高く、ハイスループッ
トのスクリーニングに受け入れられ得る。
【0054】 用語「スクリーニング」は、例えば、ネガティブな様式またはポジティブな様
式において細胞内カルシウムのミトコンドリア調節を変更する、候補薬剤の大き
なコレクションの中から因子を同定するための本発明の使用をいう。簡単には、
サイトゾル、一つ以上のミトコンドリアおよび本明細書中で提供されるようなカ
ルシウム指標分子を含む細胞またはその部分は、細胞内カルシウムレベルの検出
を可能にする条件下(薬理学的インヒビター(または増強剤)あるいは潜在的に
関連する生物学的活性を有する他のアッセイ反応化合物の使用を含む)で、候補
因子により処理され、ミトコンドリアによる細胞内カルシウムの取り込みもしく
は放出を決定する。次いで、検出可能な細胞内カルシウムレベルへの候補因子の
効果がモニターされ、そして候補因子の省略(omission)(例えば、因
子を送達するために使用されるビークルのみを有する)を除けば、同一に処理さ
れたコントロールサンプルと比較される。検出は、局所的なカルシウム濃度に対
応する検出可能なシグナルを生成可能なカルシウム感受性レポーター分子(例え
ば、本明細書中で提供されるようなカルシウム指標分子)を使用する。
【0055】 本発明は、例えば、ハイスループットのスクリーニング;(すなわち一つ以上
の細胞型に対する活性について、多量の候補化合物の自動化されたスクリーニン
グ)において大きな価値があると考えられる。例えば、活性な化合物についての
合成ライブラリーまたは天然産物ライブラリーにおいて特定の価値があると考え
られる。従って、本発明の方法は、自動化された、費用効果の高い、ハイスルー
プットの薬物スクリーニングに受け入れられ、そして広範な薬学的薬物開発プロ
グラムにおける迅速な適用を有する。本発明の好ましい実施形態では、スクリー
ニングされる化合物は、96ウェルプレートフォーマットのようなハイスループ
ットのスクリーニングフォーマット、または他の規則的な二次元アレイ(例えば
、384ウェルウェルプレートフォーマット、48ウェルウェルプレートフォー
マットまたは24ウェルプレートフォーマットあるいは試験管のアレイ)で組織
される。従って、ハイスループットのスクリーニングについて、このフォーマッ
トは、好ましく自動化に受け入れられる。例えば、本発明のハイスループットの
スクリーニングの実施形態に従った使用のための自動化された装置は、コンピュ
ーターまたは他のプログラム可能なコントローラーの制御下にあることが好まれ
る。コントローラーは、このプロセスの各々の工程の結果を継続的にモニターし
得、そしてそれらの結果に対する応答において、試験パラダイムを自動的に変更
し得る。
【0056】 アッセイに依存して、Fluorometric Imaging Plat
e Reader(FLIPRTM)機器(Molecular Devices
、Sunnyvale、CA)が、しばしば本発明の蛍光ベースアッセイのため
の最適な機器である。FLIPRTM系(http://www.molecul
ardevices.com/pages/flipr.htmlを参照のこと
)は、以下の所望される特徴を有する:(i)画像化に曝される期間にわたり検
出可能なシグナルを蓄積する積算検出器として、水冷却式(water−coo
led)、アルゴンイオンレーザー照射および冷却式CCDカメラの組合せを使
用し、そして結果としてそのSN(信号対ノイズ)特性は、一般に、従来の画像
光学のSN特性より優れている;(ii)細胞単層上のシグナル識別を可能にす
る特有の細胞層単離光学もまた利用し、従って所望しない細胞外バックグラウン
ド蛍光を低減する。;(iii)リアルタイムのデータを提供し、そして運動デ
ータもまた提供し得る(すなわち、複数の時点での読み取り);(iv)フルオ
ロフォアを同時に励起させ、そして96ウェルマイクロプレートの96ウェル全
てからの放射を読み取る能力を有する;(v)分析の間サンプルの温度および湿
度の正確な制御を提供する;(vi)内蔵型の最新技術の96ウェルピペッター
を含み、これは、実験間で持ち越される物を排除するために不要なチップを使用
し、そしてミクロプレートから正確な量の液体を吸引し、分配し、そして混合す
るのに使用され得る;そして、(vii)FLIPR384機器の場合、ロボット
化または半ロボット化の様式でサンプルアッセイを実行するために適用され、従
って、大量のサンプルの迅速なHTS分析を提供する(例えば、1日あたり約1
00個の96ウェルマイクロプレートまで)。
【0057】 また上記のように、ミトコンドリアへのCa2+の流入は、電子移動によって確
立された負の膜貫通電気化学ポテンシャル(ΔΨ)に大体依存するようであり、
そして完全に依存し得、そしてこのような流入は、8倍のCa2+濃度勾配が課さ
れる場合でさえ、ΔΨの非存在において生じない(Kapusら、FEBS L
ett.282:61、1991)。従って、本発明の好ましい実施形態におい
て、本明細書中で提供されるような生物学的サンプルは、以下により詳細に記載
されるように、ミトコンドリアの膜電位の維持を可能にする条件下で、カルシウ
ムカチオンの供給源と接触する。従って、膜電位が、例えば、酸化的リン酸化の
脱共役剤(すなわち、ADPリン酸化によるATP産生由来のミトコンドリアE
TCの脱共役剤)(例えば、2,4−ジニトロフェノール(DNP)およびカル
ボニルシアニドp−トリフルオロ−メトキシフェニルヒドラゾン(FCCP))
により、生じるのと同様に、散逸される(dissipated)場合、ミトコ
ンドリアは、本明細書中で記載されるカルシウムユニポータを介してCa2+を放
出し得る。
【0058】 カルシウムカチオンの供給源であり得る化合物は、本発明の特定の実施形態に
従って、細胞外環境に存在しそして/または種々の細胞内区画の1つ以上に存在
するカルシウムの再分布をもたらすことにより、増大する細胞内Ca2+濃度、細
胞質Ca2+濃度、サイトゾルCa2+濃度および/またはミトコンドリアCa2+
度を誘導する。このような化合物(カルシウムイオノフォアを含む)は、当業者
に周知である。細胞内カルシウムを測定する方法もまた、本明細書中で提供され
、そして当該分野で公知である(例えば、Gunterら、J.Bioener
g.Biomembr.26:471、1994;Gunterら、Bioch
im.Biophys.Acta 1366:5、1998;McCormac
kら、Biochim.Biophys.Acta 973:420、1989
;Orreniusら、J.Neural.Transm.Suppl.43:
1、1994;Leistら、Rev.Physiol.Biochem.Ph
arumacol.132:79、1998;およびHaugland、199
6、前出)。有用なカルシウムイオノフォアの例としては、A23187、イオ
ノマイシン、CA1001、Fusarium orthoceras var
.enniatum由来のエンニアチン(enniatin)B(例えば、Le
vyら、Biochem.Pharmacol.50:2105、1995)、
Palythoa toxica由来のパリトキシン(例えば、Aizuら、J
apan.Jl.Pharmacol.60:9、1992)、および適切な細
胞型における当該分野で公知のN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)ま
たは他の細胞脱分極シグナル(例えば、Briniら、Nature Medi
cine 5:951、1999)ならびに本明細書中に記載されるものが挙げ
られる。
【0059】 従って、当業者は、本発明の特定の実施形態におけるカルシウムカチオンの供
給源の使用のための細胞内カルシウムおよび適切なイオノフォアを検出するため
の適切な手順を、適切なカルシウム含有緩衝液、培地および類似の試薬の使用を
含む、本開示および周知の方法に従って、容易に選択し得る。イオノフォアに加
え、増大した細胞内(例えば、サイトゾル)Ca2+濃度を誘導する他の化合物と
しては、セスキテルペンラクトン、タプシガルジン(これは、おそらく小胞体C
2+−ATPアーゼを阻害することにより、サイトゾルへのERによるカルシウ
ム放出をブロックすることなく、小胞体(ER)におけるサイトゾル遊離カルシ
ウムの回収(sequestration)を阻害すると考えられる)が挙げら
れるがこれらに限定されない(例えば、Takemuraら、J.Biol.C
hem.264:12266、1989;Thastrupら、Agents
Actions 27:17、1989;Wonら、Endocrinol.1
36:5399、1995;Begumら、J.Biol.Chem.268:
3552、1995;Lowら、Eur.J.Pharmacol.250:5
3,1993を参照のこと)。細胞内カルシウムの再分布を増加するかまたは細
胞内カルシウムの再分布をもたらすことが可能なさらなる化合物としては、カル
バコール(例えば、Jenceら、J.Neurochem.64:1605、
1995;Yanら、Mol.Pharmacol.47:248、1995)
、BHQ(2,5−ジ−(t−ブチル)−1,4−ヒドロキノン;例えば、Sa
lvadorら、Arch.Biochem.Biophys.351:272
、1998)、CPA(シクロピアゾニック酸(cyclopiazonic
acid)、例えば、Badaouiら、J.Mol.Cell.Cardio
l.27:2495、1995)および適切なレセプターを有する細胞の場合、
グルタメートまたはNMDAのようなアミノ酸神経伝達物質が挙げられる。
【0060】 従って、当業者によって理解されるように、所定の化合物(例えば、グルタメ
ート)に曝される特定の細胞は、その化合物が細胞内Ca2+レベルに影響する
ために、そのための特定のレセプター(例えば、グルタメートレセプター)を必
要とする。例えば、NT−2奇形癌細胞は、グルタメートレセプターを発現する
が、SH−SY5Y神経芽腫細胞は、発現しない。従って、細胞内カルシウムレ
ベルを増加させるのに所望され得る細胞株の選択は、どの化合物がもっとも適切
であるかを決定する。
【0061】 例えば、例示であって限定する目的ではないが、細胞内カルシウムのミトコン
ドリア調節の決定に関する本発明の特定の好ましい実施形態において、イオノマ
イシン(Toeplitzら、J.Amer.Chem.Soc.101:33
44、1979)が、カルシウムカチオンの供給源を提供するカルシウムイオノ
フォアとして使用され得、そしてFura−2またはRhod−2(Haugl
and、1996 Handbook of Fluorescent Pro
bes and Research Chemicals− Sixth Ed
.、Molecular Probes、Eugene、Oregon、266
〜274頁)が、それぞれサイトゾルカルシウムまたはミトコンドリア内カルシ
ウムを検出するための蛍光カルシウム指標分子であり得る。一般に、カルシウム
カチオンの供給源を提供する(すなわち、増加したCa2+の細胞内濃度を生じる
)少なくとも1つの適切な化合物および生物学的サンプルのカルシウムホメオス
タシスのミトコンドリア調節を測定することを可能にする少なくとも1つのカル
シウム指標分子(すなわち、細胞内カルシウムレベルを検出するため)の任意の
組合せが使用され得る。本明細書中で意図される使用のためのこのような化合物
の適切な濃度の決定の方法は、当該分野で公知である(例えば、Takeiら、
Brain Res.652:65、1994;Hatanakaら、Bioc
hem.Biophys.Res.Commun.227:513、1996を
参照のこと)。
【0062】 さらに、ETC活性のようなミトコンドリア機能を変更する(例えば、ロテノ
ン、オリゴマイシン)か(例えば、増大または低減)またはCa2+の細胞内分布
を変更(例えば、タプシガルジン)し、そして当業者が精通する薬学的に活性な
化合物は、サイトゾルカルシウムのミトコンドリア調節へのそれらの化合物の効
果を評価するために必要に応じて用いられ得る。非限定的理論に従って、このよ
うな薬学的因子は、ミトコンドリアによって調節されるカルシウムプールを機能
的に単離するために用いられ得、従ってミトコンドリア機能とサイトゾルカルシ
ウムレベルとの間の関係の検出を可能にし得る。例えば、タプシガルジンの適切
な濃度が、本明細書中で開示され、そして当業者に公知であるように選択され得
、その結果、小胞体によるカルシウムの取り込みは阻害され、それによってミト
コンドリア外(例えば、サイトゾル)のプールからのミトコンドリアカルシウム
ローディング(loading)および/またはサイトゾルへのカルシウムのミ
トコンドリア放出における、カルシウム指標分子を介した検出を提供する。補足
クレームの範囲内で、これらおよび関連する方法および組成物における多くのバ
リエーションが、本開示の観点から当業者に行われる。
【0063】 本明細書中で使用される場合、ミトコンドリアは、「ミトコンドリアの分子成
分」から構成され、このミトコンドリアの分子成分は、タンパク質、ポリペプチ
ド、ペプチド、アミノ酸、またはその誘導体;脂質、脂肪酸など、またはその誘
導体;炭水化物、サッカライドなどまたはその誘導体、核酸、ヌクレオチド、ヌ
クレオシド、プリン、ピリミジンもしくは関連する分子、あるいはその誘導体な
ど;またはミトコンドリアの構成物質である別の生物学的分子であり得る。「ミ
トコンドリア分子成分」としては、「ミトコンドリアポア(pore)成分」が
挙げられるがこれらに限定されない。「ミトコンドリアポア成分」は、カルシウ
ムと結合し、カルシウムを輸送し、そうでないにしてもミトコンドリア膜のいず
れかの側のカルシウムレベルおよび/または他のイオンレベルの維持に関与する
ミトコンドリア膜成分を含む、上記のようなミトコンドリア膜の選択的透過特性
を調節する、任意のミトコンドリア膜成分である。ミトコンドリアポア成分はま
た、ΔΨmを確立するのに関係するミトコンドリア分子成分およびMPTの間に
機能的に変更されるミトコンドリア成分を含む。
【0064】 ミトコンドリアポア成分またはミトコンドリアポア活性に影響する薬剤が相互
作用する成分の単離および必要に応じて、同定および/または特徴付けもまた所
望され得、そして本発明の範囲内にある。一旦、ある因子が、ミトコンドリア透
過特性、例えば、ミトコンドリア結合、カルシウムの輸送または調節(本明細書
中および米国特許出願番号第09/161,172号および同第09/338,
122号および同第09/434,3564号において提供されるような)また
は、例えば、本明細書中および米国出願番号第09/161,172号において
提供される方法に従ったMPT、のようなミトコンドリア活性を変更することが
示されると、当業者は、このような因子によって特異的に認識され、そしてMP
Tの調節に関与する分子種を単離するのに慣例的に用いられ得る種々のアプロー
チに精通する(ここで、本明細書中で使用される場合「単離」とは、天然の生物
学的環境からこのような分子種の分離をいう。)。
【0065】 ミトコンドリア分子成分を単離するための技術としては、成分の生物学的供給
源からその成分を分離するのに有用な任意の生物学的方法および/または生物化
学的方法が挙げられ、そして後の特徴化は、標準的な生物化学的手順および分子
生物学的手順に従って実施され得る。当業者は、生物学的出発物質および他の因
子に依存して、適切な方法を選択し得る。このような方法としては、生物学的サ
ンプルにおける細胞成分およびミトコンドリア成分の蛍光標識化またはその他の
検出可能な標識化、細胞分画、密度沈降、微分抽出、塩沈降、限外濾過法、ゲル
濾過、イオン交換クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、疎水性クロマ
トグラフィー、電気泳動、親和性技術またはミトコンドリアポア成分と相互作用
する薬剤を用いた使用のために適応され得る任意の他の適切な方法が挙げられ得
るが、これらに限定する必要はない。成分を部分的に精製する抗体が、当該分野
で公知の方法に従って、開発され得、そしてこのような成分を検出し、そして/
または単離するために使用され得る。
【0066】 「サイトゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含
む生物学的サンプル」は、以下を含む細胞が存在する任意の組織試料または細胞
試料を含み得る:(i)サイトゾル(すなわち、任意のまたは全ての細胞内物質
であるが細胞小器官外(例えば、ミトコンドリア外、核外など)物質であり、こ
れは好ましくは細胞内ゾル、細胞液または他の溶液を含み得、そしてこれはまた
細胞内であるが細胞小器官外局在(localization)に導入された外
因性由来の物質(例えば、透過化処理された細胞において、細胞が透過化処理さ
れた状態であるために、細胞内の部位を占めるようになり得る物質)を含み得る
)(ii)本明細書中に記載されるようなカルシウム指標分子、および(iii
)1つ以上の酸化される(oxidizable)物質(例えば、グルコース、
マレート、グルタメート、ピルべートまたはガラクトース)を供給する場合、膜
電位を維持することが可能なインタクトなミトコンドリア。
【0067】 ミトコンドリア膜電位は、当業者が容易に精通する方法(蛍光指標、光学(o
ptical)プローブおよび/またはセンシティブpHならびにイオン選択電
極(ion−selective electrode)のような検出可能な化
合物の検出および/または測定を含むがこれらに限定されない)に従って、決定
され得る(例えば、Bernardiら、Eur.J.Biochem.264
:687、1999;Bernardi,Physiol.Rev.79:11
27、1999;Ernsterら、J.Cell Biol.91:227s
、1981、およびそこで引用される参考文献を参照のこと;Haugland
、1996 Handbook of Fluorescent Probes
and Research Chemicals−第6版、Molecula
r Probes,Eugene,OR,266〜274頁および584〜59
4頁を参照のこと)。「電位を維持することが可能」とは、このようなミトコン
ドリアが、検出可能な化合物、電位感受性化合物または電位差(potenti
ometric)化合物(例えば、蛍光色素ローダミン123、DASPMI[
2−,4−ジメチルアミノスチリル−N−メチルピリジニウム]、TMRM[テ
トラメチルローダミンメチルエステル]または他の安定した化合物)の蓄積を可
能にするのに十分な膜電位を有することを意味する(例えば、Scheffle
、Mitochondria、1999 Wiley−Liss、NY、198
〜202頁を参照のこと;Haugland、1996もまた参照のこと)。
【0068】 サイトゾルおよびミトコンドリアを含有する細胞を含む生物学的サンプルは、
本明細書中で提供される通りの被験体または生物学的供給源に由来し得、そして
後に、本明細書中に記載される通りカルシウム指標分子と接触され、サイトゾル
、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細胞を含む生物学的サン
プルを提供する。以下でより詳細に記載される通り、この細胞は、特定の実施形
態において透過化処理された細胞であり得、そして特定の他の実施形態では、サ
イトゾルを除去された透過化処理された細胞であり得る。
【0069】 特定の他の実施形態に従って、そして以下でより詳細に記載されるように、「
培地中に1つ以上の単離されたミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含む
生物学的サンプル」(例えば、呼吸培地(respiratory mediu
m))は、本明細書中に提供されるように、被験体または生物学的供給源に由来
するミトコンドリアを含む液体懸濁物であり得る。好ましい実施形態において、
単離されたミトコンドリアが調製され、そして引き続いてカルシウム指標分子と
接触されて、培地中またはミトコンドリア内側(これは、好ましい実施形態にお
いて、液体培地をいい、そして例えば、任意の広範な種々の水性生物学的緩衝液
または液体培養培地を含み得る)に、少なくとも1つの単離されたミトコンドリ
アおよびカルシウム指標分子を含む生物学的サンプルを提供し得る。特定の他の
実施形態において、カルシウム指標分子(例えば、組換え発現された、ミトコン
ドリア標的化エクオリン)は、単離時に、単離されたミトコンドリア中に存在し
得る。いずれかの例において、1つ以上の単離されたミトコンドリアを含む生物
学的サンプルは、好ましくは、これらの実施形態および関連する実施形態に従っ
て、液体懸濁物として提供され、その結果、サンプル中のミトコンドリア内およ
び/またはミトコンドリア外のカルシウムのレベルが、決定され得る。
【0070】 従って、例えば、生物学的サンプルは、正常の(すなわち、健常な)個体また
は変更されたミトコンドリア機能に関連する疾患を有する個体に由来し得る。生
物学的サンプルは、血液サンプル、生検試料、組織移植片、器官培養物もしくは
任意の他の組織または細胞調製物を得ることによって被験体もしくは生物学的供
給源から得られ得る。被験体または生物学的供給源は、生物学的生物(例えば、
ヒトもしくは非ヒト動物)、原核生物または真核生物、植物、単細胞生物または
多細胞生物であり得る。特定の実施形態に従って、本発明は、カルシウム指標分
子(これは、ポリペプチド、補因子、代謝産物など、天然にかもしくは遺伝子操
作の結果としてかのいずれかである生合成産物としてサンプル中に存在するもの
である)を適切な部分において含む生物学的サンプルを意図し、その結果、適切
な生物学的サンプルは、独立して誘導されたカルシウム指標分子と接触させる引
き続く工程の必要なく、生物学的供給源に由来し得る。
【0071】 被験体または生物学的供給源はまた、初代細胞培養物、あるいは染色体に組み
込まれた核酸配列またはエピソーム組換え核酸配列(本明細書中に提供されるよ
うなカルシウム指標分子であり得るポリペプチド(例えば、グリーン蛍光タンパ
ク質(GFP)、FLASHタンパク質もしくはエクオリン由来ポリペプチドま
たは例えばU.S.A.N.09/434,354およびそこに引用される参考
文献において提供される融合タンパク質であり得る)をコードする核酸配列を含
むがこれらに限定されない)を含み得る遺伝子操作された細胞株、不死化細胞株
もしくは不死化可能な細胞株、体細胞ハイブリッド細胞株もしくは細胞質ハイブ
リッド「サイブリッド(cybrid)」細胞株(例えば、米国特許第5,88
8,498号)、分化された細胞株もしくは分化可能な細胞株、形質転換された
細胞株などを含むがこれらに限定されない細胞株に適合する培養物であり得る。
【0072】 例えば、特定の実施形態において、生物学的サンプル細胞は、目的の生物学的
レセプターをコードしそして発現する遺伝子を用いてトランスフェクトされ得、
この目的の生物学的レセプターは、公知のリガンド(例えば、サイトカイン、ホ
ルモンもしくは増殖因子)を有するレセプターであり得るか、またはリガンドが
公知でない「オーファン(orphaned)」レセプターであり得る。さらに
このような実施形態に対して、1つ以上の公知のリガンドまたは目的のレセプタ
ーと相互作用し得ると疑われる他の化合物(例えば、サイトカイン、ホルモン、
増殖因子、抗体、神経伝達物質、レセプターアクチベーター、レセプターインヒ
ビター、イオンチャネル調節因子、イオンポンプ調節因子、刺激原、薬物、毒素
または生物学的に関連する活性を有することが公知かもしくは有することが疑わ
れる任意の他の化合物)は、必要に応じて、本発明の方法に含まれ得る。
【0073】 特定の他の実施形態において、生物学的サンプル細胞は、カルシウム調節タン
パク質をコードしそして発現する遺伝子を発現し得るか、このような遺伝子を発
現するように誘導され得るか、あるいはこのような遺伝子を用いてトランスフェ
クトされ得る。カルシウム調節タンパク質は、任意の天然に存在するか、あるい
は細胞内または細胞小器官内のカルシウムレベルを直接的または間接的に変更す
る(例えば、増加または減少させる)人工的に操作された、ポリペプチドまたは
タンパク質を含む。カルシウム調節タンパク質の例としては、カルモジュリン、
カルセケストリン、カルパインIおよびカルパインII、カルパスタチン、カル
ビンジン−D9k、オステオカルシン、オスタオネクチン、S−100プロテイン
、トロポニンCならびに多くの膜貫通カルシウムチャネルが挙げられる。カルシ
ウム調節タンパク質としてはまた、ミトコンドリアカルシウムユニポータならび
にミトコンドリアナトリウム依存性カルシウム輸送体およびミトコンドリアナト
リウム非依存性カルシウム輸送体が挙げられ、これらは、ミトコンドリアからの
カルシウム流出を媒介する。カルシウムユニポータ機能は、種々の正常な代謝プ
ロセスにおいて、アポトーシスにおいて、および特定の疾患機構において、役割
を果たし得る。従って、ミトコンドリアカルシウムユニポータカルシウム輸送体
活性(ADPによるその活性、ATP、Mg2+、ルテニウム赤による阻害、およ
びその誘導性Ru360(Matlibら、J.Biol.Chem.273:
10223、1998;Emersonら、J.Amer.Chem.Soc.
115:11799、1993)ならびにSr2+、Mn2+およびLa3+による競
合性阻害を含む)は特徴付けられていないが、標準のミトコンドリアカルシウム
ユニポータとして同定および確認された特定ポリペプチドはなく、このようなユ
ニポータをコードする遺伝子もまた決定されていない。特に、ミトコンドリアに
局在化し、そしてカルシウム結合、カルシウム輸送、および/またはカルシウム
の他の調節もしくはカルシウムによる調節を可能にする、候補ユニポータポリペ
プチドは、米国出願番号09/427,867号に開示される。
【0074】 例えば、いくつかの膜貫通カルシウムチャネルは、細胞内結合、遊離カルシウ
ムの輸送または調節(例えば、カルシウム結合、EFHAND、イオン輸送、リ
ガンドチャネルおよび/またはカルモジュリン結合IQ−ドメイン)に関連する
機能的ポリペプチドドメインを含む。EFHAND、イオンチャネル、リガンド
チャネルおよびIQ。イオン輸送に対する情報については、例えば:Willi
amsら、Science 257:3898〜395、1992;Janら、
Cell 69:715〜718、1992を参照のこと。カルシウム結合/輸
送に対する情報については、例えば:RyRs(リアノジンレセプター)Che
nら、J.Biol.Chem.273:14675〜14678、1998を
参照のこと。L型Ca2+チャネルに対する情報については、例えば:Hocke
rmanら、Annu.Rev.Pharmcol.Toxicol.37:3
61〜396、1997を参照のこと。リガンドチャネルに対する情報について
は、例えば:Tong、Sciecne 267:1510〜1512、199
5を参照のこと;IQに関しては、例えば、Xieら、Nature 368:
306〜312、1994を参照のこと。EFHANDに対する情報については
、例えば、Persechiniら、Trends Neurosci.12:
462、1989;Ikura、Trends Biochem.Sci.21
:14、1996;Guerini、Biochem.Biophys.Res
.Commun.235:271;Kakalisら、FEBS Lett.3
62:55、1995を参照のこと。従って、これらまたは他のカルシウム調節
タンパク質は、本明細書中に提供されるような生物学的サンプル中に存在する細
胞において発現され得る。
【0075】 従って、本発明に従う使用のための細胞は、被験体もしくは生物学的供給源由
来の新鮮に調製された細胞としてかまたは培養された細胞として提供され得、そ
して特定の好ましい実施形態において、この細胞は、培養された細胞である。本
明細書中に提供され、そして当該分野において公知であるように、培養された細
