JP2005113305A - 耐炎化繊維、炭素繊維およびそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【0093】
【要約】
【課題】
【0094】
本発明の課題は、コストパフォーマンスに優れた炭素繊維およびそれを得るのに好適な耐炎化繊維を提供することにある。さらには、これらを製造するのに適した生産性の高い耐炎化繊維および炭素繊維の製造方法を提供することにある。
【解決手段】
【0095】
少なくとも一種の有機化合物の存在下、50〜400℃で熱処理し、下記式で示される増量率が10〜1000%となるよう前駆体繊維を熱処理する耐炎化繊維の製造方法である。
【0096】
増量率={Wo・DR−Wp}/Wp×100
Wo:耐炎化繊維重量(g/m)
Wp:前駆体繊維重量(g/m)
DR:耐炎化処理時のトータル延伸比
【選択図】
【0097】
なし
【要約】
【課題】
【0094】
本発明の課題は、コストパフォーマンスに優れた炭素繊維およびそれを得るのに好適な耐炎化繊維を提供することにある。さらには、これらを製造するのに適した生産性の高い耐炎化繊維および炭素繊維の製造方法を提供することにある。
【解決手段】
【0095】
少なくとも一種の有機化合物の存在下、50〜400℃で熱処理し、下記式で示される増量率が10〜1000%となるよう前駆体繊維を熱処理する耐炎化繊維の製造方法である。
【0096】
増量率={Wo・DR−Wp}/Wp×100
Wo:耐炎化繊維重量(g/m)
Wp:前駆体繊維重量(g/m)
DR:耐炎化処理時のトータル延伸比
【選択図】
【0097】
なし
Description
本発明は、耐炎化繊維、炭素繊維およびそれらの製造方法に関する。さらに詳しくは、コストパフォーマンスに優れた炭素繊維およびそれを得るのに好適な耐炎化繊維およびそれらを低コストで製造する方法に関する。
炭素繊維は、その優れた力学特性および電気特性からさまざまな用途に利用されている。近年では、従来のゴルフクラブや釣竿などのスポーツ用途、航空機用途に加え、自動車部材、CNGタンク、建造物の耐震補強、船舶部材などいわゆる一般産業用途への展開が進み、それに伴いより一層のコストパフォーマンスが求められている。
炭素繊維は、工業的にはポリアクリロニトリルなどの前駆体繊維を200〜300℃の空気中で熱処理する耐炎化、および300〜3000℃の不活性雰囲気中で熱処理する炭化を経て製造される。この際、前駆体繊維に含まれる窒素原子、水素原子、酸素原子が熱分解により脱離し、最終的に炭素含量が95%以上の炭素繊維となる。前駆体繊維として最も多く用いられているポリアクリロニトリルの炭素含量は68%前後であり、その前駆体繊維を基準にした炭素繊維の収率(以後炭化収率と表記)は、理想的な場合では70%前後であるものの、前記した工業的な製法では、炭素原子の脱離も生じるため50%前後であるのが実状である。このような炭化収率の低さも含めて、炭素繊維の製造コストに占める、原料コストの割合は大きく、炭素繊維の製造コスト低減するには原料コストをいかに削減するかが重要である。
これに対し、炭化収率を向上させるために、いくつかの技術が提案されている。
例えば、炭化処理に先だって耐炎化繊維を非酸化性もしくは酸化性雰囲気で熱処理し、その後短時間炭化する技術が開示されている(例えば特許文献1)。かかる技術によると確かに収率の向上が見られるものの、その値は60%を下回っており、高いレベルとは言えない。また、本発明者らが検討したところによると、本技術では単に、最も分解が顕著な500℃付近の熱処理をスキップし、その後急速に炭化させることにより減量を見かけ上抑制しているだけであり、得られた炭素繊維の構造形成が不十分となり、弾性率の低下が避けられないという問題がある。
さらには、ポリアクリロニトリル前駆体繊維の原料であるアクリロニトリル重合体に硫黄を混合し紡糸、焼成する技術が開示されている(例えば特許文献2)。本技術では、耐炎化での酸化分解を抑制し60%超えるレベルの炭化収率が達成できるものの、硫黄添加による紡糸原液の安定性低下、耐炎化工程でのH2S、SO2などの有害性硫黄化合物の発生などの問題があり、工業的な技術として適用するのは困難である。
また、ヨウ素ガス存在下で耐炎化する技術が開示されている(例えば特許文献3)。本技術によれば、70%というポリアクリロニトリル前駆体繊維の理想的な炭化収率が得られるが、ヨウ素ガスは有害であり、実施例として開示されているような実験室レベルの技術といわざるを得ない。
上記のような無機化合物を利用したものに対し、有機化合物やフッ素化合物を用いて耐炎化処理する技術も開示されている(例えば特許文献4)。本技術によれば、50%を超える収率が得られるものの60%を超えるレベルではなく、収率向上効果が十分とは言えない。
特開昭51−75124号公報
特開昭58−109625号公報
特開2002−160912号公報
国際公開第02/095100号パンフレット
本発明の課題は、コストパフォーマンスに優れた炭素繊維およびそれを得るのに好適な耐炎化繊維を提供することにある。さらには、これらを製造するのに適した生産性の高い耐炎化繊維および炭素繊維の製造方法を提供することにある。
本発明は上記課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、少なくとも一種の有機化合物の存在下、50〜400℃で、下記1式で示される増量率が10〜1000%となるよう前駆体繊維を熱処理する耐炎化繊維の製造方法である。
増量率={Wo・DR−Wp}/Wp×100 ・・・(1式)
Wo:耐炎化繊維重量(g/m)
Wp:前駆体繊維重量(g/m)
DR:耐炎化処理時のトータル延伸比
また、上記方法により得られた耐炎化繊維を不活性雰囲気下300〜3000℃で熱処理する炭素繊維の製造方法である。
Wo:耐炎化繊維重量(g/m)
Wp:前駆体繊維重量(g/m)
DR:耐炎化処理時のトータル延伸比
また、上記方法により得られた耐炎化繊維を不活性雰囲気下300〜3000℃で熱処理する炭素繊維の製造方法である。
また、X線回折により測定される002面に対応する面間隔d002が0.351nm以上である耐炎化繊維である。
さらに、窒素含有量NC(重量%)と結晶サイズLc(オングストローム)が下記式を満足するポリアクリロニトリル系炭素繊維である。
0<NC<−5.5×Lc+13.3 ・・・(2式)
1.75<Lc<2.40 ・・・(3式)
1.75<Lc<2.40 ・・・(3式)
本発明の耐炎化繊維および炭素繊維の製造方法によると、炭化収率を向上することができる。さらに、本発明の炭素繊維は、機械的特性だけでなく導電性にも優れ、繊維強化複合材料用の強化繊維として好適である。
本発明者らは、有機化合物共存下で熱処理することにより得られた本発明の耐炎化繊維を用いることにより、炭素繊維の製造において炭化収率を大幅に向上できることを見出し、本発明に到達した。なお、かかる方法により炭化収率が大幅に向上するメカニズムは必ずしも明確ではないが、有機化合物由来の炭素が何らかのかたちで前駆体繊維内部に取り込まれ、炭化工程において前駆体繊維と共に炭化されることによるものであると思われる。
従来技術では、前駆体繊維を耐炎化、炭化することにより減量させながら炭素繊維とするため、前駆体繊維の炭素含量を超える炭化収率を得ることは不可能であった。それに対し、本発明では、耐炎化工程において炭素源を繊維外部から有機化合物の形で導入し、繊維基質とともに炭化することにより、炭化収率を大幅に向上でき、前駆体繊維よりも安価な有機化合物を適用することにより、炭素繊維の製造コストを低減できるのである。
