JP2005040661A - 淡水またはかん水の処理方法および処理装置 - Google Patents
淡水またはかん水の処理方法および処理装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2005040661A JP2005040661A JP2003200356A JP2003200356A JP2005040661A JP 2005040661 A JP2005040661 A JP 2005040661A JP 2003200356 A JP2003200356 A JP 2003200356A JP 2003200356 A JP2003200356 A JP 2003200356A JP 2005040661 A JP2005040661 A JP 2005040661A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- membrane
- water
- treatment
- separation
- raw water
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Separation Using Semi-Permeable Membranes (AREA)
- Treatment Of Water By Oxidation Or Reduction (AREA)
Abstract
【課題】膜分離処理を継続しつつ、高い効率で殺菌することができ、長期間にわたって連続運用してもモジュール間差圧の上昇が小さい淡水またはかん水の処理方法を提供する。
【解決手段】淡水またはかん水を原水として分離膜に供給して膜分離処理を行う通常の処理工程と、前記原水に亜硫酸水素ナトリウムを添加するとともに原水をさらに酸性化し、その原水を前記分離膜に供給して殺菌処理を行いながら膜分離処理を行う殺菌処理工程とを設ける。
【選択図】図1
【解決手段】淡水またはかん水を原水として分離膜に供給して膜分離処理を行う通常の処理工程と、前記原水に亜硫酸水素ナトリウムを添加するとともに原水をさらに酸性化し、その原水を前記分離膜に供給して殺菌処理を行いながら膜分離処理を行う殺菌処理工程とを設ける。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃水処理等に好適に用いることができる、淡水またはかん水の処理方法および処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水などの液体分離精製に用いる膜としては、分離する対象物の大きさに応じて、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜などが用いられている。これらの膜分離装置に対して、微生物による分離膜の汚染は、得られる透過水(処理水)の水質悪化や、膜面上での微生物増殖あるいは微生物およびその代謝物の膜面への付着などによる膜の透過性、分離性の低下などの問題をもたらすことが知られている。そこで、かかる問題を回避するために、種々の膜分離装置の殺菌法が提案されている。
【0003】
たとえば、殺菌剤として、実績があり、価格、操作面でも有利な塩素系殺菌剤を常時または間欠的に原水に添加しつつ膜分離処理をする方法がとられている(非特許文献1参照)。しかし、塩素系殺菌剤は高分子系の分離膜や配管などの化学的劣化の原因となる。特に、分離膜としてポリアミド系逆浸透膜を用いる場合には、その影響が大きいため、かかる殺菌剤を原水に添加するときは、塩素系殺菌剤を含有する原水が逆浸透膜に到達する前に、還元剤を用いて原水中の遊離塩素を還元する必要がある。還元剤としては、たとえば、亜硫酸水素ナトリウムを1〜10倍当量添加する。これは残存殺菌剤を完全に消去すると同時に、還元剤が溶存酸素とも反応することを考慮した濃度である。
【0004】
ところが、上記のように塩素系殺菌剤を用いて膜分離処理を続けても膜性能が低下する場合がある。そこで、間欠的に亜硫酸水素ナトリウムを、通常500ppmの濃度で添加して分離膜を殺菌する方法が開発され、広く使用されている。しかし、亜硫酸水素ナトリウムを500ppmもの高濃度になるよう添加しなければならないため経済的とは言い難いうえに、微生物が分離膜面にすでに堆積してしまっている場合には、この殺菌方法が有効でないことがある。これは、亜硫酸水素ナトリウムによる効果の一つとして水中の酸素除去が挙げられるが、亜硫酸水素ナトリウムにより水が無酸素状態となっても、中性〜アルカリ性で生息する一般の好気性細菌は増殖もしないが死滅もしないものが多いためである。また、自然界に生息する微生物は一般的傾向としてpHが低ければ低いほど殺菌率が高くなるものの、塩濃度0.05%以下の低塩濃度淡水に亜硫酸水素ナトリウムを500ppmという高濃度で添加しても、pHは4〜5程度にしかならず、殺菌性が低い。さらに、膜濾過運転に際して、間欠的ではあっても長期間にわたって亜硫酸水素ナトリウムを添加して殺菌を行っていると、耐性菌が増殖し、それらの菌体や代謝物によりバイオファウリングが発生してしまう。これらのことから膜濾過運転に際して、亜硫酸水素ナトリウムの間欠添加殺菌が必ずしも効果的とは言い難いのが現状である。
【0005】
一方、ファウリングによって膜の性能が著しく低下した場合は、通常の膜分離処理を一旦停止し、膜洗浄を行うことがある。洗浄方法に用いられる洗浄液は種々雑多で、中には低pHのものも存在するが、低pH処理の主目的はスケールの除去にあり、大半はアルカリ処理等他の洗浄方法と併用される(たとえば、特許文献1〜3参照)。しかし、この処理によって膜の性能は著しく回復するが、当然のことながらこの処理の間は透過水が得られない。しかも、このような膜分離装置の運転の停止と起動とを繰り返す処理は、特に逆浸透膜モジュールに大きなダメージをあたえやすいため、可能な限りさけるべきである。
【0006】
また、洗浄方法としては、膜分離処理に際する原水側から洗浄剤を流す場合と逆に透過水側から膜に透過させる方法(たとえば、特許文献4)がある。後者のほうが洗浄効果は高いが、通常の処理工程とは逆方向の圧力がかかることから、膜モジュール、特に平膜モジュールに対するダメージが一層高くなり、好ましくない。もっとも、この方法も、処理の間は透過水が得られず、また、運転の停止と起動とを繰り返すので、特に逆浸透膜モジュールに大きなダメージをあたえやすい。
【0007】
さらに、本発明者らは、海水などの原水について、酸添加処理を施し、pHを4以下として一定時間分離膜に供給することにより、膜分離装置の運転を停止することなく、処理水を得ながら分離膜を効果的に殺菌できることを見出した(特許文献5および6参照)。この殺菌方法は酸ショック法とよばれ、その後、各地の海水淡水化プラント(たとえば、非特許文献2参照)や実験(非特許文献3参照)によってその有効性が実証されている。しかしながら、この方法による殺菌処理を施していても、塩濃度0.05%以下の低塩濃度の淡水やかん水を処理している場合には、著しいバイオファウリング現象を生じることがあり、さらに好適な殺菌方法が望まれている。
【0008】
【特許文献1】
特開昭61−11108号公報(2頁右上欄13〜左下欄6行)
【0009】
【特許文献2】
特開平8−243361号公報
【0010】
【特許文献3】
特開平11−19489号公報
【0011】
【特許文献4】
特開2000−79328号公報(2頁右上欄10〜12行)
【0012】
【特許文献5】
特開2000−237555号公報
【0013】
【特許文献6】
特開2000−354744号公報
【0014】
【非特許文献1】
大矢晴彦著「膜利用技術ハンドブック」幸書房、1978年、P.160〜162
【0015】
【非特許文献2】
仲宗根ら著「逆浸透膜ファウリングに対する硫酸ショック処理」第50回全国水道研究発表会講演集、1999年、P.236
【0016】
【非特許文献3】
「海水の精密濾過における酸ショックがファウリング抑制に及ぼす影響・I、基礎試験」日本海水学会第53年会研究技術発表会講演要旨集、2002年、P.3
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、淡水やかん水を膜分離処理するにあたり、膜分離処理を継続しつつ高い効率で殺菌することができ、長期間にわたって連続運転しても膜間差圧の上昇が小さい方法および装置を提供することにある。
【0018】