胞は、固体基質に天然に接着する接着細胞であり得るか、または適切な細胞培養
系における培養によって自由に増殖する細胞の懸濁物中の細胞としてさらに維持
され得る非接着細胞であり得る。本発明の特定の好ましい実施形態において、生
物学的サンプルは、懸濁細胞である細胞を含む。他の好ましい実施形態において
、天然の接着細胞の集団(これは、増殖のために固体基質に付着する必要があり
得る)は、適切な培養フラスコ中で接着細胞として増殖され、そして続いて、本
明細書中に記載されるアッセイにおける使用のために、適切な脱着試薬を用いて
フラスコ壁から脱着される。本発明の別の実施形態において、天然の接着細胞は
、懸濁マイクロキャリア(例えば、増殖の間に細胞が接着するミクロスフェアビ
ーズ(microspherical bead)または懸濁物中で接着細胞の
維持および/もしくはアッセイを可能にする別の適切な細胞培養系)上で増殖さ
れる。細胞懸濁物として接着細胞を扱うためのマイクロキャリアおよび他の製品
は、当業者に公知であり、そして種々の供給業者から市販されている。
【0076】 本発明によって意図される特定の実施形態に従って、細胞は、透過化処理され
た細胞であり得、これは、原形質膜選択的透過性の損失を生じる様式において処
理された細胞を含む。例えば、カルシウムイオノフォアの使用に対する代替とし
て、細胞外環境のカルシウムカチオンが細胞内へ拡散することを可能にする様式
において細胞の透過性を上げることが、望ましくあり得る。別の例として、本明
細書中に提供されるような特定のカルシウム指標分子は、原形質膜を容易に透過
し得なくともよく、その結果、このカルシウム指標分子は、細胞の透過化処理の
後においてのみ、細胞質ゾルへの効率的な進入を獲得し得る。さらに別の例とし
て、本発明の方法に従って試験される特定の候補薬剤は、原形質膜を通過し得な
いかも知れず、その結果、透過化処理された細胞は、このような薬剤の潜在的な
効果について適切な試験細胞を提供する。当業者は、細胞の透過性を上げるため
の方法(例えば、例示の目的であって限定の目的ではなく、界面活性剤、洗剤、
リン脂質、リン脂質結合タンパク質、酵素、ウイルス膜融合タンパ質などの使用
によるか;浸透圧的に活性な薬剤の使用によるか;化学的架橋剤の使用によるか
;エレクトロポレーションなどを含む物理化学的方法によるか;または他の透過
化処理方法論による)に精通している。
【0077】 従って、例えば、細胞は、細胞を溶解し、そして膜を可溶化するために使用さ
れる濃度より低い濃度(すなわち、臨界ミセル濃度より低い)にて、任意の種々
の公知の技術(例えば、1つ以上の洗剤(例えば、ジギトニン、Triton
X−100TM、NP−40TM、オクチルグルコシドなど)に対する曝露)を使用
して透過性を上げられ得る。特定の通常のトランスフェクション試薬(例えば、
DOTAP)もまた、使用され得る。ATPはまた、インタクトな細胞の透過性
を上げるために使用され得、同様に固定剤として通常使用される低濃度の化学製
品(例えば、ホルムアルデヒド)もまた使用され得る。従って、本発明の特定の
実施形態において、インタクトな細胞を使用することが好ましくあり得、そして
特定の他の実施形態において、透過化処理された細胞の使用が好ましくあり得る
【0078】 本発明の特定の実施形態に従って、ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定
するため、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する薬剤を同定するため、呼
吸抑制剤を同定するため、およびミトコンドリアカルシウムユニポータを変更す
る化合物を同定するための方法が、提供され、上記の方法の各々は、透過化処理
される細胞および細胞質ゾルを枯渇される細胞の中に含まれるミトコンドリアを
含むサンプルの使用を適切な部分において、包含する。細胞が細胞質ゾルを枯渇
される場合の決定は、当該分野で周知の任意の種々の方法(例えば、Fisku
mら(1980 Proc.Nat.Acad.Sci.USA 77:343
0〜3434)に記載される方法)によって達成され得る。この方法は、任意の
多くの公知の細胞質ゾルマーカー(例えば、酵素乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH
))を決定することによるか、または細胞性アーキテクチャ(architec
ture)に対する枯渇方法の効果をモニタリングすることによる、細胞質ゾル
の枯渇の程度をモニタリングするための定量的方法を包含する。好ましくは、細
胞質ゾルを枯渇される細胞は、本質的に、細胞質ゾルを完全に枯渇し、これは、
Fiskumら(1980)に記載されるような基準に従って、細胞に関連する
検出可能な細胞質ゾルマーカーが残存していないことをもたらす細胞質ゾルの枯
渇を言及する。他の実施形態において、細胞質ゾルを枯渇する細胞は、実質的に
細胞質ゾルを枯渇し得、この細胞は、40%より多く、好ましくは、60%より
多く、そしてより好ましくは、75%より多くの、少なくとも1つの検出可能な
細胞質ゾルマーカー(例えば、LDH)が、細胞質ゾルが枯渇されていないコン
トロール細胞に対して、当該分野で公知の基準を使用してもはや細胞に関連して
いない、細胞を含み得る。
【0079】 従って、本発明はまた、ミトコンドリア機能を変更する(例えば、統計学的に
有意な様式において増加または減少させる)か、ミトコンドリアカルシウムユニ
ポータを変更するか、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役するか、または呼
吸を阻害する、薬剤を検出するため、ならびにこのような薬剤の活性を変更する
化合物を検出するための、組成物および方法を意図することが、理解される。こ
の方法は、ミトコンドリアを含むサンプル(例えば、本明細書中に提供されるよ
うな細胞質ゾルを枯渇された細胞、または単離されたミトコンドリア)に、1つ
以上の細胞質ゾル分子成分を再導入することに関し得る。理論に束縛されること
を望むことなく、細胞質ゾルが存在する場合および細胞質ゾルが本明細書中に記
載されるようなミトコンドリア機能についてのアッセイにおいて観察されるよう
に枯渇される場合に得られる結果の差異は、1つ以上の細胞質ゾル分子成分の存
在または活性に起因し得る。このような細胞質ゾル成分としては、例えば、AT
Pまたは他の生化学的分子(例えば、代謝産物、異化代謝産物、中間体、補因子
、基質、触媒など)が挙げられ得る。このような細胞質ゾル成分としてはまた、
例えば、1つ以上のタンパク質、ペプチド、糖ペプチドもしくは糖タンパク質、
核酸もしくはポリヌクレオチド(例えば、DNAもしくはRNAを含む)、脂質
(糖脂質、タンパク脂質もしくはリン脂質を含む)、または糖質、あるいはこの
ような種の任意の組合せが挙げられ得、これは、細胞質ゾル中に存在し得る。細
胞質ゾル分子成分の単離は、当該分野に対して公知の、任意の多くの周知の生化
学的および化学的分離ストラテジー(生物学的サンプル中の細胞質ゾル成分を放
射性標識化する工程もしくはそうでなければ検出可能にタグ化する工程、または
細胞分別、密度沈降、分画抽出(differential extracti
on)、塩沈殿、限外濾過、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、分配ク
ロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、電気泳動、アフィニティー技術
または任意の他の適切な分離方法を含むが、これらに限定されない)に従って達
成され得る。部分的に精製された成分に対する抗体は、当該分野で公知の方法に
従って開発され得、そしてこのような成分を検出および/または単離するために
使用され得る。
【0080】 アフィニティー技術は、本発明の状況において部分的に有用であり得、そして
細胞質ゾル成分と、この細胞質ゾル成分と相互作用する本発明に従って同定され
る薬剤との間の特異的結合相互作用を開発する任意の方法を含み得る。例えば、
ミトコンドリア機能に影響を及ぼす(あるいはATP産生から酸化的リン酸化を
脱共役するか、もしくはミトコンドリアカルシウムユニポータを変更するか、ま
たは呼吸を阻害する)薬剤が、固相マトリクス上に固定化され得るので、細胞質
ゾル成分の単離のためのアフィニティー結合技術は、部分的に有用であり得る。
あるいは、このようなミトコンドリアの機能的に活性な薬剤が反応部分で改変さ
れ得る生物学的分子についてのアフィニティー標識方法は、周知であり、そして
検出可能な部分および/または回収可能な標識部分を細胞質ゾル成分へ導入する
目的のために、この薬剤と細胞質ゾル成分との間の相互作用を容易に適合し得る
(例えば、生物学的分子を単離および特徴付けるための技術(アフィニティー技
術を含む)に関する詳細については、Pierce Catalog and
Handbook、1994 Pierce Chemical Compan
y、Rockford、IL;Scopes,R.K.、Protein Pu
rification:Principles and Practice、1
987、Springer−Verlag、New York;およびHerm
anson,G.T.ら、Immobilized Affinity Lig
and Techniques、1992、Academic Press,I
nc.、Carforniaを参照のこと)。
【0081】 上記のアフィニティー技術または他の生化学的方法によって単離される細胞質
ゾル成分分子種の特徴付けは、細胞質ゾル成分の物理化学的特性(例えば、分光
測定の吸光度、分子サイズおよび/または電荷、溶解度、ペプチドマッピング、
配列分析など)を使用して達成され得る(例えば、Scopes、前出、を参照
のこと)。生体分子についてのさらなる分離工程は、必要に応じて、ミトコンド
リアまたは関連する機能(例えば、本明細書中に記載される機能)に影響を及ぼ
すような細胞質ゾル成分とともに同時精製する分子種をさらに分離および同定す
るために使用され得る。これらは、当該分野で周知であり、そして代表的には複
合体の新たに同定された成分の物理化学的特性に基づく、タンパク質、脂質、核
酸、糖質、または目的の他の生物学的分子の単離のための任意の分離方法論を含
み得る。このような方法の例としては、RP−HPLC、イオン交換クロマトグ
ラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマト
グラフィー、ネイティブおよび/もしくは変性の一次元電気泳動および二次元電
気泳動、限外濾過、キャピラリー電気泳動、基質アフィニティークロマトグラフ
ィー、イムノアフィニティークロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、ま
たは任意の他の有用な分離方法が挙げられる。
【0082】 例えば、十分な量の細胞質ゾルタンパク質は、微小配列決定(microse
quencing)による部分的な構造特徴付けのために得られ得る。このよう
に生成される配列データを使用して、細胞質ゾル成分をさらに特徴付けるための
任意の種々の周知の適切なストラテジーが、使用され得る。例えば、核酸プロー
ブは、1つ以上の適切に選択されたcDNAライブラリーをスクリーニングする
ために合成されて、このような成分をコードするcDNAを検出、単離および特
徴付け得る。他の例としては、さらなるアミノ酸配列情報および/またはヌクレ
オチドは配列情報を得るために、当該分野で周知のさらなるスクリーニングの状
況における部分的な配列データの使用が挙げられ得る。例えば、Molecul
ar Cloning:A Laboratory Manual、第3版、S
ambrook、Fritsch & Maniatis編、Cold Spr
iing Harbor Laboratory、1989を参照のこと。この
ようなアプローチとしては、さらに、ポリペプチドとしてのライブラリー配列の
発現に基づく核酸ライブラリースクリーニングを含み得る。例えば、本発明に従
って同定されるミトコンドリア活性薬剤に対するこのようなポリペプチドの結合
;または公知のミトコンドリアタンパク質とのタンパク質−タンパク質相互作用
に基づくファージディスプレイスクリーニングアプローチもしくはジハイブリッ
ドスクリーニング系などが挙げられ得、これらのいずれかは、当業者が精通して
いる慣用的な方法論を使用して、本発明によって提供されるミトコンドリアの活
性な細胞質ゾル成分についてのスクリーニングに適合され得る(例えば、Bar
telら、Cellular Interactions in Develo
pment:A Practical Approach、D.A.Harle
y編、1993 Oxford University Press、Oxfo
rd、United Kingdom、153〜179頁、およびそこに引用さ
れる参考文献を参照のこと)。好ましくは、培養された細胞の抽出物、および特
に好ましい実施形態においては生物学的組織または器官の抽出物は、新規なミト
コンドリアの活性な細胞質ゾルタンパク質または他の細胞質ゾル因子の供給源で
あり得る。好ましい供給源としては、血液、脳、線維芽細胞、筋芽細胞、肝細胞
または他の細胞型が挙げられ得る。
【0083】 簡潔には、例えば、そしてFiskumら(1980 Proc.Nat.A
cad.Sci.USA 77:3430〜3434)に本質的に基づいて、細
胞質ゾルが保持されるべき透過化処理されたアッセイ細胞について、およそ30
×106個の細胞を含む細胞懸濁物のアリコートは、室温にて16,000×g
で2分間遠心分離することによってペレット化され得、基本インキュベーション
培地(125mM KCl、20mM HEPES−KOH(pH7.0)、2
mM K2HPO4)中に再懸濁され得、そして再度ペレット化され得る。インタ
クト細胞ペレットは、適切な反応容器中に移され、そして呼吸培地(例えば、呼
吸基質として、(i)5mMグルタメートおよび5mMマレート、または(ii
)5mMスクシネートおよび2μM ロテノンのいずれかを含有する、基本イン
キュベーション培地)中で20℃にてアッセイされる。
【0084】 細胞質ゾルが枯渇されるべき細胞をアッセイするために、細胞は、ペレット化
され、再懸濁され、そして上記のよう再度ペレット化され、次いで、呼吸基質お
よびジギトニン(例えば、5mMグルタメート、5mMマレート、0.03%ジ
ギトニン、4mM MgCl2、1mM EGTA、3.0mM ATPを含む
、150mMスクロース、50mM KCl、20mM Hepes、2mM
2HPO4(pH7.0))を含有する基本インキュベーション培地中に再懸濁
される。細胞懸濁物は、この細胞を懸濁物に保つようにディスポーザブル分光光
度計キュベット中で攪拌されながら、室温にて20分間インキュベートされる。
インキュベーション期間の後、10分間4℃にて冷蔵微小遠心管中で20,80
0×gにて遠心分離した後、細胞質ゾルは、ペレット(これは、細胞質ゾルを枯
渇した細胞を含み、そしてミトコンドリア、他の小器官および原形質膜を含む)
から上清として分離される。細胞質ゾルを枯渇化され、ジギトニンで透過化処理
された細胞は、基本培地中に再度再懸濁され、遠心分離によってペレット化され
、そしてこの上清液体が、除去される。全ての細胞小器官を含むペレット(Fi
skumら、1980)は、適切な反応容器に移され、そして呼吸基質(例えば
、グルタメート/マレート)を有するジギトニンを含まないインキュベーション
培地中でアッセイされる。
【0085】 本発明に従う使用のための候補薬剤は、本明細書中に記載されるような細胞に
基づくアッセイにおいてカルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検出
可能に変更する様式で、本明細書中に提供されるようなミトコンドリア機能を変
更することが疑われる任意の組成物であり得る。カルシウム指標分子によって生
成されるシグナルの検出可能な変化とは、代表的に、複数の時点の少なくとも1
点で検出されるシグナルの統計学的に有意な変化(例えば、増加または減少)を
いう。本発明に従って、本明細書中に提供されるようなミトコンドリア機能を変
更する薬剤として同定される候補薬剤は、以下の化合物のいずれでなくてもよい
が、このような化合物は、任意の本発明のスクリーニングアッセイにおいて存在
してもよい:ロテノン、オリゴマイシン、スクシネート、Bcl−2またはシク
ロスポリンA。
【0086】 好ましくは、候補薬剤は、可溶性形態で提供される。理論に結び付けられるこ
とを望まないが、候補薬剤は、(例えば、カルシウムチャネルとの物理的な接触
によって)、細胞質ゾルの遊離のカルシウムレベルを調節するミトコンドリア分
子成分(例えば、カルシウムチャネルまたはユニポータ)の活性を直接変更し得
るか、または間接的に変更し得る(例えば、サンプル中に存在するミトコンドリ
ア分子成分のような、1つ以上のさらなる分子成分との相互作用によって変更し
得、ここで、このようなさらなる成分は、ミトコンドリアカルシウム調節活性を
、この薬剤との接触に応答して変更する)。代表的に、ならびに好ましい実施形
態において、例えばハイスループットのスクリーニングのために、候補薬剤は、
化合物、組成物または分子の「ライブラリー」またはコレクションとして提供さ
れる。このような分子は、代表的に、当該分野で「低分子」として公知であり、
そして105ダルトンより小さい、好ましくは104ダルトンより小さい、そして
さらに好ましくは103ダルトンより小さい分子量を有する化合物を含む。
【0087】 例えば、試験化合物のライブラリーのメンバーは、本明細書中で提供されるよ
うなハイスループットのスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々に
おける複数のサンプルに投与され得る。反応容器の各々は、本明細書中で提供さ
れる条件下で、細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含む少
なくとも1つの細胞を含む。サンプルを、カルシウムカチオンの供給源と接触さ
せ、次いで、カルシウム指標分子によって産生された検出可能なシグナルについ
て複数の時点でアッセイし、そして候補薬剤の存在する各々のサンプルから産生
されたシグナルは、その薬剤の非存在下で産生されたシグナルと比較される。ミ
トコンドリア機能に影響可能である(例えば、カルシウムユニポータ活性の変更
)と同定された化合物は、治療目的および/または診断目的のために価値がある
。なぜなら、それらは、変更されたミトコンドリア機能に関連する疾患の処置お
よび/または検出を可能にするからである。このような化合物はまた、ミトコン
ドリアカルシウムユニポータに関する分子シグナル伝達機構に、ならびにより高
い特異性を示す将来のユニポータ特異的化合物の発見および開発における改良に
関する研究において価値がある。
【0088】 候補薬剤はさらに、コンビナトリアルライブラリーのメンバーとして提供され
得、好ましくは、複数の反応容器中で行われた複数の所定の化学反応に従って調
製された合成薬剤を含む。例えば、種々の出発化合物は、所定の構成要素が、反
応条件の複数の置換および/または組み合わせを追跡可能に受けることを可能に
する1つ以上の固相合成、記録されるランダム混合方法論および記録される反応
分割技術を使用して調製され得る。得られる産物は、スクリーニング、続いて反
復した選択および合成手順がなされ得るライブラリー(例えば、ペプチドの合成
コンビナトリアルライブラリー(例えば、PCT/US91/08694および
PCT/US91/04666を参照のこと)、または本明細書中で提供される
ような低分子を含み得る他の組成物(例えば、PCT/US94/08542、
EP0774464、U.S.5,798,035、U.S.5,789,17
2、U.S.5,751,629を参照のこと))を含む。当業者は、このよう
なライブラリーの多様な組み合わせが、確立された手順に従って調製され得、そ
して本開示に従って生物学的サンプルを使用して試験され得ることを理解する。
【0089】 ミトコンドリア機能を変更する(例えば、増加または減少する)薬剤であると
同定された薬剤は、本発明の方法で使用される場合、好ましくは、薬学的組成物
の一部である。薬学的組成物は、少なくとも1つの薬学的に受容可能なキャリア
、希釈剤または賦形剤、加えてミトコンドリア機能を変更する1つ以上の選択さ
れた薬剤、ならびに必要に応じて他の成分を含む。
【0090】 (治療的適用) 上記のアッセイを使用して同定された薬剤は、ミトコンドリア機能における変
更に関連した疾患および障害に苦しむか、または潜在的にこのような疾患および
障害を発症する素因のある患者への治療(remedial)効果、治療(th
erapeutic)効果、緩和効果、リハビリテーション効果、予防(pre
ventative)効果、および/または予防(prophylactic)
効果を有し得る。このような疾患は、異常な(abnormal)カルシウム調
節活性、異常な(supernomal)カルシウム調節活性、非効率的なカル
シウム調節活性、効果のないカルシウム調節活性または有害なカルシウム調節活
性(例えば、カルシウムならびに/または直接的もしくは間接的なカルシウム依
存性の生物学的分子および高分子(例えば、タンパク質およびペプチドならびに
それらの誘導体)、炭水化物およびオリゴ糖ならびにそれらの誘導体(糖タンパ
ク質および糖脂質のような複合糖質を含む)、脂質、核酸および補因子(イオン
)、メディエイタ、前駆体、異化代謝産物などを含む)の、取り込みにおける欠
陥、放出における欠陥、活性における欠陥、隔離における欠陥、輸送における欠
陥、代謝における欠陥、異化における欠陥、合成における欠陥、貯蔵における欠
陥もしくはプロセシングにおける欠陥によって特徴付けられる。
【0091】 このような疾患および障害としては、例として(限定ではない)、慢性神経変
性障害(例えば、アルツハイマー病(AD)およびパーキンソン病(PD));
自己免疫疾患;I型およびII型を含む糖尿病;ミトコンドリア構造異常を伴う
先天性筋ジストロフィー、重度のmtDNA枯渇を伴う致死性乳児ミオパシーお
よびmtDNAの中程度の減少を伴う良性「後期発病」ミオパシー、MELAS
(ミトコンドリア脳障害、乳酸アシドーシスおよび発作)およびMIDD(ミト
コンドリア糖尿病および難聴)を含むが、これらに限定されないミトコンドリア
関連疾患;MERFF(ミオクローヌスてんかん不規則赤筋線維症候群(myo
clonic epilepsy ragged red fiber syn
drome);関節炎;NARP(ニューロパシー;運動失調;色素性網膜炎)
;MNGIE(ミオパシーおよび外眼筋麻痺症;ニューロパシー;胃腸;脳障害
)、LHON(レーバー遺伝性視神経障害)、キーンズ−セイアー疾患;ピアー
ソン症候群;PEO(進行性外眼筋麻痺症);ウォルフラム症候群;DIDMO
AD(尿崩症、糖尿病、視神経萎縮、難聴);リー症候群;失調症;精神***病
;ならびに癌、腫瘍および乾癬のような過剰増殖障害)が挙げられる。
【0092】 慢性神経変性疾患とは対照的に、発作に続いたニューロン死は、急性の様式で
生じる。現在、多量の文献が、発作、心拍停止および脳への外傷傷害を付随する
虚血/再灌流傷害に続いたニューロン死におけるミトコンドリア機能の重要性を
実証する。急性神経変性の病因における、不完全なエネルギー代謝、増加した酸
素ラジカル産生および損なわれた細胞内カルシウム恒常性の原因となるミトコン
ドリア機能における変更、ならびにアポトーシスのカスケードにおける活性なミ
トコンドリアの関与の中心的な役割についての実験的な裏付けが、蓄積し続けて
いる。
【0093】 脳のある領域が灌流を失い、この突然の虚血事象の結果として、ニューロンは
、急性的にか、または遅延性の様式で死ぬ場合、発作は起こる。脳への血液の供
給が止まると、組織のATPの濃度は、数分以内でごくわずかなレベルにまで低
下する。梗塞のコアでの、ミトコンドリアのATP産生の欠如が、イオンの恒常
性の喪失を引き起こし、浸透圧性細胞溶解および壊死性の死を引き起こす。多数
の二次変化がまた、ミトコンドリアのATPの減少に続いた細胞死に寄与し得る
。急性のニューロン傷害における細胞死は、ニューロンが、主に壊死によって死
ぬ梗塞の中心から、ニューロンがアポトーシスを受ける周縁部へ、組織がなおい
たんでいない末梢部へと広がる(Martinら、Brain Res.Bul
l.46:281〜309、1998)。
【0094】 周縁部におけるニューロンに対する傷害の多くは、特に酸素の欠乏によるミト
コンドリアの生体エネルギー不全によって悪化する場合、梗塞病巣での細胞溶解
の間に放出されたグルタメートよって誘導された興奮毒性によって引き起こされ
る(MacManusおよびLinnik、J.Cerebral Blood
Flow Metab.17:815〜832、1997)。興奮毒性におけ
る最初のトリガーは、主にNMDAレセプターを介したCa2+の多量の流入であ
り、ミトコンドリアへのCa2+の取り込みの増加を生じる(Dykens、「F
ree radicals and mitochondrial dysfu
nction in excitotoxicity and neurode
generative diseases」Cell Death and D
iseases of the Nervous System,V.E.Ko
liatosおよびR.R.Ratan編、Humana Press、New
Jersey、45〜68頁、1999によって概説される)。Ca2+過負荷
は、ミトコンドリア膜電位(ΔΨm)を崩壊させ、そして反応性の酸素種の産生
の増加を誘導する(Dykens、J.Neurochem.63:584〜5
91、1994;Dykens、「Mitochondrial radica
l production and mechanisms of oxida
tive excitotoxicity」The Oxygen Parad
ox、K.J.A.DaviesおよびF.Ursini編、Cleup Pr
ess、U.of Padova、453〜467頁、1995)。十分に厳し
い場合、ΔΨmは崩壊し、そしてミトコンドリアCa2+封鎖はMPTを誘導し得
、シトクロムcおよびアポトーシスを開始する他のタンパク質を間接的に放出す
る(Bernardiら、J.Biol Chem 267:2934〜293
9、1994;Zorattiら、Biochim Biophys Acta
1241:139〜176、1995;Ellerbyら、J.Neuros
ci 17:6165〜6178、1997)。これらの知見と一致して、グル
タメート誘導性興奮毒性は、ミトコンドリアのCa2+の取り込みを妨げることに
よってか、またはMPTをブロックすることによって抑制され得る(Buddら
、J.Neurochem 66:403〜411、1996;Whiteら、
J.Neurosci 16:5688〜5697、1996;Liら、Bra
in Res 753:133〜140、1997;Stoutら、Nat.N
eurosci. 1:366〜373、1998)。
【0095】 虚血/再灌流傷害、外傷性組織傷害および/または発作の間、ミトコンドリア
の統合性を維持する薬剤および方法は、体組織に対する何らかの虚血/再灌流傷
害を制限する際に有用性を有する新規の保護性薬剤であると期待される。梗塞の
コアで壊死性死の遮断についての制限された治療ウインドウを考慮すると、梗塞
の非壊死領域におけるミトコンドリア機能障害を防ぐことによってニューロンの
死を制限するために治療のストラテジーを開発することが、特に望まれ得る。本
明細書中で提供されるように、このような薬剤は、化合物のコレクションを、一
過性虚血を模倣する興奮毒性条件下でそれらの細胞質ゾルのカルシウムのミトコ
ンドリアの調節を変更する(例えば、増加または減少させる)能力についてスク
リーニングすることによって同定され得る。理論に結び付けられることを望まな
