JP2004529633A - 低減された免疫原性を有する修飾されたヒトインターフェロンベータ - Google Patents

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Abstract

本発明は、特にヒトに投与され、特に治療用のポリペプチドに関する。このポリペプチドは修飾されたポリペプチドであり、この修飾により、ポリペプチドをヒトに投与した際に免疫反応を誘発する傾向が低減されるという結果をもたらす。本発明は特に、インビボで使用した時に、非修飾の相当物に比べ免疫原性が低いまたは実質的に非免疫原性であるタンパク質の変異体をもたらすヒトインターフェロンベータの修飾に関する。

Description

【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、特にヒトに投与され、そしてとりわけ治療に使用するポリペプチドに関する。このポリペプチドは修飾されたポリペプチドであり、この修飾により、ポリペプチドがヒトに投与された際に免疫反応を誘発する傾向が低減するという結果をもたらす。本発明は特に、インビボで使用した時に、非修飾の相当物に比べて免疫原性が低い、または実質的に非免疫原性である、INFβタンパク質の変異体をもたらすヒトインターフェロンおよび特にヒトインターフェロンベータ(INFβ)の修飾に関する。本発明はさらに、前記非修飾タンパク質に由来するT細胞エピトープペプチドに関し、これにより免疫原性の低減された修飾INFβ変異体の作製を可能にするものである。
【0002】
(発明の背景)
治療用タンパク質に対して望ましくない免疫反応が起こるために、治療用タンパク質の有効性が制限される例が多々ある。いくつかのマウスモノクローナル抗体はヒトの多数の疾病症状において治療剤としての見込みを示すが、ヒト抗マウス抗体(HAMA)反応が著しく誘導するために失敗したケースもある[Schroff, R.W. et al(1985) Cancer Res.45:879-885;Shawler, D.L. et al(1985)J.Immunol.135:1530-1535]。モノクローナル抗体については、HAMA反応を低減させようと多数の技術が開発されている[WO 89/09622;EP 0239400;EP 0438310;WO 91/06667]。これらの組換えDNA手法は、一般に最終的な抗体コンストラクトにおいてマウス遺伝子情報を低減させる一方、最終コンストラクト中のヒト遺伝子情報を増加させるものである。それにもかかわらず、得られた「ヒト化」抗体は、依然として患者に免疫反応を誘発する場合があった[Issacs J.D.(1990) Sem.Immunol.2:449,456;Rebello, P.R. et al(1999) Transplantation 68:1417−1420]。
【0003】
抗体は、治療剤として投与した際にそれに対して免疫反応が発動し得る唯一の種類のポリペプチド分子ではない。ヒトに由来する、しかも人体内に存在するのと同じアミノ酸配列を有するタンパク質でさえ、人体内で免疫反応を引き起こすことがある。顕著な例としては、とりわけ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子[Wadhwa, M. et al(1999) Clin.Cancer Res.5:1353-1361]やインターフェロンアルファ2[Russo, D. et al (1996) Bri.J.Haem.94:300-305;Stein, R. et al(1988) New Engl.Med.318:1409-1413]の治療上の使用が挙げられる。
【0004】
免疫反応誘導の主要な要因は、MHCクラスII分子上での提示を介してT細胞活性を刺激し得るペプチド、いわゆる「T細胞エピトープ」がタンパク質内に存在することである。このような潜在的T細胞エピトープは、MHCクラスII分子に結合する能力を備えた任意のアミノ酸残基配列として一般に定義される。このようなT細胞エピトープは、MHC結合を確立することで測定できる。暗黙にではあるが、「T細胞エピトープ」は、MHC分子に結合する際、T細胞レセプター(TCR)によって認識され、少なくとも原理的には、TCRと結びつきT細胞応答を促進することによって、これらT細胞の活性化を引き起こし得るエピトープを意味する。しかし、MHCクラスII分子に結合することが判明しているある種のペプチドはタンパク質配列中に保持されているものと通常理解されており、このようなペプチドは、最終タンパク質が投与される有機体内で「自己」として認識される。
【0005】
これらのT細胞エピトープペプチドのある種は、細胞内でのペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の分解中に放出され得るものであり、続いてT−細胞の活性化を起動すべく主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子によって提示されることが知られている。MHCクラスIIによって提示されたペプチドの結果として、T細胞のこのような活性化は、次いで、例えばB細胞の直接の刺激による抗体応答を引き起こし、そうした抗体を産生する。
【0006】
MHCクラスII分子は、ヘルパーT細胞の選択および活性化に中心的な役割を果たす高度に多型的なタンパク質のグループである。ヒトの白血球抗原グループDR(HLA−DR)はこのグループタンパク質で優性なアイソタイプで、本発明の主な着目点である。しかしながら、アイソタイプHLA−DQおよびHLA−DPも同様の機能を果たし、したがって本発明はこれらにも等しく適用可能である。MHCクラスII DR分子は、アルファ鎖およびベータ鎖で形成され、それらのC末端は細胞膜を通して挿入される。各ヘテロダイマーは、9〜20個の範囲のアミノ酸長のペプチドに結合するリガンド結合領域を有するが、結合溝に収容できるのは最高11個のアミノ酸である。リガンド結合領域は、アルファ鎖の1〜85個のアミノ酸およびベータ鎖の1〜94個のアミノ酸が含まれる。DQ分子は、相同的な(homologous)構造を有することが最近示されており、DP族タンパク質も非常に類似していると予想される。ヒトでは、DRアイソタイプのおよそ70種類の異なるアロタイプが知られており、DQについては30種類の異なるアロタイプが、また、DPについては47種類の異なるアロタイプが知られている。各個人は2〜4個のDR対立遺伝子、2個のDQおよび2個のDP対立遺伝子を有する。多数のDR分子の構造が解明されており、それらの構造は、ペプチドの疎水性残基(ポケット残基)と結合する多数の疎水性ポケットを有する開放端のペプチド結合溝を指している[Brown et al Nature(1993)364:33;Stern et al(1994) Nature 368:215]。
【0007】
クラスII分子の様々なアロタイプを識別する多型は、ペプチド結合溝内の様々な異なるペプチド結合表面に寄与し、集団レベルで外来タンパク質を認識し病原性有機体への免疫反応を引き起こす能力に関する最大の柔軟性を保証する。リガンド結合領域には相当な量の多型が存在し、これは異なる地理的な集団および民族グループ内で区別される「ファミリー」を備えている。この多型は、ペプチド結合領域の結合特性に影響し、したがって、DR分子の異なる「ファミリー」は、幾分かは重複があるかもしれないが、異なる配列特性を備えたペプチドに対して特異性を有するであろう。この特異性は、Th細胞エピトープの認識(クラスII T細胞反応)を決定し、これは最終的には、Th細胞エピトープが由来するのと同じタンパク質上に存在するB細胞エピトープに対する抗体反応を駆動する原因となる。したがって、個人におけるタンパク質への免疫反応は、その個人のHLA−DRアロタイプのペプチド結合特異性によって決まるT細胞エピトープ認識によって重大な影響を受ける。ゆえに、世界的な人口レベルにおいてタンパク質またはペプチド内のT細胞エピトープを識別するためには、HLA−DRアロタイプのできるだけ多様なセット(それにより世界人口のできるだけ高い割合をカバーする)の結合特性を考慮することが望ましい。
【0008】
INFベータなどの治療のタンパク質に対する免疫反応は、MHCクラスIIペプチド提示経路経由で進行する。ここに外来タンパク質は、DR、DQまたはDPタイプのMHCクラスII分子と連携した提示のために飲み込まれ処理される。MHCクラスII分子は、とりわけマクロファージおよび樹状細胞などの専門的な抗原提示細胞(APC)によって発現される。T細胞表面上の同族のT細胞レセプターによるMHCクラスIIペプチド複合体の結合は、CD4分子などの他のある種のコレセプターの相互結合を伴って、T細胞内での活性化状態を引き起こすことができる。活性化は、サイトカインの放出をもたらし、B細胞などの他のリンパ細胞をさらに活性化して抗体を産生するか、完全な細胞性免疫反応としてTリンパ球を活性化する。ペプチドがAPC表面における提示用の所与のMHCクラスII分子と結合する能力は、多数の要因(最も顕著にはその1次配列)に依存する。これは、MHCクラスII分子のペプチド結合溝(cleft)内でのタンパク質分解による切断およびその結合親和性の両者に影響を及ぼすことになる。APC表面上のMHCクラスII/ペプチド複合体は、特別なT細胞レセプター(TCR)が、露出したペプチド残基およびMHCクラスII分子の両方によって提供される決定基(determinant)を認識することができるように結合面を提示する。
【0009】
当技術分野では、MHCクラスII分子に結合できる合成ペプチドを識別するための操作手順が存在する(例えば、WO98/52976およびWO00/34317)。そのようなペプチドは、必ずしもすべての状況下で(特にインビボでは処理経路または他の現象により)T細胞エピトープとして特に機能しないかもしれない。T細胞エピトープ識別はエピトープ除去に向けての最初のステップである。タンパク質からの潜在的なT細胞エピトープの識別および除去はすでに示されている。当技術分野では、通常、実験的に決定されたT細胞エピトープ中で認識された配列モチーフを走査する計算手段により、あるいはMHCクラスII結合ペプチドおよび特にDR結合ペプチドクラスを予想するために計算上の技術を用いることにより、T細胞エピトープの検知を可能にする方法が提供された。
【0010】
WO98/52976とWO00/34317は、ポリペプチド配列がヒトのMHCクラスII DRアロタイプのサブセットに結合する可能性を識別するための計算によるスレッディング(computational threading)手法を教示する。これらの教示では、予想されたT細胞エピトープは、ヒト由来および非ヒト由来の治療用抗体または非抗体タンパク質の1次配列内で慎重なアミノ酸置換を用いることによって除去される。
【0011】
合成ペプチドとの組合せで、ヒトまたは実験動物の末梢血試料から得られたT細胞クローンと結合し得る組換えMHC分子の可溶性複合体を開発する他の技術が、当技術分野で使用されている[Kern, F. et al(1998) Nature Medicine 4:975-978;Kwok, W.W. et al(2001) TRENDS in Immunology 22:583-588]。例えば、T細胞を結合する能力または刺激する能力が変更された分子についてスクリーニングされる、全INFβタンパク質または合成ペプチドまたはその変異分子から誘導されたINFβの使用を含むこれらおよび他のスキームは、エピトープ識別戦略でも活用できる。
【0012】
上記のように、およびその結果として、基本的に治療上価値があるが本来は免疫原性であるペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質からT細胞エピトープを識別しさらに除去または少なくとも低減することが望ましいであろう。
【0013】
これらの治療上価値のある分子のうちの1つはINFβである。この分子は、重要な生物学的および免疫学的活性を有する166個のアミノ酸残基の単鎖糖タンパク質である。このタンパク質は、ヒトにおいて、抗ウイルス剤、抗増殖剤および免疫調節(immunomodulating)剤として重要な治療上の可能性を有する。組換えINFβは、多数の商業的な供給源があり、それらには、Biogen社(ケンブリッジ、マサチューセッツ州、米国)製AVONEX(登録商標);Serono Internationa(ジュネーブ(スイス))製Rebif(登録商標);および(Chiron社(エメリーヴィル、カリフォルニア州、米国)製Betaseron(登録商標)が含まれる。AVONEX(登録商標)とRebif(登録商標)のアミノ酸配列は天然のヒトINFβのそれと同一であり、どちらの製品もグリコシル化されている。対照的に、Betaseron(登録商標)は大腸菌発現ホストから生産され、システイン17がセリン残基に変異されたINFβの変異形である。これは、18500の分子量を備えた165個のアミノ酸からなるグリコシル化されていないタンパク質である。
