JP2005000124A - 複合菓子類又は複合パン類の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】菓子生地又はパン生地と、水分又は油分に富む副原料素材とを接合して製造する複合菓子類又は複合パン類の製造方法において、グルコマンナンを含む水溶液中に、内相にアルカリ水溶液を含むW/O型エマルジョンが均一に分散しており、pH4〜8である食品素材を、前記菓子生地又はパン生地と、前記副原料素材との少なくとも一方に、合計で0.05〜30質量%配合する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油脂成分や水分の移行を抑え、食感や物性が改善された複合菓子類又は複合パン類の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ビスケットやクッキーなどの菓子生地と、フィリング類、クリーム類、ジャム類、餡類、チョコレート類からなる副原料素材とを接合して得られる様々な複合菓子が知られている。
【0003】
これらの複合菓子において、例えば菓子生地とチョコレート類とを組み合わせたものにおいては、菓子生地中の液状油脂がチョコレートのカカオ脂と混晶し、チョコレートの融点が下がり溶けたり、ブルーム現象が起こったり、菓子生地の表面に白い斑点状の油脂の結晶が発生することがあった。
【0004】
また、菓子生地と、フィリング類、クリーム類、ジャム類、餡類などの副原料素材とを組み合わせたものにおいては、菓子生地と副原料素材との水分差により、副原料素材の水分が菓子生地に移行し、菓子生地が水分により軟化したり、クリーム類、ジャム類、餡類などの副原料素材の水分が減少し、滑らかさが失われたりして、食感、風味の劣化が起こることがあった。
【0005】
また、同様にパンでも、菓子パンなどのパン生地と、フィリング類、クリーム類、ジャム類、餡類、チョコレート類からなる副原料素材とを接合して得られる様々なパンが知られている。本明細書では、これらのパン類を複合パン類と称することにするが、この複合パン類においても、上記複合菓子類と同様の問題点があった。
【0006】
このような現象を抑制するための方法として、下記特許文献1には、不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の配合の工夫によってチョコレート類の菓子生地への油脂移行を防ぐ技術が開示されている。
【0007】
下記特許文献2には、HLB値が3以下であるシュガーエステルなどの親油性乳化剤を使用し、菓子生地への油脂移行を防ぐ技術が開示されている。
【0008】
また、下記特許文献3には、親油性乳化剤を使用し、菓子生地への水分移行を防ぐ技術が開示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−65162
【特許文献2】
特開平5−284912
【特許文献3】
特開昭60−224445
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1、2に記載の方法は、菓子生地類やクリーム類の配合中の油脂の脂肪酸組成や製法を工夫したり、乳化剤を配合することによりチョコレートへの液状油脂の移行を抑え、結晶化が起こらないようにするものであり、いずれもブルーム現象を抑えることはできるが、口溶けや食感、風味などに関して満足がいくものではなかった。
【0011】
上記特許文献3に記載の方法は、フィリングやサンド材などの油分に富む副原料素材にある水分を長期に渡って保持することが充分ではなく、風味の点で満足のいくものではなかった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、ビスケットやクッキーなどの菓子生地又は菓子パンなどのパン生地と、クリーム類、ジャム類、餡類、チョコレート類からなる副原料素材とを接合して製造される複合菓子類又は複合パン類において、菓子生地又はパン生地中の液状油脂のチョコレート類等への移行や、副原料素材中の水分の菓子生地又はパン生地中への移行による食感、風味の劣化を抑制できるようにした複合菓子類又は複合パン類の製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、菓子生地又はパン生地と、水分又は油分に富む副原料素材とを接合して製造する複合菓子類又は複合パン類の製造方法において、グルコマンナンを含む水溶液中に、内相にアルカリ水溶液を含むW/O型エマルジョンが均一に分散しており、pH4〜8である食品素材を、前記菓子生地又は前記パン生地と、前記副原料素材との少なくとも一方に合計で0.05〜30質量%配合することを特徴とする複合菓子類又は複合パン類の製造方法を提供するものである。
【0014】
本発明によれば、グルコマンナンを含む水溶液中に、内相にアルカリ水溶液を含むW/O型エマルジョンが均一に分散しており、pH4〜8である食品素材を、前記菓子生地又はパン生地と、前記副原料素材との少なくとも一方に添加することにより、これらの生地を例えば加熱処理した際に、W/O型エマルジョン中のアルカリ水溶液が浸出し、グルコマンナンがゲル化する。
【0015】
このため、菓子生地又はパン生地中の液状油脂の、チョコレート類等の副原料素材への移行や、副原料素材中の水分の菓子生地又はパン生地中への移行が、上記ゲル化したグルコマンナンによって阻止され、複合菓子類又は複合パン類の食感や風味の劣化が防止され、保存安定性に優れた複合菓子又は複合パンを提供できる。
