JP2005085636A - 直接アルコール形燃料電池及びその使用方法並びにそれを用いた発電装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本燃料電池は、液温25℃であり且つメタノール濃度が50質量%以下であるメタノール水溶液に1時間浸漬した場合に浸漬前後における面積変化率が40%以下である電解質膜を備える。また、加熱部を備えることができる。本発電装置は、本燃料電池を備える。また、燃料電池が加熱部を備える場合は蓄電池を備えることができる。本使用方法は、アルコール濃度が5質量%以上であるアルコール水溶液を用いる。
【選択図】 図1
Description
このアルコール燃料電池のなかにも、アルコールを改質器を用いて水素主成分とする気体に改質した後、この気体を燃料として用いる改質型と、改質器を用いることなくアルコールを直接的に燃料として使用できる直接型とが知られている。なかでも直接型である直接アルコール形燃料電池は、改質器が不要であるため、(1)軽量化できること、(2)頻繁な起動・停止に耐え得ること、及び(3)負荷変動応答性が大幅に改善できること等で優れている。
これまでに上記問題に対して、本発明者らによる下記特許文献1及び2等の技術が開示されている。これらの技術はいずれも優れたものであるが、更に高性能な燃料電池の開発が早急に求められている。
(1)高分子電解質が充填された細孔を備える多孔性基材からなる電解質膜、及び、該電解質膜を挟む一対の電極、を備える燃料電池において、
該電解質膜は、液温25℃であり且つメタノール濃度が50質量%以下であるメタノール水溶液に1時間浸漬した場合に浸漬前後における面積変化率が40%以下であることを特徴とする直接アルコール形燃料電池。
(2)上記面積変化率の変動量は、上記メタノール濃度が50質量%以下の範囲において5%以下である上記(1)に記載の直接アルコール形燃料電池。
(3)上記高分子電解質は、スルホン酸基含有ビニル化合物又はリン酸基含有ビニル化合物を含有するモノマー、及び、1分子あたり2個以上のビニル基を有する架橋剤、が反応して得られた架橋ポリマーである上記(1)又は(2)に記載の直接アルコール形燃料電池。
(4)上記多孔性基材は、ポリオレフィン系材料又はポリイミド系材料からなる上記(1)乃至(3)のうちのいずれかに記載の直接アルコール形燃料電池。
(5)更に、加熱部を備える上記(1)乃至(4)のうちのいずれかに記載の直接アルコール形燃料電池。
(6)アルコール濃度が5質量%以上であるアルコール水溶液を燃料として用いる上記(1)乃至(5)のうちのいずれかに記載の直接アルコール形燃料電池。
(7)上記(1)乃至(5)のうちのいずれかに記載の直接アルコール形燃料電池を備えることを特徴とする発電装置。
(8)上記直接アルコール形燃料電池が上記加熱部を備え、該加熱部に通電できる蓄電池を備える上記(7)に記載の発電装置。
(9)上記(1)乃至(6)のうちのいずれかに記載の直接アルコール形燃料電池の使用方法であって、
上記一対の電極の一方側にアルコール濃度が5質量%以上であるアルコール水溶液を供給し、該一対の電極の他方側に酸化剤を供給することを特徴とする直接アルコール形燃料電池の使用方法。
(10)上記アルコール水溶液は、炭素数1〜5のアルコールを含有し、且つ凝固点が−2℃以下である上記(9)に記載の直接アルコール形燃料電池の使用方法。
面積変化率の変動量が所定条件において5%以下である場合は、特にエネルギーロスが少なく、特に耐久性の高い燃料電池とすることができる。
高分子電解質が、所定のモノマーと所定の架橋剤とが反応して得られた架橋ポリマーである場合は、特に発電効率のよい燃料電池とすることができる。
多孔性基材が、ポリオレフィン系材料又はポリイミド系材料からなる場合は、特にエネルギーロスが少なく、特に耐久性の高い燃料電池とすることができる。
加熱部を備える場合は、低温環境においても、始動に要する立ち上げ時間が短い燃料電池とすることができる。また、低温環境下においても高い効率で発電できる燃料電池とすることができる。
5質量%以上のアルコール水溶液を燃料として用いる場合は、低温環境においても燃料が凍結し難く、凍結に伴う破損が防止でき、始動に要する立ち上げ時間が短い燃料電池とすることができる。
