JP2005068057A - グリア瘢痕形成抑制剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】アストロサイトの形態変化作用を有する物質の該作用を抑制する薬剤を提供する。
【解決手段】
ヘパリン又はヘパリン誘導体を有効成分とする本発明抑制剤を用いることにより、アストロサイトから分泌されるFGF-2等のアストロサイトの形態変化作用を有する物質の同作用を抑制し、あるいはアストロサイトの活性化を抑制することにより、形態変化を起こして細くなったグリア細胞同士が細胞間架橋により接着し、集合体を形成することによるグリア瘢痕形成を有効に抑制する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ヘパリン又はヘパリン誘導体を有効成分として含有する、アストロサイトの形態変化促進作用を有する物質の該作用抑制剤に関する。
また、本発明は、ヘパリン又はヘパリン誘導体を有効成分として含有するアストロサイト活性化抑制剤に関する。
更に、本発明は、ヘパリン又はヘパリン誘導体を有効成分として含有するグリア瘢痕形成抑制剤に関する。
成熟哺乳動物の中枢神経軸索が損傷した場合、その損傷部位を越えて中枢神経軸索は再生・伸長しない。これは、中枢神経疾患の一因ともなっており、その改善方法を見い出すことは臨床的価値が高い。中枢神経軸索が再生・伸長しない原因としては、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリアなどからなるグリア細胞(中枢神経系を構成する非神経系の支持細胞の総称)が自己分泌する塩基性線維芽細胞増殖因子(以下、FGF-2という)の作用などによりグリア細胞が活性化、増殖、遊走して損傷部位に集まり、形態変化を起こして細くなったグリア細胞同士が細胞間架橋により接着し、集合体を形成する(以下、グリア瘢痕という)ためと考えられている。
また、グリア瘢痕は神経軸索伸長に対して物理的バリアーとなるだけでなく、グリア瘢痕を形成するグリア細胞が分泌するコンドロイチン硫酸プロテオグリカンなどの阻害因子が神経軸索伸長を阻害することが知られている(非特許文献1)。現在、神経軸索伸長を阻害する阻害因子の制御とグリア瘢痕形成抑制の2方向から動物実験並びに臨床試験が実施されており(非特許文献2-4)、阻害因子の制御については、阻害因子であるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンに対し、コンドロイチナーゼを作用させることで、軸索の伸長が促進されるとの報告がある(非特許文献5-6)が、グリア細胞が分泌する他の物質や物理的バリアーの問題は依然として残っており、有効な手段が見い出されていなかった。グリア瘢痕の形成は、FGF-2などの増殖因子が受容体に結合することにより細胞外からのシグナルが細胞内へと入りアストロサイト細胞の細胞核へと伝達され、次いで、核内の転写因子の調節によりタンパク質の発現変化が起こるという一連のカスケードにより引き起こされると考えられている。特に、FGF-2がグリア細胞活性化に重要な役割を果たしていることが、培養グリア細胞(非特許文献7)並びに損傷脳部位への注入実験(非特許文献8-9)から明らかになっている。
FGF-2が作用するには、ヘパラン硫酸あるいはヘパリンなどのポリマーと結合しFGF-2が二量体を形成することが必要とされている(非特許文献10)のに対し、ヘパリンオリゴマーは、二量体形成を阻害し、FGF-2の効果も阻害することがいくつかの培養細胞を用いた実験で確認されている(非特許文献11-13)。さらに、ヘパリンの硫酸化も重要であることが知られている(非特許文献14)。
また、低分子量ヘパリンを中枢神経系の損傷や運動ニューロン疾患の予防及び処置に用いることが知られている(特許文献1−2)が、ヘパリンやヘパリン誘導体が中枢神経軸索の損傷によりグリア細胞から自己分泌されるFGF-2の作用に起因すると目されるグリア瘢痕形成を抑制する作用については知られていなかった。
