JP2004519239A - タンパク質発現のための調節領域を含むdna配列 - Google Patents
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Abstract
本発明は、その調節配列を含むトリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子を含むDNA配列、活性なプロモーターであるDNA配列、該プロモーター配列を含む発現及び分泌系、およびその使用、そしてタンパク質の生産方法に関する。
Description
【技術分野】
【0001】
(発明の記載)
本発明は、その調節配列を含むトリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子を含むDNA配列、プロモーターとして活性なDNA配列、該配列を含む発現及び分泌系、該DNAで形質転換された宿主細胞、酵母細胞において活性な発現および分泌系のための該配列の使用、およびそのような系によるポリペプチドおよびRNAの生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、外来遺伝子の発現が調節系の制御下で制御されるような発現プラスミドを有する組換え微生物など、遺伝子工学的タンパク質生産のための様々な系が利用可能である。細菌系は増殖させるのが容易であるため頻繁に用いられる。しかしながらそれらは医薬またはワクチンの生産における使用に先立って除去しなければならない発熱性物質を生産するという欠点を有する。さらに細菌ではグリコシル化ポリペプチドを産生することはできない。したがって、真核細胞におけるポリペプチド又はタンパク質の発現のための一連のその他の系も開発された。細胞培養の他にも、酵母、特に広く普及している酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は、そのゲノムが既知であってベクターおよび発現系に入手可能なものもあるという点で、考慮されている。
【0003】
バイオテクノロジー工程に好適な特性を有するために考慮される別の酵母の属は、クルイベロミセス(Kluyveromyces)である。クルイベロミセス・ラクティス(K.lactis)およびクルイベロミセス・マルキシアヌス(K.marxianus)種はGRAS(Generally Recognized As Save)として分類されており、それゆえSaccharomycesと同様に安全に用いられる。さらにK.marxianusは、増殖のために多数の炭素源およびエネルギー源を用いることができ、高度に温度感受性ではない。Kluyveromyces marxianusは、45℃までの温度で増殖でき、それゆえその点で、培養に関しては温度感受性のSaccharomycesの株よりも有用である。急速に増殖するK.marxianus株の細胞は最適条件下で35分ごとに***することが出来る。これらの良好な特性は、タンパク質が有効なレベルで産生される発現系がこの酵母種ではほとんど得られなかったため、そして、クローニングされ、かつ信頼できる試験を経た、強力な発現プロモーターがなかったため、今まで好適に利用することが出来なかったことに注意されたい。
【0004】
さらに、遺伝子工学的方法によるタンパク質およびポリペプチドの産生に関しては、結果産物が細胞中に保持されず、周囲の培地に蓄積されるほうが、より簡単に得ることができるため望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は改善された効果を有し、酵母細胞においてタンパク質およびペプチドの発現を制御することの出来るプロモーターを提供することであった。本発明のさらなる目的は、ポリペプチドおよびタンパク質を発現させることができ、発現産物を細胞から取り出せるようなベクターを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的は、特許請求の範囲において規定される、本発明によって作成されたDNA配列、発現カセットおよびベクター、プラスミドおよび方法によって達成される。
【0007】
本発明の主題はそれゆえ、新規なDNA配列、新規な調節要素、細胞からのタンパク質の排出方法を提供すること、および好適な発現カセット、プラスミドおよび微生物を提供することである。
【0008】
本発明の第1の態様によると、配列番号1の配列を有するDNAまたは好ましくは少なくとも10、好ましくは少なくとも100ヌクレオチドのその部分配列(subsequence)が提供される。
【0009】
配列番号1のDNA配列は、酵素トリオースリン酸イソメラーゼの調節領域およびオープンリーディングフレームをコードする核酸配列である。プロモーターとして活性なこの遺伝子の調節領域は、ヌクレオチド1から1112の領域に見られる。
【0010】
酵素トリオースリン酸イソメラーゼ(以下、TPIとも称する)は、細胞におけるエネルギー産生のために起こる、グルコースおよびフルクトースの分解にかかわる解糖酵素であり、それゆえ広範に存在している。トリオースリン酸イソメラーゼは、フルクトース−1,6−ビスリン酸からグリセリンアルデヒド−3−リン酸への開裂において起こるジヒドロキシアセトンリン酸の異性化にも関与しており、多数の工程を経てエネルギーを産生しながら最終的にピルビン酸へと変換されるグリセリンアルデヒド−3−リン酸を形成する。該酵素は複合脂質の代謝にも関与している。それは、およそ250アミノ酸からなるサブユニットのホモダイマーである。
【0011】
酵母種Kluyveromyces marxianus var. marxianus由来の酵素トリオースリン酸イソメラーゼ(EC5.3.1.1)のアミノ酸およびヌクレオチド配列は本発明者らによって解明され、後者を配列番号1とする。その他の生物における酵素TPIの配列は既知である;S.cerevisiaeのTPIの配列は、第YDR050CCDS号によって解明、同定されている。配列比較において様々な微生物におけるTPIコードDNA配列の相同性はオープンリーディングフレームについては高いが調節配列については低いということが見出された。
【0012】
特定の生物K.marxianusにおけるこの酵素の発現の調査において、TPIの発現を制御するプロモーターが非常に強力なプロモーターであって、外来タンパク質との機能的連結においてもその他の酵母種及び酵母株の細胞においても有効であることが見出された。
【0013】
本発明のさらなる態様はそれゆえ、配列番号1のヌクレオチド1から1112またはその部分を有し、プロモーターとして活性な新規なプロモーターの提供に関する。本発明によるプロモーターは、外来遺伝子との機能的関係において公知の方法にて使用することができる。
【0014】
配列番号1のヌクレオチド1から1112を有するDNA配列を以後プロモーター配列とも称する。
【0015】
本発明によって、酵母において活性であり、高度に可変性の発現系をもたらすプロモーターを提供する。それはとりわけKluyveromycesおよびその他の酵母種に好適であり、例えばSaccharomyces cerevisiae およびKluyveromyces lactisなどの酵母種に用いることが出来る。実施例部分において記載される試験は、外来タンパク質の高度に有効な発現が本発明によるプロモーターの制御下で起こることを示す。
【0016】
本発明において提供される新規な構成的プロモーターは、酵母細胞における組換えタンパク質の発現に好適である。本発明書において用いるプロモーターという語はそこから遺伝子の転写が制御されるDNA配列を指す。「プロモーターとして活性な部分」という語は、プロモーターの部分配列であってオープンリーディングフレームと連結してリーディングフレームによってコードされるポリペプチドの発現を導くものを指す。
【0017】
K.marxianusにおいてTPIの発現を調節する、以後KmTPI−プロモーターとも称するプロモーターは7つの可能性のある転写開始部位を有することが確認された。これらを配列番号1において転写開始#1から#7として示す。様々な微生物が転写開始点として発現のために様々な配列単位を使用していることも見出された。プロモーターの効率は、とりわけどの転写開始点が発現に関して利用可能なものであるかに依存しており、それゆえプロモーターの強さは、部分配列部分の選択によって、発現の起こるべき微生物についてそれぞれ正確に調整され得る。
【0018】
例えば、Kluyveromyces marxianusにおけるKmTPI−プロモーターは非常に強い作用を有するため、たった1つの転写開始部位を有するプロモーターDNAの部分領域でさえポリペプチドの発現を起こすことが出来る。例えばK.lactisなどのその他のKluyveromyces種において、少なくとも3つ、好ましくは少なくとも5つの転写開始点が配列に含まれているのが好適である。それゆえK.lactisなどのKluyveromyces種における発現のために用いられるプロモーターは、例えば配列番号1のヌクレオチド352から1112を少なくとも有する配列などの、好ましくは少なくとも5つの転写開始部位を含む配列である。
【0019】
本発明により提供されるKmTPI−プロモーターは、Saccharomycesにおいても機能性である。しかし、充分な発現を達成するには、その属の微生物において、配列番号1のヌクレオチド1から1112を有するKmTPI−最大プロモーターを用いることが推奨される。
【0020】
記載されたプロモーター活性を有する核酸配列は、修飾、置換、欠失または挿入、あるいはその組合せによって生じたような配列も含む。それに加えてプロモーター配列はさらにエンハンサー、アクチベーターおよび/またはリプレッサー機能を有する調節上流配列を備えていてもよい。これら配列はプロモーター活性を有する配列に含まれ、それはタンパク質の発現のためのプロモーターとして作用する、請求項に記載された配列の一部またはその誘導体を含む。
【0021】
さらに、本発明によると例えばプロモーター配列などの請求項に記載されたヌクレオチド配列または請求項に記載されたその部分と、少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%、そして特に少なくとも95%の相同性を有する配列も、それぞれの配列が対応する生物機能を有する限り、本発明に含まれる。本発明の目的のため、相同性は通常のアルゴリズムを用いて通常の方法で決定される。本発明の配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列も本発明の一部である。
【0022】
