JP2005060218A - ガラスセラミックス - Google Patents

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Abstract

【課題】光通信分野・エネルギー関連分野や情報分野等で使用されるフィルター材料において、緻密性、すなわち細孔(pore)や空隙(void)やクラック(crack)のない非常に高い緻密性を有することにより、研削液、接着剤等を含浸せず、しかも高い光線透過率、所望の負の平均線膨張係数を有し、低コストで得られ、組成・物性の点で安定的に生産できるガラスセラミックスを提供すること。
【解決手段】主結晶相が、β−ユークリプタイト(β−Li2O・Al23・2SiO2)、β−ユークリプタイト固溶体(β−Li2O・Al23・2SiO2固溶体)、β−石英(β−SiO2)およびβ−石英固溶体(β−SiO2固溶体)の中から選ばれる少なくとも1種以上でることを特徴とするガラスセラミックス。
【選択図】なし

Description

本発明は、情報通信分野、エネルギー関連分野、エレクトロニクス分野等の幅広い用途に使用でき、特に光通信分野に使用される光学素子、特に合分波器を構成する部材の一つであり、負の平均線膨張係数を有しかつ透過率が高い結晶化ガラスに関するものである。
現在、光通信分野において大量の信号を一本のファイバーにて同時に、かつ高速に伝送するための各種デバイスの研究、開発が盛んに行われている。その中の一つとして波長分割多重方式が多様化されてきている。
この波長分割多重方式では、送受信する情報量の密度を高める、すなわち信号密度を高密度化すべく、隣接する各チャンネルの波長は互いに非常に接近したものとなっている。このため、環境状況によって目的信号の波長がシフトすると、隣接する波長との区別ができなくなり、これが誤信号となって、正確な信号の送受信ができなくなるという問題を生じやすくなる。そのため、送受信を正確に行うため、さまざまな研究開発が行われている。
特に、波長分割多重方式における合分波器等にて波長を合波、分波する際は、合分波器の温度依存性により、環境温度による波長シフトを生じるため、正確な送受信をするための温度補償部材や環境温度による波長シフトを生じないフィルターが必要となる。
更に、光ファイバー関連の分野だけでなく、エネルギー関連分野や情報分野等で使用される各種装置、機器等においても、使用環境の温度差から発生する歪みや内部応力の発生を防止するために、構成するデバイスや精密部品の平均線膨張係数を適切な値に調整することができ、さらに、寸法精度や寸法安定性、強度、熱的安定性なども満足させることができる材料が必要とされる。
従来においては、前記で述べたような温度変化の点で各種デバイスに適した材料としては、耐熱性が高いという点から、セラミックス、ガラスセラミックス、ガラスおよび金属等が使用されてきた。
しかしこれらの材料は、平均線膨張係数が大きい、すなわち温度が上昇すると膨張する性質を有し、これらの材料と共にデバイスに使用される他の材料の多くも正の平均線膨張係数を有することから、デバイス全体から見て、温度変化による影響を防ぐ最適な材料であるとは言い難い。また従来の負の膨張特性を有するガラスセラミックス、セラミックスやポリマーなどは、セラミックス材料に特有の気孔が存在するため、低強度、環境状況による信頼性低下等の問題を生じやすく、製品化されていないのが現状である。したがって、温度変化に耐えうる材料として、他の部材が有する正の大きな平均線膨張係数を打ち消すための負の平均線膨張係数を有し、しかも環境変化に耐えうる高強度を有する材料が望まれている。
従来、これら合分波の用途に用いられるフィルターとして、ソリッドエタロンフィルターがある。現在、このフィルターは温度コントロールが必要なため、ペルチェ素子等を使用しているが、低コスト化、軽量化を図るため、温度コントローラーを使用しない技術が近年研究されている。特に温度による光路長変化の少ないフィルター用材料、すなわち下記式(1)の値が0に近い材料は、ソリッドエタロンフィルター用材料として非常に有用である。
nα+dn/dt≒0 (1)
ここでnは使用波長における屈折率、αは平均線膨張係数、dn/dtは温度による屈折率変化率である。
しかし、式(1)=0を満たす材料は現在まで見つかっておらず、各分野の研究が続いている。しかし平均線膨張係数が負を示す材料を用いることにより、前記式(1)の値を0に近くできる可能性があり、更に式(1)の値を負とするような材料設計も可能となる。
また、式(1)の値が負になるように設計した基板と式(1)が正の値を有する基板を、最適な板厚となるように計算し、これら計算値による厚さを有する前記各基板をオプティカルコンタクトまたは屈折率等が近似している接着剤等を用いて張り合わせることにより、式(1)の値を限りなく0に近いものとする基板材料を作成することも可能となる。
特許文献1には、結晶粉末、ガラス粉末等を焼成し、結晶粒界中にマイクロクラックを多数発生させることにより、−30〜−85(10-7・K-1)という負の平均線膨張係数を有するセラミック焼成体からなる温度補償用部材が開示されている。
特許文献2には、負膨張性透明ガラスセラミックスが開示されている。
特許文献3には、主結晶相がβ―石英固溶体および/または亜鉛ペタライト固溶体である、ZnO−Al23−SiO2系の低熱膨張性セラミックスが開示されている。
