以下、本発明の好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
本発明者等は、トナーの原材料である離型剤に、少なくともスチレン系モノマーによって処理されたスチレン系ユニットを有する炭化水素系ワックスを使用することにより、低温定着性、耐オフセット性と現像性や耐久安定性を両立させることができることを見出した。
通常、軟化点が60℃〜90℃である炭化水素系ワックスは低分子量であり、低溶融粘度である。それゆえに優れた離型性を示す。しかし非常に軟質であるため、トナー樹脂と炭化水素系ワックスとの界面接着力が弱く、トナーから炭化水素系ワックスが脱離しやすい。その脱離した炭化水素系ワックスがクリーニングブレードや感光体に融着し、現像性や、クリーニング性を悪化させていた。また、自己凝集性や付着力が高く、トナーの流動性が悪くなる。そのため、帯電の立ち上がり速度の低下や帯電不良によるカブリ、現像器のスリーブ汚染、二成分系現像ではキャリア汚染等の問題も生じていた。
そこで本発明者等は炭化水素系ワックスをトナー樹脂成分と相溶し易いように処理することにより、界面接着力を向上させ、脱離を防ぐことを考えた。そして鋭意検討の結果、結着樹脂との相溶性、トナー中に含有させたときの分散性、現像性や定着性に対して、少なくともスチレン系ユニットを有する炭化水素系ワックスを使用したものが最も効果的な方法であることを見出した。この効果について詳細は定かではないが、おそらく次のような理由であると考えられる。
本発明に用いられる処理ワックスは処理にスチレン系モノマーを使用しているが、該処理により変性された炭化水素系ワックスのスチレン系モノマーを主とするコポリマーが形成された部分と結着樹脂との分子構造が似ているため、互いの相溶性が高くなり、ワックスの脱離が起こりにくくなっていると考えられる。このことによりワックスの融着、帯電不良などがなくなり、優れた現像性を保持することができた。
特に今回の検討においては、トナー樹脂成分が、ポリエステル単体よりもビニル系ユニットを有する共重合体であるハイブリッド樹脂、ポリエステルとハイブリッド樹脂成分との混合物、ポリエステルとビニル系重合体等、トナー樹脂にビニル系の樹脂成分が含有されている方がワックスの分散性、現像性の点で非常に効果的であった。
また、外添剤として用いられる無機微粉体は以下の系がカブリや帯電立ち上がりに関して非常に効果的であることがわかった。
先ず、BET比表面積の異なる2種類の無機微粉体を用いるのは、比表面積の大きい(粒径の小さい)ものにトナーに対して流動性を付与させ、比表面積の小さい(粒径の大きい)ものに転写性を向上させる、役割分担をさせるためである。この系においては酸化チタン微粉体が流動性を付与し、シリカ微粉体が転写性を向上させる働きをしている。
この時、酸化チタン微粉体とシリカ微粉体の役割を逆転させた場合、即ちシリカ微粉体を流動性付与のためにBET比表面積を大きくして用い、酸化チタン微粉体を転写性向上のためにBET比表面積を小さくして用いた時は、帯電がやや不安定になり、耐久試験を行うと酸化チタン微粉体が蓄積して画像の劣化が激しくなった。
さらに本発明者等はそれぞれの無機微粒子にシリコーンオイルを処理することがスリーブやキャリアの汚染を減らし、感光ドラムや転写体などからの転写性が向上できるだけでなく、帯電の立ち上がりにも非常に効果的であることがわかった。このことについて鋭意検討の結果、以下のことが分かった。
本発明では少なくともスチレンユニットを有する炭化水素系ワックスを用いることにより、トナー中への該ワックスの分散性は非常に向上する。しかし、粉砕法により作られるトナーではトナー表面に完全にワックスを出ないようにするのは不可能であり、これが原因でトナーの帯電の立ち上がりが若干遅くなる傾向にあった。しかしシリコーンオイル処理を行った無機微粒子を外添した時、オイルとワックスの親和性によって表面に出たワックスを選択的に無機微粒子が覆い、非常に帯電の立ち上がりが向上する。
本発明においては、シリコーン処理した無機微粒子を用いたことにより、帯電の立ち上がりが向上するため、耐久試験で画像の濃度が安定し、さまざまな環境においても安定した帯電特性を示したが、特に高温高湿環境において大きく改善された。
本発明で使用される処理ワックス、即ち炭化水素系ワックスを少なくともスチレン系モノマーで処理してなる、少なくともスチレン系ユニットを有する炭化水素系ワックスについて説明する。
本発明で使用される処理ワックスは、少なくともスチレン系モノマーで処理されることにより、少なくともスチレン系ユニットを有するが、さらに、少なくともスチレン系モノマーと不飽和カルボン酸系モノマーで処理されることにより、少なくともスチレン系ユニットと不飽和カルボン酸系ユニットを有することが好ましい。これらの処理ワックスはトナー中で離型剤として機能する。
処理前の炭化水素系ワックスとしては軟化点が60〜90℃の炭化水素系ワックスが好ましく使用できるが、特に好ましいのはパラフィン炭化水素系ワックスである。パラフィン炭化水素系ワックスとしては、天然パラフィンワックス、合成パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、また、フィッシャー・トロプシュワックスなど公知のものが使用できる。
炭化水素系ワックスの処理に用いられるスチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、イソプロペニルトルエン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、m−メチルスチレン等が挙げられる。
また、炭化水素系ワックスの処理に用いられる不飽和カルボン酸系モノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸イソヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−クロロフェニル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸3−メトキシブチル、アクリル酸ジエチレングリコールエトキシレート、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸2−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸2−クロロヘキシル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−ヘキシルエチル、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル等のメタクリル酸エステル類、その他に、マレイン酸エチル、マレイン酸プロピル、マレイン酸ブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、フマル酸エチル、フマル酸ブチル、フマル酸ジブチル等のフマル酸エステル類、イタコン酸エチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ブチル等のイタコン酸エステル類などが挙げられる。
本発明に用いられる処理ワックスの処理方法としては、スチレン系モノマーや不飽和カルボン酸系モノマーを用い、通常の方法及び、条件に従って行うことができる。具体的には例えば、放射線を利用する方法、ラジカル触媒を用いる方法等を利用することができるが、ラジカル触媒を用いる方法が好ましい。
ラジカル触媒としては、有機ペルオキシド、有機ペルエステル、例えばベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシドベンゾエート)ヘキシン−3、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルフェニルアセテート、tert−ブチルペルイソブチレート、tert−ブチルペル−sec−オクトエート、tert−ブチルペルピバレート、クミルペルピバレート及びtert−ブチルペルジエチルアセテート;その他アゾ化合物、例えばアゾビスイソブチルニトリル、ジメチルアゾイソブチレートなどがある。これらの中ではジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルペルオキシドが好ましい。
