JP2005015674A - 吸着処理有機顔料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた分散安定性を有する有機色素誘導体またはトリアジン誘導体を吸着処理した有機顔料の製造方法の提供。
【解決手段】酸性官能基を有する有機色素誘導体または酸性官能基を有するトリアジン誘導体と、有機顔料とを水中で、上記有機色素誘導体の有機色素骨格部分を吸着部位と仮定した場合の吸着面積が有機顔料のBET比表面積の50%以上であり、かつ未吸着の有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の量が顔料1g当たり0.005g以下となる量で処理することを特徴とする吸着処理有機顔料の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】酸性官能基を有する有機色素誘導体または酸性官能基を有するトリアジン誘導体と、有機顔料とを水中で、上記有機色素誘導体の有機色素骨格部分を吸着部位と仮定した場合の吸着面積が有機顔料のBET比表面積の50%以上であり、かつ未吸着の有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の量が顔料1g当たり0.005g以下となる量で処理することを特徴とする吸着処理有機顔料の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】本発明は、酸性官能基を有する有機色素誘導体またはトリアジン誘導体で吸着処理された有機顔料およびその製造方法に関する。
【従来の技術】有機顔料は、着色剤として、印刷インキ、塗料、プラスチック形成材料、カラーフィルター、インクジェットなどの幅広い分野で使用されているが、近年、高鮮明性、高耐候性等の要求が厳しくなっている。通常、高鮮明性、高光沢な塗膜を得るには、有機顔料を媒体中に微分散することが必須であり、一般には、高性能の分散機や、高価な分散剤を使用するため、コスト高になる。また、各種の添加剤、例えば界面活性剤などの分散剤や顔料分散樹脂を使用した場合には、分散剤、分散樹脂の有機顔料表面への吸着が不十分な場合には、粒子同士が容易に再凝集する、さらには、分散剤、分散樹脂とインキ、塗料化用の樹脂との相溶性が悪い場合にはインキ、塗料の性能低下を招くといった問題があり、汎用性に欠ける。
以上のような種々の問題点を解決するために、有機色素を母体骨格として側鎖に酸性基や塩基性基を置換基として有する有機色素誘導体を分散剤として使用する方法が知られている。
この有機色素誘導体の作用機構としては、極性官能基を有する有機色素誘導体と、有機色素誘導体の有する官能基と逆極性を有する樹脂が酸−塩基相互作用により塩を形成し溶媒中に溶解し、この塩が有機色素部分を吸着部位として有機顔料に吸着して、樹脂層が立体反発効果を示し、有機顔料の分散安定化を図ると考えられている。この有機色素誘導体を用いた方法では、ほとんどの場合、インキ、塗料化用の樹脂をそのまま分散樹脂として使用できるので、分散剤に起因する相溶性の問題がなく、汎用性に優れる。しかし、非水系で樹脂と併用で使用する場合は、有機色素部分も溶媒和されるため、有機色素誘導体の溶解性が高くなり、有機顔料への吸着率が劣り、分散安定化に必要な表面被覆率にするには、有機色素誘導体の処理量を増やす必要があり、結果として、未吸着の有機色素誘導体が増えることになり、この未吸着の有機色素誘導体は耐水性やブリード等に悪影響を与えると考えられる。逆に、水系では、樹脂の官能基を中和しているので、有機色素誘導体−樹脂の塩を形成しづらく、また、一般に中性付近のpHである場合が多く、吸着処理に必要な有機色素誘導体の溶解量を得ることは困難である。
特許文献1、特許文献2、特許文献3では、顔料に対する未吸着の有機色素誘導体を取り除き、一層吸着とすることで、ブリードや混色、耐溶剤性を改善するとともに、耐水性と耐光性を両立した性能を有する顔料型インクジェット用記録液が開示されているが、未吸着の有機色素誘導体を取り除く方法として、遠心分離、限外濾過により分離を行うため、生産性が損なわれているばかりでなく、過剰の有機色素誘導体が排出されることによる環境負荷の増加と、有機色素誘導体の使用効率が低く、高価格となる欠点があった。
【特許文献1】
特開2000−273383号公報
【特許文献2】
特開2000−303014号公報
【特許文献3】
特開2000−313837号公報
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これらの欠点がない優れた分散安定性を有する有機色素誘導体またはトリアジン誘導体を吸着処理した有機顔料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、酸性官能基を有する有機色素誘導体または酸性官能基を有するトリアジン誘導体と、有機顔料とを水中で、上記有機色素誘導体の有機色素骨格部分を吸着部位と仮定した場合の、もしくは有機色素誘導体がアリール基またはトリアジン残基を有する場合は有機色素骨格部分とアリール基もしくはトリアジン残基部分を吸着部位と仮定した場合の吸着面積、又は、トリアジン誘導体のトリアジン部分を吸着部位と仮定した場合の、もしくはトリアジン誘導体がアリール基またはアントラキノン残基を有する場合はトリアジン部分とアリール基もしくはアントラキノン残基部分を吸着部位と仮定した場合の吸着面積が有機顔料のBET比表面積の50%以上であり、かつ未吸着の有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の量が顔料1g当たり0.005g以下となる量で処理することを特徴とする吸着処理有機顔料の製造方法に関する。
【発明の実施の形態】以下本発明について詳細に説明する。本発明に用いる有機顔料としては、印刷インキ、塗料等に使用される、カラーインデックスに記載された各種顔料が用いられ、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、イソインドリン系、イソインドリノン系、アゾ系等が例示される。有機顔料をさらに詳細に例示すると次のとおりである。トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料、リソールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの溶性アゾ顔料、アリザリン、インダンスロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体,フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系,キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット、ペリレンブラックなどのペリレン系、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系、チオインジゴ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、その他の顔料として、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、イソインドリンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット、ジケトピロロピロール等が例示できる。