【0016】
本発明においては、前記菓子生地又はパン生地が、スポンジ類、クッキー・ビスケット類、パイ類、バターケーキ類、シュー類、ワッフル類、クラッカー類、スナック類、メレンゲ生地類、ドーナツ類、イースト生地類、まんじゅう類、液種生地類、おかもの類、及び揚げ和菓子類から選ばれた1種であり、前記パン生地が、菓子パン類、ロールパン類、クロワッサン類、デニッシュ類、ハードロール類、サンドイッチ類、ピザ類、揚げパン類、蒸しパン類から選ばれた1種であることが好ましい。
【0017】
また、前記菓子生地が、ケーキ、ワッフル、クッキー、ビスケット、シュー皮、ウエファース、パイ、クラッカー、プレッチェル、パフ菓子、マカロン、クレープ、饅頭の皮、タイ焼きの皮、人形焼の皮、もなかの皮、かりんとう、ドーナツから選ばれた1種であることがより好ましい。
【0018】
更に、前記副原料素材が、ペースト状食品、チョコレート類から選ばれた1種であることが好ましく、フィリング類、クリーム類、フラワーペースト類、ジャム類、餡類、チョコレート類から選ばれた1種であることがより好ましい。
【0019】
これらの生地の組合せによれば、本発明の効果が良好に得られる。
また、前記食品素材は、糖類を含有することが好ましく、更に澱粉を含有することが好ましい。これによれば、水分保持効果が更に高まるという利点が得られる。
また、前記食品素材のpHが4.5〜7.5であることが好ましい。
【0020】
更に、前記W/O型エマルジョンの油脂相が、不飽和脂肪酸を50質量%以上含む油脂からなることが好ましい。これによれば、食品素材を生地中に添加して加工調理する際に、油脂相がより崩壊しやすくなり、グルコマンナンを均一にゲル化することができる。
【0021】
更にまた、前記W/O型エマルジョンが、油脂と乳化剤とアルカリ水溶液とを含むものであることが好ましい。これによれば、安定したW/O型エマルジョンを形成することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる食品素材は、グルコマンナンを含む水溶液に、内相にアルカリ水溶液を含むW/O型エマルジョンが均一に分散した、pH4〜8の混合物である。
【0023】
この食品素材は、グルコマンナンを含む水溶液に、油脂でカプセル化されたアルカリ剤を分散させることにより、グルコマンナンのゲル化を遅延させているので、低粘度で、容易に他の原料と均一に混合することができる。そして、他の飲食品原料と混合して加工調理する際に、カプセル化されたアルカリ水溶液が浸出してグルコマンナンがゲル化するので、飲食品の食感や物性等を効果的に改善でき、飲食品に所望の物性を付与することができる。また、チルド耐性、冷凍耐性等の保存安定性を効果的に改善することができる。
【0024】
以下、上記食品素材について更に詳しく説明する。
グルコマンナンとしては、特に制限はなく、コンニャク芋を乾燥、粉末化して得られる通常のコンニャク粉、コンニャク粉を精製したコンニャク精粉等を用いることができる。本発明においては、風味や色の点から、除蛋白したコンニャク粉が特に好ましく用いられる。このような除蛋白したコンニャク粉としては、例えば「レオレックスRS」(商品名、清水化学(株)製)等が挙げられる。
【0025】
上記食品素材に用いるグルコマンナンを含む水溶液は、更に糖類を含有することが好ましい。この糖類としては、特に制限はなく、砂糖、ブドウ糖、異性化糖、マルトース、トレハロース、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール等の糖及び糖アルコール、各種オリゴ糖、及びそれらの混合物を用いることができる。上記オリゴ糖としては、マルトオリゴ糖(好ましくは重合度3〜7)、ニゲロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、パノースオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖及びそれらのシラップ等が挙げられる。上記糖類は、目的に応じて、適宜選択して用いることができ、例えば、飲食品の冷凍耐性を向上させる場合にはマルトオリゴ糖や糖アルコールを用いることができる。
【0026】
また、上記食品素材に用いるグルコマンナンを含む水溶液は、更に澱粉を含むことが好ましい。澱粉を含有することにより、冷凍・解凍した際のグルコマンナンゲルの離水を防ぐことができる。上記澱粉としては、例えば、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、米澱粉、蓮根澱粉、甘薯澱粉、サゴ澱粉等や、それらの化工澱粉が好ましく、中でも架橋澱粉又は湿熱処理澱粉が特に好ましい。具体的には、ヒドロキシプロピル化架橋タピオカ澱粉、アセチル化架橋タピオカ澱粉、湿熱処理コーンスターチ等が挙げられる。
【0027】
また、内相にアルカリ水溶液を含むW/O型エマルジョンを形成する際に用いる油脂としては、食用油脂であればいずれも使用できるが、中でも不飽和脂肪酸を50質量%以上含む油脂が好ましく、例えばサフラワー油、菜種油、オリーブ油、茶種子油、椿油等が挙げられる。このような油脂を用いることにより、食品素材を他の飲食品原料と混合して加工調理する際に、油脂相がより崩壊しやすくなり、グルコマンナンを均一にゲル化することができる。