モノマーの選択として、スチレン系モノマー単体で処理する場合はスチレン系モノマーを2種以上、スチレン系モノマーと不飽和カルボン酸系モノマーで処理する場合にはスチレン系モノマーを2種以上、不飽和カルボン酸系モノマーを2種以上というような選択方法を用いてもよく、モノマーの選択数に限定されるものはない。また、モノマー処理する順番についても限定はなく、例えばスチレン系モノマーと不飽和カルボン酸系モノマーで同時に処理する方法、スチレン系モノマーで処理した後、不飽和カルボン酸系モノマーで処理する方法などがある。
本発明で使用される処理ワックスはスチレン系モノマー単体、或いはスチレン系モノマーと不飽和カルボン酸系モノマーで処理されているが、処理ワックスのテトラフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量測定で2ピークを有している。高分子側のピーク[1]はモノマーで変性された変性ワックスのピークであり、低分子側のピーク[2]はわずかに変性されたワックス或いは未変性のワックスのピークである。定着性の点からも未変性ワックスは存在していることが好ましい。
本発明においては、[1]のピークの面積S1と[2]のピーク面積S2が下記式(1)
0.2≦S2/(S1+S2)≦0.9 (1)
であるが、好ましくは
0.3≦S2/(S1+S2)≦0.8である。
S2/(S1+S2)が0.8より大きいと、ワックスのトナー中への分散が悪くなり、現像性、耐久性において不利になる。S2/(S1+S2)が0.2より小さいと、定着の際、ワックスのしみ出しが不利になり、定着温度幅が小さくなる。
[1]及び[2]のピーク面積は図1、図2に示すようにGPC分子量分布曲線の変極点から垂直に横軸に降ろした線で分割し、高分子側の面積をS1、低分子側の面積をS2とした。
さらに本発明に用いられる処理ワックスのTHF可溶分のGPCによる分子量測定で[1]の数平均分子量(Mn[1])が8,000以下、[2]の数平均分子量(Mn[2])が200以上を満足していることが好ましい。Mn[1]が8,000より大きいと変性ワックスの離型性が無くなり、定着温度幅が狭くなる。Mn[2]が200より小さいと定着時の耐高温オフセット性、トナー保存性が悪化する。
さらに下記式(2)
1,000≦(Mn[1]−Mn[2])≦6,000 (2)
であることが望ましい。
ここで(Mn[1]−Mn[2])は変性されたワックスのモノマーで変性された部分のおよその数平均分子量を表している。(Mn[1]−Mn[2])が1,000より小さいとポリマー部分の分子量が小さすぎるため、トナー化したときに保存性が悪くなる。(Mn[1]−Mn[2])が6,000を超えると、コポリマー部分の分子量が大きすぎるため、定着時にワックスのしみ出しが悪くなり、離型剤としての効果が弱くなる。
本発明に用いられる処理ワックスは、炭化水素系ワックス100質量部に対して、モノマーの総計が5〜100質量部で処理されていることが好ましい。モノマーの総計が5質量部未満であると処理ワックスとしての効果が得られず、クリーニングブレードや感光体のワックス融着や帯電の立ち上がり速度の低下や帯電不良、スリーブ、キャリア汚染等に対して不利になる。モノマーの総計が100質量部を超えると、処理ワックスの定着時のワックスしみ出し速度が低下し、定着性が不利になる。
また、スチレン系モノマーと不飽和カルボン酸系モノマーを併用する時は(スチレン系モノマー質量部数/不飽和カルボン酸系モノマーの質量部数)がトナー保存性、帯電安定性、トナー中への分散性から、1〜20であることが好ましい。
本発明のトナーは示差走査熱量計(DSC)測定における吸熱曲線(DSC吸熱曲線)において、300〜200℃の範囲における最大吸熱ピーク温度が60〜90℃であることが好ましい。このピーク温度は処理ワックスの軟化点を表しており、ピーク温度が60℃未満であるとトナーの保存性が悪くなってしまう。また、ピーク温度が90℃を超えるとトナーの低温定着性が悪くなる。
本発明で使用される処理ワックスはトナー中の樹脂成分100質量部に対して1〜20質量部用いることが好ましく、より好ましくは2〜10質量部である。ワックスが1質量部未満では処理ワックスの離型剤としての効果が無くなり、定着の温度幅が減少する。20質量部を超えるとトナー自身が軟化してしまい、耐久性が不利になる。
DSC測定には、例えばパーキンエルマー社製「DSC−7」を用い行う。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
測定試料は2〜10mg、好ましくは5mgを精密に秤量する。これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。この昇温過程で、温度30〜200℃の範囲におけるDSC曲線のメインピークの吸熱ピークが得られる。
本発明のトナーはTHF可溶分(樹脂成分)のGPCにより測定される分子量分布において、メインピークを分子量3,000〜40,000の領域に有していることが好ましく、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が70以上であることが好ましい。メインピークを分子量3,000未満の領域に有する場合には、トナーの耐高温オフセット性が悪化する場合があり、メインピークを分子量40,000超の領域に有する場合にはトナーの低温定着性が損なわれる場合があり、また、カラートナーで用いる場合には光沢性が悪くなるという点であまり好ましくない。また、Mw/Mnが70未満である場合には広い定着温度幅を得ることが不利になる。
また、トナーの酸価は5〜45mgKOH/gであることが好ましい。トナーの酸価が5mgKOH/g未満であると、顔料等が分散しにくいためか、帯電不良や画像にムラができたり、カブリなどが発生しやすくなる。また、45mgKOH/gを超える場合は結着樹脂の吸湿性が高まるためにトナーの電荷緩和が強くなり、トナー飛散や転写性が悪くなるという点であまり好ましくない。
次に、本発明に用いられる結着樹脂について説明する。
本発明において結着樹脂としては、従来のポリエステル樹脂を用いることができるが、前述したように、ポリエステル単体よりも、ビニル系の樹脂成分が含有されている方が好ましい。具体的には、
(a)ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットとを有しているハイブリッド樹脂、
(b)上記ハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂成分との混合物
(c)ポリエステル樹脂とビニル系重合体の混合物
(d)上記ハイブリッド樹脂とビニル系重合体の混合物
(e)ポリエステル樹脂、上記ハイブリッド樹脂、及びビニル系重合体の混合物
のいずれかが好ましい。
本発明において、「ハイブリッド樹脂」とは、ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合された樹脂を意味する。具体的には、ポリエステルユニットと(メタ)アクリル酸エステルの如きカルボン酸エステル基を有するモノマーを重合したビニル系重合体ユニットとがエステル交換反応によって形成されるものであり、好ましくはビニル系重合体を幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体としたグラフト共重合体(或いはブロック共重合体)を形成するものである。
本発明において、結着樹脂として用いられるポリエステル樹脂或いはハイブリッド樹脂のポリエステルユニットの構成モノマーとしては、アルコールとカルボン酸、もしくはカルボン酸無水物、カルボン酸エステル等が原料モノマーとして使用できる。具体的には、例えば2価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