加熱部を備え、加熱部に通電できる蓄電池を備える場合は、外部電力を要することなく、本発電装置単独で低温環境においても始動に要する立ち上げ時間を短縮でき、スムーズに始動できる発電装置とすることができる。また、特に低温環境下においても高出力を発揮できる発電装置とすることができる。
アルコール水溶液が、所定のアルコールを含有し、且つ凝固点が−60℃以上である場合は、特に温度の低い低温環境下においても始動及び停止をスムーズに行うことができる。
[1]燃料電池
本発明の直接アルコール形燃料電池(以下、単に「燃料電池」ともいう)は、電解質膜と、電解質膜を挟む一対の電極とを備える。
上記「電解質膜」は、高分子電解質が充填された細孔を備える多孔質基材からなる。また、この電解質膜は、液温25℃であり且つメタノール濃度が50質量%以下であるメタノール水溶液に1時間浸漬した場合に浸漬前後における面積変化率が40%以下(より好ましくは35%以下、更に好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下)である。面積変化率がこの範囲にあれば、高濃度(例えば、5質量%以上、更には7質量%以上)のアルコール水溶液に対する耐透過性に優れるためにエネルギーロスが少ない燃料電池が得られる。また、電解質膜と電極との間の耐剥離性に優れるために耐久性の高い燃料電池が得られる。
この面積変化率とは、乾燥させた電解質膜の面積(A1)と、アルコール水溶液に浸漬した後の面積(A2)とを測定し、下記式(1)を用いて算出した値である。但し、電解質膜の乾燥は温度70℃で1時間行うものであり、浸漬はこの乾燥させた電解質膜を用いて、濃度調整した液温25℃のアルコール水溶液に1時間浸すものとする。
面積変化率(%)=[(A2)−(A1)]/(A1)×100 ・・・・式(1)
この面積変化率の変動量とは、例えば、濃度(x)質量%のアルコール水溶液を用いて測定した面積変化率(dx)と、濃度(y)質量%のアルコール水溶液を用いて測定した面積変化率(dy)と、の差[(dx)−(dy)]を意味する。但し、(dx)≧(dy)として算出するものとする。
この多孔性基材を構成する材料は特に限定されず、有機材料であってもよく、無機材料であってもよく、これらの両方を用いたものであってもよい。
このうち、有機材料としては、ポリオレフィン系材料、ポリイミド系材料及びフッ素樹脂系材料等が挙げられる。これらのうちポリオレフィン系材料は、外力による伸び及び変形を抑制する加工を施したポリオレフィンが好ましい。このような加工としては、延伸加工、並びに、架橋剤の使用及び/又は放射線の照射等が挙げられる。これらの加工は1種のみを施してもよく、2種以上を施してもよい。即ち、延伸ポリオレフィン、架橋ポリオレフィン及び延伸架橋ポリオレフィン等が好ましい。また、ポリイミド系材料としては、芳香族ポリイミド等が挙げられる。更に、フッ素樹脂系材料としては、ポリテトラフルオロエチレン等{例えば、テフロン(登録商標)等}が挙げられる。これらの多孔性基材のなかでも、ポリオレフィン系材料又はポリイミド系材料が好ましい。これらの材料を用いて得られる多孔質基材は、膨潤を抑制する効果が大きく、得られる電解質膜の面積変化率及びその変動量を小さく抑えることができる。更に、強度にも優れ、また、高分子電解質の充填を行う際の作業性が特に良い。
一方、無機材料としては、ガラス、アルミナ及びシリカ等のセラミックス系材料が挙げられる。これらの各種材料は単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合には、積層して用いてもよく、複合化して用いてもよい。
プロトン酸性基含有化合物としては、(メタ)アクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、ビニルホスホン酸、酸性リン酸基含有(メタ)アクリレート、並びに、これらの塩、これらの無水物、これらのエステル等が挙げられる。また、上記スルホン酸に換えてホスホン酸を有する各種化合物が挙げられる。
尚、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を、「(メタ)アリル」は「アリル及び/又はメタリル」を、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート及び/又はメタクリレート」を示す。
