JP2005019241A - 非水電解液二次電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(i)正極13および負極14と、正極13と負極14との間に配置されたセパレータ15とを含む極板群16を形成する工程と、(ii)正極13と負極14との間に、予め設定した電圧値の非直流電圧を一定期間印加する工程と、(iii)正極13と負極14との間の絶縁性を検査する工程とを含む。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解液二次電池の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
非水電解液二次電池を製造する際には、電極間がショートした、または将来ショートする可能性がある不良品を検出することが求められる。この検出は、外装缶への電解液の注液前に行われ、正極、負極およびこれら両極の間に介在するセパレータを含む極板群(電極体)について行われる。極板群の不良品の検出方法として、正負極間に電圧を印加した時の極板群の絶縁抵抗を測定する方法が開示されている(特許文献1参照)。また、良品であれば絶縁破壊を起こさないが将来的にショートする可能性のある極板群であれば絶縁破壊を起こす電圧、具体的には100〜500Vの電圧を正負極間に印加することによって良品と不良品とを判別する方法も開示されている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−45538号公報
【0004】
【特許文献2】
特開平11−40210号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、単に絶縁抵抗を測定する方法では、正極と負極とが、接触してはいないがセパレータの欠損等によってごく近傍にまで接近しており、将来ショートするおそれがある極板群を検出できないことがある。
【0006】
ここで、将来ショートするおそれのある極板群について具体的に以下に説明する。打ち抜きや切断などの極板の加工工程において、加工面にバリが生じた極板を用いて極板群を組み立てると、そのバリはセパレータに食い込み、対向する極板に対して数μmの距離まで接近した状態となる。このような極板群を組み込んだ電池は、実使用時に充放電を繰り返すと、極板群が膨張収縮し、それにともなってバリがセパレータを突き破って対極と接触する場合がある。
【0007】
また、バリが存在する極板群を組み込んだ電池に対して充放電を繰り返すと、バリからデンドライトが成長することがあり、それにともなって、当該デンドライトの先端が対極と接触することがある。デンドライトが対極に接触すると、微小電流が流れ、電池は自己放電して容量低下を引き起こす。
【0008】
以上のように、バリが存在する場所のように正負極間の絶縁領域が狭くなった部分では、組み立て時にショートしていなくても使用時にショートするおそれがある。しかしながら、このような電池は、組み立て時にはショートしていないため、組み立て時に絶縁抵抗測定をするだけでは不良品として検出することが困難である。また、バリ以外にも、電極間に混入する小さい異物などによっても極板群が将来的にショートする可能性が高くなり、バリと同様の不具合を引き起こす可能性がある。
【0009】
特許文献2では、上記したような将来ショートするおそれのある極板群に対して、極板間に高電圧をかけることにより、将来ショートしうる場所に火花放電を起こさせ、回路に短絡電流を流すことにより、このような電極群の検出を可能にしている。
【0010】
この検出法では、火花放電を利用しているが、火花放電を発生させる電圧は非常に大きいため、将来ショートするおそれのある極板群で火花放電が発生する以外にも、良品のセパレータを持つ極板群において部分放電(Partial discharge)が発生し、良品のセパにもダメージを与えてしまうおそれがある。また、部分放電が発生しない程度の比較的小さな電圧を印加した場合には、非常に大きなバリの存在、あるいは異物混入等によってセパレータに深い傷があるときだけ火花放電が発生し、セパレータに入った傷が小さい場合には火花放電が発生しないため、これを不良として検出することができないといった問題がある。
【0011】
