JP2005044532A - 燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料電池システムにおいて、発電を停止した後、発電を再開する前に負極部にある水を十分に除去しないと、発電開始時に電圧が低下することがある。
【解決手段】燃料電池1に水素を含む水素含有ガスと酸素を含む酸素含有ガスとを供給して燃料電池1を間歇的に発電させる燃料電池システムSであって、燃料電池1に連通する排出路に設けられて開成された際に燃料電池1内の水素含有ガスの電極側に発生する水を少なくとも排出可能にする排出制御弁B1と、発電の再開を決定して発電を再開するまでの間に発電を停止している時間に基づいて水の排出量が増加するように排出制御弁B1を開成する制御手段とを備える。
【選択図】図6
【解決手段】燃料電池1に水素を含む水素含有ガスと酸素を含む酸素含有ガスとを供給して燃料電池1を間歇的に発電させる燃料電池システムSであって、燃料電池1に連通する排出路に設けられて開成された際に燃料電池1内の水素含有ガスの電極側に発生する水を少なくとも排出可能にする排出制御弁B1と、発電の再開を決定して発電を再開するまでの間に発電を停止している時間に基づいて水の排出量が増加するように排出制御弁B1を開成する制御手段とを備える。
【選択図】図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として車両に搭載される燃料電池システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車などの車両において、窒素化合物、炭化水素、一酸化炭素といった有害廃棄物が少ないなどの理由から電気自動車が開発され、電気自動車のモータの電源として、内燃機関に比較してエネルギロスが少ない燃料電池が実用化され始めている。このような車両に搭載される燃料電池を含む燃料電池システムでは、燃料電池が安全に、かつ効率よく発電するために各種の制御を行っている。
【0003】
この種の燃料電池システムにおける燃料電池は、負極活物質としての水素を、プラチナ(白金)などの触媒と接触させて電子と水素イオンに解離した後、この水素イオンを正極活物質としての酸素と反応させて水が得られるという反応機構に基づいている。すなわち、燃料電池では、水素から放出された電子の移動により起電力が生じるようになされている。それゆえ、このような原理に基づけば、化学的エネルギ変化を直接的に電気エネルギに変換できるため、燃料電池では、他の方式に比べて極めてエネルギ効率が高いものとなる。
【0004】
このような燃料電池を使用した燃料電池システムにあっては、燃料電池、水素ガス供給源、空気供給源、希釈器及び外部回路を備えている。水素ガス供給源からはほぼ一定の圧力で燃料電池の負極部に水素ガスが供給され、また空気供給源からは、所定の圧力で燃料電池の正極部に空気、実質的には酸素ガスが供給される。そして、水素が負極部において水素イオンと電子とに解離され、電子は外部回路を経由して正極部に供給される。また空気中の酸素は、イオン交換膜を移動してきた水素イオンと正極部に供給された電子と結合して水を生成する。この時、生成された水の一部が負極部にも付着する。
【0005】
負極部に付着する少量の水は、燃料電池における発電の障害となるため、外部に排出する必要がある。このため、上記の従来例にあっては、燃料電池と希釈器とを接続する管路にパージ弁を設け、このパージ弁を開成することにより、水素ガスとともに負極部に付着した水を排出するようにしている。なお、希釈器は、水とともに排出される排気水素含有ガスを空気と混合し、その濃度を燃焼しないレベルまで希釈して大気中に排出するためのものである。このようなパージ弁を備えた例としては、例えば、特許文献1に示されるものがある。
【0006】
また、このような燃料電池システムにおいて、燃料電池の発電の効率化を図るために、蓄電池を組み合わせて用い、燃料電池を蓄電池の充電容量に応じて間歇的に発電をするものが、例えば特許文献2に記載されている。
【0007】
通常、このような間歇的に発電を行う燃料電池システムにおいては、発電の停止を蓄電池の状態に応じて決定している。具体的には、蓄電池の残存容量が多い場合、放電量が少ない場合、あるいはその温度が充放電に支障を来す高温である場合などに応じて、発電の停止を決定している。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−373682
【特許文献2】
特開平5−182675
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献2のような燃料電池を間歇的に発電させるものでは、発電を停止している場合にあっても、燃料電池内に残存する水素と酸素とが反応し、負極部に水が付着することがある。したがって、このような燃料電池システムでは、燃料電池の発電を再開する前に、パージ弁を開成して排気水素含有ガスと負極部の水とを排出するようにしている。この場合、パージ弁の時間は、例えば発電をしている場合と同じ設定されているので、このようなパージ弁の開成動作により排出される水の量は、ほぼ一定量である。
【0010】
一方、発電を停止している時間が長くなった場合、負極部に付着する水の量が発電停止状態が短い場合に比べて多くなっている。そのため、パージ弁を所定の周期で開成しても、水の排出が十分に行われず、発電電圧が低くなる場合があった。
【0011】
本発明は、このような不具合を解消することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の燃料電池システムは、燃料電池に水素を含む水素含有ガスと酸素を含む酸素含有ガスとを供給して燃料電池を間歇的に発電させる燃料電池システムであって、燃料電池に連通する排出路に設けられて開成された際に燃料電池内の水素含有ガスの電極側に発生する水を少なくとも排出可能にする排出制御弁と、発電の再開を決定して発電を再開するまでの間に発電を停止している時間が長いほど水の排出量が増加するように排出制御弁を開成する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、燃料電池の発電を再開する場合に、制御手段が、少なくとも水の排出量が増加するように、発電を停止している時間に基づいて排出制御弁を開成するので、発電停止時間が長くて発生する水の量が多くなっても、水を十分に排出することが可能になる。したがって、燃料電池の発電を再開した場合に、水の残留により発電電圧が不安定になることを防止することが可能になる。
【0014】
迅速に発電を再開するためには、燃料電池と、燃料電池により充電される蓄電手段とを備え、燃料電池に水素を含む水素含有ガスと酸素を含む酸素含有ガスとを供給して燃料電池を間歇的に発電させる燃料電池システムであって、燃料電池に連通する排出路に設けられて開成された際に燃料電池内の水素含有ガスの電極側に発生する水を少なくとも排出可能にする排出制御弁と、蓄電手段の蓄電容量を検出する容量検出手段と、容量検出手段が検出した蓄電容量が判定容量を下回ると発電再開を判定するもので、発電停止から発電再開時点までの発電停止期間が長いほど判定容量を大きく設定し、発電再開を判定した時点から発電を再開するまでの間に排出制御弁を開成する制御手段とを備えることを特徴とするものが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、発電停止期間が長くなった場合、発電再開を判定した時点から設定された判定容量を下回るまでの間に排出制御弁を開成するので、発電停止時間に応じて少なくとも水の排出に必要な時間を考慮に入れることになる。したがって、発電の再開時点となった際に水の排出が完了しており、遅れることなく発電を再開することが可能になる。
【0016】
水とともに排出される排気水素含有ガスの安全性を高めるためには、水を排出する際に排出される排気水素含有ガスを燃料電池から排出される排気酸素含有ガスにより希釈する希釈手段をさらに備え、発電を再開する前の排出制御弁の開成時には排気水素含有ガスの圧力を低減するものが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
