JP2004533830A - 慢性炎症性関節疾患のための診断、分子決定、及び治療開発のためのツール - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
本発明は、慢性炎症性関節疾患及び他の炎症、感染又は腫瘍疾患についての診断、分子決定(molecular definition)、及び治療開発のためのツールに関する。これらのツールは、慢性関節疾患についての分析及び治療開発における、ゲノムデータ[ゲノミックス(genomics)]、プロテオミック(proteomic)データ[プロテオミックス(proteomics)]及び免疫データ[イムノミックス(immunomics)]に基づく。本発明は、炎症性リウマチ様関節疾患及び非炎症性リウマチ様関節疾患、自己免疫疾患及び感染性疾患を特徴付ける、遺伝子配列並びに推定されるmRNA及びタンパク質の使用、並びにその推定されるタンパク質に特異的な抗体の使用の両方に基づく。研究を開始することにより、今までに解明されていない慢性炎症性関節疾患の病原学的に重要な病因を推論し得る。更に、これらの関節疾患の分類、予後の評価及び治療の最適化についての解釈アルゴリズムを構築し得、そして更に、新規の治療のストラテジー及び治療の標的についての結論を引き出し得る。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の概要]
(技術問題)
慢性炎症性関節疾患の病因は、未だに解明されていない。慢性関節リウマチ(RA−実施例の下の略語の一覧表を参照のこと)は、これらの疾患についての典型的な例である。疾患の主な進行は、滑膜において起こり、これが炎症によって変化して慢性の関節の病変を引き起こす。観察された臨床写真は、非常に異質であり、破壊性の滑膜炎の共通の症状を示すいくつかの実体に直面することを示唆する。これらの疾患はまた、全身性の疾患として理解されるべきであり、これは血液中において多数の変化が観察され、そしてしばしば重篤な組織徴候が起こる。
【0003】
炎症カスケードにおける、調節不全が原因の過敏性炎症活性は、主な病原性の機構として議論される。更に、自己免疫反応が記載され、これは病原性プロセスにおける特異的な体液性免疫機構及び細胞介在性免疫機構の役割を示唆する。しかし、酵素学的な組織破壊、細胞及び組織の増殖又は再生のような他の機構もまた議論され、これらの因子もまた、病原における重大な役割を潜在的に果たす。
【0004】
これらの病原の機構がただ一つの、排他的に関連するものであるかどうかは、今までは最終的な決定が可能でなかった。そのうえ、どのようなパラメータが同時にこれら全ての変化を含むが未知である。この不充分な病因の理解の結果、多数の治療が可能であるが、その主な例は、一つの主な治療コンセプトのみに従う:
【0005】
過敏性炎症の共通の症状に焦点を合わせると、このように現在の治療は、炎症を抑制することを目的とする。いわゆる基礎治療は、免疫調整及び疾患を変更するという特徴を示す。これらの治療は、細胞の代謝及び細胞の活性の基礎の機構を阻害する(例えば、メトトレキサート、アザチオプリン)。しかし、関節疾患におけるこれらの治療の分子機構の包括的な原理は、完全には理解されていない。その結果、個々の場合における異なる様式及び特異的な様式において、単一の基礎治療の治療効果を制御するようなそれぞれのパラメータが不足する。
【0006】
(先行のツール)
関節疾患を有する患者は、現今では臨床ルーチンにおいて、以下の診断基準に従って評価される:疾患の進行の報告(既往歴)、臨床写真(関節、組織徴候において観察される疾患のパターン)、炎症のパラメータ(血清の電気泳動、沈降速度、及びC−反応性プロテインにおいて観察される非特異的炎症のパラメータ)、自己免疫のパラメータ(リウマチ様因子、抗核抗体、及び抗Ro、抗La、抗U1RNP、抗Sm、抗ヒストン、抗Scl70、抗セントロメア、抗dsDNA、抗リン脂質抗体のようないくつかの特異的自己抗体)、HLAマーカーに基づく遺伝的素因(DR4、B27、DR3)、イメージ作成(関節のX線写真における破壊的変質)、実験室的診断のルーチンパラメータによる伸展した組織の診断(肝臓酵素、筋肉酵素、腎臓保持値)、並びに都合のよい場合、超音波、放射線及び磁気共鳴トポグラフィーのさらなる技術。これらは、予測されるべき疾患の攻撃性に関するか、又は個々の患者における基礎治療が成功するという具体的な期待値に関する、非常に限られた断言的な事項にのみ従う。更に現今では、診断の判断基準は、ほとんどの通常の関節炎疾患、RAにおける徴候の多様性を充分に分類するように設計されていない(1)(実施例の下の引用文献を参照のこと)。特に疾患の初期段階において、診断は困難でかつ不確定である。しかし、疾患を患いちょうど1年すると、多くの患者は、取り返しのつかない関節の病変をすでに被っている。初期段階の関節炎の研究により、より初期に診断を確定すること、そして続いて適切な治療を受けることにより、疾患の長期的な発達に関する根本的な改善が生じるということが既知である。従って、臨床写真を超える分子的特長を統合した新規の方法及び診断基準が非常に必要とされる。
【0007】
また、治療的な成功の進行をモニターすることは、今まで上記に記載される診断の方法によって為されてきた。これらの多くのパラメータが、非常にゆっくりとしか変化しない。選択された治療が効果的な場合、結論を出す目的では、これらのパラメータの観察には数週間から多くの月日を必要とする。改善が不充分であること及び疾患が進行していることが原因で、しばしば治療は変更されなければならない。一般に、疾患の治癒は、現在可能な治療を用いることによっては不可能である。
【0008】
(実験的なアプローチ)
特にRAの診断を改善する目的で確立されているツールを超える、多くの実験的なアプローチが存在している。
【0009】
これらのアプローチは、鍵となるタンパク質を探すことに関する。すなわちこの鍵となるタンパク質は、1)中央部分における炎症の進行を維持するか又は阻害する、2)軟骨及び骨マトリクスの酵素的破壊に確実に関与するか、又は原因である酵素を阻害する、あるいは3)再生プロセス及び修復プロセスを誘導し得るか、又はそのアンタゴニストを阻害する。ここで、例えば、炎症に介在するサイトカインである腫瘍壊死因子(TNF)−α及びインターロイキン(IL)−1βの役割は必須であり、従って、それぞれの治療的アプローチを臨床的使用へ導入している。TNF−αを阻害することは、通常のツールによっては充分に影響しないRAを多くの場合において改善させ得るが、しかしこれらの陽性の結果は、疾患の治癒を引き起こさない。部分的には、この阻害は、感染又は敗血性の合併症さえ生じ、そしてそれにも関わらず関節炎の充分な制御は為されないというほど強力である。これは、炎症のTNF−α介在経路が、少なくとも唯一の疾患の中心部の病原性機構ではないということを示唆する。2つの前述のサイトカインの他に、関節炎の病原における他の多くのシグナル物質の役割は研究中である。加えて、治療的な介入は、対応する細胞内シグナル経路にますます焦点をあわせている。
【0010】
更に、マトリックスメタロプロテアーゼ及びカテプシンは、骨及び軟骨の酵素的破壊の中心である。
再生機構の研究は、ちょうど調査の始まりである。始めに、トランスフォーミング増殖因子(TGF)−βファミリーに属するシグナル物質に言及しなければならない。これらの多くは、ロコモーター系の発達に重大な役割を果たす。滑膜組織及び軟骨に対する最初の研究は、このグループの増殖因子及びモルフォゲンのメンバーは、成体の滑膜組織においてもまた産生されるということを示す。炎症性関節疾患について本発明者らは、自身の研究において、いくつかのこれらの因子は明らかに相対的な減少を示すということを示し得た。更に、骨形態形成タンパク質(BMP)−7について、発達する人工軟骨組織への細胞侵襲が抑制されることが示され得た(2)。
【0011】
上述の多くの因子及び酵素は、変形性関節症又は反応性関節炎疾患のような他の関節疾患においてもまた見出され、それゆえそれらに関しては、特定の診断パラメータを構成しない。
【0012】
実験的なアプローチはまた、自己反応性T細胞及び自己反応性B細胞はRAにおいて生じ、従ってRAは自己免疫疾患の群に分類されるという事実にも焦点を合わせている。この分類は、いわゆるリウマチ様因子、直接免疫グロブリンGに指向する自己抗体の発見にさかのぼる。しかし、リウマチ様因子は、RA患者のたった約3分の2にしか起こらず、しかしまた、他のリウマチ様疾患及び非リウマチ様疾患、及び健康な集団の5%(しかも高齢者には高い割合)においてさえも存在する。リウマチ様因子の発生は見かけ上、特定の病理学的状態下の身体の生理学的な反応(例えば、細菌性心内膜炎)である。IgGに特異性を有する自己反応性B細胞は、見かけ上集団の大部分に存在し、異なる機構によって活性化され得る。用語「リウマチ様因子」は、RAについての診断的意味及び予後的意味しか持たないが、それにもかかわらず維持されている。
【0013】
しかし、同じ特徴はまた、RAにおいて既知であるほぼ全ての自己抗体に対して定性的に適用される:陽性の患者の頻度は、100%よりも有意に低く、そして部分特異的な疾患もまた、100%よりも有意に低い。従って、疾患パターン、炎症の強度及び間欠的特長に関する、判断されたRAの臨床的異質性は、免疫学的な調節不全プロセスの異質性と同時である。この臨床的異質性及び免疫学的異質性はまた、「慢性関節リウマチ」とは、異なる疾患の実体について一般的な用語である、という推測を支持する。このことについて典型的な例は、RF陽性及びRF陰性(RF−リウマチ様因子)RA間の相違であり、ここで前者は、より重度の破壊的な素質及び全身性の体液活性を有するとされている。用語「血清陰性の」とは、どんな自己抗体も存在しないとさえ誤って意味される。しかし、リウマチ様因子も他の公知の自己反応性のものも、RA又はその推定される派生型若しくは進化型のうちの1つの発生についての病因学的な原因として確認され得ていなかった。
【0014】
自己抗体は、その主要メンバーとして全身性エリテマトーデス(SLE)を有する膠原病のような、他のリウマチ様自己免疫疾患の場合における診断的な分類のために用いられる。これらの自己抗体の初期の病原性は、絶えずそして繰り返し議論されている。疾患の断続的な発症及び引き続く免疫複合体の形成の間における、予測外で過剰な自己抗原の放出及び補体の活性化と組み合わせて、高力価の自己抗体疾患は組織病変、特に腎臓、及び血管炎特徴と関連があることが確実である。しかし、RAにおける自己反応性B細胞及びT細胞の役割は、決定していない。代わりに、新規な自己抗原が、RAにおける自己反応性免疫応答の標的として常に記載される。いくつかのこれらの抗原は、その生化学的特徴及び抗原性特徴の観点から充分に特徴づけられるが、しかし他のものは、わずかなパラメータの観点においてのみ理解される。いくつかのこれらの自己抗体は、その発見について非常に有望であった。なぜなら、B細胞応答及び/又はT細胞応答は、RAについて高度に特異的であるようだからである。しかし、これらの抗体における興味は、同じ自己反応物が他の自己免疫疾患においてまた検出された場合に、いつも急速に失われた。一方、多数のT細胞関連自己反応物がRAについて発見されたが、しかしこれらのうち非常に少数のもののみがRAについて特異的である。
【0015】
(ヒートショックプロテイン)