本発明の耐炎化繊維は、X線回折により測定される002面に対応する面間隔d002が0.351nm以上である。
X線回折により測定される002面に対応する面間隔d002は、環化構造の平均的な距離に対応しており、d002が広いほど炭化収率の向上に有利であり好ましく、より好ましくは0.353nm以上であり、さらに好ましくは0.355nm以上である。その上限は0.370nm程度である。0.351nmを下回ると、収率の向上効果が不十分となる。該面間隔は、耐炎化繊維をCuKα線をX線源としX線回折し、赤道方向にスキャンして得られるスペクトルについて、2θ=24〜26°付近に現れる002面のピークに対応する回折角度2θから下記4式により求めることができる。
面間隔d002(nm)=λ/{2×sinθ}・・・(4式)
λ:CuKα線の波長=0.15418nm
θ:Bragg角
また、前駆体繊維としてポリアクリロニトリル繊維を用いる場合、本発明の耐炎化繊維の赤外分光光度計で測定される環化度が、10〜100であることが好ましい。該環化度は、12〜98であることがより好ましく、15〜95であることがさらに好ましい。該環化度は下記5式で定義されるようにニトリル基とナフチリジン環に対応する吸収ピーク値の比であり、大きいほどニトリル基が少なく、環化が進んでいることを示す。本環化度が10を下回ると環化が不十分であり、炭化収率が低下することがある。また、100を超えると環化が進みすぎ、得られる炭素繊維のストランド強度が低下することがある。
λ:CuKα線の波長=0.15418nm
θ:Bragg角
また、前駆体繊維としてポリアクリロニトリル繊維を用いる場合、本発明の耐炎化繊維の赤外分光光度計で測定される環化度が、10〜100であることが好ましい。該環化度は、12〜98であることがより好ましく、15〜95であることがさらに好ましい。該環化度は下記5式で定義されるようにニトリル基とナフチリジン環に対応する吸収ピーク値の比であり、大きいほどニトリル基が少なく、環化が進んでいることを示す。本環化度が10を下回ると環化が不十分であり、炭化収率が低下することがある。また、100を超えると環化が進みすぎ、得られる炭素繊維のストランド強度が低下することがある。
環化度=I1600/I2240 ・・・(5式)
I1600:1600cm-1のナフチリジン環に対応する吸収ピーク値
I2240:2240cm-1のニトリル基に対応する吸収ピーク値
該環化度は、耐炎化繊維を凍結粉砕し、KBrで希釈した錠剤として、赤外分光光度計で測定することにより、求めることができる。
I1600:1600cm-1のナフチリジン環に対応する吸収ピーク値
I2240:2240cm-1のニトリル基に対応する吸収ピーク値
該環化度は、耐炎化繊維を凍結粉砕し、KBrで希釈した錠剤として、赤外分光光度計で測定することにより、求めることができる。
また、本発明の耐炎化繊維の比重は、1.3〜1.5であることが好ましく、1.32〜1.45がより好ましく1.34〜1.4がさらに好ましい。1.3を下回ると、耐熱性が不足し続く炭化工程で糸切れが生じ操業性が悪化するだけでなく、得られる炭素繊維の品質、品位が低下する。1.5を上回ると、続く前炭化工程での緻密化を阻害し、得られる炭素繊維の品質、品位が低下する。かかる比重はJISR7601の方法に準拠し測定することができる。
なお、本発明の耐炎化繊維はポリアクリロニトリル繊維由来であることが好ましい。前駆体繊維としてポリアクリロニトリルを用いたポリアクリロニトリル繊維由来の耐炎化繊維は強度、伸度が高く、高強度な炭素繊維を得るのに好適な耐炎化繊維となるからである。
本発明のポリアクリロニトリル系炭素繊維は、窒素含有量NC(重量%)と結晶サイズLc(オングストローム)が下記2、3式を満足することが好ましい。
0<NC<−5.5×Lc+13.3 ・・・(2式)
1.75<Lc<2.40 ・・・(3式)
ここで、窒素含有量はいわゆるCHN分析装置で測定することができる。また、結晶サイズLcは、耐炎化繊維をCuKα線をX線源としX線回折し、赤道方向にスキャンして得られるスペクトルについて、2θ=25〜26°付近に現れる002面のピークに対応する半価幅Be(°)から下記6式により求めることができる。
0<NC<−5.5×Lc+13.3 ・・・(2式)
1.75<Lc<2.40 ・・・(3式)
ここで、窒素含有量はいわゆるCHN分析装置で測定することができる。また、結晶サイズLcは、耐炎化繊維をCuKα線をX線源としX線回折し、赤道方向にスキャンして得られるスペクトルについて、2θ=25〜26°付近に現れる002面のピークに対応する半価幅Be(°)から下記6式により求めることができる。
結晶サイズLc(nm)=λ/(B0×COSθ) ・・・(6式)
λ:X線の波長=0.15148nm
B0=(Be 2−B1 2)1/2
(B1は装置定数。ここでは1.046×10-2rad)
θ=Bragg角
上記2式および3式は
0<NC<−5.5×Lc+12.9
1.75<Lc<2.35
が、より好ましく
0<NC<−5.5×Lc+12.6
1.75<Lc<2.30
がさらに好ましい。
λ:X線の波長=0.15148nm
B0=(Be 2−B1 2)1/2
(B1は装置定数。ここでは1.046×10-2rad)
θ=Bragg角
上記2式および3式は
0<NC<−5.5×Lc+12.9
1.75<Lc<2.35
が、より好ましく
0<NC<−5.5×Lc+12.6
1.75<Lc<2.30
がさらに好ましい。
従来技術では、ポリアクリロニトリル系炭素繊維の窒素含有量および結晶サイズは、炭化温度および炭化時間により、制御することができるものの、独立に制御することは難しく、両者の関係は炭化温度および炭化時間により、ほぼ一義的に決まる。本発明においては、前駆体繊維としてポリアクリロニトリル繊維を用い、後述するような製造方法を採用することにより、前駆体繊維外部より炭素源を導入できるため、従来ポリアクリロニトリル系炭素繊維に比べて、同一炭化条件での窒素含有量を大幅に低減することができる。これにより、ストランド強度、弾性率を維持しながら抵抗率を低減し導電性を高めることができ、電磁波シールド特性が要求される電子機器筐体などに好適である。この場合、抵抗率が0.8×10-3〜1.6×10-3(Ω・cm)が好ましく用いられる。導電性の観点からは、抵抗率が低いほど好ましいが、コストとの兼ね合いで適宜コントロールすることができる。
ここでいう抵抗率とは、炭素繊維束より単繊維1本を取りだし、試長10cmで4端子法により電気抵抗値を測定することにより下記8式により求められる。
抵抗率(Ω・cm)=R×S/50 ・・・(8式)
ここで、Rは、炭素繊維束中の異なる単繊維について、n=10で電気抵抗値の測定を行いその平均値をR(Ω)とする。また炭素繊維束の1m当たりの重量および比重を測定し下記9式より、単繊維1本当たりの断面積Sを算出する。
抵抗率(Ω・cm)=R×S/50 ・・・(8式)
ここで、Rは、炭素繊維束中の異なる単繊維について、n=10で電気抵抗値の測定を行いその平均値をR(Ω)とする。また炭素繊維束の1m当たりの重量および比重を測定し下記9式より、単繊維1本当たりの断面積Sを算出する。
断面積S(cm2)=(A/100)/B/C ・・・(9式)
A:炭素繊維束の1m当たりの重量(g/m)
B:炭素繊維束の比重(g/cm3)
C:炭素繊維束の単繊維本数(本)