本発明によるとTPIに対して相同的なポリペプチドをコードする核酸、特に少なくとも80%の相同性を有するポリペプチドをコードする核酸もさらに本発明に含まれる。本明細書の記載において「相同的なポリペプチド」という表現は、請求項に記載されたポリペプチドと実質的に同じアミノ酸配列を有し、実質的に同じ生物活性を有するポリペプチドを含む。ホモログは、それがより多い、または少ない、あるいは異なるアミノ酸を有するために、元のポリペプチドと区別できるが、機能の点では保持されたものである。当業者であれば好適に改変されたポリペプチドの製造方法を知っているであろう。
【0023】
本発明によるプロモーターの調製は、天然の配列が単離されているか(これが好適である)、該配列が遺伝子工学によって生産されているかまたは化学的に合成されている場合は公知の方法で行うことが出来る。産生または合成工程は当業者に周知であるので本明細書においてより詳細に記載する必要はない。唯一必ず考慮しなければならないことは、配列番号1の1112ヌクレオチドと同じかそれを含むヌクレオチドを有するK.marxianus由来のトリオースリン酸イソメラーゼのプロモーターまたはその活性部分が使用されていることである。
【0024】
本発明のプロモーターの使用を容易にするために、上記のプロモーター配列またはプロモーターとして活性なその部分、ターミネーター、および任意にエンハンサーなどの調節配列、および挿入クローニング部位を有する発現系または発現カセットをさらに提供する。発現させるべき所望の遺伝子または発現させるべき外来タンパク質に対するDNAを挿入クローニング部位に挿入して、それを本発明によるプロモーターの制御下で転写させることが出来る。
【0025】
その最も単純な形態において、本発明による発現カセットは、プロモーター配列またはプロモーターとして活性なその部分、発現させるべきタンパク質に対するポリヌクレオチドがクローニングされ得る挿入クローニング部位、およびターミネーターとして有効なヌクレオチド配列を含む。挿入クローニング部位として好適な配列は当業者に周知であり、本明細書においてさらに詳細に記載する必要はない。例えば、TPIの発現においてターミネーターとして作用する配列をターミネーターとして用いることが出来る。後者の配列は配列番号1のヌクレオチド1860から2163またはターミネーターとして活性なその部分を含む。Kluyveromyces marxianus由来のエンドポリガラクツロナーゼ遺伝子のターミネーター領域を用いた場合も良好な結果が達成される。
【0026】
本発明による発現カセットは様々な方法で用いることができる。挿入クローニング部位とは、その位置で配列が開裂し、所望のタンパク質またはペプチドに対するポリヌクレオチドがそこに結合され得る切断位置である。もっとも単純な形態においては、タンパク質は発現工程において細胞内で産生され、細胞から排出されない。それは公知の方法によって細胞を溶解した後に得られる。この態様は細胞外では不安定な小さいペプチドおよびタンパク質、そして通常細胞内に位置するタンパク質にとっては好適である。
【0027】
本発明の発現カセットは細胞、特に酵母細胞におけるDNA配列の発現のために使用できる。本発明の発現カセットは、例えばS.cerevisiae、K.lactis、K.marxianusその他の、Saccharomyces属およびKluyveromyces属の酵母細胞における発現に特に好適である。
【0028】
本発明による発現カセットは、自己複製プラスミドへの導入にも組み込み(integrative)ベクターによる酵母染色体への導入にも好適である。
【0029】
しかしペプチドまたはタンパク質の発現のために所望のポリヌクレオチドが結合した発現カセットを大腸菌プラスミド内で増幅し、大腸菌プラスミドを得て、発現カセットの末端に切断部位が備えられていることにより、好適な制限エンドヌクレアーゼで発現カセットを切りだし、そして発現カセットを酵母ベクターに結合させるのが好ましい。ベクターは通常公知の方法で形質転換細胞をうまく選抜することが出来るように選抜マーカーを含む。
【0030】
プラスミドは大腸菌内で増殖させることが出来、そしてKluyveromyces marxianusまたはその他のKluyveromyces株またはその他の酵母株において用いることができる。用いる形質転換系は例えばKluyveromyces drosophilarum−プラスミドpKD1に基づく公知のプラスミドとすればよい。このプラスミドの子孫はKluyveromyces marxianusにおける使用に好適であり、本発明による発現系を用いる場合、対応する宿主において外来タンパク質の効率的な発現が達成される。
【0031】
別の態様において、発現させるべきポリヌクレオチドを含む発現カセットを、上記の様に調製した本発明によるプラスミドから切り出して細胞に取りこまれるように組み込みカセットとして直鎖状または環状DNAの形態で酵母細胞に直接接触させてもよい。該核酸の一部が宿主細胞と相同的であれば、相同的組換えによって宿主細胞への安定な組み込みが達成される。例えばTPI遺伝子またはその調節配列と酵母ゲノムの間の相同性のような、発現カセットの部分の相同性によって、処理された細胞の一部においてはDNAが対応する配列との交換により対応する染色体へと組み込まれる。
【0032】
本発明による発現カセットは染色体に安定に組み込まれ、最適条件下で細胞を培養した場合、所望のタンパク質が良好な収率で得られる。系のコピー数は発現させるべきタンパク質またはペプチドの性質によって定めればよい。多コピー数が望ましい場合は、交換現象が多数起こるように発現カセットの末端に公知の方法で例えばrDNAなどの染色体セットにおいて多コピー数存在する遺伝子の配列を連結させるとよい。
【0033】
さらにマーカー遺伝子を該配列に公知の方法で導入してもよく、それによって形質転換が成功した細胞を選抜することが出来る。この目的に好適な方法およびマーカーは当業者に周知であって本明細書においてさらに詳細に記載する必要はない。
【0034】
本発明による発現系は、様々な非相同および相同タンパク質の発現に好適である。用いる生物において存在するタンパク質の発現を増強させたい場合、相同タンパク質の発現が好適である。というのは、本発明によるプロモーターは産生されるタンパク質の量を非常に増加させることができるからである。好ましくは該系は、例えば成長ホルモンおよび成長因子などのホルモン、例えばインターフェロンおよびインターロイキンなどの免疫調節因子、例えばエンドポリガラクツロナーゼなどの酵素、例えばEGFPなどのレポーター遺伝子、または例えばウイルス表面抗原、とりわけB型肝炎ウイルスのS−抗原またはポリオーマウイルス由来のウイルス−タンパク質1などの抗原の発現に用いるとよい。後者のタンパク質はワクチンとして特に有用に用いられる。
【0035】
本発明による発現カセットはとりわけ株KluyveromycesおよびSaccharomycesの酵母に好適であり、好ましくは種Kluyveromyces marxianus var. marxianusの酵母株に用いられる。
【0036】
TPIは細胞内作用酵素であり、通常細胞内で起こる代謝工程を触媒する。TPIはそれゆえ細胞の周囲の培地には通常予測されず、見られもしない。それゆえ細胞内作用酵素においては予測されないように、シグナル配列は見られない。
【0037】
驚くべきことに、今回特定の微生物、即ちKluyveromyces marxianusにおいてTPIが細胞上清に検出された。それゆえシグナル配列についてTPIをコードするオープンリーディングフレームにおいて調査を行ったが、典型的な配列を見出すことは出来なかった。それゆえ、以下KmTPIとも称するこの酵素の排出は、その他のゴルジ−依存機構に基づくと考えられる。本発明は細胞から排出される酵素KmTPIの特性を利用するものである。
【0038】
通常、ペプチドおよびタンパク質はシグナル配列を有していれば細胞から排出される。翻訳時にシグナル配列がセグメントをつくりそれによって、排出されるタンパク質の膜接触および通過が可能となる。しかし明らかにこの機構はKmTPIの場合には起こっておらず、K.marxianus由来の特定のトリオースリン酸イソメラーゼは細胞膜を貫通する性質を有する。さらに融合によって結合したペプチドまたはタンパク質も、トリオースリン酸イソメラーゼと一緒に細胞外へ運ばれることが確認された。
【0039】
本発明の発明者らはKmTPIはK.marxianusにおいて発現後に細胞から排出されるだけでなく、KmTPI遺伝子を発現させることが出来る自己複製プラスミドを有するその他の酵母株の形質転換の後にはTPIの過剰発現および培地への大量排出という状況も起こることを確認する一方、TPIとの融合タンパク質を形成することによって、外来タンパク質を転写及び翻訳後に融合タンパク質として周囲の細胞培地に排出させることが出来ることを確認した。
【0040】
それゆえ本発明のさらなる主題は、トリオースリン酸イソメラーゼとの融合産物の形態において外来タンパク質を排出させる方法であり、ここで発現は、配列、少なくとも調節配列およびトリオースリン酸イソメラーゼおよび所望のペプチドまたはタンパク質をコードする融合DNAによって起こり、形成された融合タンパク質を単離し、外来タンパク質を分離すればよい。
【0041】
このようにして細胞上清において融合産物を得ることが出来る。融合産物はハイブリッド分子、即ち相同および非相同成分を含むものであっても、2またはそれ以上の非相同部分を含む融合タンパク質であってもよい。融合タンパク質においてTPI部分は外来タンパク質のN−末端側に存在してもC−末端側に存在してもよい。外来タンパク質のN−末端側にTPI部分があるほうが細胞から排出されるためには好適である。融合産物は公知の方法で分離することが出来る。
【0042】
融合産物の分離を容易にするために、タンパク質をコードする2つのDNA配列の間に公知の方法でスペーサーをコードするDNA配列を導入するのが好ましい。2つの分子部分の間のスペーサーは簡単な分離を可能にするために充分に大きくするべきであり、特に好適な態様においては酵素の切断部位を付与するものとすればよい。
【0043】
驚くべきことに、通常のシグナル配列を用いても上清に見られないかあるいは見られるとしてもわずかである疎水性ペプチドまたはタンパク質でさえも、トリオースリン酸イソメラーゼと結合させることにより、細胞から排出されるということが見出された。これは通常の方法では細胞から排出され得ないB型肝炎表面抗原(Hbs)について示された。
【0044】
それゆえTPIとの融合によるタンパク質の排出は、通常はその疎水性により、またはシグナルペプチドの欠如により細胞から排出されないタンパク質に特に好適である。
【0045】
実施例において発現試験を示すが、これは本発明による組合せを用いた場合高い収率が得られるものである。