3価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類またはその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類またはその無水物;炭素数6〜12のアルキル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類またはその無水物;が挙げられる。
それらの中でも、特に、下記一般式(I)で代表されるビスフェノール誘導体をジオール成分とし、2価以上のカルボン酸またはその酸無水物、またはその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)を酸成分として、これらを縮重合したポリエステル樹脂が、カラートナーとして、良好な帯電特性を有するので好ましい。
(上記式中、Rはエチレンまたはプロピレン基を示し、x及びyはそれぞれ1以上の整数であり、且つ、x+yの平均値は2〜10である。)
本発明において、結着樹脂として用いられるビニル系重合体及びハイブリッド樹脂のビニル系重合体ユニットを生成するためのビニル系モノマーとしては、例えば、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレンの如きスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きスチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
さらに、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
さらに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
本発明において、上記ビニル系重合体及びビニル系重合体ユニットは、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよく、この場合に用いられる架橋剤としては、芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられ;アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられ;エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたものが挙げられ;芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
本発明ではビニル系重合体成分及び/またはポリエステル樹脂成分中に、両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル系重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物などが挙げられる。ビニル系重合体成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基またはヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
ビニル系重合体とポリエステル樹脂の反応生成物を得る方法としては、先に挙げたビニル系重合体及びポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
本発明において、ビニル系重合体を製造する場合に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエイト、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエイト、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキシアリルカーボネート、tert−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−tert−ブチルパーオキシアゼレートが挙げられる。
本発明に用いられるハイブリッド樹脂の製造方法としては、例えば、以下の(1)〜(6)に示す製造方法を挙げることができる。
(1)ビニル系重合体、ポリエステル樹脂及びハイブリッド樹脂成分をそれぞれ製造後にブレンドする方法であり、ブレンドは有機溶剤(例えば、キシレン)に溶解・膨潤した後に有機溶剤を留去して製造される。尚、ハイブリッド樹脂成分は、ビニル系重合体とポリエステル樹脂を別々に製造後、少量の有機溶剤に溶解・膨潤させ、エステル化触媒及びアルコールを添加し、加熱することによりエステル交換反応を行なって合成されるエステル化合物を用いることができる。
(2)ビニル系重合体ユニット製造後に、これの存在下にポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はビニル系重合体ユニット(必要に応じてビニル系モノマーも添加できる)とポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)及び/またはポリエステルとの反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(3)ポリエステルユニット製造後に、これの存在下にビニル系重合体ユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はポリエステルユニット(必要に応じてポリエステルモノマーも添加できる)とビニル系モノマー及び/またはビニル系重合体ユニットとの反応により製造される。
(4)ビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニット製造後に、これらの重合体ユニット存在下にビニル系モノマー及び/またはポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加することによりハイブリッド樹脂成分を製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(5)ハイブリッド樹脂成分を製造後、ビニル系モノマー及び/またはポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加して付加重合及び/または縮重合反応を行うことによりビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットが製造される。この場合、ハイブリッド樹脂成分は上記(2)〜(4)の製造方法により製造されるものを使用することもでき、必要に応じて公知の製造方法により製造されたものを使用することもできる。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
(6)ビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸等)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行うことによりビニル系重合体ユニット、ポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分が製造される。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
上記(1)〜(5)の製造方法において、ビニル系重合体ユニット及び/またはポリエステルユニットは複数の異なる分子量、架橋度を有する重合体ユニットを使用することができる。
次に本発明で用いられる無機微粉体について説明する。
