(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図1(a)及び図1(c)〜(g)は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図であり、図1(b)は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す平面図である。
まず、図1(a)に示すように、例えばC面を主面とする厚さ400μm程度のサファイア基板11の該主面上に、例えば有機金属気相エピタキシャル成長法(MOVPE法)により、例えば窒化ガリウム(GaN)よりなる厚さ2〜3μm程度の第1の半導体層12を形成する。その後、第1の半導体層12の上に、例えばアルミニウムとガリウムとを含む窒化物混晶(Alx Ga1-x N(但し0<x<1))よりなる厚さ25nm程度の第2の半導体層13を形成する。このとき、サファイア基板11と第1の半導体層12との間の格子不整合に起因する残留応力及びそれに伴う残留歪みが存在し、それによって、図1(a)に示すように、サファイア基板11が反る。
続いて、主面上に半導体層12及び13が積層されたサファイア基板11の裏面(前記主面の反対面)側から、例えばNd:YAGレーザの3次高調波を、例えば、照射エネルギー0.3J/cm2 、パルス幅5ns、ビーム径1.00μmの照射条件で照射する。具体的には、本実施形態においては、図1(b)に示すように、サファイア基板11の裏面における周縁部を光照射部11aとする。レーザ光に対してサファイア基板11は透明であるため、サファイア基板11の裏面側から照射したレーザ光は、第1の半導体層(GaN層)12におけるサファイア基板11との界面近傍で吸収されるので、該界面近傍のGaN層12のみが熱分解する。その結果、図1(c)に示すように、光照射部11aと対応するGaN層12の周縁部におけるサファイア基板11との界面近傍に、Gaを主成分とする薄い熱分解層14が形成される。このように熱分解層14を形成することによって、サファイア基板11の周縁部に存在する歪を、基板表面の中心に対してほぼ対称に且つ一様に緩和することができる。
ところで、熱分解層14の融点は一般に低いため、第1の半導体層(GaN層)12及び第2の半導体層(AlGaN層)13を用いた半導体装置の製造工程において、熱分解層14が形成されたままでサファイア基板11を昇温する工程を実施すると、次のような問題が生じる。すなわち、熱分解層14中のGaの蒸発若しくは拡散等に起因する汚染又は該Gaの酸化により、熱分解層14の厚さにむらが生じたり、又はAlGaN層13の表面形状が不均一になる結果、最終的に作製された半導体装置においても面内性能ばらつきが生じてしまう。
そこで、本実施形態においては、レーザ光の照射によって形成された熱分解層14を有するサファイア基板11を例えば塩酸に浸すことによって、図1(d)に示すように、熱分解層14を除去する。このとき、GaN層12については、図1(d)に示すように、レーザ光の未照射部分(熱分解層14の非形成領域)でサファイア基板11と結合された状態が保たれる。
次に、図1(e)に示すように、GaN層12及びAlGaN層13におけるデバイス活性領域として用いられる領域の上に、例えばSiよりなるマスク15を堆積した後、例えば900℃程度の酸素雰囲気中で9時間程度アニ−ルを実施する。これにより、AlGaN層13におけるマスク15によって覆われていない領域が選択的に酸化され、それにより素子分離層16が形成される。ここで、900℃程度という熱分解層14の融点以上の高温においてサファイア基板11を酸素雰囲気中に曝すことができるのは、図1(d)に示す工程で熱分解層14が既に除去されているからである。
次に、図1(f)に示すように、マスク15を除去した後、AlGaN層13の露出部分の上に、例えば、主としてTi層とAl層との積層構造から構成される一対のソース・ドレイン電極17を形成し、その後、例えば600℃程度の水素雰囲気中でアニ−ルを実施することにより、各ソース・ドレイン電極17とAlGaN層13との間においてオーミック・コンタクトを実現する。ここで、図1(d)に示す工程で熱分解層14が除去されているため、600℃程度という熱分解層14の融点以上の高温においてサファイア基板11を処理したとしても、熱分解層14の蒸発又は化学反応等に起因する悪影響を防止することができる。
次に、図1(g)に示すように、AlGaN層13における一対のソース・ドレイン電極17の間の領域の上に、例えばリフトオフ法によってゲート電極18を形成した後、AlGaN層13の残りの露出部分の上に表面パッシベ−ション膜19を形成する。その後、図示は省略しているが、配線工程等を経て半導体装置を完成させる。
以上に説明したように、第1の実施形態によると、サファイア基板11の主面上に形成されたGaN層12に対して、サファイア基板11の裏面(GaN層12が形成された主面の反対面)から光を照射して熱分解層14を形成するため、熱分解層14の弾力性によって基板主面内の残留歪みを緩和することができるので、サファイア基板11の反り等の問題が発生することを防止できる。また、第1の実施形態においては、反り等が生じた場合に一般に変形量が大きい基板周縁部の歪を、光照射(レーザ光照射)の仕方を調節することによって緩和することができる。
また、第1の実施形態によると、GaN層12を部分的に熱分解させて熱分解層14を形成するため、言い換えると、基板裏面の一部分のみに対して光照射を行なって熱分解層14を形成するため、GaN層12(正確にはGaN層12のうちのサファイア基板11との接触領域)における光が照射されない部分には熱分解層14が形成されない。すなわち、熱分解層14の除去後においても、GaN層12における熱分解層14の非形成領域とサファイア基板11との直接的な結合が保たれるので、母材基板であるサファイア基板11に対するGaN層12の完全な固定状態を保つことができ、それによってGaN層12の位置ずれを防止することができる。これにより、後のリソグラフィ工程等における精度の向上を図ることができる。
また、第1の実施形態によると、熱分解層14自体を除去するため、その後に、熱分解層14の融点以上にサファイア基板11を加熱する工程を行なったとしても、熱処理に起因する汚染、変質又は変形を防止することができる。すなわち、熱処理に起因する汚染、変質又は変形を防止しながら、熱分解層14の融点以上にサファイア基板11を昇温させる工程を実施することができる。