【0046】
それゆえポリペプチドまたはタンパク質の発現後に細胞から排出するのが望ましい場合はKmTPIと所望の外来タンパク質との融合産物を産生することによって行うとよい。この目的で、例えばTPIのN−末端またはC−末端との融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、上記の発現カセットの挿入クローニング部位に結合させるとよい。好ましくは、リンカーをコードするDNA配列を該2つのタンパク質に対する配列の間に設けるとよく、そうすることによってその後融合産物の切断が容易となる。外来タンパク質は発現後にKmTPIの「排出能力」によってKmTPIとともに融合産物として細胞から排出され、細胞培地からの分離後にKmTPIから切断することによって簡単に得ることが出来る。
【0047】
発現タンパク質の排出のために公知のシグナル配列を用いることが出来ることを理解すべきである。シグナル配列は公知の方法でプロモーターと発現させるべき外来遺伝子の間に結合させるとよい。好ましくは用いるシグナル配列は用いる生物に対して相同なものである。トリオースリン酸イソメラーゼのプロモーターまたはプロモーターとして作動可能なその部分と、Kluyveromyces marxianus由来のエンドポリガラクツロナーゼ遺伝子のシグナル配列との組合せによって、特に良好な結果が達成される。
【0048】
シグナル配列を設けることによってTPIの排出作用を強化すると、さらに発現および分泌の向上が達成される。それゆえ本発明により、先の段落に記載したようにKmTPIと所望の外来タンパク質との融合産物をコードするDNA配列と既知のシグナル配列を組合せるという上記の態様を利用することも出来る。この組合せも本発明の一部をなす。
【0049】
それゆえ本発明のさらなる態様において、上記のプロモーター配列またはプロモーターとして活性なその部分、ターミネーターとして活性な配列、および該2つの配列の間にシグナル配列を、操作可能な結合様式において有している、発現および分泌系が提供される。好ましくはシグナル配列として既知の配列を用いる。これにはK.marxianus由来の酵素エンドポリガラクツロナーゼ(EPG)のシグナル配列が含まれる。それゆえ好ましくはK.marxianus由来の酵素EPGのシグナル配列を用いる。
【0050】
上記の両方の態様において培養は公知の方法によって行われ、タンパク質が連続工程で培地に連続的に運ばれ、発酵液から連続的に得られる方法でもよいし、細胞が非連続工程で培養、収集され、次いでタンパク質が発酵液から得られる方法でもよい。
【0051】
本発明による系は非常に可変的なものである。したがって例えば本発明による上記プロモーター配列またはプロモーターとして活性なその部分を、さらなる調節配列を提供するその他の核酸配列および非相同ヌクレオチド配列と組合せてもよい。Kluyveromyces marxianusに対して相同な系であって発現すべきタンパク質に対するポリヌクレオチドが導入される系を提供するために、本発明により定義されたプロモーター配列またはプロモーターとして活性なその部分を、例えば上記のようなターミネーター配列と組合せるとよく、またさらに、本発明によるプロモーター、シグナル配列およびターミネーターを含む系を、発現させるべき所望のタンパク質をコードする遺伝子と組合せて、培地中に運び出されるタンパク質を産生してもよい。最後に、本発明によるプロモーター配列またはプロモーターとして活性なその部分を、ターミネーター配列およびKmTPIの核酸配列および所望の外来遺伝子と組合せてもよい。
【0052】
本発明のさらなる主題は、本発明による発現系を含むプラスミドであり、特にプロモーター、TPI遺伝子およびK.marxianus由来のTPIのターミネーターを含むプラスミドである。プラスミドの例は、R64、R53、R48およびR11であり、図1から4を参照してより詳細に説明する。これらプラスミドは組換えプラスミドであり、該形態において発現カセットの増幅および酵母中に組み込まれた(bound-in)DNAによってコードされるタンパク質の産生のために用いることが出来る。
【0053】
配列番号1の配列を含むプラスミドpD1は宿主細胞の大腸菌DH5α中で、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen(DSMZ)に寄託番号DSM13973として2001年1月4日に寄託した。
【0054】
Kluyveromyces marxianus細胞は多種類のC−源で増殖でき、その他の栄養素についても高度に要求性ではなく、さらに温度非感受性であるため、非常に効率的な系が提供される。本発明によって作られる本発明の調節配列によって外来タンパク質の信頼度の高い発現が達成される。
【0055】
本発明によるとその普通でない生理的性質によって宿主として非常に有望な酵母種Kluyveromyces marxianusの使用を可能とする系が提供される。
【0056】
本発明による系は、RNA、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質およびグリコシル化タンパク質を含むハイブリッド分子の発現に好適である。
【0057】
本明細書において用いられる用語の定義を以下に記載する。
【0058】
「発現ベクター」という語は、調節配列に操作可能に結合した、目的のタンパク質またはペプチドに対する配列をコードするセグメントを含む直鎖状であっても環状であってもよいDNA分子を指すのに用いられる。該調節配列は少なくともプロモーターおよびターミネーター配列を含む。発現ベクターはさらに選抜マーカーおよびさらなる調節要素を含んでいてもよく、宿主細胞へ感染および宿主細胞内で増殖できるものでなくてはならない。発現ベクターの複製は自律的に起こるものでも、宿主ゲノムへの組み込みによって起こるものでもよい。
【0059】
「DNA」または「ポリヌクレオチド」という表現はあらゆる長さのものでもよくいかなる修飾を有していてもよい一本鎖または二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチドのポリマー形態を含む。
【0060】
本明細書において「分泌ベクター」は、ポリペプチドの発現に加えて、融合タンパク質の形態で、あるいはシグナル配列により、ポリペプチドを排出させる発現ベクターのことをいう。
【0061】
「操作可能に結合」という表現は個々のセグメントが意図された目的を果たすように並べられていること、即ち、それらが転写を開始および終結させることができ、発現を促進することができ、あるいは発現および分泌を可能にすることができることを意味する。
【0062】
請求された配列はさらに該分子の生物活性を妨害しないような短い配列を含んでいてもよい。さらに請求された配列は該配列の対立遺伝子変異体、即ち突然変異によって起こる遺伝子の代替形態をも含む。
【0063】
「タンパク質またはペプチド」という語は、生物活性を有するアミノ酸の分子鎖のことをいう。ポリペプチドという表現は通常200アミノ酸までのアミノ酸配列を指し、より長い鎖は通常タンパク質と称する。本明細書においてポリペプチドという表現はタンパク質をも包含するように意図され、逆にタンパク質という表現はポリペプチドも包含するよう意図されている。タンパク質および/またはポリペプチドはインビボまたはインビトロで例えばグリコシル化およびリン酸化によって修飾されていてもよい。
【0064】
本発明によるプロモーターの制御下で発現する遺伝子とは、その発現が望まれるあらゆるDNAのことをいう。ここで、「外来DNA」とは、通常はTPIプロモーターの制御下では発現しないあらゆるDNAのことである。外来DNAは遺伝子、遺伝子の部分、融合遺伝子、cDNAまたはその他のDNA配列、およびポリペプチドまたはタンパク質またはRNAまたはアンチセンスRNAをコードするDNAを含む。外来DNAはレポーター遺伝子であってもよい。外来DNAは天然の配列でも、遺伝子工学によって作られた配列でも、化学的に合成された配列であっても、その組合せであってもよい。用いられるヌクレオチド配列およびその作成方法は重要ではない。
【0065】
本発明のさらなる主題は、酵母細胞を本発明による発現カセットおよび外来タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む自己複製プラスミドで形質転換し、該酵母細胞を外来タンパク質の発現に好適な条件下で培養し、タンパク質を得ることを特徴とする組換えタンパク質の産生方法である。
【0066】
本発明による発現カセットを酵母細胞に導入し、酵母細胞中で該発現カセットが宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、該細胞を培養してタンパク質を得ることを特徴とする組換えタンパク質の産生方法も本発明の主題である。特に好ましくは、本発明による発現カセットを、本発明による調節配列および任意にシグナル配列を含むエピソームまたは組み込み発現ベクターの構築を可能にするモジュールとして用いる。
【0067】
図面および実施例において示すように、本発明によるプロモーターおよび所望のタンパク質に対する配列およびターミネーターを組合せて用いることにより、特に酵母細胞における所望のタンパク質の発現が導かれる。本発明により提供されるプロモーターがどれほど強力であるかを確認するために、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーターの制御下での遺伝子EGFP(強化緑色蛍光タンパク質(enhanced green fluorescent protein))の発現と、TPIプロモーターの制御下でのEFGP遺伝子の発現とを比較した。この場合、本発明によるTPIプロモーター下での発現は、CMVプロモーターの発現の約50倍であることが見出され、これは本発明によるプロモーターが外来タンパク質の発現に関して増強効果をもたらすことを示す。
【0068】
本発明を図面及び実施例に言及してより詳細に説明する。
【0069】
図面において:
図1は、本発明による発現カセット(R64)の概略図であり、KmTPI最大プロモーターの機能的部分(配列番号1の位置21から1115)、EGFP遺伝子のリーディングフレームおよびKmTPIターミネーターの機能的部分(配列番号1の位置1860から2127)が操作可能に結合している。
【0070】
図2は、本発明による発現カセットR53を示し、KmTPI最大プロモーターの機能的部分(配列番号1の位置21から1115)、B型肝炎ウイルスS−抗原のリーディングフレームおよびKmTPIターミネーターの機能的部分(配列番号1の位置1860から2127)が操作可能に結合している。
