JP2005054617A - 動弁機構 - Google Patents
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Abstract
【課題】極めて優れた低摩擦性、耐摩耗性、耐焼付性及び耐久性を示し、従来の鋼材料と有機モリブデン化合物との組合せよりも更に優れた省燃費効果を発揮する動弁機構を提供すること。
【解決手段】潤滑油の存在下で摺動し、カムロブとカムジャーナルを有する鉄基材料から成るカムシャフトを備えた動弁機構において、かかるカムシャフトの摺動面及び鉄基材料から成る相手材の摺動面の一方又は双方に、水素含有量が10原子%以下である硬質炭素薄膜を被覆して成る動弁機構。
【選択図】 なし
【解決手段】潤滑油の存在下で摺動し、カムロブとカムジャーナルを有する鉄基材料から成るカムシャフトを備えた動弁機構において、かかるカムシャフトの摺動面及び鉄基材料から成る相手材の摺動面の一方又は双方に、水素含有量が10原子%以下である硬質炭素薄膜を被覆して成る動弁機構。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動弁機構に係り、更に詳細には、カムシャフト周辺やバルブ周辺における摺動部位と該摺動部位と摺動する他の摺動部位の一方又は双方に、特定の潤滑油の存在下において極めて優れた低摩擦性を示すダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜等の硬質炭素薄膜を被覆した動弁機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
地球全体の温暖化、オゾン層の破壊など地球規模での環境問題が大きくクローズアップされ、とりわけ地球全体の温暖化に大きな影響があるといわれている二酸化炭素(CO2)削減については各国でその規制値の決め方をめぐって大きな関心を呼んでいる。
CO2削減については、自動車の燃費の削減を図ることが大きな課題の1つであり、摺動材料と潤滑油が果たす役割は大きい。
【0003】
摺動材料の役割は、エンジンの摺動部位の中で摩擦摩耗環境が苛酷な部位に対して耐磨耗性に優れ且つ低い摩擦係数を発現することであり、最近では、フォロワ部位であるバルブリフタやリフタシムに対して、種々の硬質薄膜材料の適用やローラニードルベアリングを組み込んだローラロッカーアームの適用が進んできている。
一般にDLC材料は、空気中、潤滑油非存在下における摩擦係数が、窒化チタン(TiN)や窒化クロム(CrN)といった耐磨耗性の硬質被膜材料と比べて低いことから低摩擦摺動材料として期待されている。
【0004】
また、潤滑油における省燃費対策としては、▲1▼低粘度化による、流体潤滑領域における粘性抵抗及びエンジン内の攪拌抵抗の低減、▲2▼最適な摩擦調整剤と各種添加剤の配合による、混合及び境界潤滑領域下での摩擦損失の低減、が提言されており、摩擦調整剤としては、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)やジチオリン酸モリブデン(MoDTP)といった有機モリブデン化合物を中心に多くの研究がなされており、従来の鋼材料から成る摺動面においては、使用開始初期に優れた低摩擦係数を示す有機モリブデン化合物を配合した潤滑油が適用され、効果を上げていた。
このようなDLC材料の摩擦特性や、有機モリブデン化合物の摩擦調整剤としての性能について、いくつかの報告がされている(例えば、非特許文献1及び2参照。)。
また、エンジンのカムシャフトに関しては、種々の提案がなされており(例えば、特許文献1及び2参照。)。
更に、エンジンのバルブ機構に関しても、種々の提案がなされている(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
【特許文献1】
実開平5−36004号公報
【特許文献2】
実開平5−42616号公報
【特許文献3】
特開平8−14014号公報
【非特許文献1】
加納、他,日本トライボロジー学会予稿集,1999年5月,p.11〜12
【非特許文献2】
加納、他(Kano et al.),ワールド・トライボロジー・コングレス(World Tribology Congress)
2001.9,Vienna,Proceeding,p.342
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、空気中において低摩擦性に優れる一般のDLC材料は、潤滑油存在下においては、その摩擦低減効果が必ずしも大きくなく、また、このような摺動部材料に有機モリブデン化合物を含有する潤滑油を適用したとしても摩擦低減効果が十分発揮されないことがあることもわかってきた。
【0007】
また、カムシャフト周辺の動弁機構においては、▲1▼カムロブとバルブリフタ間の摺動抵抗により、カムシャフトの駆動トルクを悪化(増加)させる、▲2▼シリンダーヘッドのカムジャーナル軸受とカムシャフトジャーナル間の摺動抵抗により、カムシャフトのトルクを悪化(増加)させる、という問題があった。
一方、バルブ周辺の動弁機構においては、従来公知の技術では、▲1▼バルブのステム部とバルブガイド間の隙間をこれ以上狭めることができない、▲2▼ある一定の適切なオイル量で潤滑されない場合(潤滑が十分でない)、バルブのステム部が焼きつく、又はオイル下がりが発生する、▲3▼バルブのステム部とガイド間の摩擦低減が限界に達しつつある、▲4▼叩きによりバルブフェース摩耗が発生する、という問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所定の硬質炭素薄膜を摺動面に被覆し、所定の潤滑油とを組み合わせることによって、極めて優れた低摩擦性、耐摩耗性、耐焼付性及び耐久性を示し、従来の鋼材料と有機モリブデン化合物との組合せよりも更に優れた省燃費効果を発揮する動弁機構を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、潤滑油、特に所定の無灰摩擦調整剤を含有する潤滑油の存在下で、特定の硬質炭素薄膜が極めて優れた低摩擦性、耐摩耗性、耐焼付性及び耐久性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の動弁機構は、潤滑油の存在下で摺動し、カムロブとカムジャーナルを有する鉄基材料から成るカムシャフトを備えた動弁機構において、かかるカムシャフトの摺動面及び/又は鉄基材料から成る相手材の摺動面に、水素含有量が10原子%以下である硬質炭素薄膜を被覆して成る。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の動弁機構について詳細に説明する。なお、本明細書において、「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。
【0012】
まず、カムシャフト周辺の動弁機構を図に基づいて説明する。
図1は、カムシャフトの一例を示す側面図である。同図に示すように、本発明の動弁機構の一部分であるカムシャフト1は、カムロブ10とカムジャーナル20を備える。
エンジン実働時において、カムシャフト1は図示しないクランクシャフトより図示しないチェーンを介して駆動トルクを受け回転運動を行い、カムロブ10で図示しないバルブリフタを押し下げ、図示しないバルブの開閉運動を行う。
また、カムシャフト1は、カムジャーナル20で図示しないシリンダヘッドブラケットに保持された状態で回転運動を行う。カムジャーナル20とシリンダヘッドブラケットとの間には、微小な隙間があり油膜を介して摺動する。
カムロブ10がバルブリフタを押し下げ、バルブを開閉する時、カムロブ10とバルブリフタ間には図示しないバルブスプリングの反発力により大きな摺動抵抗が発生する。
【0013】
カムシャフト1を駆動させるトルクは、バルブスプリングの反発力に抗してバルブを押し上げる必要トルクと、カムシャフト1の各摺動部位の摩擦抵抗に抗して回転させる駆動力との合力として決定される。
Aで示すカムロブ10の摺動面及び相手材であるバルブリフタの摺動面の一方又は双方や、Bで示すカムジャーナル20の摺動面及び相手材である図示しないカムジャーナル軸受けの摺動面の一方又は双方に硬質炭素薄膜を被覆することによって、摺動部位の摩擦抵抗を減少させ、カムシャフト1の駆動トルクを減少させる効果がある。また、各摺動部位の摺動抵抗が低減され、耐摩耗性や耐焼付性が向上する。
【0014】
次に、バルブ周辺の動弁機構を図に基づいて説明する。
図2は、バルブ周辺の動弁機構の一例を示す断面図である。同図に示すように、本発明の他の動弁機構は、カムロブ10が回転すると、バルブリフタ30がバルブスプリング40を圧縮しつつ押し下げられると同時に、バルブ50がステムシール60を有するバルブガイド70に案内されて押し下げられ、バルブシート80からバルブ50が離間して、吸気ポート90と図示しない燃焼室とが連通する(バルブの開き状態)。その後、カムロブ10が更に回転すると、バルブスプリング40の反発力により、バルブリフタ30、リテーナ100及びコッタ110とともにバルブ50が押し上げられ、バルブシート80にバルブ50が接触して吸気ポート90と図示しない燃焼室とを遮断する(バルブの閉じ状態)。このようなバルブ開閉をカムロブ10の回転と同期して行う。
このようにバルブ50のステム部51はヘッド側に圧入されたバルブガイド70の中を通って、オイル潤滑されながら組み込まれている。
また、図示しない燃焼室の開閉弁部分にあたるバルブ50のフェース部52は動作時にヘッド側に圧入されたバルブシート80と連続的に接触する。
【0015】
ステム部51の摺動面51a及び相手材であるガイド70の摺動面70aの一方又は双方に硬質炭素薄膜を被覆することによって、摺動部位の摩擦係数が減少し、摩擦が低下し、動弁系駆動損失を低減でき、更にはエンジンのレスポンスが向上する。また、摺動部位の耐摩耗性が向上することにより、耐久性が向上する。一方で、摺動部位の耐焼付性が向上することにより、隙間を狭めることができ、オイル下がりを抑制できる。
