JP2005072339A - 光源装置とその製造方法、並びに投射型表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 チップ12と、このチップ12を冷却用流体Fによって直接冷却する機構とを備えてなるLED1において、チップ実装後に、チップ12及び基台10の表面に無機絶縁材料を蒸着し、流体Fに露出されるチップ12及び基台10の外表面を全て透光性絶縁膜からなる保護膜17で覆う。
【選択図】 図1
Description
そこで、近年、新しい光源としてLEDが注目されている。LEDは超小型・超軽量、長寿命である。また、駆動電流の制御によって、点灯・消灯、出射光量の調整が自由にできる。この点でプロジェクタの光源としても有望であり、既に小型・携帯用の小画面プロジェクタへの応用開発が始まっている。
そこで、容器内に充填したアルコール等の液体によって直接LEDチップを冷却する構造(特許文献1参照)や、絶縁性かつ不活性な透光性液体にLEDチップを浸透させ、その液体を流入・流出させることで効率的にチップの冷却を行なう構造(特許文献2〜特許文献4参照)が提案されている。この構造においては、低温の流体を強制的に循環させれば、より高い冷却性能を得ることができる。
すなわち、LEDチップを直接強制的に冷却すればLEDチップ内部に大きな温度差を生ずることになるが、チップを構成する各層は熱膨張率が異なるため、この温度差によって熱変形に伴う応力が生じる。このような応力はチップの層内に欠陥を生じさせ、短寿命化の原因となる。
さらに、フェースアップ実装してワイヤボンディングを施した構造のものでは、流体の圧力によって、電極とワイヤとの接合部にはがれが生じる虞があった。
よって、流体によるチップ直接冷却方式のLEDを実用化するためには、これらの問題を解決することが必要であった。
また、このように流体と固体光源との間に保護膜を配置した場合、流体との界面に生じる温度変化(温度勾配)はこの保護膜によって一部吸収されるため、固体光源表面に生じる温度勾配は、保護膜がない場合に比べて小さくなる。このため、固体光源の層間で生じる熱応力を従来に比べて緩和することができ、素子の寿命を長寿命化することができる。
このように、固体光源だけでなく、この固体光源を支持する基台の表面をも覆うように保護膜を設けることで、上記冷却用流体との化学反応による基台の変質や腐食を防止することができる。また、基台が金属製である場合には、この基台自体を固体光源の電極として用いる構成も想定されるが、このような場合であっても、本発明のように基台の表面を保護膜で覆うことで、電極と基台、或いは、ボンディングワイヤ(フェースアップ実装の場合)と基台との短絡を確実に防止することが可能となる。
上述の保護膜には有機材料を用いることも可能であるが、発光強度が大きくなった場合には、発光光によって保護膜自体が劣化し、絶縁性や透明性が低下する虞がある。このため、保護膜をこのような光劣化のない無機材料によって構成することで、素子の信頼性を高めることができる。
通常、固体光源の構成材料は高屈折率(例えば、屈折率が3程度)の材料からなるため、これを流体(例えば、屈折率は1.5程度)に直接暴露すると、発光光の多くが固体光源と流体との界面で全反射されてしまう。このように反射された光は照明に寄与しないだけでなく、熱に変換されることで、素子の発光特性を劣化させる要因となる。このため、光取り出し効率を高めるために、固体光源と流体との間にその中間の屈折率を有する材料(本発明では、保護膜がこの中間材料として構成される)を配置する必要がある。しかし、前述のように、固体光源と流体との屈折率差は極めて大きいため、固体光源−流体間の膜を1層としただけでは十分な効果が得られない。このため、保護膜を積層膜とし、固体光源側から順に屈折率が小さくなるように膜材料を設計することが好ましい。このように固体光源側から流体側に向けて屈折率を徐々に変化させると、各境界面(固体光源−絶縁膜間の界面、隣接する絶縁膜間の界面、絶縁膜−流体間の界面)では、全反射が生じる臨界角が大きくなり、全反射される光の割合が小さく、即ち、光の取り出し効率が高くなる。