【0071】
図3は、本発明による発現カセットR48を示し、KmTPI最大プロモーターの機能的部分(配列番号1の位置21から1115)、B型肝炎ウイルスS−抗原のリーディングフレーム、開始メチオニンを含まないトリオースリン酸イソメラーゼのリーディングフレーム(配列番号1の位置1116から1859)およびKmTPIターミネーターの機能的部分(配列番号1の位置1860から2127)が操作可能に結合している。
【0072】
図4は、本発明による発現カセットR11を示し、KmTPI最大プロモーターの機能的部分(配列番号1の位置21から1112)、トリオースリン酸イソメラーゼのリーディングフレーム(配列番号1の位置1113から1856)、B型肝炎ウイルスS−抗原のリーディングフレーム、およびKmTPIターミネーターの機能的部分(配列番号1の位置1857から2037)が操作可能に結合している。
【0073】
図5は、K.marxianus初期株および、配列番号1の配列とK.marxianusベクターpKDU8を含むプラスミドpKmarTIで形質転換した後の株におけるTPI遺伝子発現の比較を示す。K.marxianus株の培養上清物質の他に、K.lactisおよびS.cerevisiaeの非形質転換株の培養上清物質を等量アプライした。
【0074】
図6は、様々な発現カセットによる発現後のHBs抗原の分泌能の比較を示す。
【0075】
図7は、様々な発現カセットによるHBs抗原の発現の比較を示す。
(発明の態様)
【実施例1】
【0076】
一般的な発現カセットの構築
本発明によるプロモーターを有する発現カセットを提供するために、プライマーP23およびP26を用いてPCRによってDNA断片を増幅する。該断片は、KmTPI遺伝子のプロモーター、コード領域、およびターミネーターを含み、その末端にMluI人工制限酵素認識部位が設けられている。この断片をプラスミドpSL1180のMluI部位にクローニングする。KmTPI遺伝子のコード領域内に制限酵素AclIの制限認識部位(AACGTT)がある。その部位にAclI部位を破壊するがGTTによってコードされるアミノ酸バリンは変化させないサイレントミューテーションをPCRによって導入する(AACGTT→AACGTC)。ヌクレオチド配列AAC ATGがあるため、開始コドンの直前にPCRによってAclI部位を作成することが出来る(AACgttATG)。
【0077】
人工AclI部位はPCRによってTPIコード領域(GTC TAA)の終止コドンの直前にも作成できる(aacGTt TAA)。MluI/AclIプロモーター断片をAclI/MluIターミネーター断片に結合することにより、外来リーディングフレームを挿入するための唯一のAclI部位を有する空の発現カセットが生じる(カセット=pTIMex)。
【0078】
開始コドンの直前または終止コドンの直前に唯一のAclI部位を有するKmTPIカセットは、N−末端またはC−末端にTPIを備えた融合タンパク質として外来タンパク質の発現を可能にする分泌カセットを表し、対応する融合タンパク質の分泌を導く(カセット=pTIMfusNおよびpTIMfusC)。
【0079】
該カセットはMluI部位により公知の方法で対応する組み込みベクターまたは自己複製ベクターに導入することが出来、同様に受容細胞に導入することが出来る。
【実施例2】
【0080】
発現ユニットの作成
発現ユニットの作成は、一般的手段として、配列中に作成すべきAclI切断部位を有さないハイブリッドプライマーを用いて相互にオーバーラップするPCR反応によってKmTPIの調節配列に基いて行うことが出来る。対応する手順及びPCR工程は当業者に周知である。実施例1に記載の系はそれゆえ包括的なものではなく例示的なものに過ぎない。
【実施例3】
【0081】
特定の発現カセット
R64、R53、R48およびR11と称される特定の発現カセットをPCR手法によって作成した。これらのカセットは図1から4の図および制限地図によってより詳細に特徴付けられる。
【0082】
プラスミドR64(図1)
このカセットは、配列番号1のヌクレオチド21から1115のKmTPI最大プロモーター、EGFPリーディングフレームおよび配列番号1のヌクレオチド1860から2127のKmTPIターミネーターを含む(TPIpr−MetEGFP−TPItr)。
【0083】
プラスミドR53(図2)
このカセットは、配列番号1のヌクレオチド21から1115のKmTPI最大プロモーター(Metを含む)、B型肝炎ウイルスS−抗原のリーディングフレームおよび配列番号1のヌクレオチド1860から2127のKmTPIターミネーターを含む(TPIpr−HBS−TPItr)。
【0084】
プラスミドR48(図3)
このカセットは、配列番号1のヌクレオチド21から1115のKmTPI最大プロモーター(Metを含む)、そのC−末端にメチオニンを含まないTPIのリーディングフレームが融合しているB型肝炎ウイルスS−抗原のリーディングフレーム、および配列番号1のヌクレオチド1860から2127のKmTPIターミネーターを含む(TPIpr−HBS−TPI−TPItr)。
【0085】
プラスミドR11(図4)
このカセットは、KmTPI最大プロモーターおよびそのC−末端にメチオニンで始まるB型肝炎ウイルスS−抗原のリーディングフレームが融合しているKmTPIのリーディングフレーム全体を含む。それは、その終止コドン(UAG)で終結する。ここで用いられたKmTPIターミネーターの機能的部分はHBs配列の終止コドンとオーバーラップしており(TAAATTAAATTAGG)、配列番号1の位置1857における終止コドンUAAから始まる。それは180塩基対しか含まない。このカセットを対応するプラスミドのSmaI部位に平滑末端によってクローニングした(TPIpr−TPI−HBS−TPItr)。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、本発明による発現カセット(R64)の概略図であり、KmTPI最大プロモーターの機能的部分(配列番号1の位置21から1115)、EGFP遺伝子のリーディングフレームおよびKmTPIターミネーターの機能的部分(配列番号1の位置1860から2127)が操作可能に結合している。
【図2】図2は、本発明による発現カセットR53を示し、KmTPI最大プロモーターの機能的部分(配列番号1の位置21から1115)、B型肝炎ウイルスS−抗原のリーディングフレームおよびKmTPIターミネーターの機能的部分(配列番号1の位置1860から2127)が操作可能に結合している。
【図3】図3は、本発明による発現カセットR48を示し、KmTPI最大プロモーターの機能的部分(配列番号1の位置21から1115)、B型肝炎ウイルスS−抗原のリーディングフレーム、開始メチオニンを含まないトリオースリン酸イソメラーゼのリーディングフレーム(配列番号1の位置1116から1859)およびKmTPIターミネーターの機能的部分(配列番号1の位置1860から2127)が操作可能に結合している。
【図4】図4は、本発明による発現カセットR11を示し、KmTPI最大プロモーターの機能的部分(配列番号1の位置21から1112)、トリオースリン酸イソメラーゼのリーディングフレーム(配列番号1の位置1113から1856)、B型肝炎ウイルスS−抗原のリーディングフレーム、およびKmTPIターミネーターの機能的部分(配列番号1の位置1857から2037)が操作可能に結合している。
【図5】図5は、K.marxianus初期株および、配列番号1の配列とK.marxianusベクターpKDU8を含むプラスミドpKmarTIで形質転換した後の株におけるTPI遺伝子発現の比較を示す。K.marxianus株の培養上清物質の他に、K.lactisおよびS.cerevisiaeの非形質転換株の培養上清物質を等量アプライした。
【図6】図6は、様々な発現カセットによる発現後のHBs抗原の分泌能の比較を示す。
【図7】図7は、様々な発現カセットによるHBs抗原の発現の比較を示す。
【0001】
(発明の記載)
本発明は、その調節配列を含むトリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子を含むDNA配列、プロモーターとして活性なDNA配列、該配列を含む発現及び分泌系、該DNAで形質転換された宿主細胞、酵母細胞において活性な発現および分泌系のための該配列の使用、およびそのような系によるポリペプチドおよびRNAの生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、外来遺伝子の発現が調節系の制御下で制御されるような発現プラスミドを有する組換え微生物など、遺伝子工学的タンパク質生産のための様々な系が利用可能である。細菌系は増殖させるのが容易であるため頻繁に用いられる。しかしながらそれらは医薬またはワクチンの生産における使用に先立って除去しなければならない発熱性物質を生産するという欠点を有する。さらに細菌ではグリコシル化ポリペプチドを産生することはできない。したがって、真核細胞におけるポリペプチド又はタンパク質の発現のための一連のその他の系も開発された。細胞培養の他にも、酵母、特に広く普及している酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は、そのゲノムが既知であってベクターおよび発現系に入手可能なものもあるという点で、考慮されている。
【0003】
バイオテクノロジー工程に好適な特性を有するために考慮される別の酵母の属は、クルイベロミセス(Kluyveromyces)である。クルイベロミセス・ラクティス(K.lactis)およびクルイベロミセス・マルキシアヌス(K.marxianus)種はGRAS(Generally Recognized As Save)として分類されており、それゆえSaccharomycesと同様に安全に用いられる。さらにK.marxianusは、増殖のために多数の炭素源およびエネルギー源を用いることができ、高度に温度感受性ではない。Kluyveromyces marxianusは、45℃までの温度で増殖でき、それゆえその点で、培養に関しては温度感受性のSaccharomycesの株よりも有用である。急速に増殖するK.marxianus株の細胞は最適条件下で35分ごとに***することが出来る。これらの良好な特性は、タンパク質が有効なレベルで産生される発現系がこの酵母種ではほとんど得られなかったため、そして、クローニングされ、かつ信頼できる試験を経た、強力な発現プロモーターがなかったため、今まで好適に利用することが出来なかったことに注意されたい。
【0004】