本発明においては、BET比表面積の違う2種類の無機微粉体を使うことが必要であり、特に帯電性に優れる酸化チタン微粉体と流動性に優れるシリカ微粉体を併用することが重要である。但し、単に併用すればよいというものではなく、これらのBET比表面積の関係が大きな因子であり、酸化チタン微粉体のBET比表面積がシリカ微粉体のBET比表面積より大きいことで大きな効果を得られることが分かった。酸化チタン微粉体のBET比表面積が小さすぎるとトナー自体から離脱しやすく外添剤としての効果が低くなり、さらに現像器の中で蓄積する傾向にあった。大きすぎると環境による帯電差が顕著になってしまう。よって適正な酸化チタン微粉体のBET比表面積は71〜250m2/gであることが有効であり、好ましくは80〜180m2/gである。またシリカ微粉体のBET比表面積が大きすぎると原体の帯電性が強いためかスリーブやキャリアに移行するいわゆるスペントを起こしてしまい耐久性能を低下させてしまい、逆に小さすぎるとドラム感光体に付着、そして研磨剤として働きドラム感光体の表面を必要以上に凹凸にし、結果そこにトナーや外添剤が付着することで画像劣化(フィルミング)を起こしてしまう。よって適正なシリカ微粉体のBET比表面積は10〜70m2/gであることが有効であり、好ましくは20〜60m2/gである。
上記の各々の微粉体を単独使用しても改善効果は低く、両方を同時に使用することではじめて大きな効果が得られる。酸化チタン微粉体単独であると連続複写における転写性維持が劣り、併用においても酸化チタン微粉体の添加量をシリカ微粉体よりも少なくすることが好ましい。またシリカ微粉体単独であると連続複写におけるトナーの帯電の立ち上りが悪く、併用することでそれぞれの良い効果を高められることが分かった。
本発明において、無機微粉体の好ましい添加量は、トナー粒子100質量部に対して、酸化チタン微粉体が0.2〜4.0質量部、シリカ微粉体が0.2〜4.0質量部である。
そして上記の酸化チタン微粉体、シリカ微粉体の処理如何によって、つまりシリコーンオイルで処理されていることが、これらの改善効果に大きく影響していることも分かった。シリコーンオイル処理することで離型性を高められるため、スリーブやキャリアの汚染が少なく、そして感光ドラムや転写体などからの転写性が向上できる。とともに帯電の立ち上がりも向上する。酸化チタン微粉体におけるシリコーンオイルの添加量は2〜25質量%であることが有効であり、好ましくは4〜15質量%である。またシリカ微粉体におけるシリコーンオイルの添加量は3〜30質量%であることが有効であり、好ましくは5〜20質量%である。また、シリコーンオイルの粘度に関しては特に規定するものは無いが50〜450cStぐらいのものが好ましい。酸化チタン微粉体、シリカ微粉体の母体の帯電量や表面性の違いから、粘度や量を統一する必要は無い。またシリコーンオイル処理以前に、酸化チタン微粉体にシランカップリング剤処理、及びシリカ微粉体に有機ケイ素化合物で処理されているとより一層、シリコーンオイル処理が均一になるためか、上述の効果が高まる。
本発明に用いられる酸化チタン微粒子は、硫酸法、塩素法、揮発性チタン化合物例えばチタンアルコキシド、チタンハライド、チタンアセチルアセトネートの低温酸化(熱分解,加水分解)により得られる酸化チタン微粒子が用いられる。結晶系としてはアナターゼ型、ルチル型、これらの混晶型、アモルファスのいずれのものも用いることができる。
本発明に用いられるシリカ微粒子はケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法またはヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能であるが、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 -等の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能でありそれらも包含する。
いわゆる乾式法シリカまたはヒュームドシリカは、従来公知の技術によって製造されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次の様なものである。
SiCl2+2H2+O2→SiO2+4HCl
本発明に好ましく用いられるシリコーンオイルとしてはアミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、異種官能基変性の如き反応性シリコーン;ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、脂肪酸変性、アルコキシ変性、フッ素変性の如き非反応性シリコーン;ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ジフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーンの如きストレートシリコーンが挙げられる。
これらのシリコーンオイルの中でも離型性の点から置換基として、アルキル基、アリール基、水素原子の一部または全部がフッ素原子に置換されたアルキル基、水素を置換基として有するシリコーンオイルが好ましい。具体的には、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルである。これらのシリコーンオイルを複数用いても良い。
またシランカップリング剤としては、メトキシシラン、エトキシシラン、プロポキシシランの如きアルコキシシラン類、クロルシラン、ブロモシラン、ヨードシランの如きハロシラン類、シラザン類、ハイドロシラン類、アルキルシラン類、アリールシラン類、ビニルシラン類、アクリルシラン類、シリル化合物類、シロキサン類、シリルウレア類、シリルアセトアミド類が挙げられる。これらのシラン化合物の中でも下記一般式(II)で表わされるシラン化合物が好ましい。
(R1)nSi(OR2)4-n (II)
上記式中、R1は無置換のまたは水素原子の一部または全部がフッ素原子に置換されているアリール基、アルアルキル基、アルキニル基、アルケニル基またはアルキル基を表わし、R2はアルキル基を表わし、nは1〜3の整数を表わす。置換基R1は、同一であっても、複数の置換基を持つ場合には、それぞれの置換基R1が異なっていても良い。
R1としては、例えば、水素原子の一部または全部がフッ素原子に置換されていてもよい、トリル基、スチリル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、エチニル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基及びデシル基から選ばれる1種または、同一の複数または異なる複数の置換基を持っていても良いアルコキシシランである。
上記式(II)において、R1は、感光体ドラムのクリーニング性向上のためや粒子表面を均一に処理しメタノール濡れ性半値を大きくするために無置換のものが好ましい。
この中でも、一般式(II)においてR1が炭素数5以下のアルキル基であることが、凝集物を少なくし均一に処理するために好ましい。この炭素数5以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基及びシクロペンチル基から選ばれる1種または、同一の複数または異なる複数の置換基を持っていても良いメトキシシラン、エトキシシランである。
具体的には、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、トリブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、ジtert−ブチルメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、エチルメチルジメトキシシラン、エチルジメチルメトキシシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、プロピルジメチルメトキシシラン、ブチルメチルジメトキシシラン、ブチルジメチルメトキシシラン、及びこれらのエトキシシランである。
さらに、一般式(III)で表わされるシラン化合物を用いることができる。
(R3)nSiX4-n (III)
ただし、R3は水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていても良い、アリール基、アルアルキル基、アルキニル基、アルケニル基、アルキル基を表わし、Xはハロゲンまたはアルコキシ基を表わし、nは1〜3の整数を表わし、置換基R3は、複数の置換基を持つ場合には、同一であっても、それぞれの置換基R3が異なっていても良い。
