JP2005030293A - 内燃機関の制御装置及び内燃機関のノッキング抑制方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】超高圧燃料を用いて圧縮行程で燃料噴射を行うエンジン1は、燃焼室2内に噴射される燃料噴霧に乱れを生じさせ、且つ、燃料噴射時期の調整を通じてその乱れが減衰するタイミングを調整する。これにより、燃料噴霧が適度に乱れた状態にあるタイミングで点火を行い、ノック感度を最小化する。このノック感度の最小化に伴い、実際の点火時期を、発生トルクの最大値に対応する点火時期に近づけることが可能になる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の運転状態を制御する装置に関し、特に、ノッキングの発生を抑制するための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にガソリンエンジン(以下、単にエンジンという)では、圧縮比が高くなるほど発生するトルク(出力)も高くなる。しかし、圧縮比が高くなるほどノッキングが発生しやすくなる傾向がある。ノッキングは、点火プラグを起点として伝播する火炎が末端部分に到達する前に、末端部分の未燃ガスが自己着火することによって起きる。
【0003】
このような問題に対し、例えば特許文献1に記載された装置は、燃焼室内に供給された燃料(燃料及び空気の混合気)に点火する際、燃焼室内に高圧の空気を噴射し、点火直前又は点火直後の混合気に乱れを生じさせる。このようにして、点火直前又は点火直後の混合気に乱れを生じさせることにより、燃焼過程にある混合気の界面が乱れ、火炎の伝播速度が速くなる。この結果、ノッキングの発生が抑制される。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−20745号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1の装置は、高圧の空気を燃焼室内に噴射するために、特殊な装置構成の付加を必要とする。また、高圧の空気の噴射タイミングを極めて緻密に制御する必要がある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、機関出力を高めつつ、ノッキングの発生を効果的に抑制することのできる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、
(1)本発明は、内燃機関の圧縮行程において当該機関の燃焼室に燃料を直接噴射し、その噴射された燃料に点火して当該機関を運転する内燃機関の制御装置において、前記噴射燃料の高圧化に伴って増大する燃料噴霧の乱れにより、ノッキングを抑制することを要旨とする。
同構成によれば、内燃機関の圧縮行程において、噴射燃料を高圧化して燃焼室内に直接噴射することにより、噴射される燃料の噴霧の表面が荒れる(燃料噴霧に乱れが発生する)。この結果、燃料噴霧に沿って拡がる火炎の伝播速度が実質的に高まり、ノッキングの発生が抑制される。
なお、「噴射燃料の高圧化に伴って増大する燃料噴霧の乱れにより、ノッキングを抑制する」とは、噴射燃料の高圧化する制御を行うという意味ではなく、噴射される燃料が高圧になるほど増大する燃料噴霧の乱れを利用することを意味する。例えば、ある程度以上の圧力の燃料を噴射して、燃焼室内のガスに十分高い乱れ強度を発生させれば、本発明特有のノッキング抑制の作用が生じる。ただし当然、十分に高い乱れ強度を発生させるために噴射燃料を高圧化する制御を行ってもよい。
【0008】
(2)他の発明は、内燃機関の燃焼室に燃料の噴霧を形成した後、当該機関の圧縮行程において前記燃焼室内への燃料の直接噴射と前期燃焼室内のガスの点火とを行い、当該機関を運転する内燃機関の制御装置であって、前記噴射燃料の高圧化に伴って増大する燃料噴霧の乱れにより、ノッキングを抑制することを要旨とする。
同構成によっても、内燃機関の圧縮行程において、噴射燃料を高圧化して燃焼室内に直接噴射することにより、噴射された燃料と周囲の空気との衝突により乱れが発生する。この結果、火炎の伝播速度が実質的に高まり、ノッキングの発生が抑制される。
【0009】