【0028】
更に、アルカリ水溶液としては、通常食品に用いられるアルカリ剤の水溶液であれば特に制限はなく用いることができる。このようなアルカリ剤としては、例えば炭酸ソーダ、重炭酸ソーダ、炭酸カルシウム、リン酸2ナトリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸2カリウム、リン酸3カリウム、ポリリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等の塩基性塩類が挙げられる。
【0029】
上記W/O型エマルジョンは、更に乳化剤を含有することが好ましい。乳化剤を含有することにより、アルカリ水溶液を均一に乳化することができ、安定性の高いエマルジョンを得ることができる。上記乳化剤としては、HLB5以下のものが好ましく、例えばポリグリセリン脂肪酸エステル、ジエチルグリセルモノ脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられ、中でもポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましく用いられる。
【0030】
上記食品素材は、例えば以下のようにして得ることができる。
(1)グルコマンナンと水とを混合してグルコマンナン膨潤液(I)を調製する。例えば、グルコマンナン1質量部に対して水20〜200質量部を加えて撹拌し、グルコマンナンを膨潤させることにより調製することができる。
【0031】
(2)油脂にアルカリ水溶液を混合してW/O型エマルジョン(II)を調製する。例えば、油脂100質量部に対して、アルカリ水溶液10〜400質量部、より好ましくは100質量部前後を加え、更に乳化剤等の他の原料を適宜加えて、ホモミキサー、ホモゲナイザー等の手段により均質化することにより調製することができる。
【0032】
上記アルカリ水溶液の濃度は、特に限定されず、最終製品(食品素材)のpHが4〜8になるように、アルカリ水溶液の使用量によって適宜選択できるが、通常、0.5〜20質量%が好ましい。
【0033】
油脂100質量部に対するアルカリ水溶液の配合割合が10質量部未満であるとW/O型エマルジョン(II)の添加量を多くしなければならず、最終製品中の油脂含量が高くなり過ぎ、400質量部超であると安定なエマルジョンを得ることができない。
【0034】
なお、乳化剤の添加量は、適宜選択できるが、通常、油脂100質量部に対して0.05〜1質量部が好ましく、0.2〜0.4質量部がより好ましい。上記油脂100質量部に対する乳化剤の添加量が0.05質量部未満であると安定なエマルジョンを得ることができず、1質量部超であると風味が悪くなる。
【0035】
(3)上記グルコマンナン膨潤液(I)と上記W/O型エマルジョン(II)を混合して、W/O/W型エマルジョン(III)を調製する。
【0036】
例えば、上記グルコマンナン膨潤液(I)100質量部に対して、上記W/O型エマルジョン(II)1〜100質量部を加え、必要に応じて澱粉等の他の原料を加え、ホモミキサー等の手段により混合することにより調製することができる。
【0037】
上記グルコマンナン膨潤液(I)100質量部に対する上記W/O型エマルジョン(II)の配合割合が1質量部未満であるとグルコマンナンを充分にゲル化することが困難になり、100質量部超であるとアルカリ剤が過剰となり、飲食品の風味に悪影響を与えることがある。
【0038】
(4)必要により、上記W/O/W型エマルジョン(III)に、糖類、澱粉等の他の原料を加え、pH4〜8の食品素材を調製する。
【0039】
例えば糖類を添加する場合には、糖類の水溶液が用いられ、シラップの場合はそのまま用いることもできる。糖液の濃度は特に限定されないが、通常、50〜85質量%が好ましい。糖液の濃度が50質量%未満であると製品の保存安定性に劣り、85質量%超であると糖の種類によっては結晶が析出したり、粘度が高くなり作業性が悪くなる。なお、上記糖液として、例えば砂糖、乳糖等のpHの高い(pH6.0〜7.5)糖類の水溶液(シラップも含む)を用いた場合、上記グルコマンナン膨潤液(I)を調製する際に、該糖液を混合してもよい。
【0040】
例えば上記糖液100質量部に対して、上記W/O/W型エマルジョン(III)を、好ましくは5〜900質量部、より好ましくは5〜250質量部加え、ホモジナイザー等の手段により混合することができる。上記のようにして得られる食品素材は、特にpH調整をしなくてもpH4〜8になる。
【0041】
(5)pH調整が必要な場合は、食品用の酸味料を用いることができる。酸味料の種類は限定されないが、例えばクエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、DL−酒石酸、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸、L−酒石酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、アジピン酸、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム等があげられる。
【0042】
