JP2004000938A - 造水方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】海水またはかん水を膜処理して透過水を得るにあたり、安定的により高い透過水量、回収率を達成できる造水方法を提供する。
【解決手段】海水またはかん水を精密ろ過膜または限外ろ過膜にて前処理し、この前処理水を逆浸透膜モジュールで膜分離する造水方法であって、前処理水を8.0MPa以上の圧力で逆浸透膜の単位面積当たりの平均透過水量が0.5m3/m2・day以上になるように供給することを特徴とする造水方法。
【選択図】図1
【解決手段】海水またはかん水を精密ろ過膜または限外ろ過膜にて前処理し、この前処理水を逆浸透膜モジュールで膜分離する造水方法であって、前処理水を8.0MPa以上の圧力で逆浸透膜の単位面積当たりの平均透過水量が0.5m3/m2・day以上になるように供給することを特徴とする造水方法。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、海水やかん水を精密ろ過膜や限外濾過膜と逆浸透膜とを用いて処理して透過水を得るのに好適な造水方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、混合物(主に溶液)から特定の物質を選択的に分離する方法として、膜分離法が広く用いられている。そして、これらの膜分離法のうち、逆浸透法は、海水やかん水(低濃度の塩水)を脱塩して工業用、農業用、あるいは家庭用の淡水を提供する技術として広く利用されている。
【0003】
この逆浸透法は、水分子のみを透過させる性質を有する逆浸透膜を用い、当該逆浸透膜を隔てて浸透平衡にある溶液と水に対し、溶液の浸透圧より高い圧力を溶液側から加えることにより、溶液中の水分子を水側へ移行させる技術である。つまり、逆浸透法は、従来の蒸発法のような相変化を起こすことなく溶液中から水を取り出すことができるので、エネルギー的に有利である上に運転管理が容易であるという利点がある。
【0004】
そして、この逆浸透分離を実用規模で行う場合、以下のような逆浸透分離装置が通常用いられる。まず、逆浸透膜がスパイラル状、管状、平膜の積層体、または中空糸膜状に加工され、適宜流路材を介装した状態でケースに収容されてエレメントと呼ばれる膜素子を構成する。このエレメントは適宜直列に接続され、耐圧容器に収容されてモジュールとなり、このモジュールに所定の圧力を負荷することにより、逆浸透分離が行われる。
【0005】
なお、実際に逆浸透分離を行うと、逆浸透膜を透過できない塩が膜面近傍の溶液側に滞留して膜面での塩濃度が上昇し、いわゆる濃度分極現象が生じて膜面の浸透圧が高くなる。そのため、溶液の浸透圧より高い圧力(以下、「操作圧力」という)で逆浸透分離を行うことが実用上必要である。ここで、操作圧力と溶液の浸透圧との差を「有効圧力」といい、通常はモジュールの出口側における有効圧力が2MPa程度になるよう、操作圧力が決められている。
【0006】
ところで、逆浸透分離において、海水またはかん水から淡水を回収する割合(回収率)は、逆浸透分離のプロセス全体の設計のみならず、逆浸透分離して得られる淡水の製造コストを決める上で重要な因子となっている。そして、回収率が高い程、上記造水コストが低減するので、回収率の向上を図ることが重要な課題となっている。
【0007】
たとえば、塩濃度3.5%の海水を用いた場合、回収率を約40%に設定すると、海水はモジュール内で濃縮され出口側から塩濃度6%の濃縮水となって取り出され、当該モジュール内の海水の浸透圧は約2.5〜4.5MPaとなる。従って、この浸透圧に上記した有効圧力を加えた値(4.5〜6.5MPa)を、操作圧力としてモジュールに負荷して運転が行われる。その時の逆浸透膜単位面積当りの平均透過水量は0.4m3/m2・day程度である。
【0008】
さて、この逆浸透膜分離法を実施するにあたっては、従来は砂濾過装置で原水を前処理し、この処理水を逆浸透膜の供給水としてきた。しかし砂ろ過を使用した場合、微粒子の除去は完全でないため、前処理水のSDI値は3から5と比較的高く、また原水の変化によって水質が変化していた。また機器のトラブルやオペレーターの不注意により、濁質や凝集剤が漏れ出すことがあり、しばしば逆浸透膜のファウリングの原因の一因と考えられてきた。ここでファウリングとは、海水に含まれるフミン質や低分子有機物などの濁質成分等が逆浸透膜の膜面に付着して目詰まりを起こす現象であり、膜寿命を低下させて逆浸透分離時の運転コストを上昇させる原因となる。そして、有効圧力が高くなる程、膜面の透過水量は多くなり、膜面に上記濁質成分が引き寄せられるので、ファウリングが生じ易くなる。また、砂濾過装置でも微生物が繁殖し、バイオファウリングが生じるという問題もあった。
【0009】
逆浸透膜にて高回収率を達成し、単純な装置とするためには、高圧で直接逆浸透膜に供給水を供給すればよいわけであるが、同一の圧力容器内部に複数本の逆浸透膜エレメントを直列に配列させたモジュールに圧力をかけて淡水化収率60%の運転を行おうとすると、その濃縮水(塩濃度8.8%)の浸透圧は7MPaになり、そのため操作圧力は9.0MPaにも上昇する。そのためモジュール内部の入口側エレメントから得られる透過水量が極端に大きくなり、ファウリングが生じ安定運転ができなかった。これは、モジュールユニットの入口側に導入された海水は、出口側に向ってその濃度が高くなり、そのため当該出口側の海水の浸透圧は入口側に比べて高くなる。一方、操作圧力はモジュールユニットの入口側と出口側でほぼ同一であることから、操作圧力と浸透圧の差で表される有効圧力は当該入口側で上昇するためである。このように、モジュールユニットの入口側ではファウリングが特に生じ易くなっていることから、全体の操作圧力(=回収率)を制限して最も入口側のエレメント(先頭エレメント)の逆浸透膜単位面積当りの透過水量を0.6m3/m2・day程度で運転し、ファウリングを防止することが必要である。一般に海水淡水化において先頭エレメントは逆浸透膜単位面積当りの透過水量が0.75m3/m2・day以下でないとファウリングを起こすと言われており、スパイラル型逆浸透膜エレメントに高圧1段で処理しようとすると、先頭エレメントの透過水量が非常に多くなるため、従来の砂ろ過を使用するとファウリングが発生するといった問題があった。
【0010】
例えば非特許文献1では非常に清浄な海水を原水として耐高圧性中空糸型逆浸透膜を使用し、9.0MPaという高圧にて60%の回収率を達成した例がある。この場合は中空糸型逆浸透膜を使用しているため、スパイラル型エレメントに比べ膜面積が10倍程度広く、逆浸透膜の単位面積当りの透過水量も一桁小さく設定できるため逆浸透膜の単位面積当たりの平均透過水量が0.5m3/m2・day以上とならず、ファウリングがおきない。しかし中空糸型逆浸透膜は、一般的にスパイラル型エレメントに比べ、バイオファウリングが起きやすく、バイオファウリング等が一度起こってしまうと、洗浄が難しいといった問題点があり、安定的な運転は難しかった。
【0011】
また、特許文献1には、海水淡水化装置の前処理として脱塩性能を有しないスパイラル型膜モジュールを用いることで効率を高める方法が提案されている。しかしながら、この文献に記載の方法は、スパイラル型膜モジュールによる前処理水をせいぜい50〜70kg/cm2程度で処理することを前提としており、さらに高圧で処理する場合のファウリング等の問題には着想すらないものである。
【0012】
【非特許文献1】
日本海水学会誌、1999年、第53巻、第6号、第439〜444頁
【0013】
