JP2005104975A - 抗体の用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】
アルツハイマー病の予防・治療剤の提供。
【解決手段】
β−アミロイドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応するモノクローナル抗体を含有してなるアルツハイマー病などの予防・治療剤。
【選択図】なし


Description

本発明は、アルツハイマー病などの予防・治療剤あるいは診断剤などに関する。更に詳しくは、β−アミロイド(Aβ)またはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応するモノクローナル抗体を含有してなるアルツハイマー病などの予防・治療剤あるいは診断剤などに関する。
アルツハイマー病による老人性痴呆は大きな社会的問題となっており、アルツハイマー病の予防・治療方法の早期確立が望まれている。アルツハイマー病患者の脳に特徴的な病変として、老人斑アミロイドの過剰な形成および神経原線維変化が知られており、これらのうち老人斑の主要な構成成分の一つがβ−アミロイドまたはその誘導体である。
β−アミロイドは、約40〜43個のアミノ酸からなるペプチドであり、アミロイド前駆体蛋白質(Amyloid Precursor Protein:以下、APPと称する)の細胞膜貫通領域の近傍にコードされている。各β−アミロイドのアミノ酸配列は以下のとおりである。
β−アミロイド(1−38)=配列番号:1
β−アミロイド(1−39)=配列番号:2
β−アミロイド(1−40)=配列番号:3
β−アミロイド(1−41)=配列番号:4
β−アミロイド(1−42)=配列番号:5
β−アミロイド(1−43)=配列番号:6
さらに最近では、β−アミロイドのなかでも、大脳実質中(老人斑)にはβ−アミロイド(1−42)が主に早期から沈着し、一方脳血管にはβ−アミロイド(1−40)が主に沈着する(アミロイドアンギオパチー)ことが報告され〔非特許文献1(アーチブス オブ バイオケミストリー アンド バイオフィジックス(Arch. Biochem. Biophys.), 301, 41-53, 1993)〕、β−アミロイド(1−42)、β−アミロイド(26−42)、β−アミロイド(26−43)、β−アミロイド(34−42)などのC端部分を含むペプチドが種となって、水溶性のβ−アミロイド(1−40)などの沈着を招くことなどが示唆されている〔非特許文献2(バイオケミストリー(Biochemistry), 32, 4693-4697, 1993)〕。したがって、β−アミロイド(x−42)の沈着がアルツハイマー病においては最も重要な病因と考えられており、このような報告から、β−アミロイド(x−40)とβ−アミロイド(x−42)との沈着様式の相違がアルツハイマー病に大きく関与していると考えられる。
このため、β−アミロイド(x−40)とβ−アミロイド(x−42)とを感度よく分別定量することが重要であると考えられ、β−アミロイドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体ならびに該抗体を用いるC端部疎水的領域を有するβ−アミロイドの測定方法が特許文献1(WO 94/17197号公報)に報告されているが、該抗体による直接的なアルツハイマー病の予防・治療効果は知られていない。
一方、β−アミロイドワクチンによる直接的なアルツハイマー病の治療に関しては、例えば、非特許文献3(ネイチャー(Nature), 400, 173-177, 1999)、非特許文献4(ネイチャー メディシン(Nature Medicine), 9 (4), 448-452, 2003)などに報告があるが、ヒトAPPトランスジェニックマウスなどを用いた前臨床試験で、老人斑の減少、学習能力の向上などの成功をもたらし、画期的な治療法として期待されたにもかかわらず、最近の第II相臨床試験において、予期せぬ重篤な副作用を招いた。死亡例をももたらした重篤な副作用の主たる原因は、通常のアルツハイマー病には見られないCD4+リンパ球の脳内浸潤による脳炎の発症と考えられている。
免疫療法の結果、脳内に沈着した老人斑が劇的に減少し、認知能力の改善も見られることはヒトでも確認されているため〔非特許文献10(ニューロン(Neuron), 38, 547-555, 2003)〕、この長所を生かしつつ副作用を回避するための選択肢のひとつとして、抗β−アミロイド抗体を末梢投与する受動免疫が考えられ、モノクローナル抗体を用いた動物レベルでの検討が行われている〔非特許文献5(サイエンス(Science), 295, 2264-2267, 2002), 非特許文献6(ネイチャー ニューロサイエンス(Nature Neuroscience), 5, 452-457,2002)〕。しかし、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)モデル・マウスを用いた検討では、抗N末端β−アミロイド抗体の投与により、CAAに起因する脳血管からの出血の増悪が報告されている〔非特許文献7(サイエンス(Science), 298, 1379, 2002)〕。
β−アミロイドのN末端または中間部をエピトープとする抗体を用いた動物レベルでの受動免疫の実験においては、血中β−アミロイド濃度の上昇は報告されているが〔非特許文献5,非特許文献6、非特許文献8(ネイチャー メディシン (Nature Medicine), 8, 1263-1269, 2002)、および非特許文献9(プロシーディングス オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシズ オブ ザ ユーエスエー(Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA), 100, 2023-2028, 2003)〕、凝集性の高いβ−アミロイド(x−42)の血中濃度を特異的に上昇させたという免疫療法の報告はない。
WO 94/17197号公報 Arch. Biochem. Biophys., 301巻, 41-53頁, 1993年 Biochemistry, 32巻, 4693-4697頁, 1993年 Nature, 400巻, 173-177頁, 1999年 Nature Medicine, 9巻 (4), 448-452頁, 2003年 Science, 295巻, 2264-2267頁, 2002年 Nature Neuroscience, 5巻, 452-457頁,2002年 Science, 298巻, 1379頁, 2002年 Nature Medicine, 8巻, 1263-1269頁, 2002年 Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA, 100巻, 2023-2028頁, 2003年 Neuron, 38巻, 547-555頁, 2003年
β−アミロイドがアルツハイマー病の原因物質の一つである可能性が指摘され、β−アミロイドに深い関心が寄せられているにもかかわらず、有効な予防・治療法が確立されていないのが現状である。また、アルツハイマー病の免疫療法に関しても、β−アミロイドのN端側、中間部、またはβ−アミロイド(x−40)のC端部の部分ペプチドに特異的に反応する抗体では、例えば、脳血管壁に沈着したβ−アミロイド(x−40)(CAA)に対する炎症を惹起し、脳内出血をもたらす危険があるなどの点を考慮すると、必ずしも十分に安全なアルツハイマー病の予防・治療方法であるとは言えない。
このように、より有効でかつ安全なアルツハイマー病の予防・治療法が切望されているのが現状である。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、β−アミロイドのC端側の部分ペプチドに特異的に反応するモノクローナル抗体BC-05aをアルツハイマー病のモデル・マウスに皮下投与した所、意外にも、脳内のβ−アミロイドの沈着が抑制され、β−アミロイド(x−40)の血液中の濃度を増加させることなく、β−アミロイド(x−42)のみの血液中の濃度を選択的に増加させることを見出し、これらの知見に基づいて、更に研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)β−アミロイドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応し、かつ配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識しないモノクローナル抗体を含有してなるアルツハイマー病、軽度認知障害または脳アミロイドアンギオパチーの予防・治療剤、