本発明の第2の目的は、膜分離処理を継続しつつ、少ない酸の投入量や短い処理時間でも高い効率で殺菌することができる淡水またはかん水の処理方法および装置を提供することにある。
【0019】
本発明の第3の目的は、分離膜の損傷が少ない淡水またはかん水の処理方法および装置を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、下記(1)〜(9)を特徴とするものである。
(1)淡水またはかん水を原水として分離膜に供給して膜分離処理を行う通常の処理工程と、前記原水に亜硫酸水素ナトリウムを添加するとともに原水をさらに酸性化し、その原水を前記分離膜に供給して殺菌処理を行いながら膜分離処理を行う殺菌処理工程とを有する淡水またはかん水の処理方法。
(2)亜硫酸水素ナトリウムを50ppm以上になるように添加する、上記(1)に記載の淡水またはかん水の処理方法。
(3)前記殺菌処理工程を5分以上150分以下の範囲内で連続的に実行する、上記(1)または(2)に記載の淡水またはかん水の処理方法。。
(4)前記殺菌処理工程を7日に1回以上の頻度で実行する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の淡水またはかん水の処理方法。
(5)前記原水として下廃水の処理水を用いる、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の淡水又はかん水の処理方法
(6)前記分離膜として逆浸透膜を用いる、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の淡水またはかん水の処理方法。。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法を実施する再利用水の製造方法。
(8)原水に亜硫酸水素ナトリウムを添加する亜硫酸水素ナトリウム添加装置と、原水を酸性化する酸性化装置と、これら亜硫酸水素ナトリウム添加装置および酸性化装置よりも後段に設けられた分離膜を備えた膜分離装置と、亜硫酸水素ナトリウム添加装置及び酸性化装置による調整を経た原水を膜分離装置に供給する調整原水供給手段とを備えてなる淡水またはかん水の処理装置。
(9)前記亜硫酸水素ナトリウム添加装置および前記酸性化装置よりも下流側で、かつ前記膜分離装置よりも上流側に、前記膜分離装置の分離膜よりも粗い濾過を行う、精密濾過膜、限外濾過膜およびナノ濾過膜の少なくとも1つを備えた前処理用膜分離装置を備えてなる、上位(8)に記載の淡水またはかん水の処理装置。
【0021】
なお、本発明において、原水として用いられる淡水またはかん水は、塩濃度が0.05重量%以下であることが好ましく、下廃水処理において有機化合物、窒素化合物、リン酸塩類などを除去した後の処理液や、工業用水、河川水などがこれに相当する。
【0022】
また、本発明において、通常の処理工程とは、所望水質の水を得るのに適した運転条件で膜分離処理を行う処理工程をいい、一方、殺菌処理工程とは、膜分離処理を継続しつつも原水や分離膜表面およびまたは内部を殺菌する処理工程をいう。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の処理方法は、淡水またはかん水を原水として分離膜に供給して膜分離処理を行う通常の処理工程と、前記原水に亜硫酸水素ナトリウムを添加するとともに原水をさらに酸性化し、その原水を前記分離膜に供給して殺菌処理を行いながら膜分離処理を行う殺菌処理工程とを有し、たとえば図1に示すような、廃水等の処理装置において実施される。
【0024】
図1の処理装置は、原水を膜分離処理する分離膜を備えた膜分離装置9と、原水を昇圧して膜分離装置9に供給するための送液ポンプ8(調整原水供給手段)とを有している。また、膜分離装置9に供給される原水に酸を添加しpHを低減する酸添加装置12(酸性化装置)と、膜分離装置9に供給される原水に亜硫酸水素ナトリウムを添加する亜硫酸水素ナトリウム添加装置13も設けられている。
【0025】
膜分離装置9に用いられる分離膜としては、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜などを用いることができ、中でも、下水から再利用水を得る場合や超純水を製造する場合、低濃度のかん水や淡水をさらに脱塩処理する場合には、逆浸透膜を用いることが好ましい。
【0026】
ここで精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜、および逆浸透膜とは、いずれも被分離混合液中の一部の成分(例えば溶媒)を透過させ、他の成分(例えば溶質)を透過させない半透性の膜をいう。
【0027】
精密濾過膜および限外濾過膜は、分子量数1000〜数10万程度の粒子を分離する際に用いられるもので、精密濾過膜が粒径0.1〜数μmの粒子を分離する際に用いられ、限外濾過膜が粒径1〜100nmの粒子を分離する際に用いられる。精密濾過膜および限外濾過膜の素材にはポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロースなどの高分子素材が使用され、たとえば緻密な最上層を有する多孔構造をなしている。
【0028】
一方、ナノ濾過膜および逆浸透膜は、分子量100前後〜数1000程度の粒子を分離する際に用いられるもので、ナノ濾過膜が粒径1nm以上5nm未満の粒子を分離する際に用いられ、逆浸透膜が粒径1nm未満の粒子を分離する際に用いられる。ナノ濾過膜および逆浸透膜の素材や構造はほぼ同じで、溶質の保持性によって区別される。ナノ濾過膜は、逆浸透膜に比べナトリウムイオンや塩化イオンのような1荷のイオンの保持性が低いが、カルシウムイオンや硫酸イオンのような2荷のイオンの保持性が高い。また、ナノ濾過膜は、逆浸透膜に比べ染料や蔗糖のような低分子量成分の除去性が高い。
【0029】
ナノ濾過膜および逆浸透膜の素材には、酢酸セルロース系ポリマー、芳香族ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材が使用される。ナノ濾過膜および逆浸透膜の構造としては、膜の少なくとも一方の面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部または他方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜構造、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い活性層を有する複合膜構造などがある。代表的な逆浸透膜としては、酢酸セルロース系やポリアミド系の非対称膜およびポリアミド系、ポリ尿素系の活性層を有する複合膜などがあげられる。これらの中でも、本発明の効果を特に発揮するのは、酢酸セルロース系の非対称膜、ポリアミド系の複合膜である。さらに塩素系殺菌剤による劣化が激しく、既存の殺菌剤がほとんど適用できない芳香族系のポリアミド複合膜では、その効果が大きい。
【0030】
膜形態としては、平膜、中空糸膜、管状膜などがあり、本発明においてはいずれの膜形態であってもよい。
【0031】
そして、分離膜は、実際に使用するにあたって効率的な処理が行えるように、他の部材と合わせてモジュールに組み立てられる。たとえば、平膜の場合は、分離膜を原液流路材や透過液流路材とともにスパイラル状に巻回して逆浸透エレメントとしたものを、多数本耐圧容器に装填して逆浸透膜モジュールを構成して用いる。また、チューブラー型モジュール、プレート・アンド・フレーム型モジュールとしてもよい。また、中空糸膜の場合は、分離膜を束ねて端部を樹脂で封止固定してモジュールを構成する。なお、本発明は、いずれのタイプのモジュールであっても効果を発揮することができる。
【0032】
酸添加装置12は、原水に硫酸等の酸を添加して原水のpHを低減できるものであればよく、硫酸等の酸添加用の溶液を所定の濃度にまで低下させたものや、透過水と殺菌処理工程における濃縮水を混ぜたものを同様に原水に混入させるものでもよい。この場合は、濃縮水に残存している硫酸を再利用できるので、硫酸使用量低減の観点からは好ましい。硫酸等の酸の供給は、酸が液体の場合は、耐酸性のあるタンクから同じく耐酸性のある配管やバルブを経由して原水に混入するのが簡単である。なお、酸添加装置12は、原水のpHを低減するものであればよいので、イオン交換樹脂で電気分解するようなもので代替してもよい。
【0033】