この第一の実施の形態に係る燃料電池システムSは、図1に示すように、車両特には自動車に搭載することができるもので、燃料電池1、発電に必要な水素ガスの貯蔵手段である水素ガスタンク2、空気を供給するための電動式のコンプレッサ3、蓄電手段である二次電池4、発電に付随する各種制御を行う制御装置5、燃料電池1の温度を調節する温度制御装置TC等を備えている。この燃料電池システムSは、車両に搭載された場合には車両を走行させるためのモータを含む走行装置や、燃料電池1を制御するための電磁弁、ファンモータ、さらに電動式のコンプレッサ3等の電気機器を負荷Mとするものである。また、この燃料電池システムSでは、基本的には燃料電池1は負荷に追従して発電量を変更するのでなく、発電効率の最もよい発電量となるように定電力もしくは定電流発電制御されるとともに、二次電池4の充放電状態に応じて間歇的に燃料電池1を発電させるようにしている。
【0019】
燃料電池1は、この分野で広く知られたものを用いることができ、例えばイオン交換膜に密着するようにして正極部と負極部とを配設したセルの複数を直列接続してスタックを形成し、そのスタックに対して水素含有ガスである水素ガスと酸素含有ガスである空気とを所定の圧力で供給し得るように、ハウジング内に収納したものである。この燃料電池システムSにおいては、水素ガスタンク2と燃料電池1とを連通する水素含有ガス供給路たる水素ガス供給路P1を設けていて、この水素ガス供給路P1を介して燃料電池1に水素を供給するようにしている。また、水素ガス供給路P1上には、水素ガス圧力を調整するレギュレータRGを設けていて、このレギュレータRGにより、水素の供給圧力をほぼ所定圧力に保つようにしている。さらに、水素ガス供給路P1上のレギュレータRGと燃料電池1との間には、燃料電池1に供給される水素ガスの圧力、すなわち燃料電池1内の水素ガスの圧力を検出する水素ガス圧力センサS1を設けている。燃料電池1内に供給された水素ガスは、各セルの負極部に案内される。
【0020】
一方、空気は、エアフィルタAF及びコンプレッサ3を有する酸素含有ガス供給路たる空気供給路P3を介して燃料電池1内に供給される。すなわち、空気は、エアフィルタAFを介してコンプレッサ3に導かれ、コンプレッサ3により圧縮された後燃料電池1に導入される。また、この実施の形態では、コンプレッサ3と燃料電池1との間に加湿モジュールHを備えていて、空気に水分を含ませるようにしている。そして、燃料電池1内に供給された空気は、各セルの正極部に案内される。各セルの正極部に案内された空気は、その中の酸素が、各セルの負極部に案内された水素と反応する。この燃料電池1からの電流は、制御装置5により制御されて負荷Mに供給されるとともに、二次電池4を充電するものである。
【0021】
発電に寄与した以外の余剰の空気、すなわち排気酸素含有ガスは、循環することなく、発電により生成した水のほぼ全量とともに、排気酸素含有排出路たる空気排出路P4から排気管P5を介して燃料電池1外に排出される。
【0022】
一方、燃料電池1には、負極部に溜まった水を排出するための電磁弁からなる排出制御弁B1が設けられていて、この排出制御弁B1に、第一排出路たる排出路P2の一端が接続されている。そして、イオン交換膜を介して負極部にしみだし付着した水は、排出路P2から排出される。この排出路P2の他端は、空気排出路P4に接続される。したがって、水とともに排出される排気水素含有ガスは、空気排出路P4内において排気酸素含有ガスと混合される。
【0023】
また、二次電池4は、燃料電池1により充電されるとともに、自動車に搭載された場合であれば自動車が減速された場合や下り坂を走行した場合に、前記駆動用モータの回生運転による回生電流により充電される。この燃料電池システムが自動車にて使用される場合、自動車は、この二次電池4からの電力により走行し、電力が不足した場合に燃料電池1から不足分が補充されるように構成される。本実施形態に係る燃料電池システムSはこのような使用形態をとるように構成されているものであるので、燃料電池1は常時発電するのでなく、二次電池4の充電状態に応じて間歇的に発電する。なお、発電は、負荷Mに負荷電流が流れることによりなされるもので、発電の停止は、負荷電流を流さないことにより達成する。
【0024】
温度制御装置TCは、冷媒である冷却水を冷却する冷却ファンTCaを有するラジエータTCbと、ラジエータTCbと燃料電池1とを連通する循環路TCcと、循環路TCcに設けられて冷却水を燃料電池1とラジエータTCbとの間で循環させるモータによるウォータポンプTCdと、ラジエータTCdへの冷却水の循環を制御する電気式の三方弁TCeと、燃料電池1に導入される冷却水の温度を検出する冷却水入口温度センサTCfと、燃料電池1から排出される冷却水の温度を検出する冷却水出口温度センサTCgとを備えている。そして、燃料電池1の温度が低い、つまり冷却水出口温度センサTCgが検出した温度が判定温度より低い場合に、冷却水入口温度センサTCfと冷却水出口温度センサTCgとのそれぞれの検出温度の差に基づいて三方弁TCeを切り替えて、冷却水がラジエータTCbを循環せずに燃料電池1のみを循環するようにして、短時間に燃料電池1の温度が発電に最適な温度となるようにしている。
【0025】
制御装置5は、図2に示すように、CPU51、メモリ52、入力インタフェース53、出力インタフェース54を少なくとも備えたマイクロコンピュータシステムを主体として構成され、負荷Mへの通電を制御すべくDC−DCコンバータ(以下、コンバータと称する)及びインバータ(ともに図示略)をも備えている。なお、コンバータは、燃料電池1の発電を制御するとともに、二次電池4の充放電を制御するものである。すなわち、コンバータにより、燃料電池1から出力される電流が負荷Mに流れた時に燃料電池1が発電する。また、自動車に搭載される場合にあっては、走行用のモータからの回生電流をコンバータが二次電池4に入力することにより、二次電池4が充電される。また、インバータを制御することにより、負荷Mに供給する電力を制御する。
【0026】
そして、入力インタフェース53には水素ガス圧力センサS1、空気の圧力を検出する空気圧力センサS2、冷却水入口温度センサTCf、冷却水出口温度センサTCg及び負荷Mの状態を検知する状況検知手段MS(図1では図示略)、さらには二次電池4の充放電状態を検出するための電流計SA等が接続されていて、これらから入力される信号を受け付ける。一方、出力インタフェース54には、排出制御弁B1及びコンプレッサ3等が接続されていて、入力インターフェース53が受け付けた信号に基づき、メモリ52に格納されたプログラムに従いCPU51等と協働してこれらの制御を行う。
【0027】
電流計SAは、二次電池4の充電電流と放電電流とを検出するもので、制御装置5に充電電流値と放電電流値とを入力し、制御装置5が入力された充電電流値と放電電流値とから二次電池4の残存容量及び放電量を算出する。したがって、電流計SAと制御装置5とにより、二次電池4の蓄電状態を検出する蓄電検出手段が構成される。なお、電流計SAは、電流値をデジタルデータで出力するもの、アナログ信号を出力するもののいずれであってもよい。アナログ信号を出力するものにあっては、制御装置5においてアナログ/デジタル変換を行って、電流値を測定する構成とすればよい。
【0028】
基本的に、この燃料電池システムSにおいては、燃料電池1が二次電池4の残存容量と負荷Mとの状態に応じて発電を間歇的に行うように構成されている。自動車に搭載される場合には、主たる負荷としての走行用のモータの出力に対応する消費電力量と残存容量とに基づいて、燃料電池1の発電が制御される。燃料電池1の間歇発電の具体的な一例を、燃料電池システムSを自動車に搭載したとして、つまり負荷として走行用のモータが含まれるものとして、図3〜図5により説明する。以下の説明する二次電池に基づく制御ルーチン(プログラム)と消費燃料量MRに基づく制御ルーチンとは、制御装置5のメモリ52に格納されており、二次電池に基づく制御ルーチンを実行している間に消費燃料量MRに基づく制御ルーチンを実行し得る構成である。
【0029】