この部分放電とは、絶縁物に高電圧を印加したときに絶縁物の内部に存在するボイド(空隙)内で起きる放電現象である。この放電は電極間を短絡するような放電でなく、部分的な放電であり、絶縁性の低下に大きく影響するものである。また、部分放電が発生する電圧は、火花放電が発生する電圧に比べて小さい。一般的なセパレータにおいて、部分放電は、セパレータの厚さ1μmあたり直流電圧35V(正弦波交流電圧実効値では25V)で発生する。これに対し、火花放電はセパレータの厚さ1μmあたり直流電圧75Vで発生する。このため例えば、厚さ20μmのセパレータにおいて深さ5μmの傷が入った場合に火花放電を発生させるには、直流電圧1125V(15[μm]×75[V/μm])以上の電圧が必要となるが、傷のないセパレータにおいて、部分放電は直流電圧700V(20[μm]×35[V/μm])以上で発生する。つまり、20μmのセパレータにおいて、5μmの傷が入ったものを火花放電を利用して不良判定しようとすると、傷のないセパレータにおいても部分放電が発生し、セパレータが劣化する。また、部分放電の測定は、現在のところノイズの影響を受けやすく、ノイズが存在する製造現場で行うのは困難である。
【0012】
このような状況に鑑み、本発明は、極板群の不良を判別する新規な検査方法を用いた非水電解液二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の製造方法は、非水電解液二次電池の製造方法であって、(i)正極および負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータとを含む極板群を形成する工程と、(ii)前記正極と前記負極との間に、予め設定した電圧値の非直流電圧を一定期間印加する工程と、(iii)前記正極と前記負極との間の絶縁性を検査する工程とを含む。
【0014】
上記製造方法では、前記(ii)の工程において、前記正極と前記負極との間の前記セパレータに構造上の欠陥がある場合に前記セパレータ内で部分放電が起きる電圧以上であって且つ前記セパレータに構造上の欠陥がない場合に前記セパレータ内で部分放電が起きる電圧未満の非直流電圧を印加することが好ましい。
【0015】
上記製造方法では、前記非直流電圧が、パルス電圧および交流電圧から選ばれる少なくとも1つの電圧であってもよい。
【0016】
上記製造方法では、前記非直流電圧が、周波数が50Hz以上の交流電圧であってもよい。
【0017】
上記製造方法では、前記非直流電圧が正弦波交流電圧であってもよい。この場合、前記セパレータの平均厚さをD(μm)としたときに、前記正弦波交流電圧の実効値を25D(V)未満としてもよい。また、前記セパレータの平均厚さが10μmよりも大きく、前記正弦波交流電圧の実効値を250V以上としてもよい。
【0018】
上記製造方法では、前記非直流電圧が矩形波交流電圧であってもよい。この場合、前記セパレータの平均厚さをDとしたときに、前記矩形波交流電圧の最大値を35D(V)未満としてもよい。また、前記セパレータの平均厚さが10μmよりも大きく、前記矩形波交流電圧の最大値を350V以上としてもよい。
【0019】
上記製造方法では、前記(ii)の工程において、前記非直流電圧を1分間以上印加してもよい。
【0020】
上記製造方法では、前記(iii)の工程において、前記正極と前記負極との間に直流電圧を印加することによって測定された絶縁抵抗値を用いて前記正極と前記負極との間の絶縁性を検査してもよい。
【0021】
上記製造方法では、前記(i)の工程において複数の前記極板群を形成し、前記(ii)の工程において、並列に接続した複数の前記極板群に対して同時に前記非直流電圧を印加してもよい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の製造方法は、正極および負極と、それらの間に配置されたセパレータとを含む極板群の不良を判別する工程を含む。以下に、その工程を説明する。
【0023】
まず、正極および負極と、正極と負極との間に配置されたセパレータとを含む極板群を形成する(工程(i))。正極、負極およびセパレータは、特に限定はないが、非水電解液二次電池に用いられている公知の部材を適用できる。たとえば、正極には、集電体(たとえばアルミニウム箔)と集電体に塗布された活物質(たとえばリチウム含有複合酸化物)とを含む正極板を用いることができる。負極には、たとえば、集電体(たとえば銅箔)と集電体に塗布された活物質(たとえば炭素質材料)とを含む負極板を用いることができる。セパレータには、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン製の微多孔膜を用いることができる。セパレータは厚さが均一であることが好ましく、その平均厚さは、通常、15μm〜30μm程度である。