ここで比重BはJIS R7601記載の方法に従って測定できる。試薬は例えばエタノールを用いる。具体的には、1.0〜1.5gの炭素繊維束を採取し、重量Dを測定したのち、比重既知(比重ρ)のエタノールに含浸し、エタノール中の炭素繊維束重量(E)を測定し、下記10式に従い比重を算出する。
A:炭素繊維束の1m当たりの重量(g/m)
B:炭素繊維束の比重(g/cm3)
C:炭素繊維束の単繊維本数(本)
ここで比重BはJIS R7601記載の方法に従って測定できる。試薬は例えばエタノールを用いる。具体的には、1.0〜1.5gの炭素繊維束を採取し、重量Dを測定したのち、比重既知(比重ρ)のエタノールに含浸し、エタノール中の炭素繊維束重量(E)を測定し、下記10式に従い比重を算出する。
炭素繊維束の比重B=(D×ρ)/(D−E) ・・・(10式)
さらに、本発明の炭素繊維は、前記炭素繊維が束状になった束状の炭素繊維でもよく、好ましくは1000〜300000本、より好ましくは3000〜100000本、更に好ましくは6000〜50000本、特に好ましくは12000〜24000本の単繊維が束になった束状の炭素繊維であることが取扱性の観点などから好ましい。またかかる束状の炭素繊維は、ストランド引張強度が3GPa以上であることが好ましい。より好ましくはストランド引張強度4GPa以上であり、さらに好ましくはストランド引張強度5GPa以上である。ストランド引張強度が3GPa未満であると繊維強化複合材料としたときの引張強度が十分得られない場合がある。かかるストランド引張強度は高ければ高いほど好ましいが、10GPa程度もあれば本発明の目的としては十分である。
さらに、本発明の炭素繊維は、前記炭素繊維が束状になった束状の炭素繊維でもよく、好ましくは1000〜300000本、より好ましくは3000〜100000本、更に好ましくは6000〜50000本、特に好ましくは12000〜24000本の単繊維が束になった束状の炭素繊維であることが取扱性の観点などから好ましい。またかかる束状の炭素繊維は、ストランド引張強度が3GPa以上であることが好ましい。より好ましくはストランド引張強度4GPa以上であり、さらに好ましくはストランド引張強度5GPa以上である。ストランド引張強度が3GPa未満であると繊維強化複合材料としたときの引張強度が十分得られない場合がある。かかるストランド引張強度は高ければ高いほど好ましいが、10GPa程度もあれば本発明の目的としては十分である。
さらにかかる束状の炭素繊維は、ストランド引張弾性率が200GPa以上であることが好ましい。より好ましくは弾性率が230GPa以上であり、さらに好ましくは弾性率が270GPa以上である。ストランド弾性率が200GPa未満であると繊維強化複合材料としたときの弾性率が十分得られない場合がある。かかるストランド引張弾性率は高ければ高いほど好ましいが、500GPa程度もあれば本発明の目的としては十分である。
かかるストランド引張強度および引張弾性率は炭素繊維束に下記組成の樹脂を含浸させ、130℃で35分間硬化させた後、JIS R7601に準じて行う引張試験により求めることができる。引張弾性率については、該試験により得られた荷重−伸び曲線の傾きから求めることができる。
(樹脂組成)
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−シクロヘキサン−カルボキシレート 100重量部
・3フッ化ホウ素モノエチルアミン 3重量部
・アセトン 4重量部
次に本発明の耐炎化繊維および炭素繊維の製造方法について説明する。
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−シクロヘキサン−カルボキシレート 100重量部
・3フッ化ホウ素モノエチルアミン 3重量部
・アセトン 4重量部
次に本発明の耐炎化繊維および炭素繊維の製造方法について説明する。
本発明の耐炎化繊維の製造方法は、少なくとも一種の有機化合物の存在下、50〜400℃で前駆体繊維を熱処理し、下記1式で示される増量率が10〜1000%となるよう有機化合物を繊維内部に導入し、耐炎化繊維を製造するものである。
増量率は、下記のように定義される。ここで耐炎化繊維重量Woは、次のようにして測定する。まず、耐炎化繊維を約1gサンプリングし、水10gに該耐炎化繊維を浸漬し、超音波を与えながら3分間洗浄する。水を入れ換えて、同様の操作を3回繰り返す。さらに洗浄液をベンゼン、アセトン、エタノールの順で換えて、それぞれ3回ずつ同様の操作を繰り返す。洗浄後の耐炎化繊維を20℃で12時間風乾した後、計量しその重量をWoとする。本方法により、繊維内部に担持された有機化合物による重量増加を測定することができる。
増量率={Wo・DR−Wp}/Wp×100 ・・・(1式)
Wo:耐炎化繊維重量(g/m)
Wp:前駆体繊維重量(g/m)
DR:耐炎化処理時のトータル延伸比
本増量率は高いほど、炭化収率が高まり好ましく、20〜500%がより好ましく、30〜200%がさらに好ましい。10%を下回ると得られる耐炎化繊維の面間隔が0.351nmを下回り、十分な炭化収率向上効果が得られず、得られた耐炎化繊維を炭化しても、前記したような窒素含有量の低い本発明の炭素繊維を得ることができない。1000%を超えると繊維形態の維持が困難となり、得られる炭素繊維のストランド強度、弾性率が低下する。
Wo:耐炎化繊維重量(g/m)
Wp:前駆体繊維重量(g/m)
DR:耐炎化処理時のトータル延伸比
本増量率は高いほど、炭化収率が高まり好ましく、20〜500%がより好ましく、30〜200%がさらに好ましい。10%を下回ると得られる耐炎化繊維の面間隔が0.351nmを下回り、十分な炭化収率向上効果が得られず、得られた耐炎化繊維を炭化しても、前記したような窒素含有量の低い本発明の炭素繊維を得ることができない。1000%を超えると繊維形態の維持が困難となり、得られる炭素繊維のストランド強度、弾性率が低下する。
本発明の耐炎化繊維の製造方法において、熱処理時に前駆体繊維と共存させる有機化合物としては、前記した増量率を達成できるものであれば、気体、液体、固体のいずれであってもよく、特に限定されない。繊維と均一に接触させやすいという観点からは、気体または液体であることが好ましく、取り扱いの観点から液体であることがより好ましい。
また、該有機化合物の炭素含有量が高いほど、炭化収率を高める観点から好ましく、具体的には20重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることがより好ましく、60重量%以上であることがさらに好ましい。ここでいう炭素含有量とは化合物中に占める炭素原子の重量比率をいい、例えばメタノールの場合38重量%となる。
該有機化合物は前駆体繊維の種類に合わせて、前駆体繊維と親和性のある官能基を有する化合物を適宜選択することが好ましい。中でも、該有機化合物がアミノ基、イミノ基、ニトリロ基、ヒドロキシル基から選ばれる少なくとも一つの官能基を含むことが、有機化合物を繊維内部へ導入する点で好ましく、前記した官能基を2つ以上含むことがより好ましく、3つ以上含むことがさらに好ましい。
該有機化合物について、より具体的に例示すれば、アミン、アルコール、フェノール、アミノアルコールなどが好ましく挙げられる。さらに具体的には、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、エタンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、アミノエチルピペラジン、1,8−ジアザビシクロウンデセン(5,4,0)−7などの脂肪族アミン、アニリン、トルイジンなどの芳香族アミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンなどのグリコール、フェノール、クレゾール、アミノフェノールなどのフェノール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノールなどのアミノアルコールなどが、より好ましく挙げられる。