また、フェース部52の摺動面52a及び相手材であるバルブシート80の摺動面80aの一方又は双方に硬質炭素薄膜を被覆することによって、摺動部位の耐摩耗性が向上することにより、耐久性が向上する。
【0016】
本発明において、鉄基材料は、特に限定されるものではなく、要求される性能や条件に応じて、鋳鉄や鋼鉄などから適宜選択することができる。
また、硬質炭素薄膜は、炭素元素を主として構成された非晶質のものであり、炭素同士の結合形態がダイヤモンド構造(SP3結合)とグラファイト結合(SP2結合)の両方から成る。具体的には、炭素元素だけから成るアモルファスカーボン薄膜、水素を含有する水素アモルファスカーボン薄膜、及びチタン(Ti)やモリブデン(Mo)等の金属元素を一部に含む金属アモルファスカーボン薄膜が挙げられる。
【0017】
また、本発明においては、硬質炭素薄膜中の水素含有量が増加すると摩擦係数が増すことから、10原子%以下とすることを要し、潤滑油の存在下での摺動時における摩擦係数を十分に低下させ、より安定した摺動特性を確保するためには、1原子%以下とすることが好ましい。
このような硬質炭素薄膜としては、PVD法及びCVD法の一方又は双方により成膜されたDLC薄膜を用いることができる。
上記PVD法やCVD法としては、DLC薄膜を所望の配置で被覆できれば、特に限定されるものではないが、代表的には、アーク式イオンプレーティング法等を挙げることができる。
【0018】
更に、本発明においては、硬質炭素薄膜を被覆する前の摺動面の表面粗さが、Raで0.03μm以下であることが摺動の安定性の面から好ましい。0.03μmを超えると、局部的にスカッフィングを形成し、摩擦係数の大幅増大となることがあり好ましくない。
【0019】
次に、本発明に用いる潤滑油について説明する。
本発明に用いる潤滑油は、上記本発明の動弁機構と組み合わせて用いられる潤滑油であって、潤滑油基油に、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤、脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤、ポリブテニルコハク酸イミド、ポリブテニルコハク酸イミドの誘導体又はジチオリン酸亜鉛、及びこれらの任意の組合せに係る成分を含有させることが好ましい。
ここで、潤滑油基油としては特に限定されるものではなく、鉱油、合成油、油脂及びこれらの混合物など、潤滑油の基油として通常使用されるものであれば、種類を問わず使用することができる。
【0020】
鉱油としては、具体的には、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理等を適宜組み合わせて精製したパラフィン系又はナフテン系等の油やノルマルパラフィン等が使用でき、溶剤精製、水素化精製処理したものが一般的であるが、芳香族分をより低減することが可能な高度水素化分解プロセスやGTL Wax(ガス・トウー・リキッド・ワックス)を異性化した手法で製造したものを用いることがより好ましい。
【0021】
合成油としては、具体的には、ポリ−α−オレフィン(例えば、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンオリゴマー等)、ポリ−α−オレフィンの水素化物、イソブテンオリゴマー、イソブテンオリゴマーの水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(例えば、ジトリデシルグルタレート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジオクチルセバケート等)、ポリオールエステル(例えば、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、トリメチロールプロパンイソステアリネート等のトリメチロールプロパンエステル;ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のペンタエリスリトールエステル)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル及びポリフェニルエーテル等が挙げられる。中でも、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフイン又はその水素化物が好ましい例として挙げられる。
【0022】
本発明に用いる潤滑油における基油は、鉱油系基油及び合成系基油を単独又は混合して用いる以外に、2種類以上の鉱油系基油又は2種類以上の合成系基油の混合物であっても差し支えない。また、上記混合物における2種類以上の基油の混合比も特に限定されず任意に選ぶことができる。
【0023】
潤滑油基油中の硫黄分について、特に制限はないが、基油全量基準で、0.2%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下、さらには0.05%以下であることが好ましい。特に、水素化精製鉱油や合成系基油の硫黄分は、0.005%以下、又は実質的に硫黄分を含有していない(5ppm以下)ことから、これらを基油として用いることが好ましい。
【0024】
また、潤滑油基油中の芳香族含有量についても、特に制限はないが、内燃機関用潤滑油として長期間低摩擦特性を維持するためには、全芳香族含有量が15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、さらには5%以下であることが好ましい。即ち、潤滑油基油の全芳香族含有量が15%を超える場合には、酸化安定性が劣るため好ましくない。
なお、ここで言う全芳香族含有量とは、ASTM、D2549に規定される方法に準拠して測定される芳香族留分(aromatics fraction)含有量を意味している。
【0025】
潤滑油基油の動粘度にも、特に制限はないが、内燃機関用潤滑油として使用する場合には、100℃における動粘度が2mm2/s以上であることが好ましく、より好ましくは3mm2/s以上である。一方、100℃における動粘度は、20mm2/s以下であることが好ましく、10mm2/s以下であることが更に好ましく、特に8mm2/s以下であることが好ましい。潤滑油基油の100℃における動粘度が2mm2/s未満である場合には、十分な耐摩耗性が得られない上に蒸発特性が劣る可能性があるため好ましくない。一方、動粘度が20mm2/sを超える場合には低摩擦性能を発揮しにくく、低温性能が悪くなる可能性があるため好ましくない。本発明においては、上記基油の中から選ばれる2種以上の基油を任意に混合した混合物等が使用でき、100℃における動粘度が上記の好ましい範囲内である限りにおいては、基油単独の動粘度が上記以外のものであっても使用可能である。
【0026】
また、潤滑油基油の粘度指数にも、特別な制限はないが、80以上であることが好ましく、100以上であることが更に好ましく、特に内燃機関用潤滑油として使用する場合には、120以上であることが好ましい。潤滑油基油の粘度指数を高めることで、よりオイル消費が少なく、低温粘度特性、省燃費性能に優れた内燃機関用潤滑油を得ることができる。
【0027】
使用する脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤の一方又は双方としては、炭素数6〜30、好ましくは炭素数8〜24、特に好ましくは炭素数10〜20の直鎖状又は分枝状炭化水素基を有する脂肪酸エステル、脂肪酸アミン化合物、及びこれらの任意の混合物を挙げることができる。炭素数が6〜30の範囲外のときは、摩擦低減効果が十分に得られない可能性がある。
【0028】
炭素数6〜30の直鎖状又は分枝状炭化水素基としては、具体的には、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基及びトリアコンチル基等のアルキル基や、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基及びトリアコンテニル基等のアルケニル基などを挙げることができる。
なお、上記アルキル基及びアルケニル基には、考えられる全ての直鎖状構造及び分枝状構造が含まれ、また、アルケニル基における二重結合の位置は任意である。
【0029】
また、上記脂肪酸エステルとしては、かかる炭素数6〜30の炭化水素基を有する脂肪酸と脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールとのエステルなどを例示でき、具体的には、グリセリンモノオレート、グリセリンジオレート、ソルビタンモノオレート及びソルビタンジオレートなどを特に好ましい例として挙げることができる。
上記脂肪族アミン化合物としては、脂肪族モノアミン又はそのアルキレンオキシド付加物、脂肪族ポリアミン、イミダゾリン化合物等、及びこれらの誘導体等を例示できる。具体的には、ラウリルアミン、ラウリルジエチルアミン、ラウリルジエタノールアミン、ドデシルジプロパノールアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ステアリルテトラエチレンペンタミン、オレイルアミン、オレイルプロピレンジアミン、オレイルジエタノールアミン及びN−ヒドロキシエチルオレイルイミダゾリン等の脂肪族アミン化合物や、これら脂肪族アミン化合物のN,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキル(又はアルケニル)(炭素数6〜28)等のアミンアルキレンオキシド付加物、これら脂肪族アミン化合物に炭素数2〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)や、シュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸を作用させて、残存するアミノ基及びイミノ基の一方又は双方の一部又は全部を中和したりアミド化した、いわゆる酸変性化合物等が挙げられる。好適な例としては、N,N−ジポリオキシエチレン−N−オレイルアミン等が挙げられる。
