JP2005011548A - 誘電体ペースト並びに電子部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】高誘電率でかつ回路形成等の容易な誘電体ペーストを提供することにある。特に、本発明では、誘電体粉末を多量に添加して高誘電率化を図ると、誘電体ペーストの粘度が上昇し、回路形成の際の塗工性が低下するという課題を解消しようとするもので、一般的に高誘電率の範囲とされる15以上の誘電率を確保しつつ、誘電体ペーストの粘度を、回路形成等において好適とされる0.5〜50ポイズの範囲に抑えた、特定のシランカップリング剤で表面処理したチタン酸バリウム系材料を、エポキシ樹脂中に配合した誘電体ペーストを提供すること、およびこのペーストを用いた高誘電率の電子部品を提供することにある。
【解決手段】硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂75〜30容量%と、γ−クロロプロピルトリメトキシシランで表面処理してなるチタン酸バリウム系材料25〜70容量%とを主成分とする誘電体ペーストを提供することによって、解決される。
【選択図】 なし
【解決手段】硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂75〜30容量%と、γ−クロロプロピルトリメトキシシランで表面処理してなるチタン酸バリウム系材料25〜70容量%とを主成分とする誘電体ペーストを提供することによって、解決される。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンデンサ材料等として電子部品に用いられる、高誘電率でかつ塗工性に優れた、エポキシ樹脂組成物からなる誘電体ペースト、並びにそれを用いた電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子、情報通信機器の小型化要求の増大にともない、各種基板にコンデンサ、レジスター等の機能を持った電子部品を直接形成する回路形成技術ないしは部品形成技術の開発が進められている。特に近年の情報通信における伝送容量の増大化、高速化に対応して、10GHz程度の高周波領域での使用特性に優れた回路形成材料が求められており、このような要求に応えるため、コンデンサ等の機能を持った回路形成材料として、合成樹脂中に誘電体粉末を混合分散してなる誘電体ペーストが提供されている。
【0003】
このような誘電体ペーストとして、特許文献1が知られている。すなわち、誘電体粉末が高い固形分比率で含有していても低粘度で、回路形成の際の塗工が容易な誘電体ペースト、および、形成される回路表面が平滑で均一な膜厚、かつ高誘電率、低誘電損失の誘電体膜を形成し得る誘電体ペーストを提供することを課題とし、かかる課題は、芳香族液晶ポリエステルと、特定のハロゲン置換フェノール化合物を含む溶媒と、誘電体粉末とを特定の割合で含有せしめることによって解決できるとしている。しかしながら、このような誘電体ペーストは、耐熱性が低い問題点がある。
【0004】
また、上記と同様な課題を解決するための誘電体材料については、特許文献2も知られている。すなわち、投影形状が円、扁平円、または楕円形の誘電体粉末を樹脂中に分散して複合誘電体材料とすることによって、誘電率が高く、強度低下がなく、小型で高性能、総合的な電気特性に優れた電子部品を提供できるとしている。このような誘電体材料においても、誘電率を高くするためには誘電体粉末を高充填する必要があり、得られた複合誘電体材料は、塗工性や誘電正接の悪化が生じる問題点があって、満足できるものではなかった。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−60595号公報
【特許文献2】
特開2002−158135号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明もこのような課題を解決しようとするもので、高誘電率でかつ回路形成等の容易な誘電体ペーストを提供することにある。特に、本発明では、誘電体粉末を多量に添加して高誘電率化を図ると、誘電体ペーストの粘度が上昇し、回路形成の際の塗工性が低下するという課題を解消しようとするもので、一般的に高誘電率の範囲とされる15以上の誘電率を確保しつつ、誘電体ペーストの粘度を、回路形成等において好適とされる0.5〜50ポイズの範囲に抑えた、特定のシランカップリング剤で表面処理したチタン酸バリウム系材料を、エポキシ樹脂中に配合した誘電体ペーストを提供すること、およびこのペーストを用いた高誘電率の電子部品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記解決しようとする課題は、請求項1に記載されるように、硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂75〜30容量%と、γ−クロロプロピルトリメトキシシランで表面処理してなるチタン酸バリウム系材料25〜70容量%とを主成分とする誘電体ペーストを提供することによって、解決される。
【0008】