該有機化合物の沸点は、熱処理温度よりも高いことが、常圧で処理可能であることから好ましい。具体的には沸点が100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。
また、該有機化合物は、繊維外部に余分に付着している分を洗浄除去する観点からは、水溶性であることが経済的な面から好ましい。
さらに 該有機化合物は溶解パラメータδが5〜20である化合物であることが好ましい。ここで溶解パラメータδとは、溶媒の凝集エネルギー密度をcとすると
溶解パラメータδ=c^1/2
で表され、凝集エネルギー密度cは溶媒の単位体積当たりの蒸発熱をΔHv、モル体積をVm、温度をT、気体定数をRとすると以下の式により定義される。
溶解パラメータδ=c^1/2
で表され、凝集エネルギー密度cは溶媒の単位体積当たりの蒸発熱をΔHv、モル体積をVm、温度をT、気体定数をRとすると以下の式により定義される。
c=(ΔHv−RT)/Vm
前駆体繊維として好適なポリアクリロニトリルの溶解パラメータδは約15であり、該有機化合物の溶解パラメータδを上述した特定範囲とし、特定の親和性とすることによりポリアクリロニトリル繊維の単繊維内部まで炭素源となる有機化合物を均一かつ迅速に供給し、前記した増量率を得るのに好適である。溶解パラメータδは8〜18がより好ましく、10〜16がさらに好ましい。
前駆体繊維として好適なポリアクリロニトリルの溶解パラメータδは約15であり、該有機化合物の溶解パラメータδを上述した特定範囲とし、特定の親和性とすることによりポリアクリロニトリル繊維の単繊維内部まで炭素源となる有機化合物を均一かつ迅速に供給し、前記した増量率を得るのに好適である。溶解パラメータδは8〜18がより好ましく、10〜16がさらに好ましい。
有機化合物存在下での熱処理を行う際に、該有機化合物の他に、少なくとも一種の酸化剤が存在することが好ましい。酸化剤が存在することにより、該有機化合物の繊維への導入を促進することができ好ましい。酸化剤は無機、有機いずれの酸化剤でもよい。無機の酸化剤としては、硝酸、塩酸、リン酸、硫酸などの無機酸や過マンガン酸カリウム、重クロム酸カリウム、過酸化水素などのが挙げられる。これらの酸化剤は、酸化力が大きく繊維そのものの分解を誘起する場合があり、有機の酸化剤がより好ましい。有機の酸化剤としては、ニトロ基、N−オキシル構造、N−オキサイド構造、N−ヒドロキシ構造から選ばれる少なくとも一つの構造を持つことが好ましい。
ニトロ基を持つものの具体例としては、ニトロベンゼン、ニトロトルエン、ニトロキシレン、ニトロナフタレンなどが好ましく挙げられる。N−オキシル構造をもつものの具体例としては、フタルイミド−N−オキシル、2、2、6、6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、ビス(2、2、6、6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)セバケートなどが好ましく挙げられる。N−オキサイド構造を持つものの具体例としては、4−ピコリン−N−オキサイド、イソキノリン−N−オキサイド、ジピリジル−N,N’−ジオキサイドなどが好ましく挙げられる。N−ヒドロキシ構造をもつものの具体例としては、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシマレイミドなどが好ましく挙げられる。
本発明において、前記した有機化合物と共存させ熱処理し、該有機化合物を繊維内部に担持させるが、前記した増量率を達成するには、熱処理の温度、時間を適宜調整する必要がある。基本的には、温度を高くするほど、時間を長くするほど、増量率を高くすることができる。しかし、用いる化合物によっては、温度を上げすぎたり、時間を長くしすぎたりすると、繊維の分解が生じ、却って増量率が低下することがあるため、化合物と繊維との反応性・親和性を勘案し、熱処理の温度、時間を設定するのがよい。熱処理時の温度および時間の最適値は、化合物により異なるため、一該に限定できないが、熱処理温度は50〜400℃に設定する必要がある。50℃を下回ると、前記した増量率を現実的な時間で達成することが不可能となり、400℃を上回ると繊維の分解減量が顕著となり、本発明の目的とする高い炭化収率が得られない。熱処理温度は、より好ましくは70〜300℃であり、さらに好ましくは90〜200℃である。熱処理の時間は、前記した増減率を達成するのに必要な時間を設定すればよいが、経済的には短時間であることが好ましく、1秒〜300分であることがより好ましく、5秒〜120分であることがさらに好ましい。
本発明において、前記した有機化合物との共存下における熱処理は、前駆体繊維を耐炎化する工程と別々に行ってもよく、同時に行ってもよい。たとえば、有機化合物存在下での熱処理を行い、その後従来と同様に、空気中で熱処理し耐炎化を行ってもよく、前記有機化合物存在下の熱処理と耐炎化を同時に行ってもよく、空気中で熱処理し耐炎化した後、前記有機化合物存在下の熱処理を行ってもよい。要するに、炭化工程の前までに有機化合物存在下の熱処理を施せばよい。
プロセスを簡便にする観点からは、担持させる熱処理と耐炎化を同時に行うのが好ましい。耐炎化を行うには、何らかの酸化剤が必要であり、前記したような酸化剤を共存させることが好ましい。
本発明において、前駆体繊維としてはポリアクリロニトリル繊維、ピッチ系繊維、フェノール繊維、レーヨン繊維、セルロース繊維、その他天然由来のリグニンを原料とした繊維等を用いることができるが、得られる耐炎化繊維の強度、伸度が高く、高強度な炭素繊維を得るのに好適である点で、ポリアクリロニトリルを前駆体繊維として用いることが好ましい。
ここで、ポリアクリロニトリル繊維は、アクリロニトリル100%でも良いが、耐炎化効率化の観点および製糸性の観点から共重合体とするのが好ましい。共重合成分としては、いわゆる耐炎化促進成分として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等が好ましく挙げられ、より好ましくは、これらの一部又は全量を、アンモニアで中和したアクリル酸、メタクリル酸、又はイタコン酸のアンモニウム塩からなる共重合体が挙げられる。製糸性向上の観点から、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、アリルスルホン酸金属塩、メタリルスルホン酸金属塩などが好ましく共重合できる。
上述した共重合体の量は、合計で0〜10モル%が好ましく、0.1〜6モル%がより好ましく、0.2〜2モル%がさらに好ましい。共重合体の量が少ないと、製糸性が低下し、共重合体の量が多いと耐熱性が低下し続く耐炎化工程で融着が発生しやすくなるため、両者のバランスを考慮して設定するのがよい。
かかる共重合体を重合する方法としては、特に限定されないが、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が適用できる。
アクリル系共重合体を紡糸する際に、有機、無機の溶媒が使用できるが、有機溶媒を使用するのが好ましく、具体的には、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