(3)内燃機関の円筒形燃焼室の天井面に設けられ該燃焼室内に供給される燃料の点火を行う点火手段と、二方向に向けて噴射された燃料の噴霧が前記燃焼室の内周壁に沿って互いに逆方向に進行して対面した後、前記点火手段に向かうように燃料を二方向に向けて前記燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射手段と、を備えるのが好ましい。
同構成によれば、二方向に噴射された燃料の噴霧が周辺の空気を巻き込みながら噴流となり、燃焼室の内壁面に沿って互いに逆方向に進行した後、対面し(ぶつかり合い)、燃焼室の天井面に沿って点火手段に向かう。燃焼室内のガスが圧縮されるほど、この噴流が燃焼室内のガスに大きな乱れを生じさせる。この乱れの発生により、燃料の点火後、火炎の伝播速度が実質的に高まることで、ノッキングの原因となる末端ガスの自着火が起きる前に、火炎を燃焼室全体に行き渡らせることが容易となる。
【0010】
(4)なお、前記点火手段は、例えば当該機関の円筒形燃焼室の天井面の略中央に設けられる。
【0011】
(5)また、内燃機関の円筒形燃焼室の内周壁及び排気ポートの近傍に設けられ前記燃焼室内に供給される燃料の点火を行う点火手段と、前記燃焼室の内周壁及び吸気ポートの近傍に設けられ前記燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射手段と、を備えるようにしてもよい。
同構成によれば、点火手段を起点として伝播する火炎が、液滴の微粒子化が進み、且つ、乱れ強度の高い燃料噴霧にぶつかることなる。従って、燃焼室内のガスの燃焼が極めて効率的に進み、ノッキングの発生が効果的に抑制される。
【0012】
(6)また、前記噴射燃料を100MPa以上とするのが好ましい。同構成によれば、燃料噴霧に、火炎伝播速度に影響を与える(ひいてはノッキングの発生を抑制する)ために十分大きな乱れが効果的に発生する。
【0013】
(7)前記燃焼室の内壁に設けられ前記噴射される燃料の噴霧に接触する突起を備えるのが好ましい。
同構成によれば、燃焼室内に噴射される燃料の噴霧が突起に接触することにより、燃料噴霧を形成する液滴の微粒子化が促進される。この結果、燃料噴霧の表面に生じる乱れが減衰し難くなる。
【0014】
(8)さらに他の発明は、圧縮行程において燃焼室に直接噴射された燃料が着火することによって機関トルクを発生する内燃機関のノッキングを抑制する方法であって、前記噴射燃料の高圧化に伴って増大する燃料噴霧の乱れにより、当該機関のノッキングを抑制することを要旨とする。
【0015】
(9)なお、このようなノッキン抑制方法において、前記燃料の噴射時期を制御することによって、前記点火を行う時期における前記噴射燃料を高圧化に伴って増大する燃料噴霧の乱れを制御する工程を含むのが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態について説明する。
【0017】
〔エンジンの基本構造及び機能〕
図1(a)は、第1の実施の形態にかかる内燃機関の主要部の概略構成を示す側断面図である。同図1(a)に示すように、エンジン1は、吸入行程、圧縮行程、爆発行程(膨張行程)及び排気行程の4サイクルを繰り返して出力を得る内燃機関である。エンジン1は、その内部に円筒形の燃焼室(シリンダ)2を形成する。燃焼室2で発生する燃料(ガソリン)の爆発力は、ピストン3及びコンロッド4を介してクランクシャフト(図示略)の回転力に変換される。また、燃焼室2には、吸気通路5の最下流部をなす吸気ポート5Aと、排気通路6の最上流部をなす排気ポート6Aとが設けられている。吸気ポート5Aと燃焼室2との境界は吸気弁5Bによって開閉される。また、排気ポート6Aと燃焼室2との境界は排気弁6Bによって開閉される。
【0018】