また、亜硫酸水素ナトリウム添加装置13としては、亜硫酸水素ナトリウムを原水に添加できるものであればよく、亜硫酸水素ナトリウムを市水等に溶解した溶液を原水に所定濃度になるよう添加して混和するものなどが好適に用いられる。このとき亜硫酸水素ナトリウムを溶解させる水としては、膜分離処理して得られた透過水を用いることもできる。なお、原水を酸性化するための酸溶液と亜硫酸水素ナトリウム溶液とを予め混合し、その混合液を原水に混入するようにしてもよい。
【0034】
そして、本発明においては、膜分離装置9の前段に必要に応じて各種前処理装置が設けられる。原水が下水の場合には、たとえば図1に示すように、径の大きな粒子等の夾雑物質を除去し活性汚泥槽への流入水の性質を調整するための、スクリーン1、沈砂池2、予備曝気槽3および最初沈殿槽4と、原水中に含まれる有機物を微生物によって酸化分解する活性汚泥槽5と、生物処理後の原液を固液分離する、最終沈殿槽6および砂濾過装置、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜などの粗濾過装置7をこの順序で配設する。なお、粗濾過装置7は、膜分離装置9の分離膜よりも粗い濾過を行うものである。
【0035】
次に、本発明の方法について、上述の装置を用いた下水処理を例に説明する。
【0036】
まず、下水を原水として取り入れ、スクリーン1、沈砂池2、予備曝気槽3、最初沈殿槽4などの物理的処理によって浮遊物や油脂を除去する。この時、凝集剤添加装置11等により凝集剤を添加して凝集処理を行い、除去効率を上げることも好ましい。次に、原水を活性汚泥槽5に導入して生物処理を施し、原水中の有機物を酸化分解する。その後、最終沈殿槽6で懸濁物質を除去し、下水二次処理水を得る。続いて、この下水二次処理水を砂濾過装置、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜などで構成される粗濾過装置7に供給し、水中の懸濁物質をさらに除去する。ここで、微生物を好適に除去するためには、精密濾過膜や限外濾過膜を用いることがより好ましく、原水中の高分子除去および後段の膜汚染の軽減の為には、限外濾過膜がさらに好ましい。また、砂濾過装置、精密濾過膜、限外濾過膜などを組み合わせて用いてもよい。
【0037】
そして、このような処理を施した水を、送液ポンプ8を用いて膜分離装置9に供給し、ナノ濾過膜や限外濾過膜で処理することにより、有機化合物、窒素化合物、塩類などを含まない透過水を取り出す。原水中の塩や有機物等が除去された透過水は、親水用水等の用水に再利用することができる。
【0038】
ここで、膜分離装置9に供給される原水の温度(膜分離装置に供給される直前の供給水温度)は、沸騰したり凍結しない範囲内で膜の耐久性を考慮して決定すればよく、膜分離装置が上述の素材の分離膜を有している場合には、15〜55℃の範囲内であることが好ましい。
【0039】
また、膜分離装置9の運転圧力は、原水の性状、運転方法などで適宜設定されるが、膜分離装置9が逆浸透膜を備えたものの場合、たとえば0.1〜3MPaの範囲内、より好ましくは0.1〜1.5MPaの範囲内で、高い透過水量を維持しつつ、複合半透膜を使用することができる。運転圧力を低くすることができると、用いるポンプなどの容量を小さくすることができ、消費電力を抑え、造水のコストダウンを図ることができる。運転圧力が0.1MPaを下回ると、透過水量が少なくなりすぎる傾向があり、3MPaを越えるとポンプなどの消費電力が増加するとともに、ファウリングによる膜の目詰まりを起こしやすくなる。また、水の透過量を0.5〜3m3/m2・dの範囲とすることにより、ファウリングの発生を適度に抑え、造水を安定的に行うことができる。
【0040】
なお、膜分離装置の運転圧力とは、分離膜にかける圧力をいい、適当な圧力ゲージにより測定する。また、モジュール間差圧とは、分離膜モジュールの原水流入口における圧力と、濃縮水排出口における圧力ゲージの値の差をいう。
【0041】
このようにして通常の処理工程は、目的を達成するにあたって最適な運転条件で行われる。
【0042】
しかしながら、このような通常の処理工程を常時継続したのでは、その環境で生育可能な微生物が増殖し、分離膜の膜面にファウリングを生じることになる。そこで、適当な間隔で殺菌処理を行う。
【0043】
殺菌処理工程では、通常の処理工程と同様の前処理を行った原水に亜硫酸水素ナトリウムを添加するとともに、酸添加などにより原水をさらに酸性化し、その後、その原水を前記分離膜に供給して殺菌処理を行いながら膜分離処理を行い、所望の透過液を製造する。すなわち、膜分離装置9に供給される原水に対して、亜硫酸水素ナトリウム添加装置13により亜硫酸水素ナトリウムを添加するととともに、酸添加装置12により硫酸等の酸を添加したりイオン交換樹脂に通すことで原水を酸性化する。亜硫酸水素ナトリウムは還元性物質であるため、酸性化する際に添加することで、目的のpHにする際に必要な他の酸添加量を低減することができ、取り扱いも簡便であるため好適である。酸添加にあたっては、イオン交換樹脂や硫酸等の酸を用いる。酸は有機酸、無機酸のいずれを用いても差し支えないが、経済的な面を考えると、硫酸を所定の濃度にまで希釈して用いることが好ましい。また、イオン交換樹脂塔でpHを低減してもよい。
【0044】
そして、原水の酸性化にあたっては、膜分離装置9に供給される原水のpHを2〜5、好ましくはpH2.5〜3.5の範囲内に調整することで殺菌を効率的に行うことができる。pHが2.5を下回るように酸を添加する場合、酸の必要量が著しく増加するにも関わらず殺菌率がほとんど変わらない。一方、pHが5を超えるような場合には、死滅しない菌が残存し増殖することにより、ファウリングによる膜の目詰まりを起こしやすくなる。
【0045】
また、原水の酸性化を酸添加により行う場合、酸の添加量は原水の塩濃度に応じて増加する。純水のpHを5、4、3と下げるには、計算上それぞれ0.5、5、50ppmの硫酸でよいが、地域(原水の水質)や含有成分(塩濃度、炭酸含有量など)などで多少変動するので、130ppm以上の硫酸を用いることが好ましい。
【0046】
本発明における殺菌処理工程では、原水や分離膜表面、分離膜内部を殺菌することを重要な目的とするものの、一方で、上記の所定の膜分離処理をも実施する。すなわち、殺菌処理工程であっても所望の処理水を得ることができる状態である。膜表面に微生物が堆積した状態で、単に亜硫酸水素ナトリウムを含有している低pHの供給水を流しても、堆積した微生物の表面は殺菌されるが、短時間では堆積層の内部にまでは浸透しない。透過水を得る状態であれば、亜硫酸水素ナトリウムを含有している低pHの供給水が、微生物が堆積している膜の内部にまで容易に浸透するので、膜に堆積した微生物全体を殺菌することが可能となる。ただし、透過水の回収率を極端に低下させると添加する硫酸量は低減できるが、微生物堆積層に浸透するまでの時間が長くなるので、処理時間を延長する必要がある。
【0047】
このように、本発明においては、淡水やかん水を処理するにあたり、間欠的に、亜硫酸水素ナトリウムを添加するとともにpHを通常の処理工程より低くして分離膜に供給することで、膜の劣化や損傷を防止しつつ、膜に堆積した微生物等を短時間で高効率にしかも低コストで殺菌することができる。
【0048】
すなわち、塩濃度0.05重量%以下の淡水中に含まれる微生物を酸を用いて殺菌する場合、pH5で30〜60分処理することによって細菌の約70%を、pH4では90%程度を、pH3では95%以上を、pH2.5では98%以上を殺菌することができる。しかしながら、塩濃度0.05重量%以下の淡水処理においてファウリングを起こした膜モジュールを解体し、膜表面の堆積物を生理食塩水中に懸濁させた液を酸を用いて殺菌処理したところ、pH2.5で30分処理しても微生物が50%生存し、耐酸性の高い菌が残存し増殖していることが判明した。
【0049】
そこで、同じ膜の堆積物中の耐酸性の細菌を有する懸濁液(pH7)を原水として、亜硫酸水素ナトリウムを500ppmになるよう添加した場合、殺菌率は30分後で78%であった。ところが、同じ原水を用いて亜硫酸水素ナトリウム100ppmでかつpH3とした場合の殺菌率は30分で71%、60分で79%であった。さらに同じ原水を用いて亜硫酸水素ナトリウム100ppmでかつpH2.5とした場合の殺菌率は30分で89%に達した。
【0050】
そして、塩濃度0.05重量%以下の淡水またはかん水を原水とし、pHのみを低下させた場合に比べて、亜硫酸水素ナトリウムを100ppm添加し、かつpH3以下にすることで顕著な殺菌相乗効果が認められた。