(2)アルツハイマー病の予防・治療剤である前記(1)記載の剤、
(3)抗体が配列番号:9で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識しない抗体である前記(1)記載の剤、
(4)抗体が配列番号:9で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識する抗体である前記(1)記載の剤、
(5)β−アミロイドが配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5または配列番号:6で表されるアミノ酸配列を有するペプチドである前記(1)記載の剤、
(6)β−アミロイドが配列番号:5で表されるアミノ酸配列を有するペプチドである前記(1)記載の剤、
(7)β−アミロイドの誘導体が、配列番号:5で表されるアミノ酸配列の2番目〜42番目のアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号:5で表されるアミノ酸配列の3番目〜42番目のアミノ酸配列を有するペプチドであってN端のグルタミン酸がピログルタミン酸に変換したペプチド、または配列番号:5で表されるアミノ酸配列の4番目〜42番目のアミノ酸配列を有するペプチドである前記(1)記載の剤、
(8)β−アミロイドの誘導体が、配列番号:1ないし配列番号:6で表される各々のアミノ酸配列から1番目〜10番目のアミノ酸配列が欠如したアミノ酸配列を有するペプチドであってN端のグルタミン酸がピログルタミン酸に変換したペプチドである前記(1)記載の剤、
(9)β−アミロイドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドが、各β−アミロイドのN端のアミノ酸から数えて25番目以降のアミノ酸配列を有する部分ペプチドである前記(1)記載の剤、
(10)抗体が配列番号:7で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識しない抗体である前記(1)記載の剤、
(11)抗体が配列番号:5で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−42)を認識する抗体である前記(1)記載の剤、
(12)抗体が、BA−27(FERM BP−4139)で標示されるハイブリドーマ細胞から産生されうるモノクローナル抗体BA−27aである前記(1)記載の剤、
(13)抗体が、BC−05(FERM BP−4457)で標示されるハイブリドーマ細胞から産生されうるモノクローナル抗体BC−05aである前記(1)記載の剤、
(14)抗体が、脳血液関門を透過する抗体である前記(1)記載の剤、
(15)抗体が、形成された老人斑からβ−アミロイドを引き抜きうる抗体である前記(14)記載の剤、
(16)β−アミロイドの脳内での凝集または沈着の抑制剤である前記(1)記載の剤、
(17)配列番号:5で表されるアミノ酸配列を有するペプチドの血中濃度を特異的に上昇させうる前記(1)記載の剤、
(18)抗体が、脳血液関門を透過しない抗体である前記(1)記載の剤、
(19)抗体が、末梢中のβ−アミロイドを末梢で捕捉しうる抗体である前記(18)記載の剤、
(20)哺乳動物に対して、β−アミロイドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応し、かつ配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識しないモノクローナル抗体の有効量を投与することを特徴とするアルツハイマー病、軽度認知障害または脳アミロイドアンギオパチーの予防・治療方法、
(21)アルツハイマー病、軽度認知障害または脳アミロイドアンギオパチーの予防・治療剤を製造するためのβ−アミロイドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応し、かつ配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識しないモノクローナル抗体の使用、
(22)抗体が、配列番号:5で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−42)を認識するが、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−38)、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−39)および配列番号:3で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−40)を認識しない抗体である前記(1)記載の剤などを提供する。
β−アミロイドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応し、かつ配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識しないモノクローナル抗体を用いることによって、C端部疎水的領域を有するβ−アミロイドを特異的に認識することができ、この抗体はアルツハイマー病などの予防・治療剤あるいは診断剤などとして有用である。さらに、β−アミロイド(x−42)は脳脊髄液などの可溶性画分における比率が低いため、脳血液関門を介する脳外への運び出しは効率が低いと予想されるにもかかわらず、上記抗体は、β−アミロイド(x−42)のみの血液中濃度を選択的に増加させ、脳内不溶性β−アミロイド(x−42)を低下させる可能性がある。また、上記抗体は、β−アミロイド(x−40)を主な構成成分とする脳血管アミロイドに対してほとんど反応しないため、脳アミロイドアンギオパチーを含む脳血管からの出血を惹起しないと考えられる。
本発明で用いられる抗β−アミロイド抗体を産生するハイブリドーマ細胞のうち、BA−27は平成4年12月22日から財団法人発酵研究所(IFO)(大阪府大阪市淀川区十三本町2−17−85(郵便番号532−8686))にIFO 50387として、平成5年1月7日から通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)〔現、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1−1−1 中央第6(郵便番号305−8566))〕にFERM BP−4139として寄託されている。
また、本発明で用いられる抗β−アミロイド抗体を産生するハイブリドーマ細胞のうち、BC−05は平成5年11月2日から通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)〔現、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1−1−1 中央第6(郵便番号305−8566))〕にFERM BP−4457として寄託されている。
なお、本明細書において、各ハイブリドーマ細胞から得られる抗体については、細胞名の後にaを付けた形で表記している。
本明細書において用いられる配列番号のうち、配列番号:1〜配列番号:9は、以下のペプチドのアミノ酸配列を表す。
〔配列番号:1〕β−アミロイド(1−38)
〔配列番号:2〕β−アミロイド(1−39)
〔配列番号:3〕β−アミロイド(1−40)
〔配列番号:4〕β−アミロイド(1−41)
〔配列番号:5〕β−アミロイド(1−42)
〔配列番号:6〕β−アミロイド(1−43)
〔配列番号:7〕β−アミロイド(1−28)
〔配列番号:8〕β−アミロイド(25−35)
〔配列番号:9〕β−アミロイド(35−43)
本明細書におけるタンパク質(ポリペプチド)は、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有するポリペプチドをはじめとする、本発明で用いられるタンパク質は、C末端がカルボキシル基、カルボキシレート、アミドまたはエステルの何れであってもよい。
本発明におけるβ−アミロイドとしては、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−38)、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−39)、配列番号:3で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−40)、配列番号:4で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−41)、配列番号:5で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−42)または配列番号:6で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−43)など(好ましくは、配列番号:5で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−42)など)が用いられる。