有機ケイ素化合物の例としては、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ビス(クロロメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、ビス−N,N’−(トリメチルシリル)ピペラジン、tert−ブチルアミノトリエチルシラン、tert−ブチルジメチルアミノシラン、tert−ブチルジメチルシリルイミダゾール、tert−ブチルジメチルシリルピロール、N,N’−ジエチルアミノトリメチルシラン、1,3−ジ−n−オクチルテトラメチルジシラザン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシラザン、1,3−ジビニルテトラメチルジシラザン、ヘプタメチルジシラザン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルシクロトリシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシラザン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジメチルジシラザン、N−トリメチルシリルイミダゾール、N−トリメチルシリルモルホリン、N−トリメチルシリルピペラジン、N−トリメチルシリルピロール、N−トリメチルシリルトリアゾール、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシラザン、ヘキサフェニルシクロジシラザン、シロキサン単位を置換基とするシラザン類が挙げられる。特にシラザン化合物が疎水化が高くなりpH値を調整しやすく、低湿下と高湿下のバランスが取りやすいため好ましく用いられる。
酸化チタン微粉体、シリカ微粉体への各種処理剤の処理法としては、水系媒体中で処理する方法、有機溶剤中で処理する方法、気相中で処理する方法が挙げられる。水系媒体中で処理する方法は、酸化チタン微粉体、シリカ微粉体の如き被処理粒子を一次粒子となる様に分散し、シラン化合物を加水分解しながら処理をする。シリコーンオイルの場合はエマルジョンを利用して処理をする。この処理法では、被処理粒子を製造してから乾燥工程を経ずに、水系ペーストのまま水系媒体中に分散できるので、一次粒子に分散し易い反面、処理後、処理粒子が親油性を示すので、粒子の合一が始まり、凝集体ができやすい傾向にある。数種の処理剤で処理する時は同時に添加しても良いし、順次添加しても良い。
気相法のなかには、被処理粒子を機械的に或いは気流で十分に撹はんしながら、処理剤を滴下または噴霧して処理をする方法(これを「気相法1」と称す)がある。この際、反応機を窒素置換したり、50〜350℃に加熱することも好ましい。処理剤の粘度が高い場合には、アルコール、ケトン、炭化水素の如き溶剤を用いて希釈しても良い。また処理時に反応性を高めるために、アンモニア、アミン、アルコール、水を添加しても良い。この処理法では反応がしっかり行なわれるので、高疎水化と均一性が得られやすい好ましい方法であるが、未処理の粒子を強く長時間撹はんすると、粒子の合一化が生じたり、処理の不均一性を生じやすいので注意が必要である。
気相法のもう一つの方法として、気相法(塩素法,低温酸化法等)で被処理粒子をキャリアガス中に生成させた直後に(取り出すことをせずに)処理剤を、場合によっては溶剤で希釈して、気化、霧化し気相中で被処理粒子に処理する方法(これを「気相法2」と称す)がある。この方法では気相法1の利点に加えて、被処理粒子が合一する前に処理が行なわれるので、凝集体ができにくく好ましい方法である。数種の処理剤で処理する時同時に添加しても良いし、順次添加しても良い。
有機溶剤中で処理する方法は、被処理粒子を有機溶剤中に分散させ、処理剤により処理し、濾別または溶剤を溜去してその後乾燥する方法である。凝集物を減らすために、この後ピンミル,ジェットミルで解砕処理をほどこすことも好ましい。乾燥工程は静置下でも、流動させながらでも良く、50〜350℃程度に加熱することが好ましく、減圧しても良い。有機溶剤としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、アイソパーの如き炭化水素系有機溶剤が好ましく用いられる。分散処理する方法としては、かくはん機、振とう機、粉砕機、混合機、分散機が用いられ、中でもセラミックス、メノウ、アルミナ、ジルコニアでできたボール、ビーズの如きメディアを用いた分散機が好ましく用いられる。例えば、サンドミル、グレンミル、バスケットミル、ボールミル、サンドグラインダー、ビスコミル、ペイントシェイカー、アトライター、ダイノミル、パールミルがある。特に好ましい処理法としては、被処理粒子を有機溶剤中に分散させペーストとしてから処理剤を添加して分散機にかける方法、処理剤を含む有機溶剤の被処理粒子ペーストを分散機にかける方法、有機溶剤に処理剤と被処理粒子を加えペーストとしたものを分散機にかける方法、ペーストを分散機にかけながら処理剤を添加する方法がある。有機溶剤中で処理する方法は被処理粒子を分散した状態で処理でき、処理後も合一が起こりにくく、凝集体が発生しずらいので好ましい方法である。数種の処理剤で処理する時はスラリー調製時に同時に添加しても良いし、順次添加しても良いし、分散機にかける時に追加添加しても良い。或いは、数回分散機にかける場合には、分散機にかける毎に、予めスラリー中で添加混合或いは分散機にかけているときに順次添加しても良い。
処理方法は上記の四つの方法が利用でき、処理剤は同時に処理しても良いし、順不同で数段階に分けて処理しても良い。複数回に分けて処理する場合には、どのような処理法の組み合わせであっても良い。
どの工程を用いても処理後に、ピンミル、ハンマミル、ジェットミルの如き粉砕機を利用し解砕処理を施すことも凝集体を減らし本発明で用いる酸化チタン微粉体、シリカ微粉体の効果を十分に発揮するためにも好ましい。
本発明で使用される着色剤としては、黒色着色剤としてカーボンブラック、磁性体、イエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものを用いることができる。また、イエロー/マゼンタ/シアン着色剤をそれぞれ個別に用いて、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーとすることができる。
磁性体としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、ケイ素などの元素を含む金属酸化物などがある。中でも四三酸化鉄、γ−酸化鉄等、酸化鉄を主成分とするものが好ましい。また、トナー帯電性コントロールの観点からケイ素元素またはアルミニウム元素等、他の金属元素を含有していてもよい。これら磁性粒子は、窒素吸着法によるBET比表面積が2〜30m2/g、特に3〜28m2/gが好ましく、さらにモース硬度が5〜7の磁性粉が好ましい。
磁性体量は結着樹脂100質量部に対し30〜200質量部、好ましくは40〜200質量部、さらには50〜150質量部が好ましい。30質量部未満では着色力が不足したりトナー搬送に磁気力を用いる現像器においては、搬送性が不十分で現像剤担持体上の現像剤層にムラが生じ画像ムラが発生する傾向があり、さらに現像剤トリボの上昇に起因する画像濃度の低下が生じ易い傾向がある。一方、200質量部を超えると定着性に問題が生ずる傾向がある。
本発明のトナーをカラートナーとして用いた場合の着色剤としては、公知の染料または/及び顔料が使用される。
マゼンタトナー用着色顔料としてはC.I.ピグメントレッド1〜19,21〜23,30〜32,37〜41,48〜55,57,58,60,63,64,68,81,83,87〜90,112,114,122,123,163,202,206,207、209;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35などが挙げられる。顔料単独使用でもかまわないが、染料と顔料と併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