また、請求項2に記載されるように、前記チタン酸バリウム系材料が、チタン酸バリウム100重量部に対して、カルシウム、錫、ジルコニウム、ストロンチウム、ニオブから選ばれた少なくとも1種0.1〜30重量部を含有してなる誘電体ペーストとすることによって、さらには、請求項3に記載されるように、前記チタン酸バリウム系材料が、チタン酸バリウム100重量部に対して、カルシウムおよび/または錫0.1〜30重量部を含有してなる誘電体ペーストとすることによって、解決される。
【0009】
さらに、電子部品の高誘電率化は、請求項4に記載されるように、前記請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体ペーストを用いて電子部品とすることによって、解決される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。請求項1に記載される発明は、硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂75〜30容量%と、γ−クロロプロピルトリメトキシシランで表面処理してなるチタン酸バリウム系材料25〜70容量%とを主成分とすることを特徴とする、誘電体ペーストに関するものである。特に、本発明においては、γ−クロロプロピルトリメトキシシランで表面処理してなるチタン酸バリウム系材料を用いることを大きな特徴としており、この表面処理チタン酸バリウム系材料を用いることによって、塗工容易な粘度範囲を維持しつつ、高誘電率の範囲に属するといわれる、誘電率15以上の誘電体ペーストとすることができる。また前記γ−クロロプロピルトリメトキシシランの表面処理量は、γ−クロロプロピルトリメトキシシランの最小被覆面積が300m2/g以上となるようにするのが、前記表面処理剤の必要量から好ましい。なお、前記以外のシランカップリング剤を用いると、表面処理剤としての必要量を多くする必要があるので、結果として誘電正接が悪くなる問題がある。
【0011】
本発明に用いることのできるエポキシ樹脂は、分子内に1個または2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限はなく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等の1種または2種以上が使用できる。
【0012】
上記エポキシ樹脂の中でも、数平均分子量が100〜1000程度の常温で液状のものが好ましく、一例としては、常温で低粘度のビスフェノールA型エポキシ樹脂またはビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。このような液状のエポキシ樹脂を用いることによって、回路形成の際の塗工がさらに容易な低粘度の誘電体ペーストが得られ、コンデンサ等の電子部品を効率よく製造でき、また、低誘電損失、低結晶性などの特性が得られるので好ましい。
【0013】
なお、上記エポキシ樹脂が液状の場合は、これに上記チタン酸バリウム系材料の所定量を直接加え、混合、均一化することで本発明の誘電体ペースとすることができるが、該エポキシ樹脂が固形状もしくは高粘度の場合、必要に応じて適宜の有機溶媒、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン等に溶解、もしくは、希釈して用いることができる。
【0014】
上記エポキシ樹脂と共に用いられる硬化剤についても特に制限がなく、エポキシ樹脂の硬化剤として公知の種々のもの、例えば、酸無水物系硬化剤(ヘキサヒドロ無水フタル酸等)、アミン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤などが使用できる。中でも、耐熱性および電気特性等の点でアミン系硬化剤が好ましい。また、その使用量も、使用するエポキシ樹脂の種類に応じて慣用量とすることができる。
さらに上記エポキシ樹脂には、硬化剤と共に硬化促進剤が使用される。使用し得る硬化促進剤は、イミダゾール化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等の1種または2種以上である。硬化促進剤の使用は、形成される誘電体ペースト薄膜の硬化時間を短縮し、あるいは硬化温度を低下させることができる。硬化促進剤の使用量についての特別な制限はなく、用いるエポキシ樹脂および硬化剤の種類に応じて慣用量とすることができる。
【0015】
本発明に用いることのできるチタン酸バリウム系材料は、γ−クロロプロピルトリメトキシシランで表面処理してなるものであり、チタン酸バリウム系材料としては、チタン酸バリウム、またはチタン酸バリウムにカルシウム、錫、ジルコニウム、ストロンチウム、ニオブなどから選ばれる1種を含有せしめてなるものである。使用し得るチタン酸バリウム材料としては特に制限はなく、市場から入手可能な種々のタイプのもの、例えば不定形粒子状、球状、楕円状、扁平状、ウィスカー状等の粉末状のものなどである。また、その粒子径についても特に制限がなく、一般的には平均粒子径0.1〜3μm程度のものが好ましく、このようなチタン酸バリウム材料は、例えば、固相法やシュウ酸塩法等によって製造される。
【0016】
特に、上記チタン酸バリウム系材料においては、請求項2に記載されるように、チタン酸バリウム100重量部に対して、カルシウム、錫、ジルコニウム、ストロンチウム、ニオブから選ばれた少なくとも1種0.1〜30重量部を含有してなるのが好ましい。このようなチタン酸バリウム系材料を用いることによって、チタン酸バリウム系材料のキュリー点を常温付近まで下げることができ、常温付近で高誘電率の誘電体ペーストを得ることができる。