【特許文献1】特開平11−207155号公報(請求項1、0024段落、0035段落)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、逆浸透分離における上記した問題を解決し、海水やかん水からの淡水の回収率を向上させるとともに、運転コストを低減させて造水コストを低減せしめ、さらに長期間の安定運転を可能とした造水方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
(1)海水またはかん水を精密ろ過膜または限外ろ過膜にて前処理し、この前処理水を複数個の逆浸透膜エレメントを直列に配置した逆浸透膜モジュールで膜分離する造水方法であって、前処理水を8.0MPa以上の圧力で逆浸透膜の単位面積当たりの平均透過水量が0.5m3/m2・day以上になるように、かつ、最上流側に設けた逆浸透膜エレメントの逆浸透膜の単位面積当たりの透過水量が0.8m3/m2・day以上になるように供給することを特徴とする造水方法。
(ここで、平均透過水量とは、装置全体の逆浸透膜の平均した透過水量の意である)
(2)前処理水を12MPa以下の圧力で逆浸透膜の単位面積当たりの平均透過水量が1.0m3/m2・day以下になるように、かつ、最上流側に設けた逆浸透膜エレメントの逆浸透膜の単位面積当たりの透過水量が1.4m3/m2・day以下になるように供給することを特徴とする前記(1)に記載の造水方法。
【0016】
(3)逆浸透膜エレメントとしてスパイラル型エレメントを用いることを特徴とすることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の造水方法。
【0017】
(4)精密ろ過膜または限外ろ過膜として中空糸膜を用いることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の造水方法。
【0018】
(5)逆浸透膜モジュールにおける回収率を50〜70%の範囲内にすることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の造水方法。
【0019】
(6)前処理水のSDI値を4以下にすることを特徴とす前記(1)〜(5)のいずれかに記載の造水方法。
【0020】
(7)前処理水の濁度を0.001度以下にすることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の造水方法。
【0021】
(8)海水またはかん水のSDI値に基づいて凝集剤を添加することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか記載の造水方法。
【0022】
(9)海水またはかん水に塩素を添加して精密ろ過膜または限外ろ過膜にて前処理するとともに、前処理水の残留塩素濃度が少なくとも0.1mg/Lとなるように塩素の添加量を制御することを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の造水方法。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の造水方法は、たとえば図1に示す装置にて実施される。図1の装置は、海水またはかん水の流れ方向に関して上流側から順に、取水槽10、凝集剤添加ポンプ20、送水ポンプ30、前処理膜モジュール40、処理水濁度計42、処理水タンク50、高圧ポンプ60、逆浸透膜モジュール70、エネルギー回収装置80が接続されている。
【0024】
上述の装置において、海水またはかん水は、水中ポンプなどによって取水槽10に取り入れられる。取水槽1に取り入れられた海水やかん水は、凝集剤添加ポンプ20によって凝集剤が添加されながら、送水ポンプ30によって前処理膜モジュール40に供給され、微粒子、懸濁物、細菌、藻類等がろ過・除去される。
【0025】
ここで、、前処理膜モジュール40が耐塩素性の膜を備えている場合には、前処理膜モジュールに供給される前段で海水またはかん水に塩素を添加することが好ましい。塩素添加により、海水またはかん水中の有機物を分解させたのちに前処理膜に供給することが可能となり、逆洗やエアバブリングなどによる物理洗浄の性能回復を向上することができる。そして、このためには、前処理膜モジュール40によってろ過された前処理水の残留塩素濃度が少なくとも0.1mg/Lとなるように、塩素の添加量を制御することが好ましい。0.1mg/Lを下回る場合には、海水中の有機物の変動に伴い有機物が分解されないまま膜表面に付着する可能性があり、また、過剰に添加しても有機物が分解されていればそれ以上の大きな効果が期待できないため、上限としては0.5mg/Lであることが好ましい。なお、塩素添加した場合には、前処理膜モジュール40で処理したあとに重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤で塩素を還元させる必要がある。
【0026】
前処理膜モジュール40によって得られた前処理水は、処理水ライン41にて1日1回程度SDI値が測定され、このSDI値に基づき前述の凝集剤添加ポンプ20によって添加する凝集剤の添加量が決められる。また処理水ライン41を流れる前処理水は、処理水濁度計42で濁度が常時測定される。
【0027】
前処理水は、一旦処理水タンク50に貯められた後、高圧ポンプ60により操作圧力になるまで昇圧され、逆浸透膜モジュール70に送られる。逆浸透膜モジュール70においては、前処理水が逆浸透膜処理され、塩類が除去された水が透過水ライン71より取り出され、濃縮水が濃縮水ライン72から取り出される。濃縮水は高圧であるため、この圧力がエネルギー回収装置80によって回収され、高圧ポンプの動力として再利用される。
【0028】
本発明においては、上述のように、原水となる海水やかん水を、逆浸透膜モジュール70前段で精密ろ過膜や限外ろ過膜にて前処理して微粒子成分や細菌類を除去するので、後段の逆浸透膜で海水を分離する際に膜透過水量を増加させてもファウリング発生を防止できる。そのため、回収率を高く設定しても、長期間安定して造水運転を行える。さらに、前処理に精密ろ過膜や限外ろ過膜を用い細菌を除去することで、逆浸透膜モジュールでのバイオファウリングの低減にもつながり、より安定した逆浸透分離が可能となる。これらの結果、本発明の造水方法によると、逆浸透膜エレメントの本数を減らすことができるうえ、逆浸透膜の寿命の延長、すなわちエレメント交換比率の低減も可能であるので、コスト削減が可能である。
【0029】
逆浸透膜を高圧かつ1段でろ過を行おうとした場合、ろ過するに従って濃縮水の塩濃度が増加し、最も入口側のエレメント(先頭エレメント)と最も出口側のエレメント(末端エレメント)では逆浸透膜単位面積当りの透過水量が大きく異なる。たとえば、標準条件(圧力5.5MPa、3.5%海水、水温25℃、濃縮水量80l/分)で脱塩率99.85%、透過水量16m3/dayの性能を有した膜面積28.8m2の耐高圧エレメントを6本直列に並べ、水温25℃、原水塩濃度3.5%、圧力を9.0MPa、回収率60%で運転した場合、先頭エレメントでは逆浸透膜単位面積当りの透過水量が0.9m3/m2・day、末端エレメントでは0.3m3/m2・dayとなり、従来の回収率40%運転の先頭エレメントの逆浸透膜単位面積当りの透過水量の0.6m3/m2・dayの1.5倍となる。このような透過水量では先頭エレメントが逆浸透膜単位面積当りの透過水量0.75m3/m2・dayを越えているためファウリングが起こりやすく、砂ろ過を使用した場合短期間の内に逆浸透膜の造水量の低下が起こる。また、原水の水質変化や操作ミス等により、濁質や凝集剤が漏れ出すことがあり、このような処理水を高透過水量で逆浸透膜に供給した場合、すぐにファウリングが発生してしまい、安定な運転は達成できない。