【0014】
成熟したヒトINFβタンパク質は、166個のアミノ酸からなる分子量22500の単一ポリペプチドで、繊維芽細胞およびマクロファージを含む様々な細胞タイプによって生産される。
【0015】
ヒトINFβ(1文字のコードとして示す)のアミノ酸配列は、以下の通りである:
【0016】
【表1】
Figure 2004529633
【0017】
他にも、INFβ分子は提供されており、Betaseron(登録商標)を含む変異形およびグリコシル体、Runkelらによって記載されたアラニン走査変異体のシリーズ[Runkel, L.ら(2000) Biochemistry, 39:2538-2551]等の修飾IFNβを含む。他の例としては、米国特許第4,588,585号および米国特許第6,127,332号に開示されたものが含まれるが、これらの教示のいずれも、タンパク質の免疫原特性に対するT細胞エピトープの重要性を認識するものではないし、本発明のスキームに従って特異的かつ制御されたかたちでこうした特性に直接影響を及ぼすとは考えられていなかった。
【0018】
しかし、特性の強化されたINFβ類似体には継続的な需要がある。強化が望まれている点としては、前記治療剤の発現および精製のための別スキームおよび精製の様式(modality)が含まれるが、また特に、タンパク質の生物学的特性における改良も含まれる。ヒトに投与した際のインビボ特性の改善は特に必要である。この点では、ヒトに免疫反応を引き起こす可能性が低減されているか可能性のないINFβの提供が強く望まれている。
【0019】
(発明の要約および説明)
本発明は、潜在的なT細胞エピトープが除去されるかその数が低減されることによって免疫特性が修飾されたヒトインターフェロンベータ1a(ここでは「INFβ」という)の修飾形を提供する。
【0020】
本発明は、MHCクラスII結合能力により潜在的なT細胞エピトープであるINFβの1次配列内に識別された配列を開示する。この開示は特に166アミノ酸残基からなるヒトINFβタンパク質に関する。
【0021】
本発明は、タンパク質の生物活性を最大限に保持しつつ、特定のアミノ酸の置換、付加または欠失によって変更されなければならない、本発明による分子の1次配列内の特定の位置も開示する。免疫原性の喪失が生物活性の喪失と同時にのみ成される場合は、タンパク質のアミノ酸配列内のさらなる変更によって前記活性を回復することが可能である。
【0022】
本発明は、このような修飾された分子を生産する方法をさらに開示し、とりわけ免疫原性部位を低減するか除去するために変更しなければならないT細胞エピトープを識別する方法を開示する。
【0023】
本発明によるタンパク質は、対象とするヒトの体内で増加した循環時間を示すことが期待され、慢性または再発性の疾病状態(例えば、多数のINFβを示すような場合)において特に有益であろう。本発明は、インビボで増強された特性を示すと期待されるINFβタンパク質の修飾形を提供する。本発明は、INFβ1次配列のヒトにおいて免疫原性を示す主要領域を示し、これらの部位の免疫原有効性を除去するか、または低減するために前記配列を修飾する。1つの実施形態では、前記免疫原領域を含む合成ペプチドは、分子全体に対する寛容源的(tolerogenic)反応を促進する目的で医薬組成物に用いることができる。さらに別の実施形態では、本発明の修飾されたINFβ分子は医薬組成物において使用できる。
【0024】
要約すると、本発明は以下の問題に関する:
・INFβの生物活性を有し、インビボで使用した時に同じ生物活性を有する非修飾分子と比較して免疫原性の小さいまたは実質的に免疫原性でない修飾された分子;
・これに応じた特定の分子(本来の非修飾分子に由来する1個または複数のT細胞エピトープの除去により、前記免疫原性の喪失が達成されるもの);
・これに応じた特定の分子(前記分子に由来するペプチドを結合し得る多数のMHCアロタイプの低減により、前記免疫原性の喪失が達成されるもの);
・これに応じた特定の分子(1つのT細胞エピトープが除去されているもの);
・これに応じた特定の分子(前記本来存在するT細胞エピトープが、クラスII上での提示を介してT細胞を刺激または結合する能力を示すMHCクラスIIのリガンドまたはペプチド配列であるもの);
・これに応じた特定の分子(前記ペプチド配列が、図1に記載される群から選択されるもの);
・これに応じた特定の分子(本来存在するT細胞エピトープのうちのいずれかにおいて1〜9個のアミノ酸残基、好ましくは1個のアミノ酸残基が変更されているもの);
・これに応じた特定の分子(アミノ酸残基の変更が、特定の位置において本来存在するアミノ酸残基を他のアミノ酸残基によって置換、付加または欠失したもの);
・これに応じた特定の分子(1個または複数のアミノ酸残基の置換が図2に示されるようにして行われるもの);
・これに応じた特定の分子((さらに)1個または複数のアミノ酸残基の置換が図3に示されるように行われ、前記分子に由来するペプチドを結合することができるMHCアロタイプの数が低減しているもの);
・これに応じた特定の分子(1個または複数のアミノ酸残基の置換が図4に示されるようにして行われるもの);
・これに応じた特定の分子(必要であれば、特定のアミノ酸の通常、置換、付加または欠失によるさらなる変更が前記分子の生物活性を回復するようにされているもの);
・これに応じた特定の分子(変更が、INFβの野生型配列に由来する配列(a)QFQKEDAALTIYEMLQNIFAIFRQ(R1)および/または(b)RYYGRILHYLKAKEYSHCAWT(R2)の連続する残基のストリングからの1個または複数の残基でなされるもの);
・前記の配列(a)または(b)のうちのいずれかの連続する13〜15個の残基を含むペプチド分子;
・前記の配列(a)または(b)のうちのいずれかの連続する少なくとも9個の残基を含むペプチド分子;
・前記(a)または(b)に由来するペプチド配列のいずれかと90%以上のアミノ酸相同性を有するペプチド分子;
・前記(a)または(b)に由来するペプチド配列のいずれかと80%以上のアミノ酸相同性を有するペプチド分子;
・MHCクラスIIを結合できる前記ペプチド配列;
・これに応じた特定のINFβ分子(前記配列(a)内に特定されるアミノ酸のいずれかに対応する位置で1個または複数の置換がなされているもの);
・これに応じた特定のINFβ分子(前記配列(b)内に特定されるアミノ酸のいずれかに対応する位置で1個または複数の置換がなされているもの);
・これに応じた特定のINFβ分子(前記配列(a)または(b)内に特定されるアミノ酸のいずれかに対応する位置で1個または複数の置換がなされているもの);
・以下の配列:
【0025】
【表2】
Figure 2004529633
【0026】
(ここで、X0は、C、Sであり;X1は、F、Aであり;X2は、L、Aであり;X3は、I、Aであり;X4は、Y、Nであり;X5は、M、Aであり;X6は、L、Aであり;X7は、I、Tであり;X8は、F、Hであり;X9は、I、Aであり;X10は、F、Aであり;但し、同時にX1=F、X2=L、X3=I、X4=Y、X5=M、X6=L、X7=I、X8=F、X9=IかつX10=Fは除外される(この配列は知られている免疫原性非修飾型IFNb変異体を記述する))からなる免疫性を低減した修飾されたヒトインターフェロンベータ(INFβ);
・以下の配列:
【0027】
【表3】
Figure 2004529633
【0028】
(ここで、X0は、C、Sであり;X1は、Y、Aであり;X2は、Y、Aであり;X3は、I、Aであり;X4は、L、Aであり;X5は、Y、Sであり;X6は、L、Aであり;X7は、Y、H、Aであり;但し、同時にX1=Y、X2=Y、X3=I、X4=L、X5=Y、X6=LかつX7=Yは除外される(この配列は知られている免疫原性非修飾IFNb変異体を記述する))からなる免疫性を低減した修飾されたヒトインターフェロンベータ(INFβ);
・潜在的なMHCクラスII結合活性を有し非修飾INFβの1次配列から作製される連続するアミノ酸残基9〜15個からなるIFNベータ分子であって、前記分子は、細胞増殖の生物分析において、少なくとも1.8、好ましくは1.8〜2、より好ましくは>2の刺激指数を有する(ここで前記指数は、ペプチドによる刺激を受けた後の細胞の増殖値をペプチドを受けていない対照細胞の増殖値で割った値として得られ、また細胞増殖値は適当な手段によって測定される);
・MHCクラスII結合活性を有する前記のペプチドまたは修飾ペプチドのいずれかを含む医薬組成物;
・前記または下記で定義される前記特定の修飾された分子のいずれかをコードするDNA配列または分子;
・INFβの生物活性を有する修飾された分子を含む医薬組成物;
・場合によっては薬剤として許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を含む前記および/または特許請求の範囲で定義される医薬組成物;
・(i)ポリペプチドのアミノ酸配列またはその一部を決定すること;(ii)インビトロもしくはインシリコ技術を用いるか、または生物学的アッセイを用いて、ペプチドのMHC分子への結合を測定することを含む任意の方法により、タンパク質のアミノ酸配列内の1つまたは複数の潜在的なT細胞エピトープを識別すること;(iii)インビトロまたはインシリコ技術を用いるか、または生物学的アッセイを用いて、ペプチドのMHC分子への結合によって、測定したT細胞エピトープの活性を実質的に低減または除去するように、識別した潜在的なT細胞エピトープ内に1つまたは複数のアミノ酸を修飾した新規な配列変異体を設計すること;(iv)組換えDNA技術によってそのような配列変異体を構築し、かつ前記変異体を試験することによって、所望の特性を備えた1つまたは複数の変異体を識別すること;および(v)場合によってはステップ(ii)〜(iv)を繰り返すこと;
のステップを含む上記請求項に定義されるINFβ生物活性を有する修飾された分子を製造する方法:
・ステップ(iii)が本来存在するT細胞エピトープのうちのいずれかにおいて1〜9個のアミノ酸残基の置換、付加または欠失により行われる、これに応じた特定の方法;
・変更が、同族のタンパク質配列を参照して、および/またはインシリコモデリング技術において行われる、これに応じた特定の方法;
・これに応じた特定の方法であって、上記ステップ(ii)を以下のステップ:(a)既知のアミノ酸残基配列を有するペプチド領域を選択すること;(b)所定の均一サイズを有し、少なくとも3個のアミノ酸残基によって構成される重複したアミノ酸残基セグメントを前記選択領域から連続的にサンプリングすること;(c)サンプリングした前記アミノ酸残基セグメント中に存在する個々の疎水性アミノ酸残基側鎖に対する割当て値を合計することにより、サンプリングした前記各セグメントについてMHCクラスII分子結合スコアを計算すること;および(d)実質的にペプチドの治療上の有用性を低減せずに、ペプチドに対するMHCクラスII結合スコア全体を変更するために、そのセグメントについて計算したMHCクラスII結合スコアに基づいて、修飾に適した前記セグメントの少なくとも1つを識別する;ステップ(c)を、好ましくは、12−6ファンデアワールスのリガンド−タンパク質エネルギー反発項およびリガンド対立エネルギー項を含むように修飾したベーム(Bohm)スコアリング関数を用い、(1)MHCクラスII分子モデルの第1のデータベースを提供すること;(2)前記MHCクラスII分子モデルについて許容されるペプチド骨格の第2のデータベースを提供すること;(3)前記第1のデータベースからモデルを選択すること;(4)前記第2のデータベースから許容されるペプチド骨格を選択すること;(5)サンプリングした各セグメント中に存在するアミノ酸残基側鎖を識別すること;(6)サンプリングした各セグメント中に存在するすべての側鎖に対する結合親和性値を決定すること;および前記各モデルと各骨格についてステップ(1)〜(5)を繰り返すこと
によって実行する対応する方法;
・潜在的なMHCクラスII結合活性を有し、非修飾INFβから作成され、図1に記載された群から選択される13merのT細胞エピトープペプチド、および、インビボで使用した時に、同一の生物活性を有する非修飾の分子よりも免疫原性が低いまたは実質的に非免疫原性であるINFβ製造のためのその使用;
・上記13merのT細胞エピトープペプチドのうち少なくとも9個の連続するアミノ酸残基からなるペプチド配列、および、インビボで使用した時に、非修飾の分子よりも免疫原性が低いまたは実質的に非免疫原性を有し、さらにヒトインターフェロンβの生物活性を有するINFβ製造のためのその使用。
【0029】