このような顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーでより具体的に例示すると次のとおりである。C.I.ピグメントエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、125、128、137、138、139 147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、184 、185、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、192、202,206、207、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、42、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:6、16、22、60、64、80、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26、C.I.ピグメントブラック31,32等が例示できる。
有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の吸着性、脱着性を考えた場合、ロジン処理等の表面処理がされていない有機顔料を使用することが好ましい。また、有機顔料の粒径としては、特に限定されるものではないが、通常のインキや塗料に用いる有機顔料粒径範囲と同様に0.01〜1μmが好ましく、特に、0.01〜0.1μmが好ましい。ただし、ここでいう粒径とは電子顕微鏡などで測定された平均一次粒子径を示す。
本発明に用いる、酸性官能基を有する有機色素誘導体及び、酸性官能基を有するトリアジン誘導体は、下記一般式(1)、または(2)で表される。
一般式(1)
【化1】
式中の記号は下記の意味を表す。
Q1;有機色素残基、アントラキノン残基、置換基を有していてもよい複素環基または置換基を有していてもよい芳香族環基
R1;−O−R2、−NH−R2、ハロゲン基、−X1−R8または−X2−Y1−Z1(R2は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基を表す。)
X1;−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−CH2NHCOCH2NH−または−X3−Y1−X4−(X3及びX4はそれぞれ独立に−NH−または−O−を表す。)
X2;−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−NHCO−または−NHSO2−
Y1;炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基または置換基を有してもよいアリーレン基
Z1;−SO3Mまたは−COOM(Mは1〜3価のカチオンの1当量を表す。)
上記一般式(1)のQ3における有機色素残基としてはフタロシアニン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、アントラピリミジン系色素、アンサンスロン系色素、インダンスロン系色素、フラバンスロン系色素、ペリレン系色素、ペリノン系色素、チオインジコ系色素、イソインドリノン系色素、トリフェニルメタン系色素等の顔料または染料が挙げられる
上記一般式(1)のQ1における複素環または芳香族環としては例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン等が挙げられる。
一般式(2)
Q2−(−X5−Z2)n
式中の記号は下記の意味を表す。
Q2;有機色素残基またはアントラキノン残基
X5;直接結合、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−CH2NHCOCH2NH−または−X6−Y2−X7−(X6及びX7はそれぞれ独立に−NH−または−O−を表し、Y2は置換基を有していてもよいアルキレン基またはアリーレン基を表す。)
Z2;−SO3Mまたは−COOM(Mは1〜3価のカチオンの1当量を表す。)N;1〜4の整数
上記一般式(2)のQ4における有機色素残基としてはフタロシアニン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、アントラピリミジン系色素、アンサンスロン系色素、インダンスロン系色素、フラバンスロン系色素、ペリレン系色素、ペリノン系色素、チオインジコ系色素、イソインドリノン系色素、トリフェニルメタン系色素等の顔料または染料が挙げられる
吸着処理に使用する分散機としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、バスケットミル、ホモミキサー、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)等を用いることができる。コスト、処理能力等を考えた場合、メディア型分散機を使用するのが好ましい。また、メディアとしてはガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、ステンレスビーズ等を用いることができる。
吸着処理は、酸性基を有する有機色素誘導体またはトリアジン誘導体を処理する場合は、水、あるいはpH7〜11程度の塩基性水溶液に溶解させる。好ましくはpH8〜10である。その誘導体水溶液中に有機顔料を添加して、混合、分散することで吸着処理が進行するものである。
酸性基を有する有機色素誘導体またはトリアジン誘導体を溶解させる為に添加する塩基としては、アルカリ金属等の金属水酸化物類、弱酸と強塩基の反応によって得られる塩類、アンモニア、アミン基含有有機化合物等、水に溶解して塩基性を示す化合物を用いることが出来る。アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、アミン基含有有機化合物が好ましい。
酸性基を有する有機色素誘導体またはトリアジン誘導体を溶解させる為に添加する塩基量としては、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体に含まれる酸性官能基量に対して0.1〜10当量添加することが出来る。より好ましくは0.5〜5当量であり、1〜2当量が特に好ましい。
酸性および塩基性官能基を有する有機色素誘導体またはトリアジン誘導体水溶液の濃度は、1〜100mmol/Lであり、1〜50mmol/Lが好ましい。さらに好ましくは5〜20mmol/Lである。
有機顔料の水分散体のスラリー濃度は、有機顔料固有の親水性度や、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体を溶解させるために添加する酸量、塩基量によって適正濃度が変動するため、特に限定されるものではないが、5〜15%が好ましい。
分散安定化を図るには、有機顔料表面をより多くの有機色素誘導体またはトリアジン誘導体で被覆し、樹脂との親和性を上げることが必要である。具体的には、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体部分を吸着部位と考えた場合の、有機顔料のBET比表面積の50%以上となる量を吸着させる必要がある。例えば、フタロシアニン誘導体を使用した場合では、フタロシアニン残基の1分子あたりの分子占有面積は106Å2として計算を行い、以下、同様の計算方法によって、ベンズイミダゾロン残基の1分子あたりの分子占有面積は38Å2、トリアジン残基の分子占有面積は27Å2アリール基1分子あたりの分子占有面積は27Å2、アントラキノン残基の分子占有面積は55Å2、ジオキサジン残基の分子占有面積は169Å2として計算を行った。
