JP2005088300A - 平版印刷版用支持体および平版印刷版原版 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】原子間力顕微鏡を用いて、表面の50μm×50μmおよび5μm×5μmをそれぞれ512×512点測定して求められる3次元データより得られる表面積比および急峻度が、下記条件(i)〜(iii)を満足する平版印刷版用支持体、および、該平版印刷版用支持体上に画像記録層を設けた平版印刷版原版。
(i) 表面積比ΔS50が60〜90%
(ii) 急峻度a4550(0.2-2) が10〜50%
(iii) 表面積比ΔS5(0.02-0.2) が20〜80%
【選択図】なし
Description
詳しくは、本発明は、耐汚れ性に優れ、特に、湿し水の量を絞ったときに非画像部の汚れ(地汚れ)が発生しにくく、画像部における画像記録層と支持体との密着が強固であり耐刷性に優れ、かつ、クリーナで拭かれても耐刷性が劣化しない性質(クリーナ耐刷性)に優れる平版印刷版とすることができる平版印刷版用支持体および平版印刷版原版に関する。
また、本発明は、上述した特性に加えて、局所的に点状の残膜(ポツ状残膜)が発生しにくく、特に、レーザ直描型の画像記録層を設けた場合に、ポツ状残膜の発生防止効果に優れる平版印刷版とすることができる平版印刷版用支持体および平版印刷版原版に関する。
支持体の親水性が低すぎると、印刷時に非画像部にインキが付着するようになり、ブランケット胴の汚れ、ひいてはいわゆる地汚れが発生する。また、支持体の保水性が低すぎると、印刷時に湿し水を多くしないとシャドー部のつまりが発生する。よって、いわゆる水幅が狭くなる。
例えば、中波と小波の開口径を規定した大波、中波および小波を有する3重構造(特許文献1参照。)、大小の2重構造において小波の径を規定する構造(特許文献2および3参照。)、大小の2重の凹部(ピット)に加えて更に微小な突起を付与する技術(特許文献4参照。)、開口径を規定した2重構造(特許文献5参照。)、表面の滑らかさを示す因子a30を規定した2重構造(特許文献6参照。)、複数の電気化学的粗面化処理(以下「電解粗面化処理」ともいう。)に際して重畳されるピット径の比を規定した構造(特許文献7参照。)が提案されている。
しかしながら、親水性および保水性が優れていて耐汚れ性に優れ、画像記録層との密着性が優れていて耐刷性に優れ、かつ、クリーナ耐刷性に優れるという平版印刷版用支持体は、実現されていなかった。
(i) 表面積比ΔS50が60〜90%
(ii) 急峻度a4550(0.2-2) が10〜50%
(iii) 表面積比ΔS5(0.02-0.2) が20〜80%
ここで、表面積比ΔS50は、原子間力顕微鏡を用いて、表面の50μm×50μmを512×512点測定して得られる3次元データから近似三点法により求められる実面積Sx 50と、幾何学的測定面積S0 50 とから、下記式(1)により求められる表面積比であり、
ΔS50=(Sx 50−S0 50 )/S0 50 ×100(%) (1)
急峻度a4550(0.2-2) は、原子間力顕微鏡を用いて、表面の50μm×50μmを512×512点測定して得られる3次元データから波長0.2μm以上2μm以下の成分を抽出して得られるデータにおける傾斜度45゜以上の部分の面積率である急峻度であり、
表面積比ΔS5(0.02-0.2) は、原子間力顕微鏡を用いて、表面の5μm×5μmを512×512点測定して得られる3次元データから波長0.02μm以上0.2μm以下の成分を抽出して得られるデータから近似三点法により求められる実面積Sx 5(0.02-0.2) と、幾何学的測定面積S0 5とから、下記式(2)により求められる表面積比である。
ΔS5(0.02-0.2) =(Sx 5(0.02-0.2) −S0 5)/S0 5×100(%) (2)
また、本発明の平版印刷版用支持体の表面に存在する局所的深部の個数を特定範囲にすると、上記特性に加えて、ポツ状残膜の発生を充分に抑制することができる。
(i) 表面積比ΔS50が60〜90%
(ii) 急峻度a4550(0.2-2) が10〜50%
(iii) 表面積比ΔS5(0.02-0.2) が20〜80%
ΔS50=(Sx 50−S0 50 )/S0 50 ×100(%) (1)
ΔS5(0.02-0.2) =(Sx 5(0.02-0.2) −S0 5)/S0 5×100(%) (2)
第一に、機械的粗面化処理を含む粗面化処理を施す場合においては、機械的粗面化処理に用いられる研磨剤の粒子の稜部分がアルミニウム板の表面に深く突き刺さって凹部が形成されること。
第二に、電解粗面化処理を含む粗面化処理を施す場合においては、電解粗面化処理時に電流が特定の箇所に集中してしまうこと。
即ち、第一の原因である機械的粗面化処理に用いられる研磨剤の粒子が突き刺さることに対しては、下記(i)〜(v)の手段を見出した。
(i)粒子径の小さい研磨剤を用いる。
例えば、沈降分離を行って、粒子径の大きいものを除去し、小さいもののみを用いたり、再粉砕により研磨剤の粒子同士を接触させて磨耗させたりすることにより、研磨剤の粒子径を小さくすることができる。
(ii)尖りが少ない粒子の研磨剤を用いる。
機械的粗面化処理に通常用いられるパミストン(以下「パミス」ともいう。)は、火山灰を粉砕して得られるものであり、粒子は割れたガラスのような板片状で稜部分が尖っている。これに対し、ケイ砂は12面体や24面体に近い形状であり、尖りが少ない。
例えば、毛径の細いブラシを用いたり、柔らかい材質のブラシを用いたりすることにより、ブラシ毛を柔らかくすることができる。
(iv)機械的粗面化処理に用いられるブラシの回転数を低くする。
スラリー液中に含有される研磨剤粒子に適度に「逃げ」の時間を与えることにより、突き刺さりが抑制される。
(v)機械的粗面化処理に用いられるブラシの押し圧(負荷)を低くする。
(vi)電解粗面化処理において硝酸を主体とする電解液を用いる場合には、電解が均一に起こりやすくなるように、アルミニウム板の合金成分中のCu量を低くする。
電解粗面化処理においては、通常、酸性の電解液中で交流電流を通電することで、アルミニウムの溶解反応(ピッティング反応)と、溶解して生じた成分が溶解反応部に再付着するスマット付着反応とが、交流のサイクルに従って交互に起こる。ここで、硝酸電解液を用いる場合には、アルミニウム板に含有される合金成分の種類や量の影響を非常に受けやすく、特にCuの影響が大きい。これはCuの存在により、電解粗面化処理時の表面抵抗が高くなるためと考えられる。そのため、合金成分中のCu量を0.040質量%以下とすることにより、電解粗面化処理時の表面抵抗が小さくなるため、電流集中が抑制され、粗大なピットを形成することなく、均一なピットを全面に形成させることができる。
プレ電解では、ピット形成の起点を均一に形成させることができる。これにより、その後の電解粗面化処理において、粗大なピットを形成することなく、均一なピットを全面に形成させることができる。
(viii)電解粗面化処理において塩酸を主体とする電解液を用いる場合には、電解液中に酢酸または硫酸を含有させる。
塩酸電解においても電流集中によって粗大なピットが形成されることがあるが、酢酸または硫酸を含有する塩酸電解液を用いると、粗大なピットを形成することなく、均一なピットを全面に形成させることができる。
本発明においては、ΔS50、a4550(0.2-2) およびΔS5(0.02-0.2) を求めるために、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)により表面形状を測定し、3次元データを求める。
測定は、例えば、以下の条件で行うことができる。即ち、平版印刷版用支持体を1cm角の大きさに切り取って、ピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際、試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位でとらえる。ピエゾスキャナーは、XY方向について150μm、Z方向について10μm、走査可能なものを使用する。カンチレバーは共振周波数120〜400kHz、バネ定数12〜90N/mのもの(例えば、SI−DF20およびSI−DF40、いずれもセイコーインスツルメンツ社製;NCH、NANOSENSORS社製;または、AC−160TS、オリンパス社製)を用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定する。また、求めた3次元データを最小二乗近似することにより試料のわずかな傾きを補正し基準面を求める。
計測の際は、ΔS50およびa4550(0.2-2) については、表面の50μm□を512×512点測定する。XY方向の分解能は0.1μm、Z方向の分解能は0.15nm、スキャン速度は50μm/secとする。
また、ΔS5(0.02-0.2) については、表面の5μm□を512×512点測定する。XY方向の分解能は0.01μm、Z方向の分解能は0.15nm、スキャン速度は5μm/secとする。