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上記の通り、グリア瘢痕形成抑制については様々な研究がなされているが、グリア細胞が分泌するコンドロイチン硫酸プロテオグリカン以外の阻害物質(阻害因子)や物理的バリアーの問題は依然として残っており、グリア瘢痕形成を抑制する有効な手段が見出されていなかった。
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ヘパリン又はヘパリン誘導体が、グリア細胞、特にアストロサイトが分泌し、アストロサイトの形態変化促進作用を有する物質の該作用を抑制することを見出し、また、ヘパリン又はヘパリン誘導体が、アストロサイト活性化抑制剤として有効であること、更にグリア瘢痕形成抑制剤としても有効であることを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
ヘパリン又はヘパリン誘導体を有効成分として含有するアストロサイト形態変化促進作用を有する物質の該作用抑制剤。
ヘパリン又はヘパリン誘導体を有効成分として含有するアストロサイト活性化抑制剤。
ヘパリン又はヘパリン誘導体を有効成分として含有するグリア瘢痕形成抑制剤。
ヘパリン又はヘパリン誘導体を有効成分とする本発明の上記抑制剤を用いることにより、アストロサイトから分泌されるFGF-2等のアストロサイトの形態変化作用を有する物質の同作用を抑制し、あるいはアストロサイトの活性化を抑制することにより、形態変化を起こして細くなったグリア細胞同士が細胞間架橋により接着し、集合体を形成することによるグリア瘢痕形成を有効に抑制することができる。
以下、発明を実施するための最良の形態により本発明を詳説する。
<ヘパリン又はヘパリン誘導体>
本発明で用いることができるヘパリンの由来は特に限定されず、ブタ、ウシ等の哺乳動物の臓器(腸、肺、肝、腎、血管等)から抽出、精製されたヘパリンを用いることができる。
また、本発明で用いられるヘパリン誘導体は、特には限定されないが、例えば、ヘパリンを低分子化したヘパリンオリゴ糖、ヘパリンの水酸基に結合した硫酸基を脱硫酸化した脱硫酸化ヘパリン、低分子化したヘパリンを同様に脱硫酸化した脱硫酸化ヘパリンオリゴ糖などが挙げられる。
前記ヘパリンオリゴ糖としては、化学的合成により製造したもの、化学的分解により製造したもの、糖分解酵素を用いて製造したもの等、いずれの方法により得たヘパリンオリゴ糖をも用いることができ、そのサイズは、通常、4糖〜12糖であり、好ましくは6糖〜10糖、より好ましくは6糖〜8糖である。
また、脱硫酸化した脱硫酸化ヘパリンとしては、具体的にはヘパリン中のグルコサミン残基の6位ヒドロキシル基に結合した硫酸基が脱硫酸化された6−O−脱硫酸化ヘパリン(以下、6DSHという)、ヘパリン中ウロン酸残基の2位のヒドロキシル基に結合した硫酸基が脱硫酸化された2−O−脱硫酸化ヘパリン(以下、2DSHという)、グルコサミン残基の2位アミノ基に結合した硫酸基が脱硫酸化されたN−脱硫酸化ヘパリン(以下、NDSHという)などが挙げられ、その中でも2DSH、6DSHが好ましい。
更に、脱硫酸化ヘパリンオリゴ糖としては、具体的にはヘパリンオリゴ糖中のグルコサミン残基の6位のヒドロキシル基に結合した硫酸基が脱硫酸化された6−O−脱硫酸化ヘパリンオリゴ糖(以下、6DSHオリゴという)、ヘパリンオリゴ糖中のウロン酸残基の2位のヒドロキシル基に結合した硫酸基が脱硫酸化された2−O−脱硫酸化ヘパリンオリゴ糖(以下、2DSHオリゴという)等が挙げられ、その中でも特に6DSHオリゴが好ましい。
ヘパリン又はヘパリンオリゴ糖のグルコサミン残基の6位のヒドロキシル基に結合した硫酸基の脱硫酸化方法としては、グルコサミン残基の6位のヒドロキシル基に結合した硫酸基を選択的又は特異的に除去する脱硫酸化方法であれば特に限定されない。