RAは、感染性疾患を構成するとすぐに考えられてきた。従って、外因性の抗原供給源の多様性(多くの場合、微生物起源又はウイルス起源)は、自己反応のトリガーとして作用する潜在的病原体を検出する目的で研究された。潜在的なRA誘導物質の1つは、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)である。なぜなら、これは動物モデルにおいて、特定の局面においてヒトRAと同様な疾患であるアジュバント関節炎を誘導するからである。この実験的な疾患はまた、ミコバクテリアヒートショックプロテイン65(mt−Hsp65)又はこの抗原について特異的であるT細胞によって誘導され得た。ヒートショックプロテインは、天然のタンパク質が正しい3次構造をとるのを助け、それによって3次構造及び4次構造を作製する。mt−Hsp65は、哺乳動物種における基本的なHsp60と相同である。RA患者の滑液におけるmt−Hsp65特異的T細胞及び抗体についての報告は、非常に相同なヒトHsp60は、RA患者において抗原として認識されるということを示唆した。しかしこれらの抗体は、RAに特異的ではない。すなわち、これらはまた、ライター症候群、SLE及び活性な結核を有する患者において生じるが、しかしまた正常なヒトにおいても生じる。
【0016】
mt−Hsp65に対する反応性はRAにおいて優勢に役割を果たしているようにはみえないが、にもかかわらずヒトHsp60は、RAの病原性において重要であり得る。すなわち、そのアミノ酸配列において、ヒトHsp60(11〜22のアミノ酸の領域において)は、サイトケラチン及びHsp90のようなタンパク質と同一性を有する。従って、自己反応性T細胞又はこれらのタンパク質に対する抗体は、自然発生する(しかし厳密に調節される)Hsp60反応性から生じると考えられる。
【0017】
(DnaJ)
DnaJすなわち哺乳動物Hsp70と相同性を有する細菌性ストレスタンパク質は、「共有エピトープ(Shared Epitope)」との名称でより公知であるアミノ酸配列QKRAAを供給し、これはRAの素因を与える(3)。このエピトープはまた、プロテインgp110において生じ、これはエプスタイン・バールウイルス(EBV)によってコードされる。DnaJは、RA条件下では自己反応性T細胞の標的であるが、正常な被験者においては標的ではない(4)。共有エピトープがRA素因を与える方法はまだ未知であるが、1つの考え得る機構は、非MHCタンパク質からの共有エピトープペプチドの産生、そして続くMHCクラスII分子上での提示であり得、それにより外来(EBV−gp110)及び自己(MHCクラスII)に対して免疫反応の応答を誘導する。
【0018】
(EBVコード核抗原)
エプスタイン・バールウイルス(EBV)は、RA患者の滑液においてつい最近検出が可能になったにも関わらず、RAを引き起こすとすぐに考えられてきた。EBVコード核抗原(EBNA−1)に対する抗体は、RAに罹患する患者における滑膜中皮細胞由来のp62タンパク質に強い反応性を示した。EBNA−1は、グリシン−アラニンリッチな繰り返し配列(IR−3)を含有し、これはRA、SLE、全身性硬化症(SSc)及び感染性単核細胞症に罹患する患者において自己抗体によって認識されるが、また正常な個体においてもしばしば認識される。EBNA−1は、典型的にはIR−3配列を介して、多くのヒトタンパク質と交差反応性を示す。これらの中で、重要な例はp62及びp542であり、ここで後者は感染性単核細胞症を有する患者由来の抗体によって主に認識されるが、またRA患者由来の抗体によっても認識される。P542は、「Raly」と命名されたマウスhnRNPとの高い配列同一性及びヒトhnRNP C2との配列類似性のために、hnRNPの71kの成分として最近同定された。
【0019】
(Sa抗原;フィラグリン、シトルリン化ペプチド/タンパク質)
Sa抗原(5)及びフィラグリンは、最近発見された2つの抗原である。これらは、炎症を起こした関節には存在しないが、高いRA特異的免疫応答のために注目を集めている。Sa抗原は、ヒト脾臓及び胎盤に由来する50kのタンパク質である。Sa特異的抗体は、43%のRA患者に生じ、そして78%〜99%の疾患特異性を有する。フィラグリンは42kのタンパク質である。これは交差結合介在フィラメント、特にサイトケラチンの原因であり、そして内皮に存在する。フィラグリン特異的抗体は、遥か以前に記載された、「抗核周囲因子」、及びいわゆる抗ケラチン抗体と明らかに同じである。抗フィラグリン抗体によって認識されるエピトープの主な決定基は、翻訳後修飾されたアルギニンであるシトルリンである(6、7)。これらの抗体の感受性は、36%と91%とのの間であり、そして特異性は66%と100%との間である。フィラグリンは関節外にのみ生じるが、一方シトルリンはまた、滑膜細胞においても首尾よく検出されている。
【0020】
(コラーゲンII)
コラーゲンタイプIIは、関節軟骨の主要な成分であり、それゆえにRAについての自己抗原であるように考えられる。従って、多くの研究が、コラーゲン特異的免疫応答の役割について扱った。ウシコラーゲンタイプIIと反応するマウスT細胞はエピトープに特異的であり、このエピトープはまた、ヒトコラーゲンIIにおいても起こり、そして更に、コラーゲン誘導関節炎に罹患しているマウス由来の重要なT細胞エピトープと重複している。コラーゲンタイプIIは、細胞外マトリクスの成分であり、これは同一のトロポコラーゲンサブユニットから三重らせんを産生する。このサブユニット自体は更に大きなプロコラーゲンから産生される。コラーゲンに特異性を有するB細胞は、より言われている様式でRA患者の炎症を起こしている関節において生じるようである。コラーゲンIIに特異的なT細胞は、健康な個体と同様、RA患者においてよく生じる。
【0021】
コラーゲンの反応性は、RAにおける経口耐性の研究の範囲で特に注目された。動物モデルにおいて経口耐性は、(自己免疫)炎症の部分において生じる抗原によって誘導され得るが、炎症プロセスそれ自体には必ずしも関係がない。このような抗原が経口的に与えられた場合、与えられた抗原に特異性を有するT細胞は明らかに耐性を示し、次いで別の場所、すなわち炎症を起こした関節において、例えば、IL−10及びTGF−βのような抑制因子を介していわゆる傍観者抑制(Bystander-Supression)を産生し得る。このようにコラーゲンIIに特異的なT細胞は、RAにおいて炎症を下方調節すると期待された。しかし、経口耐性の3回のプラセボ検証二重盲検では、コラーゲンIIが与えられた場合に疾患の活性の有意な改善が明らかにされなかった。同様の結果は、Hsp65(Subreum)由来のペプチドを用いる臨床研究についてもまたあてはまる。
【0022】
(軟骨細胞抗原65(CH65))
軟骨細胞の膜は、RA患者及び関節炎患者における自己反応性T細胞の標的であると報告され(8)、これに対して正常なドナーのT細胞は、このような反応を示さない。更に、軟骨細胞膜は、RA患者の70%において自己抗体によって認識される。この各々の抗原は、軟骨特異的なCH65であり、これは、ミコバクテリアHsp65及び特定のサイトケラチンと配列類似性を示す。CH65は、Hspと類似であるが同一ではないグリシンの高い割合を示す。この配列はケラチンの配列と類似であるが、それにもかかわらずこの配列は完全にはケラチンの代表ではない。このような類似性のために、ヒト/ミコバクテリアHspと他のタンパク質との間の分子相同性の考えに至るようになる。しかし、CH65、サイトケラチン、又はHsp65に特異的なモノクローナル抗体との間に交差反応性は見出されなかった。T細胞の反応性は、精製されていない軟骨細胞膜に対してのみ研究された。
【0023】
(HC gp39)
滑液において多くの抗原が生じる。これらは患者及び対照のわずかな群においてのみ試験された。1つの例としては、重要な産物であるヒト軟骨糖タンパク質(HC gp39)であり、これは、関節の軟骨細胞、滑膜細胞、分化最終段階のマクロファージ、及び好中球によって分泌される。破壊的な関節疾患を有する患者におけるgp39のレベルは、健康な個体と比較して血清及び滑液において増加している。増加した力価は変形性関節症の場合にのみ生じるのではなく、結腸直腸の癌腫、アルコールで誘導された肝硬変及び乳癌の場合においても生じることが後に示された。gp39は、組織の再構成及び細胞外マトリクスの分解において役割を果たすだけでなく、RAにおける自己反応性T細胞の標的でもある。従って、gp39配列由来のペプチドが、HLA−DR4(DRB1*0401)に結合するか、そしてT細胞を刺激するか否かもまた試験された。gp39反応性T細胞は、18人のRA患者のうちの8人、そして11人の健康な個体のうちの3人において検出された。動物モデルにおいて、Balb/cマウスの免疫化は、断続的に発症する慢性関節炎を誘導する。この慢性関節炎は、gp39の経鼻投与によって再び治癒し得た。
【0024】
(リウマチ様因子)
RAにおける最も公知な自己抗原は、同時に細胞特異的ではなく、ほぼ広範に生じ得る。これは、さらなる抗体の標的としての免疫グロブリンG(IgG)、すなわちいわゆるリウマチ様因子(RF)である。リウマチ様因子は、まだ唯一の血清学的パラメータであり、米国リウマチ学会(American College of Rheumatology)の診断基準(ACR診断基準)に包含されている。RAについてのRFの病理学的な関連は、まだ議論の余地がある。なぜならRFは、SLE、シェーグレン症候群、心内膜炎、肝臓疾患を有する患者、そして健康なヒトにでさえ生じるからである。RFの力価と、臨床的若しくは血清学的なRAの活性、又は関節破壊の程度とは厳密には相関していない。
【0025】
(hnRNP A2プロテイン(RA33))
ヒト核リボヌクレオタンパク質(hnRNP)に属するA2プロテインは、広範に分布するタンパク質であり、RA33自己抗原として初めに記載された。以下に、A2成分との同一性、並びにSLE、混合膠原病(混合結合組織病;MCTD)及び他の疾患に罹患している患者由来の血清との反応性の両方を示す。A2は、多くの他の因子との複合体として存在し、共に核中のhnRNPとなる。A2の正確な機能は未知であるが、ヒト核リボ核酸(hnRNA)をスプライシングする機能が考えられる。従って、A2は、2つのRNA結合ドメイン及び核インポート/エクスポートシグナルを提供する。RA及びSLEにおける抗体は、RNA結合ドメインの間の領域に指向し、MCTD患者(混合結合組織病)における抗体は両方のRNA結合ドメインから成る不連続なエピトープを認識する。免疫系がどのようにA2と接触するかは、未だ明らかではない。しかし人体模型の観点から、hnRNPはRAについての良好な候補抗原である。しかし今のところ、A2(特定の状況下で)は、例えば炎症の経過における細胞減少の間に細胞表面に到達する、ということのみ推測し得る。
【0026】
(カルパスタチン)
カルパスタチンは、72kの分子量及びカルパインについての4つの抑制ドメインを有する、広範に存在する細胞質タンパク質である。カルパインは、リウマチ様疾患における関節破壊に関すると考えられているシステインプロテアーゼのファミリーを包含する。カルパインは細胞質において生じ、その活性化はカルシウムイオンによって、及びその抑制はカルパスタチンによって厳密に調節される。細胞活性化の後、カルパスタチンはまた、細胞外で生じ、そして従って抗体へ接近可能である。カルパスタチンは、RA、SLE、多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)、MCTD、活性化関節炎及び静脈血栓症に罹患している患者において、自己抗体によって認識される。カルパスタチン欠乏症ラットの動物モデルにおいて、関節炎の症状は誘導され得なかった。カルパスタチン、カルパイン及びカルパスタチン特異的抗体は、RA患者及びOA患者の炎症を起こした関節において存在し、従って、これらの疾患の病原性に関し得る。
【0027】
(カルレティキュリン)