冷却用流体には、有機材料を用いることも可能であるが、発光強度が大きくなった場合には、発光光によって冷却用流体自体が劣化する虞がある。また、保護膜に光触媒作用を有する材料(例えばTiO2等)を用いた場合には、その劣化の程度は更に大きくなる。このため、冷却用流体をこのような光劣化のない無機材料によって構成することで、素子の信頼性を高めることができる。
また、本発明では、保護膜の膜厚は、絶縁性や放熱性の観点から任意に決めることができるが、この膜厚が0.8μm以上、1.5μm以下であれば、本発明の効果を十分に得ることができる。
このように保護膜を、固体光源表面だけでなく、この固体光源を支持する基台の表面をも覆うように形成することで、上記冷却用流体との化学反応による基台の変質や腐食を防止することができる。また、基台が金属製である場合には、この基台自体を固体光源の電極として用いる構成も想定されるが、このような場合であっても、本発明のように基台の表面を保護膜で覆うことで、電極と基台、或いは、ボンディングワイヤ(フェースアップ実装の場合)と基台との短絡を確実に防止することが可能となる。
また、上記保護膜形成工程では、少なくとも固体光源との界面に位置する保護膜を蒸着法により形成することが好ましい。
保護膜の形成方法としては、蒸着法(スパッタ法,プラズマCVD法,EB蒸着法等)や液体塗布法(ゾル−ゲル法,SOG(Spin On Glass)法等)等の各種の成膜方法を用いることができるが、蒸着法で形成された膜(蒸着膜)は液体塗布法で形成された膜(塗布膜)に比べて均一性や緻密性の面で優れているため、本発明のように保護膜に高い絶縁性が求められる場合には、塗布膜よりも蒸着膜の方が適している。
この方法によれば、固体光源の全面に均一に膜を形成することができる。特に、固体光源をフェースアップ実装してワイヤボンディングを施した場合には、このボンディングワイヤの影になる部分に保護膜が十分に形成されない虞があるが、本方法を用いれば、このような不具合を回避することができる。また、LED等の半導体発光素子では、光の取り出し効率を高めるために、基台に凹部(例えば基台表面から離れるに従って開口面積が広くなるようなテーパ状の傾斜面を有する凹部)を設け、この中に固体光源を配置した構造のものが既に開発されているが、この構造に回転斜方蒸着法を適用した場合には、凹部の内壁面にも十分な厚みの保護膜を形成することができる。
前述のように、保護膜の形成には、より緻密な膜を形成することのできる蒸着法が適しているが、フェースダウン実装のように固体光源と基台との間に僅かな隙間が生じる場合には、蒸着法ではこの隙間に十分な膜形成を行なうことはできない。したがって、このような場合には、小さな隙間にも膜形成を行なうことのできる液体塗布法が適している。
本構成によれば、上述の光源装置を備えたことで、明るく且つ信頼性の高い投射型表示装置を提供することができる。
[第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態に係る光源装置の一例である半導体発光素子(LED)の概略構成を示す断面図、図2はこのLEDに備えられた固体光源(LEDチップ)の要部構成を示す拡大断面図、図3はこのLEDの製造方法を説明するための概略工程図である。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。
チップ12は、例えばAlGaInPからなる活性層をn型及びp型のクラッド層によって挟んだダブルへテロ構造の半導体チップであり、n型クラッド層上に設けられたn側電極を下にして、Agペーストによって基台10にマウントされている。なお、チップサイズは例えば1mm×1mmである。
なお、パイプ11a,11bのサイズは例えばΦ2とされている。また、流体Fとしては、シリコンオイルや水,アルコール等の液状材料、或いは、窒素ガス等の気体のいずれを用いてもよい。本実施形態では、流体Fとして例えば窒素ガスを用い、この窒素ガスの温度を20℃,流量を2cm3/sとする。
なお、本実施形態では、例えば第1の絶縁膜をTa2O5,第2の絶縁膜をAl2O3,第3の絶縁膜をSiO2とする。また、本実施形態では保護膜の膜厚を0.8μm以上、1.5μm以下とする。