このような方法としては、例えば、ソルボリシスを用いる方法(特表平9−512822号公報)、シリル化剤を用いる方法(WO96/01278号公報)などが挙げられる。
また、ヘパリン又はヘパリンオリゴ糖のウロン酸残基の2位のヒドロキシル基に結合した硫酸基の脱硫酸化方法としては、ウロン酸残基の2位のヒドロキシル基に結合した硫酸基を選択的又は特異的に脱硫酸化することができる方法であれば、特に限定されない。
例えば、ウロン酸残基の2位のヒドロキシル基に結合している硫酸基を選択的に脱硫酸化する方法としては、Jasejaらの方法(Jaseja et al., Can. J. Chem., 67, 1449(1989))などが挙げられる。
更に、ヘパリン又はヘパリンオリゴ糖のグルコサミン残基の2位アミノ基に結合した硫酸基の脱硫酸化方法としては、グルコサミン残基の2位のアミノ基に結合した硫酸基を選択的又は特異的に除去する脱硫酸化方法であれば特に限定されない。
このような方法としては、例えば、Nagasawa, k. et al., (1979)J.Biochem.,86,1323-1329、Nagasawa, k. and Inoue, Y.(1980)Methods Carbohydr.Chem.,8,287-289、Ayotte, L. and Perlin, A.S.(1986)Carbohydr.Res.,145,267-277.などが挙げられる。
更に、ヘパリン又はヘパリン誘導体は、適当な溶媒を用いた溶媒沈殿、限外濾過、カラムクロマトグラフィー、透析、凍結乾燥等、又は、これらの組み合わせによって容易に濃縮・精製することが出来る。
本発明の抑制剤の有効成分であるヘパリン又はヘパリン誘導体は、遊離型であっても、その塩の形でも使用することが可能であり、アルカリ塩としては、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリブチルアミン塩等が挙げられるが、アルカリ金属塩が好ましく、特にナトリウム塩が好ましい。
<アストロサイトの形態変化作用を有する物質の該作用抑制剤>
本発明のアストロサイトの形態変化作用を有する物質の該作用抑制剤(以下、「本発明抑制剤1」という)について説明する。
ここで、「アストロサイトの形態変化作用を有する物質」とは、グリア細胞により自己分泌され、アストロサイトに作用して同細胞の形態変化(トランスフォーム)を促進する作用を有する物質であり、具体的にはFGF-2等の成長因子が挙げられるが、同様の作用を有する物質であれば、これには限定されない。
本発明抑制剤1の有効成分であるヘパリン又はヘパリン誘導体としては、アストロサイトの形態変化作用を有する物質の該作用を抑制できるものであれば限定されないが、6〜10糖のヘパリンオリゴ糖、2DSH、6DSH、2DSHオリゴ及び6DSHオリゴが好ましく、6〜8糖のヘパリンオリゴ糖及び6DSHオリゴがより好ましい。
本発明抑制剤1としての効果の確認は、目的とする各種ヘパリン及びその誘導体を培地に添加し、FGF-2存在下においてアストロサイトを培養し、細胞面積に及ぼす影響を調べることによって行うことができる。この方法によって確認した結果、ヘパリンオリゴ糖に関しては、例えば6〜10糖ではFGF-2単独投与よりもアストロサイトの細胞面積の減少が抑えられ、6糖ではアストロサイトの細胞面積を増大させた。また、脱硫酸化ヘパリンに関しては、2DSH、18糖の6DSHオリゴ及び2DSHオリゴがアストロサイトの細胞面積の減少を抑制したのに対し、NDSHはアストロサイトの細胞面積の減少を抑制しなかった。尚、本発明におけるアストロサイトの細胞面積の減少とは、アストロサイトの形態変化を意味するものである。
<アストロサイト活性化抑制剤>
本発明のアストロサイト活性化抑制剤(以下、「本発明抑制剤2」という)について説明する。