特許文献4には、屈折率グレーティングを具備した光ファイバーを負の平均線膨張係数を有する支持部材に取り付けたパッケージが提案されている。負膨張材料としては、Zr−タングステン酸塩(例えばZrW28)またはHf−タングステン酸塩(例えばHfW28)ベースの組成物を使用しており、例えば−47〜−94(10-7・K-1)という平均線膨張係数を有するZrW28結晶を用い、製造条件を調整することにより、非常に大きな負の平均線膨張係数を持つ材料を得ている。この材料を支持部材としその上に適切な応力をかけた状態で光ファイバーを固定することにより、温度変化による波長の変化をなくすことができるとしている。
特許文献5および特許文献6には、その他の負の平均線膨張係数を有する物質として、液晶ポリマーが記載されている。
特開2000−313654号公報 米国特許4507392号明細書 特開平2−208256号公報 米国特許5694503号明細書 WO97/14983号公報 特開平10−90555号公報
ところで、負の平均線膨張係数を有する材料としては、一般にβ−ユークリプタイト、β−ユークリプタイト固溶体、β−石英およびβ−石英固溶体、あるいはこれらの中から選ばれる2種以上の結晶を含むLi2O−Al23−SiO2系セラミックス、ZnO−Al23−SiO2系セラミックス、チタン酸鉛、チタン酸ハフニウム、タングステン酸ジルコニウム、タングステン酸タンタルなどの無機材料が知られている。
前記結晶からなる一般的な焼成セラミックスは、ガラスセラミックスと比較するとポーラスな状態であり、このセラミックス材料に低粘性で正の平均線膨張特性を有する物質を含浸させると、温度変化や湿度変化等の環境変化に起因する含浸材料の膨張の影響により、この材料の膨張特性は、焼成セラミックスが本来有する膨張特性と異なったものとなり、更に含浸させた材料の経時変化により、この材料の膨張特性も経時変化してしまうため、長期的な安定性の面において問題を生じ易い。
しかしながら、特許文献1に開示されている焼成セラミックスは、比較的粒子径が大きいため光透過性を有しておらず、またマイクロクラックを多数生じているので、これに研削液が浸透したり接着剤等が含浸すると、平均線膨張係数が大きく変化してしまうため、実用化は困難である。
また、特許文献2に開示されているガラスセラミックスは、結晶核生成材としてTiO2、ZrO2が多量に含有されている。核生成材料としてTiO2、ZrO2を多量に含有すると、原ガラスを溶融するときの温度を高温としなければならず、また均質な原ガラスを得ることはできない。更にガラス成形の際に失透を生じやすくなり、生産性、実用性の点で問題を生じる。
また、特許文献3に開示されているセラミックスは、高温で昇華しやすいZnO成分を多量に含有しているため、原ガラス(親ガラス)を形成する際の長時間溶融は好ましくないと記載されており、実施例においてもその溶融時間は10分と極端に短いものである。しかしこのような短時間では、高温であってもSiO2およびAl23成分が充分に溶融せず溶け残るため、均質な原ガラスを得ることができず、このように不均質な原ガラスを結晶化しても均質なセラミックスを得ることはできない。
仮にガラスを溶融する際、通常行われるように数時間溶融すれば、溶け残りについては解消できるが、ZnO成分が昇華して原ガラスの組成が変動してしまい、均質なセラミックスを安定して得ることができない。また実施例の溶融温度は1620℃と高温であり、製造コストが高くなる。
また、特許文献4に開示されているパッケージで用いられる負膨張材料では、平均線膨張係数を調整するために、粉末状態のAl23、SiO2、ZrO2、MgO、CaO、Y23などの正の平均線膨張係数を有する材料を適宜に加えて、その混合物を焼結体とするという煩雑な手順を踏まなければならならず、量産に適していない。また異なる材料を混合しなければならないため、相応の技術や設備を必要とし、また均質な材料を得難い。これに加えてZrW28やHfW28は157℃付近で相転移がおきるため、平均線膨張曲線に屈曲がみられ、したがって広範な温度域において熱的に安定であるとは言えない。
さらに、特許文献5および特許文献6に開示されているような液晶ポリマーは、結晶性樹脂であることから結晶の配向性が強く、例えば射出成形品ではソリなどの問題を生じる。また配向方向の平均線膨張係数が−100(10-7・K-1)程度という非常に大きい負の値を持つものは、配向方向以外の平均線膨張係数は大きな正の値を有するという欠点があり、曲げ強度や弾性率などの物性値も方向により大きく異なり、デバイスには実用化しにくい材料である。
以上のように、従来の負の平均線膨張係数を有する材料は、いくつかの問題点を有しているため、光通信分野、エネルギー関連分野、情報分野、その他の各種分野であまり使用されていないのが実状である。
本発明の目的は、前記実状を鑑み、光通信分野・エネルギー関連分野や情報分野等で使用される際の一般的な環境温度範囲である−40℃〜+80℃において、その緻密性、すなわち細孔(pore)や空隙(void)やクラック(crack)のない非常に高い緻密性を有することにより、研削液、接着剤等を含浸せず、しかも高い光線透過率、所望の負の平均線膨張係数を有し、低コストで得られ、組成・物性の点で安定的に生産できるガラスセラミックスを提供することにある。