【0030】
この問題を解決する手段としては、まず原水を精密ろ過膜または限外ろ過膜で処理し微粒子を除去する。限外ろ過膜を使えば前処理水のSDI値は一般的に0〜2の範囲にまで下げることができる。一方、精密ろ過膜の場合は前処理水のSDI値が2〜4程度になる場合があり、この場合原水に凝集剤を添加することによって前処理水のSDI値を下げることが可能である。凝集剤は過剰に添加すると前処理膜のろ過差圧上昇が起きるので、最適な量を添加することが重要である。そのため、前処理膜の前処理水のSDI値が3以上の場合にだけ凝集剤を添加するのが良く、さらに前処理水のSDI値に比例して凝集剤を添加するのが良い。前処理水は膜に欠陥がない限り、膜の公称孔径以上の濁質はほとんど存在しない。
【0031】
また、前処理膜モジュール40が耐塩素性の膜を備えている場合には、海水またはかん水を前処理膜モジュール40に供給する前に、その海水またはかん水に塩素を添加し、フミン質、フルボ酸などの低分子有機物を分解させた水を前処理膜に供給することが好ましい。これにより、低分子有機物の膜表面への付着、すなわちファウリングの生成を防ぎながら運転を継続することが可能となる。塩素の添加量は、海水中の有機成分に合わせて制御することが好ましい。水質は、紫外線吸光度(UV)計などを用いてオンラインで連続的に測定することが好ましい。塩素添加の量は、前処理膜モジュール40の透過水の残留塩素濃度が少なくとも0.1mg/Lとなるように制御することが好ましい。さらには、0.1〜0.5mg/Lとなるように制御することが好ましい。0.1mg/Lを下回る場合には海水中の有機物の変動に伴い有機物が分解されないまま膜表面に付着する可能性があり、また、過剰に添加しても有機物が分解されていればそれ以上の大きな効果は期待できないため、上限としては0.5mg/Lであることが好ましい。なお、塩素添加した場合には、前処理膜モジュール40で処理したあとに重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤で塩素を還元させる必要がある。
【0032】
次にこの処理水を逆浸透膜に供給することによって、処理水の塩を除去することができる。これまでスパイラル型逆浸透膜では逆浸透膜単位面積当りの透過水量が0.75m3/m2・day以上となるとファウリングが発生してしまうと一般的にいわれており、それ以下の透過水量で運転することが必要であった。
【0033】
しかし、本発明者らは検討を重ねた結果、前処理に精密ろ過膜または限外ろ過膜を使用すれば、圧力8MPa以上において、逆浸透膜単位面積当りの平均透過水量が0.5m3/m2・day以上でも逆浸透膜にファウリングが起きることがなく、安定して運転できることを見いだした。また逆浸透膜単位面積当りの平均透過水量が1.0m3/m2・day以下、圧力が12MPa以下であればファウリングを起こさないため、本発明の効果が発揮されるためには、この範囲であることがより好ましい。さらに逆浸透膜単位面積当りの平均透過水量が0.5m3/m2・day〜0.8m3/m2・dayであることがより好ましい。なおここでいう平均透過水量とは、逆浸透膜装置全体の逆浸透膜の平均の透過水量のことであり、多段に配置された場合もそれら全てを足し合わせた平均の透過水量を意味する。また、透過水量とは、エレメント1本の透過水量のことである。
【0034】
そして、本発明においては、逆浸透膜モジュールの先頭エレメントの逆浸透膜単位面積当りの透過水量が0.8m3/m2・day以上となるようにすることで、経済的にも有効なものとすることができる。すなわち、先頭エレメントの逆浸透膜単位面積当たりの透過水量が0.8m3/m2・dayを下回る場合には、ファウリングが生じないにも拘わらず回収率を低くしていることになり、一方、回収率を高めるためにはより多くのエレメントを用意する必要があり、容積も大きなものとなる。好ましくは1.4m3/m2・day以下であり、0.8m3/m2・day以上1.1m3/m2・day以下であることがより好ましい。
【0035】
また、モジュールや配管の耐圧性や、エネルギー効率を考慮すると逆浸透膜の圧力は10MPa以下であることがより好ましい。供給水のSDI値は4以下であることが好ましく、さらにはSDI値が2以下であることが膜のファウリングを防ぐためにはより好ましい。
【0036】
そして、凝集剤添加ポンプ20により供給される凝集剤としては、特に限定されるものではなく、例えばポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等のアルミニウム塩、塩化第二鉄、ポリ硫酸鉄等の鉄塩、マグネシウム塩等を用いることができ、これらの凝集剤にされに各種高分子ポリマを凝集助剤として併用することもできる。これら凝集剤を添加することにより、原水中の微粒子を凝集させ微粒子の大きさを大きくすることができ、凝集した微粒子は、精密ろ過膜または限外ろ過膜で除去することが可能となり、逆浸透膜により清浄な供給水を供給することができる。
【0037】
凝集剤の添加位置は膜前処理の前であれば良く、配管中に直接添加したり、混合槽を設け、そこに凝集剤を添加したりしてもよい。
【0038】
また、前処理膜を構成する材質としては、有機高分子材料を使用する場合、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、およびクロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホンおよびポリエーテルスルホン等を用いることができる。また、膜の形態から見ると、中空糸型や、平膜型や、スパイラル型エレメントや、チューブラー型エレメントを用いることができるが、コスト削減の面から、原水を直接ろ過することが可能である中空糸型であるほうがより好ましい。中空糸膜形態の前処理膜を用いる場合は、内圧式でも外圧式でもかまわない。
【0039】
逆浸透膜装置に処理水を供給する高圧ポンプについては、渦巻ポンプやタービンポンプ、プランジャーポンプなどの種々の形式のポンプを用いることができる。
【0040】
前処理膜モジュール40としては、具体的には、たとえば、0.01〜数μm程度の微粒子を除去することが可能な精密ろ過膜や分子量数百〜数百万程度の微粒子を除去することが可能な限外ろ過膜を用いることができる。
【0041】
逆浸透膜装置は、逆浸透膜を有する、複数個の逆浸透膜エレメントを圧力容器に納めた逆浸透膜モジュールを備えていることが好ましい。
【0042】
逆浸透膜の濃縮水は高い圧力エネルギーを有しているため、これを昇圧のためのエネルギーとして回収し利用することが好ましい。これは、たとえば、回収タービン、水車などを用いて加圧ポンプの駆動力の負荷低減を実現することができる。
【0043】
逆浸透膜としては、酢酸セルロース系ポリマーを用いたものや、ポリアミドを用いたものが好ましく、また、非対称構造を持ったものや複合構造を持ったもの、さらには、中空糸膜形態を有するものや平膜形態を有するものなど、いずれでも用いることができる。中でも、非対称構造を有する、酢酸セルロース系ポリマーを用いた逆浸透膜や、複合構造を有する、ポリアミドを用いた逆浸透膜を用いると効果が大きく、特に、芳香族ポリアミド複合膜を用いると非常に効果が大きい。
【0044】