【0051】
塩濃度0.05重量%以下の淡水またはかん水を原水とし、顕著な殺菌の相乗効果が認められる亜硫酸水素ナトリウム濃度は50ppm以上で、100ppmのときにその効果が最も顕著に現れ、それ以上でも亜硫酸水素ナトリウム濃度の増加に伴い殺菌効果が上昇する傾向が見られた。従って本発明を実施する際の供給水の亜硫酸水素ナトリウム添加濃度は50ppm以上であることが好ましく、100ppm以上であることがより好ましい。
【0052】
また、この効果は、原水を海水とする場合では認められず、塩濃度0.05重量%以下の淡水またはかん水の場合に認められる。
【0053】
なお、殺菌率は、殺菌処理の前および殺菌処理中の水の一部を取得し、適宜滅菌水で希釈し、一般細菌用の培養に適した寒天培地に塗抹した後、培養して出現したコロニー数を数えて、その差を通常処理工程時の値で割って100をかけて表す。
【0054】
また、pHはたとえばガラス電極を用いたpH計により測定し、温度補正した値を用いる(JIS Z28802に準拠)。本明細書においては、文脈上明らかな場合以外は、pHは本発明で酸や亜硫酸水素ナトリウムを添加した後で、かつ、膜に供給する前に測定するものとする。
【0055】
このように、原水に亜硫酸水素ナトリウムを添加するとともに原水のpHを通常の処理工程より低くすることを同時に行うことで殺菌の相乗効果が得られる理由について、本発明者らは次のように推定している。すなわち、酸を添加しpHを下げるだけでは死滅しなかった耐酸性の高い菌が、同時に亜硫酸水素ナトリウムを添加することで無酸素状態となり、細胞膜に何らかの損傷をきたす為、酸が菌体内に浸透しやすくなり、また一方で亜硫酸水素ナトリウムを添加するだけでは死滅しなかった菌が、同時に酸を添加しpHを下げることにより細胞膜に何らかの損傷をきたし、全体として殺菌率が向上していると考えられる。
【0056】
殺菌処理工程の最適な時間や頻度は、使用場所、使用条件などで大きく異なり、またバイオファウリングの発生状況、すなわち膜の透過水量の減少、濃縮液の生菌数や含有有機炭素の増加、膜圧の上昇などの程度によって変動する。最終的には十分な殺菌効果が得られ、酸や亜硫酸水素ナトリウムの添加量(供給水のpH、塩濃度の条件、添加時間から計算される)が最も少ない条件が最適条件となる。
【0057】
しかしながら、通常バイオファウリングが懸念されるようなプラントでは、1週間に1回以上の頻度で行うのが好ましく、たとえば1日ごと、1週間ごとといった間隔で行うことが好ましい。より好ましくは3日に1回以上の頻度で行うのが好ましい。なお、殺菌処理工程を実施する間隔は必ずしも等間隔である必要はない。
【0058】
そして、1回の殺菌処理工程の時間は5分以上150分以下の範囲内で連続的に実行することが好ましい。より好ましくは60分〜120分である。なお、この間、一貫して同一の条件を保持している必要はない。
【0059】
【実施例】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0060】
pH7.3、塩濃度0.02重量%の下水二次処理水を図1の二点鎖線内に示す装置を用いて処理した。1日のうち30分間だけ殺菌処理工程とし、残りは通常処理工程とした。
【0061】
このとき、まず比較例の殺菌処理工程として、亜硫酸水素ナトリウムを添加せず硫酸を添加して膜分離装置9への供給水のpHを3とする殺菌処理工程とした。その結果、運転開始後16日でモジュール間差圧の上昇すなわちバイオファウリングが発生した。また、16日目の殺菌処理工程時得られた濃縮水中に含まれる生菌数は、殺菌処理工程に入る直前に得られた濃縮水中に含まれる生菌数の36%であった。
【0062】
そこで、膜分離装置を解体して膜表面の堆積物を生理食塩水中に懸濁させ、その懸濁液に対して、硫酸および膜分離装置9で得られた濃縮水を添加するとともに亜硫酸水素ナトリウムを添加し、pH3、亜硫酸水素ナトリウム濃度100ppmとした。その結果、30分後には、懸濁液中の生菌数が、殺菌処理工程に入る直前に得られた濃縮水中に含まれる生菌数の5%となった(実施例)。また、同様の懸濁液に対して、硫酸は添加せず、亜硫酸水素ナトリウムだけを濃度100ppmになるように添加した。この結果、30分後の懸濁液中の生菌数が、殺菌処理工程に入る直前に得られた濃縮水中に含まれる生菌数の22%であった。
【0063】
以上の結果より、溶質濃度の低い淡水やかん水の処理に際しては、本発明の方法により、モジュール間差圧の上昇すなわちバイオファウリングを防ぐことができ、長期間にわたる連続運転を行うことが可能になることがわかる。
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、淡水またはかん水を膜分離処理するにあたり、原水に亜硫酸水素ナトリウムを添加するとともに原水をさらに酸性化し、その原水を前記分離膜に供給して殺菌処理を行いながら膜分離処理を行う殺菌処理工程を間欠的に設けるので、膜分離処理を継続しつつ、高い効率で殺菌することができ、長期間にわたって連続運転しても膜間差圧の上昇を小さくすることができる。また、本発明によれば、膜分離処理を継続しつつ、少ない亜硫酸水素ナトリウムや酸の投入量、かつ短い処理時間でも高効率な殺菌処理ができる。さらに、分離膜の損傷が少ないという、効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の処理方法を実施する淡水やかん水の処理装置の一実施形態の概略フロー図である。
【符号の説明】
1:スクリーン
2:沈砂池
3:予備曝気槽
4:最初沈殿槽
5:活性汚泥槽
6:最終沈殿槽
7:粗濾過装置
8:送液ポンプ
9:膜分離装置
11:凝集剤添加装置
12:酸添加装置
13:亜硫酸水素ナトリウム添加装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃水処理等に好適に用いることができる、淡水またはかん水の処理方法および処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水などの液体分離精製に用いる膜としては、分離する対象物の大きさに応じて、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜などが用いられている。これらの膜分離装置に対して、微生物による分離膜の汚染は、得られる透過水(処理水)の水質悪化や、膜面上での微生物増殖あるいは微生物およびその代謝物の膜面への付着などによる膜の透過性、分離性の低下などの問題をもたらすことが知られている。そこで、かかる問題を回避するために、種々の膜分離装置の殺菌法が提案されている。
【0003】
たとえば、殺菌剤として、実績があり、価格、操作面でも有利な塩素系殺菌剤を常時または間欠的に原水に添加しつつ膜分離処理をする方法がとられている(非特許文献1参照)。しかし、塩素系殺菌剤は高分子系の分離膜や配管などの化学的劣化の原因となる。特に、分離膜としてポリアミド系逆浸透膜を用いる場合には、その影響が大きいため、かかる殺菌剤を原水に添加するときは、塩素系殺菌剤を含有する原水が逆浸透膜に到達する前に、還元剤を用いて原水中の遊離塩素を還元する必要がある。還元剤としては、たとえば、亜硫酸水素ナトリウムを1〜10倍当量添加する。これは残存殺菌剤を完全に消去すると同時に、還元剤が溶存酸素とも反応することを考慮した濃度である。
【0004】
ところが、上記のように塩素系殺菌剤を用いて膜分離処理を続けても膜性能が低下する場合がある。そこで、間欠的に亜硫酸水素ナトリウムを、通常500ppmの濃度で添加して分離膜を殺菌する方法が開発され、広く使用されている。しかし、亜硫酸水素ナトリウムを500ppmもの高濃度になるよう添加しなければならないため経済的とは言い難いうえに、微生物が分離膜面にすでに堆積してしまっている場合には、この殺菌方法が有効でないことがある。これは、亜硫酸水素ナトリウムによる効果の一つとして水中の酸素除去が挙げられるが、亜硫酸水素ナトリウムにより水が無酸素状態となっても、中性〜アルカリ性で生息する一般の好気性細菌は増殖もしないが死滅もしないものが多いためである。また、自然界に生息する微生物は一般的傾向としてpHが低ければ低いほど殺菌率が高くなるものの、塩濃度0.05%以下の低塩濃度淡水に亜硫酸水素ナトリウムを500ppmという高濃度で添加しても、pHは4〜5程度にしかならず、殺菌性が低い。さらに、膜濾過運転に際して、間欠的ではあっても長期間にわたって亜硫酸水素ナトリウムを添加して殺菌を行っていると、耐性菌が増殖し、それらの菌体や代謝物によりバイオファウリングが発生してしまう。これらのことから膜濾過運転に際して、亜硫酸水素ナトリウムの間欠添加殺菌が必ずしも効果的とは言い難いのが現状である。
