JP4199502B2 - 抗体およびその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体に結合特異性を有する新規な抗体に関する。更に詳しくは、抗原抗体反応に基づく該ポリペプチドまたはその誘導体の定量法、中和活性を利用する該ポリペプチドまたはその誘導体が関与する疾患(癌等)の診断および予防・治療剤の開発に有用な抗体などに関する。
【0002】
【従来の技術】
配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド(以下、ヒトMetastinと称することもある)は、オーファンGタンパク質共役型レセプタータンパク質(hOT7T175)に対するリガンドとして、ヒト胎盤より見出された新規ペプチドである。ヒトMetastinは、癌転移抑制遺伝子KiSS−1にコードされていることより癌転移抑制活性を有するとされている(非特許文献1 Nature, 411, 613-617 (2001);特許文献1 WO 00/24890;特開2000−312590)。hOT7T175を強制発現させたB16メラノーマ(B16 melanoma)を用いたマウスでの自然転移モデル系において、ヒトMetastinを投与することにより、転移数の有意な減少がみられ、ヒトMetastinが生体内においても転移抑制活性を示すことが明らかとなった。また、ヒトMetastin誘導体のhOT7T175発現チャイニーズハムスターオバリー(以下「CHO」とも記載する。)細胞に対する[Ca2+]濃度の上昇を指標とした系から、ヒトMetastinは、アミノ酸配列の第45番目〜第54番目のアミノ酸配列を有するペプチドと同等の活性を示し、C末端部のアミド構造がその活性に重要であると考えられている。また、ヒトMetastinは、動物実験においては癌転移抑制作用を示したが、ヒトでの臨床癌に対する作用およびその生理的意義についてはさらに詳細な研究が必要である。
【0003】
【非特許文献1】
Nature, 411巻, 613-617頁, 2001年
【特許文献1】
WO 00/24890
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ヒトMetastinを効果的に定量する方法は確立されておらず、従って、ヒトMetastinの生理作用を解明するために、ヒトMetastinを簡便かつ高感度に検出・定量する測定系が切望されていた。
本発明は、ヒトMetastinまたはその誘導体を感度よく特異的に定量することができる抗体(好ましくは、モノクローナル抗体)、および該抗体を用いるヒトMetastinまたはその誘導体の検出・定量法、およびこれらを用いた診断薬(例えば、妊娠診断薬)を提供することを主な目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ヒトMetastinまたはその誘導体のN端側およびC端側を特異的に認識する複数のモノクローナル抗体を作製し、これら抗体を用いることによりヒトMetastinまたはその誘導体を高感度に検出・定量できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、ヒトMetastinまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体(好ましくは、モノクローナル抗体)、ヒトMetastinまたはその誘導体のN端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体(好ましくは、モノクローナル抗体)、該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞、該抗体およびハイブリドーマ細胞の製造法、該抗体を用いた競合法あるいはサンドイッチ法によるヒトMetastinおよびその誘導体の免疫測定法に関する。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体のN端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体、
(2)N端側の部分ペプチドが配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第1番目〜第12番目のアミノ酸配列を有するペプチドである上記(1)記載の抗体、
(3)N端側の部分ペプチドが配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第1番目〜第3番目、第1番目〜第4番目、第1番目〜第5番目、第1番目〜第6番目、第1番目〜第7番目、第1番目〜第8番目または第1番目〜第12番目のアミノ酸配列を有するペプチドである上記(1)記載の抗体、
(4)配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドを認識しない上記(1)記載の抗体、
(5)標識化された上記(1)記載の抗体、
(6)モノクローナル抗体である上記(1)記載の抗体、
(7)KIS−1N(FERM BP−7429)で標示されるハイブリドーマ細胞から産生され得るKIS−1Naで標示される上記(6)記載のモノクローナル抗体、
(8)配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体、
(9)C端側の部分ペプチドが配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第45番目〜第54番目のアミノ酸配列を有するペプチドである上記(8)記載の抗体、
(10)C端側の部分ペプチドが配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第45番目〜第54番目、第46番目〜第54番目、第47番目〜第54番目、第48番目〜第54番目、第49番目〜第54番目または第50番目〜第54番目のアミノ酸配列を有するペプチドである上記(8)記載の抗体、
(11)配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体のN端側の部分ペプチドを認識しない上記(8)記載の抗体、
(12)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8または配列番号:9で表されるアミノ酸配列を有するペプチドに対して中和活性を有する上記(8)記載の抗体、
(13)標識化された上記(8)記載の抗体、
(14)モノクローナル抗体である上記(8)記載の抗体、
(15)KIS−1C(FERM BP−7430)で標示されるハイブリドーマ細胞から産生され得るKIS−1Caで標示される上記(14)記載のモノクローナル抗体、
(16)上記(1)または上記(8)記載の抗体を含有してなる医薬、
(17)上記(1)または/および上記(8)記載の抗体を含有してなる診断薬、
(18)上記(1)記載の抗体を用いることを特徴とする配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体の定量法、
(19)さらに上記(8)記載の抗体を用いることを特徴とする上記(18)記載の定量法、
(20)上記(1)記載の抗体を用いることを特徴とする配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体が関与する疾患の診断法、
(21)上記(1)記載の抗体を用いることを特徴とする妊娠の診断法、
(22)さらに上記(8)記載の抗体を用いることを特徴とする上記(20)または(21)記載の診断法、
(23)上記(8)記載の抗体を用いることを特徴とする配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体の定量法、
(24)上記(8)記載の抗体を用いることを特徴とする配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体が関与する疾患の診断法、
(25)上記(8)記載の抗体を用いることを特徴とする妊娠の診断法、
(26)上記(1)または上記(8)記載の抗体と、被検液および標識化された配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体とを競合的に反応させ、上記抗体に結合した上記標識化されたポリペプチドまたはその誘導体の割合を測定することを特徴とする、被検液中の配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体の定量法、
(27)(1)担体上に不溶化した上記(1)記載の抗体、標識化された上記(8)記載の抗体および被検液を反応させた後、標識剤の活性を測定する、または(2)担体上に不溶化した上記(8)記載の抗体、標識化された上記(1)記載の抗体および被検液を反応させた後、標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中の配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその誘導体の定量法、
(28)上記(6)記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞、
(29)KIS−1N(FERM BP−7429)で標示される上記(28)記載のハイブリドーマ細胞、
(30)上記(28)記載のハイブリドーマ細胞を生体内又は生体外で培養し、その体液または培養物から上記(6)記載のモノクローナル抗体を採取することを特徴とする上記(6)記載のモノクローナル抗体の製造法、
(31)上記(14)記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞、
(32)KIS−1C(FERM BP−7430)で標示される上記(31)記載のハイブリドーマ細胞、
(33)上記(31)記載のハイブリドーマ細胞を生体内又は生体外で培養し、その体液または培養物から上記(14)記載のモノクローナル抗体を採取することを特徴とする上記(14)記載のモノクローナル抗体の製造法等に関する。
【0007】
さらに、本発明は、
(i)配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するペプチドを特異的に反応する上記(1)記載の抗体、
(ii)ヒトMetastinまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドを認識しない上記(1)記載の抗体、
(iii)配列番号:3で表されるアミノ酸配列を有するペプチドを特異的に反応する上記(8)記載の抗体、
(iv)ヒトMetastinまたはその誘導体のN端側の部分ペプチドを認識しない上記(8)記載の抗体、
(v)上記(1)または上記(8)記載の抗体と、被検液および標識化されたヒトMetastinまたはその誘導体とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化されたヒトMetastinまたはその誘導体の割合を測定することを特徴とする、被検液中のヒトMetastinまたはその誘導体の定量法、
(vi)担体上に不溶化した上記(1)記載の抗体、標識化された上記(8)記載の抗体および被検液を反応させた後、標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中のヒトMetastinまたはその誘導体の定量法、
(vii)担体上に不溶化した上記(8)記載の抗体、標識化された上記(1)記載の抗体および被検液を反応させた後、標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中のヒトMetastinまたはその誘導体の定量法なども提供する。
【0008】
本明細書におけるタンパク質(ポリペプチド)は、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有するポリペプチドをはじめとする、本発明で用いられるタンパク質は、C末端がカルボキシル基、カルボキシレート、アミドまたはエステルの何れであってもよい。
本発明で用いられるヒトMetastinの誘導体としては、配列番号:1で表されるアミノ酸配列の一部のアミノ酸残基が置換可能な基によって置換されたものなどが挙げられる。
本発明で用いられるヒトMetastinまたはその誘導体のN端側の部分ペプチドまたはC端側の部分ペプチドとしては、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドにおいて、その一部のアミノ酸残基が欠失したもの、その一部のアミノ酸残基が欠失し、かつ一部のアミノ酸残基が置換可能な基(例、Cys、水酸基など)によって置換されたものなどが挙げられ、ヒトMetastinまたはその誘導体のN端側のアミノ酸が約40〜50残基欠失したもの、ヒトMetastinまたはその誘導体のC端側のアミノ酸が約45〜51残基欠失したものなどが用いられる。
【0009】
具体的には、ヒトMetastinまたはその誘導体のN端側の部分ペプチドとして、配列番号:1で表されるアミノ酸配列の
(i)第1番目〜第3番目のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(ii)第1番目〜第4番目のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(iii)第1番目〜第5番目のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(iv)第1番目〜第6番目のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(v)第1番目〜第7番目のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(vi)第1番目〜第8番目のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(vii)第1番目〜第12番目のアミノ酸配列を有するペプチドおよび