さらに、遺伝子工学的方法によるタンパク質およびポリペプチドの産生に関しては、結果産物が細胞中に保持されず、周囲の培地に蓄積されるほうが、より簡単に得ることができるため望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は改善された効果を有し、酵母細胞においてタンパク質およびペプチドの発現を制御することの出来るプロモーターを提供することであった。本発明のさらなる目的は、ポリペプチドおよびタンパク質を発現させることができ、発現産物を細胞から取り出せるようなベクターを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的は、特許請求の範囲において規定される、本発明によって作成されたDNA配列、発現カセットおよびベクター、プラスミドおよび方法によって達成される。
【0007】
本発明の主題はそれゆえ、新規なDNA配列、新規な調節要素、細胞からのタンパク質の排出方法を提供すること、および好適な発現カセット、プラスミドおよび微生物を提供することである。
【0008】
本発明の第1の態様によると、配列番号1の配列を有するDNAまたは好ましくは少なくとも10、好ましくは少なくとも100ヌクレオチドのその部分配列(subsequence)が提供される。
【0009】
配列番号1のDNA配列は、酵素トリオースリン酸イソメラーゼの調節領域およびオープンリーディングフレームをコードする核酸配列である。プロモーターとして活性なこの遺伝子の調節領域は、ヌクレオチド1から1112の領域に見られる。
【0010】
酵素トリオースリン酸イソメラーゼ(以下、TPIとも称する)は、細胞におけるエネルギー産生のために起こる、グルコースおよびフルクトースの分解にかかわる解糖酵素であり、それゆえ広範に存在している。トリオースリン酸イソメラーゼは、フルクトース−1,6−ビスリン酸からグリセリンアルデヒド−3−リン酸への開裂において起こるジヒドロキシアセトンリン酸の異性化にも関与しており、多数の工程を経てエネルギーを産生しながら最終的にピルビン酸へと変換されるグリセリンアルデヒド−3−リン酸を形成する。該酵素は複合脂質の代謝にも関与している。それは、およそ250アミノ酸からなるサブユニットのホモダイマーである。
【0011】
酵母種Kluyveromyces marxianus var. marxianus由来の酵素トリオースリン酸イソメラーゼ(EC5.3.1.1)のアミノ酸およびヌクレオチド配列は本発明者らによって解明され、後者を配列番号1とする。その他の生物における酵素TPIの配列は既知である;S.cerevisiaeのTPIの配列は、第YDR050CCDS号によって解明、同定されている。配列比較において様々な微生物におけるTPIコードDNA配列の相同性はオープンリーディングフレームについては高いが調節配列については低いということが見出された。
【0012】
特定の生物K.marxianusにおけるこの酵素の発現の調査において、TPIの発現を制御するプロモーターが非常に強力なプロモーターであって、外来タンパク質との機能的連結においてもその他の酵母種及び酵母株の細胞においても有効であることが見出された。
【0013】
本発明のさらなる態様はそれゆえ、配列番号1のヌクレオチド1から1112またはその部分を有し、プロモーターとして活性な新規なプロモーターの提供に関する。本発明によるプロモーターは、外来遺伝子との機能的関係において公知の方法にて使用することができる。
【0014】
配列番号1のヌクレオチド1から1112を有するDNA配列を以後プロモーター配列とも称する。
【0015】
本発明によって、酵母において活性であり、高度に可変性の発現系をもたらすプロモーターを提供する。それはとりわけKluyveromycesおよびその他の酵母種に好適であり、例えばSaccharomyces cerevisiae およびKluyveromyces lactisなどの酵母種に用いることが出来る。実施例部分において記載される試験は、外来タンパク質の高度に有効な発現が本発明によるプロモーターの制御下で起こることを示す。
【0016】
本発明において提供される新規な構成的プロモーターは、酵母細胞における組換えタンパク質の発現に好適である。本発明書において用いるプロモーターという語はそこから遺伝子の転写が制御されるDNA配列を指す。「プロモーターとして活性な部分」という語は、プロモーターの部分配列であってオープンリーディングフレームと連結してリーディングフレームによってコードされるポリペプチドの発現を導くものを指す。
【0017】
K.marxianusにおいてTPIの発現を調節する、以後KmTPI−プロモーターとも称するプロモーターは7つの可能性のある転写開始部位を有することが確認された。これらを配列番号1において転写開始#1から#7として示す。様々な微生物が転写開始点として発現のために様々な配列単位を使用していることも見出された。プロモーターの効率は、とりわけどの転写開始点が発現に関して利用可能なものであるかに依存しており、それゆえプロモーターの強さは、部分配列部分の選択によって、発現の起こるべき微生物についてそれぞれ正確に調整され得る。
【0018】
例えば、Kluyveromyces marxianusにおけるKmTPI−プロモーターは非常に強い作用を有するため、たった1つの転写開始部位を有するプロモーターDNAの部分領域でさえポリペプチドの発現を起こすことが出来る。例えばK.lactisなどのその他のKluyveromyces種において、少なくとも3つ、好ましくは少なくとも5つの転写開始点が配列に含まれているのが好適である。それゆえK.lactisなどのKluyveromyces種における発現のために用いられるプロモーターは、例えば配列番号1のヌクレオチド352から1112を少なくとも有する配列などの、好ましくは少なくとも5つの転写開始部位を含む配列である。
【0019】
本発明により提供されるKmTPI−プロモーターは、Saccharomycesにおいても機能性である。しかし、充分な発現を達成するには、その属の微生物において、配列番号1のヌクレオチド1から1112を有するKmTPI−最大プロモーターを用いることが推奨される。
【0020】
記載されたプロモーター活性を有する核酸配列は、修飾、置換、欠失または挿入、あるいはその組合せによって生じたような配列も含む。それに加えてプロモーター配列はさらにエンハンサー、アクチベーターおよび/またはリプレッサー機能を有する調節上流配列を備えていてもよい。これら配列はプロモーター活性を有する配列に含まれ、それはタンパク質の発現のためのプロモーターとして作用する、請求項に記載された配列の一部またはその誘導体を含む。
【0021】
さらに、本発明によると例えばプロモーター配列などの請求項に記載されたヌクレオチド配列または請求項に記載されたその部分と、少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%、そして特に少なくとも95%の相同性を有する配列も、それぞれの配列が対応する生物機能を有する限り、本発明に含まれる。本発明の目的のため、相同性は通常のアルゴリズムを用いて通常の方法で決定される。本発明の配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列も本発明の一部である。
【0022】
本発明によるとTPIに対して相同的なポリペプチドをコードする核酸、特に少なくとも80%の相同性を有するポリペプチドをコードする核酸もさらに本発明に含まれる。本明細書の記載において「相同的なポリペプチド」という表現は、請求項に記載されたポリペプチドと実質的に同じアミノ酸配列を有し、実質的に同じ生物活性を有するポリペプチドを含む。ホモログは、それがより多い、または少ない、あるいは異なるアミノ酸を有するために、元のポリペプチドと区別できるが、機能の点では保持されたものである。当業者であれば好適に改変されたポリペプチドの製造方法を知っているであろう。
【0023】
本発明によるプロモーターの調製は、天然の配列が単離されているか(これが好適である)、該配列が遺伝子工学によって生産されているかまたは化学的に合成されている場合は公知の方法で行うことが出来る。産生または合成工程は当業者に周知であるので本明細書においてより詳細に記載する必要はない。唯一必ず考慮しなければならないことは、配列番号1の1112ヌクレオチドと同じかそれを含むヌクレオチドを有するK.marxianus由来のトリオースリン酸イソメラーゼのプロモーターまたはその活性部分が使用されていることである。
【0024】
本発明のプロモーターの使用を容易にするために、上記のプロモーター配列またはプロモーターとして活性なその部分、ターミネーター、および任意にエンハンサーなどの調節配列、および挿入クローニング部位を有する発現系または発現カセットをさらに提供する。発現させるべき所望の遺伝子または発現させるべき外来タンパク質に対するDNAを挿入クローニング部位に挿入して、それを本発明によるプロモーターの制御下で転写させることが出来る。
【0025】
その最も単純な形態において、本発明による発現カセットは、プロモーター配列またはプロモーターとして活性なその部分、発現させるべきタンパク質に対するポリヌクレオチドがクローニングされ得る挿入クローニング部位、およびターミネーターとして有効なヌクレオチド配列を含む。挿入クローニング部位として好適な配列は当業者に周知であり、本明細書においてさらに詳細に記載する必要はない。例えば、TPIの発現においてターミネーターとして作用する配列をターミネーターとして用いることが出来る。後者の配列は配列番号1のヌクレオチド1860から2163またはターミネーターとして活性なその部分を含む。Kluyveromyces marxianus由来のエンドポリガラクツロナーゼ遺伝子のターミネーター領域を用いた場合も良好な結果が達成される。
【0026】
本発明による発現カセットは様々な方法で用いることができる。挿入クローニング部位とは、その位置で配列が開裂し、所望のタンパク質またはペプチドに対するポリヌクレオチドがそこに結合され得る切断位置である。もっとも単純な形態においては、タンパク質は発現工程において細胞内で産生され、細胞から排出されない。それは公知の方法によって細胞を溶解した後に得られる。この態様は細胞外では不安定な小さいペプチドおよびタンパク質、そして通常細胞内に位置するタンパク質にとっては好適である。
【0027】
本発明の発現カセットは細胞、特に酵母細胞におけるDNA配列の発現のために使用できる。本発明の発現カセットは、例えばS.cerevisiae、K.lactis、K.marxianusその他の、Saccharomyces属およびKluyveromyces属の酵母細胞における発現に特に好適である。