・潜在的なMHCクラスII結合活性を有し非修飾INFβから作製された、前記(a)または(b)の配列の群のうちのいずれかから選択される13merのT細胞エピトープペプチド、および、インビボで使用した時に任意の非修飾分子より免疫原性が少ないまたは実質的に免疫原性を有しない、およびヒトインターフェロンβの生物活性を有するINFβの製造のためのその使用;
・上に特定される配列(a)または(b)のうちのいずれかに由来する13merT細胞エピトープペプチドの少なくとも連続9個のアミノ酸残基からなるペプチド配列、およびインビボで使用した時、任意の非修飾分子より免疫原性が少ないまたは実質的に免疫原性を有しない、およびヒトインターフェロンβの生物活性を有するINFβの製造のためのその使用。
【0030】
「T細胞エピトープ」という用語は、本発明についての理解によれば、MCHクラスIIを結合可能で、T細胞を刺激するおよび/または(必ずしも測定可能な程度に活性化せずに)T細胞を複合体中でMHCクラスIIに結合可能であるアミノ酸配列を意味する。
【0031】
本明細書および添付する特許請求の範囲において「ペプチド」という用語は、2個以上のアミノ酸を含む化合物である。アミノ酸はペプチド結合(以下に定義される)によって互いに連結される。ペプチドの生物学的生産に関わる20個の異なる天然アミノ酸が存在し、これらが任意の数、任意の順序で連結して、ペプチド鎖または環を形成する。ペプチドの生物学的生産で使用される天然アミノ酸はすべてL-配置である。合成ペプチドは、L−アミノ酸、D−アミノ酸またはこれら2種の異なる配置のアミノ酸の様々な組合せを使用して従来の合成方法を用いて調製できる。ペプチドによっては数単位のアミノ酸しか含まないものもある。短いペプチド、例えばアミノ酸単位が10個未満のものは、時に「オリゴペプチド」と呼ばれる。他のペプチドは多数のアミノ酸残基、例えば100個以上を含み「ポリペプチド」と呼ばれる。従来、「ポリペプチド」は3個以上のアミノ酸を含む任意のペプチド鎖と考えられ、「オリゴペプチド」は通常、特に「短い」タイプのポリペプチドと見なされる。したがって、本願では「ポリペプチド」へのどのような言及もオリゴペプチドを含むと理解される。さらに、「ペプチド」へのどのような言及もポリペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質を含む。アミノ酸の個々の異なる配置は異なるポリペプチドまたはタンパク質を形成する。形成することができるポリペプチドの数、したがって異なるタンパク質の数は、実際上無制限である。
【0032】
「アルファ炭素(Cα)」はペプチド鎖中の炭素水素(CH)部分の炭素原子である。「側鎖」はCαへの吊り下がり(ペンダント)基であり、ペプチドの寸法と比較して著しく変動幅の広い物理的な寸法を有する、単純もしくは複雑な基または部分を含むことができる。
【0033】
本発明は、実質的にここに示されたものと同じ1次アミノ酸配列を有する任意のINFβ分子種に適用でき、したがって、遺伝子工学的手段その他の方法によって誘導されたINFβ分子を含み、おおよそ166個のアミノ酸残基を含んでよい。
【0034】
他の哺乳類由来から識別されたINFβタンパク質は、共通して、本開示のペプチド配列の多数を有し、また、開示されたペプチド配列と実質的に同じ配列を有する多数のペプチド配列を共通に有する。したがって、このようなタンパク質配列も等しく本発明の範囲内に入る。
【0035】
本発明は、同種の有機体に導入された可溶性タンパク質が免疫反応を引き起こし、その可溶性タンパク質に結合する宿主抗体の進行をもたらしうるという、実際ある現実を克服することを想定している。こうした現象の中でもとりわけ顕著な例は、臨床上の使用におけるINFα2である。このタンパク質が内生的に生産されるという事実にもかかわらず、INFα2で治療されたヒト患者の相当な割合に抗体を形成する[上掲Russo, D. et al(1996);上掲Stein, R. et al(1988)]。INFβの臨床上の使用でも、少なくとも同一の1次構造の分子がヒトの中で内生的に生産されているという事実にもかかわらず、INFβへの免疫反応の発生展開をもたらすことが知られている[Kivisakk, P.ら(2000) Eur.J.Neurol. 7:27-34;Myhr,K.M.ら(2000) Neurology 55:1569-1572]。本発明は、ヒトホストへの投与に際してのINFβタンパク質の免疫反応誘発傾向を変更することにより、この問題を解決することを目的とする。本発明者らは、ここに記載した方法によって、この自己由来のタンパク質に対する免疫反応を駆動するのに決定的な役割を果たすT細胞エピトープを含むINFβ分子領域を発見し、ここに開示する。
【0036】
修飾されたINFβをもたらす本発明の一般的な方法は、次のステップを含む:
(a)ポリペプチドまたはその一部のアミノ酸配列を決定すること;
(b)インビトロまたはインシリコ技術を用いるか生物学的アッセイを用いてペプチドのMHC分子への結合を測定することを含む任意の方法によりタンパク質のアミノ酸配列内の1つまたは複数の潜在的なT細胞エピトープを識別すること;
(c)インビトロまたはインシリコ技術を用いるか生物学的アッセイを用いてペプチドのMHC分子への結合を測定したT細胞エピトープ活性を実質的に低減するか除去するように、識別された潜在的なT細胞エピトープ内の1つまたは複数のアミノ酸を用いて新規な配列変異体を設計する。このような配列変異体は、そのような新しい潜在的なT細胞エピトープが、設計毎に、T細胞エピトープの活性を実質的に低減するか除去するように修飾されないのであれば、配列変化によって新しい潜在的なT細胞エピトープの生成を回避する方法で作製される。そして、(d)組換えDNA技術によってそのような配列変異体を構築し、所望の特性を備えた1つまたは複数の変異体を識別するために前記変異体をよく知られた組換えDNA技術によって試験する。
【0037】
ステップ(b)による潜在的なT細胞エピトープの識別は従来法によって実行することができる。適当な方法はWO 98/59244;WO 98/52976;WO 00/34317に開示されており、INFβから誘導されるペプチドのMHCクラスII分子への結合性向を識別するために好適に使用できる。
【0038】
計算によってT細胞エピトープを識別する別の非常に効果的な方法は、この発明によって好ましい実施形態である実施例1に記述される。
【0039】
実際上、多数の異なるINFβタンパク質が生産され、所望の免疫特性および機能特性に関して試験される。INFβ断片の化学合成を含む他の操作手順も考え得るが、最も好ましくは変異体タンパク質は組換えDNA技術によって生産される。例えば、本発明において開示し本発明の具体的な実施形態を構成するR1またはR2などの短いINFβ断片の生産では化学合成が特に好ましい。
【0040】
166個のアミノ酸残基からなるヒトINFβタンパク質配列についての上記スキームのステップ(b)による分析結果を図1に示す。上記スキームのステップ(c)および(d)に従い本発明の修飾された分子に関する構築および設計の結果を、図2および3に示す。
【0041】
本発明は、1つまたは複数の潜在的なT細胞エピトープ活性の実質的な低減またはタンパク質からの除去をもたらす位置で少なくとも1つのアミノ酸残基を置換したINFβ類似体に関する。図1に識別された潜在的なMHCクラスIIリガンドのうちのいずれかの特定のポイントにおいて、1または複数のアミノ酸置換を行うことで、ヒト宿主に治療剤として投与した際、低減された免疫原の可能性を有するINFβ分子をもたらすことができる。
【0042】
アミノ酸修飾(例えば置換)が、親分子の最も免疫原性の強い領域内で行われたINFβ分子を提供することが最も好ましい。本発明者は、ヒトにおいてはINFβ分子の最も免疫原性の強い領域が、それぞれアミノ酸配列;QFQKEDAALTIYEMLQNIFAIFRQおよびRYYGRILHYLKAKEYSHCAWTを含む2つの領域R1およびR2に限定されることをここに見出した。本発明の主要な好ましい実施形態は、ペプチドが結合できるMHCアロタイプの結合を消失させるか、さもなければその数を低減するように、図1のMHCクラスIIリガンドがそれに対して変更され、また、それらの全体においてまたは上記の配列要素R1またはR2のうちのいずれかを有する最低9個のアミノ酸残基と一致(align)するINFβ分子を含む。
【0043】
本発明の好ましい実施形態は、図4の特定の置換を含む。特に図4から得られる置換の組合せを含む修飾されたINFβ分子を提供することが好ましい。免疫原性領域R1およびR2それぞれにおける多重(1以上)修飾を含む組合せが好ましく、および同一分子内でのR1とR2双方への多重修飾を含む組合せが特に好ましいが、これらが好ましいからといって、望ましいと考えられる置換の組合せを限定する意図はない。
【0044】
T細胞エピトープの除去のためには、T細胞エピトープ活性の実質的な低減または除去を達成するために予測されるペプチド配列内の適合点でアミノ酸置換を行うことが好ましい。実際上、適合点は、MHCクラスII結合溝内に存在するポケットの中の1個の内部で結合するアミノ酸残基と等しいことが好ましい。
【0045】
ペプチドのいわゆるP1またはP1アンカー位置で溝の第1のポケット内に結合するものを変更することが最も好ましい。ペプチドのP1アンカー残基と、MHCクラスII結合溝第1ポケットとの間の結合相互作用の特性は、ペプチド全体に対する総合的な結合親和性の主な決定要素であると認められる。ペプチドのこの位置での適切な置換は、ポケット内にはより収容されにくい残基のためであり、例えばより親水性の大きな残基への置換である。MHC結合溝内の他のポケット領域内での結合と同等な位置でのペプチド中のアミノ酸残基も考慮され、本発明の範囲に入る。
【0046】
所与の潜在的T細胞エピトープ内の単一のアミノ酸置換が、エピトープ除去の最も好ましいルートであることが理解される。単一のエピトープ内での置換の組合せも考えられ、例えば、個別に定義されたエピトープが互いに重複する場合には特に適切になものとなり得る。さらに、所与のエピトープ内における単一のアミノ酸置換または単一のエピトープ内における置換の組合せは、MHCクラスII結合溝に関して「ポケットペプチド」と同等な位置でなくともペプチド配列内のどのポイントでされていてもよい。置換は、同族体構造に関してか当技術分野で知られたインシリコ技術を用いて生成する構造的方法で行われてもよいし、本発明による分子の公知の構造上の特徴に基づくものでもよい。そのような置換はすべて本発明の範囲内に入る。
【0047】
特に、リストに挙げたペプチド内で行われた置換と組み合わせて行う場合、上に識別されたペプチド内以外のアミノ酸置換を考えてもよい。例えば、変異体分子の構造や生物活性を回復するために変更を考えることができる。そのような補償的変更およびINFβポリペプチドからの特定のアミノ酸残基の除去または付加を含む変更は、所望の活性で、かつ開示するペプチドのうちのいずれかの変化と組み合わせた変異体をもたらし、本発明の範囲内に入る。
【0048】
本発明の修飾されたINFβに関する限り、そのような修飾されたINFβタンパク質または修飾されたINFβタンパク質の断片を含む組成物および関連する組成物は、本発明の範囲内と考えるべきである。別の実施態様では、本発明は修飾されたINFβ実在物をコードする核酸に関する。別の実施態様では、本発明は修飾されたINFβタンパク質を使用するヒトの治療方法に関する。さらに別の実施態様では、本発明は、R1またはR2としてここに開示する配列と配列同一性か部分同一性を有するペプチドまたは誘導体分子を含む医薬製剤を用いて治療処置する方法に関する。
【0049】
以下の実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例は以下の図面を参照する。
【0050】
図1 潜在的なヒトMHCクラスII結合活性を有するヒトINFβ中のペプチド配列の表を示す。ペプチドは13mersであり、アミノ酸は一文字コードで示されている。
【0051】
図2 ヒトINFβ T細胞エピトープの除去をもたらすアミノ酸置換を詳述する表である(WT=野生型残基)。
【0052】
図3 1個または複数のMHC アロタイプについて潜在的T細胞エピトープの除去をもたらす追加の置換を詳述する表である。
【0053】
図4 ヒトINFβ(WT=野生型残基、#=位置、MUT=所望の残基)中の好ましい置換を示し、各置換が位置するエピトープ領域(R1またはR2)を示す表である。
【0054】
図5 実施例2における天然ヒトインビトロT細胞分析を用いて分析されたINFβ 15−merペプチド配列の表であり、INFβ配列内のN−末端ペプチド残基のペプチドID#および位置を示す表である。
【0055】