カルレティキュリンは、小胞体(ER)の広範に存在するタンパク質である。これは、特定の条件下で、核、細胞質及び細胞表面においても生じる。これは、高度に保存されたCa++結合タンパク質を構成する。カルレティキュリンは、多くの異なる自己免疫疾患又は炎症起源、主にSLE及びオンコセルカ症、またRAにおける自己抗体の標的である。更に、RA関連ハプロタイプDR4Dw4/DR53は、カルレティキュリン由来のペプチドと結合する。
【0028】
(BiP(重鎖結合タンパク質))
RAの人体模型についてさらなる有望な標的抗原は、広範に存在するBiP(結合タンパク質)である。これは、免疫グロブリンの重鎖と相互作用するので、重鎖結合タンパク質として初めに記載された。BiPそれ自体は、常在性ERタンパク質であり、正常状態下ではこのタンパク質が輸出されるのを阻害するペプチド配列を有する。一方で、BiPはいわゆる分子シャペロンであり、その役割において小胞体(ER)中に導入され、そして分泌経路に入るほとんどのタンパク質と相互作用する、ということが明らかになった。この基本的な特徴を超えて、BiPは、重金属イオン、又は細胞におけるカルシウムイオンのレベル若しくはタンパク質生合成の統合性に影響を与える物質のようなストレス因子の影響下で、過剰発現する。これらの状況下では、BiPは核中で、また細胞表面上でさえ、検出され得る。
【0029】
BiPは、66%のRA患者において、自己反応性抗体及びT細胞の標的である。すなわちBiPは、RAの状況においてp68として初めに記載された。これらの自己抗体の疾患特異性は99%であり、従って非常に高い。この抗原はO−グリコリシル化され、そしてこの修飾は、モノ−O−GlcNacが多くの他のタンパク質に有するような調節機能を有し得ると考えられる。これらのタンパク質において、O−GlcNAcからO−リン酸修飾への切り換えは、活性化状態の変化又は細胞成分の変化と組み合わせられる。同様の様式で、ERから核又は細胞表面へのBiPのストレス誘導変化は、病原性の関連であり得る。細胞表面上におけるBiPの存在は、これはむしろ代表的でないが、警告のシグナル、又は他の細胞、そしてまた免疫系の細胞について活性化のシグナルとして役割を果たし得る。RAにおいてこのような活性化は、局所的な感染によってか、又はそうでなければ、炎症によって悪化した組織によって生じる。細胞損傷又は組織損傷の結果、BiPは損傷した細胞の表面に到達し、次いでここで自己反応性T細胞の標的となる。これらのBiP反応性T細胞はまた自然状態下で生じ、次いでこの条件下では、誘導条件が中止したあとにT細胞は調節性T細胞によって下方調節されるという手がかりが存在する。この調節性細胞は抗原特異的及びHLA限定的である。それによって、調節性T細胞のHLA限定性は、エフェクターT細胞のHLA限定性とは明らかに区別され、特異的に抑制させる。この意味において、エピトープO−GlcNAcは、再び重要な役割を有し得る。すなわち、このエピトープが自己抗体応答の標的であるだけでなく、T細胞応答の標的でもある、と非常に考えられる。
【0030】
(p205)
滑液から単離され、しかしその機能はこの区切りを大きく超える、さらなるタンパク質は、p205抗原である。これはRA患者における自己反応性T細胞の標的である。p205はまた、滑膜において発現し、そしておそらく、RAにおける全てで、滑液によってか、又はレクチンフィトヘマグルチニン(PHA)によって得られ得る増殖速度に部分的に達する最も高いT細胞刺激能を有する抗原を構成する。p205抗原の機能は、まだ未知である。しかし、p205は、11個のアミノ酸の配列を含み、この配列はIgG由来の部分、すなわち、定常ドメインCH2とCH3との間の領域内であって、リウマチ様因子の結合が生じる領域と同一である。p205のこの領域は、モノクローナルリウマチ様因子によって結合され、そしてまた自己反応性T細胞によって認識されることの両方である。更にp205特異的T細胞は、同属の抗原によって刺激される場合、B細胞のリウマチ様因子分泌を助ける効果を有する。従って、ここで最初に、T細胞反応性を有し、そして更に親和性の成熟においてIgG特異的B細胞を支持し得る抗原が発見されたと考えられえるべきである。このことと比較して、完全なIgG又はIgGフラグメントに対するT細胞反応性は、まだ発見されていない。おそらくp205のアミノ酸配列は、IgGのプロセシング中にインビボで産生されないか又は充分に産生されないペプチドを構成し得る。従って、p205に対する自己反応性が、RAにおけるリウマチ様因子の産生を誘導するとおそらく思われる。
【0031】
このRA関連自己反応物のまとめは、多くの異なる自己抗原がRAのプロセスの間に免疫系の標的になることを示す。程度は異なれ、これらの自己抗原はまた、他のリウマチ様疾患及び非リウマチ様疾患の場合において、及び健康な状態でさえ、免疫系の標的となる。すなわち、現在の知識に従って、自己反応性はそれ自体では、初期段階又はその経過における、RAの診断の改善又はそれぞれの治療のモニタリングの改善に適さない、と言わざるを得ない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
[本発明の特徴]
本発明は、慢性炎症性関節疾患の診断及び治療を改善並びに支持する目的を有する。
【課題を解決するための手段】
【0033】
この目的は、「慢性炎症性関節疾患並びに他の炎症、感染又は腫瘍疾患についての診断、分子決定、及び治療開発のためのツール」を提供することによって達成される。これらのツールを以下に記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
DNAアレイ又はタンパク質アレイ技術のようなハイスループット方法は、多くの異なるパラメータの同時検出を可能にする(9)。遺伝子発現は、標識されたRNAサンプル又はcDNAサンプルのハイブリダイゼーションを介したDNAアレイによってmRNAレベルで、及び選択したタンパク質特異的抗体を含むアレイによってタンパク質レベルで分析し得る(10)。更に、免疫学的な反応は、選択された抗原を含むアレイによって利用され得る。
【0035】
最初に、疾患に関係があり、そして従って評価のために使用される遺伝子及びタンパク質を、決定することが必要である。
【0036】
本発明によるツールは、炎症性関節疾患の診断及び治療開発のために設計されたものであるが、これらはこのような規定されたパラメータの選択に基づく(表1及び表2)。ここで与えられる遺伝子をアレイ方法による遺伝子発現分析に使用することは、基本的に新規の診断アプローチを可能にする。
【0037】
関節疾患における特異的なmRNA発現パターンの決定を意図したDNAアレイでは、表1に与えられる遺伝子は、表2に記載されるタンパク質をコードする遺伝子の全てと同様に、その全体が使用され得る。更に、表1に与えられた遺伝子、又は個々の遺伝子の部分配列、又は選択された遺伝子/部分配列、及び表2に記載されるタンパク質をコードする遺伝子、又は個々の遺伝子/部分配列の部分配列、又は選択された遺伝子/部分配列を使用し得る。
【0038】
自己免疫反応の特徴づけのために、表2に記載されるタンパク質、及び表1に与えられる遺伝子によってコードされるタンパク質が、その全体において使用され得る。更に、これらのタンパク質から限定して選ばれたもの、タンパク質の選択された部分(オリゴペプチド又はポリペプチドの形態で)、又はそれらの改変された形態が使用され得る。タンパク質レベルでは、翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化など)もまた、特に考慮しなければならない。この翻訳後修飾は、リウマチ様疾患の間の区別について関連がある。タンパク質、部分タンパク質配列並びに改変タンパク質及び改変部分タンパク質配列は、(個々に、群で、又は全体で)担体マトリクス上に付着する。これは、これらの1つ又はいくつかの成分に対するこれらの反応性について、患者の抗体を試験するために適する。その結果、患者についての反応性又は非反応性のプロフィールを得る。先行技術の診断法とここで示した診断的アプローチとの間の重大な差異は、先行技術においては、それぞれの場合1つの単一な自己反応性の決定及び分析であり、そして本発明に従うと、複数の自己反応性の決定及び分析であることである。本発明は、いくつかの自己反応性(これは単独で考える場合、動かされない)を1つ以上のプロフィールに統合すると、差異の検出が可能になる、という予測外の発見を使用する。なぜならこのアプローチは、100%の場合、RAと非RA(すなわち、他のリウマチ様疾患及び非リウマチ様疾患並びに健康状態)との間を、例えば区別し得るからである。異なるプロフィールへの分類は、適切なアルゴリズムを介して、最適な形態においては自己学習アルゴリズムを介して達成される。これはまた、後の発見を取り入れ得る。
【0039】
タンパク質発現パターンの決定のために、アレイシステムがタンパク質特異的抗体から開発された。サンプルのタンパク質抽出物由来のタンパク質を標識することによって、これらのタンパク質を、アレイ上の対応する抗体へ特異的に結合させた後、定量的に決定し得る(10)。従ってアレイは、本発明の意味において分子ツールとして定義される。これは、比較可能なタンパク質結合行動を有し、表1の遺伝子から推定される全てのタンパク質若しくは選択されたタンパク質の決定のため、又は表2由来の全てのタンパク質若しくは選択されたタンパク質の決定のために設計された、異なる抗体又は分子から構成される。
【0040】
診断手順は、異なるアレイ分析について滑膜組織、滑液、血液細胞、血清又は血漿由来のバイオプシーを使用する。この手順において、液体サンプルにおいて体液性自己反応が、血液又は滑膜組織細胞において細胞性自己反応が分析され得る。タンパク質発現が全ての上記のサンプルにおいて、mRNAレベルでの遺伝子発現が滑膜組織、滑液の細胞又は血液細胞において、分析され得る。
【0041】
DNAアレイによる分析のために、組織から、又は血液又は滑液由来の細胞サンプルからRNAが抽出される。DNAアレイハイブリダイゼーションのためのサンプルは、誘導されたcDNA又はcRNAを増幅(12)及び標識する(13)ための標準的プロトコールを使用することで準備される。
【0042】
表中に記載される遺伝子は、その公知の配列を介して(GeneBank受入番号を参照のこと。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)、基礎を提供し、これから全ての遺伝子についてその特異的なプローブが得られる。これらのプローブは、特異的なプリント手順(14)又は固相上のフォトリソグラフィーにおけるような部位特異的な合成(15、16)のいずれかによって、アレイに結合する。
【0043】
アレイ上の標識されたサンプルがハイブリダイズすることで、部位特異的結合又は遺伝子特異的結合を介して定量的なシグナルを提供し、その結果、これらのシグナルは発現プロフィール/発現パターンへと翻訳され得る。これらのパターンは、組織学的な特徴及び分類を含む、確立された評価の方法と相関する。変形性関節症、乾癬関連関節炎、反応性関節炎疾患及び他の、部分的にまた区別されない関節炎疾患のような異なる関節疾患との更なる比較によって、これは、それぞれの発現プロフィールに従って患者を異なる群へ分けることを可能にする。
【0044】
(アプローチの新規性)
関節疾患の評価及び分類を可能にする、アレイ分析について信頼できるパラメータを定義する目的で、広範な比較研究を行った。この目的のために、異なる関節疾患を考慮に入れ、そして部分的に互いに補完しあう異なる方法の新規な組み合わせを選択した。
【0045】