(viii)これらのポリペプチドの一部のアミノ酸残基(例、1個)が置換可能な基によって置換されたものなどが、
ヒトMetastinまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドとして、配列番号:1で表されるアミノ酸配列の
(i)第45番目〜第54番目のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(ii)第46番目〜第54番目のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(iii)第47番目〜第54番目のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(iv)第48番目〜第54番目のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(v)第49番目〜第54番目のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(vi)第50番目〜第54番目のアミノ酸配列を有するペプチド、および
(vii)これらのポリペプチドの一部のアミノ酸残基(例、1個)が置換可能な基によって置換されたものなどがそれぞれ挙げられる。
【0010】
本発明のヒトMetastinまたはその誘導体のN端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体としては、例えばヒトMetastinまたはその誘導体のN端側の部分ペプチドに特異的に反応するものであればよく、好ましくはモノクローナル抗体が挙げられる。具体的には、配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第1番目〜第13番目までのアミノ酸配列であり、かつこのアミノ酸配列の第13番目を、Cys−NH2に置き換えたアミノ酸配列を有するポリペプチド[Cys13-NH2]ヒトMetastin(1-13)(配列番号:2)に特異的に反応する抗体(好ましくは、モノクローナル抗体)などが用いられる。このうち好ましくは、ヒトMetastinまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドを認識しないものである。
好ましい具体例としては、KIS−1Naで標示されるモノクローナル抗体が挙げられる。
さらに、ヒトMetastinまたはその誘導体のN端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体としては、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するヒトMetastinの(i)第1番目〜第3番目のアミノ酸配列、(ii)第1番目〜第4番目のアミノ酸配列、(iii)第1番目〜第5番目のアミノ酸配列、(iv)第1番目〜第6番目のアミノ酸配列、(v)第1番目〜第7番目のアミノ酸配列、(vi)第1番目〜第8番目のアミノ酸配列または(vii)第1番目〜第12番目のアミノ酸配列を特異的に認識する抗体などが用いられる。
【0011】
本発明のヒトMetastinまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体は、例えばヒトMetastinまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応するものであればよく、具体的には、配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第38番目〜第54番目までのアミノ酸配列であり、かつこのアミノ酸配列の第38番目をCysに置き換えたアミノ酸配列を有するポリペプチド[Cys38]ヒトMetastin(38-54)(配列番号:3)に特異的に反応する抗体(好ましくは、モノクローナル抗体)などが用いられる。このうち好ましくは、ヒトMetastinまたはその誘導体のN端側の部分ペプチドを認識しないものである。さらに好ましくは、ヒトMetastinの活性を中和する抗体である。例えば、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8または配列番号:9で表されるアミノ酸配列を有するペプチドに対して中和活性を有する抗体が挙げられる。
好ましい具体例としては、KIS−1Caで標示されるモノクローナル抗体が挙げられる。
さらに、ヒトMetastinまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体としては、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するヒトMetastinの(i)第45番目〜第54番目のアミノ酸配列、(ii)第46番目〜第54番目のアミノ酸配列、(iii)第47番目〜第54番目のアミノ酸配列、(iv)第48番目〜第54番目のアミノ酸配列、(v)第49番目〜第54番目のアミノ酸配列または(vi)第50番目〜第54番目のアミノ酸配列を特異的に認識する抗体などが用いられる。
【0012】
以下に、ヒトMetastinまたはその誘導体のN端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体またはヒトMetastinまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体(以下、両者をあわせて本発明の抗体と称することもある)の抗原の調製法、および該抗体の製造法について説明する。
(1)抗原の調製
本発明の抗体を調製するために使用される抗原としては、例えばヒトMetastinまたはその誘導体と同一の抗原決定基を1種あるいは2種以上有する合成ペプチドなど何れのものも使用することができる(以下、これらを単にMetastin抗原と称することもある)。
ヒトMetastinまたはその誘導体は、(a)例えばヒト、サル、ラット、マウスなどの哺乳動物の組織または細胞から公知の方法あるいはそれに準ずる方法を用いて調製、(b)ペプチド・シンセサイザー等を使用する公知のペプチド合成方法で化学的に合成、(c)ヒトMetastinまたはその誘導体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造される。
(a)該哺乳動物の組織または細胞からMetastin抗原を調製する場合、その組織または細胞をホモジナイズした後、酸、またはアルコールなどで抽出を行い、該抽出液を、塩析、透析、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
(b)化学的にMetastin抗原を調製する場合、該合成ペプチドとしては、例えば上述した天然より精製したMetastin抗原と同一の構造を有するもの、配列番号:1で表されるアミノ酸配列において3個以上、好ましくは6個以上のアミノ酸からなる任意の箇所のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を1種あるいは2種以上含有するペプチドなどが用いられる。
(c)DNAを含有する形質転換体を用いてヒトMetastinまたはその誘導体を製造する場合、該DNAは、公知のクローニング方法〔例えば、Molecular Cloning(2nd ed.;J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法など〕に従って作成することができる。該クローニング方法とは、(1)ヒトMetastinまたはその誘導体のアミノ酸配列に基づきデザインしたDNAプローブまたはDNAプライマーを用い、cDNAライブラリーからハイブリダイゼーション法によりヒトMetastinまたはその誘導体をコードするDNAを含有する形質転換体を得る方法、または(2)ヒトMetastinまたはその誘導体のアミノ酸配列に基づきデザインしたDNAプライマーを用い、PCR法によりヒトMetastinまたはその誘導体をコードするDNAを含有する形質転換体を得る方法などが挙げられる。
【0013】
Metastin抗原としてのペプチドは、(1)公知のペプチドの合成法に従って、または(2)配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドを適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。
該ペプチドの合成法としては、例えば固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、該ペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としてはたとえば、以下の▲1▼〜▲2▼に記載された方法等が挙げられる。
▲1▼M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)▲2▼SchroederおよびLuebke、ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶などを組み合わせて該ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られるペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
【0014】
ペプチドのアミド体は、アミド形成に適した市販のペプチド合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするペプチドの配列通りに、公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、目的のペプチドを取得する。あるいはクロロトリチル樹脂、オキシム樹脂、4−ヒドロキシ安息香酸系樹脂等を用い、部分的に保護したペプチドを取り出し、更に常套手段で保護基を除去し目的のペプチドを得ることもできる。
【0015】
上記した保護されたアミノ酸の縮合に関しては、ペプチド合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としてはDCC、N,N'−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N'−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが挙げられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBtなど)とともに保護されたアミノ酸を直接樹脂に添加するか、または、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護されたアミノ酸の活性化を行ったのちに樹脂に添加することができる。保護されたアミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、ペプチド縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。たとえばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジンなどの三級アミン類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はペプチド結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜約50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常約1.5ないし約4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行うことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化して、後の反応に影響を及ぼさないようにすることができる。
【0016】
原料アミノ酸のアミノ基の保護基としては、たとえば、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが挙げられる。カルボキシル基の保護基としては、たとえばC1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基、C7-14アラルキル基、2−アダマンチル、4−ニトロベンジル、4−メトキシベンジル、4−クロロベンジル、フェナシルおよびベンジルオキシカルボニルヒドラジド、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド、トリチルヒドラジドなどが挙げられる。
セリンおよびスレオニンの水酸基は、たとえばエステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては例えばアセチル基などの低級(C1-6)アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが挙げられる。また、エーテル化に適する基としては、たとえばベンジル基、テトラヒドロピラニル基、ターシャリーブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、たとえばBzl、Cl−Bzl,2−ニトロベンジル、Br−Z、ターシャリーブチルなどが挙げられる。ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、Bom、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが挙げられる。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、たとえば対応する酸無水物、アジド、活性エステル[アルコール(たとえば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル]などが挙げられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、たとえば対応するリン酸アミドが挙げられる。