【0024】
極板群の形成方法に限定はない。通常は、セパレータを挟んで正極と負極とを交互に積層するか、セパレータを挟んで正極と負極とを巻回することによって極板群を形成する。
【0025】
次に、極板群の正極と負極との間に、予め設定した電圧値の非直流電圧を一定期間印加する(工程(ii))。工程(ii)は、将来的にショートを起こす可能性が高い極板群に対し、そのセパレータを劣化させて絶縁性を低下させるために行われる。このとき、将来的にショートを起こす可能性が低い極板群、すなわち良品の極板群のセパレータの劣化を抑制する必要がある。したがって、印加される電圧は、正極と負極との間の絶縁性が不十分な場合にセパレータ内で部分放電が起きる電圧以上であって且つ正極と負極との間の絶縁性が十分な場合にセパレータ内で部分放電が起きる電圧未満の電圧である。なお、工程(ii)は、極板群を電池ケースに挿入した状態で行ってもよい。
【0026】
工程(ii)で印加する非直流電圧は、セパレータ内で部分放電を起こすことができる電圧であればよく、パルス電圧または交流電圧(交番電圧)を適用できる。具体的には、パルス電圧として、0ボルトと所定の電圧との間で変調する電圧を用いることができる。また、交流電圧としては、正弦波交流電圧を用いるのが容易であるが、矩形波、三角波、鋸波などの他の波形を有する交流電圧を用いてもよい。
【0027】
工程(ii)では、印加する非直流電圧の電圧値を、セパレータに構造上の欠陥がある場合(たとえばセパレータに深い傷が入っている場合)では極板群のセパレータ内で部分放電が発生し、セパレータに構造上の欠陥がない場合に極板群のセパレータ内で部分放電が発生しない値に設定する。これにより、電圧を印加しているあいだ、良品の極板群のセパレータは劣化しないが、不良品の極板群のセパレータには部分放電が発生しつづける。その結果、不良品の極板群では、セパレータの絶縁性が低下し、火花放電の発生しやすいセパレータとなる。
【0028】
この処理をした後、例えば火花放電を利用するような短絡検査を行えば、良品の極板群のセパレータでは部分放電の発生しないような電圧でも、セパレータに小さな傷が入った極板群のセパレータは、非直流電圧の印加による部分放電で劣化しているため、火花放電が発生する。よって、これを不良として検出することができる。
【0029】
リチウムイオン二次電池で使用されるような一般的なセパレータでは、セパレータの厚さ1μmあたり実効値25Vの正弦波交流電圧で部分放電が発生する。このため、セパレータの厚さをD(μm)としたときに、実効値25D(V)以上(セパレータの厚さが20μmなら実効値500V以上)で正弦波交流電圧を印加すると、良品においても部分放電が発生し、劣化するおそれがある。したがって、正弦波交流電圧を印加する場合には、その実効値を25D(V)未満とする。ここで、正弦波交流電圧の実効値は、
実効値=0.707×最大値
で表される。したがって、矩形波等の他の交流電圧やパルス電圧を用いる場合は、最大値で調節し、最大値を35D(V)(25D[V]/0.707)未満とする。
【0030】
本発明の方法では、一定期間印加する正弦波交流電圧の値を調節することによって、不良品とするセパレータの傷の深さを設定することができる。具体的には、実効値が25D(V)以上の正弦波交流電圧で部分放電が発生するような20μmのセパレータにおいて、セパレータの傷の深さが5μm以上の極板群を不良としたい場合は、実効値が375Vの正弦波交流電圧を印加すればよい。これにより、セパレータに深さ5μm以上の傷が存在する極板群では、セパレータの傷がある箇所において部分放電が発生する。また、セパレータの傷が5μm以下の極板群では、セパレータにおいて部分放電が発生しない。その結果、セパレータの傷の深さが5μm以上である極板群を、以後の工程において、不良として容易に検出することができる。
【0031】