ΔS50の算出には、上記(1)で求められた表面の50μm□の測定に基づく3次元データをそのまま用いる。
a4550(0.2-2) の算出には、上記(1)で求められた表面の50μm□の測定に基づく3次元データから波長0.2μm以上2μm以下の成分を抽出したものを用いる。波長0.2μm以上2μm以下の成分の抽出は、上記(1)で求められた3次元データを高速フーリエ変換をして周波数分布を求め、ついで、波長0.2μm未満の成分および波長2μmを超える成分を除去した後、フーリエ逆変換をすることにより行う。
また、ΔS5(0.02-0.2) の算出には、上記(1)で求められた表面の5μm□の測定に基づく3次元データから波長0.02μm以上0.2μm以下の成分を抽出したものを用いる。波長0.02μm以上0.2μm以下の成分の抽出は、上記(1)で求められた3次元データを高速フーリエ変換をして周波数分布を求め、ついで、波長0.02μm未満の成分および波長0.2μmを超える成分を除去した後、フーリエ逆変換をすることにより行う。
(i)ΔS50
上記(1)で求められた3次元データ(f(x,y))を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成される微小三角形の面積の総和を求め、実面積Sx 50とする。表面積比ΔS50は、得られた実面積Sx 50と幾何学的測定面積S0 50 とから、上記式(1)により求められる。
上記(2)で補正して得られた3次元データ(f(x,y))を用い、各基準点と所定の方向(例えば、右と下)の隣接する2点との3点で形成される微小三角形と基準面とのなす角を各基準点について算出する。微小三角形の傾斜度が45度以上の基準点の個数を、全基準点の個数(全データの個数である512×512点から所定の方向の隣接する2点がない点の個数を減じた個数、即ち、511×511点)で除して、傾斜度45度以上の部分の面積率a4550(0.2-2) を算出する。
上記(2)で補正して得られた3次元データ(f(x,y))を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成される微小三角形の面積の総和を求め、実面積Sx 5(0.02-0.2) とする。表面積比ΔS5(0.02-0.2) は、得られた実面積Sx 5 (0.02-0.2)と幾何学的測定面積S0 5とから、上記式(2)により求められる。
レーザ顕微鏡を用いて表面の400μm□を非接触で分解能0.01μmで走査して3次元データを求め、この3次元データにおいて深さ4μm以上の凹部の数を数える。
本発明の平版印刷版用支持体は、後述するアルミニウム板に表面処理を施すことによって、上述した表面の砂目形状をアルミニウム板の表面に形成させたものである。本発明の平版印刷版用支持体は、アルミニウム板に粗面化処理を施して得られるが、この支持体の製造工程は、特に限定されず、粗面化処理以外の各種の工程を含んでいてもよい。
以下に、上述した表面の砂目形状を形成させるための代表的方法として、
アルミニウム板に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法、
アルミニウム板に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法、
アルミニウム板にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法、
アルミニウム板にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法
が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。これらの方法において、前記電気化学的粗面化処理の後、更に、アルカリエッチング処理および酸によるデスマット処理を施してもよい。
以下、表面処理の各工程について、詳細に説明する。
機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理と比較してより安価に、平均波長5〜100μmの凹凸のある表面を形成することができるため、粗面化処理の手段として有効である。
機械的粗面化処理方法としては、例えば、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、特開平6−135175号公報および特公昭50−40047号公報に記載されているナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法を用いることができる。
また、凹凸面をアルミニウム板に圧接する転写方法を用いることもできる。即ち、特開昭55−74898号、特開昭60−36195号、特開昭60−36196号、特開昭60−203496号、特開昭61−162351号、特公平4−30358号の各公報に記載されている方法のほか、転写を数回行うことを特徴とする特開平6−55871号公報、表面が弾性であることを特徴とした特願平4−204235号明細書(特開平6−024168号公報)に記載されている方法も適用可能である。
後述するように、ブラシグレイン法では、特にナイロンブラシを複数用いるのが好ましく、研磨剤としては、後述の種々のものを用いることができるが、パミストン、ケイ砂、水酸化アルミニウム等を用いるのが好ましい。また、転写方法では、ブラシを回転させる駆動モータの回転数、負荷等を適宜調整するのが好ましい。
また、表面の硬度を上げるために、焼き入れ、ハードクロムメッキ等を行ってもよい。
そのほかにも、機械的粗面化処理としては、特開昭61−162351号公報、特開昭63−104889号公報等に記載されている方法を用いることもできる。
本発明においては、生産性等を考慮して上述したそれぞれの方法を併用することもできる。これらの機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理の前に行うのが好ましい。
ブラシグレイン法は、一般に、円柱状の胴の表面に、ナイロン(商標名)、プロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂からなる合成樹脂毛等のブラシ毛を多数植設したローラ状ブラシを用い、回転するローラ状ブラシに研磨剤を含有するスラリー液を噴きかけながら、上記アルミニウム板の表面の一方または両方を擦ることにより行う。上記ローラ状ブラシおよびスラリー液の代わりに、表面に研磨層を設けたローラである研磨ローラを用いることもできる。
ローラ状ブラシを用いる場合、曲げ弾性率が好ましくは10,000〜40,000kg/cm2 、より好ましくは15,000〜35,000kg/cm2 であり、かつ、毛腰の強さが好ましくは500g以下、より好ましくは400g以下であるブラシ毛を用いる。ブラシ毛の直径は、一般的には、0.2〜0.9mmである。ブラシ毛の長さは、ローラ状ブラシの外径および胴の直径に応じて適宜決定することができるが、一般的には、10〜100mmである。
本発明では、ナイロンブラシは複数本用いるのが好ましく、具体的には、3本以上がより好ましく、4本以上が特に好ましい。ブラシの本数を調整することにより、アルミニウム板表面に形成される凹部の波長成分を調整できる。
また、ブラシを回転させる駆動モータの負荷は、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して1kWプラス以上が好ましく、2kWプラス以上がより好ましく、8kWプラス以上が特に好ましい。該負荷を調整することにより、アルミニウム板表面に形成される凹部の深さを調製することができる。ブラシの回転数は、100回転以上が好ましく、200回転以上が特に好ましい。
研磨剤の平均粒径は、粗面化効率に優れ、かつ、砂目立てピッチを狭くすることができる点で、3〜50μmであるのが好ましく、6〜45μmであるのがより好ましい。研磨剤の平均粒径を調整することにより、アルミニウム板表面に形成される凹部の深さを調整することができる。
研磨剤は、例えば、水中に懸濁させて、スラリー液として用いる。スラリー液には、研磨剤のほかに、増粘剤、分散剤(例えば、界面活性剤)、防腐剤等を含有させることができる。スラリー液の比重は0.5〜2であるのが好ましい。
機械的粗面化処理に適した装置としては、例えば、特公昭50−40047号公報に記載された装置を挙げることができる。
一般的に、転写法は、ショットブラスト処理や刻印やレーザー加工またはパターンエッチング等でエンボス加工した圧延ロール(転写ロール)にアルミニウム板を通して圧延ロールの凹凸を転写し、あるいは、紙またはプラスチックシートに研磨材やガラスビーズ等を塗布したものをアルミニウム板と重ね合わせて圧延して転写し、アルミニウム板を粗面化する方法である。
該転写法は、上記した方法以外に、以下の方法等を用いることができる。