【0017】
保護基の除去(脱離)方法としては、たとえばPd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども挙げられる。上記酸処理による脱離反応は一般に−20℃〜40℃の温度で行われるが、酸処理においてはアニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護および保護基、ならびにその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基あるいは公知の手段から適宜選択しうる。
ペプチドのアミド体を得る別の方法としては、まず、カルボキシル末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化した後、アミノ基側にペプチド鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除いたペプチド(またはアミノ酸)とを製造し、この両ペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護ペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗ペプチドを得ることができる。この粗ペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のペプチドのアミド体を得ることができる。
ペプチドのエステル体を得るにはカルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、ペプチドのアミド体と同様にして所望のペプチドのエステル体を得ることができる。
【0018】
Metastin抗原は、不溶化したものを直接免疫することもできる。また、Metastin抗原を適当な担体に結合または吸着させた複合体を免疫してもよい。該担体(キャリアー)とMetastin抗原(ハプテン)との混合比は、担体に結合あるいは吸着させたMetastin抗原に対して抗体が効率よくできれば、どのようなものをどのような比率で結合あるいは吸着させてもよく、通常ハプテン抗原に対する抗体の作製にあたり常用されている天然もしくは合成の高分子担体を重量比でハプテン1に対し0.1〜100の割合で結合あるいは吸着させたものを使用することができる。天然の高分子担体としては、例えばウシ、ウサギ、ヒトなどの哺乳動物の血清アルブミンや例えばウシ、ウサギなどの哺乳動物のチログロブリン、例えばウシ、ウサギ、ヒト、ヒツジなどの哺乳動物のヘモグロビン、キーホールリンペットヘモシアニンなどが用いられる。合成の高分子担体としては、例えばポリアミノ酸類、ポリスチレン類、ポリアクリル類、ポリビニル類、ポリプロピレン類などの重合物または供重合物などの各種ラテックスなどを用いることができる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができる。例えば、チロシン、ヒスチジン、トリプトファンを架橋するビスジアゾ化ベンジジンなどのジアゾニウム化合物、アミノ基同志を架橋するグルタルアルデビトなどのジアルデヒド化合物、トルエン−2,4−ジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物、チオール基同志を架橋するN,N’−o−フェニレンジマレイミドなどのジマレイミド化合物、アミノ基とチオール基を架橋するマレイミド活性エステル化合物、アミノ基とカルボキシル基とを架橋するカルボジイミド化合物などが好都合に用いられる。また、アミノ基同志を架橋する際にも、一方のアミノ基にジチオピリジル基を有する活性エステル試薬(例えば、SPDPなど)を反応させた後還元することによりチオール基を導入し、他方のアミノ基にマレイミド活性エステル試薬によりマレイミド基を導入後、両者を反応させることもできる。
【0019】
(2)モノクローナル抗体の作製
Metastin抗原は、温血動物に対して、例えば腹腔内注入、静脈注入,皮下注射などの投与方法によって、抗体産生が可能な部位にそれ自体単独であるいは担体、希釈剤と共に投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。温血動物としては、例えばサル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリなどがあげられるが、モノクローナル抗体作製にはマウスが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体の作製に際しては、Metastin抗原を免疫された温血動物、たとえばマウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、抗Metastinモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。血清中の抗Metastin抗体価の測定は、例えば後記の標識化Metastinと抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することによりなされる。融合操作は既知の方法、例えばケーラーとミルスタインの方法〔Nature、256巻、495頁(1975年)〕に従い実施できる。融合促進剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGなどが用いられる。骨髄腫細胞としてはたとえばNS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などがあげられるが、P3U1などが好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄細胞数との好ましい比率は、通常1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、通常20〜40℃、好ましくは30〜37℃で通常1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
【0020】
抗ヒトMetastin抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えばヒトMetastinまたはその誘導体あるいはそれらの部分ペプチドを直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合した抗ヒトMetastinモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したヒトMetastinを加え、固相に結合したヒトMetastinモノクローナル抗体を検出する方法などがあげられる。抗ヒトMetastinモノクローナル抗体のスクリーニング、育種は通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加して、10〜20%牛胎児血清を含む動物細胞用培地(例、RPMI1640)で行われる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗ヒトMetastin抗体価の測定と同様にして測定できる。
抗ヒトMetastinモノクローナル抗体の分離精製は、通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様に免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法など〕に従って行われる。
以上のようにして、ハイブリドーマ細胞を温血動物の生体内又は生体外で培養し、その体液または培養物から抗体を採取することによって、本発明の抗体を製造することができる。
【0021】
なお、ヒトMetastinの一部領域と反応する抗ヒトMetastin抗体を産生するハイブリドーマおよび、ヒトMetastinとは反応するがその一部領域とは反応しない抗ヒトMetastinモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングは、たとえばその一部領域に相当するペプチドとハイブリドーマが産生する抗体との結合性を測定することにより行うことができる。
【0022】
以下に本発明のヒトMetastinまたはその誘導体の定量法(免疫測定法)について、より詳細に説明する。
本発明の抗体を用いることにより、ヒトMetastinの測定または組織染色などによる検出を行なうことができる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また抗体分子のF(ab')2、Fab'あるいはFab画分などを用いてもよい。
本発明の抗体を用いる測定法は、特に制限されるべきものではなく、被測定液中の抗原量(例えば、ヒトMetastin量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、サンドイッチ法、競合法、イムノメトリック法、ネフロメトリーなどが用いられるが、感度、特異性の点で後述するサンドイッチ法、競合法が、特にサンドイッチ法が好ましい。
【0023】
(1)サンドイッチ法
担体上に不溶化した本発明の抗体、標識化された本発明の抗体および被検液を反応させた後、標識剤の活性を測定することにより被検液中のヒトMetastinまたはその誘導体を定量する。
好ましくは、
(i)担体上に不溶化したヒトMetastinまたはその誘導体のN端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体、標識化されたヒトMetastinまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体および被検液を反応させた後、標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中のヒトMetastinまたはその誘導体の定量法、
(ii)担体上に不溶化したヒトMetastinまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体、標識化されたヒトMetastinまたはその誘導体のN端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体および被検液を反応させた後、標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中のヒトMetastinまたはその誘導体の定量法などが挙げられる。
さらに好ましくは、ヒトMetastinまたはその誘導体のN端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体が、KIS−1Naで標示されるモノクローナル抗体で、ヒトMetastinまたはその誘導体のC端側の部分ペプチドに特異的に反応する抗体が、KIS−1Caで標示されるモノクローナル抗体である定量法である。
【0024】
サンドイッチ法においては、不溶化した本発明の抗体に被検液を反応(1次反応)させ、さらに標識化された本発明の抗体を反応(2次反応)させた後、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中のヒトMetastin量を定量することができる。1次反応と2次反応は同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。サンドイッチ法によるヒトMetastinの測定法においては、例えば、1次反応で用いられる抗体がヒトMetastinまたたその誘導体のC端側の部分ペプチドを認識する場合は、2次反応で用いられる抗体はC端側の部分ペプチド以外(即ち、N端側)を認識する抗体が好ましく、1次反応で用いられる抗体がヒトMetastinまたはその誘導体のN端側の部分ペプチドを認識する場合は、2次反応で用いられる抗体は、N端側の部分ペプチド以外(即ち、C端側)を認識する抗体が好ましく用いられる。
具体例としては、[Cys13-NH2]ヒトMetastin(1-13)を免疫原として作製したモノクローナル抗体と、[Cys38]ヒトMetastin(38-54)を免疫原として作製したモノクローナル抗体とが用いられる。これらの抗体は、例えば西洋ワサビパーオキシダーゼ(horseradish peroxidase;HRP)で標識化されて用いられる。
【0025】
(2)競合法
本発明の抗体、被検液および標識化されたヒトMetastinまたはその誘導体とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化されたヒトMetastinまたはその誘導体の割合を測定することにより、被検液中のヒトMetastinまたはその誘導体を定量する。
本反応法は、例えば、固相化法を用いて行う。
具体例としては、抗マウスIgG抗体(ICN/CAPPEL社製)を固相化抗体として用い、この固相化抗体の存在するプレートに、i)本発明の抗体(例、KIS−1NaまたはKIS−1Ca)、ii)horseradish peroxidase(HRP)で標識化された配列番号:2または配列番号:3で表わされるペプチド、およびiii)被検液を添加し、反応後、固相に吸着したHRP活性を測定し、ヒトMetastinを定量する。