まず、図3に示す二次電池4に基づく発電制御ルーチンおいて、ステップsp1では、二次電池4の残存容量SOCが設定された発電開始判定量A1以下か否かを判定する。残存容量SOCが発電開始判定量A1以下となるまでは、発電を開始せずにステップsp1を繰り返し実行し、発電待機状態とする。そして、残存容量SOCが発電開始判定容量A1以下となると、ステップsp2において発電を開始する(図4におけるT1)。発電開始判定容量A1は、電池容量の例えば40%程度に設定すればよい。この後、ステップsp3において、二次電池4の充電が進み、残存容量SOCが発電停止判定容量A2以上であるか否かを判定する。残量量SOCが発電停止判定容量A2を下回っていると判定した場合は、ステップsp4において発電を継続し、以上であると判定した場合には、ステップsp5において発電を停止する(図4におけるT2)。発電停止判定容量A2は、電池容量の例えば95%程度に設定すればよい。
【0030】
このように、二次電池4に基づく発電制御ルーチンを実行した場合には、一旦発電を開始すると、残存容量SOCが発電停止判定容量A2に達するまで発電を継続するもので、モータの消費電力量MRが少なくなった場合であっても発電を停止しないものである。したがって、この間に消費電力量MRが増加した場合には、発電時間が消費電力量MRが少ない場合に比較して長くなる。
【0031】
次に、図5に示す消費電力量に基づく発電制御ルーチンにおいて、モータの消費電力量MRに対しての発電制御の手順を説明する。まず、ステップsp11において、消費電力量MRが上限量B1以上であるか否かを判定する。消費電力量MRが上限量B1以上(図4におけるT3)であると、ステップsp12において、発電を開始し、下回っている場合には、このルーチンを終了する。この上限量B1は、モータの出力が高く、燃料電池1と二次電池4との両方から電力を供給する必要がある場合の電力量に設定すればよい。
【0032】
発電を開始した後、ステップsp13において、消費電力量MRが下限量B2以下であるか否かを判定する。消費電力量MRの下限量B2は、例えば上限量B1の2/3程度の消費電力量に設定すればよい。判定の結果、以下(図4におけるT4)であると、ステップsp14において、発電を継続する。一方、判定の結果が上回っているである場合は、ステップsp15において、発電を停止する。なお、図4にあっては、紙面の都合上、時間T1及びT3において発電を開始するように図示しているが、実際には後述するように、発電の開始を判定してから実際に発電するまでの間にパージ操作が行われるものであり、発電の開始を判定してほぼ同時に発電を開始するものではない。
【0033】
このように、モータの出力が大きくなり消費電力量MRが高い数値となると、二次電池4の充電状態にかかわらず燃料電池1を発電させ、モータが必要とする電力を燃料電池1と二次電池4とで供給するものである。すなわち、消費電力量MRが上限量B1以上であれば、二次電池4の充電状態のいかんにかかわらず燃料電池1の発電を開始し、消費電力量MRが下限量B2以下になるまで発電を継続するように、制御装置5は燃料電池1の発電を制御する。
【0034】
この一方で、制御装置5は、二次電池4の充電状態に基づいて燃料電池1の発電を制御する。つまり、モータが高出力で運転されていない場合で、かつ二次電池4の残存容量SOCが発電開始判定容量A1以下にまで減少した場合に、制御装置5は燃料電池1に発電を開始させ、その発電状態を残存容量SOCが発電停止判定容量A2になるまで保持する。この間に、モータの消費電力量MRが下限量B2以下になっても、発電を停止させることはない。それゆえ、二次電池4に基づく発電制御ルーチンを実行して発電を開始させると、その発電は残存容量SOCが発電停止判定容量A2に達するまで継続されるものである。また、二次電池4の充電状態つまり残存容量SOCが発電開始判定容量A1と発電停止判定容量A2との間の量である場合には、残存容量SOCによる発電制御は実行されないが、このような状態にある場合に、消費電力量MRが上限量B1に達すれば、直ちに燃料電池1を発電させる。
【0035】
以下に上述した間歇発電の制御以外の、制御装置5が行う具体的な制御の例について述べる。
【0036】
制御装置5は、コンバータの出力側において検出する発電量及び空気圧力センサS2から出力される排気酸素含有ガス排出圧力信号に基づくコンプレッサ3の制御、燃料電池1の冷却水温度を検出する冷却水入口温度センサTCfと冷却水出口温度センサTCgとが出力する信号に基づく温度制御装置TCの制御等を行う。
【0037】
加えて、制御装置5は、状況検知手段MSからの出力信号を受け付け、燃料電池1内から水素ガス及び負極部に付着した水を排出するパージと呼ばれる操作を行うための制御も行う。すなわち、制御装置5は、通常の発電中には、燃料電池1内の負極部にしみだして付着した水を水素オフガスとともに排出するパージ操作を行うべく、所定の周期において排出制御弁B1を予め設定した所定時間であるパージ時間だけ開成する制御を行う。排出制御弁B1は、この制御装置5による制御を受けて所定の周期ごとにパージ時間だけ開成する。このため、制御装置5は、CPU51が計時のためのカウンタとしても動作するようにプログラミングされている。このカウンタは、後述する発電停止予定時間及び所定時間であるパージキャンセル時間を計時する場合にも使用する。
【0038】
この実施の形態では、発電停止を判定を予測した場合に、以下のようにパージ操作を制御するものである。この実施の形態の発電再開前パージ操作制御を、図6を参照して説明する。この発電再開前パージ操作制御のプログラムは、制御装置5のメモリ52に格納されている。
【0039】
まず、ステップn1において、燃料電池1の発電を再開する状態となったか否かを判定する。この発電再開の判定は、燃料電池1と二次電池4との両方から電力の供給を受ける必要がある負荷Mの運転状態を判定するもので、例えば車両が発進する場合あるいは燃料電池1が発電停止中に急激な加速が行われる場合であれば、図示しないアクセルペダルが踏み込まれたことにより判定するものである。発電再開であると判定した場合は、ステップn2に進んで発電を停止している時間である発電停止時間を測定する。発電停止時間は、発電を停止した時点からステップn1において発電の再開を判定した時点までの時間であり、上述のように、残存容量SOCが発電停止判定容量A2となった時点が発電停止の時点であり、発進操作がなされたことを判定した時点が発電再開の時点となる。
【0040】
次に、ステップn3において、測定された発電停止時間に基づいて発電前パージ操作量を決定する。発電前パージ操作量は、図7に示すように、発電停止時間が長くなるほど多くなるように、例えばマップにより設定してある。この発電前パージ操作量は、排出制御弁B1の一回の開成時間を長くする方法や、排出制御弁B1の一回の開成時間は長くせずに開成回数を多くして全体として開成時間を長くするものを含む。この実施の形態では、図8に示すように、一回の開成時間を発電時のパージ操作における一回の開成時間よりも長く設定するとともに、開成間隔を短くして回数を多くしてパージ操作量を多くしている。ステップn4では、決定したパージ操作量に基づいて排出制御弁B1を制御する。
【0041】
そして、ステップn5において、決定したパージ操作量となったか否かを判定し、決定したパージ操作量である場合にはステップn6において発電を再開する。決定したパージ操作量に達していない場合は、ステップn4及びステップn5を繰り返し実行する。決定したパージ操作量の判定は、排出制御弁B1の開成回数を計数して、所定の回数となったことにより判定するものである。
【0042】
燃料電池1を間歇的に発電し、発電を停止した際の発電停止時間が長くなるほど、燃料電池1の負極部に付着する水の量は増加する。このような状態において、発電の再開を判定すると、実際に発電を再開するまでの間に、発電停止時間に基づいて決定したパージ操作量によりパージ操作を行う。パージ操作量は、発電停止時間が長くなるほど多くなるので、実際の発電再開までの間に、燃料電池1内の不要な水は排気水素含有ガスとともに排出制御弁B1から排出される。したがって、実際に発電を開始する場合には、不要な水が燃料電池1内に残留していないので、安定して発電ができ、発電電圧が安定しない状態つまり発電電圧の低下を防止することができる。しかも、パージ操作量を発電停止時間に応じて調整するので、燃料電池1内の不要な水の量に応じてパージ操作を行うことができ、必要十分な量の水を排出することができる。