本発明におけるβ−アミロイドの誘導体としては、上記β−アミロイドのN端部のアミノ酸がそれぞれ1ないし17残基程度欠落したもの、L−アスパラギン酸がL−イソアスパラギン酸、D−イソアスパラギン酸またはD−アスパラギン酸に異性化したもの、N端部にピログルタミン酸を有するもの、上記β−アミロイドのN端部から1番目〜10番目のアミノ酸が欠如したアミノ酸配列を有するペプチドであってN端のグルタミン酸がピログルタミン酸に変換したものなどが用いられる。具体的には、配列番号:5で表されるアミノ酸配列の第2番目〜42番目のアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号:5で表されるアミノ酸配列の第3番目〜42番目のアミノ酸配列を有するペプチドであってN端のグルタミン酸がピログルタミン酸に変換したペプチド、配列番号:5で表されるアミノ酸配列の第4番目〜42番目のアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号:1〜配列番号:6で表されるアミノ酸配列から第1番目〜16番目のアミノ酸配列または第1番目〜17番目のアミノ酸配列が欠如したアミノ酸配列を有するペプチド(例えば、β−アミロイド(17−40)、β−アミロイド(18−40)など)などが用いられる。これらのβ−アミロイドまたはその誘導体は、例えばヒト、サル、ラット、マウスなどの哺乳動物より自体公知の方法で調製することもできるし、市販の天然精製標品であってもよい。また、合成ペプチドを用いてもよい。
本発明におけるβ−アミロイドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドとしては、例えばβ−アミロイドのN端のアミノ酸から数えて25番目以降のアミノ酸配列を有する部分ペプチドが挙げられる。
上記したβ−アミロイドまたはその誘導体は、例えば、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属塩)などとの塩(好ましくは生理学的に許容される酸付加塩)などとして用いてもよく、この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
本発明におけるβ−アミロイドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応するモノクローナル抗体(以下、単に抗体と称することがある)としては、例えばβ−アミロイドまたはその誘導体を認識するが、配列番号:7で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチド(すなわち、β−アミロイド(1−28)で表されるβ−アミロイドのN端側の部分ペプチド)を認識しない抗体などが用いられる。また、β−アミロイドまたはその誘導体を認識するが、配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチド(すなわち、β−アミロイド(25−35)で表されるβ−アミロイドの中心部分の部分ペプチド)を認識しない抗体;β−アミロイドまたはその誘導体を認識するが、配列番号:9で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチド(すなわち、β−アミロイド(35−43)で表されるβ−アミロイドのC端側の部分ペプチド)を認識しない抗体などであってもよい。より具体的には、これらの抗体の中でも、
(i)配列番号:8および配列番号:9で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチド(すなわち、β−アミロイド(25−35)およびβ−アミロイド(35−43))を認識しない抗体、
(ii)配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチド(すなわち、β−アミロイド(25−35))を認識しないが、配列番号:9で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチド(すなわち、β−アミロイド(35−43))を認識する抗体などが好ましい。
上記(i)の抗体の中でも、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−38)、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−39)および(または)配列番号:3で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−40)を特に認識する抗体が好ましく、さらには配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−38)、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−39)、配列番号:3で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−40)を認識するが、配列番号:5で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−42)を認識しない抗体が好ましい。
また、上記(ii)の抗体の中でも、アルツハイマー病患者の脳ギ酸抽出物中に含まれるβ−アミロイド(特に、配列番号:5で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−42))を特に認識する抗体が好ましく、さらには配列番号:5で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−42)を認識するが、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−38)、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−39)および配列番号:3で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−40)を認識しない抗体が好ましい。
上記(i)の抗体の代表例としては、BA−27aで標示されるモノクローナル抗体(WO 94/17197号公報参照)があり、上記(ii)の抗体の代表例としては、BC−05a、BC−15a、BC−65a、BC−75a、BC−55a(特に、BC−05aが好ましい)で標示されるモノクローナル抗体(WO 94/17197号公報参照)がある。
抗体の抗原の調製法、および抗体の製造法については、自体公知の方法、例えば、WO 94/17197号公報に記載の方法やそれに準ずる方法を用いることができるが、以下に、その例を示す。
(1)抗原の調製
本発明の抗体を調製するために使用される抗原としては、例えばβ−アミロイドまたはその誘導体、β−アミロイドまたはその誘導体を加水分解して得られる部分ペプチド、β−アミロイドと同一の抗原決定基を1種あるいは2種以上有する合成ペプチドなど何れのものも使用することができる(以下、これらを単にβ−アミロイド抗原と称することもある)。該β−アミロイドまたはその誘導体としては、前述したものが用いられる。これらβ−アミロイドまたはその誘導体は、例えばヒト、サル、ラット、マウスなどの哺乳動物から自体公知の方法あるいはそれに準ずる方法を用いて調製することもできるし、また市販の天然精製標品であってもよい。また、合成ペプチドを用いてもよい。
前記β−アミロイドまたはその誘導体またはそれらの塩は、公知の方法、例えばWO 02/06483号公報に記載の方法に準じて製造でき、さらに、(a)例えばヒト、サル、ラット、マウスなどの哺乳動物の組織または細胞から公知の方法あるいはそれに準ずる方法を用いて調製、(b)ペプチド・シンセサイザー等を使用する公知のペプチド合成方法で化学的に合成、(c)所望のアミノ酸配列を含有するポリペプチドまたはその塩をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造される。