【0017】
さらに、上記カルシウム、錫、ジルコニウム等金属類を含有してなるチタン酸バリウム系材料において、請求項3に記載されるように、チタン酸バリウム100重量部に対して、カルシウムおよび/または錫0.1〜30重量部を含有するものであるのがさらに好ましい。カルシウムおよび/または錫の含有量が0.1重量部未満では、キュリー点のシフト効果が小さく、30重量部を超えると誘電率が低下するようになる。なお、カルシウムおよび錫を混合して用いる場合、カルシウム/錫の混合割合は、重量部比で1/5〜1/2とするのが好ましく、これによりキュリー点のシフト効果をさらに増大させることができる。
【0018】
なお、上記チタン酸バリウム系材料がカルシウム、錫、ジルコニウム等金属類を含有したものである場合、これら金属類とチタン酸バリウムの混合方法に特別な制限はない。例えば、各成分を単純にブレンドする方法、あるいはブレンドしたものを適宜温度で熱処理し、粉砕し、必要ならば粒子形をそろえるために篩分けする方法などである。これら混合方法の中で、熱処理工程を含む混合方法によれば、チタン酸バリウムの結晶子の成長と歪の減少効果が得られ、高誘電率のチタン酸バリウム系材料とすることができるので、本発明においては、熱処理工程を含む混合方法でチタン酸バリウム系材料を得るのが好ましい。その際の熱処理条件に特別な制限はないが、一例としては、1100〜1450℃×10分以上であるのが好ましく、1200〜1400℃×10分〜10時間であるのがさらに好ましい。
【0019】
なお、上記チタン酸バリウム系材料の熱処理は、通常の加熱(アニール)、焼結などの方法で行うことができる。熱処理後のチタン酸バリウム系材料が塊状化した場合には、適宜の粉砕方法、例えば、自動乳鉢、ボールミル、粉砕機等で粉砕し、必要ならば粒子径を揃えるための篩分けを行っても良い。本発明の誘電体ペーストにおいて、チタン酸バリウム系材料の好ましい粒子径は、0.5〜3μmである。また、上記チタン酸バリウム系材料のアスペクト比を、1.5〜10とすることも好ましいことである。
【0020】
本発明において、上記チタン酸バリウム系材料は、γ−クロロプロピルトリメトキシシランで表面処理して用いられる。表面処理は、一般に良く知られた表面処理方法でおこなうことができる。一例(湿式法)としては、上記チタン酸バリウム系材料粉末を、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン溶液または適宜の有機溶媒を加えてなる溶液中に加え、必要ならば加温下で充分に混合し、乾燥することによって表面処理をおこなうことができる。また乾式法を用いても、同様に表面処理をすることができる。なお、この表面処理においては、γ−クロロプロピルトリメトキシシランの最小被覆面積が、300m2/g以上となるようにするのが好ましく、これにより形成される電子部品の誘電損失を低減させることができる。
【0021】
そして本発明の誘電体ペーストは、上記硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂30〜75容量%と、上記γ−クロロプロピルトリメトキシシランによって表面処理されたチタン酸バリウム系材料を、70〜25容量%の比率で均一に混合することによって得られる。この混合比率において、エポキシ樹脂が30容量%より少なく、チタン酸バリウム系材料が70容量%より多くなると、高誘電率の誘電体膜が形成できる利点があるが、上記誘電体ペースト粘度が増大して回路形成の際の塗工性に劣るようになる他、エポキシ樹脂のバインダーとしての効果が低下し、形成される誘電体膜の強度が低下するようになる。これとは反対に、エポキシ樹脂が75容量%を超え、チタン酸バリウム系材料が25容量%より少なくなると、ペースト粘度が低下して塗工性に優れるようになるが、高誘電率化が難しくなるので好ましくない。本発明の誘電体ペーストにおいては、エポキシ樹脂40〜60容量%およびチタン酸バリウム系材料60〜40容量%の混合比率とするのが特に好ましい。
【0022】
本発明の誘電体ペーストは、上記エポキシ樹脂と、チタン酸バリウム系材料の所定量を均一に混合することによって得られる。混合方法自体特殊なものではなく、ボールミル、ディスパー型攪拌機、ロールミル、サンドミル、三本ロール等で行うことができる。なお、その際、本発明の効果を損なわない範囲で、シリカ、炭酸カルシウム等の無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋アクリル樹脂等の有機フィラー、分散剤、沈降防止剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、消泡剤等の公知の各種添加剤を1種または2種以上添加してもよい。
【0023】
つぎに、請求項4に記載の電子部品に関する発明について説明する。すなわち、以上のようにして得られた本発明の誘電体ペーストは、電子部品を構成する基板上の所望箇所に塗工し、誘電体ペースト中に含まれるエポキシ樹脂の硬化処理を行って誘電体膜を形成し、次いで、誘電体膜上にイオンスパッタ法等により電極を形成することによって、基板内蔵型コンデンサとすることができる。さらには、コイルやフィルターと印刷配線回路、増幅素子や機能素子と組み合わせてアンテナ、RFモジュール、VCO(電圧制御発振回路)、パワーアンプ等の高周波電子回路や光ピックアップなどに用いられる高周波用電子部品等も、本発明の電子部品とすることができる。