これらの架橋剤としては、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの各電極の構成は特に限定されないが、通常、アノード電極は、高分子電解質に近い側からアルコールの分解反応を促進するアノード極触媒層と、このアノード極触媒層等を支持するアノード極支持層とを備える。一方、カソード電極は、高分子電解質に近い側から水の合成反応を促進するカソード極触媒層と、このカソード極触媒層等を支持するカソード極支持層とを備える。
各支持層を構成する材料は特に限定されないが、通常、アノード極支持層はアルコール透過性、カソード極支持層は酸化剤透過性(特に酸素ガス透過性)を各々備える。更に、両支持層は、通常、電子導電性及び燃料電池の作動熱に耐えうる耐熱性を有する。このような材料としては多孔性カーボン(板状及び繊維状等)等が挙げられる。
これらの各電極と電解質膜とはどのように一体化されていてもよい。即ち、例えば、一対の電極間に電解質膜を挟んで加熱プレスにより一体化されたものとすることができる。また、アノード極支持層又はカソード極支持層のいずれかの表面に、上記配置となるように電極を積層形成し、更に、得られた電極の表面に多孔性基材を接合又は形成し、次いで、多孔性基材中に高分子電解質を充填して一体化されたものであってもよい。
この「加熱部」は、自身が発熱することにより、電解質膜及び電極等を(更には、後述する燃料系統等をも)加熱できるものである。この加熱部の構成及び配設位置等は特に限定されない。例えば、加熱部としては、電気抵抗により発熱する発熱体を備える各種ヒータ類(耐熱性シリコンラバー内に発熱体が設置されたシリコンラバーヒータ及びセラミックヒータ等)、ペルチェ素子、化学反応熱(酸化による発熱等)を利用する発熱体等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その配設位置は、電解質膜及び電極の近傍であることが好ましい。例えば、
後述する集電部の内部及び表面、並びに、電極の外部表面及び電解質膜の電極に覆われていない部分等に隣接して設けることができる。但し、可能であればこれらの場所に接して設けることもできる。また、加熱部の発熱は、始動時のみに行ってもよく、発電中を通して行ってもよい。
この加熱部を備えることにより、例えば、電解質膜及び電極のうちの少なくとも一方が加熱されることで、低温環境下において始動に要する立ち上げ時間を短縮することができる。また、加えて反応効率が向上し、低温環境下においても効率のよい発電を行うことができる。更に、燃料系統等を加熱した場合にも同様な効果が得られる。
このうち集電部は、通常、電極に接して設けられる導体であり、発生された電気を集める機能を有する。この集電部は、後述する燃料系統及び酸化剤系統等の一部を備えるものであってもよい。
また、燃料系統は、燃料電池内で用いる燃料を扱う部分である。即ち、例えば、アルコール水溶液をアノード電極まで供給するための燃料供給経路、アノード電極で使用されなかった燃料及び生成された二酸化炭素等を排出及び回収するためのアノード側排出経路、及び、燃料を一時的に貯留する燃料貯蔵部等が含まれる。燃料系統は必要に応じてこれらのうちの1種又は2種以上を備えることができる。
更に、酸化剤系統は、燃料電池内で用いる酸化剤を扱う部分である。即ち、例えば、酸化剤をカソード電極まで供給するための酸化剤供給経路、カソード電極で使用されなかった酸化剤及び生成された水等を排出及び回収するためのカソード側排出経路、及び、酸化剤を一時的に貯留する酸化剤貯蔵部等が含まれる。酸化剤系統は必要に応じてこれらのうちの1種又は2種以上を備えることができる。
これに対して、本発明の燃料電池では、5質量%以上の燃料を用いた場合にも、アルコールの透過を効果的に抑制できる(例えば、25℃における浸透気化法による電解質膜の単位厚さあたりのアルコールフラックスが35kg・μm・m−2・h−1以下、更には25kg・μm・m−2・h−1以下)。このため、アルコール濃度の高い燃料を使用できる。