有機顔料に対する有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の吸着量は、吸着処理前後の溶解量の差から求められる。つまり、吸着処理後の有機顔料分散体を遠心分離や濾過等の操作を行う事により、有機顔料に吸着していない溶解状態の有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の濃度を吸光度等から求め、処理前後の濃度差から吸着量を決定する。さらに、前記分子占有面積から、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の吸着面積を決定する。
本発明は、有機顔料のBET比表面積に対して、50%以上に相当する面積を有機色素誘導体またはトリアジン誘導体で被覆し、有機顔料表面に酸性官能基を導入し、分散安定化を図るものである。
吸着処理された有機顔料は、同時に、その性能を発揮させるために、分散粒径として0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下に微細化するのが望ましい。ここでいう分散粒径とは、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(例えば日機装社製「マイクロトラックUPA」)で測定される平均粒子径(D50値)である。
未吸着の有機色素誘導体またはトリアジン誘導体は、溶解状態のため、塗膜にした後も、耐水性、ブリード等への悪影響が懸念される。インクジェット、自動車塗料等のような耐水性、ブリードへの要求が高い用途に使用する場合は、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の濃度と、有機顔料の添加量を調整し、添加した有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の90%以上が吸着するような条件とし、未吸着の有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の量を有機顔料1g当たり0.005g以下とするのが望ましい。この方法によれば、遠心分離、限外濾過等の操作により未吸着の有機色素誘導体またはトリアジン誘導体を除去する必要がなくなり、低コストで耐水性、ブリード等の問題がない処理有機顔料を得ることができる。
本発明によって得られる吸着処理有機顔料は溶剤系または水系のワニスによって分散することにより、インキ、塗料等用の有機顔料分散体とすることができる。ワニスに含有される樹脂の例としては、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン変性マレイン酸、ポリアミド樹脂、塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が使用できる。吸着処理された有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の酸性官能基と逆極性をもつことが好ましい。
この吸着処理有機顔料は、水を除去して使用しても良いし、水系で使用する場合は、この組成物にインキ、塗料用の樹脂を混合しても使用できる。また、油系で使用する場合は、この吸着処理有機顔料組成物に、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の有する官能基と逆極性の官能基を有する樹脂を含むワニスを加熱しながら添加、混合し、インキ、塗料系の使用溶剤を添加し、水を取り除いた方が微細な分散体を得ることができる。
酸性官能基を有する、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体と逆極性の官能基を持つ樹脂とは、アミノ基を含む樹脂である。アミノ基を含む樹脂としては、アミン変性樹脂、あるいは高分子分散剤から選ばれる少なくとも1種であり、アミン変性樹脂としては、アミン変性ポリビニル樹脂、アミン変性アクリル樹脂、アミン変性ポリエステル樹脂およびアミン変性ポリウレタン樹脂等である。これら有機色素誘導体またはトリアジン誘導体色素と逆極性を持つ樹脂が、有機顔料に吸着した有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の官能基とがイオン結合した構造で、有機顔料の表面が樹脂で被覆されることにより、有機顔料の分散性が向上すると考えられ、樹脂の添加量としては、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の官能基を中和する量の1〜5倍が好ましく、1.1〜2倍が特に好ましい。
水を除去し、粉体として使用する場合には、吸着処理後の水分散液に、処理した有機色素誘導体またはトリアジン誘導体が有する官能基と逆極性の酸性または塩基性水溶液で中和して不溶化した後、濾過するのが好ましい。中和剤としての塩基は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属等の金属水酸化物類、弱酸と強塩基の反応によって得られる塩類、アンモニア、アミン基含有有機化合物、金属アルコキシド等、水に溶解して塩基性を示す化合物を用いることが出来る。アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、アミン基含有化合物およびアルカリ金属の金属アルコキシドが好ましく、アンモニアおよびアミン含有化合物が特に好ましい。
本発明によって得られる吸着処理有機顔料組成物は、非水系または水系のオフセット、グラビア、筆記具、インクジェット等の各種インキや、建築、自動車、カラーフィルター等の各種塗料、プラスチック用などの着色剤等広範囲の分野に利用することができる。
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に特に限定されるものではない。実施例中、部および%は、それぞれ重量部および重量%を表す。なお、実施例、比較例で得られた有機顔料分散体の粒径の測定および貯蔵安定性、光沢値の測定、耐水性の評価は下記の方法で行った。
(1) 動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)を用いて平均粒子径(D50の値)を測定した。水性有機顔料分散体にはイオン交換水を、油性有機顔料分散体にはトルエンを希釈溶媒として使用した。
(2) 貯蔵安定性は、有機顔料分散体を40℃で10日間保存した後の粒径の変化から保存安定性を評価した。
(3) アクリル樹脂とメラミン樹脂を用いて塗料を作製し、中塗り板に塗工、焼き付けを行い、20゜光沢値を測定した。
(4) (3)の塗板に上塗り用のクリヤーコートを塗工し、60℃のイオン交換水中で10日間保存し、塗面状態を観察した。