【0028】
本発明による発現カセットは、自己複製プラスミドへの導入にも組み込み(integrative)ベクターによる酵母染色体への導入にも好適である。
【0029】
しかしペプチドまたはタンパク質の発現のために所望のポリヌクレオチドが結合した発現カセットを大腸菌プラスミド内で増幅し、大腸菌プラスミドを得て、発現カセットの末端に切断部位が備えられていることにより、好適な制限エンドヌクレアーゼで発現カセットを切りだし、そして発現カセットを酵母ベクターに結合させるのが好ましい。ベクターは通常公知の方法で形質転換細胞をうまく選抜することが出来るように選抜マーカーを含む。
【0030】
プラスミドは大腸菌内で増殖させることが出来、そしてKluyveromyces marxianusまたはその他のKluyveromyces株またはその他の酵母株において用いることができる。用いる形質転換系は例えばKluyveromyces drosophilarum−プラスミドpKD1に基づく公知のプラスミドとすればよい。このプラスミドの子孫はKluyveromyces marxianusにおける使用に好適であり、本発明による発現系を用いる場合、対応する宿主において外来タンパク質の効率的な発現が達成される。
【0031】
別の態様において、発現させるべきポリヌクレオチドを含む発現カセットを、上記の様に調製した本発明によるプラスミドから切り出して細胞に取りこまれるように組み込みカセットとして直鎖状または環状DNAの形態で酵母細胞に直接接触させてもよい。該核酸の一部が宿主細胞と相同的であれば、相同的組換えによって宿主細胞への安定な組み込みが達成される。例えばTPI遺伝子またはその調節配列と酵母ゲノムの間の相同性のような、発現カセットの部分の相同性によって、処理された細胞の一部においてはDNAが対応する配列との交換により対応する染色体へと組み込まれる。
【0032】
本発明による発現カセットは染色体に安定に組み込まれ、最適条件下で細胞を培養した場合、所望のタンパク質が良好な収率で得られる。系のコピー数は発現させるべきタンパク質またはペプチドの性質によって定めればよい。多コピー数が望ましい場合は、交換現象が多数起こるように発現カセットの末端に公知の方法で例えばrDNAなどの染色体セットにおいて多コピー数存在する遺伝子の配列を連結させるとよい。
【0033】
さらにマーカー遺伝子を該配列に公知の方法で導入してもよく、それによって形質転換が成功した細胞を選抜することが出来る。この目的に好適な方法およびマーカーは当業者に周知であって本明細書においてさらに詳細に記載する必要はない。
【0034】
本発明による発現系は、様々な非相同および相同タンパク質の発現に好適である。用いる生物において存在するタンパク質の発現を増強させたい場合、相同タンパク質の発現が好適である。というのは、本発明によるプロモーターは産生されるタンパク質の量を非常に増加させることができるからである。好ましくは該系は、例えば成長ホルモンおよび成長因子などのホルモン、例えばインターフェロンおよびインターロイキンなどの免疫調節因子、例えばエンドポリガラクツロナーゼなどの酵素、例えばEGFPなどのレポーター遺伝子、または例えばウイルス表面抗原、とりわけB型肝炎ウイルスのS−抗原またはポリオーマウイルス由来のウイルス−タンパク質1などの抗原の発現に用いるとよい。後者のタンパク質はワクチンとして特に有用に用いられる。
【0035】
本発明による発現カセットはとりわけ株KluyveromycesおよびSaccharomycesの酵母に好適であり、好ましくは種Kluyveromyces marxianus var. marxianusの酵母株に用いられる。
【0036】
TPIは細胞内作用酵素であり、通常細胞内で起こる代謝工程を触媒する。TPIはそれゆえ細胞の周囲の培地には通常予測されず、見られもしない。それゆえ細胞内作用酵素においては予測されないように、シグナル配列は見られない。
【0037】
驚くべきことに、今回特定の微生物、即ちKluyveromyces marxianusにおいてTPIが細胞上清に検出された。それゆえシグナル配列についてTPIをコードするオープンリーディングフレームにおいて調査を行ったが、典型的な配列を見出すことは出来なかった。それゆえ、以下KmTPIとも称するこの酵素の排出は、その他のゴルジ−依存機構に基づくと考えられる。本発明は細胞から排出される酵素KmTPIの特性を利用するものである。
【0038】
通常、ペプチドおよびタンパク質はシグナル配列を有していれば細胞から排出される。翻訳時にシグナル配列がセグメントをつくりそれによって、排出されるタンパク質の膜接触および通過が可能となる。しかし明らかにこの機構はKmTPIの場合には起こっておらず、K.marxianus由来の特定のトリオースリン酸イソメラーゼは細胞膜を貫通する性質を有する。さらに融合によって結合したペプチドまたはタンパク質も、トリオースリン酸イソメラーゼと一緒に細胞外へ運ばれることが確認された。
【0039】
本発明の発明者らはKmTPIはK.marxianusにおいて発現後に細胞から排出されるだけでなく、KmTPI遺伝子を発現させることが出来る自己複製プラスミドを有するその他の酵母株の形質転換の後にはTPIの過剰発現および培地への大量排出という状況も起こることを確認する一方、TPIとの融合タンパク質を形成することによって、外来タンパク質を転写及び翻訳後に融合タンパク質として周囲の細胞培地に排出させることが出来ることを確認した。
【0040】
それゆえ本発明のさらなる主題は、トリオースリン酸イソメラーゼとの融合産物の形態において外来タンパク質を排出させる方法であり、ここで発現は、配列、少なくとも調節配列およびトリオースリン酸イソメラーゼおよび所望のペプチドまたはタンパク質をコードする融合DNAによって起こり、形成された融合タンパク質を単離し、外来タンパク質を分離すればよい。
【0041】
このようにして細胞上清において融合産物を得ることが出来る。融合産物はハイブリッド分子、即ち相同および非相同成分を含むものであっても、2またはそれ以上の非相同部分を含む融合タンパク質であってもよい。融合タンパク質においてTPI部分は外来タンパク質のN−末端側に存在してもC−末端側に存在してもよい。外来タンパク質のN−末端側にTPI部分があるほうが細胞から排出されるためには好適である。融合産物は公知の方法で分離することが出来る。
【0042】
融合産物の分離を容易にするために、タンパク質をコードする2つのDNA配列の間に公知の方法でスペーサーをコードするDNA配列を導入するのが好ましい。2つの分子部分の間のスペーサーは簡単な分離を可能にするために充分に大きくするべきであり、特に好適な態様においては酵素の切断部位を付与するものとすればよい。
【0043】
驚くべきことに、通常のシグナル配列を用いても上清に見られないかあるいは見られるとしてもわずかである疎水性ペプチドまたはタンパク質でさえも、トリオースリン酸イソメラーゼと結合させることにより、細胞から排出されるということが見出された。これは通常の方法では細胞から排出され得ないB型肝炎表面抗原(Hbs)について示された。
【0044】
それゆえTPIとの融合によるタンパク質の排出は、通常はその疎水性により、またはシグナルペプチドの欠如により細胞から排出されないタンパク質に特に好適である。
【0045】
実施例において発現試験を示すが、これは本発明による組合せを用いた場合高い収率が得られるものである。
【0046】
それゆえポリペプチドまたはタンパク質の発現後に細胞から排出するのが望ましい場合はKmTPIと所望の外来タンパク質との融合産物を産生することによって行うとよい。この目的で、例えばTPIのN−末端またはC−末端との融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、上記の発現カセットの挿入クローニング部位に結合させるとよい。好ましくは、リンカーをコードするDNA配列を該2つのタンパク質に対する配列の間に設けるとよく、そうすることによってその後融合産物の切断が容易となる。外来タンパク質は発現後にKmTPIの「排出能力」によってKmTPIとともに融合産物として細胞から排出され、細胞培地からの分離後にKmTPIから切断することによって簡単に得ることが出来る。
【0047】
発現タンパク質の排出のために公知のシグナル配列を用いることが出来ることを理解すべきである。シグナル配列は公知の方法でプロモーターと発現させるべき外来遺伝子の間に結合させるとよい。好ましくは用いるシグナル配列は用いる生物に対して相同なものである。トリオースリン酸イソメラーゼのプロモーターまたはプロモーターとして作動可能なその部分と、Kluyveromyces marxianus由来のエンドポリガラクツロナーゼ遺伝子のシグナル配列との組合せによって、特に良好な結果が達成される。
【0048】
シグナル配列を設けることによってTPIの排出作用を強化すると、さらに発現および分泌の向上が達成される。それゆえ本発明により、先の段落に記載したようにKmTPIと所望の外来タンパク質との融合産物をコードするDNA配列と既知のシグナル配列を組合せるという上記の態様を利用することも出来る。この組合せも本発明の一部をなす。
【0049】
それゆえ本発明のさらなる態様において、上記のプロモーター配列またはプロモーターとして活性なその部分、ターミネーターとして活性な配列、および該2つの配列の間にシグナル配列を、操作可能な結合様式において有している、発現および分泌系が提供される。好ましくはシグナル配列として既知の配列を用いる。これにはK.marxianus由来の酵素エンドポリガラクツロナーゼ(EPG)のシグナル配列が含まれる。それゆえ好ましくはK.marxianus由来の酵素EPGのシグナル配列を用いる。
【0050】
上記の両方の態様において培養は公知の方法によって行われ、タンパク質が連続工程で培地に連続的に運ばれ、発酵液から連続的に得られる方法でもよいし、細胞が非連続工程で培養、収集され、次いでタンパク質が発酵液から得られる方法でもよい。
【0051】
本発明による系は非常に可変的なものである。したがって例えば本発明による上記プロモーター配列またはプロモーターとして活性なその部分を、さらなる調節配列を提供するその他の核酸配列および非相同ヌクレオチド配列と組合せてもよい。Kluyveromyces marxianusに対して相同な系であって発現すべきタンパク質に対するポリヌクレオチドが導入される系を提供するために、本発明により定義されたプロモーター配列またはプロモーターとして活性なその部分を、例えば上記のようなターミネーター配列と組合せるとよく、またさらに、本発明によるプロモーター、シグナル配列およびターミネーターを含む系を、発現させるべき所望のタンパク質をコードする遺伝子と組合せて、培地中に運び出されるタンパク質を産生してもよい。最後に、本発明によるプロモーター配列またはプロモーターとして活性なその部分を、ターミネーター配列およびKmTPIの核酸配列および所望の外来遺伝子と組合せてもよい。