尚、第1の実施形態において、基板裏面側から照射する光の種類は、第1の半導体層12を熱分解させることができる光であれば、特に限定されるものではない。
また、第1の実施形態において、第1の半導体層12として、GaN層を用いたが、これに限らず、 III族窒化物層を用いることによって、熱分解層14の形成を確実に行なうことができる。但し、 III族窒化物層以外の半導体層、例えばGaAs層又はSi層等を用いてもよいことは言うまでもない。
また、第1の実施形態において、サファイア基板11を用いたが、これに代えて、SiC基板又はガラス基板等を用いてもよい。
また、第1の実施形態において、熱分解層14のエッチング除去に塩酸を用いたが、これに代えて、他の酸性溶液を用いてもよい。また、熱分解層14を、酸性溶液を用いたエッチング以外の方法によって除去してもよい。
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図2(a)及び図2(c)〜(g)は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図であり、図2(b)は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す平面図である。
まず、図2(a)に示すように、例えばC面を主面とする厚さ400μm程度のサファイア基板21の該主面上に、例えばMOVPE法により、例えばGaNよりなる厚さ2〜3μm程度の第1の半導体層22を形成する。その後、第1の半導体層22の上に、例えばアルミニウムとガリウムとを含む窒化物混晶(Alx Ga1-x N(但し0<x<1))よりなる厚さ25nm程度の第2の半導体層23を形成する。このとき、サファイア基板21と第1の半導体層22との間の格子不整合に起因する残留応力及びそれに伴う残留歪みが存在し、それによって、図1(a)に示すように、サファイア基板21が反る。
続いて、主面上に半導体層22及び23が積層されたサファイア基板21の裏面(前記主面の反対面)側から、例えばNd:YAGレーザの3次高調波を、例えば、照射エネルギー0.3J/cm2 、パルス幅5ns、ビーム径1.00μmの照射条件で照射する。具体的には、本実施形態においては、図2(b)に示すように、サファイア基板21の裏面における中心近傍部を除くほぼ全域を光照射部21aとする。レーザ光に対してサファイア基板21は透明であるため、サファイア基板21の裏面側から照射したレーザ光は、第1の半導体層(GaN層)22におけるサファイア基板21との界面近傍で吸収されるので、該界面近傍のGaN層22のみが熱分解する。その結果、図2(c)に示すように、光照射部21aと対応するGaN層22のほぼ全域(中心近傍部を除く)におけるサファイア基板21との界面近傍に、Gaを主成分とする薄い熱分解層24が形成される。このように熱分解層24を形成することによって、光照射前に存在していたサファイア基板21の残留応力は、該基板の中心近傍部を除く広い範囲に亘って、該基板の中心に対してほぼ対称に且つ一様に緩和される。
ところで、熱分解層24の融点は一般に低いため、第1の半導体層(GaN層)22及び第2の半導体層(AlGaN層)23を用いた半導体装置の製造工程において、熱分解層24が形成されたままでサファイア基板21を昇温する工程を実施すると、次のような問題が生じる。すなわち、熱分解層24中のGaの蒸発若しくは拡散等に起因する汚染又は該Gaの酸化により、熱分解層24の厚さにむらが生じたり、又はAlGaN層23の表面形状が不均一になる結果、最終的に作製された半導体装置においても面内性能ばらつきが生じてしまう。
そこで、本実施形態においては、レーザ光の照射によって形成された熱分解層24を有するサファイア基板21を例えば塩酸に浸すことによって、図2(d)に示すように、熱分解層24を除去する。このとき、GaN層22については、図2(d)に示すように、レーザ光の未照射部分(熱分解層24の非形成領域)つまり中央部でサファイア基板21と結合された状態が保たれる。
次に、図2(e)に示すように、GaN層22及びAlGaN層23におけるデバイス活性領域として用いられる領域の上に、例えばSiよりなるマスク25を堆積した後、例えば900℃程度の酸素雰囲気中で9時間程度アニ−ルを実施する。これにより、AlGaN層23におけるマスク25によって覆われていない領域が選択的に酸化され、それにより素子分離層26が形成される。ここで、900℃程度という熱分解層24の融点以上の高温においてサファイア基板21を酸素雰囲気中に長時間曝すことができるのは、図2(d)に示す工程で熱分解層24が既に除去されているからである。
次に、図2(f)に示すように、マスク25を除去した後、AlGaN層23の露出部分の上に、例えば、主としてTi層とAl層との積層構造から構成される一対のソース・ドレイン電極27を形成し、その後、例えば600℃程度の水素雰囲気中でアニ−ルを実施することにより、各ソース・ドレイン電極27とAlGaN層23との間においてオーミック・コンタクトを実現する。ここで、図2(d)に示す工程で熱分解層24が予め除去されているため、熱分解層24の蒸発又は化学反応等に起因する悪影響を防止しながら、600℃程度という熱分解層24の融点以上の高温においてサファイア基板21を処理することが可能となった。
次に、図2(g)に示すように、AlGaN層23における一対のソース・ドレイン電極27の間の領域の上に、例えばリフトオフ法によってゲート電極28を形成した後、AlGaN層23の残りの露出部分の上に表面パッシベ−ション膜29を形成する。その後、図示は省略しているが、配線工程等を経て半導体装置を完成させる。
以上に説明したように、第2の実施形態によると、サファイア基板21の主面上に形成されたGaN層22に対して、サファイア基板21の裏面(GaN層22が形成された主面の反対面)から光を照射して熱分解層24を形成するため、熱分解層24の弾力性によって基板主面内の残留歪みを緩和することができるので、サファイア基板21の反り等の問題が発生することを防止できる。また、第2の実施形態においては、反り等が生じた場合に変形量が最も小さい基板中心部以外の全ての部分の歪を、光照射(レーザ光照射)の仕方を調節することによって緩和することができる。