いが、発作について好ましい薬剤は、ミトコンドリアのカルシウムの取り込みを
低下させるか、または減少させる薬剤であり得る。このような薬剤は、発作をす
でに起こしたか、または発作を起こす素因があると考えられる患者に対して、治
療(remedial)効果、治療(therapeutic)効果、緩和効果
、リハビリテーション効果、予防(preventative)効果、予防(p
rophylactic)効果または疾患の妨げとなる効果を有すると期待され
る。本発明の細胞質ゾルカルシウムに基づくアッセイはまた、どの薬剤が所定の
個体に効果的である可能性が最も高いかを評価するために使用され得る。なぜな
ら、変更されたカルシウムの調節を示すミトコンドリアを有する患者は、カルシ
ウムのミトコンドリア調節を調節する薬剤に対して、正常なカルシウム調節プロ
フィールを伴うミトコンドリアを有する患者よりも応答する可能性が高いと期待
されるからである。
【0096】 逆に、特定の他の疾患の適応領域において、カルシウム調節活性に関するミト
コンドリア機能を変更する薬剤の所望の特性は、ミトコンドリアによってカルシ
ウムの取り込みまたは保持の促進であり得る。例えば、特定の型の癌においてか
、または癌細胞において過剰発現することが公知の遺伝子で形質転換された特定
の細胞において、上昇した細胞質ゾルのカルシウムのレベルは、潜在的に、ミト
コンドリアにおける過剰のカルシウムの封鎖によって支配される有害な影響を有
し得る。従って、ミトコンドリア取り込みをアップレギュレートする本発明に従
う薬剤の同定は、有益な治療剤を提供し得る。同様に、いくつもの他の疾患モデ
ル、細胞系または他の生物学的状況において、例えば、不適切なカルシウム管理
からのストレスに特に感受性である(または例えば、Bcl−2のようなアポト
ーシス経路成分の発現を変更することによってか、アポトーゲン(apopto
gen)に曝露することによってか、または細胞内カルシウム分布を変更する薬
剤に曝露することによってそのようになされ得る)細胞を同定する系において、
本発明は、ミトコンドリア機能を変更することによって異常なカルシウム調節を
変更する薬剤を同定する機会を提供する。
【0097】 治療用途のために「薬学的に受容可能なキャリア」は、薬学の分野において周
知であり、そして、例えばRemingtons Pharmaceutica
l Sciences、Mack Publishing Co.(A.R.G
ennaro編(1985))に記載される。例えば、生理的pHの滅菌の生理
食塩水およびリン酸緩衝化生理食塩水が、使用され得る。保存剤、安定剤、色素
およびさらに矯味矯臭剤が、薬学的組成物に供給され得る。例えば、安息香酸ナ
トリウム、ソルビン酸およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステルが、保存剤とし
て添加され得る。同書の1449.さらに、抗酸化剤および懸濁化剤が使用され
得る。同書。
【0098】 「薬学的に受容可能な塩」とは、このような化合物と有機酸もしくは無機酸(
酸添加塩)または有機塩基もしくは無機塩基(塩基付加塩)との組み合わせから
得られる本発明の化合物の塩のことをいう。本発明の化合物は、遊離塩基形態ま
たは遊離塩形態のいずれかで使用され得、両方の形態は、本発明の範囲内である
と考えられる。
【0099】 本明細書中で提供されたようなミトコンドリア機能を変更する1つ以上の薬剤
を含む、薬学的組成物は、組成物を患者に投与することを可能にする任意の形態
であり得る。例えば、この組成物は、固体、液体または気体(エアゾール)の形
態であり得る。投与の代表的な経路としては、経口、局所、非経口(例えば、舌
下に、または頬に)、舌下、直腸、膣内および鼻腔内が挙げられるが、これらに
限定されない。本明細書中で使用される場合、用語非経口としては、皮下注射、
静脈内、筋肉下、胸骨内、海綿内、道内(intrameatal)、尿道内注
射または注入技術が挙げられる。この薬学的組成物は、この組成物を患者に投与
した際にそこに含まれる活性成分が生物学的に利用可能であることを許容するよ
うに処方される。患者に投与される組成物は、1つ以上の投薬単位の形態を採る
。例えば、錠剤は、単一の投薬単位であり得、そしてエアゾール形態における1
つ以上の本発明の化合物の容器は、複数の投薬単位を収容し得る。
【0100】 経口投与に関して、賦形剤および/または結合剤が存在し得る。例は、スクロ
ース、カオリン、グリセリン、デンプンデキストリン、アルギン酸ナトリウム、
カルボキシメチルセルロースおよびエチルセルロースである。着色剤および/ま
たは矯味矯臭剤が存在し得る。被覆外皮が使用され得る。
【0101】 この組成物は、液体(例えば、エリキシル、シロップ、溶液、エマルジョンま
たは懸濁液)の形態であり得る。この液体は、2つの例として、経口投与のため
か、または注射による送達のためであり得る。経口投与を目的とした場合、好ま
しい組成物は、ミトコンドリア機能を変更する1つ以上の薬剤に加えて、1つ以
上の甘味剤、保存剤、色素/着色料および風味相乗剤を含む。注射によって投与
することが目的の組成物において、1つ以上の界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分
散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定剤および等張剤が含まれ得る。
【0102】 本明細書中で使用される場合、液体薬学的組成物は、溶液、懸濁物またはその
他の類似形態の形態であるかに関わらず、以下のアジュバントのうちの1つ以上
を含有し得る:注射用水、生理食塩水溶液、好ましくは、生理食塩水、リンガー
溶液、等張塩化ナトリウム、溶媒または懸濁媒質として役立ち得る不揮発性油(
例えば、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリド)、ポリエチレングリコー
ル、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒のような滅菌希釈液;抗
菌剤(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);抗酸化剤(例えば
、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム);キレート剤(例えば、エチレン
ジアミン四酢酸);緩衝剤(例えば、アセテート、シトレートまたはホスフェー
ト)および張度の調整のための薬剤(例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロ
ース)。非経口調製物は、アンプル、使い捨て注射器またはガラスまたはプラス
チック製の多用量バイアル中に封入され得る。生理食塩水は、好ましいアジュバ
ントである。注射可能薬学的組成物は、好ましくは無菌である。
【0103】 非経口投与または経口投与のいずれかが目的の液体組成物は、適切な投薬が達
成されるように、本明細書中で提供されるようなミトコンドリア機能を変更する
量の薬剤を含有すべきである。代表的には、この量は、組成物において少なくと
も0.01重量%の薬剤である。経口投与が目的の場合、この量は、組成物の重
量の0.1%と約70%との間で変化し得る。好ましい経口組成物は、ミトコン
ドリア機能を変更するこの薬剤を約4%と約50%との間で含有する。好ましい
組成物および調製物は、非経口投薬単位が0.01重量%〜1重量%の活性化合
物を含むように調製される。
【0104】 薬学的組成物は局所的投与が目的であり得、この場合、キャリアは、溶液、エ
マルジョン、軟膏またはゲル基剤を適切に含有し得る。例えば、この基剤は、以
下のうちの1つ以上を含有し得る:ペトロラタム、ラノリン、ポリエチレングリ
コール、蜜蝋、鉱油、希釈剤(例えば、水およびアルコール)、および乳化剤な
らびに安定剤。濃化剤は、局所的投与のための薬学的組成物中に存在し得る。経
皮的投与が目的の場合、この組成物は、経皮パッチまたはイオン導入デバイスを
含み得る。局所的処方物は、約0.1〜約10%w/v(単位容量あたりの重量
)のミトコンドリア機能を変更する濃度の薬剤を含有し得る。
【0105】 この組成物は、直腸投与(例えば、直腸において融解し、そして薬物を放出す
る坐薬の形態において)が目的であり得る。直腸投与のための組成物は、適切な
非刺激賦形剤として油性基剤を含有し得る。このような基剤としては、ラノリン
、ココアバターおよびポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定さ
れない。本発明の方法において、本明細書中に記載されるような同定されたミト
コンドリア機能を変更するこの薬剤は、挿入物、ビーズ、徐放性(timed−
release)処方物、パッチまたは速放性(fast−release)処
方物の使用を通して投与され得る。
【0106】 ミトコンドリア機能を変更するこの薬剤の最適な投薬量は、患者の体重および
体調;処置するべき体調の重篤度および寿命;活性成分の特定の形態;投与の様
式および使用される組成物に依存し得ることは、当業者にとって明らかである。
化学治療的組成物において本明細書中に開示されるミトコンドリア機能を変更す
る薬剤の使用は、この薬剤の送達を援助する別の化合物(例えば、モノクロナー
ル抗体もしくはポリクロナール抗体、タンパク質またはリポソーム)に結合する
ような薬剤を含み得ることは理解されるべきである。
【0107】 (種特異的薬剤) 特定の実施形態において、本発明は、種特異的薬剤を同定するためのスクリー
ニングアッセイを提供する。「種特異的薬剤」とは、ある供給源(例えば、種)
におけるミトコンドリアのカルシウム調節に影響するが、第2の供給源において
ミトコンドリアのカルシウム調節に実質的に影響しない薬剤をいう。つまり、こ
の薬剤は、他の種への影響の少なくとも2倍である、ある種への影響を有するべ
きである。本明細書中に提供されるスクリーニングアッセイは、異なる生物学的
供給源から得られた細胞および/またはミトコンドリアを使用して、このような
薬剤を同定するために使用され得る。
【0108】 本発明のこの実施形態を使用して、例えば、異なる種(例えば、トリパノソー
マ(Ashkenaziら、Science 281:1305−1308,1
998)、ならびに他の真核生物の病原体および寄生生物(昆虫を含むがこれら
に限定されない))においてミトコンドリアカルシウム媒介アポトーシスを選択
的に誘導するが、それらの哺乳動物宿主の細胞においてアポトーシスを誘導しな
い薬剤を同定し得る。このような薬剤は、このような病原体および寄生生物の予
防的管理または治療的管理のために有用であることが推測される。例えば、Ri
dgleyら(Biochem.J.340:33−40,1999)は、単細
胞生物Trypanosoma brucei brucei(ヒトにおいて「
睡眠病」の原因物質に関するアフリカにおける野生狩猟動物の寄生生物)におい
てCa2+依存性細胞死プロセスを記載する。ROS(反応性酸素種)の産生の後
、ミトコンドリアのCa2+輸送が、損なわれ、そして核エンベロープと細胞質ゾ
ルとの間のCa2+バリアは、崩壊した。結果として、ミトコンドリアは、「Ca 2+ 貯蔵所」として作用し得ないで、そしてCa2+は、多くのDNA断片化が起る
核において蓄積された。マウスBcl−2を発現するトリパノソーマは、(RO
Sおよびミトコンドリア機能不全からのBcl−2媒介保護は、哺乳動物細胞に
ついて報告されているにも関わらず)ROSから保護されなかった。従って、寄
生住血鞭毛虫類T.brucei bruceiは、後生動物のように、Ca2+ 依存性細胞死経路を有しているようであるが、それでもなお後生動物Ca2+依存
性細胞死経路と違い(例えば、その生化学に関して)を有する。本発明の1つの
目的は、このような違いを利用して、開示のこのスクリーニングアッセイを使用
して、抗生物質効果を有する化合物を見出すことである。なぜなら、この化合物
は、トリパノソーマCa2+依存性細胞死経路を誘導するが、哺乳動物Ca2+依存
性細胞死経路は誘導しないからである。
【0109】 別の例として、Apicomplexa門(以前は、Sporozoaと称さ
れた)のメンバーは、細胞内寄生生物である病原性原生動物の大きくかつ多様な
群を含む。いくつかのメンバー(Babesia、TheileriaおよびE
imeriaの種を含む)は、経済的に重要な動物の疾患を引き起こし、そして
他のメンバー(例えば、Toxoplasma gondii種およびCryp
tosporidium種)もまた、ヒト(特に、免疫無防備状態の個体におい
て)の疾患を引き起こす。アコンプレキシカン(acomplexican)は
、ミトコンドリアゲノムおよび推定プラスチドゲノムの両方を含むので、それら
の染色体外DNAエレメントに関しては異常である(総説については、Feag
in,Annu.Rev.Microbiol.48:81−104,1994
を参照のこと)。おそらく、最もよく研究されたアコンプレキシカン(acom
plexican)は、マラリアを引き起こすPlasmodiumの種である
。抗マラリア剤は、Plasmodiumミトコンドリアの機能に特異的に影響
する薬剤を含み(Peterら、Ann.Trop.Med.Parsitol
.78:567−579,1984;Bascoら、J.Eukaryot.M
icrobiol.41:179−183,1994)、そしてこのような薬剤
の1つであるアトバクオン(atovaquone)は、Plasmodium
yoelii由来のミトコンドリアにおけるΔΨを崩壊するが、哺乳動物ミト
コンドリアのΔΨには影響を与えない(Srivastavaら、J.Biol
.Chem.272:3961−3966,1997)。従って、本明細書中で
提供されるアッセイを使用して、新規な抗マラリア剤のための化合物(例えば、
PlasmodiumミトコンドリアにおいてΔΨ崩壊を引き起こすが、哺乳動
物ミトコンドリアにおいては引き起こさない化合物)のライブラリーをスクリー
ニングし得る。
【0110】 別の例としては、本明細書中で提供されるスクリーニング方法を使用して、望
ましくない植物(例えば、雑草)由来のミトコンドリアにおいてΔΨ崩壊を選択
的に誘導するが、所望の植物(例えば、作物)においては誘導しないか、または
望ましくない昆虫(特に、Lepidopteraファミリーのメンバーおよび
作物に損害を与える他の昆虫)においてΔΨ崩壊を誘導するが、所望の昆虫(例
えば、ミツバチ)もしくは所望の植物においては誘導しない薬剤を同定し得る。
このような薬剤は、このような望ましくない植物および昆虫の管理および制御の
ために有用であると予想されている。培養昆虫細胞(例えば、Spodopte
ra frugiperda由来のSf9およびSf21細胞株およびTric
hopolusia ni由来のHIGH FIVETM細胞株(これら3つの細
胞株は、Invitrogen,Carlsbad,CAから入手可能である)
を含む)は、本発明の特定のこのような実施形態におけるミトコンドリアの供給
源であり得る。
【0111】 本明細書中に引用されるすべての刊行物および特許出願は、各々個々の刊行物
または特許出願が、参考として援用されるために具体的かつ個別に示されるよう
に、本明細書中に参考として援用される。前述の発明は、理解の明確さの目的で
、例証および実例として幾分詳細に記載されているが、本発明の教示を鑑みると
、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく、特定の変更お
よび改変がそこになされ得ることは、当業者に容易に明らかである。
【0112】 以下の実施例は、本発明を例示し、本発明を限定することを意図されない。当
業者は、慣用的な実験を通して、本明細書中に記載される特定の物質および手順
の多数の等価物を認識するか、または確認し得る。このような等価物は、本発明
の範囲内にあるとみなされる。
【0113】 (実施例) 上記のように、ミトコンドリアまたはその誘導体(例えば、亜ミトコンドリア
粒子(SMP))を含む、種々の異なる型のサンプルは、このアッセイの方法に
おいて使用され得る。完全な(透過化処理されていない(nonpermeab
ealized))細胞が使用され得るが、以下に説明されるような透過化処理
された細胞に関する潜在的な欠点を有する。
【0114】 透過化処理された細胞は、原形質膜選択的透過性の部分的または完全な喪失を
生じる様式で処理されている細胞である。第一の例として、細胞外環境中のカル
シウムカチオンを、透過化処理された細胞中に拡散させ、そしてミトコンドリア
と接触させることを可能にする様式で、細胞を透過化処理することが所望であり
得る。従って、この場合においては、透過化処理はカルシウムイオノフォアの使
用の代替として作用する。第2の例として、特定の検出可能な分子(例えば、本
明細書中で提供されるような検出可能なシグナルを発生し得るカルシウム指標分
子)は、それらのサイトゾルへの侵入がある様式で容易にされない限り、中程度
の速度(すなわち、制限された程度)で原形質膜を透過し得る。細胞の透過化処
理は、それによってこのような検出可能な分子のサイトゾルへの侵入が促進され
得る1つの様式である。第3の例として、この方法に従って試験されるいくつか
の候補薬剤は、それらのサイトゾルへの侵入がある様式で容易にされない限り、
中程度の速度(すなわち、制限された程度)で原形質膜を透過し得る。細胞の透
過化処理は、これによってこのような候補薬剤のサイトゾル空間への侵入が容易
にされ得る1つの様式である。これらの条件下で同定される活性薬剤は、続いて
完全な細胞によるこれらの取込みを増強するために化学的に改変され得;このよ
うに改変された活性薬剤は、薬物の開発のためのリード化合物として役立つこと
が期待され、そして、いくつかの場合においては、それ自身が薬物または薬物候
補として使用され得る。
【0115】 上記のようにまた、当業者は細胞を透過化処理するための方法(例えば、限定
ではなく例示としては、界面活性物質、界面活性剤、リン脂質、リン脂質結合タ
ンパク質、酵素、ウイルス膜融合タンパク質などの使用を通じた方法;特定の細
菌毒素(例えば、α−溶血素)への曝露による方法;サポニン(ジギトニンの場
合、これもまた、非イオン性界面活性剤である)のような溶血素との接触による
方法;浸透圧的に活性な薬剤の使用を通じた方法;化学架橋剤を使用することに
より方法;エレクトロポレーションなどを含む物理化学的な方法による方法、ま
たは例えば、エレクトロポレーションのような物理的操作を含む他の透過化処理
手順による方法)に精通している。特定の状況において最も適切な透過化処理薬
剤の決定は、その薬剤の特定の選択された細胞株に対する毒性、細胞に侵入する
ことが所望される薬剤の分子の大きさなど含む因子に基づき得る(例えば、Sc
hulz,Methods Enzymol.192:280−300,199
0を参照のこと)。
【0116】 従って、細胞は、任意の種々の公知の技術(例えば、細菌毒素であるストレプ
トリジンOまたはStaphylococcus aureus α−毒素(α
−溶血素としても知られている)のような透過化処理薬剤;サポニンのような他
の溶血性薬剤の添加による技術;または、細胞を溶解し、そして膜を可溶化する
ために使用される濃度より低い濃度(すなわち、臨界ミセル濃度より低い濃度)
での、1以上の界面活性剤(例えば、ジギトニン、Triton X−100、
NP−40、n−オクチル β−D−グルコシドなど)への曝露)を用いて透過
化処理され得る。特定の通常のトランスフェクト試薬(例えば、DOTAP)も
また使用され得る。ATPもまた、固定液として通常使用される低い濃度の化学
薬品(例えば、ホルムアルデヒド)が使用され得るように、インタクトな細胞を
透過化処理するために使用され得る。この段落に記載されるすべての透過化処理
薬剤は、例えば、Sigma Chemical Co.,St.Louis,
MO(「Biochemicals and Reagents for Li
fe Science Research」と題されたSigmaカタログ、A
non.,1999、およびこれらの透過化処理薬剤および他の透過化処理薬剤
のためにこのカタログ中に引用される参考文献を参照のこと)から入手可能であ
る。
【0117】 透過化処理された細胞は、目的の化合物(例えば、ミトコンドリア機能を変更
する候補薬剤(ATP産生からの酸化的リン酸化の脱共役剤、呼吸抑制剤、また
はミトコンドリアのカルシウムユニポータ活性を変更する薬剤を含む)の存在下
および/または非存在下で、ユニポータ活性についてアッセイされ得る。カルシ
ウム感受性の検出可能な試薬(これは蛍光体であり得る)は、培地中に存在し、
そしてこの試薬が透過化処理された細胞のサイトゾル空間中に自由に拡散するが
、1以上の細胞下カルシウムリザーバ(例えば、小胞体(RE)またはミトコン
ドリアのような細胞小器官など)には侵入しない条件を確立する。Ca2+イオン
はまた、透過化処理された細胞に自由に侵入するが;本発明の1つの実施形態に
おいては、1以上の細胞内Ca2+調節物質(ICMA)の存在のために、Ca2+ イオンは、例えば、ERまたはミトコンドリアのような特定の細胞内カルシウム
リザーバへ侵入せず、そして/またはそこから放出される。
【0118】 単離された(すなわち、それらが天然に存在するかまたは生合成された細胞の
環境から物理的に分離された)かもしくは半精製されたミトコンドリア、または
亜ミトコンドリア粒子もまた、本発明のアッセイにおいて使用され得る。種々の
種、細胞、組織および器官からミトコンドリアを精製する方法は、当該分野にお
いて公知である(例えば、Glickら、Methods in Enzymo
logy 260:213−223,1995;Scholteら、Mol.C
ell.Biochem.174:61−66,1997;Almeidaら、
Brain Res.764:167−172,1997;Schildら、A
cta Opthalmol.Scand.74:354−357,1996を
参照のこと)。従って、本発明の特定の実施形態に従って、本明細書中で提供さ
れるような生物学的サンプルは、1以上の単離されたミトコンドリア(好ましく
は、適切な水性緩衝液のような液体培地中の懸濁液として提供される)を含み得
る。より好ましくは、このような緩衝液は、ミトコンドリアの呼吸活動(例えば
、酸化的リン酸化)を補助し得る「呼吸性培地」であり、そしてさらにより好ま
しくは、このような呼吸性培地は、本明細書中に記載されるようなミトコンドリ
アの膜電位の維持を可能にする。
【0119】 上記で引用される方法に加え、特定の好ましい実施形態におけるミトコンドリ
アの調製は、Greenawaltら(1970 J.Cell Biol.4
6:173)、Greenawalt(1979 Meths.Enzymol
.55:88)またはPedersonら(1978 Meth.Cell B
iol.20:411)に記載される方法および組成物(呼吸性培地を含む)を
使用し得る。生物学的サンプルが培地(例えば、呼吸性培地)中に1つ以上の単
離されたミトコンドリアおよび1つのカルシウム指標分子を含む、本発明の特定
の実施形態にさらに従い、サンプル中のカルシウムのレベルに比例する検出可能
なシグナルを生成し得るカルシウム指標分子は、好ましくはRhod−2または
その誘導体(例えば、Rohd−2−AM)のようなミトコンドリア内カルシウ
ムの指標、Fura−2もしくはその誘導体(例えば、Fura−2−AM)の
膜透過性の形態、またはエクオリンである。これらおよび他の適切な指標は、M
olecular Probes,Inc.(Eugene,OR)から入手可
能であり、そしてHaugland、1996 Handbook of Fl
uorescent Probes and Research Chemic
als−第6版、(Molecular Probes、Eugene,OR)
(そこに引用される参考文献を含む)において記載される。生物学的サンプルが
培地(例えば、呼吸性培地)中に1つ以上の単離されたミトコンドリアおよび1
つのカルシウム指標分子を含む、本発明の特定の他の実施形態に従い、サンプル
中のカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得るカルシウム
指標分子は、好ましくはCalcium GreenTM 5Nのようなミトコン
ドリア外カルシウムの指標、またはFura−2塩のような非膜透過性形態のF
ura−2であり、これらの指標はまた、Molecular Probes,
Inc.(Eugene、OR)から入手可能であり、そしてこれらはまた、H
augland(1996)に記載される他の適切な指標と共に存在する。本明
細書中の他の箇所に記されるように、特定の条件下で、ミトコンドリアの内膜を
横切るカルシウムカチオン輸送は、ミトコンドリアのカルシウムユニポータより
も顕著に低い運動速度であるにも関わらず、公知のNa+/Ca+アンチポータ(
および/またはCa+/H+交換体)により媒介され得る。従って、本明細書に開
示される特定の実施形態に従い、外因的に導入されるいかなるナトリウムカチオ
ンの非存在下で、本発明の方法を実施することが望ましく、これは非限定的な理
論に従って、カルシウムシグナルのレベルに対するNa+/Ca+アンチポータに
よる任意の検出可能な寄与を排除または減少するべきである。
【0120】 単離されたミトコンドリアまたは半精製されたミトコンドリアからの亜ミトコ
ンドリア粒子(SMP)の調製に関する方法もまた、当該分野で公知である(例
えば、Walkerら、Methods in Enzymology 260
:163−190,1995;およびGarlidら、Methods in
Enzymology 260:331−348、1995を参照のこと)。ミ
トコンドリア(そこからSMPが単離される)とは構造的に異なるが、SMPは
、インタクトなミトコンドリアの多くの機能を保持する(例えば、Muscar
iら、Biochim.Biophys.Acta 1015:200−204
、1990;およびSastrasinhら、Am.J.Physiol.25
7:F1050−F1058、1989を参照のこと)。
【0121】 本発明の特定の実施形態では、カルシウム感受性の検出可能な試薬およびIC
MAの適切な組み合わせを使用することにより、特定の細胞内Ca2+リザーバ(
例えば、ミトコンドリア)からのCa2+の取り込みまたは放出に対応するシグナ
ルが、生成される。例えば、ERおよび他のミトコンドリア外のCa2+リザーバ
からの取り込みをブロックする、そして/または放出を促進するために使用され
るICMA、およびミトコンドリアに侵入しないカルシウム感受性の検出可能な
試薬が使用される場合、検出可能なCa2+シグナルの濃度における任意の変化は
、ミトコンドリアからのCa2+の取り込みまたは放出に起因する(図1〜図3を
参照のこと)。
【0122】 ミトコンドリアに加えて、公知の細胞内カルシウムリザーバとしては、小胞体
(ER)のような他のオルガネラが挙げられる。ERは、ほとんどの細胞型にお
いて見出され、そして大きな細胞内の空間を含む一連の平坦なシート、管および
嚢からなる。ERの膜は、核膜と構造的に連続し、そして細胞質にわたって広が
っている。ERのいくつかの機能としては、膜タンパク質および脂質の合成およ
び輸送が挙げられる。概して、2つの型のERが細胞内に存在し得る。滑面ER
は、形状がほぼ管状であり、そして代表的に結合リボソームを欠き;滑面ERの
1つの主要な機能は、脂質代謝である。粗面ERは、代表的に平坦なシートとし
て生じ、そのサイトゾル側は、通常多くの活性(タンパク質合成する)リボソー
ムが会合する。
【0123】 従って、1つの実施形態では、本発明は、ミトコンドリアのカルシウムレベル
に影響するミトコンドリア外のカルシウムおよび因子(例えば、カルシウムユニ
ポータ(CaUP))についてのアッセイ、およびそのような因子に影響を及ぼ
すか、さもなければミトコンドリアカルシウムのレベルに影響を及ぼす薬剤(例