転写ローラの圧下率を低く設定することにより転写ローラの寿命やアルミニウム板の延伸の問題を回避することができる方法 (特開平7−205565号公報);転写を複数回、好ましくは4回以上繰り返し行うことにより転写ロールの円筒度等の加工精度にこだわる必要もなく、アルミニウム板の伸びを少なくし、印刷版用アルミニウム支持体として充分均一な粗面が得られる方法(特開平6−55871号公報);化学的に粗面化を行った、平版印刷版用アルミニウムより硬度の高い金属面に、アルミニウム板を1〜6回プレスして粗面化することにより、ランダムな配列のしかも均一な分布の凹凸を安価につくることができる方法(特開平6−171258号公報);アルミニウム板の表面に方向性のない多数のプレス凹部を形成させる方法(特開平6−171256号公報、特開平6−171259号公報);金属面上に塗布乾燥したフォトレジストまたはプラスチック樹脂を赤外光、レーザー等で露光、照射してレジストパターンをつくり、その後化学的なエッチング等を行い金属面上に粗面を作製し転写することにより、充分均一な凹凸を転写させる方法(特開平6−171262号公報)等を用いることができる。
したがって、アルミニウム板に、所望の該表面粗さを形成させるには、該表面粗さと略同一の表面粗さを有する転写ロール等を用いればよい。
転写ローラは、例えばSUS304やSUS316、SCM鋼、SUJ鋼、SS41等からなるローラ芯金の表面に、溶射やレーザ、あるいは機械加工等により微細な凸部を付与して構成される。
溶射による方法では、粒径10〜60μm程度のセラミックス粒子やセラミックス焼結体を、プラズマ溶射やDJガンによる溶射、ワイヤによる溶射によりローラ表面に0.1〜0.6mm程度の厚さにコーティングし、表面を研磨して得られる。セラミックスの種類としては、酸化クロムを主成分とする酸化物セラミックスや窒化ケイ素を主成分とする窒化物セラミックスが強度の点から好ましい。また、溶射により形成されたローラ表面は粗いため、研磨処理される。
一方、レーザにより凸部を形成する方法は、ローラ表面のレーザ照射部分が溶融して盛り上がることを利用するもので、レーザによりローラ表面に縦溝と横溝とを直交またはある角度をもって格子状に形成することで、両溝で切り取られた互いに独立した凸部を形成することができる。使用されるレーザは、CO2 レーザやYAGレーザ、エキシマレーザ等を挙げることができる。また、レーザの種類により形成される溝幅が異なる。従って、所望する凸部の大きさに応じてレーザの種類を選択する必要があり、より微細な凹凸形状を持つ転写ローラを得るにはエキシマレーザ等の波長の短いレーザを使用する必要がある。また、ダイヤモンド砥石やセラミック砥石、あるいはこれらを含んだ研磨紙により仕上げられる。
アルミニウム板あるいはアルミニウム合金板は、前記転写ローラと鏡面仕上げされた金属ローラ(バックアップロール)との間に挿通されると共に、線圧下力3〜30kg/mm程度の下で転写ローラの凸部からなる凹凸パターンが転写される。なお、詳細は、特開平7−205565号公報に記載されている。
該転写法における、組成物面化処理の条件は、所望の表面粗さにより、適宜調整することができる。
電気化学的粗面化処理には、通常の交流を用いた電気化学的粗面化処理に用いられる電解液を用いることができる。中でも、塩酸または硝酸を主体とする電解液を用いるのが、表面形状を表す上記各ファクターがそれぞれ特定の条件を満足するようにするのに好適である。
本発明における電解粗面化処理としては、陰極電解処理の前後に酸性溶液中での交番波形電流による第1および第2の電解処理を行うことが好ましい。陰極電解処理により、アルミニウム板の表面で水素ガスが発生してスマットが生成することにより表面状態が均一化され、その後の交番波形電流による電解処理の際に均一な電解粗面化が可能となる。
この電解粗面化処理は、例えば、特公昭48−28123号公報および英国特許第896,563号明細書に記載されている電気化学的グレイン法(電解グレイン法)に従うことができる。この電解グレイン法は、正弦波形の交流電流を用いるものであるが、特開昭52−58602号公報に記載されているような特殊な波形を用いて行ってもよい。また、特開平3−79799号公報に記載されている波形を用いることもできる。また、特開昭55−158298号、特開昭56−28898号、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭54−85802号、特開昭60−190392号、特開昭58−120531号、特開昭63−176187号、特開平1−5889号、特開平1−280590号、特開平1−118489号、特開平1−148592号、特開平1−178496号、特開平1−188315号、特開平1−154797号、特開平2−235794号、特開平3−260100号、特開平3−253600号、特開平4−72079号、特開平4−72098号、特開平3−267400号、特開平1−141094の各公報に記載されている方法も適用できる。また、前述のほかに、電解コンデンサーの製造方法として提案されている特殊な周波数の交番電流を用いて電解することも可能である。例えば、米国特許第4,276,129号明細書および同第4,676,879号明細書に記載されている。
また、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭53−12738号、特開昭53−12739号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32833号、特開昭53−32824号、特開昭53−32825号、特開昭54−85802号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特公昭48−28123号、特公昭51−7081号、特開昭52−133838号、特開昭52−133840号、特開昭52−133844号、特開昭52−133845号、特開昭53−149135号、特開昭54−146234号の各公報等に記載されているもの等も用いることができる。
温度は10〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。
台形波交流の周波数は0.1〜120Hzのものを用いることが可能であるが、50〜70Hzが設備上好ましい。50Hzよりも低いと、主極のカーボン電極が溶解しやすくなり、また、70Hzよりも高いと、電源回路上のインダクタンス成分の影響を受けやすくなり、電源コストが高くなる。
硝酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理により、平均開口径0.5〜5μmのピットを形成することができる。ただし、電気量を比較的多くしたときは、電解反応が集中し、5μmを超えるハニカムピットも生成する。
このような砂目を得るためには、電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜1000C/dm2 であるのが好ましく、50〜300C/dm2 であるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜100A/dm2 であるのが好ましい。
塩酸はそれ自身のアルミニウム溶解力が強いため、わずかな電解を加えるだけで表面に微細な凹凸を形成させることが可能である。この微細な凹凸は、平均開口径が0.01〜0.2μmであり、アルミニウム板の表面の全面に均一に生成する。このような砂目を得るためには電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜100C/dm2 であるのが好ましく、20〜70C/dm2 であるのがより好ましい。この最の電流密度は、10〜50A/dm2 であるのが好ましい。
アルカリエッチング処理は、上記アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させることにより、表層を溶解する処理である。
電解粗面化処理で形成されるピットは電解液の種類によって異なるためにその最適なエッチング量も異なるが、電解粗面化処理後に行うアルカリエッチング処理のエッチング量は、0.01〜5g/m2 であるのが好ましい。硝酸電解液を用いた場合、塩酸電解液を用いた場合よりもエッチング量は多めに設定する必要がある。
電解粗面化処理が複数回行われる場合には、それぞれの処理後に、必要に応じてアルカリエッチング処理を行うことができる。
電解粗面化処理またはアルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(デスマット処理)が行われる。用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸が挙げられる。
上記デスマット処理は、例えば、上記アルミニウム板を塩酸、硝酸、硫酸等の濃度0.5〜30質量%の酸性溶液(アルミニウムイオン0.01〜5質量%を含有する。)に接触させることにより行う。アルミニウム板を酸性溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、酸性溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