また、第2の実施形態によると、GaN層22の中心部以外を熱分解させて熱分解層24を形成するため、言い換えると、基板裏面の中心部以外に対して光照射を行なって熱分解層24を形成するため、GaN層22(正確にはGaN層22のうちのサファイア基板21との接触領域)における光が照射されない中心部分には熱分解層24が形成されない。このため、熱分解層14の除去後においても、GaN層22における熱分解層24の非形成領域とサファイア基板21との直接的な結合が保たれる。言い換えると、熱分解層24の除去後においても、GaN層22をその中心部においてサファイア基板21により支持することが可能となる。従って、母材基板であるサファイア基板21に対するGaN層22の完全な固定状態を保つことができ、それによってGaN層22の位置ずれを防止することができる。これにより、後のリソグラフィ工程等における精度の向上を図ることができる。
また、第2の実施形態によると、熱分解層24自体を除去するため、その後に、熱分解層24の融点以上にサファイア基板21を加熱する工程を行なったとしても、熱処理に起因する汚染、変質又は変形を防止することができる。すなわち、熱処理に起因する汚染、変質又は変形を防止しながら、熱分解層24の融点以上にサファイア基板21を昇温させる工程を実施することができる。
尚、第2の実施形態において、基板裏面側から照射する光の種類は、第1の半導体層22を熱分解させることができる光であれば、特に限定されるものではない。
また、第2の実施形態において、第1の半導体層22として、GaN層を用いたが、これに限らず、 III族窒化物層を用いることによって、熱分解層24の形成を確実に行なうことができる。但し、 III族窒化物層以外の半導体層、例えばGaAs層又はSi層等を用いてもよいことは言うまでもない。
また、第2の実施形態において、サファイア基板21を用いたが、これに代えて、SiC基板又はガラス基板等を用いてもよい。
また、第2の実施形態において、熱分解層24のエッチング除去に塩酸を用いたが、これに代えて、他の酸性溶液を用いてもよい。また、熱分解層24を、酸性溶液を用いたエッチング以外の方法によって除去してもよい。
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図3(a)、(c)及び(d)は、第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図であり、図3(b)は、第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す平面図である。
まず、図3(a)に示すように、例えばC面を主面とする厚さ400μm程度のサファイア基板31の該主面上に、例えばMOVPE法により、例えばGaNよりなる厚さ2〜3μm程度の第1の半導体層32を形成する。その後、第1の半導体層32の上に、例えばアルミニウムとガリウムとを含む窒化物混晶(Alx Ga1-x N(但し0<x<1))よりなる厚さ25nm程度の第2の半導体層33を形成する。このとき、サファイア基板31と第1の半導体層32との間の格子不整合に起因する残留応力及びそれに伴う残留歪みが存在し、それによって、図3(a)に示すように、サファイア基板21が反る。
続いて、主面上に半導体層32及び33が積層されたサファイア基板31の裏面(前記主面の反対面)側から、例えばNd:YAGレーザの3次高調波を、例えば、照射エネルギー0.3J/cm2 、パルス幅5ns、ビーム径1.00μmの照射条件で照射する。具体的には、本実施形態においては、図3(b)に示すように、サファイア基板31の裏面において同心円状パターンを持つ光照射部35を設定する。レーザ光に対してサファイア基板31は透明であるため、サファイア基板31の裏面側から照射したレーザ光は、第1の半導体層(GaN層)32におけるサファイア基板31との界面近傍で吸収されるので、該界面近傍のGaN層32のみが熱分解する。その結果、図3(c)に示すように、GaN層32のうちの光照射部35と対応する部分(基板主面上において同心円状に存在する部分)におけるサファイア基板31との界面近傍に、Gaを主成分とする薄い熱分解層34が形成される。このようにサファイア基板31の主面上において熱分解層34を基板中心に対して対称な形状に形成することによって、光照射前に存在していたサファイア基板31の残留応力は、該基板の全面に亘って、基板中心に対してほぼ対称に且つ一様に緩和される。
ところで、熱分解層34の融点は一般に低いため、第1の半導体層(GaN層)32及び第2の半導体層(AlGaN層)33を用いた半導体装置の製造工程において、熱分解層34が形成されたままでサファイア基板31を昇温する工程を実施すると、次のような問題が生じる。すなわち、熱分解層34中のGaの蒸発若しくは拡散等に起因する汚染又は該Gaの酸化により、熱分解層34の厚さにむらが生じたり、又はAlGaN層33の表面形状が不均一になる結果、最終的に作製された半導体装置においても面内性能ばらつきが生じてしまう。
そこで、本実施形態においては、レーザ光の照射によって形成された熱分解層34を有するサファイア基板31を例えば塩酸に浸すことによって、図3(d)に示すように、熱分解層34を除去する。ここで、図3(c)に示す、光照射部35と対応する同心円状パターンを持つ熱分解層34については、単にサファイア基板31を塩酸に浸すことによっては、熱分解層34のうちの内側の輪帯部分までは塩酸が供給されない結果、該内側の輪帯部分がエッチングによって除去されないという問題が生じる。そこで、本実施形態においては、サファイア基板31の裏面において、同心円状パターンを持つ光照射部35と共に、光照射部35の各輪帯部分同士を接続する光照射部36を設けておく。これによって、GaN層32のうちの光照射部36と対応する部分にも熱分解層34が形成されるため、熱分解層34におけるGaN層32の端部に露出する部分(最も外側の輪帯部分)から、基板中心に向かって熱分解層34が順次除去されていく。その結果、熱分解層34における内側の輪帯部分にも塩酸が供給されるので、該全ての熱分解層34が塩酸によってエッチング除去される。
尚、本実施形態においても、熱分解層34の除去後におけるGaN層32については、図3(d)に示すように、レーザ光の未照射部分(熱分解層34の非形成領域である同心円状部分)でサファイア基板31と結合された状態が保たれる。
その後、図示は省略しているが、図1(e)〜(g)又は図2(e)〜(g)に示す第1又は第2の実施形態と同様の工程を行なうことによって、半導体装置を完成させることが可能となる。