本発明者等は、前記目的を達成するため種々の試験研究を重ねた結果、特定組成範囲のLi2O−Al23−SiO2系ガラスを熱処理して、微細な結晶粒子を析出させることにより、高透過率で、かつ異方性を持たないガラスセラミックスを得ることに成功し、これが本発明をなすに至った。
すなわち、請求項1に記載の発明は、主結晶相が、β−ユークリプタイト(β−Li2O・Al23・2SiO2)、β−ユークリプタイト固溶体(β−Li2O・Al23・2SiO2固溶体)、β−石英(β−SiO2)およびβ−石英固溶体(β−SiO2固溶体)の中から選ばれる少なくとも1種以上であり、−40℃〜+80℃の温度範囲における平均線膨張係数が−25を超え〜−15未満(10-7・K-1)であり、かつ1000〜1700nm波長帯における分光透過率が85.0%以上であることを特徴とするガラスセラミックスである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のガラスセラミックスにおいて、質量%で、
SiO2 40〜59%および/または、
Al23 10〜30%および/または、
Li2O 1〜5.4%
を含有し、且つSiO2/(Al23+Li2O)≧1.5
であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のガラスセラミックスにおいて、mol%で、Li2O成分の含有量が12.0%以下であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラスセラミックスにおいて、質量%で、
ZnO 3〜10%
および/またはBaO+SrO 0.5〜6%
および/またはTiO2+ZrO2 1.0〜5.0%
を含有することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラスセラミックスにおいて、質量%で、
23 0〜5%
および/またはBaO 0〜4%
および/またはSrO 0〜4%
および/またはCaO 0〜2%
および/またはZrO2 0.5〜3%
および/またはTiO2 0.5〜3%
および/またはHfO2 0〜3%
および/またはAs23+Sb23 0〜2%
を含有することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のガラスセラミックスにおいて、P25含有量が4質量%未満であることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載のガラスセラミックスにおいて、MgOを実質的に含有しないことを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載のガラスセラミックスにおいて、PbO、Na2OおよびK2Oを実質的に含有しないことを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載のガラスセラミックスにおいて、ヤング率が60GPa以上であることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載のガラスセラミックスにおいて、熱膨張曲線のヒステリシスが15ppm以下であることを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載のガラスセラミックスにおいて、結晶相は、Al2TiO5結晶を含有しないことを特徴とする。
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載のガラスセラミックスにおいて、原ガラスを溶融、成形、徐冷後、650〜750℃で0.5〜50時間、第1の熱処理を行い、次いで、700〜850℃で0.5〜100時間、第2の熱処理を行って得られることを特徴とする。
本発明のガラスセラミックスは、特定組成範囲のLi2O−Al23−SiO2系ガラスを熱処理して、結晶化することにより、−40℃〜+80℃の温度範囲において−25を超え〜−15未満(10-7・K-1)の負の平均線膨張係数をもち、かつ1000〜1700nm波長における分光透過率が85.0%以上である材料が安定して生産できる。また機械的強度が良好なため、化学強化等のような強度向上のための工程を必要とせず、それ故にアルカリイオンの溶出というような問題を生じることのない、耐久性に優れたガラスセラミックスである。したがって光通信分野における光デバイスにおいて、平均線膨張係数が正である材料と組み合わせたりして使用することなどが応用とした可能となる。
光通信分野の他にもエネルギー関連分野、情報通信分野、エレクトロニクス分野など、幅広い用途に使用できる。
また従来に比較して本発明のガラスセラミックスは、比較的低温で原ガラスを溶融して製造することができ、さらに結晶化の熱処理温度も低いため、低コストで生産できる。しかも、組成中に不安定な成分を含まず、組成比を容易に制御できる成分であることから、組成・物性の点においても安定的に生産できる。
以下、本発明の負熱膨張性ガラスセラミックスについて、詳細を説明する。