図6 IFNβペプチドによる刺激に応答する6個体からの累積的な刺激指数を示す。パネル6aは1μM濃度でペプチドを用いた刺激後の結果を示す。パネル6bは10μM濃度でペプチドを用いた刺激後の結果を示す。スクリーニングした20個体から6個体のドナーがINFβ配列から得たペプチドの1個または複数による刺激に応答した。個々のペプチドに対する応答を2つの別個の領域R1およびR2にグループ化する。対照ペプチドC32(DRB1制限された)およびC49(DP制限された)を比較のために含む。各バー内の網目掛けしてある部分は、個々のドナーからの寄与を示す。SI=刺激指数。
【0056】
図7 INFβの合成ペプチドに対するドナー特定的刺激反応を示す。パネル7a〜7fは最終ペプチド濃度1μM(白棒)、10μM(黒棒)におけるペプチドに対するヒトドナー反応を示す。比較のため、対照ペプチドC32(DRBl制限された)およびC49(DP制限された)からのデータを各パネルに含む。刺激指数陽性の閾値=2。
【0057】
図8 INFβの内の免疫原性領域を示し、天然のヒトT−細胞を刺激できるこれらの領域からのペプチド配列を詳しく示す。
【0058】
図9 天然のヒトT細胞の増殖をインビトロで促進可能なINFβペプチドを示す表を示す。ドナーのうちの2個体に対し、エピトープ領域R1またはR2のいずれかからの多重重複ペプチドに対して応答を記録する。エピトープ領域R1またはR2に対する個別合成ペプチドマッピングに対する応答を6個体から記録する。
【0059】
図10 2種の修飾されたINFβ分子の抗増殖効果の代表的なデータを示す。分析は実施例4の方法に従い、行った。各パネルa)およびb)では、対照処理の抗増殖効果を記録する。対照は非修飾INFβ−Fc融合=WT−FcINFb;標準INFβ調製物=R&D IFNbおよびINF非含有培地=対照培地(Media Con)を含む。パネルa)は、Leu 57 Ala(IFNβ−BIOV7)修飾INFβについてのデータを示す。パネルb)は、Phe 67 His(IFNβ−BIOV12)修飾INFβについてのデータを示す。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
タンパク質やポリペプチドの全体的構造を決定するのに重要な役割を果たす要因は多数存在する。第1に、ペプチド結合、アミノ酸を鎖状に互いに連結するその結合は、共有結合である。この結合は平面構造であり実質的に置換アミドである。「アミド」は−CONH−基を含む有機化合物の任意の基である。
【0061】
隣接アミノ酸のCαを連結する平面状ペプチド結合は以下に示すように表すことができる:
【0062】
【化1】
Figure 2004529633
【0063】
O=CおよびC−N原子は比較的剛性な平面内にあるので、これらの軸の周りに自由な回転は生じない。このため、破線によって模式的に描いた平面は時として「アミド平面」または「ペプチド平面」と呼ばれ、この平面にはペプチド骨格の酸素(O)、炭素(C)、窒素(N)および水素(H)原子が載る。このアミド平面の相対する両隅にはCα原子が位置する。ペプチド平面すなわちアミド平面内では、O=CおよびC−N原子の周りの回転が実質的にないので、ポリペプチド鎖はCα原子を連結する一連の平面状ペプチド結合を含む。
【0064】
ポリペプチドまたはタンパク質の全体構造または立体構造を規定する上で重要な役割を果たす第2の要因は、共通なCα連結の周りの各アミド平面の回転角である。「回転角」および「ねじり角」という用語は以下では同義語と見なされる。アミド平面にO、C、NおよびH原子が載ると仮定すると(立体構造によってはこれらの原子のうちいくつかは平面から若干ずれるかもしれないが、これは通常有効な仮定である)、これらの回転角はNとRポリペプチドの骨格の立体構造、つまり隣接残基間に存する構造を定義する。これらの2つの角度はφおよびψとして知られている。したがって、1組の角度、φiおよびψi(ここで添字iはポリペプチド鎖の特定の残基を表す)はポリペプチドの2次構造を有効に規定する。角度φおよびψを定義するのに使用される慣用規則、すなわち、所与のポリペプチドについてのアミド平面が角度0を形成する参照ポイント、並びに角度φの定義および角度ψの定義は、文献に定義される。例えば、(Ramachandran et al. Adv.Prot.Chem.23:283-437(1968)、特に285−94ページ参照(これらのページは言及によって本願に組み込まれる))。
【0065】
本発明の方法は任意のタンパク質に適用することができ、ヒトでは、MHCクラスII分子結合溝の主要なポケット1アンカー位置が、特定のアミノ酸側鎖に対してよく設計された特異性を有するという発見に部分的に基づいている。このポケットの特異性は、MHCクラスII分子のベータ鎖の位置86でのアミノ酸の同一性によって決定される。このサイトはポケット1の底に位置し、このポケットに収容され得る側鎖の大きさを決定する。Marshall, k.W.、 J.Immunol.、152:4946-4956(1994)。この残基がグリシンである場合、すべての疎水性脂肪族および芳香族アミノ酸(疎水性脂肪族は以下のものである:バリン、ロイシン、イソロイシンおよびメチオニン、また芳香族は以下のものである:フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン)は、ポケット内に収容され得る(芳香族側鎖が優先される)。このポケット残基がバリンである場合、このアミノ酸側鎖はポケット内部に突出するので、収容できるペプチド側鎖のサイズを制限する(例えば疎水性脂肪族側鎖だけが収容可能である)。したがって、アミノ酸残基配列において、疎水性脂肪族および芳香族側鎖を有するアミノ酸が存在する場合にはいつでも、MHCクラスII制限T細胞エピトープが存在する可能性がある。しかし、側鎖が疎水性脂肪族である場合は、芳香族側鎖の場合と比較して、(全人口において、ポケット1タイプの分布がほぼ均一であると定すれば)T細胞エピトープに関連する可能性はおよそ2倍である。
【0066】
本発明を具体化する計算方法は、以下のようにT細胞エピトープを含むペプチド領域の可能性を特徴づける:
(1)予め定義した長さのペプチドセグメントの1次配列を走査し、存在する疎水性脂肪族と芳香族側鎖をすべて識別する。(2)疎水性脂肪族側鎖には芳香族側鎖用のそれより大きな値、好ましくは芳香族側鎖に割り当てる値の約2倍を割り当てる(例えば、疎水性脂肪族側鎖に対しては値2を、芳香族側鎖に対しては値1を割り当てる)。(3)ペプチド内の予め定義した一定の長さの各重複するアミノ酸残基セグメント(ウィンドウ)について存在が決定された値を合計し、特定のセグメント(ウィンドウ)に対する値の合計を、セグメント(ウィンドウ)の中間位置で単一のアミノ酸残基、好ましくは、サンプリングされたセグメント(ウィンドウ)の中間点付近の残基に割り当てる。この手続きを、サンプリングされた各重複するアミノ酸残基セグメント(ウィンドウ)について繰り返す。したがって、ペプチドの各アミノ酸残基は、特定のセグメント(ウィンドウ)内に存在するT細胞エピトープの可能性に関係のある値を割り当てられる。(4)上記ステップ3に記載するように計算し割り当てた値は、評価するアミノ酸残基配列全体のアミノ酸座標に対してプロットすることができる。(5)予め定義した値(例えば値1)のスコアを有する配列のすべての部分は、T細胞エピトープを含むと認められ、必要であれば、修飾することができる。本発明のこの特定の実施態様は、T細胞エピトープを含むであろうペプチド領域を記述できる一般的な方法を提供する。これらの領域内のペプチドに対する修飾は、MHCクラスII結合特性を修飾する可能性を有する。
【0067】
本発明の別の実施態様によれば、MHCクラスII対立遺伝子モデルによりペプチドの相互作用を考慮に入れたより精巧な計算方法を使用して、T細胞エピトープをより高精度で予想できる。特にこの実施態様によるペプチド内に存在するT細胞エピトープの計算上の予想では、すべての公知のMHCクラスII分子の構造に基づく少なくとも42個のMHCクラスII対立遺伝子のモデルの構築が考えられ、T細胞エピトープの計算による識別におけるこれらのモデルの使用、相対的なペプチド骨格アルファ炭素(Cα)位置の知られた変わりやすさを考慮に入れるための各モデルのペプチド骨格のライブラリーの構築、ペプチドとMHCクラスII分子との間の相互作用において重要な位置での20個のアミノ酸置換各々のための各モデルを備えた各骨格ドック(dock)のアミノ酸側鎖コンホメーションのライブラリーの構築、および特定のMHCクラスII分子に収容(dock)された特定のペプチドについての最適な骨格および側鎖コンホメーション選択のための、これら骨格および側鎖コンホメーションライブラリーの使用、並びにこの相互作用からの結合スコアの誘導が考えられる。
【0068】
MHCクラスII分子のモデルは相同モデリングによって、ブルックヘブン(Brookhaven)タンパク質データバンク(「PDB」)で見出された多数の同様の構造から誘導できる。これらは、エネルギー最小化のためのCHARMm力場(Molecular Simulations Inc.、 San Diego、Ca.から入手可能)と共に、シミュレートされたアニーリング機能を組み込んだ半自動的な相同モデリングソフトウェア(Modeller, Sali A.& Blundell TL.、 1993. J.Mol.Biol 234:779-815)によって形成できる。別のモデリング方法も同様に利用できる。
【0069】
本願の方法は、MHCクラスII分子の小さな集合について結合溝内の各位置での各アミノ酸選択肢の実験により得た結合データのライブラリーを使用する他の計算方法(Marshall, k.W.、et al.、 Biomed.Pept.Proteins Nucleic Acids、 1(3):157-162)(1995)や溝内の特定タイプの結合ポケットの結合特性を定義するために実験による同様の結合データを使用し(ここでもまたMHCクラスII分子の比較的小さな部分集合を使用する)次いでこのポケットライブラリーからポケットタイプを「混合およびマッチング」して人為的に別の「仮想的な」MHCクラスII分子を生成するさらに別の計算方法(Sturniolo T.、 et al.、 Nat.Biotech、17(6):555-561 (1999)と著しく異なる。先行技術は両方とも分析が複雑である点および多数のペプチド変異体を合成する必要がある点の不利益を被り、少数のMHCクラスII分子しか実験的に走査できない。したがって、第1の先行技術の方法は少数のMHCクラスII分子の予想しかできない。第2の先行技術の方法は、異なるクラスII対立遺伝子間においては、1個の分子中で類似したアミノ酸で裏打ちされているポケットは同じ結合特性を持つという仮定も前提としており、ポケットライブラリーに含まれるポケットを含むそうしたMHCクラスII分子だけが「仮想的に」生成されるという欠点をさらに有する。本明細書に述べるモデリング手法を使用すれば、任意の数およびタイプのMHCクラスII分子の構造を推定でき、したがって全集団を代表する対立遺伝子を特異的に選択できる。さらに、走査されるMHCクラスII分子の数は、複雑な実験によって追加データを生成する必要以上にさらにモデルを生成することにより増加させることができる。
【0070】
骨格ライブラリーの使用により、走査されている様々なペプチドについて、特定のMHCクラスII分子に収容された時のCα原子位置における変化を考慮に入れることができる。この点もまた、上記の先行技術における計算方法(これらは特定のポケット中でアミノ酸結合を走査するため単純化されたペプチド骨格の使用に依存している)と対照的である。これらの単純化された骨格は、「実際の」ペプチドで見つかる骨格構成の代表ではないであろうし、その結果、ペプチド結合の予想が不正確になる。本発明の骨格ライブラリーは、タンパク質データバンク内で見出されるMHCクラスII分子に結合するすべてのペプチドの骨格を重ね、結合溝内に位置する11個のアミノ酸各々のCα原子間の2乗平均平方根(RMS)偏差を記録することにより生成される。このライブラリーは、より大きな変動の可能性までも考慮に入れるために、少数(現在13個)の適切な利用可能なマウスおよびヒト構造から誘導できる一方、各C”−αについてのRMS数値は、50%増加する。その後、各アミノ酸の平均のCα位置が決定され、その半径がその位置でのRMS偏差プラス50%と等しい球がこの点のまわりに描かれる。この球体は許容されるCα位置をすべて表す。
【0071】
最小のRMS偏差を有するCα(これは、上記のポケット1中のアミノ酸であり、結合溝中の11個の残基の位置2と等価である)を動かして、球体は3次元的にグリッド化され、次いでグリッド内の各頂点はそのアミノ酸のCαのために可能な位置として使用される。結果として得られるアミド平面は、引き続きアミノ酸へのペプチド結合に対応し、これらのCαの各々にグラフトされ、次のCαを位置付けるためにφおよびψ角を所定の間隔で回転させる。引き続きCαがCαに対して「許容される位置の球」内にある場合にはジペプチドの向きが許容され、それが球の外部になる場合には、ジペプチドは拒絶される。