上述したような、アクリル系共重合体と溶媒からなる紡糸原液を、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法、又は溶融紡糸法、好ましくは湿式紡糸法又は乾湿式紡糸法により口金から紡出し、凝固浴に導入して繊維を凝固せしめる。
湿式紡糸法や乾湿式紡糸法では、凝固速度、延伸方法等を適宜制御することにより、前駆体繊維表面の表面粗さを制御することができる。例えば、凝固速度を速くすると、繊維表面に形成されるスキン層が厚くかつ繊維を構成するフィブリル単位が小さい凝固繊維が得られるようになり、かかる凝固繊維を後述するような方法で延伸することで表面が平滑となり表面積比が1.0〜1.2の炭素繊維を得るのに適した前駆体繊維となり好ましい。但し、凝固速度を速くしすぎると、凝固糸の内部構造が粗くなり、高いストランド強度を有する炭素繊維が得られないことがあるため、両者を勘案して凝固速度を設定することが好ましい。
本発明において、前記凝固浴には、いわゆる凝固促進成分を含ませることができ、凝固浴の温度および凝固促進成分の濃度によって、凝固速度を制御することができる。具体的には、凝固浴の温度が高く、凝固促進成分の量が多い程、凝固速度を速くすることができる。凝固促進成分としては、前記アクリル系共重合体を溶解せず、かつ紡糸原液に用いる溶媒と相溶性があるものが使用できる。具体的には、水を使用するのが好ましい。
凝固浴中に導入して糸条を凝固せしめた後、水洗、延伸、油剤付与及び乾燥等を経て、アクリル系繊維が得られる。また、油剤付与後、さらにスチームで延伸することもできる。ここで、凝固後の糸条は、水洗せずに直接延伸浴中で延伸しても良いし、溶媒を水洗除去後に浴中で延伸しても良い。かかる浴中延伸は、通常、30〜98℃に温調された単一又は複数の延伸浴中で行われ、これら水洗浴や延伸浴においては、前述した紡糸原液に用いる溶媒の水溶液中の含有率は、凝固浴における溶媒の含有率を上限とするのが良い。
浴延伸の後、糸条にシリコーン等からなる油剤を付与するのが好ましい。かかるシリコーン油剤は、変性シリコーンで、かつ、耐熱性の高いアミノ変性シリコーンを含有するものが好ましい。
浴中延伸、油剤付与された糸条は、加熱により乾燥するのが良い。乾燥処理は50〜200℃に加熱されたロールに接触させて行うのが効率的である。糸条の含有水分率が1重量%以下となるまで乾燥し、繊維構造を緻密化させることが好ましい。
本発明で用いる前駆体繊維は束状の前駆体繊維であることが好ましく、1糸条あたりのフィラメント数は、好ましくは1,000〜300,000、より好ましくは3,000〜100,000、さらに好ましくは6,000〜50,000、特に好ましくは12000〜24000であるのがよい。
また、本発明で用いる前駆体繊維の単繊維繊度は、好ましくは0.6〜30dtex、より好ましくは1〜25dtex、さらに好ましくは2〜20dtexであるのが良い。該単繊維繊度が大きいほど、得られる炭素繊維の繊維径が大きくなり、複合材料の強化繊維として用いた場合の圧縮応力下での座屈変形を抑制でき、圧縮強度向上の観点で好ましい。
本発明の耐炎化繊維の製造方法は、前記耐炎化処理工程において、得られる耐炎化繊維の比重が好ましくは1.3〜1.5、より好ましくは1.32〜1.45、さらに好ましくは1.34〜1.4となるまで熱処理するのが好ましい。耐炎化繊維の比重が1.3未満であると続く炭化工程で糸切れが発生しプロセスできないという場合があり、1.5を超えると得られる炭素繊維のストランド強度が低下する場合がある。
ポリアクリロニトリル繊維を連続して供給しながら前記した有機化合物下での熱処理や耐炎化処理を行う場合には、延伸しながら耐炎化処理することもできる。その場合のトータルの延伸比は、0.9〜1.7が好ましく、1.0〜1.6がより好ましく、1.1〜1.5がさらに好ましい。該延伸比が0.9を下回ったり、1.7を上回ると、得られる耐炎化繊維の引張強度や引張伸度が低下する場合がある。
有機化合物存在下での熱処理を施した後に、付着している余分な有機化合物を除去することもできる。除去する方法としては、加熱、減圧による乾燥処理や低沸点溶媒での洗浄などを用いることができる。余分な有機化合物を除去し、さらに回収・再利用することが、経済的な観点から好ましい。
上述する方法で得られた耐炎化繊維を、300〜3000℃の不活性雰囲気下で熱処理し炭化することにより炭素繊維を製造できる。該炭化処理は、300℃以上、1000℃未満の予備炭化工程、1000℃以上、2000℃未満の炭化工程、2000℃以上、3000℃以下の黒鉛化工程に分けて行うのが設備的な面から好ましい。該炭化処理の最高処理温度は、所望する炭素繊維の物性に応じて選択することができ、黒鉛化工程は省略することができる。
該炭化処理は、耐炎化繊維を緊張または延伸条件下で行うのが好ましい。より好ましくは延伸比が0.8〜1.3、さらに好ましくは0.9〜1.2がよい。かかる延伸比が0.8に満たないと、得られる炭素繊維ストランド強度が不十分なものになる場合があり、1.3を超えると毛羽や糸切れが増加し、得られる炭素繊維の品位が低くなる場合がある。
上述する方法で得られた炭素繊維に対して、その表面改質のため、電解処理をすることができる。電解処理に用いる電解液には、硫酸、硝酸、塩酸等の酸性溶液や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドといったアルカリ又はそれらの塩を水溶液として使用することができる。ここで、電解処理に要する電気量は、適用する炭素繊維により適宜選択することができる。
かかる電解処理により、得られる複合材料において炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性が適正化でき、得られる複合材料においてバランスのとれた強度特性が発現されるようになる。
この後、得られる炭素繊維に集束性を付与するため、サイジング処理をすることもできる。サイジング剤には、樹脂との相溶性の良いサイジング剤を、使用する樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。
このようにして得られた炭素繊維は、プリプレグ化したのち複合材料に成形することもできるし、織物などのプリフォームとした後、ハンドレイアップ法、プルトルージョン法、レジントランスファーモールディング法などにより複合材料に成形することもできる。また、フィラメントワインディング法や、チョップドファイバーやミルドファイバー化した後射出成形することにより複合材料に成形することができる。
以下、実施例を用いて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。各実施例の製造条件は表1に、得られた耐炎化繊維および炭素繊維の特性は表2、表3にまとめて示す。
本実施例中の各測定値は以下の方法により測定した。
<耐炎化繊維の面間隔d002>
40mm長に切断した繊維束を20mg精秤し、試料繊維軸が正確に平行になるようにそろえた後、薄いコロジオン液を含浸させ幅1mmの厚さが均一な角柱試料を作製した。得られた試料について、理学電機社製X線回折装置を用いて測定した。測定条件は、X線源としてNiフィルターにより単色化したCuKα線を用い、出力40KV−20mA、計数管としてシンチレーションカウンターを用い測定を行った。2θ=24〜26°近傍の面指数(002)に対応した回折ピークのBragg角θから、下記4式により面間隔d002を求めた。
<耐炎化繊維の面間隔d002>