ここで、アストロサイト活性化とは、FGF-2等の成長因子に代表される、グリア細胞により自己分泌されたアストロサイト形態変化作用物質により、アストロサイトが活性化して形態変化(トランスフォーム)を起こすこと意味するものである。
本発明抑制剤2の有効成分であるヘパリン又はヘパリン誘導体としては、アストロサイト活性化を抑制できるものであれば限定されないが、<アストロサイトの形態変化作用を有する物質の該作用抑制剤>に記載されたヘパリン又はヘパリン誘導体が好ましい。
<グリア瘢痕形成抑制剤>
本発明のグリア瘢痕形成抑制剤(以下、「本発明抑制剤3」という)について説明する。
ここで、グリア瘢痕形成とは、FGF-2等のグリア細胞により自己分泌されたアストロサイト形態変化作用物質により、アストロサイトが活性化して形態変化を起こし、細胞面積が減少して細くなったアストロサイト同士が、細胞間架橋により接着して集合体を形成することを意味する。
本発明抑制剤3の有効成分であるヘパリン又はヘパリン誘導体としては、グリア瘢痕形成を抑制できるものであれば限定されないが、<アストロサイトの形態変化作用を有する物質の該作用抑制剤>に記載されたヘパリン又はヘパリン誘導体が好ましい。
<剤型、投与経路>
また、以上の本発明抑制剤を生体に投与して、投与された生体の中枢神経疾患において、アストロサイトが成長因子等によって形態変化することを防いだり、アストロサイトが活性化することを防いだり、グリア瘢痕の形成を抑制することにより、同疾患の治療、予防、進展抑制を行うための医療用の薬剤として使用することができる。投与する際の剤型および投与経路は、対象となる疾患の性質や重篤度に応じて適宜選択することができる。例えば、それらをそのまま、または他の薬理学的に許容され得る担体、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、希釈剤等と共に製剤化し、例えば、散剤、顆粒剤、細粒剤、ドライシロップ剤、液剤、錠剤、カプセル剤、注射剤、座剤、膣剤、軟膏剤、ゲル剤、スプレー剤等経口的または非経口的に安全に投与することができる。特に、座剤、膣剤、軟膏剤、ゲル剤、スプレー剤として非経口的に投与することが好ましい。
更に、本発明抑制剤の有効成分であるヘパリン又はヘパリン誘導体の製剤への配合量並びに投与量は、その製剤の投与方法、投与形態、使用目的、患者の具体的症状、患者の体重などに応じて個別に決定されるべき事項であり、特に限定されないが、臨床投与量として1日当たり概ね0.1mg/Kg〜300mg/Kg程度を例示することができる。また、上記製剤の投与間隔は1日1回程度でも可能であり、1日1〜数回 またはそれ以上の回数に分けて投与することもできる。
また、本発明抑制剤はアストロサイトを生体外で培養する際にアストロサイトの形態変化を抑制するために使用することができる。
すなわち、本発明抑制剤は、生体に投与する薬剤としてだけでなく、再生医療、神経科学の研究等、各種の用途に使用することができる。
以下の実施例で用いたヘパリン又はヘパリン誘導体は全てナトリウム塩である。
〈試験例1〉
DMEMハイグルコース培地の調製
DMEMハイグルコース培地は以下のように調製した。
DMEM培地(ニッスイ製,商品番号:302059157) 1g、Penicillin-streptomycin-glutamine(Gibco社製,商品番号:10378-016) 1ml、NaHCO3 120 mg、ウマ血清(Horse serum;HS)(Gibco社製,商品番号:16050-130) 5 ml、ウシ胎仔血清(Fetal bovine serum) 5 ml、Glucose 350 mg に対し、滅菌蒸留水を100 ml添加しスターラーで撹拌後ミリポアフィルターを用いて濾過した。
〈試験例2〉
アストロサイトの細胞培養