以上に説明したように、第3の実施形態によると、サファイア基板31の主面上に形成されたGaN層32に対して、サファイア基板31の裏面(GaN層32が形成された主面の反対面)から光を照射して熱分解層34を形成するため、熱分解層34の弾力性によって基板主面内の残留歪みを緩和することができるので、サファイア基板31の反り等の問題が発生することを防止できる。すなわち、本実施形態で説明した光照射(レーザ光照射)の仕方によって、基板主面において同心円状に発生する歪を緩和することが可能となる。
また、第3の実施形態によると、GaN層32を部分的に熱分解させて熱分解層34を形成するため、言い換えると、基板裏面に対して部分的に光照射を行なって熱分解層34を形成するため、GaN層32(正確にはGaN層32のうちのサファイア基板31との接触領域)における光が照射されない部分には熱分解層34が形成されない。すなわち、熱分解層34の除去後においても、GaN層32における熱分解層34の非形成領域とサファイア基板31との直接的な結合が保たれるので、母材基板であるサファイア基板31に対するGaN層32の完全な固定状態を保つことができ、それによってGaN層32の位置ずれを防止することができる。これにより、後のリソグラフィ工程等における精度の向上を図ることができる。
また、第3の実施形態によると、熱分解層34自体を除去するため、その後に、熱分解層34の融点以上にサファイア基板31を加熱する工程を行なったとしても、熱処理に起因する汚染、変質又は変形を防止することができる。すなわち、熱処理に起因する汚染、変質又は変形を防止しながら、熱分解層34の融点以上にサファイア基板31を昇温させる工程を実施することができる。
尚、第3の実施形態において、基板裏面側から照射する光の種類は、第1の半導体層32を熱分解させることができる光であれば、特に限定されるものではない。
また、第3の実施形態において、第1の半導体層32として、GaN層を用いたが、これに限らず、 III族窒化物層を用いることによって、熱分解層34の形成を確実に行なうことができる。但し、 III族窒化物層以外の半導体層、例えばGaAs層又はSi層等を用いてもよいことは言うまでもない。
また、第3の実施形態において、サファイア基板31を用いたが、これに代えて、SiC基板又はガラス基板等を用いてもよい。
また、第3の実施形態において、熱分解層34のエッチング除去に塩酸を用いたが、これに代えて、他の酸性溶液を用いてもよい。また、熱分解層34を、酸性溶液を用いたエッチング以外の方法によって除去してもよい。
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図4(a)、(c)及び(d)は、第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図であり、図4(b)は、第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す平面図である。
まず、図4(a)に示すように、例えばC面を主面とする厚さ400μm程度のサファイア基板41の該主面上に、例えばMOVPE法により、例えばGaNよりなる厚さ2〜3μm程度の第1の半導体層42を形成する。その後、第1の半導体層42の上に、例えばアルミニウムとガリウムとを含む窒化物混晶(Alx Ga1-x N(但し0<x<1))よりなる厚さ25nm程度の第2の半導体層43を形成する。このとき、サファイア基板41と第1の半導体層42との間の格子不整合に起因する残留応力及びそれに伴う残留歪みが存在し、それによって、図4(a)に示すように、サファイア基板41が反る。
続いて、主面上に半導体層42及び43が積層されたサファイア基板41の裏面(前記主面の反対面)側から、例えばNd:YAGレーザの3次高調波を、例えば、照射エネルギー0.3J/cm2 、パルス幅5ns、ビーム径1.00μmの照射条件で照射する。具体的には、本実施形態においては、図4(b)に示すように、サファイア基板41の裏面において放射状パターンを持つ光照射部41aを設定する。レーザ光に対してサファイア基板41は透明であるため、サファイア基板41の裏面側から照射したレーザ光は、第1の半導体層(GaN層)42におけるサファイア基板41との界面近傍で吸収されるので、該界面近傍のGaN層42のみが熱分解する。その結果、図4(c)に示すように、GaN層42のうちの光照射部41aと対応する部分(基板主面上において放射状に存在する部分)におけるサファイア基板41との界面近傍に、Gaを主成分とする薄い熱分解層44が形成される。このようにサファイア基板41の主面上において熱分解層44を基板中心に対して対称な形状に形成することによって、光照射前に存在していたサファイア基板41の残留応力は、該基板の全面に亘って、該基板の中心に対してほぼ対称に且つ一様に緩和される。尚、図4(c)は、図4(b)におけるIV−IV線の断面図である。
ところで、熱分解層44の融点は一般に低いため、第1の半導体層(GaN層)42及び第2の半導体層(AlGaN層)43を用いた半導体装置の製造工程において、熱分解層44が形成されたままでサファイア基板41を昇温する工程を実施すると、次のような問題が生じる。すなわち、熱分解層44中のGaの蒸発若しくは拡散等に起因する汚染又は該Gaの酸化により、熱分解層44の厚さにむらが生じたり、又はAlGaN層43の表面形状が不均一になる結果、最終的に作製された半導体装置においても面内性能ばらつきが生じてしまう。
そこで、本実施形態においては、レーザ光の照射によって形成された熱分解層44を有するサファイア基板41を例えば塩酸に浸すことによって、図4(d)に示すように、熱分解層44を除去する。このとき、熱分解層44におけるGaN層42の端部に露出する部分から、基板中心に向かって熱分解層44が順次除去されていく。その結果、熱分解層44における基板中心付近に形成されている部分にも塩酸が供給されるので、全ての熱分解層44が塩酸によってエッチング除去される。
尚、本実施形態においても、熱分解層44の除去後におけるGaN層42については、図4(d)に示すように、レーザ光の未照射部分(熱分解層44の非形成領域である放射状部分)でサファイア基板41と結合された状態が保たれる。
その後、図示は省略しているが、図1(e)〜(g)又は図2(e)〜(g)に示す第1又は第2の実施形態と同様の工程を行なうことによって、半導体装置を完成させることが可能となる。