実施例1 LIONOL BLUE E(東洋インキ社製:BET比表面積70m2/g)20g、一般式(3)で示される銅フタロシアニン誘導体0.9g、イオン交換水79.1gを225ccのガラス瓶に仕込み、混合した後、pH9.5になるようにジメチルエタノールアミンを添加しジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて1時間分散を行い、本発明の吸着処理有機顔料の水分散体を得た。有機顔料濃度を1%になるまでイオン交換水で希釈し、超遠心分離機(日立工機社製:70P−72)を用いて50000rpmで1時間有機顔料を沈降させ、上澄みを0.5μmのメンブランフィルターを通した後、吸光度の測定を行い、上澄みのフタロシアニン誘導体の濃度を決定した。この上澄み濃度と仕込み量の差からフタロシアニン誘導体の吸着量を求めた。吸着量は0.57mg/m2であり、フタロシアニンの分子占有面積を1.06×10−18m2とすると、表面被覆率は55%となる。また、このときの未吸着の誘導体量は顔料1gあたり0.005gである。希釈前の表面処理有機顔料水分散体20gに水溶性アクリル樹脂A(NV=35%、酸価65、OH価50、Mw=15000)32gとサイメル325(三井サイテック社製メラミン樹脂)6gとイオン交換水22gを添加し、ディスパーで均一になるように攪拌、混合し、水性塗料を得た。
一般式(3)
【化2】
実施例2 実施例1の希釈前の表面処理有機顔料水分散体を105℃の熱風オーブンで加熱して水を除去し、吸着処理有機顔料を得た。この表面処理有機顔料4gに油溶性アクリル樹脂B(NV=50%、酸価8、OH価22、Mw=35000)22.4gとサイメル303(三井サイテック社製メラミン樹脂)4.8gとトルエン35.5gを添加し、ディスパーで均一になるように攪拌、混合し、油性塗料を得た。
実施例3 LIONOL RED 5620(東洋インキ社製:BET比表面積35m2/g)20g、一般式(4)で示されるP.R.146誘導体0.3g、イオン交換水79.7gを225ccのガラス瓶に仕込み、混合した後、pH9.5になるようにジメチルエタノールアミンを添加しジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて1時間分散を行い、本発明の吸着処理有機顔料の水分散体を得た。実施例1と同様の操作によりP.R.146誘導体の吸着量を求めた。吸着量は0.34mg/m2であり、この有機色素残基部分の分子占有面積を1.27×10−18m2とすると、表面被覆率は59%となる。また、このときの未吸着の誘導体量は顔料1gあたり0.003gである。希釈前の表面処理有機顔料水分散体20gに水溶性アクリル樹脂A(NV=35%、酸価65、OH価50、Mw=15000)32gとサイメル325(三井サイテック社製メラミン樹脂)6gとイオン交換水22gを添加し、ディスパーで均一になるように攪拌、混合し、水性塗料を得た。
一般式(4)
【化3】
実施例4 Hostaperm Violet BL(クラリアント社製:BET比表面積103m2/g)20g、一般式(5)のスルホン酸で示されるP.V.23誘導体0.7g、イオン交換水79.3gを225ccのガラス瓶に仕込み、混合した後、pH9.0になるようにジメチルエタノールアミンを添加しジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて1時間分散を行い、本発明の吸着処理有機顔料の水分散体を得た。実施例1と同様の操作によりP.V.23誘導体の吸着量を求めた。吸着量は0.33mg/m2であり、この有機色素残基部分の分子占有面積を1.62×10−18m2とすると、表面被覆率は53%となる。また、このときの未吸着の誘導体量は顔料1gあたり0.001gである。希釈前の表面処理有機顔料水分散体20gに水溶性アクリル樹脂A(NV=35%、酸価65、OH価50、Mw=15000)32gとサイメル325(三井サイテック社製メラミン樹脂)6gとイオン交換水22gを添加し、ディスパーで均一になるように攪拌、混合し、水性塗料を得た。
一般式(5)
【化4】
実施例5 Paliogen Maroon L3980(BASF社製:BET比表面積55m2/g)20g、一般式(6)で示されるトリアジン誘導体0.7g、イオン交換水79.3gを225ccのガラス瓶に仕込み、混合した後、pH9.0になるようにジメチルエタノールアミンを添加しジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて1時間分散を行い、本発明の吸着処理有機顔料の水分散体を得た。実施例1と同様の操作によりトリアジン誘導体の吸着量を求めた。吸着量は0.58mg/m2であり、このトリアジン部分とアントラキノン残基を合わせた分子占有面積を1.09×10−18m2とすると、表面被覆率は74%となる。また、このときの未吸着の誘導体量は顔料1gあたり0.003gである。希釈前の表面処理有機顔料水分散体20gに水溶性アクリル樹脂A(NV=35%、酸価65、OH価50、Mw=15000)32gとサイメル325(三井サイテック社製メラミン樹脂)6gとイオン交換水22gを添加し、ディスパーで均一になるように攪拌、混合し、水性塗料を得た。
一般式(6)
【化5】
【比較例】
表に示した通り、本発明の有機顔料分散体は、比較例に対して微細な分散粒径、良好な保存安定性、耐水性を示した。
比較例1 LIONOL BLUE E(東洋インキ社製:BET比表面積70m2/g)20g、一般式(3)で示される銅フタロシアニン誘導体0.3g、イオン交換水79.7gを225ccのガラス瓶に仕込み、混合した後、pH9.5になるようにジメチルエタノールアミンを添加しジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて1時間分散を行い、有機顔料の水分散体を得た。実施例1と同様の操作によりフタロシアニン誘導体の吸着量を求めた。吸着量は0.19mg/m2であり、フタロシアニンの分子占有面積を1.06×10−18m2とすると、表面被覆率は18%となる。また、このときの未吸着の誘導体量は顔料1gあたり0.002gである。希釈前の表面処理有機顔料水分散体20gに水溶性アクリル樹脂A(NV=35%、酸価65、OH価50、Mw=15000)32gとサイメル325(三井サイテック社製メラミン樹脂)6gとイオン交換水22gを添加し、ディスパーで均一になるように攪拌、混合し、水性塗料を得た。
比較例2 LIONOL BLUE E 20g、一般式(3)で示される銅フタロシアニン誘導体0.7g、水溶性アクリル樹脂A 24.5gとイオン交換水54.8gを225ccのガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて1時間分散を行った。実施例1と同様の操作で得られた表面被覆率は15%となる。希釈前の有機顔料水分散体20gに水溶性アクリル樹脂A 27.1gとサイメル325 6gとイオン交換水26.9gを添加し、ディスパーで均一になるように攪拌、混合し、水性塗料を得た。
比較例3 LIONOL RED 5620 20g、一般式(4)で示されるP.R.146誘導体0.8g、水溶性アクリル樹脂A 24.5gとイオン交換水54.7gを225ccのガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて1時間分散を行った。実施例1と同様の操作で得られた表面被覆率は21%となる。また、このときの未吸着の誘導体量は顔料1gあたり0.03gである。希釈前の有機顔料水分散体20gに水溶性アクリル樹脂A 27.1gとサイメル325 6gとイオン交換水26.9gを添加し、ディスパーで均一になるように攪拌、混合し、水性塗料を得た。
【表1】
【発明の効果】
本発明によって得られる表面吸着処理有機顔料を使用した分散体は、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体と樹脂を混合する手法で得られる分散体、および有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の表面被覆率が50%以下の吸着処理有機顔料の分散体と比較して、極めて良好な分散性、保存安定性を示し、未吸着誘導体量が少ないことから良好な耐水性を示した。