【0024】
上記誘電体ペーストの塗工は、スクリーン印刷法、スピンコート法、バーコート法、スプレーコート法等、公知の塗工法でおこなうことができる。その膜厚は用途により異なるが、一般的には0.5〜500μmの範囲とするのが好ましい。また、誘電体ペーストの硬化処理は常温でおこなっても良いが、生産性の点から50〜150℃程度の加熱下に行うのが好ましい。さらに、誘電体ペーストの塗工に際しては、塗工性を改善する目的で、適宜の有機溶媒、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン等で上記誘電体ペーストの粘度調整をおこなっても良い。
【0025】
【実施例】
以下に実施例並びに比較例を示して、本発明の効果を述べる。
【0026】
誘電体ペーストの調製:誘電体ペースト成分として下記のエポキシ樹脂(a)とチタン酸バリウム系材料(b)を用い、表1に示した組成比(容量%)で均一に混合し、それぞれの誘電体ペーストを調製した。なお、その際均一なペースト化を促進するため有機溶剤としてトルエンを、前記エポキシ樹脂(a)と前記チタン酸バリウム(b)の合計重量に対して、15重量%になるように加えた。
【0027】
エポキシ樹脂(a):熱硬化型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、東都化成社製、YD−8125)52重量%、硬化剤(ヘキサヒドロ無水フタル酸)47wt%および硬化促進剤(ジャパンエポキシレジン社製、エピキュア3010)1重量%を、均一に混合してエポキシ樹脂成分とした。
【0028】
チタン酸バリウム系材料(b):チタン酸バリウム粉末100重量部、カルシウム2重量部、錫6重量部を混合し、1300℃×60分の熱処理を行った後、自動乳鉢を用いて粉砕して平均粒子径0.2〜3μmの範囲のチタン酸バリウム系材料を得、これをチタン酸バリウム系材料Aとした。次いで、このチタン酸バリウム系材料A100重量部を、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン0.5重量部中に加えて混合し、前記チタン酸バリウム系材料粒子の表面処理をおこない、得られた表面処理チタン酸バリウム系材料をチタン酸バリウム系材料Bとした。また比較のために、前記γ−クロロプロピルトリメトキシシランに変えて、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランを用いて、上記と同様に表面処理したチタン酸バリウム材料をCとした。
【0029】
誘電体ペーストの試験:上記で得たそれぞれの誘電体ペーストについて、その粘度(ポイズ)をB型粘度計で測定し、その結果を表1に示した。また、それぞれの誘電体ペーストを、銅箔上に厚さ約25μmとなるように、自動塗工機を用いて薄膜に形成し、120℃×15時間熱硬化処理を行った後、硬化薄膜上にイオンスパッタにより電極を形成して基板内蔵型コンデンサとした。次いで、LCZメータにより静電容量(C)を測定し、1MHz、室温の誘電率(ε)を求めた。その結果を併せて表1に示した。
【0030】
【表1】
【0031】
上記表1の結果から明らかなとおり、γ−トリクロロプロピルトリメトキシシランで表面処理してなるチタン酸バリウム系材料を用いた、実施例1〜4で示した本発明の誘電体ペーストは、誘電率が15以上と高く、また、そのペースト粘度は薄膜形成の際の塗工に適した1〜50ポイズの範囲のものであった。これに対し、表面処理をおこなわなかったチタン酸バリウム系材料を用いた、比較例1の誘電体ペーストは、誘電率が低く、その粘度も塗工に適さない低粘度のものであった。また、表面処理したチタン酸バリウム系材料を用いたが、組成比において本発明の範囲を外れる比較例2および3の誘電体ペーストは、誘電率および粘度共に満足な特性は得られなかった。また、γ−トリクロロプロピルトリメトキシシランに変えて用いたγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランで表面処理したチタン酸バリウム材料Cを用いた比較例4の誘電体ペーストは、前記エポキシ樹脂との相溶性が悪く、粘度も高くなって好ましいものではなかった。
【0032】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の誘電体ペーストは、硬化剤および効果促進剤を含むエポキシ樹脂と、γ―クロロプロピルトリメトキシシランで表面処理したチタン酸バリウム系材料とを、特定の比率で混合したものであるので、表面処理をおこなわなかったチタン酸バリウム系材料を用いた誘電体ペーストに比べ、誘電率の改善効果が顕著であった。特に、この効果は、チタン酸バリウム系材料の含有量を少なくできる効果に波及し、誘電体ペーストの粘度低下に寄与し、誘電体膜形成の際の塗工が容易となる効果を有するものであった。
【0033】