尚、本発明において、ガラスセラミックスとは、ガラスを熱処理することによりガラス相中に結晶相を析出させて得られる材料であり、ガラス相および結晶相から成る材料のみならず、ガラス相すべてを結晶相に相転移させた材料、すなわち、材料中の結晶量(結晶化度)が100質量%のものも含む。また構成成分の組成については特に明記しない限り全て質量%である。また本明細書中において「実質的には含有しない」とは、少なくとも「本発明の特徴を本質的に変化させることのない程度の量は含んでも良い」ということを現している。但し、この様に記載している場合においては、「不純物として混入してしまうような量は含まれても良いが、意識的に添加される様な量まで含むべきではない。」ということが好ましい。
本明細書において、主結晶相とは、析出比が比較的大きい結晶相全てを指す。すなわち、X線回折におけるX線チャート(縦軸はX線回折強度、横軸は回折角度)において、もっとも析出割合の多い結晶相のメインピーク(最も高いピーク)のX線回折強度を100とした場合、各析出結晶相のメインピーク(各結晶相における最も高いピーク)のX線回折強度の比(以下、X線強度比という)が、30以上あるもの全てを主結晶相という。ここで、主結晶相以外の結晶のX線強度比は20未満が好ましく、更に好ましくは10未満、最も好ましくは5未満である。
本明細書において、熱膨張曲線のヒステリシスとは、平均線膨張係数の測定において、低温から高温へ、そして高温から低温への測定を行いΔL/L曲線を描いた場合、昇温時と降温時で最も曲線が離れている温度におけるΔL/L値の差(すなわち各温度における昇温および降温時の熱膨張率差の最大値)を指している。
本発明の負熱膨張性ガラスセラミックスの主結晶相は、β−ユークリプタイト(β−Li2O・Al23・2SiO2)、β−ユークリプタイト固溶体(β−Li2O・Al23・2SiO2固溶体)、β−石英(β−SiO2)、β−石英固溶体(β−SiO2固溶体)の中から選ばれる少なくとも1種以上からなる。ここで固溶体とは、β−ユークリプタイト、あるいはβ−石英それぞれの結晶において、一部が結晶を構成する元素以外の元素に置換されていたり、結晶間に原子が侵入しているものを言う。
これら主結晶相は、本発明のガラスセラミックスにおける負の平均線膨張係数に寄与する重要な要素である。特定組成を有する原ガラスを所定の条件で熱処理することにより、正の平均線膨張係数を有するガラス相中に、負の平均線膨張係数を有する前記主結晶相を析出させ、または、ガラス相すべてを前記主結晶相を含む結晶相に相転移させて、ガラスセラミックス全体として平均線膨張係数を所望の負の数値範囲内に制御する事が可能となる。
特に本願においては、その組成、析出結晶相の種類の選択,析出結晶相の析出割合=結晶化度、析出結晶粒径等を多角的に最適化することにより、従来、大きな負の平均線膨張係数しか得られなかったこれら析出結晶を用いて、従来よりも低い、所望の負の平均線膨張係数を有するガラスセラミックスを初めて得ることができたものである。
尚、これらの主結晶相の種類およびガラスセラミックス全体に対する結晶化度は、特定組成範囲内におけるLi2O、Al23およびSiO2の含有量、および後述する結晶化のための全ての熱処理温度によって決定されるものである。
本発明のガラスセラミックスにおいては、特定範囲の負の平均線膨張係数とする事が重要であり、これを実現するためには正の平均線膨張係数を有する結晶相、すなわち、二珪酸リチウム、珪酸リチウム、α−石英、α−クリストバライト、α−トリジマイト、Zn−ペタライトをはじめとするペタライト、Al2TiO5、β−スポジューメン、コージェライト、ガーナイトをはじめとするスピネル系結晶、ウォラストナイト、フォルステライト、ディオプサイト、ネフェリン、クリノエンスタタイト、アノーサイト、セルシアン、ゲーレナイト、フェルスパー、ウィレマイト、ムライト、コランダム、ランキナイト、ラルナイトおよびこれらの固溶体等を含まないことが好ましく、これらに加えて、良好な機械的強度を維持するためには、Hf−タングステン酸塩やZr−タングステン酸塩をはじめとするタングステン酸塩、チタン酸マグネシウムやチタン酸アルミニウムやチタン酸バリウムやチタン酸マンガンやチタン酸鉛をはじめとするチタン酸塩、ムライト、3ケイ酸2バリウム、Al23・5SiO2およびこれらの固溶体等も含まないことが好ましい。
平均線膨張係数については、前述のように光デバイスにおいて、式(1)をほぼ0とすることが大きな目的であり、そのためには正の平均線膨張係数を有する材料による光路長変化を少なくする、すなわち温度補償すべく負の平均線膨張係数を有する材料を組み合わせる必要がある。
また、平均線膨張係数は、析出結晶の種類/結晶化度/結晶粒径/ガラスマットリックス部分の平均線膨張係数等、様々な要因に影響を受けるものであるが、これらの要因は機械的強度(例えば、ヤング率,剛性率、硬度等)にも密接に影響するものである。
光デバイス用部材として用いるガラスセラミックスにおいては、温度補償に関する性能も重要であるが、耐久性の面においては機械的強度も重要であり、デバイス製造においては特に加工性の要因となる硬度の選択も重要となる。
これらをバランスよく満足させるべく、各種最適化の検討を行った結果、本発明のガラスセラミックスの負の平均線膨張係数については、−25を超え〜−15未満(10-7・K-1)が好適であることを見いだした。尚、より好ましくは、上限が−16(10-7・K-1)および/または下限が−24(10-7・K-1)であり、最も好ましくは、上限が−17(10-7・K-1)および/または下限が−23(10-7・K-1)である。