まず、図3(a)に示すような凹部Gに通じる孔10bを備えたリフレクター一体型の基台10を用意する。そして、この基台10の凹部GにAgペーストによってチップ12をマウントし、ワイヤボンディングを施す(実装工程)。図3(b)はチップ実装後の状態を示す図である。
このように保護膜17が形成されたら、次に、流路パイプ11a,11bを装着し、その後、樹脂等からなる透明なレンズキャップ18を凹部Gの上方に被さるように取り付ける。以上により、LED1が製造される。
また、本実施形態では、チップ12や基台10は保護膜17によって冷却用流体Fから完全に隔離されるため、流体Fとの化学反応によってチップ12が劣化したり、基台10が変質,腐食したりすることはない。
また、本実施形態では保護膜17及び流体Fを無機材料としているため、これがチップからの発光光によって光劣化することがなく、このことは更なる素子の信頼性向上につながる。
次に、図4を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る光源装置について説明する。なお、本実施形態では、上記第1実施形態と同様の部材又は部位については同じ符号を付し、その説明を一部省略する。
本実施形態のLED(光源装置)2は、固体光源としてのLEDチップ22を半導体材料基板29にフェースダウン実装(フリップチップ実装)し、この基板29を金属製の基台20の上に配置したものである。
基台20は高反射率の金属材料(例えばAl合金)からなり、この基台20はチップ22の発光光を反射するリフレクターとしても機能する。また、このLED2では、チップ22からの光の取り出し効率を高めるために、チップ22を基台20に設けた凹部Gの中に配置している。この凹部Gは、基台表面から離れるに従って開口面積が広くなるようなテーパ形状の傾斜面20aを有しており、チップ22からこのチップの実装面に対して水平方向(チップの配置された基台底面に平行な方向)に発した光を、実装面に垂直な方向に反射して取り出せるようになっている。
前述のように、保護膜の形成には、より緻密な膜を形成することのできる蒸着法が適している。しかし、フェースダウン実装のように基台20や半導体基板29とチップ22との間に僅かな隙間が生じる場合には、蒸着法ではこの隙間に十分な膜形成を行なうことはできない。したがって、本実施形態では、この保護膜27の形成方法として液体塗布法が適している。しかし、塗布膜は緻密性の面で課題があるため、保護膜27の一部のみを塗布法で形成し、他の部分を蒸着法で形成することが好ましい。
次に、図5を参照しながら、本発明の第3実施形態に係る光源装置について説明する。なお、本実施形態では、上記第1,第2実施形態と同様の部材又は部位については同じ符号を付し、その説明を一部省略する。
本実施形態のLED(光源装置)3は、固体光源としてのLEDチップ32を金属製の基台30の上にフェースダウン実装したものである。
基台30は高反射率の金属材料(例えばAl合金)からなり、この基台30はチップ32の発光光を反射するリフレクターとしても機能する。また、このLED3では、チップ32からの光の取り出し効率を高めるために、チップ32を基台30に設けた凹部Gの中に配置している。この凹部Gは、基台表面から離れるに従って開口面積が広くなるようなテーパ形状の傾斜面30aを有しており、チップ32からこのチップの実装面に対して水平方向(チップの配置された基台底面に平行な方向)に発した光を、実装面に垂直な方向に反射して取り出せるようになっている。
次に、図6を参照しながら、本発明の投射型表示装置について説明する。
本実施の形態の投射型表示装置は、R(赤)、G(緑)、B(青)の異なる色毎に透過型液晶ライトバルブを備えた3板式の投射型カラー液晶表示装置である。図6はこの投射型液晶表示装置を示す概略構成図であって、図中、符号100R,100G,100Bは照明装置、111,112はフライアイレンズ、200R,200G,200Bは液晶ライトバルブ(光変調装置)、300はクロスダイクロイックプリズム(色合成手段)、400は投射レンズを示している。
このように、本実施形態の投射型表示装置は上述の光源装置を照明装置として備えているため、明るく且つ信頼性の高い投射型表示装置を実現することができる。