このようにして調製した食品素材は、液状ないしはゲル化した状態をなす。この食品素材を複合菓子類又は複合パン類中に0.05〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%配合することにより、食感や物性等が効果的に改善され、所望の物性が付与された本発明の複合菓子類又は複合パン類を得ることができる。
【0043】
本発明における菓子生地又はパン生地としては、スポンジ類、クッキー・ビスケット類、パイ類、バターケーキ類、シュー類、ワッフル類、クラッカー類、スナック類、メレンゲ生地類、ドーナツ類、イースト生地類、まんじゅう類、液種生地類、おかもの類、及び揚げ和菓子類から選ばれた1種であり、前記パン生地が、菓子パン類、ロールパン類、クロワッサン類、デニッシュ類、ハードロール類、サンドイッチ類、ピザ類、揚げパン類、蒸しパン類から選ばれた1種が挙げられる。
【0044】
特に菓子生地としては、例えばスポンジケーキ、パウンドケーキ、ホットケーキ、ワッフル、クッキー、マカロン、クレープ、パイ、焼まんじゅうの皮、タイ焼きの皮、人形焼の皮、もなかの皮、蒸し饅頭の皮、かりんとう、ドーナツなどが挙げられ、特に制限はされないが、好ましくは水分の少ない長期保存可能なもの、例えばクッキー、ハードビスケット、ソフトビスケット、シュー皮、ウエファース、折りパイ、練りパイ、クラッカー、プレッチェル、もなかの皮などが挙げられる。
【0045】
また、本発明における副原料素材としては、ペースト状食品、チョコレート類から選ばれた1種が挙げられる。特にフィリング類、クリーム類、フラワーペースト類、ジャム類、餡類、チョコレート類から選ばれた1種が好ましい。中でもフィリング類、いわゆる菓子生地類の生地に詰めたり、表面に絞ったり、挟んだりするクリーム類やジャム類、餡類等が特に好ましく用いられる。クリーム類としては、特に限定はされないが、例えばバタークリームなどのW/O乳化型のクリーム類、チョコレートクリーム、カスタードクリーム、ホイップクリームなどのO/W乳化型のクリーム類、W/O/W乳化型クリーム類、O/W/O乳化型クリーム類、ナッツ類を使用したプラリネ類などが挙げられる。ジャム類としては、特に限定はされないが、例えばフルーツを生かしたプレザーブタイプやペクチンで固めたジャム、耐熱性を付与したジャムなどが挙げられる。餡類としては、特に限定はされないが、粒餡、漉し餡、白餡、うぐいす餡、味付けをした梅餡、抹茶餡などが挙げられる。
【0046】
本発明においては、上記菓子生地又はパン生地の1種以上と、上記副原料素材の1種以上とを接合して製造される複合菓子類又は複合パン類の全てを対象とするものであり、例えば餡を包んだ餡パンや、クリームをサンドしたサンドロールや、アイシングを掛けたドーナツ、糖蜜をかけたかりんとう、メロンパンなども、本発明の複合菓子生地類又は複合パン類に含まれるものである。
【0047】
上記菓子生地又はパン生地と、上記副原料素材との少なくとも一方に、上記食品素材を合計で0.05〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%配合することにより、物性変化を防ぎ、その食感や風味等が保持された本発明の複合菓子類又は複合パン類を得ることができる。
【0048】
以下、本発明を各種複合菓子類又は複合パン類に適用した好ましい例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
(1)菓子生地又はパン生地とチョコレート類との複合
本発明における菓子生地又はパン生地とは、一般に焼成すること、蒸すこと、フライすることにより作られる菓子類又はパン類の生地を全て含み、特に保存期間の長い水分の少ない菓子類が好ましく適用される。例えばクッキー、ハードビスケット、ソフトビスケット、シュー皮、ウエファース、折りパイ、練りパイ、クラッカー、プレッチェル、もなかの皮などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
このような菓子生地又はパン生地に、チョコレートをコーティングしたり挟み込んだり、包んだり、埋め込んだりした複合菓子類又は複合パン類は、製造時あるいは輸送時また、保存時の温度変化により、菓子又はパンの液状油脂がチョコレートのカカオ脂と混晶し、チョコレートの融点が下がり溶けたり、ブルーム現象が起こったり、菓子生地又はパン生地の表面に白い斑点状の油脂の結晶が発生するといった問題があった。
【0051】
本発明においては、上記食品素材を、菓子生地又はパン生地に対して0.05〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%配合することにより、菓子生地又はパン生地の液状油脂の移行を抑えることができ、それによって複合菓子類又は複合パン類の物性変化を防ぎ、その食感や風味等を保持することができる。また、上記食品素材は、菓子生地又はパン生地を焼成する前、又は焼成中、焼成後のいずれかの時期に、そのまま又は薄めて塗布したり、複合菓子類又は複合パン類の境界部分に塗布しても同様の効果を得ることができる。
【0052】
(2)菓子生地又はパン生地とクリーム類との複合