えば、化学化合物)についてのスクリーニングの方法を提供する。本実施形態に
おいて、ERおよび他のミトコンドリア外カルシウムリザーバによる取り込みを
阻止、および/またはERおよび他のミトコンドリア外カルシウムリザーバから
のカルシウムの放出を促進するICMA(他に示されない限り、全てCalbi
ochem、San Diego、CA製)が使用される。このような薬剤とし
ては、限定ではなく例として、ERに対しては、タプシガルジンおよびタプシガ
リシン(thapsigaricin)が挙げられる。
【0124】 別の実施形態では、本発明は、ERから放出されるカルシウムおよびERにお
けるCa2+のレベルに影響する因子についてのアッセイ、およびERにおけるC
2+のレベルに影響を及ぼす薬剤(例えば、化学化合物)についてのスクリーニ
ングの方法を提供する。本実施形態において、ミトコンドリアおよびER以外の
他のカルシウムリザーバによる取り込みを阻止、および/またはミトコンドリア
およびER以外の他のカルシウムリザーバからのカルシウムの放出を促進するI
CMA(他に示されない限り、全てCalbiochem、San Diego
、CA製)が使用され;このような薬剤としては、限定ではなく例として、ミト
コンドリアに対しては、ルテニウムレッドおよびRu−360、ならびに脱共役
剤(例えば、CCCPおよびFCCP)が挙げられる。
【0125】 本発明は、以下の問題を解決するか、または以下の制限を克服する。(1)総
ミトコンドリア外のCa2+が測定され得、(2)その測定が、それらのリアルタ
イムの反応速度論的アッセイにおいて行われ得、(3)その反応速度論的アッセ
イが、内在性分子または細胞中へ人為的に導入される分子の作用に影響を与える
化合物についてのハイスループットスクリーニング(HTS)を提供し、ここで
、このような分子は、直接的または間接的のどちらかでミトコンドリア外カルシ
ウムレベルを調節する。本発明は、以下の利点を提供する:(A)アッセイが、
ミトコンドリアの膜電位をカルシウムユニポータのための駆動力にすることを可
能にする条件下で行われ得る;(B)ミトコンドリア外のカルシウムリザーバか
らの競合シグナルが、減少または排除され得る;(C)(A)および(B)を理
由として、本発明のアッセイは、ミトコンドリアのカルシウムユニポータに特異
的なアッセイを提供する。
【0126】 Ca2+ユニポータ(Ca UP)は、ミトコンドリアの膜電位(低親和性、高
Vmax)により駆動され、そしてSr2+、Mn2+、La3+により競合的に阻害
され;Mg2+、ルテニウムレッド、Ru360により阻害され;ADPにより活
性化され、そしてATPにより阻害され;そしてミトコンドリア透過性移行(M
TP)孔を刺激するCa2+隔離を担う。また、Ca2+ユニポータは、種々の組織
における虚血/再灌流障害、ならびにニューロンの興奮毒性死に明らかに関連し
、そして大量のCa2+負荷に対応する細胞の能力が損なわれた慢性神経変性疾患
において役割を果たし得る。CaUPはクローニングされていない。
【0127】 本発明の特定の実施形態に従うアッセイの実施に関連する技術的な詳細は、本
明細書中に記載され、そして適切な条件の例は、例えば、Murphyら(Pr
oc.Natl.Acad.Sci USA.93:9893−9898、19
96)において見出され得る。手短に言えば、本発明のいくつかの実施形態にお
いて、細胞は、カルシウム感受性の検出可能な試薬を有する、呼吸性培地(塩化
カリウムベースであり、ミトコンドリア呼吸性基質(例えば、グルタミン酸塩、
リンゴ酸塩、コハク酸塩、ピルビン酸塩およびリンゴ酸塩、ならびにその他多数
)を含む塩)の存在下で透過化処理される。この試薬は、例えば、0.1〜1.
0マイクロモルで使用されるCalcium−Green−5N(Molecu
lar Probes、C−3737、ヘキサカリウム塩)であり得る。表1に
提示される試薬を含むが限定されない他のカルシウム感受性の検出可能な試薬が
使用され得る。細胞は、現在、培地中で懸濁されるが、これらは潜在的に96ウ
ェルプレートの表面に付着され得る。懸濁された細胞のアッセイのために、細胞
は、約1×107細胞/mlの濃度、1ウェルあたり0.1mlである。当業者
は、異なるアッセイ試薬、細胞株、器具使用などに対する適切な細胞濃度を決定
し得る。
【0128】
【表1】 この培地は、以下を含むが、これらに限定されないキレート化剤を含み得る:
BAL(British Anti−Lewisite)、DMPS(2,3−
ジメルカプト−1−プロパンスルホン酸)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸
)、DMSA(メソ−2,3−ジメルカプトコハク酸)、ペニシラミン、DTP
A(ジエチレン五酢酸)、デスフェリオキサミン、DTC(ジチオカルバメート
)など。キレート化剤を添加する目的は、潜在的に混入するCa2+(これは、本
発明のアッセイで使用される細胞培地または他の薬剤中に存在し得る)を除去す
るためである。あるレベルにおいて、混入したカルシウムイオンは、アッセイの
開始前に、ミトコンドリアによって所望でないCa2+の隔離を導き得る;次いで
、これは、ミトコンドリアが隔離し得るさらなるカルシウムの量を制限する。キ
レート化剤の適切な濃度は、経験的に決定されるか、または培地中に存在するカ
ルシウムの量を試験するために、培地で原子吸収が行われるか、あるいはカルシ
ウム感受性検出試薬の存在下で異なる濃度のキレート化剤が、培地または試薬に
添加され得、そしてカルシウムのレベルに対応した蛍光シグナルが測定される。
これらの決定の結果から、蛍光におけるさらなる変化が認識され得ない、キレー
ト化剤の最少濃度を決定することが可能であり;この濃度のキレート化剤は、必
要な場合、培地および試薬からの内因性カルシウムの除去を最小限必要とされる
【0129】 さらにまたはあるいは、この培地は、Ca2+の取り込みおよび小胞体(ER)
による保持を防ぐために、ICMAタプシガルジンを含み得る。
【0130】 Calcium−GreenTM−5Nが使用される場合、蛍光読み取りは、M
olecular devices’ FLIPRのようなレーザー蛍光計で、
488μmでの励起、530±12.5μmでの発光ピークで行われ得る。一旦
、ベースライン蛍光が確立すると、既知量のCa2+が添加され得(呼吸性培地中
の濃縮ストックから、FLIPRによって機械的に)、その結果、すぐにシグナ
ル(蛍光)が増加する。
【0131】 添加されるCa2+の量は、アッセイにおけるミトコンドリア数に依存する。一
般的に、Ca2+の用量は、MPT孔の開口を誘導しないように十分低くあるべき
である(Bernardiら、J.Biol.Chem.267:2934−2
939,1992;Bernardiら、J.Biol.Chem.268:1
005−1010,1993;Szaboら、J.Biol.Chem.267
:2940−2946,1992;Zorattiら、Biochem.Bio
phys.Acta−Rev.Biomemembranes 1247:13
9−176,1995)。
【0132】 代表的には、Ca2+の用量応答曲線は、例えば、0.1、0.5、1.0、2
.5、5.0、7.5、10、12.5、15、20.0、25、30、50、
75および100μMのCa2+濃度で、細胞株について行われ、ここで、結果は
、Ca2+をロードしたミトコンドリアからのCa2+の自発的放出または転移様挙
動である。特定の細胞株についての最適なCa2+の濃度は、既知量のCa2+の反
復パルスによって決定されたCa2+取り込みの最大容量よりも十分低い濃度とし
て決定される(Murphyら、Proc.Natl.Acad.Sci.US
A 93:9893−9898,1996)。Hep2(ヒト肝癌)細胞につい
ては、適切なCa2+濃度は、0.1ミリリットル当たり1×107細胞/mlに
関して、6〜20マイクロモル濃度のCaCl2である。
【0133】 カルシウムのユニポータ機能として、ミトコンドリアは、培地からカルシウム
を取り込むが、カルシウム感受性検出試薬はミトコンドリアに取り込まれず;従
って、シグナルは基底レベルまたはほぼ基底レベルまで減少する。従って、ユニ
ポータ活性は、カルシウムが培地に添加されたすぐ後の初期「スパイク」に続く
シグナルの減少と一致する(ミトコンドリアがCa2+を隔離することに起因する
)。
【0134】 Ca2+のこの初期隔離パルスに続くアッセイの1つの形態において、第2Ca 2+ パルスが適用される前に、試験化合物が、この細胞に添加される。試験化合物
は、多くの方法においてミトコンドリアのCa2+のレベルに影響するその能力に
ついてスクリーニングされる薬剤である(図4を参照のこと)。
【0135】 第1に、いくつかの薬剤が、第2Ca2+パルスが細胞に適用される前でも、カ
ルシウム感受性検出試薬からのシグナルにおける増加を生じる。例えば、MPT
脱共役呼吸を誘導する、および/またはミトコンドリアの膜電位の損失またはさ
もなければミトコンドリアへのひどい構造損傷を引き起こす薬剤は、ミトコンド
リアから迅速に放出される第1Ca2+パルスから隔離されたCa2+を生じ、検出
試薬からのシグナルの即時性の増加を引き起こす。同様に、例えば、ミトコンド
リアの二価カチオンチャネルまたは輸送体(カルシウムユニポータを含む)の活
性を変更することによって、ミトコンドリアからのCa2+の流出を刺激する薬剤
は、細胞が薬剤に接触した直後またはしばらくして、シグナルの増加を生じる。
例えば、呼吸を脱共役する薬剤は、ミトコンドリアの膜電位を散逸し、これはC
2+の取り込みおよび保持の駆動力として作用する。さらに、ΔΨの散逸は、ユ
ニポータの機能を逆転させ、ミトコンドリアから戻されるCa2+が、その濃度お
よび電気的勾配を低下させる。呼吸抑制剤は同様に挙動するが、シグナルの増加
は迅速であり得ない。
【0136】 第2に、ユニポータ活性に特異的に影響する薬剤は、薬剤が添加された直後の
シグナルに、ほとんどまたは全く効果を有し得ないが、初期Ca2+パルスとは異
なる隔離曲線を有する第2Ca2+パルスを生じる(図4に、いくつかの例を示す
)。例えば、第2Ca2+パルスの適用後のシグナルのより迅速ではない損失は、
ミトコンドリアのより迅速ではないCa2+隔離を示し、この試験化合物が、カル
シウムユニポータの活性を阻害する薬剤であることを示す。極端な場合、不可逆
的にカルシウムユニポータを阻害する薬剤の十分な量の適用は、第2Ca2+パル
スの後の「プラトー(plateaus)」である増加したシグナル(すなわち
、減少しない)を生じる。別の例として、第2Ca2+パルスの適用後のシグナル
のより迅速な損失は、より迅速なミトコンドリアのCa2+隔離を示し、この試験
化合物がカルシウムユニポータの活性を刺激するか、またはCa2+の流出を阻害
する薬剤であることを示す。
【0137】 (実施例1) (一般的アッセイ試薬、他の成分および条件) (カルシウム) カルシウムクロリド(CaCl2)は、市販されている(Sigma、St.
Louis,MO;C3881)。最初の実験において、その濃度を正確に決定
するために、カルシウムクロリドのストック溶液について原子吸収を行う。0.
025mol/Lのオートクレーブされたストック溶液が利用可能である(Si
gma、St.Louis,MO)。CaCl2の濃度は重要である。なぜなら
、4マイクロモル濃度と8マイクロモル濃度との間の差は、ミトコンドリアから
の自発性Ca2+放出の誘導に関して重要であり得るからである。
【0138】 (カルシウム感受性検出試薬) Calcium−Green−5N(カリウム塩)は、市販されている(Mo
lecular Probes,Eugene,OR;C−3737)。Cal
cium−Green−5Nは、低親和性Ca2+指示薬である(例えば、Ore
gon Green 488 BAPTA−5Nのような)。このアッセイに使
用されるCa2+の濃度のために、濃度低親和性指示薬が好ましい。高親和性色素
は、より低いCa2+濃度を必要とし、そのため、このアッセイにおいて使用する
数よりも、より少ない数の細胞、従ってより少ない数のミトコンドリアが必要で
ある。Calcium−Green−5Nを、効力を失う(開始蛍光の減少およ
びピーク値の減少によって示される)前に制限された回数、凍結および融解し得
る。従って、このストックを、処分する前に、代表的に、10回以下の凍結/融
解サイクルを経たアリコートに分割する。
【0139】 本発明のアッセイにおいて使用され得る他のカルシウム感受性検出試薬には、
以下が挙げられる:Calcein、Calcein Blue、Calciu
m−Green−1、Calcium−Green−2、Calcium−Gr
een−C18、Calcium Orange、Calcium−Orange
−5N、Calcium Crimson、Fluo−3、Fluo−3 AM
エステル、Fluo−4、Fura−2、Fura−2FF、Fura Red TM 、Fura−C18、Indo−1、Bis−Fura−2、Mag−Fura
−2、Mag−Fura−5、Mag−Indo−1、Magnesium G
reenTM、Quin−2、Quin−2 AM(アセトキシメチル)エステル
、Methoxyquin MF、Methoxyquin MF AMエステ
ル、Rhod−2、Rhod−2 AMエステル、Texas RED(登録商
標)−Calcium GreenTM、Oregon GreenTM 488、
BAPTA−1、Oregon GreenTM 488 BAPTA−2、BT
C、BTC AMエステル(全てMolecular Probes,Inc.
,Eugene,ORより)、およびエクオリン(Molecular Pro
bes)。
【0140】 (透過性を上げる(permeabilizing)薬剤および方法) 当業者は、例えば、例示のためであり限定ではないが、界面活性剤(surf
actant)、界面活性剤(detergent)、リン脂質、リン脂質結合
タンパク質、酵素、ウイルス膜融合タンパク質などの使用を介して;特定の細菌
毒素(例えば、(α−溶血素))への曝露によって;サポニン(これはまた、ジ
ギトニンのような非イオン性界面活性剤である)のような溶血素との接触によっ
て;浸透圧的に活性な薬剤の使用を介して;化学架橋剤の使用によって;エレク
トロポレーションなどを含む物理化学的方法によってか、または例えば、物理的
操作(例えば、エレクトロポレーションなど)を含む他の透過性を上げる方法論
による、細胞の透過性を上げる方法に精通している。細胞の透過性を上げる方法
に精通する当業者は、特定の選択した細胞株に対する薬剤の毒性、細胞に侵入す
ることが所望される薬剤の分子サイズなど(しかし、これらに限定されない)を
含む因子に基づいて、最も適切な透過性を上げる薬剤を決定し得る(例えば、S
chulz,Methods Enzymol.192:280−300、19
90を参照のこと)。
【0141】 従って、例えば、細胞は、細菌毒素(例えば、ストレプトリジンO、Stap
hylococcus aureus α毒素(α−溶血素としても公知)のよ
うな透過性を上げる薬剤の添加;サポニンのような他の溶血性薬剤の添加;また
は、細胞を溶解しかつ膜を可溶化するために使用される濃度より下の濃度(すな
わち、臨界ミセル濃度より下)における1つ以上の界面活性剤(例えば、ジギト
ニン、Triton X−100、NP−40、n−オクチル β−D−グルコ
シドなど)への曝露などの、任意の種々の公知の技術を用いて透過化処理され得
る。特定の通常のトランスフェクト試薬(例えば、DOTAP)もまた、使用さ
れ得る。ATPはまた、インタクトな細胞を浸透化させるために、固定剤として
通常使用される化学物質(例えば、ホルムアルデヒド)の低い濃度であり得るの
と同様に、使用され得る。この段落に記載される透過性を上げる薬剤の全ては、
例えば、Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO(「
Biochemicals and Reagents for Life S
cience Research」,Anon.,1999と題されるSigm
aのカタログ、ならびに、これらおよび他の透過性を上げる薬剤に関してそのカ
タログ中に引用される参考文献を参照のこと)から入手可能である。本明細書中
に記載される多くの実験において、ジギトニン(ジギチン)を、細胞の透過性を
上げる薬剤として使用した。代表的に、DMSOの10%保存溶液を作製し、そ
して凍結して貯蔵した。表2は、いくつかの細胞株の透過性を上げるための、ジ
ギトニンの最適な濃度を記載する。
【0142】
【表2】 (キレート剤) 本発明のアッセイは、特に、(Ca2+が混入しているかまたは混入し得る)供
給物または試薬(例えば、H2Oなど)が、アッセイについての成分の調製を必
要とする場合に、キレート剤を必要に応じて含み得る。EGTA(エチレングリ
コールビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸)は、
市販されている(Sigma,St Louis,MO)。EDTAは、Ca2+ をキレート化するために使用され得る別の薬剤だが、これはまた、Mg2+をキレ
ート化する。別のカルシウムキレーターが、使用され得る(1−10フェナント
ロレンを含む)。EGTAの250mM保存溶液(KOHでpHを7.0に調節
)を、代表的に、本明細書中に記載の実験に使用した。EGTAの最適な濃度は
、所定の場合において必要であることが見出される場合、所定の実験室供給物中
のCa2+混入の量によって影響され得る。従って、EGTAおよびCa2+パルス
サイズ(pulse size)の両方で用量応答をすることが、必要であり得
る。本発明の方法において使用され、特に図4に記載されるようなCa2+のパル
スサイズは、ミトコンドリアの数および質量のような因子に依存するが、パルス
サイズの範囲は、1〜数百μMであり得、これはこのアッセイにおいて使用され
る特定の細胞株に依存する。異なる組織から調製されたミトコンドリアは、異な
る濃度のCa2+を許容する。
【0143】 (ミトコンドリア外カルシウム放出剤) タプシガルジンは、小胞体(ER)のCa2+取り込みインヒビターであり、そ
して市販されている(Calbiochem,San Diego,CA)。ミ
トコンドリア外レザーバーからCa2+を放出し、そして/またはそのようなミト
コンドリア外レザーバーへのCa2+の取り込みを阻害する他の薬剤としては、イ
ノシトール−1,4,5−トリホスフェート(Strebら、Nature 3
06:67−69,1983;Berridgeら、FASEB J.2:30
74−3082,1988)、オカダ酸(Hepworthら、Cell Ca
lcium 21:461−467,1997)、およびカフェインが挙げられ
るが、これらに限定されない。
【0144】 (ミトコンドリア機能に影響を及ぼす薬剤) Ruthenium Redは、Ca2+ユニポータを阻害し、それゆえCa2+ のミトコンドリアへの取り込みを阻害する、細胞学的染色である(Reedおよ
びBygrave,Bioch.J.140:143−155,1974)。こ
れはまた、筋小胞体からのCa2+の放出をブロックし(Antoniusら、B
iochem.Biophys.Acta 816:9−17、1985;Ch
iesiら、Biiochem.Biophys.Res.Commun.15
4:1−8、1988)、かつ小胞体の分離する能力を阻害する(Hurley
,Am.J.Physiol.23:621−627、1988)。Ru360
(Calbiochem,San Diego,CA;557440)は、Ru
thenium Redの二核(dinuclear)ルテニウム中心部分であ
り、Ruthenium Redの阻害効果を担うことが提唱されている(Yi
ngら、Biochemistry 30:4949−4952,1991;E
mersonら、J.Am.Chem.Soc.115:11799−1180
5、1993)。
【0145】 FCCP(カルボニルシアニドp−(トリフルオロメトキシ)フェニル−ヒド
ラゾン;Sigma)は、ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化の強力な脱共
役剤である(Heytlerら、Biophys.Res.Commun.7:
272、1962;Biochem.J.195:583、1981)。呼吸性
脱共役剤の他の非限定的な例として、カルボニルシアニドm−クロロフェニル−
ヒドラゾン(Sigma)(Heytlerら、Biophys.Res.Co
mmun.7:272など、1962)、およびHeytlerによって記載さ
れた(例えば、Methods of Enzymology 55:462、
1979およびPharmacol.Ther.10:461−472、198
0(これらの両方は本明細書によって参考として援用される))脱共役剤が挙げ
られる。
【0146】 ロテノン(Sigma)は、ミトコンドリア電子伝達のインヒビターである(
Fukamiら、Science 155:713−716、1967)。ミト
コンドリアETCのインヒビター他の非限定的な例としては、シアニド、アミタ
ールおよびアンチマイシンが挙げられる。
【0147】 オリゴマイシン(Sigma)は、ミトコンドリアATPaseのインヒビタ
ーである(Nagamuneら、Biochim.Biophys.Acta
1141:231−237、1993)。オリゴマイシンおよびロテノンの組み
合わせ、またはロテノン単独は、膜電位の大きな減少または本質的な排除の効果
を評価するためのポジティブコントロールとして使用され得る。
【0148】 エタクリン酸(2,3−ジクロロ−4−(2メチレン−ブトリル)フェノキシ
ル酢酸(2,3−dichloro−4−(2methylene−butry
l)phenoxylacetic acid);Sigma)は、細胞が酸化
的ストレスを許容する能力を除去する。エタクリン酸は、グルタチオンS−トラ
ンスフェラーゼを阻害し、それによって細胞のグルタチオンを枯渇させる(Sh
enら、Biochem.Pharmacol.50:1233−1238、1
995)。実験により、ミトコンドリアに局在したグルタチオンは、ミトコンド
リア機能の維持に重要な役割を有することが示唆される(Seyfriedら、
Neurosci.Lett.264:1−4、1999)。
【0149】 (アポトゲン(apoptogen)) 本発明の特定の局面において、変更されたミトコンドリア状態は、生物学的サ
ンプルを、プログラムされた細胞死(PCDまたは「アポトーシス」)を誘導す
る「アポトゲン」薬剤として公知の組成物に曝露することによって誘導される。
アポトーシスの総説については、Greenら(Science 281:13
09−1312、1998)、Raff(Nature 396:119−12
2、1998)、およびSusinら(Biochim.et.Biophys
.Acta 1366:151−165、1998)を参照のこと。
【0150】 種々のアポトゲンは、当業者に公知であり、そして、例示として以下を含み得
る;ハービマイシンA(herbimycin A)(Manciniら、J.
Cell.Biol.138:449−469、1997);パラクアット(C
ostantiniら、Toxicology 99:1−2、1995);エ
チレングリコール(http://www.ulaval.ca/vrr/re
ch/Proj/532866.html);プロテインキナーゼインヒビター
(例えば、スタウロスポリン、カルホスチンC(calphostin C)、
コーヒー酸フェネチルエステル、塩化ケレリトリン、1−(5−イソキノリンス
ルホニル)−2−メチルピペラジン、N−[2−((p−ブロモシンナミル)ア
ミノ)エチル]−5−5−イソキノリンスルホンアミド、KN−93、ゲニステ
イン、ケルセチンおよびd−エリスロ−スフィンゴシン誘導体など);紫外線照
射;イオノホア(例えば、イオノマイシン、バリノマイシンおよび当業者に公知
の他のイオノホアなど);MAPキナーゼインデューサー(例えば、アニソマイ
シン(anisomysin)およびアナンダミン(anandamine)な
ど);細胞周期ブロッカー(例えば、アフィジコリン、コルセミド、5−フルオ
ロウラシルおよびホモハリングトニン(homoharringtonine)
など);アセチルコリンエステラーゼ(acetylcholineester
ase)インヒビター(例えば、ベルベリンなど);抗エストロゲン(例えば、
タモキシフェンなど);酸化促進剤(例えば、tert−ブチルペルオキシドお
よび過酸化水素など);フリーラジカル(例えば、一酸化二窒素など);無機金
属イオン(例えば、カドミウムなど);DNA合成インヒビター(例えば、アク
チノマイシンD、硫酸ブレオマイシン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、マ
イトマイシンC、カンプトテシン、ダウノルビシンおよびDNAインターカレー
ター(intercalator)(例えば、ドキソノルビシンなど)など);
タンパク質合成インヒビター(例えば、シクロヘキシミド、ピューロマイシンお
よびラパマイシンなど);微小管形成または安定性に影響を及ぼす薬剤(例えば
、ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、4−ヒドロキシフェニルレチ
ンアミド(4−hydroxyphenylretinamide)およびパク
リタキセルなど);ガングリオシド(例えば、GD3(Scorranoら、J
.Biol.Chem.274:22581−22585、1999)など);
適切なレセプターを有する細胞と接触され得る薬剤(例示のためであり限定では
ないが、以下が挙げられる:腫瘍壊死因子(TNF)、FasL、グルタメート
、NMDA(前述は、示された薬剤の取り込みを媒介するレセプターを有する細
胞と接触される)、コルチコステロン[ミネラルコルチコイドまたはグルココル
チコイドレセプターを有する細胞に関する]);ある期間の後にこの細胞の培養
培地から回収される薬剤(例えば、非限定的な例として、リンパ球からのIL−
2の回収);ならびに、カルシウムおよび無機ホスフェート(Kroemerら
、Ann.Rev.Physiol.60:619−642、1998)および
Bax/Bcl−2タンパク質ファミリーのメンバー(Jurgenmeier
ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:4997−5
002、1998)(これらは、例示のためであり、そして限定ではない)を含
む、単離されたミトコンドリアまたは透過化処理された細胞と接触され得る薬剤
。このような薬剤は、当該分野で公知の方法に従って調製されるか、または、例
えば、Calbiochem(San Diego,CA)およびSigma
Chemical Company(St.Louis,MO)のような会社か
ら市販されている。
【0151】 (細胞株) 種々の細胞もしくは細胞株、またはこれらから単離もしくは調製されたミトコ
ンドリアが、本発明において使用され得る。好ましくは、非酵母真核生物細胞、
特に、内胚葉由来、外胚葉由来または中胚葉由来の分化または未分化の細胞また
は幹細胞。好ましい例には以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【0152】 「SH−SY5Y」は、神経芽腫細胞の株である(Biedlerら、Can
cer Res.,38:3751〜3757,1978;米国特許第5,88
8,498号、Davisら、1999年3月30日発行(本明細書中で参考と
して援用される)もまた参考のこと)。
【0153】 サイブリッドは、細胞の核ゲノムおよび血小板由来のミトコンドリアを含む、
ハイブリッド細胞である(米国特許第5,888,498号)。