マゼンタトナー用染料としては、C.Iソルベントレッド1,3,8,23〜25,27,30,49,81〜84,100,109,121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8,13,14,21,27;C.I.ディスパーバイオレット1の如き油溶染料、C.I.ベーシックレッド1,2,9,12〜15,17,18,22〜24,27,29,32,34〜40;C.I.ベーシックバイオレット1,3,7,10,14,15,21,25〜28などの塩基性染料が挙げられる。
シアントナー用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2,3,15〜17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45または下記式(IV)で示される構造を有するフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料などが挙げられる。
イエロー用着色顔料としてはC.I.ピグメントイエロー1〜7,10〜17,23,65,73,83,97,180;C.I.バットイエロー1,3,20などが挙げられる。
磁性体以外の着色剤の使用量は、結着樹脂100重量部に対して好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜12重量部、最も好ましくは3〜10重量部が良い。黒色着色剤として磁性体を用いた場合には、他の着色剤と異なり、樹脂100質量部に対し30〜200質量部添加して用いられる。
本発明のトナーは、トナーに電荷を保有せしめるために有機金属化合物を用いても良いが、例えば下記に示す芳香族オキシカルボン酸誘導体の金属化合物が挙げられる。
上記式中のM2は2価の金属原子であり、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Pb2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Cu2+が挙げられる。M3は3価の金属原子であり、Al3+、Cr3+、Fe3+、Ni3+が挙げられる。M4は4価の金属原子であり、Zr4+、Hf4+、Mn4+、Co4+が挙げられる。これらの金属原子の中で好ましいのはAl3+、Fe3+、Cr3+、Zr4+、Hf4+、Zn2+である。
また、式中R1〜R4は同一または異なる基を示し、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、−OH、−NH2、−NH(CH3)、−N(CH3)2、−OCH3、−O(C2H5)、−COOHまたは−CONH2を示す。好ましいR1としては、ヒドロキシル基、アミノ基及びメトキシ基が挙げられるが、中でもヒドロキシル基が好ましい。
本発明のトナーを二成分系現像剤に用いる場合は、トナーは磁性キャリアと混合して使用される。磁性キャリアとしては、例えば表面酸化または未酸化の鉄、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子及びフェライト等が使用できる。
上記磁性キャリア粒子の表面を樹脂で被覆した被覆キャリアは、現像スリーブに交流バイアスを印加する現像法において特に好ましい。被覆方法としては、樹脂の如き被覆材を溶剤中に溶解もしくは懸濁せしめて調製した塗布液を磁性キャリアコア粒子表面に付着せしめる方法、磁性キャリアコア粒子と被覆材とを粉体で混合する方法等、従来公知の方法が適用できる。
磁性キャリアコア粒子表面への被覆材料としては、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂が挙げられる。これらは、単独或いは複数で用いる。
本発明のトナーと磁性キャリアとを混合して二成分系現像剤を調製する場合、その混合比率は現像剤中のトナー濃度として、2質量%〜15質量%、好ましくは4質量%〜13質量%にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2質量%未満では画像濃度が低下しやすく、15質量%を超えるとカブリや機内飛散が発生しやすい。
〔酸価の測定方法〕
試料2〜10gを200〜300mlの三角フラスコに秤量し、メタノール:トルエン=30:70の混合溶媒約50ml加えて樹脂を溶解する。溶解性が悪いようであれば少量のアセトンを加えても良い。0.1%のブロムチモールブルーとフェノールレッドの混合指示薬を用い、予め標定されたN/10水酸化カリウム〜アルコール溶液で滴定し、アルコールカリウム液の消費量から次の計算式(V)で酸価を求める。
酸価=KOH(ml数)×N×56.1/試料重量 (V)
(ただしNはN/10−KOHのファクター)
トナー中に磁性体が含有する場合には、磁性体を酸で溶出させた残分を試料として測定する。
〔吸熱ピーク〕
示差走査熱量計(DSC測定装置)「DSC−7」(パーキンエルマー社製)を用いて以下のようにして測定する。
測定試料は2〜10mg、好ましくは5mgを精密に秤量する。これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。この昇温過程で、温度30〜200℃の範囲におけるDSC曲線のメインピークの吸熱ピークが得られる。
〔GPC測定〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるクロマトグラムの分子量は次の条件で測定される。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料濃度として0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のTHF試料溶液を約50〜200μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数(リテンションタイム)との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば東ソー社製或いはPressure Chemical Co.製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
カラムとしては、103〜2×106の分子量領域を的確に測定するために、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807の組み合わせや、Waters社製のμ−styragel 500、103、104、105の組み合わせを挙げることができる。
〔トナー粒度分布の測定〕
本発明において、トナーの平均粒径及び粒度分布はコールターカウンターTA−II型(コールター社製)を用いて行うが、コールターマルチサイザー(コールター社製)を用いることも可能である。電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5ml加え、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2.00μm以上のトナーの体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出した。それから本発明に係る体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求めた。
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm;2.52〜3.17μm;3.17〜4.00μm;4.00〜5.04μm;5.04〜6.35μm;6.35〜8.00μm;8.00〜10.08μm;10.08〜12.70μm;12.70〜16.00μm;16.00〜20.20μm;20.20〜25.40μm;25.40〜32.00μm;32.00〜40.30μmの13チャンネルを用いる。
以下に本発明の実施態様を示す。
〔実施態様1〕
結着樹脂、着色剤、離型剤及び、BET比表面積の異なる二種の無機微粉体を少なくとも含有するトナーにおいて、