エンジン1は、燃料タンク(図示略)に備蓄された燃料を、少なくとも100MPa以上の超高圧にまで加圧することができる高圧ポンプ(図示略)、高圧ポンプによって加圧された燃料を、超高圧のまま保持する蓄圧室(図示略)等を備える。また、エンジン1は、燃焼室2内に臨む二つの噴口を有する燃料噴射弁10を備える。燃料噴射弁10は、燃焼室2の天井面2bにおける側内壁2aの近傍であって、且つ、吸気ポート5Aの近傍に設けられている。燃料噴射弁10は、蓄圧室に保持された超高圧の燃料を、適宜の量、適宜のタイミングで燃焼室2内に噴射供給する電磁駆動式開閉弁である。燃焼室2内の矢印は、燃料噴射弁10を通じて噴射される燃料の噴霧の進行路を示す(他の図においても同様)。燃料噴射弁10の二つの噴口は、相互に異なる方向に向けられており、燃料噴射弁10の二つの噴口から二方向に向けて噴射された燃料の噴霧は、燃焼室2の窪み3a内を内周壁2aに沿って互いに逆方向に進行する。また、燃焼室2の底面をなすピストン3の頂面には、窪み3aが設けられている。窪み3aは、二方向に向けて噴射された燃料噴霧の進行方向を案内する機能と、燃料噴霧が燃焼室2の内周壁2aに接触し難くすることでボアフラッシングを防止する機能とを有する。
【0019】
また、エンジン1は、燃焼室2の天井面2bのほぼ中央に点火プラグ20を備える。点火プラグ20は、適宜のタイミングで通電され燃焼室2内に電気火花を発生することにより、燃焼室2内の燃料に点火する。
【0020】
エンジン1は、運転者によるアクセルペダル(図示略)の踏込量に応じた信号を出力するアクセルポジションセンサ(図示略)、クランクシャフト(図示略)の回転速度(エンジン回転数)を出力する回転速度センサ、エンジン1内を循環する冷却水の温度(冷却水温)に応じた信号を出力する温度センサ、吸気通路5を通じて燃焼室2に導入される空気の流量(吸入空気量)に応じた信号を出力するエアフロメータ等、各種センサを備える。各種センサの信号は、電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)30に入力される。
【0021】
ECU30は、CPU、RAM、ROM等からなる論理演算回路を備え、各種センサの信号に基づいてエンジン1の各種構成要素を統括制御する。例えば、ECU30は、各種センサの信号に基づいて燃料噴射弁10の操作(燃料噴射制御)を行うことにより、適宜の量の燃料を適宜のタイミングで燃焼室2に供給するとともに、適宜のタイミングで点火プラグ20への通電(点火時期制御)を行うことにより、エンジン1の出力を制御する。なお、ECU30によって実行される燃料噴射制御及び点火時期制御を総称して運転制御という。
【0022】
図1(b)は、図1(a)のIB−IB断面を示す上視図であって、とくに燃料噴射弁10から噴射された燃料噴霧の動きを示す図である。同図1(b)において矢印で示すように、燃料噴射弁10の二つの噴口から二方向に向けて噴射される燃料の噴霧は、ピストン3頂面の窪み3a内を内周壁2aに沿って互いに逆方向に進行した後、対面し(ぶつかり合い)、燃焼室2の天井面に沿って点火プラグ20に向かう。なお、本実施の形態では、燃料噴射弁10を用いて二方向の噴霧を形成する例を示したが、このような燃料噴射弁10に代え、スリット状の噴孔を備え、扁平とされた噴霧を形成可能な燃料噴射弁を採用してもよい。
【0023】
〔燃料噴霧の表面の乱れによるノッキング抑制の効果〕
(1)ノッキングと点火時期との関係
ガソリンエンジンは、基本的には以下の燃焼過程に従い出力を発生する。
【0024】
先ず、燃焼室又は吸気ポートに設けられた燃料噴射弁を通じて、燃焼室内に燃料が噴射され、その噴霧が燃焼室内で拡散し、燃料及び空気の混合気を形成する。次に、燃焼室内に設けられた点火プラグが電気火花を発することにより、燃焼室内の混合気が着火し、燃焼する。混合気の燃焼によって燃焼室内の圧力が爆発的に増大し、ピストンを押す力、すなわち機関出力が発生する。
【0025】
図2は、ガソリンエンジンにおける点火時期(点火プラグが電気火花を発する時期)と当該エンジンの発生するトルク(以下、発生トルクという)との一般的な関係を例示するグラフである。同図2に示すように、ガソリンエンジンでは、発生トルクを最大とする点火時期、いわゆるMBT(Maximum Spark Advance for Best Torque)が存在する。図2では、クランク角にして所定の時期(A)に点火を行うことで、発生トルクを最大にできる。一方、通常のエンジンでは、ノッキングが発生する点火時期は、所定値MBTよりも遅角側に存在する。このように、ノッキングが発生する点火時期(B)がMBTよりも遅角側にあるため、ノッキング発生点でエンジンを運転せざるを得ず、MBTまで点火時期を進めることができない。なお、エンジンの圧縮比が高いほど、点火時期MBTは遅角側に移行する傾向がある。点火時期MBTは、機関回転数や機関負荷等によって異なる。ここで、発生トルクを最大にする点火時期(MBT)と、ノッキングが発生する点火時期との差(絶対値)をノック感度ΔSAと定義する。ノック感度ΔSAが小さいほど、ノッキング発生点火時期(B)をMBTに近づけることができ、発生トルクを増大させることができる。