以上に説明したように、第4の実施形態によると、サファイア基板41の主面上に形成されたGaN層42に対して、サファイア基板41の裏面(GaN層42が形成された主面の反対面)から光を照射して熱分解層44を形成するため、熱分解層44の弾力性によって基板主面内の残留歪みを緩和することができるので、サファイア基板41の反り等の問題が発生することを防止できる。すなわち、本実施形態で説明した光照射(レーザ光照射)の仕方によって、基板主面に存在する歪を基板の中心に対して対称に且つ均一に緩和することが可能となる。
また、第4の実施形態によると、GaN層42を部分的に熱分解させて熱分解層44を形成するため、言い換えると、基板裏面に対して部分的に光照射を行なって熱分解層44を形成するため、GaN層42(正確にはGaN層42のうちのサファイア基板41との接触領域)における光が照射されない部分には熱分解層44が形成されない。すなわち、熱分解層44の除去後においても、GaN層42における熱分解層44の非形成領域とサファイア基板41との直接的な結合が保たれるので、母材基板であるサファイア基板41に対するGaN層42の完全な固定状態を保つことができ、それによってGaN層42の位置ずれを防止することができる。これにより、後のリソグラフィ工程等における精度の向上を図ることができる。
また、第4の実施形態によると、熱分解層44自体を除去するため、その後に、熱分解層44の融点以上にサファイア基板41を加熱する工程を行なったとしても、熱処理に起因する汚染、変質又は変形を防止することができる。すなわち、熱処理に起因する汚染、変質又は変形を防止しながら、熱分解層44の融点以上にサファイア基板41を昇温させる工程を実施することができる。
尚、第4の実施形態において、基板裏面側から照射する光の種類は、第1の半導体層42を熱分解させることができる光であれば、特に限定されるものではない。
また、第4の実施形態において、第1の半導体層42として、GaN層を用いたが、これに限らず、 III族窒化物層を用いることによって、熱分解層44の形成を確実に行なうことができる。但し、 III族窒化物層以外の半導体層、例えばGaAs層又はSi層等を用いてもよいことは言うまでもない。
また、第4の実施形態において、サファイア基板41を用いたが、これに代えて、SiC基板又はガラス基板等を用いてもよい。
また、第4の実施形態において、熱分解層44のエッチング除去に塩酸を用いたが、これに代えて、他の酸性溶液を用いてもよい。また、熱分解層44を、酸性溶液を用いたエッチング以外の方法によって除去してもよい。
(第5の実施形態)
以下、本発明の第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図5(a)、(c)及び(d)は、第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図であり、図5(b)は、第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す平面図である。
まず、図5(a)に示すように、例えばC面を主面とする厚さ400μm程度のサファイア基板51の該主面上に、例えばMOVPE法により、例えばGaNよりなる厚さ2〜3μm程度の第1の半導体層52を形成する。その後、第1の半導体層52の上に、例えばアルミニウムとガリウムとを含む窒化物混晶(Alx Ga1-x N(但し0<x<1))よりなる厚さ25nm程度の第2の半導体層53を形成する。このとき、サファイア基板51と第1の半導体層52との間の格子不整合に起因する残留応力及びそれに伴う残留歪みが存在し、それによって、図5(a)に示すように、サファイア基板51が反る。
続いて、主面上に半導体層52及び53が積層されたサファイア基板51の裏面(前記主面の反対面)側から、例えばNd:YAGレーザの3次高調波を、例えば、照射エネルギー0.3J/cm2 、パルス幅5ns、ビーム径1.00μmの照射条件で照射する。具体的には、本実施形態においては、図5(b)に示すように、サファイア基板51の裏面において、らせん状パターンを持つ光照射部51aを設定する。レーザ光に対してサファイア基板51は透明であるため、サファイア基板51の裏面側から照射したレーザ光は、第1の半導体層(GaN層)52におけるサファイア基板51との界面近傍で吸収されるので、該界面近傍のGaN層52のみが熱分解する。その結果、図5(c)に示すように、GaN層52のうちの光照射部51aと対応する部分(基板主面上においてらせん状に存在する部分)におけるサファイア基板51との界面近傍に、Gaを主成分とする薄い熱分解層54が形成される。このようにサファイア基板51の主面上において熱分解層54を基板中心に対して対称な形状に形成することによって、光照射前に存在していたサファイア基板51の残留応力は、該基板の全面に亘って均等に緩和される。
ところで、熱分解層54の融点は一般に低いため、第1の半導体層(GaN層)52及び第2の半導体層(AlGaN層)53を用いた半導体装置の製造工程において、熱分解層54が形成されたままでサファイア基板51を昇温する工程を実施すると、次のような問題が生じる。すなわち、熱分解層54中のGaの蒸発若しくは拡散等に起因する汚染又は該Gaの酸化により、熱分解層54の厚さにむらが生じたり、又はAlGaN層53の表面形状が不均一になる結果、最終的に作製された半導体装置においても面内性能ばらつきが生じてしまう。
そこで、本実施形態においては、レーザ光の照射によって形成された熱分解層54を有するサファイア基板51を例えば塩酸に浸すことによって、図5(d)に示すように、熱分解層54を除去する。このとき、熱分解層54におけるGaN層52の端部に露出する部分から、基板中心に向かって熱分解層54が順次除去されていく。その結果、熱分解層54における基板中心付近に形成されている部分にも塩酸が供給されるので、全ての熱分解層54が塩酸によってエッチング除去される。
尚、本実施形態においても、熱分解層54の除去後におけるGaN層52については、図5(d)に示すように、レーザ光の未照射部分(熱分解層54の非形成領域である、らせん状部分)でサファイア基板51と結合された状態が保たれる。
その後、図示は省略しているが、図1(e)〜(g)又は図2(e)〜(g)に示す第1又は第2の実施形態と同様の工程を行なうことによって、半導体装置を完成させることが可能となる。