なお、極板群によって異なるが、一般的には、セパレータの傷によってセパレータの残り厚みが10μm未満となると将来短絡する可能性が非常に高くなるため、セパレータの残り厚みが10μm以上ものを良品とするのが好適である。そのため、たとえば厚さ1μmあたり実効値が25V以上の正弦波交流電圧で部分放電が発生するようなセパレータであれば、実効値が250V以上の正弦波交流電圧を印加することが望ましい。矩形波等の他の交流電圧を用いる場合は最大値350V(250[V]/0.707)以上の電圧を印加することが望ましい。
【0032】
また、本発明において、非直流電圧の印加時間は30秒以上が望ましく、印加時間が長いほど短絡検査の精度が高くなるため、1分以上がより望ましい。電圧の好ましい印加時間は、印加する電圧の周波数によって異なる。印加する電圧の周波数が60Hzの場合、通常、30秒〜10分の範囲で選択される。印加時間が30秒未満の場合、不良品の極板群のセパレータが部分放電によって劣化する期間が短いため、絶縁抵抗の劣化が小さいものとなり、不良品の選別の精度が低下する場合がある。
【0033】
工程(ii)において、印加する交流電圧の周波数は10Hz以上が望ましい。周波数が大きいほど印加期間が短くて済むため、50Hz以上がより望ましく、60Hz以上がさらに望ましい。
【0034】
また、工程(ii)において、複数個の極板群を並列に接続し、これに予め設定した電圧値の非直流電圧を一定期間印加してもよい。これにより、短時間に多くの極板群を検査できる。
【0035】
以上の工程(ii)では、将来的にショートする可能性が高い箇所においてのみ部分放電が生じやすく、その箇所のセパレータが部分放電によって選択的に劣化し、絶縁性が低下する。
【0036】
工程(ii)ののち、直流電圧を用いて正極と負極との絶縁性を検査する(工程(iii))。この工程では、正極と負極とがすでに短絡している極板群、または正極と負極との間の絶縁性が十分でない極板群を選別して排除する。具体的には、まず、不良品の極板群で火花放電が発生し、良品の極板群では火花放電が発生しないような電圧を印加する。また、このとき印加する電圧は、良品の極板群のセパレータで部分放電が発生しない電圧であることが好ましい。具体的には、セパレータの平均厚さをD(μm)とすると、たとえば10D(V)〜30D(V)程度(好ましくは、20D(V)〜25D(V)程度)の直流電圧を印加する。火花放電が発生した極板群は、絶縁破壊を起こして極板間の絶縁抵抗が大きく低下する。したがって、極板間の絶縁抵抗を測定することによって、不良品を排除できる。絶縁抵抗は、極板間に上記直流電圧を印加したのち、電圧を印加したままの状態で測定することができる。
【0037】
将来的にショートする可能性が高い極板群は、工程(ii)によって正極と負極との間の絶縁性が大きく低下するため、工程(iii)における判別が比較的容易となる。このとき、工程(ii)でセパレータが劣化した部分では比較的低い電圧で火花放電が起こる。直流電圧のみで不良品を判定する方法では、高い電圧を印加しなければならないためにセパレータに傷がない部分も劣化する恐れがあったが、本発明によれば、セパレータに傷がない部分の劣化を抑制できる。
【0038】
絶縁性の検査は、直流電圧または交流電圧を印加して正極と負極との間の絶縁抵抗を測定することによって行うことができる。絶縁抵抗が一定値以下(たとえば10MΩ未満)の場合には、不良品の極板群と判定できる。また、直流電圧を印加したときに流れる電流波形を用いて、不良品を判別することも可能である。
【0039】
工程(iii)において不良品の極板群を排除したのち、良品の極板群を用いて非水電解液二次電池を製造する。以下の工程については特に限定はないが、公知の部材を用いた公知の製造方法を適用できる。たとえば、極板群を非水電解液とともに電池ケースに収納し、電極端子を兼ねる封口板で封口すればよい。非水電解液には、たとえば、リチウムを含む電解質(たとえばLiPF6)を溶解させた非水溶媒(たとえばエチレンカーボネート)を用いることができる。なお、極板群を電池ケースに収納した状態で上記工程(ii)および(iii)を行ってもよい。
【0040】
このようにして、非水電解液二次電池を製造できる。本発明の製造方法で製造される非水電解液二次電池の一例を図1に示す。なお、図1において、正極12および負極13の集電体の図示を省略している。
【0041】