本発明におけるクリーム類とは、例えばホイップクリーム、生クリーム、バタークリーム、カスタードクリーム、フラワーペースト等が挙げられるが、これに限定されるものではない。前述した菓子生地又はパン生地に、クリーム類を絞ったり、挟んだり、包んだりした、例えばパイシューのような複合菓子類は、製造時あるいは輸送時、更には保存時に、菓子生地とクリームの水分差によりクリームの水分が菓子生地に移行し、菓子生地が水分により軟化したり、クリームの水分が減少し滑らかさが失われたり、更にはパイ生地とシュー生地の間の水分差によりそれぞれの食感が失われたりして、複合菓子の食感や風味、味の劣化が起こるといった問題があった。
【0053】
本発明においては、上記食品素材を、菓子生地又はパン生地と、クリームとの少なくとも一方に対して、合計で0.05〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%配合することにより、クリームの水分の菓子生地又はパン生地への移行を抑えることができ、それによって複合菓子類又は複合パン類の物性変化を防ぎ、その食感や風味等を保持することができる。また、上記食品素材は、菓子生地又はパン生地を焼成、蒸し、フライ等により加熱処理する前、又は加熱処理の最中、加熱処理後のいずれかに、そのまま又は薄めて塗布したり、クリーム製造時又は製造後に添加したり、複合菓子類又は複合パン類の境界部分に塗布しても同様の効果を得ることができる。
【0054】
(3)菓子生地又はパン生地とジャム類との複合
本発明におけるジャム類とは、例えばフルーツを生かしたプレザーブタイプやペクチンで固めたジャム、耐熱性を付与したジャムなどが挙げられるがこれに限定するものではない。前述した菓子生地又はパン生地に、ジャム類を絞ったり、挟んだり、包んだりした、例えばアップルパイのような複合菓子類又は複合パン類は、製造時あるいは輸送時また、保存時に菓子生地又はパン生地と、ジャムとの水分差によりジャムの水分が菓子生地又はパン生地に移行し、食感や風味、味の劣化が起こるといった問題があった。
【0055】
本発明においては、上記食品素材を、菓子生地又はパン生地と、ジャムとの少なくとも一方に対して、合計で0.05〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%配合することにより、ジャムの水分の菓子生地又はパン生地への移行を抑えることができ、それによって複合菓子類又は複合パン類の物性変化を防ぎ、その食感や風味等を保持することができる。また、上記食品素材は、菓子生地又はパン生地を焼成する前、又は焼成の最中、焼成後のいずれかに、そのまま又は薄めて塗布したり、ジャムの製造時あるいは製造後に添加したり、複合菓子類又は複合パン類の境界部分に塗布しても同様の効果を得ることができる。
【0056】
(4)菓子生地又はパン生地とあん類との複合
本発明における餡類とは、例えば粒餡、漉し餡、白餡、うぐいす餡、味付けをした梅餡、抹茶餡などが挙げられるが、これに限定するものではない。前述した菓子生地又はパン生地に、餡類を絞ったり、挟んだり、包んだりした、例えばパイ饅頭、アンパンのような複合菓子類又は複合パン類は、製造時あるいは輸送時、更には保存時に、菓子生地又はパン生地と餡との水分差により、餡の水分が菓子生地又はパン生地に移行し、食感や風味、味の劣化が起こるといった問題があった。
【0057】
本発明においては、上記食品素材を、菓子生地又はパン生地と、餡との少なくとも一方に対して、合計で0.05〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%配合することにより、餡の水分の菓子生地又はパン生地への移行を抑えることができ、それによって複合菓子類又は複合パン類の物性変化を防ぎ、その食感や風味等を保持することができる。また、上記食品素材は、菓子生地又はパン生地を焼成する前、又は焼成の最中、焼成後のいずれかに、そのまま又は薄めて塗布したり、餡の製造時あるいは製造後に添加したり、複合菓子類又は複合パン類の境界部分に塗布しても同様の効果を得ることができる。
【0058】
(5)菓子生地、パン生地及び/又はクリーム類と、チョコレート類との複合
前述したような菓子生地又はパン生地に、前記クリームと前記チョコレートとをコーティングしたり、絞ったり、挟んだり、包んだり、埋め込んだりした複合菓子類又は複合パン類、例えばクリームをサンドしチョコがけをしたビスケットやチョコがけしたエクレアのような複合菓子類又は複合パン類や、チョコレートの中にクリームを入れた例えばボンボンショコラのような複合菓子類は、製造時あるいは輸送時、更には保存時に、菓子生地又はパン生地と、クリーム、チョコレート、又はクリームとチョコレートの水分差によりクリームの水分が菓子生地又はパン生地に移行したり、クリームや菓子生地又はパン生地の油脂がチョコレートに移行したりして、複合菓子類又は複合パン類の外観及び食感や、風味の劣化が起こるといった問題があった。
【0059】
本発明においては、上記食品素材を、菓子生地、パン生地及び/又はクリームに対して、合計で0.05〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%配合することにより、クリームの水分の菓子生地又はパン生地への移行を抑えることにより、複合菓子の物性変化を防ぎ、その食感や風味等が保持されたものを得ることができる。また、上記食品素材は、菓子生地又はパン生地を焼成する前、焼成の最中、焼成後のいずれかに、そのまま又は薄めて塗布したり、クリームの製造時又は製造後に添加したり、複合菓子類又は複合パン類の境界部分に塗布しても同様の効果を得ることができる。