尚、ここでいう燃料はアノード電極側へ供給されるものをいうが、カソード電極側へは酸化剤を供給する。この酸化剤の種類は特に限定されないが、通常、酸化性ガスを供給する。この酸化性ガスの種類及び濃度等は特に限定されない。その種類としては、例えば、酸素、空気及びこれらの混合気体等が挙げられる。
この電解質膜(11)は、アノード電極(12a)のアノード極触媒層(図示せず)とカソード電極(12b)のカソード極触媒層(図示せず)とに挟まれて配置されている。アノード電極(12a)及びカソード電極(12b)は、各々多孔質であり、燃料及び酸化剤がその内部に浸透できる。
更に、カソード極用カーボンプレート(131b)に設けられ、先端部がカソード電極近傍に達するように孔設された穴内に、挿入された温度計(18)を備える。
本発明の発電装置は、本発明の直接アルコール形燃料電池を備える。従って、上記本発明の燃料電池に関する全てをそのまま適用することができる。即ち、高濃度のアルコール水溶液を用いて発電でき、また、高濃度のアルコール水溶液を用いた場合にもエネルギーロスが少なく耐久性の高い発電装置とすることができる。更に、寒冷地及び冬季等の低温環境においても、燃料等の凍結に伴う破損が防止され、始動に要する立ち上げ時間が短い発電装置とすることができる。また、加熱部を備える燃料電池を備える場合は、始動に要する立ち上げ時間が短かく、高出力の発電装置とすることができる。
また、本発電装置には、加熱部と蓄電池との間の導通を制御するスイッチ回路等を備えることができる。スイッチ回路は、スイッチのみからなってもよく、必要に応じて制御を要する場合にはスイッチ以外にも制御部を備えることができる。この制御部としては、時間管理を行うための時間制御部(例えば、タイマー等を備える)が挙げられる。更に、温度管理を行うための温度制御部(例えば、温度センサー等を備える)が挙げられる。温度制御部を備えることにより、加熱部の過加熱の防止、及び、各部を適温に保温することなどが可能となる。また、燃料電池の発電能力を超えない範囲において、この燃料電池で生成される電力を用いて上記蓄電池を充電する充電器を備えることができる。更に、これらの他の機器を備える場合には各機器へ電力を分配するための分配器を備えることができる。
また、充電器(40)及び分配器(50)を備え、前述の燃料電池(10)は出力取出経路(17)を介して分配器(50)と接続され、分配器(50)は充電器(40)を介して蓄電池(20)と接続されている。分配器(50)は燃料電池で発電された電力量を超えない範囲で必要に応じて充電器(40)へ電力を分配することできる装置であり、これにより蓄電池(20)の充電を行うことができるものである。
本発明の直接アルコール形燃料電池の使用方法は、本発明の燃料電池の一対の電極の一方側にアルコール濃度が5質量%以上であるアルコール水溶液を供給し、一対の電極の他方側に酸化剤を供給するものである。
上記「アルコール水溶液」は、その濃度が5質量%以上であれば特に限定されないが、7質量%以上とすることができ、更には9質量%以上とすることができる。但し、通常50質量%以下である。前述のように従来公知の電解質膜では、通常、5質量%以上の濃度の燃料では、アルコールが電解質膜を透過する割合が多く(例えば、25℃における浸透気化法による電解質膜の単位厚さあたりのアルコールフラックスが40kg・μm・m−2・h−1以上)、エネルギーロスが大きいため、使用が困難である。例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸膜を用いた燃料電池では、通常、3.2〜6.4質量%程度の狭い範囲の濃度でしか利用することができない。
これに対して、本発明の燃料電池では、5質量%以上の燃料を用いた場合にも、アルコールの透過を効果的に抑制できる(例えば、25℃における浸透気化法による電解質膜の単位厚さあたりのアルコールフラックスが35kg・μm・m−2・h−1以下、更には25kg・μm・m−2・h−1以下)。このため、アルコール濃度の高い燃料を使用できる。
また、前述のように加熱部を備え、始動時に加熱を行うことにより、立上りをスムーズにすることができる。更に、加熱を発電中にも行うことにより、最高出力を出力できるまでの時間を短縮でき、更には、出力を大きくすることができる。
[1]電解質膜の評価
(1−1)電解質膜1(多孔性基材が架橋ポリエチレンフィルム)の製造