【従来の技術】有機顔料は、着色剤として、印刷インキ、塗料、プラスチック形成材料、カラーフィルター、インクジェットなどの幅広い分野で使用されているが、近年、高鮮明性、高耐候性等の要求が厳しくなっている。通常、高鮮明性、高光沢な塗膜を得るには、有機顔料を媒体中に微分散することが必須であり、一般には、高性能の分散機や、高価な分散剤を使用するため、コスト高になる。また、各種の添加剤、例えば界面活性剤などの分散剤や顔料分散樹脂を使用した場合には、分散剤、分散樹脂の有機顔料表面への吸着が不十分な場合には、粒子同士が容易に再凝集する、さらには、分散剤、分散樹脂とインキ、塗料化用の樹脂との相溶性が悪い場合にはインキ、塗料の性能低下を招くといった問題があり、汎用性に欠ける。
以上のような種々の問題点を解決するために、有機色素を母体骨格として側鎖に酸性基や塩基性基を置換基として有する有機色素誘導体を分散剤として使用する方法が知られている。
この有機色素誘導体の作用機構としては、極性官能基を有する有機色素誘導体と、有機色素誘導体の有する官能基と逆極性を有する樹脂が酸−塩基相互作用により塩を形成し溶媒中に溶解し、この塩が有機色素部分を吸着部位として有機顔料に吸着して、樹脂層が立体反発効果を示し、有機顔料の分散安定化を図ると考えられている。この有機色素誘導体を用いた方法では、ほとんどの場合、インキ、塗料化用の樹脂をそのまま分散樹脂として使用できるので、分散剤に起因する相溶性の問題がなく、汎用性に優れる。しかし、非水系で樹脂と併用で使用する場合は、有機色素部分も溶媒和されるため、有機色素誘導体の溶解性が高くなり、有機顔料への吸着率が劣り、分散安定化に必要な表面被覆率にするには、有機色素誘導体の処理量を増やす必要があり、結果として、未吸着の有機色素誘導体が増えることになり、この未吸着の有機色素誘導体は耐水性やブリード等に悪影響を与えると考えられる。逆に、水系では、樹脂の官能基を中和しているので、有機色素誘導体−樹脂の塩を形成しづらく、また、一般に中性付近のpHである場合が多く、吸着処理に必要な有機色素誘導体の溶解量を得ることは困難である。
特許文献1、特許文献2、特許文献3では、顔料に対する未吸着の有機色素誘導体を取り除き、一層吸着とすることで、ブリードや混色、耐溶剤性を改善するとともに、耐水性と耐光性を両立した性能を有する顔料型インクジェット用記録液が開示されているが、未吸着の有機色素誘導体を取り除く方法として、遠心分離、限外濾過により分離を行うため、生産性が損なわれているばかりでなく、過剰の有機色素誘導体が排出されることによる環境負荷の増加と、有機色素誘導体の使用効率が低く、高価格となる欠点があった。
【特許文献1】
特開2000−273383号公報
【特許文献2】
特開2000−303014号公報
【特許文献3】
特開2000−313837号公報
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これらの欠点がない優れた分散安定性を有する有機色素誘導体またはトリアジン誘導体を吸着処理した有機顔料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、酸性官能基を有する有機色素誘導体または酸性官能基を有するトリアジン誘導体と、有機顔料とを水中で、上記有機色素誘導体の有機色素骨格部分を吸着部位と仮定した場合の、もしくは有機色素誘導体がアリール基またはトリアジン残基を有する場合は有機色素骨格部分とアリール基もしくはトリアジン残基部分を吸着部位と仮定した場合の吸着面積、又は、トリアジン誘導体のトリアジン部分を吸着部位と仮定した場合の、もしくはトリアジン誘導体がアリール基またはアントラキノン残基を有する場合はトリアジン部分とアリール基もしくはアントラキノン残基部分を吸着部位と仮定した場合の吸着面積が有機顔料のBET比表面積の50%以上であり、かつ未吸着の有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の量が顔料1g当たり0.005g以下となる量で処理することを特徴とする吸着処理有機顔料の製造方法に関する。
【発明の実施の形態】以下本発明について詳細に説明する。本発明に用いる有機顔料としては、印刷インキ、塗料等に使用される、カラーインデックスに記載された各種顔料が用いられ、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、イソインドリン系、イソインドリノン系、アゾ系等が例示される。有機顔料をさらに詳細に例示すると次のとおりである。トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料、リソールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの溶性アゾ顔料、アリザリン、インダンスロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体,フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系,キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット、ペリレンブラックなどのペリレン系、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系、チオインジゴ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、その他の顔料として、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、イソインドリンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット、ジケトピロロピロール等が例示できる。
このような顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーでより具体的に例示すると次のとおりである。C.I.ピグメントエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、125、128、137、138、139 147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、184 、185、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、192、202,206、207、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、42、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:6、16、22、60、64、80、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26、C.I.ピグメントブラック31,32等が例示できる。
有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の吸着性、脱着性を考えた場合、ロジン処理等の表面処理がされていない有機顔料を使用することが好ましい。また、有機顔料の粒径としては、特に限定されるものではないが、通常のインキや塗料に用いる有機顔料粒径範囲と同様に0.01〜1μmが好ましく、特に、0.01〜0.1μmが好ましい。ただし、ここでいう粒径とは電子顕微鏡などで測定された平均一次粒子径を示す。