【0043】
以上の構成において、発電停止時間が長くなるとそれに対応して発電再開前のパージ操作に要する時間が長くなる場合も生じてくる。このため、以下に説明するように、発電を開始するための判定容量である二次電池4の発電開始判定容量A1を発電停止時間が長いほど大きく(高く)設定し、発電の再開時点を早めることにより、早期に発電を再開するように構成してもよい。
【0044】
以下に、図9〜10を用いて、この場合の実施の形態を具体的に説明する。この実施の形態の制御プログラムにあっても、制御装置5のメモリ52に格納されるものである。
【0045】
図9において、まずステップn11では、発電を再開することが決定したか否かを判定し、決定した場合にはステップn12に移行し、そうでない場合には元に戻る。発電の再開は、例えば上記同様、発進の操作を検出した場合である。ステップn12では、発電を停止した時点から発電を再開した時点までの発電を停止していた時間、すなわち発電停止時間を測定する。ステップn13では、測定された発電停止時間に基づいて二次電池4の発電開始判定容量A1を、発電停止時間が長いほど大きく設定する(図10に点線で示す)。すなわち、発電開始判定容量A1は、通常の運転時におけるものを基準として、発電停止時間の長さに応じて基準としたものより大きく設定するものである。
【0046】
ステップn14では、排気酸素含有ガスの圧力したがって空気圧力を減圧する。具体的には、コンプレッサ3への供給電力を減少させて、例えばその回転数を低下させることにより、空気圧力を低減する。空気圧力は、発電前のパージ操作であるので、水素ガス圧力と空気圧力とが発電停止状態で均衡する値にすればよい。ステップn15では、排出制御弁B1を制御する。この場合に、排出制御弁B1の制御は、上記と同様であってよい。ステップn16では、二次電池4の残存容量SOCが発電開始判定容量A1以下であるか否かを判定し、上回っている場合は再度ステップn15を実行し、以下である場合にはステップn17に進む。ステップn17では、発電を再開するように、燃料電池1を制御する。
【0047】
以上において、発電の再開決定後、パージ操作が開始されて、発電再開に向けて、負極部に発生した水が排出される間に、排出制御弁B1の制御などにより負荷Mにて消費される電力により二次電池4の残存容量SOCが減少する。そして、残存容量SOCが、発電停止時間の長さに応じて設定された発電開始判定容量A1以下になると発電を再開するものであるが、発電開始判定容量A1を発電停止時間が長いほど大きく設定するので、発電の再開が遅くなることを防止することができる。しかも、このパージ操作にあっては、空気圧力を下げるように制御するので、コンプレッサ3の消費電力を低減することができる。したがって、二次電池4に対する電力消費を抑えることができ、発電開始判定容量A1の設定と相俟って、発電再開後の充電量が少なくて済み、短時間で充電を完了することができる。
【0048】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0049】
この実施の形態では、空気排出路P4に調圧弁B2を設けるとともに、希釈の精度を向上させるために、排気水素含有ガスの希釈手段である希釈器6を用いるものである。なお、調圧弁B2、希釈器6、希釈弁B3及び逆止弁B4以外の構成については、前述の第一の実施の形態と同じである。又、調圧弁B2及び希釈弁B3は、排出制御弁B1と同様に制御装置5により開閉制御されるものである。
【0050】
具体的には、図11に示すように、排気酸素含有ガスを燃料電池1外部に排出する空気排出路P4に、排気酸素含有ガスの圧力を調整する調圧弁B2を取り付け、排気水素含有ガスに混合する排気酸素含有ガスを採取する空気供給路P6の一端を空気排出路P4の調圧弁B2より上流に連通させ、空気供給路P6の他端と排出路P2とを希釈器6に連通させる構成である。また、この実施の形態にあっては、希釈器6内の希釈された排気水素含有ガスの放出タイミングを制御する希釈弁B3が、希釈器6の下流に設けてある。そして、制御装置5が、調圧弁B2の開度を調整して、希釈器6に導入する排気酸素含有ガスの量を制御するとともに、希釈弁B3の開閉を制御するものである。
【0051】
燃料電池1を通常運転している場合、及び発電再開前のパージ操作に関連して、制御装置5は、排出制御弁B1と希釈弁B3とを、以下に説明するタイミングにより、相互に関連させて開閉制御するものである。すなわち、まず、排出制御弁B1の開成に先立って希釈弁B3を開成し、希釈器6内の希釈された排気酸素含有ガスを大気に放出して一旦希釈弁B3を閉じる。そして所定のインターバルが経過して排出制御弁B1を開成するタイミングとなる際に、先に希釈弁B3を開成し、希釈弁B3が開成している間に排出制御弁B1を開成して新たに排気水素含有ガスと排気酸素含有ガスとを希釈器6に取り込む。この後、排出制御弁B1と希釈弁B3とをほぼ同時に閉成し、希釈器6内に排気酸素含有ガスのみが流入するようにして排気水素含有ガスを希釈するようにしている。このように、希釈器6の出口を希釈弁B3を用いて選択的に閉鎖することにより、排気水素含有ガスを一旦希釈器6内にとどめて流入する排気酸素含有ガスにより十分に希釈した後放出することにより、安全性をより向上させることができる。なお、発電再開前のパージ操作において、調圧弁B2を全開にして空気圧力を低減するものであってよい。この場合においても、コンプレッサ3への供給電力を減少させて、その消費電力を低減するものであってよい。
【0052】
また、空気供給路P6には、希釈器6内から空気排出路P4に排気水素含有ガスが逆流するのを防止する逆止弁B4を取り付けている。すなわち、希釈器6の出口は希釈弁B3で閉鎖されるので、希釈弁B3を閉成した際に希釈器6内の圧力が高くなり、排気水素含有ガスが空気排出路P4に流れ込むことになる。このような事態になると、希釈されない状態の排気水素含有ガスが空気排出路P4を介して大気中に放出されることになり排気酸素含有ガスが燃焼する可能性が生じるので、逆止弁B4によりこれを防止するものである。
【0053】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0054】
【発明の効果】
本願の請求項1に係る発明は、以上説明したように、燃料電池の発電を再開する場合に、制御手段が、少なくとも水の排出量が増加するように、発電を停止している時間に基づいて排出制御弁を開成するので、発電停止時間が長くて発生する水の量が多くなっても、水を十分に排出することができる。したがって、燃料電池の発電を再開した場合に、水の残留により発電電圧が不安定になることを防止することができる。
【0055】
また、本願の請求項2に係る発明は、発電停止期間が長くなった場合、発電再開を判定した時点から設定された判定容量を下回るまでの間に排出制御弁を開成するので、発電停止時間に応じて少なくとも水の排出に必要な時間を考慮に入れることができ、発電の再開時点となった際に水の排出が完了しており、遅れることなく発電を再開することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の概略構成説明図。
【図2】同実施の形態の制御装置のブロック図。
【図3】同実施の形態の間歇発電における二次電池に基づく発電制御手順を概略的に示すフローチャート。
【図4】同実施の形態の間歇発電の動作説明図。
【図5】同実施の形態の間歇発電における消費電力量に基づく制御手順を概略的に示すフローチャート。
【図6】同実施の形態における燃料電池の発電再開前のパージ操作制御手順を概略的に示すフローチャート。
【図7】同実施の形態の作用説明図。
【図8】同実施の形態の作用説明図。
【図9】本発明の他の実施の形態における燃料電池の発電再開前のパージ操作制御手順を概略的に示すフローチャート。
【図10】本発明の他の実施の形態の作用説明図。
【図11】本発明の他の実施の形態の概略構成説明図。
【符号の説明】
1…燃料電池1
B1…排出制御弁
P2…排出路
5…制御装置
51…CPU
52…メモリ
53…入力インターフェース
54…出力インターフェース