【0072】
その後、先行するCαのあらゆる組合せから9個の後続Cαがすべて位置付けられるまで、ペプチドがポケット1 Cα「種子」から成長するように後続Cα位置の各々についてこのプロセスを繰り返す。次いで、ポケット1の前の単一Cαについてこのプロセスをもう一度繰り返して結合溝内に位置する骨格Cα位置のライブラリーを生成する。
【0073】
生成された骨格の数はいくつかの要因に依存する:「許容される位置の球」の大きさ;ポケット1位置の「1次球」のグリッドの精密さ;後続Cαを位置付けるために用いるφおよびψの段階的回転角の精密さ。このプロセスを使用すると、大きな骨格ライブラリーを生成できる。骨格ライブラリーが大きい程、MHCクラスII分子の結合溝内の特定のペプチドに対して最もよく適合するものが見つかる可能性は大きくなる。各対立遺伝子について、結合領域のアミノ酸との衝突により、必ずしもすべての骨格がMHCクラスII分子のすべてのモデルに収容されるのには適さないため、その対立遺伝子によって収容され得る骨格を含むライブラリーの部分集合が生成される。
【0074】
骨格ライブラリーの使用は、MHCクラスII分子モデルと共に、各許容される骨格に収容される各MHCクラスII分子について結合溝の各位置の各アミノ酸の許容される側鎖コンホメーションからなる徹底的なデータベースを作成する。このデータセットは、単純な立体的重なり関数を用いて生成され、ここで、MHCクラスII分子は骨格と結合し、アミノ酸側鎖は所望の位置で骨格上にグラフトされる。各々の側鎖の回転可能な結合を設定した間隔で段階的に回転させ、得られる原子位置は注目する結合に依存する。原子と結合溝の側鎖の原子との相互作用が注目され、位置は次の基準によって許容されるか拒絶される:ここまでに位置付けられたすべての原子の重なりの合計は、予め決めた値を超過してはならない。したがって、コンホメーション探索の厳格性は、結合の段階的回転で用いる間隔と全重なりについて予め決めた限界の関数である。特定のポケットが剛性であると知られている場合、この後者の値は小さくなり得るが、ポケット側鎖の位置に比較的柔軟性があると知られている場合は、比較的緩和である。したがって、許容は結合溝ポケット内の柔軟性における変化を模倣するようになすことができる。次いで、MHCクラスII分子の各々に収容された時、このコンホメーション探索を各骨格のすべての位置にあるすべてのアミノ酸について繰り返し、側鎖コンホメーションの徹底的なデータベースを作成する。
【0075】
適切な数式を用いて、上記骨格/側鎖コンホメーションの大きなデータベースの走査により経験的に導き出さなければならないペプチドリガンドコンホメーションと組み合うMHCクラスII分子モデル間の結合エネルギーを評価する。したがって、9〜20アミノ酸の範囲で長さが変化する(もっとも、長さは各走査に対しては一定にしておく)、可能なペプチドに、以下の計算を施すことにより、タンパク質を潜在的なT細胞エピトープについて走査する:MHCクラスII分子をその分子に許容されるペプチド骨格とともに選択し、所望のペプチド配列に対応する側鎖をグラフトする。骨格上の特定の位置での原子の識別および特定の側鎖に関する原子間距離データを、そのアミノ酸の許容される各コンホメーションについて集める(上記データベースから得られる)。これを骨格に沿って各側鎖に対して繰り返し、スコアリング関数を用いてペプチドスコアを導く。その骨格のための最良のスコアを保持し、選択されたモデルについて各許容される骨格に対してこのプロセスを繰り返す。すべての許容される骨格から得られたスコアを比較し、最高のスコアをそのMHCクラスIIモデル中の所望のペプチドについてのペプチドスコアであると見なす。次いで、このプロセスを、走査されているタンパク質に由来するあらゆる可能なペプチドを備えた各モデルについて繰り返し、ペプチド対モデルのスコアを表示する。
【0076】
本発明の状況では、結合親和性計算のために提示される各リガンドは、上に議論されるようなペプチドまたはタンパク質から選択されるアミノ酸断片である。したがって、リガンドは、公知の配列のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質から得られ、長さがおよそ9〜20個のアミノ酸である選択されたアミノ酸伸張物である。「アミノ酸」および「残基」という用語は以下においては同義語と見なされる。
【0077】
リガンドは、骨格ライブラリーから得た骨格上にグラフトされて検査されるペプチドの連続アミノ酸の形をしており、ペプチド骨格のC”−α原子の座標を介して、MHCクラスII分子モデルライブラリーから得られるMHCクラスII分子の結合溝中に位置し、各側鎖に対して許容されるコンホメーションは許容されるコンホメーションデータベースから選択される。関連する原子同一性および原子間距離もこのデータベースから検索し、ペプチド結合スコアを計算するために使用する。MHCクラスII結合ポケットへの高い結合親和性を備えたリガンドには、部位指図突然変異生成に対する候補としてフラグが立てられる。フラグが立てられたリガンド(したがって対象タンパク質)でアミノ酸置換を行い、これはその後、結合親和性を予め定義した閾値以下に低減する変更を決定するためにスコアリング関数を使用して再試験する。次いで、これらの変更を対象タンパク質に組み入れ、T細胞エピトープを除去する。
【0078】
MHCクラスII分子のペプチドリガンドと結合溝の間は、非共有結合性の相互作用(水素結合、静電気的相互作用、疎水性(親油性)相互作用およびファンデアワールス相互作用を含むが、これらに限定されない)を含む。これらは、以下に詳細に述べるペプチドスコアリング関数に含まれている。
【0079】
水素結合は極性または帯電基間で形成され得るもので、2つの他の原子によって共有された水素原子からなる非共有結合であることが理解されるべきである。水素受容体が部分的に負帯電を有する一方で、水素供与体の水素は正電荷を有する。ペプチド/タンパク質相互作用のために、水素結合供与体は、水素と結合した窒素または酸素もしくは窒素に結合した水素のいずれでもよい。水素結合受容体原子は水素と結合していない酸素、水素が全く結合しておらず1個か2個の結合がある窒素、または1つの結合のみある硫黄でもよい。水素を結合した酸素またはイミン窒素(例えばC=NH−)などのある種の原子は、水素受容体とも供与体ともなり得る。水素結合エネルギーは3〜7kcal/molの範囲であり、ファンデアワールス結合よりはるかに強いが共有結合よりは弱い。水素結合はまた指向性が強く、供与体原子、水素原子および受容体原子が同一直線上にある場合に最も強い。
【0080】
静電的結合は反対荷電のイオン対間で形成され、相互作用の強さはクーロンの法則による原子間の距離の二乗に反比例する。イオン対間の最適距離は約2.8Åである。タンパク質/ペプチド相互作用では、静電的結合がアルギニン、ヒスチジンまたはリジンとアスパラギン酸塩またはグルタミン酸塩との間で形成され得る。それらは水素結合と強さがほぼ似ているが、結合の強さはイオン化基のpKaおよび媒体の誘電率に依存するであろう。
【0081】
親油性(脂肪親和性)相互作用は、タンパク質とペプチドリガンド間に生じる良好な疎水性−疎水性接触である。通常、これらは結合溝のポケット内に埋没したペプチドの疎水性アミノ酸側鎖間に、それらが溶媒に露出しないように生じる。疎水性残基の溶媒への露出は、周囲の溶分子が互いに水素結合を強いられ、かご状のクラスレート構造を形成するので非常に不利である。結果として生じるエントロピーの減少は非常に不利である。脂肪親和性の強い原子は、極性でもなく水素受容体でもない硫黄や非極性の炭素原子などである。
【0082】
ファンデアワールス結合は3〜4Å離れた原子間で見られる非特異的な結合である。これは水素結合や静電的結合より弱く特異性も低い。原子のまわりの電荷分布は時間とともに変化し、どの瞬間でも、電荷分布は対称ではない。電荷分布におけるこの一時的な非対称性は、近隣の原子にも同様の非対称性を引き起こす。この結果生じる原子間引力は、ファンデアワールス接触距離で最大に達するが、約2Å〜約1Åに至ると非常に急速に低減する。逆に、原子間の隔たりが接触距離未満になるとともに、原子の外殻電子雲が重なるため、強い斥力が支配的になる。引力は静電的結合や水素結合に比べて比較的弱いが(約0.6Kcal/mol)、斥力は特に、ペプチドリガンドがタンパク質に成功裡に結合するかどうか決する上で非常に重要であろう。
【0083】
1つの実施形態では、ベーム(Boehm)スコアリング関数(SCORE1手法)が結合定数を評価するために使用される(Boehm, H.J.、 J.Comput Aided Mol.Des.、 8(3):243-256(1994)、その内容は言及によってその全体が本願に組み入れられる)。別の実施形態では、スコアリング関数(SCORE2手法)が、T細胞エピトープを含むリガンドの指標として結合親和力を評価するために使用される(Boehm, H.J.、 J.Comput Aided Mol.Des.、 12(4):309-323 (1998)、その内容は言及によってその全体が本願に組み入れられる)。しかし、上記の文献に記述されているベームスコアリング関数は、タンパク質へのリガンドの結合親和力を評価するために使用されるが、この場合、リガンドがタンパク質に成功裡に結合することが既に知られており、タンパク質/リガンド複合体はその構造が解明されタンパク質データバンク(「PDB」)の中に存在するものである。したがって、スコアリング関数は、陽性であることが知られた結合データを利用して開発されている。陽性および陰性バインダー間の区別を考慮に入れるために、方程式に反発項を加えなければならない。さらに、結合エネルギーのより満足な評価は、上記のベーム関数の領域ベースのエネルギー項を用いるのではなく対同士の方法で脂肪親和性の強い相互作用を計算することで達成される。
【0084】
したがって、好ましい実施形態では、結合エネルギーは修正されたベームスコアリング関数を使用して評価される。修正されたベームスコアリング関数では、タンパク質とリガンド間の結合エネルギー(ΔGbind)は、以下のパラメーターを考慮して評価される:リガンド(ΔGo)の並進エントロピーと回転エントロピーの全面的な喪失による結合エネルギーの低減;少なくとも1個のパートナーが中性である、理想的な水素結合からの寄与(ΔGhb);摂動のないイオン間相互作用(ΔGionic)からの寄与;脂肪親和性リガンド原子と脂肪親和性受容体原子の間の脂肪親和性相互作用(ΔGlipo);リガンド中の内部自由度の凍結による結合エネルギーの喪失、つまり、各C−C結合の周りの回転自由度が低減する(ΔGrot);タンパク質とリガンド間の相互作用エネルギー(EvdW)。これらの項を考慮すると方程式1が与えられる:
(ΔGbind)=(ΔGo)+(ΔGhbxNhb)+(ΔGionicxNionic)+(ΔGlipoxNlipo)+(ΔGrot+Nrot)+(EvdW
式中、Nは特定の項の相互作用を特徴付ける数であり、1つの実施形態では、ΔGo、ΔGhb、ΔGionic、ΔGlipoおよびΔGrotは、それぞれ5.4、−4.7、−4.7、−0.17および1.4の値を与えられる定数である。
【0085】
hbは方程式2:
hb=Σh-bondsf(ΔR,Δα)×f(Nneighb)×fpcs
によって計算される。
【0086】
f(ΔR,Δα)は、理想状態からの水素結合の大きな偏差を説明し、方程式3によって計算されるペナルティ関数である:
Figure 2004529633
【0087】
TOLは水素結合長さ(=0.25Å)で許容される偏差、
ΔRはH−O/N水素結合長さの理想的な値(=1.9Å)からの偏差、
Δαは水素結合角度∠N/O-H,O/Nの理想的な値(=180°)からの偏差、
f(Nneighb)は、タンパク質表面の凹面と凸面の部分を識別し、したがってタンパク質表面で見られるものではなくポケットで見られる極性相互作用に大きな重みを割り当てる。この関数は下記方程式4:
f(Nneighb)=(Nneighb/Nneighb,0)α(ここで、α=0.5)
によって計算される。
【0088】
neighbは任意の所与のタンパク質原子に5Åより接近している非水素タンパク質原子の数であり、
neighb,0=定数25である。
【0089】
pcsは1つの水素結合当たり極性接触表面積を考慮に入れた関数であり、したがって強い水素結合と弱い水素結合を区別し、その値は次の基準によって決定される:
pcs=β(Apolar/NHB<10Å2の場合)、
またはfpcs=1(Apolar/NHB>10Å2の場合)
polarはタンパク質リガンド接触表面の大きさであり、