【0154】 「MixCon」とは、複数の患者由来のサイブリッドの混合物をいう(米国
特許第5,888,498号)。
【0155】 「1685サイブリッド」とは、SH−SY5Y細胞株の核骨格と、試験的に
診断されたアルツハイマー病の患者から調製した血小板から調製したミトコンド
リアとを結合するサイブリッド細胞株をいう。同時係属中の米国特許出願60/
124,673(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0156】 「L6」は、ラット由来の骨格筋筋芽細胞由来の細胞株である(Proc.N
atl.Acad.Sci.USA 61:477〜483,1968;Dev
.Biol.23:1〜22,1970;ATCC CRL−1458)。
【0157】 「293」は、アデノウイルス5(ATCC CRL−1573、45504
および45505)の形質転換遺伝子で形質転換されたヒト腎臓細胞株である。
【0158】 「HEPG2」は、ヒト肝細胞癌である(米国特許第4,393,133号;
Adenら、Nature(Lond.)282:615〜616,1979;
ATCC HB−8065)。
【0159】 「Jurkat」とは、ヒト由来の、Jurkat、Clone E6−1、
急性T細胞白血病をいう(ATCC TIB−152)。
【0160】 (培地) 標準細胞培地は、代表的に、実施例で示すような市販の供給源由来であった。
基本呼吸培地(Basic Respiratory Media)(別名「B
ReM」)の処方を表3に記載する。
【0161】
【表3】 呼吸培地が、グルタミン酸、リンゴ酸、コハク酸、MgCl2、Calciu
m−Green−5Nを含む実験において、これらの追加成分を、アッセイの日
に添加する。Calcium−Green−5Nを除いて、これらの添加剤のス
トック溶液は凍結および解凍に対して安定である。反対に、Calcium−G
reen−5Nは、たとえ−80℃で貯蔵しても、時間が経つと(約1ヶ月)分
解する塩であり、複数回の凍結および乾燥は、この分解を促進する。
【0162】 (測定装置) アッセイに依存して、Fluorometric Imaging Plat
e Reader(FLIPRTM)装置(Molecular Devices
,Sunnyvale,CA)は、しばしば、本発明のアッセイについての選り
抜きの装置である。FLIPRTMは、以下の望ましい特徴を有する(http:
//www.moleculardevices.com/pages/fli
pr.htmlを参照のこと):このFLIPRTMは、冷却水、アルゴンイオン
レーザー照射、および積算検出器としての冷却CCDカメラ(これは、画像に曝
された時間にわたってシグナルを集積し、結果として、そのシグナル対ノイズ特
性は、一般に、従来の画像化オプティクスのシグナル対ノイズ特性より優れてい
る)の組合せを使用する;このFLIPRTMはまた、細胞単層におけるシグナル
の識別を可能にする独自の細胞−層単離オプティクスを使用し、従って、所望で
ない細胞外のバックグラウンド蛍光を減少させる;このFLIPRTMは、リアル
タイムでデータを提供し、そして動力学的データもまた提供し得る(すなわち、
複数の時点における読みとり);このFLIPRTMは、96ウェル、マイクロプ
レートの96ウェルすべてを、同時に刺激し、読みとる能力を有する;このFL
IPRTMは、分析中、サンプルの温度および湿度の正確な制御を提供する;この
FLIPRTMは、最新型の集積96ウェルピペッターを備え、このピペッターは
分配チップを使用して、実験の間のキャリーオーバーを排除し、そしてマイクロ
プレートから正確な用量の流体を吸い取り、分配しそして混合し得る;そして、
FLIPR384装置の場合、このFLIPRTMは、ロボット様式または半ロボッ
ト様式でサンプルのアッセイを実施するように適合され得、従って、短時間での
多数のサンプルの分析を提供する(例えば、1日につき約100個までの96ウ
ェルマイクロプレート)。
【0163】 (実施例2) (一般的なアッセイプロトコル) 表3に記載される基本KClベース呼吸培地(basic KCl−base
d respiratory media)(「BReM」)に、グルタミン酸
およびマレイン酸を、それぞれ最終濃度が5mMになるまで添加し、MgCl2
を最終濃度が1mMになるまで添加し、EGTAを最終濃度が0〜8mMになる
まで添加し、そしてCalcium−Green−5Nを最終濃度が0.1〜1
.0mMになるまで添加することによって、基本混合溶液(master mi
x solution)(MM溶液)を調製した。代替の呼吸培地は、リン酸緩
衝液を含むかまたは含まずにスクロースおよび/またはマンニトールを使用して
調製し得る。MM溶液中の6カリウム塩のCalcium−Green−5N(
Molecular Probes,Eugene,OR)は、Ca2+に対して
小さい結合親和性を有する蛍光色素である。
【0164】 小胞体(ER)のCa2+取込みインヒビターである、タプシガルジン(Cal
biochem,San Diego,CA)を、最終濃度が1mMになるまで
MM溶液に添加して、「MM−T」(すなわち、タプシガルジンを含有する基本
混合(Master Mix))と命名される溶液を得た。
【0165】 細胞膜透過剤のジギトニン(Sigma,St.Louis,MO)を、最終
濃度が約0.007%〜約0.03%になるまでMM−Tに添加して、「MM−
TD」(すなわち、タプシガルジンおよびジギトニンを含有する基本混合)と称
される溶液を得た。CaCl2をMM−Tに添加して、細胞内Ca2+流出の決定
のために、Ca2+の決定した最終濃度を有する溶液を提供した。
【0166】 異なる細胞株に適切なジギトニン濃度の範囲は変動し、そして、細胞型と共に
変わる形質膜のコレステロール含量として、各細胞株について滴定される。従っ
て、異なる量のジギトニンが、異なる細胞株の形質膜を選択的に透過化処理する
ために必要とされる。使用されるジギトニンが少なすぎる場合、細胞は、色素お
よび試薬がミトコンドリア外の空間へアクセスし得るために十分透過化処理され
ない。使用されるジギトニンが多すぎる場合、外側のミトコンドリア膜は透過性
になり、そして結果的に、因子(例えば、シトクロムc)を放出し、それにより
呼吸を制限する。
【0167】 所定の細胞株に最適なジギトニン濃度の滴定は、種々の方法によって達成され
得る。例えば、細胞を、酸素電極チャンバ中、コハク酸および複合体Iインヒビ
ターのロテノンの存在下で、BReMに懸濁し得る。ジギトニンを、酸素消費の
最大速度に達するまで滴定し、それによりジギトニンの最適濃度を決定する。こ
のアプローチにおいて、コハク酸は、形質膜を容易に通過しない。従って、形質
膜の最適な透過化は、ミトコンドリアに最適レベルの酸化可能物質を提供する。
【0168】 あるいは、TPP+(テトラフェニルホスホニウムイオン)のミトコンドリア
マトリクスへの取込みをモニターし得る。TTP+は、ミトコンドリアの内側膜
を透過し、その膜を通って、Nernstian様式で分布するカチオンであり
、その分布は膜電位を示す。培地中のTTP+濃度は、TTP+選択性電極を使用
してモニターされる。TTP+は、形質膜を容易に通過せず、従って、この形質
膜はジギトニンを用いて滴定されるため、TPP+は、ミトコンドリアへのアク
セスを得、そして膜電位の関数として利用される。培地からのTTP+の最大消
失は、最適なジギトニン濃度の指標である。他のものは、接着細胞株について、
ジギトニンの滴定に対して高感度のアプローチではないが、約0.04%〜約0
.4%のトリパンブルーを含む基本呼吸培地(BReM)を細胞に添加する工程
、またはジギトニンの濃度を増加して、例えばヨウ化プロピジウムのような蛍光
形質膜不透過色素(5μg/ml)を添加する工程を包含する。ヨウ化プロピジ
ウムを使用する場合、光学顕微鏡または蛍光顕微鏡によって、100%の細胞を
透過化処理するジギトニンの最小濃度が決定され得る。トリパンブルーの場合、
本質的にすべての細胞が青色になり、そしてヨウ化プロピジウムの場合、本質的
にすべての細胞核が蛍光を発するようになる。表2は、いくつかの異なる細胞株
のジギトニンの最適化についての結果を記載する。
【0169】 (実施例3) (Ca2+ユニポータ活性の検出) アッセイを行って、Ca2+ユニポータがミトコンドリアに輸送されるが、透過
性転移を誘導するには十分高くないCa2+濃度を最適化した。0、40、80、
120、160および200mMのCa2+の最終濃度で、MM−TにCaCl2
を添加することによって、Ca2+のストック溶液(10倍)を調製した。この実
験で使用される細胞は、複数の正常な個体由来のコントロールサイブリッドの混
合物(MixCon)であった(米国特許第5,888,498号を参照のこと
)。細胞を、ダルベッコの改変イーグル培地中、10%の熱不活性化したウシ胎
児血清(FBS)を用いてトリプシン処理し、そして96ウェルCostar
3603マイクロプレートのウェルに、1ウェルにつき100μl中約6×10 4 細胞の濃度で、アッセイの実施前48時間で添加した。これらの細胞を使用す
る前に、増殖培地をウェルから吸引した。100μlのMM−TDを、各ウェル
に添加して、これらの細胞を透過化処理した。このプレートを、Fluorom
etric Imaging Plate Reader(FLIPRTM;Mo
lecular Devices Corporation,Sunnyval
e,CA)に入れ、37℃まで加熱し、そして488nmの励起波長で照射した
。10倍のCaストック溶液の各々(すなわち、0、40、80、120および
160μMのCa2+)を、これらの透過化処理された細胞を含むウェルに、11
.1μlの容量ずつ分配して、それぞれ0、4、8、12、および16μMのC
2+濃度を有する試験サンプルを得た。
【0170】 細胞内Ca2+が、Calcium−Green−5Nに結合する場合、531
nmの放射が増大する。細胞内Ca2+イオンが、細胞のオルガネラへのその輸送
に起因してカルシウム感受性検出試薬に結合することをやめる場合、得られた放
射シグナルは減少し、FLIPRTMにおいてモニターされるようなCa2+「スパ
イク」を生じる(図4、パネルA)。タプシガルジンは、ERへのCa2+の取り
込みを阻害することが示されており、従ってミトコンドリア内のCa2+の没収(
sequestration)を反映する細胞質ゾル中のCa2+の細胞質ゾルの
濃度を低下させる。12.3μLおよび13.7μLの容積での3分間隔での1
0倍CaMM溶液を用いる2つのさらなる注射を、FLIPRシステムによって
実行した。これらのアッセイの結果を、図5に示す。これから、MixCon細
胞についての適切なCa2+パルスサイズが約4〜約8μMの範囲にわたることが
判明した。
【0171】 (実施例4) (Ca2+ユニポータ活性の調節の検出) (A.一般的方法) 浸透性HepG2細胞へのいくつかの細胞内Ca2+調節因子(ICMA)の効
果を、以下のように試験した。ミトコンドリア呼吸抑制剤オリゴマイシン(Ca
lbiochem,San Diego,CA)およびロテノン(Calbio
chem)をMM−Tに添加して、それぞれ、最終濃度を50μg/mlおよび
20μMとした。脱共役FCCPを、同様にMM−Tに、10倍濃度(10μM
)に添加し、FCCPのストック溶液(MM−TF)(すなわち、タプシガルジ
ンおよびFCCPのマスター混合物)を生成した。カルシウムユニポータによる
ミトコンドリアへのCa2+の取り込みをブロックするICMA Ru360を、
100μMの濃度にMM−Tに添加し、MM−T360(すなわち、タプシガル
ジンおよびRu360のマスター混合物)を生成した。CaCl2をMM−Tに
添加し、MM−T中のCaCl2の10倍溶液(120μM)を生成した。
【0172】 HepG2細胞を、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびイーグル
平衡塩溶液(BSS)(90%);ウシ胎仔血清(FBS)(10%)とともに
イーグル最小必須培地(MEM)中で培養した。細胞を遠心分離し(500×g
)、そして増殖培地をペレットから吸引した。HepG2細胞を1×107細胞
/mlの濃度にMM−TD中で再懸濁し、そして100μlの再懸濁した透過性
細胞を、96ウェルCostar3603マイクロプレートのウェル中に分注し
た。このプレートをFLIPRTM中に入れ、37℃まで予熱した。MM−T(1
20μM Ca2+)を11.1μLの容積で細胞含有ウェルに分注し、12μM
Ca2+の最終アッセイ濃度を得た。このアッセイ段階でのCa2+の添加を、第
1のカルシウムパルスと呼び、そしてCa2+が添加される時点を、t=0と示す
【0173】 約3分後(すなわち、ほぼ、t=3分で)ICMA溶液の12.3μLの1つ
を透過性細胞を含むウェル中に分注し、オリゴマイシン5μg/ml、ロテノン
2μM、FCCP 1μM、RU360 1μM、およびMM−T(ICMAな
し)の最終アッセイ濃度を得た。
【0174】 さらに3分後(すなわち、ほぼt=6分)、細胞への13.7μlのMM−T
(120μM Ca2+)の添加により、細胞を、第2のカルシウムパルスに曝露
した。酸化的なリン酸化反応抑制剤オリゴマイシンおよびロテノンならびに非共
役FCCPは、ミトコンドリアから細胞質ゾルへのCa2+の放出を生じた。ここ
でCa2+指標に会合するCa2+および蛍光の増大を、FLIPRによって検出し
た。第2のCa2+パルスの添加の際、ミトコンドリアは、これらの細胞において
添加されたCa2+を没収し得なかった。Ru360の存在下で細胞は、Caユニ
ポータによるCa2+の取り込みを妨げた。これは、細胞質ゾル中のカルシウム指
標と会合したCa2+の増大したレベルを反映する。ICMAの非存在下でアッセ
イされた細胞は、各Ca2+パルス後に、Ca2+指標と会合したCa2+の低下を示
し、そしてミトコンドリアへのCa2+の取り込みを反映する。
【0175】 (B.固着細胞を用いる方法) Calcium−Green−5Nを用いるFLIPRTMによる、Ca2+反応
曲線およびCa2+パルスの時間経過の最適化を、固着細胞株において実行した。
用いられる細胞株は、MixConであった(実施例1を参照のこと)。MM−
TにCaCl2を添加し、10倍最終濃度の0、40、80、100および20
0μMとした。アッセイの直前に、ダルベッコ改変イーグル培地および10%F
BS増殖培地中のトリプシン処理したMixCon細胞の100μl(2×10 6 細胞/ml)を、96ウェルCostar3603プレートのウェル中に移し
た。本質的に製造業者(Becton Dickinson)の指示に従ってウ
ェルをCell−TAKで被覆した。細胞をプレート上に遠心分離し、各ウェル
中に細胞の層を残したまま、ウェルから増殖培地を吸引した。各ウェルへの80
μlのMM−TDの添加により細胞を透過化した。MM−TDにおいてジギトニ
ンが細胞を透過化し、そしてMM−TDにおいてタプシガルジンがERによるC
2+の取り込みを阻害する。
【0176】 プレートをFLIPRTM中に入れ、そして、漸増容積の20、25、および3
0μlの0、40、80、100および200μMのカルシウムのMM−T溶液
中のCa2+の3用量の異なる5×ストック溶液を、約2分間隔でこのウェルに分
注し、それによりCa2+の濃度を0、4、8、10または20μMの一定レベル
のままとした。適切な波長でモニターした蛍光放射を、モニターし、そして細胞
質ゾルのCa2+を、Ca2+指標とのCa2+の会合によるアッセイを通じて決定し
た。固着細胞株を用いた結果を図6に示す。
【0177】 酸化的リン酸化反応のミトコンドリア抑制剤であるオリゴマイシンおよびロテ
ノンを用いて、固着細胞株MixConにおける細胞質ゾルのCa2+レベルによ
る低下したミトコンドリア膜電位の効果を観察した。ダルベッコ改変イーグル培
地および10%FBS増殖培地中の固着MixCon細胞を、アッセイの48時
間前に、1ウェルあたり100μl中に約6×104細胞の濃度で96ウェルマ
イクロタイタープレートのウェル中に分注した。使用の直前に増殖培地をウェル
から吸引した。90μlのMM−TDをオリゴマイシン(5μg/ml)もしく
はロテノン(2μM)とともに、またはMM−TDをいずれの抑制剤もともなわ
ずに細胞に添加した。このプレートをFLIPRTMシステム中に入れ、そして、
カルシウムの3用量の10×(100μM)ストック溶液を、約2分間隔で漸増
容積(それぞれ10μl、11.1μl、および12.3μl)で異なるウェル
に分注し、アッセイの経過を通じて一定濃度の10μMのCa2+を得た。531
nm波長での放射を、ミトコンドリア外Ca2+−Green−5N蛍光の測定と
してFLIPRTMによりモニタリングした。ミトコンドリア外カルシウムに対応
するシグナルは、各パルスの後で、そして2つの抑制剤の存在下で高いままであ
るサンプル中で増大した。あるいは、Ca2+は、抑制剤に曝露されなかった細胞
のミトコンドリア中で没収される(図7)。
【0178】 別のアッセイを実行して、MixCon細胞において、スクシナートの存在下
または非存在下で、呼吸抑制剤であるオリゴマイシンおよびロテノンによる影響
、ならびにミトコンドリアからのCa2+の引き続く放出を試験した。2つの異な
るマスター混合物(MMおよびMM−GMS)を、以前に記載のように調製した
MMを用いて調製した。塩基性KClベースの呼吸培地(BReM、表3)に対
して、各5mMの最終濃度に、グルタメート、マレートおよびスクシナートを添
加、MgCl2を最終濃度1mMに添加、EGTAを最終濃度10μMに添加、
そしてCalcium−Green−5Nを最終濃度0.1μMに添加すること
により、MM−GMSを調製した。タプシガルジンを、MMおよびMM−GMS
に添加して、最終濃度1μMとし、MM−TおよびMM−GMS−Tを生成した
(ここで、「T」は、タプシガルジンを示し、そして「GMS」は、グルタメー
ト、マレートおよびスクシナートを示す)。細胞透過性剤であるヂギトニンをM
M−TおよびMM−GMS−Tに添加して、最終濃度0.03%とし、MM−T
DおよびMM−GMS−TDと名付けられる溶液を生成した。ある場合には示さ
れるように、ミトコンドリア抑制剤であるオリゴマイシンおよびロテノン(Ca
lbiochem)を、それぞれ、MM−TDおよびMM−GMS−TDの溶液
に添加し、それぞれ、最終濃度5μg/mlおよび2μMとした。
【0179】 CaCl2をMM−TおよびMM−GMS−Tに添加し、50μMのCa2+
濃度にし、それぞれ、MM−TおよびMM−GMS−T中の5倍Ca2+溶液を生
成した。呼吸抑制剤を含む5倍Ca2+ストック溶液のバージョン(オリゴマイシ
ン、最終濃度50μg/ml;ロテノン、20μM)をまた調製した。
【0180】 ダルベッコ改変イーグル培地および10%FBS増殖培地中のMixCon細
胞を、アッセイの48時間前に、1ウェルあたり100μl中に約6×104
胞の濃度で96ウェルCostar3603マイクロタイタープレートのウェル
中に分注した。使用の直前に、増殖培地をウェルから吸引した。80μlのMM
−TD、MM−GMS−TD、MM−TD−O、MM−TD−RおよびMM−G
MS−TD−OR(ここで、「O」はオリゴマイシンを、「R」はロテノンを意
味する)を、細胞を含有するウェル中に分注した。マイクロタイタープレートを
FLIPRTM中に入れ、37℃に予熱し、そしてCa2+の5倍ストック溶液(5
0μM)の20μlの最初の注射(オリゴマイシン、ロテノンとともに、または
添加なしに)を適切なウェル中に分注し、それにより、アッセイ中のCa2+の濃
度は10μMであり、そして抑制剤を有するウェルは一定アッセイ濃度のままで
ある。
【0181】 約5分後、5倍溶液の25μlの第2のパルスを供給した。放射波長をモニタ
ーし、そしてFLIPRシステムにおけるアッセイを通じて細胞内Ca2+を決定
した。スクシナートの非存在下でオリゴマイシンおよびロテノンに供された固着
細胞は、呼吸の抑制(従ってユニポータ活性の抑制)を示す、第2のCa2+パル
ス後、Ca2+−5N蛍光の上昇したレベルを示した。あるいは、スクシナートの
存在下でオリゴマイシンおよびロテノンに供された固着細胞は、第2のCa2+
ルス後、Ca2+−5N蛍光の減少を示し、これは、スクシナートがミトコンドリ
アにエネルギー与えること、およびユニポータ活性のための駆動力を提供するこ
とにより呼吸抑制剤を妨害することを示す。
【0182】 (C.懸濁した細胞を使用する方法) 一連の機能的アッセイを、非接着細胞株で行い、Calcium−Green
−5Nおよびジギトニン透過化処理細胞を使用するFLIPRにおけるミトコン
ドリアCa−UPアッセイを至適化した。ミトコンドリアの酸化的呼吸アンカッ
プラーの添加を伴っておよび伴わずに、Ca2+パルスの用量応答を、HepG2
由来の細胞(ヒト肝細胞癌腫由来の細胞株)を利用して行った。タプシカルジン
(thapsigarin)を有するMM(MM−T)およびジギトニンを有す
るMM(MM−TD)を、以前に記載のように調製する。10倍(10×)のC
2+培地を、CaCl2(160マイクロモーラー)をMM−Tに添加すること
によって調製する。L6細胞を、細胞透過化処理呼吸培地MM−TDに、1×1
7細胞/1mlの濃度で懸濁した。100マイクロリットルの懸濁物を、96
ウェルCoStar3603マイクロタイタープレートの各ウェルに添加した。
MM−TD中のジギトニン(「D」)は、細胞の透過性を上げ、そしてMM−T
D中のタプシガルジンは(「T」)は、小包体(ER)によるCa2+の取り込み
を阻害する。プレートをFLIPRTMに置き、37℃に加熱し;次いで11.1
マイクロリットルのストックカルシウム溶液(MM−TD中160マイクロモー
ラーCaCl2)を、L6細胞を含む96の異なるウェルに分配し、16マイク
ロモーラーのCa2+のアッセイ濃度を得た。約3分後、第2用量(12.5マイ
クロリットル)のMM−TD、160マイクロモーラーのCaCl2溶液をウェ
ルに分配し、それにより、このアッセイを通して、16マイクロモーラーのCa 2+ 濃度に維持した。[Ca2+:Calcium−Green−5N]複合体から
生じる発光を、適切な波長でモニターし、このアッセイを通して、細胞内Ca2+ レベルにおける変化を追跡した。結果を、図9に示す。
【0183】 カルシウムユニポータ(CaUP)の機能的アッセイを、上記と同様に、非接
着L6細胞において、呼吸抑制剤であるオリゴマイシンおよびロテノンを用いて
行い、このハイスループットFLIPRを用いて膜電位の除去の効果を観察した
。オリゴマイシンおよびロテノンを、MM、160μM CaCl2(以前の実
施例を参照のこと)に添加し、それぞれ50マイクログラム/ミリリットルおよ
び20マイクロモーラーの濃度にした。細胞を、上記のように、96ウェルCo
Star 3603マイクロタイタープレートのウェルにおいて調製し、そして
透過性を上げた。コントロールを、100マイクロリットルの透過化処理液の細
胞を含まないウェルへの添加によって調製した。プレートをFLIPRに置き、
そして11.1マイクロリットルのMM、抑制因子を有する160μM CaC
2を、L6細胞とともにウェルに分配し、16マイクロモーラーのCa2+、5
マイクログラム/ミリリットルのオリゴマイシン、および2マイクロモーラーの
ロテノンのアッセイ濃度を得た。MM(抑制因子を含まない160μM CaC
2)を、細胞を含まず、かつ16マイクロモーラーのCa2+アッセイ濃度を有
するウェルに分配した。約3分後、第2用量を、ウェルに分配した。発光波長を
モニターし、そして細胞内Ca2+レベルを、アッセイを通して観察した。呼吸抑
制剤の存在下でCa2+の添加に供された細胞のプロフィールは、Ca2+を有し、
かつ細胞を有さないウェルのプロフィールを反映し、Ca2+がミトコンドリアに
おいて没収されないことを例示する。Ca2+を含まない培地を添加した場合、蛍
光は、わずかに最小に変化する(列3および4)(図9)。
【0184】 (D.Ca2+ユニポータ活性のモジュレーターについてのスクリーニング) ユニポータアッセイを行い、FCCP(カルボニルシアニドp−(トリフルオ
ロメトキシ)フェニル−ヒドラゾン;Sigma)(ミトコンドリアにおける酸
化的リン酸化の高度に効果的なアンカップラー)によって生成される抑制効果を
観察した。図11および12は、用量応答実験を示し、ここで、FCCPをアン
カップラーとして使用する。このような実験は、本発明のアッセイが、ミトコン
ドリアCa2+放出剤としてのアンカップラーおよびユニポータ活性の抑制因子を
検出する能力を実証する。薬物スクリーニングの目的で、このアッセイを、ユニ
ポータ活性を抑制する薬剤を同定するが呼吸アンカップラーもまた同定するよう
に設計する。しかし、いくつかの実施形態において、ユニポータ活性を特異的に
抑制するが、ミトコンドリアの効果に対してはほとんどまたは全く影響しない分
子をスクリーニングし得る系を確立することが好ましくあり得る。
【0185】 基本的な呼吸培地を、表3に記載の通りに調製し、そして0.5モーラーのグ
ルタメートおよびマレート(Sigma,St.Louis,MO;各々をKO
Hで7.0のpHにした)および1モーラーのMgCl2(Sigma)のスト
ック溶液として4℃にて保存した。アッセイの日に、マスターミックス溶液(M
M)を、ストック溶液からのグルタメートおよびマレートを、5ミリモーラーの
各々、1ミリモーラーのMgCl2、および0.5マイクロモーラーのCalc
ium−Green−5N(Molecular Probes,Eugene
,OR)の最終濃度まで添加することにより、調製した。MM中の六カリウム塩
Calcium−Green−5N(Molecular Probes,Eu
gene,OR)は、Ca2+に対する低い結合親和性を有する蛍光色素である。
細胞膜透過化処理剤ジギトニン(Sigma,St.Louis,MO)を、M
Mに添加し、0.007%の最終濃度にし、MM−Dと称される溶液を得た。こ
の混合物に、CaCl2を添加して、6マイクロモーラーのCa2+の最終濃度に
し、MM−Dと称される溶液(6μM Ca)を得た。10×Ca2+ストック溶
液を、CaCl2を添加してMM(ジギトニンなし)中200マイクロモーラー
の最終濃度にすることにより調製し、そしてFCCPの10×溶液もまた、MM
中で調製して、0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、2.0、5.0
および10.0マイクロモーラーの濃度を得た。
【0186】 HepG2細胞(ヒト肝細胞癌腫、ATCC HB−8065)を、増殖培地
(非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよびEarle平衡化塩溶液(BS
S)90%;FBS 10%を含むEagle最小必須培地(MEM))中ほぼ
コンフルエントなフラスコからトリプシン処理した。細胞を遠心分離し、増殖培
地を吸引し、そして透過化溶液MM−D(6μM CaCl2)に再懸濁した。
細胞の濃度を、溶液中1×107細胞/ミリリットルに調整した。百(100)
マイクロリットルの細胞懸濁物(1×106細胞)を、96ウェルマイクロタイ
タープレートに移した。このプレートを、製造業者の説明書に本質的に従って3
7℃に加温したFLIPRTMユニットに置いた。MM−FCCPの10×ストッ
ク溶液(異なる濃度のFCCPを有する)の11.1マイクロリットルのアリコ
ートを、細胞を含む8つウェルの各々に分配し、0、0.02、0.04、0.
06、0.08、0.1、0.2、0.5および1.0マイクロモーラーのFC
CPアッセイ濃度を得た。同様の様式において、10×ストック溶液の11.1
マイクロリットルを、細胞を含まない8つのウェルに添加した。FCCPストッ
ク溶液を、実験の開始の1分後に自動装置的に(robotically)添加
した。