デスマット処理においては、酸性溶液として、上述した電解粗面化処理において排出される硝酸を主体とする水溶液もしくは塩酸を主体とする水溶液の廃液、または、後述する陽極酸化処理において排出される硫酸を主体とする水溶液の廃液を用いることができる。
デスマット処理の液温は、25〜90℃であるのが好ましい。また、処理時間は、1〜180秒であるのが好ましい。デスマット処理に用いられる酸性溶液には、アルミニウムおよびアルミニウム合金成分が溶け込んでいてもよい。
以上のように処理されたアルミニウム板には、更に、陽極酸化処理が施されるのが好ましい。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。この場合、例えば、硫酸濃度50〜300g/Lで、アルミニウム濃度5質量%以下の溶液中で、アルミニウム板を陽極として通電して陽極酸化皮膜を形成させることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アルミニウム板に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dm2 であるのが好ましく、5〜40A/dm2 であるのがより好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板の一部に電流が集中していわゆる「焼け」が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/m2 の低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dm2 またはそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板に、電解液を介して給電する液給電方式により行うのが好ましい。
このような条件で陽極酸化処理を行うことによりポア(マイクロポア)と呼ばれる孔を多数有する多孔質皮膜が得られるが、通常、その平均ポア径は5〜50nm程度であり、平均ポア密度は300〜800個/μm2 程度である。
中でも、図4に示す装置が好適に用いられる。図4は、アルミニウム板の表面を陽極酸化処理する装置の一例を示す概略図である。陽極酸化処理装置410において、アルミニウム板416は、図4中矢印で示すように搬送される。電解液418が貯溜された給電槽412にてアルミニウム板416は給電電極420によって(+)に荷電される。そして、アルミニウム板416は、給電槽412においてローラ422によって上方に搬送され、ニップローラ424によって下方に方向変換された後、電解液426が貯溜された電解処理槽414に向けて搬送され、ローラ428によって水平方向に方向転換される。ついで、アルミニウム板416は、電解電極430によって(−)に荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成され、電解処理槽414を出たアルミニウム板416は後工程に搬送される。前記陽極酸化処理装置410において、ローラ422、ニップローラ424およびローラ428によって方向転換手段が構成され、アルミニウム板416は、給電槽412と電解処理槽414との槽間部において、前記ローラ422、424および428により、山型および逆U字型に搬送される。給電電極420と電解電極430とは、直流電源434に接続されている。
本発明においては、必要に応じて陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封じる封孔処理を行ってもよい。封孔処理は、沸騰水処理、熱水処理、蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等の公知の方法に従って行うことができる。例えば、特公昭56−12518号公報、特開平4−4194号公報、特願平4−33952号明細書(特開平5−202496号公報)、特願平4−33951号明細書(特開平5−179482号公報)等に記載されている装置および方法で封孔処理を行ってもよい。
陽極酸化処理後または封孔処理後、親水化処理を行ってもよい。親水化処理としては、例えば、米国特許第2,946,638号明細書に記載されているフッ化ジルコニウム酸カリウム処理、米国特許第3,201,247号明細書に記載されているホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,559号に記載されているアルキルチタネート処理、独国特許第1,091,433号明細書に記載されているポリアクリル酸処理、独国特許第1,134,093号明細書および英国特許第1,230,447号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理、米国特許第3,307,951号明細書に記載されているフィチン酸処理、特開昭58−16893号公報および特開昭58−18291号公報に記載されている親油性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、米国特許第3,860,426号明細書に記載されているように、水溶性金属塩(例えば、酢酸亜鉛)を含む親水性セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)の下塗層を設ける処理、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホ基を有する水溶性重合体を下塗りする処理が挙げられる。
更に、特開昭60−64352号公報に記載されている酸性染料による着色を行うこともできる。
アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を適当量含有してもよい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
このアルカリ金属ケイ酸塩処理により、平版印刷版用支持体の表面のアルカリ現像液に対する耐溶解性向上の効果が得られ、アルミニウム成分の現像液中への溶出が抑制されて、現像液の疲労に起因する現像カスの発生を低減することができる。
この方法に用いられる親水性ビニルポリマーとしては、例えば、ポリビニルスルホン酸、スルホ基を有するp−スチレンスルホン酸等のスルホ基含有ビニル重合性化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の通常のビニル重合性化合物との共重合体が挙げられる。また、この方法に用いられる親水性化合物としては、例えば、−NH2 基、−COOH基およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物が挙げられる。
上述した各処理の工程終了後には水洗を行うのが好ましい。水洗には、純水、井水、水道水等を用いることができる。処理液の次工程への持ち込みを防ぐためにニップ装置を用いてもよい。
本発明の平版印刷版用支持体を得るためには公知のアルミニウム板を用いることができる。本発明に用いられるアルミニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板を用いることもできる。
DC鋳造においては、冷却速度が0.5〜30℃/秒の範囲で凝固する。1℃未満であると粗大な金属間化合物が多数形成されることがある。DC鋳造を行った場合、板厚300〜800mmの鋳塊を製造することができる。その鋳塊を、常法に従い、必要に応じて面削を行い、通常、表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmを切削する。その前後において、必要に応じて、均熱化処理を行う。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。熱処理が1時間より短い場合には、均熱化処理の効果が不十分となることがある。
アルミニウム板の強度は、平版印刷版用支持体として必要な腰の強さを得るため、0.2%耐力が140MPa以上であるのが好ましい。また、バーニング処理を行った場合にもある程度の腰の強さを得るためには、270℃で3〜10分間加熱処理した後の0.2%耐力が80MPa以上であるのが好ましく、100MPa以上であるのがより好ましい。特に、アルミニウム板に腰の強さを求める場合は、MgやMnを添加したアルミニウム材料を採用することができるが、腰を強くすると印刷機の版胴へのフィットしやすさが劣ってくるため、用途に応じて、材質および微量成分の添加量が適宜選択される。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−126820号公報、特開昭62−140894号公報等に記載されている。
アルミニウム板の表面のキズは平版印刷版用支持体に加工した場合に欠陥となる可能性があるため、平版印刷版用支持体とする表面処理工程の前の段階でのキズの発生は可能な限り抑制する必要がある。そのためには安定した形態で運搬時に傷付きにくい荷姿であることが好ましい。