(3)イムノメトリック法
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化された本発明の抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは被検液中の抗原と過剰量の標識化された本発明の抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化された本発明の抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
(4)ネフロメトリー
ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
【0026】
上記(1)〜(4)において、標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば 125I、131I、3H、14Cなどが、上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えばβ−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが、蛍光物質としては、例えばフルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが、発光物質としては、例えばルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどがそれぞれ挙げられる。さらに、抗体と標識剤との結合にビオチン−アビジン系を用いることもできる。
抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、物理吸着を用いてもよく、また通常タンパク質あるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、例えばアガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、例えばポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコンなどの合成樹脂あるいはガラスなどが挙げられる。
【0027】
これら個々の免疫学的測定法を本発明法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えてMetastinの測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる[例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」 Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D:Selected Immunoassays))、同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)など参照]。したがって、本発明のサンドイッチ免疫測定法によりMetastinの測定系を構築する場合、その方法は後述する実施例に限定されない。
以上のように、本発明の抗体は、ヒトMetastinまたはその誘導体を感度良く定量することができるので、ヒトMetastinの生理機能の解明およびヒトMetastinの関与する疾患の診断に有用である。具体的には、本発明の抗体を用いて、体液中(血液、血漿、血清、尿など)に含まれるヒトMetastinまたはその誘導体の量を測定することにより、ヒトMetastinまたはその誘導体が関与する疾患〔例、癌(例、皮膚癌、乳癌、大腸癌、結腸癌、前立腺癌、甲状腺癌、肺癌、子宮頚部癌など)、妊娠中毒症、胎盤発育不全、切迫流産、子宮内膜症、不妊症、多嚢胞性卵巣症候群など〕または妊娠などを診断することができる。例えば、妊娠の診断においては、体液中のヒトMetastinを定量し、ヒトMetastinの量が非妊娠時より多い場合、例えば、血中濃度として約15fmol/ml以上、好ましくは約20fmol/ml以上の場合、妊娠と診断する。
【0028】
また、本発明の抗体は、ヒトMetastinまたはその誘導体が関与する疾患〔例、癌(例、皮膚癌、乳癌、大腸癌、結腸癌、前立腺癌、甲状腺癌、肺癌、子宮頚部癌など)、妊娠中毒症、胎盤発育不全、切迫流産、子宮内膜症、不妊症、多嚢胞性卵巣症候群など〕の予防・治療剤として使用することができる。さらに、早産防止、陣痛緩和にも有用である。
本発明の抗体を含有する上記疾患の治療・予防剤は低毒性であり、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的に投与することができる。投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、成人の乳癌の治療のために使用する場合には、本発明の抗体を1回量として、通常0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1日1〜5回程度、好ましくは1日1〜3回程度、経口投与するのが好都合である。非経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
本発明の抗体は、それ自体または適当な医薬組成物として投与することができる。上記投与に用いられる医薬組成物は、上記抗体またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものである。かかる組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
【0029】
本発明の明細書において、アミノ酸等を略号で表示する場合、IUPAC-IUB Commision on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。アミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
PAM :フェニルアセタミドメチル
Boc :t−ブチルオキシカルボニル
Fmoc :9−フルオレニルメチルオキシカルボニル
Cl−Z :2−クロロ−ベンジルオキシカルボニル
Bг−Z :2−ブロモーベンジルオキシカルボニル
Bzl :ベンジル
Cl−Bzl:2−クロロ−ベンジル
OcHex :シクロヘキシルエステル
OBzl :ベンジルエステル
Tos :p−トルエンスルホニル
HONB :N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド
HOBt :1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HOOBt :3−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン
MeBzl :4−メチルベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Bum :t−ブトキシメチル
Trt :トリチル
DNP :ジニトロフェニル
TFA :トリフルオロ酢酸
DMF :N,N−ジメチルフォルムアミド
DCM :ジクロロメタン
DCC :N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド
BHA :ベンズヒドリルアミン
pMBHA :p−メチルベンズヒドリルアミン
CHO :ホルミル
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
PyBOP :ベンゾトリアゾリールオキシ-トリス-ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェイト
PyBrop :ブロモトリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェイト
HOAt :1−ヒドロキシ−7−アゾベンゾトリアゾール
DIEA :ジイソプロピルエチルアミン
But :t−ブチル
PhSMe :チオアニソール
TIS :トリイソプロピルシラン
EDT :エタンジチオール
【0030】
本明細書において用いられる配列番号は、以下のペプチドのアミノ酸配列を表す。
〔配列番号:1〕
ヒトMetastinのアミノ酸配列を表す。
〔配列番号:2〕
実験例2で製造された[Cys13-NH2]ヒトMetastin(1-13)のアミノ酸配列を表す。(配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第1番目〜第13番目までのアミノ酸配列であり、かつこのアミノ酸配列の第13番目を、Cys−NH2に置き換えたものである。)
〔配列番号:3〕
実験例3で製造された[Cys38]ヒトMetastin(38-54)のアミノ酸配列を表す。(配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第38番目〜第54番目までのアミノ酸配列であり、かつこのアミノ酸配列の第38番目をCysに置き換えたものである。)
〔配列番号:4〕
実験例4で製造されたヒトMetastin(1-54)-OHのアミノ酸配列を表す。(配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第54番目の置換基であるアミノ基を水酸基に置き換えたものである。)
〔配列番号:5〕
実験例5で製造されたヒトMetastin(40-54)のアミノ酸配列を表す。
〔配列番号:6〕
実験例6で製造されたヒトMetastin(45-54)のアミノ酸配列を表す。
〔配列番号:7〕
実験例7で製造されたヒトMetastin(46-54)のアミノ酸配列を表す。
〔配列番号:8〕
実験例8で製造されたヒトMetastin(47-54)のアミノ酸配列を表す。
〔配列番号:9〕
実験例9で製造されたヒトMetastin(48-54)のアミノ酸配列を表す。
【0031】
後述の実施例で得られたハイブリドーマ細胞KIS−1Nは、平成13(2001)年1月12日から茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(旧:経済産業省技術総合研究所生命工学工業技術研究所(NIBH))に、寄託番号FERM BP−7429として寄託されている。
後述の実施例で得られたハイブリドーマ細胞KIS−1Cは、平成13(2001)年1月12日から茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(旧:経済産業省技術総合研究所生命工学工業技術研究所(NIBH))に、寄託番号FERM BP−7430として寄託されている。
なお、各ハイブリドーマ細胞から得られる抗体については細胞名の後に「a」を付けた形で表す。
【0032】
【実施例】
以下に、実験例および実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実験例1
ヒトMetastin(配列番号:1)の製造
市販のp-メチルBHA樹脂(0.77 m mole/g resin)をペプチド合成機ABI 430Aの反応槽に入れ、Boc-strategy (NMP-HOBt) ペプチド合成方法でBoc-Phe, Boc-Arg(Tos), Boc-Leu, Boc-Gly, Boc-Phe, Boc-Ser(Bzl), Boc-Asn, Boc-Trp(CHO), Boc-Asn, Boc-Tyr(Br-Z), Boc-Asn, Boc-Pro, Boc-Leu, Boc-Asp(OcHex), Boc-Lys(Cl-Z), Boc-Glu(OcHex), Boc-Arg(Tos), Boc-Gln, Boc-Val, Boc-Leu, Boc-Val, Boc-Ala, Boc-Gly, Boc-Gln, Boc-Pro, Boc-Ala, Boc-Pro, Boc-Ile, Boc-Gln, Boc-Arg(Tos), Boc-Ser(Bzl), Boc-His(Bom), Boc-Pro, Boc-Ala, Boc-Ser(Bzl), Boc-Leu, Boc-Gly, Boc-Pro, Boc-Gln, Boc-Gln, Boc-Arg(Tos), Boc-Ser(Bzl), Boc-Gly, Boc-Ser(Bzl), Boc-Ser(Bzl), Boc-Glu(OcHex), Boc-Pro, Boc-Pro, Boc-Pro, Boc-Ser(Bzl), Boc-Leu, Boc-Ser(Bzl), Boc-Thr(Bzl), Boc-Glyを順に導入し目的の保護ペプチド樹脂を得た。この樹脂0.1gをp-クレゾール1 ml、1,4-ブタンジチオール1 mlと共に無水フッ化水素10 ml中、0℃にて60分撹袢した後、フッ化水素を減圧留去した後、残留物へジエチルエーテルを加え、沈殿を濾過した。この沈殿に50%酢酸水を加え抽出し、不溶部分を除き、抽出液を十分に濃縮後、50%酢酸水で充填したセファデックス(商標)G-25カラム(2.0 x 80 cm)に付し、同溶媒で展開、主要画分を集め凍結乾燥し、白色粉末33mgを得た。半量をCMセルロファイン(登録商標)を充填したカラム(1x1cm)につけCH3CONH4濃度勾配で溶出し主要画分をあつめ、Li Chroprep(商標)RP-18を充填した逆相クロマトカラム(2.6 x 60 cm)に付け0.1%TFA水 200mlで洗浄し、0.1%TFA水 300mlと0.1%TFA含有33%アセトニトリル水 300mlを用いた線型勾配溶出を行い、主要画分を集め凍結乾燥し目的とするペプチド2.2 mgを得た。得られたペプチドを質量分析により分析した。質量分析による(M+H)+は、5858.5ダルトンであった。(計算値 5858.5ダルトン)
精製条件:
HPLC溶出時間 9.7分