逆浸透膜エレメントとは、上記の逆浸透膜を筐体に納めて使いやすくしたもので、平膜形態の逆浸透膜を用いる場合は、スパイラル型エレメントや、チューブラー型エレメント、プレートアンドフレーム型エレメントなどに組み込んで用いることができる。また、中空糸膜形態の逆浸透膜を用いる場合は、U字型やI字型に束ねて筐体に納めた形態とすることができる。逆浸透膜はスパイラル型エレメントは膜面積では中空糸型に比べて少ないものの、ファウリングのしにくさや洗浄性の点で、中空糸型に比べ有利であるため、逆浸透膜エレメントはスパイラル型である方が好ましい。
【0045】
逆浸透膜モジュールは、これらのエレメント複数本を圧力容器に納めたものであり、好ましくは4〜8本のエレメントを収納したものを用いるとよい。さらに、このモジュールを並列に複数系列配置したものを逆浸透膜モジュールユニットといい、これも逆浸透膜装置として好適に用いることができる。
【0046】
本発明では、上記の逆浸透膜モジュールや逆浸透膜モジュールユニットを多段に配置して逆浸透膜装置を構成すると好ましい。たとえば、前後段にツリー型に配置する場合には、前段の逆浸透膜モジュールユニットで得られる濃縮水を後段の逆浸透膜モジュールまたはモジュールユニットの供給水とし、前後段それぞれから透過水(淡水)を得る方法や、前段の逆浸透膜モジュールまたはモジュールユニットの透過水を、さらに後段の逆浸透膜モジュールまたはモジュールユニットの供給水とし、高品質な透過水(淡水)を得る透過水2段法を適用することができる。もちろん、これらは2段配置に限られることはなく、必要に応じて3段以上の多段構成とすることもできる。ここでツリー型とは前段よりも後段の逆浸透膜モジュールユニット数を減らす配置の仕方であり、後段の逆浸透膜モジュール供給水の量を確保することが可能となる。
【0047】
本発明の効果が発揮されるためには、逆浸透膜ユニットの全体の回収率は50%以上70%以下とすると良く、さらに好ましくは55%以上65%以下とすることがコスト削減の上でより好ましい。なおここでの回収率とは、装置全体の回収率を示し、モジュールユニットを多段に配置した場合は、そのモジュールユニットそれぞれの回収率を合わせたもので表される。
【0048】
膜前処理水の濁質は非常に微量であることが重要であり、本発明の効果が発揮されるためには濁度が0.001度以下である方が良く、さらには0.0005度以下である方がより好ましい。
【0049】
本発明において、濁度とはJISK0101に規定される。この指標は、カオリン1mg/lの溶液の濁りを1度と定義するもので、測定原理の違いから透過光濁度、散乱光濁度、積分光濁度があるが、測定方法は適宜選択すればよい。
【0050】
本発明の効果が発揮されるためには、原水は海水およびかん水であればよいが、浸透圧が高い溶液である方が好ましく、具体的には塩濃度2500mg/l以上、45000mg/l以下の塩濃度であればよい。
【0051】
【実施例】
以下の実施例、比較例においては、前処理膜として精密ろ過膜(MF膜)を、逆浸透膜としてポリアミド系複合膜を用いた。
【0052】
(実施例1)
図1に示した造水装置を用いて造水を行った。
【0053】
まず、原水(塩濃度3.5%の海水)を送水ポンプにて、外圧式中空糸型のMF膜に供給し、回収率95%で処理した。この膜前処理水のSDI値は2.5であり、濁度は0.0002度であった。次いで、この処理水を高圧ポンプにて9.0MPaに昇圧して、標準条件(圧力5.5MPa、海水3.5%、温度25℃、濃縮水量80l/分)で脱塩率99.85%、透過水量が16m3/dayのスパイラル型逆浸透膜エレメントを直列に6本接続して圧力容器に収納した逆浸透膜モジュールに供給し、逆浸透膜単位面積当りの平均透過水量0.6m3/m2・day、先頭エレメントの透過水量0.9m3/m2・day、回収率60%にて2,000時間連続して運転を行った。その結果、透過水の水質は全溶質濃度が140mg/lと高品質であった。また、運転中は逆浸透膜モジュールにスケール成分の析出は認められず、モジュール内の膜間差圧も一定範囲内に収まった。
【0054】
(比較例1)
前処理として砂ろ過を用いた。処理水のSDI値は4.5であり、処理水濁度は0.02度であった。この処理水を供給水として、圧力9.0MPaにて逆浸透膜モジュールへ供給し、回収率を60%として2,000時間運転を行った他は、実施例1と同様にして造水を行った。
【0055】
その結果、運転開始から1,000時間経過後、逆浸透膜モジュールの造水量が低下したため、圧力7.0MPa、回収率50%に下げて運転を継続した。運転後のモジュールを解体して調べたところ、先頭モジュールの造水量の低下が著しかった。
(実施例2)
逆浸透膜単位面積当たりの平均透過水量を0.5m3/m2・day、先頭エレメントの透過水量を0.8m3/m2・dayにして600時間の運転を行った以外は実施例1と同様にした。この結果、造水量の低下はほとんど起こらず、造水量低下率は0.001%/h以下であった。
(実施例3)
逆浸透膜単位面積当たりの平均透過水量を1.5m3/m2・day、先頭エレメントの透過水量を2.0m3/m2・dayにして600時間の運転を行った以外は実施例1と同様にした。この結果、造水量の低下率は0.05%/hであった。
(実施例4)
逆浸透膜単位面積当たりの平均透過水量を2.0m3/m2・day、先頭エレメントの透過水量を2.6m3/m2・dayにして600時間の運転を行った以外は実施例1と同様にした。この結果、造水量の低下率は0.08%/hであった。
(参考例1)
参考までに塩素添加の効果を示す実験例を示す。
【0056】
耐塩素性膜であるPVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜に温度15℃、平均濁度1.0、TDS濃度35,000mg/Lの実海水を供給し、6日間の濾過を行った。このとき、膜濾過水の残留塩素が1.5mg/Lとなるように、膜供給水に塩素を添加した。
【0057】
この結果、膜の差圧はわずかに上昇する程度であり、6日間で約5kPaの上昇であった。
(参考例2)
膜供給水に塩素を添加しなかった以外は参考例1と同様にして濾過を行った。
【0058】
この結果、膜の差圧が徐々に上昇し、6日間で約15kPa上昇した。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、海水またはかん水を精密ろ過膜または限外ろ過膜にて前処理し、この処理水を逆浸透膜に供給することにより、逆浸透膜を高透過水量、高回収率で安定的に運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係る造水装置を示す概略図である。
【符号の説明】
10:取水タンク
20:取水ポンプ
30:凝集剤添加ポンプ
40:前処理膜モジュール(前処理膜装置)
41:処理水ライン
42:処理水濁度計
50:処理水タンク
60:高圧ポンプ
70:逆浸透膜モジュール(逆浸透膜装置)
71:透過水ライン
72:濃縮水ライン
80:エネルギー回収装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、海水やかん水を精密ろ過膜や限外濾過膜と逆浸透膜とを用いて処理して透過水を得るのに好適な造水方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、混合物(主に溶液)から特定の物質を選択的に分離する方法として、膜分離法が広く用いられている。そして、これらの膜分離法のうち、逆浸透法は、海水やかん水(低濃度の塩水)を脱塩して工業用、農業用、あるいは家庭用の淡水を提供する技術として広く利用されている。
【0003】