【0026】
(2)超高圧燃料の噴射によるノック感度の縮小
図3は、100MPaの超高圧燃料を燃焼室内に直接噴射するガソリンエンジンにおいて、点火時期と発生トルクとの関係を示すグラフであって、とくに燃料噴射時期(燃料噴射弁から燃料が噴射される時期)が異なる3つの条件に対応するノック感度を、相互に比較したものである。同図3に示すように、点火時期と発生トルクとの関係は、燃料噴射時期を変更してもほとんど変わらない。しかし、燃料噴射時期60°BTDCに対応するノック感度ΔSA1、燃料噴射時期80°BTDCに対応するノック感度ΔSA2、及び燃料噴射時期180°BTDCに対応するノック感度ΔSA3を相互に比較して明らかなように、燃料噴射時期が遅角するほど、ノック感度ΔSAが小さくなる。つまり、燃焼室内に直接燃料を噴射するガソリンエンジンにおいて、燃料噴射時期を遅角させてノック感度ΔSAを小さくすれば、ノッキング発生点火時期を進ませてMBTに近づけることができ、発生トルクを増大させることが可能になる。
【0027】
(3)噴射時期と乱れ強度の推移との関係
超高圧燃料による燃料噴射を行う場合、燃料噴射時期の変更に伴ってノック感度ΔSAが変化する理由について、以下に説明する。
【0028】
図4は、燃焼室内に燃料を直接噴射するガソリンエンジンにおいて、クランク角(時間)の変化に伴う燃焼室内のガスの乱れ強度の推移を示すタイムチャートである。吸気行程において、燃料噴射時期を240°BTDC、燃料の圧力(燃圧)を12MPaとする条件で燃料噴射を行った場合、燃焼室内において乱れ強度はほとんど変化しない(破線)。また、燃料の圧力(燃圧)を12MPaとする条件では、燃料噴射時期を60°BTDCとしても、燃料噴射に伴い乱れ強度は僅かに増大した後、速やかに燃料噴射前のレベルに戻る(破線線)。
【0029】
一方、同図4に示すように、圧縮行程において、燃料噴射時期を60°BTDC、燃料の圧力(燃圧)を100MPaとする条件で燃料噴射を行った場合、燃料噴射に伴って乱れ強度が増大する。乱れ強度は、一旦増大して最大値に達した後、減衰するが、クランク角が0°BTDC近傍(点火時期)に達した時点でも、比較的高いレベルに保持される(実線)。しかし、燃料の圧力(燃圧)を100MPaとする条件で、燃料噴射時期を80°BTDCにまで進角すると、乱れ強度がより早く最大値に達し、その分、より早い時期に減衰する。この結果、クランク角が0°BTDC近傍(点火時期)に達した時点での乱れ強度は、噴射時期を60°BTDCとする場合よりも小さくなる。さらに、燃料噴射時期を180°BTDCにまで進角した場合、クランク角が0°BTDC近傍(点火時期)に達した時点での乱れ強度は、燃料噴射前とほとんど変わらなくなる(二点鎖線)。
【0030】
このように、圧縮行程において、燃料の圧力(燃圧)を100MPaとする条件で燃料噴射を行った場合、燃焼室内のガス(燃料噴霧の表面)に乱れが生じる(ガスの乱れ強度が高まる)。そして、この乱れが残っている間に点火を行えば、点火プラグを起点とし燃料噴霧に沿って拡がる火炎の伝播速度が実質的に速くなり、ノッキングの発生が抑制される(ノック感度ΔSAが小さくなる)と考えられる(図3及び図4を併せ参照)。
【0031】
図5は、エンジン1について、燃料噴射時期の変更に対応する発生トルク(点火時期を最適点火時期に設定した場合の発生トルク)の変化を示すグラフである。同図5に示すように、圧縮行程に燃料噴射を行うことで、吸気行程に燃料噴射を行う場合よりも、発生トルクが高まる。また、圧縮行程において、燃料噴射時期を60°BTDC近傍とすることにより、最も大きな発生トルクを確保することができる。つまり、超高圧燃料を用いて圧縮行程で燃料噴射を行うことで、燃焼室2内に噴射される燃料噴霧の表面に乱れを生じさせ、且つ、燃料噴射時期の調整を通じてその乱れが減衰するタイミングを調整すれば、燃料噴霧が適度に乱れた状態にあるタイミングで、点火を行うことができ、ノック感度ΔSAを最小化することができる。そして、このノック感度ΔSAの最小化に伴い、従来に比べ、実際の点火時期を、発生トルクの最大値に対応する点火時期(図2参照)に近づけることが可能になる。