カラム条件
カラム:Wakosil 5C18T 4.6 x 100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1%TFA含有アセトニトリルを用い A/B : 95/5〜45/55へ直線型濃度勾配溶出(25分)
流速:1.0 ml / 分
【0033】
実験例2
[Cys13-NH2]ヒトMetastin (1-13)(配列番号:2)の製造
サイバーアミドレジン(Sieber amide resin(登録商標))403 mg に 5% ピペリジン(piperidine)/ DCM / DMF (1 / 1) 10 mL を加え、10分間振盪後、20% piperidine / DMF 10 mL に換え、さらに20分間振盪した。Fmoc-Cys(Trt) 439 mg、PyBOP 390 mg、HOBt 101 mg、DIEA 393 mL、DMF 5 mL を加え、1時間振盪した。樹脂を洗浄後 Fmoc-Cys(Trt) 439 mg、PyBrop 350 mg、HOAt 102 mg、DIEA 393 mL 、DMF 5 mLを加え、1時間振盪した。樹脂を洗浄後、Ac2O 118 mL、DIEA 87 mL、DCM 5 mLを加え、1時間振盪後樹脂を洗浄してFmoc-Cys(Trt)-Sieber amide resin を得た。この樹脂へのFmoc-Cys(Trt)導入量は 0.43 mmol / gであった。
この樹脂を出発物質とし、目的ペプチドのアミノ酸配列順にFmoc保護アミノ酸誘導体をABI 433Aペプチド合成機を用いて縮合してペプチド鎖の伸長を行い、Fmoc-GlyThr(But)Ser(But)LeuSer(But)LeuSer(But)ProProProGlu(OBut)Ser(But)Ser(But)GlyCys(Trt)-Sieber amide resin樹脂 726 mgを得た。次いでこの樹脂 218 mgに、20% piperidine / DMF 5 mLを加え、30分振盪した。樹脂を洗浄後、TFA / PhSMe / m-cresol / TIS / EDT (85 / 5 / 5 / 2.5 / 2.5) 2 mLを加え、2時間振盪した。樹脂を濾過し除去後、エーテルで洗浄し沈殿を得(71.2 mg)、そのうち 25 mgをHPLCにより精製を行い、目的物 13.4 mgを得た。得られたペプチドの質量分析を行った。質量分析による(M+H)+は、1217.3ダルトンであった。(計算値 1217.5ダルトン)
精製条件:
HPLC溶出時間:12.7分
カラム条件
カラム:Wakosil-II 5C18 HG 4.6 x 100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1%TFA含有アセトニトリルを用い A/B : 100/0〜30/70へ直線型濃度勾配溶出(35分)
流速:1.0 ml / 分
【0034】
実験例3
[Cys38]ヒトMetastin(38-54)(配列番号:3)の製造
市販のp-メチルBHA樹脂(0.77 m mole/g resin)をペプチド合成機ABI 430Aの反応槽に入れ、Boc-strategy (NMP-HOBt) ペプチド合成方法でBoc-Phe, Boc-Arg(Tos), Boc-Leu, Boc-Gly, Boc-Phe, Boc-Ser(Bzl), Boc-Asn, Boc-Trp(CHO), Boc-Asn, Boc-Tyr(Br-Z), Boc-Asn, Boc-Pro, Boc-Leu, Boc-Asp(OcHex), Boc-Lys(Cl-Z),Boc-Glu(OcHex), Boc-Cys(4MeBzl)を順に導入し目的の保護ペプチド樹脂を得た。この樹脂0.23gをp-クレゾール1 ml、1,4-ブタンジチオール1.2 mlと共に無水フッ化水素10 ml中、0℃、60分撹袢した後、フッ化水素を減圧留去した後、残留物へジエチルエーテルを加え沈殿を濾過した。この沈殿に50%酢酸水を加え抽出し、不溶部分を除き、抽出液を十分に濃縮後、50%酢酸水で充填したセファデックス(商標)G-25カラム(2.0 x 80 cm)に付し、同溶媒で展開、主要画分を集め凍結乾燥し、白色粉末98mgを得た。20mgをLi Chroprep(商標)RP-18を充填した逆相クロマトカラム(2.6 x 60 cm)に付け0.1%TFA水200mlで洗浄、0.1%TFA水300mlと0.1%TFA含有40%アセトニトリル水300mlを用いた線型勾配溶出を行い、主要画分を集め凍結乾燥し目的とするペプチド7mgを得た。得られたペプチドを質量分析した。質量分析による(M+H)+ は、2102.1ダルトンであった(計算値 2101.99ダルトン)。
精製条件:
HPLC溶出時間:10.3分
カラム条件
カラム:Wakosil 5C18T 4.6 x 100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1%TFA含有アセトニトリルを用い A/B : 80/20〜60/40へ直線型濃度勾配溶出(10分)
流速:1.0 ml / 分
【0035】
実験例4
ヒトMetastin(1-54)OH(配列番号:4)の製造
市販Boc-Phe-OCH2-PAM樹脂(0.77 m mole/g resin)をペプチド合成機ABI 430Aの反応槽に入れ、Boc-strategy (NMP-HOBt) ペプチド合成方法でBoc-Arg(Tos), Boc-Leu, Boc-Gly, Boc-Phe, Boc-Ser(Bzl), Boc-Asn, Boc-Trp(CHO), Boc-Asn, Boc-Tyr(Br-Z), Boc-Asn, Boc-Pro, Boc-Leu, Boc-Asp(OcHex), Boc-Lys(Cl-Z), Boc-Glu(OcHex), Boc-Arg(Tos), Boc-Gln, Boc-Val, Boc-Leu, Boc-Val, Boc-Ala, Boc-Gly, Boc-Gln, Boc-Pro, Boc-Ala, Boc-Pro, Boc-Ile, Boc-Gln, Boc-Arg(Tos), Boc-Ser(Bzl), Boc-His(Bom), Boc-Pro, Boc-Ala, Boc-Ser(Bzl), Boc-Leu, Boc-Gly, Boc-Pro, Boc-Gln, Boc-Gln, Boc-Arg(Tos), Boc-Ser(Bzl), Boc-Gly, Boc-Ser(Bzl), Boc-Ser(Bzl), Boc-Glu(OcHex), Boc-Pro, Boc-Pro, Boc-Pro, Boc-Ser(Bzl), Boc-Leu, Boc-Ser(Bzl), Boc-Thr(Bzl), Boc-Glyを順に導入し目的の保護ペプチド樹脂を得た。これを配列番号1のペプチド製造と同様に処理し目的のペプチドを得た。得られたペプチドを質量分析した。質量分析による(M+H)+は、5859.3ダルトンであった(計算値 5859.6ダルトン)。
精製条件:
HPLC溶出時間:10.0分
カラム条件
カラム:Wakosil 5C18T 4.6 x 100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1%TFA含有アセトニトリルを用い A/B : 95/5〜45/55へ直線型濃度勾配溶出(25分)
流速:1.0 ml / 分
【0036】
実験例5
ヒトMetastin(40-54)(配列番号:5)の製造
市販のp-メチルBHA樹脂(0.77 m mole/g resin)をペプチド合成機ABI 430Aの反応槽に入れ、Boc-strategy (NMP-HOBt) ペプチド合成方法でBoc-Phe, Boc-Arg(Tos), Boc-Leu, Boc-Gly, Boc-Phe, Boc-Ser(Bzl), Boc-Asn, Boc-Trp(CHO), Boc-Asn, Boc-Tyr(Br-Z), Boc-Asn, Boc-Pro, Boc-Leu, Boc-Asp(OcHex), Boc-Lys(Cl-Z)を順に導入し目的の保護ペプチド樹脂を得た。この樹脂0.12gをp-クレゾール1 ml、1,4-ブタンジチオール1.2 mlと共に無水フッ化水素10 ml中、0℃、60分撹袢した後、フッ化水素を減圧留去した後、残留物へジエチルエーテルを加え沈殿を濾過した。この沈殿に50%酢酸水を加え抽出し、不溶部分を除き、抽出液を十分に濃縮後、50%酢酸水で充填したセファデックス(商標)G-25カラム(2.0 x 80 cm)に付し、同溶媒で展開、主要画分を集め凍結乾燥し、白色粉末40mgを得た。半量をLi Chroprep(商標)RP-18を充填した逆相クロマトカラム(2.6 x 60 cm)に付け0.1%TFA水 200mlで洗浄、0.1%TFA水 300mlと0.1%TFA含有33%アセトニトリル水 300mlを用いた線型勾配溶出を行い、主要画分を集め凍結乾燥し目的とするペプチド4.1 mgを得た。得られたペプチドを質量分析した。質量分析による(M+H)+は、1869.9ダルトンであった。(計算値 1969.9ダルトン)
精製条件:
HPLC溶出時間:18.6分
カラム条件
カラム:Wakosil 5C18T 4.6 x 100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1%TFA含有アセトニトリルを用い A/B : 95/5〜45/55へ直線型濃度勾配溶出(25分)
流速:1.0 ml / 分
【0037】
実験例6
ヒトMetastin(45-54)(配列番号:6)の製造
市販のp-メチルBHA樹脂(0.77 m mole/g resin)をペプチド合成機ABI 430Aの反応槽に入れ、Boc-strategy (NMP-HOBt) ペプチド合成方法でBoc-Phe, Boc-Arg(Tos), Boc-Leu, Boc-Gly, Boc-Phe, Boc-Ser(Bzl), Boc-Asn, Boc-Trp(CHO), Boc-Asn, Boc-Tyr(Br-Z), を順に導入し目的の保護ペプチド樹脂を得た。この樹脂0.11gを実験例1と同様に脱保護精製し目的とするペプチド2.2 mgを得た。得られたペプチドを質量分析した。質量分析による(M+H)+は、1302.5ダルトンであった。(計算値 1302.6ダルトン)
精製条件:
HPLC溶出時間:18.7分
カラム条件
カラム:Wakosil 5C18T 4.6 x 100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1%TFA含有アセトニトリルを用い A/B : 95/5〜45/55へ直線型濃度勾配溶出(25分)
流速:1.0 ml / 分
【0038】
実験例7
ヒトMetastin(46-54)(配列番号:7)の製造
市販のp-メチルBHA樹脂(0.77 m mole/g resin)をペプチド合成機ABI 430Aの反応槽に入れ、Boc-strategy (NMP-HOBt) ペプチド合成方法でBoc-Phe, Boc-Arg(Tos), Boc-Leu, Boc-Gly, Boc-Phe, Boc-Ser(Bzl), Boc-Asn, Boc-Trp(CHO), Boc-Asn, を順に導入し目的の保護ペプチド樹脂を得た。この樹脂0.11gを実験例1と同様に脱保護精製し目的とするペプチド3.4 mgを得た。得られたペプチドを質量分析した。質量分析による(M+H)+ は、1139.6ダルトンであった。(計算値 1139.6ダルトン)
精製条件:
HPLC溶出時間:18.1分
カラム条件
カラム:Wakosil 5C18T 4.6 x 100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1%TFA含有アセトニトリルを用い A/B : 95/5〜45/55へ直線型濃度勾配溶出(25分)
流速:1.0 ml / 分
【0039】
実験例8
ヒトMetastin(47-54)(配列番号:8)の製造
市販のp-メチルBHA樹脂(0.77 m mole/g resin)をペプチド合成機ABI 430Aの反応槽に入れ、Boc-strategy (NMP-HOBt) ペプチド合成方法でBoc-Phe, Boc-Arg(Tos), Boc-Leu, Boc-Gly, Boc-Phe, Boc-Ser(Bzl), Boc-Asn, Boc-Trp(CHO) を順に導入し目的の保護ペプチド樹脂を得た。この樹脂0.12gを例1と同様に脱保護精製し目的とするペプチド13.0 mgを得た。得られたペプチドを質量分析した。質量分析による(M+H)+ は、1025.5ダルトンであった。(計算値 1025.5)精製条件:
HPLC溶出時間:17.6分
カラム条件
カラム:Wakosil 5C18T 4.6 x 100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1%TFA含有アセトニトリルを用いA/B : 95/5〜45/55へ直線型濃度勾配溶出(25分)
流速:1.0 ml / 分
【0040】
実験例9
ヒトMetastin(48-54)(配列番号:9)の製造
市販のp-メチルBHA樹脂(0.77 m mole/g resin)をペプチド合成機ABI 430Aの反応槽に入れ、Boc-strategy (NMP-HOBt) ペプチド合成方法でBoc-Phe, Boc-Arg(Tos), Boc-Leu, Boc-Gly, Boc-Phe, Boc-Ser(Bzl), Boc-Asn, を順に導入し目的の保護ペプチド樹脂を得た。この樹脂0.16gをp-クレゾール1 mlと共に無水フッ化水素10 ml中、0℃で60分撹袢した後、実験例1と同様に処理、精製し目的とするペプチド29.0 mgを得た。得られたペプチドを質量分析した。質量分析による(M+H)+ は、839.5ダルトンであった。(計算値 839.5ダルトン)