本発明での透過率または光線透過率とは、厚さ10mmの試料における、光線波長1000〜1700nmの分光透過率を示している。光通信分野では、一般的に使用される波長帯における透過率が高い程、フィルター材として使用した場合の損失が低くなる。透過率にて種々検討した結果、85%以上の透過率をもつことによりフィルター材としては適用しやすい。尚、より好ましい透過率は88%以上であり、最も好ましくは90%以上である。
熱膨張曲線のヒステリシス(ΔL/L)についてであるが、本発明のガラスセラミックスによる部材は、正の部材と組み合わせて、光通信デバイスの温度補償効果を持たせるという目的があるため、熱膨張曲線のヒステリシスが大きいと、この温度補償効果が低下してしまう。したがって、熱膨張曲線のヒステリシスは低くあるべきであり、15ppm以下であることが好ましい。尚、より好ましくは10ppm以下であり、最も好ましくは8ppm以下である。
ヤング率については、光通信用のデバイスに使用するという目的からすると、一定の値以上を有していなければ、そのデバイスを使用する際のデバイスの耐久性を低下させることとなるためできるだけ高い方が好ましいが、あまり高くなりすぎると、ガラスセラミックス自体の硬度も高くなり過ぎ、加工性を著しく低下させ易い。また、あまりに高ヤング率であるガラスを得ようとすると原ガラスの溶融性も低下する傾向となり易く、これが均質なガラスセラミックスを得るための阻害要因となり易い。
このため、これらを勘案すると、少なくともヤング率の下限は60GPaが好ましく、より好ましくは70GPa、さらに好ましくは80GPaであり、一方で上限は140Paが好ましく、より好ましくは125GPa、さらに好ましくは110GPaである。
剛性率は、ヤング率と正の比例関係にあり、前述のように、光通信向けデバイス用部材として考えると高い方が好ましいが、良好な加工性を有し、且つ均質なガラスセラミックスを容易に得ようとするならば、ヤング率と同様に好ましい範囲が存在し、その範囲としては、下限が20GPa、より好ましくは25GPa、さらに好ましくは30GPaであり、一方で上限が50GPa、より好ましくは45GPa、さらに好ましくは40GPaである。
SiO2成分は、負の平均線膨張係数をもつ前記主結晶の主成分であるが、その量が40%未満の場合には所望の主結晶相が十分に析出し難くなり、59%を超えると、ガラスの溶融清澄が困難になる上に、所望の主結晶相以外の結晶相が析出し易くなることから、SiO2成分量の好ましい範囲としては、下限が40%、より好ましくは45%、さらに好ましくは50%であり、一方で上限が59%、より好ましくは58.9%、さらに好ましくは58.8%である。
Al23成分は、負の平均線膨張係数をもつ前記主結晶の中のβ−ユークリプタイトまたはその固溶体や、Al成分が置換および/または侵入したβ−石英固溶体を構成する重要な成分であるが、10%未満では、原ガラスの均質性低下を引き起こし、更に所望の主結晶相が必要な量まで生成し難くなり、ガラスの化学的耐久性も悪化する。一方、30%を超えると原ガラスの融点が高温になり過ぎ、ガラスの溶融清澄が困難になることから、Al23成分の好ましい範囲としては、下限が10%、より好ましくは13%、さらに好ましくは15%であり、一方で上限が30%、より好ましくは28.5%、さらに好ましくは27%である。
Li2O成分は、負の平均線膨張係数をもつ前記主結晶の中のβ−ユークリプタイトまたはその固溶体や、Li成分が置換および/または侵入したβ−石英固溶体を構成する重要な成分であるが、1%未満であると原ガラスの熔融が困難となり、必要な量の所望の主結晶相を必要な量まで得難くなる。また、5.4%を超えると、ガラス化しにくくなり、熱処理後のガラスセラミックスの強度、透過率が低下する。好ましい範囲は1〜5%である。尚、より好ましくは、下限が2%であり、最も好ましくは、下限が3%である。ただし、Li2O成分は分子量が小さい為、mol比に換算すると多成分系では非常に大きな割合を示す。その為、ガラス全体におけるmol比を計算しておくことが好ましい。Li2O比率が12mol%を超えると、白金坩堝へのダメージや、また、所望の熱膨張係数が得られない為、12mol%以下とすることが好ましく、11.5mol%以下がより好ましく、11mol%以下が最も好ましい。
またSiO2/(Al23+Li2O)が1.5未満であると、結晶化後に安定したSiO2フォーマーが少なくなることにより、結晶の異常成長によるガラスセラミックスの割れ、カンや低透過率化などが問題となる。そのためSiO2/(Al23+Li2O)は1.5以上とするのが望ましい。尚、より好ましくは1.6以上、最も好ましくは1.7以上である。
ZnO成分は、Zn成分が置換および/または侵入したβ−ユークリプタイト固溶体(β−Li2O・Al23・2SiO2固溶体)およびβ−石英固溶体(β−SiO2固溶体)の構成要素となる重要な成分であるが、3%未満であると結晶化後の所望の平均線膨張係数が得ることが困難となる。また10%を超えると成形時に失透を生じる可能性が高く、生産性が困難となる。ZnO成分の含有量の範囲としては、下限が3%、より好ましくは3.5%、もっとも好ましくは4%であり、一方で上限が10%、より好ましくは8%、もっとも好ましくは7%である。