40mm長に切断した繊維束を20mg精秤し、試料繊維軸が正確に平行になるようにそろえた後、薄いコロジオン液を含浸させ幅1mmの厚さが均一な角柱試料を作製した。得られた試料について、理学電機社製X線回折装置を用いて測定した。測定条件は、X線源としてNiフィルターにより単色化したCuKα線を用い、出力40KV−20mA、計数管としてシンチレーションカウンターを用い測定を行った。2θ=24〜26°近傍の面指数(002)に対応した回折ピークのBragg角θから、下記4式により面間隔d002を求めた。
面間隔d002(nm)=λ/{2×sinθ} ・・・(4式)
λ:X線の波長=0.15418nm
θ:Bragg角
<耐炎化繊維の環化度>
耐炎化繊維を凍結粉砕し粉末の試料とした後、2mgを精秤し、300mgの臭化カリウム粉末(merck社製、FT−IR用)と十分混合した後、加圧成形し直径約13mmの錠剤試料を作製した。得られた試料を、パーキンエルマー社製Paragon1000赤外分光光度計を用い測定し、1000cm-1から3000cm-1の吸収スペクトルを得た。得られたスペクトルから1600cm-1のナフチリジン環に対応する吸収ピーク値および2240cm-1のニトリル基に対応する吸収ピーク値を読みとり、下記5式に従い算出した。
λ:X線の波長=0.15418nm
θ:Bragg角
<耐炎化繊維の環化度>
耐炎化繊維を凍結粉砕し粉末の試料とした後、2mgを精秤し、300mgの臭化カリウム粉末(merck社製、FT−IR用)と十分混合した後、加圧成形し直径約13mmの錠剤試料を作製した。得られた試料を、パーキンエルマー社製Paragon1000赤外分光光度計を用い測定し、1000cm-1から3000cm-1の吸収スペクトルを得た。得られたスペクトルから1600cm-1のナフチリジン環に対応する吸収ピーク値および2240cm-1のニトリル基に対応する吸収ピーク値を読みとり、下記5式に従い算出した。
環化度=I1600/I2240 ・・・(5式)
I1600:1600cm-1のナフチリジン環に対応する吸収ピーク値
I2240:2240cm-1のニトリル基に対応する吸収ピーク値
<耐炎化繊維の比重>
耐炎化繊維の比重測定はJIS R7601記載の方法に従った。試薬はエタノール(和光純薬社製特級)を精製せずに用いた。1.0〜1.5gの耐炎化繊維束を採取し、120℃で2時間絶乾した。絶乾重量(A)を測定したのち、比重既知(比重ρ)のエタノールに含浸し、エタノール中の耐炎化繊維束重量(B)を測定した。下記7式に従い比重を算出した。
I1600:1600cm-1のナフチリジン環に対応する吸収ピーク値
I2240:2240cm-1のニトリル基に対応する吸収ピーク値
<耐炎化繊維の比重>
耐炎化繊維の比重測定はJIS R7601記載の方法に従った。試薬はエタノール(和光純薬社製特級)を精製せずに用いた。1.0〜1.5gの耐炎化繊維束を採取し、120℃で2時間絶乾した。絶乾重量(A)を測定したのち、比重既知(比重ρ)のエタノールに含浸し、エタノール中の耐炎化繊維束重量(B)を測定した。下記7式に従い比重を算出した。
耐炎糸比重=(A×ρ)/(A−B) ・・・(7式)
<炭素繊維の窒素含有量>
柳本製作所CHNCorder ModelMT−3を用いて測定した。試料は重量約1〜2mgを精秤して用いた。燃焼条件は、試料分解用炉温度930℃、酸化用炉温度850℃、還元用炉温度550℃、ヘリウム流量180ml/分、酸素流量20ml/分とした。
<炭素繊維の結晶サイズ>
40mm長に切断した繊維束を20mg精秤し、試料繊維軸が正確に平行になるようにそろえた後、薄いコロジオン液を含浸させ幅1mmの厚さが均一な角柱試料を作製した。得られた試料について、理学電機社製X線回折装置を用いて測定した。測定条件は、X線源としてNiフィルターにより単色化したCuKα線を用い、出力40KV−20mA、計数管としてシンチレーションカウンターを用い測定を行った。2θ=25〜26°近傍の面指数(002)に対応した回折ピークの半価幅Beから、下記6式により結晶サイズLcを求めた。
<炭素繊維の窒素含有量>
柳本製作所CHNCorder ModelMT−3を用いて測定した。試料は重量約1〜2mgを精秤して用いた。燃焼条件は、試料分解用炉温度930℃、酸化用炉温度850℃、還元用炉温度550℃、ヘリウム流量180ml/分、酸素流量20ml/分とした。
<炭素繊維の結晶サイズ>
40mm長に切断した繊維束を20mg精秤し、試料繊維軸が正確に平行になるようにそろえた後、薄いコロジオン液を含浸させ幅1mmの厚さが均一な角柱試料を作製した。得られた試料について、理学電機社製X線回折装置を用いて測定した。測定条件は、X線源としてNiフィルターにより単色化したCuKα線を用い、出力40KV−20mA、計数管としてシンチレーションカウンターを用い測定を行った。2θ=25〜26°近傍の面指数(002)に対応した回折ピークの半価幅Beから、下記6式により結晶サイズLcを求めた。
結晶サイズLc(nm)=λ/(B0×COSθ) ・・・(6式)
λ:X線の波長=0.15148nm
B0=(Be2−B12)1/2
(B1は装置定数。ここでは1.046×10-2rad)
θ=Bragg角
<炭素繊維の抵抗率測定>
炭素繊維の抵抗率は以下の8式により求めた。
抵抗率(Ω・cm)=R×S/50 ・・・(8式)
ここでRおよびSは次の通り測定により求めた。まず、炭素繊維束より単繊維1本を取りだし、試長10cmで4端子法により電気抵抗値を測定した。同様に異なる単繊維について、n=10で電気抵抗値の測定を行いその平均値をR(Ω)とした。次に炭素繊維束の1m当たりの重量および比重を測定し下記9式より、単糸1本当たりの断面積Sを算出した。
λ:X線の波長=0.15148nm
B0=(Be2−B12)1/2
(B1は装置定数。ここでは1.046×10-2rad)
θ=Bragg角
<炭素繊維の抵抗率測定>
炭素繊維の抵抗率は以下の8式により求めた。
抵抗率(Ω・cm)=R×S/50 ・・・(8式)
ここでRおよびSは次の通り測定により求めた。まず、炭素繊維束より単繊維1本を取りだし、試長10cmで4端子法により電気抵抗値を測定した。同様に異なる単繊維について、n=10で電気抵抗値の測定を行いその平均値をR(Ω)とした。次に炭素繊維束の1m当たりの重量および比重を測定し下記9式より、単糸1本当たりの断面積Sを算出した。
断面積S(cm2)=(A/100)/B/C ・・・(9式)
A:炭素繊維束の1m当たりの重量(g/m)
B:炭素繊維束の比重(g/cm3)
C:炭素繊維束の単繊維本数(本)
なお、比重はJIS R7601記載の方法に従った。試薬はエタノール(和光純薬社製特級)を精製せずに用いた。1.0〜1.5gの炭素繊維束を採取し、重量(D)を測定したのち、比重既知(比重ρ)のエタノールに含浸し、エタノール中の耐炎化繊維束重量(E)を測定した。下記10式に従い比重を算出した。
A:炭素繊維束の1m当たりの重量(g/m)
B:炭素繊維束の比重(g/cm3)
C:炭素繊維束の単繊維本数(本)
なお、比重はJIS R7601記載の方法に従った。試薬はエタノール(和光純薬社製特級)を精製せずに用いた。1.0〜1.5gの炭素繊維束を採取し、重量(D)を測定したのち、比重既知(比重ρ)のエタノールに含浸し、エタノール中の耐炎化繊維束重量(E)を測定した。下記10式に従い比重を算出した。
耐炎化繊維束比重=(D×ρ)/(D−E) ・・・(10式)
<炭素繊維の強度、弾性率測定>