(a)該哺乳動物の組織または細胞からβ−アミロイド抗原を調製する場合、その組織または細胞をホモジナイズした後、酸、またはアルコールなどで抽出を行い、該抽出液を、塩析、透析、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
(b)化学的にβ−アミロイド抗原を調製する場合、該合成ペプチドとしては、例えば上述した天然より精製したβ−アミロイド抗原と同一の構造を有するもの、などが用いられる。
(c)DNAを含有する形質転換体を用いて所望のアミノ酸配列を含有するポリペプチドまたはその塩を製造する場合、該DNAは、公知のクローニング方法〔例えば、Molecular Cloning(2nd ed.;J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法など〕に従って作製することができる。該クローニング方法とは、(1)所望のアミノ酸配列を含有するポリペプチドまたはその塩のアミノ酸配列に基づきデザインしたDNAプローブまたはDNAプライマーを用い、cDNAライブラリーからハイブリダイゼーション法により所望のアミノ酸配列を含有するポリペプチドまたはその塩をコードするDNAを含有する形質転換体を得る方法、または(2)所望のアミノ酸配列を含有するポリペプチドまたはその塩のアミノ酸配列に基づきデザインしたDNAプライマーを用い、PCR法により所望のアミノ酸配列を含有するポリペプチドまたはその塩をコードするDNAを含有する形質転換体を得る方法などが挙げられる。
該β−アミロイドを加水分解して得られる部分ペプチドとしては、例えば配列番号:6で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−43)などをアミノペプチダーゼやカルボキシペプチダーゼなどのエキソプロテアーゼによりN末端および(または)C末端から順次加水分解して得られる部分ペプチドまたはそれらの混合物、あるいはβ−アミロイド(1−43)を種々のエンドペプチダーゼにより加水分解して得られる部分ペプチドまたはそれらの混合物などが用いられる。この方法でβ−アミロイド(1−42)を作製した場合、標品中にβ−アミロイ ド(1−41)および(または)β−アミロイド(1−43)が混合している場合がある。該合成ペプチドとしては、例えば上述した天然より精製したβ−アミロイド抗原と同一の構造を有するものや、β−アミロイド(1−43)などのアミノ酸配列において3個以上、好ましくは6個以上のアミノ酸からなる任意の箇所のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を1種あるいは2種以上含有するペプチド(以下β−アミロイド関連合成ペプチドと略す)などが用いられる。
上記合成ペプチドは、公知の常套手段で製造することができ、固相合成法、液相合成法のいずれによっても製造することができる。すなわち、該ペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。具体的な、公知の縮合方法や保護基の脱離方法としては、例えばB. Merrifield〔ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイェティ(J. Am. Chem. Soc.),85. 2149(1963)〕、M. BodanszkyおよびM. A. Ondetti〔ペプチド シンセーシス(Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York,1966年〕、SchroderおよびLubke〔ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press,New York, 1965年〕、泉屋信夫他〔ペプチド合成の基礎と実験、丸善、1985年〕、矢島治明および榊原俊平〔生化学実験講座1、タンパク質の化学IV, 205,1977年〕などが用いられる。例えば、固相法によりβ−アミロイドあるいはβ−アミロイド関連合成ペプチドを合成する場合には、不溶性樹脂として当該技術分野で知られたもの(例えば、クロロメチル樹脂、4−オキシメチルフェニルアセタミドメチル樹脂など)の何れかの樹脂を用い、β−アミロイドあるいはβ−アミロイド関連合成ペプチドのC末端側から保護アミノ酸を常法に従って順次縮合する。次いで、フッ化水素処理で全保護基を除去して、高速液体クロマトグラフィーなどのそれ自体公知の方法による精製後、目的とするβ−アミロイドあるいはβ−アミロイド関連合成ペプチドを得ることができる。また、N−保護アミノ酸としては、α−アミノ基はBoc基で保護し、さらに例えばセリンおよびスレオニンの水酸基はBzl基で保護し、グルタミン酸、アスパラギン酸のω−カルボキシル基はOBzl基で保護し、リジンのε−アミノ基はCl−Z基で保護し、チロシンの水酸基はBr−Z基で保護し、アルギニンのグアニド基はTos基で保護し、ヒスチジンのイミダゾール基はBom基で保護する方法で製造することができる。また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶などを組み合わせて該ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られるペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
ペプチドのアミド体は、アミド形成に適した市販のペプチド合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするペプチドの配列通りに、公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、目的のペプチドを取得する。あるいはクロロトリチル樹脂、オキシム樹脂、4−ヒドロキシ安息香酸系樹脂等を用い、部分的に保護したペプチドを取り出し、更に常套手段で保護基を除去し目的のペプチドを得ることもできる。
上記した保護されたアミノ酸の縮合に関しては、ペプチド合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としてはDCC、N,N'−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N'−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが挙げられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBtなど)とともに保護されたアミノ酸を直接樹脂に添加するか、または、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護されたアミノ酸の活性化を行ったのちに樹脂に添加することができる。保護されたアミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、ペプチド縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。たとえばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジンなどの三級アミン類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はペプチド結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜約50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常約1.5ないし約4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行うことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化して、後の反応に影響を及ぼさないようにすることができる。
原料アミノ酸のアミノ基の保護基としては、たとえば、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが挙げられる。カルボキシル基の保護基としては、たとえばC1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基、C7-14アラルキル基、2−アダマンチル、4−ニトロベンジル、4−メトキシベンジル、4−クロロベンジル、フェナシルおよびベンジルオキシカルボニルヒドラジド、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド、トリチルヒドラジドなどが挙げられる。