23成分は、原ガラスの溶融性改善等の目的で任意に添加でき、添加した場合、B23成分は本発明の負熱膨張性ガラスセラミックスのガラス相部分を構成する。その量が5%を超えると、所望の主結晶相の生成に支障をきたし、ガラスセラミックスの耐熱性が悪化する。尚、好ましくは3.5%以下であり、より好ましくは2%以下であり、最も好ましくは、実質的には含有しないことが好ましい。
BaO成分は、Ba成分が置換および/または侵入したβ−ユークリプタイト固溶体(β−Li2O・Al23・2SiO2固溶体)およびβ−石英固溶体(β−SiO2固溶体)の構成要素となる、任意に添加し得る成分である。この成分は、原ガラスの溶解時にるつぼの白金と原ガラス中の他の金属元素とが合金化するのを防ぐとともに、原ガラスの耐失透性を維持する効果があり、ガラスセラミックスの組成によってはこの効果を活用した方が好ましい場合がある。その効果を得たい場合は0.5%以上であることが好ましい。しかし、4%を超えるとガラスの平均線膨張係数が大きくなり過ぎ、結果的にガラスセラミックスとしての平均線膨張係数が大きくなり易く、所望の平均線膨張係数を得難くなる。より好ましい上限は2.5%、最も好ましい上限は2.0%である。
SrO成分は、Sr成分が置換および/または侵入したβ−ユークリプタイト固溶体(β−Li2O・Al23・2SiO2固溶体)およびβ−石英固溶体(β−SiO2固溶体)の構成要素となる、任意に添加し得る成分である。この成分は他のRO(金属酸化物)成分と組み合わせることにより平均線膨張係数のヒステリシスを小さくする効果があり、ガラスセラミックスの組成によってはこの効果を活用した方が好ましい場合がある。その効果を得たい場合は0.5%以上であることが好ましい。しかし、4%を超えると、主結晶相の構成成分となる以外に、ガラスマトリックスにも多く存在するようになり、これが原因でガラスマトリックスの平均線膨張係数が大きくなってしまい、結果的にガラスセラミックスとしての平均線膨張係数が大きくなり易く、所望の平均線膨張係数を有するガラスセラミックスを得難くなる。好ましい上限は3.0%であり、より好ましい上限は2.5%であり、最も好ましい上限は2.0%である。
BaO成分およびSrO成分は、前記のようにガラスセラミックスにとって、前記記載にあるより好ましい効果を有するため、これら成分の合計量で0.5%以上とすることが好ましい。しかし多量に含有すると平均線膨張係数が所望の範囲から外れてしまうという前記記載の問題を生じやすくなるため、その合計量は6%以下とすることが好ましい。尚、より好ましい上限は5.5%、最も好ましい上限は4.5%である。
CaO成分はガラスの溶融清澄を向上させる効果を有するが、2%を越えると十分な負の平均線膨張係数が得られなくなるため、2%以下が好ましい。尚、より好ましい上限は1.8%であり、最も好ましい上限は1.5%である。
ZrO2成分は、結晶核形成剤として作用するため、0.5%以上の添加が好ましい。しかし3%を超えると原ガラスの溶融清澄が困難となり易く、その結果、未溶融物の発生を引き起こし易くなるため、3%以下が好ましい。尚、より好ましい上限は2.8%であり、最も好ましい上限は2.5%である。
TiO2成分も結晶核形成剤として作用するため、0.5%以上の添加が好ましい。3%を超えると、ガラス成形時に失透し易くなるため、3%以下が好ましい。尚、より好ましい上限は2.8%であり、最も好ましい上限は2.5%である。
またTiO2成分とZrO2成分の合計量については、両成分を併用して添加することにより、ヤング率を向上させ、かつ主結晶相の結晶粒径を所望の粒径に制御し易くなり、その結果、高い光線透過率を容易に実現できることから、TiO2成分とZrO2成分の合計量は1.0%以上とすることが好ましい。しかし、5.0%をこえると所望の平均線膨張係数が得られ難くなるため、これら成分の合計量は5.0%以下とするのが好ましい。尚、より好ましい下限は1.5%、最も好ましい下限は2.0%である。
HfO2成分は、原ガラスの平均線膨張係数を小さくする成分であるが、3%を超えると溶融性が悪化し易くなるため、3%以下が好ましい。尚、より好ましい上限は2%であり、実質的に含まないことが最も好ましい。
As23およびSb23成分は、均質な製品を得るためガラス溶融の際の清澄剤として添加し得るが、これらの成分の量は、合計2%までで十分である。
なお前記成分の他に、本発明ガラスセラミックスの所望特性を損なわない範囲で、F2、La23、Ta25、GeO2、Bi23、WO3、Y23、Gd23、SnO2、TeO2、CoO、NiO、CuO、AgO、MoO、MnO2、Fe23、Cr23、Nb25、V25、Yb23、CeO2、Cs2O、その前記以外の希土類元素等を各々3%まで添加することができる。ただし結晶化促進への影響、あるいは透過率の低下傾向を生じやすくなる傾向があるため、出来れば実質的に含まないことが好ましい。
25成分は結晶化後のガラスセラミックスの平均線膨張係数をプラスの方向に持っていく傾向があり、かつ溶融性が悪化する傾向もあるため、4%未満であることが好ましい。より好ましくは3%以下であり、最も好ましくは実質的に含まないことが好ましい。
MgO成分は、結晶粒径を粗大化させる傾向を生じやすくなるため、実質的に含まないことが好ましい。
PbO成分は環境上好ましくない成分であり、また、Na2OおよびK2O成分は、成膜や洗浄などの後工程において、これらのイオンが拡散して本発明の負熱膨張性ガラスセラミックスの物性が変化し易くなるため、PbO、Na2OおよびK2O成分を実質的に含まないことが好ましい。