精製条件:
HPLC溶出時間:15.6分
カラム条件
カラム:Wakosil 5C18T 4.6 x 100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1%TFA含有アセトニトリルを用いA/B : 95/5〜45/55へ直線型濃度勾配溶出(25分)
流速:1.0 ml / 分
【0041】
実験例10
免疫原の作製
(1)[Cys13-NH2]ヒトMetastin(1-13)を含む免疫原の作製
実験例2で得られた[Cys13-NH2]ヒトMetastin(1-13)とKeyhole Limpet Hemocianin(KLH)との複合体を作製し、免疫原とした。
すなわち、KLH 20mgを、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5)1.4mlに溶解させ、N−(γ−マレイミドブチリロキシ)サクシニミド(GMBS)2.2mg(8μmol)を含むDMF溶液100μlと混合し、室温で40分反応させた。反応後、セファデックスG−25カラムで分画したのち、マレイミド基の導入されたKLH 15mgと[Cys13-NH2]ヒトMetastin(1-13)3.75mgとを混合し、4℃で2日間反応させた。反応後、生理食塩水に対し、4℃で2日間透析した。
(2)[Cys38]ヒトMetastin(38-54)を含む免疫原の作製
実験例3で得られた[Cys38]ヒトMetastin(38-54)とKLHとの複合体を作製し、免疫原とした。
すなわち、KLH 21mgを0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5)1.4mlに溶解させ、GMBS 2.35mg(8.4μmol)を含むDMF溶液100μlと混合し、室温で40分反応させた。反応後、セファデックスG−25カラムで分画したのち、マレイミド基の導入されたBTG 15mgと[Cys38]ヒトMetastin(38-54)3.0mgとを混合し、4℃で一晩反応させた。反応後、生理食塩水に対し4℃で3日間透析した。
【0042】
実験例11
免疫
6〜8週令のBALB/C雌マウスに、実験例10で得られた免疫[Cys13-NH2]ヒトMetastin(1-13)−KLH複合体および[Cys38]ヒトMetastin(38-54)−KLH複合体を、それぞれ約50μg/匹となるよう、完全フロイントアジュバントとともに皮下免疫した。以後3週間おきに同量の免疫原を不完全フロイントアジュバントとともに2〜3回追加免疫した。
【0043】
実験例12
酵素標識化抗原の作製
(1)西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP)標識化[Cys13-NH2]ヒトMetastin(1-13)の作製
実験例2で得られた[Cys13-NH2]ヒトMetastin(1-13)とHRP(酵素免疫測定法用、ベーリンガーマンハイム社製)とを架橋し、酵素免疫測定法(EIA)の標識体とした。すなわち、HRP 6mg(150nmol)を0.95mlの0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5)に溶解させ、GMBS 0.42mg(1.5μmol)を含むDMF溶液50μlと混合し、室温で30分間反応させたのち、セファデックスG−25カラムで分画した。このようにして作製した、マレイミド基の導入されたHRP 4.2mg(106nmol)と実験例2で得られた[Cys13-NH2]ヒトMetastin(1-13)0.98mg(319nmol)とを混合し、4℃で1日反応させた。反応後ウルトロゲルAcA44(LKB−ファルマシア社製)カラムで分画し、HRP標識化[Cys13-NH2]ヒトMetastin(1-13)を得た。
【0044】
(2)HRP標識化[Cys38]ヒトMetastin(38-54)の作製
実験例3で得られた[Cys38]ヒトMetastin(38-54)とHRPとを架橋し、EIAの標識体とした。すなわち、HRP 8mg(203nmol)を1.4mlの0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5)に溶解させ、GMBS 0.56mg(2.02μmol)を含むDMF溶液100μlと混合し、室温で30分間反応させたのち、セファデックスG−25カラムで分画した。かくして得られた、マレイミド基の導入されたHRP 6.0mg(142nmol)と実験例3で得られた[Cys38]ヒトMetastin(38-54)0.89mg(425nmol)とを混合し、4℃で1日反応させた。反応後ウルトロゲルAcA44カラムで分画し、HRP標識[Cys38]ヒトMetastin(38-54)を得た。
【0045】
実験例13
抗体価の測定
(1)[Cys13-NH2]ヒトMetastin(1-13)−KLH複合体を免疫したマウスの抗血清中の抗体価の測定
[Cys13-NH2]ヒトMetastin(1-13)−KLH複合体を3週間間隔で2回免疫を行い、その1週間後に眼底採血を行い血液を採取した。さらに血液を、4℃で12,000rpmで15分遠心した後、上清を回収し抗血清を得た。抗血清中の抗体価を下記の方法により測定した。抗マウスイムノグロブリン抗体結合マイクロプレートを作製するため、まず、抗マウスイムノグロブリン抗体(IgG画分、カッペル社製)を100μg/ml含む0.1M炭酸緩衝液(pH9.6)溶液を96ウェルマイクロプレートに100μlずつ分注し、4℃で24時間放置した。次に、プレートをリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)で洗浄したのち、ウェルの余剰の結合部位をふさぐため25%ブロックエース(雪印乳業社製)を含むPBSを300μlずつ分注し、4℃で少なくとも24時間処理した。
得られた抗マウスイムノグロブリン抗体結合マイクロプレートの各ウエルにバッファーC〔1%BSA、0.4M NaCl、0.05% 2mM EDTA・Na〔エチレンジアミン−N,N,N',N'−四酢酸ニナトリウム塩ニ水和物(Ethylenediamine-N,N,N',N'-tetraacetic acid, disodium salt, dihydrate), DOJINDO社〕を含む0.02Mリン酸緩衝液、pH7.0〕50μl、およびバッファーCで希釈した複合体に対する抗血清100μlを加え、4℃で16時間反応させた。次に、該プレートをPBSで洗浄したのち、実験例12(1)で作製したHRP標識化[Cys13-NH2]ヒトMetastin(1-13)(バッファーCで300倍希釈)100μlを加え、室温で1日反応させた。次に、該プレートをPBSで洗浄したのち、固相上の酵素活性をTMBマイクロウェルパーオキシダーゼ基質システム(KIRKEGAARD & PERRY LAB, INC、フナコシ薬品取り扱い)100μlを加え室温で10分間反応させることにより測定した。反応を1Mリン酸100μlを加え停止させたのち、450nmの吸収をプレートリーダー(BICHROMATIC、大日本製薬社製)で測定した。
結果を図1に示す。免疫した8匹のマウス全ての複合体に対する抗血清中に[Cys13-NH2]ヒトMetastin(1-13)に対する抗体価の上昇が認められた。
【0046】
(2)[Cys38]ヒトMetastin(38-54)−KLH複合体を免疫したマウスの抗血清中の抗体価の測定
[Cys38]ヒトMetastin(38-54)−KLH複合体を3回免疫を行いその1週間後に眼底採血を行い血液を採取した。さらに血液を、4℃で12,000rpmで15分遠心した後、上清を回収し抗血清を得た。抗血清中の抗体価を下記の方法により測定した。
上記(1)で作製した抗マウスイムノグロブリン抗体結合マイクロプレートの各ウエルにバッファーC50μl、およびバッファーCで希釈した抗血清100μlを加え、4℃で16時間反応させた。次に、該プレートをPBSで洗浄したのち、実験例12(2)で作製したHRP標識化[Cys38]ヒトMetastin(38-54)(バッファーCで500倍希釈)100μlを加え室温で1日反応させた。次に、該プレートをPBSで洗浄したのち、固相上の酵素活性をTMBマイクロウェルパーオキシダーゼ基質システム(KIRKEGAARD & PERRY LAB, INC、フナコシ薬品取り扱い)100μlを加え室温で10分間反応させることにより測定した。反応を1Mリン酸100μlを加え停止させたのち、450nmの吸収をプレートリーダー(BICHROMATIC、大日本製薬社製)で測定した。
結果を図2に示す。免疫した8匹のマウス全てに[Cys38]ヒトMetastin(38-54)に対する抗体価の上昇が認められた。
【0047】
実施例1
モノクローナル抗ヒトMetastin抗体の作製
比較的高い抗体価を示したマウスに対して200〜300μgの免疫原を生理食塩水0.25〜0.3mlに溶解させたものを静脈内に接種することにより最終免疫を行なった。最終免疫3〜4日後のマウスから脾臓を摘出し、ステンレスメッシュで圧迫、ろ過し、イーグルズ・ミニマム・エッセンシャルメデイウム(MEM)に浮遊させ、脾臓細胞浮遊液を得た。細胞融合に用いる細胞として、BALB/Cマウス由来ミエローマ細胞P3−X63.Ag8.U1(P3U1)を用いた〔Current Topics in Microbiology and Imnology、81巻、1頁、1978年〕。
細胞融合は、原法〔Nature、256巻、495頁、1975年〕に準じて行なった。すなわち、脾臓細胞およびP3U1をそれぞれ、血清を含有しないMEMで3度洗浄し、脾臓細胞とP3U1数の比率を10:1になるよう混合して、800回転で15分間遠心を行ない細胞を沈澱させた。上清を充分に除去した後、沈殿を軽くほぐし、45%ポリエチレングリコール(PEG)6000(コッホライト社製)を0.3ml加え、37℃の温水槽中で7分間静置して融合を行なった。融合後、細胞に毎分2mlの割合でMEMを添加し、合計15mlのMEMを加えた後600回転15分間遠心して上清を除去した。この細胞沈殿物を10%牛胎児血清を含有するGITメデイウム(和光純薬)(GIT−10% FCS)に、P3U1が1ml当り2×105個になるように浮遊し、24穴マルチディッシュ(リンブロ社製)に1ウェル1mlずつ192ウェルに播種した。播種後、細胞を37℃で5%炭酸ガスインキュベーター中で培養した。24時間後、HAT(ヒポキサンチン 1×10−4M、アミノプテリン 4×10−7M、チミジン 1.6×10−3M)を含んだGIT−10% FCS培地(HAT培地)を1ウェル当り1mlずつ添加することにより、HAT選択培養を開始した。HAT選択培養は、培養開始3、6および9日後に旧液を1ml捨てた後、1mlのHAT培地を添加することにより継続した。ハイブリドーマの増殖は、細胞融合後9〜14日で認められ、培養液が黄変したとき(約1×106セル/ml)、上清を採取し、実験例13に記載の方法に従って抗体価を測定した。
[Cys13-NH2]ヒトMetastin(1-13)−KLHを免疫したマウス由来のハイブリドーマの抗体産生細胞株を選択した例として、マウスNo.3とNo.4(図1参照)を用いて細胞融合を行い得られたハイブリドーマの抗体産生状態を図3に示した。得られた抗体産生ハイブリドーマの中から下記の計5種類のハイブリドーマを選択した(表1)。
【0048】
【表1】
【0049】
[Cys38]ヒトMetastin(38-54)−KLHを免疫したマウス由来のハイブリドーマの抗体産生細胞株の選択の例として、マウスNo.2とNo.8(図2参照)を用いて細胞融合を行い得られたハイブリドーマの抗体産生状態の結果を図4に示した。得られた抗体産生ハイブリドーマの中から下記の3種類のハイブリドーマを選択した(表2)。
【0050】
【表2】
【0051】
次に、これらのハイブリドーマを限界希釈法によるクローニングに付した。クローニングに際しては、フィーダー細胞としてBALB/Cマウスの胸腺細胞をウェル当り5×105個になるように加えた。クローニング後、ハイブリドーマを、あらかじめミネラルオイル0.5mlを腹腔内投与されたマウス(BALB/C)に1〜3×106セル/匹を腹腔内投与したのち、6〜20日後に抗体含有腹水を採取した。
モノクローナル抗体は、得られた腹水よりプロテインAカラムにより精製した。即ち、腹水6〜20mlを等量の結合緩衝液〔3.5M NaCl、0.05% NaN3を含む1.5Mグリシン(pH9.0)〕で希釈したのち、あらかじめ結合緩衝液で平衡化したリコンビナントプロテインA−アガロース(Repligen社製)カラムに供し、特異抗体を溶離緩衝液〔(0.05%NaN3を含む0.1Mクエン酸緩衝液(pH3.0))で溶出した。溶出液をPBSに対して4℃、2日間透析したのち、0.22μmのフィルター(ミリポア社製)により除菌濾過し、4℃あるいは−80℃で保存した。
モノクローナル抗体のクラス・サブクラスの決定に際しては、精製モノクローナル抗体結合固相を用いるエンザイム−リンクトイムノソーベントアッセイ(ELISA)法を行った。すなわち、抗体2μg/mlを含む0.1M炭酸緩衝液(pH9.6)溶液を96ウェルマイクロプレートに100μlずつ分注し、4℃で24時間放置した。実施例1に記載の方法に従って、ウェルの余剰の結合部位をブロックエースでふさいだのち、アイソタイプタイピングキット(Mouse-TyperTM Sub-Isotyping Kit バイオラッド社製)を用いるELISAによって固相化抗体のクラス、サブクラスを調べた。
【0052】
実験例14
競合法酵素免疫測定法
(1)競合法−EIA([Cys- NH2 13]ヒトMetastin(1-13)モノクローナル抗体)
[Cys13-NH2]ヒトMetastin(1-13)−KLHを免疫原として作製したモノクローナル抗体の反応特異性を以下の方法により調べた。