また、本発明の誘電体ペーストは、誘電率の高い誘電体膜の形成が可能であるので、近年の小型化、高周波領域(10GHz程度の)用の電子部品として使用するのに適しており、また、塗工性に優れた低粘度誘電体ペーストであるので、コンデンサ等電子部品を効率よく製造できるという効果もあり、実用性に優れたものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンデンサ材料等として電子部品に用いられる、高誘電率でかつ塗工性に優れた、エポキシ樹脂組成物からなる誘電体ペースト、並びにそれを用いた電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子、情報通信機器の小型化要求の増大にともない、各種基板にコンデンサ、レジスター等の機能を持った電子部品を直接形成する回路形成技術ないしは部品形成技術の開発が進められている。特に近年の情報通信における伝送容量の増大化、高速化に対応して、10GHz程度の高周波領域での使用特性に優れた回路形成材料が求められており、このような要求に応えるため、コンデンサ等の機能を持った回路形成材料として、合成樹脂中に誘電体粉末を混合分散してなる誘電体ペーストが提供されている。
【0003】
このような誘電体ペーストとして、特許文献1が知られている。すなわち、誘電体粉末が高い固形分比率で含有していても低粘度で、回路形成の際の塗工が容易な誘電体ペースト、および、形成される回路表面が平滑で均一な膜厚、かつ高誘電率、低誘電損失の誘電体膜を形成し得る誘電体ペーストを提供することを課題とし、かかる課題は、芳香族液晶ポリエステルと、特定のハロゲン置換フェノール化合物を含む溶媒と、誘電体粉末とを特定の割合で含有せしめることによって解決できるとしている。しかしながら、このような誘電体ペーストは、耐熱性が低い問題点がある。
【0004】
また、上記と同様な課題を解決するための誘電体材料については、特許文献2も知られている。すなわち、投影形状が円、扁平円、または楕円形の誘電体粉末を樹脂中に分散して複合誘電体材料とすることによって、誘電率が高く、強度低下がなく、小型で高性能、総合的な電気特性に優れた電子部品を提供できるとしている。このような誘電体材料においても、誘電率を高くするためには誘電体粉末を高充填する必要があり、得られた複合誘電体材料は、塗工性や誘電正接の悪化が生じる問題点があって、満足できるものではなかった。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−60595号公報
【特許文献2】
特開2002−158135号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明もこのような課題を解決しようとするもので、高誘電率でかつ回路形成等の容易な誘電体ペーストを提供することにある。特に、本発明では、誘電体粉末を多量に添加して高誘電率化を図ると、誘電体ペーストの粘度が上昇し、回路形成の際の塗工性が低下するという課題を解消しようとするもので、一般的に高誘電率の範囲とされる15以上の誘電率を確保しつつ、誘電体ペーストの粘度を、回路形成等において好適とされる0.5〜50ポイズの範囲に抑えた、特定のシランカップリング剤で表面処理したチタン酸バリウム系材料を、エポキシ樹脂中に配合した誘電体ペーストを提供すること、およびこのペーストを用いた高誘電率の電子部品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記解決しようとする課題は、請求項1に記載されるように、硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂75〜30容量%と、γ−クロロプロピルトリメトキシシランで表面処理してなるチタン酸バリウム系材料25〜70容量%とを主成分とする誘電体ペーストを提供することによって、解決される。
【0008】
また、請求項2に記載されるように、前記チタン酸バリウム系材料が、チタン酸バリウム100重量部に対して、カルシウム、錫、ジルコニウム、ストロンチウム、ニオブから選ばれた少なくとも1種0.1〜30重量部を含有してなる誘電体ペーストとすることによって、さらには、請求項3に記載されるように、前記チタン酸バリウム系材料が、チタン酸バリウム100重量部に対して、カルシウムおよび/または錫0.1〜30重量部を含有してなる誘電体ペーストとすることによって、解決される。
【0009】
さらに、電子部品の高誘電率化は、請求項4に記載されるように、前記請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体ペーストを用いて電子部品とすることによって、解決される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。請求項1に記載される発明は、硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂75〜30容量%と、γ−クロロプロピルトリメトキシシランで表面処理してなるチタン酸バリウム系材料25〜70容量%とを主成分とすることを特徴とする、誘電体ペーストに関するものである。特に、本発明においては、γ−クロロプロピルトリメトキシシランで表面処理してなるチタン酸バリウム系材料を用いることを大きな特徴としており、この表面処理チタン酸バリウム系材料を用いることによって、塗工容易な粘度範囲を維持しつつ、高誘電率の範囲に属するといわれる、誘電率15以上の誘電体ペーストとすることができる。また前記γ−クロロプロピルトリメトキシシランの表面処理量は、γ−クロロプロピルトリメトキシシランの最小被覆面積が300m2/g以上となるようにするのが、前記表面処理剤の必要量から好ましい。なお、前記以外のシランカップリング剤を用いると、表面処理剤としての必要量を多くする必要があるので、結果として誘電正接が悪くなる問題がある。