以上に説明したように、第5の実施形態によると、サファイア基板51の主面上に形成されたGaN層52に対して、サファイア基板51の裏面(GaN層52が形成された主面の反対面)から光を照射して熱分解層54を形成するため、熱分解層54の弾力性によって基板主面内の残留歪みを緩和することができるので、サファイア基板51の反り等の問題が発生することを防止できる。すなわち、本実施形態で説明した光照射(レーザ光照射)の仕方によって、基板主面内に存在する残留応力を基板中心に対してほぼ対称に且つほぼ均一に緩和することが可能となる。
また、第5の実施形態によると、GaN層52を部分的に熱分解させて熱分解層54を形成するため、言い換えると、基板裏面に対して部分的に光照射を行なって熱分解層54を形成するため、GaN層52(正確にはGaN層52のうちのサファイア基板51との接触領域)における光が照射されない部分には熱分解層54が形成されない。すなわち、熱分解層54の除去後においても、GaN層52における熱分解層54の非形成領域とサファイア基板51との直接的な結合が保たれるので、母材基板であるサファイア基板51に対するGaN層52の完全な固定状態を保つことができ、それによってGaN層52の位置ずれを防止することができる。これにより、後のリソグラフィ工程等における精度の向上を図ることができる。
また、第5の実施形態によると、熱分解層54自体を除去するため、その後に、熱分解層54の融点以上にサファイア基板51を加熱する工程を行なったとしても、熱処理に起因する汚染、変質又は変形を防止することができる。すなわち、熱処理に起因する汚染、変質又は変形を防止しながら、熱分解層54の融点以上にサファイア基板51を昇温させる工程を実施することができる。
尚、第5の実施形態において、基板裏面側から照射する光の種類は、第1の半導体層52を熱分解させることができる光であれば、特に限定されるものではない。
また、第5の実施形態において、第1の半導体層52として、GaN層を用いたが、これに限らず、 III族窒化物層を用いることによって、熱分解層54の形成を確実に行なうことができる。但し、 III族窒化物層以外の半導体層、例えばGaAs層又はSi層等を用いてもよいことは言うまでもない。
また、第5の実施形態において、サファイア基板51を用いたが、これに代えて、SiC基板又はガラス基板等を用いてもよい。
また、第5の実施形態において、熱分解層54のエッチング除去に塩酸を用いたが、これに代えて、他の酸性溶液を用いてもよい。また、熱分解層54を、酸性溶液を用いたエッチング以外の方法によって除去してもよい。
(第6の実施形態)
以下、本発明の第6の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図6(a)及び図6(c)〜(e)は、第6の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図であり、図6(b)は、第6の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す平面図である。
まず、図6(a)に示すように、例えばC面を主面とする厚さ400μm程度のサファイア基板61の該主面上に、例えばMOVPE法により、例えばGaNよりなる厚さ2〜3μm程度の第1の半導体層62を形成する。その後、第1の半導体層62の上に、例えばアルミニウムとガリウムとを含む窒化物混晶(Alx Ga1-x N(但し0<x<1))よりなる厚さ25nm程度の第2の半導体層63を形成する。このとき、サファイア基板61と第1の半導体層62との間の格子不整合に起因する残留応力及びそれに伴う残留歪みが存在し、それによって、図6(a)に示すように、サファイア基板61が反る。
続いて、主面上に半導体層62及び63が積層されたサファイア基板61の裏面(前記主面の反対面)側から、例えばNd:YAGレーザの3次高調波を、例えば、照射エネルギー0.3J/cm2 、パルス幅5ns、ビーム径1.00μmの照射条件で照射する。具体的には、本実施形態においては、図6(b)に示すように、サファイア基板61の裏面において、サファイア基板61からチップを取り出すための分割ライン(図6(d)の一点鎖線参照)に沿ったパターンを持つ光照射部65を設定する。すなわち、本実施形態においては、光照射部65によって区画された領域(つまり光非照射部)がチップ形成領域66となる。レーザ光に対してサファイア基板61は透明であるため、サファイア基板61の裏面側から照射したレーザ光は、第1の半導体層(GaN層)62におけるサファイア基板61との界面近傍で吸収されるので、該界面近傍のGaN層62のみが熱分解する。その結果、図6(c)に示すように、GaN層62のうちの光照射部65と対応する部分(基板主面上において分割ラインに沿って存在する部分)におけるサファイア基板61との界面近傍に、Gaを主成分とする薄い熱分解層64が形成される。すなわち、サファイア基板61の分割ラインに沿ってライン状の熱分解層64が形成される。尚、本実施形態の熱分解層64は、基板(ウェハ)全体のサイズに比べて十分に小さいサイズでウェハ全面に亘って形成されるので、光照射前に存在していたウェハ面内の残留応力は該面内において一様に緩和される。
ところで、熱分解層64の融点は一般に低いため、第1の半導体層(GaN層)62及び第2の半導体層(AlGaN層)63を用いた半導体装置の製造工程において、熱分解層64が形成されたままでサファイア基板61を昇温する工程を実施すると、次のような問題が生じる。すなわち、熱分解層64中のGaの蒸発若しくは拡散等に起因する汚染又は該Gaの酸化により、熱分解層64の厚さにむらが生じたり、又はAlGaN層63の表面形状が不均一になる結果、最終的に作製された半導体装置においても面内性能ばらつきが生じてしまう。
そこで、本実施形態においては、レーザ光の照射によって形成された熱分解層64を有するサファイア基板61を例えば塩酸に浸すことによって、図6(d)に示すように、熱分解層64を除去する。このとき、熱分解層64におけるGaN層62の端部に露出する部分から、基板中心に向かって熱分解層64が順次除去されていく。その結果、熱分解層64における基板中心付近に形成されている部分にも塩酸が供給されるので、全ての熱分解層64が塩酸によってエッチング除去される。
尚、本実施形態においても、熱分解層64の除去後におけるGaN層62については、図6(d)に示すように、レーザ光の未照射部分(熱分解層64の非形成領域)でサファイア基板61と結合された状態が保たれる。