【0030】
また、本発明に用いる潤滑油に含まれる脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤の一方又は双方の含有量は、特に制限はないが、潤滑油全量基準で、0.05〜3.0%であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜2.0%、特に好ましくは0.5〜1.4%であることがよい。上記含有量が0.05%未満であると摩擦低減効果が小さくなり易く、3.0%を超えると潤滑油への溶解性や貯蔵安定性が著しく悪化し、沈殿物が発生し易いので、好ましくない。
【0031】
一方、上述したポリブテニルコハク酸イミドとしては、次の一般式(1)及び(2)
【0032】
【化1】
【0033】
【化2】
【0034】
で表される化合物が挙げられる。これら一般式におけるPIBは、ポリブテニル基を示し、高純度イソブテン又は1−ブテンとイソブテンの混合物をフッ化ホウ素系触媒又は塩化アルミニウム系触媒で重合させて得られる数平均分子量が900〜3500、望ましくは1000〜2000のポリブテンから得られる。上記数平均分子量が900未満の場合は清浄性効果が劣り易く、3500を超える場合は低温流動性に劣り易いため、望ましくない。
また、上記一般式におけるnは、清浄性に優れる点から1〜5の整数、より望ましくは2〜4の整数であることがよい。更に、上記ポリブテンは、製造過程の触媒に起因して残留する微量のフッ素分や塩素分を、吸着法や十分な水洗等の適切な方法により、50ppm以下、より望ましくは10ppm以下、特に望ましくは1ppm以下まで除去してから用いることもよい。
【0035】
かかるポリブテニルコハク酸イミドの製造方法としては、特に限定はないが、例えば、上記ポリブテンの塩素化物又は塩素やフッ素が充分除去されたポリブテンと無水マレイン酸とを100〜200℃で反応させて得られるポリブテニルコハク酸を、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンと反応させることにより得ることができる。
【0036】
一方、上述したポリブテニルコハク酸イミドの誘導体としては、上記一般式(1)又は(2)で表される化合物に、ホウ素化合物や含酸素有機化合物を作用させて、残存するアミノ基及びイミノ基の一方又は双方の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるホウ素変性又は酸変性化合物を例示できる。その中でもホウ素含有ポリブテニルコハク酸イミド、特にホウ素含有ビスポリブテニルコハク酸イミドが現時点では最も好ましいものとして挙げられる。
【0037】
上記ホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ酸エステル等が挙げられる。具体的には、上記ホウ酸として、オルトホウ酸、メタホウ酸及びテトラホウ酸などが挙げられる。また、上記ホウ酸塩としては、アンモニウム塩等、具体的には、メタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム及び八ホウ酸アンモニウム等のホウ酸アンモニウムが好適例として挙げられる。また、ホウ酸エステルとしては、ホウ酸と好ましくは炭素数1〜6のアルキルアルコールとのエステル、より具体的には、ホウ酸モノメチル、ホウ酸ジメチル、ホウ酸トリメチル、ホウ酸モノエチル、ホウ酸ジエチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸モノプロピル、ホウ酸ジプロピル、ホウ酸トリププロピル、ホウ酸モノブチル、ホウ酸ジブチル及びホウ酸トリブチル等が好適例として挙げられる。なお、ホウ素含有ポリブテニルコハク酸イミドにおけるホウ素含有量Bと窒素含有量Nとの質量比「B/N」は、通常0.1〜3であり、好ましくは、0.2〜1である。
【0038】
また、上記含酸素有機化合物としては、具体的には、ぎ酸、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ノナデカン酸及びエイコサン酸等の炭素数1〜30のモノカルボン酸、シュウ酸、フタル酸、トリメリット酸及びピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸並びにこれらの無水物、又はエステル化合物、炭素数2〜6のアルキレンオキサイドやヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネート等が挙げられる。
【0039】
なお、本発明に用いる潤滑油では、ポリブテニルコハク酸イミド及びその誘導体の一方又は双方の含有量は特に制限されないが、潤滑油全量基準で0.1〜15%が好ましく、1.0〜12%であることが更に好ましい。0.1%未満では清浄性効果に乏しくなることがあり、15%を超えると含有量に見合う清浄性効果が得られにくく、抗乳化性が悪化し易い。
【0040】
更にまた、本発明に用いる潤滑油は、次の一般式(3)
【0041】
【化3】
【0042】
で表されるジチオリン酸亜鉛を含有することが好適である。
上記式(3)中のR4、R5、R6及びR7は、それぞれ別個に炭素数1〜24の炭化水素基を示す。これら炭化水素基としては、炭素数1〜24の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数3〜24の直鎖状又は分枝状のアルケニル基、炭素数5〜13のシクロアルキル基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルアリール基、炭素数7〜19のアリールアルキル基等のいずれかであることが望ましい。また、アルキル基やアルケニル基は、第1級、第2級及び第3級のいずれであってもよい。
【0043】
上記R4、R5、R6及びR7としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基及びテトラコシル基等のアルキル基や、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ブタジエニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基及びオレイル基等のオクタデセニル基や、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基及びテトラコセニル基等のアルケニル基や、シクロペンチル基、シクロへキシル基及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基や、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、プロピルシクロペンチル基、エチルメチルシクロペンチル基、トリメチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、エチルジメチルシクロペンチル基、プロピルメチルシクロペンチル基、プロピルエチルシクロペンチル基、ジ−プロピルシクロペンチル基、プロピルエチルメチルシクロペンチル基、メチルシクロへキシル基、ジメチルシクロへキシル基、エチルシクロへキシル基、プロピルシクロへキシル基、エチルメチルシクロへキシル基、トリメチルシクロへキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、エチルジメチルシクロヘキシル基、プロピルメチルシクロヘキシル基、プロピルエチルシクロヘキシル基、ジ−プロピルシクロへキシル基、プロピルエチルメチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、エチルシクロヘプチル基、プロピルシクロヘプチル基、エチルメチルシクロヘプチル基、トリメチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基、エチルジメチルシクロヘプチル基、プロピルメチルシクロヘプチル基、プロピルエチルシクロヘプチル基、ジ−プロピルシクロヘプチル基及びプロピルエチルメチルシクロヘプチル基等のアルキルシクロアルキル基や、フェニル基及びナフチル基等のアリール基や、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、エチルメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、ブチルフェニル基、プロピルメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、エチルジメチルフェニル基、テトラメチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基及びドデシルフェニル基等のアルキルアリール基や、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基及びジメチルフェネチル基等のアリールアルキル基が例示できる。
なお、R4、R5、R6及びR7がとり得る上記炭化水素基には、考えられる全ての直鎖状構造及び分枝状構造が含まれ、また、アルケニル基の二重結合の位置、アルキル基のシクロアルキル基への結合位置、アルキル基のアリール基への結合位置、及びアリール基のアルキル基への結合位置は任意である。また、上記炭化水素基の中でも、その炭化水素基が、直鎖状又は分柱状の炭素数1〜18のアルキル基である場合若しくは炭素数6〜18のアリール基、又は直鎖状若しくは分枝状アルキルアリール基である場合が特に好ましい。
【0044】