HBは水素結合の数であり、
βは定数=1.2である。
【0090】
修正されたベームスコアリング関数の実行のためには、イオン相互作用からの寄与、ΔGionicを上記水素結合からの寄与と同様の方法で計算する(同じ幾何学依存性が仮定されるため)。
【0091】
lipo項は方程式5によって計算される:
lipo=ΣILf(rIL
f(rIL)はすべての脂肪親和性リガンド原子について、1また、すべての脂肪親和性タンパク質原子についてLであり、以下の基準により計算される:
f(rIL)=1(rIL<=R1f(rIL)=(rIL−R1)/(R2−R1)でR2<rIL>R1の場合、
f(rIL)=0(rIL>=R2の場合)
ここで、R1はr1vdw+rL vdw+0.5および
R2=R1+3.0であり、
r1vdwは、原子1のファンデアワールスの半径であり、
L vdwは、原子Lのファンデアワールスの半径である
rotはアミノ酸側鎖の回転可能な結合の数であり、非環式のsp3−sp3結合およびsp3−sp2結合の数である。末端CH3またはNH3の回転は考慮に入れない。
【0092】
最後の項Evdwは方程式6によって計算される:
vdw=ε1ε2((r1 vdw+r2 vdw12/r12−(r1 vdw+r2 vdw6/r6
ここでε1とε2は原子同一性に依存する定数であり、
1 vdw+r2 vdwはファンデアワールスの原子半径であり、
rは1対の原子間の距離である。
【0093】
方程式6に関して、1つの実施形態では、定数ε1とε2はそれぞれ原子ごとに以下の値を与えられる:C:0.245、N:0.283、O:0.316、S:0.316(つまり、炭素、窒素、酸素および硫黄のそれぞれの原子について)。方程式5および6については、ファンデアワールスの半径はそれぞれ原子ごとに以下の値を与えられる:C:1.85、N:1.75、O:1.60、S:2.00Å。
【0094】
タンパク質リガンド相互作用についての現時点での理解の制約内ではあるが、上記の方程式に現われるすべての所定の値および定数がすべて決定されることは理解されるべきである(特に本願で試みられている計算のタイプについて)。したがって、このスコアリング関数がさらに精緻化された場合には、これらの値および定数を変更することが可能で、したがって、リガンドへのタンパク質の結合エネルギーを評価する項において所望の結果を与える適当な数値を使用してもよく、したがって、本発明の範囲内である。
【0095】
上記のように、スコアリング関数は、側鎖コンホメーション、原子同一性および原子間の距離のデータベースから抽出されたデータに適用される。本発明を説明する目的のために言えば、このデータベースに含まれるMHCクラスII分子の数は42個のモデルと4つの解決された構造である。本発明の計算方法の構築はモジュール化された性質を有するため、新しいモデルを加えペプチド骨格ライブラリーと側鎖コンホメーション関数を用いて走査するだけで、上記のペプチドスコアリング関数によって処理できる追加のデータセットを作成できることは上記の説明から明らかである。これにより、走査されたMHCクラスII分子のレパートリーを容易に増加させることが可能になり、あるいは、データが入手できる場合には構造および関連データを置き換えて、既存の対立遺伝子のより正確なモデルを作製することができる。
【0096】
本発明の予想方法は、様々なMHCクラスII分子に対する有する親和性が実験的に測定された多数のペプチドを含むデータセットにより較正できる。計算値を実験値と比較することによって、すべての実験的に測定したT細胞エピトープが正確に予想されることが分かれば有益性の一端を決定できる。
【0097】
利用可能ないくつかの精巧な方法論と比較して、上記のスコアリング関数は比較的単純であるが、計算が非常に急速に実行される、ということが理解されるべきである。また、目的が、選択されたMHCクラスIIタンパク質の結合溝に収容される各ペプチドについて真の結合エネルギーそれ自身計算するものではないことも理解されるべきである。根本的な目的は、選択されたタンパク質の1次構造(すなわち、アミノ酸配列)に基づいてT細胞エピトープの位置を予想する助けとして相対的な結合エネルギーデータを得ることである。比較的高い結合エネルギー、すなわち選択された閾値以上の結合エネルギーは、リガンド中のT細胞エピトープの存在を示唆するだろう。次いで、リガンドに少なくとも1回のアミノ酸置換を施し、結合エネルギーを再計算すればよい。計算が迅速性を有するため、ペプチド配列のこれらの操作はコストに見合う利用可能なコンピューターハードウェアにおいてプログラムのユーザインターフェース内で対話形式に実行できる。したがって、コンピューターハードウェアへの大きな投資は要求されない。
【0098】
同じ目的のために他の利用可能なソフトウェアを使用できるかもしれないことは当業者には明白であろう。特に、タンパク質結合サイト内にリガンドをドッキングさせ得るより精巧なソフトウェアを、エネルギー最小化と共に使用してもよい。ドッキングソフトウェアの例は次の通りである:DOCK(Kuntz et al.、 J.Mol.Biol.、 161:269-288(1982))、LUDI(Boehm, H.J.、 J.Comput Aided Mol.Des.、 8:623-632(1994))およびFLEXX(Rarey M.、 et al.、 ISMB、3:300-308(1995))。分子モデリングおよび操作ソフトウェアの例としては:AMBER(Tripos)およびCHARm(Molecular Simulations Inc.)。これらの計算方法の使用は、必要な計算を行うために要求される処理時間の長さにより本発明方法の処理能力を厳しく制限するだろう。しかし、本発明の方法によって「陽性なバインダー」であると判明したペプチドについて結合エネルギーのより正確な計算結果を得るために「第2のスクリーン」として、このような方法を使用し得るというのもあり得ることである。
【0099】
洗練された分子の機械的または分子の動的な計算のための処理時間の制限は、これらの計算を行うソフトウェアの設計およびコンピューターハードウェアの現在の技術制限の両者によって決まる。将来的には、より効率的なコードが書かれ、さらにコンピュータープロセッサー速度の持続的な増加によって、より扱いやすい時間枠内でそのような計算を行うことが実現可能になるかもしれない。巨大分子に適用されるエネルギー関数および折り畳まれたタンパク質構造内で起こる様々な相互作用についての考慮に関するさらに詳しい情報は以下に見られる:Brooks, B.R., et al.、 J.Comput.Chem.、 4:187-217(1983)。一般的なタンパク質−リガンド相互作用に関するさらに詳細な情報は以下に見られる:Dauber-Osguthorpe et al.、 Proteins4(1):31-47(1988)。その内容の全体は言及によって本願に組み入れられる。有用な背景的事項は、例えば以下に見られる:Fasman,G.D.、ed.、Prediction of Protein Structure and the Principles of Protein Conformation、Plenum Press、New York、ISBN:0−306 4313−9。
【0100】
(実施例2)
MHC、ペプチドおよびT細胞レセプター(TCR)の間の相互作用は、T細胞認識の抗原特異性に構造的基礎を与える。T細胞増殖分析により、ペプチドのMHCへの結合およびMHC/ペプチド複合体のTCRによる認識を試験する。この実施例のインビトロでのT細胞増殖分析は、末梢血単核細胞(PBMC)の刺激と関係しており、抗原提示細胞(APC)およびT細胞を含んでいる。刺激はインビトロで、合成ペプチド抗原、実験によってはタンパク質抗原全体を使用して行った。刺激されたT細胞増殖を、3H−チミジン(3H−Thy)を用いて測定し、組み込んだ3H−Thyの存在を、洗浄した固定細胞のシンチレーションカウントを使用して評価した。
【0101】
保存時間12時間未満のヒト血液からの軟膜層(buffy coat)を、National Blood Service(Addenbrooks病院、Cambridge、英国)から得た。フィコールパック(Ficoll−paque)はAmersham Pharmacia Biotech(Amersham、英国)から得た。主要ヒトリンパ細胞の培養用の、血清を含まず、L−グルタミン、50μg/mlストレプトマイシン、10μg/mlゲントマイシン(gentomycin)および0.1%ヒト血清アルブミンを含むAIM V培地は、Gibco-BRL(Paisley、英国)から得た。合成ペプチドは、Eurosequence (Groningen、オランダ)およびBabraham Technix(Cambridge、英国)から得た。軟膜層の温和な遠心分離により赤血球と白血球とを血漿と血小板とから分離した。最上相(血漿と血小板を含む)を除去、廃棄した。赤血球と白血球を1:1リン酸塩バッファー食塩水(PBS)で希釈し15mlフィコールパック(Amersham Pharmacia(Amersham、英国))上で層状にした。遠心分離はメーカー推奨条件によって行い、PBMCを血清+PBS/フィコールパック界面から収集した。PBMCをPBSと混合(1:1)し、遠心分離によって回収した。上清を除去、廃棄し、50mlPBS中にPBMCペレットを再懸濁させた。細胞を遠心分離によって再びペレット化し、PBSの上清を捨てた。細胞を50ml AIM V培地を使用して再懸濁し、この時点で計数しトリパンブルー(trypan blue)染料排除法を使用して生存度(viability)を評価した。細胞を遠心分離によって再び集め上清を廃棄した。細胞は、1ml当たり3×107の密度で低温貯蔵用に再懸濁した。貯蔵培地は加熱不活性化したABヒト血清(Sigma、Poole、英国)90%(v/v)とDMSO(Sigma、Poole、英国)10%(v/v)とした。細胞は制御された冷凍容器(Sigma)に移し、−70℃で終夜置いた。使用のために必要になった時、細胞を水浴中37℃で急速解凍し、予め温めたAIM V培地10mlに移した。
【0102】
96ウェル水平底プレート中、PBMCを2×105 PBMC/ウェルの密度で、タンパク質とペプチド抗原で刺激した。PBMCを37℃で7日間インキュベートし、3H−Thy(Amersham-Pharmacia、Amersham、英国)でパルス処理した。この研究のために、3aa増分によって重複した合成ペプチド(15mer)を生成した。これはINFβの全配列にわたるものである。ペプチド識別番号(ID#)および配列を図5に示す。各ペプチドは、20の天然ドナーから分離されたPBMCに対して個別にスクリーニングした。事前に免疫原性であると示された2種の対照ペプチド、および強力な非リコール(non−recall)抗原KLHを、各ドナー分析で使用した。
【0103】
この研究で使用した対照抗原は以下の通りであった:
【0104】
【表4】
Figure 2004529633
【0105】
ペプチドをDMSOに溶解した(最終濃度10mM)、これらのストック溶液は次いで、AIM V培地で1/500に希釈した(最終濃度20μM)。ペプチドを、100μl中の最終濃度が2μMおよび20μMとなるように、水平底96ウェルプレートに加えた。解凍したPBMCの生存度(viability)をトリパンブルー染料排除法を使用して評価し、次いで細胞を2×106細胞/mlの密度に再懸濁し、100μl(2×105PBMC/ウェル)をペプチドを含む各ウェルに移した。三重ウェル培養を各ペプチド濃度で分析した。プレートを湿潤大気中37℃5%CO2で7日間インキュベートした。細胞を18〜21時間、1μCiの3H−Thy/ウェルでパルス処理し、フィルタマット上に収集した。Wallac マイクロプレートベータトッププレートカウンター(Perkin Elmer)を使用してCPM値を測定した。結果は刺激指数として表し、以下の式を用いて決定した:
ペプチドCPMを試験する増殖/非処理ウェルCPM中での増殖
T細胞増殖分析を使用してINFβ配列にT細胞エピトープをマッピングした結果、2つの免疫原の領域R1とR2とが識別された。これは、これらの領域の1個または複数のペプチドに応答した6ドナーにおけるT細胞増殖によって決定された。領域1および2は、ある個体によってはT細胞増殖を引き起こす。応答した個体についての累積応答データを図6に示し、個別応答者についてのデータを図7にまとめて示す。INFβについての並びにR1およびR2を個々のペプチド/ドナー応答とともに示すエピトープデータを図8および9に示す。
【0106】
(実施例3)