【0187】 10×ストックCaCl2溶液の12.3マイクロリットルのパルスを、約4
分後にマイクロタイタープレートのウェルの各々に導入した。ミトコンドリア外
Ca2+のカルシウム指標色素(calcium indicator dye)
への結合から生じる発光を、このアッセイを通してモニターした。12の異なる
アッセイの各ウェル(各アッセイあたり8ウェル)からの発光を、時間の関数と
してグラフ化した(図10)。図10における列4は、細胞およびカルシウムが
存在した場合の8つのウェル(A〜H)からの結果を示す。10の列5〜12に
おいて、アンカップラーFCCPが、細胞およびカルシウムに加えて存在した。
FCCPの濃度は、列5(1.0μM)から列12(0.02μM)へと進行す
るにつれて減少し、そしてCaUP活性に対するアンカップラーの効果は、対応
する様式において減少する。0.02または0.04μMのFCCPが存在する
場合に得られた結果(それぞれ、列12および11)は、FCCPが存在しない
場合に得られた結果(列4)から区別することが困難であった。
【0188】 経時変化(ここでは、FCCPを1分で添加し、そしてカルシウムを約4分で
アッセイ培地にパルスした)に対するアッセイ(1〜12)に関する蛍光の変化
の平均を決定し、そして時間の関数としてグラフ化した(図11)。蛍光は、t
=1分でのFCCPの添加の際に、わずかに上昇した;理論によって束縛される
ことを望まないが、このことはおそらく、6マイクロモーラーのCa2+を含有す
るMM−Dに最初に再懸濁した場合にミトコンドリアにロードされたCa2+の結
果として生じる。
【0189】 ハイスループットユニポータアッセイプロトコル(懸濁細胞について上記のと
おりに行った)を使用して、小包体のCa2+取り込みの抑制因子タプシガルジン
(Calbiochem)の存在下または非存在下でのミトコンドリアおよびミ
トコンドリア外のCa2+濃度に対する異なる化合物の効果を決定した。このアッ
セイで実験した薬剤は、カルシウムチャンネル抑制因子、酸化促進剤および抗酸
化剤、ミトコンドリア抑制因子およびアンカップラー、ならびにCa−UP抑制
因子Ru360を含む。アッセイの日に、タプシガルジンとともにジギトニンを
含有する呼吸/細胞透過化処理培地(MM−TD)およびタプシガルジンを伴わ
ずにジギトニンを含有する呼吸/細胞透過化処理培地(MM−D)の溶液を、以
前に記載のように調製した。塩化カルシウムを各々に添加して、6マイクロモー
ラーのCa2+の最終濃度にし、MM−TD(6μM Ca)およびMM−D(6
μM Ca)を得た。MM溶液を、第2のCa2+パルスのために、200マイク
ロモーラーの10×Ca2+濃度で調製した。Ca2+−ユニポータ抑制因子Ru3
60を、MM中100マイクロリットルの10×濃度で調製した。他の薬剤の1
0倍の(10×)ストック溶液を、化合物をMMに添加して10マイクロモーラ
ーの最終濃度にすることにより、アッセイのために調製した。アッセイした薬剤
は、以下を含んだ:Ca2+チャネル抑制因子(ユニポータを含まない)、アミロ
ライド(Reserch Biochemicals Internation
al,RBI)、ニカルジピン(RBI)、ニフェジピン(RBI)、ニモジピ
ン(RBI)、トリフルオロペラジン(RBI)、およびベラパミル(RBI)
;カルシニュリン抑制因子/免疫抑制剤薬物、FK506(タクロリムス)(C
albiochem);ジルチアゼム(RBI)、いくつかのCa2+チャネルの
エフェクター;酸化促進剤ジアミド(アゾジカルボン酸ビス[ジメチルアミド])
(Sigma,St.Louis,MO)、および抗酸化剤N−アセチルシステ
イン(Sigma);CCCP(カルボニルシアニドm−クロロフェニル−ヒド
ラゾン)(Sigma)のような酸化的リン酸化のミトコンドリアアンカップラ
ーおよびロテノン(Sigma)のような呼吸抑制剤;Ca2+イオン透過担体、
イオノマイシン(Carbiochem);デントロレン(dentrolen
e)(RBI)、小包体Ca2+チャネルの抑制因子;K+−チャネル抑制因子、
グリブリド(グリベンクラミド)(Calbiochem);ミトコンドリア電
子伝達の抑制因子、PK−11195(RBI);末梢ベンゾジアゼピン(be
nzodiaepine)レセプターアンタゴニスト;ならびに代謝産物、クレ
アチン(Aldrich,Milwaukee,WI)。コントロールは、MM
中に水および10%DMSO(Sigma)を含む。
【0190】 HepG2細胞株(肝細胞癌腫、ATCC HB−8065)の細胞を、増殖
培地(非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよびEarle’s BSS、
90%;FBS 10%を含むEagle’s MEM)中ほぼコンフルエント
なフラスコからトリプシン処理した。細胞を遠心分離し、増殖培地を吸引し、そ
してMM−TD(6μM Ca)またはMM−D(6μM Ca)中1×107
細胞/ミリリットルの濃度に細胞を再懸濁した。百(100)マイクロリットル
の細胞懸濁物(1×106細胞)を、マイクロタイタープレートのウェルに移し
た。このプレートを、37℃に加温したFLIPRTMII(96ウェルフォーマ
ットで使用した)に置いた。水またはDMSOを含む10×ストック溶液の11
.1マイクロリットルのアリコート(コントロール)、Ru360(Ca−UP
抑制因子)、または試験化合物を、DMSOのアッセイ濃度が0.1%であり、
Ru360が10マイクロモーラーであり、そして試験化合物の各々が1マイク
ロモーラーの濃度であるように指定したウェルに分配した。さらなる3分間の後
、10×CaCl2の12.3マイクロリットル(200マイクロモーラーのC
2+)の第2の添加を、マイクロタイタープレートのウェルに分配し、20マイ
クロモーラーのCa2+のアッセイ濃度を得た。カルシウム指標色素に結合したミ
トコンドリア外Ca2+を、各アッセイを通しておよび各アッセイのプロフィール
をモニターした;結果を12に示す。ウェルにおける全てのタプシガルジンマイ
ナス(thaps−)アッセイは欄1〜6に対応し、そしてウェルにおけるタプ
シガルジンプラス(thaps+)アッセイは、欄7〜12に対応する。
【0191】 全てのアッセイのプロフィールは、図13のマイクロタイタープレート中のそ
れらの位置(欄 対 列)によって参照される。試験化合物の添加の際に、ウェ
ルのほとんどは、その後の3分間にわたって蛍光シグナルにおいてはわずかまた
はほとんど変化を示さなかった。このことは、ミトコンドリアの6マイクロモー
ラーのCa2+(これは、透過化の際に蓄積された)を保持する能力に対してほと
んどまたは全く効果を示さなかった。このことの例外は、アンカップラーCCC
P(A4、F2、A10、F8)およびイオノマイシン(Ca2+イオン透過担体
D6、G4、D12およびG10)の効果である。アトラクチロシド(B6、C
4、B12、C10)(内部ミトコンドリア膜における大きな伝導性細孔の開口
部を通じてCa2+の放出を誘導する透過性遷移の誘導因子)に応答するCa2+ 放出のわずかな指標もまた存在する。ユニポータ活性に対して影響を及ぼさない
コントロールアッセイは、水(A1、G6、A7、G12)およびDMSO(H
1、H4、H7、H10)である。Ca2+「スパイク(spike)」は、Ca 2+ のミトコンドリアへの取り込みを反映し、そしてCa2+−UP活性を示す。類
似のプロフィールを、以下の非ユニポータ抑制因子について観察する:アミロリ
ド(A2、D1、A7、D7);ニカルジピン(C2、G5、C8、G11);
ニフェジピン(nifidipine)(C3、E4、C9、E10);ニモジ
ピン(C5、F1、C11、F7);トリフルオロぺラジン(D2、H6、D8
、H12);ベラパミル(D4、G1、D10、G7);およびジルチアゼム(
B3、H5、B9、H11)。これらは、1マイクロモーラーではユニポータ抑
制活性を保有しないことを反映する。ユニポータ非抑制性プロフィールもまた、
以下について観察する:FK506(B4、E6、B10、E12);ジアミド
(B1、D5、B7、D11);N−アセチルシステイン(C1、E2、C7、
E8);ダントロレン(A6、B2、A12、B8);グリブリド(グリベンク
ラミド)(B5、F3、B11、F9);PK−11195(E1、H2、E7
、H8);およびクレアチン(F4、H3、F10、H9)。あるいは、Ca−
UPインヒビターRu360は、Ca2+の添加の際のユニポータによりCa2+
取り込みを示さず、そしてミトコンドリア外培地中のCa2+−カルシウム指標の
プラトーにおいて反映される(E5、F6、E11、F12)。類似のプロフィ
ールを、呼吸抑制剤ロテノン(C6、E3、C12、E9)について観察し、こ
れはおそらく、Ca2+の添加の際に、ETC複合体Iが無能になり、膜電位が浪
費され、そしてCa2+がもはやタンパク質ミトコンドリアによって没収され得な
いことを示す。アンカップラーCCCP(A4、F2、A10、F8;ミトコン
ドリアからCa2+を放出する)およびCa2+イオン透過担体(D6、G4、D1
2、G10;細胞貯蔵からCa2+を放出する)は、ミトコンドリアによるCa2+ の取り込みおよび保持を防止する薬剤のプロフィールを反映する。
【0192】 (実施例5) (ミトコンドリア透過性移行(MPT)の調節の検出) (A.一般方法) アッセイを、MPTエフェクターであるジアミド(チオール酸化剤および酸化
促進剤)による、MPTにおける移行誘導効果を観察するために行った。このア
ッセイを、Ca2+およびCa−Green−5Nの存在下において、混合された
サイブリドであるMixConのジギトニン透過化処理された細胞株において行
い、そしてLS50B Perkin Elmer Spectrofluor
imeterにおいてモニターしたが、FLIPR系に適合し得る。最初に、エ
タクリン酸を、Dulbecco’s改変Eagle’s培地および10% F
BS中のMixCon細胞に、終濃度100マイクロモーラーまで添加し、そし
て5分間あらかじめインキュベートし、細胞が、細胞を酸化促進剤に感受性にす
る酸化ストレスを扱う能力を取り除いた。次いで、この細胞を遠心分離し、増殖
培地を吸引し、そして細胞を、1ミリリットル当たり1.1×107個の細胞で
、ジギトニン(MM−D)を含む2ミリリットルの呼吸培地(respirat
ory media)において再懸濁し、ここで、ジギトニン(dig)は、細
胞を透過化処理する。次いで、この懸濁液を、蛍光分光分析キュベットに移した
。このキュベットを、蛍光計に置き、そして0.3マイクロリットルの254ミ
リモーラー CaCl2ストックを、このキュベットに添加した(最終CaCl2 濃度は、40マイクロモーラー)。約3分後、ジアミドを、終濃度500マイク
ロモーラーまでこのキュベットに添加した。約6分以内に、ミトコンドリアが、
おそらくMPTに対する酸化促進剤の効果を介して、封鎖されたCa2+を放出し
た。0.1マイクロモーラーのアッセイ濃度での脱共役剤であるFCCPの添加
は、ミトコンドリアからのCa2+のさらなる放出を特徴付けない。アッセイにお
ける40マイクロモーラーまでのCaCl2の添加は、蛍光の増加を生じ、従っ
て、Ca2+感受性色素は、アッセイ条件下において、Ca2+で飽和されなかった
ことを示した(図13)。
【0193】 MPTの調節をさらに細かく調べるために、細胞を透過化処理した後、10マ
イクロモーラーの透過性移行ブロッカーであるシクロスポリンA(CsA)を添
加した他は、同じ実験を上記の通りにMixCon細胞において行った。ジアミ
ドの添加に際して、蛍光のわずかな増加のみが観察された。おそらく、CsAが
、ミトコンドリア外培地(extramitochondria medium
)におけるCa2+レベルの減少の維持によって反映されるように、酸化促進剤が
MPTを誘導することを防止した。脱共役剤であるFCCPの添加に際してのみ
、Ca2+指示薬に関連するCa2+レベルの上昇によって反映されるように、ミト
コンドリアからCa2+が放出された(図13)。
【0194】 MPTエフェクターであるジアミド(チオール酸化剤および酸化促進剤)によ
るMPTの移行誘導効果は、第2の細胞株である293Tを用いて行った。29
3T細胞を、2ミリリットルの増殖培地(DMEN)および10% FBS中で
、100マイクロモーラーのエタクリン酸(1ml当たり1×107個の細胞)
を用いて懸濁し、そして14分間あらかじめインキュベートし、細胞が酸化スト
レスを扱う能力を取り除き、この細胞を酸化促進剤に感受性にした。この細胞を
遠心分離し、培地を吸引し、ジギトニン(MM−D)を含む2ミリリットルの呼
吸培地において再懸濁し、そしてキュベットに移した。MM−TD中のジギトニ
ン(dig)は、細胞を透過させる。このキュベットを、LS50B Perk
in Elmer Spectrofluorimeterに置き、そしてH2
O中の40マイクロモーラーのCaCl2を、この懸濁液に添加した。約3分後
、500マイクロモーラーのジアミドを、このキュベットに分配した。ミトコン
ドリアは、ただちに培地にゆっくりとCa2+を放出し始め、そしてこの速度は、
実質的に、約7.5分後に増加した。これは、MPTに対する酸化促進剤の効果
を反映した。0.1マイクロモーラーのアッセイ濃度での脱共役剤であるFCC
Pの添加は、蛍光レベルの増加を生じず、そしてミトコンドリアからさらなるC
2+が放出されないという証拠を与えた。従って、すべてのCa2+が、ジアミド
の効果によって細胞質ゾルに遊離した。
【0195】 (B.接着性細胞または非接着性細胞を用いたMPT活性の調節のためのスク
リーニング(キュベットまたはFLIPR)) FLIPRTM384を用いたハイスループットアッセイを使用して、透過化処
理された細胞を、ミトコンドリア透過性移行誘導物質であるアトラクチロシド(
atractyloside)(Sigma)、透過性移行ブロッカーであるボ
ンクレキン酸(Calbiochem)およびシクロスポリンA(CsA)、な
らびに酸化促進剤であるジアミドに供した場合の、MPTの調節を観察した。懸
濁液中のHepG2細胞(肝細胞癌、ATCC HB−8065)を使用して、
小胞体のCa2+取り込みインヒビターであるタプシガルジン(thapsiga
rgin)(Calbiochem,San Diego,CA)の存在下また
は非存在下におけるミトコンドリア外Ca2+濃度をモニターすることによって、
ミトコンドリアCa2+封鎖に対するこれらの化合物の効果を決定した。アッセイ
の日に、ジギトニンを含む呼吸培地の溶液(タプシガリン(thapsigar
in)(MM−TD)を含む、およびタプシガリン(thapsigarin)
(MM−D)を含まない)を、以前に記載される通りに調製した。塩化カルシウ
ムを、Ca2+終濃度6マイクロモーラーまで、各々に添加し、MM−TD、6μ
M CaおよびMM−D、6μM Caを得た。10倍(10×)のストック溶
液を、MM中で終濃度10マイクロモーラーまでの各々の化合物の添加によるア
ッセイのために調製した。10倍(10×)のCaCl2溶液を、第2の添加の
ために、MMまたはMM−T中で200マイクロモーラーの濃度に調製した。
【0196】 HepG2細胞を、増殖培地(非必須アミノ酸を含むEagle’s MEM
、ピルビン酸ナトリウムおよびEarle’s BSS、90%;FBS 10
%)における、ほぼコンフルエントのフラスコからトリプシン処理した。細胞を
遠心分離し、培地を吸引し、そしてこの細胞を、MM−TD、6μM Caおよ
びMM−D、6μM Caの1ミリリットル当たり1×107個の細胞に再懸濁
した。ここで、Ca2+および指示色素が細胞に入り、そしてCa2+が、ミトコン
ドリアにおいて封鎖されるようになる。100マイクロリットルの細胞懸濁液を
、マイクロタイタープレートの各々のウエルに送達した。このプレートを、37
℃に暖められたFLIPR384中に置いた。試験化合物を含む11.1マイク
ロリットル容量の10× ストック溶液を、指定されたウエルに分配し、その結
果、このアッセイ濃度は1マイクロモーラーである。3分間隔後、20マイクロ
モーラーのCa2+パルスを、12.3マイクロリットルの10× CaCl2
液(200マイクロモーラーのCa2+を含む)を添加することによって送達した
。カルシウム指示色素に結合した細胞小器官外のCa2+を完全にモニターし、そ
して各々のアッセイ(列1〜6に対応するウエルでのすべてのタプシガルジンマ
イナス(thaps−)アッセイおよび列7〜12に対応するウエルでのタプシ
ガルジンプラス(thaps+)アッセイ)のプロファイルを図13に示す。
【0197】 すべてのアッセイのプロファイルは、マイクロタイタープレートにおけるその
位置によって、図13の列対行といわれる。透過性移行のインヒビターであるボ
ンクレキン酸およびCsAを含む化合物の大半のアッセイの活性プロファイルは
、Ca2+パルスの添加に際して、細胞質ゾルのCa2+における突然の増加が観察
され、Ca2+の正常なミトコンドリア封鎖を示す「スパイク」の帰着を減少する
ことを示す。透過性誘導物質であるアトラクチロシド(B6、C4、B12およ
びC10)のアッセイプロファイルは、細胞質ゾルへのCa2+の緩徐な放出(お
そらくMPT孔を通して)で、ミトコンドリアへのCa2+の最初の取り込みを示
す。酸化促進剤であるジアミド、B1、D5、B7および11は、Ca2+パルス
後のミトコンドリアによるCa2+の封鎖を反映する。この最後の結果は、ジアミ
ドが、ミトコンドリアからのCa2+の放出を引き起こす場合の、キュベット中の
類似のアッセイの結果(上記参照のこと)と異なる。この相違は、キュベット中
のジアミドのアッセイ濃度が0.5ミリモーラーであり、そしてFLIPRアッ
セイにおいて、1マイクロモーラーのジアミドの使用が、ミトコンドリアにおけ
るCa2+封鎖に影響を及ぼすには低すぎる場合の、各々の実験のジアミドの濃度
に起因する。
【0198】 仮定的に、ミトコンドリアの膜の透過性移行のインヒビターについてスクリー
ニングするために、試験化合物の添加後に細胞へ添加されたCa2+の量を、自発
的なCa2+放出を誘導するレベルまで増加し得る。任意の試験化合物の非存在下
において、移行を示す追跡は、増加として現れ、これに続いて、ミトコンドリア
がミトコンドリア外Ca2+濃度を下げてベースラインまで戻すことが不可能とな
る。例えば、Ca2+の添加は、約400マイクロモーラーまで増大され得、この
増大は、ミトコンドリアのCa2+取り込みを生じ、その後、この非特異的孔の開
口を刺激し、Ca2+をミトコンドリアから流出させた。透過性移行インヒビター
(例えば、ボンクレキン酸(1マイクロモーラーで)またはシクロスポリンA(
1マイクロモーラーで)の添加は、移行を阻害し、そしてミトコンドリアのCa 2+ 蓄積を継続させ、蛍光レベルをベースラインまで戻した。
【0199】 (実施例6) (ミトコンドリア外のCa2+の調節の検出) (一般方法(キュベットまたはFLIPR)) この蛍光に基づくアッセイは、ミトコンドリアの緩衝液を変更させるか、また
は点(ユニポータの活性化およびCa2+流出活性後のミトコンドリア外のCa2+ 濃度)を設定する化合物のスクリーニングを可能にするように改変され得た。ミ
トコンドリアの流出は、通常、ミトコンドリアの型に依存して、Na+/Ca2+
交換体またはCa2+/H+アンチポータ(antiporter)のいずれかに
よって媒介される。このアッセイを実行するために、すべての同じ培地および細
胞ならびに/またはミトコンドリア調製物が、Ca2+が、透過化処理培地に添加
されず、そして透過化処理培地が、添加されたCa2+を有さない以外は、以前に
記載された通りに維持され得た。次いで、この細胞を、マイクロタイターウエル
に分配し得、そして最初の添加は、Ca2+の添加(約4〜15マイクロモーラー
であるが、実験的に、透過性移行を誘導する濃度より十分低いことが決定された
)であり得、その後、30マイクロモーラーのNaClとともに、0.1〜5μ
MのルテニウムRedを、培地に添加した(必要に応じて、Na+/Ca2+交換
体の速度を増強するために)。ミトコンドリアが、Na+/Ca2+交換活性を示
す細胞へのNa+の添加は、上記の最初のベースラインのレベルへの蛍光の回復
を生じる。試験化合物を約3分後に添加し、そして追跡を、試験化合物の添加の
前に確立された平衡と比較して、蛍光における増加または減少のいずれかについ
て評価した。安定状態のレベルにおける減少は、流出インヒビターを示した。安
定状態のレベルにおける増加は、流出アクセレレーターを示した。最初の添加と
同じ量のCa2+の第2のパルスを添加し得た。流入を促進するか、または流出を
阻害する化合物が、よりはっきりとしたCa2+ピーク、およびCa2+の以前のレ
ベルへのより迅速な回復を生じた。Ca2+流出のアクセレレーターは、スパイク
を広げ、そしてベースラインまでの回復を遅らせた。
【0200】 前記より、本発明の特定の実施形態が、本明細書中で例示の目的のために記載
されるが、種々の改変が、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなくなされ得
ることが理解される。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲を除いて、限定
されない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、透過化処理された細胞へのカルシウムイオン(Ca2+、図中「黒丸」
で表される)の進入および分布を示す。他の記号および略語;点線、透過化処理
された細胞膜;卵形状、ミトコンドリア;実線の境界を有する長方形、ミトコン
ドリア外(EM)カルシウムリザーバ;CaUP、ミトコンドリアカルシウムユ
ニポータ。
【図2】 図2は、透過化処理された細胞への、カルシウム感受性様式の検出可能なシグ
ナルを提供し得る試薬(図中「白丸」で表される)の進入を示す。このカルシウ
ム感受性試薬の分子がカルシウムイオンと結合する場合、検出可能なシグナル「
アスタリスク」が放出される。他の記号および略語は、図1と同じである。培地
中およびサイトゾル空間中のカルシウムイオンは、この実施形態のアッセイで検
出されるが、カルシウム感受性の検出可能な試薬は、ミトコンドリアおよび他の
(ミトコンドリア外)カルシウムリザーバに進入し得ず、そして従って、ミトコ
ンドリアまたはミトコンドリア外カルシウムリザーバに隔離されたカルシウムイ
オンは、検出されない。
【図3】 図3は、ミトコンドリア外(EM)カルシウムリザーバ放出試薬が存在する、
本発明のアッセイの実施形態を示す。記号は、図1および図2と同じである。こ
の実施形態のアッセイにおいて、EMカルシウムリザーバ中に隔離されたカルシ
ウムイオンは、そこから放出され、そして/またはこのようなリザーバへの進入
を妨げられる。結果として、ミトコンドリアは、カルシウムイオンの隔離の唯一
のまたは主要な部位であり、検出可能なカルシウムイオンレベルの変化は、Ca 2+ のミトコンドリアへの流入(またはミトコンドリアからの流出)に単独または
少なくとも主に対応する。この図において、カルシウムイオンは、カルシウムユ
ニポータ(CaUP)の作用に起因してミトコンドリアに進入することが示され
る。
【図4】 図4は、本発明のアッセイの理論化された結果を反映する模式図である。最初
のCa2+パルスを、パネルAに示す。ここで、ミトコンドリア外Ca2+に対応す
るシグナルは、カルシウムが添加された後に、カルシウムユニポータ(CaUP
)がミトコンドリア中にCa2+イオンを隔離するよう作用するので、減少する。
パネルBにおいて、透過化処理された細胞に添加された試験化合物は、呼吸脱共
役剤または呼吸阻害剤であり、これは、CaUPが反対に作用するのを生じる;
すなわち、これらの条件下で、CaUPは、ミトコンドリアへのCa2+の取り込
みに代わり、Ca2+のミトコンドリアからの放出を刺激する。このミトコンドリ
アCa2+の放出は、ミトコンドリア外Ca2+に対応するシグナルが、試験化合物
が添加された直後または後で増加するのを生じる(破線は、試験化合物の非存在
下での結果を示す)。パネルCにおいて、試験化合物は、呼吸またはカルシウム
ユニポータに対して効果を有さず、これは、第2パルスのCa2+が、最初のCa 2+ パルスにおける速度論プロフィールと同じプロフィールでミトコンドリアによ
って取り込まれるという事実によって示され;同じ結果が、Ca2+の第2パルス
前に化合物が添加されない場合に生じる。パネルDにおいて、示されるように、
試験化合物は、カルシウムユニポータの抑制因子または刺激因子のいずれか一方
であり、そして破線は、試験化合物の非存在下で予測される結果を示す。
【図5】 図5は、本発明のアッセイの1つで得られた結果を示す。ここで、MixCo
n細胞は、漸増濃度(0〜16μM)のカルシウムイオンでチャレンジした。
【図6】 図6は、本発明のアッセイの1つで得られた結果を示す。ここで、MixCo
n細胞は、漸増濃度(0〜20μM)のカルシウムイオンでチャレンジした。
【図7】 図7は、本発明のアッセイに対する、2つの化合物、ロテノンおよびオリゴマ
イシン(これらは、ミトコンドリア機能に影響を及ぼすことが公知である)の効
果を示す。
【図8】 図8は、ロテノンおよびオリゴマイシンとの種々の組合せでの、異なる任意の
培地成分(リンゴ酸塩、コハク酸塩およびグルタミン酸塩)の効果を示す。
【図9】 図9は、このアッセイに対する、カルシウムイオン、ロテノンおよびオリゴマ
イシンの濃度の最適化するための試行の結果を示す。
【図10】 図10は、本発明のアッセイに対する漸増濃度のFCCPの効果を示す。
【図11】 図11は、時間の関数としてプロットした図10に示されるデータを示す。
【図12】 図12は、タプシガルジンを含む(カラム7〜12)およびタプシガルジンを
含まない(1〜6)、カルシウムレベルに対する種々の薬剤の影響を示す。
【図13】 図13は、本発明のアッセイを使用して得られた結果に対する、MPTエフェ
クター、ジアミドの影響を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF ,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW, ML,MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,G M,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ, MD,RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM, AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,B Z,CA,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK ,DM,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE, GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,J P,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR ,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK, MN,MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,R O,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ, VN,YU,ZA,ZW Fターム(参考) 2G045 BB20 BB29 CB01 FA29 FB12 GC15 4B063 QA05 QA18 QQ08 QQ13 QQ20 QQ89 QR32 QR50 QR77 QR80 QS36 QS38 QX02