本発明に用いる、酸性官能基を有する有機色素誘導体及び、酸性官能基を有するトリアジン誘導体は、下記一般式(1)、または(2)で表される。
一般式(1)
【化1】
式中の記号は下記の意味を表す。
Q1;有機色素残基、アントラキノン残基、置換基を有していてもよい複素環基または置換基を有していてもよい芳香族環基
R1;−O−R2、−NH−R2、ハロゲン基、−X1−R8または−X2−Y1−Z1(R2は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基を表す。)
X1;−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−CH2NHCOCH2NH−または−X3−Y1−X4−(X3及びX4はそれぞれ独立に−NH−または−O−を表す。)
X2;−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−NHCO−または−NHSO2−
Y1;炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基または置換基を有してもよいアリーレン基
Z1;−SO3Mまたは−COOM(Mは1〜3価のカチオンの1当量を表す。)
上記一般式(1)のQ3における有機色素残基としてはフタロシアニン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、アントラピリミジン系色素、アンサンスロン系色素、インダンスロン系色素、フラバンスロン系色素、ペリレン系色素、ペリノン系色素、チオインジコ系色素、イソインドリノン系色素、トリフェニルメタン系色素等の顔料または染料が挙げられる
上記一般式(1)のQ1における複素環または芳香族環としては例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン等が挙げられる。
一般式(2)
Q2−(−X5−Z2)n
式中の記号は下記の意味を表す。
Q2;有機色素残基またはアントラキノン残基
X5;直接結合、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−CH2NHCOCH2NH−または−X6−Y2−X7−(X6及びX7はそれぞれ独立に−NH−または−O−を表し、Y2は置換基を有していてもよいアルキレン基またはアリーレン基を表す。)
Z2;−SO3Mまたは−COOM(Mは1〜3価のカチオンの1当量を表す。)N;1〜4の整数
上記一般式(2)のQ4における有機色素残基としてはフタロシアニン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、アントラピリミジン系色素、アンサンスロン系色素、インダンスロン系色素、フラバンスロン系色素、ペリレン系色素、ペリノン系色素、チオインジコ系色素、イソインドリノン系色素、トリフェニルメタン系色素等の顔料または染料が挙げられる
吸着処理に使用する分散機としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、バスケットミル、ホモミキサー、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)等を用いることができる。コスト、処理能力等を考えた場合、メディア型分散機を使用するのが好ましい。また、メディアとしてはガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、ステンレスビーズ等を用いることができる。
吸着処理は、酸性基を有する有機色素誘導体またはトリアジン誘導体を処理する場合は、水、あるいはpH7〜11程度の塩基性水溶液に溶解させる。好ましくはpH8〜10である。その誘導体水溶液中に有機顔料を添加して、混合、分散することで吸着処理が進行するものである。
酸性基を有する有機色素誘導体またはトリアジン誘導体を溶解させる為に添加する塩基としては、アルカリ金属等の金属水酸化物類、弱酸と強塩基の反応によって得られる塩類、アンモニア、アミン基含有有機化合物等、水に溶解して塩基性を示す化合物を用いることが出来る。アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、アミン基含有有機化合物が好ましい。
酸性基を有する有機色素誘導体またはトリアジン誘導体を溶解させる為に添加する塩基量としては、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体に含まれる酸性官能基量に対して0.1〜10当量添加することが出来る。より好ましくは0.5〜5当量であり、1〜2当量が特に好ましい。
酸性および塩基性官能基を有する有機色素誘導体またはトリアジン誘導体水溶液の濃度は、1〜100mmol/Lであり、1〜50mmol/Lが好ましい。さらに好ましくは5〜20mmol/Lである。
有機顔料の水分散体のスラリー濃度は、有機顔料固有の親水性度や、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体を溶解させるために添加する酸量、塩基量によって適正濃度が変動するため、特に限定されるものではないが、5〜15%が好ましい。
分散安定化を図るには、有機顔料表面をより多くの有機色素誘導体またはトリアジン誘導体で被覆し、樹脂との親和性を上げることが必要である。具体的には、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体部分を吸着部位と考えた場合の、有機顔料のBET比表面積の50%以上となる量を吸着させる必要がある。例えば、フタロシアニン誘導体を使用した場合では、フタロシアニン残基の1分子あたりの分子占有面積は106Å2として計算を行い、以下、同様の計算方法によって、ベンズイミダゾロン残基の1分子あたりの分子占有面積は38Å2、トリアジン残基の分子占有面積は27Å2アリール基1分子あたりの分子占有面積は27Å2、アントラキノン残基の分子占有面積は55Å2、ジオキサジン残基の分子占有面積は169Å2として計算を行った。
有機顔料に対する有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の吸着量は、吸着処理前後の溶解量の差から求められる。つまり、吸着処理後の有機顔料分散体を遠心分離や濾過等の操作を行う事により、有機顔料に吸着していない溶解状態の有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の濃度を吸光度等から求め、処理前後の濃度差から吸着量を決定する。さらに、前記分子占有面積から、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の吸着面積を決定する。
本発明は、有機顔料のBET比表面積に対して、50%以上に相当する面積を有機色素誘導体またはトリアジン誘導体で被覆し、有機顔料表面に酸性官能基を導入し、分散安定化を図るものである。
吸着処理された有機顔料は、同時に、その性能を発揮させるために、分散粒径として0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下に微細化するのが望ましい。ここでいう分散粒径とは、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(例えば日機装社製「マイクロトラックUPA」)で測定される平均粒子径(D50値)である。