多数の修飾されたINFβ分子を従来の組換えDNA技術を使用して作製した。野生型のINFβ遺伝子は対照試薬としておよび部位特異的突然変異によって修飾された遺伝子を誘導するテンプレートの両方として遺伝子を使用した。野生型および修飾された遺伝子を真核生物の発現ベクターに挿入し、組換えINFβタンパク質をヒト免疫グロブリン定常領域を有する融合タンパク質として発現させた。組換えタンパク質は一時的に感染したヒト胚の腎臓細胞から調製し、実施例4において詳述したように分析した。
【0107】
ヒト胚腎臓細胞から発現を得るために、野生型のヒトIFNβ□遺伝子を、ATTCC(ATCC寄託番号31902)から、およびベクターpd−CsにクローニングしたPCRから得た[Loら(1998)、Protein Engineering 11:495]。pd−Csベクターは、ヒト免疫グロブリン定常領域を含む融合タンパク質を発現させるためのものである。野生型IFNβ遺伝子を含むpd−CsベクターをpdCs IFNβWTと名付けた。
【0108】
修飾されたIFNβ遺伝子を生成する単一または多数のコドン変異を、pdCs IFNβWTをテンプレートとして使用した変異生成PCRによって行った。重複PCRを用い、インターフェロン配列の2つの変異した半分を組み合わせた。503bpのPCR産物をXmaIとBamHIで消化し、Qiagenゲル抽出キットを使用して精製し、準備したpd−Cs(これはXmaIとBamHIを使用してIFNβ配列を取り除いたものである)に移した。陽性クローンを選択し、INFα2b配列を配列分析によって確認した。
【0109】
変異生成は、特定の変異を起こし得る(ミスマッチ)プライマーおよびpdCs IFNβWTテンプレートDNAとを組み合わせた個別反応において側方に位置する以下のプライマーOL575およびOL576を使用して行った。
【0110】
【表5】
Figure 2004529633
【0111】
拡張高信頼性PCR試薬(Roche,GmbH)および以下のサイクルで特定される反応条件を用いて反応を行った:
94℃/2’+25サイクル(94℃/30”、60℃/30”、72℃/30”における)+72℃/10’
個別の反応産物を、プライマーOL575およびOL576によって駆動される、上記PCRの15サイクルを使用してPCR反応によって連結した。
【0112】
PCR産物は市販のキットシステム(Qiagenゲル抽出キット)を使用してゲル精製した。所望のクローンをBamH1およびXma1で消化し、精製した生成物を調製したpd−Csベクター中にライゲートした。クローニングは、E.coli XL1−Blue細胞(Strategene Europe)および供給元が推奨する培養条件を使用して行った。すべての最終ベクター調製物について、OL575およびOL576を配列決定プライマーとして使用して配列確認を行った。
【0113】
修飾されたINFβ-1aヒトIgFC融合タンパク質の発現は、発現ホストとしてHEK293ヒト胚腎臓細胞系を使用して達成された。トランスフェクション用のDNAはすべて、供給元(QIAGEN、Paisley、英国)によって提供される高純度QIAGENミディプレップ(midiprep)システムおよび指示を使用して調製した。DNAは使用に先立ってフィルタ滅菌し、A260の測定によって定量したものである。濃度は0.5〜1.0μg/μlに調節した。
【0114】
一時的な発現のために、HEK293は、10%FCSおよび250μg/mlジェネチシン(geneticin)を補われたD−MEM L-グルタマックス(glutamax)培地(Invitrogen、Paisley、英国)を使用して成長させた。トランスフェクションに先立ち、トリプシンを用いた処理によって細胞を回収し、PBSを使用して洗浄した。細胞洗浄を2サイクル行った後、4×105細胞/mlの密度で新鮮な培地に取り、良い細胞付着を保証するようにポリ−l−リジンで前処理した多重ウェル皿に植菌する。典型的には、2×105細胞を48ウェルプレートの各ウェルに加え、プレートを37℃/5%CO2で終夜インキュベートする。
【0115】
トランスフェクションに先立ち、各ウェル内で培地を交換し、トランスフェクション混合物を加える。トランスフェクションは、リポフェクタミン(lipofectamine)試薬および供給元(Invitrogen、Paisley、英国)によって提供される指示を使用して行った。簡単に言えば、トランスフェクション混合物は、各発現ベクターコンストラクトについて、リポフェクタミン、OPTI−MEM(Invitrogen、Paisley、英国)およびウェル当たり0.8μgDNAを含むように調製する。トランスフェクション混合物を細胞に加え、細胞を4〜6時間インキュベートする。培地を0.5mlの新鮮な培地と交換し、細胞を37℃/5%CO2でインキュベートする。48時間後、抗Fc ELISAおよびダウディ(Daudi)細胞増殖分析の両分析のために試料を採った。7日後に培地を収集し、上記の分析をさらに行うため4℃で保存した。
【0116】
培地は、IFNβ融合タンパク質のヒト免疫グロブリン定常領域を検知するELISAシステムを用いて、IFNβの存否を分析する。この分析では、マウス抗ヒトIgG Fc調製物(Sigma、Poole、英国)を捕捉試薬として使用した。INFβ−HuFc融合は、参照用のヒトIgG調製物(Sigma)の希釈シリーズを使用して生成された標準曲線に関して定量したものである。結合INFβ−FC融合タンパク質または参照タンパク質は、抗ヒトIgGペルオキシダーゼ複合物(Sigma)およびSigma OPD 比色基質を使用して検知する。
【0117】
HEK293条件培地(conditioned medium)中のINFβ量を評価した後、条件培地を直接に用い、実施例4で詳述する抗増殖分析を使用して、修飾されたINFβの機能活性を試験する。
【0118】
(実施例4)
本発明の修飾されたインターフェロン分子を、ヒトB細胞リンパ腫細胞系Daudiの成長阻害能力に関して試験した。この方法は、以前に幅広く記載されており[Mark, D.F.et al. (1984) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:5662-5666]、試験インターフェロンとともにDaudi細胞をインキュベートすることを含んでいる。試験分子の抗−増殖効果は、増殖細胞の存在下では色が変化する可溶性染料物質を使用して測定される。誘導された色変化を分光測光器で測定し、何らかの抗増殖効力を非処理対照および標準インターフェロン調製物で処理された細胞を用いて記録された色変化と対比して計算する。
【0119】
簡単に言えば、Daudi細胞(ATCC#CCL−213)は100ユニット/mlペニシリン/100 ug/mlストレプトマイシンおよび2mM L−グルタミンおよび20%ウシ胎児血清(FBS)を補ったRPMI 1640培地である。培地および補足物質はすべてGibco(Paisley、英国)から得た。分析の前日、細胞を密度0.9×106/mlで新鮮な培地中に移し、翌日、10%(v/v)のFBSを含む以外は上記のものと同じ新鮮な培地に移した。細胞密度は2×105細胞/mlに調節する。
【0120】
試験および対照のインターフェロン調製物は10%のFBSを含むRPMI中に希釈する。希釈液は96−ウェル水平底プレートおいて100ul/ウェル含むようにし、また、試料はすべて三重にセットアップする。典型的には倍々に希釈したシリーズを各プレートを横断するように並べる。ポジティブコントロールウェルもインターフェロン標準(NIBSC、South Mimms、英国)出発濃度を20000pg/mlとして三重分に含める。100ul培地のみ(インターフェロンを含まない)を含む対照ウェルも含める。細胞100ulを各ウェルに加え、プレートを37℃、5%CO2で72時間インキュベートする。
【0121】
増殖はAqueous One試薬システムおよび供給元(Promega、Southampton、英国)の推奨するプロトコルを使用して評価する。簡単に言えば、40ulのAqueous One試薬システムをすべてのウェルに加え、基質を混合する。プレートを37℃で1時間インキュベートし、次いで、吸光度測定のためプレートを読み取り装置に移す。読み取りは490nmで行う。490nmでの平均吸光度をY軸に取り、加えたインターフェロン標準濃度(X軸に沿う)に対してプロットする。インターフェロン濃度は実施例3で詳述したELISA法を使用して測定する。各変異体に対し、50%の細胞成長阻害を達成するのに必要なIFNβ−1a濃度(EC50)を吸光度対濃度のプロットから決定した。
【0122】
多数の修飾されたINFβ-1a分子について上記の方法によるこのような分析結果を図10に示す。これらの結果は、IFNβ配列内にアミノ酸置換が存在しても抗増殖特性が保持されていることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】潜在的なヒトMH CクラスII結合活性を有するヒトINFβ中のペプチド配列を示す。
【図2(a)】ヒトINFβ T細胞エピトープの除去をもたらすアミノ酸置換を詳述する表である。
【図2(b)】ヒトINFβ T細胞エピトープの除去をもたらすアミノ酸置換を詳述する表である。
【図3(a)】1個または複数のMHC アロタイプについて潜在的T細胞エピトープの除去をもたらす追加の置換を詳述する表である。
【図3(b)】1個または複数のMHC アロタイプについて潜在的T細胞エピトープの除去をもたらす追加の置換を詳述する表である。
【図3(c)】1個または複数のMHC アロタイプについて潜在的T細胞エピトープの除去をもたらす追加の置換を詳述する表である。
【図4】ヒトINFβ中の好ましい置換を示し、各置換が位置するエピトープ領域(R1またはR2)を示す表である。
【図5】実施例2における天然ヒトインビトロT細胞分析を用いて分析されたINFβ 15−merペプチド配列の表であり、INFβ配列内のN−末端ペプチド残基のペプチドID#および位置を示す表である。
【図6(a)】IFNβペプチドによる刺激に応答する6個体からの累積的な刺激指数を示す。
【図6(b)】IFNβペプチドによる刺激に応答する6個体からの累積的な刺激指数を示す。
【図7(a)】INFβの合成ペプチドに対するドナー特定的刺激反応を示す。
【図7(b)】INFβの合成ペプチドに対するドナー特定的刺激反応を示す。
【図7(c)】INFβの合成ペプチドに対するドナー特定的刺激反応を示す。
【図7(d)】INFβの合成ペプチドに対するドナー特定的刺激反応を示す。
【図7(e)】INFβの合成ペプチドに対するドナー特定的刺激反応を示す。
【図7(f)】INFβの合成ペプチドに対するドナー特定的刺激反応を示す。
【図8】INFβの内の免疫原性領域を示し、天然のヒトT−細胞を刺激できるこれらの領域からのペプチド配列を詳しく示す。
【図9】天然のヒトT細胞の増殖をインビトロで促進可能なINFβペプチドを示す表を示す。
【図10(a)】2種の修飾されたINFβ分子の抗増殖効果の代表的なデータを示す。
【図10(b)】2種の修飾されたINFβ分子の抗増殖効果の代表的なデータを示す。

Claims (57)

  1. ヒトインターフェロンベータ(INFβ)の生物活性を有し、インビボで使用した時に同じ生物活性を有する非修飾分子と比較して免疫原性の小さいまたは実質的に免疫原性でない修飾された分子。
  2. 本来の非修飾分子に由来する1個または複数のT細胞エピトープの除去により、および/または前記分子に由来するペプチドを結合し得る多数のMHCアロタイプの低減により、前記免疫原性の喪失が達成される請求項1に記載の分子。
  3. 1つのT細胞エピトープが除去されている請求項2に記載の分子。
  4. 前記本来存在するT細胞エピトープが、MHCクラスII上での提示を介してT細胞を刺激または結合する能力を示す前記クラスIIのリガンドまたはペプチド配列である請求項2から4のいずれかに記載の分子。
  5. 前記リガンドまたはペプチド配列が13merまたは15merペプチドである請求項4に記載の分子。
  6. 前記ペプチド配列が、図1に記載される群から選択される請求項5に記載の分子。
  7. 本来存在するT細胞エピトープのうちのいずれかにおいて1〜9個のアミノ酸残基が変更された請求項2から6のいずれかに記載の分子。
  8. 1個のアミノ酸残基が変更された請求項7に記載の分子。
  9. アミノ酸残基の変更が、特定の位置において本来存在するアミノ酸残基を他のアミノ酸残基によって置換したものである請求項7または8に記載の分子。
  10. 1個または複数のアミノ酸残基の置換が図2に示すようにして行われる請求項9に記載の分子。
  11. さらに1個または複数のアミノ酸残基の置換が図3に示すようにして行われ、前記分子に由来するペプチドを結合することができるMHCアロタイプの数が低減している請求項10に記載の分子。
  12. 1個または複数のアミノ酸の置換が図3に示されるようにして行われる請求項9に記載の分子。