アルミニウムウェブの場合、アルミニウムの荷姿としては、例えば、鉄製パレットにハードボードとフェルトとを敷き、製品両端に段ボールドーナツ板を当て、ポリチュ−ブで全体を包み、コイル内径部に木製ドーナツを挿入し、コイル外周部にフェルトを当て、帯鉄で絞め、その外周部に表示を行う。また、包装材としては、ポリエチレンフィルム、緩衝材としては、ニードルフェルト、ハードボードを用いることができる。この他にもいろいろな形態があるが、安定して、キズも付かず運送等が可能であればこの方法に限るものではない。
本発明により得られる平版印刷版用支持体には、画像記録層を設けて本発明の平版印刷版原版とすることができる。画像記録層には、感光性組成物が用いられる。
本発明に好適に用いられる感光性組成物としては、例えば、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有するサーマルポジ型感光性組成物(以下、この組成物およびこれを用いた画像記録層について、「サーマルポジタイプ」という。)、硬化性化合物と光熱変換物質とを含有するサーマルネガ型感光性組成物(以下、同様に「サーマルネガタイプ」という。)、光重合型感光性組成物(以下、同様に「フォトポリマータイプ」という。)、ジアゾ樹脂または光架橋樹脂を含有するネガ型感光性組成物(以下、同様に「コンベンショナルネガタイプ」という。)、キノンジアジド化合物を含有するポジ型感光性組成物(以下、同様に「コンベンショナルポジタイプ」という。)、特別な現像工程を必要としない感光性組成物(以下、同様に「無処理タイプ」という。)が挙げられる。以下、これらの好適な感光性組成物について説明する。
<感光層>
サーマルポジタイプの感光性組成物は、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する。サーマルポジタイプの画像記録層においては、光熱変換物質が赤外線レーザ等の光のエネルギーを熱に変換し、その熱がアルカリ可溶性高分子化合物のアルカリ溶解性を低下させている相互作用を効率よく解除する。
とりわけ、赤外線レーザ等の光による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性ヒドロキシ基を有する樹脂が好ましく、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−およびm−/p−混合のいずれでもよい)混合−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド共縮合樹脂)等のノボラック樹脂が好適に挙げられる。
更に、特開2001−305722号公報(特に[0023]〜[0042])に記載されている高分子化合物、特開2001−215693号公報に記載されている一般式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物、特開2002−311570号公報(特に[0107])に記載されている高分子化合物も好適に挙げられる。
また、サーマルポジタイプの感光性組成物中には、添加剤として、感度調節剤、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼出し剤、画像着色剤としての染料等の化合物、塗布性および処理安定性を向上させるための界面活性剤を含有させるのが好ましい。これらについては、特開2001−305722号公報の[0056]〜[0060]に記載されているような化合物が好ましい。
上記以外の点でも、特開2001−305722号公報に詳細に記載されている感光性組成物が好ましく用いられる。
2層構造の画像記録層(重層系の画像記録層)としては、支持体に近い側に耐刷性および耐溶剤性に優れる下層(以下「A層」という。)を設け、その上にポジ画像形成性に優れる層(以下「B層」という。)を設けたタイプが好適に挙げられる。このタイプは感度が高く、広い現像ラチチュードを実現することができる。B層は、一般に、光熱変換物質を含有する。光熱変換物質としては、上述した染料が好適に挙げられる。
A層に用いられる樹脂としては、スルホンアミド基、活性イミノ基、フェノール性ヒドロキシ基等を有するモノマーを共重合成分として有するポリマーが耐刷性および耐溶剤性に優れている点で好適に挙げられる。B層に用いられる樹脂としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂が好適に挙げられる。
A層およびB層に用いられる組成物には、上記樹脂のほかに、必要に応じて、種々の添加剤を含有させることができる。具体的には、特開2002−3233769号公報の[0062]〜[0085]に記載されているような種々の添加剤が好適に用いられる。また、上述した特開2001−305722号公報の[0053]〜[0060]に記載されている添加剤も好適に用いられる。
A層およびB層を構成する各成分およびその含有量については、特開平11−218914号公報に記載されているようにするのが好ましい。
サーマルポジタイプの画像記録層と支持体との間には、中間層を設けるのが好ましい。中間層に含有される成分としては、特開2001−305722号公報の[0068]に記載されている種々の有機化合物が好適に挙げられる。
サーマルポジタイプの画像記録層の製造方法および製版方法については、特開2001−305722号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
サーマルネガタイプの感光性組成物は、硬化性化合物と光熱変換物質とを含有する。サーマルネガタイプの画像記録層は、赤外線レーザ等の光で照射された部分が硬化して画像部を形成するネガ型の感光層である。
<重合層>
サーマルネガタイプの画像記録層の一つとして、重合型の画像記録層(重合層)が好適に挙げられる。重合層は、光熱変換物質と、ラジカル発生剤と、硬化性化合物であるラジカル重合性化合物と、バインダーポリマーとを含有する。重合層においては、光熱変換物質が吸収した赤外線を熱に変換し、この熱によりラジカル発生剤が分解してラジカルが発生し、発生したラジカルによりラジカル重合性化合物が連鎖的に重合し、硬化する。
ラジカル発生剤としては、オニウム塩が好適に挙げられる。特に、特開2001−133969号公報の[0030]〜[0033]に記載されているオニウム塩が好ましい。
ラジカル重合性化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物が挙げられる。
バインダーポリマーとしては、線状有機ポリマーが好適に挙げられる。水または弱アルカリ水に対して可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが好適に挙げられる。中でも、アリル基、アクリロイル基等の不飽和基またはベンジル基と、カルボキシ基とを側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度および現像性のバランスに優れている点で好適である。
ラジカル重合性化合物およびバインダーポリマーについては、特開2001−133969号公報の[0036]〜[0060]に詳細に記載されているものを用いることができる。
また、サーマルネガタイプの画像記録層の一つとして、酸架橋型の画像記録層(酸架橋層)も好適に挙げられる。酸架橋層は、光熱変換物質と、熱酸発生剤と、硬化性化合物である酸により架橋する化合物(架橋剤)と、酸の存在下で架橋剤と反応しうるアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する。酸架橋層においては、光熱変換物質が吸収した赤外線を熱に変換し、この熱により熱酸発生剤が分解して酸が発生し、発生した酸により架橋剤とアルカリ可溶性高分子化合物とが反応し、硬化する。
熱酸発生剤としては、例えば、光重合の光開始剤、色素類の光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている酸発生剤等の熱分解化合物が挙げられる。
架橋剤としては、例えば、ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物;N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物;エポキシ化合物が挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、ノボラック樹脂、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーが挙げられる。
光重合型感光性組成物は、付加重合性化合物と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを含有する。
付加重合性化合物としては、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物が好適に挙げられる。エチレン性不飽和結合含有化合物は、末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。具体的には、例えば、モノマー、プレポリマー、これらの混合物等の化学的形態を有する。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。