図1の非水電解質二次電池10は、負極端子として機能する電池ケース11(ハッチングは省略する)と、電池ケース11を封口する封口体12と、電池ケース11に収納された正極13、負極14、セパレータ15および非水電解質(図示せず)とを備える。封口体12は、正極蓋12aおよびガスケット12bを含む。正極13および負極14は、それぞれ、可逆的にリチウムを吸蔵および放出する活物質を含む。正極13と負極14とは、セパレータ15を挟んで渦巻き状に巻回され、極板群16を構成している。極板群16の上部と下部とには、短絡を防止するための絶縁板17および18が配置されている。正極13はリード19によって正極蓋12aに接続されており、負極14はリード20によって電池ケース11に接続されている。
【0042】
本発明の製造方法に用いることができる製造装置は、極板群を形成する極板群形成部と、正極と負極との間に非直流電圧を印加する電圧印加部と、正極と負極との間の絶縁性を検査する検査部とを含む。これらの各部分は別々であっても一体となっていてもよい。極板群形成部には、公知のものを適用できる。電圧印加部は、非直流電圧を出力する電源を備える。また、検査部は、直流電圧を出力する電源と、極板間の絶縁抵抗を測定する測定装置とを備える。
【0043】
以下に、極板群の具体的な検査方法について例を挙げて説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0044】
(実施形態1)
実施形態1における交流電圧の印加方法を図2に模式的に示す。
【0045】
交流電源24は、導線22および保護抵抗23を介して端子25aおよび25bに接続されている。端子25aおよび25bは、それぞれ、極板群16の正極および負極に接続される。正極および負極がそれぞれどちらの端子に接続されるかは問わない。交流電源24から出力される交流電圧は、極板群16の正負極間に印加される。極板群16に印加される交流電圧の電圧値は、交流電源24の出力電圧と、保護抵抗23の抵抗値とによって調節される。
【0046】
この装置を用いて、極板群の電極間に、セパレータの厚さ1μmあたり実効値で25V未満の正弦波交流電圧を30秒間以上印加する。矩形波交流電圧を用いる場合は、極板群の電極間に、セパレータの厚さ1μmあたり最大値が35V未満の交流電圧を30秒間以上印加する。このときのセパレータ厚さ1μmあたりの印加電圧、および電圧印加時間はセパレータの種類によって好ましい値が異なる。交流電圧の周波数は10Hz以上に設定する。
【0047】
交流電圧を印加したのち、極板群の電極間に450Vの直流電圧を印加し、その0.1秒後に絶縁抵抗を測定する。そして、絶縁破壊を起こしていないもの、つまり絶縁抵抗が所定値以上(たとえば10MΩ以上)のものを良品とし、所定値未満のものを不良品とする。このような方法によって、不良品の判別を行うことができる。なお、この判別は、直流電圧を印加したときに流れる電流波形を用いて行ってもよい。
【0048】
(実施形態2)
実施形態2における交流電圧の印加方法を図3に模式的に示す。交流電源31は、導線32および保護抵抗33を介して、端子34a−1〜nおよび端子34b−1〜nに接続されている。n個(たとえば100個)の端子34a−1〜nおよび端子34b−1〜nは、並列に接続されており、それぞれの端子に、極板群16−1〜nの正極および負極が接続される。正極および負極がそれぞれどちらの端子に接続されるかは問わない。また、並列につなぐ端子の数、つまり交流電圧を同時に印加する極板群の数は限定されない。極板群に印加される交流電圧の電圧値は、交流電源31の出力電圧と、保護抵抗33の抵抗値によって調節される。
【0049】
実施形態2の方法では、複数の端子を並列に接続し、複数の極板群に対して同時に交流電圧を印加する以外は、実施形態1と同様の方法で極板群の不良を判別する。
【0050】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0051】
まず、二次電池の極板群を作製した。正極板は、コバルト酸リチウムおよびアセチレンブラックを主成分とするペーストを、アルミニウム箔に塗布することによって形成した。負極板は、黒鉛を主成分とするペーストを、銅箔に塗布することによって形成した。これら正極板および負極板を、厚さ20μmのポリエチレン製セパレータを介して積層し、さらに巻回して極板群を作製した。次に、正極板および負極板のうちペーストを塗布していない部分に、集電用のリードを超音波で溶接した。このようにして、良品の極板群(以下、極板群Aという場合がある)を作製した。