【0060】
(6)菓子生地、パン生地及び/又はジャム類と、チョコレート類との複合
前記菓子生地又はパン生地に、前記ジャムと、前記チョコレートを絞ったり、挟んだり、包んだりした、例えばチョコがけしたジャムパイのような複合菓子類又は複合パン類や、チョコレートの中心にジャムを入れた例えばフルーツ入りチョコレートのような複合菓子類は、製造時あるいは輸送時、更には保存時に、菓子生地又はパン生地と、ジャム、チョコレート、又はジャムとチョコレートの水分差により、ジャムの水分が菓子生地又はパン生地に移行したり、菓子生地又はパン生地の油脂がチョコレートに移行したりして、複合菓子類又は複合パン類の外観及び食感や、風味の劣化が起こるといった問題があった。
【0061】
本発明においては、上記食品素材を、菓子生地又はパン生地と、ジャム類との少なくとも一方に対して、合計で0.05〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%配合することにより、ジャム類の水分の菓子生地又はパン生地への移行を抑えることができ、それによって、複合菓子類又は複合パン類の物性変化を防ぎ、その食感や風味等を保持することができる。また、上記食品素材は、菓子生地又はパン生地を焼成する前、又は焼成の最中、焼成後のいずれかに、そのまま、又は薄めて塗布したり、ジャムの製造時又は製造後に添加したり、複合菓子類又は複合パン類の境界部分に塗布しても同様の効果を得ることができる。
【0062】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、以下の例において、特に断りのない限り、オリゴ糖シラップとしては、「フジオリゴ#360」(商品名、日本食品化工(株)製)を用いた。
【0063】
製造例1
グルコマンナンを常法により水で膨潤させて、グルコマンナン膨潤液(濃度3質量%)を調製した。
【0064】
サフラワー油100gに、5質量%ポリリン酸ナトリウム水溶液120g、乳化剤0.8gを加え、ホモミキサーにより混合均質化して、W/O型エマルジョンを調製した。
【0065】
上記グルコマンナン膨潤液400gに上記W/O型エマルジョン20gを加え、ホモミキサーにより混合均質化して、W/O/W型エマルジョンを得た。そしてオリゴ糖シラップ700gに、上記W/O/W型エマルジョン300gを加え、ホモミキサーで均一に混合して食品素材1を得た。
【0066】
製造例2
製造例1と同様にして、グルコマンナン膨潤液(濃度3質量%)と、W/O型エマルジョンを調製した。
【0067】
上記グルコマンナン膨潤液400gに上記W/O型エマルジョン20gを加え、更にアセチル化架橋ワキシースターチ5gを添加し、ホモミキサーにより混合均質化して、W/O/W型エマルジョンを得た。そしてオリゴ糖シラップ700gに、上記W/O/W型エマルジョン300gを加え、ホモミキサーで均一に混合して食品素材2を得た。
【0068】
製造例3
製造例1と同様にして、グルコマンナン膨潤液(濃度3質量%)と、W/O型エマルジョンを調製した。
【0069】
上記グルコマンナン膨潤液400gに上記W/O型エマルジョン20gを加え、ホモミキサーにより混合均質化して、W/O/W型エマルジョンを得た。このW/O/W型エマルジョンを乳酸を用いてpH調整を行ない、食品素材3とした。
【0070】
実施例1(菓子生地とチョコレートの複合菓子)
表1に示す配合割合で各原料を用いて、ハードビスケット生地を常法に従って調製し、エンローバー用チョコレートを表面半分にコーティングし、複合菓子を作成した。なお、焼成途中に表面に塗布したものは、10%溶液にして所定量塗布した。
【0071】
【表1】
【0072】
そして、各チョコレートコーティングビスケットを20℃と28℃の温度帯に交互に入れて表面の状態の経時変化を1週間ごとに観察し、10点評価法で評価を行い、その平均点(端数は四捨五入)を求めた(表中、×:1〜3点、△:4〜5点、○:6〜7点、◎:8〜10点を表し、点数が高いほどより好ましいことを表す。以下の例においても同じ。)。評価に関しては、チョコレート表面は、ブルーム現象、菓子生地部分は、白色化現象を中心に観察を行った。その結果を併せて表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
表2から、食品素材1及び3を添加したハードビスケットA、Bは、ハードビスケットEに比べてチョコレート部分、菓子生地部分共に表面の状態が良好であると判断された。また、食品素材1又は3を薄めて塗布したハードビスケットC,DもハードビスケットA,Bよりは効果は弱いものの、ハードビスケットEに比べて表面の状態が良好であると判断された。このことから、食品素材を使用したハードビスケットは、使用しないものに比べ経時変化が起こりにくくブルームや白色化現象が起こりにくいことがわかる。
【0075】
そして、得られた各ハードビスケットを20℃で1ヶ月間保存した後、表3に示す各項目について15名のパネラーにより官能評価を行った。官能評価は10点評価法で行い、その平均点(端数は四捨五入)を求めた(表中、×:1〜3点、△:4〜5点、○:6〜7点、◎:8〜10点を表し、点数が高いほどより好ましいことを表す。以下の例においても同じ。)。その結果を合わせて表3に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