【0032】
〔運転制御の具体例〕
具体的な運転制御として、エンジン1のECU30は、例えば以下の処理内容(1)〜(4)を含む制御ルーチンを、所定周期で実行すればよい。
【0033】
(1)各種センサの出力に基づいて運転制御に必要な情報(例えばエンジン回転数、アクセルペダルの踏込量等)を取得する。
(2)ノック感度ΔSAを最小にする燃料噴射時期を推定する。
(3)推定された燃料噴射時期に対応する最適点火時期を算出する。
(4)推定された燃料噴射時期に燃料噴射弁10を開弁し、最適点火時期に点火プラグ20に通電する制御を実行する。
【0034】
また、各種センサの出力と、目標となる燃料噴射時期及び点火時期との関係を、制御マップ上に予め設定してもよい。この場合、ECU30は、制御マップを参照することにより、各種センサの出力に基づき一義的に燃料噴射時期及び点火時期を決定する。
【0035】
このような制御構造を図1のような構成を有するエンジン1に適用した第1の実施の形態によれば、燃焼室2内において二方向に噴射された燃料の噴霧が周辺の空気を巻き込みながら噴流となり、ピストン3頂面の窪み3a内を内周壁2aに沿って互いに逆方向に進行した後、対面し(ぶつかり合い)、燃焼室2の天井面2bに沿って点火プラグ20に向かう。燃焼室内のガスが圧縮されるほど、この噴流が燃焼室内のガスに大きな乱れを生じさせる。この乱れの発生により、燃料の点火後、火炎の伝播速度が実質的に高まることで、ノッキングの原因となる末端ガスの自着火が起きる前に、火炎を燃焼室2全体に行き渡らせることが容易となる。この結果、例えばエンジン1の圧縮比を高めたり、点火時期を早めたりしても、ノッキングが起き難くなる。もって、ノッキングの発生を抑制しつつ発生トルクを高めることができる。
【0036】
(第2の実施の形態)
次に、本発明を具体化した第2の実施の形態について、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。なお、第2の実施の形態において、適用対象となるエンジンのうち、第1の実施の形態にかかるエンジン1(図1参照)の構成要素と同等の構造及び機能を有するものについては、同一の部材番号を付して、ここでの重複する説明は省略する。
【0037】
図6(a)は、第2の実施の形態にかかるエンジン1Aの主要部の概略構成を示す側断面図であり、図6(b)は、同エンジン1Aの気筒内部を示す上視図である。図6(a)及び図6(b)に示すように、エンジン1Aは、気筒(燃焼室)2の天井面2b側部、又は側内壁2aに突起2cを備える。突起2cは、例えばチタン等、比較的熱伝導度の高い金属材料又は合金材料で構成するのが好ましい。また、燃料噴射弁10に設けられる二つの噴口の向き及び配置は、各噴口から噴射される燃料の噴霧が、点火プラグ20に向かって進行する過程で、突起2cに接触するように設定される。このようなエンジン1Bにおいて、ECU30は、第1の実施の形態と同様の運転制御を行う。
【0038】
第2の実施の形態によれば、圧縮行程において燃焼室2内に噴射される燃料の噴霧が突起2cに接触することにより、燃料噴霧を形成する液滴の微粒子化が促進される。この結果、燃料噴霧の表面に生じる乱れが減衰し難くなる。すなわち、この乱れによるノッキング抑制の効果が、一層高められる。
【0039】
(第3の実施の形態)
次に、本発明を具体化した第2の実施の形態について、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。なお、第2の実施の形態において、適用対象となるエンジンのうち、第1の実施の形態にかかるエンジン1(図1参照)の構成要素と同等の構造及び機能を有するものについては、同一の部材番号を付して、ここでの重複する説明は省略する。
【0040】