また、付加重合性化合物としては、ウレタン系付加重合性化合物も好適に挙げられる。
高分子結合剤は、光重合型感光性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、画像記録層をアルカリ現像液に溶解させる必要があるため、アルカリ水に対して可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が用いられる。そのような有機高分子重合体としては、特開2001−22079号公報の[0036]〜[0063]に記載されているものが好適に挙げられる。
更に、特開2001−228608号公報の[0124]〜[0165]に記載されているような中間層または接着層を設けるのも好ましい。
コンベンショナルネガタイプの感光性組成物は、ジアゾ樹脂または光架橋樹脂を含有する。中でも、ジアゾ樹脂とアルカリ可溶性または膨潤性の高分子化合物(結合剤)とを含有する感光性組成物が好適に挙げられる。
ジアゾ樹脂としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩とホルムアルデヒド等の活性カルボニル基含有化合物との縮合物;p−ジアゾフェニルアミン類とホルムアルデヒドとの縮合物とヘキサフルオロリン酸塩またはテトラフルオロホウ酸塩との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂無機塩が挙げられる。特に、特開昭59−78340号公報に記載されている6量体以上を20モル%以上含んでいる高分子量ジアゾ化合物が好ましい。
結合剤としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸またはマレイン酸を必須成分として含む共重合体が挙げられる。具体的には、特開昭50−118802号公報に記載されているような2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のモノマーの多元共重合体、特開昭56−4144号公報に記載されているようなアルキルアクリレート、(メタ)アクリロニトリルおよび不飽和カルボン酸からなる多元共重合体が挙げられる。
コンベンショナルポジタイプの感光性組成物は、キノンジアジド化合物を含有する。中でも、o−キノンジアジド化合物とアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する感光性組成物が好適に挙げられる。
o−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂またはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、米国特許第3,635,709号明細書に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルが挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド共縮合樹脂、ポリヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、特開平7−36184号公報に記載されているカルボキシ基含有ポリマー、特開昭51−34711号公報に記載されているようなフェノール性ヒドロキシ基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号公報に記載されているスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系の樹脂が挙げられる。
無処理タイプの感光性組成物には、熱可塑性微粒子ポリマー型、マイクロカプセル型、スルホン酸発生ポリマー含有型等が挙げられる。これらはいずれも光熱変換物質を含有する感熱型である。光熱変換物質は、上述したサーマルポジタイプに用いられるのと同様の染料が好ましい。
微粒子ポリマーとしては、微粒子同士が熱により溶融合体するものが好ましく、表面が親水性で、湿し水等の親水性成分に分散しうるものがより好ましい。具体的には、Reseach Disclosure No.33303(1992年1月)、特開平9−123387号、同9−131850号、同9−171249号および同9−171250号の各公報、欧州特許出願公開第931,647号明細書等に記載されている熱可塑性微粒子ポリマーが好適に挙げられる。中でも、ポリスチレンおよびポリメタクリル酸メチルが好ましい。親水性表面を有する微粒子ポリマーとしては、例えば、ポリマー自体が親水性であるもの;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の親水性化合物を微粒子ポリマー表面に吸着させて表面を親水性化したものが挙げられる。
微粒子ポリマーは、反応性官能基を有するのが好ましい。
このようにして、本発明により得られる平版印刷版用支持体上に各種の画像記録層を設けて得られる本発明の平版印刷版原版の裏面には、必要に応じて、重ねた場合における画像記録層の傷付きを防止するために、有機高分子化合物からなる被覆層を設けることができる。
本発明により得られる平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版原版は、画像記録層に応じた種々の処理方法により、平版印刷版とされる。
像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプが挙げられる。レーザビームとしては、例えば、ヘリウム−ネオンレーザ(He−Neレーザ)、アルゴンレーザ、クリプトンレーザ、ヘリウム−カドミウムレーザ、KrFエキシマーレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、YAG−SHGレーザが挙げられる。
現像液は、アルカリ現像液であるのが好ましく、有機溶剤を実質的に含有しないアルカリ性の水溶液であるのがより好ましい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液も好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液を用いて現像する方法としては、特開平11−109637号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液を用いることもできる。
1.平版印刷版用支持体の作成
(実施例1〜11および比較例1〜6)
Si:0.08質量%、Fe:0.3質量%、Cu:0.015質量%、Ti:0.020質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理およびろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作製した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延で、厚さ0.24mmに仕上げ、アルミニウム板を得た。このアルミニウム板を幅1030mmにした後、以下に示す表面処理に供した。
アルミニウム板に、以下の(a)〜(k)の各種表面処理を連続的に行い、実施例1〜11および比較例1〜6の平版印刷版用支持体を得た。各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
なお、第1表中、以下の各種表面処理を行った場合は「処理」またはその条件を、行わなかった場合は「未処理」を表記し、すべての実施例、比較例において同じ表面処理を同一条件で行った場合は第1表に示していない。
(a)機械的粗面化処理(ブラシグレイン法)
図1に模式的に示したような装置を使って、研磨剤(パミス、メジアン径25μm)の水懸濁液(比重1.1g/cm3 )を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行った。図1において、1はアルミニウム板、2および4はローラ状ブラシ(本実施例において、束植ブラシ)、3は研磨スラリー液、5、6、7および8は支持ローラである。
ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ400mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは図1には2本しか示されていないが、実際には3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して10kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は、アルミニウム板の搬送方向上流側から順に、250rpm(ブラシ1本目)、200rpm(ブラシ2本目)、200rpm(ブラシ3本目)とした。
アルカリエッチング処理は、カセイソーダ濃度26質量%およびアルミニウムイオン濃度5質量%のカセイソーダ水溶液を用いスプレーにより、第1表に示すアルミニウム溶解量でエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。なお、アルカリエッチング処理の温度は、70℃であった。