上記ジチオリン酸亜鉛の好適な具体例としては、ジイソプロピルジチオリン酸亜鉛、ジイソブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ペンチルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−オクチルジチオリン酸亜鉛、ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−デシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−ドデシルジチオリン酸亜鉛、ジイソトリデシルジチオリン酸亜鉛及びこれらの任意の組合せに係る混合物等が挙げられる。
【0045】
また、上記ジチオリン酸亜鉛の含有量は、特に制限されないが、より高い摩擦低減効果を発揮させる観点から、潤滑油全量基準且つリン元素換算量で、0.1%以下であることが好ましく、また0.06%以下であることが更に好ましく、ジチオリン酸亜鉛が含有されないことが特に好ましい。ジチオリン酸亜鉛の含有量が潤滑油全量基準且つリン元素換算量で0.1%を超えると、硬質炭素薄膜が被覆された部材と鉄基部材との摺動面における上記脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤や上記脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤の優れた摩擦低減効果が阻害される可能性がある。
【0046】
かかるジチオリン酸亜鉛の製造方法としては、従来方法を任意に採用することができ、特に制限されないが、具体的には、上記R4、R5、R6及びR7に対応する炭化水素基を持つアルコール又はフェノールを五酸化二リン(P2O5)と反応させてジチオリン酸とし、これを酸化亜鉛で中和させることにより合成することができる。なお、上記ジチオリン酸亜鉛の構造は、使用する原料アルコールによって異なることは言うまでもない。
本発明においては、上記一般式(3)に包含される2種以上のジチオリン酸亜鉛を任意の割合で混合して使用することもできる。
【0047】
上述のように、本発明に用いる潤滑油は、硬質炭素薄膜が被覆された部材と鉄基部材との摺動面に用いた場合に、極めて優れた低摩擦特性を示すものであるが、特に内燃機関用潤滑油として必要な性能を高める目的で、金属系清浄剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、他の無灰摩擦調整剤、他の無灰分散剤、摩耗防止剤若しくは極圧剤、防錆剤、非イオン系界面活性剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤等を単独で又は複数種を組合せて配合し、必要な性能を高めることができる。
【0048】
上記金属系清浄剤としては、潤滑油用の金属系清浄剤として通常用いられる任意の化合物が使用できる。例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホネート、フェネート、サリシレートナフテネート等を単独で又は複数種を組合せて使用できる。ここで、上記アルカリ金属としてはナトリウム(Na)やカリウム(K)等、上記アルカリ土類金属としてはカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)等が例示できる。また、具体的な好適例としては、Ca又はMgのスルフォネート、フェネート及びサリシレートが挙げられる。
なお、これら金属系清浄剤の全塩基価及び添加量は、要求される潤滑油の性能に応じて任意に選択できる。通常、全塩基価は、過塩素酸法で0〜500mgKOH/g、望ましくは150〜400mgKOH/gであり、その添加量は潤滑油全量基準で、通常0.1〜10%である。
【0049】
また、上記酸化防止剤としては、潤滑油用の酸化防止剤として通常用いられる任意の化合物を使用できる。例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、アルキルジフェニルアミン等のアミン系酸化防止剤、並びにこれらの任意の組合せに係る混合物等が挙げられる。また、かかる酸化防止剤の添加量は、潤滑油全量基準で、通常0.01〜5%である。
【0050】
更に、上記粘度指数向上剤としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの共重合体やその水添物等のいわゆる非分散型粘度指数向上剤、及び更に窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤等が例示できる。また、他の粘度指数向上剤の具体例としては、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等)及びその水素化物、ポリイソブチレン及びその水添物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、並びにポリアルキルスチレン等も例示できる。
これら粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定することが必要である。具体的には、粘度指数向上剤の数平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートでは5000〜1000000、好ましくは100000〜800000がよく、ポリイソブチレン又はその水素化物では800〜5000、エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物では800〜300000、好ましくは10000〜200000がよい。また、かかる粘度指数向上剤は、単独で又は複数種を任意に組合せて含有させることができるが、通常その含有量は、潤滑油全量基準で0.1〜40.0%であることが望ましい。
【0051】
更にまた、他の無灰摩擦調整剤としては、ホウ酸エステル、高級アルコール、脂肪族エーテル等の無灰摩擦調整剤、ジチオリン酸モリブデン、ジチオカルバミン酸モリブデン、二硫化モリブデン等の金属系摩擦調整剤等が挙げられる。
また、他の無灰分散剤としては、数平均分子量が900〜3500のポリブテニル基を有するポリブテニルベンジルアミン、ポリブテニルアミン、数平均分子量が900未満のポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸イミド等及びそれらの誘導体等が挙げられる。
更に、上記摩耗防止剤又は極圧剤としては、ジスルフィド、硫化油脂、硫化オレフィン、炭素数2〜20の炭化水素基を1〜3個含有するリン酸エステル、チオリン酸エステル、亜リン酸エステル、チオ亜リン酸エステル及びこれらのアミン塩等が挙げられる。
更にまた、上記防錆剤としては、アルキルベンゼンスルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、アルケニルコハク酸エステル及び多価アルコールエステル等が挙げられる。
また、上記非イオン系界面活性剤及び抗乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤が挙げられる。
更に、上記金属不活性化剤としては、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、チアジアゾール、ベンゾトリアゾール及びチアジアゾール等が挙げられる。
更にまた、上記消泡剤としては、シリコーン、フルオロシリコーン及びフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
なお、これら添加剤を本発明に用いる潤滑油に含有させる場合には、その含有量は、潤滑油全量基準で、他の摩擦調整剤、他の無灰分散剤、摩耗防止剤又は極圧剤、防錆剤、及び抗乳化剤については0.01〜5%、金属不活性剤については0.005〜1%、消泡剤については0.0005〜1%の範囲から適宜選択できる。
【0052】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、カムシャフト周辺やバルブ周辺における摺動部位と該摺動部位と摺動する他の摺動部位の一方又は双方に、特定の潤滑油の存在下において極めて優れた低摩擦性を示すダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜等の硬質炭素薄膜を被覆し、所定の潤滑油とを組み合わせることとしたため、これら部材間の低摩擦性、耐摩耗性、耐焼付性及び耐久性を大幅に改善することができ、内燃機関の効率及び信頼性向上、燃費改善に大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】カムシャフトの一例を示す側面図である。
【図2】バルブ周辺の動弁機構の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 カムシャフト
10 カムロブ
20 カムジャーナル
30 バルブリフタ
40 バルブスプリング
50 バルブ
51 ステム部
52 フェース部
60 ステムシール
70 バルブガイド
80 バルブシート
90 吸気ポート
100 リテーナ
110 コッタ
【発明の属する技術分野】
本発明は、動弁機構に係り、更に詳細には、カムシャフト周辺やバルブ周辺における摺動部位と該摺動部位と摺動する他の摺動部位の一方又は双方に、特定の潤滑油の存在下において極めて優れた低摩擦性を示すダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜等の硬質炭素薄膜を被覆した動弁機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