セリンおよびスレオニンの水酸基は、たとえばエステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては例えばアセチル基などの低級(C1-6)アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが挙げられる。また、エーテル化に適する基としては、たとえばベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t-ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、たとえばBzl、Cl−Bzl,2−ニトロベンジル、Br−Z、t-ブチルなどが挙げられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、Bom、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが挙げられる。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、たとえば対応する酸無水物、アジド、活性エステル[アルコール(たとえば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル]などが挙げられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、たとえば対応するリン酸アミドが挙げられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、たとえばPd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども挙げられる。上記酸処理による脱離反応は一般に−20℃〜40℃の温度で行われるが、酸処理においてはアニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護および保護基、ならびにその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基あるいは公知の手段から適宜選択しうる。
ペプチドのアミド体を得る別の方法としては、まず、カルボキシル末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化した後、アミノ基側にペプチド鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除いたペプチド(またはアミノ酸)とを製造し、この両ペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護ペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗ペプチドを得ることができる。この粗ペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のペプチドのアミド体を得ることができる。
ペプチドのエステル体を得るにはカルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、ペプチドのアミド体と同様にして所望のペプチドのエステル体を得ることができる。
β−アミロイド抗原は、凝集しやすいため、不溶化したものを直接免疫することもできる。また、該β−アミロイド抗原を適当な担体に結合または吸着させた複合体を免疫してもよい。該担体および担体(キャリアー)とβ−アミロイド抗原(ハプテン)との混合比は、担体に結合あるいは吸着させたβ−アミロイド抗原に対して抗体が効率よくできれば、どのようなものをどのような比率で結合あるいは吸着させてもよく、通常ハプテン抗原に対する抗体の作製にあたり常用されている天然もしくは合成の高分子担体を重量比でハプテン1に対し0.1〜100の割合で結合あるいは吸着させたものを使用することができる。天然の高分子担体としては、例えばウシ、ウサギ、ヒトなどの哺乳動物の血清アルブミンや例えばウシ、ウサギなどの哺乳動物のチログロブリン、例えばウシ、ウサギ、ヒト、ヒツジなどの哺乳動物のヘモグロビン、キーホールリンペットヘモシアニンなどが用いられる。合成の高分子担体としては、例えばポリアミノ酸類、ポリスチレン類、ポリアクリル類、ポリビニル類、ポリプロピレン類などの重合物または供重合物などの各種ラテックスなどを用いることができる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができる。例えば、チロシン、ヒスチジン、トリプトファンを架橋するビスジアゾ化ベンジジンなどのジアゾニウム化合物、アミノ基同志を架橋するグルタルアルデビトなどのジアルデヒド化合物、トルエン−2,4−ジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物、チオール基同志を架橋するN,N'-o-フェニレンジマレイミドなどのジマレイミド化合物、アミノ基とチオール基を架橋するマレイミド活性エステル化合物、アミノ基とカルボキシル基とを架橋するカルボジイミド化合物などが好都合に用いられる。また、アミノ基同志を架橋する際にも、一方のアミノ基にジチオピリジル基を有する活性エステル試薬(例えば、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N-スクシンイミジル(SPDP)など)を反応させた後還元することによりチオール基を導入し、他方のアミノ基にマレイミド活性エステル試薬によりマレイミド基を導入後、両者を反応させることもできる。
(2)モノクローナル抗体の作製
β−アミロイド抗原は、温血動物に対して、例えば腹腔内注入、静脈注入、皮下注射などの投与方法によって、抗体産生が可能な部位にそれ自体単独であるいは担体、希釈剤と共に投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。温血動物としては、例えばサル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリなどがあげられるが、モノクローナル抗体作製にはマウス、ラットなどが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体の作製に際しては、β−アミロイド抗原を免疫された温血動物、たとえばマウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、抗β−アミロイドモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。血清中の抗β−アミロイド抗体価の測定は、例えば後記の標識化β−アミロイドと抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することによりなされる。融合操作は既知の方法、例えばケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256、495 (1975)〕に従い実施できる。融合促進剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGなどが用いられる。骨髄腫細胞としてはたとえばNS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などがあげられるが、P3U1などが好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄細胞数との好ましい比率は、通常1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、通常20〜40℃、好ましくは30〜37℃で通常1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
抗β−アミロイド抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えばβ−アミロイドあるいはβ−アミロイド関連合成ペプタイドを直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合した抗β−アミロイドモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したβ−アミロイドを加え、固相に結合した抗β−アミロイドモノクローナル抗体を検出する方法などがあげられる。抗β−アミロイドモノクローナル抗体の選別、育種は通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加して、10〜20%牛胎児血清を含む動物細胞用培地(例、RPMI1640)で行われる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗β−アミロイド抗体価の測定と同様にして測定できる。