この逆浸透法は、水分子のみを透過させる性質を有する逆浸透膜を用い、当該逆浸透膜を隔てて浸透平衡にある溶液と水に対し、溶液の浸透圧より高い圧力を溶液側から加えることにより、溶液中の水分子を水側へ移行させる技術である。つまり、逆浸透法は、従来の蒸発法のような相変化を起こすことなく溶液中から水を取り出すことができるので、エネルギー的に有利である上に運転管理が容易であるという利点がある。
【0004】
そして、この逆浸透分離を実用規模で行う場合、以下のような逆浸透分離装置が通常用いられる。まず、逆浸透膜がスパイラル状、管状、平膜の積層体、または中空糸膜状に加工され、適宜流路材を介装した状態でケースに収容されてエレメントと呼ばれる膜素子を構成する。このエレメントは適宜直列に接続され、耐圧容器に収容されてモジュールとなり、このモジュールに所定の圧力を負荷することにより、逆浸透分離が行われる。
【0005】
なお、実際に逆浸透分離を行うと、逆浸透膜を透過できない塩が膜面近傍の溶液側に滞留して膜面での塩濃度が上昇し、いわゆる濃度分極現象が生じて膜面の浸透圧が高くなる。そのため、溶液の浸透圧より高い圧力(以下、「操作圧力」という)で逆浸透分離を行うことが実用上必要である。ここで、操作圧力と溶液の浸透圧との差を「有効圧力」といい、通常はモジュールの出口側における有効圧力が2MPa程度になるよう、操作圧力が決められている。
【0006】
ところで、逆浸透分離において、海水またはかん水から淡水を回収する割合(回収率)は、逆浸透分離のプロセス全体の設計のみならず、逆浸透分離して得られる淡水の製造コストを決める上で重要な因子となっている。そして、回収率が高い程、上記造水コストが低減するので、回収率の向上を図ることが重要な課題となっている。
【0007】
たとえば、塩濃度3.5%の海水を用いた場合、回収率を約40%に設定すると、海水はモジュール内で濃縮され出口側から塩濃度6%の濃縮水となって取り出され、当該モジュール内の海水の浸透圧は約2.5〜4.5MPaとなる。従って、この浸透圧に上記した有効圧力を加えた値(4.5〜6.5MPa)を、操作圧力としてモジュールに負荷して運転が行われる。その時の逆浸透膜単位面積当りの平均透過水量は0.4m3/m2・day程度である。
【0008】
さて、この逆浸透膜分離法を実施するにあたっては、従来は砂濾過装置で原水を前処理し、この処理水を逆浸透膜の供給水としてきた。しかし砂ろ過を使用した場合、微粒子の除去は完全でないため、前処理水のSDI値は3から5と比較的高く、また原水の変化によって水質が変化していた。また機器のトラブルやオペレーターの不注意により、濁質や凝集剤が漏れ出すことがあり、しばしば逆浸透膜のファウリングの原因の一因と考えられてきた。ここでファウリングとは、海水に含まれるフミン質や低分子有機物などの濁質成分等が逆浸透膜の膜面に付着して目詰まりを起こす現象であり、膜寿命を低下させて逆浸透分離時の運転コストを上昇させる原因となる。そして、有効圧力が高くなる程、膜面の透過水量は多くなり、膜面に上記濁質成分が引き寄せられるので、ファウリングが生じ易くなる。また、砂濾過装置でも微生物が繁殖し、バイオファウリングが生じるという問題もあった。
【0009】
逆浸透膜にて高回収率を達成し、単純な装置とするためには、高圧で直接逆浸透膜に供給水を供給すればよいわけであるが、同一の圧力容器内部に複数本の逆浸透膜エレメントを直列に配列させたモジュールに圧力をかけて淡水化収率60%の運転を行おうとすると、その濃縮水(塩濃度8.8%)の浸透圧は7MPaになり、そのため操作圧力は9.0MPaにも上昇する。そのためモジュール内部の入口側エレメントから得られる透過水量が極端に大きくなり、ファウリングが生じ安定運転ができなかった。これは、モジュールユニットの入口側に導入された海水は、出口側に向ってその濃度が高くなり、そのため当該出口側の海水の浸透圧は入口側に比べて高くなる。一方、操作圧力はモジュールユニットの入口側と出口側でほぼ同一であることから、操作圧力と浸透圧の差で表される有効圧力は当該入口側で上昇するためである。このように、モジュールユニットの入口側ではファウリングが特に生じ易くなっていることから、全体の操作圧力(=回収率)を制限して最も入口側のエレメント(先頭エレメント)の逆浸透膜単位面積当りの透過水量を0.6m3/m2・day程度で運転し、ファウリングを防止することが必要である。一般に海水淡水化において先頭エレメントは逆浸透膜単位面積当りの透過水量が0.75m3/m2・day以下でないとファウリングを起こすと言われており、スパイラル型逆浸透膜エレメントに高圧1段で処理しようとすると、先頭エレメントの透過水量が非常に多くなるため、従来の砂ろ過を使用するとファウリングが発生するといった問題があった。
【0010】
例えば非特許文献1では非常に清浄な海水を原水として耐高圧性中空糸型逆浸透膜を使用し、9.0MPaという高圧にて60%の回収率を達成した例がある。この場合は中空糸型逆浸透膜を使用しているため、スパイラル型エレメントに比べ膜面積が10倍程度広く、逆浸透膜の単位面積当りの透過水量も一桁小さく設定できるため逆浸透膜の単位面積当たりの平均透過水量が0.5m3/m2・day以上とならず、ファウリングがおきない。しかし中空糸型逆浸透膜は、一般的にスパイラル型エレメントに比べ、バイオファウリングが起きやすく、バイオファウリング等が一度起こってしまうと、洗浄が難しいといった問題点があり、安定的な運転は難しかった。
【0011】
また、特許文献1には、海水淡水化装置の前処理として脱塩性能を有しないスパイラル型膜モジュールを用いることで効率を高める方法が提案されている。しかしながら、この文献に記載の方法は、スパイラル型膜モジュールによる前処理水をせいぜい50〜70kg/cm2程度で処理することを前提としており、さらに高圧で処理する場合のファウリング等の問題には着想すらないものである。
【0012】
【非特許文献1】
日本海水学会誌、1999年、第53巻、第6号、第439〜444頁
【0013】
【特許文献1】特開平11−207155号公報(請求項1、0024段落、0035段落)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、逆浸透分離における上記した問題を解決し、海水やかん水からの淡水の回収率を向上させるとともに、運転コストを低減させて造水コストを低減せしめ、さらに長期間の安定運転を可能とした造水方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
(1)海水またはかん水を精密ろ過膜または限外ろ過膜にて前処理し、この前処理水を複数個の逆浸透膜エレメントを直列に配置した逆浸透膜モジュールで膜分離する造水方法であって、前処理水を8.0MPa以上の圧力で逆浸透膜の単位面積当たりの平均透過水量が0.5m3/m2・day以上になるように、かつ、最上流側に設けた逆浸透膜エレメントの逆浸透膜の単位面積当たりの透過水量が0.8m3/m2・day以上になるように供給することを特徴とする造水方法。
(ここで、平均透過水量とは、装置全体の逆浸透膜の平均した透過水量の意である)
(2)前処理水を12MPa以下の圧力で逆浸透膜の単位面積当たりの平均透過水量が1.0m3/m2・day以下になるように、かつ、最上流側に設けた逆浸透膜エレメントの逆浸透膜の単位面積当たりの透過水量が1.4m3/m2・day以下になるように供給することを特徴とする前記(1)に記載の造水方法。
【0016】
(3)逆浸透膜エレメントとしてスパイラル型エレメントを用いることを特徴とすることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の造水方法。