まず、各モノクローナル抗体KIS−1NaおよびKIS−2Na溶液の抗体価を実験例13記載の方法により調べ、競合法−EIAに用いる抗体濃度として、標識体の結合量が飽和結合量の約50%となる抗体濃度(約30〜50ng/ml)を決定した。次に、実験例13記載の抗マウスイムノグロブリン抗体結合マイクロプレートに、(i)KIS−1Naを50ng/mlとなるようバッファーCで希釈された抗Metastin(1-12)抗体溶液50μl、(ii)バッファーCで希釈されたヒトMetastin(1-54)溶液50μl、(iii)および上記実験例12(1)で得られたHRP標識化[Cys13-NH2]ヒトMetastin(1-13)(バッファーCで400倍希釈)50μlを抗マウスイムノグロブリン抗体結合マイクロプレートに加え、4℃で16時間反応させた。反応後、PBSで洗浄したのち抗マウスイムノグロブリン抗体結合マイクロプレート上の酵素活性を、実験例13(1)記載の方法により測定した。
結果を表1に示す。これより、いずれの抗体も、HRP標識化[Cys13-NH2]ヒトMetastin(1-13)と反応し、さらに、ヒトMetastinに対しても反応性を有していたことがわかる。
例として、これらの中でヒトMetastinに対して最も高い反応性を示したモノクローナル抗体KIS−1Ca(IgG1,κ)の競合法−EIAの結果を図5に示す。
KIS−1NaのヒトMetastinの標準曲線から、(B/B0)=0.5を与えるヒトMetastin濃度は、0.1nM、0.058ng/wellであることが分かった(図5)。これらの結果から、KIS−1Naは、[Cys13-NH2]ヒトMetastin(1-13)を強く認識し、かつヒトMetastinに対して高い反応性を示しているものと考えられる。
【0053】
(2)競合法−EIA([Cys38]ヒトMetastin(38-54)モノクローナル抗体)[Cys38]ヒトMetastin(38-54)モノクローナル抗体の反応特異性を同様の方法により調べた。
まず、各モノクローナル抗体溶液の抗体価を実験例13(2)記載の方法により調べ、競合法−EIAに用いる抗体濃度として、標識体の結合量が飽和結合量の約50%となる抗体濃度(約30〜50ng/ml)を決定した。次に、抗マウスイムノグロブリン抗体結合マイクロプレートに、(i)50ng/mlにバッファーCで希釈された抗ヒトMetastin(39-54)抗体 KIS−1Ca溶液50μl、(ii)実験例12(2)記載HRP標識化[Cys38]ヒトMetastin(38-54)をバッファーCで500倍希釈した溶液50μlを加えたウェルに、(iii)バッファーCで希釈した10-6M〜10-9MのヒトMetastin、あるいはヒトMetastin部分ペプチド〔ヒトMetastin(1-54)-COOH(C端がカルボキシル基のもの)、配列番号:5で表されるヒトMetastin(40-54)、配列番号:6で表されるヒトMetastin(45-54)、配列番号:7で表されるヒトMetastin(46-54)、配列番号:8で表されるヒトMetastin(47-54)、配列番号:9で表されるヒトMetastin(48-54)〕のバッファーC溶液50μlを50μl加え、4℃で16時間反応させた。
すなわち、(i)と(ii)が入っているところへ(iii)に記載したペプチドが1種類ずつ入れて反応を行った。反応後、PBSで洗浄したのち固相上の酵素活性を、実験例13(1)記載の方法により測定した。
結果を表2に示す。これより、いずれの抗体もHRP標識化[Cys38]ヒトMetastin(38-54)と反応し、さらに、ヒトMetastinに対しても反応性を有していたことがわかる。
例として、ヒトMetastinに対して最も高い反応性を示したモノクローナル抗体、KIS−1Ca(IgG1,κ)の競合法−EIAの結果を図7に示す。
KIS−1CaのヒトMetastinの標準曲線から、(B/B0)=0.5を与えるヒトMetastin濃度は、1nM、0.58ng/wellであることが分かった(図6)。また、この抗体はKIS−1Caは、ヒトMetastin(49-54)との反応性は弱いながらも示すもの、Metastin(1-54)-COOHに対しては交差反応性を示さないことから、 ヒトMetastinのC端部分のC末端のアミドを強く認識することが分かった(図7)。
【0054】
実施例2
HRP標識化抗Metastinモノクローナル抗体(KIS−1Ca−HRP)の作製
KIS−1Ca精製画分9.56mg(63.7nmol)を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.8)に、GMBS 0.77μmolを含むDMF50μlを加え、室温で40分反応させた。反応液をセファデックスG−25カラム(溶離液、0.1Mリン酸緩衝液、pH6.7)で分離し、マレイミド基の導入された抗体画分7.17mgを得た。次に、HRP 17.8mg(445nmol)を含む0.02Mリン酸緩衝液(0.15M NaClも含む)(pH6.8) 1.4mlに、N−スクシニミジル−3−(2−ピリミジルジチオ)プロピオネート(SPDP)6.67μmolを含むDMF60μlを加え、室温で40分反応させた。次に、66μmolのジチオスレイトールを含む0.1M酢酸緩衝液(pH4.5)0.4mlを加え、室温で20分反応させた後、セファデックスG−25カラム(溶離液、2mM EDTAを含む0.1Mリン酸緩衝液、pH6.0)で分離し、SH基の導入されたHRP 9.8mgを得た。次に、SH基の導入されたHRP 8mgとマレイミド基の導入された抗体画分3mgとを混合し、コロジオンバッグ(ザルトリウス社製)で約0.5mlにまで濃縮したのち、4℃で16時間放置した。反応液を溶離液に0.1Mリン酸緩衝液、pH6.5を用いるSephacrylS-300HRカラム(Pharmacia社製)に供し、KIS−1Ca−HRP複合体画分を精製した。
【0055】
実験例15
サンドイッチ法−EIA(サンドイッチ法−EIAの特異性と感度)
実施例1で得られた精製したモノクローナル抗体KIS−1Naを15μg/ml含む0.1M炭酸緩衝液(pH9.6溶液)を96ウェルマイクロプレートに100μlずつ分注し、4℃で24時間放置した。ウェルの余剰の結合部位をPBSで4倍希釈したブロックエース400μlを加え不活化した。
上記調製済みプレートに、バッファーCを含む0.02Mリン酸緩衝液(pH7)で希釈したヒトMetastin標準液またはMetastinと同様にC末端がF−NH2構造をもつペプチド〔Calcitonin Gene Related Peptide (CGRP)、Cholecystokinin-4 (CCK-4)、Prolactin-releasing Peptide31 (PrRP31) (いずれもペプチド研究所より購入)〕を100μlを加え、4℃で24時間反応させた。PBSで洗浄したのち、実施例2で作製したKIS−1Ca−HRP(バッファーCで20,000倍希釈)100μlを加え、4℃で24時間反応させたが、標識体濃度としては30,000倍希釈のものを用いた。PBSで洗浄したのち、実験例13記載の方法によりTMBを用いて固相上の酵素活性を測定した(酵素反応20分)。
結果を図8に示す。これより、極めて高感度にヒトMetastinを検出することがわかった。
すなわち、このサンドイッチ法−EIAは、ヒトMetastinを0.3fmol/wellで検出することが可能であり、他のC末端がRF−NH2構造をもつペプチドPrRP31、NPFF、AF−2は全く検出しなかった(図8)。したがって、固相抗体としてKIS−1Naを用い、標識体としてKIS−1Ca−HRPを用いるサンドイッチ法−EIAは、ヒトMetastinを極めて高感度にかつ極めて選択的に検出することが可能であるとわかった。
【0056】
実験例16
KIS−1CaによるヒトMetastinの生物活性の中和作用
KIS−1CaによるヒトMetastinに対する中和活性を、特開2000−312590号公報記載のhOT7T175発現CHO細胞を用いた細胞内Caイオン濃度上昇活性を指標にFLIPR(Molecular Devices社)を用いて測定を行った。
hOT7T175発現CHO細胞を、1.2×105cells/mlとなるように培地(10%dFBS−DMEM)に懸濁し、FLIPR用96穴プレート(Black plate clear bottom、Coster社)に分注器を用いて各ウェルに200μlずつ植え込み(4×104cells/200μl/ウェル)、5% CO2インキュベーター中にて37℃で一晩培養した後用いた(以後、細胞プレートとする)。FLIPRアッセイバッファー〔ニッスイハンクス2(日水製薬株式会社)9.8g、炭酸水素ナトリウム 0.35g、HEPES 4.77g、6M水酸化ナトリウム溶液でpH7.4に合わせた後、1Lにフィルアップし、フィルター滅菌処理したもの〕20ml、250mM Probenecid 200μl、ウシ胎児血清(FBS)210μlを混合した。また、Fluo 3-AM(同人化学研究所) 2バイアル(50μg)を、ジメチルスルフォキサイド 40μl、20% Pluronic acid(Molecular Probes社)40μlに溶解し、これを上記Hanks'/HBSS−Probenecid−FBS に加え、混和後、8連ピペットを用いて培養液を除いた細胞プレートに、各ウェル100μlずつ分注し、5% CO2インキュベーター中で37℃、1時間インキュベートした(色素ローディング)。KIS−1Caおよびコントロール抗体としてKIS−1Caと同じIgGサブクラス構造(IgG1、κ)である抗PrRPモノクローナル抗体(P2L−1Ta)(H. Matsumoto et al.; Biochem. Biophys. Res. Commun., 257巻, 264-268頁 (1998年))を、2.5mM プロベネシド(Probenecid)と 0.2% BSAを含むHanks'/HBSS 120μlにて希釈し、ヒトMetastin(1x10-8M)と37℃で1時間インキュベーション後、各フラクション5μlを、FLIPR用96穴プレート(V-Bottomプレート、Coster社)へ移した(以後、サンプルプレートとする)。細胞プレートの色素ローディング終了後、Hanks'/HBSSに2.5mM Probenecidを加えた洗浄バッファーで、プレートウォッシャー(Molecular Devices社)を用いて細胞プレートを4回洗浄し、洗浄後100μlの洗浄バッファーを残した。この細胞プレートとサンプルプレートをFLIPRにセットし、測定を行った(FLIPRにより、サンプルプレートから50μlのサンプルが細胞プレートへと移される)。
結果を図9に示す。これより、KIS−1Caは、ヒトMetastinの活性を2x10-8Mで70%、2x10-7Mで100%抑制したことがわかる。一方、P2L−1Taは、ヒトMetastinの活性を2x10-6Mで14%程度の抑制がみられたのみであった。以上のことから、KIS−1Caは、ヒトMetastinの細胞内[Ca2+]上昇活性を中和することが明らかとなった。
【0057】
実施例3
血漿中のヒトMetastinの定量
ヒト血漿を、同量のバッファーCで2倍希釈し、上記実験例15のサンドイッチ−EIAによりヒトMetastinを定量した。
結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
実施例4
ヒト血漿中のヒトMetastinの逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)による検出
実施例3に記載の、ヒト血漿中に含まれるヒトMetastin免疫活性を同定するため、ヒト血漿5mlにアセトニトリルを15ml添加して混和後、遠心分離(15,000rpm,5分)を行い、タンパク質の除去を行った。上清を凍結乾燥後、この画分を濃縮後ODS−80TMを用いる逆相HPLCによって分画した。カラム条件:
カラム:ODS−80TM (4.6 x 250 mm)
溶離液:A液(0.05%トリフルオロ酢酸含有 5%アセトニトリル)
B液(0.05%トリフルオロ酢酸含有 60%アセトニトリル)
溶出方法:アセトニトリル濃度を最初の5分間に5%から30%まで上昇させ、次に30分間かけて30−40%に直線的に上昇させた。
流速:1.0 ml/分
分画:0.5ml/tube
溶出画分を凍結乾燥したのち、250μlのバッファーCに溶解させ、実験例15記載のサンドイッチ法−EIAに供した。
結果を図10に示す。血漿中のヒトMetastinの免疫活性はほとんどヒトMetastinの溶出位置に検出された(回収率102%)ことから、該サンドイッチ法−EIAが、ヒトMetastinを検出していることが確認された。
これより、この測定系は、血漿中のヒトMetastinの変動を研究する際の重要な手段となりうることがわかる。
【0060】
実施例5
妊婦血漿中のヒトMetastinの定量
各週産期毎に得られた妊婦血漿を、同量のバッファーCで2倍希釈し、上記実験例15のサンドイッチ−EIAによりヒトMetastinを定量した。妊婦血漿は、DCP社より購入したものであり、インフォームドコンセントの取られたものである。
結果を表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
表4から、血中ヒトMetastin濃度は、妊娠とともに上昇し、出産後正常レベルに戻ると考えられる。女性非妊時(6.00±2.77 fmol/ml)と比較すると、妊娠初期(4−10週)で約20倍に上昇し、21から30週で約2000倍上昇した。これらの結果から、ヒトMetastinは、胎盤で産生され、血中ヒトMetastin濃度は妊娠の指標として応用でき、本発明のモノクローナル抗体は、臨床診断薬として有用である。
【0063】
実施例6
臍帯動脈および臍帯静脈血漿中のヒトMetastinの定量