抗β−アミロイドモノクローナル抗体の分離精製は、通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様に免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインA、プロテインGあるいはKAPTIV−AE(TECNOGEN S.C.P.A.社)などの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法など〕に従って行われる。
また、β−アミロイドの一部領域と反応する抗β−アミロイド抗体を産生するハイブリドーマ、および、β−アミロイドとは反応するがその一部領域とは反応しない抗β−アミロイドモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの選別は、たとえばその一部領域に相当するペプチドとハイブリドーマが産生する抗体との結合性を測定することにより行うことができる。
以上のようにして、ハイブリドーマ細胞を温血動物の生体内又は生体外で培養し、その体液または培養物から抗体を採取することによって、本発明の抗体を製造することができる。
このようにして得られる抗β−アミロイドモノクローナル抗体は、アルツハイマー病、軽度認知障害(MCI)、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)など(好ましくは、アルツハイマー病など)の予防・治療剤(進展抑制剤も含む)として使用することができる。また、該予防・治療剤としては、β−アミロイドの脳内での凝集または沈着の抑制剤、配列番号:5で表されるアミノ酸配列を有するペプチドの血中濃度の特異的な上昇剤などであることが好ましい。
これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また抗体分子のF(ab')2、Fab'またはFab画分などを用いてもよい。また、これらの目的に用いられる本発明の抗体としては、脳血液関門(BBB)を透過する抗体が好ましく、なかでも、β−アミロイドの沈着を抑制する抗体、β−アミロイドのオリゴマー形成を阻害する抗体、あるいは形成された老人斑からβ−アミロイドを引き抜きうる抗体(あるいは脳内に形成された老人斑を消失させうる抗体)などが好ましい。あるいは、脳血液関門(BBB)を透過しない抗体であってもよく、この場合は、末梢中のβ−アミロイドを末梢で捕捉し、脳内から末梢へのβ−アミロイドの排出を促進しうる抗体であることが好ましい。
また、上記のように脳血液関門(BBB)を透過し、形成された老人斑のβ−アミロイドと結合しうる抗体は、アルツハイマー病、軽度認知障害(MCI)などの体内での直接的な診断剤として用いることもできる。ごく初期のアルツハイマー病、軽度認知障害(MCI)に見られるびまん性老人斑は、β−アミロイド(x−42)を主な構成成分とすることが知られているため、特にβ−アミロイド(x−42)のC端部に特異的な抗体、抗体分子のF(ab')2、Fab'またはFab画分などとびまん性老人斑との、体内での直接的な結合を高磁場MRIなどを用いて画像化することにより、これまで困難であったアルツハイマー病や軽度認知障害(MCI)の早期診断が可能になると考えられる。
本発明の抗体を含有するアルツハイマー病、軽度認知障害(MCI)、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)など(好ましくは、アルツハイマー病など)の予防・治療剤は低毒性であり、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的に投与することができる。投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、成人のアルツハイマー病の治療のために使用する場合には、本発明の抗体を1回量として、通常0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1週間に1〜5回程度、好ましくは1ヶ月に1〜4回程度、非経口投与するのが好都合である。経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
本発明の抗体は、それ自体または適当な医薬組成物として投与することができる。上記投与に用いられる医薬組成物は、上記抗体またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものである。かかる組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
例えば、経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等があげられる。かかる組成物は自体公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウム等が用いられる。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含する。かかる注射剤は、自体公知の方法に従って、例えば、上記抗体またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる坐剤は、上記抗体またはその塩を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。
上記の経口用または非経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。かかる投薬単位の剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤等が例示され、それぞれの投薬単位剤形当たり通常約5〜500mg、とりわけ注射剤では約5〜100mg、その他の剤形では約10〜250mgの上記抗体が含有されていることが好ましい。
なお前記した各組成物は、上記抗体との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
本発明の明細書において、アミノ酸等を略号で表示する場合、IUPAC-IUB Commision on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。アミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
PAM :フェニルアセタミドメチル
Boc :t−ブチルオキシカルボニル
Z :ベンジルオキシカルボニル
Cl−Z :2−クロロ−ベンジルオキシカルボニル
Bг−Z :2−ブロモーベンジルオキシカルボニル
Bzl :ベンジル
OcHex:シクロヘキシルエステル
OBzl :ベンジルエステル
Tos :p−トルエンスルホニル
HOBt :1−ベンゾトリアゾール
MeBzl:4−メチルベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
DCC :N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド
TFA :トリフルオロ酢酸
DMF :N,N−ジメチルフォルムアミド
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
SPDP :3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N-スクシンイミジル
GMBS :N-(4-マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミド
BSA :ウシ血清アルブミン
BTG :ウシチログロブリン
EIA :エンザイムイムノアッセイ
HPLC :逆相高速液体クロマトグラフィー
HRP :西洋ワサビパーオキシダーゼ
FBS :ウシ胎児血清
d-FBS :透析済みウシ胎児血清
TMB :3,3',5,5'-テトラメチルベンチジン
H/HBSS:ヘペスバッファードハンクスバランス溶液
本明細書において用いられる配列番号は、以下のペプチドのアミノ酸配列を表す。
〔配列番号:1〕β−アミロイド(1−38)
〔配列番号:2〕β−アミロイド(1−39)
〔配列番号:3〕β−アミロイド(1−40)
〔配列番号:4〕β−アミロイド(1−41)
〔配列番号:5〕β−アミロイド(1−42)
〔配列番号:6〕β−アミロイド(1−43)
〔配列番号:7〕β−アミロイド(1−28)