従って、RA、変形性関節症及び健康な関節由来の滑膜組織を分析した。遺伝子発現の異なる分析を達成する目的で、始めに「提示差異分析(representational difference analysis)」(17、18)が実行された。この技術は、たとえその配列がまだ未知である場合でさえ、サンプル中に存在する全てのmRNAを包含するという利点を提供する。欠点として、最も強く示された発現の差異が集中的に選択されることになる。それに対して補完的に、本発明者らは、2つの異なるDNAアレイハイブリダイゼーションの方法によって遺伝子発現を試験した。一方はcDNAフィルターアレイ(19)、他方はオリゴヌクレオチドマイクロアレイ(米国特許第5,445,934号;同第5,744,305号;同第5,700,637号;及び同第5,945,334号、並びに更に欧州特許第619321号及び同第373203号)である。これらのマイクロアレイは、現在の知識の段階に従うと、ほぼ全ての公知のヒト遺伝子を考慮し、そしてそれら個々の遺伝子それぞれについて組織サンプル間での発現の比較分析を実行することが可能である。最後に、選択された遺伝子について異なる遺伝子発現は、半定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR、リアルタイムPCR)を用いてより大きなサンプルにおいて確証された。
【0046】
更に、組織は組織学的に特徴付けられ、そして、組織学的な分類に従って、提示的差異遺伝子発現パターンとまた比較した。表1において与えられる遺伝子は、異なる慢性関節疾患間での比較、及び正常な滑膜組織との比較の両方で、異なって発現される遺伝子として同定された。従って、これらの遺伝子は、慢性関節疾患の特徴づけのために重要である。
【0047】
従って、関連のある遺伝子を同定するために使用される選択されたアプローチにおいて、新規性がまた存在する。そのうえ同定された遺伝子の一覧表は、大部分の遺伝子は、従来は炎症性リウマチ様関節疾患と関連がなかったことを示し、そして慢性関節疾患の診断、病態生理学の研究、及び治療についての新規な評価判断基準をもまた示す。
【0048】
本発明の特徴は開示され、そして特許請求の範囲の要素により、及び発明の詳細な説明により特定され、その結果、単一の特徴及びいくつかの特徴の組み合わせの形式の両方が好適態様を構成し、本発明についての法的な保護は、本明細書によって適用される。これらの特徴は、公知の要素、すなわち、表1に記載される遺伝子又は部分配列並びに表2に記載されるタンパク質をコードする遺伝子及び部分配列、並びに新規な要素、すなわちパラメータ(表1及び表2)の規定された選択の使用に基づく新規なツールから構成される。ここで、これらの組み合わせにより、本発明によるツールが導かれ、そして、アレイ方法における遺伝子発現分析について記載された遺伝子の使用のもとで、炎症性関節疾患における診断及び治療開発の基礎的な新規のアプローチを、可能にする。
【0049】
本発明によるツールは、(マイクロ)アレイハイブリダイゼーションのハイスループット方法及び/又は(半)定量的のためのポリメラーゼ連鎖反応の技術を使用したハイスループット方法の使用に基づく。
【0050】
これらは患者由来の標識されたサンプルの使用、そして第2の異なる標識をされたコントロールサンプルの使用に基づくということにおいて、更に特徴付けられる。コントロールサンプルは患者サンプルと共に(マイクロ)アレイへの比較二重ハイブリダイゼーション(比較赤/緑ハイブリダイゼーション)のために使用される。このサンプルはまた、別々のアレイ上で分析、その後に比較され得る。
【0051】
本発明に従って、以下の使用に基づく、診断目的のツールが存在する;
請求項1〜3に記載される遺伝子配列から推定される、個々のタンパク質又はペプチド、選択されたタンパク質又はペプチド、又はタンパク質又はペプチドの全体、
表2に記載される全てのタンパク質の、個々のタンパク質、選択されたタンパク質、及び
表1に記載される個々のタンパク質、選択されたタンパク質、又は全てのタンパク質由来の部分配列。
【0052】
これらは、タンパク質又は部分タンパク質配列を含み、これは、表1の推定されるタンパク質の配列と、若しくは表2に記載されるタンパク質の配列と同一である配列を有するか、又はそれぞれ少なくとも80%の配列同一性を示す。これらは更に、以下の使用に基づくことによって特徴付けられる;
タンパク質発現の分析における、ハイスループット方法(高解像度二次元タンパク質ゲル電気泳動、MALDI技術)、
ヒトにおける炎症性関節疾患及び他の炎症、感染又は腫瘍疾患についての診断ツールとして、自己抗体についてスクリーニングするように設計されたタンパク質スポッティング技術の分野におけるハイスループット方法(タンパク質アレイ)、
ヒトにおける炎症性関節疾患及び他の炎症、感染又は腫瘍疾患についての診断ツールとして、自己反応性T細胞についてスクリーニングするように設計されたタンパク質スポッティング技術の分野におけるハイスループット方法(タンパク質アレイ)、及び
ヒトにおける炎症性関節疾患及び他の炎症、感染又は腫瘍疾患についての診断ツールとして、自己反応性T細胞についてスクリーニングするように設計されたタンパク質スポッティング技術の分野における非ハイスループット方法。
【0053】
本発明によるツールは、更に以下の使用に基づく;
請求項6〜9に記載されたタンパク質又は部分配列について特異的である抗体、及び
動物実験における分析について、又は炎症性関節疾患及び他の炎症、感染又は腫瘍疾患に罹患している動物における診断について、それぞれ別の種の相同配列。
【0054】
本発明によるツールは、以下において遺伝的変化(変異)の検出するための診断手段として有用である;
請求項1〜3に記載される遺伝子の調節配列(プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、調節因子に更に結合するための特異的配列)又はその遺伝子において、及び
表2に記載されるタンパク質をコードする遺伝子の調節配列(プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、調節因子に更に結合するための特異的配列)又はその遺伝子において。
【0055】
更に、これらのツールは、ヒトにおける炎症性関節疾患及び他の炎症、感染又は腫瘍疾患の分子定義の手段であり、それに関して請求項1〜3に記載される遺伝子、DNA配列又は推定対応タンパク質若しくはペプチド、及び請求項6〜9からのタンパク質及び部分タンパク質配列又はそれぞれコードする遺伝子配列を使用するとして適切である。
【0056】
本発明によるツールは更に以下を使用する;
ヒトにおける炎症性関節疾患及び他の炎症、感染又は腫瘍疾患についての治療の選択であり、それに関して請求項1〜3に記載される遺伝子、DNA配列又は推定対応タンパク質若しくはペプチドを使用する選択、
ヒトにおける炎症性関節疾患及び他の炎症、感染又は腫瘍疾患における進行/治療的成功のモニタリングであり、それに関して請求項1〜3に記載される遺伝子、DNA配列又は推定対応タンパク質若しくはペプチドを使用するモニタリング、
治療コンセプトの開発についての分子手段であり、これは請求項1〜3に記載される遺伝子若しくは遺伝子配列の発現に対する直接的又は間接的な影響を含み、
治療コンセプトの開発であり、これは、請求項6〜9に記載されるタンパク質若しくは部分タンパク質配列の発現に対する直接的又は間接的な影響を含み、
治療コンセプトの開発であり、これは、請求項8〜11に記載されるタンパク質若しくは部分タンパク質配列に対して指向する自己反応性T細胞に対する直接的又は間接的な影響を含み、
請求項1〜3に記載される遺伝子配列から推定されるタンパク質の生物学的な効果に対する影響、
直接的分子調節経路/回路に対する影響であり、ここで、請求項1〜3に記載される遺伝子及びそれらの推定されるタンパク質が関係し、
解釈アルゴリズムの作製及び使用を含む治療コンセプトの開発であり、これに関して、治療コンセプト、治療効果、治療の最適化若しくは疾患予後判定を認識又は予測する目的で、記載される遺伝子及び配列並びにその調節機構を使用し、及び
遺伝子、遺伝子配列、遺伝子若しくは遺伝子配列の調節の使用下、又は請求項1〜3及び6〜9に記載されるタンパク質、タンパク質配列、融合タンパク質の使用下、あるいは請求項10〜14に記載される抗体又は自己反応性T細胞の使用下における、生物学的に活性な薬物(生物製剤)の開発。
【0057】
クレームされた本発明によるツールの使用は、以下において見出されるべきである;
医学的診断における血液サンプル又は組織サンプルの分析、
実施例1に従う分析論における応用、及び
実施例2に従う治療コンセプトについての応用。
【0058】
[材料及び方法]
(患者及び組織アサーベーション(asservation))
全ての患者を、RA(1)及びOA(20)についてのACR診断基準に従って選択した。滑膜組織は、ペニシリン及びストレプトマイシン(それぞれ100U/ml)を添加したRPMI培地(RPMI−RPMI1640培地を希釈した、従来の細胞培養培地;Moore, G. E. et al., J. Am. Assoc. 199, 519-524, 1967)中で、手術室から実験室へ直ちに輸送した。滑膜を準備した後、このサンプルを直ちに液体窒素中で衝撃冷凍(shock frozen)した。このサンプルを、使用まで−80℃で貯蔵した。提示差異分析(Representational Defference Analysis;RDA)、ユニジーン(Unigene)フィルターアレイ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene/)へのハイブリダイゼーション及びアフィメトリックス(Affymetrix)アレイへのハイブリダイゼーションについてのサンプルとして、発明者らは、正常ドナー(ND)、変形性関節症(OA)及び慢性関節リウマチ(RA)由来の滑膜組織サンプルを使用した。
【0059】
(RNAの単離)
RNAを抽出するために、サンプルをホモジナイズした。50mg未満の量の組織を、乳鉢及び乳棒によって、液体窒素で冷却されている間に粉末に破砕し、続いてグアニジン−イソシオチアネート含有溶液(Qiagen, Hilden, Germany、www.qiagen.com/literature/handbooks/rna/rny96/1019545_PREHB_RNY96_prot2.pdfより購入したRLTバッファー)に溶解した。より多量の組織を、組織ホモジナイザー(IKA-Ultra-Turrax T 25;Jahnke & Kunkel, Staufen)によって氷冷したグアニジン−イソシオチアネート含有溶液(Qiagen, Hilden, Germanyから購入したRLTバッファー)中で破砕した。RNAの単離は、Chemczynskiに従うフェノール−クロロホルム抽出(21)を使用する改変プロトコールによって行い、続いてQIAGEN-RNaesy-Kitによって水相からRNAを直ちに単離した(製造者プロトコール:http://www.qiagen.com/literature/rnalit.asp#miniを参照のこと)。このキットを、製造者プロトコールに従って使用した。このRNAを、30〜100μlのRNアーゼを含まない水に溶出した。
【0060】
品質のコントロールのため、光学密度(OD)を260nm(OD260)で測定し、OD260/OD280nmの比を決定し、そして1%アガロース上でゲル電気泳動を実行した。必要な場合、DNA混入を、ゲル中でか、又は第1鎖合成の後に、グリセロール−アルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)についてのイントロンプライマーを使用するPCRにおけるいずれかで、検出し得た。これらの例外的な場合において、本発明者らは、DNアーゼで消化し、それによりQIAGENプロトコールの指示に続いた。