JIS R7601に従って測定した。なお、試験片は、次の樹脂組成物を炭素繊維に含浸し、130℃で35分熱処理の硬化条件により作製した。
<炭素繊維の強度、弾性率測定>
JIS R7601に従って測定した。なお、試験片は、次の樹脂組成物を炭素繊維に含浸し、130℃で35分熱処理の硬化条件により作製した。
樹脂組成:3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシ−シクロヘキサン−カルボキシレート(100重量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3重量部)/アセトン(4重量部)
3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシ−シクロヘキサン−カルボキシレートとしては、ユニオンカーバイド社製ERL−4221を用いた。
[実施例1]
アクリロニトリル99.5モル%とイタコン酸0.5モル%からなる共重合体をジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法により重合し、さらにアンモニアガスをpHが8.5になるまで吹き込み、イタコン酸を中和しつつ、アンモニウム基をアクリル系共重合体に導入し、共重合成分の含有率が22重量%の紡糸原液を得た。
3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシ−シクロヘキサン−カルボキシレートとしては、ユニオンカーバイド社製ERL−4221を用いた。
[実施例1]
アクリロニトリル99.5モル%とイタコン酸0.5モル%からなる共重合体をジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法により重合し、さらにアンモニアガスをpHが8.5になるまで吹き込み、イタコン酸を中和しつつ、アンモニウム基をアクリル系共重合体に導入し、共重合成分の含有率が22重量%の紡糸原液を得た。
この紡糸原液を、40℃で、直径0.15mm、孔数3、000の紡糸口金を用い、一旦空気中に吐出し、約4mmの空間を通過させた後、3℃にコントロールした35%ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸法により凝固糸条とした。
この凝固糸条を、水洗した後、温水中で3.5倍に延伸し、さらにアミノ変性シリコーン系シリコーン油剤を付与して延伸糸を得た。
この延伸糸を、160℃の加熱ローラーを用いて、乾燥緻密化処理を行い、0.3MPa−Gの加圧スチーム中で延伸することにより、製糸全延伸倍率が13倍とし、単繊維繊度1.1dtex、単繊維本数3000本のポリアクリロニトリル繊維を得た。
得られたポリアクリロニトリル繊維を合糸し、単繊維本数12000本とし、以下の有機化合物および酸化剤からなる液相中で、200℃、2時間熱処理し、耐炎化繊維を得た。ポリアクリロニトリル繊維は連続的に供給し、耐炎化処理時のトータルの延伸比は1.2とした。
有機化合物:o-トルイジン 50重量部
酸化剤 :o-ニトロトルエン 50重量部
この耐炎化繊維を、水洗し、280℃で5分間乾燥した後、不活性雰囲気中、昇温速度500℃/分で、300℃から1000℃まで昇温、予備炭化処理し、次に不活性雰囲気中最高温度1400℃で炭化処理し、炭素繊維を得た。
酸化剤 :o-ニトロトルエン 50重量部
この耐炎化繊維を、水洗し、280℃で5分間乾燥した後、不活性雰囲気中、昇温速度500℃/分で、300℃から1000℃まで昇温、予備炭化処理し、次に不活性雰囲気中最高温度1400℃で炭化処理し、炭素繊維を得た。
得られた耐炎化繊維および炭素繊維の物性を前述の方法により測定した。測定結果を表2および3にまとめて示す。
[実施例2]
液相中での熱処理時間を4時間にした以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[実施例3]
用いる液相中の有機化合物をジエチレングリコールに変え、液相中での熱処理時間を1時間にした以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[実施例4]
用いる液相中の有機化合物をジエタノールアミンに変え、液相中での熱処理時間を1時間にした以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[実施例5]
用いる液相中の有機化合物を1,8−ジアザビシクロウンデセン(5,4,0)−7に変え、液相中での熱処理時間を1時間にした以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[比較例1]
実施例1に記載した方法により得られたポリアクリロニトリル繊維を合糸し、単繊維本数12000本とし、空気中で、240℃、2時間耐炎化処理し、耐炎化繊維を得た。ポリアクリロニトリル繊維は連続的に供給し、耐炎化処理時のトータルの延伸比は1.0とした。
[実施例2]
液相中での熱処理時間を4時間にした以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[実施例3]
用いる液相中の有機化合物をジエチレングリコールに変え、液相中での熱処理時間を1時間にした以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[実施例4]
用いる液相中の有機化合物をジエタノールアミンに変え、液相中での熱処理時間を1時間にした以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[実施例5]
用いる液相中の有機化合物を1,8−ジアザビシクロウンデセン(5,4,0)−7に変え、液相中での熱処理時間を1時間にした以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[比較例1]
実施例1に記載した方法により得られたポリアクリロニトリル繊維を合糸し、単繊維本数12000本とし、空気中で、240℃、2時間耐炎化処理し、耐炎化繊維を得た。ポリアクリロニトリル繊維は連続的に供給し、耐炎化処理時のトータルの延伸比は1.0とした。
この耐炎化繊維を実施例1に記載した方法により炭化処理し、炭素繊維を得た。
得られた耐炎化繊維および炭素繊維の物性を前述の方法により測定した。測定結果を表2および3にまとめて示す。
[比較例2]
用いる液相中の有機化合物をジエチレングリコールのみに変え、液相中での熱処理時間を1時間にした以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[比較例3]
用いる液相中の有機化合物をジエチレングリコールのみに変え、液相中での熱処理温度を240℃、熱処理時間を0.5時間にした以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[比較例4]
液相中での熱処理温度を240℃、熱処理時間を0.5時間にした以外は実施例3と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[実施例6]実施例1に記載した方法により得られたポリアクリロニトリル繊維を合糸し、単繊維本数12000本とし、空気中で、240℃、2時間耐炎化処理した後、有機化合物としてジエタノールアミンのみからなる液相中で210℃、0.5時間熱処理し、耐炎化繊維を得た。ポリアクリロニトリル繊維は連続的に供給し、耐炎化処理時のトータルの延伸比は1.2とした。