【0052】
一方、以下の方法で、不良品となる可能性のある4種類の極板群を作製した。第1の極板群(以下、極板群B1という場合がある)は、一部(長さ5mm)を切開したセパレータを用いて作製した。第2の極板群(以下、極板群B2という場合がある)は、正極板とセパレータとの間に、粒径45μm以上75μm未満のステンレス(SUS)研磨粉を5粒混入して作製した。第3の極板群(以下、極板群B3という場合がある)は、負極板とセパレータとの間に、粒径45μm以上75μm未満のステンレス(SUS)研磨粉を5粒混入して作製した。第4の極板群(以下、極板群B4という場合がある)は、切断されたエッジ部に約45μmのバリが存在する芯材を使用した正極板を用いて作製した。
【0053】
上記極板群Aおよび極板群B1〜B4について、不良品の発生率を調べるため、それぞれの極板群を用いて電池を作製し、充放電を500サイクル繰り返すサイクル試験を行った。そして、500サイクル後に、良品の極板群を用いた電池に対して容量が大きく低下している電池、または短絡を起こしている電池を不良品とした。その結果、不良品の電池が発生する確率は、極板群Aを用いた電池で0%、極板群B1を用いた電池で100%、極板群B2を用いた電池で80〜90%、極板群B3を用いた電池で40〜50%、極板群B4を用いた電池で90〜98%であった。一方、このサイクル試験で不良品とならなかった電池は、良品であると考えられる。
【0054】
次に、上記5種類の極板群をそれぞれ100個作製し、本発明および従来の方法を用いて不良品の判定を行った。そして、不良品の検出精度から、本発明および従来の方法を評価した。なお、不良品の判定は(露点−30℃)の温度で行った。
【0055】
[実施例1]
まず、図2と同様の回路を用い、周波数60Hzで実効値250Vの正弦波交流電圧を各極板群に1分間印加した。その後、各極板群に450Vの直流電圧を印加し、0.1秒後に絶縁破壊を起こしていないもの、つまり絶縁抵抗値が10MΩ以上のものを良品とし、それ以外を不良品と判定した。
【0056】
実施例1において各極板群100個のうち不良品と判定された数は、良品の極板群Aは0個、極板群B1(セパレータ切開)は100個、極板群B2(正極−セパレータ間に研磨粉)は85個、極板群B3(負極−セパレータ間に研磨粉)は40個、極板群B4(芯材バリ有り)は91個であった。実施例1の方法は、精度よく不良品を判定できた。
【0057】
[比較例1]
各極板群に交流電圧を印加しないこと以外は実施例1と同様にして不良品の判定を行った。具体的には、直流電圧の印加のみによる不良品判定を行った。
【0058】
比較例1において各極板群100個のうち不良品と判定された数は、良品の極板群Aは0個、極板群B1(セパレータ切開)は100個、極板群B2(正極−セパレータ間に研磨粉)は48個、極板群B3(負極−セパレータ間に研磨粉)は21個、極板群B4(芯材バリ有り)は55個であった。比較例1の方法は、精度が不十分だった。
【0059】
[実施例2]
各極板群に印加する正弦波交流電圧の実効値を375Vにしたこと以外は実施例1と同様にして不良品の判定を行った。
【0060】
実施例2において各極板群100個のうち不良品と判定された数は、良品の極板群Aは0個、極板群B1(セパレータ切開)は100個、極板群B2(正極−セパレータ間に研磨粉)は91個、極板群B3(負極−セパレータ間に研磨粉)は51個、極板群B4(芯材バリ有り)は98個であった。実施例2の方法は、精度よく不良品を判定できた。
【0061】
[実施例3]
各極板群に印加する正弦波交流電圧の印加時間を5分にしたこと以外は実施例1と同様にして不良品の判定を行った。
【0062】
実施例3において各極板群100個のうち不良品と判定された数は、良品の極板群Aは0個、極板群B1(セパレータ切開)は100個、極板群B2(正極−セパレータ間に研磨粉)は87個、極板群B3(負極−セパレータ間に研磨粉)は42個、極板群B4(芯材バリ有り)は95個であった。実施例3の方法は、精度よく不良品を判定できた。
【0063】
[実施例4]
実施例4では、図3と同様の回路を用い、並列につないだ100個の各極板群に対して、同時に実効値250Vの正弦波交流電圧を1分間印加した。その後、各極板群に450Vの直流電圧を印加し、0.1秒後に絶縁破壊を起こしていないもの、つまり絶縁抵抗が10MΩ以上のものを良品とし、それ以外を不良品と判定した。