ガラスセラミックスの析出結晶粒径については、ガラスマトリックス部分と析出結晶相の屈折率の差および/または析出結晶粒径が大きいと、光線透過性が低下する。この点、本願のガラスセラミックスは全てその平均結晶粒径が0.3μm以下と非常に微粒子であるため、光線透過率が良好である。好ましい平均結晶粒径は0.2μm以下であり、より好ましい平均結晶粒径は0.15μm以下であり、最も好ましい平均結晶粒径は0.1μm以下である。
本願により得られるガラスセラミックスは均質であり、例えば、Li、Na、K等の各種アルカリ成分(イオン)については、表面相と内部の濃度差がないものである。またクラックの発生も著しく少なく、5μmを越える大きさのクラックの発生は皆無であり、更に言えば、1μmを越えるクラックも皆無である。最も好ましいガラスセラミックスは全くクラックがないものである。
前記の組成を含有する本発明のガラスセラミックスは、以下の方法により製造する。
まず、上述した組成になるように酸化物、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩などのガラス原料を秤量、調合し、坩堝などに入れ、約1300〜1550℃で約6時間〜8時間、撹拌しながら溶融し、清澄な状態の原ガラスを得る。
前述のように原ガラスを溶融した後、金型に鋳込む等の操作により、板状に成形し徐冷する。
次に、ガラスセラミックスとするための熱処理を行う。一般的に負の膨張特性性を有するガラスセラミックスは、残存マトリックスガラスと析出結晶相の界面に歪み大きなクラックが発生し易い。これは正の熱膨張特性を有する残存ガラスマトリックスと負の熱膨張特性を有する析出結晶相の間に、大きな熱膨張差に起因する応力を生じるためであり、従来はこれが原因で大きなサイズの製品が生産できないという問題点があった。しかし、本出願では結晶化条件により結晶粒径をコントロールし、安定した生産が可能な材料を作成することに成功した。まず、650〜750℃の温度で保持し、核形成を促す(第1の熱処理)。この核形成温度は650℃より低い場合、結晶核形成が不可能である。逆に750℃より高い場合は、核が早期に生成し成長する。そのため、第2の熱処理段階で結晶が大きく成長してしまい、材料にクラックを生じる原因となる。
また熱処理時間については、所望の特性を得るためには、0.5〜50時間に設定することが望ましく、より好ましい特性および生産性・コストの点からすると、下限が1時間および/または上限が30時間であれば更に好ましい。
核形成後、核成長温度までの昇温プロセスの最適化により、結晶粒径をコントロールする。大きいサイズの製品の場合、昇温速度が速いと、この時点ではまだ析出結晶相の結晶化度合が低く正の平均線膨張係数を有するガラスマトリックス部分が多い状態にある製品の内外の温度差により歪みが発生し、製品が割れる場合がある。このため、速度をできるだけ遅くするという温度コントロールが重要となる。所望の特性を得るためには10℃/Hr.以下であることが好ましい。
核形成後、700〜850℃の温度で結晶化する(第2の熱処理)において、結晶化温度が700℃より低いと主結晶相が十分に成長し難く、850℃より高いと原ガラスが軟化変形もしくは再溶解し易くなるため望ましくない。好ましくは下限が750および/または上限が850℃である。結晶化後は、50℃/Hr.以下、さらに好ましくは25℃/Hr.以下の速度で徐冷することが望ましい。
核成長の熱処理時間についても、0.5〜100時間に設定することが望ましく、第1の熱処理と同様の理由から、下限が1時間および/または上限が30時間であれば更に好ましいが、前記昇温速度が遅い場合は、生産性の観点から、これより短い時間でも可能である。
次に本発明の負熱膨張性ガラスセラミックスの実施例を説明する。なお、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
表1および表2には、本発明のガラスセラミックスの実施例No.1〜No.6について、組成比、溶解温度、核形成温度、核形成時間、核成長温度、核成長時間、平均線膨張係数、比重、平均結晶粒子径,熱膨張ヒステリシス、ヤング率、剛性率、透過率を示した。
[実施例1〜6]
実施例1〜6のガラスセラミックスは、次のように製造した。まず、表1および表2の組成となるように酸化物、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩等のガラス原料を秤量、調合し白金ルツボに入れ、これを通常の溶解装置を用いて表1および表2に記した溶解温度で6〜8時間溶融、撹拌した。
次に、溶融した原ガラスを金型にキャストして成形、徐冷し、それぞれガラス成形体を得た。この後、ガラス成形体をそのまま結晶化炉に入れて、加熱、昇温し、表1および表2に示した核形成温度、核形成時間にて結晶核を形成した。続いて加熱、昇温して、同じく表1および表2で示した核成長温度、核成長時間にて結晶化した後、50℃/Hr.以下の速度で徐冷してガラスセラミックスを得た。
以上のようにして得られた各実施例のガラスセラミックスから、直径5mm、長さ20mmの試料を切り取り、(株)リガク製TAS200熱機械分析装置により、温度範囲−40℃〜+80℃における平均線膨張係数、熱膨張ヒステリシスを測定した。