【0017】
(4)精密ろ過膜または限外ろ過膜として中空糸膜を用いることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の造水方法。
【0018】
(5)逆浸透膜モジュールにおける回収率を50〜70%の範囲内にすることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の造水方法。
【0019】
(6)前処理水のSDI値を4以下にすることを特徴とす前記(1)〜(5)のいずれかに記載の造水方法。
【0020】
(7)前処理水の濁度を0.001度以下にすることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の造水方法。
【0021】
(8)海水またはかん水のSDI値に基づいて凝集剤を添加することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか記載の造水方法。
【0022】
(9)海水またはかん水に塩素を添加して精密ろ過膜または限外ろ過膜にて前処理するとともに、前処理水の残留塩素濃度が少なくとも0.1mg/Lとなるように塩素の添加量を制御することを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の造水方法。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の造水方法は、たとえば図1に示す装置にて実施される。図1の装置は、海水またはかん水の流れ方向に関して上流側から順に、取水槽10、凝集剤添加ポンプ20、送水ポンプ30、前処理膜モジュール40、処理水濁度計42、処理水タンク50、高圧ポンプ60、逆浸透膜モジュール70、エネルギー回収装置80が接続されている。
【0024】
上述の装置において、海水またはかん水は、水中ポンプなどによって取水槽10に取り入れられる。取水槽1に取り入れられた海水やかん水は、凝集剤添加ポンプ20によって凝集剤が添加されながら、送水ポンプ30によって前処理膜モジュール40に供給され、微粒子、懸濁物、細菌、藻類等がろ過・除去される。
【0025】
ここで、、前処理膜モジュール40が耐塩素性の膜を備えている場合には、前処理膜モジュールに供給される前段で海水またはかん水に塩素を添加することが好ましい。塩素添加により、海水またはかん水中の有機物を分解させたのちに前処理膜に供給することが可能となり、逆洗やエアバブリングなどによる物理洗浄の性能回復を向上することができる。そして、このためには、前処理膜モジュール40によってろ過された前処理水の残留塩素濃度が少なくとも0.1mg/Lとなるように、塩素の添加量を制御することが好ましい。0.1mg/Lを下回る場合には、海水中の有機物の変動に伴い有機物が分解されないまま膜表面に付着する可能性があり、また、過剰に添加しても有機物が分解されていればそれ以上の大きな効果が期待できないため、上限としては0.5mg/Lであることが好ましい。なお、塩素添加した場合には、前処理膜モジュール40で処理したあとに重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤で塩素を還元させる必要がある。
【0026】
前処理膜モジュール40によって得られた前処理水は、処理水ライン41にて1日1回程度SDI値が測定され、このSDI値に基づき前述の凝集剤添加ポンプ20によって添加する凝集剤の添加量が決められる。また処理水ライン41を流れる前処理水は、処理水濁度計42で濁度が常時測定される。
【0027】
前処理水は、一旦処理水タンク50に貯められた後、高圧ポンプ60により操作圧力になるまで昇圧され、逆浸透膜モジュール70に送られる。逆浸透膜モジュール70においては、前処理水が逆浸透膜処理され、塩類が除去された水が透過水ライン71より取り出され、濃縮水が濃縮水ライン72から取り出される。濃縮水は高圧であるため、この圧力がエネルギー回収装置80によって回収され、高圧ポンプの動力として再利用される。
【0028】
本発明においては、上述のように、原水となる海水やかん水を、逆浸透膜モジュール70前段で精密ろ過膜や限外ろ過膜にて前処理して微粒子成分や細菌類を除去するので、後段の逆浸透膜で海水を分離する際に膜透過水量を増加させてもファウリング発生を防止できる。そのため、回収率を高く設定しても、長期間安定して造水運転を行える。さらに、前処理に精密ろ過膜や限外ろ過膜を用い細菌を除去することで、逆浸透膜モジュールでのバイオファウリングの低減にもつながり、より安定した逆浸透分離が可能となる。これらの結果、本発明の造水方法によると、逆浸透膜エレメントの本数を減らすことができるうえ、逆浸透膜の寿命の延長、すなわちエレメント交換比率の低減も可能であるので、コスト削減が可能である。
【0029】
逆浸透膜を高圧かつ1段でろ過を行おうとした場合、ろ過するに従って濃縮水の塩濃度が増加し、最も入口側のエレメント(先頭エレメント)と最も出口側のエレメント(末端エレメント)では逆浸透膜単位面積当りの透過水量が大きく異なる。たとえば、標準条件(圧力5.5MPa、3.5%海水、水温25℃、濃縮水量80l/分)で脱塩率99.85%、透過水量16m3/dayの性能を有した膜面積28.8m2の耐高圧エレメントを6本直列に並べ、水温25℃、原水塩濃度3.5%、圧力を9.0MPa、回収率60%で運転した場合、先頭エレメントでは逆浸透膜単位面積当りの透過水量が0.9m3/m2・day、末端エレメントでは0.3m3/m2・dayとなり、従来の回収率40%運転の先頭エレメントの逆浸透膜単位面積当りの透過水量の0.6m3/m2・dayの1.5倍となる。このような透過水量では先頭エレメントが逆浸透膜単位面積当りの透過水量0.75m3/m2・dayを越えているためファウリングが起こりやすく、砂ろ過を使用した場合短期間の内に逆浸透膜の造水量の低下が起こる。また、原水の水質変化や操作ミス等により、濁質や凝集剤が漏れ出すことがあり、このような処理水を高透過水量で逆浸透膜に供給した場合、すぐにファウリングが発生してしまい、安定な運転は達成できない。
【0030】
この問題を解決する手段としては、まず原水を精密ろ過膜または限外ろ過膜で処理し微粒子を除去する。限外ろ過膜を使えば前処理水のSDI値は一般的に0〜2の範囲にまで下げることができる。一方、精密ろ過膜の場合は前処理水のSDI値が2〜4程度になる場合があり、この場合原水に凝集剤を添加することによって前処理水のSDI値を下げることが可能である。凝集剤は過剰に添加すると前処理膜のろ過差圧上昇が起きるので、最適な量を添加することが重要である。そのため、前処理膜の前処理水のSDI値が3以上の場合にだけ凝集剤を添加するのが良く、さらに前処理水のSDI値に比例して凝集剤を添加するのが良い。前処理水は膜に欠陥がない限り、膜の公称孔径以上の濁質はほとんど存在しない。
【0031】
また、前処理膜モジュール40が耐塩素性の膜を備えている場合には、海水またはかん水を前処理膜モジュール40に供給する前に、その海水またはかん水に塩素を添加し、フミン質、フルボ酸などの低分子有機物を分解させた水を前処理膜に供給することが好ましい。これにより、低分子有機物の膜表面への付着、すなわちファウリングの生成を防ぎながら運転を継続することが可能となる。塩素の添加量は、海水中の有機成分に合わせて制御することが好ましい。水質は、紫外線吸光度(UV)計などを用いてオンラインで連続的に測定することが好ましい。塩素添加の量は、前処理膜モジュール40の透過水の残留塩素濃度が少なくとも0.1mg/Lとなるように制御することが好ましい。さらには、0.1〜0.5mg/Lとなるように制御することが好ましい。0.1mg/Lを下回る場合には海水中の有機物の変動に伴い有機物が分解されないまま膜表面に付着する可能性があり、また、過剰に添加しても有機物が分解されていればそれ以上の大きな効果は期待できないため、上限としては0.5mg/Lであることが好ましい。なお、塩素添加した場合には、前処理膜モジュール40で処理したあとに重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤で塩素を還元させる必要がある。