【0064】
実施例4において各極板群100個のうち不良品と判定された数は、良品の極板群Aは0個、極板群B1(セパレータ切開)は100個、極板群B2(正極−セパレータ間に研磨粉)は81個、極板群B3(負極−セパレータ間に研磨粉)は42個、極板群B4(芯材バリ有り)は93個であった。実施例4の方法は、精度よく不良品を判定できた。
【0065】
[実施例5]
正弦波交流電圧の代わりに周波数60Hz、最大値350Vの矩形波交流電圧を各極板群に印加したこと以外は実施例1と同様にして不良品の判定を行った。
【0066】
実施例5において各極板群100個のうち不良品と判定された数は、良品の極板群Aは0個、極板群B1(セパレータ切開)は100個、極板群B2(正極−セパレータ間に研磨粉)は79個、極板群B3(負極−セパレータ間に研磨粉)は43個、極板群B4(芯材バリ有り)は90個であった。実施例5の方法は、精度よく不良品を判定できた。
【0067】
[実施例6]
各極板群に印加する正弦波交流電圧の実効値を100Vにしたこと以外は実施例1と同様にして不良品の判定を行った。
【0068】
実施例6において各極板群100個のうち不良品と判定された数は、良品の極板群Aは0個、極板群B1(セパレータ切開)は100個、極板群B2(正極−セパレータ間に研磨粉)は60個、極板群B3(負極−セパレータ間に研磨粉)は31個、極板群B4(芯材バリ有り)は72個であった。
【0069】
[実施例7]
各極板群に印加する正弦波交流電圧の実効値を750Vにしたこと以外は実施例1と同様にして不良品の判定を行った。
【0070】
実施例7において各極板群100個のうち不良品と判定された数は、良品の極板群Aは27個、極板群B1(セパレータ切開)は100個、極板群B2(正極−セパレータ間に研磨粉)は100個、極板群B3(負極−セパレータ間に研磨粉)は100個、極板群B4(芯材バリ有り)は100個であった。
【0071】
[実施例8]
各極板群に印加する正弦波交流電圧の印加時間を10秒にしたこと以外は実施例1と同様にして不良品の判定を行った。
【0072】
実施例8において各極板群100個のうち不良品と判定された数は、良品の極板群Aは0個、極板群B1(セパレータ切開)は100個、極板群B2(正極−セパレータ間に研磨粉)は55個、極板群B3(負極−セパレータ間に研磨粉)は25個、極板群B4(芯材バリ有り)は63個であった。
【0073】
実施例1〜8および比較例1の方法で不良品と判定された極板群の数を(表1)に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
(表1)から明らかなように、実施例1〜5に示した本発明の方法は、極板群に交流電圧を印加しない比較例1の方法に比べて、明らかに精度が高かった。
【0076】
また、各極板群に印加する交流電圧値が小さい実施例6の方法では、不良品判定の精度の向上は大きくなかった。これは、傷がついた部分のセパレータの厚さが4μm以上である極板群では部分放電が発生せず、劣化しないためである。
【0077】
また、各極板群に印加する交流電圧値が大きい実施例7の方法では、セパレータに傷のない良品の極板群であっても、交流電圧印加時に部分放電が発生して劣化が起こるため、良品の極板群も不良と判定される場合があった。
【0078】
また、各極板群に交流電圧を印加する時間が短い実施例8の方法では、部分放電が発生する期間が短いため、セパレータに傷がある不良品の極板群であっても劣化がほとんど起こらず、不良品判定の精度の向上は大きくなかった。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について例を挙げて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず本発明の技術的思想に基づき他の実施形態に適用することができる。
【0080】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、内部短絡が発生した極板群、および製品とした後に内部短絡が生じる可能性がある極板群を、良品の極板群を劣化させることなく高い精度でスクリーニングできる。また、本発明によれば、極板群に印加する交流電圧値を調節することにより、傷のないセパレータをもつ極板群のセパレータを劣化させることなく、任意の深さ以上の傷のあるセパレータをもつ極板群を判定することができる。その結果、本発明によれば、短絡する可能性が少ない非水電解液二次電池を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によって製造される非水電解液二次電池の一例を示す一部分解断面図である。