〔配列番号:8〕β−アミロイド(25−35)
〔配列番号:9〕β−アミロイド(35−43)
以下に、実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例で用いたモノクローナル抗体BC−05aおよびBA−27aは、WO 94/17197号公報の実施例7に記載の方法に従って得た。
(1)サンドイッチ法-EIAによるAβx-40、Aβx-42の測定
マウスモノクローナル抗体BNT-77a(Asami-Odaka A. et al., Biochemistry, 34巻, 10272-10278頁, 1995年)は、WO 94/17197号公報の実施例7に記載の方法に準じ、β−アミロイド(11-28)をBALB/Cマウスに免疫することにより得た。これを15μg/ml含む0.1M 炭酸緩衝液、pH9.6溶液を96ウェルマイクロプレートに100μlずつ分注し、4℃で24時間放置した。ウェルの余剰の結合部位を、PBSで4倍希釈したブロックエース(大日本製薬)300μlを加え、4℃で24時間放置することにより不活化した。Aβx-40の測定は、上記のように1次抗体を固定化したプレートに、バッファーEC〔10%ブロックエース、0.2% BSA、0.4M NaCl、0.05% CHAPS、2mM EDTA、0.05% NaN3を含む0.02Mリン酸緩衝液、pH7〕で希釈したAβ1-40(ペプチド研究所)の希釈系列および被験試料100μlを加え、4℃で24時間反応させた。PBSで洗浄したのち、2次抗体としてバッファーC〔1% BSA、0.4M NaCl、および2mM EDTAを含む0.02M リン酸緩衝液、pH7〕で1000倍に希釈したBA-27a-HRP(WO 94/17197号公報参照)を100μl加え、室温で6時間反応させた。PBSで洗浄した後、TMBマイクロウェルパーオキシダーゼ基質システム(KIRKEGAARD & PERRY LAB, INC)100μlを加え室温で10分間反応させた。反応を1M リン酸100μlを加えることにより停止させた後、450nmの吸光度をプレートリーダー(SPECTRAMAX190、Molecular Device社)で測定することにより固相上の酵素活性を求めた。Aβx-42の測定は、上記で作製したBNT-77a固定化プレートにAβ1-42(ペプチド研究所)の希釈系列および被験試料を加え、2次抗体としてBC-05a-HRP(WO 94/17197号公報参照)を用いることにより、Aβx-40と同様に測定した。
(2)BA-27aまたはBC-05aの腹腔内投与後のBALB/Cマウス血漿および脳脊髄液中のAβx-40およびAβx-42の濃度変化
3ヶ月齢、BALB/Cマウス19匹で上記抗体の効果を検討した。0.5mgのBA-27aと0.5mgのBC-05aをそれぞれ7匹と6匹のマウスの腹腔に投与した。残りの非投与6匹をコントロールとして検討した。投与後16時間後に、エーテル麻酔下で、マウスから血漿(plasma)と脳脊髄液(CSF)を採取し、Aβx-40とAβx-42を計測した。さらに1週間おきに4回、BC-05aを腹腔投与したマウスの血漿を採取し、Aβx-42を測定した。このうちの血漿10μlと5μgのDynabeads M280 anti-mouse Ig (Dynal)を2時間室温で反応させた後に上清を回収し、血漿中の免疫グロブリン非結合型Aβx-40とAβx-42および0.2M Glycine pH2.8で溶出した免疫グロブリン結合型をAβx-40とAβx-42を測定した。
血漿Aβx-40は、BA-27a投与群では137.3±2.2fmol/ml、BC-O5a投与群では3.3±1.2fmol/ml、正常対照群では3.4±1.8fmol/mlであった。
脳脊髄液Aβx-40は、BA-27a投与群では670.8±252.6fmol/ml、BC-O5a投与群では166.5±140.1fmol/ml,正常対照群では246±184.3fmol/mlであった。血漿Aβx-42は、BA-27a投与群では0.5±0.4fmol/ml、BC-O5a投与群では60.7±7.1fmol/ml、正常対照群では0.2±0.2fmol/mlであった。
脳脊髄液Aβx-42は、BA-27a投与群では測定感度以下、BC-O5a投与群では0.6±0.4fmol/ml、正常対照群では測定感度以下であった。
Aβx-40は、BA-27a投与によって血漿で40倍、脳脊髄液で2.7倍と有意に上昇した(p<0.001)。BC-05a投与では血漿および脳脊髄液ともにAβx-40の上昇はみられなかった。
Aβx-42は、BA-27a投与では血漿および脳脊髄液ともにAβx-42の上昇はみられなかった。BC-05a投与では血漿で304倍と有意に上昇し(p<0.001)、脳脊髄液では正常対照では測定感度以下であったものが、0.6±0.4fmol/mlと上昇した。
BC-05aを一ヶ月間、継続投与したマウスでは、血漿Aβx-42のみ324.1fmol/mlと1621倍に増加しており、しかも、抗体結合型、抗体非結合型に免疫沈降法で分けて測定すると、増加したAβx-42のほぼ100%が抗体非結合型であった。
以上の結果は、抗Aβ42C末端特異抗体BC-05aをマウス腹腔に投与すると、脳脊髄液Aβx-42と血漿Aβx-42を特異的にしかも著明に上昇させることを示している。血漿中に上昇したAβx-42は免疫グロブリン非結合型であることから、このAβx-42の上昇は、投与したBC-05aが血液中で結合しているAβx-42を測定したものではない。
したがって、投与されたBC-05aは脳内Aβx-42のクリアランスを特異的に増加させて、脳脊髄液Aβx-42と血漿Aβx-42の増加を来したものと考えられる。
この結果はBC-05aを投与することにより、アルツハイマー病の発病開始因子であるAβx-42の脳内濃度を選択的に制御できること、さらに一度沈着して様々な病理過程を引き起こしている脳アミロイドAβx-42の沈着を選択的に解除し、改善しうることを示している。投与されたBC-05aが脳内のAβx-42と結合することを応用すれば、老人斑の選択的画像化やBC-05aの血管内投与による脳アミロイドAβx-42沈着量の選択的推定などの新たな診断法への応用も可能と考えられる。
(1)ビオチン化BC-05aおよびビオチン化マウスIgGの作製
BC-05a (10 mg/ml) 2 mlにsulfo-NHS-biotin(Pierce社)水溶液(2.4 mg/120μl)40μlを添加し、攪拌しながら室温で30分間反応させた。反応液を希釈し4℃で2日間、PBS(-)に対して透析した後、抗体濃度を測定した。収率約70%。対照に用いるマウスIgG(和光純薬)も同様にビオチン化した。
(2)若齢APPswTg(Tg2576)マウスへのビオチン化抗体の短期連投、大脳可溶性画分の調製と脳内抗体濃度の測定
雌性Tg2576マウス(12週齢)(Science, 274巻, 99-102頁, 1996年)に対し、ビオチン化マウスIgGまたはビオチン化BC-05a(各0.5 mg/0.2 ml/マウス)を単回腹腔内投与し、24時間後に採血、灌流後大脳を採取、半切後凍結した(n=4-5)。血液にはプロテアーゼインヒビターカクテル(Complete、Roche社)とEDTA(終濃度4 mg/ml)を加えて混和し、遠心後の上清を血漿として凍結保存した。プロテアーゼインヒビターカクテルを含む50 mM トリス塩酸含有生理食塩水(pH 7.5)(TSバッファー)を、大脳半球に重量の4倍量加えてホモジナイズし、300,000xg、4℃で20分間超遠心した後の上清を大脳可溶性画分とした。これをアビジン固定化96ウェルプレート(Reacti-Bind NeutrAvidin Coated Plate, Pierce社)に添加し4℃で一晩反応させた。洗浄後、抗マウスIgG-HRP (Amersham社)を加えて室温で6時間反応させ、洗浄後HRPの基質(TMB Microwell Peroxidase substrate system, KPL社)を加えた。1M 燐酸で反応停止後、プレートリーダーで450 nmの吸光度を測定し、付属の計算ソフト(SoftMAX)で脳内抗体濃度を算出した。血漿中の抗体濃度も同様に測定した。BC-05aを標品とすることにより得た検量線を作製し、上記(1)で得られたビオチン化BC-05aの血漿および脳内の濃度結果を表1に示す。
〔表1〕

ビオチン化マウスIgG投与群 ビオチン化BC-05a投与群
(n=4)(pmol/g wet tissue) (n=5)(pmol/g wet tissue)
血漿 1300±296 1030±94.8
大脳可溶性画分 6.42±0.475 4.75±0.056
mean ± S.E.M.