【0005】
一方、ファウリングによって膜の性能が著しく低下した場合は、通常の膜分離処理を一旦停止し、膜洗浄を行うことがある。洗浄方法に用いられる洗浄液は種々雑多で、中には低pHのものも存在するが、低pH処理の主目的はスケールの除去にあり、大半はアルカリ処理等他の洗浄方法と併用される(たとえば、特許文献1〜3参照)。しかし、この処理によって膜の性能は著しく回復するが、当然のことながらこの処理の間は透過水が得られない。しかも、このような膜分離装置の運転の停止と起動とを繰り返す処理は、特に逆浸透膜モジュールに大きなダメージをあたえやすいため、可能な限りさけるべきである。
【0006】
また、洗浄方法としては、膜分離処理に際する原水側から洗浄剤を流す場合と逆に透過水側から膜に透過させる方法(たとえば、特許文献4)がある。後者のほうが洗浄効果は高いが、通常の処理工程とは逆方向の圧力がかかることから、膜モジュール、特に平膜モジュールに対するダメージが一層高くなり、好ましくない。もっとも、この方法も、処理の間は透過水が得られず、また、運転の停止と起動とを繰り返すので、特に逆浸透膜モジュールに大きなダメージをあたえやすい。
【0007】
さらに、本発明者らは、海水などの原水について、酸添加処理を施し、pHを4以下として一定時間分離膜に供給することにより、膜分離装置の運転を停止することなく、処理水を得ながら分離膜を効果的に殺菌できることを見出した(特許文献5および6参照)。この殺菌方法は酸ショック法とよばれ、その後、各地の海水淡水化プラント(たとえば、非特許文献2参照)や実験(非特許文献3参照)によってその有効性が実証されている。しかしながら、この方法による殺菌処理を施していても、塩濃度0.05%以下の低塩濃度の淡水やかん水を処理している場合には、著しいバイオファウリング現象を生じることがあり、さらに好適な殺菌方法が望まれている。
【0008】
【特許文献1】
特開昭61−11108号公報(2頁右上欄13〜左下欄6行)
【0009】
【特許文献2】
特開平8−243361号公報
【0010】
【特許文献3】
特開平11−19489号公報
【0011】
【特許文献4】
特開2000−79328号公報(2頁右上欄10〜12行)
【0012】
【特許文献5】
特開2000−237555号公報
【0013】
【特許文献6】
特開2000−354744号公報
【0014】
【非特許文献1】
大矢晴彦著「膜利用技術ハンドブック」幸書房、1978年、P.160〜162
【0015】
【非特許文献2】
仲宗根ら著「逆浸透膜ファウリングに対する硫酸ショック処理」第50回全国水道研究発表会講演集、1999年、P.236
【0016】
【非特許文献3】
「海水の精密濾過における酸ショックがファウリング抑制に及ぼす影響・I、基礎試験」日本海水学会第53年会研究技術発表会講演要旨集、2002年、P.3
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、淡水やかん水を膜分離処理するにあたり、膜分離処理を継続しつつ高い効率で殺菌することができ、長期間にわたって連続運転しても膜間差圧の上昇が小さい方法および装置を提供することにある。
【0018】
本発明の第2の目的は、膜分離処理を継続しつつ、少ない酸の投入量や短い処理時間でも高い効率で殺菌することができる淡水またはかん水の処理方法および装置を提供することにある。
【0019】
本発明の第3の目的は、分離膜の損傷が少ない淡水またはかん水の処理方法および装置を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、下記(1)〜(9)を特徴とするものである。
(1)淡水またはかん水を原水として分離膜に供給して膜分離処理を行う通常の処理工程と、前記原水に亜硫酸水素ナトリウムを添加するとともに原水をさらに酸性化し、その原水を前記分離膜に供給して殺菌処理を行いながら膜分離処理を行う殺菌処理工程とを有する淡水またはかん水の処理方法。
(2)亜硫酸水素ナトリウムを50ppm以上になるように添加する、上記(1)に記載の淡水またはかん水の処理方法。
(3)前記殺菌処理工程を5分以上150分以下の範囲内で連続的に実行する、上記(1)または(2)に記載の淡水またはかん水の処理方法。。
(4)前記殺菌処理工程を7日に1回以上の頻度で実行する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の淡水またはかん水の処理方法。
(5)前記原水として下廃水の処理水を用いる、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の淡水又はかん水の処理方法
(6)前記分離膜として逆浸透膜を用いる、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の淡水またはかん水の処理方法。。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法を実施する再利用水の製造方法。
(8)原水に亜硫酸水素ナトリウムを添加する亜硫酸水素ナトリウム添加装置と、原水を酸性化する酸性化装置と、これら亜硫酸水素ナトリウム添加装置および酸性化装置よりも後段に設けられた分離膜を備えた膜分離装置と、亜硫酸水素ナトリウム添加装置及び酸性化装置による調整を経た原水を膜分離装置に供給する調整原水供給手段とを備えてなる淡水またはかん水の処理装置。
(9)前記亜硫酸水素ナトリウム添加装置および前記酸性化装置よりも下流側で、かつ前記膜分離装置よりも上流側に、前記膜分離装置の分離膜よりも粗い濾過を行う、精密濾過膜、限外濾過膜およびナノ濾過膜の少なくとも1つを備えた前処理用膜分離装置を備えてなる、上位(8)に記載の淡水またはかん水の処理装置。
【0021】
なお、本発明において、原水として用いられる淡水またはかん水は、塩濃度が0.05重量%以下であることが好ましく、下廃水処理において有機化合物、窒素化合物、リン酸塩類などを除去した後の処理液や、工業用水、河川水などがこれに相当する。
【0022】
また、本発明において、通常の処理工程とは、所望水質の水を得るのに適した運転条件で膜分離処理を行う処理工程をいい、一方、殺菌処理工程とは、膜分離処理を継続しつつも原水や分離膜表面およびまたは内部を殺菌する処理工程をいう。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の処理方法は、淡水またはかん水を原水として分離膜に供給して膜分離処理を行う通常の処理工程と、前記原水に亜硫酸水素ナトリウムを添加するとともに原水をさらに酸性化し、その原水を前記分離膜に供給して殺菌処理を行いながら膜分離処理を行う殺菌処理工程とを有し、たとえば図1に示すような、廃水等の処理装置において実施される。
【0024】
図1の処理装置は、原水を膜分離処理する分離膜を備えた膜分離装置9と、原水を昇圧して膜分離装置9に供給するための送液ポンプ8(調整原水供給手段)とを有している。また、膜分離装置9に供給される原水に酸を添加しpHを低減する酸添加装置12(酸性化装置)と、膜分離装置9に供給される原水に亜硫酸水素ナトリウムを添加する亜硫酸水素ナトリウム添加装置13も設けられている。
【0025】
膜分離装置9に用いられる分離膜としては、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜などを用いることができ、中でも、下水から再利用水を得る場合や超純水を製造する場合、低濃度のかん水や淡水をさらに脱塩処理する場合には、逆浸透膜を用いることが好ましい。
【0026】
ここで精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜、および逆浸透膜とは、いずれも被分離混合液中の一部の成分(例えば溶媒)を透過させ、他の成分(例えば溶質)を透過させない半透性の膜をいう。
【0027】
精密濾過膜および限外濾過膜は、分子量数1000〜数10万程度の粒子を分離する際に用いられるもので、精密濾過膜が粒径0.1〜数μmの粒子を分離する際に用いられ、限外濾過膜が粒径1〜100nmの粒子を分離する際に用いられる。精密濾過膜および限外濾過膜の素材にはポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロースなどの高分子素材が使用され、たとえば緻密な最上層を有する多孔構造をなしている。