プロトン酸性基含有化合物として2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東亞合成株式会社製、品名「ATBS」)を45質量部、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミドを5質量部、紫外線重合開始剤(チバスペシャルティーケミカル社製、品名「ダロキュア1173」)を1質量部、界面活性剤を1質量部、の各々を水50質量部に溶解させて高分子電解質用水溶液を得た。一方、多孔性基材として、厚さ16μmの架橋ポリエチレンフィルムを用意した。
この多孔性基材を高分子電解質用水溶液に含浸した後、含浸後の多孔性基材を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム2枚の間に挟んだ。次いで、PETフィルム上から高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射した。照射に際しては、表裏面に各々1000mJ/cm2ずつの照射量とした。その後、PETフィルムを剥がし取った後、表面を水に濡らして膨潤させ、プラスチック製のブレードを用いて余分な高分子電解質を削ぎ落とした。更に、1Nの塩酸水溶液で洗浄し、続いて蒸留水で洗浄して、電解質膜1を得た。この電解質1の単位厚さあたりのメタノールフラックスは12kg・μm・m−2・h−1であった。
(1−2)電解質膜2(多孔性基材がポリプロピレンフィルム)の製造
多孔性基材として、厚さ25μmのポリプロピレンフィルムを用いた以外は、上記(1−1)と同様にして電解質膜2を得た。
上記(1−1)及び上記(1−2)で各々得られた電解質膜1及び2と、市販のパーフルオロカーボンスルホン酸重合体からなり、厚さが125μmであり、メタノールフラックスが75kg・μm・m−2・h−1である電解質膜3とを、70℃で1時間乾燥させ、常温に戻した後、各電解質膜の面積(A1)を測定した。次いで、液温25℃に保温したメタノール濃度が0質量%(純水)、16質量%、及び50質量%の各濃度に調整した浸漬液に、各電解質膜1〜3を1時間浸漬した後、取り出して、その面積(A2)を測定した。これら面積(A1)及び面積(A2)を用いて前記式(1)に従い面積変化率を算出した。この結果を表1に示した。また、面積変化率の最大変動量を表1に併記した。更に、この結果をグラフにして図1に示した。また、各液の凝固点を表1に併記した。
尚、メタノール水溶液の凝固点はメタノール濃度が10質量%の場合に−5.7℃、20質量%の場合に−14.5℃、30質量%の場合に−25.9℃、40質量%の場合に−39.5℃、50質量%の場合に−54.2℃であった。
カーボンペーパーの一面側に、白金ルテニウム合金をカーボンブラックに担持した触媒と電解質ポリマーであるポリテトラフルオロエチレンとを含有する触媒層用組成物を、塗布し乾燥させてアノード極触媒層を形成したアノード電極(白金ルテニウム導入量3mg/cm2)を用意した。また、カーボンペーパーの一面側に、白金をカーボンブラックに担持した触媒と電解質ポリマーであるポリテトラフルオロエチレンとを含有する触媒層用組成物を、塗布し乾燥させてカソード極触媒層を形成したカソード電極(白金導入量1mg/cm2)を用意した。その後、これらのアノード極触媒層とカソード極触媒層との間に上記[1]で得られた電解質膜1〜3を挟んで、加熱プレスして一体化した。次いで、各電解質膜と電極とが一体化された一体化物を燃料電池に各々組み込んで燃料電池1〜3を得た。また、この燃料電池1〜3は、各々グラスウール製の保温材で周囲を包み、保温できるようにした。電解質膜1を備えるものを燃料電池1(本発明品)、電解質膜2を備えるものを燃料電池2(本発明品)、及び、電解質膜3を備えるものを燃料電池3(比較品)とする。
燃料電池1(本発明品、架橋PE多孔質基材使用)を用い、燃料として濃度10%のメタノール水溶液を供給し、電解質膜1にも燃料が行き渡るようにした後、燃料の流動を停止した。その後、温度−5℃で24時間放置した。燃料には24時間後にも凍結が認められなかった。24時間経過後、燃料電池の始動を試みたところ、発電が確認された。更に、発電を続行したところ、発電開始から約1時間経過後に、カソード電極近傍{カソード極カーボンプレート(図2の131b)に、カソード電極の平面中央部付近に測温部が達するように挿入して設けられた温度計(図2の18)により測定(以下、他の実施例において同様)}の温度が30℃となり、出力は最高値18mW/cm2が得られた。