これより、ビオチン化BC-05a およびビオチン化IgGのいずれを投与した場合でも、血漿の抗体濃度の0.5%前後が脳内に移行していることがわかる。
若齢APPswTg(Tg2576)マウスへのBC-05a 9ヶ月間連投、大脳抽出物の調製と血中・脳内Aβ濃度の定量
雄性Tg2576マウス(10週齢)(Science, 274巻, 99-102頁, 1996年)に対し、マウスIgGまたはBC-05a(15週齢まで各0.5 mg/0.2 ml/マウス、16週齢以降各1.0 mg/0.2 ml/マウス)を週1回、52週齢(12ヶ月齢)まで腹腔内投与した(n=9-10)。サンプリングは上記と同様の方法で行った。
大脳抽出物は可溶性画分と不溶性画分に分けて調製した。可溶性画分は実施例2と同様に調製し、超遠心後の沈殿をTSバッファーで洗った後、大脳半球重量の8倍量の6 M グアニジン塩酸含有50 mM トリス塩酸水溶液(pH7.5)を加え、溶解させた。15000rpm、4℃で20分間遠心し、その上清を不溶性画分とした。Aβ濃度の測定は実施例1記載の方法に従った。大脳不溶性画分はバッファーECで2000倍希釈したものをサンプルとした。
血漿中のAβ濃度は、希釈した血漿をそのまま定量する方法と、グアニジン塩酸でBC-05a複合体を解離させたのち、希釈したものを定量する方法の二通りで求めた。後者は、血漿10μlに8 M グアニジン塩酸含有50 mM トリス塩酸水溶液(pH7.5)30μlを加え、混和した後バッファーEC 560μlを加えて希釈したものをELISAのサンプルとした。
結果を表2に示す。
〔表2〕

Aβx-40 Aβx-42
(pmol/g wet tissue) (pmol/g wet tissue)
血漿(処理なし) IgG投与群 3160 ± 302 389 ± 20.0
BC-05a投与群 2270 ± 186 8810 ± 224
血漿(ク゛アニシ゛ン処理)IgG投与群 2990 ± 208 588 ± 29.0
BC-05a投与群 2350 ± 128 18800 ± 1100
大脳可溶性Aβ IgG投与群 2.23 ± 0.402 0.413 ± 0.0521
BC-05a投与群 2.29 ± 0.27 0.643 ± 0.0687
大脳不溶性Aβ IgG投与群 1650 ± 383 645 ± 102
BC-05a投与群 1200 ± 347 442 ± 57.4
mean ± S.E.M.

単回投与と同様、血漿のAβ濃度はBC-05a投与により22倍から32倍に大きく上昇した。血漿をグアニジンで処理することにより、BC-05a投与群の血漿Aβx-42濃度はさらに2倍程度上昇したことから、BC-05aは血中でのAβx-42の安定化に寄与している可能性が考えられる。
脳内可溶性Aβx-40濃度に変化は見られなかったが、不溶性Aβx-40濃度は減少傾向を示した。脳内Aβx-42濃度は可溶性画分で有意に上昇し、不溶性画分で減少傾向を示した。


Claims (22)

  1. β−アミロイドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応し、かつ配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識しないモノクローナル抗体を含有してなるアルツハイマー病、軽度認知障害または脳アミロイドアンギオパチーの予防・治療剤。
  2. アルツハイマー病の予防・治療剤である請求項1記載の剤。
  3. 抗体が配列番号:9で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識しない抗体である請求項1記載の剤。
  4. 抗体が配列番号:9で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識する抗体である請求項1記載の剤。
  5. β−アミロイドが配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5または配列番号:6で表されるアミノ酸配列を有するペプチドである請求項1記載の剤。
  6. β−アミロイドが配列番号:5で表されるアミノ酸配列を有するペプチドである請求項1記載の剤。
  7. β−アミロイドの誘導体が、配列番号:5で表されるアミノ酸配列の2番目〜42番目のアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号:5で表されるアミノ酸配列の3番目〜42番目のアミノ酸配列を有するペプチドであってN端のグルタミン酸がピログルタミン酸に変換したペプチド、または配列番号:5で表されるアミノ酸配列の4番目〜42番目のアミノ酸配列を有するペプチドである請求項1記載の剤。
  8. β−アミロイドの誘導体が、配列番号:1ないし配列番号:6で表される各々のアミノ酸配列から1番目〜10番目のアミノ酸配列が欠如したアミノ酸配列を有するペプチドであってN端のグルタミン酸がピログルタミン酸に変換したペプチドである請求項1記載の剤。
  9. β−アミロイドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドが、各β−アミロイドのN端のアミノ酸から数えて25番目以降のアミノ酸配列を有する部分ペプチドである請求項1記載の剤。
  10. 抗体が配列番号:7で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識しない抗体である請求項1記載の剤。
  11. 抗体が配列番号:5で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−42)を認識する抗体である請求項1記載の剤。
  12. 抗体が、BA−27(FERM BP−4139)で標示されるハイブリドーマ細胞から産生されうるモノクローナル抗体BA−27aである請求項1記載の剤。
  13. 抗体が、BC−05(FERM BP−4457)で標示されるハイブリドーマ細胞から産生されうるモノクローナル抗体BC−05aである請求項1記載の剤。
  14. 抗体が、脳血液関門を透過する抗体である請求項1記載の剤。
  15. 抗体が、形成された老人斑からβ−アミロイドを引き抜きうる抗体である請求項14記載の剤。
  16. β−アミロイドの脳内での凝集または沈着の抑制剤である請求項1記載の剤。
  17. 配列番号:5で表されるアミノ酸配列を有するペプチドの血中濃度を特異的に上昇させうる請求項1記載の剤。
  18. 抗体が、脳血液関門を透過しない抗体である請求項1記載の剤。
  19. 抗体が、末梢中のβ−アミロイドを末梢で捕捉しうる抗体である請求項18記載の剤。
  20. 哺乳動物に対して、β−アミロイドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応し、かつ配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識しないモノクローナル抗体の有効量を投与することを特徴とするアルツハイマー病、軽度認知障害または脳アミロイドアンギオパチーの予防・治療方法。
  21. アルツハイマー病、軽度認知障害または脳アミロイドアンギオパチーの予防・治療剤を製造するための、β−アミロイドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応し、かつ配列番号:8で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識しないモノクローナル抗体の使用。
  22. 抗体が、配列番号:5で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−42)を認識するが、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−38)、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−39)および配列番号:3で表されるアミノ酸配列を有するβ−アミロイド(1−40)を認識しない抗体である請求項1記載の剤。
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