【0032】
次にこの処理水を逆浸透膜に供給することによって、処理水の塩を除去することができる。これまでスパイラル型逆浸透膜では逆浸透膜単位面積当りの透過水量が0.75m3/m2・day以上となるとファウリングが発生してしまうと一般的にいわれており、それ以下の透過水量で運転することが必要であった。
【0033】
しかし、本発明者らは検討を重ねた結果、前処理に精密ろ過膜または限外ろ過膜を使用すれば、圧力8MPa以上において、逆浸透膜単位面積当りの平均透過水量が0.5m3/m2・day以上でも逆浸透膜にファウリングが起きることがなく、安定して運転できることを見いだした。また逆浸透膜単位面積当りの平均透過水量が1.0m3/m2・day以下、圧力が12MPa以下であればファウリングを起こさないため、本発明の効果が発揮されるためには、この範囲であることがより好ましい。さらに逆浸透膜単位面積当りの平均透過水量が0.5m3/m2・day〜0.8m3/m2・dayであることがより好ましい。なおここでいう平均透過水量とは、逆浸透膜装置全体の逆浸透膜の平均の透過水量のことであり、多段に配置された場合もそれら全てを足し合わせた平均の透過水量を意味する。また、透過水量とは、エレメント1本の透過水量のことである。
【0034】
そして、本発明においては、逆浸透膜モジュールの先頭エレメントの逆浸透膜単位面積当りの透過水量が0.8m3/m2・day以上となるようにすることで、経済的にも有効なものとすることができる。すなわち、先頭エレメントの逆浸透膜単位面積当たりの透過水量が0.8m3/m2・dayを下回る場合には、ファウリングが生じないにも拘わらず回収率を低くしていることになり、一方、回収率を高めるためにはより多くのエレメントを用意する必要があり、容積も大きなものとなる。好ましくは1.4m3/m2・day以下であり、0.8m3/m2・day以上1.1m3/m2・day以下であることがより好ましい。
【0035】
また、モジュールや配管の耐圧性や、エネルギー効率を考慮すると逆浸透膜の圧力は10MPa以下であることがより好ましい。供給水のSDI値は4以下であることが好ましく、さらにはSDI値が2以下であることが膜のファウリングを防ぐためにはより好ましい。
【0036】
そして、凝集剤添加ポンプ20により供給される凝集剤としては、特に限定されるものではなく、例えばポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等のアルミニウム塩、塩化第二鉄、ポリ硫酸鉄等の鉄塩、マグネシウム塩等を用いることができ、これらの凝集剤にされに各種高分子ポリマを凝集助剤として併用することもできる。これら凝集剤を添加することにより、原水中の微粒子を凝集させ微粒子の大きさを大きくすることができ、凝集した微粒子は、精密ろ過膜または限外ろ過膜で除去することが可能となり、逆浸透膜により清浄な供給水を供給することができる。
【0037】
凝集剤の添加位置は膜前処理の前であれば良く、配管中に直接添加したり、混合槽を設け、そこに凝集剤を添加したりしてもよい。
【0038】
また、前処理膜を構成する材質としては、有機高分子材料を使用する場合、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、およびクロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホンおよびポリエーテルスルホン等を用いることができる。また、膜の形態から見ると、中空糸型や、平膜型や、スパイラル型エレメントや、チューブラー型エレメントを用いることができるが、コスト削減の面から、原水を直接ろ過することが可能である中空糸型であるほうがより好ましい。中空糸膜形態の前処理膜を用いる場合は、内圧式でも外圧式でもかまわない。
【0039】
逆浸透膜装置に処理水を供給する高圧ポンプについては、渦巻ポンプやタービンポンプ、プランジャーポンプなどの種々の形式のポンプを用いることができる。
【0040】
前処理膜モジュール40としては、具体的には、たとえば、0.01〜数μm程度の微粒子を除去することが可能な精密ろ過膜や分子量数百〜数百万程度の微粒子を除去することが可能な限外ろ過膜を用いることができる。
【0041】
逆浸透膜装置は、逆浸透膜を有する、複数個の逆浸透膜エレメントを圧力容器に納めた逆浸透膜モジュールを備えていることが好ましい。
【0042】
逆浸透膜の濃縮水は高い圧力エネルギーを有しているため、これを昇圧のためのエネルギーとして回収し利用することが好ましい。これは、たとえば、回収タービン、水車などを用いて加圧ポンプの駆動力の負荷低減を実現することができる。
【0043】
逆浸透膜としては、酢酸セルロース系ポリマーを用いたものや、ポリアミドを用いたものが好ましく、また、非対称構造を持ったものや複合構造を持ったもの、さらには、中空糸膜形態を有するものや平膜形態を有するものなど、いずれでも用いることができる。中でも、非対称構造を有する、酢酸セルロース系ポリマーを用いた逆浸透膜や、複合構造を有する、ポリアミドを用いた逆浸透膜を用いると効果が大きく、特に、芳香族ポリアミド複合膜を用いると非常に効果が大きい。
【0044】
逆浸透膜エレメントとは、上記の逆浸透膜を筐体に納めて使いやすくしたもので、平膜形態の逆浸透膜を用いる場合は、スパイラル型エレメントや、チューブラー型エレメント、プレートアンドフレーム型エレメントなどに組み込んで用いることができる。また、中空糸膜形態の逆浸透膜を用いる場合は、U字型やI字型に束ねて筐体に納めた形態とすることができる。逆浸透膜はスパイラル型エレメントは膜面積では中空糸型に比べて少ないものの、ファウリングのしにくさや洗浄性の点で、中空糸型に比べ有利であるため、逆浸透膜エレメントはスパイラル型である方が好ましい。
【0045】
逆浸透膜モジュールは、これらのエレメント複数本を圧力容器に納めたものであり、好ましくは4〜8本のエレメントを収納したものを用いるとよい。さらに、このモジュールを並列に複数系列配置したものを逆浸透膜モジュールユニットといい、これも逆浸透膜装置として好適に用いることができる。
【0046】
本発明では、上記の逆浸透膜モジュールや逆浸透膜モジュールユニットを多段に配置して逆浸透膜装置を構成すると好ましい。たとえば、前後段にツリー型に配置する場合には、前段の逆浸透膜モジュールユニットで得られる濃縮水を後段の逆浸透膜モジュールまたはモジュールユニットの供給水とし、前後段それぞれから透過水(淡水)を得る方法や、前段の逆浸透膜モジュールまたはモジュールユニットの透過水を、さらに後段の逆浸透膜モジュールまたはモジュールユニットの供給水とし、高品質な透過水(淡水)を得る透過水2段法を適用することができる。もちろん、これらは2段配置に限られることはなく、必要に応じて3段以上の多段構成とすることもできる。ここでツリー型とは前段よりも後段の逆浸透膜モジュールユニット数を減らす配置の仕方であり、後段の逆浸透膜モジュール供給水の量を確保することが可能となる。
【0047】