【0061】
(第1鎖合成)
cDNAの合成を、Invitrogen/Life Technologies(Karlsruhe, Germany;http://www.invitrogen.com)より購入した5×反応バッファーを含む、Superscript II 逆転写酵素(RT)の使用下で実行した。使用したRNAの量は、半定量的PCRについて3〜5μgであり、20μgの最終量におけるアレイハイブリダイゼーション及びRDAについて10〜20μgであった。cDNAへの転写のための反応混合物には、以下の成分が含まれた:500ngの各プライマーオリゴヌクレオチド[Oligo(dT)12−18;T7−Oligo(dT24)]、50mMトリスpH8.3、75mM KCl、3mM MgCl2、10mMジチオスレイトール、最終濃度1mMの各ヌクレオチドを有するデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)混合物、40U RNアーゼインヒビター及び20U SperscriptTMII RT。インキュベーション時間は1.5時間で、続いて72℃で15分間サンプルを加熱することによって酵素を非活化した。
【0062】
(第2鎖合成)
以下の成分を、ピペッティングによってcDNAに添加した:90μl水性デスト(aqua dest.)、30μl 5×第2鎖バッファー[500mM KCl、50mM酢酸アンモニウム、25mM MgCl2、0.75mM β−ニコチンアミド−アデニン−ジヌクレオチド(β−NAD)及び0.25mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)]、3μlの10mM dNTP溶液並びに以下の活性及び量の酵素溶液:1μl E.coliリガーゼ(10U/μl)、4μlDNAポリメラーゼI(10U/μl)及び1μlRNアーゼH(2U/μl)(Invitrogen/Life Technologies, Karlsruhe, Germany)。インキュベーション時間は、16℃の温度で2時間であった。2μlのT4 DNAポリメラーゼ(5U/μl)を添加した後、インキュベーションを16℃で30分更に続けた。
【0063】
(減算ハイブリダイゼーション及びRDA)
PCR抑制減算ハイブリダイゼーション(Suppression Subtractive Hybridisation;SSH)(22)を、PCRセレクトキット(Clontech, Palo Alto, USA;http://www.clontech.com/pcr-select/index.shtml)の製造者指示に従って実行した。二重鎖cDNAの消化を、Rhodopseudomonas sphaeroides由来の制限酵素RsaIを用いて達成した。RDA(18)のために、二重鎖cDNAをDiplococcus pneumoniae由来の制限酵素DPNII(100μl中における20U)を用いて切断した。次いで、アダプタープライマー(RBgl12、RBgl24)への連結を実行し、続いて公表されているプロトコール(17、18)に従って増幅した。減算の第2ラウンドにおいて、さらなるアダプターオリゴヌクレオチド[JBgl12及びJBgl24又はNBgl12及びNBgl24(18)]への連結によって、DPNIIを用いたさらなる制限消化の後に、テスター−アンプリコン(tester-amplicaon)を得た。
ハイブリダイゼーションの後、テスターに属する配列を、PCRによって選択的に増幅し、それによって両方の方法における減算産物に蓄積した。
【0064】
(減算サンプルの記述)
RDAプロトコールを、RA、OA及び正常組織ドナー由来のサンプルにおいて弱く発現される遺伝子と顕著に発現される遺伝子の両方の遺伝子を同定し得るように、改変した。
この手順において:
1 OA組織においてよりもRA組織においてより強く発現する配列を得る目的でOA(ドライバー)を、RA(テスター)から減算した。
2 NDサンプルにおいてよりもRAサンプルにおいてより弱く発現する配列を得る目的でRA(ドライバー)を、ND(テスター)から減算した。
3 ND組織においてよりもOA組織においてより強く発現した配列を得る目的でND(ドライバー)を、OA(テスター)から減算した。
【0065】
(減算ライブラリークローニングの実行、配列決定及びデータベースとの比較)
SSHサンプルの減算産物を、pCRIIベクター(TA−クローニングキット;Invitrogen, Heidelberg, Germany; http://invitrogen.com)へクローニングした。RDA由来の減算産物を、pBluescript KS+IIベクター(Stratagene, La Jolla, USA; http://www.stratagene.com/vectors/selection/plasmid1.htm)へクローニングした。このベクターは、Bacillus amyloliquefaciens由来の制限酵素BamHIを用いてあらかじめ切断し、ついで脱リン酸化及び精製しておいた。およそ150のクローンを単離し、そして配列をABI 377シークエンサー(Applied Biosystems, Weiterstadt, Germany; http://home.appliedbiosystems.com)を用いて決定した。配列決定を、T7プライマーを使用して、製造者のDye Terminator Chemistryプロトコールに従って実行した。
ベクター配列を除去した後、配列の比較分析をGenebank及びNCBI−データベース(http://www.ncbi.nlm.nib.gov)の使用のもとで実行した。
【0066】
(マイクロアレイハイブリダイゼーション)
2つの異なるチップ技術を使用した:1)ユニジーン(UNIGENE)ライブラリー(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene/)のcDNAクローンのPCR産物がスポットされているフィルターの使用。ここで、ハイブリダイゼーションを、オリゴ[dT(12−18)]を用いて第1鎖合成した後に33P標識cDNAサンプルを用いて65℃で実行した(23、24)。2)アフィメトリックス(Affymetrix)(Affymetrix Inc., Santa Clara, USA; www.affymetrix.com)より購入したマイクロアレイ(HU95A、HU95B、HU95C、HU95D及びHU95E)を用いてハイブリダイゼーションを実行した。これらのアレイはオリゴヌクレオチドのアレイであり、この塩基配列は、12,000個の公知の遺伝子及び24,000個の発現配列タグ(EST)エントリーに由来する。標識されたサンプルの合成を、製造者技術マニュアル(Affymetrix Inc., Santa Clara, USA)に従って行った。
【0067】
蛍光標識されたサンプルを、T7ポリメラーゼ結合部位を含むオリゴdT24プライマーを用いた転写の後に合成した。標識反応を、T7 RNAポリメラーゼ及びビオチン化dNTPの使用のもとで、製造者プロトコール(ENZO-Biochem, New York, USA; http://www.enzo.com/entrance.html)に従って実行した。
【0068】
両方のチップ分析において、試験されるべきサンプル及び参照サンプルを、別々のフィルターにハイブリダイゼーションした。シグナル強度の比較を、標準化の後に実行した。
【0069】
(チップ結果の評価−決定マトリクス)
シグナル強度の評価を、標準化した後に、それぞれのアレイについて開発されたソフトウェアを用いて、そしてTukey’s Biweight Method(http://methworld.wolfram.com/TukeysBiweight.html)に従ってそれぞれのサンプルについて強度値を決定することで実行した。
【0070】
ユニジーンフィルターアレイの評価のために、Max-Planck-Institute for Molecular Genetics at Berlin-Dahlemで(http://algorithms.molgen.mpg.de/)で、アルゴリズムが開発された。アフィメトリックスから購入のチップの場合、製造者の標準パラメータ又は必須条件を含むMicroArraySuite 5.0ソフトウェア(http://www.affymetrix.com/products/software/specific/mas.affx)を使用した。
【0071】
アフィメトリックスアレイの評価について、標的強度を100、及びデータを標準化するために標準化因子を1と設定し、そしてそれぞれのサンプルについてのスケール因子を計算した。比較スケール因子(因子は4未満)を有するチップは、比較分析に含まれていた。遺伝子の検出のための決定基準(検出p値)を0.05未満に調節した。それぞれのアレイについての比較分析を、アフィメトリックスから購入のDMT3.0ソフトウェア(http://www.affymetrix.com/products/software/specific/dmt.affx)の使用のもとで実行した。
【0072】
それによって、完全一致との間並びに完全一致及び不一致との間の強度の差異を、Wilcoxon-test(http://faculty.vassar.edu/lowry/wilcoxon.html)を用いて計算し、そして決定基準カットオフ(γ値は0.04未満)と比較した。それぞれのチップの比較についての結果の特定化において、Change-Call(増加、わずか増加、変化無し、減少)及び変化の因子についての基準であるシグナルログ比(Signal Log Ratio)を示した(ロガリズム形式の因子)。
【0073】
(決定基準)
比較分析を、それぞれの場合において全てのサンプルについて実行した(全てのサンプルを他の群の全てのサンプルと比較:ND、OA、RA)。
【0074】
ユニジーンフィルターハイブリダイゼーションの場合、少なくとも4つの比較のうち3つについて2よりも大きいシグナル相違、及びp値が0.01未満の検出シグナルを、計算に入れた。
【0075】
アフィメトリックスから購入したアレイについての進行は以下のようである:それぞれのRAサンプルを、増加発現及び減少発現の両方において、それぞれのOAサンプルと比較した。これらの比較のうち80%で調節因子が2よりも大きく(シグナルログ比は1よりも大きい)、「増加」又は「減少」の方向の偏差を示した遺伝子を、候補遺伝子として選択した。U95Aチップの場合、選択基準を、調節因子の3よりも大きいものであるべきと決定した。
【0076】
(半定量的PCR)
本発明者らは、検出された配列領域から開始することによって、類似のアニーリング温度及び産物の長さのプライマーを選択した。プライマー探索のために、DNASTAR Primer Selectソフトウェア(DNASTAR Inc., Madison, USA; http://www.dnastar.com/)を使用した。プライマー合成を、Gibco-Life Technologies(Karlsruhe,Germany)で行った。PCR産物の半定量的PCRのために、リアルタイムPCRシステムGeneAmp 5700及びSybr-Green-PCR-Core キット(Applied Biosystems, Weiterstedt, Germany; http://europe.appliedbiosystems.com/)を使用した。