例えば、上述のLED1〜3では保護膜を3層構造として説明したが、これを2層又は4層以上の多層膜とすることも可能である。
また、上記実施形態では光源装置を半導体発光素子とした例について説明したが、この光源装置は有機EL素子であってもよい。
また、上記実施形態で示した光源装置の構成はほんの一例に過ぎず、これ以外の構成を採用することも可能である。いずれにしても、光源装置が、固体光源と、この固体光源を冷却用流体によって冷却する冷却機構を備え、固体光源の流体に対する露出面が全て保護膜で覆われていればよい。
Claims (15)
- 固体光源と、この固体光源を冷却用流体によって直接冷却する機構とを備えてなる光源装置であって、
少なくとも上記流体に対する固体光源の露出面が全て覆われるように、上記固体光源のその電極を含む外表面に透光性絶縁材料からなる保護膜が設けられたことを特徴とする、光源装置。 - 上記保護膜が、上記固体光源が実装された基台の、上記流体に対する露出面を覆うように設けられたことを特徴とする、請求項1記載の光源装置。
- 上記保護膜が無機材料からなることを特徴とする、請求項1又は2記載の光源装置。
- 上記保護膜が互いに屈折率の異なる複数の絶縁膜の積層膜からなり、これらの絶縁膜は、上記固体光源に対して屈折率の高い順に積層されたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの項に記載の光源装置。
- 上記保護膜が、固体光源側から順に第1,第2,第3の3層の絶縁膜が積層された構造を有し、上記第1の絶縁膜がTiO2,Ta2O5,ZnO,ZrO2のいずれかを含み、第2の絶縁膜がMgO,Al2O3のいずれかを含み、第3の絶縁膜がSiO2,MgF2のいずれかを含むことを特徴とする、請求項4記載の光源装置。
- 上記冷却用流体が無機材料からなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかの項に記載の光源装置。
- 上記冷却用流体が液状材料からなることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの項に記載の光源装置。
- 上記保護膜の膜厚が0.8μm以上、1.5μm以下であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかの項に記載の光源装置。
- 固体光源と、この固体光源を冷却用流体によって直接冷却する機構とを備えてなる光源装置の製造方法であって、
基台上に固体光源を実装する実装工程と、
少なくとも上記流体に対する固体光源の露出面が全て覆われるように、この実装された固体光源のその電極を含む外表面に絶縁材料からなる透光性の保護膜を形成する保護膜形成工程とを備えたことを特徴とする、光源装置の製造方法。 - 上記保護膜形成工程では、少なくとも固体光源との界面に位置する保護膜を蒸着法により形成することを特徴とする、請求項9記載の光源装置の製造方法。
- 上記保護膜形成工程では、上記保護膜を回転斜方蒸着法により形成することを特徴とする、請求項10記載の光源装置の製造方法。
- 上記実装工程は上記固体光源を基台上にフェースダウン実装する工程であり、上記保護膜形成工程では、上記保護膜の少なくとも一部を液体塗布法により形成することを特徴とする、請求項9又は10記載の光源装置の製造方法。
- 上記保護膜形成工程は上記保護膜を複数の絶縁膜の積層膜として形成する工程であり、この保護膜形成工程では、最も固体光源側に配置される絶縁膜を蒸着法により形成し、固体光源から最も離れた位置に配置される絶縁膜を液体塗布法により形成することを特徴とする、請求項12記載の光源装置の製造方法。
- 液体塗布法により形成する部分の保護膜の膜厚が0.3μm以下であることを特徴とする、請求項12又は13記載の光源装置の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかの項に記載の光源装置と、上記光源装置から出射された光を変調する光変調装置と、変調された光を投射する投射レンズとを備えたことを特徴とする、投射型表示装置。
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