得られた耐炎化繊維および炭素繊維の物性を前述の方法により測定した。測定結果を表2および3にまとめて示す。
[比較例2]
用いる液相中の有機化合物をジエチレングリコールのみに変え、液相中での熱処理時間を1時間にした以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[比較例3]
用いる液相中の有機化合物をジエチレングリコールのみに変え、液相中での熱処理温度を240℃、熱処理時間を0.5時間にした以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[比較例4]
液相中での熱処理温度を240℃、熱処理時間を0.5時間にした以外は実施例3と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[実施例6]実施例1に記載した方法により得られたポリアクリロニトリル繊維を合糸し、単繊維本数12000本とし、空気中で、240℃、2時間耐炎化処理した後、有機化合物としてジエタノールアミンのみからなる液相中で210℃、0.5時間熱処理し、耐炎化繊維を得た。ポリアクリロニトリル繊維は連続的に供給し、耐炎化処理時のトータルの延伸比は1.2とした。
この耐炎化繊維を実施例1に記載した方法により炭化処理し、炭素繊維を得た。
得られた耐炎化繊維および炭素繊維の物性を前述の方法により測定した。測定結果を表2にまとめて示す。
[実施例7]
用いる有機化合物をN−アミノエチルエタノールアミンのみの液相に変え、液相中での熱処理温度を140℃、熱処理時間を0.5時間にした以外は実施例6と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[実施例8]
用いる有機化合物をジエタノールトリアミンのみの液相に変え、液相中での熱処理温度を140℃、熱処理時間を0.5時間にした以外は実施例6と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[実施例9]
用いる有機化合物をトリエタノールテトラミンのみの液相に変え、液相中での熱処理温度を140℃、熱処理時間を0.5時間にした以外は実施例6と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[実施例10]
用いる有機化合物をN−アミノエチルテトラミンのみの液相に変え、液相中での熱処理温度を140℃、熱処理時間を0.5時間にした以外は実施例6と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[実施例11]炭化処理の最高温度を1700℃に変えた以外は実施例1と同様に、炭素繊維を得た。各物性の測定結果を表3にまとめて示す。
[比較例5]炭化処理の最高温度を1700℃に変えた以外は比較例1と同様に、炭素繊維を得た。各物性の測定結果を表3にまとめて示す。
得られた耐炎化繊維および炭素繊維の物性を前述の方法により測定した。測定結果を表2にまとめて示す。
[実施例7]
用いる有機化合物をN−アミノエチルエタノールアミンのみの液相に変え、液相中での熱処理温度を140℃、熱処理時間を0.5時間にした以外は実施例6と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[実施例8]
用いる有機化合物をジエタノールトリアミンのみの液相に変え、液相中での熱処理温度を140℃、熱処理時間を0.5時間にした以外は実施例6と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[実施例9]
用いる有機化合物をトリエタノールテトラミンのみの液相に変え、液相中での熱処理温度を140℃、熱処理時間を0.5時間にした以外は実施例6と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[実施例10]
用いる有機化合物をN−アミノエチルテトラミンのみの液相に変え、液相中での熱処理温度を140℃、熱処理時間を0.5時間にした以外は実施例6と同様にして、耐炎化繊維および炭素繊維を得て、各物性を評価した。測定結果を表2にまとめて示す。
[実施例11]炭化処理の最高温度を1700℃に変えた以外は実施例1と同様に、炭素繊維を得た。各物性の測定結果を表3にまとめて示す。
[比較例5]炭化処理の最高温度を1700℃に変えた以外は比較例1と同様に、炭素繊維を得た。各物性の測定結果を表3にまとめて示す。
表2および表3に示すとおり、本発明の耐炎化繊維および炭素繊維の製造方法によると、炭化収率の向上が可能となり、また本発明の炭素繊維は、同程度の弾性率を有する従来の炭素繊維と比べて、窒素含有量が低く電気伝導性に優れることがわかる。
Claims (8)
- 少なくとも一種の有機化合物の存在下、50〜400℃で、下記1式で示される増量率が10〜1000%となるよう前駆体繊維を熱処理する耐炎化繊維の製造方法。
増量率={Wo・DR−Wp}/Wp×100 ・・・(1式)
Wo:耐炎化繊維重量(g/m)
Wp:前駆体繊維重量(g/m)
DR:耐炎化処理時のトータル延伸比 - 前記有機化合物の炭素含有量が20%以上である請求項1記載の耐炎化繊維の製造方法。
- 前記有機化合物がアミノ基、イミノ基、ニトリロ基、ヒドロキシル基から選ばれる少なくとも一つの官能基を含む請求項1または2に記載の耐炎化繊維の製造方法。
- 少なくとも一種の酸化剤の存在下で熱処理する、請求項1〜3に記載の耐炎化繊維の製造方法。
- 前記酸化剤が、ニトロ基、N-ヒドロキシ構造、N−オキサイド構造、N−オキシル構造の少なくとも一つを有する化合物である、請求項4に記載の耐炎化繊維の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られる耐炎化繊維を、不活性雰囲気下300〜3000℃で熱処理する炭素繊維の製造方法。
- X線回折により測定される002面に対応する面間隔d002が0.351nm以上である耐炎化繊維。
- 窒素含有量NC(重量%)と結晶サイズLc(nm)が下記2、3式を満足するポリアクリロニトリル系炭素繊維。
0<NC<−5.5×Lc+13.3 ・・・(2式)
1.75<Lc<2.40 ・・・(3式)
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2010242249A (ja) * | 2009-04-03 | 2010-10-28 | Toho Tenax Co Ltd | 高強度炭素繊維用耐炎化繊維及びその製造方法 |
JP4853283B2 (ja) * | 2004-02-20 | 2012-01-11 | 東レ株式会社 | 耐炎ポリマー含有溶液および炭素成形品 |
JP5324472B2 (ja) * | 2007-12-30 | 2013-10-23 | 東邦テナックス株式会社 | 耐炎化繊維と炭素繊維の製造方法 |
JP2013256749A (ja) * | 2009-03-31 | 2013-12-26 | Donghua Univ | 炭素繊維及びその原糸、プレ酸化繊維の製造方法 |
JP2017027920A (ja) * | 2015-07-28 | 2017-02-02 | 東洋紡株式会社 | レドックス電池用電極材 |
-
2003
- 2003-10-07 JP JP2003348148A patent/JP2005113305A/ja active Pending
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