図7は、第3の実施の形態にかかるエンジン1Bの主要部の概略構成を示す側断面図である。同図7に示すように、第3の実施の形態にかかるエンジン1Bは、燃焼室2内にその噴孔を臨ませる燃料噴射弁(以下、第1燃料噴射弁という)10に加え、吸気ポート5A内にその噴孔を臨ませる第2燃料噴射弁11を備える点で、第1の実施の形態と異なる。第2燃料噴射弁11は、適宜の量の燃料を、適宜のタイミングで吸気ポート内に噴射供給する電磁駆動式開閉弁であり、第1燃料噴射弁10と同様、ECU30の指令信号に従って開閉動作する。
【0041】
本実施の形態にかかるエンジン1BのECU30は、エンジン1Bの運転制御として、第1燃料噴射弁10、第2燃料噴射弁11及び点火プラグ20を、以下の手順(1)、(2)、(3)に従って操作する。
【0042】
(1)先ず、吸気行程において、第2燃料噴射弁11を通じて吸気ポート5A内に燃料を噴射する。この結果、燃焼室2内において燃料の噴霧が拡散し、ほぼ均一に分布する。
(2)圧縮行程においては、第1燃料噴射弁10を通じ燃焼室2内に超高圧燃料を噴射する。ここで、第1燃料噴射弁10を通じて供給される燃料の量と、第2燃料噴射弁11を通じて供給される燃料の量との総計が、エンジン1に要求されるトルクを発生するために必要十分な燃料の量となるように、各燃料噴射弁10,11を通じて噴射される燃料の量を調整する。
(3)点火プラグ20に通電し、点火を行う。
【0043】
なお、上記運転制御を行うに際し、ECU30が、ノック感度ΔSAができるだけ小さくなるように第1燃料噴射弁10の動作タイミング(燃料噴射時期)を決定し、且つ、MBTに点火を行うことが好ましい点については、第1の実施の形態と同様である。
【0044】
第3の実施の形態によっても、ノッキングの発生を抑制しつつ、発生トルクを増大させることが可能となる。
【0045】
(第4の実施の形態)
次に、本発明を具体化した第4の実施の形態について、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。なお、第4の実施の形態において、適用対象となるエンジンのうち、第1の実施の形態にかかるエンジン1(図1参照)の構成要素と同等の構造及び機能を有するものについては、同一の部材番号を付して、ここでの重複する説明は省略する。
【0046】
図8には、第4の実施の形態にかかるエンジン1Cの主要部の概略構成を示す側断面図である。第1の実施の形態にかかるエンジン1は、燃焼室2の天井面2bの中央部付近に点火プラグ20を備える(図1参照)。これに対し、第4の実施の形態にかかるエンジン1Cは、燃焼室2の天井面2bにおける側内壁2aの近傍であって、且つ、排気ポート6Aの近傍に点火プラグ20を備える。また、燃料噴霧を燃焼室2の側内壁2aに沿って進行させた後、天井面2b沿いに進行させ点火プラグ20に到達させる構成(第1の実施の形態の構成:図1参照)に比べ、エンジン1Cでは、燃料噴霧がピストン頂面の窪み3aから直接点火プラグ20近傍に向かうように、燃料噴射弁10の噴口の向き及び配置や、ピストン3の頂面に形成される窪み3aの形状等を設定する。なお、第1の実施の形態においては、燃料噴霧がピストン3の往復動作方向(軸)に直交する平面に沿って進行する傾向が強いのに対し、第4の実施の形態においては、燃料噴霧がピストン3の軸に沿って進行する傾向が強い。
【0047】
このようなエンジン1Bにおいて、ECU30は、第1の実施の形態と同様の運転制御を行う。
【0048】
第4の実施の形態によれば、燃料噴霧がピストン3の頂面から受ける熱量が大きくなるため、燃料噴霧を形成する液滴の微粒子化が促進される。また、点火プラグ20を起点として伝播する火炎が、ピストン頂面の窪み3a′から巻き上げられた燃料噴霧とぶつかる。この窪み3a′から巻き上げられた燃料噴霧(窪み3a′のほぼ直上の燃料噴霧)は、燃料噴射弁10の噴口からの距離が比較的短く、乱れ強度が高い。
【0049】
この結果、点火プラグ20を起点として伝播する火炎が、液滴の微粒子化が進み、且つ、乱れ強度の高い燃料噴霧にぶつかることなる。従って、燃焼室2内のガスの燃焼が極めて効率的に進み、ノッキングの発生が効果的に抑制される。
【0050】