表3から、食品素材1及び3を添加又は塗布したハードビスケットA〜Dは、ハードビスケットEに比べて食感、風味等に優れ、経時変化等の保存性も非常に向上していることが分かる。
【0078】
実施例2(菓子生地とクリームの複合菓子)
表4に示す配合割合で各原料を用いて、シュー生地とカスタードクリームを常法にしたがって調製し、生地にクリームを注入し複合菓子を作成した。
【0079】
【表4】
【0080】
各シュークリームを5℃の冷蔵庫に入れ、経時変化を5日後まで観察し、10点評価法で評価を行い、その平均点(端数は四捨五入)を求めた。評価に関しては、クリーム部分は、離水の状態、菓子生地部分は、生地の軟化を中心に観察を行った。そして、各シュークリームを5℃で3日間保存したものについてそれぞれ、表5に示す各項目について15名のパネラーにより官能評価を行った。官能評価は10点評価法で行い、その平均点を求めた。これらの結果を合わせて表5に示す。
【0081】
【表5】
【0082】
表5から、食品素材1及び3を、生地とクリームのいずれにも添加したシュークリームA、Bは、シュークリームEに比べて経時変化が少なく、官能検査でも良好な結果となっている。また、シュー生地のみに使用したC,クリームのみに使用したDも、シュー生地Eに比べて経時変化、官能検査結果ともに良好であった。このことから、いずれもそれぞれの生地やクリームの中での水分の移行が起こりにくくなっていることがわかる。
【0083】
実施例3(菓子生地とジャムの複合菓子)
表6に示す配合割合で各原料を用いて、ハードビスケット生地を常法にしたがって調製し、2枚のハードビスケットの間にジャムをサンドし複合菓子を作成した。なお、ジャムにも食品素材を配合したものをつくった。
【0084】
【表6】
【0085】
そして、各ジャムサンドビスケットを20℃と28℃の温度帯に交互に入れて2週間保存したものと、20℃で1ヶ月間保存したものについてそれぞれ、表7に示す各項目について15名のパネラーにより官能評価を行った。官能評価は10点評価法で行い、その平均点を求めた。その結果を合わせて表7に示す。
【0086】
【表7】
【0087】
表7から、食品素材1及び3を添加したジャムサンドビスケットA、Bは、ジャムサンドビスケットEに比べていずれの項目においても良好であり、またビスケット生地のみに使用したC,及びジャムのみに使用したDも生地とジャムの両方に使用したものに比べると効果は劣るものの、無使用のジャムサンドビスケットEに比べて良好な結果となり、効果が確認できた。このことから、通常ジャムからの水分がビスケット生地に移行して、ジャムが固くなり、食感が悪くなったり、ビスケット生地が湿気て食感が悪くなるのが、この食品素材を使用することにより、抑えられたと考えられる。また、このことから、ジャムやビスケット生地の風味を保持し、味が悪くなるのを抑える効果もあるものと考えられる。
【0088】
実施例4(菓子生地とあんとの複合菓子)
表8に示す配合割合で各原料を用いて、まんじゅう生地を常法にしたがって調製し、更に表8に示す配合割合で各原料を用いて、餡を常法にしたがって調整し、生地で餡を包み、蒸して複合菓子を作成した。なお、餡にはオリゴ糖シラップとして、商品名「フジオリゴ#450」を使用した。
【0089】
【表8】
【0090】
そして、各まんじゅうを20℃3日保存したものと、5℃で1週間保存したものについてそれぞれ、表9に示す各項目について15名のパネラーにより官能評価を行った。官能評価は10点評価法で行い、その平均点を求めた。その結果を合わせて表9に示す。
【0091】
【表9】
【0092】
表9から、食品素材1及び2を生地に添加したまんじゅうA、Bは、まんじゅうEに比べて常温保存、冷蔵保存共に良好な結果となっている。また食品素材1をまんじゅう生地に使用したまんじゅうCは、生地だけではなく、あんの部分に関してもまんじゅうEよりも良い結果となっていることから、生地に使用することにより餡からの水分移行が抑制され、あんの食感などが保持されたものと考えられる。同様に食品素材3をあんに使用したまんじゅうDは、あんだけでなく生地に関してもまんじゅうEより良い結果となった。これらのことから、生地及び/又はあんに食品素材を使用することにより、水分移行が起こりにくく、経時安定性が増し、外観、食感や風味、味が保持されることがわかった。
【0093】
実施例5(クリームとチョコレートの複合菓子)
表10に示す配合割合で各原料を用いて、クリームを内包したチョコレートの複合菓子を作成した。
【0094】
【表10】
【0095】
20℃と28℃の温度帯に交互に入れて表面の状態の経時変化を1週間ごとに観察し、10点評価法で評価を行い、その平均点(端数は四捨五入)を求めた。評価に関しては、チョコレート表面は、ブルーム現象、クリーム部分は、保湿性を中心に観察を行った。その結果を表11に示す。
【0096】
【表11】
【0097】
表11から、食品素材2及び3を水あめと置換したチョコレートA、Bは、チョコレートEに比べて表面の状態が良好であり、Bに関しては、クリームの状態も良好である。これは、チョコレートにとって大敵な水分がクリームの中に保持されているためにチョコレートの状態が保たれているものと考えられる。
【0098】