その後、図示は省略しているが、図1(e)〜(g)又は図2(e)〜(g)に示す第1又は第2の実施形態と同様の工程を行なうことによって、各チップ形成領域66(図6(b)参照)に、GaN層62及びAlGaN層63を活性層として用いた半導体素子を形成していく。
続いて、図6(d)に示す半導体装置の製造後、図6(e)に示すように、サファイア基板61の分割ラインに沿ってサファイア基板61に対してダイシングを行なう。すなわち、ライン状に形成された熱分解層64が除去された領域に沿ってサファイア基板61を分割する。このとき、熱分解層64が除去された領域の上側のGaN層62(以下、上部GaN層62と称する)、及びAlGaN層63は非常に薄いので、容易に切断することができる。また、チップ形成領域66のGaN層62及びAlGaN層63に何らの損傷を与えることなく、サファイア基板61を切断して、個片の半導体素子を取り出すことができる。
以上に説明したように、第6の実施形態によると、サファイア基板61の主面上に形成されたGaN層62に対して、サファイア基板61の裏面(GaN層62が形成された主面の反対面)から光を照射して熱分解層64を形成するため、熱分解層64の弾力性によって基板主面内の残留歪みを緩和することができるので、サファイア基板61の反り等の問題が発生することを防止できる。
また、第6の実施形態によると、GaN層62を部分的に熱分解させて熱分解層64を形成するため、言い換えると、基板裏面に対して部分的に光照射を行なって熱分解層64を形成するため、GaN層62(正確にはGaN層62のうちのサファイア基板61との接触領域)における光が照射されない部分には熱分解層64が形成されない。すなわち、熱分解層64の除去後においても、GaN層62における熱分解層64の非形成領域とサファイア基板61との直接的な結合が保たれるので、母材基板であるサファイア基板61に対するGaN層62の完全な固定状態を保つことができ、それによってGaN層62の位置ずれを防止することができる。これにより、後の半導体素子形成のためのリソグラフィ工程等における精度の向上を図ることができる。
また、第6の実施形態によると、熱分解層64自体を除去するため、その後に、熱分解層64の融点以上にサファイア基板61を加熱する工程を行なったとしても、熱処理に起因する汚染、変質又は変形を防止することができる。すなわち、熱処理に起因する汚染、変質又は変形を防止しながら、熱分解層64の融点以上にサファイア基板61を昇温させる工程を実施することができる。
また、第6の実施形態によると、サファイア基板61の分割ラインに沿ってGaN層62に光を照射することにより、熱分解層64をライン状に形成した後、該熱分解層64を除去し、その後、分割ラインに沿って、つまり熱分解層64が除去されたライン状の領域に沿ってサファイア基板61を分割する。これにより、サファイア基板61上に形成された複数の半導体素子が個片化される。すなわち、第6の実施形態によると、熱分解層64を用いて、サファイア基板61の表面内における残留歪みを緩和しながら各半導体素子を形成できると共に、熱分解層64が除去されたライン状の領域を分割ラインとしてサファイア基板61のダイシングを行なうことにより、各半導体素子が作り込まれたチップ形成領域66に損傷を与えることなく各半導体素子をチップとして切り出すことができる。
尚、第6の実施形態において、基板裏面側から照射する光の種類は、第1の半導体層62を熱分解させることができる光であれば、特に限定されるものではない。
また、第6の実施形態において、第1の半導体層62として、GaN層を用いたが、これに限らず、 III族窒化物層を用いることによって、熱分解層64の形成を確実に行なうことができる。但し、 III族窒化物層以外の半導体層、例えばGaAs層又はSi層等を用いてもよいことは言うまでもない。
また、第6の実施形態において、サファイア基板61を用いたが、これに代えて、SiC基板又はガラス基板等を用いてもよい。
また、第6の実施形態において、熱分解層64のエッチング除去に塩酸を用いたが、これに代えて、他の酸性溶液を用いてもよい。また、熱分解層64を、酸性溶液を用いたエッチング以外の方法によって除去してもよい。
また、第6の実施形態において、サファイア基板61のダイシングを行なう前に、サファイア基板61の厚さを70μm程度まで薄くしてもよい。
(第7の実施形態)
以下、本発明の第7の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図7(a)及び図7(c)〜(e)は、第7の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図であり、図7(b)は、第7の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す平面図である。
まず、図7(a)に示すように、例えばC面を主面とする厚さ400μm程度のサファイア基板71の該主面上に、例えばMOVPE法により、例えばGaNよりなる厚さ2〜3μm程度の第1の半導体層72を形成する。その後、第1の半導体層72の上に、例えばアルミニウムとガリウムとを含む窒化物混晶(Alx Ga1-x N(但し0<x<1))よりなる厚さ25nm程度の第2の半導体層73を形成する。このとき、サファイア基板71と第1の半導体層72との間の格子不整合に起因する残留応力及びそれに伴う残留歪みが存在し、それによって、図7(a)に示すように、サファイア基板71が反る。
続いて、主面上に半導体層72及び73が積層されたサファイア基板71の裏面(前記主面の反対面)側から、例えばNd:YAGレーザの3次高調波を、例えば、照射エネルギー0.3J/cm2 、パルス幅5ns、ビーム径1.00μmの照射条件で照射する。具体的には、本実施形態においては、図7(b)に示すように、サファイア基板71の裏面において、チップ形成領域と対応するパターンを持つ光照射部76を設定する。言い換えると、本実施形態においては、光照射部76を区画する領域(つまり光非照射部)75が、サファイア基板71からチップを取り出すための分割ライン(図7(d)の一点鎖線参照)に沿って存在する。レーザ光に対してサファイア基板71は透明であるため、サファイア基板71の裏面側から照射したレーザ光は、第1の半導体層(GaN層)72におけるサファイア基板71との界面近傍で吸収されるので、該界面近傍のGaN層72のみが熱分解する。その結果、図7(c)に示すように、GaN層72のうちの光照射部76と対応する部分(基板主面上のチップ形成領域に存在する部分)におけるサファイア基板71との界面近傍に、Gaを主成分とする薄い熱分解層74が形成される。すなわち、サファイア基板71の分割ラインに囲まれるように熱分解層74が形成される。尚、本実施形態の熱分解層74は、基板(ウェハ)全体のサイズに比べて十分に小さいサイズでウェハ全面に亘って形成されるので、光照射前に存在していたウェハ面内の残留応力は該面内において一様に緩和される。