本発明の効果が発揮されるためには、逆浸透膜ユニットの全体の回収率は50%以上70%以下とすると良く、さらに好ましくは55%以上65%以下とすることがコスト削減の上でより好ましい。なおここでの回収率とは、装置全体の回収率を示し、モジュールユニットを多段に配置した場合は、そのモジュールユニットそれぞれの回収率を合わせたもので表される。
【0048】
膜前処理水の濁質は非常に微量であることが重要であり、本発明の効果が発揮されるためには濁度が0.001度以下である方が良く、さらには0.0005度以下である方がより好ましい。
【0049】
本発明において、濁度とはJISK0101に規定される。この指標は、カオリン1mg/lの溶液の濁りを1度と定義するもので、測定原理の違いから透過光濁度、散乱光濁度、積分光濁度があるが、測定方法は適宜選択すればよい。
【0050】
本発明の効果が発揮されるためには、原水は海水およびかん水であればよいが、浸透圧が高い溶液である方が好ましく、具体的には塩濃度2500mg/l以上、45000mg/l以下の塩濃度であればよい。
【0051】
【実施例】
以下の実施例、比較例においては、前処理膜として精密ろ過膜(MF膜)を、逆浸透膜としてポリアミド系複合膜を用いた。
【0052】
(実施例1)
図1に示した造水装置を用いて造水を行った。
【0053】
まず、原水(塩濃度3.5%の海水)を送水ポンプにて、外圧式中空糸型のMF膜に供給し、回収率95%で処理した。この膜前処理水のSDI値は2.5であり、濁度は0.0002度であった。次いで、この処理水を高圧ポンプにて9.0MPaに昇圧して、標準条件(圧力5.5MPa、海水3.5%、温度25℃、濃縮水量80l/分)で脱塩率99.85%、透過水量が16m3/dayのスパイラル型逆浸透膜エレメントを直列に6本接続して圧力容器に収納した逆浸透膜モジュールに供給し、逆浸透膜単位面積当りの平均透過水量0.6m3/m2・day、先頭エレメントの透過水量0.9m3/m2・day、回収率60%にて2,000時間連続して運転を行った。その結果、透過水の水質は全溶質濃度が140mg/lと高品質であった。また、運転中は逆浸透膜モジュールにスケール成分の析出は認められず、モジュール内の膜間差圧も一定範囲内に収まった。
【0054】
(比較例1)
前処理として砂ろ過を用いた。処理水のSDI値は4.5であり、処理水濁度は0.02度であった。この処理水を供給水として、圧力9.0MPaにて逆浸透膜モジュールへ供給し、回収率を60%として2,000時間運転を行った他は、実施例1と同様にして造水を行った。
【0055】
その結果、運転開始から1,000時間経過後、逆浸透膜モジュールの造水量が低下したため、圧力7.0MPa、回収率50%に下げて運転を継続した。運転後のモジュールを解体して調べたところ、先頭モジュールの造水量の低下が著しかった。
(実施例2)
逆浸透膜単位面積当たりの平均透過水量を0.5m3/m2・day、先頭エレメントの透過水量を0.8m3/m2・dayにして600時間の運転を行った以外は実施例1と同様にした。この結果、造水量の低下はほとんど起こらず、造水量低下率は0.001%/h以下であった。
(実施例3)
逆浸透膜単位面積当たりの平均透過水量を1.5m3/m2・day、先頭エレメントの透過水量を2.0m3/m2・dayにして600時間の運転を行った以外は実施例1と同様にした。この結果、造水量の低下率は0.05%/hであった。
(実施例4)
逆浸透膜単位面積当たりの平均透過水量を2.0m3/m2・day、先頭エレメントの透過水量を2.6m3/m2・dayにして600時間の運転を行った以外は実施例1と同様にした。この結果、造水量の低下率は0.08%/hであった。
(参考例1)
参考までに塩素添加の効果を示す実験例を示す。
【0056】
耐塩素性膜であるPVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜に温度15℃、平均濁度1.0、TDS濃度35,000mg/Lの実海水を供給し、6日間の濾過を行った。このとき、膜濾過水の残留塩素が1.5mg/Lとなるように、膜供給水に塩素を添加した。
【0057】
この結果、膜の差圧はわずかに上昇する程度であり、6日間で約5kPaの上昇であった。
(参考例2)
膜供給水に塩素を添加しなかった以外は参考例1と同様にして濾過を行った。
【0058】
この結果、膜の差圧が徐々に上昇し、6日間で約15kPa上昇した。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、海水またはかん水を精密ろ過膜または限外ろ過膜にて前処理し、この処理水を逆浸透膜に供給することにより、逆浸透膜を高透過水量、高回収率で安定的に運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係る造水装置を示す概略図である。
【符号の説明】
10:取水タンク
20:取水ポンプ
30:凝集剤添加ポンプ
40:前処理膜モジュール(前処理膜装置)
41:処理水ライン
42:処理水濁度計
50:処理水タンク
60:高圧ポンプ
70:逆浸透膜モジュール(逆浸透膜装置)
71:透過水ライン
72:濃縮水ライン
80:エネルギー回収装置
Claims (9)
- 海水またはかん水を精密ろ過膜または限外ろ過膜にて前処理し、この前処理水を複数個の逆浸透膜エレメントを直列に配置した逆浸透膜モジュールで膜分離する造水方法であって、前処理水を8.0MPa以上の圧力で逆浸透膜の単位面積当たりの平均透過水量が0.5m3/m2・day以上になるように、かつ、最上流側に設けた逆浸透膜エレメントの逆浸透膜の単位面積当たりの透過水量が0.8m3/m2・day以上になるように供給することを特徴とする造水方法。
- 前処理水を12MPa以下の圧力で逆浸透膜の単位面積当たりの平均透過水量が1.0m3/m2・day以下になるように、かつ、最上流側に設けた逆浸透膜エレメントの逆浸透膜の単位面積当たりの透過水量が1.4m3/m2・day以下になるように供給することを特徴とする請求項1に記載の造水方法。
- 逆浸透膜エレメントとしてスパイラル型エレメントを用いることを特徴とすることを特徴とする請求項1または2に記載の造水方法。
- 精密ろ過膜または限外ろ過膜として中空糸膜を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の造水方法。
- 逆浸透膜モジュールにおける回収率を50〜70%の範囲内にすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の造水方法。
- 前処理水のSDI値を4以下にすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の造水方法。
- 前処理水の濁度を0.001度以下にすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の造水方法。
- 海水またはかん水のSDI値に基づいて凝集剤を添加することを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の造水方法。
- 海水またはかん水に塩素を添加して精密ろ過膜または限外ろ過膜にて前処理するとともに、前処理水の残留塩素濃度が少なくとも0.1mg/Lとなるように塩素の添加量を制御することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の造水方法。
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