燃料電池1(本発明品、架橋PE多孔質基材使用)を用い、燃料電池1のアノード極集電部の金属板(図2の132a)及びカソード極集電部の金属板(図2の132b)の各々の表面に加熱部(図2の17)としてシリコンラバーヒータを貼り付け、これを蓄電池(図2の20)として単3型ニッケル水素電池4本を並列に組み合わせたものを用い、この加熱部と蓄電池とをスイッチを介して接続した。このシリコンラバーヒータは、温度25℃において、並列接続した単3型ニッケル水素充電池4本により温度50℃まで加熱部単体で発熱された。
上記スイッチにより加熱部には通電せず、実施例1と同じ燃料を用いて同様な操作を行って、温度−5℃で24時間放置した。燃料には24時間後にも凍結が認められなかった。24時間経過後、スイッチにより加熱部に通電して、発熱させながら、燃料電池の始動を試みた。その結果、すみやかに発電が開始されたことが確認できた。更に、発電を続行したところ、発電開始から約5分経過後にカソード電極近傍の温度が40℃となり、出力は最高値41mW/cm2が得られた。
燃料電池1(本発明品、架橋PE多孔質基材使用)を用い、上記実施例2と同様にして加熱部を設け、更に同様にスイッチを介して蓄電池と接続した。
上記スイッチにより加熱部には通電せず、濃度16質量%のメタノール水溶液を燃料として用いた以外は実施例1と同様な操作を行って、温度−10℃で24時間放置した。燃料には24時間後にも凍結が認められなかった。24時間経過後、スイッチにより加熱部に通電して、発熱させながら、燃料電池の始動を試みた。その結果、すみやかに発電が開始されたことが確認できた。更に、発電を続行したところ、発電開始から約5分経過後にカソード電極近傍の温度が40℃となり、出力は最高値32mW/cm2が得られた。
燃料電池2(本発明品、PP多孔質基材使用)を用いたこと以外は、実施例1と同じ燃料を用い、同様に操作、同様な環境に曝した。その結果、燃料には24時間後にも凍結が認められなかった。また、24時間経過後、燃料電池の始動を試みたところ、発電が確認された。更に、発電を続行したところ、発電開始から約1時間経過後にカソード電極近傍の部位の温度が30℃となり、出力は最高値20mW/cm2が得られた。
燃料電池3(比較品、比較高分子電解質使用)を用いたこと以外は、実施例1と同じ燃料を用い、同様に操作、同様な環境に曝した。その結果、燃料には24時間後にも凍結が認められなかった。また、24時間経過後、燃料電池の始動を試みたが、出力が微弱であり測定不能であった。燃料電池3を解体したところ、電解質膜3と電極との間で剥離が認められた。
燃料電池3(比較品)を用い、濃度3.2質量%のメタノール水溶液を燃料として用いた以外は実施例1と同様な操作を行って、同様な環境で24時間放置した。24時間後には、燃料が凝固しており、発電を行うことができなかった。
比較例2では、メタノール濃度が3.2質量%と低いため、−5℃での保存により燃料が凝固し、発電を行うことができなかった。しかし、比較例1の結果から分かるように、メタノール濃度を10質量%と濃くして燃料の凝固を防止しても、面積変化率及びその変動量が過大である電解質膜3を用いた燃料電池では出力がほとんど得られていない。これはメタノールが電解質膜3を透過していることが原因であると考えられる。即ち、高濃度の燃料を使用することで燃料の凝固を防止できるが、高濃度の燃料は所定の特性を備える電解質膜でしか使用できないことが分かる。
また、実施例2は加熱部を備える。このため、立上りがスムーズであり、更に、実施例1と比べて最高出力が得られるまでの時間が12分の1に短縮されている。加えて、加熱をしながら発電を行ったために、反応が促進され、最高出力は実施例1の2.27倍と極めて大きな出力が得られていることが分かる。
更に、実施例3では、メタノール濃度が16質量%と特に高濃度の燃料を用いた。このため燃料の凝固は−10℃においても認められていない。また、加熱部を備えることで、立上りがスムーズであり、最高出力が得られる時間は実施例1に比べて12分の1に短縮されている。また、加熱しながら発電を行うことで最高出力は実施例1に比べて1.78倍と大きな値が得られている。