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として車両に搭載される燃料電池システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車などの車両において、窒素化合物、炭化水素、一酸化炭素といった有害廃棄物が少ないなどの理由から電気自動車が開発され、電気自動車のモータの電源として、内燃機関に比較してエネルギロスが少ない燃料電池が実用化され始めている。このような車両に搭載される燃料電池を含む燃料電池システムでは、燃料電池が安全に、かつ効率よく発電するために各種の制御を行っている。
【0003】
この種の燃料電池システムにおける燃料電池は、負極活物質としての水素を、プラチナ(白金)などの触媒と接触させて電子と水素イオンに解離した後、この水素イオンを正極活物質としての酸素と反応させて水が得られるという反応機構に基づいている。すなわち、燃料電池では、水素から放出された電子の移動により起電力が生じるようになされている。それゆえ、このような原理に基づけば、化学的エネルギ変化を直接的に電気エネルギに変換できるため、燃料電池では、他の方式に比べて極めてエネルギ効率が高いものとなる。
【0004】
このような燃料電池を使用した燃料電池システムにあっては、燃料電池、水素ガス供給源、空気供給源、希釈器及び外部回路を備えている。水素ガス供給源からはほぼ一定の圧力で燃料電池の負極部に水素ガスが供給され、また空気供給源からは、所定の圧力で燃料電池の正極部に空気、実質的には酸素ガスが供給される。そして、水素が負極部において水素イオンと電子とに解離され、電子は外部回路を経由して正極部に供給される。また空気中の酸素は、イオン交換膜を移動してきた水素イオンと正極部に供給された電子と結合して水を生成する。この時、生成された水の一部が負極部にも付着する。
【0005】
負極部に付着する少量の水は、燃料電池における発電の障害となるため、外部に排出する必要がある。このため、上記の従来例にあっては、燃料電池と希釈器とを接続する管路にパージ弁を設け、このパージ弁を開成することにより、水素ガスとともに負極部に付着した水を排出するようにしている。なお、希釈器は、水とともに排出される排気水素含有ガスを空気と混合し、その濃度を燃焼しないレベルまで希釈して大気中に排出するためのものである。このようなパージ弁を備えた例としては、例えば、特許文献1に示されるものがある。
【0006】
また、このような燃料電池システムにおいて、燃料電池の発電の効率化を図るために、蓄電池を組み合わせて用い、燃料電池を蓄電池の充電容量に応じて間歇的に発電をするものが、例えば特許文献2に記載されている。
【0007】
通常、このような間歇的に発電を行う燃料電池システムにおいては、発電の停止を蓄電池の状態に応じて決定している。具体的には、蓄電池の残存容量が多い場合、放電量が少ない場合、あるいはその温度が充放電に支障を来す高温である場合などに応じて、発電の停止を決定している。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−373682
【特許文献2】
特開平5−182675
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献2のような燃料電池を間歇的に発電させるものでは、発電を停止している場合にあっても、燃料電池内に残存する水素と酸素とが反応し、負極部に水が付着することがある。したがって、このような燃料電池システムでは、燃料電池の発電を再開する前に、パージ弁を開成して排気水素含有ガスと負極部の水とを排出するようにしている。この場合、パージ弁の時間は、例えば発電をしている場合と同じ設定されているので、このようなパージ弁の開成動作により排出される水の量は、ほぼ一定量である。
【0010】
一方、発電を停止している時間が長くなった場合、負極部に付着する水の量が発電停止状態が短い場合に比べて多くなっている。そのため、パージ弁を所定の周期で開成しても、水の排出が十分に行われず、発電電圧が低くなる場合があった。
【0011】
本発明は、このような不具合を解消することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の燃料電池システムは、燃料電池に水素を含む水素含有ガスと酸素を含む酸素含有ガスとを供給して燃料電池を間歇的に発電させる燃料電池システムであって、燃料電池に連通する排出路に設けられて開成された際に燃料電池内の水素含有ガスの電極側に発生する水を少なくとも排出可能にする排出制御弁と、発電の再開を決定して発電を再開するまでの間に発電を停止している時間が長いほど水の排出量が増加するように排出制御弁を開成する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、燃料電池の発電を再開する場合に、制御手段が、少なくとも水の排出量が増加するように、発電を停止している時間に基づいて排出制御弁を開成するので、発電停止時間が長くて発生する水の量が多くなっても、水を十分に排出することが可能になる。したがって、燃料電池の発電を再開した場合に、水の残留により発電電圧が不安定になることを防止することが可能になる。
【0014】
迅速に発電を再開するためには、燃料電池と、燃料電池により充電される蓄電手段とを備え、燃料電池に水素を含む水素含有ガスと酸素を含む酸素含有ガスとを供給して燃料電池を間歇的に発電させる燃料電池システムであって、燃料電池に連通する排出路に設けられて開成された際に燃料電池内の水素含有ガスの電極側に発生する水を少なくとも排出可能にする排出制御弁と、蓄電手段の蓄電容量を検出する容量検出手段と、容量検出手段が検出した蓄電容量が判定容量を下回ると発電再開を判定するもので、発電停止から発電再開時点までの発電停止期間が長いほど判定容量を大きく設定し、発電再開を判定した時点から発電を再開するまでの間に排出制御弁を開成する制御手段とを備えることを特徴とするものが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、発電停止期間が長くなった場合、発電再開を判定した時点から設定された判定容量を下回るまでの間に排出制御弁を開成するので、発電停止時間に応じて少なくとも水の排出に必要な時間を考慮に入れることになる。したがって、発電の再開時点となった際に水の排出が完了しており、遅れることなく発電を再開することが可能になる。
【0016】
水とともに排出される排気水素含有ガスの安全性を高めるためには、水を排出する際に排出される排気水素含有ガスを燃料電池から排出される排気酸素含有ガスにより希釈する希釈手段をさらに備え、発電を再開する前の排出制御弁の開成時には排気水素含有ガスの圧力を低減するものが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
この第一の実施の形態に係る燃料電池システムSは、図1に示すように、車両特には自動車に搭載することができるもので、燃料電池1、発電に必要な水素ガスの貯蔵手段である水素ガスタンク2、空気を供給するための電動式のコンプレッサ3、蓄電手段である二次電池4、発電に付随する各種制御を行う制御装置5、燃料電池1の温度を調節する温度制御装置TC等を備えている。この燃料電池システムSは、車両に搭載された場合には車両を走行させるためのモータを含む走行装置や、燃料電池1を制御するための電磁弁、ファンモータ、さらに電動式のコンプレッサ3等の電気機器を負荷Mとするものである。また、この燃料電池システムSでは、基本的には燃料電池1は負荷に追従して発電量を変更するのでなく、発電効率の最もよい発電量となるように定電力もしくは定電流発電制御されるとともに、二次電池4の充放電状態に応じて間歇的に燃料電池1を発電させるようにしている。
【0019】
燃料電池1は、この分野で広く知られたものを用いることができ、例えばイオン交換膜に密着するようにして正極部と負極部とを配設したセルの複数を直列接続してスタックを形成し、そのスタックに対して水素含有ガスである水素ガスと酸素含有ガスである空気とを所定の圧力で供給し得るように、ハウジング内に収納したものである。この燃料電池システムSにおいては、水素ガスタンク2と燃料電池1とを連通する水素含有ガス供給路たる水素ガス供給路P1を設けていて、この水素ガス供給路P1を介して燃料電池1に水素を供給するようにしている。また、水素ガス供給路P1上には、水素ガス圧力を調整するレギュレータRGを設けていて、このレギュレータRGにより、水素の供給圧力をほぼ所定圧力に保つようにしている。さらに、水素ガス供給路P1上のレギュレータRGと燃料電池1との間には、燃料電池1に供給される水素ガスの圧力、すなわち燃料電池1内の水素ガスの圧力を検出する水素ガス圧力センサS1を設けている。燃料電池1内に供給された水素ガスは、各セルの負極部に案内される。