【0077】
cDNAの量を、GAPDH特異的プライマーについてのリアルタイム増幅結果によって全てのサンプルについて調整した。いくつかのさらなる遺伝子のPCR産物の定量化を、内部標準としてGAPDH特異的産物と比較して行った。コントロールとして、第2のハウスキーピング遺伝子としてβ−アクチンを増幅し、そして全てのサンプルと共に並行して分析した。
【0078】
遺伝子の学名 受入番号 プライマー位置 産物の長さ (bp)
VDUP1 NM006472 665...684 / 863…840 199
TIMP4 U76456 143...159 / 336…317 194
GPX3 NM002084 424…443 / 528…510 105
βアクチン X00351- 654…675 / 841…819 188
MMP1 X05231 874…895 / 1080…1057 207
MMP3 X05232 973…996 / 1157…1136 185
LTBP4 M22490 511…534 / 760…737 250
GADD45 M60974 457…475 / 573…557 116
CLU NM001831 1384…1404 / 1509…1489 126
Cal2 NM001218 930 … 949 / 1049 … 1031 196
【0079】
(免疫組織化学)
滑膜のサンプルを、組織病理学的な評価に使用した。その結果、6μmの強ささ(strength)を有する凍結切片を準備し、風乾し、次いでアセトン及びメタノールの1:1混合物で固定した。標準的なプロトコールに従ってヘマトキシリン染色を実行し、そして組織病理学的評価の判断基準(25)に従って分類した。
【0080】
(イムノオーム分析の方法及び結果)
T細胞及びB細胞レベルの自己反応パターン(「イムノオーム(immunome)」)を決定した。これはRAに特異的であり、そして従って、この疾患を他のリウマチ様疾患又は非リウマチ様疾患とを区別する。RA特異的イムノオームについての知識は、現在可能であるよりも、関節疾患をRAとしてより初期に、より安全に認識するか、又は関節炎がRAではないことを示す診断ツールの開発のために非常に重要である。ここで再び、取り返しのつかない関節損傷及び骨損傷が生じる前に、適切な薬物によってRAを制御可能である。
【0081】
この目的において、プロテオミクスの技術を、高解像度2D電気泳動によって組織特異的なタンパク質パターンを作成する目的で使用した。これらを、公知の自己反応及び未知の自己反応についてのイムノミクス技術によって、スクリーニングした。有用な感受性及び特異性を有するタンパク質スポットを、シークエンス及びMALDI−TOF(26)によって同定した。次いでこれらのタンパク質を、同じコホートにおけるT細胞の自己反応性についてスクリーニングした。
【0082】
本発明に従って、自己反応性パターンは確立され、これらは完全にRAについて特異的である。この分析において、単一の自己反応性は、この特異性を明らかにしていないということは非常に重要である。これは、いくつかの自己反応性の組み合わせによってのみ達成される。このようなパターンは、RAに罹患している患者を、別のリウマチ様疾患又は非リウマチ様疾患に罹患している患者から疑いようもなく区別するが、自己抗原シトルリン化ペプチド(Cit)、IgG、BiP(重鎖結合タンパク質)、カルパスタチン(Calp)、RA33(hnRNP A2)及びカルレティキュリン(Calr)を含む。表は、これらの5つの自己反応物(RF、Cit、BiP、RA33及びCalp)並びに2つの可能な状態である「陽性」及び「陰性」の全ての可能な組み合わせを示す。ハイライトされたパターン(統計学的に関連があるのはpが0.01未満、Whitney U試験;http://faculty.vassar.edu/lowry/utest.html)は、RAにおいてのみ発現した。図1は、RA及びコントロールコホートの両方について全ての可能な組み合わせについての感受性を示す。RA特異的なパターンは、表1と同様の様式でハイライトされ、そして個々のパラメータについて4倍及び5倍陽性であるパターンを主に含む。これらの自己反応性プロフィールの組み合わせは、RAにおいてのみ生じるが、54%の特異性の収率である。
【0083】
3つの自己反応の独占的な(exclusive)RA発現パターンは、IgG、Cit並びにBiP(RF+Cit+BiP+及びRF−Cit+BiP+)に対して指向し、43%の総感受性をもたらす。4つの自己反応のRA独占的なパターンは、IgG、Cit、BiP及びRA33(RF+Cit+BiP+RA33+、RF+Cit+BiP−RA33+及びRF+Cit+BiP+RA33−)に対して指向し、総感受性は40%を示す。6つのパターンの分析において、60%の感受性が達成された。
【0084】
第1の研究に従って、これらのパターンはまた、初期RAを有する患者に関連がある。さらなる候補抗原は、すでに特徴付けされており、Sa抗原(5)を含む。このSa抗原は、α−エノラーゼ及びシトルリン化ビメンチンからおそらく構成される。
【0085】
RAのイムノオームの同定は、診断的なだけではなく、病理学的な関連性でもある。初期RAの駆動の原因であるT細胞の自己反応性が確認された場合、治療のためのプロトコールを開発することが可能であるようであり、これは特異的な有効性を示す。
【0086】
【数1】
【0087】
IgG(RF)、シトルリン、BiP、カルパスタチン及びRA33に対して指向する自己反応の全ての32個の5倍の組み合わせを示す。図1のように、RA特異的な組み合わせを色付きでハイライトした。
【0088】
(利点)
複合分子パターンを網羅する。これらのパターンを、数学的な計算モデルによって群及び適正なスケールに分類し得る。例えば、疾患の持続時間、臨床的疾患活性(疾患活性スコア(Ref.))、C反応性プロテインの増加又は沈降速度によって決定される炎症活性、放射線学的な関節破壊及び薬物の特異的な影響等とのそれぞれの関連について導き出せる分類及び知識は、アレイ分析から以下の結論を引き出せることが可能である:特定の疾患及び分子学的に分類されるべきサブグループへの臨床理解の割り当て、疾患活性及び期待されるべき進歩の評価(予後評価)、異なる治療形式の見通し、適切な治療アプローチについて推薦(例えば、レフルノミドの代わりにメトトレキサート、又はメトトレキサート単体の代わりにスルファサラジン及びメトトレキサートの組み合わせ)並びに、最後に、治療的成功のモニタリング。
【0089】
医薬的治療の規定された測定の前及び間に使用することによって、使用した遺伝子のどちらが薬物によって影響されたのかを決定し得る。その結果、薬物が疾患に典型的な様式において変化する遺伝子発現にどのように影響を与えるかを測定する。これにより、どの疾患関連分子の変化が、依然治療の抵抗において妥当であるかを結論付け得る。これらの病理学的に活性な遺伝子の機能についての知識により、関節疾患の病理学的なプロセスを解明し、そして新規の治療コンセプトを推定することが主に可能になる。
【0090】
(遺伝子の組み合わせ)
《表1》
【実施例】
【0092】
以下、実施例によって本発明を説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
《実施例1:臨床診断における使用》
関節の症状を4ヶ月間有する患者は、不斉腫脹、並びに手指の2つの近位の関節及び1つの中間の関節、及び右手首関節における痛みを患っている。朝の硬直は、およそ30分間持続する。放射線写真は、足の指の1つの近位関節において初期のびらん性の変異を示す。C反応性プロテインは、正常の範囲であり、沈降速度はわずかに上昇していて、リウマチ様因子及びHLA−DR4は陰性である。炎症性リウマチ様疾患に関して家族の病歴は存在しない。
【0093】
外来通院の面会の間、右手首関節由来の滑膜バイオプシーを、侵襲性が最低の関節鏡検査によって単離した。各々約10mgの重量を有する4つのサンプルのうち、わずかなサンプルを以下の組織学的な評価のためにホルマリン中で固定する。残りのサンプルを、RNA溶解バッファー中に導入し、破砕し、そしてRNAを標準的なプロトコールに従って抽出する。cDNAへの(逆)転写の後、cDNAの転写物を含むビオチン標識cRNAへのインビトロ転写を実行する。このcRNAを断片化し、次いでDNAアレイへのハイブリダイゼーションに使用する。
【0094】
このアレイは、例えば、アフィメトリックスのようなDNAアレイを生産する営利企業によって生産される。ここで、適切なオリゴヌクレオチドを、表1の配列から、及び表2のタンパク質をコードする遺伝子配列から推定し、その結果これらのオリゴヌクレオチドを、それぞれのcRNA配列への特異的なハイブリダイゼーションのために可能にする。これらの配列は、オリゴヌクレオチドとして合成され次いでアレイ担体上に印字されるか、又はこれらは例えば、フォトリソグラフ法によって、直接的に担体上に合成されるかのいずれかである。
【0095】
ハイブリダイゼーションを、製造者プロトコールの指示に従って実行する。DNAアレイを、スキャナによって読み取る。光学情報の発現シグナルへの翻訳を、例えば、アフィメトリックスから購入の「Micro−Array Suite」のような標準的なソフトウェアを使用することによって行う。ここで、表1及び表2に記載される遺伝子又はタンパク質のRNA発現率のシグナルを得た。関節疾患について診断的な評価及び治療開発のために新規に規定された選択の遺伝子から始めて、臨床的及び組織学的に特徴付けられた組織サンプルを分類し、そして予備試験の間のクラスター分析の後、階層的な様式で互いに関連付けた。臨床的知見と比較関連することで、この分類分けを、特に疾患の型(関節症、反応性関節症、慢性関節リウマチ、慢性関節リウマチのサブグループ)、疾患の活性、及び従って予後、及び適用された薬物によって病理学的に変化した、遺伝子発現に影響する可能性に依存して行った。次いで、上記の患者のシグナルデータを、このデータベースと比較する。その結果、これらの群の1つへの割り当てが可能になり、そして対応する臨床的な関連性についての情報が得られる。従って、個々の患者における診断、活性、予後及び治療的選択肢に関する証拠を得る。
【0096】
《実施例2:治療の評価についての使用》
慢性な関節の炎症に5年間罹患していて、慢性関節リウマチと診断された患者は、毎週15mgのメトトレキサートを使用するという現在の基礎治療にも関わらず、いくつかの手指の関節において進行性の特異的放射線学的変異を示し、いくつかの手指の関節、左ひじの関節及び右足首関節において痛み及び腫れを伴っている。外来通院の面会の間、左ひじ関節由来の滑膜バイオプシーを、侵襲性が最低の関節鏡検査によって単離した。総重量が約30mgのいくつかのサンプルを、溶解バッファーに導入し、破砕し、そしてRNAを抽出した。サンプルの準備を、実施例1と同様の様式で行った。実施例1におけるような同じDNAチップを、分析のために使用する。ハイブリダイゼーションの後、ハイブリダイゼーションの結果の画像データファイルへの転換、及び試験したそれぞれの遺伝子についてこの結果のシグナル情報への翻訳、規定された発現パターンへの割り当てを行う。これらのパターンを、予備試験において決定し、その結果、本明細書中において新規に規定された表1及び表2由来の遺伝子の規定された選択を使用した。その結果、サンプルの発現プロフィールの変化を、それぞれの関節疾患に依存して分析した。それぞれの疾患は、規定された濃度で投与された規定された薬物によって影響される。このプロフィールを階層的に分類し、それによって、使用した薬物及び適用された用量との関連性を考慮した。患者サンプルをこれらの規定された発現パターンと比較する場合、特異的なパターンへの割り当て及びそれと結びついた治療の有効性についての情報により、適用された薬物であるメトトレキサートがより高い用量で有効であるか、又はその活性プロフィールが、個々の場合における病理学的な変化に影響を与えるのに最も適する薬物に変更することが合理的であるか否かを推測可能になる。