地球全体の温暖化、オゾン層の破壊など地球規模での環境問題が大きくクローズアップされ、とりわけ地球全体の温暖化に大きな影響があるといわれている二酸化炭素(CO2)削減については各国でその規制値の決め方をめぐって大きな関心を呼んでいる。
CO2削減については、自動車の燃費の削減を図ることが大きな課題の1つであり、摺動材料と潤滑油が果たす役割は大きい。
【0003】
摺動材料の役割は、エンジンの摺動部位の中で摩擦摩耗環境が苛酷な部位に対して耐磨耗性に優れ且つ低い摩擦係数を発現することであり、最近では、フォロワ部位であるバルブリフタやリフタシムに対して、種々の硬質薄膜材料の適用やローラニードルベアリングを組み込んだローラロッカーアームの適用が進んできている。
一般にDLC材料は、空気中、潤滑油非存在下における摩擦係数が、窒化チタン(TiN)や窒化クロム(CrN)といった耐磨耗性の硬質被膜材料と比べて低いことから低摩擦摺動材料として期待されている。
【0004】
また、潤滑油における省燃費対策としては、▲1▼低粘度化による、流体潤滑領域における粘性抵抗及びエンジン内の攪拌抵抗の低減、▲2▼最適な摩擦調整剤と各種添加剤の配合による、混合及び境界潤滑領域下での摩擦損失の低減、が提言されており、摩擦調整剤としては、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)やジチオリン酸モリブデン(MoDTP)といった有機モリブデン化合物を中心に多くの研究がなされており、従来の鋼材料から成る摺動面においては、使用開始初期に優れた低摩擦係数を示す有機モリブデン化合物を配合した潤滑油が適用され、効果を上げていた。
このようなDLC材料の摩擦特性や、有機モリブデン化合物の摩擦調整剤としての性能について、いくつかの報告がされている(例えば、非特許文献1及び2参照。)。
また、エンジンのカムシャフトに関しては、種々の提案がなされており(例えば、特許文献1及び2参照。)。
更に、エンジンのバルブ機構に関しても、種々の提案がなされている(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
【特許文献1】
実開平5−36004号公報
【特許文献2】
実開平5−42616号公報
【特許文献3】
特開平8−14014号公報
【非特許文献1】
加納、他,日本トライボロジー学会予稿集,1999年5月,p.11〜12
【非特許文献2】
加納、他(Kano et al.),ワールド・トライボロジー・コングレス(World Tribology Congress)
2001.9,Vienna,Proceeding,p.342
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、空気中において低摩擦性に優れる一般のDLC材料は、潤滑油存在下においては、その摩擦低減効果が必ずしも大きくなく、また、このような摺動部材料に有機モリブデン化合物を含有する潤滑油を適用したとしても摩擦低減効果が十分発揮されないことがあることもわかってきた。
【0007】
また、カムシャフト周辺の動弁機構においては、▲1▼カムロブとバルブリフタ間の摺動抵抗により、カムシャフトの駆動トルクを悪化(増加)させる、▲2▼シリンダーヘッドのカムジャーナル軸受とカムシャフトジャーナル間の摺動抵抗により、カムシャフトのトルクを悪化(増加)させる、という問題があった。
一方、バルブ周辺の動弁機構においては、従来公知の技術では、▲1▼バルブのステム部とバルブガイド間の隙間をこれ以上狭めることができない、▲2▼ある一定の適切なオイル量で潤滑されない場合(潤滑が十分でない)、バルブのステム部が焼きつく、又はオイル下がりが発生する、▲3▼バルブのステム部とガイド間の摩擦低減が限界に達しつつある、▲4▼叩きによりバルブフェース摩耗が発生する、という問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所定の硬質炭素薄膜を摺動面に被覆し、所定の潤滑油とを組み合わせることによって、極めて優れた低摩擦性、耐摩耗性、耐焼付性及び耐久性を示し、従来の鋼材料と有機モリブデン化合物との組合せよりも更に優れた省燃費効果を発揮する動弁機構を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、潤滑油、特に所定の無灰摩擦調整剤を含有する潤滑油の存在下で、特定の硬質炭素薄膜が極めて優れた低摩擦性、耐摩耗性、耐焼付性及び耐久性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の動弁機構は、潤滑油の存在下で摺動し、カムロブとカムジャーナルを有する鉄基材料から成るカムシャフトを備えた動弁機構において、かかるカムシャフトの摺動面及び/又は鉄基材料から成る相手材の摺動面に、水素含有量が10原子%以下である硬質炭素薄膜を被覆して成る。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の動弁機構について詳細に説明する。なお、本明細書において、「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。
【0012】
まず、カムシャフト周辺の動弁機構を図に基づいて説明する。
図1は、カムシャフトの一例を示す側面図である。同図に示すように、本発明の動弁機構の一部分であるカムシャフト1は、カムロブ10とカムジャーナル20を備える。
エンジン実働時において、カムシャフト1は図示しないクランクシャフトより図示しないチェーンを介して駆動トルクを受け回転運動を行い、カムロブ10で図示しないバルブリフタを押し下げ、図示しないバルブの開閉運動を行う。
また、カムシャフト1は、カムジャーナル20で図示しないシリンダヘッドブラケットに保持された状態で回転運動を行う。カムジャーナル20とシリンダヘッドブラケットとの間には、微小な隙間があり油膜を介して摺動する。
カムロブ10がバルブリフタを押し下げ、バルブを開閉する時、カムロブ10とバルブリフタ間には図示しないバルブスプリングの反発力により大きな摺動抵抗が発生する。
【0013】
カムシャフト1を駆動させるトルクは、バルブスプリングの反発力に抗してバルブを押し上げる必要トルクと、カムシャフト1の各摺動部位の摩擦抵抗に抗して回転させる駆動力との合力として決定される。
Aで示すカムロブ10の摺動面及び相手材であるバルブリフタの摺動面の一方又は双方や、Bで示すカムジャーナル20の摺動面及び相手材である図示しないカムジャーナル軸受けの摺動面の一方又は双方に硬質炭素薄膜を被覆することによって、摺動部位の摩擦抵抗を減少させ、カムシャフト1の駆動トルクを減少させる効果がある。また、各摺動部位の摺動抵抗が低減され、耐摩耗性や耐焼付性が向上する。
【0014】
次に、バルブ周辺の動弁機構を図に基づいて説明する。
図2は、バルブ周辺の動弁機構の一例を示す断面図である。同図に示すように、本発明の他の動弁機構は、カムロブ10が回転すると、バルブリフタ30がバルブスプリング40を圧縮しつつ押し下げられると同時に、バルブ50がステムシール60を有するバルブガイド70に案内されて押し下げられ、バルブシート80からバルブ50が離間して、吸気ポート90と図示しない燃焼室とが連通する(バルブの開き状態)。その後、カムロブ10が更に回転すると、バルブスプリング40の反発力により、バルブリフタ30、リテーナ100及びコッタ110とともにバルブ50が押し上げられ、バルブシート80にバルブ50が接触して吸気ポート90と図示しない燃焼室とを遮断する(バルブの閉じ状態)。このようなバルブ開閉をカムロブ10の回転と同期して行う。
このようにバルブ50のステム部51はヘッド側に圧入されたバルブガイド70の中を通って、オイル潤滑されながら組み込まれている。
また、図示しない燃焼室の開閉弁部分にあたるバルブ50のフェース部52は動作時にヘッド側に圧入されたバルブシート80と連続的に接触する。
【0015】
ステム部51の摺動面51a及び相手材であるガイド70の摺動面70aの一方又は双方に硬質炭素薄膜を被覆することによって、摺動部位の摩擦係数が減少し、摩擦が低下し、動弁系駆動損失を低減でき、更にはエンジンのレスポンスが向上する。また、摺動部位の耐摩耗性が向上することにより、耐久性が向上する。一方で、摺動部位の耐焼付性が向上することにより、隙間を狭めることができ、オイル下がりを抑制できる。
また、フェース部52の摺動面52a及び相手材であるバルブシート80の摺動面80aの一方又は双方に硬質炭素薄膜を被覆することによって、摺動部位の耐摩耗性が向上することにより、耐久性が向上する。
【0016】
本発明において、鉄基材料は、特に限定されるものではなく、要求される性能や条件に応じて、鋳鉄や鋼鉄などから適宜選択することができる。
また、硬質炭素薄膜は、炭素元素を主として構成された非晶質のものであり、炭素同士の結合形態がダイヤモンド構造(SP3結合)とグラファイト結合(SP2結合)の両方から成る。具体的には、炭素元素だけから成るアモルファスカーボン薄膜、水素を含有する水素アモルファスカーボン薄膜、及びチタン(Ti)やモリブデン(Mo)等の金属元素を一部に含む金属アモルファスカーボン薄膜が挙げられる。
【0017】
また、本発明においては、硬質炭素薄膜中の水素含有量が増加すると摩擦係数が増すことから、10原子%以下とすることを要し、潤滑油の存在下での摺動時における摩擦係数を十分に低下させ、より安定した摺動特性を確保するためには、1原子%以下とすることが好ましい。
このような硬質炭素薄膜としては、PVD法及びCVD法の一方又は双方により成膜されたDLC薄膜を用いることができる。
上記PVD法やCVD法としては、DLC薄膜を所望の配置で被覆できれば、特に限定されるものではないが、代表的には、アーク式イオンプレーティング法等を挙げることができる。
【0018】
更に、本発明においては、硬質炭素薄膜を被覆する前の摺動面の表面粗さが、Raで0.03μm以下であることが摺動の安定性の面から好ましい。0.03μmを超えると、局部的にスカッフィングを形成し、摩擦係数の大幅増大となることがあり好ましくない。