該トナーの示差走査熱量計(DSC)測定における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が60〜90℃の範囲にあり、
上記離型剤が、少なくともスチレン系モノマーによって炭化水素系ワックスを処理してなる、少なくともスチレン系ユニットを有する処理ワックスであり、該処理ワックスはテトラヒドロフラン(THF)の可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量測定で2ピークを有し、高分子側のピーク[1]の面積をS1、低分子側のピーク[2]の面積をS2とすると、面積比が下記式(1)を満たし、
0.2≦S2/(S1+S2)≦0.9 (1)
上記無機微粉体が(i)酸化チタン微粉体及びシリカ微粉体であり、(ii)該酸化チタン微粉体のBET比表面積が、該シリカ微粉体のBET比表面積よりも大きく、(iii)該酸化チタン微粉体及び該シリカ微粉が少なくともシリコーンオイルで処理されていることを特徴とするトナー。
〔実施態様2〕
実施態様1において、該処理ワックスのTHF可溶分のGPCによる分子量測定において、[1]の数平均分子量(Mn[1])が8,000以下、[2]の数平均分子量(Mn[2])が200以上を満足する。
〔実施態様3〕
実施態様1または2において、該処理ワックスのTHF可溶分のGPCによる分子量測定において、Mn[1]とMn[2]が下記式(2)、
1000≦(Mn[1]−Mn[2])≦6000 (2)
を満足する。
〔実施態様4〕
実施態様1乃至3のいずれかにおいて、該処理ワックスは、トナー中の樹脂成分100質量部に対して1〜20質量部含有されている。
〔実施態様5〕
実施態様1乃至4のいずれかにおいて、該処理ワックスは炭化水素系ワックス100質量部に対して、スチレン系モノマー5〜100質量部で処理している。
〔実施態様6〕
実施態様1乃至5のいずれかにおいて、該処理ワックスは、少なくともスチレン系モノマーと不飽和カルボン酸系モノマーによって処理されることにより、少なくともスチレン系ユニットと不飽和カルボン酸系ユニットを有する炭化水素系ワックスである。
〔実施態様7〕
実施態様6において、該処理ワックスは炭化水素系ワックス100質量部に対して、スチレン系モノマーと不飽和カルボン酸系モノマーの総計5〜100質量部で処理されており、(スチレン系モノマー質量部数/不飽和カルボン酸系モノマーの質量部数)が1〜20である。
〔実施態様8〕
実施態様1乃至7のいずれかにおいて、該処理ワックスは、パラフィン炭化水素系ワックスを処理したものである。
〔実施態様9〕
実施態様1乃至8のいずれかにおいて、該トナーの酸価が5〜45mgKOH/gであり、該トナーのTHF可溶分のGPCによる分子量分布が、分子量3,000〜40,000の領域にメインピークが存在し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が70以上である。
〔実施態様10〕
実施態様1乃至9のいずれかにおいて、該結着樹脂が、ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットとを有しているハイブリッド樹脂、またはハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂成分との混合物である。
〔実施態様11〕
実施態様1乃至9のいずれかにおいて、該結着樹脂が、ポリエステル樹脂とビニル系重合体の混合物、或いは、ハイブリッド樹脂とビニル系重合体の混合物である。
〔実施態様12〕
実施態様1乃至9のいずれかにおいて、該結着樹脂は、ポリエステル樹脂、ハイブリッド樹脂、及びビニル系重合体の混合物である。
〔実施態様13〕
実施態様1乃至12のいずれかにおいて、該酸化チタン微粉体のBET比表面積が71〜250m2/gである。
〔実施態様14〕
実施態様1乃至13のいずれかにおいて、該シリカ微粉体のBET比表面積が10〜70m2/gである。
〔実施態様15〕
実施態様1乃至14のいずれかにおいて、該酸化チタン微粉体がシランカップリング剤で処理された後、シリコーンオイルで処理されている。
〔実施態様16〕
実施態様1乃至15のいずれかにおいて、該シリカ微粉体が有機ケイ素化合物で処理された後、シリコーンオイルで処理されている。
〔実施態様17〕
実施態様1乃至16のいずれかにおいて、該酸化チタン微粉体に用いられるシリコーンオイルの添加量が2〜25質量%である。
〔実施態様18〕
実施態様1乃至17のいずれかにおいて、該シリカ微粉体に用いられるシリコーンオイルの添加量が3〜30質量%である。
〔実施態様19〕
実施態様1乃至18のいずれかにおいて、該シリカ微粉体の外添量が、酸化チタン微粉体の外添量よりも多い。
以下、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(ハイブリッド樹脂製造例)
ビニル系モノマー組成物として、
スチレン 2.0mol
2−エチルヘキシルアクリレート 0.21mol
フマル酸 0.16mol
α−メチルスチレンの2量体 0.03mol
ジクミルパーオキサイド 0.05mol
を滴下ロートに入れる。また、
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 7.0mol
ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 3.0mol
テレフタル酸 3.0mol
無水トリメリット酸 2.0mol
フマル酸 5.0mol
酸化ジブチル錫 0.2g
をガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー、及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内に置いた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で攪拌しつつ、先の滴下ロートより上記ビニル系モノマー組成物を4時間かけて滴下した。次いで200℃に昇温を行い、4時間反応せしめてハイブリッド樹脂を得た。GPCによる分子量測定の結果を表1に示す。
(ポリエステル樹脂製造例)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 3.5mol
ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 1.5mol
テレフタル酸 1.5mol
無水トリメリット酸 1.0mol
フマル酸 2.5mol
酸化ジブチル錫 0.1g
をガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー、及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内に置いた。窒素雰囲気下で、220℃で5時間反応させ、ポリエステル樹脂を得た。GPCによる分子量測定の結果を表1に示す。
(処理ワックスの製造法)
スチレンモノマー520gとノルマルブチルアクリレート120gに反応開始剤としてジクミルパーオキサイド80gを添加した後、加熱溶融したパラフィンワックスA3280g中に攪拌しながら滴下し、4時間反応させ、処理ワックス1を得た。
パラフィンワックスの種類、スチレンモノマーの比率、不飽和カルボン酸系モノマーの種類や比率、加熱温度等を変え、同様に処理ワックスを得た。比率及び特性を表2、表3に示す。
本実施例に用いた酸化チタン微粉体を表4に記載した。
処理方法a:水系媒体中での処理、iso−ブチルトリメトキシシランを酸化チタン微粉体に対して10質量%添加し、且つ表4に示すジメチルシリコーンオイルを添加して製造する。
処理方法b:水系媒体中での処理、iso−ブチルトリメトキシシランを用いずに表4に示すジメチルシリコーンオイルのみで添加して製造する。
処理方法c:水系媒体中での処理、iso−ブチルトリメトキシシランを酸化チタン微粉体に対して10質量%添加して製造する。
本実施例に用いたシリカ微粉体を表5に記載した。