【0097】
《実施例3:RAにおける自己反応性プロフィール》
RAは、自己抗体の産生に関して他のリウマチ様疾患及び他の炎症性疾患とは異なる。そのため、RAと非RAとの間の区別は、1つの抗体反応性によるのではなく、いくつかの自己反応性の異なるプロフィールによって提供される。従って、RA特異的な自己反応性プロフィールの決定に基づいて、救済(save)診断を得ること、治療的進行を制御すること、及び予防検査を実行することが可能である。
【0098】
抗体は、抗原に対して、すなわちより正確には、エピトープに対して指向する。エピトープは、特異的な抗体−抗原−反応の間に、パラトープによって結合される。エピトープは、抗原の領域として定義され、これは抗体と(すなわちそのパラトープと)特異的に相互作用する。一般にエピトープは、タンパク質のペプチド配列として理解され、ここでこのペプチド配列は、およそ16〜20個のアミノ酸を含む。この配列は、連続的(連続的エピトープ)又は分断的(非連続的エピトープ)であり得る。しかし典型的に、抗体と抗原との間の特異的相互作用に必要でかつ充分な、たった数個のアミノ酸、まれな場合においてはたった1個のアミノ酸が存在する。一方で、核酸でさえ抗原として作用するということが公知である。リン酸化、アシル化、グリコシル化、メチル化、脱イミン化などのような翻訳後修飾が特に重要であるとますます考えられている。これらの修飾はしばしば調節機能を有するため、特に病理学的な状態下でこれらは抗原の標的構造として特に興味深いようである。いくつかのRA関連自己抗原に関して、特異的な翻訳後修飾が自己抗原についてのエピトープを産生するということがすでに示されているので、これらの構造が試験系において現実化されることに特に注意を払うべきである。
【0099】
表2に列挙されるタンパク質は、RA関連自己抗体として記載された。しかし、これらの多数の単一の成分の関連性は、RAの診断については低いか、又は明らかではない。表1に列挙される、mRNAレベルで過剰発現している遺伝子に同様のことが適用される。これらの成分はそれ自体では、RAの診断を著しく改善させることには適さない。表1及び表2において列挙される大部分のタンパク質は、このそれぞれの目的についての特許として適用されていない。少数のタンパク質のみが、RAについての関連性が仮定されるという特徴を有する。これは、例えばタンパク質BiP(重鎖結合タンパク質)であり、RAにおける免疫反応の標的となる。ここで、例えばグリコシル化の形態における翻訳後修飾は考慮にいれる必要がある。なぜならこの修飾は、エピトープの成分であり、これらのエピトープは、RAにおける自己抗体の認識のため、及びRA自己抗体と非RA自己抗体との間の区別のため両方に必要だからである。更に、アルギニンからシトルリンへ翻訳後に形質転換したアミノ酸は、RA関連自己抗体のための必須エピトープとして記載されている(6)。RAの診断についての同様な高い重要性は、Sa抗原(5)、RA33抗原及びカルパスタチンについて有効である。
【0100】
それにも関わらず、これらの成分はそれ自体では、RAの明確な診断について、又は治療のモニタリングについてさえ、考慮することは適切ではない。本発明に従って記載された新規なアプローチは、RAのイムノオームについていう。RAのイムノオームは、RAにおいて存在する自己反応性抗体の全体、及び自己抗原の全体又はその自己抗原によって認識される自己エピトープを含む。予想外に、RA関連自己抗体の組み合わせを分析することによって疾患を明らかにRAとして始めて診断し得ることを見出すことが可能であった。自己抗原の異なるパターンが存在し、これは独占的にRAにおいて生じるということを、初めて示すことが可能であった。これらのパターンはまた、このような自己抗原又は自己反応物を含み、これはそれ自体ではRAについて重要でないと思われる。他の群のそれぞれの最初のアプローチは、強調されているにも関わらずこの知見を導かなかったので、8つの異なるヒト自己免疫疾患由来のもっとも重要な自己抗原が使用されたことは更に驚くことである(11)。自己抗原を使用し、別のリウマチ様疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)について関連するアプローチについて、同様のことが適用される。明らかに、すでに確立されているアプローチと本明細書中に記載されるアプローチとの間の本質的な差異は、一方は分析の型に基づき(多変量の)、他方では自己抗原の比較に基づく。著しく多量のRA関連自己反応物のみが、明らかな診断を可能にする。従って、RA関連自己抗体及び自己抗原の全体は、他の技術(タンパク質アレイ技術(27)、データプロセシング)と共に他の用途の間でRAの診断及び分類の手段として使用され得る情報を構成する。当業者でさえ、類似性の推論によってこのような使用程度を結論付けることができなかった。RAのイムノオーム及びまたRAイムノオームのほんの一部を、他の疾患又は健康な状態からRAを明らかに区別するために使用し得る。予想外の発明の市販利用は更に、ハイスループット技術の現在可能であるか又は開発中の可能性によってのみ、可能になる。これは特に自己反応性の複数パラメータ分析についていう。なぜなら、この場所において、患者由来の非常に小さい大きさのサンプルの使用のもとで複数の並行分析を実行するのに必要だからである。
【0101】
表2において与えられる成分のタンパク質若しくは部分タンパク質配列、又は表1において与えられる遺伝子によってコードされるタンパク質及び部分タンパク質配列は、RAと非RAとの間を区別するために潜在的に必要である翻訳後修飾を含むが、これらは自己反応性プロフィールの産生のために合成及び提供される。この合成は、分子生物学に基づく任意で公知のアプローチによってか、又はタンパク質化学の任意のアプローチによってなされる。更に、当該分野の状態に従う、部分的に人工の合成(インビトロ翻訳)又は人工の合成は、前記のタンパク質又は部分タンパク質配列を産生するのに適切である。
【0102】
(タンパク質アレイ/ペプチドアレイ(28))
表2又は表1に従うタンパク質又は部分タンパク質配列を、個々の自己反応性を決定するために適切な試験選択肢を作成する目的で、その全体か、又は臨床写真の免疫的な区別について適切なそれぞれの選択部分としてのみを使用した。これは、特にシトルリン、BiP、p205、IgG、カルパスタチン、RA33、Sa抗原及びカルレティキュリンの選択についていう。この目的のために、タンパク質を、空間的な解像度を許容する位置で担体マトリクスに適用する。固定化された各タンパク質、ペプチド、修飾タンパク質又は修飾ペプチドの位置及び同一性が分かっている。マイクロ形式は、ヒト血清のマイクロリットル以下の範囲における、何千もの異なる抗原及び/又は自己抗原(タンパク質/ペプチド)の並行検出を可能にする。好ましい選択肢は、タンパク質アレイ、高密度フィルター、高密度ガラス担体又は高密度方法によって産生される別のマトリクスの調製であり、ここで、被膜されるか又は被膜されない形態におけるマトリクスは、タンパク質又は部分タンパク質配列へ結合する。例えば、タンパク質若しくは部分タンパク質配列は、誘導体化されるか又は被膜/活性化されたガラス担体上に印字され得るか、あるいはこの適用は、キャピラリー様式で、インクジェット方法によるか、又は写真平板マスク若しくはデジタルマイクロ反射材の使用のもとでアレイへ直接合成することによって達成される。ガラス担体の代わりに、メンブレン又はフィルター、ポリスチレンマトリクス、ナノウェルプレート及び微粒子を使用し得る(29)。
【0103】
タンパク質アレイを、適切に希釈した患者血清又は同様の患者の関節浸出液と共にインキュベートする。このインキュベーションの間に、1つ又はいくつかのタンパク質成分について特異性を有する、存在する可能性のある抗体は、これらのタンパク質抗原に結合し得る。これは、残存する遊離した抗体及び血清成分を除去する目的で洗浄工程に続く。次いで、このサンプルを、二次抗体と共にインキュベートする。これは、一次抗体が結合することによって成功的な抗原−抗体−反応を示すため、及び適切な標識を導入するための両方に適切である。この標識は、視覚化及び定量化を可能にする、共有結合する蛍光染色剤、又は前駆物質から染色剤を産生し得る共有結合する酵素である。これは、残存する遊離した二次抗体を除去する目的で、さらなる洗浄工程に続く。
【0104】
(懸濁液アレイ(30))
懸濁液アレイは、マトリクスとしてプラスチック粒子を使用し、ここで、プラスチック粒子は、前記タンパク質で被膜されている。これは、特異的なタンパク質に結合した粒子の光学的な特徴が、別のタンパク質に結合した粒子の光学的な特徴とは異なるようにされている。イムノオーム分析は、患者血清又は他の体液と共にインキュベーションすることによって、類似の様式で実行する。適切な二次抗体との抗体反応によって、さらなる光学的(蛍光)シグナルを、直接的か又は再び間接的に産生する。次いで、この分析を、マルチカラー蛍光活性化細胞(FAC)スキャンにおいて実行する。
【0105】
(時間分解タンパク質アレイ(31))
表1及び表2由来の異なるタンパク質又は部分タンパク質配列を、ポリスチレン表面に結合させる。患者血清由来の、分析されるべき抗体を、活性なビオチン−エステルを使用することによってビオチン化する。代わりに、ヒト抗体に特異的であるビオチン化二次抗体もまた、使用し得る。これは、ビオチン化の効率が異なる結果生じる患者間偏差をさけるためである。次いで患者抗体を、タンパク質結合ポリスチレン表面と共にインキュベートする。引き続く洗浄工程の後、ストレプトアビジンによって検出を行う。ストレプトアビジンは、蛍光ユーロピウム複合体と結合する。次いで、洗浄工程及び乾燥工程の後、レーザー励起、時間分解固相蛍光分析によって評価を行う。
【0106】
(データパターン及び複数因子分析)
パラメータ(例えば、表1及び表2に列挙されるタンパク質/自己抗原について得られる自己反応;例えば、自己反応性RF/シトルリン/BiP/カルパスタチン/カルレティキュリン/RA33)を、可能な限り完全に決定する。6のうち2よりも多くの欠測値を有する個々の患者のデータパターンを、分析から前もって除外した。
【0107】
免疫検出系の解釈によって、各患者及び各自己反応性について陰性又は陽性の結果を産生する。代替の選択肢は、連続値(タンパク質アレイ、ELISA)であり、これは、人工的に(数学的に)か、又はコントロール群関連カットオフによって(適切なコントロール群における分析、例えば、年齢及び性別の一致した健康なコントロール又は別の疾患に罹患するコントロール患者)のいずれかで、陽性又は陰性に分ける。各データパターンを分析し、そしてCLASSIF1プログラムシステム(32)によって分類する。
【0108】
最初の工程において、各臨床的診断カテゴリーの三重マトリクス(triple-matrix)特徴を、第1の参照分類マスクへ入力する。次いで各患者は、患者マスクと臨床的参照マスクとの間の位置同一性の、最も高い程度に従って分類される。
【0109】
第2の工程において、これらのデータカラムは除去された。これは、三重マトリクス文字「0」を全ての参照マスクに表示する。なぜなら、参照マスクは、疾患間の差異を考慮していないからである。
【0110】