デスマット処理は、濃度1質量%の硝酸水溶液(液温30℃)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。なお、硝酸水溶液としては、後述の硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程(硝酸電解工程)の廃液を用いた。
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、液温50℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図3に示すものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2 、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で第1表に示す値とした。
その後、スプレーによる水洗を行った。
アルカリエッチング処理は、カセイソーダ濃度26質量%およびアルミニウムイオン濃度5質量%のカセイソーダ水溶液を用いスプレーにより、第1表に示すアルミニウム溶解量でエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
硫酸300g/L水溶液中にアルミニウムイオン5g/L溶解したものを用い、温度60℃で10秒間デスマット処理を行った。その後、ニップローラによる液切りし、水洗し、さらにニップローラで液切りを行った。
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。液温50℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図3に示すものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2 であった。
塩酸電解に用いた電解液は、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)であり、塩酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で第1表に示す値とした。
その後、スプレーによる水洗を行った。
アルカリエッチング処理は、カセイソーダ濃度5質量%およびアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を用いスプレーにより、第1表に示すアルミニウム溶解量でエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
なお、アルミニウム溶解量を1.0g/m2 としたとき(比較例6)は、上記カセイソーダ水溶液の代わりにカセイソーダ濃度26質量%およびアルミニウムイオン濃度5質量%のカセイソーダ水溶液を用いた。
硫酸300g/L水溶液中にアルミニウムイオン5g/L溶解したものを用い、温度60℃で10秒間デスマット処理を行った。その後、ニップローラによる液切りし、水洗し、さらにニップローラで液切りを行った。
陽極酸化処理は、下記条件により行った。
図4に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行い、平版印刷版用支持体を得た。第一および第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度15質量%(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度38℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.5g/m2 であった。
シリケート処理は、下記条件により行った。
35℃の3号ケイ酸ソーダ水溶液(Na2 O:SiO2 =1:3、SiO2 含有量30質量%、日本化学工業社製、濃度1質量%)に10秒間浸せきさせた。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。
上記で得られた平版印刷版用支持体の表面について、以下のようにしてΔS50、a4550(0.2-2) およびΔS5(0.02-0.2) を求めた。
結果を第2表に示す。
ΔS50、a4550(0.2-2) およびΔS5(0.02-0.2) を求めるために、原子間力顕微鏡(SPA300/SPI3800N、セイコーインスツルメンツ社製)により表面形状を測定し、3次元データを求めた。
平版印刷版用支持体を1cm角の大きさに切り取って、ピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際、試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位でとらえた。ピエゾスキャナーは、XY方向について150μm、Z方向について10μm、走査可能なものを使用した。カンチレバーは共振周波数120〜400kHz、バネ定数12〜90N/mのもの(SI−DF20、セイコーインスツルメンツ社製)を用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定した。また、求めた3次元データを最小二乗近似することにより試料のわずかな傾きを補正し基準面を求めた。
計測の際は、ΔS50およびa4550(0.2-2) については、表面の50μm□を512×512点測定した。XY方向の分解能は0.1μm、Z方向の分解能は0.15nm、スキャン速度は50μm/secとした。
また、ΔS5(0.02-0.2) については、表面の5μm□を512×512点測定した。XY方向の分解能は0.01μm、Z方向の分解能は0.15nm、スキャン速度は5μm/secとした。
ΔS50の算出には、上記(1)で求められた表面の50μm□の測定に基づく3次元データをそのまま用いた。
a4550(0.2-2) の算出には、上記(1)で求められた表面の50μm□の測定に基づく3次元データから波長0.2μm以上2μm以下の成分を抽出したものを用いた。波長0.2μm以上2μm以下の成分の抽出は、上記(1)で求められた3次元データを高速フーリエ変換をして周波数分布を求め、ついで、波長0.2μm未満の成分および波長2μmを超える成分を除去した後、フーリエ逆変換をすることにより行った。
また、ΔS5(0.02-0.2) の算出には、上記(1)で求められた表面の5μm□の測定に基づく3次元データから波長0.02μm以上0.2μm以下の成分を抽出したものを用いた。波長0.02μm以上0.2μm以下の成分の抽出は、上記(1)で求められた3次元データを高速フーリエ変換をして周波数分布を求め、ついで、波長0.02μm未満の成分および波長0.2μmを超える成分を除去した後、フーリエ逆変換をすることにより行った。
(i)ΔS50
上記(1)で求められた3次元データ(f(x,y))を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成される微小三角形の面積の総和を求め、実面積Sx 50とした。表面積比ΔS50は、得られた実面積Sx 50と幾何学的測定面積S0 50 とから、上記式(1)により求めた。
上記(2)で補正して得られた3次元データ(f(x,y))を用い、各基準点と所定の方向(例えば、右と下)の隣接する2点との3点で形成される微小三角形と基準面とのなす角を各基準点について算出した。微小三角形の傾斜度が45度以上の基準点の個数を、全基準点の個数(全データの個数である512×512点から所定の方向の隣接する2点がない点の個数を減じた個数、即ち、511×511点)で除して、傾斜度45度以上の部分の面積率a4550(0.2-2) を算出した。
上記(2)で補正して得られた3次元データ(f(x,y))を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成される微小三角形の面積の総和を求め、実面積Sx 5(0.02-0.2) とした。表面積比ΔS5(0.02-0.2) は、得られた実面積Sx 5 (0.02-0.2)と幾何学的測定面積S0 5とから、上記式(2)により求めた。
なお、レーザ顕微鏡としては、上記で用いたもののほか、例えば、(株)KEYENCE製の超深度形状測定顕微鏡VK5800も同様に用いることができる。
上記で得られた各平版印刷版用支持体に、以下のようにしてサーマルポジタイプの画像記録層AおよびBをそれぞれ設けて平版印刷版原版を得た。なお、画像記録層AおよびBを設ける前には、後述するように下塗層を設けた。
シリケート処理後の平版印刷版用支持体上に、下記組成の下塗液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、下塗層の塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は10mg/m2 であった。
・下記高分子化合物 0.2g