【0011】
本発明に用いることのできるエポキシ樹脂は、分子内に1個または2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限はなく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等の1種または2種以上が使用できる。
【0012】
上記エポキシ樹脂の中でも、数平均分子量が100〜1000程度の常温で液状のものが好ましく、一例としては、常温で低粘度のビスフェノールA型エポキシ樹脂またはビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。このような液状のエポキシ樹脂を用いることによって、回路形成の際の塗工がさらに容易な低粘度の誘電体ペーストが得られ、コンデンサ等の電子部品を効率よく製造でき、また、低誘電損失、低結晶性などの特性が得られるので好ましい。
【0013】
なお、上記エポキシ樹脂が液状の場合は、これに上記チタン酸バリウム系材料の所定量を直接加え、混合、均一化することで本発明の誘電体ペースとすることができるが、該エポキシ樹脂が固形状もしくは高粘度の場合、必要に応じて適宜の有機溶媒、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン等に溶解、もしくは、希釈して用いることができる。
【0014】
上記エポキシ樹脂と共に用いられる硬化剤についても特に制限がなく、エポキシ樹脂の硬化剤として公知の種々のもの、例えば、酸無水物系硬化剤(ヘキサヒドロ無水フタル酸等)、アミン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤などが使用できる。中でも、耐熱性および電気特性等の点でアミン系硬化剤が好ましい。また、その使用量も、使用するエポキシ樹脂の種類に応じて慣用量とすることができる。
さらに上記エポキシ樹脂には、硬化剤と共に硬化促進剤が使用される。使用し得る硬化促進剤は、イミダゾール化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等の1種または2種以上である。硬化促進剤の使用は、形成される誘電体ペースト薄膜の硬化時間を短縮し、あるいは硬化温度を低下させることができる。硬化促進剤の使用量についての特別な制限はなく、用いるエポキシ樹脂および硬化剤の種類に応じて慣用量とすることができる。
【0015】
本発明に用いることのできるチタン酸バリウム系材料は、γ−クロロプロピルトリメトキシシランで表面処理してなるものであり、チタン酸バリウム系材料としては、チタン酸バリウム、またはチタン酸バリウムにカルシウム、錫、ジルコニウム、ストロンチウム、ニオブなどから選ばれる1種を含有せしめてなるものである。使用し得るチタン酸バリウム材料としては特に制限はなく、市場から入手可能な種々のタイプのもの、例えば不定形粒子状、球状、楕円状、扁平状、ウィスカー状等の粉末状のものなどである。また、その粒子径についても特に制限がなく、一般的には平均粒子径0.1〜3μm程度のものが好ましく、このようなチタン酸バリウム材料は、例えば、固相法やシュウ酸塩法等によって製造される。
【0016】
特に、上記チタン酸バリウム系材料においては、請求項2に記載されるように、チタン酸バリウム100重量部に対して、カルシウム、錫、ジルコニウム、ストロンチウム、ニオブから選ばれた少なくとも1種0.1〜30重量部を含有してなるのが好ましい。このようなチタン酸バリウム系材料を用いることによって、チタン酸バリウム系材料のキュリー点を常温付近まで下げることができ、常温付近で高誘電率の誘電体ペーストを得ることができる。
【0017】
さらに、上記カルシウム、錫、ジルコニウム等金属類を含有してなるチタン酸バリウム系材料において、請求項3に記載されるように、チタン酸バリウム100重量部に対して、カルシウムおよび/または錫0.1〜30重量部を含有するものであるのがさらに好ましい。カルシウムおよび/または錫の含有量が0.1重量部未満では、キュリー点のシフト効果が小さく、30重量部を超えると誘電率が低下するようになる。なお、カルシウムおよび錫を混合して用いる場合、カルシウム/錫の混合割合は、重量部比で1/5〜1/2とするのが好ましく、これによりキュリー点のシフト効果をさらに増大させることができる。
【0018】
なお、上記チタン酸バリウム系材料がカルシウム、錫、ジルコニウム等金属類を含有したものである場合、これら金属類とチタン酸バリウムの混合方法に特別な制限はない。例えば、各成分を単純にブレンドする方法、あるいはブレンドしたものを適宜温度で熱処理し、粉砕し、必要ならば粒子形をそろえるために篩分けする方法などである。これら混合方法の中で、熱処理工程を含む混合方法によれば、チタン酸バリウムの結晶子の成長と歪の減少効果が得られ、高誘電率のチタン酸バリウム系材料とすることができるので、本発明においては、熱処理工程を含む混合方法でチタン酸バリウム系材料を得るのが好ましい。その際の熱処理条件に特別な制限はないが、一例としては、1100〜1450℃×10分以上であるのが好ましく、1200〜1400℃×10分〜10時間であるのがさらに好ましい。