第3の工程において、CLASSIF1−アルゴリズムは、分類プロセスからの全ての順列における、個々のパラメータ又は2つのパラメータの組み合わせのいずれかを一過的に除去する。次いで、総合データセットを再分類する。パラメータは、一過性の除去によって分類結果に影響を与えるが、これは参考になる。なぜなら、明らかに重要な情報は失われていないからである。各パラメータの情報内容は、アルゴリズムによって断続的に提供され、演算の後に再導入され、そして次のパラメータ又は次のパラメータの対が、一過的に抽出され、そして類似の様式で分析される。断続的な除去及び再導入は、全てのパラメータの情報内容が、単独で又はさらなるパラメータとの組み合わせのいずれかで明らかになるまで、行われる。情報的なパラメータの残りの配列は、それぞれの臨床的予測カテゴリーについての参照分類マスクを構成する。
【0111】
第4の工程において、百分位数カットオフ値の10/90%、15/85%、20/80%、25/75%及び30/70%で分類することによって、分類を最適化した。後にこれらの対の値を選択することにより、最良の識別性質が示される。最良の分類の結果は、典型的には10/90%と25/75%との間の百分位数対の範囲に達する。乱雑マトリクス(Confusion Matrix)における陰性及び陽性の予測値は、参照サンプルが及び試験されるべきサンプルが、どのように良好に使用パターンによって識別されるかについての情報を提供する。
【0112】
加えて、各患者のデータパターンを、複数因子分析に供する。5つのパラメータパターンについての複数因子を、全ての可能な組み合わせにおいて、異なるパラメータの乗算又は除算によって得て、続いてRA参照群の平均値に対する5つのデータカラムの標準化をした。続いて、他の患者群(例えば、OA、reA、PsoA、他)の各パラメータを、それぞれの患者群のパラメータの平均値が参照値(RA)との比較において増加している場合に乗算し、又は、値が減少している場合に除算することのいずれかによって決定した。
【0113】
複数因子データベースは、測定されたパラメータ(RF/シトルリン/BiP/カルパスタチン/カルレティキュリン/RA33)を包含する。26個の複数因子を、CLASSIF1アルゴリズムを介して分類した。それにより、各データベースカラムの全ての形状が、「−」(参照患者[RA]の値分配の低い百分位数よりも小さい)、「0」(低い百分位数と高い百分位数との間)又は「+」(高い百分位数よりも大きい)の三重マトリクス文字のいずれかに変化した。データベースカラムの変化の後、乱雑マトリクスが、臨床診断とコンピュータ分類との間に確立される。
【0114】
この乱雑マトリクスの対角値は、参照サンプルの特異性及び試験されるべきサンプルの感受性を示す。これらは引き続く反復学習過程の間、更に最適化される。最適化された分類は、全てのサンプルが正しく分類された場合に達成される。これは、乱雑マトリクスの対角数が100%に達し、そして非対角分野の値が0%の場合である。この学習過程は、非情報的パラメータを除去し、従って識別するパラメータを蓄積することに役立つ。
【0115】
(略号リスト)
【0116】
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【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1は、RA33、RF、シトルリン、BiP及びカルパスタチンに関する自己反応パターンである。 IgG(RF)、シトルリン、BiP、カルパスタチン、RA33及びカルパスタチンに対する自己反応と、疾患実体RA(慢性関節リウマチ)、reA(反応性関節炎)、OA(変形性関節症)、PsoA(乾癬関連関節炎)及び他のためのカルパスタチンにおける32個全ての可能な組み合わせを示す。
Claims (26)
- ヒトにおける慢性炎症性関節疾患及び他の炎症、感染又は腫瘍疾患のための診断、分子決定及び治療開発についてのツールであって、表1に記載される単一遺伝子の配列、選択された遺伝子の配列、又は遺伝子の全体の配列、及び表2に記載されるタンパク質をコードする遺伝子の配列の使用の元で実現される、前記ツール。
- 前記ツールが、表1に記載される遺伝子又は表2に記載されるタンパク質をコードする遺伝子とその配列において同一であるか、又はタンパク質コード領域において、それぞれ少なくとも80%の配列同一性を有する遺伝子配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載のツール。
- 前記ツールが、表1に記載される遺伝子及び請求項2に包含される遺伝子とその配列において同一であるか、又は、前記遺伝子のそれぞれの部分と少なくとも80%の配列同一性を有する配列部分若しくは部分配列を含むことを特徴とする、請求項1及び2に記載のツール。
- 前記ツールが、
4.1.(マイクロ)アレイハイブリダーゼーションのハイスループット方法
4.2.(半)定量化のためにポリメラーゼ連鎖反応の技術を使用するハイスループット方法
の使用に基づくことを特徴とする、請求項1〜3に記載のツール。 - 前記ツールが、標識された患者サンプル、及び第二の異なる標識をされたコントロールサンプルの使用に基づき、前記コントロールサンプルは、患者サンプルと共に(マイクロ)アレイへ、比較二重ハイブリダーゼーション(比較赤/緑ハイブリダイゼーション)のために使用されることを特徴とする、請求項1〜3に記載のツール。
- 前記ツールが、請求項1〜3における前記遺伝子配列より推定される、単一のタンパク質若しくはペプチド、選択されたタンパク質若しくはペプチド又はタンパク質若しくはペプチド全体の使用に基づくことを特徴とする、診断目的のための請求項1〜5に記載のツール。
- 前記ツールが、表2に記載される、単一のタンパク質、選択されたタンパク質又はタンパク質の全体の使用に基づくことを特徴とする、請求項6に記載のツール。
- 前記ツールが、表1に記載される、単一のタンパク質、選択されたタンパク質、又はタンパク質の全体の部分配列の使用に基づくことを特徴とする、請求項6及び7に記載のツール。
- 前記ツールが、表1において推定されるタンパク質若しくは表2に記載されるタンパク質とその配列において同一であるか、若しくはそれぞれ少なくとも80%の配列同一性を有するタンパク質又は部分タンパク質配列を含むことを特徴とする、請求項6〜8に記載のツール。
- 前記ツールが、
10.1.タンパク質発現の分析におけるハイスループット方法(高解像度、二次元タンパク質ゲル電気泳動、MALDI技術)
10.2.ヒトにおける炎症性関節疾患及び他の炎症、感染又は腫瘍疾患についての診断ツールとしての自己抗体をスクリーニングするように設計された、タンパク質スポッティング技術(タンパク質アレイ)におけるハイスループット方法
10.3.ヒトにおける炎症性関節疾患及び他の炎症、感染又は腫瘍疾患についての診断ツールとしての自己反応性T細胞をスクリーニングするように設計された、タンパク質スポッティング技術(タンパク質アレイ)におけるハイスループット方法
10.4.ヒトにおける炎症性関節疾患及び他の炎症、感染又は腫瘍疾患についての診断ツールとしての自己反応性T細胞をスクリーニングするように設計された、タンパク質スポッティング技術における非ハイスループット方法
の使用に基づくことを特徴とする、請求項6〜9に記載のツール。 - 前記ツールが、請求項6〜9において特定されるタンパク質又は部分配列に特異的な抗体の使用に基づくことを特徴とする、請求項6〜9に記載のツール。
- 前記ツールが、動物実験における分析のため、又は炎症性関節疾患及び他の炎症、感染又は腫瘍疾患を有する動物における診断のための、別の種の対応する相同配列の使用に基づくことを特徴とする、請求項1〜11に記載のツール。
- 請求項1〜3に記載の前記遺伝子又はこれらの遺伝子の調節配列(プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、調節配列に更に結合するための特異的配列)における遺伝的変化(変異)を検出するための診断ツールとしての、請求項6〜11に記載のツール。
- 表2に記載されるタンパク質をコードする遺伝子又はこれらの遺伝子の調節配列(プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、調節配列に更に結合するための特異的配列)における遺伝的変化(変異)を検出するための、請求項6〜11及び13に記載のツール。
- 前記ツールが、請求項1〜3に記載される前記遺伝子若しくはDNA配列、又はそれぞれ推定されるタンパク質又はペプチド、及び請求項6〜9に記載される前記タンパク質配列及び部分タンパク質配列、又はそれらの対応するコード遺伝子配列の使用の元で実現される、ヒトにおける炎症性関節疾患及び他の炎症、感染又は腫瘍疾患の分子決定のための、請求項1〜5に記載のツール。
- 前記ツールが、請求項1〜3に記載される前記遺伝子若しくはDNA配列、又はそれぞれ推定されるタンパク質若しくはペプチドを使用する、ヒトにおける炎症性関節疾患及び他の炎症、感染又は腫瘍疾患の治療の選択のための、請求項1〜5に記載のツール。
- 前記ツールが、請求項1〜3に記載される前記遺伝子若しくはDNA配列、又はそれぞれ推定されるタンパク質又はペプチドを使用する、ヒトにおける炎症性関節疾患及び他の炎症、感染又は腫瘍疾患の治療の進行/制御をモニターするための、請求項1〜5に記載のツール。
- 前記ツールが、請求項1〜3に記載の前記遺伝子又は遺伝子配列の発現への直接的又は非直接的な影響を含む、治療コンセプトを開発するための分子ツールとしての、請求項1〜5に記載のツール。
- 前記ツールが、請求項6〜9に記載される前記タンパク質又は部分タンパク質配列の発現への直接的又は非直接的な影響を含む、治療コンセプトを開発するための、請求項1〜5及び18に記載のツール。
- 前記ツールが、請求項8〜11に記載される前記タンパク質又は部分タンパク質配列に対する自己反応性T細胞への直接的又は非直接的な影響を含む、治療コンセプトを開発するための、請求項1〜5及び18〜19に記載のツール。
- 請求項1〜3に記載の前記遺伝子配列から推定されるタンパク質の生物学的作用に影響するための、請求項1〜5及び18〜20に記載のツール。
- 請求項1〜3に記載の遺伝子、及びそれぞれ推定されるタンパク質に関連する直接的分子調節回路/経路に影響するための、請求項1〜5及び18〜21に記載のツール。
- 前記遺伝子及び配列、並びにその調節機構を、治療コンセプト、治療効果、治療の最適化若しくは疾患予後の認識又は予期の目的で使用する解釈アルゴリズムの設計及び使用に基づく治療コンセプトの開発のための、請求項1〜5及び18〜22に記載のツール。
- 請求項1〜3及び6〜9に記載の遺伝子、遺伝子配列、遺伝子若しくは遺伝子配列の調節、又はタンパク質、タンパク質配列、融合タンパク質を使用するか、あるいは請求項10〜14に記載の抗体若しくは自己反応性T細胞を使用することで、生物学的に活性な薬物(生物製剤)を開発するための、請求項1〜5及び18〜22に記載のツール。
- 比較的タンパク質特異的な結合行動をとる異なる抗体又は分子を含む、分子ツールとしてのアレイであって、前記アレイが、表1における遺伝子から推定されるタンパク質の全体若しくは選択されたタンパク質を検出するために、又は表2におけるタンパク質の全体若しくは選択されたタンパク質を検出するために意図される、前記アレイ。
- 26.1.医学診断における、血液サンプル又は組織サンプルの分析
26.2実施例1に記載の分析における使用
26.3.実施例2に記載の治療コンセプトにおける使用
のための、請求項1〜24に記載のツールの使用。
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