【0028】
一方、ナノ濾過膜および逆浸透膜は、分子量100前後〜数1000程度の粒子を分離する際に用いられるもので、ナノ濾過膜が粒径1nm以上5nm未満の粒子を分離する際に用いられ、逆浸透膜が粒径1nm未満の粒子を分離する際に用いられる。ナノ濾過膜および逆浸透膜の素材や構造はほぼ同じで、溶質の保持性によって区別される。ナノ濾過膜は、逆浸透膜に比べナトリウムイオンや塩化イオンのような1荷のイオンの保持性が低いが、カルシウムイオンや硫酸イオンのような2荷のイオンの保持性が高い。また、ナノ濾過膜は、逆浸透膜に比べ染料や蔗糖のような低分子量成分の除去性が高い。
【0029】
ナノ濾過膜および逆浸透膜の素材には、酢酸セルロース系ポリマー、芳香族ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材が使用される。ナノ濾過膜および逆浸透膜の構造としては、膜の少なくとも一方の面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部または他方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜構造、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い活性層を有する複合膜構造などがある。代表的な逆浸透膜としては、酢酸セルロース系やポリアミド系の非対称膜およびポリアミド系、ポリ尿素系の活性層を有する複合膜などがあげられる。これらの中でも、本発明の効果を特に発揮するのは、酢酸セルロース系の非対称膜、ポリアミド系の複合膜である。さらに塩素系殺菌剤による劣化が激しく、既存の殺菌剤がほとんど適用できない芳香族系のポリアミド複合膜では、その効果が大きい。
【0030】
膜形態としては、平膜、中空糸膜、管状膜などがあり、本発明においてはいずれの膜形態であってもよい。
【0031】
そして、分離膜は、実際に使用するにあたって効率的な処理が行えるように、他の部材と合わせてモジュールに組み立てられる。たとえば、平膜の場合は、分離膜を原液流路材や透過液流路材とともにスパイラル状に巻回して逆浸透エレメントとしたものを、多数本耐圧容器に装填して逆浸透膜モジュールを構成して用いる。また、チューブラー型モジュール、プレート・アンド・フレーム型モジュールとしてもよい。また、中空糸膜の場合は、分離膜を束ねて端部を樹脂で封止固定してモジュールを構成する。なお、本発明は、いずれのタイプのモジュールであっても効果を発揮することができる。
【0032】
酸添加装置12は、原水に硫酸等の酸を添加して原水のpHを低減できるものであればよく、硫酸等の酸添加用の溶液を所定の濃度にまで低下させたものや、透過水と殺菌処理工程における濃縮水を混ぜたものを同様に原水に混入させるものでもよい。この場合は、濃縮水に残存している硫酸を再利用できるので、硫酸使用量低減の観点からは好ましい。硫酸等の酸の供給は、酸が液体の場合は、耐酸性のあるタンクから同じく耐酸性のある配管やバルブを経由して原水に混入するのが簡単である。なお、酸添加装置12は、原水のpHを低減するものであればよいので、イオン交換樹脂で電気分解するようなもので代替してもよい。
【0033】
また、亜硫酸水素ナトリウム添加装置13としては、亜硫酸水素ナトリウムを原水に添加できるものであればよく、亜硫酸水素ナトリウムを市水等に溶解した溶液を原水に所定濃度になるよう添加して混和するものなどが好適に用いられる。このとき亜硫酸水素ナトリウムを溶解させる水としては、膜分離処理して得られた透過水を用いることもできる。なお、原水を酸性化するための酸溶液と亜硫酸水素ナトリウム溶液とを予め混合し、その混合液を原水に混入するようにしてもよい。
【0034】
そして、本発明においては、膜分離装置9の前段に必要に応じて各種前処理装置が設けられる。原水が下水の場合には、たとえば図1に示すように、径の大きな粒子等の夾雑物質を除去し活性汚泥槽への流入水の性質を調整するための、スクリーン1、沈砂池2、予備曝気槽3および最初沈殿槽4と、原水中に含まれる有機物を微生物によって酸化分解する活性汚泥槽5と、生物処理後の原液を固液分離する、最終沈殿槽6および砂濾過装置、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜などの粗濾過装置7をこの順序で配設する。なお、粗濾過装置7は、膜分離装置9の分離膜よりも粗い濾過を行うものである。
【0035】
次に、本発明の方法について、上述の装置を用いた下水処理を例に説明する。
【0036】
まず、下水を原水として取り入れ、スクリーン1、沈砂池2、予備曝気槽3、最初沈殿槽4などの物理的処理によって浮遊物や油脂を除去する。この時、凝集剤添加装置11等により凝集剤を添加して凝集処理を行い、除去効率を上げることも好ましい。次に、原水を活性汚泥槽5に導入して生物処理を施し、原水中の有機物を酸化分解する。その後、最終沈殿槽6で懸濁物質を除去し、下水二次処理水を得る。続いて、この下水二次処理水を砂濾過装置、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜などで構成される粗濾過装置7に供給し、水中の懸濁物質をさらに除去する。ここで、微生物を好適に除去するためには、精密濾過膜や限外濾過膜を用いることがより好ましく、原水中の高分子除去および後段の膜汚染の軽減の為には、限外濾過膜がさらに好ましい。また、砂濾過装置、精密濾過膜、限外濾過膜などを組み合わせて用いてもよい。
【0037】
そして、このような処理を施した水を、送液ポンプ8を用いて膜分離装置9に供給し、ナノ濾過膜や限外濾過膜で処理することにより、有機化合物、窒素化合物、塩類などを含まない透過水を取り出す。原水中の塩や有機物等が除去された透過水は、親水用水等の用水に再利用することができる。
【0038】
ここで、膜分離装置9に供給される原水の温度(膜分離装置に供給される直前の供給水温度)は、沸騰したり凍結しない範囲内で膜の耐久性を考慮して決定すればよく、膜分離装置が上述の素材の分離膜を有している場合には、15〜55℃の範囲内であることが好ましい。
【0039】
また、膜分離装置9の運転圧力は、原水の性状、運転方法などで適宜設定されるが、膜分離装置9が逆浸透膜を備えたものの場合、たとえば0.1〜3MPaの範囲内、より好ましくは0.1〜1.5MPaの範囲内で、高い透過水量を維持しつつ、複合半透膜を使用することができる。運転圧力を低くすることができると、用いるポンプなどの容量を小さくすることができ、消費電力を抑え、造水のコストダウンを図ることができる。運転圧力が0.1MPaを下回ると、透過水量が少なくなりすぎる傾向があり、3MPaを越えるとポンプなどの消費電力が増加するとともに、ファウリングによる膜の目詰まりを起こしやすくなる。また、水の透過量を0.5〜3m3/m2・dの範囲とすることにより、ファウリングの発生を適度に抑え、造水を安定的に行うことができる。
【0040】
なお、膜分離装置の運転圧力とは、分離膜にかける圧力をいい、適当な圧力ゲージにより測定する。また、モジュール間差圧とは、分離膜モジュールの原水流入口における圧力と、濃縮水排出口における圧力ゲージの値の差をいう。
【0041】
このようにして通常の処理工程は、目的を達成するにあたって最適な運転条件で行われる。
【0042】
しかしながら、このような通常の処理工程を常時継続したのでは、その環境で生育可能な微生物が増殖し、分離膜の膜面にファウリングを生じることになる。そこで、適当な間隔で殺菌処理を行う。
【0043】
殺菌処理工程では、通常の処理工程と同様の前処理を行った原水に亜硫酸水素ナトリウムを添加するとともに、酸添加などにより原水をさらに酸性化し、その後、その原水を前記分離膜に供給して殺菌処理を行いながら膜分離処理を行い、所望の透過液を製造する。すなわち、膜分離装置9に供給される原水に対して、亜硫酸水素ナトリウム添加装置13により亜硫酸水素ナトリウムを添加するととともに、酸添加装置12により硫酸等の酸を添加したりイオン交換樹脂に通すことで原水を酸性化する。亜硫酸水素ナトリウムは還元性物質であるため、酸性化する際に添加することで、目的のpHにする際に必要な他の酸添加量を低減することができ、取り扱いも簡便であるため好適である。酸添加にあたっては、イオン交換樹脂や硫酸等の酸を用いる。酸は有機酸、無機酸のいずれを用いても差し支えないが、経済的な面を考えると、硫酸を所定の濃度にまで希釈して用いることが好ましい。また、イオン交換樹脂塔でpHを低減してもよい。