また前記のように得られたガラスセラミックスをCeO2にて研磨し、比重、ヤング率、剛性率、透過率を測定した。
更に平均結晶粒径の測定はTEM写真により行った。TEM写真の撮影については、イオンミリングにて数μmの薄片試料を取得し、同試料を加速電圧75kV、倍率50,000倍で観察した。同観察から、実施例1、4に関しては約0.1μm未満、実施例3に関しては0.05μm未満の平均結晶粒子径であることが認められた。
[比較例1〜3]
比較例1〜3のガラスセラミックスは、表3の組成となるように酸化物、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩等のガラス原料を秤量、調合し白金ルツボに入れて、通常の溶解装置を用いて1400〜1550℃で6〜8時間攪拌して、表3に示した核形成温度および核形成時間にて結晶核を形成し、表3に示した核成長温度および核成長時間にて結晶化した以外は、実施例1〜6と同様の方法で得られた。
比較例1では、Li2OやAl23成分の量が非常に多い。結晶成長の早いβ―ユークリプタイト固溶体は、結晶核から結晶成長後、各々が互いに結合してさらに成長する。この現象が繰り返しおきることにより、析出結晶粒径は大きく結晶化度も高くなるため、所望の波長における光線透過率が低くなる。
比較例2では、本発明の実施例と比較してLi2O成分が多いため、比較例1と同様に結晶化度が高くなり、所望の平均線膨張係数を得難い。
比較例3では、SiO2の量が本発明で限定している量より多いため、比較例1と同様に結晶化度が高くなり、所望の平均線膨張率を得難い。
実施例1のTEM写真である。 実施例3のTEM写真である。 実施例4のTEM写真である。

Claims (12)

  1. 主結晶相が、β−ユークリプタイト(β−Li2O・Al23・2SiO2)、β−ユークリプタイト固溶体(β−Li2O・Al23・2SiO2固溶体)、β−石英(β−SiO2)およびβ−石英固溶体(β−SiO2固溶体)の中から選ばれる少なくとも1種以上であり、−40℃〜+80℃の温度範囲における平均線膨張係数が−25を超え〜−15未満(10-7・K-1)であり、かつ1000〜1700nm波長帯における分光透過率が85.0%以上であることを特徴とするガラスセラミックス。
  2. 質量%で、
    SiO2 40〜59%および/または、
    Al23 10〜30%および/または、
    Li2O 1〜5.4%
    を含有し、且つSiO2/(Al23+Li2O)≧1.5
    であることを特徴とする、請求項1に記載のガラスセラミックス。
  3. mol%で、Li2O成分の含有量が12.0%以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のガラスセラミックス。
  4. 質量%で、
    ZnO 3〜10%
    および/またはBaO+SrO 0.5〜6%
    および/またはTiO2+ZrO2 1.0〜5.0%
    を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラスセラミックス。
  5. 質量%で、
    23 0〜5%
    および/またはBaO 0〜4%
    および/またはSrO 0〜4%
    および/またはCaO 0〜2%
    および/またはZrO2 0.5〜3%
    および/またはTiO2 0.5〜3%
    および/またはHfO2 0〜3%
    および/またはAs23+Sb23 0〜2%
    を含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラスセラミックス。
  6. 25含有量が4質量%未満であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のガラスセラミックス。
  7. MgOを実質的に含有しないことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のガラスセラミックス。
  8. PbO、Na2OおよびK2Oを実質的に含有しないことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のガラスセラミックス。
  9. ヤング率が60GPa以上であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のガラスセラミックス。
  10. 熱膨張曲線のヒステリシスが15ppm以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のガラスセラミックス。
  11. 結晶相は、Al2TiO5結晶を含有しないことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のガラスセラミックス。
  12. 原ガラスを溶融、成形、徐冷後、650〜750℃で0.5〜50時間、第1の熱処理を行い、次いで、700〜850℃で0.5〜100時間、第2の熱処理を行って得られることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のガラスセラミックス。
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