未吸着の有機色素誘導体またはトリアジン誘導体は、溶解状態のため、塗膜にした後も、耐水性、ブリード等への悪影響が懸念される。インクジェット、自動車塗料等のような耐水性、ブリードへの要求が高い用途に使用する場合は、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の濃度と、有機顔料の添加量を調整し、添加した有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の90%以上が吸着するような条件とし、未吸着の有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の量を有機顔料1g当たり0.005g以下とするのが望ましい。この方法によれば、遠心分離、限外濾過等の操作により未吸着の有機色素誘導体またはトリアジン誘導体を除去する必要がなくなり、低コストで耐水性、ブリード等の問題がない処理有機顔料を得ることができる。
本発明によって得られる吸着処理有機顔料は溶剤系または水系のワニスによって分散することにより、インキ、塗料等用の有機顔料分散体とすることができる。ワニスに含有される樹脂の例としては、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン変性マレイン酸、ポリアミド樹脂、塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が使用できる。吸着処理された有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の酸性官能基と逆極性をもつことが好ましい。
この吸着処理有機顔料は、水を除去して使用しても良いし、水系で使用する場合は、この組成物にインキ、塗料用の樹脂を混合しても使用できる。また、油系で使用する場合は、この吸着処理有機顔料組成物に、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の有する官能基と逆極性の官能基を有する樹脂を含むワニスを加熱しながら添加、混合し、インキ、塗料系の使用溶剤を添加し、水を取り除いた方が微細な分散体を得ることができる。
酸性官能基を有する、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体と逆極性の官能基を持つ樹脂とは、アミノ基を含む樹脂である。アミノ基を含む樹脂としては、アミン変性樹脂、あるいは高分子分散剤から選ばれる少なくとも1種であり、アミン変性樹脂としては、アミン変性ポリビニル樹脂、アミン変性アクリル樹脂、アミン変性ポリエステル樹脂およびアミン変性ポリウレタン樹脂等である。これら有機色素誘導体またはトリアジン誘導体色素と逆極性を持つ樹脂が、有機顔料に吸着した有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の官能基とがイオン結合した構造で、有機顔料の表面が樹脂で被覆されることにより、有機顔料の分散性が向上すると考えられ、樹脂の添加量としては、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の官能基を中和する量の1〜5倍が好ましく、1.1〜2倍が特に好ましい。
水を除去し、粉体として使用する場合には、吸着処理後の水分散液に、処理した有機色素誘導体またはトリアジン誘導体が有する官能基と逆極性の酸性または塩基性水溶液で中和して不溶化した後、濾過するのが好ましい。中和剤としての塩基は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属等の金属水酸化物類、弱酸と強塩基の反応によって得られる塩類、アンモニア、アミン基含有有機化合物、金属アルコキシド等、水に溶解して塩基性を示す化合物を用いることが出来る。アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、アミン基含有化合物およびアルカリ金属の金属アルコキシドが好ましく、アンモニアおよびアミン含有化合物が特に好ましい。
本発明によって得られる吸着処理有機顔料組成物は、非水系または水系のオフセット、グラビア、筆記具、インクジェット等の各種インキや、建築、自動車、カラーフィルター等の各種塗料、プラスチック用などの着色剤等広範囲の分野に利用することができる。
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に特に限定されるものではない。実施例中、部および%は、それぞれ重量部および重量%を表す。なお、実施例、比較例で得られた有機顔料分散体の粒径の測定および貯蔵安定性、光沢値の測定、耐水性の評価は下記の方法で行った。
(1) 動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)を用いて平均粒子径(D50の値)を測定した。水性有機顔料分散体にはイオン交換水を、油性有機顔料分散体にはトルエンを希釈溶媒として使用した。
(2) 貯蔵安定性は、有機顔料分散体を40℃で10日間保存した後の粒径の変化から保存安定性を評価した。
(3) アクリル樹脂とメラミン樹脂を用いて塗料を作製し、中塗り板に塗工、焼き付けを行い、20゜光沢値を測定した。
(4) (3)の塗板に上塗り用のクリヤーコートを塗工し、60℃のイオン交換水中で10日間保存し、塗面状態を観察した。
実施例1 LIONOL BLUE E(東洋インキ社製:BET比表面積70m2/g)20g、一般式(3)で示される銅フタロシアニン誘導体0.9g、イオン交換水79.1gを225ccのガラス瓶に仕込み、混合した後、pH9.5になるようにジメチルエタノールアミンを添加しジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて1時間分散を行い、本発明の吸着処理有機顔料の水分散体を得た。有機顔料濃度を1%になるまでイオン交換水で希釈し、超遠心分離機(日立工機社製:70P−72)を用いて50000rpmで1時間有機顔料を沈降させ、上澄みを0.5μmのメンブランフィルターを通した後、吸光度の測定を行い、上澄みのフタロシアニン誘導体の濃度を決定した。この上澄み濃度と仕込み量の差からフタロシアニン誘導体の吸着量を求めた。吸着量は0.57mg/m2であり、フタロシアニンの分子占有面積を1.06×10−18m2とすると、表面被覆率は55%となる。また、このときの未吸着の誘導体量は顔料1gあたり0.005gである。希釈前の表面処理有機顔料水分散体20gに水溶性アクリル樹脂A(NV=35%、酸価65、OH価50、Mw=15000)32gとサイメル325(三井サイテック社製メラミン樹脂)6gとイオン交換水22gを添加し、ディスパーで均一になるように攪拌、混合し、水性塗料を得た。
一般式(3)
【化2】
実施例2 実施例1の希釈前の表面処理有機顔料水分散体を105℃の熱風オーブンで加熱して水を除去し、吸着処理有機顔料を得た。この表面処理有機顔料4gに油溶性アクリル樹脂B(NV=50%、酸価8、OH価22、Mw=35000)22.4gとサイメル303(三井サイテック社製メラミン樹脂)4.8gとトルエン35.5gを添加し、ディスパーで均一になるように攪拌、混合し、油性塗料を得た。