【0044】
そして、原水の酸性化にあたっては、膜分離装置9に供給される原水のpHを2〜5、好ましくはpH2.5〜3.5の範囲内に調整することで殺菌を効率的に行うことができる。pHが2.5を下回るように酸を添加する場合、酸の必要量が著しく増加するにも関わらず殺菌率がほとんど変わらない。一方、pHが5を超えるような場合には、死滅しない菌が残存し増殖することにより、ファウリングによる膜の目詰まりを起こしやすくなる。
【0045】
また、原水の酸性化を酸添加により行う場合、酸の添加量は原水の塩濃度に応じて増加する。純水のpHを5、4、3と下げるには、計算上それぞれ0.5、5、50ppmの硫酸でよいが、地域(原水の水質)や含有成分(塩濃度、炭酸含有量など)などで多少変動するので、130ppm以上の硫酸を用いることが好ましい。
【0046】
本発明における殺菌処理工程では、原水や分離膜表面、分離膜内部を殺菌することを重要な目的とするものの、一方で、上記の所定の膜分離処理をも実施する。すなわち、殺菌処理工程であっても所望の処理水を得ることができる状態である。膜表面に微生物が堆積した状態で、単に亜硫酸水素ナトリウムを含有している低pHの供給水を流しても、堆積した微生物の表面は殺菌されるが、短時間では堆積層の内部にまでは浸透しない。透過水を得る状態であれば、亜硫酸水素ナトリウムを含有している低pHの供給水が、微生物が堆積している膜の内部にまで容易に浸透するので、膜に堆積した微生物全体を殺菌することが可能となる。ただし、透過水の回収率を極端に低下させると添加する硫酸量は低減できるが、微生物堆積層に浸透するまでの時間が長くなるので、処理時間を延長する必要がある。
【0047】
このように、本発明においては、淡水やかん水を処理するにあたり、間欠的に、亜硫酸水素ナトリウムを添加するとともにpHを通常の処理工程より低くして分離膜に供給することで、膜の劣化や損傷を防止しつつ、膜に堆積した微生物等を短時間で高効率にしかも低コストで殺菌することができる。
【0048】
すなわち、塩濃度0.05重量%以下の淡水中に含まれる微生物を酸を用いて殺菌する場合、pH5で30〜60分処理することによって細菌の約70%を、pH4では90%程度を、pH3では95%以上を、pH2.5では98%以上を殺菌することができる。しかしながら、塩濃度0.05重量%以下の淡水処理においてファウリングを起こした膜モジュールを解体し、膜表面の堆積物を生理食塩水中に懸濁させた液を酸を用いて殺菌処理したところ、pH2.5で30分処理しても微生物が50%生存し、耐酸性の高い菌が残存し増殖していることが判明した。
【0049】
そこで、同じ膜の堆積物中の耐酸性の細菌を有する懸濁液(pH7)を原水として、亜硫酸水素ナトリウムを500ppmになるよう添加した場合、殺菌率は30分後で78%であった。ところが、同じ原水を用いて亜硫酸水素ナトリウム100ppmでかつpH3とした場合の殺菌率は30分で71%、60分で79%であった。さらに同じ原水を用いて亜硫酸水素ナトリウム100ppmでかつpH2.5とした場合の殺菌率は30分で89%に達した。
【0050】
そして、塩濃度0.05重量%以下の淡水またはかん水を原水とし、pHのみを低下させた場合に比べて、亜硫酸水素ナトリウムを100ppm添加し、かつpH3以下にすることで顕著な殺菌相乗効果が認められた。
【0051】
塩濃度0.05重量%以下の淡水またはかん水を原水とし、顕著な殺菌の相乗効果が認められる亜硫酸水素ナトリウム濃度は50ppm以上で、100ppmのときにその効果が最も顕著に現れ、それ以上でも亜硫酸水素ナトリウム濃度の増加に伴い殺菌効果が上昇する傾向が見られた。従って本発明を実施する際の供給水の亜硫酸水素ナトリウム添加濃度は50ppm以上であることが好ましく、100ppm以上であることがより好ましい。
【0052】
また、この効果は、原水を海水とする場合では認められず、塩濃度0.05重量%以下の淡水またはかん水の場合に認められる。
【0053】
なお、殺菌率は、殺菌処理の前および殺菌処理中の水の一部を取得し、適宜滅菌水で希釈し、一般細菌用の培養に適した寒天培地に塗抹した後、培養して出現したコロニー数を数えて、その差を通常処理工程時の値で割って100をかけて表す。
【0054】
また、pHはたとえばガラス電極を用いたpH計により測定し、温度補正した値を用いる(JIS Z28802に準拠)。本明細書においては、文脈上明らかな場合以外は、pHは本発明で酸や亜硫酸水素ナトリウムを添加した後で、かつ、膜に供給する前に測定するものとする。
【0055】
このように、原水に亜硫酸水素ナトリウムを添加するとともに原水のpHを通常の処理工程より低くすることを同時に行うことで殺菌の相乗効果が得られる理由について、本発明者らは次のように推定している。すなわち、酸を添加しpHを下げるだけでは死滅しなかった耐酸性の高い菌が、同時に亜硫酸水素ナトリウムを添加することで無酸素状態となり、細胞膜に何らかの損傷をきたす為、酸が菌体内に浸透しやすくなり、また一方で亜硫酸水素ナトリウムを添加するだけでは死滅しなかった菌が、同時に酸を添加しpHを下げることにより細胞膜に何らかの損傷をきたし、全体として殺菌率が向上していると考えられる。
【0056】
殺菌処理工程の最適な時間や頻度は、使用場所、使用条件などで大きく異なり、またバイオファウリングの発生状況、すなわち膜の透過水量の減少、濃縮液の生菌数や含有有機炭素の増加、膜圧の上昇などの程度によって変動する。最終的には十分な殺菌効果が得られ、酸や亜硫酸水素ナトリウムの添加量(供給水のpH、塩濃度の条件、添加時間から計算される)が最も少ない条件が最適条件となる。
【0057】
しかしながら、通常バイオファウリングが懸念されるようなプラントでは、1週間に1回以上の頻度で行うのが好ましく、たとえば1日ごと、1週間ごとといった間隔で行うことが好ましい。より好ましくは3日に1回以上の頻度で行うのが好ましい。なお、殺菌処理工程を実施する間隔は必ずしも等間隔である必要はない。
【0058】
そして、1回の殺菌処理工程の時間は5分以上150分以下の範囲内で連続的に実行することが好ましい。より好ましくは60分〜120分である。なお、この間、一貫して同一の条件を保持している必要はない。
【0059】
【実施例】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0060】
pH7.3、塩濃度0.02重量%の下水二次処理水を図1の二点鎖線内に示す装置を用いて処理した。1日のうち30分間だけ殺菌処理工程とし、残りは通常処理工程とした。
【0061】
このとき、まず比較例の殺菌処理工程として、亜硫酸水素ナトリウムを添加せず硫酸を添加して膜分離装置9への供給水のpHを3とする殺菌処理工程とした。その結果、運転開始後16日でモジュール間差圧の上昇すなわちバイオファウリングが発生した。また、16日目の殺菌処理工程時得られた濃縮水中に含まれる生菌数は、殺菌処理工程に入る直前に得られた濃縮水中に含まれる生菌数の36%であった。
【0062】
そこで、膜分離装置を解体して膜表面の堆積物を生理食塩水中に懸濁させ、その懸濁液に対して、硫酸および膜分離装置9で得られた濃縮水を添加するとともに亜硫酸水素ナトリウムを添加し、pH3、亜硫酸水素ナトリウム濃度100ppmとした。その結果、30分後には、懸濁液中の生菌数が、殺菌処理工程に入る直前に得られた濃縮水中に含まれる生菌数の5%となった(実施例)。また、同様の懸濁液に対して、硫酸は添加せず、亜硫酸水素ナトリウムだけを濃度100ppmになるように添加した。この結果、30分後の懸濁液中の生菌数が、殺菌処理工程に入る直前に得られた濃縮水中に含まれる生菌数の22%であった。
【0063】
以上の結果より、溶質濃度の低い淡水やかん水の処理に際しては、本発明の方法により、モジュール間差圧の上昇すなわちバイオファウリングを防ぐことができ、長期間にわたる連続運転を行うことが可能になることがわかる。