生後1〜2日のラットより脳を取り出し、冷却滅菌PBS中で小脳、中脳、髄膜を取り除き大脳皮質を得た。10匹分の大脳皮質を60 mmのデッシュ上で外科用メスで縦横に細切し、10 mlリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を二回加えて大脳皮質切片を50 mlのファルコンチューブに回収した。500 rpmで1分の遠心分離をしてPBS上清を除いた。細胞沈差に対し12 unit/ml パパイン(Papain)溶液を5〜6 ml添加した後、37℃にて10 min保温し酵素消化した。このパパイン消化処理を再度繰り返した後、パパイン溶液を除去した。次いで、DMEMハイグルコース培地を添加・細胞自然沈降・上清除去の工程を3回繰り返して細胞を精製した。さらに、レンズペーパーを敷いた漏斗で細胞懸濁液を濾過し、新しいDMEMハイグルコース培地を5〜6 ml添加することによりレンズペーパーに残存する細胞をも洗い出した。こうして得た濾液を500 rpmにて80〜90分遠心分離し、上清を除去した。この工程を3回繰り返した。この後、DMEMハイグルコース培地を3 ml添加し、やさしくピペッティングすることにより培地中の細胞を均一とした。細胞濃度を設定する前提として、トリパンブルー染色した後、血球計測版を用いて細胞数を計測した。この計測値を基に、細胞濃度を1 x 105 cells/ml2に設定し、3日間, 37℃, 5 %COで培養した。この際、コンフルエントに到達した場合には継代することとし、2回継代を行った細胞をアッセイに用いた。
〈試験例3〉
後述の実施例に使用したヘパリンオリゴ糖(4、6、8、10糖)は、以下の方法により調製した。
100 mgのヘパリンに対し、公知の方法(Guo, Y. and Conrad, H. E. (1989)Anal. Biochem., 176, 96-104)により調整した10 mLの亜硝酸溶液(pH 1.5)を添加・撹拌した。反応混液を室温にて3分間加温して亜硝酸分解反応を部分的に進行させた。反応は、1 N Na2CO3を添加することにより停止させ、反応混液を濃縮した。ヘパリンオリゴ糖を含むこの反応混液をCellulofine GCL-25カラム(φ3.3 x 30 cm;生化学工業(株)販売)にアプライして脱塩した後、オリゴ糖画分につき BioGel P-6カラム(φ2.0 x 100 cm)にアプライしてサイズフラクショネーションした。こうしてヘパリンオリゴ糖(4, 6, 8, 10糖)をそれぞれ 10〜20 mg 調製した。
〈試験例4〉
後述の実施例に使用した脱硫酸化ヘパリン(2DSH、6DSHおよびNDSH)及び脱硫酸化ヘパリンオリゴ糖(18糖の2DSHオリゴ及び6DSHオリゴ)は、以下の公知の方法により調製した。
2DSHは、Piani, S. et al.(1993)J. Carbohydr. Chem., 12, 507-521. に示された方法に従って調製した。6DSHは、Kariya, Y. et al. (2000)J. Biol. Chem.,275, 25949-25958. に示された方法に従って調製した。NDSHは、Ayotte, L. and Perlin, A. S.(1986)Carbohydr. Res., 145, 267-297. に示された方法に従って調製した。
脱硫酸化ヘパリンオリゴ糖は、基本的に前述の試験例3に従って調製した。すなわち、各100 mg の脱硫酸化ヘパリンを出発材料として用い、反応時間を1分間とした以外は同じ条件で亜硝酸分解反応を行った。Cellulofine GCL-25カラム(φ3.3 x 30 cm)で脱塩した反応産物につき、Cellulofine GCL-90カラム(φ3.0 x 96 cm)にアプライしサイズフラクショネーションを行った。こうして18糖の2DSHオリゴ及び6DSHオリゴを約20 mgづつ得た。
〈実施例1〉
アストロサイトに形態変化を起こさせるFGF-2濃度の検討