ところで、熱分解層74の融点は一般に低いため、第1の半導体層(GaN層)72及び第2の半導体層(AlGaN層)73を用いた半導体装置の製造工程において、熱分解層74が形成されたままでサファイア基板71を昇温する工程を実施すると、次のような問題が生じる。すなわち、熱分解層74中のGaの蒸発若しくは拡散等に起因する汚染又は該Gaの酸化により、熱分解層74の厚さにむらが生じたり、又はAlGaN層73の表面形状が不均一になる結果、最終的に作製された半導体装置においても面内性能ばらつきが生じてしまう。
そこで、本実施形態においては、レーザ光の照射によって形成された熱分解層74を有するサファイア基板71を例えば塩酸に浸すことによって、図7(d)に示すように、熱分解層74を除去する。このとき、熱分解層74におけるGaN層72の端部に露出する部分から、基板中心に向かって熱分解層74を順次除去するために、図7(c)に示す熱分解層74の形成時に、各チップ形成領域と対応する熱分解層74同士を接続し且つ熱分解層となるブリッジパターンを設けておくことが好ましい。すなわち、予め、図7(b)に示す光照射部76の設定時に、各チップ形成領域と対応する光照射部76同士を接続し且つ光照射部となるブリッジパターンを設けておくことが好ましい。このようにすると、熱分解層74における基板中心付近に形成されている部分にも塩酸が供給されるので、全ての熱分解層74が塩酸によってエッチング除去される。
尚、本実施形態においても、熱分解層74の除去後におけるGaN層72については、図7(d)に示すように、レーザ光の未照射部分(熱分解層74の非形成領域)でサファイア基板71と結合された状態が保たれる。
その後、図示は省略しているが、図1(e)〜(g)又は図2(e)〜(g)に示す第1又は第2の実施形態と同様の工程を行なうことによって、各チップ形成領域(図6(b)の光照射部76と対応する領域)に、GaN層72及びAlGaN層73を活性層として用いた半導体素子を形成していく。
続いて、図7(d)に示す半導体装置の製造後、図7(e)に示すように、サファイア基板71の分割ラインに沿ってサファイア基板71に対してダイシングを行なう。すなわち、該分割ラインと対応するライン状の光非照射部75(図7(b)参照)に沿ってサファイア基板71を分割する。このようにすると、熱分解層74が除去された領域の上側のGaN層72(以下、上部GaN層72と称する)、及びAlGaN層73を活性層とする各半導体素子を、他の基板に貼り合わせ可能な薄膜状態でサファイア基板71から切り出すことができる。
以上に説明したように、第7の実施形態によると、サファイア基板71の主面上に形成されたGaN層72に対して、サファイア基板71の裏面(GaN層72が形成された主面の反対面)から光を照射して熱分解層74を形成するため、熱分解層74の弾力性によって基板主面内の残留歪みを緩和することができるので、サファイア基板71の反り等の問題が発生することを防止できる。
また、第7の実施形態によると、GaN層72を部分的に熱分解させて熱分解層74を形成するため、言い換えると、基板裏面に対して部分的に光照射を行なって熱分解層74を形成するため、GaN層72(正確にはGaN層72のうちのサファイア基板71との接触領域)における光が照射されない部分には熱分解層74が形成されない。すなわち、熱分解層74の除去後においても、GaN層72における熱分解層74の非形成領域とサファイア基板71との直接的な結合が保たれるので、母材基板であるサファイア基板71に対するGaN層72の完全な固定状態を保つことができ、それによってGaN層72の位置ずれを防止することができる。これにより、後の半導体素子形成のためのリソグラフィ工程等における精度の向上を図ることができる。
また、第7の実施形態によると、熱分解層74自体を除去するため、その後に、熱分解層74の融点以上にサファイア基板71を加熱する工程を行なったとしても、熱処理に起因する汚染、変質又は変形を防止することができる。すなわち、熱処理に起因する汚染、変質又は変形を防止しながら、熱分解層74の融点以上にサファイア基板71を昇温させる工程を実施することができる。
また、第7の実施形態によると、サファイア基板71の分割ラインに沿って光非照射部75がライン状に存在するようにGaN層72に光を照射することにより、熱分解層74を形成した後、該熱分解層74を除去し、その後、分割ラインに沿って、つまりライン状に存在する光非照射部75に沿ってサファイア基板71を分割する。これにより、サファイア基板71から複数の半導体素子を分離し且つ各半導体素子を個片化することができる。すなわち、第7の実施形態によると、熱分解層74を用いて、サファイア基板71の表面内における残留歪みを緩和しながら各半導体素子を形成できると共に、サファイア基板71基板から各半導体素子を、他の基板に貼り合わせ可能な薄膜状態で切り出すことができる。
尚、第7の実施形態において、基板裏面側から照射する光の種類は、第1の半導体層72を熱分解させることができる光であれば、特に限定されるものではない。
また、第7の実施形態において、第1の半導体層72として、GaN層を用いたが、これに限らず、 III族窒化物層を用いることによって、熱分解層74の形成を確実に行なうことができる。但し、 III族窒化物層以外の半導体層、例えばGaAs層又はSi層等を用いてもよいことは言うまでもない。
また、第7の実施形態において、サファイア基板71を用いたが、これに代えて、SiC基板又はガラス基板等を用いてもよい。
また、第7の実施形態において、熱分解層74のエッチング除去に塩酸を用いたが、これに代えて、他の酸性溶液を用いてもよい。また、熱分解層74を、酸性溶液を用いたエッチング以外の方法によって除去してもよい。
また、第7の実施形態において、サファイア基板71のダイシングを行なう前に、サファイア基板71の厚さを70μm程度まで薄くしてもよい。