【0019】
なお、上記チタン酸バリウム系材料の熱処理は、通常の加熱(アニール)、焼結などの方法で行うことができる。熱処理後のチタン酸バリウム系材料が塊状化した場合には、適宜の粉砕方法、例えば、自動乳鉢、ボールミル、粉砕機等で粉砕し、必要ならば粒子径を揃えるための篩分けを行っても良い。本発明の誘電体ペーストにおいて、チタン酸バリウム系材料の好ましい粒子径は、0.5〜3μmである。また、上記チタン酸バリウム系材料のアスペクト比を、1.5〜10とすることも好ましいことである。
【0020】
本発明において、上記チタン酸バリウム系材料は、γ−クロロプロピルトリメトキシシランで表面処理して用いられる。表面処理は、一般に良く知られた表面処理方法でおこなうことができる。一例(湿式法)としては、上記チタン酸バリウム系材料粉末を、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン溶液または適宜の有機溶媒を加えてなる溶液中に加え、必要ならば加温下で充分に混合し、乾燥することによって表面処理をおこなうことができる。また乾式法を用いても、同様に表面処理をすることができる。なお、この表面処理においては、γ−クロロプロピルトリメトキシシランの最小被覆面積が、300m2/g以上となるようにするのが好ましく、これにより形成される電子部品の誘電損失を低減させることができる。
【0021】
そして本発明の誘電体ペーストは、上記硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂30〜75容量%と、上記γ−クロロプロピルトリメトキシシランによって表面処理されたチタン酸バリウム系材料を、70〜25容量%の比率で均一に混合することによって得られる。この混合比率において、エポキシ樹脂が30容量%より少なく、チタン酸バリウム系材料が70容量%より多くなると、高誘電率の誘電体膜が形成できる利点があるが、上記誘電体ペースト粘度が増大して回路形成の際の塗工性に劣るようになる他、エポキシ樹脂のバインダーとしての効果が低下し、形成される誘電体膜の強度が低下するようになる。これとは反対に、エポキシ樹脂が75容量%を超え、チタン酸バリウム系材料が25容量%より少なくなると、ペースト粘度が低下して塗工性に優れるようになるが、高誘電率化が難しくなるので好ましくない。本発明の誘電体ペーストにおいては、エポキシ樹脂40〜60容量%およびチタン酸バリウム系材料60〜40容量%の混合比率とするのが特に好ましい。
【0022】
本発明の誘電体ペーストは、上記エポキシ樹脂と、チタン酸バリウム系材料の所定量を均一に混合することによって得られる。混合方法自体特殊なものではなく、ボールミル、ディスパー型攪拌機、ロールミル、サンドミル、三本ロール等で行うことができる。なお、その際、本発明の効果を損なわない範囲で、シリカ、炭酸カルシウム等の無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋アクリル樹脂等の有機フィラー、分散剤、沈降防止剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、消泡剤等の公知の各種添加剤を1種または2種以上添加してもよい。
【0023】
つぎに、請求項4に記載の電子部品に関する発明について説明する。すなわち、以上のようにして得られた本発明の誘電体ペーストは、電子部品を構成する基板上の所望箇所に塗工し、誘電体ペースト中に含まれるエポキシ樹脂の硬化処理を行って誘電体膜を形成し、次いで、誘電体膜上にイオンスパッタ法等により電極を形成することによって、基板内蔵型コンデンサとすることができる。さらには、コイルやフィルターと印刷配線回路、増幅素子や機能素子と組み合わせてアンテナ、RFモジュール、VCO(電圧制御発振回路)、パワーアンプ等の高周波電子回路や光ピックアップなどに用いられる高周波用電子部品等も、本発明の電子部品とすることができる。
【0024】
上記誘電体ペーストの塗工は、スクリーン印刷法、スピンコート法、バーコート法、スプレーコート法等、公知の塗工法でおこなうことができる。その膜厚は用途により異なるが、一般的には0.5〜500μmの範囲とするのが好ましい。また、誘電体ペーストの硬化処理は常温でおこなっても良いが、生産性の点から50〜150℃程度の加熱下に行うのが好ましい。さらに、誘電体ペーストの塗工に際しては、塗工性を改善する目的で、適宜の有機溶媒、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン等で上記誘電体ペーストの粘度調整をおこなっても良い。
【0025】
【実施例】
以下に実施例並びに比較例を示して、本発明の効果を述べる。
【0026】