【図2】本発明の製造方法の一例について一工程を示す模式図である。
【図3】本発明の製造方法の他の一例について一工程を示す模式図である。
【符号の説明】
10 非水電解液二次電池
11 電池ケース
12 封口体
13 正極
14 負極
15 セパレータ
16 極板群
22、32 導線
23、33 保護抵抗
24、31 交流電源
25a、25b、34a、34b 端子
Claims (13)
- 非水電解液二次電池の製造方法であって、
(i)正極および負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータとを含む極板群を形成する工程と、
(ii)前記正極と前記負極との間に、予め設定した電圧値の非直流電圧を一定期間印加する工程と、
(iii)前記正極と前記負極との絶縁性を検査する工程とを含む非水電解液二次電池の製造方法。 - 前記(ii)の工程において、前記正極と前記負極との間の前記セパレータに構造上の欠陥がある場合に前記セパレータ内で部分放電が起きる電圧以上であって且つ前記セパレータに構造上の欠陥がない場合に前記セパレータ内で部分放電が起きる電圧未満の非直流電圧を印加する請求項1に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
- 前記非直流電圧が、パルス電圧および交流電圧から選ばれる少なくとも1つの電圧である請求項1または2に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
- 前記非直流電圧が、周波数が50Hz以上の交流電圧である請求項1または2に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
- 前記非直流電圧が正弦波交流電圧である請求項1または2に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
- 前記セパレータの平均厚さをD(μm)としたときに、前記正弦波交流電圧の実効値を25D(V)未満とする請求項5に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
- 前記セパレータの平均厚さが10μmよりも大きく、前記正弦波交流電圧の実効値を250V以上とする請求項6に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
- 前記非直流電圧が矩形波交流電圧である請求項1または2に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
- 前記セパレータの平均厚さをDとしたときに、前記矩形波交流電圧の最大値を35D(V)未満とする請求項8に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
- 前記セパレータの平均厚さが10μmよりも大きく、前記矩形波交流電圧の最大値を350V以上とする請求項9に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
- 前記(ii)の工程において、前記非直流電圧を1分間以上印加する請求項1〜10のいずれかに記載の非水電解液二次電池の製造方法。
- 前記(iii)の工程において、前記正極と前記負極との間に直流電圧を印加することによって測定された絶縁抵抗値を用いて前記正極と前記負極との間の絶縁性を検査する請求項1〜11のいずれかに記載の非水電解液二次電池の製造方法。
- 前記(i)の工程において複数の前記極板群を形成し、前記(ii)の工程において、並列に接続した複数の前記極板群に対して同時に前記非直流電圧を印加する請求項1〜12のいずれかに記載の非水電解液二次電池の製造方法。
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-
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