【0020】
一方、空気は、エアフィルタAF及びコンプレッサ3を有する酸素含有ガス供給路たる空気供給路P3を介して燃料電池1内に供給される。すなわち、空気は、エアフィルタAFを介してコンプレッサ3に導かれ、コンプレッサ3により圧縮された後燃料電池1に導入される。また、この実施の形態では、コンプレッサ3と燃料電池1との間に加湿モジュールHを備えていて、空気に水分を含ませるようにしている。そして、燃料電池1内に供給された空気は、各セルの正極部に案内される。各セルの正極部に案内された空気は、その中の酸素が、各セルの負極部に案内された水素と反応する。この燃料電池1からの電流は、制御装置5により制御されて負荷Mに供給されるとともに、二次電池4を充電するものである。
【0021】
発電に寄与した以外の余剰の空気、すなわち排気酸素含有ガスは、循環することなく、発電により生成した水のほぼ全量とともに、排気酸素含有排出路たる空気排出路P4から排気管P5を介して燃料電池1外に排出される。
【0022】
一方、燃料電池1には、負極部に溜まった水を排出するための電磁弁からなる排出制御弁B1が設けられていて、この排出制御弁B1に、第一排出路たる排出路P2の一端が接続されている。そして、イオン交換膜を介して負極部にしみだし付着した水は、排出路P2から排出される。この排出路P2の他端は、空気排出路P4に接続される。したがって、水とともに排出される排気水素含有ガスは、空気排出路P4内において排気酸素含有ガスと混合される。
【0023】
また、二次電池4は、燃料電池1により充電されるとともに、自動車に搭載された場合であれば自動車が減速された場合や下り坂を走行した場合に、前記駆動用モータの回生運転による回生電流により充電される。この燃料電池システムが自動車にて使用される場合、自動車は、この二次電池4からの電力により走行し、電力が不足した場合に燃料電池1から不足分が補充されるように構成される。本実施形態に係る燃料電池システムSはこのような使用形態をとるように構成されているものであるので、燃料電池1は常時発電するのでなく、二次電池4の充電状態に応じて間歇的に発電する。なお、発電は、負荷Mに負荷電流が流れることによりなされるもので、発電の停止は、負荷電流を流さないことにより達成する。
【0024】
温度制御装置TCは、冷媒である冷却水を冷却する冷却ファンTCaを有するラジエータTCbと、ラジエータTCbと燃料電池1とを連通する循環路TCcと、循環路TCcに設けられて冷却水を燃料電池1とラジエータTCbとの間で循環させるモータによるウォータポンプTCdと、ラジエータTCdへの冷却水の循環を制御する電気式の三方弁TCeと、燃料電池1に導入される冷却水の温度を検出する冷却水入口温度センサTCfと、燃料電池1から排出される冷却水の温度を検出する冷却水出口温度センサTCgとを備えている。そして、燃料電池1の温度が低い、つまり冷却水出口温度センサTCgが検出した温度が判定温度より低い場合に、冷却水入口温度センサTCfと冷却水出口温度センサTCgとのそれぞれの検出温度の差に基づいて三方弁TCeを切り替えて、冷却水がラジエータTCbを循環せずに燃料電池1のみを循環するようにして、短時間に燃料電池1の温度が発電に最適な温度となるようにしている。
【0025】
制御装置5は、図2に示すように、CPU51、メモリ52、入力インタフェース53、出力インタフェース54を少なくとも備えたマイクロコンピュータシステムを主体として構成され、負荷Mへの通電を制御すべくDC−DCコンバータ(以下、コンバータと称する)及びインバータ(ともに図示略)をも備えている。なお、コンバータは、燃料電池1の発電を制御するとともに、二次電池4の充放電を制御するものである。すなわち、コンバータにより、燃料電池1から出力される電流が負荷Mに流れた時に燃料電池1が発電する。また、自動車に搭載される場合にあっては、走行用のモータからの回生電流をコンバータが二次電池4に入力することにより、二次電池4が充電される。また、インバータを制御することにより、負荷Mに供給する電力を制御する。
【0026】
そして、入力インタフェース53には水素ガス圧力センサS1、空気の圧力を検出する空気圧力センサS2、冷却水入口温度センサTCf、冷却水出口温度センサTCg及び負荷Mの状態を検知する状況検知手段MS(図1では図示略)、さらには二次電池4の充放電状態を検出するための電流計SA等が接続されていて、これらから入力される信号を受け付ける。一方、出力インタフェース54には、排出制御弁B1及びコンプレッサ3等が接続されていて、入力インターフェース53が受け付けた信号に基づき、メモリ52に格納されたプログラムに従いCPU51等と協働してこれらの制御を行う。
【0027】
電流計SAは、二次電池4の充電電流と放電電流とを検出するもので、制御装置5に充電電流値と放電電流値とを入力し、制御装置5が入力された充電電流値と放電電流値とから二次電池4の残存容量及び放電量を算出する。したがって、電流計SAと制御装置5とにより、二次電池4の蓄電状態を検出する蓄電検出手段が構成される。なお、電流計SAは、電流値をデジタルデータで出力するもの、アナログ信号を出力するもののいずれであってもよい。アナログ信号を出力するものにあっては、制御装置5においてアナログ/デジタル変換を行って、電流値を測定する構成とすればよい。
【0028】
基本的に、この燃料電池システムSにおいては、燃料電池1が二次電池4の残存容量と負荷Mとの状態に応じて発電を間歇的に行うように構成されている。自動車に搭載される場合には、主たる負荷としての走行用のモータの出力に対応する消費電力量と残存容量とに基づいて、燃料電池1の発電が制御される。燃料電池1の間歇発電の具体的な一例を、燃料電池システムSを自動車に搭載したとして、つまり負荷として走行用のモータが含まれるものとして、図3〜図5により説明する。以下の説明する二次電池に基づく制御ルーチン(プログラム)と消費燃料量MRに基づく制御ルーチンとは、制御装置5のメモリ52に格納されており、二次電池に基づく制御ルーチンを実行している間に消費燃料量MRに基づく制御ルーチンを実行し得る構成である。
【0029】
まず、図3に示す二次電池4に基づく発電制御ルーチンおいて、ステップsp1では、二次電池4の残存容量SOCが設定された発電開始判定量A1以下か否かを判定する。残存容量SOCが発電開始判定量A1以下となるまでは、発電を開始せずにステップsp1を繰り返し実行し、発電待機状態とする。そして、残存容量SOCが発電開始判定容量A1以下となると、ステップsp2において発電を開始する(図4におけるT1)。発電開始判定容量A1は、電池容量の例えば40%程度に設定すればよい。この後、ステップsp3において、二次電池4の充電が進み、残存容量SOCが発電停止判定容量A2以上であるか否かを判定する。残量量SOCが発電停止判定容量A2を下回っていると判定した場合は、ステップsp4において発電を継続し、以上であると判定した場合には、ステップsp5において発電を停止する(図4におけるT2)。発電停止判定容量A2は、電池容量の例えば95%程度に設定すればよい。
【0030】
このように、二次電池4に基づく発電制御ルーチンを実行した場合には、一旦発電を開始すると、残存容量SOCが発電停止判定容量A2に達するまで発電を継続するもので、モータの消費電力量MRが少なくなった場合であっても発電を停止しないものである。したがって、この間に消費電力量MRが増加した場合には、発電時間が消費電力量MRが少ない場合に比較して長くなる。
【0031】
次に、図5に示す消費電力量に基づく発電制御ルーチンにおいて、モータの消費電力量MRに対しての発電制御の手順を説明する。まず、ステップsp11において、消費電力量MRが上限量B1以上であるか否かを判定する。消費電力量MRが上限量B1以上(図4におけるT3)であると、ステップsp12において、発電を開始し、下回っている場合には、このルーチンを終了する。この上限量B1は、モータの出力が高く、燃料電池1と二次電池4との両方から電力を供給する必要がある場合の電力量に設定すればよい。