また食品素材2又は3をそのまま添加したチョコレートC,DもチョコレートEに比べて良好であるが、やはり水分が多くなるに従い、効果が低くなる傾向が見られる。これらのことから、水分をクリームの中に保持する能力が高いほど、ブルーム現象が起こりにくくなっていることがわかる。
【0099】
そして、得られた各チョコレートを20℃で3週間保存した後、表12に示す各項目について15名のパネラーにより官能評価を行った。官能評価は10点評価法で行い、その平均点を求めた。その結果を合わせて表12に示す。
【0100】
【表12】
【0101】
表12から、食品素材2及び3を水あめと置換又は添加したチョコレートA〜Dは、チョコレートEに比べて食感、風味等に優れ、経時変化等の保存性も向上し、保水効果が高いものほどその効果が顕著であることが分かる。
【0102】
実施例6(菓子生地とジャムとチョコレートの複合菓子)
表13に示す配合割合で各原料を用いて、折りパイ生地を常法にしたがって調製し、焼成前のパイ生地の間に耐熱性のイチゴジャムをサンドし、焼成後のジャムサンドパイにエンローバー用のチョコレートをコーティングし複合菓子を作成した。
【0103】
なお、生地形成途中とは生地の折り作業の段階のことでこの時に表面に塗布したものは、10%溶液にして所定量塗布した。
【0104】
【表13】
【0105】
各チョコレートをコーティングしたジャムパイを20℃に保存し、経時変化を1ヵ月後まで観察し、10点評価法で評価を行い、その平均点(端数は四捨五入)を求めたそして、各チョコレートをコーティングしたジャムパイを20℃で2週間保存したものについてそれぞれ、表14に示す各項目について15名のパネラーにより官能評価を行った。官能評価は10点評価法で行い、その平均点を求めた。その結果を合わせて表14に示す。
【0106】
【表14】
【0107】
表14から、食品素材1及び3を生地とジャムに添加したチョコレートコーティングしたジャムパイA、Bは、Eに比べて明らかに外観や食感、風味等において優れる結果となった。また食品素材3を生地のみに入れたCでもEよりも良好な結果となった。また生地形成途中に薄めて塗布したDでもEに比べて明らかに良い状態であった。このことから、チョコレートをコーティングしたジャムパイのように複雑な構成の複合菓子においても食品素材を添加することにより、水分や油脂の移行を防ぐことにより、経時変化しにくく、食感、風味が優れ、保存安定性が改善された。
【0108】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、グルコマンナンを含む水溶液中に、内相にアルカリ水溶液を含むW/O型エマルジョンが均一に分散したpH4〜8の食品素材を、複合菓子類又は複合パン類に所定量配合することにより、水分、油脂の移行を防ぎ、物性、食感、風味等に優れ、保存安定性が効果的に改善された複合菓子類又は複合パン類を提供できる。
Claims (10)
- 菓子生地又はパン生地と、水分又は油分に富む副原料素材とを接合して製造する複合菓子類又は複合パン類の製造方法において、グルコマンナンを含む水溶液中に、内相にアルカリ水溶液を含むW/O型エマルジョンが均一に分散しており、pH4〜8である食品素材を、前記菓子生地又は前記パン生地と、前記副原料素材との少なくとも一方に合計で0.05〜30質量%配合することを特徴とする複合菓子類又は複合パン類の製造方法。
- 前記菓子生地又はパン生地が、スポンジ類、クッキー・ビスケット類、パイ類、バターケーキ類、シュー類、ワッフル類、クラッカー類、スナック類、メレンゲ生地類、ドーナツ類、イースト生地類、まんじゅう類、液種生地類、おかもの類、及び揚げ和菓子類から選ばれた1種であり、前記パン生地が、菓子パン類、ロールパン類、クロワッサン類、デニッシュ類、ハードロール類、サンドイッチ類、ピザ類、揚げパン類、蒸しパン類から選ばれた1種である請求項1記載の複合菓子類又は複合パン類の製造方法。
- 前記菓子生地が、ケーキ、ワッフル、クッキー、ビスケット、シュー皮、ウエファース、パイ、クラッカー、プレッチェル、パフ菓子、マカロン、クレープ、饅頭の皮、タイ焼きの皮、人形焼の皮、もなかの皮、かりんとう、ドーナツから選ばれた1種である請求項1記載の複合菓子類の製造方法。
- 前記副原料素材が、ペースト状食品、チョコレート類から選ばれた1種である請求項1〜3のいずれか1つに記載の複合菓子類又は複合パン類の製造方法。
- 前記副原料素材が、フィリング類、クリーム類、フラワーペースト類、ジャム類、餡類、チョコレート類から選ばれた請求項1〜4のいずれか1つに記載の複合菓子類又は複合パン類の製造方法。
- 前記食品素材が、更に糖類を含有する請求項1〜5のいずれか1つに記載の複合菓子類又は複合パン類の製造方法。
- 前記食品素材が、更に澱粉を含有する請求項1〜6のいずれか1つに記載の複合菓子類又は複合パン類の製造方法。
- 前記食品素材のpHが4.5〜7.5である請求項1〜7のいずれか1つに記載の複合菓子類又は複合パン類の製造方法。
- 前記W/O型エマルジョンの油脂相が、不飽和脂肪酸を50質量%以上含む油脂からなる請求項1〜8のいずれか1つに記載の複合菓子類又は複合パン類の製造方法。
- 前記W/O型エマルジョンが、油脂と乳化剤とアルカリ水溶液とを含むものである請求項1〜9のいずれか一つに記載の複合菓子類又は複合パン類の製造方法。
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