Claims (96)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法であって
    、以下: (a)ハイスループットスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々
    において、 (i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細
    胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下
    で、 (ii)カルシウムカチオンの供給源と、 接触させる工程であって、 ここで該カルシウム指標分子が、該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベル
    に比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程; (b)各反応容器において、複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生
    成されるシグナルを検出する工程;ならびに (c)候補薬剤の非存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によっ
    て生成されるシグナルを、該候補薬剤の存在下で1以上の該時点にて該カルシウ
    ム指標分子によって生成されるシグナルに対して比較し、それにより、ミトコン
    ドリア機能を変更する薬剤を同定する工程、 を包含する、方法。
  2. 【請求項2】 前記接触させる工程が、少なくとも1回繰り返される、請求
    項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記サンプルが、カルシウムカチオンの細胞内分布を変更す
    る少なくとも1つの化合物を含む、請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 細胞内カルシウムカチオン分布を変更する前記化合物が、タ
    プシガルジンおよびRu360からなる群より選択される、請求項3に記載の方
    法。
  5. 【請求項5】 細胞内カルシウムカチオン分布を変更する前記化合物が、細
    胞内カルシウム分布を変更する、カルシウムイオン透過担体および膜透過性化合
    物からなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記サンプルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役す
    る少なくとも1つの化合物を含有する、請求項3に記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記候補薬剤が、膜透過性である、請求項1に記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記カルシウム指標分子が、膜透過性である、請求項1に記
    載の方法。
  9. 【請求項9】 前記カルシウムカチオンの供給源が、前記細胞に対して外因
    性である、請求項1に記載の方法。
  10. 【請求項10】 前記サンプルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役
    する少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1に記載の方法。
  11. 【請求項11】 前記細胞が、Bcl−2ファミリーのメンバーである少な
    くとも1つのポリペプチドを含む、請求項1に記載の方法。
  12. 【請求項12】 前記細胞が、細胞質ゾルカルシウムを調節するポリペプチ
    ドをコードする遺伝子を発現する、請求項1に記載の方法。
  13. 【請求項13】 前記遺伝子が、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコ
    ードする、請求項12に記載の方法。
  14. 【請求項14】 前記遺伝子が、トランスフェクトされた遺伝子である、請
    求項12に記載の方法。
  15. 【請求項15】 前記遺伝子が、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコ
    ードする、請求項14に記載の方法。
  16. 【請求項16】 前記細胞が、透過化処理された細胞である、請求項1に記
    載の方法。
  17. 【請求項17】 前記細胞が、固体基質に接着する、請求項1に記載の方法
  18. 【請求項18】 前記細胞が、非接着細胞である、請求項1に記載の方法。
  19. 【請求項19】 ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する薬剤を同定す
    る方法であって、以下: (a)ハイスループットスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々
    において、 (i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細
    胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下
    で、 (ii)カルシウムカチオンの供給源と、 接触させる工程であって、 ここで該カルシウム指標分子が、該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベル
    に比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程; (b)各反応容器において、複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生
    成されるシグナルを検出する工程; (c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに (d)(i)候補薬剤の非存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後
    の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、
    (ii)該候補薬剤の存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1
    以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して、
    比較する工程であって、ここで、該薬剤の非存在下での接触工程の前の該細胞質
    ゾルにおけるカルシウムのレベルに比べて、該薬剤の存在下での接触工程の前の
    時点での該細胞質ゾルにおけるカルシウムの増加したレベルが、ATP産生から
    酸化的リン酸化を脱共役する薬剤を示す、工程、 を包含する、方法。
  20. 【請求項20】 呼吸抑制剤である薬剤を同定する方法であって、以下: (a)ハイスループットスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々
    において、 (i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細
    胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下
    で、 (ii)カルシウムカチオンの供給源と、 接触させる工程であって、 ここで該カルシウム指標分子が、該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベル
    に比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程; (b)各反応容器において、複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生
    成されるシグナルを検出する工程; (c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに (d)(i)候補薬剤の非存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後
    の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、
    (ii)該候補薬剤の存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1
    以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して、
    比較する工程であって、ここで、該薬剤の非存在下での接触工程の前の該細胞質
    ゾルにおけるカルシウムのレベルに比べて、該薬剤の存在下での接触工程の前の
    時点での該細胞質ゾルにおけるカルシウムの増加したレベルが、呼吸抑制剤であ
    る薬剤を示す、工程、 を包含する、方法。
  21. 【請求項21】 ミトコンドリアカルシウムユニポータを変更する薬剤を同
    定する方法であって、 (a)ハイスループットスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々
    において、 (i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細
    胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下
    で、 (ii)カルシウムカチオンの供給源と、 接触させる工程であって、 ここで該カルシウム指標分子が、該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベル
    に比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程; (b)各反応容器において、複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生
    成されるシグナルを検出する工程; (c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに (d)(i)候補薬剤の非存在下で少なくとも1つの接触工程の前および後の
    、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、(
    ii)該候補薬剤の存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1以
    上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して、比
    較する工程であって、ここで、該薬剤の非存在下での接触工程の前の該細胞質ゾ
    ルにおけるカルシウムのレベルに比べて、該薬剤の存在下での接触工程の前の時
    点での該細胞質ゾルにおけるカルシウムの増加したレベルが、ミトコンドリアカ
    ルシウムユニポータを変更する薬剤を示す、工程、 を包含する、方法。
  22. 【請求項22】 ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法であっ
    て、以下: (a) (i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細
    胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下
    で、 (ii)カルシウムカチオンの供給源と、 接触させる工程であって、 ここで該カルシウム指標分子が、該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベル
    に比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程; (b)複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検
    出する工程;ならびに (c)候補薬剤の非存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によっ
    て生成されるシグナルを、該候補薬剤の存在下で1以上の該時点にて該カルシウ
    ム指標分子によって生成されるシグナルに対して比較し、それにより、ミトコン
    ドリア機能を変更する薬剤を同定する工程、 を包含する、方法。
  23. 【請求項23】 前記接触させる工程が、少なくとも1回繰り返される、請
    求項22に記載の方法。
  24. 【請求項24】 前記サンプルが、カルシウムカチオンの細胞内分布を変更
    する少なくとも1つの化合物を含有する、請求項22に記載の方法。
  25. 【請求項25】 細胞内カルシウムカチオン分布を変更する前記化合物が、
    タプシガルジンおよびRu360からなる群より選択される、請求項24に記載
    の方法。
  26. 【請求項26】 細胞内カルシウムカチオン分布を変更する前記化合物が、
    細胞内カルシウム分布を変更する、カルシウムイオン透過担体および膜透過性化
    合物からなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
  27. 【請求項27】 前記サンプルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役
    する少なくとも1つの化合物を含有する、請求項24に記載の方法。
  28. 【請求項28】 前記候補薬剤が、膜透過性である、請求項22に記載の方
    法。
  29. 【請求項29】 前記カルシウム指標分子が、膜透過性である、請求項22
    に記載の方法。
  30. 【請求項30】 前記カルシウムカチオンの供給源が、前記細胞に対して外
    因性である、請求項22に記載の方法。
  31. 【請求項31】 前記サンプルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役
    する少なくとも1つの化合物を含有する、請求項22に記載の方法。
  32. 【請求項32】 前記細胞が、Bcl−2ファミリーのメンバーである少な
    くとも1つのポリペプチドを含む、請求項22に記載の方法。
  33. 【請求項33】 前記細胞が、細胞質ゾルカルシウムを調節するポリペプチ
    ドをコードする遺伝子を発現する、請求項22に記載の方法。
  34. 【請求項34】 前記遺伝子が、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコ
    ードする、請求項33に記載の方法。
  35. 【請求項35】 前記遺伝子が、トランスフェクトされた遺伝子である、請
    求項33に記載の方法。
  36. 【請求項36】 前記遺伝子が、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコ
    ードする、請求項35に記載の方法。
  37. 【請求項37】 前記細胞が、透過化処理された細胞である、請求項22に
    記載の方法。
  38. 【請求項38】 前記細胞が、固体基質に接着する、請求項22に記載の方
    法。
  39. 【請求項39】 前記細胞が、非接着細胞である、請求項22に記載の方法
  40. 【請求項40】 ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する薬剤を同定す
    る方法であって、以下: (a) (i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細
    胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下
    で、 (ii)カルシウムカチオンの供給源と、 接触させる工程であって、 ここで該カルシウム指標分子が、該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベル
    に比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程; (b)複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検
    出する工程; (c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに (d)(i)候補薬剤の非存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後
    の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、
    (ii)該候補薬剤の存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1
    以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して、
    比較する工程であって、ここで、該薬剤の非存在下での接触工程の前の該細胞質
    ゾルにおけるカルシウムのレベルに比べて、該薬剤の存在下での接触工程の前の
    時点での該細胞質ゾルにおけるカルシウムの増加したレベルが、ATP産生から
    酸化的リン酸化を脱共役する薬剤を示す、工程、 を包含する、方法。
  41. 【請求項41】 呼吸抑制剤である薬剤を同定する方法であって、以下: (a) (i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細
    胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下
    で、 (ii)カルシウムカチオンの供給源と、 接触させる工程であって、 ここで該カルシウム指標分子が、該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベル
    に比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程; (b)複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検
    出する工程; (c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに (d)(i)候補薬剤の非存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後
    の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、
    (ii)該候補薬剤の存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1
    以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して、
    比較する工程であって、ここで、該薬剤の非存在下での接触工程の前の該細胞質
    ゾルにおけるカルシウムのレベルに比べて、該薬剤の存在下での接触工程の前の
    時点での該細胞質ゾルにおけるカルシウムの増加したレベルが、呼吸抑制剤であ
    る薬剤を示す、工程、 を包含する、方法。
  42. 【請求項42】 ミトコンドリアカルシウムユニポータを変更する薬剤を同
    定する方法であって、 (a) (i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細
    胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下
    で、 (ii)カルシウムカチオンの供給源と、 接触させる工程であって、 ここで該カルシウム指標分子が、該細胞質ゾルにおけるカルシウムのレベル
    に比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程; (b)複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検
    出する工程; (c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに (d)(i)候補薬剤の非存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後
    の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、
    (ii)該候補薬剤の存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1
    以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して、
    比較する工程であって、ここで、該薬剤の非存在下での接触工程の前の該細胞質
    ゾルにおけるカルシウムのレベルに比べて、該薬剤の存在下での接触工程の前の
    時点での該細胞質ゾルにおけるカルシウムの増加したレベルが、ミトコンドリア
    カルシウムユニポータを変更する薬剤を示す、工程、 を包含する、方法。
  43. 【請求項43】 ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法であっ
    て、以下: (a)ハイスループットスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々
    において、 (i)ミトコンドリア、細胞質ゾル、およびカルシウム指標分子を含有する
    細胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件
    下で、 (ii)カルシウムイオン透過担体と、該細胞内のカルシウムレベルを増加
    する条件下で、該細胞内のカルシウムレベルを増加するに十分な時間、 接触させる工程であって、 ここで該カルシウム指標分子が膜透過性であり、そして該細胞質ゾルにおけ
    るカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程; (b)各反応容器において、複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生
    成されるシグナルを検出する工程;ならびに (c)候補薬剤の非存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によっ
    て生成されるシグナルを、該候補薬剤の存在下で1以上の該時点にて該カルシウ
    ム指標分子によって生成されるシグナルに対して比較し、それにより、ミトコン
    ドリア機能を変更する薬剤を同定する工程、 を包含する、方法。
  44. 【請求項44】 前記カルシウムイオン透過担体が、イオノマイシン、A2
    3187、NMDA、および細胞脱分極シグナルからなる群より選択される、請
    求項43に記載の方法。
  45. 【請求項45】 前記接触させる工程が、少なくとも1回繰り返される、請
    求項43に記載の方法。
  46. 【請求項46】 前記サンプルが、カルシウムカチオンの細胞内分布を変更
    する少なくとも1つの化合物を含む、請求項43に記載の方法。
  47. 【請求項47】 細胞内カルシウムカチオン分布を変更する前記化合物が、
    タプシガルジンおよびRu360からなる群より選択される、請求項46に記載
    の方法。
  48. 【請求項48】 細胞内カルシウムカチオン分布を変更する前記化合物が、
    細胞内カルシウム分布を変更する、カルシウムイオン透過担体および膜透過性化
    合物からなる群より選択される、請求項46に記載の方法。
  49. 【請求項49】 前記サンプルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役
    する少なくとも1つの化合物を含有する、請求項46に記載の方法。
  50. 【請求項50】 前記候補薬剤が、膜透過性である、請求項43に記載の方
    法。
  51. 【請求項51】 前記カルシウムカチオンの供給源が、前記細胞に対して外
    因性である、請求項43に記載の方法。
  52. 【請求項52】 前記サンプルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役
    する少なくとも1つの化合物を含有する、請求項43に記載の方法。
  53. 【請求項53】 前記細胞が、Bcl−2ファミリーのメンバーである少な
    くとも1つのポリペプチドを含む、請求項43に記載の方法。
  54. 【請求項54】 前記細胞が、細胞質ゾルカルシウムを調節するポリペプチ
    ドをコードする遺伝子を発現する、請求項43に記載の方法。
  55. 【請求項55】 前記遺伝子が、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコ
    ードする、請求項54に記載の方法。
  56. 【請求項56】 前記遺伝子が、トランスフェクトされた遺伝子である、請
    求項54に記載の方法。
  57. 【請求項57】 前記遺伝子が、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコ
    ードする、請求項56に記載の方法。
  58. 【請求項58】 前記細胞が、固体基質に接着する、請求項43に記載の方
    法。
  59. 【請求項59】 前記細胞が、非接着細胞である、請求項43に記載の方法
  60. 【請求項60】 ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する薬剤を同定す
    る方法であって、以下: (a) (i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細
    胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下
    で、 (ii)カルシウムイオン透過担体と、該細胞内のカルシウムレベルを増加
    する条件下で、該細胞内のカルシウムレベルを増加するに十分な時間、 接触させる工程であって、 ここで該カルシウム指標分子が膜透過性であり、そして該細胞質ゾルにおけ
    るカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程; (b)複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検
    出する工程; (c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに (d)(i)候補薬剤の非存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後
    の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、
    (ii)該候補薬剤の存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1
    以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して、
    比較する工程であって、ここで、該薬剤の非存在下での接触工程の前の該細胞質
    ゾルにおけるカルシウムのレベルに比べて、該薬剤の存在下での接触工程の前の
    時点での該細胞質ゾルにおけるカルシウムの増加したレベルが、ATP産生から
    酸化的リン酸化を脱共役する薬剤を示す、工程、 を包含する、方法。
  61. 【請求項61】 呼吸抑制剤である薬剤を同定する方法であって、以下: (a) (i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細
    胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下
    で、 (ii)カルシウムイオン透過担体と、該細胞内のカルシウムレベルを増加
    する条件下で、該細胞内のカルシウムレベルを増加するに十分な時間、 接触させる工程であって、 ここで該カルシウム指標分子が膜透過性であり、そして該細胞質ゾルにおけ
    るカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程; (b)複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検
    出する工程; (c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに (d)(i)候補薬剤の非存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後
    の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、
    (ii)該候補薬剤の存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1
    以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して、
    比較する工程であって、ここで、該薬剤の非存在下での接触工程の前の該細胞質
    ゾルにおけるカルシウムのレベルに比べて、該薬剤の存在下での接触工程の前の
    時点での該細胞質ゾルにおけるカルシウムの増加したレベルが、呼吸抑制剤であ
    る薬剤を示す、工程、 を包含する、方法。
  62. 【請求項62】 ミトコンドリアカルシウムユニポータを変更する薬剤を同
    定する方法であって、以下: (a) (i)細胞質ゾル、ミトコンドリアおよびカルシウム指標分子を含有する細
    胞を含む生物学的サンプルを、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件下
    で、 (ii)カルシウムイオン透過担体と、該細胞内のカルシウムレベルを増加
    する条件下で、該細胞内のカルシウムレベルを増加するに十分な時間、 接触させる工程であって、 ここで該カルシウム指標分子が膜透過性であり、そして該細胞質ゾルにおけ
    るカルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程; (b)複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検
    出する工程; (c)工程(a)および(b)を少なくとも1回繰り返す工程;ならびに (d)(i)候補薬剤の非存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後
    の、1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを、
    (ii)該候補薬剤の存在下で少なくとも1つの該接触工程の前および後の、1
    以上の該時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルに対して、
    比較する工程であって、ここで、該薬剤の非存在下での接触工程の後の該細胞質
    ゾルにおけるカルシウムのレベルに比べて、該薬剤の存在下での接触工程の後の
    時点での該細胞質ゾルにおけるカルシウムの増加したレベルが、ミトコンドリア
    カルシウムユニポータを変更する薬剤を示す、工程、 を包含する、方法。
  63. 【請求項63】 ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法であっ
    て、以下: (a) (i)細胞質ゾルの枯渇した透過化処理された細胞を含む生物学的サンプル
    、ミトコンドリア、およびカルシウム指標分子を、ミトコンドリア膜電位の維持
    を可能にする条件下で、 (ii)カルシウムカチオンの供給源と、 接触させる工程であって、 ここで該カルシウム指標分子が、該細胞におけるカルシウムのレベルに比例
    する検出可能なシグナルを生成し得る、工程; (b)複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検
    出する工程;ならびに (c)候補薬剤の非存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によっ
    て生成されるシグナルを、該候補薬剤の存在下で1以上の該時点にて該カルシウ
    ム指標分子によって生成されるシグナルに対して比較し、それにより、ミトコン
    ドリア機能を変更する薬剤を同定する工程、 を包含する、方法。
  64. 【請求項64】 ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法であっ
    て、以下: (a)ハイスループットスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々
    において、 (i)細胞質ゾルの枯渇した透過化処理された細胞を含む生物学的サンプル
    、ミトコンドリア、およびカルシウム指標分子を、ミトコンドリア膜電位の維持
    を可能にする条件下で、 (ii)カルシウムカチオンの供給源と、 接触させる工程であって、 ここで該カルシウム指標分子が、該細胞におけるカルシウムのレベルに比例
    する検出可能なシグナルを生成し得る、工程; (b)各反応容器において、複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生
    成されるシグナルを検出する工程;ならびに (c)候補薬剤の非存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によっ
    て生成されるシグナルを、該候補薬剤の存在下で1以上の該時点にて該カルシウ
    ム指標分子によって生成されるシグナルに対して比較し、それにより、ミトコン
    ドリア機能を変更する薬剤を同定する工程、 を包含する、方法。
  65. 【請求項65】 前記カルシウム指標分子が、前記ミトコンドリアにおける
    カルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、請求項63ま
    たは請求項64のいずれかに記載の方法。
  66. 【請求項66】 前記カルシウム指標分子が、前記ミトコンドリアの外側の
    カルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、請求項63ま
    たは請求項64のいずれかに記載の方法。
  67. 【請求項67】 前記接触させる工程が、少なくとも1回繰り返される、請
    求項63または請求項64のいずれかに記載の方法。
  68. 【請求項68】 前記サンプルが、カルシウムカチオンの細胞内分布を変更
    する少なくとも1つの化合物を含む、請求項63または請求項64のいずれかに
    記載の方法。
  69. 【請求項69】 細胞内カルシウムカチオン分布を変更する前記化合物が、
    タプシガルジンおよびRu360からなる群より選択される、請求項68に記載
    の方法。
  70. 【請求項70】 前記サンプルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役
    する少なくとも1つの化合物を含有する、請求項68に記載の方法。
  71. 【請求項71】 前記カルシウムカチオンの供給源が、前記細胞に対して外
    因性である、請求項63または請求項64のいずれかに記載の方法。
  72. 【請求項72】 前記サンプルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役
    する少なくとも1つの化合物を含有する、請求項63または請求項64のいずれ
    かに記載の方法。
  73. 【請求項73】 前記細胞が、Bcl−2ファミリーのメンバーである少な
    くとも1つのポリペプチドを含む、請求項63または請求項64のいずれかに記
    載の方法。
  74. 【請求項74】 前記細胞が、細胞質ゾルカルシウムを調節するポリペプチ
    ドをコードする遺伝子を発現する、請求項63または請求項64のいずれかに記
    載の方法。
  75. 【請求項75】 前記遺伝子が、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコ
    ードする、請求項74に記載の方法。
  76. 【請求項76】 前記遺伝子が、トランスフェクトされた遺伝子である、請
    求項74に記載の方法。
  77. 【請求項77】 前記遺伝子が、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコ
    ードする、請求項76に記載の方法。
  78. 【請求項78】 前記細胞が、固体基質に接着する、請求項63または請求
    項64のいずれかに記載の方法。
  79. 【請求項79】 前記細胞が、非接着細胞である、請求項63または請求項
    64のいずれかに記載の方法。
  80. 【請求項80】 ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法であっ
    て、以下: (a)ハイスループットスクリーニングアレイにおける複数の反応容器の各々
    において、 (i)培地中の、1以上の単離されたミトコンドリアを含む生物学的サンプ
    ルおよびカルシウム指標分子を、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件
    下で、 (ii)カルシウムカチオンの供給源と、 接触させる工程であって、 ここで該カルシウム指標分子が、該生物学的サンプルにおけるカルシウムの
    レベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程; (b)各反応容器において、複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生
    成されるシグナルを検出する工程;ならびに (c)候補薬剤の非存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によっ
    て生成されるシグナルを、該候補薬剤の存在下で1以上の該時点にて該カルシウ
    ム指標分子によって生成されるシグナルに対して比較し、それにより、ミトコン
    ドリア機能を変更する薬剤を同定する工程、 を包含する、方法。
  81. 【請求項81】 ミトコンドリア機能を変更する薬剤を同定する方法であっ
    て、以下: (a) (i)培地中の、1以上の単離されたミトコンドリアを含む生物学的サンプ
    ルおよびカルシウム指標分子を、ミトコンドリア膜電位の維持を可能にする条件
    下で、 (ii)カルシウムカチオンの供給源と、 接触させる工程であって、 ここで該カルシウム指標分子が、該生物学的サンプルにおけるカルシウムの
    レベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、工程; (b)複数の時点にて該カルシウム指標分子によって生成されるシグナルを検
    出する工程;ならびに (c)候補薬剤の非存在下で1以上の該時点にて該カルシウム指標分子によっ
    て生成されるシグナルを、該候補薬剤の存在下で1以上の該時点にて該カルシウ
    ム指標分子によって生成されるシグナルに対して比較し、それにより、ミトコン
    ドリア機能を変更する薬剤を同定する工程、 を包含する、方法。
  82. 【請求項82】 前記カルシウム指標分子が、前記ミトコンドリアにおける
    カルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、請求項80ま
    たは請求項81のいずれかに記載の方法。
  83. 【請求項83】 前記カルシウム指標分子が、前記ミトコンドリアの外側の
    カルシウムのレベルに比例する検出可能なシグナルを生成し得る、請求項80ま
    たは請求項81のいずれかに記載の方法。
  84. 【請求項84】 前記接触させる工程が、少なくとも1回繰り返される、請
    求項80または請求項81のいずれかに記載の方法。
  85. 【請求項85】 前記サンプルが、サンプル内のカルシウムカチオンの分布
    を変更する少なくとも1つの化合物を含む、請求項80または請求項81のいず
    れかに記載の方法。
  86. 【請求項86】 カルシウムカチオン分布を変更する前記化合物が、タプシ
    ガルジンおよびRu360からなる群より選択される、請求項85に記載の方法
  87. 【請求項87】 前記サンプルが、ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役
    する少なくとも1つの化合物を含有する、請求項85に記載の方法。
  88. 【請求項88】 前記単離されたミトコンドリアが、Bcl−2ファミリー
    のメンバーである少なくとも1つのポリペプチドを含む細胞から誘導される、請
    求項80または請求項81のいずれかに記載の方法。
  89. 【請求項89】 前記単離されたミトコンドリアが、細胞質ゾルカルシウム
    を調節するポリペプチドをコードする遺伝子を発現する細胞から誘導される、請
    求項80または請求項81のいずれかに記載の方法。
  90. 【請求項90】 前記遺伝子が、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコ
    ードする、請求項89に記載の方法。
  91. 【請求項91】 前記遺伝子が、トランスフェクトされた遺伝子である、請
    求項89に記載の方法。
  92. 【請求項92】 前記遺伝子が、ミトコンドリアカルシウムユニポータをコ
    ードする、請求項91に記載の方法。
  93. 【請求項93】 前記生物学的サンプルを前記カルシウムカチオンの供給源
    と接触させる工程に続いて、かつシグナルを比較する工程の前に、該生物学的サ
    ンプルを、(i)ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する少なくとも1つの
    化合物、および(ii)ミトコンドリア機能を変更する少なくとも1つの薬剤、
    と接触させる、請求項1、21、22、42、63、64、80または89のい
    ずれか1項に記載の方法。
  94. 【請求項94】 ミトコンドリア機能を変更する前記薬剤が、シクロスポリ
    ンAである、請求項93に記載の方法。
  95. 【請求項95】 ミトコンドリア機能を変更する前記薬剤が、シクロスポリ
    ンA、ロテノン、オリゴマイシン、スクシネート、およびBcl−2からなる群
    より選択される、請求項93に記載の方法。
  96. 【請求項96】 ATP産生から酸化的リン酸化を脱共役する前記化合物が
    、FCCPおよびCCCPからなる群より選択される、請求項93に記載の方法
JP2001552085A 2001-01-16 2001-01-16 ミトコンドリア内カルシウムを使用するスクリーニングアッセイ Ceased JP2003519505A (ja)