実施例3 LIONOL RED 5620(東洋インキ社製:BET比表面積35m2/g)20g、一般式(4)で示されるP.R.146誘導体0.3g、イオン交換水79.7gを225ccのガラス瓶に仕込み、混合した後、pH9.5になるようにジメチルエタノールアミンを添加しジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて1時間分散を行い、本発明の吸着処理有機顔料の水分散体を得た。実施例1と同様の操作によりP.R.146誘導体の吸着量を求めた。吸着量は0.34mg/m2であり、この有機色素残基部分の分子占有面積を1.27×10−18m2とすると、表面被覆率は59%となる。また、このときの未吸着の誘導体量は顔料1gあたり0.003gである。希釈前の表面処理有機顔料水分散体20gに水溶性アクリル樹脂A(NV=35%、酸価65、OH価50、Mw=15000)32gとサイメル325(三井サイテック社製メラミン樹脂)6gとイオン交換水22gを添加し、ディスパーで均一になるように攪拌、混合し、水性塗料を得た。
一般式(4)
【化3】
実施例4 Hostaperm Violet BL(クラリアント社製:BET比表面積103m2/g)20g、一般式(5)のスルホン酸で示されるP.V.23誘導体0.7g、イオン交換水79.3gを225ccのガラス瓶に仕込み、混合した後、pH9.0になるようにジメチルエタノールアミンを添加しジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて1時間分散を行い、本発明の吸着処理有機顔料の水分散体を得た。実施例1と同様の操作によりP.V.23誘導体の吸着量を求めた。吸着量は0.33mg/m2であり、この有機色素残基部分の分子占有面積を1.62×10−18m2とすると、表面被覆率は53%となる。また、このときの未吸着の誘導体量は顔料1gあたり0.001gである。希釈前の表面処理有機顔料水分散体20gに水溶性アクリル樹脂A(NV=35%、酸価65、OH価50、Mw=15000)32gとサイメル325(三井サイテック社製メラミン樹脂)6gとイオン交換水22gを添加し、ディスパーで均一になるように攪拌、混合し、水性塗料を得た。
一般式(5)
【化4】
実施例5 Paliogen Maroon L3980(BASF社製:BET比表面積55m2/g)20g、一般式(6)で示されるトリアジン誘導体0.7g、イオン交換水79.3gを225ccのガラス瓶に仕込み、混合した後、pH9.0になるようにジメチルエタノールアミンを添加しジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて1時間分散を行い、本発明の吸着処理有機顔料の水分散体を得た。実施例1と同様の操作によりトリアジン誘導体の吸着量を求めた。吸着量は0.58mg/m2であり、このトリアジン部分とアントラキノン残基を合わせた分子占有面積を1.09×10−18m2とすると、表面被覆率は74%となる。また、このときの未吸着の誘導体量は顔料1gあたり0.003gである。希釈前の表面処理有機顔料水分散体20gに水溶性アクリル樹脂A(NV=35%、酸価65、OH価50、Mw=15000)32gとサイメル325(三井サイテック社製メラミン樹脂)6gとイオン交換水22gを添加し、ディスパーで均一になるように攪拌、混合し、水性塗料を得た。
一般式(6)
【化5】
【比較例】
表に示した通り、本発明の有機顔料分散体は、比較例に対して微細な分散粒径、良好な保存安定性、耐水性を示した。
比較例1 LIONOL BLUE E(東洋インキ社製:BET比表面積70m2/g)20g、一般式(3)で示される銅フタロシアニン誘導体0.3g、イオン交換水79.7gを225ccのガラス瓶に仕込み、混合した後、pH9.5になるようにジメチルエタノールアミンを添加しジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて1時間分散を行い、有機顔料の水分散体を得た。実施例1と同様の操作によりフタロシアニン誘導体の吸着量を求めた。吸着量は0.19mg/m2であり、フタロシアニンの分子占有面積を1.06×10−18m2とすると、表面被覆率は18%となる。また、このときの未吸着の誘導体量は顔料1gあたり0.002gである。希釈前の表面処理有機顔料水分散体20gに水溶性アクリル樹脂A(NV=35%、酸価65、OH価50、Mw=15000)32gとサイメル325(三井サイテック社製メラミン樹脂)6gとイオン交換水22gを添加し、ディスパーで均一になるように攪拌、混合し、水性塗料を得た。
比較例2 LIONOL BLUE E 20g、一般式(3)で示される銅フタロシアニン誘導体0.7g、水溶性アクリル樹脂A 24.5gとイオン交換水54.8gを225ccのガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて1時間分散を行った。実施例1と同様の操作で得られた表面被覆率は15%となる。希釈前の有機顔料水分散体20gに水溶性アクリル樹脂A 27.1gとサイメル325 6gとイオン交換水26.9gを添加し、ディスパーで均一になるように攪拌、混合し、水性塗料を得た。
比較例3 LIONOL RED 5620 20g、一般式(4)で示されるP.R.146誘導体0.8g、水溶性アクリル樹脂A 24.5gとイオン交換水54.7gを225ccのガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて1時間分散を行った。実施例1と同様の操作で得られた表面被覆率は21%となる。また、このときの未吸着の誘導体量は顔料1gあたり0.03gである。希釈前の有機顔料水分散体20gに水溶性アクリル樹脂A 27.1gとサイメル325 6gとイオン交換水26.9gを添加し、ディスパーで均一になるように攪拌、混合し、水性塗料を得た。
【表1】
【発明の効果】
本発明によって得られる表面吸着処理有機顔料を使用した分散体は、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体と樹脂を混合する手法で得られる分散体、および有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の表面被覆率が50%以下の吸着処理有機顔料の分散体と比較して、極めて良好な分散性、保存安定性を示し、未吸着誘導体量が少ないことから良好な耐水性を示した。
Claims (3)
- 酸性官能基を有する有機色素誘導体または酸性官能基を有するトリアジン誘導体と、有機顔料とを水中で、上記有機色素誘導体の有機色素骨格部分を吸着部位と仮定した場合の、もしくは有機色素誘導体がアリール基またはトリアジン残基を有する場合は有機色素骨格部分とアリール基もしくはトリアジン残基部分を吸着部位と仮定した場合の吸着面積、又は、トリアジン誘導体のトリアジン部分を吸着部位と仮定した場合の、もしくはトリアジン誘導体がアリール基またはアントラキノン残基を有する場合はトリアジン部分とアリール基もしくはアントラキノン残基部分を吸着部位と仮定した場合の吸着面積が有機顔料のBET比表面積の50%以上であり、かつ未吸着の有機色素誘導体またはトリアジン誘導体の量が顔料1g当たり0.005g以下となる量で処理することを特徴とする吸着処理有機顔料の製造方法。
- 吸着処理がメディア型分散機を用いる請求項1記載の製造方法。
- 請求項1ないし2いずれか記載の製造方法で得られた吸着処理有機顔料。
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- 2003-06-27 JP JP2003184065A patent/JP2005015674A/ja active Pending
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