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、淡水またはかん水を膜分離処理するにあたり、原水に亜硫酸水素ナトリウムを添加するとともに原水をさらに酸性化し、その原水を前記分離膜に供給して殺菌処理を行いながら膜分離処理を行う殺菌処理工程を間欠的に設けるので、膜分離処理を継続しつつ、高い効率で殺菌することができ、長期間にわたって連続運転しても膜間差圧の上昇を小さくすることができる。また、本発明によれば、膜分離処理を継続しつつ、少ない亜硫酸水素ナトリウムや酸の投入量、かつ短い処理時間でも高効率な殺菌処理ができる。さらに、分離膜の損傷が少ないという、効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の処理方法を実施する淡水やかん水の処理装置の一実施形態の概略フロー図である。
【符号の説明】
1:スクリーン
2:沈砂池
3:予備曝気槽
4:最初沈殿槽
5:活性汚泥槽
6:最終沈殿槽
7:粗濾過装置
8:送液ポンプ
9:膜分離装置
11:凝集剤添加装置
12:酸添加装置
13:亜硫酸水素ナトリウム添加装置
Claims (9)
- 淡水またはかん水を原水として分離膜に供給して膜分離処理を行う通常の処理工程と、前記原水に亜硫酸水素ナトリウムを添加するとともに原水をさらに酸性化し、その原水を前記分離膜に供給して殺菌処理を行いながら膜分離処理を行う殺菌処理工程とを有する淡水またはかん水の処理方法。
- 亜硫酸水素ナトリウムを50ppm以上になるように添加する、請求項1に記載の淡水またはかん水の処理方法。
- 前記殺菌処理工程を5分以上150分以下の範囲内で連続的に実行する、請求項1または2に記載の淡水またはかん水の処理方法。。
- 前記殺菌処理工程を7日に1回以上の頻度で実行する、請求項1〜3のいずれかに記載の淡水またはかん水の処理方法。
- 前記原水として下廃水の処理水を用いる、請求項1〜4のいずれかに記載の淡水又はかん水の処理方法
- 前記分離膜として逆浸透膜を用いる、請求項1〜5のいずれかに記載の淡水またはかん水の処理方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の方法を実施する再利用水の製造方法。
- 原水に亜硫酸水素ナトリウムを添加する亜硫酸水素ナトリウム添加装置と、原水を酸性化する酸性化装置と、これら亜硫酸水素ナトリウム添加装置および酸性化装置よりも後段に設けられた分離膜を備えた膜分離装置と、亜硫酸水素ナトリウム添加装置及び酸性化装置による調整を経た原水を膜分離装置に供給する調整原水供給手段とを備えてなる淡水またはかん水の処理装置。
- 前記亜硫酸水素ナトリウム添加装置および前記酸性化装置よりも下流側で、かつ前記膜分離装置よりも上流側に、前記膜分離装置の分離膜よりも粗い濾過を行う、精密濾過膜、限外濾過膜およびナノ濾過膜の少なくとも1つを備えた前処理用膜分離装置を備えてなる、請求項8に記載の淡水またはかん水の処理装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003200356A JP2005040661A (ja) | 2003-07-23 | 2003-07-23 | 淡水またはかん水の処理方法および処理装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003200356A JP2005040661A (ja) | 2003-07-23 | 2003-07-23 | 淡水またはかん水の処理方法および処理装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005040661A true JP2005040661A (ja) | 2005-02-17 |
Family
ID=34260787
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003200356A Pending JP2005040661A (ja) | 2003-07-23 | 2003-07-23 | 淡水またはかん水の処理方法および処理装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005040661A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007260532A (ja) * | 2006-03-28 | 2007-10-11 | Toray Ind Inc | 再生水製造装置の洗浄方法 |
JP2009183825A (ja) * | 2008-02-05 | 2009-08-20 | Kobelco Eco-Solutions Co Ltd | 水処理装置 |
WO2010004819A1 (ja) * | 2008-07-09 | 2010-01-14 | 東レ株式会社 | 逆浸透膜を用いた塩水の淡水化装置、および、この淡水化装置を用いた淡水の製造方法 |
-
2003
- 2003-07-23 JP JP2003200356A patent/JP2005040661A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007260532A (ja) * | 2006-03-28 | 2007-10-11 | Toray Ind Inc | 再生水製造装置の洗浄方法 |
JP2009183825A (ja) * | 2008-02-05 | 2009-08-20 | Kobelco Eco-Solutions Co Ltd | 水処理装置 |
WO2010004819A1 (ja) * | 2008-07-09 | 2010-01-14 | 東レ株式会社 | 逆浸透膜を用いた塩水の淡水化装置、および、この淡水化装置を用いた淡水の製造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US6743363B2 (en) | Method of bacteriostasis or disinfection for permselective membrane | |
JP5804228B1 (ja) | 水処理方法 | |
EP2276705B1 (en) | Environmentally friendly hybrid microbiological control technologies for cooling towers | |
WO2000027756A1 (fr) | Procede de traitement de l'eau | |
JP6194887B2 (ja) | 淡水製造方法 | |
EP1894612B1 (en) | Method for purifying water by means of a membrane filtration unit | |
JP6183213B2 (ja) | 造水方法および造水装置 | |
JP2005185985A (ja) | 水の製造方法および製造装置 | |
AU2012324220B2 (en) | Fresh water generation system | |
JP2003080246A (ja) | 水処理装置および水処理方法 | |
JP2000300966A (ja) | 膜の殺菌方法および膜分離装置 | |
WO2016136957A1 (ja) | 有機物含有水の処理方法および有機物含有水処理装置 | |
JP3087750B2 (ja) | 膜の殺菌方法 | |
JP3269496B2 (ja) | 膜の殺菌方法および造水方法 | |
JP2005040661A (ja) | 淡水またはかん水の処理方法および処理装置 | |
JP3353810B2 (ja) | 逆浸透法海水淡水化システム | |
JP2005177744A (ja) | 再生水の製造装置および再生水の製造方法 | |
JP2004344800A (ja) | 淡水またはかん水の処理方法および処理装置 | |
JP2001239136A (ja) | 処理システムおよびその運転方法 | |
JP2004121896A (ja) | 処理水の生産方法および塩水の処理装置 | |
JP2008073622A (ja) | 再生水の造水方法及び造水装置 | |
JP2004000938A (ja) | 造水方法 | |
Lei et al. | Development of an electrochemical dynamic membrane filtration system for simultaneous separation and disinfection | |
JP2000301148A (ja) | 造水方法 | |
JP2000237546A (ja) | 造水方法 |