FGF-2単独でアストロサイトが形態変化を起こす濃度を検討した。
アッセイの一日目には、24穴マイクロタイタープレートにカバーグラス(円形)を入れ、ポリエチレンイミンでコーティングした。次いで、トリプシン(Trypsin)で剥がした細胞をカバーグラス上に1 x 104 cells/cm2の濃度にて播種した。DMEMハイグルコース培地を適量添加して37℃, 5 %COで培養した。アッセイの二日目には、培地をDMEMハイグルコース培地から 血清を含まない(serum-free) DMEM培地に交換し、FGF-2及び検体のヘパリンを様々な濃度で添加した。アッセイの三日目には、4 % paraformaldehydeを用いて固定し、0.2 %エオシン溶液で細胞質を染色した後、光学顕微鏡観察を行い写真撮影した。なお、細胞の画面から観察される面積を計算するために、専用ソフト(Winroof)を用いた。その結果、アストロサイトの顕微鏡観察下の一次元的面積を指標として、アストロサイトの面積の変化を測定した。その結果、FGF-2濃度が1 ng/mlで顕著な細胞面積の減少がみられ、それ以上にFGF-2濃度を上げても、あまり変化がなかった。そこで、以下のアッセイに用いるFGF-2濃度を1 ng/mlに固定することとした。
〈実施例2〉
アストロサイト形態変化に及ぼすヘパリン濃度の検討
実施例1の方法に従い、ヘパリン(SPL社製、ブタ小腸由来精製品)のFGF-2によるアストロサイト形態変化を促進する濃度について検討した。その結果、FGF-2の1 ng/mlに対してヘパリン 1 μg/mlで最も細胞面積の減少がみられた。これ以上のヘパリン濃度では、細胞が細くなりすぎて、培地を抜いた時に剥がれてしまい計測不可能であった。そこで、以下のアッセイに用いるヘパリン濃度を 1 μg/mlに固定した。すなわち、FGF-2の1 ng/mlに対して、ヘパリン1μg/mlを用いることとした。
〈実施例3〉
FGF-2によるアストロサイト形態変化に対するヘパリンオリゴ糖の影響
4糖から10糖の4種類ヘパリンオリゴ糖について、実施例1の方法に従い、FGF-2によるアストロサイト形態変化に及ぼす影響を検討した。FGF-2単独投与時のアストロサイトの細胞面積に対する、4、6、8、10糖のヘパリンオリゴ糖のアストロサイトの細胞面積減少の抑制率を計算した。表1に示す。
Figure 2005068057
6〜10糖ではFGF-2単独投与よりも細胞面積の減少を抑制し、特に6糖については、アストロサイト細胞面積を増大させた。これは、ヘパリンオリゴ糖によりFGF-2によるアストロサイト形態変化の効果が抑制されたことによるためと考えられる。
〈実施例4〉
FGF-2によるアストロサイト形態変化に対する脱硫酸化ヘパリンの影響
2DSH、6DSHおよびNDSHの各種脱硫酸化ヘパリンについて、実施例1の方法に従い、FGF-2によるアストロサイト形態変化に及ぼす影響を検討した。FGF-2単独投与時のアストロサイトの細胞面積に対する、2DSH、6DSH、NDSH、18糖の2DSHオリゴ及び6DSHオリゴのアストロサイトの細胞面積減少の抑制率を計算した。表2に示す。
Figure 2005068057
2DSH、18糖の6DSHオリゴ及び18糖の2DSHオリゴはアストロサイトの細胞面積の減少を抑制したのに対し、NDSHはアストロサイトの細胞面積の減少を抑制することができなかった。

Claims (3)

  1. ヘパリン又はヘパリン誘導体を有効成分として含有する、アストロサイトの形態変化促進作用を有する物質の該作用抑制剤。
  2. ヘパリン又はヘパリン誘導体を有効成分として含有するアストロサイト活性化抑制剤。
  3. ヘパリン又はヘパリン誘導体を有効成分として含有するグリア瘢痕形成抑制剤。

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