【0019】
次に、本発明に用いる潤滑油について説明する。
本発明に用いる潤滑油は、上記本発明の動弁機構と組み合わせて用いられる潤滑油であって、潤滑油基油に、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤、脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤、ポリブテニルコハク酸イミド、ポリブテニルコハク酸イミドの誘導体又はジチオリン酸亜鉛、及びこれらの任意の組合せに係る成分を含有させることが好ましい。
ここで、潤滑油基油としては特に限定されるものではなく、鉱油、合成油、油脂及びこれらの混合物など、潤滑油の基油として通常使用されるものであれば、種類を問わず使用することができる。
【0020】
鉱油としては、具体的には、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理等を適宜組み合わせて精製したパラフィン系又はナフテン系等の油やノルマルパラフィン等が使用でき、溶剤精製、水素化精製処理したものが一般的であるが、芳香族分をより低減することが可能な高度水素化分解プロセスやGTL Wax(ガス・トウー・リキッド・ワックス)を異性化した手法で製造したものを用いることがより好ましい。
【0021】
合成油としては、具体的には、ポリ−α−オレフィン(例えば、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンオリゴマー等)、ポリ−α−オレフィンの水素化物、イソブテンオリゴマー、イソブテンオリゴマーの水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(例えば、ジトリデシルグルタレート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジオクチルセバケート等)、ポリオールエステル(例えば、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、トリメチロールプロパンイソステアリネート等のトリメチロールプロパンエステル;ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のペンタエリスリトールエステル)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル及びポリフェニルエーテル等が挙げられる。中でも、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフイン又はその水素化物が好ましい例として挙げられる。
【0022】
本発明に用いる潤滑油における基油は、鉱油系基油及び合成系基油を単独又は混合して用いる以外に、2種類以上の鉱油系基油又は2種類以上の合成系基油の混合物であっても差し支えない。また、上記混合物における2種類以上の基油の混合比も特に限定されず任意に選ぶことができる。
【0023】
潤滑油基油中の硫黄分について、特に制限はないが、基油全量基準で、0.2%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下、さらには0.05%以下であることが好ましい。特に、水素化精製鉱油や合成系基油の硫黄分は、0.005%以下、又は実質的に硫黄分を含有していない(5ppm以下)ことから、これらを基油として用いることが好ましい。
【0024】
また、潤滑油基油中の芳香族含有量についても、特に制限はないが、内燃機関用潤滑油として長期間低摩擦特性を維持するためには、全芳香族含有量が15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、さらには5%以下であることが好ましい。即ち、潤滑油基油の全芳香族含有量が15%を超える場合には、酸化安定性が劣るため好ましくない。
なお、ここで言う全芳香族含有量とは、ASTM、D2549に規定される方法に準拠して測定される芳香族留分(aromatics fraction)含有量を意味している。
【0025】
潤滑油基油の動粘度にも、特に制限はないが、内燃機関用潤滑油として使用する場合には、100℃における動粘度が2mm2/s以上であることが好ましく、より好ましくは3mm2/s以上である。一方、100℃における動粘度は、20mm2/s以下であることが好ましく、10mm2/s以下であることが更に好ましく、特に8mm2/s以下であることが好ましい。潤滑油基油の100℃における動粘度が2mm2/s未満である場合には、十分な耐摩耗性が得られない上に蒸発特性が劣る可能性があるため好ましくない。一方、動粘度が20mm2/sを超える場合には低摩擦性能を発揮しにくく、低温性能が悪くなる可能性があるため好ましくない。本発明においては、上記基油の中から選ばれる2種以上の基油を任意に混合した混合物等が使用でき、100℃における動粘度が上記の好ましい範囲内である限りにおいては、基油単独の動粘度が上記以外のものであっても使用可能である。
【0026】
また、潤滑油基油の粘度指数にも、特別な制限はないが、80以上であることが好ましく、100以上であることが更に好ましく、特に内燃機関用潤滑油として使用する場合には、120以上であることが好ましい。潤滑油基油の粘度指数を高めることで、よりオイル消費が少なく、低温粘度特性、省燃費性能に優れた内燃機関用潤滑油を得ることができる。
【0027】
使用する脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤の一方又は双方としては、炭素数6〜30、好ましくは炭素数8〜24、特に好ましくは炭素数10〜20の直鎖状又は分枝状炭化水素基を有する脂肪酸エステル、脂肪酸アミン化合物、及びこれらの任意の混合物を挙げることができる。炭素数が6〜30の範囲外のときは、摩擦低減効果が十分に得られない可能性がある。
【0028】
炭素数6〜30の直鎖状又は分枝状炭化水素基としては、具体的には、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基及びトリアコンチル基等のアルキル基や、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基及びトリアコンテニル基等のアルケニル基などを挙げることができる。
なお、上記アルキル基及びアルケニル基には、考えられる全ての直鎖状構造及び分枝状構造が含まれ、また、アルケニル基における二重結合の位置は任意である。
【0029】
また、上記脂肪酸エステルとしては、かかる炭素数6〜30の炭化水素基を有する脂肪酸と脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールとのエステルなどを例示でき、具体的には、グリセリンモノオレート、グリセリンジオレート、ソルビタンモノオレート及びソルビタンジオレートなどを特に好ましい例として挙げることができる。
上記脂肪族アミン化合物としては、脂肪族モノアミン又はそのアルキレンオキシド付加物、脂肪族ポリアミン、イミダゾリン化合物等、及びこれらの誘導体等を例示できる。具体的には、ラウリルアミン、ラウリルジエチルアミン、ラウリルジエタノールアミン、ドデシルジプロパノールアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ステアリルテトラエチレンペンタミン、オレイルアミン、オレイルプロピレンジアミン、オレイルジエタノールアミン及びN−ヒドロキシエチルオレイルイミダゾリン等の脂肪族アミン化合物や、これら脂肪族アミン化合物のN,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキル(又はアルケニル)(炭素数6〜28)等のアミンアルキレンオキシド付加物、これら脂肪族アミン化合物に炭素数2〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)や、シュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸を作用させて、残存するアミノ基及びイミノ基の一方又は双方の一部又は全部を中和したりアミド化した、いわゆる酸変性化合物等が挙げられる。好適な例としては、N,N−ジポリオキシエチレン−N−オレイルアミン等が挙げられる。
【0030】
また、本発明に用いる潤滑油に含まれる脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤の一方又は双方の含有量は、特に制限はないが、潤滑油全量基準で、0.05〜3.0%であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜2.0%、特に好ましくは0.5〜1.4%であることがよい。上記含有量が0.05%未満であると摩擦低減効果が小さくなり易く、3.0%を超えると潤滑油への溶解性や貯蔵安定性が著しく悪化し、沈殿物が発生し易いので、好ましくない。
【0031】
一方、上述したポリブテニルコハク酸イミドとしては、次の一般式(1)及び(2)
【0032】
【化1】
【0033】
【化2】
【0034】
で表される化合物が挙げられる。これら一般式におけるPIBは、ポリブテニル基を示し、高純度イソブテン又は1−ブテンとイソブテンの混合物をフッ化ホウ素系触媒又は塩化アルミニウム系触媒で重合させて得られる数平均分子量が900〜3500、望ましくは1000〜2000のポリブテンから得られる。上記数平均分子量が900未満の場合は清浄性効果が劣り易く、3500を超える場合は低温流動性に劣り易いため、望ましくない。
また、上記一般式におけるnは、清浄性に優れる点から1〜5の整数、より望ましくは2〜4の整数であることがよい。更に、上記ポリブテンは、製造過程の触媒に起因して残留する微量のフッ素分や塩素分を、吸着法や十分な水洗等の適切な方法により、50ppm以下、より望ましくは10ppm以下、特に望ましくは1ppm以下まで除去してから用いることもよい。