また、実施例4では、電解質膜1に比べて平均面積変化率が4.6倍大きい電解質膜2を用いているが、同じ試験条件である実施例1とほぼ同等(1.1倍)な最高出力が得られている。
これらの結果から、用いる電解質膜の面積変化率が本発明の範囲内にあれば、高濃度のアルコールを含有する燃料を用いることができる。更に、高濃度の燃料を用いることができるために、低温環境下においても発電を行うことができる。また、加熱部を備えることにで立上りがスムーズになり、更には、最高出力を発するまでの時間を短縮することができ、特に出力を大幅に向上させることができることが分かる。
尚、本発明においては、上記の具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることがでる。
Claims (10)
- 高分子電解質が充填された細孔を備える多孔性基材からなる電解質膜、及び、該電解質膜を挟む一対の電極、を備える燃料電池において、
該電解質膜は、液温25℃であり且つメタノール濃度が50質量%以下であるメタノール水溶液に1時間浸漬した場合に浸漬前後における面積変化率が40%以下であることを特徴とする直接アルコール形燃料電池。 - 上記面積変化率の変動量は、上記メタノール濃度が50質量%以下の範囲において5%以下である請求項1に記載の直接アルコール形燃料電池。
- 上記高分子電解質は、スルホン酸基含有ビニル化合物又はリン酸基含有ビニル化合物を含有するモノマー、及び、1分子あたり2個以上のビニル基を有する架橋剤が反応して得られた架橋ポリマーである請求項1又は2に記載の直接アルコール形燃料電池。
- 上記多孔性基材は、ポリオレフィン系材料又はポリイミド系材料からなる請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の直接アルコール形燃料電池。
- 更に、加熱部を備える請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の直接アルコール形燃料電池。
- アルコール濃度が5質量%以上であるアルコール水溶液を燃料として用いる請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の直接アルコール形燃料電池。
- 請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の直接アルコール形燃料電池を備えることを特徴とする発電装置。
- 上記直接アルコール形燃料電池が上記加熱部を備え、該加熱部に通電できる蓄電池を備える請求項7に記載の発電装置。
- 請求項1乃至6のうちのいずれかに記載の直接アルコール形燃料電池の使用方法であって、
上記一対の電極の一方側にアルコール濃度が5質量%以上であるアルコール水溶液を供給し、該一対の電極の他方側に酸化剤を供給することを特徴とする直接アルコール形燃料電池の使用方法。 - 上記アルコール水溶液は、炭素数1〜5のアルコールを含有し、且つ凝固点が−2℃以下である請求項9に記載の直接アルコール形燃料電池の使用方法。
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JP2003317474A JP2005085636A (ja) | 2003-09-09 | 2003-09-09 | 直接アルコール形燃料電池及びその使用方法並びにそれを用いた発電装置 |
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JP2008098070A (ja) * | 2006-10-16 | 2008-04-24 | Toagosei Co Ltd | 膜電極接合体および燃料電池 |
JP4867347B2 (ja) * | 2003-12-08 | 2012-02-01 | 日本電気株式会社 | 燃料電池 |
-
2003
- 2003-09-09 JP JP2003317474A patent/JP2005085636A/ja active Pending
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