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
PCT/US2001/001500 WO2001051923A2 (en) 2000-01-14 2001-01-16 Screening assays using intramitochondrial calcium

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005039891A Division JP2005130867A (ja) 2005-02-16 2005-02-16 ミトコンドリア内カルシウムを使用するスクリーニングアッセイ

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003519505A true JP2003519505A (ja) 2003-06-24

Family

ID=21742256

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001552085A Ceased JP2003519505A (ja) 2001-01-16 2001-01-16 ミトコンドリア内カルシウムを使用するスクリーニングアッセイ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003519505A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014038622A1 (ja) * 2012-09-05 2014-03-13 国立大学法人大阪大学 自己免疫疾患のバイオマーカー
JP2016073209A (ja) * 2014-10-02 2016-05-12 株式会社ヘルスケアシステムズ ミトコンドリア膜透過性の評価方法、ミトコンドリア膜透過性の亢進を抑制する物質のスクリーニング方法、ミトコンドリア膜透過性を亢進する物質のスクリーニング方法、及びミトコンドリア膜透過性の亢進抑制剤

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014038622A1 (ja) * 2012-09-05 2014-03-13 国立大学法人大阪大学 自己免疫疾患のバイオマーカー
JPWO2014038622A1 (ja) * 2012-09-05 2016-08-12 国立大学法人大阪大学 自己免疫疾患のバイオマーカー
JP2016073209A (ja) * 2014-10-02 2016-05-12 株式会社ヘルスケアシステムズ ミトコンドリア膜透過性の評価方法、ミトコンドリア膜透過性の亢進を抑制する物質のスクリーニング方法、ミトコンドリア膜透過性を亢進する物質のスクリーニング方法、及びミトコンドリア膜透過性の亢進抑制剤

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1247093B1 (en) Screening assays using intramitochondrial calcium
US6323039B1 (en) Compositions and methods for assaying subcellular conditions and processes using energy transfer
US20030044776A1 (en) Compositions and methods for identifying agents that alter mitochondrial permeability transition pores
Kapus et al. Functional characterization of three isoforms of the Na+/H+ exchanger stably expressed in Chinese hamster ovary cells. ATP dependence, osmotic sensitivity, and role in cell proliferation.
Chen Mitochondrial membrane potential in living cells
Kaestner et al. Calcium channels and calcium-regulated channels in human red blood cells
US20230120665A1 (en) Composition and method for measuring thallium influx and efflux
US20120070511A1 (en) Mitochondrial inhibitors and uses thereof
Prpic et al. Biochemical and functional responses stimulated by platelet-activating factor in murine peritoneal macrophages.
Sweet et al. Changes in mitochondrial mass, membrane potential, and cellular adenosine triphosphate content during the cell cycle of human leukemic (HL‐60) cells
JP2005130867A (ja) ミトコンドリア内カルシウムを使用するスクリーニングアッセイ
Cherksey et al. Cytoskeletal constraint of the beta-adrenergic receptor in frog erythrocyte membranes.
EP1745286B1 (en) Cell permeability assay in a living array of multiple cell types and multiple layers of a porous substrate
Tanaka et al. Pathways involved in PTH-induced rise in cytosolic Ca2+ concentration of rat renal proximal tubule
TW201024733A (en) Methods for determining sodium-proton-exchanger ligand efficiency
JP2003519505A (ja) ミトコンドリア内カルシウムを使用するスクリーニングアッセイ
Hwang et al. Studies on the cellular pathway involved in assembly of the embryonic sea urchin spicule
WO2000079274A2 (en) Methods for assaying subcellular conditions using energy transfer
Berlin et al. Fluorescent berberine binding as a marker of secretory activity in mast cells
Cleveland et al. Tenidap: a novel inhibitor of calcium influx in a mast cell line
Peterson et al. Reversible inhibition of the motility of human spermatozoa by tetraphenylboron
US20020039746A1 (en) Methods for identifying peripheral benzodiazepine receptor binding agents
King et al. Characteristics of L-alanine transport in cardiac sarcolemmal vesicles and into isolated cardiac myocytes
Weinberg et al. Mitochondrial function
WO2003065036A1 (en) Method of identifying insulin secretion stimulating compounds, and the use of such compounds in treating insulin-secretion related disorders

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20040816

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20041101

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20041110

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050216

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20050216

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20070419

A045 Written measure of dismissal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A045

Effective date: 20070817