【0035】
かかるポリブテニルコハク酸イミドの製造方法としては、特に限定はないが、例えば、上記ポリブテンの塩素化物又は塩素やフッ素が充分除去されたポリブテンと無水マレイン酸とを100〜200℃で反応させて得られるポリブテニルコハク酸を、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンと反応させることにより得ることができる。
【0036】
一方、上述したポリブテニルコハク酸イミドの誘導体としては、上記一般式(1)又は(2)で表される化合物に、ホウ素化合物や含酸素有機化合物を作用させて、残存するアミノ基及びイミノ基の一方又は双方の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるホウ素変性又は酸変性化合物を例示できる。その中でもホウ素含有ポリブテニルコハク酸イミド、特にホウ素含有ビスポリブテニルコハク酸イミドが現時点では最も好ましいものとして挙げられる。
【0037】
上記ホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ酸エステル等が挙げられる。具体的には、上記ホウ酸として、オルトホウ酸、メタホウ酸及びテトラホウ酸などが挙げられる。また、上記ホウ酸塩としては、アンモニウム塩等、具体的には、メタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム及び八ホウ酸アンモニウム等のホウ酸アンモニウムが好適例として挙げられる。また、ホウ酸エステルとしては、ホウ酸と好ましくは炭素数1〜6のアルキルアルコールとのエステル、より具体的には、ホウ酸モノメチル、ホウ酸ジメチル、ホウ酸トリメチル、ホウ酸モノエチル、ホウ酸ジエチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸モノプロピル、ホウ酸ジプロピル、ホウ酸トリププロピル、ホウ酸モノブチル、ホウ酸ジブチル及びホウ酸トリブチル等が好適例として挙げられる。なお、ホウ素含有ポリブテニルコハク酸イミドにおけるホウ素含有量Bと窒素含有量Nとの質量比「B/N」は、通常0.1〜3であり、好ましくは、0.2〜1である。
【0038】
また、上記含酸素有機化合物としては、具体的には、ぎ酸、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ノナデカン酸及びエイコサン酸等の炭素数1〜30のモノカルボン酸、シュウ酸、フタル酸、トリメリット酸及びピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸並びにこれらの無水物、又はエステル化合物、炭素数2〜6のアルキレンオキサイドやヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネート等が挙げられる。
【0039】
なお、本発明に用いる潤滑油では、ポリブテニルコハク酸イミド及びその誘導体の一方又は双方の含有量は特に制限されないが、潤滑油全量基準で0.1〜15%が好ましく、1.0〜12%であることが更に好ましい。0.1%未満では清浄性効果に乏しくなることがあり、15%を超えると含有量に見合う清浄性効果が得られにくく、抗乳化性が悪化し易い。
【0040】
更にまた、本発明に用いる潤滑油は、次の一般式(3)
【0041】
【化3】
【0042】
で表されるジチオリン酸亜鉛を含有することが好適である。
上記式(3)中のR4、R5、R6及びR7は、それぞれ別個に炭素数1〜24の炭化水素基を示す。これら炭化水素基としては、炭素数1〜24の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数3〜24の直鎖状又は分枝状のアルケニル基、炭素数5〜13のシクロアルキル基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルアリール基、炭素数7〜19のアリールアルキル基等のいずれかであることが望ましい。また、アルキル基やアルケニル基は、第1級、第2級及び第3級のいずれであってもよい。
【0043】
上記R4、R5、R6及びR7としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基及びテトラコシル基等のアルキル基や、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ブタジエニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基及びオレイル基等のオクタデセニル基や、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基及びテトラコセニル基等のアルケニル基や、シクロペンチル基、シクロへキシル基及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基や、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、プロピルシクロペンチル基、エチルメチルシクロペンチル基、トリメチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、エチルジメチルシクロペンチル基、プロピルメチルシクロペンチル基、プロピルエチルシクロペンチル基、ジ−プロピルシクロペンチル基、プロピルエチルメチルシクロペンチル基、メチルシクロへキシル基、ジメチルシクロへキシル基、エチルシクロへキシル基、プロピルシクロへキシル基、エチルメチルシクロへキシル基、トリメチルシクロへキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、エチルジメチルシクロヘキシル基、プロピルメチルシクロヘキシル基、プロピルエチルシクロヘキシル基、ジ−プロピルシクロへキシル基、プロピルエチルメチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、エチルシクロヘプチル基、プロピルシクロヘプチル基、エチルメチルシクロヘプチル基、トリメチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基、エチルジメチルシクロヘプチル基、プロピルメチルシクロヘプチル基、プロピルエチルシクロヘプチル基、ジ−プロピルシクロヘプチル基及びプロピルエチルメチルシクロヘプチル基等のアルキルシクロアルキル基や、フェニル基及びナフチル基等のアリール基や、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、エチルメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、ブチルフェニル基、プロピルメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、エチルジメチルフェニル基、テトラメチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基及びドデシルフェニル基等のアルキルアリール基や、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基及びジメチルフェネチル基等のアリールアルキル基が例示できる。
なお、R4、R5、R6及びR7がとり得る上記炭化水素基には、考えられる全ての直鎖状構造及び分枝状構造が含まれ、また、アルケニル基の二重結合の位置、アルキル基のシクロアルキル基への結合位置、アルキル基のアリール基への結合位置、及びアリール基のアルキル基への結合位置は任意である。また、上記炭化水素基の中でも、その炭化水素基が、直鎖状又は分柱状の炭素数1〜18のアルキル基である場合若しくは炭素数6〜18のアリール基、又は直鎖状若しくは分枝状アルキルアリール基である場合が特に好ましい。
【0044】
上記ジチオリン酸亜鉛の好適な具体例としては、ジイソプロピルジチオリン酸亜鉛、ジイソブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ペンチルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−オクチルジチオリン酸亜鉛、ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−デシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−ドデシルジチオリン酸亜鉛、ジイソトリデシルジチオリン酸亜鉛及びこれらの任意の組合せに係る混合物等が挙げられる。
【0045】
また、上記ジチオリン酸亜鉛の含有量は、特に制限されないが、より高い摩擦低減効果を発揮させる観点から、潤滑油全量基準且つリン元素換算量で、0.1%以下であることが好ましく、また0.06%以下であることが更に好ましく、ジチオリン酸亜鉛が含有されないことが特に好ましい。ジチオリン酸亜鉛の含有量が潤滑油全量基準且つリン元素換算量で0.1%を超えると、硬質炭素薄膜が被覆された部材と鉄基部材との摺動面における上記脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤や上記脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤の優れた摩擦低減効果が阻害される可能性がある。
【0046】
かかるジチオリン酸亜鉛の製造方法としては、従来方法を任意に採用することができ、特に制限されないが、具体的には、上記R4、R5、R6及びR7に対応する炭化水素基を持つアルコール又はフェノールを五酸化二リン(P2O5)と反応させてジチオリン酸とし、これを酸化亜鉛で中和させることにより合成することができる。なお、上記ジチオリン酸亜鉛の構造は、使用する原料アルコールによって異なることは言うまでもない。