【0052】
本発明のさらなる主題は、本発明による発現系を含むプラスミドであり、特にプロモーター、TPI遺伝子およびK.marxianus由来のTPIのターミネーターを含むプラスミドである。プラスミドの例は、R64、R53、R48およびR11であり、図1から4を参照してより詳細に説明する。これらプラスミドは組換えプラスミドであり、該形態において発現カセットの増幅および酵母中に組み込まれた(bound-in)DNAによってコードされるタンパク質の産生のために用いることが出来る。
【0053】
配列番号1の配列を含むプラスミドpD1は宿主細胞の大腸菌DH5α中で、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen(DSMZ)に寄託番号DSM13973として2001年1月4日に寄託した。
【0054】
Kluyveromyces marxianus細胞は多種類のC−源で増殖でき、その他の栄養素についても高度に要求性ではなく、さらに温度非感受性であるため、非常に効率的な系が提供される。本発明によって作られる本発明の調節配列によって外来タンパク質の信頼度の高い発現が達成される。
【0055】
本発明によるとその普通でない生理的性質によって宿主として非常に有望な酵母種Kluyveromyces marxianusの使用を可能とする系が提供される。
【0056】
本発明による系は、RNA、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質およびグリコシル化タンパク質を含むハイブリッド分子の発現に好適である。
【0057】
本明細書において用いられる用語の定義を以下に記載する。
【0058】
「発現ベクター」という語は、調節配列に操作可能に結合した、目的のタンパク質またはペプチドに対する配列をコードするセグメントを含む直鎖状であっても環状であってもよいDNA分子を指すのに用いられる。該調節配列は少なくともプロモーターおよびターミネーター配列を含む。発現ベクターはさらに選抜マーカーおよびさらなる調節要素を含んでいてもよく、宿主細胞へ感染および宿主細胞内で増殖できるものでなくてはならない。発現ベクターの複製は自律的に起こるものでも、宿主ゲノムへの組み込みによって起こるものでもよい。
【0059】
「DNA」または「ポリヌクレオチド」という表現はあらゆる長さのものでもよくいかなる修飾を有していてもよい一本鎖または二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチドのポリマー形態を含む。
【0060】
本明細書において「分泌ベクター」は、ポリペプチドの発現に加えて、融合タンパク質の形態で、あるいはシグナル配列により、ポリペプチドを排出させる発現ベクターのことをいう。
【0061】
「操作可能に結合」という表現は個々のセグメントが意図された目的を果たすように並べられていること、即ち、それらが転写を開始および終結させることができ、発現を促進することができ、あるいは発現および分泌を可能にすることができることを意味する。
【0062】
請求された配列はさらに該分子の生物活性を妨害しないような短い配列を含んでいてもよい。さらに請求された配列は該配列の対立遺伝子変異体、即ち突然変異によって起こる遺伝子の代替形態をも含む。
【0063】
「タンパク質またはペプチド」という語は、生物活性を有するアミノ酸の分子鎖のことをいう。ポリペプチドという表現は通常200アミノ酸までのアミノ酸配列を指し、より長い鎖は通常タンパク質と称する。本明細書においてポリペプチドという表現はタンパク質をも包含するように意図され、逆にタンパク質という表現はポリペプチドも包含するよう意図されている。タンパク質および/またはポリペプチドはインビボまたはインビトロで例えばグリコシル化およびリン酸化によって修飾されていてもよい。
【0064】
本発明によるプロモーターの制御下で発現する遺伝子とは、その発現が望まれるあらゆるDNAのことをいう。ここで、「外来DNA」とは、通常はTPIプロモーターの制御下では発現しないあらゆるDNAのことである。外来DNAは遺伝子、遺伝子の部分、融合遺伝子、cDNAまたはその他のDNA配列、およびポリペプチドまたはタンパク質またはRNAまたはアンチセンスRNAをコードするDNAを含む。外来DNAはレポーター遺伝子であってもよい。外来DNAは天然の配列でも、遺伝子工学によって作られた配列でも、化学的に合成された配列であっても、その組合せであってもよい。用いられるヌクレオチド配列およびその作成方法は重要ではない。
【0065】
本発明のさらなる主題は、酵母細胞を本発明による発現カセットおよび外来タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む自己複製プラスミドで形質転換し、該酵母細胞を外来タンパク質の発現に好適な条件下で培養し、タンパク質を得ることを特徴とする組換えタンパク質の産生方法である。
【0066】
本発明による発現カセットを酵母細胞に導入し、酵母細胞中で該発現カセットが宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、該細胞を培養してタンパク質を得ることを特徴とする組換えタンパク質の産生方法も本発明の主題である。特に好ましくは、本発明による発現カセットを、本発明による調節配列および任意にシグナル配列を含むエピソームまたは組み込み発現ベクターの構築を可能にするモジュールとして用いる。
【0067】
図面および実施例において示すように、本発明によるプロモーターおよび所望のタンパク質に対する配列およびターミネーターを組合せて用いることにより、特に酵母細胞における所望のタンパク質の発現が導かれる。本発明により提供されるプロモーターがどれほど強力であるかを確認するために、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーターの制御下での遺伝子EGFP(強化緑色蛍光タンパク質(enhanced green fluorescent protein))の発現と、TPIプロモーターの制御下でのEFGP遺伝子の発現とを比較した。この場合、本発明によるTPIプロモーター下での発現は、CMVプロモーターの発現の約50倍であることが見出され、これは本発明によるプロモーターが外来タンパク質の発現に関して増強効果をもたらすことを示す。
【0068】
本発明を図面及び実施例に言及してより詳細に説明する。
【0069】
図面において:
図1は、本発明による発現カセット(R64)の概略図であり、KmTPI最大プロモーターの機能的部分(配列番号1の位置21から1115)、EGFP遺伝子のリーディングフレームおよびKmTPIターミネーターの機能的部分(配列番号1の位置1860から2127)が操作可能に結合している。
【0070】
図2は、本発明による発現カセットR53を示し、KmTPI最大プロモーターの機能的部分(配列番号1の位置21から1115)、B型肝炎ウイルスS−抗原のリーディングフレームおよびKmTPIターミネーターの機能的部分(配列番号1の位置1860から2127)が操作可能に結合している。
【0071】
図3は、本発明による発現カセットR48を示し、KmTPI最大プロモーターの機能的部分(配列番号1の位置21から1115)、B型肝炎ウイルスS−抗原のリーディングフレーム、開始メチオニンを含まないトリオースリン酸イソメラーゼのリーディングフレーム(配列番号1の位置1116から1859)およびKmTPIターミネーターの機能的部分(配列番号1の位置1860から2127)が操作可能に結合している。
【0072】
図4は、本発明による発現カセットR11を示し、KmTPI最大プロモーターの機能的部分(配列番号1の位置21から1112)、トリオースリン酸イソメラーゼのリーディングフレーム(配列番号1の位置1113から1856)、B型肝炎ウイルスS−抗原のリーディングフレーム、およびKmTPIターミネーターの機能的部分(配列番号1の位置1857から2037)が操作可能に結合している。
【0073】
図5は、K.marxianus初期株および、配列番号1の配列とK.marxianusベクターpKDU8を含むプラスミドpKmarTIで形質転換した後の株におけるTPI遺伝子発現の比較を示す。K.marxianus株の培養上清物質の他に、K.lactisおよびS.cerevisiaeの非形質転換株の培養上清物質を等量アプライした。
【0074】
図6は、様々な発現カセットによる発現後のHBs抗原の分泌能の比較を示す。
【0075】
図7は、様々な発現カセットによるHBs抗原の発現の比較を示す。
(発明の態様)
【実施例1】
【0076】
一般的な発現カセットの構築
本発明によるプロモーターを有する発現カセットを提供するために、プライマーP23およびP26を用いてPCRによってDNA断片を増幅する。該断片は、KmTPI遺伝子のプロモーター、コード領域、およびターミネーターを含み、その末端にMluI人工制限酵素認識部位が設けられている。この断片をプラスミドpSL1180のMluI部位にクローニングする。KmTPI遺伝子のコード領域内に制限酵素AclIの制限認識部位(AACGTT)がある。その部位にAclI部位を破壊するがGTTによってコードされるアミノ酸バリンは変化させないサイレントミューテーションをPCRによって導入する(AACGTT→AACGTC)。ヌクレオチド配列AAC ATGがあるため、開始コドンの直前にPCRによってAclI部位を作成することが出来る(AACgttATG)。
【0077】
人工AclI部位はPCRによってTPIコード領域(GTC TAA)の終止コドンの直前にも作成できる(aacGTt TAA)。MluI/AclIプロモーター断片をAclI/MluIターミネーター断片に結合することにより、外来リーディングフレームを挿入するための唯一のAclI部位を有する空の発現カセットが生じる(カセット=pTIMex)。
【0078】
開始コドンの直前または終止コドンの直前に唯一のAclI部位を有するKmTPIカセットは、N−末端またはC−末端にTPIを備えた融合タンパク質として外来タンパク質の発現を可能にする分泌カセットを表し、対応する融合タンパク質の分泌を導く(カセット=pTIMfusNおよびpTIMfusC)。
【0079】
該カセットはMluI部位により公知の方法で対応する組み込みベクターまたは自己複製ベクターに導入することが出来、同様に受容細胞に導入することが出来る。