・メタノール 100g
・水 1g
画像記録層Aは、単層型のサーマルポジタイプの画像記録層であり、以下のようにして形成させた。
下記組成の感熱層塗布液を調製し、下塗層を設けた平版印刷版用支持体に、この感熱層塗布液を乾燥後の塗布量(感熱層塗布量)が1.7g/m2 になるよう塗布し、乾燥させて感熱層(単層型のサーマルポジタイプの画像記録層)を形成させ、平版印刷版原版を得た。
・ノボラック樹脂(m−クレゾール/p−クレゾール=60/40、重量平均分子量7,000、未反応クレゾール0.5質量%含有) 1.0g
・下記構造式で表されるシアニン染料A 0.1g
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.05g
・p−トルエンスルホン酸 0.002g
・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシ−β−ナフタレンスルホン酸にしたもの 0.02g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−177、大日本インキ化学工業社製) 0.05g
・メチルエチルケトン 12g
画像記録層Bは、重層型のサーマルポジタイプの画像記録層であり、以下のようにして形成させた。
下記組成の第一層用塗布液を調製し、下塗層を形成させた平版印刷版用支持体に、この第一層用塗布液を乾燥後の塗布量が0.85g/m2 になるよう塗布し、TABAI社製、PERFECT OVEN PH200を用いてWind Controlを7に設定して、140℃で50秒間乾燥させて第一層を形成させた。ついで、下記組成の第二層用塗布液を調製し、第一層を形成させた平版印刷版用支持体に、この第二層用塗布液を乾燥後の塗布量が0.15g/m2 になるよう塗布し、120℃で60秒間乾燥させて第二層を形成させ、重層型のサーマルポジタイプの画像記録層を有する平版印刷版原版を得た。
・N−(4−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル(モル比36/34/30、重量平均分子量50,000、酸価2.65) 2.133g
・上記式で表されるシアニン染料A 0.109g
・4,4′−ビスヒドロキシフェニルスルホン 0.126g
・無水テトラヒドロフタル酸 0.190g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミンヘキサフルオロホスフェート 0.030g
・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシナフタレンスルホンに変えたもの 0.10g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−176、大日本インキ化学工業社製、20質量%溶液、塗布面状改良用) 0.035g(溶液として)
・メチルエチルケトン 25.38g
・1−メトキシ−2−プロパノール 13.0g
・γ−ブチロラクトン 13.2g
・m,p−クレゾール−ノボラック樹脂(m/p比=6/4、重量平均分子量4,500、未反応クレゾール0.8質量%含有) 0.2846g
・上記式で表されるシアニン染料A 0.075g
・ベヘン酸アミド 0.060g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−176、大日本インキ化学工業社製、20質量%溶液、塗布面状改良用) 0.022g(溶液として)
・フッ素系界面活性剤(メガファックMCF−312、大日本インキ化学工業社製、30質量%溶液、画像形成改良用) 0.120g(溶液として)
・メチルエチルケトン 15.1g
・1−メトキシ−2−プロパノール 7.7g
上記で得られた各平版印刷版原版には、下記の方法で画像露光および現像処理を行い、平版印刷版を得た。
その後、非還元糖と塩基とを組み合わせたD−ソルビット/酸化カリウムK2 Oよりなるカリウム塩5.0質量%およびオルフィンAK−02(日信化学社製)0.015質量%を含有する水溶液1LにC12H25N(CH2 CH2 COONa)2 1.0gを添加したアルカリ現像液(現像液1)を用いて現像処理を行った。現像処理は、現像液1を満たした自動現像機PS900NP(富士写真フイルム(株)製)を用いて、現像温度25℃、12秒の条件で行った。現像処理が終了した後、水洗工程を経て、ガム(GU−7(1:1))等で処理して、製版が完了した平版印刷版を得た。
上記で得られた平版印刷版の耐刷性、クリーナ耐刷性、耐汚れ性およびポツ状残膜の発生の有無を下記の方法で評価した。
(1)耐刷性
小森コーポレーション社製のSPRINT印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。
画像記録層Bを設けた平版印刷版原版の結果を第2表に示す。
耐刷性の評価の場合と同様の条件で印刷を行い、ベタ画像部をスポンジを用い、プレートクリーナ液(マルチクリーナ、富士写真フイルム(株)製)により、5000枚印刷する毎に洗浄し、ベタ画像部が薄くかすれ始めたことが目視で認められるまでの印刷枚数により、評価した。
画像記録層Bを設けた平版印刷版原版の結果を第2表に示す。
三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、レオエコー紫のインキを用いて印刷し、1万枚印刷した後におけるブランケットの汚れ(地汚れ)を目視で評価した。
画像記録層Bを設けた平版印刷版原版の結果を第2表に示す。第2表中、耐汚れ性をブランケットの汚れの程度により、耐汚れ性が優れたものから順に、「○」、「△」、「×」の3段階で評価した。評価が「△」以上であれば、耐汚れ性に優れる平版印刷版として、実用的なレベルにある。
各版面エネルギー量で露光したサンプルの現像後の非画像部を光学顕微鏡で倍率100倍で観察し、1mm四方の面積におけるポツ状残膜の有無を調べた。ポツ状残膜が観察されないサンプルの版面エネルギー量の最小値により、ポツ状残膜を評価した。
画像記録層Bを設けた平版印刷版原版の結果を第2表に示す。第2表中、版面エネルギー量の最小値が小さかったものから大きかったものまでを順に、「○」、「△」、「×」とした。
また、表面に存在する深さ4μm以上の局所的深部の個数が、400μm×400μmあたり6個以下である本発明の平版印刷版用支持体(実施例1〜10)を用いた本発明の平版印刷版原版は、上記した特性に加え、ポツ状残膜が発生しにくい。
2、4 ローラ状ブラシ
3 研磨スラリー液
5、6、7、8 支持ローラ
11 アルミニウム板
12 ラジアルドラムローラ
13a、13b 主極
14 電解処理液
15 電解液供給口
16 スリット
17 電解液通路
18 補助陽極
19a、19b サイリスタ
20 交流電源
40 主電解槽
50 補助陽極槽
410 陽極酸化処理装置
412 給電槽
414 電解処理槽
416 アルミニウム板
418、426 電解液
420 給電電極
422、428 ローラ
424 ニップローラ
430 電解電極
432 槽壁
434 直流電源
Claims (3)
- 原子間力顕微鏡を用いて、表面の50μm×50μmおよび5μm×5μmをそれぞれ512×512点測定して求められる3次元データより得られる表面積比および急峻度が、下記条件(i)〜(iii)を満足する平版印刷版用支持体。
(i) 表面積比ΔS50が60〜90%
(ii) 急峻度a4550(0.2-2) が10〜50%
(iii) 表面積比ΔS5(0.02-0.2) が20〜80%
ここで、表面積比ΔS50は、原子間力顕微鏡を用いて、表面の50μm×50μmを512×512点測定して得られる3次元データから近似三点法により求められる実面積Sx 50と、幾何学的測定面積S0 50 とから、下記式(1)により求められる表面積比であり、
ΔS50=(Sx 50−S0 50 )/S0 50 ×100(%) (1)
急峻度a4550(0.2-2) は、原子間力顕微鏡を用いて、表面の50μm×50μmを512×512点測定して得られる3次元データから波長0.2μm以上2μm以下の成分を抽出して得られるデータにおける傾斜度45゜以上の部分の面積率である急峻度であり、
表面積比ΔS5(0.02-0.2) は、原子間力顕微鏡を用いて、表面の5μm×5μmを512×512点測定して得られる3次元データから波長0.02μm以上0.2μm以下の成分を抽出して得られるデータから近似三点法により求められる実面積Sx 5(0.02-0.2) と、幾何学的測定面積S0 5とから、下記式(2)により求められる表面積比である。
ΔS5(0.02-0.2) =(Sx 5(0.02-0.2) −S0 5)/S0 5×100(%) (2) - 表面に存在する深さ4μm以上の局所的深部の個数が、400μm×400μmあたり6個以下である請求項1に記載の平版印刷版用支持体。
- 請求項1または2に記載の平版印刷版用支持体上に画像記録層を設けた平版印刷版原版。
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