誘電体ペーストの調製:誘電体ペースト成分として下記のエポキシ樹脂(a)とチタン酸バリウム系材料(b)を用い、表1に示した組成比(容量%)で均一に混合し、それぞれの誘電体ペーストを調製した。なお、その際均一なペースト化を促進するため有機溶剤としてトルエンを、前記エポキシ樹脂(a)と前記チタン酸バリウム(b)の合計重量に対して、15重量%になるように加えた。
【0027】
エポキシ樹脂(a):熱硬化型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、東都化成社製、YD−8125)52重量%、硬化剤(ヘキサヒドロ無水フタル酸)47wt%および硬化促進剤(ジャパンエポキシレジン社製、エピキュア3010)1重量%を、均一に混合してエポキシ樹脂成分とした。
【0028】
チタン酸バリウム系材料(b):チタン酸バリウム粉末100重量部、カルシウム2重量部、錫6重量部を混合し、1300℃×60分の熱処理を行った後、自動乳鉢を用いて粉砕して平均粒子径0.2〜3μmの範囲のチタン酸バリウム系材料を得、これをチタン酸バリウム系材料Aとした。次いで、このチタン酸バリウム系材料A100重量部を、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン0.5重量部中に加えて混合し、前記チタン酸バリウム系材料粒子の表面処理をおこない、得られた表面処理チタン酸バリウム系材料をチタン酸バリウム系材料Bとした。また比較のために、前記γ−クロロプロピルトリメトキシシランに変えて、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランを用いて、上記と同様に表面処理したチタン酸バリウム材料をCとした。
【0029】
誘電体ペーストの試験:上記で得たそれぞれの誘電体ペーストについて、その粘度(ポイズ)をB型粘度計で測定し、その結果を表1に示した。また、それぞれの誘電体ペーストを、銅箔上に厚さ約25μmとなるように、自動塗工機を用いて薄膜に形成し、120℃×15時間熱硬化処理を行った後、硬化薄膜上にイオンスパッタにより電極を形成して基板内蔵型コンデンサとした。次いで、LCZメータにより静電容量(C)を測定し、1MHz、室温の誘電率(ε)を求めた。その結果を併せて表1に示した。
【0030】
【表1】
【0031】
上記表1の結果から明らかなとおり、γ−トリクロロプロピルトリメトキシシランで表面処理してなるチタン酸バリウム系材料を用いた、実施例1〜4で示した本発明の誘電体ペーストは、誘電率が15以上と高く、また、そのペースト粘度は薄膜形成の際の塗工に適した1〜50ポイズの範囲のものであった。これに対し、表面処理をおこなわなかったチタン酸バリウム系材料を用いた、比較例1の誘電体ペーストは、誘電率が低く、その粘度も塗工に適さない低粘度のものであった。また、表面処理したチタン酸バリウム系材料を用いたが、組成比において本発明の範囲を外れる比較例2および3の誘電体ペーストは、誘電率および粘度共に満足な特性は得られなかった。また、γ−トリクロロプロピルトリメトキシシランに変えて用いたγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランで表面処理したチタン酸バリウム材料Cを用いた比較例4の誘電体ペーストは、前記エポキシ樹脂との相溶性が悪く、粘度も高くなって好ましいものではなかった。
【0032】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の誘電体ペーストは、硬化剤および効果促進剤を含むエポキシ樹脂と、γ―クロロプロピルトリメトキシシランで表面処理したチタン酸バリウム系材料とを、特定の比率で混合したものであるので、表面処理をおこなわなかったチタン酸バリウム系材料を用いた誘電体ペーストに比べ、誘電率の改善効果が顕著であった。特に、この効果は、チタン酸バリウム系材料の含有量を少なくできる効果に波及し、誘電体ペーストの粘度低下に寄与し、誘電体膜形成の際の塗工が容易となる効果を有するものであった。
【0033】
また、本発明の誘電体ペーストは、誘電率の高い誘電体膜の形成が可能であるので、近年の小型化、高周波領域(10GHz程度の)用の電子部品として使用するのに適しており、また、塗工性に優れた低粘度誘電体ペーストであるので、コンデンサ等電子部品を効率よく製造できるという効果もあり、実用性に優れたものである。
Claims (4)
- 硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂75〜30容量%と、γ−クロロプロピルトリメトキシシランで表面処理してなるチタン酸バリウム系材料25〜70容量%とを主成分とすることを特徴とする、誘電体ペースト。
- 前記チタン酸バリウム系材料が、チタン酸バリウム100重量部に対して、カルシウム、錫、ジルコニウム、ストロンチウム、ニオブから選ばれた少なくとも1種0.1〜30重量部を含有してなる、請求項1記載の誘電体ペースト。
- 前記チタン酸バリウム系材料が、チタン酸バリウム100重量部に対して、カルシウムおよび/または錫0.1〜30重量を含有してなる、請求項2に記載の誘電体ペースト。
- 前記請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体ペーストを用いたことを特徴とする、電子部品。
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