出産時に得られた臍帯動脈および臍帯静脈血漿を、同量のバッファーCで2倍希釈し、上記実験例15のサンドイッチ−EIAによりヒトMetastinを定量した。妊婦血漿は、DCP社より購入したものであり、インフォームドコンセントの取られたものである。
結果を表5に示す。
【0064】
【表5】
これより、臍帯血のような特殊な血液中のMetastin濃度の測定も可能であり臍帯血中にもMetastinが存在していることが明らかとなった。従って、本発明の抗体は、胎児または新生児の異常の診断にも使用できると考えられる。
表5より、臍帯動脈と臍帯静脈間で血中Metastin濃度の差は認められず、胎児がMetastinを産生している可能性は低いと考えられる。
【0065】
実施例7
KIS−1Caを用いたヒト胎盤のMetastin免疫組織染色
ヒト胎盤スライド(DAKO社より購入)のパラフィン切片を脱パラフィン操作を行った。具体的には、スライドを、キシレン中に5分間、2回浸した後、100%エタノール中に5分間、2回浸した。その後、90%エタノール、80%エタノールおよび70%エタノールの順に5分間ずつ浸した後、PBS中に5分間、2回浸した。その後スライドを1 mM EDTA緩衝液(pH8.0)中で95℃、30分間オートクレーブにて熱処理を行い、0.3% TritonX100を含むPBS(PBT)にて5分間2回洗浄し、1.5%ウマ血清を含むPBT(1%正常ウマ血清および0.4% Triton X-100 を含むPBS)にて60μg/mlに希釈したKIS-1Caをスライドに添加した。4℃で16時間以上反応させた後、PBTにて3回スライドを洗浄した。スライドにビオチン標識化抗マウスIgG抗体を添加し、室温で30分間反応後、PBTにて2回洗浄後、アビジン−ビオチン化ペルオキシダーゼ溶液を添加し、室温で30分間反応させた(ベクタステイン(mouse IgG)ABC kit,フナコシ)。PBTにて4回スライドを洗浄後、ジアミノベンチジン (3,3-diaminobenzidine-tetrachloride)基質キット(フナコシ)でペルオキシダーゼを発色させ、2−10分後に反応を停止した。胎盤の合胞体性栄養膜細胞に免疫陽性反応が検出され、KIS-1Caが、Metastinの免疫組織染色に使用可能であることが明らかとなった。
【0066】
【発明の効果】
ヒトMetastinは、オーファンレセプターhOT7T175の内因性のリガンドとして胎盤より単離されたペプチドであり、遊走阻害活性や癌転移抑制活性を示す。その生理機能についてはさらなる研究が必要である。本発明の抗体は、極めて高いヒトMetastinまたはその誘導体への結合能を有し、かつヒトMetastinまたはその誘導体の細胞内[Ca2+]上昇活性を中和することができ、ヒトMetastinまたはその誘導体の作用を抑制することにより制癌作用などが期待できる。また、ヒトMetastinまたはその誘導体を発現している癌を見出し、本発明の抗体を用いたミサイル療法による抗癌治療も可能である。ヒトMetastinのC端部を認識するモノクローナル抗体とヒトMetastinのN端部を認識するモノクローナル抗体とを用いるサンドイッチ法による免疫学的測定法により、ヒトMetastinまたはその誘導体を感度よく特異的に定量することができるため、ヒトMetastinまたはその誘導体の生理機能および病態との解明に有用である。さらに、血液中のヒトMetastinまたはその誘導体の濃度を測定することにより、例えば、癌(例、皮膚癌、乳癌、大腸癌、結腸癌、前立腺癌、甲状腺癌、肺癌、子宮頚部癌など)、妊娠中毒症、胎盤発育不全、切迫流産、子宮内膜症、不妊症、多嚢胞性卵巣症候群など、または妊娠などの診断に応用も可能である。また、本発明の抗体は、ヒトMetastinまたはその誘導体が関与する疾患〔例、癌(例、皮膚癌、乳癌、大腸癌、結腸癌、前立腺癌、甲状腺癌、肺癌、子宮頚部癌など)、妊娠中毒症、胎盤発育不全、切迫流産、子宮内膜症、不妊症、多嚢胞性卵巣症候群など〕の予防・治療剤として有用であり、さらに早産防止、陣痛緩和にも有用である。また、本発明の抗体は、Metastinの免疫組織染色にも使用可能である。
【0067】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、[Cys- NH2 13]ヒトMetastin(1-13)―KLHを免疫したマウスの抗体価をHRP標識化[Cys- NH2 13]ヒトMetastin(1-13)を用いて調べた結果を示す。図中、(-◇-)は、マウスNo.1(1a)、(−□−)は、マウスNo.2(2a)、(−△−)は、マウスNo.3(3a)、(−○−)は、マウスNo.4(4a)、(−◆−)は、マウスNo.5(5a)、(−■−)は、マウスNo.6(6a)、(−▲−)は、マウスNo.7(7a)、(−●−)は、マウスNo.8(8a)を表す。
【図2】図2は、[Cys38]ヒトMetastin(38-54)―KLHを免疫したマウスの抗体価をHRP標識化 [Cys38]ヒトMetastin(38-54)を用いて調べた結果を示す。図中、(-◇-)は、マウスNo.1(1a)、(−□−)は、マウスNo.2(2a)、(−△−)は、マウスNo.3(3a)、(−○−)は、マウスNo.4(4a)、(−◆−)は、マウスNo.5(5a)、(−■−)は、マウスNo.6(6a)、(−▲−)は、マウスNo.7(7a)、(−●−)は、マウスNo.8(8a)を表す。
【図3】図3は、[Cys- NH2 13]ヒトMetastin(1-13)−KLHを免疫したマウスを用いた場合の細胞融合後のハイブリドーマのスクリーニングの典型例を示す。
【図4】図4は、[Cys38]ヒトMetastin(38-54)−KLHを免疫したマウスを用いた場合の細胞融合後のハイブリドーマのスクリーニングの典型例を示す。
【図5】図5は、[Cys- NH2 13]ヒトMetastin(1-13)−KLHを免疫原として作製したモノクローナル抗体KIS−1Na(−●−)およびKIS−2Na(−▲−)のヒトMetastinに対する反応性をHRP標識化[Cys- NH2 13]ヒトMetastin(1-13)を用いる競合法−EIAで調べた結果を示す。
【図6】図6は、[Cys38]ヒトMetastin(38-54)−KLHを免疫原として作製したモノクローナル抗体KIS−1CaのヒトMetastinに対する反応性をHRP標識化[Cys38]ヒトMetastin(38-54)を用いる競合法−EIAで調べた結果を示す。
【図7】図7は、[Cys38]ヒトMetastin(38-54)−KLHを免疫原として作製したモノクローナル抗体KIS−1CaのヒトMetastin(−●−)、ヒトMetastin(1-54)COOH(−○−)、ヒトMetastin(40-54)(−▲−)、ヒトMetastin(45-54)(−◆−)、ヒトMetastin(46-54)(−■−)、ヒトMetastin(47-54)(−□−)、およびヒトMetastin(48-54)(−△−)に対する反応性をHRP標識化[Cys38]ヒトMetastin(38-54)を用いる競合法−EIAで調べた結果を示す。
【図8】図8は、酵素標識抗体としてKIS−1Ca−HRPを用い、固相用抗体としてKIS−1Naを用いたサンドイッチ法−EIAのヒトMetastin(−●−)の標準曲線を示す。また、他のペプチドCGRP(−■−)、CCK−4(−▲−)、NPFF(−◆−)、PrRP31(−○−)、およびAF−2(−□−)との反応性を示す。
【図9】図9は、[Cys39]ヒトMetastin(39-54)−KLHを免疫原として作製したモノクローナル抗体KIS−1CaのhOT7T175発現CHO細胞を用いた細胞内Caイオン濃度上昇活性をに対する中和作用を示す。a)は、KIS−1CaまたはP2L−1TをヒトMetastin(20 nM)と1:1、b)は、KIS−1CaまたはP2L−1TをヒトMetastinと1:10、c)は、KIS−1CaまたはP2L−1TをヒトMetastinと1:100、でそれぞれ反応後の細胞内Caイオン濃度上昇活性を示す。図中、(−◇−)は、P2L−1T(1)、(−□−)は、P2L−1T(2)、(−○−)は、P2L−1T(3)、(−◆−)は、KIS−1C(1)、(−■−)は、KIS−1C(2)、(−●−)は、KIS−1C(3)を表す。
【図10】図10は、ヒト血漿中のヒトMetastin免疫活性の逆相−HPLCによる溶出画分の免疫活性を、酵素標識抗体としてKIS−1Ca−HRPを用い、固相用抗体としてKIS−1Naを用いたサンドイッチ法−EIAによって定量した結果を示す。破線(----)は、アセトニトリルの濃度勾配を示す。
Claims (23)
- 配列番号:1の第1番目〜第12番目で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、または配列番号:1の第1番目〜第13番目で表されるポリペプチドであって第13番目のアミノ酸がCys-NH2に置換されているポリペプチドを特異的に認識する抗体を有効成分とする妊娠診断薬。
- 前記抗体が配列番号:1の第45番目〜第54番目、第46番目〜第54番目、第47番目〜第54番目、第48番目〜第54番目、第49番目〜第54番目または第50番目〜第54番目で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、または配列番号:1のアミノ酸配列の第38番目〜第54番目のアミノ酸配列であって第38番目のアミノ酸がCysに置換されているアミノ酸配列を有するポリペプチドを認識しない、請求項1記載の妊娠診断薬。
- 前記抗体が標識化された請求項1記載の妊娠診断薬。
- 前記抗体がモノクローナル抗体である請求項1記載の妊娠診断薬。
- KIS−1N(FERM BP−7429)で標示されるハイブリドーマ細胞から産生され得るKIS−1Naで標示されるモノクローナル抗体。
- 配列番号:1の第45番目〜第54番目、第46番目〜第54番目、第47番目〜第54番目または第48番目〜第54番目で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、または配列番号:1のアミノ酸配列の第38番目〜第54番目のアミノ酸配列であって第38番目のアミノ酸がCysに置換されているアミノ酸配列を有するポリペプチドを特異的に認識する抗体を有効成分とする妊娠診断薬。
- 前記抗体が配列番号:1の第1番目〜第3番目、第1番目〜第4番目、第1番目〜第5番目、第1番目〜第6番目、第1番目〜第7番目、第1番目〜第8番目または第1番目〜第12番目で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは配列番号:1の第1番目〜第13番目で表されるポリペプチドであって第13番目のアミノ酸がCys-NH2に置換されているポリペプチドを認識しない請求項6記載の妊娠診断薬。
- 前記抗体が配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8または配列番号:9で表されるアミノ酸配列を有するペプチドに対して中和活性を有する請求項6記載の妊娠診断薬。
- 前記抗体が標識化された請求項8記載の妊娠診断薬。
- 前記抗体がモノクローナル抗体である請求項6記載の妊娠診断薬。
- KIS−1C(FERM BP−7430)で標示されるハイブリドーマ細胞から産生され得るKIS−1Caで標示されるモノクローナル抗体。
- 請求項11記載の抗体を含有してなる医薬。
- 請求項5または/および請求項11記載の抗体を含有してなる妊娠診断薬。
- 請求項5記載の抗体を用いることを特徴とする配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの定量法。
- さらに請求項11記載の抗体を用いることを特徴とする請求項14記載の定量法。
- 請求項5記載の抗体を用いて、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの血中における濃度を生体外で測定する工程を包含する、妊娠の検査方法。
- さらに請求項11記載の抗体を用いることを特徴とする請求項16記載の検査方法。
- 請求項11記載の抗体を用いることを特徴とする配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの定量法。
- 請求項11記載の抗体を用いて、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの血中における濃度を生体外で測定する工程を包含する、妊娠の検査方法。
- 請求項5または請求項11記載の抗体と、被検液および標識化された配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドとを競合的に反応させ、上記抗体に結合した上記標識化されたポリペプチドの割合を測定することを特徴とする、被検液中の配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの定量法。
- (1)担体上に不溶化した請求項5記載の抗体、標識化された請求項11記載の抗体および被検液を反応させた後、標識剤の活性を測定する、または、(2)担体上に不溶化した請求項11記載の抗体、標識化された請求項5記載の抗体および被検液を反応させた後、標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中の配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの定量法。
- KIS−1N(FERM BP−7429)で標示されるハイブリドーマ細胞。
- KIS−1C(FERM BP−7430)で標示されるハイブリドーマ細胞。
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