  13. アミノ酸残基の変更が、本来存在するアミノ酸残基の特定の位置における欠失によるものである請求項7または8に記載の分子。
  14. アミノ酸残基の変更が、本来存在するアミノ酸への特定の位置におけるアミノ酸の付加によるものである請求項7または8に記載の分子。
  15. さらに追加の変更が、前記分子の生物活性を回復するように行われる請求項7から14のいずれかに記載の分子。
  16. 前記さらに追加の変更が、特定のアミノ酸の置換、付加または欠失である請求項15に記載の分子。
  17. アミノ酸の変更が、同種のタンパク質配列を参考にして行われる請求項7から16のいずれかに記載の分子。
  18. アミノ酸の変更が、インシリコのモデリング技術を参考にして行われる請求項7から16のいずれかに記載の分子。
  19. アミノ酸の変更が、INFβ由来ペプチドまたはINFβタンパク質によるT細胞の刺激または結合に関してなされる請求項7から16のいずれかに記載の修飾された分子。
  20. ヒトインターフェロンベータ(INFβ)の生物活性を有し、インビボで使用した時にヒトINFβの生物活性を有する非修飾分子と比較して免疫原性の小さいまたは実質的に免疫原性でない修飾された分子であって、(i)本来の非修飾分子に由来し、MHCクラスII上での提示を介してT細胞を刺激または結合する能力を示す前記クラスIIのリガンドまたはペプチド配列である1個または複数のT細胞エピトープの除去により、および/または(ii)前記分子に由来するペプチドを結合できるMHCアロタイプの数の低減による1次配列内の1個または複数のアミノ酸の変更によって得ることができ、
    INFβ野生型に由来する前記1次配列における以下の連続アミノ酸残基ストリング内の1個または複数の位置でなされる変更を含む修飾された分子:
    Figure 2004529633
  21. 前記変更が1〜9個のアミノ酸残基の置換である請求項20に記載の分子。
  22. 前記置換が、ストリングR1およびR2からの1個または複数のアミノ酸残基においてなされている請求項21に記載の分子。
  23. 前記置換が、ストリングR1からの1個または複数のアミノ酸残基においてなされている請求項21に記載の分子。
  24. 前記置換が、ストリングR2からの1個または複数のアミノ酸残基においてなされている請求項21に記載の分子。
  25. 配列ストリングR1またはR2の外部のアミノ酸残基の1個または複数の置換がさらになされている請求項20から24のいずれかに記載の分子。
  26. 野生型分子における位置:50、57、59、60、62、63、66、67、69、70、125、126、129、130、132、133、138の1個または複数の位置でなされたアミノ酸残基置換を含む請求項20から25のいずれかに記載の分子。
  27. 前記置換が、50、57、59、60、62、63、66、67、69または70から選択される1個または複数の位置でなされる請求項26に記載の分子。
  28. 前記置換が、125、126、129、130、132、133または138から選択される1個または複数の位置でなされる請求項26に記載の分子。
  29. 前記置換が、位置57および67でなされる請求項26に記載の分子。
  30. 前記置換が、L57AおよびF67Hである請求項29に記載の分子。
  31. さらなる置換が、群50、59、60、62、63、66、69、70、125、126、129、130、132、133、138から選択される1個または複数の位置でなされる請求項30に記載の分子。
  32. 前記置換が、F50A、L57A、I59A、Y60N、M62A、L63A、I66T、F67H、I69A、F70Aから選択される請求項27に記載の分子。
  33. 前記置換が、Y125A、Y126A、I129A、L130A、Y132S、L133A、Y138H、Y138Aから選択される請求項28に記載の分子。
  34. 前記さらなる置換が、群F50A、I59A、Y60N、M62A、L63A、I66T、I69A、F70A、Y125A、Y126A、I129A、L130A、Y132S、L133A、Y138H、Y138Aから選択される請求項31に記載の分子。
  35. ヒトインターフェロンベータ(INF□)の生物活性を有し、インビボで使用した時に同じ生物活性を有する非修飾分子と比較して免疫原性の小さいまたは実質的に免疫原性でない修飾された分子であって、(i)本来の非修飾分子に由来し、MHCクラスII上での提示を介してT細胞を刺激または結合する能力を示す前記クラスIIのリガンドまたはペプチド配列である1個または複数のT細胞エピトープの除去により、および/または(ii)前記分子に由来するペプチドを結合できるMHCアロタイプの数の低減による1次配列内の1個または複数のアミノ酸の変更によって得ることができ、前記置換が野生型分子INFβにおける以下から選択される群の少なくとも1つに対応する1個または複数の位置でなされている修飾された分子:
    Figure 2004529633
  36. 以下の置換:
    F50A、L57A、I59A、Y60N、M62A、L63A、I66T、F67H、I69A、F70A
    の1個または複数が配列R1内でなされる請求項35に記載の分子。
  37. 以下の置換:
    Y125A、Y126A、I129A、L130A、Y132S、L133A、Y138H、Y138A
    の1個または複数が配列R2内でなされる請求項35に記載の分子。
  38. 以下の配列からなる低減された免疫原性を有する修飾されたヒトインターフェロンβ(INFβ):
    Figure 2004529633
    (ここで、
    0は、C、Sであり;
    1は、F、Aであり;
    2は、L、Aであり;
    3は、I、Aであり;
    4は、Y、Nであり;
    5は、M、Aであり;
    6は、L、Aであり;
    7は、I、Tであり;
    8は、F、Hであり;
    9は、I、Aであり;
    10は、F、Aであり;
    但し、同時にX1=F、X2=L、X3=I、X4=Y、X5=M、X6=L、X7=I、X8=F、X9=IかつX10=Fは除外される)。
  39. 以下の配列からなる低減された免疫原性を有する修飾されたヒトインターフェロンβ(INFβ):
    Figure 2004529633
    (ここで、X0は、C、Sであり;
    1は、Y、Aであり;
    2は、Y、Aであり;
    3は、I、Aであり;
    4は、L、Aであり;
    5は、Y、Sであり;
    6は、L、Aであり;
    7は、Y、H、Aであり;
    但し、同時にX1=Y、X2=Y、X3=I、X4=L、X5=Y、X6=LかつX7=Yは除外される)。
  40. 請求項39によるさらなる置換を含む請求項38に記載の修飾されたINFβ配列。
  41. さらなる置換がなされる請求項38から40のいずれかに記載の修飾されたINFβ配列。
  42. さらなる置換が、部分配列R1および/またはR2(ここで、R1、R2は請求項20に特定する通り定義される)内の1個または複数の位置でなされる請求項41に記載の修飾されたINFβ配列。
  43. 請求項1から42のいずれかに記載の修飾されたINFβをコードするDNA配列。
  44. 前記請求項のいずれかに定義されるINFβの生物活性を有する修飾された分子を、場合により薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤とともに含む医薬組成物。
  45. 以下のステップを含む、前記請求項のいずれかに定義されるINFβの生物活性を有する修飾された分子の製造方法:
    (i)ポリペプチドのアミノ酸配列またはその一部を決定すること;
    (ii)インビトロもしくはインシリコ技術を用いるか、または生物学的アッセイを用いて、ペプチドのMHC分子への結合を測定することを含む任意の方法により、タンパク質のアミノ酸配列内の1つまたは複数の潜在的なT細胞エピトープを識別すること;
    (iii)インビトロまたはインシリコ技術を用いるか、または生物学的アッセイを用いて、ペプチドのMHC分子への結合によって、あるいはペプチド−MHC複合体のT細胞への結合によって、測定したT細胞エピトープの活性を実質的に低減または除去するように、識別した潜在的なT細胞エピトープ内に1つまたは複数のアミノ酸を修飾した新規な配列変異体を設計すること;
    (iv)組換えDNA技術によってそのような配列変異体を構築し、かつ前記変異体を試験することによって、所望の特性を備えた1つまたは複数の変種を識別すること;および
    (v)場合によってはステップ(ii)〜(iv)を繰り返すこと。
  46. ステップ(iii)を、本来存在するT細胞エピトープのうちのいずれかにおいて1〜9個のアミノ酸残基の置換、付加または欠失により行う請求項45に記載の方法。
  47. 前記変更を、同種のタンパク質配列および/またはインシリコモデリング技術を参考にして行う請求項45に記載の方法。
  48. 上記のステップ(ii)を以下のステップ:
    (a)既知のアミノ酸残基配列を有するペプチド領域を選択すること;(b)所定の均一サイズを有し、少なくとも3個のアミノ酸残基によって構成される重複したアミノ酸残基セグメントを前記選択領域から連続的にサンプリングすること;(c)サンプリングした前記アミノ酸残基セグメント中に存在する個々の疎水性アミノ酸残基側鎖に対する割当て値を合計することにより、サンプリングした前記各セグメントについてMHCクラスII分子結合スコアを計算すること;および(d)実質的にペプチドの治療上の有用性を低減せずに、ペプチドに対するMHCクラスII結合スコア全体を変更するために、そのセグメントについて計算したMHCクラスII結合スコアに基づいて、修飾に適した前記セグメントの少なくとも1つを識別する
    により実行する請求項45から47のいずれかに記載の方法。
  49. ステップ(c)を、好ましくは、12−6ファンデアワールスのリガンド−タンパク質エネルギー反発項およびリガンド対立エネルギー項を含むように修飾したベーム(Bohm)スコアリング関数を用い、(1)MHCクラスII分子モデルの第1のデータベースを提供すること;(2)前記MHCクラスII分子モデルについて許容されるペプチド骨格の第2のデータベースを提供すること;(3)前記第1のデータベースからモデルを選択すること;(4)前記第2のデータベースから許容されるペプチド骨格を選択すること;(5)サンプリングした各セグメント中に存在するアミノ酸残基側鎖を識別すること;(6)サンプリングした各セグメント中に存在するすべての側鎖に対する結合親和性値を決定すること;および前記各モデルと各骨格についてステップ(1)〜(5)を繰り返すことによって実行する請求項48に記載の方法。
  50. 潜在的なMHCクラスII結合活性を有し、図1に示される群から選択される非修飾INFβの1次配列から作製される、13個の連続するアミノ酸残基からなるペプチド分子。
  51. 請求項20において特定される、部分配列R1またはR2の群のいずれかから選択される、潜在的なMHCクラスII結合活性を有し、非修飾INFβの1次配列から作製される12個以上の連続するアミノ酸残基からなるペプチド分子。
  52. 図8から選択される請求項51に記載のペプチド分子。
  53. 請求項50〜52において特定されるT細胞エピトープペプチドから選択される、連続する少なくとも9個のアミノ酸残基からなるペプチド配列。
  54. 細胞増殖の生物分析において、少なくとも1.8、好ましくは2以上の刺激指数を有する(ここで、前記指数は、ペプチドによる刺激を受けた後の細胞の増殖値をペプチドを受けていない対照細胞の増殖値で割った値として得られ、また、細胞増殖値は任意の適当な手段によって測定される)潜在的なMHCクラスII結合活性を有し、非修飾INFβの1次配列から作製される連続するアミノ酸残基9〜15個からなるペプチド分子。
  55. インビボで使用した際に、免疫原性は非修飾分子と比べ低減されている、または実質的に有しない、生物活性は同一であるかまたは低減したとしても許容可能な程度の低減であるINFβの製造のための、請求項50から54のいずれかに記載のペプチドの使用。
  56. インビボでのINFβに対する免疫原性を低減させるために、患者にワクチン接種することを目的とした、請求項20の配列R1またはR2のいずれかに由来するペプチドまたはペプチド配列の使用。
  57. 請求項20のR1またはR2のいずれかに由来する合成ペプチド配列を、場合により薬剤として許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と共に含む医薬組成物。
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