本発明においては、上記一般式(3)に包含される2種以上のジチオリン酸亜鉛を任意の割合で混合して使用することもできる。
【0047】
上述のように、本発明に用いる潤滑油は、硬質炭素薄膜が被覆された部材と鉄基部材との摺動面に用いた場合に、極めて優れた低摩擦特性を示すものであるが、特に内燃機関用潤滑油として必要な性能を高める目的で、金属系清浄剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、他の無灰摩擦調整剤、他の無灰分散剤、摩耗防止剤若しくは極圧剤、防錆剤、非イオン系界面活性剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤等を単独で又は複数種を組合せて配合し、必要な性能を高めることができる。
【0048】
上記金属系清浄剤としては、潤滑油用の金属系清浄剤として通常用いられる任意の化合物が使用できる。例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホネート、フェネート、サリシレートナフテネート等を単独で又は複数種を組合せて使用できる。ここで、上記アルカリ金属としてはナトリウム(Na)やカリウム(K)等、上記アルカリ土類金属としてはカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)等が例示できる。また、具体的な好適例としては、Ca又はMgのスルフォネート、フェネート及びサリシレートが挙げられる。
なお、これら金属系清浄剤の全塩基価及び添加量は、要求される潤滑油の性能に応じて任意に選択できる。通常、全塩基価は、過塩素酸法で0〜500mgKOH/g、望ましくは150〜400mgKOH/gであり、その添加量は潤滑油全量基準で、通常0.1〜10%である。
【0049】
また、上記酸化防止剤としては、潤滑油用の酸化防止剤として通常用いられる任意の化合物を使用できる。例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、アルキルジフェニルアミン等のアミン系酸化防止剤、並びにこれらの任意の組合せに係る混合物等が挙げられる。また、かかる酸化防止剤の添加量は、潤滑油全量基準で、通常0.01〜5%である。
【0050】
更に、上記粘度指数向上剤としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの共重合体やその水添物等のいわゆる非分散型粘度指数向上剤、及び更に窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤等が例示できる。また、他の粘度指数向上剤の具体例としては、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等)及びその水素化物、ポリイソブチレン及びその水添物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、並びにポリアルキルスチレン等も例示できる。
これら粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定することが必要である。具体的には、粘度指数向上剤の数平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートでは5000〜1000000、好ましくは100000〜800000がよく、ポリイソブチレン又はその水素化物では800〜5000、エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物では800〜300000、好ましくは10000〜200000がよい。また、かかる粘度指数向上剤は、単独で又は複数種を任意に組合せて含有させることができるが、通常その含有量は、潤滑油全量基準で0.1〜40.0%であることが望ましい。
【0051】
更にまた、他の無灰摩擦調整剤としては、ホウ酸エステル、高級アルコール、脂肪族エーテル等の無灰摩擦調整剤、ジチオリン酸モリブデン、ジチオカルバミン酸モリブデン、二硫化モリブデン等の金属系摩擦調整剤等が挙げられる。
また、他の無灰分散剤としては、数平均分子量が900〜3500のポリブテニル基を有するポリブテニルベンジルアミン、ポリブテニルアミン、数平均分子量が900未満のポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸イミド等及びそれらの誘導体等が挙げられる。
更に、上記摩耗防止剤又は極圧剤としては、ジスルフィド、硫化油脂、硫化オレフィン、炭素数2〜20の炭化水素基を1〜3個含有するリン酸エステル、チオリン酸エステル、亜リン酸エステル、チオ亜リン酸エステル及びこれらのアミン塩等が挙げられる。
更にまた、上記防錆剤としては、アルキルベンゼンスルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、アルケニルコハク酸エステル及び多価アルコールエステル等が挙げられる。
また、上記非イオン系界面活性剤及び抗乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤が挙げられる。
更に、上記金属不活性化剤としては、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、チアジアゾール、ベンゾトリアゾール及びチアジアゾール等が挙げられる。
更にまた、上記消泡剤としては、シリコーン、フルオロシリコーン及びフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
なお、これら添加剤を本発明に用いる潤滑油に含有させる場合には、その含有量は、潤滑油全量基準で、他の摩擦調整剤、他の無灰分散剤、摩耗防止剤又は極圧剤、防錆剤、及び抗乳化剤については0.01〜5%、金属不活性剤については0.005〜1%、消泡剤については0.0005〜1%の範囲から適宜選択できる。
【0052】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、カムシャフト周辺やバルブ周辺における摺動部位と該摺動部位と摺動する他の摺動部位の一方又は双方に、特定の潤滑油の存在下において極めて優れた低摩擦性を示すダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜等の硬質炭素薄膜を被覆し、所定の潤滑油とを組み合わせることとしたため、これら部材間の低摩擦性、耐摩耗性、耐焼付性及び耐久性を大幅に改善することができ、内燃機関の効率及び信頼性向上、燃費改善に大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】カムシャフトの一例を示す側面図である。
【図2】バルブ周辺の動弁機構の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 カムシャフト
10 カムロブ
20 カムジャーナル
30 バルブリフタ
40 バルブスプリング
50 バルブ
51 ステム部
52 フェース部
60 ステムシール
70 バルブガイド
80 バルブシート
90 吸気ポート
100 リテーナ
110 コッタ
Claims (10)
- 潤滑油の存在下で摺動し、カムロブとカムジャーナルを有する鉄基材料から成るカムシャフトを備えた動弁機構において、
上記カムシャフトの摺動面及び/又は鉄基材料から成る相手材の摺動面に、水素含有量が10原子%以下である硬質炭素薄膜を被覆して成ることを特徴とする動弁機構。 - 鉄基材料から成るバルブを更に備えた動弁機構において、
上記バルブの摺動面及び/又は鉄基材料から成る相手材の摺動面に、水素含有量が10原子%以下である硬質炭素薄膜を被覆して成ることを特徴とする請求項1に記載の動弁機構。 - 上記硬質炭素薄膜の水素含有量が1原子%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の動弁機構。
- 上記硬質炭素薄膜が、アーク式イオンプレーティング法により成膜されたダイヤモンドライクカーボン薄膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の動弁機構。
- 上記硬質炭素薄膜を被覆する前の上記摺動面の表面粗さが、Raで0.03μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の動弁機構。
- 上記潤滑油が、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の動弁機構。
- 上記脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤が、炭素数6〜30の炭化水素基を有し、潤滑油全量基準で0.05〜3.0%含まれていることを特徴とする請求項6に記載の動弁機構。
- 上記潤滑油が、ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の動弁機構。
- 上記ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体が、潤滑油全量基準で0.1〜15%含まれていることを特徴とする請求項8に記載の動弁機構。
- 上記潤滑油が、ジチオリン酸亜鉛を含有し、その含有量が、潤滑油全量基準且つリン元素換算量で0.1%以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の動弁機構。
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