【0032】
発電を開始した後、ステップsp13において、消費電力量MRが下限量B2以下であるか否かを判定する。消費電力量MRの下限量B2は、例えば上限量B1の2/3程度の消費電力量に設定すればよい。判定の結果、以下(図4におけるT4)であると、ステップsp14において、発電を継続する。一方、判定の結果が上回っているである場合は、ステップsp15において、発電を停止する。なお、図4にあっては、紙面の都合上、時間T1及びT3において発電を開始するように図示しているが、実際には後述するように、発電の開始を判定してから実際に発電するまでの間にパージ操作が行われるものであり、発電の開始を判定してほぼ同時に発電を開始するものではない。
【0033】
このように、モータの出力が大きくなり消費電力量MRが高い数値となると、二次電池4の充電状態にかかわらず燃料電池1を発電させ、モータが必要とする電力を燃料電池1と二次電池4とで供給するものである。すなわち、消費電力量MRが上限量B1以上であれば、二次電池4の充電状態のいかんにかかわらず燃料電池1の発電を開始し、消費電力量MRが下限量B2以下になるまで発電を継続するように、制御装置5は燃料電池1の発電を制御する。
【0034】
この一方で、制御装置5は、二次電池4の充電状態に基づいて燃料電池1の発電を制御する。つまり、モータが高出力で運転されていない場合で、かつ二次電池4の残存容量SOCが発電開始判定容量A1以下にまで減少した場合に、制御装置5は燃料電池1に発電を開始させ、その発電状態を残存容量SOCが発電停止判定容量A2になるまで保持する。この間に、モータの消費電力量MRが下限量B2以下になっても、発電を停止させることはない。それゆえ、二次電池4に基づく発電制御ルーチンを実行して発電を開始させると、その発電は残存容量SOCが発電停止判定容量A2に達するまで継続されるものである。また、二次電池4の充電状態つまり残存容量SOCが発電開始判定容量A1と発電停止判定容量A2との間の量である場合には、残存容量SOCによる発電制御は実行されないが、このような状態にある場合に、消費電力量MRが上限量B1に達すれば、直ちに燃料電池1を発電させる。
【0035】
以下に上述した間歇発電の制御以外の、制御装置5が行う具体的な制御の例について述べる。
【0036】
制御装置5は、コンバータの出力側において検出する発電量及び空気圧力センサS2から出力される排気酸素含有ガス排出圧力信号に基づくコンプレッサ3の制御、燃料電池1の冷却水温度を検出する冷却水入口温度センサTCfと冷却水出口温度センサTCgとが出力する信号に基づく温度制御装置TCの制御等を行う。
【0037】
加えて、制御装置5は、状況検知手段MSからの出力信号を受け付け、燃料電池1内から水素ガス及び負極部に付着した水を排出するパージと呼ばれる操作を行うための制御も行う。すなわち、制御装置5は、通常の発電中には、燃料電池1内の負極部にしみだして付着した水を水素オフガスとともに排出するパージ操作を行うべく、所定の周期において排出制御弁B1を予め設定した所定時間であるパージ時間だけ開成する制御を行う。排出制御弁B1は、この制御装置5による制御を受けて所定の周期ごとにパージ時間だけ開成する。このため、制御装置5は、CPU51が計時のためのカウンタとしても動作するようにプログラミングされている。このカウンタは、後述する発電停止予定時間及び所定時間であるパージキャンセル時間を計時する場合にも使用する。
【0038】
この実施の形態では、発電停止を判定を予測した場合に、以下のようにパージ操作を制御するものである。この実施の形態の発電再開前パージ操作制御を、図6を参照して説明する。この発電再開前パージ操作制御のプログラムは、制御装置5のメモリ52に格納されている。
【0039】
まず、ステップn1において、燃料電池1の発電を再開する状態となったか否かを判定する。この発電再開の判定は、燃料電池1と二次電池4との両方から電力の供給を受ける必要がある負荷Mの運転状態を判定するもので、例えば車両が発進する場合あるいは燃料電池1が発電停止中に急激な加速が行われる場合であれば、図示しないアクセルペダルが踏み込まれたことにより判定するものである。発電再開であると判定した場合は、ステップn2に進んで発電を停止している時間である発電停止時間を測定する。発電停止時間は、発電を停止した時点からステップn1において発電の再開を判定した時点までの時間であり、上述のように、残存容量SOCが発電停止判定容量A2となった時点が発電停止の時点であり、発進操作がなされたことを判定した時点が発電再開の時点となる。
【0040】
次に、ステップn3において、測定された発電停止時間に基づいて発電前パージ操作量を決定する。発電前パージ操作量は、図7に示すように、発電停止時間が長くなるほど多くなるように、例えばマップにより設定してある。この発電前パージ操作量は、排出制御弁B1の一回の開成時間を長くする方法や、排出制御弁B1の一回の開成時間は長くせずに開成回数を多くして全体として開成時間を長くするものを含む。この実施の形態では、図8に示すように、一回の開成時間を発電時のパージ操作における一回の開成時間よりも長く設定するとともに、開成間隔を短くして回数を多くしてパージ操作量を多くしている。ステップn4では、決定したパージ操作量に基づいて排出制御弁B1を制御する。
【0041】
そして、ステップn5において、決定したパージ操作量となったか否かを判定し、決定したパージ操作量である場合にはステップn6において発電を再開する。決定したパージ操作量に達していない場合は、ステップn4及びステップn5を繰り返し実行する。決定したパージ操作量の判定は、排出制御弁B1の開成回数を計数して、所定の回数となったことにより判定するものである。
【0042】
燃料電池1を間歇的に発電し、発電を停止した際の発電停止時間が長くなるほど、燃料電池1の負極部に付着する水の量は増加する。このような状態において、発電の再開を判定すると、実際に発電を再開するまでの間に、発電停止時間に基づいて決定したパージ操作量によりパージ操作を行う。パージ操作量は、発電停止時間が長くなるほど多くなるので、実際の発電再開までの間に、燃料電池1内の不要な水は排気水素含有ガスとともに排出制御弁B1から排出される。したがって、実際に発電を開始する場合には、不要な水が燃料電池1内に残留していないので、安定して発電ができ、発電電圧が安定しない状態つまり発電電圧の低下を防止することができる。しかも、パージ操作量を発電停止時間に応じて調整するので、燃料電池1内の不要な水の量に応じてパージ操作を行うことができ、必要十分な量の水を排出することができる。
【0043】
以上の構成において、発電停止時間が長くなるとそれに対応して発電再開前のパージ操作に要する時間が長くなる場合も生じてくる。このため、以下に説明するように、発電を開始するための判定容量である二次電池4の発電開始判定容量A1を発電停止時間が長いほど大きく(高く)設定し、発電の再開時点を早めることにより、早期に発電を再開するように構成してもよい。
【0044】
以下に、図9〜10を用いて、この場合の実施の形態を具体的に説明する。この実施の形態の制御プログラムにあっても、制御装置5のメモリ52に格納されるものである。
【0045】
図9において、まずステップn11では、発電を再開することが決定したか否かを判定し、決定した場合にはステップn12に移行し、そうでない場合には元に戻る。発電の再開は、例えば上記同様、発進の操作を検出した場合である。ステップn12では、発電を停止した時点から発電を再開した時点までの発電を停止していた時間、すなわち発電停止時間を測定する。ステップn13では、測定された発電停止時間に基づいて二次電池4の発電開始判定容量A1を、発電停止時間が長いほど大きく設定する(図10に点線で示す)。すなわち、発電開始判定容量A1は、通常の運転時におけるものを基準として、発電停止時間の長さに応じて基準としたものより大きく設定するものである。
【0046】