なお、上記各実施の形態においては、点火時期の近傍で、燃焼室2内のガスに適度な乱れ強度が確保されるために、燃料噴射時期と点火時期とを制御することにした。これに限らず、燃料噴射弁10を通じて噴射される超高圧燃料の圧力を可変制御することにより、燃焼室2内におけるガスの乱れ強度の大きさを制御し、ノッキングの抑制効果を高めるようにようにしてもよい。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、噴射燃料の高圧化に伴って増大する燃料噴霧の乱れにより、燃焼室内における火炎の伝播速度が実質的に高まる。この結果、ノッキングの発生を抑制しつつ内燃機関の発生トルクを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる内燃機関の主要部の概略構成を示す側断面図等。
【図2】ガソリンエンジンにおける点火時期と発生トルクとの一般的な関係を例示するグラフ。
【図3】超高圧燃料を燃焼室内に直接噴射するガソリンエンジンにおいて、点火時期と発生トルクとの関係を示すグラフ。
【図4】燃焼室内に燃料を直接噴射するガソリンエンジンにおいて、クランク角(時間)の変化に伴う燃焼室内のガスの乱れ強度の推移を示すタイムチャート。
【図5】燃料噴射時期の変更に対応する発生トルクの変化を示すグラフ。
【図6】本発明の第2の実施の形態にかかる内燃機関の主要部の概略構成を示す側断面図等。
【図7】本発明の第3の実施の形態にかかる内燃機関の主要部の概略構成を示す側断面図。
【図8】本発明の第4の実施の形態にかかる内燃機関の主要部の概略構成を示す側断面図。
【符号の説明】
1 エンジン(内燃機関)
2 燃焼室
3 ピストン
5 吸気通路
5A 吸気ポート
5B 吸気弁
6 排気通路
6A 排気ポート
6B 排気弁
10 燃料噴射弁(超高圧燃料噴射用)
11 第2燃料噴射弁
20 点火プラグ(点火手段)
30 電子制御ユニット(ECU)
Claims (9)
- 内燃機関の圧縮行程において当該機関の燃焼室に燃料を直接噴射し、その噴射された燃料に点火して当該機関を運転する内燃機関の制御装置において、前記噴射燃料の高圧化に伴って増大する燃料噴霧の乱れにより、ノッキングを抑制する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 内燃機関の燃焼室に燃料の噴霧を形成した後、当該機関の圧縮行程において前記燃焼室内への燃料の直接噴射と前期燃焼室内のガスの点火とを行い、当該機関を運転する内燃機関の制御装置であって、前記噴射燃料の高圧化に伴って増大する燃料噴霧の乱れにより、ノッキングを抑制する内燃機関の制御装置。
- 内燃機関の円筒形燃焼室の天井面に設けられ該燃焼室内に供給される燃料の点火を行う点火手段と、
二方向に向けて噴射された燃料の噴霧が前記燃焼室の内周壁に沿って互いに逆方向に進行して対面した後、前記点火手段に向かうように燃料を二方向に向けて前記燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関の制御装置。 - 前記点火手段は、当該機関の円筒形燃焼室の天井面の略中央に設けられることを特徴とする請求項3記載の内燃機関の制御装置。
- 内燃機関の円筒形燃焼室の内周壁及び排気ポートの近傍に設けられ前記燃焼室内に供給される燃料の点火を行う点火手段と、
前記燃焼室の内周壁及び吸気ポートの近傍に設けられ前記燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関の制御装置。 - 前記噴射燃料を100MPa以上とする
ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の内燃機関の制御装置。 - 前記燃焼室の内壁に設けられ前記噴射される燃料の噴霧に接触する突起を備える
ことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の内燃機関の制御装置。 - 圧縮行程において燃焼室に直接噴射された燃料が着火することによって機関トルクを発生する内燃機関において、
前記噴射燃料の高圧化に伴って増大する燃料噴霧の乱れにより、当該機関のノッキングを抑制する
ことを特徴とする内燃機関のノッキング抑制方法。 - 前記燃料の噴射時期を制御することによって、前記点火を行う時期における前記噴射燃料を高圧化に伴って増大する燃料噴霧の乱れを制御する工程を含む
ことを特徴とする請求項8記載の内燃機関のノッキング抑制方法。
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