処理方法A:気相法1での処理、ヘキサメチルジシラザンをシリカ微粉体に対して10質量%添加と、表5に示すジメチルシリコーンオイルを添加して気相法1で製造する。
処理方法B:気相法1での処理、ヘキサメチルジシラザンを用いずに表5に示すジメチルシリコーンオイルのみで添加して製造する。
処理方法C:気相法1での処理、ヘキサメチルジシラザンをシリカ微粉体に対して10質量%添加して製造する。
(トナー製造法)
表6に示すトナー材料をヘンシェルミキサーにより十分予備混合を行った後、二軸式押出機で溶融混練し、冷却後、ハンマーミルを用いて粒径約1〜2mm程度に粗粉砕した。次いでエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。さらに、得られた微粉砕物を多分割分級装置で分級して重量平均粒径8.0μmのトナー樹脂粒子を得た。
上記トナー樹脂粒子に対して、表6に示す酸化チタン微粉体及びシリカ微粉体をヘンシェルミキサーにより外添してトナー1〜21とした。トナーの重量平均径は6.0μmであった。
さらに、該トナーと、シリコーン樹脂で表面被覆した磁性フェライトキャリア粒子(平均粒径45μm)とを、トナー濃度が7.0質量%になるように混合し、二成分系現像剤1〜21とした。
以下のようにしてトナー及び現像剤の評価を行った。
〔トナーの特性〕
前記した測定方法により、各トナーの酸価、DSC曲線における最大吸熱ピーク温度、THF可溶分のGPCによる分子量をそれぞれ測定した。結果を表7に示す。
〔耐ブロッキング性〕
トナーの保存性に関しては、50℃のオーブン内にて1週間放置した際の耐ブロッキング性により評価した。該評価としては目視による凝集性のレベルを判定した。
トナー凝集性評価基準を以下に示す。
A:凝集体が全く見られなく流動性が非常に良い。
B:凝集体が全く見られない。
C:若干の凝集体は見られるがすぐにほぐれる。
D:現像剤撹拌装置で凝集体がほぐれる(普通)。
E:現像剤撹拌装置では凝集体が十分にほぐれない(やや悪い)。
〔定着温度幅〕
定着温度幅はカラー複写機「CLC900」(キヤノン製)のオイル塗布機構を取り外し、さらに定着温度を自由に設定できるように改造して定着試験を行った。このときの画像面積比率は25%であり、単位面積当たりのトナー載り量は0.7mg/cm2に設定した。定着開始温度とオフセット開始温度の測定は、定着器の設定温度を120〜210℃の温度範囲で5℃おきに温度調節して、各々の温度で定着画像を出力し、得られた定着画像を4.9kPa(50g/cm2)の荷重をかけたシルボン紙で摺擦し、摺擦前後の濃度低下率が10%以下となる定着温度を定着開始温度とした。また定着開始温度からさらに設定温度を上げて行き、目視で高温オフセットの発生した温度をオフセット開始温度とした。
〔転写率〕
転写率は、耐久前後の画像を現像、転写し、感光体上の転写前のトナー量(単位面積あたり)と、転写材上のトナー量(単位面積あたり)をそれぞれ測定し、下式により求めた。
転写率(%)=(転写材上のトナー量/感光体上の転写前のトナー量)×100
〔帯電量〕
帯電量の測定は現像剤50gをサンプルし、常温常湿環境(N/N:23℃/60%)、常温低湿環境(N/L:23℃/10%)、及び高温高湿環境(H/H:35℃/80%)の各環境で1昼夜放置し、その後50ccのポリ容器に入れて200回を1分間で手で振り、図3の装置を用いて測定した。
底に500メッシュのスクリーン3のある金属製の測定容器2に摩擦帯電量を測定しようとする現像剤を約0.5gを入れ金属製のフタ4をする。このときの測定容器2全体の質量を秤りWl(g)とする。次に、吸引機1(測定容器2と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口7から吸引し風量調節弁6を調整して真空計5の圧力を250mmAqとする。この状態で充分、好ましくは2分間吸引を行いトナーを吸引除去する。
このときの電位計9の電位をV(ボルト)とする。ここで8はコンデンサーであり容量をC(μF)とする。吸引後の測定容器全体の質量を秤りW2(g)とする。このトナーの摩擦帯電量(mC/kg)は下記式の如く計算される。
摩擦帯電量(mC/kg)=(C×V)/(W1−W2)
〔耐久性〕
耐久性は市販の普通紙フルカラー複写機(CLC900)を用い、常温環境下(N/N:23℃/60%)で、画像面積比率25%のオリジナル原稿を用いて、連続複写2万枚の試験を行い、初期と2万枚耐久後の画像濃度の変化を評価の基準とした。画像濃度は、マクベス社製のマクベス濃度計にてオリジナル画像のベタ部(初期画像濃度=1.5)を5回平均し、画像濃度の変化値を見た。
〔カブリ〕
カブリは白地部分の白色度をリフレクトメーター(東京電色社製)により測定し、その白色度と転写紙の白色度の差からカブリ濃度(%)を算出し、評価した。評価基準は次の通りである。
A:非常に良好(1.0%未満)
B:良好(1.0%〜2.0%未満)
C:普通(2.0%〜3.0%未満)
D:悪い(3.0%以上)
(実施例1)
20000枚後の耐久性も非常に良好な転写生、現像性を示し、各環境における帯電量も安定していた。またカブリも発生しなかった。さらに低温定着性、耐高温オフセット性にも優れ、広い定着温度幅をとることができた。結果を表7、8に示す。
(実施例2、3)
実施例2、3も実施例1と同様に、20000枚後の耐久性も非常に良好な転写生、現像性を示し、各環境における帯電量も安定していた。またカブリも発生しなかった。さらに低温定着性、耐高温オフセット性にも優れ、広い定着温度幅をとることができた。結果を表7、8に示す。
(実施例4、5)
実施例4、5も実施例1と同様に、20000枚後の耐久性も非常に良好な転写生、現像性を示し、各環境における帯電量も安定していた。またカブリも発生しなかった。実施例4では保存性が若干悪くなったが問題ないレベルであった。また、実施例5では定着開始温度が若干高くなったが問題ないレベルであった。結果を表7、8に示す。
(実施例6〜11)
実施例6〜11では現像性や転写性において若干不利になるものが有った。また各環境における帯電量もやや不安定になるものもあったが問題なく使用できるレベルであった。また、定着性に関しては、低温定着性、耐高温オフセット性に優れ、広い定着温度幅をとることができた。結果を表7、8に示す。
(実施例12)
実施例12ではワックスの分散が若干悪くなっているためか、耐久における画像濃度が若干低下し、各環境における帯電量も若干不安定であった。また、定着性に関しては、低温定着性、耐高温オフセット性に優れ、広い定着温度幅をとることができた。結果を表7、8に示す。
(比較例1)
比較例1では処理ワックスの軟化点が低いためか、保存性が著しく悪くなった。また、耐久後、画像濃度の低下やカブリが発生した。定着性は耐オフセット性が悪くなった。結果を表7、8に示す。
(比較例2)
比較例2では処理ワックスの軟化点が高いためか、低温定着性が悪くなり、定着温度幅が狭くなった。結果を表7、8に示す。
(比較例3)
比較例3では処理ワックスの離型性がほとんど無いためか定着温度幅がほとんど無かった。結果を表7、8に示す。
(比較例4)
比較例4ではトナー中の処理ワックスが脱離しているためか、耐久後、画像濃度の低下が見られた。また、脱離ワックスがキャリアも汚染しているためか、カブリが発生した。また、転写性も悪化した。結果を表7、8に示す。
(比較例5)
比較例5では保存性が悪くなったためか、各環境による帯電差が大きくなった。また、処理ワックスの離型性が悪くなったためか、定着温度幅が狭くなり、特に耐高温オフセット性が悪くなった。結果を表7、8に示す。
(比較例6)
比較例6では環境による帯電差が大きくなった。また、転写性が悪くなり、画像濃度も低くなった。結果を表7、8に示す。
(比較例7)
比較例7では画像濃度が高くなり、転写性が若干悪くなった。結果を表7,8に示す。
(比較例8)
比較例8では画像濃度が大きく変化し、転写性が若干悪くなった。結果を表7,8に示す。
(比較例9)
比較例9では環境による帯電差が非常に大きくなった。また、転写性やカブリが悪くなり、画像濃度も非常に低くなった。また、定着性では耐高温オフセット性が悪くなった。さらに保存性も悪かった。結果を表7、8に示す。