【実施例2】
【0080】
発現ユニットの作成
発現ユニットの作成は、一般的手段として、配列中に作成すべきAclI切断部位を有さないハイブリッドプライマーを用いて相互にオーバーラップするPCR反応によってKmTPIの調節配列に基いて行うことが出来る。対応する手順及びPCR工程は当業者に周知である。実施例1に記載の系はそれゆえ包括的なものではなく例示的なものに過ぎない。
【実施例3】
【0081】
特定の発現カセット
R64、R53、R48およびR11と称される特定の発現カセットをPCR手法によって作成した。これらのカセットは図1から4の図および制限地図によってより詳細に特徴付けられる。
【0082】
プラスミドR64(図1)
このカセットは、配列番号1のヌクレオチド21から1115のKmTPI最大プロモーター、EGFPリーディングフレームおよび配列番号1のヌクレオチド1860から2127のKmTPIターミネーターを含む(TPIpr−MetEGFP−TPItr)。
【0083】
プラスミドR53(図2)
このカセットは、配列番号1のヌクレオチド21から1115のKmTPI最大プロモーター(Metを含む)、B型肝炎ウイルスS−抗原のリーディングフレームおよび配列番号1のヌクレオチド1860から2127のKmTPIターミネーターを含む(TPIpr−HBS−TPItr)。
【0084】
プラスミドR48(図3)
このカセットは、配列番号1のヌクレオチド21から1115のKmTPI最大プロモーター(Metを含む)、そのC−末端にメチオニンを含まないTPIのリーディングフレームが融合しているB型肝炎ウイルスS−抗原のリーディングフレーム、および配列番号1のヌクレオチド1860から2127のKmTPIターミネーターを含む(TPIpr−HBS−TPI−TPItr)。
【0085】
プラスミドR11(図4)
このカセットは、KmTPI最大プロモーターおよびそのC−末端にメチオニンで始まるB型肝炎ウイルスS−抗原のリーディングフレームが融合しているKmTPIのリーディングフレーム全体を含む。それは、その終止コドン(UAG)で終結する。ここで用いられたKmTPIターミネーターの機能的部分はHBs配列の終止コドンとオーバーラップしており(TAAATTAAATTAGG)、配列番号1の位置1857における終止コドンUAAから始まる。それは180塩基対しか含まない。このカセットを対応するプラスミドのSmaI部位に平滑末端によってクローニングした(TPIpr−TPI−HBS−TPItr)。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、本発明による発現カセット(R64)の概略図であり、KmTPI最大プロモーターの機能的部分(配列番号1の位置21から1115)、EGFP遺伝子のリーディングフレームおよびKmTPIターミネーターの機能的部分(配列番号1の位置1860から2127)が操作可能に結合している。
【図2】図2は、本発明による発現カセットR53を示し、KmTPI最大プロモーターの機能的部分(配列番号1の位置21から1115)、B型肝炎ウイルスS−抗原のリーディングフレームおよびKmTPIターミネーターの機能的部分(配列番号1の位置1860から2127)が操作可能に結合している。
【図3】図3は、本発明による発現カセットR48を示し、KmTPI最大プロモーターの機能的部分(配列番号1の位置21から1115)、B型肝炎ウイルスS−抗原のリーディングフレーム、開始メチオニンを含まないトリオースリン酸イソメラーゼのリーディングフレーム(配列番号1の位置1116から1859)およびKmTPIターミネーターの機能的部分(配列番号1の位置1860から2127)が操作可能に結合している。
【図4】図4は、本発明による発現カセットR11を示し、KmTPI最大プロモーターの機能的部分(配列番号1の位置21から1112)、トリオースリン酸イソメラーゼのリーディングフレーム(配列番号1の位置1113から1856)、B型肝炎ウイルスS−抗原のリーディングフレーム、およびKmTPIターミネーターの機能的部分(配列番号1の位置1857から2037)が操作可能に結合している。
【図5】図5は、K.marxianus初期株および、配列番号1の配列とK.marxianusベクターpKDU8を含むプラスミドpKmarTIで形質転換した後の株におけるTPI遺伝子発現の比較を示す。K.marxianus株の培養上清物質の他に、K.lactisおよびS.cerevisiaeの非形質転換株の培養上清物質を等量アプライした。
【図6】図6は、様々な発現カセットによる発現後のHBs抗原の分泌能の比較を示す。
【図7】図7は、様々な発現カセットによるHBs抗原の発現の比較を示す。
Claims (32)
- 配列番号1のヌクレオチド1から2163またはその部分配列を含むDNA。
- 配列番号1のヌクレオチド1から1112またはプロモーターとして活性なその部分配列を含むDNA。
- 少なくとも配列番号1のヌクレオチド352から1112を含む請求項2に記載のプロモーター配列。
- 外来遺伝子の転写の制御のための調節領域として使用するための、請求項2に記載のプロモーター配列またはプロモーターとして活性なその部分。
- 発現させるべきタンパク質に対するDNA配列と操作可能に結合した、請求項1から4のいずれか1項に記載のプロモーター配列またはプロモーターとして作動可能なその部分。
- クルイベロミセス・マルキシアヌス由来のEPG遺伝子のシグナル配列と操作可能に結合した、請求項2に記載のプロモーター配列またはその誘導体。
- クルイベロミセス・マルキシアヌス由来の酵素トリオースリン酸イソメラーゼの調節配列およびオープンリーディングフレームを含む配列番号1のDNA。
- 配列番号1のヌクレオチド1860から2163またはターミネーターとして活性なその部分を含むDNA。
- 請求項2から6のいずれか1項に記載のプロモーター配列、挿入クローニング部位、および配列番号1のヌクレオチド1860から2163またはターミネーターとして活性なその部分を、操作可能に結合して含む酵母発現カセット。
- 請求項2から6のいずれか1項に記載のプロモーター配列またはプロモーターとして活性なその部分、シグナル配列、挿入クローニング部位、および請求項8に記載のターミネーター配列を、操作可能に結合して含む酵母発現および分泌カセット。
- 寄託番号DSM13973として寄託された配列番号1のDNA配列を含むプラスミドpD1。
- 請求項2から6のいずれか1項に記載のプロモーター、外来タンパク質をコードするポリヌクレオチド、およびターミネーター配列を、操作可能に結合して含む発現ベクター。
- さらにプロモーターとポリヌクレオチドとの間にシグナル配列を含む、請求項12に記載の発現ベクター。
- クルイベロミセス・マルキシアヌスのEPG遺伝子のシグナル配列を、シグナル配列として含むことを特徴とする、請求項13に記載の発現ベクター。
- ポリヌクレオチドが、成長ホルモン、成長因子、インターフェロンまたは抗原タンパク質あるいは抗原ペプチドをコードすることを特徴とする、請求項12から14のいずれか1項に記載の発現ベクター。
- ポリヌクレオチドがB型肝炎表面抗原をコードすることを特徴とする、請求項15に記載の発現ベクター。
- ベクターが組み込みベクターまたはエピソームベクターであることを特徴とする、請求項12から16のいずれか1項に記載の発現ベクター。
- ベクターが酵母内で複製可能なプラスミドであることを特徴とする、請求項12から16のいずれか1項に記載の発現ベクター。
- 請求項2から6のいずれか1項に記載のプロモーター配列、外来遺伝子の3’側または5’側に隣接したKmTPIをコードするDNA,および請求項8に記載のターミネーター配列を、操作可能に結合して含む発現および分泌ベクター。
- KmTPI−DNAと外来遺伝子との間にスペーサーをコードするDNA配列を含むことを特徴とする、請求項19に記載の発現および分泌ベクター。
- 請求項11に記載のプラスミドまたは請求項12から20のいずれか1項に記載の発現ベクターによって形質転換された宿主細胞。
- 種クルイベロミセス・マルキシアヌスの細胞であることを特徴とする、請求項17に記載の宿主細胞。
- 外来タンパク質または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む請求項12から20のいずれか1項に記載の発現ベクターを含むプラスミドで酵母細胞を形質転換し、該酵母細胞を外来または融合タンパク質の発現に好適な条件下で培養してタンパク質を得ることを特徴とする、組換えタンパク質の産生方法。
- 請求項12から20のいずれか1項に記載の発現ベクターで酵母細胞を形質転換し、ゲノム中に該発現ベクターが組み込まれた細胞を選抜し、該形質転換細胞を培養してタンパク質を得ることを特徴とする、組換えタンパク質の産生方法。
- 酵母細胞を請求項19または20の分泌ベクターで形質転換し、発現の結果得られる融合産物を上清物質から得て、公知の方法で外来タンパク質からTPIを分離する、組換えタンパク質の産生方法。
- TPIのプロモーターおよびターミネーターを分泌ベクター中で調節配列として用いることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
- 請求項2から6のいずれか1項に記載の配列をプロモーターとして用い、請求項8に記載の配列をターミネーターとして用いることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
- 少なくとも調節配列およびトリオースリン酸イソメラーゼおよび所望のペプチドまたはタンパク質をコードする融合DNAである配列を発現させ、形成された融合タンパク質を単離し、外来タンパク質を分離する、トリオースリン酸イソメラーゼとの融合産物の形態で外来タンパク質を排出する方法。
- TPIの排出作用がシグナル配列との組合せによって増強されることを特徴とする請求項28に記載の方法。
- 酵母細胞における相同または非相同ポリペプチドの発現のための、配列番号1のヌクレオチド1から1112またはプロモーターとしてその部分を含むDNA配列の使用。
- 発現後に細胞から排出されるTPIとポリペプチドとの融合産物の産生のための、調節配列と操作可能に結合し、外来遺伝子と組合された配列番号1のKmTPI−コードDNA配列の使用。
- ポリペプチドの発現および細胞からのその排出のための、シグナル配列と組合されたポリペプチドの発現のための調節配列としての、請求項2から6のいずれか1項に記載のプロモーター配列またはその部分の使用。
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