ステップn14では、排気酸素含有ガスの圧力したがって空気圧力を減圧する。具体的には、コンプレッサ3への供給電力を減少させて、例えばその回転数を低下させることにより、空気圧力を低減する。空気圧力は、発電前のパージ操作であるので、水素ガス圧力と空気圧力とが発電停止状態で均衡する値にすればよい。ステップn15では、排出制御弁B1を制御する。この場合に、排出制御弁B1の制御は、上記と同様であってよい。ステップn16では、二次電池4の残存容量SOCが発電開始判定容量A1以下であるか否かを判定し、上回っている場合は再度ステップn15を実行し、以下である場合にはステップn17に進む。ステップn17では、発電を再開するように、燃料電池1を制御する。
【0047】
以上において、発電の再開決定後、パージ操作が開始されて、発電再開に向けて、負極部に発生した水が排出される間に、排出制御弁B1の制御などにより負荷Mにて消費される電力により二次電池4の残存容量SOCが減少する。そして、残存容量SOCが、発電停止時間の長さに応じて設定された発電開始判定容量A1以下になると発電を再開するものであるが、発電開始判定容量A1を発電停止時間が長いほど大きく設定するので、発電の再開が遅くなることを防止することができる。しかも、このパージ操作にあっては、空気圧力を下げるように制御するので、コンプレッサ3の消費電力を低減することができる。したがって、二次電池4に対する電力消費を抑えることができ、発電開始判定容量A1の設定と相俟って、発電再開後の充電量が少なくて済み、短時間で充電を完了することができる。
【0048】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0049】
この実施の形態では、空気排出路P4に調圧弁B2を設けるとともに、希釈の精度を向上させるために、排気水素含有ガスの希釈手段である希釈器6を用いるものである。なお、調圧弁B2、希釈器6、希釈弁B3及び逆止弁B4以外の構成については、前述の第一の実施の形態と同じである。又、調圧弁B2及び希釈弁B3は、排出制御弁B1と同様に制御装置5により開閉制御されるものである。
【0050】
具体的には、図11に示すように、排気酸素含有ガスを燃料電池1外部に排出する空気排出路P4に、排気酸素含有ガスの圧力を調整する調圧弁B2を取り付け、排気水素含有ガスに混合する排気酸素含有ガスを採取する空気供給路P6の一端を空気排出路P4の調圧弁B2より上流に連通させ、空気供給路P6の他端と排出路P2とを希釈器6に連通させる構成である。また、この実施の形態にあっては、希釈器6内の希釈された排気水素含有ガスの放出タイミングを制御する希釈弁B3が、希釈器6の下流に設けてある。そして、制御装置5が、調圧弁B2の開度を調整して、希釈器6に導入する排気酸素含有ガスの量を制御するとともに、希釈弁B3の開閉を制御するものである。
【0051】
燃料電池1を通常運転している場合、及び発電再開前のパージ操作に関連して、制御装置5は、排出制御弁B1と希釈弁B3とを、以下に説明するタイミングにより、相互に関連させて開閉制御するものである。すなわち、まず、排出制御弁B1の開成に先立って希釈弁B3を開成し、希釈器6内の希釈された排気酸素含有ガスを大気に放出して一旦希釈弁B3を閉じる。そして所定のインターバルが経過して排出制御弁B1を開成するタイミングとなる際に、先に希釈弁B3を開成し、希釈弁B3が開成している間に排出制御弁B1を開成して新たに排気水素含有ガスと排気酸素含有ガスとを希釈器6に取り込む。この後、排出制御弁B1と希釈弁B3とをほぼ同時に閉成し、希釈器6内に排気酸素含有ガスのみが流入するようにして排気水素含有ガスを希釈するようにしている。このように、希釈器6の出口を希釈弁B3を用いて選択的に閉鎖することにより、排気水素含有ガスを一旦希釈器6内にとどめて流入する排気酸素含有ガスにより十分に希釈した後放出することにより、安全性をより向上させることができる。なお、発電再開前のパージ操作において、調圧弁B2を全開にして空気圧力を低減するものであってよい。この場合においても、コンプレッサ3への供給電力を減少させて、その消費電力を低減するものであってよい。
【0052】
また、空気供給路P6には、希釈器6内から空気排出路P4に排気水素含有ガスが逆流するのを防止する逆止弁B4を取り付けている。すなわち、希釈器6の出口は希釈弁B3で閉鎖されるので、希釈弁B3を閉成した際に希釈器6内の圧力が高くなり、排気水素含有ガスが空気排出路P4に流れ込むことになる。このような事態になると、希釈されない状態の排気水素含有ガスが空気排出路P4を介して大気中に放出されることになり排気酸素含有ガスが燃焼する可能性が生じるので、逆止弁B4によりこれを防止するものである。
【0053】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0054】
【発明の効果】
本願の請求項1に係る発明は、以上説明したように、燃料電池の発電を再開する場合に、制御手段が、少なくとも水の排出量が増加するように、発電を停止している時間に基づいて排出制御弁を開成するので、発電停止時間が長くて発生する水の量が多くなっても、水を十分に排出することができる。したがって、燃料電池の発電を再開した場合に、水の残留により発電電圧が不安定になることを防止することができる。
【0055】
また、本願の請求項2に係る発明は、発電停止期間が長くなった場合、発電再開を判定した時点から設定された判定容量を下回るまでの間に排出制御弁を開成するので、発電停止時間に応じて少なくとも水の排出に必要な時間を考慮に入れることができ、発電の再開時点となった際に水の排出が完了しており、遅れることなく発電を再開することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の概略構成説明図。
【図2】同実施の形態の制御装置のブロック図。
【図3】同実施の形態の間歇発電における二次電池に基づく発電制御手順を概略的に示すフローチャート。
【図4】同実施の形態の間歇発電の動作説明図。
【図5】同実施の形態の間歇発電における消費電力量に基づく制御手順を概略的に示すフローチャート。
【図6】同実施の形態における燃料電池の発電再開前のパージ操作制御手順を概略的に示すフローチャート。
【図7】同実施の形態の作用説明図。
【図8】同実施の形態の作用説明図。
【図9】本発明の他の実施の形態における燃料電池の発電再開前のパージ操作制御手順を概略的に示すフローチャート。
【図10】本発明の他の実施の形態の作用説明図。
【図11】本発明の他の実施の形態の概略構成説明図。
【符号の説明】
1…燃料電池1
B1…排出制御弁
P2…排出路
5…制御装置
51…CPU
52…メモリ
53…入力インターフェース
54…出力インターフェース
Claims (3)
- 燃料電池に水素を含む水素含有ガスと酸素を含む酸素含有ガスとを供給して燃料電池を間歇的に発電させる燃料電池システムであって、
燃料電池に連通する排出路に設けられて開成された際に燃料電池内の水素含有ガスの電極側に発生する水を少なくとも排出可能にする排出制御弁と、
発電の再開を決定して発電を再開するまでの間に発電を停止している時間が長いほど水の排出量が増加するように排出制御弁を開成する制御手段とを備えることを特徴とする燃料電池システム。 - 燃料電池と、燃料電池により充電される蓄電手段とを備え、燃料電池に水素を含む水素含有ガスと酸素を含む酸素含有ガスとを供給して燃料電池を間歇的に発電させる燃料電池システムであって、
燃料電池に連通する排出路に設けられて開成された際に燃料電池内の水素含有ガスの電極側に発生する水を少なくとも排出可能にする排出制御弁と、
蓄電手段の蓄電容量を検出する容量検出手段と、
容量検出手段が検出した蓄電容量が判定容量を下回ると発電再開を判定するもので、発電停止から発電再開時点までの発電停止期間が長いほど判定容量を大きく設定し、発電再開を判定した時点から発電を再開するまでの間に排出制御弁を開成する制御手段とを備えることを特徴とする燃料電池システム。 - 水を排出する際に排出される排気水素含有ガスを燃料電池から排出される排気酸素含有ガスにより希釈する希釈手段をさらに備え、発電を再開する前の排出制御弁の開成時には排気酸素含有ガスの圧力を低減することを特徴とする請求項1又は2記載の燃料電池システム。
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